(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016373
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】対象設備の診断方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
G01B11/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118436
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】717007295
【氏名又は名称】株式会社Liberaware
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野平 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】新田 法生
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA04
2F065AA21
2F065AA49
2F065AA53
2F065BB05
2F065FF04
2F065FF61
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065MM23
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】点検対象の設備の経時変化の推移を診断することが可能な対象設備の診断方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】本開示による対象設備の診断方法は、対象設備を撮影した画像データを取得する画像取得処理と、画像データに基づいて、対象設備の3次元データを生成する3次元データ生成処理と、第1の前記画像データに基づく第1の前記3次元データと、第1の前記画像データの撮影時点から所定の期間後に撮影された第2の前記画像データに基づく第2の前記3次元データとの比較により、前記対象設備の変形量を算出する変形量算出処理と、複数回の前記変形量算出処理によって算出された第1の前記変形量と第2の前記変形量との比較により、経時変化の推移パターンを判定する判定処理と、を含むことを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象設備を撮影した画像データを取得する画像取得処理と、
前記画像データに基づいて、前記対象設備の3次元データを生成する3次元データ生成処理と、
第1の前記画像データに基づく第1の前記3次元データと、第1の前記画像データの撮影時点から所定の期間後に撮影された第2の前記画像データに基づく第2の前記3次元データとの比較により、前記対象設備の変形量を算出する変形量算出処理と、
複数回の前記変形量算出処理によって算出された第1の前記変形量と第2の前記変形量との比較により、経時変化の推移パターンを判定する判定処理と、を含む、対象設備の診断方法。
【請求項2】
前記判定処理は、変形なし、線形的変形、変形収束傾向、及び変形拡大傾向、の4つの前記推移パターンの中から何れか1つを選択する処理を含む、請求項1に記載の診断方法。
【請求項3】
前記変形量は、前記対象設備の奥行方向の変形量である、請求項1又は2に記載の診断方法。
【請求項4】
前記画像データは、前記対象設備の内壁を撮影した画像データである、請求項1又は2に記載の診断方法。
【請求項5】
前記画像データは、無人飛行体によって撮影された画像データである、請求項1又は2に記載の診断方法。
【請求項6】
前記3次元データ生成処理は、sfm処理を含む、請求項1又は2に記載の診断方法。
【請求項7】
前記画像データは、前記対象設備における基準点が撮影された画像データを含み、
前記3次元データは、前記基準点の座標データを含む、請求項1又は2に記載の診断方法。
【請求項8】
前記基準点は、前記対象設備の凸部、凹部、コーナー部である、請求項1又は2に記載の診断方法。
【請求項9】
前記判定処理による前記推移パターンの情報と、前記変位量に関する情報との組み合わせに基づいて、前記対象設備の補修の要否、または前記対象設備の稼働の可否を判定する、請求項1又は2に記載の診断方法。
【請求項10】
情報処理装置に、
対象設備を撮影した画像データを取得する画像取得処理と、
前記画像データに基づいて、前記対象設備の3次元データを生成する3次元データ生成処理と、
第1の前記画像データに基づく第1の前記3次元データと、第1の前記画像データの撮影時点から所定の期間後に撮影された第2の前記画像データに基づく第2の前記3次元データとの比較により、前記対象設備の変形量を算出する変形量算出処理と、
