(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163740
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20241115BHJP
F16H 59/02 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H59/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079594
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺井 晃一郎
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA02
3J552MA06
3J552MA17
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA18
3J552PA54
3J552RA24
3J552SB02
3J552TB02
3J552TB17
3J552VA47W
3J552VA70W
3J552VA76W
3J552VE03W
(57)【要約】
【課題】変速モードの切り替えを適切に行う。
【解決手段】車両は、制御部と、自動変速モードから手動変速モードへの切り替え操作を受け付ける第1操作部と、手動変速モードから自動変速モードへの切り替え操作を受け付ける第2操作部と、を備え、制御部は、第1操作部への操作を受け付けてから、第2操作部への操作を受け付けることなく、走行モードに対応した切替条件を満たすと、手動変速モードを自動変速モードに切り替えることと、第1操作部への操作および第2操作部への操作に基づいて走行モードに対応した切替条件を更新することと、第1走行モードの開始時において、第1走行モードが初期条件を満たし、第2走行モードが初期条件を満たしていないと、第1走行モードに対応した切替条件として、第2走行モードに対応した切替条件と第2初期値との差を第1初期値に加算した値を設定する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速モードおよび走行モードを制御する制御部と、
自動的に変速を実行する自動変速モードから運転者の操作に応じて変速を実行する手動変速モードへの切り替え操作を受け付ける第1操作部と、
前記手動変速モードから前記自動変速モードへの切り替え操作を受け付ける第2操作部と、
を備え、
前記制御部は、
プロセッサと、
前記プロセッサに接続されたメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記第1操作部への操作に応じて前記自動変速モードを前記手動変速モードに切り替えることと、
前記第2操作部への操作に応じて前記手動変速モードを前記自動変速モードに切り替えることと、
前記第1操作部への操作を受け付けてから、前記第2操作部への操作を受け付けることなく、前記走行モードに対応した切替条件を満たすと、前記手動変速モードを前記自動変速モードに切り替えることと、
前記第1操作部への操作および前記第2操作部への操作に基づいて、前記走行モードに対応した切替条件を更新することと、
第1走行モードの開始時において、第1走行モードが初期条件を満たし、第2走行モードが初期条件を満たすと、前記第1走行モードに対応した切替条件として第1初期値を設定することと、
第1走行モードの開始時において、第1走行モードが初期条件を満たし、第2走行モードが初期条件を満たしていないと、前記第1走行モードに対応した切替条件として、前記第2走行モードに対応した切替条件と第2初期値との差を前記第1初期値に加算した値を設定することと、
を含む処理を実行する、車両。
【請求項2】
前記第1走行モードと前記第2走行モードとは、アクセルの入力に対する駆動力の増加態様が異なる、請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される自動変速機には、自動で変速を実行する自動変速モードと、運転者の操作によって変速を実行する手動変速モードを有するものがある。また、このような自動変速機には、例えば、特許文献1のように、手動変速モードに切り替えた後、所定の距離に到達した場合に、手動変速モードから自動変速モードに復帰する機能を備えているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、手動変速モードに切り替えた後、自動変速モードに自動的に復帰する機能を有する車両において、自動変速モードに復帰する切替条件を調整する技術が検討されている。しかし、複数の走行モードを有する車両においても共通の切替条件を用いると、走行モードの変化に対して切替条件が適応せず、運転者の快適な走行が損なわれるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、変速モードの切り替えを適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る車両は、
変速モードおよび走行モードを制御する制御部と、
自動的に変速を実行する自動変速モードから運転者の操作に応じて変速を実行する手動変速モードへの切り替え操作を受け付ける第1操作部と、
前記手動変速モードから前記自動変速モードへの切り替え操作を受け付ける第2操作部と、
を備え、
前記制御部は、
プロセッサと、
前記プロセッサに接続されたメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記第1操作部への操作に応じて前記自動変速モードを前記手動変速モードに切り替えることと、
前記第2操作部への操作に応じて前記手動変速モードを前記自動変速モードに切り替えることと、
前記第1操作部への操作を受け付けてから、前記第2操作部への操作を受け付けることなく、前記走行モードに対応した切替条件を満たすと、前記手動変速モードを前記自動変速モードに切り替えることと、
前記第1操作部への操作および前記第2操作部への操作に基づいて、前記走行モードに対応した切替条件を更新することと、
第1走行モードの開始時において、第1走行モードが初期条件を満たし、第2走行モードが初期条件を満たすと、前記第1走行モードに対応した切替条件として第1初期値を設定することと、
第1走行モードの開始時において、第1走行モードが初期条件を満たし、第2走行モードが初期条件を満たしていないと、前記第1走行モードに対応した切替条件として、前記第2走行モードに対応した切替条件と第2初期値との差を前記第1初期値に加算した値を設定することと、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、変速モードの切り替えを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る車両を示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る制御部による変速モード切替処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の変形例に係る制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の変形例に係る制御部による変速モード切替処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る車両を示す概略図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る制御部による変速モード切替処理を示す第1のフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る制御部による変速モード切替処理を示す第2のフローチャートである。
【
図10】
図10は、第2の実施形態の変形例に係る制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態の変形例に係る制御部による変速モード切替処理を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第3の実施形態の変形例に係る制御部による変速モード切替処理を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第4の実施形態に係る車両を示す概略図である。
【
図14】
図14は、第4の実施形態に係る制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、第4の実施形態の変形例に係る制御部による変速モード切替処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る車両1を示す概略図である。車両1は、エンジン100と、駆動輪110と、ドライブシャフト120と、ステアリングホイール130と、自動変速機140と、パドルスイッチ150と、シフトレバー160と、制御部170と、を備える。
【0011】
エンジン100は、車両1の駆動源である。エンジン100の動力は、自動変速機140およびドライブシャフト120を介して駆動輪110に伝達される。また、運転者は、ステアリングホイール130を通じて車両1を操舵する。
【0012】
自動変速機140は、制御部170からの制御指令に基づいて、変速レンジを切り替え、ドライブシャフト120の回転数およびトルクを制御する。自動変速機140としては、例えば、無段変速装置、または、プラネタリギヤ式ステップAT等の自動変速機を用いることができる。
【0013】
自動変速機140は、自動変速モード、手動変速モードに相当するマニュアルモード、一時的手動変速モードに相当するテンポラリマニュアルモードの3つの変速モードを有する。自動変速モードは、所定の変速特性に従って自動的に変速を実行する変速モードである。マニュアルモードは、運転者の操作に応じて変速を実行する変速モードである。テンポラリマニュアルモードは、一時的に、マニュアルモード同様、運転者の操作に応じて変速を実行する変速モードである。
【0014】
パドルスイッチ150は、ステアリングホイール130における運転席と対向する側の反対側に設けられる。パドルスイッチ150は、運転者がステアリングホイール130を把持した状態で、運転者の指によって操作できる位置に設けられる。パドルスイッチ150は、変速に関する運転者の操作を受け付ける。
【0015】
また、パドルスイッチ150は、マイナスパドルスイッチ150aと、プラスパドルスイッチ150bを含む。マイナスパドルスイッチ150aは、ステアリングホイール130の中央左側にあり、プラスパドルスイッチ150bは、ステアリングホイール130の中央右側にある。運転者は、マイナスパドルスイッチ150aまたはプラスパドルスイッチ150bのいずれか一方を操作することで、変速比を変更することができる。例えば、運転者がマイナスパドルスイッチ150aを操作すると、変速比は、所定の変速比にダウンシフトされ、運転者がプラスパドルスイッチ150bを操作すると、変速比は、所定の変速比にアップシフトされる。
【0016】
シフトレバー160は、運転席近傍に設けられ、自動変速機140の変速レンジを切り替えるための運転者の操作を受け付ける。シフトレバー160は、パーキングレンジ(以下、「Pレンジ」という。)、後進レンジ(以下、「Rレンジ」という。)、ニュートラルレンジ(以下、「Nレンジ」という。)、前進レンジ(以下、「Dレンジ」という。)、マニュアルレンジ(以下、「Mレンジ」という。)を有する。Pレンジは、車両1を駐車する場合に用いられる。Rレンジは、車両1の後進時に用いられる。Nレンジは、駆動輪110に駆動力が伝達するのを切り離すときに用いられる。Dレンジは、車両1の前進時に用いられる。Mレンジは、シフトアップダウンを手動で行うときに用いられる。
【0017】
また、シフトレバー160は、アップシフトレンジ(M(+)レンジ)と、ダウンシフトレンジ(M(-)レンジ)を有する。変速モードがマニュアルモードの場合に、運転者が、シフトレバー160をアップシフトレンジになるように操作することで変速比がアップシフトされ、ダウンシフトレンジになるように操作することで変速比がダウンシフトされる。
【0018】
自動変速機140は、運転者による、パドルスイッチ150またはシフトレバー160の操作に応じて、上記の3つの変速モードを切り替えることができる。例えば、運転者は、シフトレバー160をDレンジからMレンジになるようになるように操作することで、変速モードを自動変速モードからマニュアルモードに切り替えることができる。また、例えば、運転者は、シフトレバー160を、MレンジからDレンジになるようになるように操作することで、変速モードをマニュアルモードから自動変速モードに切り替えることができる。
