IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2024-163729記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム
<>
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図1
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図2
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図3
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図4
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図5
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図6
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図7
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図8
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図9
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図10
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図11
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図12
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図13
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図14
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図15
  • -記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163729
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/20 20060101AFI20241115BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20241115BHJP
   B65H 5/24 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B65H29/20
B65H5/06 M
B65H5/24
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079581
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅史
(72)【発明者】
【氏名】有田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】田口 基之
(72)【発明者】
【氏名】玉利 健人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 翔
(72)【発明者】
【氏名】古松 亮汰
【テーマコード(参考)】
3F049
3F101
【Fターム(参考)】
3F049AA03
3F049AA10
3F049EA10
3F049EA12
3F049EA24
3F049LA07
3F049LB03
3F101LA07
3F101LB03
(57)【要約】
【課題】重ね状態の解消に際し、駆動系の騒音や電力消費の増大を抑制する。
【解決手段】先行記録媒体の後端に後続記録媒体が重なった重ね状態から、速度差によって重なり量を減少させる減少制御が可能な制御手段を備える記録装置であって、第一の搬送手段と第二の搬送手段との間の区間に前記先行記録媒体の後端及び前記後続記録媒体の先端が位置している第一の場合に、前記先行記録媒体の搬送速度が第一の速度に設定された前記減少制御を実行可能であり、前記第一の搬送手段と前記第二の搬送手段との間の区間に前記先行記録媒体の後端及び前記後続記録媒体の先端が位置し、前記第一の場合と異なる第二の場合に、前記先行記録媒体の搬送速度が前記第一の速度と異なる第二の速度に設定された前記減少制御を実行可能である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を記録する記録手段と、
搬送方向に記録媒体を搬送する第一の搬送手段と、
前記搬送方向で前記第一の搬送手段の下流側において、前記記録手段で記録された記録媒体を搬送する第二の搬送手段と、
先行記録媒体の後端に後続記録媒体が重なった重ね状態から、前記先行記録媒体と前記後続記録媒体との速度差によって前記先行記録媒体と前記後続記録媒体との重なり量を減少させる減少制御が可能な制御手段と、
を備える記録装置であって、
前記制御手段は、
前記第一の搬送手段と前記第二の搬送手段との間の区間に前記先行記録媒体の後端及び前記後続記録媒体の先端が位置している第一の場合に、前記先行記録媒体の搬送速度が第一の速度に設定された前記減少制御を実行可能であり、
前記第一の搬送手段と前記第二の搬送手段との間の区間に前記先行記録媒体の後端及び前記後続記録媒体の先端が位置し、前記第一の場合と異なる第二の場合に、前記先行記録媒体の搬送速度が前記第一の速度と異なる第二の速度に設定された前記減少制御を実行可能である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記制御手段は、前記減少制御における前記先行記録媒体の搬送速度を、前記後続記録媒体に関する記録データに応じて設定する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記第一の速度は、上限速度に設定され、前記第二の速度は前記上限速度よりも低い速度に設定される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記制御手段は、
前記減少制御を開始してから前記後続記録媒体の先端が前記第二の搬送手段に達するまでの時間を推定し、
前記先行記録媒体と前記後続記録媒体の間隔が所定の間隔となる速度値を算出し、前記速度値が上限速度を超える場合は、前記第一の場合として前記第一の速度を前記上限速度に設定し、前記速度値が前記上限速度より低い速度の場合は、前記第二の場合として推定した時間に基づいて前記第二の速度を設定する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記第一の場合と前記第二の場合とは、前記後続記録媒体に記録する画像の記録データが異なる場合である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記制御手段は、
前記減少制御を開始してから前記後続記録媒体の先端が前記第二の搬送手段に達するまでの時間を推定し、
前記第一の場合には、推定した時間に基づいて前記第一の速度を設定し、
前記第二の場合には、推定した時間に基づいて前記第二の速度を設定する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項2に記載の記録装置であって、
前記制御手段は、前記記録手段による前記先行記録媒体の記録が完了する前に、前記減少制御における前記先行記録媒体の搬送速度を設定する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記搬送方向で前記第二の搬送手段の下流側において、前記記録手段で記録された記録媒体を搬送する第三の搬送手段を備え、
前記制御手段は、
前記第二の搬送手段と前記第三の搬送手段との間の区間に前記先行記録媒体の後端及び前記後続記録媒体の先端が位置している第三の場合に、前記先行記録媒体の搬送速度が第三の速度に設定された前記減少制御を実行可能であり、
前記第二の搬送手段と前記第三の搬送手段との間の区間に前記先行記録媒体の後端及び前記後続記録媒体の先端が位置し、前記第三の場合と異なる第四の場合に、前記先行記録媒体の搬送速度が前記第三の速度と異なる第四の速度に設定された前記減少制御を実行可能である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項8に記載の記録装置であって、
前記第三の速度は、上限速度に設定され、前記第四の速度は前記上限速度よりも低い速度に設定される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項8に記載の記録装置であって、
前記第三の場合と前記第四の場合とは、前記後続記録媒体に記録する画像の記録データが異なる場合である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項8に記載の記録装置であって、
前記制御手段は、
前記第一の搬送手段と前記第二の搬送手段との間の区間に前記先行記録媒体の後端が位置し、前記第二の搬送手段と前記第三の搬送手段との間の区間に前記後続記録媒体の先端が位置している場合に、前記先行記録媒体の搬送速度を前記後続記録媒体の搬送速度に合わせる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項8に記載の記録装置であって、
前記搬送方向で前記記録手段の上流側の第四の搬送手段と、