複数回の前記変形量算出処理によって算出された第1の前記変形量と第2の前記変形量との比較により、経時変化の推移パターンを判定する判定処理と、を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象設備の診断方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物等の各種設備を点検するに際して、対象設備を撮影した画像情報に基づいて、対象設備の損傷度合を確認する方法が知られている。例えば、特許文献1には、画像情報に基づいて、対象設備の表面に生じたクラックの大きさを検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の方法であっても、対象設備の損傷が進行し続けているのか、あるいは、損傷の進行が一時的なものなのか、といった詳細な経時変化の推移を診断することは考慮されていない。
【0005】
そこで、本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、点検対象の設備の経時変化の推移を診断することが可能な対象設備の診断方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、対象設備を撮影した画像データを取得する画像取得処理と、
前記画像データに基づいて、前記対象設備の3次元データを生成する3次元データ生成処理と、
第1の前記画像データに基づく第1の前記3次元データと、第1の前記画像データの撮影時点から所定の期間後に撮影された第2の前記画像データに基づく第2の前記3次元データとの比較により、前記対象設備の変形量を算出する変形量算出処理と、
複数回の前記変形量算出処理によって算出された第1の前記変形量と第2の前記変形量との比較により、経時変化の推移パターンを判定する判定処理と、を含む、対象設備の診断方法が提供される。
【0007】
また、本開示によれば、情報処理装置に、
対象設備を撮影した画像データを取得する画像取得処理と、
前記画像データに基づいて、前記対象設備の3次元データを生成する3次元データ生成処理と、
第1の前記画像データに基づく第1の前記3次元データと、第1の前記画像データの撮影時点から所定の期間後に撮影された第2の前記画像データに基づく第2の前記3次元データとの比較により、前記対象設備の変形量を算出する変形量算出処理と、
複数回の前記変形量算出処理によって算出された第1の前記変形量と第2の前記変形量との比較により、経時変化の推移パターンを判定する判定処理と、を実行させる、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、点検対象設備の経時変化の推移を診断することが可能な対象設備の診断方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る対象設備の診断方法が適用されるシステムの一例を示す概要図である。
【
図2】同実施形態に係る無人飛行体のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】同実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】同実施形態に係る診断方法における一連の制御に係るフローチャート図である。
【
図5】同実施形態に係る診断方法における対象設備の変形量に関するグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<概要>
図1は、本開示の一実施形態に係る対象設備の診断方法が適用されるユースケースの一例を示す概要図である。本実施形態に係る診断方法を実現する診断システム100は、飛行体1及び情報処理装置20を備える。本実施形態に係る無人飛行体(ドローン)1は、いわゆる複数の回転翼3により揚力や推力を得る回転翼機である。なお、本実施形態の診断方法において、画像を取得するために用いる装置は、無人飛行体に限定されず、任意の画像取得装置を用いることができる。
【0012】
図1に示すように、無人飛行体1は、対象設備の一例としての製鉄用設備S1の内部空間を飛行しながら画像データを取得する。無人飛行体1は、対象設備の外部空間を飛行しながら、当該対象設備の外部を撮影して画像データを取得することも可能である。例えば、無人飛行体1に設けられたカメラにより製鉄用設備S1の壁面W1を撮影して画像データを取得する。かかる無人飛行体1は、自律飛行をするものであってもよいし、製鉄用設備S1の内部または外部からユーザーが操縦することにより飛行を制御されるものであってもよい。
【0013】