【0019】
また、運転者は、シフトレバー160がDレンジに操作されている状態で、パドルスイッチ150を操作することで、自動変速モードからテンポラリマニュアルモードに切り替えることができる。以下、シフトレバー160がDレンジに操作されている状態で、パドルスイッチ150を操作することをパドル操作と言う場合がある。このように、パドルスイッチ150は、自動変速モードからテンポラリマニュアルモードへの切り替え操作を受け付ける第1操作部として機能する。
【0020】
また、運転者は、テンポラリマニュアルモードにおいて、まずシフトレバー160をDレンジからMレンジになるように操作し、その後、シフトレバー160をMレンジからDレンジに戻す操作を行うことで、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替えることができる。以下、シフトレバー160をDレンジからMレンジになるように操作し、その後、シフトレバー160をMレンジからDレンジに戻す操作を復帰操作と言う場合がある。このように、シフトレバー160は、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードへの切り替え操作を受け付ける第2操作部として機能する。また、自動変速機140は、後述するように、所定の切替条件が満たされると、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動的に切り替わる。
【0021】
制御部170は、自動変速機140の変速モードおよび変速比を制御する。
図1に示すように、制御部170は、プロセッサ172と、プロセッサ172に接続されたメモリ174とを有する。
【0022】
プロセッサ172は、コンピュータに搭載される演算処理装置である。プロセッサ172は、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成されるが、その他のマイクロプロセッサで構成されてもよい。また、プロセッサ172は、1つまたは複数のプロセッサで構成されてもよい。プロセッサ172は、メモリ174または他の記憶媒体に記憶されているプログラムを実行することにより、後述する各種の処理を実行することができる。
【0023】
メモリ174は、プログラムおよびその他の各種データを記憶する記憶媒体である。メモリ174は、例えば、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含む。ROMは、プロセッサ172が使用するプログラム、およびプログラムを動作させるためのデータ等を記憶する不揮発性メモリである。RAMは、プロセッサ172により実行される処理に用いられる変数、演算パラメータ、演算結果等のデータを一時記憶する揮発性メモリである。ROMに記憶されたプログラムは、RAMに読み出され、プロセッサ172により実行される。
【0024】
上記のように、車両1では、運転者のパドル操作に応じて、変速モードが自動変速モードからテンポラリマニュアルモードへ切り替わり、運転者の復帰操作に応じて、変速モードがテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わる。このような車両1において、パドル操作を受け付けてから所定の切替条件を満たすまでに復帰操作を受け付けなかったら、変速モードはテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動的に切り替わる。
【0025】
例えば、切替条件として、テンポラリマニュアルモードに切り替わってからの経過時間が所定の切替時間以上となることや、テンポラリマニュアルモードに切り替わってからの走行距離が所定の切替距離以上となることが考えられる。しかし、運転者によって所望する経過時間や走行距離と、変速度合が異なるため、切替時間や切替距離のみでは、運転者が満足する切替条件とならないおそれがある。そこで、本実施形態では、変速そのものを切替条件とする。
【0026】
図2は、第1の実施形態に係る制御部170の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、制御部170は、プログラムが実行されることで動作する機能部として、パドル操作検出部200と、変速比検出部202と、変速比変更部204と、変速モード切替部206と、変化情報算出部208と、切替条件更新部210と、テーブル記憶部212とを含む。
【0027】
パドル操作検出部200は、運転者によるマイナスパドルスイッチ150aまたはプラスパドルスイッチ150bへのパドル操作を検出する。
【0028】
変速比検出部202は、例えば、自動変速機140の回転数に基づいて、その時点の変速比を検出する。変速比検出部202は、検出した変速比をメモリ174に記憶する。
【0029】
変速比変更部204は、目標とすべき変更後の変速比を導出し、自動変速機140に変速比の変更指示を行う。例えば、変速モードが自動変速モードである場合、変速比変更部204は、メモリ174に予め記憶された変速マップを参照して、現在の走行における最適な変速比を導出する。変速比変更部204は、その時点の変速比と最適な変速比とが異なるか否か判定し、その時点の変速比と最適な変速比とが異なる場合、自動変速機140に最適な変速比への変更指示を行う。
【0030】
また、変速モードがマニュアルモードもしくはテンポラリマニュアルモードである場合、変速比変更部204は、運転者によるパドルスイッチ150やシフトレバー160の操作に応じて、予め定められた変速比にアップシフトもしくはダウンシフトするように自動変速機140に変速比の変更指示を行う。
【0031】
変速モード切替部206は、パドルスイッチ150またはシフトレバー160に対する運転者の操作に基づいて、変速モードを切り替える。例えば、変速モード切替部206は、運転者がシフトレバー160をDレンジになるように操作すると、自動変速モードに切り替える。また、変速モード切替部206は、運転者がシフトレバー160をMレンジになるように操作すると、マニュアルモードに切り替える。また、変速モード切替部206は、現在の変速モードが自動変速モードである場合に、運転者によりパドル操作が行われると、テンポラリマニュアルモードに切り替える。また、変速モード切替部206は、現在の変速モードがテンポラリマニュアルモードである場合に、運転者がシフトレバー160により復帰操作を行うと、自動変速モードに切り替える。
【0032】
また、変速モード切替部206は、運転者による復帰操作が行われていない状態で、所定の切替条件が満たされると、変速モードをテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替える。ここでは、切替条件として、例えば、変速比変化値が所定の変速比切替値以上となることを挙げる。ここで、変速比変化値は、運転者によるパドル操作によって自動変速モードからテンポラリマニュアルモードに切り替わったときの変速比(以下、「第1変速比」という。)と、その後に変化した変速比との差である。変速モード切替部206は、変速比変化値が変速比切替値以上であるか否かを判定し、変速比切替値以上であると判定した場合に、変速モードをテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替える。
【0033】
変化情報算出部208は、運転者のパドル操作により自動変速モードからテンポラリマニュアルモードに切り替わった後に検出された変速比を随時取得し、取得した変速比と第1変速比との差である変速比変化値を随時算出する。また、変化情報算出部208は、運転者の復帰操作により、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わった場合、そのとき算出した変速比変化値を次回の変速比切替値とするために取得する。したがって、次回の変速比切替値は、第1変速比と、復帰操作によりテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わったときの変速比(以下、「第2変速比」という。)との差となる。
【0034】
運転者は、テンポラリマニュアルモードで運転中に、パドル操作することによって、変速比を運転者が所望する変速比に変更する。そして、運転者は、変速比が所望する変速比に到達した後に、自動的に変速モードが切り替わらない場合、自ら復帰操作をすることによって変速モードをテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替えることができる。換言すると、運転者が自ら操作をして変速モードの切り替えを行ったときの変速比は、運転者が所望する変速比であるということになる。ここでは、運転者が所望する変速比の変化態様である変速比変化値を取得し、新たな変速比切替値とする。
【0035】
切替条件更新部210は、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替わる際の切替条件としての変速比切替値を、変化情報算出部208により取得された変速比変化値に更新する。こうして、次回のテンポラリマニュアルモードにおいて、変速モード切替部206は、更新された変速比切替値に基づいて自動変速モードに切り替えることができる。
【0036】
また、切替条件更新部210の切替条件の更新態様は、上記の例に限定されない。例えば、切替条件更新部210は、直近に算出された複数回の変速比変化値の平均値を算出し、変速比切替値として更新してもよい。この場合、切替条件更新部210は、記憶された変速比変化値のうち、新しく記憶された変速比変化値が優先されるように重み付けをしてもよい。これにより、過去の複数回の変速比変化値の平均値が算出されるため、切替条件更新部210は、切替条件を、運転者が所望するより適切な変速比変化値に更新することができる。
【0037】
また、切替条件更新部210は、直近の算出された複数回の変速比変化値を、先入れ先出し(FIFO)し、その平均値で更新してもよい。また、切替条件更新部210は、算出された変速比変化値が一定値未満である場合、異常値と判定し、切替条件の更新に含まれないように除外してもよい。
【0038】
テーブル記憶部212は、後述する切替条件テーブルなどの各種の制御情報をメモリ174に記憶する。なお、切替条件テーブルでは、相異なる複数の第1変速比毎に、切替条件更新部210によって更新された変速比切替値を対応付けることができる。
【0039】
図3は、本実施形態に係る制御部170による変速モード切替処理を示すフローチャートである。かかるフローチャートは、所定の割込み周期毎に実行される。
【0040】
図3に示すように、まず、パドル操作検出部200は、パドルスイッチ150に対する運転者の操作に基づいて、運転者がパドル操作をしたか否かを検出する(S100)。例えば、運転者がパドル操作すると、パドルスイッチ150から信号が送信され、パドル操作検出部200は、その信号を検出する。パドル操作検出部200がパドル操作を検出しない場合(S100におけるNO)、変速モード切替処理を終了する。
【0041】
パドル操作検出部200がパドル操作を検出した場合(S100におけるYES)、変速モード切替部206は、現在の変速モードがマニュアルモードであるかを判定する(S102)。現在の変速モードがマニュアルモードである場合(S102におけるYES)、変速モード切替処理を終了する。また、現在の変速モードがマニュアルモードではない場合(S102におけるNO)、変速モード切替部206は、現在の変速モードがテンポラリマニュアルモードであるかを判定する(S104)。
【0042】
現在の変速モードがテンポラリマニュアルモードではない場合(S104におけるNO)、つまり、現在の変速モードが自動変速モードである場合、変速モード切替部206は、自動変速モードからテンポラリマニュアルモードに変速モードを切り替える(S106)。その後、変速比検出部202は、自動変速機140の回転数等に基づいて、現在の変速比(第1変速比)を検出し、メモリ174に記憶する(S108)。
【0043】
現在の変速比を記憶した(S108)後、もしくは、現在の変速モードがテンポラリマニュアルモードである場合(ステップS104のYES)、変速比変更部204は、運転者によるパドル操作に基づいて、自動変速機140に変速比の変更指示を行う(S110)。具体的に、変速比変更部204は、運転者がマイナスパドルスイッチ150aを操作した場合、変速比をダウンシフトするように自動変速機140に変速比の変更指示を行い、運転者がプラスパドルスイッチ150bを操作した場合、変速比をアップシフトするように自動変速機140に変速比の変更指示を行う。
【0044】