前記搬送方向で前記第四の搬送手段の上流側の第五の搬送手段と、を備え、
前記第一の搬送手段、前記第二の搬送手段及び前記第三の搬送手段は、前記搬送方向で前記記録手段の下流側に配置され、
前記制御手段は、
前記第四の搬送手段を前記後続記録媒体の先端が通過する前に、前記第五の搬送手段による前記後続記録媒体の搬送によって前記先行記録媒体の後端に前記後続記録媒体が重なった前記重ね状態を形成する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項13】
請求項8に記載の記録装置であって、
前記制御手段は、前記記録手段による前記先行記録媒体の記録が完了する前に、前記減少制御における前記先行記録媒体の搬送速度を設定する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項14】
請求項12に記載の記録装置であって、
前記制御手段は、
前記第三の搬送手段を前記先行記録媒体の後端が通過する際、前記第三の速度で前記先行記録媒体を搬送しても該後端が前記後続記録媒体の先端より所定の距離だけ先行していないと推定される場合、前記重ね状態を形成しない、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項15】
記録媒体に画像を記録する記録手段と、
搬送方向に記録媒体を搬送する第一の搬送手段と、
前記搬送方向で前記第一の搬送手段の下流側において、前記記録手段で記録された記録媒体を搬送する第二の搬送手段と、
を備える記録装置の制御方法であって、
先行記録媒体の後端に後続記録媒体が重なった重ね状態から、前記先行記録媒体と前記後続記録媒体との速度差によって前記先行記録媒体と前記後続記録媒体との重なり量を減少させる減少制御工程を備え、
前記減少制御工程は、
前記第一の搬送手段と前記第二の搬送手段との間の区間に前記先行記録媒体の後端が位置している場合、前記先行記録媒体の搬送速度が前記後続記録媒体に記録する画像の記録データに応じて設定された搬送速度で実行される、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項16】
コンピュータに、請求項15に記載の制御方法を実行させるプログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項17】
コンピュータに、請求項15に記載の制御方法を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置における記録媒体の搬送制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
先行記録媒体の後端に後続記録媒体を重ねた重ね状態でこれらを搬送し、後続記録媒体に対する記録を行う記録装置が知られている。このような搬送制御により、記録効率を向上することができる。一方、記録媒体の排出性や詰まり防止の観点で、先行記録媒体と後続記録媒体との重ね状態を解消する技術が提案されている。例えば、特許文献1には先行記録媒体の搬送速度を速めて、重ね状態を解消する記録装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-56299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重ね状態を解消する際、先行記録媒体の搬送速度を一律に高速化すると、駆動系の騒音や電力消費の増大を生じる場合がある。
【0005】
本発明は、重ね状態の解消に際し、駆動系の騒音や電力消費の増大を抑制可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
記録媒体に画像を記録する記録手段と、
搬送方向に記録媒体を搬送する第一の搬送手段と、
前記搬送方向で前記第一の搬送手段の下流側において、前記記録手段で記録された記録媒体を搬送する第二の搬送手段と、
先行記録媒体の後端に後続記録媒体が重なった重ね状態から、前記先行記録媒体と前記後続記録媒体との速度差によって前記先行記録媒体と前記後続記録媒体との重なり量を減少させる減少制御が可能な制御手段と、
を備える記録装置であって、
前記制御手段は、
前記第一の搬送手段と前記第二の搬送手段との間の区間に前記先行記録媒体の後端及び前記後続記録媒体の先端が位置している第一の場合に、前記先行記録媒体の搬送速度が第一の速度に設定された前記減少制御を実行可能であり、
前記第一の搬送手段と前記第二の搬送手段との間の区間に前記先行記録媒体の後端及び前記後続記録媒体の先端が位置し、前記第一の場合と異なる第二の場合に、前記先行記録媒体の搬送速度が前記第一の速度と異なる第二の速度に設定された前記減少制御を実行可能である、
ことを特徴とする記録装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、重ね状態の解消に際し、駆動系の騒音や電力消費の増大を抑制可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る記録装置の模式図。
図2図1の記録装置の制御系のブロック図。
図3図1の記録装置の動作説明図。
図4図1の記録装置の動作説明図。
図5図1の記録装置の動作説明図。
図6図1の記録装置の動作説明図。
図7図1の記録装置の動作説明図。
図8図1の記録装置の動作説明図。
図9図1の記録装置の動作説明図。
図10図1の記録装置の制御例を示すフローチャート。
図11図1の記録装置の制御例を示すフローチャート。
図12図1の記録装置の制御例を示すフローチャート。
図13図1の記録装置の制御例を示すフローチャート。
図14】(A)~(D)は引き離し動作の説明図。
図15】(A)~(D)は引き離し動作の説明図。
図16図1の記録装置の制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<概略>
図1は本実施形態における記録装置200の模式図である。本実施形態の記録装置200は記録媒体Pにインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置である。
【0011】
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、布、プラスチック・フィルム等であってもよい。
【0012】
記録装置200は、積載部11と排出部25とを備える。積載部11は複数の記録媒体Pが積載されるトレーである。排出部25は画像の記録済みの記録媒体Pが積載されるトレーである。記録装置200は、積載部11から排出部25への搬送経路に沿って記録媒体Pを搬送する構成として搬送ユニットC1~C6を備え、また、記録媒体Pの搬送経路の途中に記録ヘッド7を備える。搬送経路は記録媒体Pの搬送方向を規定する。記録媒体Pの搬送方向を基準として、上流側、下流側と呼ぶ場合があり、上流側とは積載部11の側を意味し、下流側とは排出部25の側を意味する。搬送ユニットC1~C6は、上流側からこの順序で配置されている。
【0013】
搬送ユニットC3及びC4は、主に、記録ヘッド7による画像の記録中に記録ヘッド7に対する記録媒体Pの送り動作を行うユニットである点で、媒体送りユニットと呼ぶこともできる。搬送ユニットC1及びC2は、主に、積載部11から記録媒体Pを給送するユニットである点で給送ユニットと呼ぶこともできる。搬送ユニットC5及びC6は、主に、記録後の記録媒体Pを排出部25に排出するユニットである点で排出ユニットと呼ぶこともできる。
【0014】
搬送ユニットC1は、モータ207を駆動源としたピックアップローラ2を備える。ピックアップローラ2は積載部11に積載された最上位の記録媒体Pに当接して、記録媒体Pを一枚ずつピックアップする。搬送ユニットC2は、モータ208を駆動源とした駆動ローラである給送ローラ3と、給送ローラ3に圧接し、給送ローラ3とともに記録媒体Pを挟持して給送する給送従動ローラ4とを備える。ピックアップローラ2によってピックアップされた記録媒体Pは、搬送ユニットC2によって、搬送ガイド100にガイドされつつ下流側へ給送される。
【0015】
本実施形態の場合、ピックアップローラ2はワンウェイローラとなっており、空転可能である。給送ローラ3に記録媒体Pが到達した後であれば、ピックアップローラ2の駆動を停止しても給送ローラ3によって記録媒体Pの搬送を継続できる。なお、本実施形態は、ピックアップローラ2及び給送ローラ3を備える構成を例示するが、積載部11に積載された記録媒体P給送ローラ3のみで給送する構成であってもよい。
【0016】
検知センサ16は記録媒体Pの先端及び後端を検知するセンサであり、例えば、光学式センサである。検知センサ16の検知位置は給送ローラ3よりも下流側の位置で、搬送ユニットC3よりも上流側の位置に設定されている。
【0017】
搬送ユニットC3は、モータ205を駆動源とした駆動ローラである搬送ローラ5と、搬送ローラ5に圧接してニップ部を形成し、搬送ローラ5とともに記録媒体Pを挟持して給送するピンチローラ6とを備える。搬送ユニットC3は、搬送ユニットC2によって給送された記録媒体Pを記録ヘッド7と対向する位置(記録ヘッド7と、記録ヘッド7に対向するプラテン8との間の位置)へ搬送する。
【0018】
記録ヘッド7は記録媒体Pに対して画像を記録する。本実施形態では記録ヘッド7は、記録媒体Pにインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドである。プラテン8は記録媒体Pを下側から支持する。記録ヘッド7はキャリッジ1に搭載される。キャリッジ1は、モータ204を駆動源とした移動機構205によって、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向(記録媒体Pの幅方向)に移動される。