対象設備は、例えば、製鉄所やガラス工場、石油精製設備等の各種原料や素材等の製造設備であり得る。また、対象設備は、火力発電所、水力発電所、原子力発電所等の発電所に係る設備や、上下水道、ガス、鉄道、道路、通信等の各種インフラに関する設備等であり得る。その他、対象設備は、特に限定されない。本実施形態では、対象設備の一例として、製鉄所に設けられる製鉄用設備S1として説明する。製鉄用設備S1は、製鉄所に設けられる各種設備であり得る。具体的には、製鉄用設備S1は、高炉、転炉、溶銑予備処理設備、脱ガス設備、電炉、鋳造、鍛造、圧延、焼鈍、めっき、塗装、スキンパス、熱処理等の処理を行う製鉄所に設けられる設備、およびコークス炉、脱硝設備、脱硫設備、集塵機、煙突、熱回収装置、ボイラーなど、製鉄所において製鉄に付随する設備等を含みうる。また、製鉄用設備S1の内部空間(すなわち環境)は、完全に閉鎖されている空間でもよいし、完全に閉鎖はされていないが、外部の環境と離隔する構造物により構成される空間であってもよい。
【0014】
図2は、本実施形態に係る無人飛行体1のハードウェア構成例を示す図である。
図2に示すように、本実施形態に係る無人飛行体1は、本体部2と、回転翼3と、モータ4と、カメラ及びセンサ5とを備える。また、無人飛行体1は、本体部2において、フライトコントローラ11、バッテリ14、ESC(Electric Speed Controller)15および送受信部16を備える。なお、
図2に示す無人飛行体1の構成は一例であり、
図2に示す本体部2とは異なる構成を有する回転翼機であっても、本発明の範疇に含まれうる。
【0015】
本体部2は、無人飛行体1を構成するフレーム等により形成される。本体部2を構成する素材は特に限定されず、例えば、炭素繊維樹脂、ガラス繊維樹脂、マグネシウム、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄鋼、チタンその他の材料であり得る。回転翼3はモータ4に取り付けられる。回転翼3は、モータ4の回転により自身が回転することで、無人飛行体1に揚力(推力)を発生させる。回転翼3とモータ4とは、推力発生部の一例である。なお、回転翼3は、本実施形態においては、前後左右の4箇所に設けられているが、本発明はかかる例に限定されない。無人飛行体1の構造、形状、装備およびサイズ等に応じて、回転翼3の設けられる数は適宜変更されうる。
【0016】
フライトコントローラ11は、例えば、中央演算処理装置(CPU)や、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルプロセッサなど、1つ以上のプロセッサを有することができる。フライトコントローラ11は、メモリ12を有しており、当該メモリ12にアクセス可能である。メモリ12は、1つ以上のステップを行うためにフライトコントローラ11が実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。フライトコントローラ11は、制御装置の一例である。
【0017】
メモリ12は、たとえば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラ及びセンサ5から取得したデータは、メモリ12に直接に伝達されかつ記憶されてもよい。たとえば、カメラ5で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。また、カメラ5で撮影した画像データは、必要に応じて操縦用端末17、情報処理装置20等に送受信部16を介して送信される。
【0018】
フライトコントローラ11は、無人飛行体1の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。たとえば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する無人飛行体1の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために、ESC15を経由して無人飛行体1の推進機構であるモータ4を制御する。モータ4により回転翼3が回転することで無人飛行体1の揚力を生じさせる。フライトコントローラ11は、モータ4の回転数(回転数は、所定時間あたりの回転数をも意味する)を制御して、回転翼3による推力を調整し得る。
【0019】
フライトコントローラ11は、1つ以上の外部のデバイス(たとえば、操縦用端末17、情報処理装置20)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部16と通信可能である。送受信部16は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。送受信部16は、フライトコントローラ11等の制御装置をインターネット網等のネットワークに接続するものであって、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信、LTE、Bluetooth(登録商標)やBLE(Blu etooth Low Energy)などの任意の通信方式のうちの1つ以上を利用することができる。