変速比を変更した後、変化情報算出部208は、ステップS110で変更した後の実際の変速比を検出し、ステップS108で記憶された第1変速比と、ステップS110で変更した後の実際の変速比との差である変速比変化値を算出する(S112)。
【0045】
続いて、変速モード切替部206は、ステップS112で算出された変速比変化値が、変速比切替値以上であるかを判定する(S114)。変速比変化値が変速比切替値未満であると判定された場合(S114におけるNO)、パドル操作検出部200は、パドルスイッチ150に対する運転者の操作に基づいて、運転者のパドル操作を検出したかを判定する(S116)。
【0046】
パドル操作が検出されたと判定された場合(S116におけるYES)、ステップS110からの処理が繰り返される。また、パドル操作が検出されないと判定された場合(S116におけるNO)、変速モード切替部206は、シフトレバー160に対する運転者の操作に基づいて、復帰操作がされたか否かを判定する(S118)。
【0047】
復帰操作がされなかった場合(S118におけるNO)、ステップS112からの処理が繰り返される。復帰操作がされた場合(S118におけるYES)、切替条件更新部210は、変速比切替値を、ステップS112で算出された、復帰操作がされた時点の変速比変化値に更新する(S120)。なお、テーブル記憶部212に記憶されている切替条件テーブルでは、第1変速比毎に変速比切替値が対応付けられている。したがって、切替条件更新部210は、切替条件テーブルにおいて、第1変速比毎に、切替条件更新部210が更新した変速比切替値を更新する。
【0048】
変速比切替値が更新された(S120)後、もしくは、変速比変化値が変速比切替値以上であった場合(S114におけるYES)、変速モード切替部206は、変速モードをテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替え(S122)、変速モード切替処理を終了する。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る車両1によれば、運転者が自らの操作によってテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替えた際、第1変速比と第2変速比の差である変速比変化値を取得する。そして、車両1は、取得した変速比変化値を、切替条件としての変速比切替値として更新することで、次回以降、運転者が所望する変速比に達したか否かを判定することができる。これにより、車両1は、変速比変化値が変速比切替値に達した場合に、迅速に自動変速モードに切り替えることができ、変速モードの切り替えに係る運転者の煩わしさを低減させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る車両1によれば、第1変速比毎に、変速比切替値を切替条件として更新することにより、変速比毎の特性に合った変速比切替値を更新することができる。そして、車両1は、変速比の特性に合わせて変速比切替値が更新されることにより、運転者が所望する変速比を適切に判定することができ、変速モードの切り替えに係る運転者の煩わしさをより確実に低減させることができる。
【0051】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態では、切替条件として、テンポラリマニュアルモードに切り替わってからの変速比変化値が変速比切替値以上であることを挙げた。変形例では、切替条件として、所定のタイミングからの経過時間が切替時間以上であることを挙げる。
【0052】
図4は、第1の実施形態の変形例に係る制御部170の機能構成の一例を示すブロック図である。変形例に係る制御部170は、上記第1の実施形態に係る制御部170の構成要素であるパドル操作検出部200と、変速比検出部202と、変速比変更部204と、変速モード切替部206と、変化情報算出部208と、切替条件更新部210と、テーブル記憶部212に加えて、単位変化値判定部214とタイマ計時部216とをさらに含む。なお、かかる変形例において、第1の実施形態と同一の機能部については第1の実施形態で既に説明しているので、その詳細な説明を省略する。
【0053】
当該変形例において、変化情報算出部208は、変速比検出部202が検出した変速比の単位時間あたりの変化値である単位変化値を随時算出する。
【0054】
単位変化値判定部214は、変化情報算出部208が算出した単位変化値が所定値以下であるか否かを判定する。
【0055】
タイマ計時部216は、所定のタイミングからの時間を計時する。所定のタイミングは、例えば、単位変化値判定部214によって単位変化値が所定値以下になったと判定されたタイミングである。したがって、タイマ計時部216は、パドルスイッチ150に対する運転者の操作後、単位変化値が所定値以下となって、変速比の変化が安定してからの経過時間を計時する。
【0056】
変速モード切替部206は、例えば、タイマ計時部216が計時した経過時間が、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替える切替条件としての切替時間以上となったか否かを判定する。そして、変速モード切替部206は、経過時間が、切替時間以上となると、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替える。
【0057】
また、タイマ計時部216は、シフトレバー160に対する運転者の操作により、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わった場合、そのときの経過時間を次回の切替時間として取得する。したがって、次回の切替時間は、パドルスイッチ150に対する運転者の操作後、単位変化値が所定値以下となってから、シフトレバー160に対する運転者の操作により、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わるまでの経過時間となる。
【0058】
切替条件更新部210は、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替わる際の切替条件としての切替時間を、復帰操作時にタイマ計時部216により取得された経過時間に更新する。こうして、次回のテンポラリマニュアルモードにおいて、変速モード切替部206は、更新された切替時間に基づいて自動変速モードに切り替えることができる。
【0059】
図5は、第1の実施形態の変形例に係る制御部170による変速モード切替処理を示すフローチャートである。かかるフローチャートは、所定の割込み周期毎に実行される。
【0060】
図5に示すように、まず、パドル操作検出部200は、パドルスイッチ150に対する運転者の操作に基づいて、運転者がパドル操作をしたか否かを検出する(S200)。パドル操作検出部200がパドル操作を検出しない場合(S200におけるNO)、変速モード切替処理を終了する。
【0061】
パドル操作検出部200がパドル操作を検出した場合(S200におけるYES)、変速モード切替部206は、現在の変速モードがマニュアルモードであるかを判定する(S202)。現在の変速モードがマニュアルモードである場合(S202におけるYES)、変速モード切替処理を終了する。また、現在の変速モードがマニュアルモードではない場合(S202におけるNO)、変速モード切替部206は、現在の変速モードがテンポラリマニュアルモードであるかを判定する(S204)。
【0062】
現在の変速モードがテンポラリマニュアルモードではない場合(S204におけるNO)、つまり、現在の変速モードが自動変速モードである場合、変速モード切替部206は、自動変速モードからテンポラリマニュアルモードに変速モードを切り替える(S206)。
【0063】
変速モードを切り替えた(S206)後、もしくは、現在の変速モードがテンポラリマニュアルモードである場合(ステップS204のYES)、変速比変更部204は、運転者によるパドル操作に基づいて、自動変速機140に変速比の変更指示を行う(S208)。変速比変更部204は、運転者がマイナスパドルスイッチ150aを操作した場合、変速比をダウンシフトするように自動変速機140に変速比の変更指示を行い、運転者がプラスパドルスイッチ150bを操作した場合、変速比をアップシフトするように自動変速機140に変速比の変更指示を行う。
【0064】
変速比を変更した(S208)後、タイマ計時部216は、タイマを0に設定する(S210)。その後、変化情報算出部208は、単位変化値を算出する(S212)。変化情報算出部208は、例えば、変速比を変更した後に、変速比検出部202によって一定の時間間隔で検出した2つの変速比の差を、その時間間隔で除算し、その結果を単位変化値とする。
【0065】
単位変化値を算出した(S212)後、単位変化値判定部214は、算出された単位変化値が所定値以下であるかを判定する(S214)。単位変化値が所定値以下である場合(S214におけるYES)、タイマ計時部216は、タイマの計時を行う(S216)。
【0066】
タイマの計時がされた(S216)後、もしくは、単位変化値が所定値以下ではない場合(S214におけるNO)、変速モード切替部206は、タイマ計時部216が計時した経過時間が、切替時間以上となっているかを判定する(S218)。タイマ計時部216が計時した経過時間が切替時間未満である場合(S218におけるNO)、パドル操作検出部200は、パドルスイッチ150に対する運転者の操作に基づいて、運転者のパドル操作を検出したかを判定する(S220)。
【0067】
パドル操作が検出されたと判定された場合(S220におけるYES)、ステップS208からの処理が繰り返される。また、パドル操作が検出されないと判定された場合(S220におけるNO)、変速モード切替部206は、シフトレバー160に対する運転者の操作に基づいて、復帰操作がされたか否かを判定する(S222)。
【0068】
復帰操作がされなかった場合(S222におけるNO)、ステップS212からの処理が繰り返される。復帰操作がされた場合(S222におけるYES)、切替条件更新部210は、切替時間を経過時間に更新する(S224)。具体的に、切替条件更新部210は、復帰操作がされた時点の経過時間によって切替時間を更新する。切替条件更新部210は、例えば、更新した切替時間を、メモリ174に記憶する。
【0069】
切替時間が更新された(S224)後、もしくは、タイマ計時部216で計時した経過時間が切替時間以上となった場合(S218におけるYES)、変速モード切替部206は、変速モードをテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替え(S226)、変速モード切替処理を終了する。
【0070】
以上のように、第1の実施形態の変形例の車両1では、変速比を変更した後に、変速比の単位変化値が所定値以下であるかを判定する。そして、車両1は、変速比の単位変化値が所定値以下となったタイミングから経過時間を計時し、運転者が自らの操作によって変速モードを切り替えるまでの経過時間を切替時間として更新する。これにより、変速モード切替部206は、次回以降、運転者が所望する変速比に変更した後に、切替時間経過後に自動で変速モードを切り替えることができ、変速モードの切り替えに係る運転者の煩わしさを低減させることができる。
【0071】
なお、第1の実施形態の車両1は、車内カメラ等を用いたドライバーモニタリングシステムを備えるものであってもよい。切替条件更新部210は、ドライバーモニタリングシステムを用いて、車両1を運転する運転者が複数人いる場合に、現在運転している運転者を判定し、運転者毎に切替条件を更新する。また、テーブル記憶部212は、車両1を運転する運転者が複数人いる場合に、運転者毎に、例えば、切替条件テーブルを分けて、切替条件をメモリ174に記憶する。これにより、車両1は、切替条件が運転者毎に更新されるため、車両1を運転する運転者が複数人いる場合であっても、運転者毎にテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替える切替条件が変更され、運転者に合わせた切替条件を選択することができる。
【0072】
また、例えば、第1の実施形態では、変速比変更部204は、変速比を変更する変更指示を行うと説明したが、かかる例に限定されない。変速比変更部204は、変速段を変更する変更指示を行うとしてもよい。
【0073】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態により、切替条件を適切な条件とすることが可能となる。しかし、第1の実施形態では、切替条件が満たされていない場合、すなわち、変速比変化値が変速比切替値未満である場合や、経過時間が切替時間未満である場合にしか更新されない。すなわち、タイミング的に早くなる方向にしか更新されず、変速比切替値や切替時間が徐々に小さくなるおそれがあった。