【0019】
搬送ユニットC4は、モータ205を駆動源とした駆動ローラである搬送ローラ10と、記録媒体Pの記録面と接触して回転する拍車12とを備え、搬送ユニットC3によって搬送される記録媒体Pを更に下流側に搬送する。拍車12は搬送ローラ10へ付勢されている。搬送ユニットC3と搬送ユニットC4とでモータ205が共用されている。
【0020】
搬送ユニットC5は、モータ206を駆動源とした駆動ローラである搬送ローラ20と、搬送ローラ20に圧接してニップ部を形成し、搬送ローラ20とともに記録媒体Pを挟持して搬送する搬送従動ローラ21とを備える。排出ユニットC5は、搬送ユニットC4によって搬送される記録媒体Pを更に下流側に、搬送経路104に沿って搬送する。
【0021】
搬送ユニットC6は、モータ215を駆動源とした駆動ローラである排出ローラ22と、排出ローラ22に圧接してニップ部を形成し、排出ローラ22とともに記録媒体Pを挟持して搬送する排出従動ローラ23とを備える。排出ユニットC6は、搬送ユニットC5によって搬送される記録媒体Pを排出部25に排出する。
【0022】
<制御系>
図2は、記録装置200の制御系のブロック図である。MPU201は、少なくとも一つのプロセッサを含み、記録装置200の全体を制御する制御ユニットである。ROM202、RAM203は記憶デバイスであって、特に半導体メモリである。ROM202は、MPU201によって実行されるプログラムやデータを格納する半導体メモリである。RAM203は、MPU201によって実行される処理データ及びホストコンピュータ214から受信したデータを一時的に記憶する半導体メモリである。
【0023】
記録ヘッド7は記録ヘッドドライバ220によって制御される。モータ204~208及び215はモータドライバ218により制御される。センサ群216には、記録装置200に設けられた各種のセンサが含まれ、例えば、検知センサ16、給送ローラ3の回転量を検知するセンサ(不図示)や、搬送ローラ5の回転量を検知するセンサ(不図示)等が含まれる。ホストコンピュータ214には、使用者によって記録動作の実行が命令された場合に、記録画像や記録条件等の記録データ(記録ジョブ)を記録装置200に送信するプリンタドライバ2141が設けられている。MPU201は、インタフェース部(I/F部)213を介してホストコンピュータ214と情報通信を実行する。
【0024】
<記録動作の流れ>
図3図9を参照して記録装置200の動作例について説明する。ここでは、2枚の記録媒体Pの各片面に画像を記録する動作を連続的に行う例について説明する。すなわち、1ジョブ内で2頁分の記録データがある場合を例に挙げて時系列で動作を説明する。ホストコンピュータ214から1/F部213を介して記録データが送信されると、MPU201で記録データが処理された後、RAM203にデータが展開される。そして、展開されたデータに基づいてMPU201が記録動作を開始する。
【0025】
図3のST1を参照する。最初に、モータ207が低速駆動される。これにより、ピックアップローラ2は例えば7.6inch/secで回転される。ピックアップローラ2が回転すると、積載部11に積載された最上位の記録媒体Pがピックアップされる。ピックアップローラ2によってピックアップされた1枚目の先行記録媒体P1は、ピックアップローラ2と同方向に回転している給送ローラ3によって搬送される。給送ローラ3は、モータ208によってピックアップローラ2による先行記録媒体P1の搬送速度と同じ搬送速度で駆動される。
【0026】
ピックアップローラ2は、先行記録媒体P1が給送ローラ3を超える位置まで先行記録媒体P1を搬送可能な所定量だけ回転される。その後、次の後続記録媒体P2をピックアップしないように停止する。検知センサ16によって先行記録媒体P1の先端が検知されると、モータ208を高速駆動に切り替える。例えば、給送ローラ3は20inch/secで回転する。
【0027】
図3のST2を参照する。給送ローラ3を回転し続けると、先行記録媒体P1の搬送方先端L1は搬送ローラ5とピンチローラ6で形成されるニップ部に突き当たる。このとき搬送ローラ5は停止状態である。先行記録媒体P1の先端L1が搬送ニップ部に突き当たった後も給送ローラ3を所定量回転させることによって、先行記録媒体P1の先端L1が幅方向に一様にニップ部に突き当たって撓んだ状態となる。これにより先行記録媒P1の斜行が嬌正される。こうした斜行矯正動作をレジ取り動作ともいう。
【0028】
図3のST3を参照する。先行記録媒体P1の斜行矯正動作が終了すると、搬送モータ205が駆動されることによって搬送ローラ5が回転を開始する。搬送ローラ5は例えば15inch/secで先行記録媒体P1を搬送する。先行記録媒体P1は記録ヘッド7と対向する位置に頭出しされる。頭出しとは先行記録媒体P1の最初の記録位置を、記録ヘッド7に対向させることである。頭出し動作は、先行記録媒体Pの先端L1がニップ部に突き当てられた状態から搬送ローラ5の回転量を制御することにより行われる。記録データに基づいて、記録ヘッド7からインクを吐出することによって、1頁目の記録データの記録動作が先行記録媒体P1に対して開始される。
【0029】
本実施形態の記録装置200は、記録ヘッド7がキャリッジ1に搭載されているシリアルタイプの記録装置である。記録動作は、記録媒体Pの間欠搬送動作と、記録スキャン動作とを交互に繰り返すことにより行う。間欠搬送動作とは、記録媒体Pを所定量搬送して停止する動作であり、搬送ローラ5のみで、又は、搬送ローラ5と搬送ローラ10とよって行われる。記録スキャン動作とは、記録媒体Pの搬送が停止している状態で、キャリッジ1の移動により記録ヘッド7を記録媒体Pの幅方向に移動させながらインクを吐出する動作である。こうした記録動作により先行記録媒体P1に対する画像の記録が進行する。
【0030】
先行記録媒体P1が頭出しされると、モータ208を低速駆動に切り替える。例えば、給送ローラ3は7.6inch/secで回転する。先行記録媒体P1の間欠搬送動作の際、給送ローラ3も間欠搬送動作を行う。すなわち、搬送ローラ5が回転しているときは給送ローラ3も回転し、搬送ローラ5が停止しているときは給送ローラ3も停止する。搬送ローラ5の回転速度に対して、給送ローラ3の回転速度は低い。そのため、搬送ローラ5と給送ローラ3の間で先行記録媒体P1は張った状態になる。また、給送ローラ3は搬送ローラ5によって搬送される先行記録媒体P1によって連れ回りさせられる。
【0031】
搬送ローラ5によって先行記録媒体P1の間欠搬送動作の際、搬送ローラ20及び排出ローラ22も搬送ローラ5と同様の回転方向と速度で間欠的に駆動される。すなわち、搬送ローラ5が回転しているときは搬送ローラ20及び排出ローラ22も回転し、搬送ローラ5が停止しているときは搬送ローラ20及び排出ローラ22も停止する。
【0032】
検知センサ16の応答性等の要因により、検知センサ16によって記録媒体Pの端部を検知するためには、連続する記録媒体P間に所定の間隔が必要になる。すなわち、検知センサ16によって先行記録媒体P1の後端R1を検知した後、2枚目の後続記録媒体P2の先端L2を検知するまでに所定の時間を空ける必要がある。そのため、搬送制御によって、先行記録媒体P1の後端R1と、後続記録媒体P2の先端L2との間を所定距離だけ離す。後続記録媒体P2のピックアップ動作は、先行記録媒体P1の後端R1が検知センサ16を通過したと判断されてから行う。また、ピックアップローラ2の回転は、先行記録媒体P1の後端R1と後続記録媒体P2の先端L2との間隔が所定距離以上となるように制御される。各記録媒体Pの先端位置及び後端位置は各ローラの回転量から求めてもよいし、別途センサを設けて算出してもよい。
【0033】
図4のST4を参照する。ピックアップローラ2によってピックアップされた後続記録媒体P2は、給送ローラ3によって搬送される。このとき、先行記録媒体P1に対する記録動作が継続している。検知センサ16によって後続記録媒体P2の先端L2が検知されると、モータ208を高速駆動に切り替える。すなわち給送ローラ3は例えば20inch/secで回転する。
【0034】
図4のST5を参照する。記録動作において先行記録媒体P1が下流に移動する速度に対して、後続記録媒体P2を高速に移動させる。これによって先行記録媒体P1の後端部の上に後続記録媒体P2の先端部が重なった重ね状態を形成することができる。本実施形態の場合、記録動作中、間欠搬送動作の繰り返しにより先行記録媒体P1が搬送されるため、給送ローラ3を連続的に回転させることによって後続記録媒体P2が先行記録媒体P1に追いつくことができる。後続記録媒体P2は、その先端L2が搬送ローラ5とピンチローラ6とのニップ部よりも所定の距離だけ上流側の位置に到達するまで給送される。後続記録媒体P2の先端L2の位置は、後続記録媒体P2の先端L2が検知センサ16によって検知されてからの給送ローラ3の回転量から算出され、この算出結果に基づいて制御される。
【0035】
(重ね制御による重ね動作)
重ね状態を形成する動作について図5及び図6を参照して詳しく説明する。図5及び図6は給送ローラ3と給送従動ローラ4で形成されるニップ部と、搬送ローラ5とピンチローラ6で形成されるニップ部との間の搬送区間の拡大図である。この区間には、記録媒体Pの後端部の浮き上がりを抑えるレバー17が設けられている。レバー17はその上端部において回動自在に支持されている。
【0036】