【0020】
送受信部16は、センサ5で取得したデータ、フライトコントローラ11が生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。カメラ及びセンサ5等により得られた情報は、送受信部16を介して、サーバ(情報処理装置20)、操縦用端末17等に出力されてもよい。
【0021】
操縦用端末17は、無人飛行体1の飛行の操縦を制御するための装置である。なお、無人飛行体1の飛行は、地上等にいるオペレータの操縦により制御されてもよいし、飛行経路情報やセンシングによる自律的な飛行プログラム(例えば、GCS(Ground Control Station))に基づく自動操縦または手動操縦により制御されてもよい。操縦用端末17は、例えば、送受信機(プロポ)、スマートフォン、タブレット等の端末等であってもよい。操縦用端末17は、フライトコントローラ11に対して、飛行制御指示情報を送出しうる。
【0022】
本実施の形態に係るセンサ5は、例えば、慣性センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、GPSセンサ、風センサ、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、高度センサ、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)等の近接センサ、またはカメラ以外のビジョン/イメージセンサ等を含み得る。また、センサ5は、フライトコントローラ11に搭載されるものであってもよいし、フライトコントローラ11の外部に設けられるものであってもよい。また、カメラ5が設けられる場合は、かかるカメラは、任意のカメラであってもよい。例えば、カメラ5は、一般的なカメラの他に、赤外線カメラ、ステレオカメラ等であってもよい。
【0023】
情報処理装置20は、無人飛行体1及び操縦用端末17と通信可能に設けられ、無人飛行体1が撮影した画像データを取得して、点検対象設備の診断を行うための端末である。なお、情報処理装置20は、必要に応じて無人飛行体1及び操縦用端末17とそれぞれ通信を行い、無人飛行体1の制御のための情報を送信してもよい。
【0024】
図3は、本実施形態に係る情報処理装置20の構成を示すブロック図である。図示のように、情報処理装置20は、制御部21を備える。情報処理装置20は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータや、スマートフォンやタブレットPC等の携帯端末であってもよい。
【0025】
プロセッサ21aは、制御部21の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御や、プログラムの実行に必要な処理等を行う演算装置である。このプロセッサ21aは、本実施の形態では例えばCPU(Central Processing Unit)であり、後述するストレージ21cに格納されてメモリ21bに展開されたプログラムを実行して各処理を行う。
【0026】
メモリ21bは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶装置、及びフラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶装置を備える。このメモリ21bは、プロセッサ21aの作業領域として使用される一方、制御部21の起動時に実行されるブートローダ、及び各種の設定情報等が格納される。
【0027】
ストレージ21cは、プログラムや各種の処理に用いられる情報等が格納されている。例えば、ストレージ21cには、無人飛行体の飛行状況や点検状況等を表示するためのプログラムが格納されていてもよい。また、ストレージ21cには、対象設備の内部又は外部を撮影した画像データに関する情報、画像データに基づいて生成した3次元データに関する情報、対象設備の変形量に関する情報、経時変化の推移パターンに関する情報、等が格納されてもよい。
【0028】
送受信部22は、制御部21をインターネット網等のネットワークに接続するものであって、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信、LTE、Bluetooth(登録商標)やBLE(Bluetooth Low Energy)といった通信インターフェースを具備するものであってもよい。また、送受信部22は、有線による通信をするための通信インターフェースを具備するものであってもよい。
【0029】
入出力部23は、入出力機器が接続されるインターフェースであって、本実施形態では、例えば表示装置が接続されてもよい。