【0074】
そこで、第2の実施形態では、タイミングを遅くなる方にも更新できるようにする。ここでは、説明の便宜上、切替条件として、テンポラリマニュアルモードに切り替わってからの経過時間が切替時間以上となった場合に、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わる場合を説明する。しかし、かかる場合に限らず、切替条件として、第1の実施形態のように、テンポラリマニュアルモードに切り替わってからの変速比変化値が変速比切替値以上であることや、所定のタイミングからの経過時間が切替時間以上であることを採用することもできる。
【0075】
図6は、第2の実施形態に係る車両1を示す概略図である。
図6に示すように、第2の実施形態に係る車両1は、上記第1の実施形態に係る車両1の構成要素であるエンジン100と、駆動輪110と、ドライブシャフト120と、ステアリングホイール130と、自動変速機140と、マイナスパドルスイッチ150aと、プラスパドルスイッチ150bと、シフトレバー160と、制御部170に加えて、ブレーキペダル180と検知部190とをさらに備える。なお、かかる第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の機能部については第1の実施形態で既に説明しているので、その詳細な説明を省略する。
【0076】
ブレーキペダル180は、車両1の速度を減速させるための運転者の操作を受け付ける。車両1の速度を減速させるための運転者の操作は、例えば、ブレーキペダル180の踏み込み操作である。ブレーキペダル180は、不図示のブレーキ装置と接続される。ブレーキ装置は、例えば、運転者がブレーキペダル180の踏み込み操作を行うと、ブレーキペダル180の操作量であるブレーキ操作量を検出し、ブレーキ操作量に応じて、油圧を用いて駆動輪110に制動力を付与する。
【0077】
検知部190は、路面状況に関する情報を検知する。検知部190は、路面勾配検知センサ(ジャイロセンサ)や、路面摩擦係数センサ(ハブユニットセンサ、路面温度センサ、外気温センサ、近赤外線センサ、レーザ光センサ)等で構成される。
【0078】
ここで、路面状況は、例えば、路面の勾配や、路面の状態等である。例えば、検知部190は、車両1が走行中の路面の勾配に関する情報を検知する。具体的に、検知部190は、例えば、ロール角、ピッチ角およびヨー角を検知する。また、例えば、検知部190は、路面の状態に関する情報を検知する。路面の状態は、例えば、路面がDRY、WET、SNOW、ICEのいずれかの状態のことである。具体的に、検知部190は、例えば、車両1の駆動輪110(前輪および後輪)に作用する作用力を検知する。作用力は、例えば、前後方向力、横力および上下力を含む三軸方向の分力である。また、検知部190は、例えば、車両1の前方の路面の画像や、車両1の前方の路面の温度、車両1の周辺の外気温、車両1の前方の路面の水分量、車両1の前方の路面の粗さを検知する。
【0079】
図7は、第2の実施形態に係る制御部170の機能構成の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、第2の実施形態に係る制御部170は、上記第2の実施形態に係る制御部170の構成要素であるパドル操作検出部200と、変速比検出部202と、変速比変更部204と、変速モード切替部206と、変化情報算出部208と、切替条件更新部210と、テーブル記憶部212と、単位変化値判定部214と、タイマ計時部216とに加えて、ブレーキ操作検出部318と、切替時間延長判定部320と、路面状況判定部322と、テーブル取得部324とをさらに含む。
【0080】
タイマ計時部216は、パドルスイッチ150に対する運転者のパドル操作からの経過時間を計時する。
【0081】
タイマ計時部216は、所定のタイミングからの時間を計時する。タイマ計時部216は、第1タイマと、後述する第2タイマを有する。タイマ計時部216の第1タイマは、例えば、パドルスイッチ150に対する運転者の操作からの経過時間を計時する。なお、これに限定されず、タイマ計時部216の第1タイマは、例えば、パドルスイッチ150に対する運転者の操作後、変速比変更部204の指示により変速比が変更されたタイミングからの経過時間を計時してもよい。
【0082】
変速モード切替部206は、パドルスイッチ150に対する運転者のパドル操作後、運転者による復帰操作が行われていない状態で、タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が切替時間以上となったか否かを判定する。そして、変速モード切替部206は、経過時間が、切替時間以上となると、変速モードをテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替える。
【0083】
変化情報算出部208は、例えば、変速比の変化に関する情報を算出し、算出した当該情報をメモリ174に記憶する。変速比の変化に関する情報は、例えば、直近のテンポラリマニュアルモードにおいて、直近の運転者のパドル操作に応じて変速を実行した際の変速比と、変速比変更部204の指示により変更された後の変速比との差である。
【0084】
また、タイマ計時部216の第1タイマは、シフトレバー160に対する運転者の操作により、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わった場合、そのときの経過時間を次回の切替時間とするために取得する。したがって、次回の切替時間は、運転者のパドル操作から、シフトレバー160に対する運転者の操作により、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わるまでの経過時間となる。
【0085】
切替条件更新部210は、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替わる際の切替条件としての切替時間を、復帰操作時にタイマ計時部216の第1タイマにより取得された経過時間に更新する。
【0086】
また、切替条件更新部210は、後述する切替時間延長判定部320により、切替時間を延長する判定がされた場合、その時点の切替時間に特定時間を加算して、新たに切替時間とする。つまり、切替条件更新部210は、切替時間延長判定部320による判定結果に応じて、切替時間を、特定時間だけ延長する。特定時間は、切替時間を延長するために設けられた時間であり、例えば、1秒といったように、予め設定された時間である。しかし、これに限定されず、特定時間は、算出された時間であってもよい。例えば、運転者によるマイナスパドルスイッチ150aの操作によって、変速比が低速側に変化し、切替時間経過後に、運転者によりブレーキペダル180が操作された場合、ブレーキペダル180を操作している間の時間として、特定時間を算出してもよい。
【0087】
また、詳しくは後述するが、特定時間は、切替時間延長判定部320が判定する所定の走行状況や、後述する路面状況判定部322が判定した路面状況に応じて、予め定められた時間を異ならせてもよい。
【0088】
テーブル記憶部212は、切替条件テーブル等、各種の制御情報をメモリ174に記憶する。切替条件テーブルは、例えば、後述する路面状況判定部322が判定した路面状況と、切替時間、後述する切替後判定時間や、特定時間、または、後述する延長許可時間のうち1つ以上のパラメータとを対応付けたテーブルである。つまり、テーブル記憶部212は、検知部190が検知した路面状況に関する情報に基づく路面状況毎に、切替時間、切替後判定時間、特定時間、または、延長許可時間を記憶する。
【0089】
また、タイマ計時部216の第2タイマは、例えば、シフトレバー160に対する運転者の復帰操作によりテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わってからの経過時間を計時する。なお、これに限定されず、タイマ計時部216の第2タイマは、例えば、シフトレバー160に対する運転者の復帰操作のタイミングからの時間を計時してもよい。また、タイマ計時部216の第2タイマは、例えば、切替時間が経過後、自動でテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わったタイミングからの時間を計時してもよい。
【0090】
ブレーキ操作検出部318は、運転者によるブレーキペダル180の踏み込み操作を検出する。ブレーキ操作検出部318は、例えば、運転者がブレーキペダル180を踏み込むと、ブレーキ装置から送信される信号を受信し、ブレーキペダル180の踏み込み操作がされたことを検出する。
【0091】
切替時間延長判定部320は、所定の走行状況に応じて、切替時間を延長するか否かの判定を行う。所定の走行状況は、例えば、切替時間経過後の切替後判定時間内に、切替時間が経過する前における運転者のパドル操作に応じて変速を実行した際の変速比の変化と、同一方向の変速比の変化となる変速を実行する運転者のパドル操作がされた場合である。切替後判定時間は、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替わった後に、切替時間延長判定部320が切替時間を延長するか否かの判定に用いる基準となり、例えば、10秒といった予め設定された時間である。しかし、これに限定されず、切替後判定時間は、例えば、算出された時間であってもよいし、路面状況に応じて可変する時間であってもよい。
【0092】
つまり、切替時間延長判定部320は、切替時間経過後の切替後判定時間内に、直近のテンポラリマニュアルモードにおいて、変化情報算出部208が記憶した変速比の変化と、同一方向の変速比の変化となる変速を実行する運転者のパドル操作がされた場合に、切替時間を延長すると判定する。
【0093】
より具体的には、例えば、直近のテンポラリマニュアルモードにおいて、運転者がマイナスパドルスイッチ150aに対するパドル操作を行った場合に、変速比変更部204は、低速側に変速を実行する。そして、切替時間経過後の切替後判定時間内に、運転者が、再度、マイナスパドルスイッチ150aに対するパドル操作を行った場合に、切替時間延長判定部320は、切替時間を延長すると判定する。なお、高速側に変速が実行された後、再度、プラスパドルスイッチ150bに対するパドル操作が行われ場合も同様である。このように、切替時間延長判定部320は、自動変速モードに自動的に切り替わった後の切替後判定時間内に、直近のテンポラリマニュアルモードにおいて運転者が行ったパドル操作と、同一の方向のパドル操作を運転者が行った場合に、運転者が所望する変速比に至ってなかったとして、切替時間を延長すると判定する。
【0094】
また、所定の走行状況は、例えば、直近のテンポラリマニュアルモードにおいて、低速側に変速を実行し、切替時間経過後の切替後判定時間内に、運転者によってブレーキペダル180の踏み込み操作がされた場合としてもよい。つまり、テンポラリマニュアルモードにおいて、変速比変更部204が、運転者のマイナスパドルスイッチ150aのパドル操作に応じて低速側に変速を実行し、当該変速を実行した後、切替時間を経過した際に、変速モード切替部206が、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替える。そして、切替時間経過後の切替後判定時間内に、ブレーキペダル180に対して運転者の操作がされた場合、運転者が所望する変速比に至ってなかったとして、切替時間延長判定部320は、切替時間を延長すると判定する。なお、切替後判定時間は、所定の走行状況毎に、同一の時間であってもよいし、異なる時間であってもよい。
【0095】
また、所定の走行状況は、例えば、タイマ計時部216の第2タイマによって計時された経過時間が、延長許可時間を経過した場合としてもよい。延長許可時間は、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わった後に、切替時間延長判定部320が切替時間を延長するか否かの判定に用いる基準となり、切替後判定時間よりも長い時間である。また、延長許可時間は、例えば、1カ月といった予め設定された時間であるが、これに限定されず、算出された時間であってもよいし、路面状況に応じて可変する時間であってもよい。つまり、切替時間延長判定部320は、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わった後に延長許可時間を経過した場合に、運転者が所望する変速比に至る前に自動変速モードに切り替わっているとして、切替時間を延長すると判定する。
【0096】