搬送ローラ5、給送ローラ3により記録媒体Pが搬送される過程を、3つの状態として順に説明する。後続記録媒体P2が先行記録媒体P1を追いかける動作を行う第1の状態を図5のST5-1、ST5-2を参照して説明する。後続記録媒体P2を先行記録媒体P1に重ねる動作を行う第2の状態を図6のST5-3、ST5-4を参照して説明する。重ね状態を維持して後続記録媒体P2の斜行矯正動作を行うか判定する第3の状態を図6のST5-5を参照して説明する。
【0037】
図5のST5-1では、給送ローラ3を駆動して後続記録媒体P2を搬送し、検知センサ16で後続記録媒体P2の先端L2を検知する。検知センサ16から後続記録媒体P2を先行記録媒体P1の上に重ねることが可能となる位置PS1までを第1の区間A1と定義する。第1の区間A1において、後続記録媒体P2の先端L2が先行記録媒体P1の後端R1を追いかける動作を行う。位置PS1は、機構の構成により決定されるものである。
【0038】
第1の状態では、第1の区間A1において、追いかける動作を停止する場合が存在する。図5のST5-2のように、後続記録媒体P2の先端L2が、位置PS1より手前で先行記録媒体P1の後端R1を追い越してしまう場合は、後続記録媒体P2を先行記録媒体P1に重ねる動作を行わない。
【0039】
図6のST5-3において、位置PS1からレバー17が設けられた位置PS2までを第2の区間A2と定義する。第2の区間A2において、後続記録媒体P2を先行記録媒体P1の後端R1に重ねる動作を行う。
【0040】
第2の状態では、第2の区間A2において、後続記録媒体P2を先行記録媒体P1に重ねる動作を停止する場合が存在する。図6のST5-4のように、第2の区間A2内で後続記録媒体P2の先端L2が先行記録媒体P1の後端R1に追いつくことができない場合は、先行記録媒体P1に後続記録媒体P2を重ねる動作ができない。
【0041】
図6のST5-5において、位置PS2から位置PS3までを第3の区間A3と定義する。位置PS3は、後続記録媒体P2を先行記録媒体P1に重ねた状態で、後続記録媒体P2の先端L2が位置PS3に到達するまで搬送する。第3の区間A3において、重ね状態を維持したまま後続記録媒体P2の斜行矯正動作を行うか、重ね状態を解除して斜行矯正動作を行うかの判定を行う。重ね状態を解除して斜行矯正動作を行う場合、その後の処理は先行記録媒体P1と同様になる。
【0042】
図4のST6を参照して、重ね状態を維持して斜行矯正動作を行うと判断した場合の処理について説明する。先行記録媒体P1の最終行の記録スキャン動作を行うために搬送ローラ5が停止しているときに、後続記録媒体P2の斜行嬌正動作を行う。ここでは、給送ローラ3を駆動することによって後続記録媒体P2の先端L2を、搬送ローラ5とピンチローラ6とのニップ部に突き当て後続記録媒体P2の斜行を矯正する。
【0043】
図7のST7を参照する。先行記録媒体P1の最終行の記録スキャン動作が終了すると、搬送ローラ5を所定量回転させることによって重ね状態を維持しながら後続記録媒体P2の頭出しを行う。このとき搬送ローラ5とピンチローラ6のニップ部には先行記録媒体P1の後端部と後続記録媒体P2の先端部との双方が挟持されて、両者が搬送される。
【0044】
後続記録媒体P2が頭出しされると、モータ208を低速駆動に切り替える。例えば、給送ローラ3は7.6inch/secで回転する。後続記録媒体P2の2頁目の記録データの記録動作が後続記録媒体P2に対して開始される。後続記録媒体P2の間欠搬送動作の際、給送ローラ3も間欠搬送動作を行う。後続記録媒体P2の間欠搬送動作の際、先行記録媒体P1に対しても間欠搬送動作が行われる。その後、後続記録媒体P2に対して画像が記録されていく。
【0045】
(減少制御による引き離し動作)
本実施形態では、先行記録媒体P1の上に後続記録媒体P2を重ねてこれらの搬送を行う搬送制御を実行可能である。但し、この重ね状態のまま、フェイスダウン方式でこれらの記録媒体Pを排出部25に排出しようとすると、記録媒体Pの順番が入れ替わって、排出性が低下する場合がある。例えば、排出部25において、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2とで積層順序(頁順序)が入れ替わってしまう場合や、紙詰まりを生じる場合がある。そこで、本実施形態では、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2との速度差によってこれらの重なり量を減少させる減少制御が実行可能である。この減少制御の実行により先行記録媒体P1と後続記録媒体P2との引き離し動作を行う。これにより先行記録媒体P1と後続記録媒体P2とが重なっていない状態で排出する。
【0046】
図7図9を参照して説明する。ST8-1に示すように、搬送ローラ10と搬送ローラ20との間の区間に先行記録媒体P1の後端R1と、後続記録媒体P2の先端L2とが位置している場合に引き離し動作を開始する。後端R1の位置は、先行記録媒体P1の頭出しの位置からの搬送ローラ5の回転量と先行記録媒体P1の長さから特定する。重なる状態の場合、先行記録媒体P1の後端R1が搬送ローラ10を通過した場合、後続記録媒体P2の後端R2は搬送ローラ10と搬送ローラ20との間の区間にあることになる。先行記録媒体P1の後端R1が搬送ローラ10を通過したと判断した後、搬送ローラ5及び搬送ローラ10とは独立して、モータ206により搬送ローラ20を連続的に回転する。このとき、後続記録媒体P2と先行記録媒体P1の重なり量が減少するように先行記録媒体P1の搬送速度(搬送ローラ20の回転速度)を制御する。なお、排出ローラ22もモータ215により搬送ローラ20と同様の速度で回転される。搬送ローラ20及び排出ローラ22の速度値の算出方法の詳細に関しては後述する。
【0047】
図7のST8-2に示す通り、先行記録媒体P1の後端R1が後続記録媒体P2の先端L2より先に搬送ローラ20を通過し、先行記録媒体P1の後端R1と後続記録媒体P2の先端L2の間隔が形成される。この間隔が所定距離ある場合、排出ローラ22は搬送ローラ5及び搬送ローラ10とは独立して連続して回転し、先行記録媒体P1の排出を行う。搬送ローラ20の回転速度は後続記録媒体P2の先端L2が搬送ローラ20に到達する前に、搬送ローラ5及び搬送ローラ10と同じ回転速度に戻される。
【0048】
このようにして先行記録媒体P1と後続記録媒体P2とは搬送ローラ10と搬送ローラ20との間の区間で引き離され、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2の重なり状態を解消することができる。なお、重なり状態を解消するにあたり、搬送ローラ20の回転速度を搬送ローラ5の回転速度より速くしてもよいが、必ずしも搬送ローラ20の回転速度が搬送ローラ5の回転速度よりも速い必要はない。搬送ローラ5が後続記録媒体P2の記録動作のために間欠搬送動作を行う場合、記録スキャン動作の間、搬送停止の時間があり、連続搬送される場合よりも後続記録媒体P2の先端L2が搬送ローラ20に到達するまでに時間を要する。したがって、回転時の回転速度としては搬送ローラ20と搬送ローラ5とが同じであっても、搬送ローラ20を連続回転することで、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2とに速度差を生じさせることができる。このように後続記録媒体P2の記録動作中に引き離し動作を行えば、先行記録媒体P1の搬送速度を低減することができ、騒音や電力消費などの増加を抑制できる。
【0049】
一方、記録条件によっては搬送ローラ10と搬送ローラ20との間の区間で先行記録媒体P1と後続記録媒体P2の引き離し動作が完了しない場合がある。図8のST9はその一例を示す。先行記録媒体P1と後続記録媒体P2との重なり量は減少しているものの、先行記録媒体P1の後端R1が搬送ローラ20を通過する前に後続記録媒体P2の先端L2が搬送ローラ20に到達する状況にある。このように後続記録媒体P2の先端L2が先行記録媒体P1の後端R1よりも先に搬送ローラ20に到達する場合、先行記録媒体P1の搬送速度を後続記録媒体P2の搬送速度に合わせて同期的に搬送する。具体的には搬送ローラ20と排出ローラ22とを搬送ローラ5及び搬送ローラ10と同期的に回転する。先行記録媒体P1の後端R1と後続記録媒体P2の先端L2との間隔が所定距離にならない場合も同様である。後続記録媒体P2の先端L2が搬送ローラ20に到達する前までに、先行記録媒体P1の搬送速度を後続記録媒体P2の搬送速度に合わせる。
【0050】
図8のST10において、先行記録媒体P1の後端R1が搬送ローラ20を通過し、先行記録媒体P1の後端R1と後続記録媒体P2の先端L2とが搬送ローラ20と排出ローラ23との間の区間に位置している。排出ローラ22をモータ215により連続して回転し、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2の引き離し動作を行う。後続記録媒体P2の先端L2が排出ローラ22に到達するよりも前に、後続記録媒体P2の先端L2と先行記録媒体P1の後端R1との間隔が所定距離以上になるように先行記録媒体P1の搬送速度を制御する。具体的には排出ローラ22の回転速度を制御する。図8のST11において、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2は引き離され、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2との重なり状態を解消することができる。排出ローラ22の回転速度値の算出方法の詳細に関しては、制御フローを参照して後述する。
【0051】