【0030】
バス24は、接続したプロセッサ21a、メモリ21b、ストレージ21c、送受信部22及び入出力部23の間において、例えばアドレス信号、データ信号及び各種の制御信号を伝達する。
【0031】
本実施形態に係る情報処理装置20の制御部21は、画像取得部と、3次元データ生成部と、変形量算出部と、判定部として機能する。
【0032】
画像取得部は、対象設備の内部又は外部を撮影した画像データを取得する画像取得処理を実行する(S101)。具体的に、無人飛行体1のカメラ5で撮影された画像データが、送受信部16(及び必要に応じて操縦用端末17)を介して情報処理装置20に送信され、画像取得部は画像データを取得する。画像取得部は、画像データをストレージ21cに記憶するようにしてもよい。
【0033】
3次元データ生成部は、画像データに基づいて、対象設備の3次元データを生成する3次元データ生成処理を実行する(S102)。3次元データ生成処理は、例えば、SFM(Structure from Motion)処理を含むものであってもよいし、他の処理方法により3次元データをするようにしてもよい。3次元データ生成部は、複数の画像データを用いたSFM処理に基づいて、対象設備の内部または外部の3次元モデルを示すデータを生成することができる。SFM処理は、複数の特徴点であらわされる共通の対象物を複数のカメラ位置から撮影した複数の画像データを用いて、対象物の3次元形状を仮想データ上で生成し、対象物の3次元座標と、カメラ方向およびカメラ位置の情報とを取得することができる。3次元データ生成部は、生成した3次元データに関する情報をストレージ21cに記憶するようにしてもよい。
【0034】
変形量算出部は、第1の画像データに基づく第1の3次元データと、第1の画像データの撮影時点から所定の期間後に撮影された第2の画像データに基づく第2の3次元データとの比較により、対象設備の変形量を算出する変形量算出処理を実行する(S103)。例えば、第1の3次元データに基づく、対象設備の内面(又は外面)における特定の特徴点の3次元座標(x1、y1、z1)と、第2の3次元データに基づく、共通の特定座標系上の同一の特徴点の3次元座標(x2、y2、z2)とを比較(差を求める)ことで、当該特徴点の3次元の変形量(3次元の変形方向、変形距離)を算出することができる。変形量算出部は、算出した変形量に関するデータを、ストレージ21cに記憶するようにしてもよい。特定座標系は所謂ワールド座標系であってもよいし、ローカル座標系であってもよい。座標系は、原点と、原点を中心として互いに垂直に交わるx軸、y軸、z軸の方向を特定する。
【0035】
判定部は、複数回の変形量算出処理によって算出された第1の変形量と第2の変形量との比較により、経時変化の推移パターンを判定する判定処理と、を実行する(S104)。判定部は、例えば、ストレージ21cに格納された経時変化の推移パターンに関する情報を参照してもよい。判定処理は、「変形なし」、「線形的変形」、「変形収束傾向」、及び「変形拡大傾向」、の4つの前記推移パターンの中から何れか1つを選択する処理を含んでもよい。例えば、第1の変形量としての所定設備内の特徴点の第1変形距離と、第2の変形量としての当該特徴点の第2変形距離と、を比較する。なお、第2の変形量は、第1の変形量よりも時間的に後の期間の変形量であり、第2の変形量を算出する際の所定期間と、第1の変形量を算出する際の所定期間とは同一の長さ(時間)である。
【0036】
判定部は、第1変形距離及び第2変形距離が何れも0である場合には「変形なし」と判定する。判定部は、第1変形距離と第2変形距離の数値が同一、且つ、0よりも大きい値である場合には「線形的変形」、つまり一定の割合で変形が進行していると判定する。また、判定部は、第1変形距離よりも第2変形距離が小さい場合、「変形収束傾向」、つまり変形の進行度合が徐々に収束していると判定する。また、判定部は、第1変形距離よりも第2変形距離が大きい場合、「変形拡大傾向」、つまり変形の進行度合が徐々に拡大していると判定する。判定部は、判定結果に関するデータを、ストレージ21cに記憶するようにしてもよい。
【0037】
上記の通り、本実施形態の診断方法は、対象設備を撮影した画像データを取得する画像取得処理と、前記画像データに基づいて、前記対象設備の3次元データを生成する3次元データ生成処理と、第1の前記画像データに基づく第1の前記3次元データと、第1の前記画像データの撮影時点から所定の期間後に撮影された第2の前記画像データに基づく第2の前記3次元データとの比較により、前記対象設備の変形量を算出する変形量算出処理と、複数回の前記変形量算出処理によって算出された第1の前記変形量と第2の前記変形量との比較により、経時変化の推移パターンを判定する判定処理と、を含む。
【0038】