また、切替時間延長判定部320は、1度、延長許可時間に基づいて判定した後も、周期的に延長許可時間を経過したか否かを判定する。つまり、切替時間延長判定部320は、延長許可時間を経過した毎に、切替時間を延長すると判定する。また、この場合、切替時間延長判定部320は、切替時間が上限時間以上であるか否かを判定し、切替時間が上限時間未満である場合のみ、切替時間を延長すると判定する。上限時間は、例えば、最初に設定された切替時間の初期値である。このように、切替時間の延長に対して上限時間が設けられることで、切替時間の初期値が経過するまでには、確実に、変速モードを自動で切り替えることができ、自動変速モードに長時間復帰しなくなることを防止することが可能となる。
【0097】
また、切替時間延長判定部320が、所定の走行状況に応じて、切替時間を延長すると判定すると、切替条件更新部210は、切替時間を、特定時間延長する。なお、特定時間は、所定の走行状況毎に、同一の時間であってもよいし、異なる時間であってもよい。
【0098】
路面状況判定部322は、検知部190による情報に基づいて、車両1が走行する路面状況を判定する。路面状況判定部322は、例えば、検知部190による情報に基づいて、車両1が走行中の路面の勾配が上り勾配か、平坦か、下り勾配かを判定する。例えば、路面状況判定部322は、検知部190であるジャイロセンサを用いて、車両1の姿勢、具体的には、ロール角、ピッチ角およびヨー角の情報を検知し、当該情報に基づいて、車両1が走行中の路面の勾配が上り勾配か、平坦か、下り勾配かを判定する。なお、路面状況判定部322は、車両1が走行中の路面の勾配が上り勾配か、平坦か、下り勾配かを判定するだけに限らず、車両1が走行中の路面の勾配の角度をそのまま切替条件テーブルのパラメータとしてもよい。
【0099】
また、路面状況判定部322は、例えば、検知部190による情報に基づいて、車両1が走行中の路面、または、車両1の前方の路面の路面摩擦係数μを推定し、路面摩擦係数μに基づいて、路面の状態を判定する。例えば、路面状況判定部322は、検知部190が検知した車両1の駆動輪110(前輪および後輪)に作用する作用力に基づいて、路面摩擦係数μを推定する。
【0100】
また、例えば、路面状況判定部322は、検知部190が検知した車両1の前方の路面の画像や、車両1の前方の路面の温度、車両1の周辺の外気温、車両1の前方の路面の水分量、車両1の前方の路面の粗さの情報のうち、少なくとも1つの情報に基づいて、車両1の前方の路面の路面摩擦係数μを推定する。そして、路面状況判定部322は、推定した路面摩擦係数μに基づいて、路面の状態がDRY、WET、SNOW、ICEのいずれかの状態であるかを判定する。
【0101】
テーブル取得部324は、メモリ174に記憶されている切替条件テーブルを参照し、各種の制御情報を設定する。切替条件テーブルには、路面の勾配、または、路面の状態のうち1または複数と、切替時間、切替後判定時間、特定時間、または、延長許可時間のうち1または複数とが対応付けられている。テーブル取得部324は、例えば、メモリ174に記憶された切替条件テーブルを参照し、路面状況判定部322により判定された路面状況に応じて、切替時間、切替後判定時間、特定時間、または、延長許可時間を設定する。
【0102】
例えば、テーブル取得部324は、路面状況判定部322により車両1が走行中の路面の勾配が下り勾配であると判定された場合に、切替条件テーブルを参照し、下り勾配用の切替時間を設定する。その後、路面状況判定部322により車両1が走行中の路面が下り勾配であると判定されている限り、変速モード切替部206は、下り勾配用の切替時間を用いて、変速モードを制御する。例えば、変速モード切替部206は、下り勾配用の切替時間を経過した際に、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替える。また、切替条件更新部210は、切替時間延長判定部320による判定結果に応じて、下り勾配用の切替時間を、特定時間延長する。そして、テーブル記憶部212は、特定時間延長された下り勾配用の切替時間を、メモリ174に記憶する。なお、切替時間と同様に、切替後判定時間や、特定時間、延長許可時間も設定される。
【0103】
なお、テーブル記憶部212は、例えば、路面の勾配と、各種の制御情報を対応付ける場合は、上り勾配と、平坦と、下り勾配に区分し、各種の制御情報を記憶する。また、テーブル記憶部212は、例えば、路面の勾配のうち、路面の勾配の角度と、各種の制御情報を対応付ける場合は、路面の勾配の角度を一定の角度毎に区分し、各種の制御情報を記憶する。また、テーブル記憶部212は、例えば、路面の状態と、各種の制御情報を対応付ける場合は、DRY、WET、SNOW、ICEに区分し、各種の制御情報を記憶する。
【0104】
また、テーブル記憶部212は、例えば、複数の路面状況の種別の組み合わせと各種の制御情報を対応付けた切替条件テーブルをメモリ174に記憶し、テーブル取得部324は、当該切替条件テーブルを参照してもよい。例えば、テーブル記憶部212は、切替条件テーブルにおける、路面の勾配が下り勾配、かつ、路面の状態がDRYの区分に対応させて、切替時間を記憶する。そして、テーブル取得部324は、路面状況判定部322により路面の勾配が下り勾配、かつ、路面の状態がDRYと判定された場合に、路面の勾配が下り勾配、かつ、路面の状態がDRYに対応する切替時間を取得する。
なお、切替条件テーブルは、各種の制御情報を一つのテーブルにまとめて記憶してもよく、また、各種の制御情報を複数のテーブルに分けて記憶してもよい。
【0105】
図8、
図9は、第2の実施形態に係る制御部170による変速モード切替処理を示す第1のフローチャートである。かかるフローチャートは、所定の割込み周期毎に実行される。なお、
図8に示すステップS300からステップS308までの処理は、
図5に示す第2の実施形態に係る制御部170による変速モード切替処理のステップS200からステップS208までの処理と同一なので、詳細な説明を省略する。
【0106】
図8に示すように、ステップS308において変速比を変更した後、タイマ計時部216は、第1タイマを0に設定し、第1タイマの計時を開始する(S310)。その後、変化情報算出部208は、変速比の変化に関する情報を算出し、算出した当該情報をメモリ174に記憶する(S312)。
【0107】
その後、テーブル取得部324は、メモリ174に記憶された切替条件テーブルを参照し、路面状況判定部322が判定した路面状況に応じて、切替時間を設定する(S314)。
【0108】
その後、変速モード切替部206は、タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が、切替時間以上であるか否かを判定する(S316)。タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が切替時間以上であると判定された場合(S316におけるYES)、変速モード切替部206は、ステップS324に処理を移す。つまり、変速モード切替部206は、パドルスイッチ150に対する運転者の操作後、切替時間を経過した際に、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替える。
【0109】
タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が切替時間未満であると判定された場合(S316におけるNO)、パドル操作検出部200は、パドルスイッチ150に対する運転者の操作に基づいて、運転者のパドル操作を検出したかを判定する(S318)。
【0110】
パドル操作が検出されたと判定された場合(S318におけるYES)、ステップS308からの処理が繰り返される。また、パドル操作が検出されてないと判定された場合(S318におけるNO)、変速モード切替部206は、シフトレバー160に対する運転者の操作に基づいて、復帰操作がされたか否かを判定する(S320)。
【0111】
復帰操作がされなかったと判定された場合(S320におけるNO)、ステップS316からの処理が繰り返される。復帰操作がされたと判定された場合(S320におけるYES)、切替条件更新部210は、切替時間を、経過時間に更新する(S322)。
【0112】
切替時間が更新された(S322)後、もしくは、タイマ計時部216の第1タイマで計時した経過時間が切替時間を経過したと判定された場合(S316におけるYES)、変速モード切替部206は、変速モードをテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替える(S324)。
【0113】
次に、
図9に示すように、変速モードがテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わった(S324)後、タイマ計時部216は、第2タイマを0に設定し、第2タイマの計時を開始する(S326)。
【0114】
その後、切替時間延長判定部320は、前回のテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わった際に、自動でテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わったかを判定する(S328)。すなわち、切替時間延長判定部320は、前回のテンポラリマニュアルモードにおいて、タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が切替時間以上であったか否かを判定する。
【0115】
自動でテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わったと判定された場合(S328におけるYES)、テーブル取得部324は、メモリ174に記憶された切替条件テーブルを参照し、路面状況判定部322が判定した路面状況に応じて、切替時間、切替後判定時間、特定時間を設定する(S330)。
【0116】
その後、切替時間延長判定部320は、ステップS326で開始したタイマ計時部216の第2タイマが計時した経過時間が、切替後判定時間以上であるかを判定する(S332)。タイマ計時部216の第2タイマが計時した経過時間が切替後判定時間未満である判定された場合(S332におけるNO)、パドル操作検出部200は、パドルスイッチ150に対する運転者の操作に基づいて、運転者のパドル操作を検出したかを判定する(S334)。
【0117】
パドル操作が検出されたと判定された場合(S334におけるYES)、切替時間延長判定部320は、ステップS312で記憶された変速比の変化と、同一方向の変速比の変化となる運転者のパドル操作がされたかを判定する(S336)。例えば、ステップS312において変化情報算出部208は、運転者のパドル操作に応じて変速を実行した際の変速比から、変速比変更部204の指示により変更された後の変速比を減算する。そして、ステップS336において切替時間延長判定部320は、当該差が0より大きい場合に低速側に変速したと判定し、当該差が0未満である場合に高速側に変速したと判定する。
【0118】
その後、切替時間延長判定部320は、ステップS312で記憶された変速比の変化が低速側への変速であり、運転者がマイナスパドルスイッチ150aに対するパドル操作を行った場合に、同一方向の変速比の変化となる運転者のパドル操作がされたと判定する。もしくは、切替時間延長判定部320は、ステップS312で記憶された変速比の変化が高速側への変速であり、運転者がプラスパドルスイッチ150bに対するパドル操作を行った場合に、同一方向の変速比の変化となる運転者のパドル操作がされたと判定する。すなわち、切替時間延長判定部320は、同一方向の変速比の変化となる運転者のパドル操作がされたかを判定する。
【0119】
同一方向の変速比の変化となる運転者のパドル操作がされなかったと判定された場合(S336におけるNO)、ステップS302からの処理が繰り返される。また、同一方向の変速比の変化となる運転者のパドル操作がされたと判定された場合(S336におけるYES)、切替条件更新部210は、切替時間に特定時間を加算して切替時間を更新し、メモリ174に記憶する(S338)。その後、ステップS302からの処理が繰り返される。
【0120】
パドル操作が検出されなかったと判定された場合(S334におけるNO)、ブレーキ操作検出部318は、運転者のブレーキペダル180に対する踏み込み操作を検出したか否かを判定する(S340)。ブレーキペダル180に対する踏み込み操作を検出しないと判定された場合(S340におけるNO)、ステップS330からの処理が繰り返される。
【0121】