このようにして先行記録媒体P1と後続記録媒体P2とは、搬送ローラ20と排出ローラ22との間の区間で引き離され、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2の重なり状態を解消することができる。なお、重なり状態を解消するにあたり、排出ローラ22の回転速度を搬送ローラ20の回転速度より速くしてもよいが、必ずしも排出ローラ22の回転速度が搬送ローラ20の回転速度よりも速い必要はない。搬送ローラ20が後続記録媒体P2の記録動作のために間欠搬送動作を行う場合、記録スキャン動作の間、搬送停止の時間があり、連続搬送される場合よりも後続記録媒体P2の先端L2が排出ローラ22に到達するまでに時間を要する。したがって、回転時の回転速度としては排出ローラ22と搬送ローラ20とが同じであっても、排出ローラ22を連続回転することで、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2とに速度差を生じさせることができる。このように後続記録媒体P2の記録動作中に引き離し動作を行えば、先行記録媒体P1の搬送速度を低減することができ、騒音や電力消費などの増加を抑制できる。
【0052】
図9のST12を参照して説明する。先行記録媒体P1に対しては記録が終了しているため、排出ローラ22の回転により、先行記録媒体Pは排出部25に排出される。図9のST13を参照して説明する。後続記録媒体P2の最終行の記録スキャン動作が終了すると、1ジョブ内で最後の記録媒体である後続記録媒体P2に対する記録が終了したことになる。ここで、排出ローラ22及び搬送ローラ20、搬送ローラ10、搬送ローラ5を同一方向に回転することにより、後続記録媒体P2を排出部25に排出してジョブを終了する。
【0053】
<制御フローの説明>
MPU201の処理例について説明する。図10図14は、MPU201が実行する記録制御処理のフローチャートである。記録順序を示す変数をN、頁を示すK、記録媒体Pの枚数を示すMをそれぞれNの関数としてK(N)、M(N)と表現する。Nmaxとは最大記録順序を示す。I/F部213を介してホストコンピュータ214から記録データが送信されると図10の処理を開始する。
【0054】
図10のステップS1において、記録順序N=1がセットされ、初期化される。ステップS2では最大記録順序Nmaxが記録データから取得され。ステップS3では積載部11からのM(N)枚目の記録媒体Pの給送が7.6inch/secで開始される。最初に、モータ207が低速駆動される。これにより、ピックアップローラ2は7.6inch/secで回転される。ピックアップローラ2が回転すると、積載部11に積載された最上位の記録媒体Pがピックアップされる。ピックアップローラ2によってピックアップされた記録媒体Pは、ピックアップローラ2と同方向に回転している給送ローラ3によって搬送される。給送ローラ3はモータ208によってピックアップローラ2と同様の速度で駆動される。ピックアップローラ2は、給送ローラ3を超える位置まで記録媒体Pを搬送可能な所定量回転後、次の記録媒体Pをピックアップしないように停止する。ピックアップローラ2はワンウェイローラとなっており、ピックアップローラ2を停止しても給送ローラ3による搬送を継続できる。
【0055】
ステップS4ではM(N)枚目の記録媒体Pの先端の通過が、検知センサ16によって検知されたか否かを判断する。通過していないと判断された場合(ステップS4:NO)、ステップS4の処理を繰り返す。一方で、通過したと判断された場合(ステップS4:YES)、ステップS6を実行する。
【0056】
ステップS5では、M(N)枚目の記録媒体Pの給送速度が20inch/secに切り替えられる。このとき、モータ208を高速駆動に切り替えることで、給送ローラ3は20inch/secで回転する。M(N-1)枚目の記録媒体P(先行記録媒体)が存在する場合には、その記録媒体に追いつくための動作となる。
【0057】
ステップS6では、N=1であるか否かが判断される。N=1であると判断された場合(ステップS6:YES)、重ねる相手となる先行記録媒体Pは存在し得ないので、ステップS8に進む。一方で、N=1でないと判断された場合(ステップS6:NO)、重ね動作を行う可能性があるため、ステップS7の重ね準備動作を実行する。
【0058】
図11はステップS7の重ね準備動作の処理の例を示すフローチャートである。ステップS71が実行され、搬送ローラ5の手前の所定の位置に、M(N)枚目の記録媒体Pの先端が到達するとその搬送を停止させる。M(N)枚目の記録媒体Pの先端の位置は、M(N)枚目の記録媒体Pの先端が検知センサ16によって検知されてからの給送ローラ3の回転量から算出され、この算出結果に基づいて制御される。
【0059】
ステップS72では所定の重ね実施条件を満たしているか否かが判断される。重ね実施条件の詳細については後述する。重ね実施条件を満たしていると判断された場合(ステップS72:YES)、ステップS73が実行される。ステップS73では、M(N-1)枚目の記録媒体Pの最終行の記録スキャン動作が開始されたか否かが判断される。開始されていないと判断された場合(ステップS73:NO)、ステップS73の処理が繰り返される。開始されたと判断された場合(ステップS73:YES)、処理を終了し、続いて図10のステップS8が実行される。
【0060】
一方で、ステップS72で重ね実施条件を満たしていないと判断された場合(ステップS72:NO)、ステップS74が実行される。以下のステップS74~S77を順次実行することで、重ね状態を解除する動作、または、後続の記録媒体Pが先行する記録媒体Pに十分に追いつけていないときの動作を行うことができる。
【0061】
ステップS74では、M(N-1)枚目の記録媒体Pの最終行の記録が終了したか否かが判断される。終了していないと判断された場合(ステップS74:NO)、ステップS74の処理を繰り返す。終了したと判断された場合(ステップS74:YES)、ステップS75が実行され、M(N-1)枚目の記録媒体Pを、搬送ローラ5を用いて18inch/secで搬送する。
【0062】
ステップS76では、M(N-1)枚目の記録媒体Pの後端が搬送ローラ5を通過後、所定量以上搬送されているか否かが判断される。所定量以上搬送されていないと判断された場合(ステップS76:NO)、ステップS76の処理が繰り返される。所定量以上搬送されていると判断された場合(ステップS76:YES)、ステップS77が実行され、搬送ローラ5を停止する。処理を終了し、続いて図10のステップS8が実行される。
【0063】
上述したステップS74~S77を順次実行することで、重ね状態が形成された後、重ね実施条件を満たしていない場合に、重ね状態を搬送ローラ5より搬送方向上流側の位置で解除することができる。また、後続のM(N)枚目の記録媒体Pが、先行するM(N-1)枚目の記録媒体Pに十分に追いつけていないときには、M(N)枚目の記録媒体Pを単独で斜行矯正するための準備を行うことができる。
【0064】
図10を参照する。ステップS8では、M(N)枚目の記録媒体Pの斜行矯正が行われる。搬送ローラ5が停止しているときに、給送ローラ3を駆動することによってM(N)枚目の記録媒体Pの先端を、搬送ローラ5とピンチローラ6とのニップ部に突き当ててM(N)枚目の記録媒体Pの斜行を嬌正する。このとき、ステップS7でN=1であると判断されていた場合(ステップS7:YES)、M(N)枚目の記録媒体Pは、先行する記録媒体Pとの重ね状態ではない、単独の状態で斜行矯正される。また、ステップS72で重ね実施条件を満たしていると判断されていた場合(ステップS72:YES)、M(N)枚目の記録媒体Pは、M(N-1)枚目の記録媒体Pと重ね状態で斜行矯正される。一方で、ステップS72で重ね実施条件を満たしていないと判断されていた場合(ステップS72:NO)、M(N)枚目の記録媒体Pは、先行する記録媒体Pとの重ね状態ではない、単独で斜行矯正される。
【0065】
ステップS9では、M(N)枚目の記録媒体Pの頭出しが行われる。搬送ローラ5を所定量回転させることによってM(N)枚目の記録媒体Pの頭出しを行うことができる。このとき、ステップS8でM(N)枚目の記録媒体PがM(N-1)枚目の記録媒体Pと重ね状態で斜行矯正されていれば、重ね状態が維持されたまま、M(N)枚目の記録媒体Pの頭出しが行われる。つまり、M(N)枚目の記録媒体PとM(N-1)枚目の記録媒体Pとが重ね状態で同時に搬送される。
【0066】
ステップS10では、M(N)枚目の記録媒体Pの給送速度が7.6inch/secに切り替えられる。モータ208を低速駆動に切り替えることで、給送ローラ3は7.6inch/secで回転する。ステップS11では、M(N)枚目の記録媒体PのK(N)頁目のデータの記録動作が開始される。搬送ローラ5によってM(N)枚目の記録媒体Pを所定量ずつ間欠搬送しているときに、モータ208によって給送ローラ3も間欠駆動される。M(N)枚目の記録媒体Pが記録動作のために間欠搬送されると、M(N-1)枚目の記録媒体Pも間欠搬送される。
【0067】
ステップS12では、N=1であるか否かが判断される。N=1であると判断された場合(ステップS12:YES)、ステップS13が実行される。一方で、N=1でないと判断された場合(ステップS12:NO)、ステップS16が実行される。
【0068】