このような構成により、本実施形態の診断方法によれば、点検対象の設備の経時変化の推移を診断することが可能となる。例えば、
図5に示すT1、T2、T3のように、所定の期間ごとの複数回の変形量の測定結果(点検結果)を傾向データ曲線とし、この曲線を微分することで変位速度、さらに微分することで変位速度の増減情報を得ることができる。また、3次元データを用いた比較を行うため、1点での比較のみならず、面的な変形量の算出も可能である。その結果、対象設備の変形の性質や規模を見極めることができるので、その設備の補修の要否、正確な補修範囲または、稼働可否に関する判断等を行うことができ、効率的な設備保全が可能となる。
【0039】
本実施形態の診断方法にあっては、判定処理が、変形なし(変位速度なし)、線形的変形(変位速度が定一定数)、変形収束傾向(変位速度が減少傾向)、及び変形拡大傾向(変位速度が増加傾向)、の4つの前記推移パターンの中から何れか1つを選択する処理を含むことにより、ユーザが対象設備の変形の性質をより容易に把握することができる。
【0040】
また、本実施形態の診断方法にあっては、判定処理による推移パターンの情報(「変形なし」、「線形的変形」、「変形収束傾向」、及び「変形拡大傾向」)と、変位量に関する情報(第1の変位量、第2の変形量、それらの合計値等)と、の組み合わせに基づいて、設備の補修の要否を自動的に判定するようにしてもよい。これによれば、高い精度で、設備の補修の要否を判定することができる。具体的には、例えば、
図5の場合、T3の時点では、「変形拡大傾向」、「線形的変形」、「変形収束傾向」の何れの場合においても、修理判定基準(閾値)以下であるため、「補修が不要」と判定する。そして、T4の時点では、「変形拡大傾向」のみが、修理判定基準(閾値)を超えているため、「補修が必要」と判定し、他の「線形的変形」、「変形収束傾向」については「補修が不要」と判定することができる。なお、推移パターンが「変形なし」の場合には、変形量が0となり、「補修が不要」と判定する。また、この補修要否の判定基準は適宜設定可能である。例えば、
図5におけるT3の時点において、修理判定基準(閾値)を超えていないものの、「変形拡大傾向」であることもって、「補修が必要」と判定してもよい。このように、推移パターンの情報だけではなく、変位量に関する情報にも応じて補修の要否を判定することで、設備の補修の要否を高い精度で判定し、安全性を高めつつも、無駄な補修を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態の診断方法にあっては、判定処理による推移パターンの情報(「変形なし」、「線形的変形」、「変形収束傾向」、及び「変形拡大傾向」)と、変位量に関する情報(第1の変位量、第2の変形量、それらの合計値)と、の組み合わせに基づいて、設備の稼働の可否を自動的に判定するようにしてもよい。例えば、「変形なし」(変形量が0)の場合、設備の稼働が可能と判定する。また、「線形的変形」、で、変形量が所定の閾値以下の場合、設備の稼働が可能と判定し、閾値を超える場合には稼働が不可能と判定する。また、「変形収束傾向」の場合も同様に、変形量が所定の閾値以下の場合、設備の稼働が可能と判定し、閾値を超える場合には稼働が不可能と判定する。また、「変形拡大傾向」の場合も同様に、変形量が所定の閾値以下の場合、設備の稼働が可能と判定し、閾値を超える場合には稼働が不可能と判定する。また、この補修要否の判定基準は適宜設定可能である。例えば、変形量が閾値以下の場合でも、「変形拡大傾向」である場合には設備の稼働が不可能と判定するようにしてもよい。このように、推移パターンの情報だけではなく、変位量に関する情報にも応じて補修の要否を判定することで、設備の稼働の可否を高い精度で判定し、安全性を高めつつも、設備を有効に稼働させることができる。
【0042】
本実施形態の診断方法にあっては、変形量が、対象設備の奥行方向の変形量であることにより、平面的な損傷ではなく、損傷の深さ(奥行方向長さ)や、奥行方向の変形の推移を把握することができる。その結果、設備の補修の要否、または、稼働可否に関する判断等をより高い精度で行うことができる。
【0043】
本実施形態の診断方法にあっては、画像データが、対象設備の内壁を撮影した画像データであることにより、設備の外面ではなく内面の損傷や変形の推移を把握することができ、設備の補修の要否、または、稼働可否に関する判断等をさらに高い精度で行うことができる。
【0044】
本実施形態の診断方法にあっては、画像データが、無人飛行体によって撮影された画像データであることにより、空間の大きさや高さ、内部雰囲気等の制限により人が入り込めない場所、撮影できない位置であっても、画像データを取得して変形の推移を把握することができる。
【0045】