ブレーキペダル180に対する踏み込み操作を検出したと判定された場合(S340におけるYES)、切替時間延長判定部320は、ステップS312で記憶された変速比の変化に関する情報に基づいて、低速側に変速する変速比の変化であるかを判定する(S342)。ステップS342による判定の結果、ステップS312で記憶された変速比の変化に関する情報に基づいて低速側に変速する変速比の変化でないと判定された場合(S342におけるNO)、ステップS330からの処理が繰り返される。
【0122】
ステップS342による判定の結果、ステップS312で記憶された変速比の変化に関する情報に基づいて低速側に変速する変速比の変化であると判定された場合(S342におけるYES)、切替条件更新部210は、切替時間に特定時間を加算して切替時間を更新し、メモリ174に記憶する(S344)。その後、ステップS330からの処理が繰り返される。なお、このとき、ブレーキペダル180に対し、連続して複数回の踏み込みがあった場合、そのうちの最初の踏み込みに対してのみ切替時間を更新するとしてもよい。
【0123】
また、自動でテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わっていないと判定された場合(S328におけるNO)、もしくは、タイマ計時部216の第2タイマが計時した経過時間が切替後判定時間以上であると判定された場合(S332におけるYES)、テーブル取得部324は、メモリ174に記憶された切替条件テーブルを参照し、路面状況判定部322が判定した路面状況に応じて、切替時間、延長許可時間、特定時間を設定する(S346)。その後、切替時間延長判定部320は、切替時間が、上限時間以上であるかを判定する(S348)。
【0124】
切替時間が上限時間以上であると判定された場合(S348におけるYES)、切替時間の延長を行うことなく、変速モード切替処理を終了する。また、切替時間が上限時間未満であると判定された場合(S348におけるNO)、パドル操作検出部200は、パドルスイッチ150に対する運転者の操作に基づいて、運転者のパドル操作を検出したかを判定する(S350)。パドル操作が検出されたと判定された場合(S350におけるYES)、ステップS302からの処理が繰り返される。
【0125】
また、パドル操作が検出されないと判定された場合(S350におけるNO)、切替時間延長判定部320は、タイマ計時部216の第2タイマが計時した経過時間が、延長許可時間以上であるかを判定する(S352)。タイマ計時部216の第2タイマが計時した経過時間が延長許可時間未満であると判定された場合(S352におけるNO)、ステップS346からの処理が繰り返される。また、タイマ計時部216の第2タイマが計時した経過時間が延長許可時間以上であると判定された場合(S352におけるYES)、切替条件更新部210は、切替時間に特定時間を加算して切替時間を更新し、メモリ174に記憶する(S354)。その後、タイマ計時部216は、再度、第2タイマを0に設定し、第2タイマの計時を開始し(S356)、ステップS346からの処理を繰り返す。
【0126】
以上のように、第2の実施形態に係る車両1によれば、自動変速モードに切り替わった後の切替後判定時間内に、運転者が前回と同一方向の変速比の変化となるパドル操作をした際に、切替時間を、特定時間延長する。これにより、運転者が切替時間の延長を望むタイミングにおいて、適切に切替時間を延長することができる。そして、適切に切替時間を延長することにより、運転者が最適と感じるタイミングで、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードへの切り替えを実現することができる。
【0127】
また、第2の実施形態に係る車両1によれば、運転者のブレーキペダル180に対する操作によって、運転者が目標とする変速比もしくは車速に達する前に自動変速モードに自動で切り替わったことを把握できる。これにより、運転者にパドル操作をさせることなく、適切に切替時間を延長することができ、運転者のパドル操作をする煩わしさを軽減することができる。そして、適切に切替時間を延長することにより、運転者が最適と感じるタイミングで、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードへの切り替えを実現することができる。
【0128】
また、第2の実施形態に係る車両1によれば、延長許可時間を経過した毎に、切替時間を、特定時間延長する。これにより、切替時間が極端に短くなったことにより、運転者がテンポラリマニュアルモードを使用することに煩わしさを感じた場合であっても、運転者が最適と感じる切替時間に戻すことができる。
【0129】
また、第2の実施形態に係る車両1によれば、路面状況毎に、切替時間や、切替後判定時間、延長許可時間、特定時間を記憶し、路面状況に応じて、切替時間や、切替後判定時間、延長許可時間、特定時間を設定する処理が実行される。これにより、路面状況に応じて、各種の制御情報を設定することができ、路面状況に応じた最適なタイミングで手動変速モードから自動変速モードへの切り替えを行うことができる。
【0130】
また、第2の実施形態によれば、変化情報算出部208は、運転者のパドル操作に応じて変速を実行した際の変速比から、変速比変更部204の指示により変更された後の変速比を減算し、変速比が変化した方向を算出すると説明したが、かかる例に限定されない。例えば、変化情報算出部208は、運転者のパドル操作に応じて変速を実行した際の変速比から、直接変速比が変化した方向、つまり、低速側に変速比が変化したか、もしくは、高速側に変速比が変化したかを導出してもよい。
【0131】
(第2の実施形態の変形例)
第2の実施形態に係る車両1では、テンポラリマニュアルモードにおいて、運転者が、切替時間内に、シフトレバー160による復帰操作を行った場合、切替時間を経過時間に更新する。つまり、運転者の復帰操作があった場合、切替時間は、現在の切替時間よりも早い時間に更新される。しかし、例えば、運転者が誤って極端に早いタイミングで復帰操作を行った場合、切替時間は、極端に早い時間に更新されてしまう。そして、極端に早い時間に更新された切替時間は、運転者の一定の操作もしくは一定の時間が経過しない限り、元の切替時間に戻すことができず、テンポラリマニュアルモードにおける操作性が著しく低下するおそれがあった。そこで、第2の実施形態の変形例に係る車両1では、運転者による極端に早い復帰操作が行われた場合に、切替時間を更新するか否かを判定し、必要に応じて、切替時間を更新する。
【0132】
図10は、第2の実施形態の変形例に係る制御部170の機能構成の一例を示すブロック図である。
図10に示すように、変形例に係る制御部170は、パドル操作検出部200と、変速比検出部202と、変速比変更部204と、変速モード切替部206と、変化情報算出部208と、切替条件更新部210と、テーブル記憶部212と、単位変化値判定部214と、タイマ計時部216と、ブレーキ操作検出部318と、切替時間延長判定部320と、路面状況判定部322と、テーブル取得部324に加えて、誤操作判定部326をさらに含む。
【0133】
誤操作判定部326は、テンポラリマニュアルモードにおいて、シフトレバー160に対する運転者の特定解除操作が行われた場合に、切替時間を更新するか否かを判定する。特定解除操作は、パドルスイッチ150に対する運転者のパドル操作後の誤操作判定時間内に、シフトレバー160に対してされた運転者の復帰操作である。誤操作判定時間は、テンポラリマニュアルモードにおいて、誤操作判定部326が運転者の復帰操作が行われた場合に、切替時間を更新するか否かの判定に用いる基準となり、切替時間よりも短い時間である。誤操作判定時間は、例えば、2秒といった予め設定された時間である。しかし、これに限定されず、誤操作判定時間は、例えば、算出された時間であってもよいし、路面状況に応じて可変する時間であってもよい。
【0134】
誤操作判定部326は、例えば、特定解除操作が行われることが複数回あった場合、切替時間を更新すると判定する。つまり、特定解除操作が行われることが複数回あった場合は、運転者が意図的に特定解除操作を行っており、運転者の誤操作ではないと考えられるため、切替時間を、より短い特定解除時間に更新する。特定解除時間は、例えば、運転者の復帰操作によりテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わってからの経過時間である。また、これに限定されず、特定解除時間は、例えば、切替時間よりも短い予め定められた時間であってもよい。なお、特定解除時間が予め定められた時間である場合、切替条件更新部210は、下限時間を設定し、切替時間を更新した際に、下限時間よりも小さい時間に更新しないように制限をかけてもよい。
【0135】
具体的には、例えば、1回目のテンポラリマニュアルモードにおいて、1回目の特定解除操作がされた場合、変速モード切替部206は、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替える。その後、2回目のテンポラリマニュアルモードにおいて、2回目の特定解除操作がされた場合、変速モード切替部206は、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替え、誤操作判定部326は切替時間を更新すると判定する。そして、切替条件更新部210は、特定解除操作が行われることが2回あった場合、切替時間を、特定解除時間に更新する。この場合の特定解除時間は、対象となる2回の経過時間のうち、1回目のみを採用してもよいし、2回目を採用してもよいし、両者の平均時間を採用してもよい。
【0136】
なお、誤操作判定部326が、運転者の特定解除操作が行われた場合に、切替時間を更新すると判定するのは、特定解除操作が連続で2回行われた場合に限定されない。例えば、誤操作判定部326は、特定解除操作が3回以上行われた場合に、切替時間を更新すると判定してもよい。また、例えば、誤操作判定部326は、1回目の特定解除操作がされてから、2回目の特定解除操作がされる間に、特定解除操作以外の復帰操作が1回以上行われても、2回目の特定解除操作の際に、切替時間を更新すると判定してもよい。
【0137】
また、誤操作判定部326は、例えば、1回目の特定解除操作がされた場合に、切替時間を更新しないと判定する。つまり、1回目の特定解除操作がされた場合は、運転者が誤って特定解除操作を行った可能性があるため、切替時間を特定解除時間に更新しない。すなわち、切替条件更新部210は、特定解除操作が行われることが1回目であった場合、切替時間を、特定解除時間に更新しない。
【0138】
図11は、第2の実施形態の変形例に係る制御部170による変速モード切替処理を示すフローチャートである。かかるフローチャートは、所定の割込み周期毎に実行される。なお、
図11に示すステップS400からステップS410までの処理は、
図8に示す第2の実施形態に係る制御部170による変速モード切替処理のステップS300からステップS310までの処理と同一なので、詳細な説明を省略する。
【0139】
図11に示すように、ステップS410において第1タイマの計時を開始した後、変速モード切替部206は、タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が、切替時間以上であるかを判定する(S412)。タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が切替時間以上であると判定された場合(S412におけるYES)、ステップS424に処理を移す。つまり、変速モード切替部206は、パドルスイッチ150に対する運転者の操作後、切替時間を経過した際に、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替える。
【0140】
タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が切替時間未満であると判定された場合(S412におけるNO)、パドル操作検出部200は、パドルスイッチ150に対する運転者の操作に基づいて、運転者のパドル操作を検出したかを判定する(S414)。
【0141】
パドル操作が検出されたと判定された場合(S414におけるYES)、ステップS408からの処理が繰り返される。また、パドル操作が検出されないと判定された場合(S414におけるNO)、変速モード切替部206は、シフトレバー160に対する運転者の操作に基づいて、復帰操作がされたか否かを判定する(S416)。
【0142】