ステップS16では、M(N-1)枚目の記録媒体PとM(N)枚目の記録媒体Pとが重ね状態であるか否かが判断される。重ね状態であると判断された場合(ステップS16:YES)、ステップS17の引き離し動作が実行される。引き離し動作の詳細については後述する。ステップS17の実行後はステップS18の排出動作が実行される。ステップS18では、M(N-1)枚目の記録媒体Pが、排出ローラ22と搬送ローラ20の回転により排出部25に排出される。重ね状態ではないと判断された場合(ステップS16:NO)、ステップS17の引き離し動作は実行されず、ステップS18の排出動作が実行される。
【0069】
ステップS13では、記録順序Nがインクリメントされる。すなわち、記録順序N=N+1がセットされる。ステップS14では、記録順序Nが最大記録順序Nmax以下であるかが判断される。最大記録順序Nmax以下であると判断された場合(ステップS14:YES)、ステップS15を実行する。ステップS15では、M(N-1)枚目の記録媒体Pの後端の通過が検知センサ16によって検知されたか否かが判断される。検知センサ16により検知されたと判断された場合(ステップS15:YES)、ステップS3に戻って同様の処理を繰り返す。
【0070】
一方で、ステップS14で、記録順序Nが最大記録順序Nmax以下でないと判断された場合(ステップS14:NO)、最終行の記録が終了したと判断され、ステップS17が実行される。ステップS17では、M(N-1)枚目の記録媒体Pが排出される。排出ローラ22及び搬送ローラ20、搬送ローラ10、搬送ローラ5を同一方向に回転することにより、M(N-1)枚目の記録媒体Pを排出部25に排出することができる。排出が終了すると処理を終了する。
【0071】
<重ね実施条件>
図12は、図11のS72で説明した重ね実施条件を満たしているかの判断に関する処理の例を示すフローチャートであり、この判断によって記録媒体Pの斜行矯正動作の態様が選択される。M(N-1)枚目の記録媒体Pを先行記録媒体P1、M(N)枚目の記録媒体Pを後続記録媒体P2とする。
【0072】
ステップS102において、後続記録媒体P2の先端が判定位置(図5のST5-1のPS3)まで到達しているか否かが判断される。ここで到達していない場合(ステップS102:NO)、所定量の搬送で後続記録媒体P2の先端が、搬送ローラ5とピンチローラ6とのニップ部に突き当たるか不明である。このため、重ね状態ではない単独の状態での、後続記録媒体P2の斜行矯正動作が決定される(ステップS103)。すなわち、先行記録媒体P1の後端が搬送ローラ5とピンチローラ6とのニップ部を通過した後に、後続記録媒体Pのみをニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行い、その後、後続記録媒体Pの頭出しをする。
【0073】
一方、後続記録媒体P2の先端が判定位置PS3まで到達している場合(ステップS102:YES)、先行記録媒体P1の後端が搬送ローラ5とピンチローラ6とのニップ部を通過したか否かが判断される(ステップS105)。ここで通過したと判定された場合(ステップS105:YES)、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2とは重ね状態ではない。したがって、重ね状態ではない単独の状態での、後続記録媒体の斜行矯正動作が決定される(ステップS106)。すなわち、後続記録媒体P2の先端を搬送ローラ5とピンチローラ6とニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行い、その後、後続記録媒体Pの頭出しをする。
【0074】
一方、先行記録媒体Pの後端が搬送ローラ5とピンチローラ6とのニップ部を通過していないと判定された場合(ステップS105:NO)、ステップS107へ進む。ステップS107では、先行記録媒体P1の後端部と後続記録媒体P2との重なり量が閾値より小さいか否かの判定が行われる。先行記録媒体P1の後端の位置は、先行記録媒体P1に対する記録動作に伴って更新していく。また、後続記録媒体P2の先端の位置は、前述の判定位置にある。
【0075】
すなわち、重なり量は、先行記録媒体P1の記録動作にともなって減少していく。重なり量が閾値より小さいと判定された場合(ステップS107:YES)、重ね状態を解除して、単独の状態での後続記録媒体P2の斜行矯正動作が決定される(ステップS108)。この場合、後続記録媒体P2を先行記録媒体P1と共に搬送しない。具体的には、搬送モータ205によって搬送ローラ5を駆動して先行記録媒体P1を搬送する。しかしながら、給送ローラ3は駆動しない。したがって、重ね状態は解除される。さらに、後続記録媒体P2のみをニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行い、その後、後続記録媒体Pの頭出しをする。
【0076】
重なり量が閾値以上と判定された場合(ステップS107:NO)、後続記録媒体P2を頭出ししたときに、後続記録媒体Pが不図示の拍車まで到達するか否かの判定が行われる(ステップS109)。不図示の拍車は記録ヘッド7によって記録が行われた記録媒体Pの記録面と接触して回転する拍車であり、搬送方向において拍車12より上流に位置する。
【0077】
後続記録媒体P2が不図示の拍車まで到達しないと判定された場合(ステップS109:NO)、重ね状態を解除して、単独の状態での後続記録媒体P2の斜行矯正動作が決定される(ステップS110)。すなわち、後続記録媒体P2を先行記録媒体Pとともに搬送しない。具体的には、搬送モータ205によって搬送ローラ5を駆動して先行記録媒体P1を搬送する。しかしながら、給送ローラ3は駆動しない。したがって、重ね状態は解除される。さらに、後続記録媒体P2の先端を、搬送ローラ5とピンチローラ6とのニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行い、その後、後続記録媒体Pの頭出しを行う。
【0078】
後続記録媒体Pが不図示の拍車まで到達すると判定された場合(ステップS109:YES)、先行記録媒体P1の最終行と当該最終行の前行との間に隙間があるかの判定を行う(ステップS111)。隙間がないと判定された場合(ステップS111:NO)、重ね状態を解除して、単独の状態での後続記録媒体の斜行矯正動作が決定される(ステップS112)。隙間があると判定された場合(ステップS111:YES)、図13に示すステップS113の引き離し事前処理を実行する。
【0079】
<引き離し事前処理>
図13は、ステップS113の引き離し事前処理の制御フローチャートである。また、図14(A)~図15(D)は後述する変数の関係を表した概念図である。本実施形態では、引き離し動作における速度設定を、先行記録媒体P1の記録動作完了前、特に、後続記録媒体P2の斜行矯正動作の実行判定の段階で予め行う。
【0080】
ステップS201で、重ね量Waが演算される。重ね量Waは先行記録媒体P1と後続記録媒体P2とが重なり合う搬送方向の距離(予定距離)であり、搬送ローラ5から先行記録媒体P1の後端までの距離である。本実施形態の場合、図14(A)に示すように、後続記録媒体P2の斜行嬌正動作が行われる場合、先行記録媒体P1の最終行の記録スキャン動作を行うために搬送ローラ5が停止しているときに後続記録媒体P2の先端を搬送ニップ部に突き当ててられる。このとき、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2は重ね量Waだけ重なることになる。
【0081】
なお、図14(A)においてKyは記録媒体P上の記録予定領域、Kdは記録済み領域である。また、Dnはノズル領域の距離であり、記録ヘッド7が備える吐出ノズル71の再上流から最下流までの領域の距離、すなわち記録ヘッド7の最大記録幅である。一回の記録スキャン動作における記録幅をDsとすれば、Ds≦Dnである。なお、記録幅D2は一定ではなく記録スキャン動作ごとに異なってもよい。搬送ローラ10と搬送ローラ20との間の区間(搬送区間)RAの距離をLaとし、搬送ローラ20と排出ローラ22との間の区間(搬送区間)RBの距離をLbとする。
【0082】
ステップS202で、スキャン総時間Taが演算される。スキャン総時間Taとは、後続記録媒体P2の先端L2が判定距離LAを移動する間に行われる、後続記録媒体P2に対する記録スキャン動作の時間の総時間である。一例を挙げると、後続記録媒体P2の先端L2が判定距離LAを通過する間、後続記録媒体P2に対する記録スキャン動作が10回行われ、各回の時間が2秒であるとすると、スキャン総時間Taは20秒である。スキャン総時間Taは後続記録媒体P2の記録データから事前に演算される値(推測値)である。
【0083】
本実施形態では、図14(B)に示すように、先行記録媒体P1の後端R1が、搬送ローラ10を通過した後に引き離し動作が開始される。なお、開始タイミングは通過直後に限定するものでなく、通過後であればよい。引き離し動作後における先行記録媒体P1の後端R1と後続記録媒体P2の先端L2との間に必要な間隔をDa(>0)とする。引き離し動作は、先行記録媒体P1の後端R1が搬送ローラ20から搬送方向上流側に間隔Daだけ離れた位置を通過するまでに終了するように実行される。判定距離LAは、LA=La-Wa-Daで演算される。
【0084】
図13のステップS203では、引き離し可能時間T1が演算される。区間RAにおける引き離し動作は後続記録媒体P2が搬送ローラ20に到達してしまうとできない。引き離し可能時間T1は、区間RAにおける減少制御の実行時間であり、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2とに搬送速度差を与えてこれらを引き離すための許容時間である。引き離し可能時間T1は、後続記録媒体P2が判定距離LAだけ搬送される時間と後続記録媒体P2に対する記録スキャン動作の総時間との和で推定される。数式で表すと、