本実施形態の診断方法にあっては、3次元データ生成処理が、SfM処理を含むことにより、他の方法に比べて、効率的に、高い精度で画像データから3次元データを生成することができる。
【0046】
本実施形態の診断方法にあっては、画像データが、対象設備における基準点が撮影された画像データを含み、3次元データは、基準点の座標データを含むことが好ましい。これによれば、画像データに含まれる基準点の座標を参照して、高い精度の3次元データを生成することができる。
【0047】
本実施形態の診断方法にあっては、基準点が、対象設備の凸部、凹部、コーナー部であることが好ましい。これによれば、基準点を画像データから判別し易くなり、3次元データを生成する際の精度をより高めることができる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0049】
本明細書において説明した装置(操縦用端末17、情報処理装置20、無人飛行体1)は、単独の装置として実現されてもよく、一部または全部がネットワークで接続された複数の装置(例えばクラウドサーバ)等により実現されてもよい。例えば、情報処理装置20の制御部11の一部は、互いにネットワークで接続された異なるサーバにより実現されてもよい。
【0050】
本明細書において説明した装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。本実施形態に係る情報処理装置20の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、PC等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0051】
また、本明細書においてフローチャート図を用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0052】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0053】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(項目1)
対象設備を撮影した画像データを取得する画像取得処理と、
前記画像データに基づいて、前記対象設備の3次元データを生成する3次元データ生成処理と、
第1の前記画像データに基づく第1の前記3次元データと、第1の前記画像データの撮影時点から所定の期間後に撮影された第2の前記画像データに基づく第2の前記3次元データとの比較により、前記対象設備の変形量を算出する変形量算出処理と、
複数回の前記変形量算出処理によって算出された第1の前記変形量と第2の前記変形量との比較により、経時変化の推移パターンを判定する判定処理と、を含む、対象設備の診断方法。
(項目2)
前記判定処理は、変形なし、線形的変形、変形収束傾向、及び変形拡大傾向、の4つの前記推移パターンの中から何れか1つを選択する処理を含む、項目1に記載の診断方法。
(項目3)
前記変形量は、前記対象設備の奥行方向の変形量である、項目1又は2に記載の診断方法。
(項目4)
前記画像データは、前記対象設備の内壁を撮影した画像データである、項目1~3の何れかに記載の診断方法。
(項目5)
前記画像データは、無人飛行体によって撮影された画像データである、項目1~4の何れかに記載の診断方法。
(項目6)
前記3次元データ生成処理は、sfm処理を含む、項目1~5の何れかに記載の診断方法。
(項目7)
前記画像データは、前記対象設備における基準点が撮影された画像データを含み、
前記3次元データは、前記基準点の座標データを含む、項目1~6の何れかに記載の診断方法。
(項目8)
前記基準点は、前記対象設備の凸部、凹部、コーナー部である、項目1~7の何れかに記載の診断方法。
(項目9)
前記判定処理による前記推移パターンの情報と、前記変位量に関する情報との組み合わせに基づいて、前記対象設備の補修の要否、または前記対象設備の稼働の可否を判定する、請求項1~8の何れかに記載の診断方法。
(項目10)
情報処理装置に、
対象設備を撮影した画像データを取得する画像取得処理と、
前記画像データに基づいて、前記対象設備の3次元データを生成する3次元データ生成処理と、
第1の前記画像データに基づく第1の前記3次元データと、第1の前記画像データの撮影時点から所定の期間後に撮影された第2の前記画像データに基づく第2の前記3次元データとの比較により、前記対象設備の変形量を算出する変形量算出処理と、
複数回の前記変形量算出処理によって算出された第1の前記変形量と第2の前記変形量との比較により、経時変化の推移パターンを判定する判定処理と、を実行させる、プログラム。
【符号の説明】
【0054】
1 試験評価システム
10 サーバ
20 ユーザ端末
101 取得部
103 推奨範囲提示部
104 推定部
105 出力部
106 試験/推定DB