復帰操作がされなかったと判定された場合(S416におけるNO)、ステップS412からの処理が繰り返される。復帰操作がされたと判定された場合(S416におけるYES)、誤操作判定部326は、タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が、誤操作判定時間以上であるかを判定する(S418)。つまり、自動変速モードへの復帰操作があり、誤操作判定時間が経過している場合は、自動変速モードへの復帰操作は、通常の復帰操作と判定され、自動変速モードへの復帰操作があり、誤操作判定時間が経過していない場合は、自動変速モードへの復帰操作は、特定解除操作と判定される。
【0143】
タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が誤操作判定時間未満であると判定された場合(S418におけるNO)、誤操作判定部326は、ステップS416での復帰操作、つまり、特定解除操作が、1回目の特定解除操作であるかを判定する(S420)。
【0144】
特定解除操作は1回目の特定解除操作ではないと判定された場合(S420におけるNO)、もしくは、タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間は誤操作判定時間以上であると判定された場合(S418におけるYES)、切替条件更新部210は、切替時間を、そのときの経過時間に更新する(S422)。また、ステップS422において、特定解除操作が2回以上行われている場合、切替条件更新部210は、切替時間を、特定解除時間に更新する。切替条件更新部210は、例えば、更新した切替時間を、メモリ174に記憶する。
【0145】
切替時間を更新した(S422)後、もしくは、タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が切替時間以上であると判定された場合(412におけるYES)、もしくは、特定解除操作が1回目の特定解除操作であると判定された場合(S420におけるYES)、変速モード切替部206は、変速モードをテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替え(S424)、変速モード切替処理を終了する。
【0146】
以上のように、第2の実施形態の変形例の車両1では、パドルスイッチ150に対する運転者のパドル操作後の誤操作判定時間内に、特定解除操作がされた場合、切替時間を、計時された特定解除時間に更新しない。一方、特定解除操作が複数回行われた場合、切替時間を、特定解除時間に更新する。これにより、運転者が誤って誤操作判定時間よりも早いタイミングで復帰操作をした場合であっても、切替時間が更新されず、運転者が意図的に誤操作判定時間よりも早いタイミングで復帰操作をした場合、切替時間を短い時間に更新することができ、運転者の意図を的確に切替時間に反映させることができる。
【0147】
また、第2の実施形態の変形例の車両1では、運転者が特定解除操作を複数回行った場合、切替時間を、経過時間に更新することで、切替時間を、運転者が希望する切替時間に直接更新することができるため、運転者が最適と感じる切替時間となるまでに、何度も特定解除操作を行う必要がなくなり、運転者の煩わしさを解消することができる。
【0148】
(第3の実施形態)
上述した第1の実施形態により、切替条件のタイミングを早い方に調整でき、第2の実施形態により、切替条件のタイミングを遅い方に調整することができるようになったので、適切な切替条件を実現することが可能となる。したがって、走行状態に変化がなければ、運転者は、パドル操作後、所望する切替条件に達した場合に、スムーズに自動変速モードに切り替えることができる。しかしながら、上記のように切替条件が調整された後、車両1が走行する走行状態が大きく変化すると、調整後の切替条件が、変化後の走行状態では適切な切替条件ではなくなるおそれがある。
【0149】
そこで、第3の実施形態では、走行状態が変化したことを判定し、走行状態が大きく変化した場合には、調整後の切替条件を、規定値にリセットする。
【0150】
第3の実施形態に係る車両1は、
図6で示した上記第2の実施形態に係る車両1の構成要素同様、エンジン100と、駆動輪110と、ドライブシャフト120と、ステアリングホイール130と、自動変速機140と、マイナスパドルスイッチ150aと、プラスパドルスイッチ150bと、シフトレバー160と、制御部170と、ブレーキペダル180と、検知部190とを備える。かかる第3の実施形態において、第1の実施形態および第2の実施形態と同一の機能部については、第1の実施形態や第2の実施形態で既に説明しているので、その詳細な説明を省略する。
【0151】
ただし、第3の実施形態において、検知部190は、車両1の水平方向の位置を検知する。例えば、検知部190は、GPS(Global Positioning System)を用い、車両1が位置する経度および緯度を取得する。また、車両1にカーナビゲーションが搭載されている場合、検知部190は、カーナビゲーションが特定した位置情報を用い、車両1が位置する経度および緯度を取得することができる。また、車両1が、無線機を通じて、ITS(Intelligent Transport Systems)、ETC(Electronic Toll Collection System)、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)といった交通情報を取得可能な場合、検知部190は、その交通情報を用い、車両1が位置する経度および緯度を取得することができる。
【0152】
また、検知部190は、取得した車両1の位置と地図情報とに基づいて、車両1がどのような道路を走行しているか特定することができる。また、検知部190は、無線機を通じて、ITS、ETC、VICS等の交通情報を取得可能な場合、その交通情報を用い、車両1が走行している道路を特定することができる。例えば、検知部190は、高速道路を走行していることを特定する。ここで、高速道路は、道路幅を広くカーブを緩やかにして、速度を上げても安全に走れるように作られた道路であり、自動車と二輪車のみが走行可能な道路である。
【0153】
また、検知部190は、例えば、無線機を通じて、ITS、ETC等の交通情報を取得可能な場合、その交通情報を用い、車両1が走行している位置が有料区間であること、例えば、有料区間に入ったこと、または、有料区間から出たことを特定してもよい。ここで、有料区間は、車両1が走行することにより料金が発生する区間である。
【0154】
また、検知部190は、温度計を通じて車両1近傍の気温を検知できる。また、検知部190は、車両1の位置および月日時に基づいて気象庁等のデータから、車両1の位置におけるその時点の気温を推定することもできる。例えば、車両1が2月に北海道に位置する場合、検知部190は、車両1近傍の気温が所定温度未満となると推定する。
【0155】
また、検知部190は、ドライバーモニタリングシステムを用いて、運転者を検知できる。ドライバーモニタリングシステムは、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子と、撮像された画像を認識する認識装置とで構成され、少なくとも運転者の顔を認識する。ドライバーモニタリングシステムは、運転者の視線や顔色を判断し安全運転を支援する。また、ドライバーモニタリングシステムは、運転者の顔を識別し、その時点に乗車した運転者が特定の運転者と異なるか否かを判定することができる。また、検知部190は、運転席のシートの荷重センサや運転者の運転傾向等により運転者を識別するとしてもよい。
【0156】
第3の実施形態に係る制御部170は、
図10に示したように、上記第2の実施形態に係る制御部170の構成要素同様、パドル操作検出部200と、変速比検出部202と、変速比変更部204と、変速モード切替部206と、変化情報算出部208と、切替条件更新部210と、テーブル記憶部212と、単位変化値判定部214と、タイマ計時部216と、ブレーキ操作検出部318と、切替時間延長判定部320と、路面状況判定部322と、テーブル取得部324と、誤操作判定部326とを含む。なお、ここでは、説明の便宜上、切替条件として、テンポラリマニュアルモードに切り替わってからの経過時間が切替時間以上となった場合に、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わる場合を説明する。
【0157】
ここで、変速モード切替部206は、運転者がシフトレバー160をDレンジになるように操作すると、自動変速モードに切り替える。また、変速モード切替部206は、運転者がシフトレバー160をMレンジになるように操作すると、マニュアルモードに切り替える。また、変速モード切替部206は、現在の変速モードが自動変速モードである場合に、運転者によりパドル操作が行われると、テンポラリマニュアルモードに切り替える。また、変速モード切替部206は、現在の変速モードがテンポラリマニュアルモードである場合に、運転者により復帰操作が行われると、自動変速モードに切り替える。
【0158】
また、タイマ計時部216の第1タイマは、上述したように、例えば、運転者のパドル操作からの経過時間を計時する。変速モード切替部206は、運転者のパドル操作後、運転者による復帰操作が行われていない状態で、タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が切替時間以上となったか否かを判定する。そして、変速モード切替部206は、経過時間が切替時間以上となると、変速モードをテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替える。
【0159】
切替条件更新部210は、切替時間を、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わってから、運転者のパドル操作により自動変速モードからテンポラリマニュアルモードに切り替わるまでの経過時間に更新する。こうして、運転者の所望する切替時間に達した場合に、迅速に自動変速モードに切り替えることができ、変速モードの切り替えに係る運転者の煩わしさを低減させることができる。
【0160】
また、切替条件更新部210は、切替時間延長判定部320により、切替時間を延長すると判定された場合、その時点の切替時間に特定時間を加算して、新たに切替時間とする。こうして、運転者が切替時間の延長を望むタイミングにおいて、適切に切替時間を延長することができる。
【0161】
また、切替条件更新部210は、その時点の車両1の走行状態が所定のリセット条件を満たすと、上記切替時間を規定値に設定する。
【0162】
例えば、元の地域から運転者が車両1を運転することで任意の地域に移動した場合、地域や気温が変化するが、走行により切替時間も調整される。しかし、実際の走行に依らず、陸送、空輸、海上輸送により、車両1が移動させられた場合、その間、地域や気温は変化するが、車両1を走行させていないので、切替時間は調整されない。したがって、切替時間が調整された後、車両1が走行する走行状態が大きく変化すると、元の地域で調整された切替時間が、移動後の地域や気温では適切な切替時間ではなくなるおそれがある。
【0163】
そこで、例えば、走行状態が、車両1が走行する地域および気温で示される場合、切替条件更新部210は、その時点の車両1の走行状態が、地域が寒冷地であり、かつ、気温が所定の温度未満である場合に、切替時間を寒冷地に適した第1規定値に設定する。
【0164】
具体的に、切替条件更新部210は、検知部190が取得した車両1の位置が、予め定められた寒冷地に相当するか否か判定する。ここで、寒冷地は、緯度および地形等によって定められ、例えば、積雪期間が年間90日以上、年平均気温が10度未満以下の地域であり、例えば、北海道、東北、北陸といった北緯37度以北、および、高冷地を示す。
【0165】
車両1の位置が寒冷地に相当すると判定すると、切替条件更新部210は、検知部190が取得した車両1近傍の気温が所定の温度未満、例えば、0度未満であるか否か判定する。そして、車両1近傍の気温が所定の温度未満であると判定すると、切替条件更新部210は、切替時間を第1規定値に設定する。ここで、第1規定値は、例えば、5秒といった予め定められている値である。
【0166】
ここでは、地域が寒冷地であり、かつ、気温が所定の温度未満であるという2つのパラメータをリセット条件としている。これは、寒冷地であるが気温が高かったり、気温は低いが寒冷地ではなかったりした場合に、切替時間を第1規定値に設定する必要がないからである。また、折角調整した切替時間を安易に再設定すべきではなく、地域が寒冷地であり、かつ、気温が所定の温度未満であるという厳格なリセット条件を満たした場合にのみ、切替時間を第1規定値に設定するためである。
【0167】