T1=(La-Wa-Da)/V1+Ta
で演算される。V1は後続記録媒体P2の搬送速度である。図14(B)~図15(D)においては、搬送速度V1を、便宜的に理解を容易にするため、搬送ローラ5及び10の回転速度のように表記している。しかし、搬送速度V1は後続記録媒体P2の移動速度として用いられる。搬送ローラ5及び10の回転速度は搬送速度V1に基づき設定される。後述する搬送速度V2も同様である。
【0085】
図13のステップS204では、区間RAにおける引き離し動作時の先行記録媒体P1の搬送速度(速度値)V2が、
V2=La/T1
で演算される。このように本実施形態の場合、搬送速度V2が固定値ではなく可変値となっている。先行記録媒体P1と後続記録媒体P2との引き離しに必要な範囲で、先行記録媒体P1の搬送速度V2が、より低速に設定されることで、駆動系の騒音や電力消費の増大を抑制することができる。
【0086】
具体的には、本実施形態の場合、後続記録媒体P2の記録データに基づき引き離し可能時間T1が演算され、搬送速度V2が演算される。後続記録媒体P2の記録データ上、区間RAに対応する記録動作に時間がかかる場合は搬送速度V2が相対的に低速に演算されて駆動系の騒音や電力消費の増大を抑制することができる。逆に、後続記録媒体P2の記録データ上、区間RAに対応する記録動作が短時間の場合には、引き離しを優先して搬送速度V2が相対的に高速に設定されることになる。このように例えば2つの異なる記録データの記録動作で比較した場合、一方の搬送速度V2が相対的に低速に、他方の搬送速度V2が相対的に高速になる。
【0087】
図13のステップ205では、ステップS204で算出した搬送速度V2があらかじめROM202に記憶されている閾値(上限速度)V2max以下か否かが判断される。搬送速度の上限値を設定することで、駆動系の騒音や電力消費の増大を抑制することができる。搬送速度V2が閾値V2maxより速いと判断された場合(ステップS205:NO)、ステップS212に進む。一方、搬送速度V2が閾値V2max以下と判断された場合(ステップS205:YES)、ステップS206に進む。
【0088】
ステップS205で搬送速度V2が閾値V2max以下と判断された場合(ステップS205:YES)、先行記録媒体P1の後端R1が搬送ローラ20を通過した時、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2の間隔はDa以上となる。図14(C)はその一例を示している。すなわち、間隔Daの引き離しが完了している。この間隔を確保しつつ、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2の搬送を更に行うことになる。そこで、ステップS206で、スキャン総時間Tbが演算される。スキャン総時間Tbとは、後続記録媒体P2の先端L2が判定距離LBを移動する間に行われる、後続記録媒体P2に対する記録スキャン動作の時間の総時間である。スキャン総時間Tbは後続記録媒体P2の記録データから事前に演算される値(推測値)である。
【0089】
図14(C)及び(D)に示すように、先行記録媒体P1の後端R1が、搬送ローラ20を通過した後にも引き離し動作が開始される。なお、開始タイミングは通過直後に限定するものでなく、通過後であればよい。引き離し動作後における先行記録媒体P1の後端R1と後続記録媒体P2の先端L2との間に必要な間隔をDb(>0)とする。判定距離LBは、LB=Lb+Da-Dbで演算される。
【0090】
図13のステップS207では、引き離し可能時間T2が演算される。区間RBにおける引き離し動作は先行記録媒体P1の後端R1が排出ローラ22から搬送方向上流側に間隔Dbだけ離れた位置を通過するまでに終了するようにする。引き離し可能時間T2は、区間RBにおける減少制御の実行時間であり、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2とに搬送速度差を与えてこれらを引き離すための許容時間である。引き離し可能時間T2は、後続記録媒体P2が判定距離LBだけ搬送される時間と後続記録媒体P2に対する記録スキャン動作の総時間との和で推定される。数式で表すと、
T2=(La+Da-Db)/V1+Tb
である。
【0091】
図13のステップS208では、区間RBにおける引き離し動作時の先行記録媒体P1の搬送速度(速度値)V3が、
V3=Lb/T2
で演算される。この場合も先行記録媒体P1と後続記録媒体P2との引き離しに必要な範囲で、先行記録媒体P1の搬送速度V3が、より低速に設定されることで、駆動系の騒音や電力消費の増大を抑制することができる。
【0092】
図13のステップS209では、RAM203に引き離し処理フラグFlg=0がセットされる。これにより引き離し動作の実行が予約される。その後、ステップS210に進む。ステップS210では、ステップS204で算出した搬送速度V2とステップS208で算出した搬送速度V3がRAM203に保存される。ステップS211では、重ね状態を維持して斜行矯正動作を実行することが決定される。
【0093】
次に、図13のステップS205で搬送速度V2が閾値V2maxよりも速いと判断された場合(ステップS205:NO)は、搬送速度V2を閾値V2maxとして先行記録媒体P1を搬送した場合を模擬してステップS212の処理が実行される。区間RAでは先行記録媒体P1と後続記録媒体P2との引き離しは完了していない。ステップS212では、図15(A)に示すように引き離し動作を開始して搬送速度V2maxで先行記録媒体P1を搬送した場合の、残重ね量Wbが算出される。
【0094】
図15(B)を参照して残重ね量Wbを説明する。後続記録媒体P2の先端L2が搬送ローラ20の手前の距離Daの位置に到達した時に、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2は重ね量Wbだけ重なっている。残重ね量Wbは重ね量Waより小さい。残重ね量Wbは、
Wb=Wa-{V2max×T1-(La-Wa-Da)}
で演算される。
【0095】
図13のステップS213では、スキャン総時間Tbが演算される。スキャン総時間TbはステップS206で説明したとおりである。ただし、図15(C)に示すように判定距離LBは、LB=Lb-Wb-Dbで演算される。ステップS214では、引き離し可能時間T2が演算される。これもステップS207で説明したとおりである。ただし、演算式は
T2=(Lb-Wb-Db)/V1+Tb
である。
【0096】
ステップS215では、区間RBにおける引き離し動作時の先行記録媒体P1の搬送速度(速度値)V3が、
V3=Lb/T2
で演算される。搬送速度V3が固定値ではなく可変値となっている。先行記録媒体P1と後続記録媒体P2との引き離しに必要な範囲で、先行記録媒体P1の搬送速度V3が、より低速に設定されることで、駆動系の騒音や電力消費の増大を抑制することができる。
【0097】
具体的には、本実施形態の場合、後続記録媒体P2の記録データに基づき引き離し可能時間T2が演算され、搬送速度V3が演算される。後続記録媒体P2の記録データ上、区間RBに対応する記録動作に時間がかかる場合は搬送速度V3が相対的に低速に演算されて駆動系の騒音や電力消費の増大を抑制することができる。逆に、後続記録媒体P2の記録データ上、区間RBに対応する記録動作が短時間の場合には、引き離しを優先して搬送速度V3が相対的に高速に設定されることになる。このように例えば2つの異なる記録データの記録動作で比較した場合、一方の搬送速度V3が相対的に低速に、他方の搬送速度V3が相対的に高速になる。
【0098】
ステップ216では、ステップS215で算出した搬送速度V3があらかじめROM202に記憶されている閾値(上限速度)V3max以下か否かが判定される。搬送速度V3が閾値V3maxよりも速いと判断された場合(ステップS216:NO)ステップS219に進む。一方、搬送速度V3が閾値V3max以下と判断された場合(ステップS216:YES)、ステップS217に進む。
【0099】
ステップS216で搬送速度V3が閾値V3max以下と判断された場合(ステップS216:YES)、図15(D)に示すように先行記録媒体P1の後端R1が排出ローラ22を通過した時、先行記録媒体P1と後続記録媒体P2と間隔はDb以上となる。すなわち、間隔Dbの引き離しが完了している。ステップS217ではRAM203に引き離し処理フラグFlg=1がセットされる。これにより引き離し動作の実行が予約される。ステップS218では、搬送速度V2としての閾値V2maxとステップS215で算出した搬送速度V3がRAM203に保存される。ステップS211では、重ね状態を維持して斜行矯正動作を実行することが決定される。
【0100】
ステップS216で搬送速度V3が閾値V3max以上と判断された場合(ステップS216:YES)は、搬送区間RBにおいて後続記録媒体P2の先端L2に対してDbだけ先行記録媒体P1の後端R2が先行していないと推定される。すなわち、引き離し動作によって先行記録媒体P1と後続記録媒体P2との引き離しが不可能であることを意味する。そのため、予め重ね状態を解除して、単独の状態での後続記録媒体の斜行矯正動作が決定される(ステップS219)。重ね状態での搬送を行わないことで、排出性が低下することを防止できる。搬送モータ205によって搬送ローラ5を駆動して先行記録媒体P1を搬送する。しかしながら、給送ローラ3は駆動しない。したがって、重ね状態は解除される。さらに、後続記録媒体P2の先端を、搬送ローラ5とピンチローラ6とのニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行い、その後、後続記録媒体Pの頭出しを行う。
【0101】
<引き離し動作の制御フロー>
図16は、図10のステップS17の引き離し動作の制御フローである。ステップS501でM(N-1)枚目の記録媒体Pの後端(先行記録媒体P1の後端R1)が搬送ローラ10を通過したか否かが判断される。通過していないと判断された場合(ステップS501:NO)ステップS501の処理を繰り返す。一方、通過したと判断された場合(ステップS501:YES)、ステップS502に進む。なお、通過したと判断された場合の搬送状態は図14(B)の状態に相当する。
【0102】
ステップS502では、RAM203から引き離し処理フラグFlgが読み出され、Flgが0か1かが判断される。Flg=0と判断された場合はステップS503に進み、Flg=1と判断された場合はステップS510に進む。ステップS503では、RAM203から搬送速度V2が読み出され、M(N-1)枚目の記録媒体Pが搬送速度V2で搬送されるように搬送ローラ20と排出ローラ22を回転させる。
【0103】
ステップS504では、M(N-1)枚目の記録媒体Pの後端(先行記録媒体P1の後端R1)が搬送ローラ20を通過したか否かが判断される。通過していないと判断された場合(ステップS504:NO)ステップS504の処理を繰り返す。一方、通過したと判断された場合(ステップS504:YES)、ステップS505に進む。なお、通過したと判断された場合の搬送状態は図14(C)の状態に相当する。
【0104】
ステップS505では、M(N)枚目の記録媒体P(後続記録媒体P2)の搬送に備えて、搬送ローラ20の回転速度を、搬送速度V1相当の回転速度に変更する。搬送ローラ5、10及び20は同期的に駆動される。ステップS506では、RAM203から搬送速度V3が読み出され、M(N-1)枚目の記録媒体P(先行記録媒体P1)の搬送速度が搬送速度V3に切り替えられる。M(N-1)枚目の記録媒体Pが搬送速度V3で搬送されるように排出ローラ22を回転させる。
【0105】
ステップS507では、M(N-1)枚目の記録媒体Pの後端(先行記録媒体P1の後端R1)が排出ローラ22を通過したか否かを判断する。通過していないと判断された場合(ステップS507:NO)、ステップS507の処理を繰り返す。一方、通過したと判断された場合(ステップS507:YES)、ステップS508に進む。なお、通過したと判断された場合の搬送状態は図14(D)に相当する。
【0106】
ステップS508では、引き離し動作が完了したと判断し、排出ローラ22の回転速度を、搬送速度V1相当の回転速度に変更して処理を終了する。
【0107】
一方、ステップS510では、RAM203から搬送速度V2maxが読み出され、M(N-1)枚目の記録媒体Pが搬送速度V2maxで搬送されるように搬送ローラ20と排出ローラ22を回転させる。ステップS511では、M(N)枚目の記録媒体Pの先端(後続記録媒体P2の先端L2)が搬送ローラ20から距離Da手前の位置に到達したか否かが判断される。搬送状態は図15(B)の状態に相当する。到達していないと判断された場合(ステップS511:NO)、ステップS511の処理を繰り返す。一方、到達したと判断された場合(ステップS511:YES)、ステップS512に進む。
【0108】
ステップS512では、搬送ローラ20及び排出ローラ22の回転速度を、搬送速度V1相当の回転速度に変更する。搬送ローラ5、10、20及び22は同期的に駆動される。ステップS513では、M(N-1)枚目の記録媒体Pの後端(先行記録媒体P1の後端R1)が搬送ローラ20を通過したか否かが判断される。通過していないと判断された場合(ステップS513:NO)ステップS513の処理を繰り返す。一方、通過したと判断された場合(ステップS513:YES)、ステップS514に進む。なお、通過したと判断された場合の搬送状態は図15(C)の状態に相当する。
【0109】
ステップS514では、RAM203から搬送速度V3が読み出され、M(N-1)枚目の記録媒体P(先行記録媒体P1)の搬送速度が搬送速度V3に切り替えられる。M(N-1)枚目の記録媒体Pが搬送速度V3で搬送されるように排出ローラ22を回転させる。その後、S507へ進む。
【0110】
以上により処理が終了する。なお、本実施形態では引き離し動作の際、先行記録媒体P1を搬送速度V2やV2maxの一定速度で連続的に搬送するようにしたが、例えば停止や加減速を含め平均速度がV2やV2maxとなるように制御してもよい。
【0111】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、重ね状態を解消させるように先行記録媒体を後続記録媒体から引き離す動作を行う際の、先行記録媒体の搬送速度を低減し、騒音や電力消費などの増加を抑制することができる。
【0112】
<他の実施形態>
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0113】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。したがって、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0114】
7 記録ヘッド、200 記録装置、201 MPU、C1~C6 搬送ユニット、P1 先行記録媒体、P2 後続記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
記録ヘッド7は記録媒体Pに対して画像を記録する。本実施形態では記録ヘッド7は、記録媒体Pにインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドである。プラテン8は記録媒体Pを下側から支持する。記録ヘッド7はキャリッジ1に搭載される。キャリッジ1は、モータ204を駆動源とした移動機構204aによって、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向(記録媒体Pの幅方向)に移動される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
<記録動作の流れ>
図3図9を参照して記録装置200の動作例について説明する。ここでは、2枚の記録媒体Pの各片面に画像を記録する動作を連続的に行う例について説明する。すなわち、1ジョブ内で2頁分の記録データがある場合を例に挙げて時系列で動作を説明する。ホストコンピュータ214から/F部213を介して記録データが送信されると、MPU201で記録データが処理された後、RAM203にデータが展開される。そして、展開されたデータに基づいてMPU201が記録動作を開始する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
図3のST3を参照する。先行記録媒体P1の斜行矯正動作が終了すると、搬送モータ205が駆動されることによって搬送ローラ5が回転を開始する。搬送ローラ5は例えば15inch/secで先行記録媒体P1を搬送する。先行記録媒体P1は記録ヘッド7と対向する位置に頭出しされる。頭出しとは先行記録媒体P1の最初の記録位置を、記録ヘッド7に対向させることである。頭出し動作は、先行記録媒体Pの先端L1がニップ部に突き当てられた状態から搬送ローラ5の回転量を制御することにより行われる。記録データに基づいて、記録ヘッド7からインクを吐出することによって、1頁目の記録データの記録動作が先行記録媒体P1に対して開始される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
一方で、ステップS14で、記録順序Nが最大記録順序Nmax以下でないと判断された場合(ステップS14:NO)、最終行の記録が終了したと判断され、ステップS1が実行される。ステップS1では、M(N-1)枚目の記録媒体Pが排出される。排出ローラ22及び搬送ローラ20、搬送ローラ10、搬送ローラ5を同一方向に回転することにより、M(N-1)枚目の記録媒体Pを排出部25に排出することができる。排出が終了すると処理を終了する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
図13のステップ205では、ステップS204で算出した搬送速度V2があらかじめROM202に記憶されている閾値(上限速度)V2max以下か否かが判断される。搬送速度の上限値を設定することで、駆動系の騒音や電力消費の増大を抑制することができる。搬送速度V2が閾値V2maxより速いと判断された場合(ステップS205:NO)、ステップS212に進む。一方、搬送速度V2が閾値V2max以下と判断された場合(ステップS205:YES)、ステップS206に進む。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
ステップ216では、ステップS215で算出した搬送速度V3があらかじめROM202に記憶されている閾値(上限速度)V3max以下か否かが判定される。搬送速度V3が閾値V3maxよりも速いと判断された場合(ステップS216:NO)ステップS219に進む。一方、搬送速度V3が閾値V3max以下と判断された場合(ステップS216:YES)、ステップS217に進む。
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正の内容】
図10
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図14
【補正方法】変更
【補正の内容】
図14