なお、切替条件更新部210は、地域が寒冷地ではない、または、気温が所定の温度以上である状態から、地域が寒冷地、かつ、気温が所定の温度未満の状態に変化したタイミングで切替時間を第1規定値に設定し、一度、切替時間を第1規定値に設定すると、地域が寒冷地であり、かつ、気温が所定の温度未満の状態が維持されている間、切替時間を再設定しない。すなわち、地域が寒冷地であり、かつ、気温が所定の温度未満であったとしても、その前に、既に、切替時間が第1規定値に設定されている場合、切替条件更新部210は、何ら、処理を行わない。
【0168】
また、切替条件更新部210は、リセット条件を満たすと、それまでに更新された切替時間の最新値を退避させるためメモリ174に記憶し、その後、切替時間を第1規定値に設定する。そして、切替条件更新部210は、リセット条件を満たしている状態から、リセット条件を満たしていない状態、すなわち、寒冷地ではない、または、所定の温度以上である状態に変化すると、メモリ174に記憶している切替時間を再び設定する。かかる構成により、走行状態がリセット条件を満たさなくなった場合に、調整された適切な切替時間に迅速に戻すことが可能となる。
【0169】
また、運転者は、それぞれ変速比の切替タイミングが異なることが多い。そうすると、切替時間が調整された後、車両1の運転者が他に代わると、元の運転者で調整された切替時間が、次の運転者では適切な切替時間ではなくなるおそれがある。また、次の運転者によって切替時間が調整されると、元の運転者にとっての適切な切替時間ではなくなるおそれもある。したがって、切替時間自体も運転者に合わせて変更することが望ましい。しかし、上述したように、切替時間を定めた切替条件テーブルは複数のパラメータを有しており、メモリ174の容量を費やしている。したがって、無制限に増える可能性がある運転者毎に切替条件テーブルを設定していると、メモリ174の容量が圧迫されるおそれがある。
【0170】
そこで、例えば、走行状態が、車両1を運転する運転者で示される場合、切替条件更新部210は、車両1の運転者が登録された運転者と異なる場合に切替時間を第2規定値に設定する。ここで、登録された運転者は、車両1の所有者等、切替時間を更新する対象となる運転者を示す。
【0171】
具体的に、切替条件更新部210は、検知部190が取得した運転者の顔が、当該車両1の所有者として予め登録されている顔に相当するか否か判定する。運転者の顔が登録されている顔と異なると判定すると、切替条件更新部210は、切替時間を第2規定値に設定する。ここで、第2規定値は、例えば、5秒といった予め定められている値である。
【0172】
なお、切替条件更新部210は、運転者の顔が登録されている顔に相当する状態から、運転者の顔が登録されている顔と異なる顔に変化したタイミングで切替時間を第2規定値に設定し、一度、切替時間を第2規定値に設定すると、運転者の顔が登録されている顔と異なる顔である状態が維持されている間、切替時間を再設定しない。すなわち、運転者の顔が登録されている顔と異なる顔であったとしても、その前に、既に、切替時間が第2規定値に設定されている場合、切替条件更新部210は、何ら、処理を行わない。
【0173】
また、切替条件更新部210は、リセット条件を満たすと、それまでに更新された切替時間の最新値を退避させるためメモリ174に記憶し、その後、切替時間を第2規定値に設定する。そして、切替条件更新部210は、リセット条件を満たしている状態から、リセット条件を満たしていない状態、すなわち、運転者の顔が登録されている顔に変化すると、メモリ174に記憶している切替時間を再び設定する。かかる構成により、走行状態がリセット条件を満たさなくなった場合に、調整された適切な切替時間に迅速に戻すことが可能となる。
【0174】
また、例えば、運転者が、種別が等しい道路を走行する場合、切替時間が、走行中に適切に調整される。しかし、道路の種別が変化する場合、例えば、車両1が一般道路を走行する場合と高速道路を走行する場合とでは、変速度合も変化する。したがって、切替時間が調整された後、車両1が走行する道路の種別が大きく変化すると、元の一般道路で調整された切替時間が、高速道路では適切な切替時間ではなくなるおそれがある。
【0175】
そこで、例えば、走行状態が、車両1が走行する道路の種別で示される場合、切替条件更新部210は、その時点の車両1の走行状態が、道路が高速道路、かつ、有料区間である場合に、切替時間を、高速道路に適した第3規定値に設定する。
【0176】
具体的に、切替条件更新部210は、検知部190が取得した車両1の位置が高速道路に相当するか否か判定する。
【0177】
車両1の位置が高速道路に相当すると判定すると、切替条件更新部210は、さらに、車両1の位置が有料区間に相当するか否か判定する。そして、車両1の位置が有料区間に相当すると判定すると、切替条件更新部210は、切替時間を第3規定値に設定する。ここで、第3規定値は、例えば、5秒といった予め定められている値である。
【0178】
ここでは、道路が高速道路、かつ、有料区間であるという2つのパラメータをリセット条件としている。これは、車両1が、実際は高速道路に位置していないのに検知部190が高速道路に位置していると判定したり、実際は有料区間に位置していないのに検知部190が有料区間に位置していると判定する誤判定を回避するためである。
【0179】
なお、切替条件更新部210は、道路が高速道路ではない、または、有料区間ではない状態から、道路が高速道路、かつ、有料区間である状態に変化したタイミングで切替時間を第3規定値に設定し、一度、切替時間を第3規定値に設定すると、高速道路、かつ、有料区間の状態が維持されている間、切替時間を再設定しない。すなわち、道路が高速道路、かつ、有料区間であったとしても、その前に、既に、切替時間が第3規定値に設定されている場合、切替条件更新部210は、何ら、処理を行わない。
【0180】
また、切替条件更新部210は、リセット条件を満たすと、それまでに更新された切替時間の最新値を退避させるためメモリ174に記憶し、その後、切替時間を第3規定値に設定する。そして、切替条件更新部210は、リセット条件を満たしている状態から、リセット条件を満たしていない状態、すなわち、高速道路ではない(高速道路から出た)、または、有料区間ではない(有料区間から出た)状態に変化すると、メモリ174に記憶している切替時間を再び設定する。かかる構成により、走行状態がリセット条件を満たさなくなった場合に、調整された適切な切替時間に迅速に戻すことが可能となる。
【0181】
図12は、第3の実施形態の変形例に係る制御部170による変速モード切替処理を示すフローチャートである。かかるフローチャートは、所定の割込み周期毎に実行される。
【0182】
図12に示すように、切替条件更新部210は、その時点の車両1の走行状態として、地域が寒冷地であり、かつ、気温が所定の温度未満であるか否か判定する(S500)。地域が寒冷地であり、かつ、気温が所定の温度未満であると判定すると(S500におけるYES)、切替条件更新部210は、リセットフラグが0であるか否か判定する(S502)。ここで、リセットフラグは、リセット条件が満たされているか否かを示し、リセットフラグが1であればリセット条件が満たされており、リセットフラグが0であればリセット条件が満たされていないことを示す。
【0183】
リセットフラグが0であると判定すると(S502におけるYES)、切替条件更新部210は、リセット条件を満たしていない状態からリセット条件を満たす状態に変化したと判断し、それまでに更新された切替時間の最新値を退避させるためメモリ174に記憶する(S504)。続いて、切替条件更新部210は、切替時間を第1規定値に設定する(S506)。切替時間を第1規定値に設定すると(S506)、または、リセットフラグが0ではないと判定すると(S502におけるNO)、切替条件更新部210は、リセットフラグを1に設定し(S508)、変速モード切替処理を終了する。
【0184】
また、その時点の車両1の走行状態として、地域が寒冷地ではなく、または、気温が所定の温度以上であると判定すると(S500におけるNO)、切替条件更新部210は、車両1の運転者が登録された運転者と異なるか否か判定する(S510)。車両1の運転者が登録された運転者と異なると判定すると(S510におけるYES)、切替条件更新部210は、リセットフラグが0であるか否か判定する(S512)。リセットフラグが0であると判定すると(S512におけるYES)、切替条件更新部210は、リセット条件を満たしていない状態からリセット条件を満たす状態に変化したと判断し、それまでに更新された切替時間の最新値を退避させるためメモリ174に記憶する(S514)。続いて、切替条件更新部210は、切替時間を第2規定値に設定する(S516)。切替時間を第2規定値に設定すると(S516)、または、リセットフラグが0ではないと判定すると(S512におけるNO)、切替条件更新部210は、リセットフラグを1に設定し(S508)、変速モード切替処理を終了する。
【0185】
また、車両1の運転者が登録された運転者と等しいと判定すると(S510におけるNO)、切替条件更新部210は、その時点の車両1の走行状態として、道路が高速道路、かつ、有料区間であるか否か判定する(S518)。その時点の車両1の走行状態として、道路が高速道路、かつ、有料区間であると判定すると(S518におけるYES)、切替条件更新部210は、リセットフラグが0であるか否か判定する(S520)。リセットフラグが0であると判定すると(S520におけるYES)、切替条件更新部210は、リセット条件を満たしていない状態からリセット条件を満たす状態に変化したと判断し、それまでに更新された切替時間の最新値を退避させるためメモリ174に記憶する(S522)。続いて、切替条件更新部210は、切替時間を第3規定値に設定する(S524)。切替時間を第3規定値に設定すると(S524)、または、リセットフラグが0ではないと判定すると(S520におけるNO)、切替条件更新部210は、リセットフラグを1に設定し(S508)、変速モード切替処理を終了する。
【0186】
また、その時点の車両1の走行状態として、道路が高速道路ではない、または、有料区間ではないと判定すると(S518におけるNO)、切替条件更新部210は、リセットフラグが1であるか否か判定する(S526)。リセットフラグが1であると判定すると(S526におけるYES)、切替条件更新部210は、リセット条件を満たしている状態からリセット条件を満たしていない状態に変化したと判断し、メモリ174に記憶している切替時間を再び設定する(S528)。メモリ174に記憶している切替時間を再び設定すると(S528)、または、リセットフラグが1ではないと判定すると(S526におけるNO)、切替条件更新部210は、リセットフラグを0に設定し(S530)、変速モード切替処理を終了する。
【0187】
かかる構成により、車両1が走行する走行状態が大きく変化した場合であっても、切替時間が、その走行状態に応じた適切な規定値に設定される。また、走行状態が戻った場合においても、元の走行状態に応じた適切な切替時間に戻すことができる。したがって、運転者が最適と感じる切替時間となるまでに、何度も特定解除操作を行う必要がなくなり、運転者の煩わしさを解消することができる。
【0188】
なお、ここでは、説明の便宜上、切替条件として、テンポラリマニュアルモードに切り替わってからの経過時間が切替時間以上となった場合に、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わる場合を説明した。しかし、かかる場合に限らず、切替条件として、第1の実施形態のように、テンポラリマニュアルモードに切り替わってからの変速比変化値が変速比切替値以上であることや、所定のタイミングからの経過時間が切替時間以上であることを採用することもできる。
【0189】
また、ここでは、切替時間を延長する判定がされた場合、その時点の切替時間に特定時間を加算して、新たに切替時間とする例を挙げて説明した。しかし、かかる場合に限らず、第2の実施形態に示した様々な技術によって切替時間を延長することもできる。
【0190】
また、ここでは、規定値として、走行状態が、地域が寒冷地であり、かつ、気温が所定の温度未満である場合に採用される第1規定値、車両1の運転者が登録された運転者と異なる場合に採用される第2規定値、走行状態が、道路が高速道路、かつ、有料区間である場合に採用される第3規定値を挙げて説明したが、かかる規定値はそれぞれ任意に設定することができる。
【0191】
また、ここでは、切替条件更新部210が、その時点の車両1の走行状態が所定のリセット条件を満たすと、切替条件を規定値に自動的に設定する例を挙げて説明した。しかし、かかる場合に限らず、その時点の車両1の走行状態が所定のリセット条件を満たすと、切替条件更新部210は、その旨を運転者に報知し、切替時間等、切替条件を規定値に設定するか否か運転者に手動で選択させるとしてもよい。
【0192】
(第4の実施形態)
ところで、車両1では、複数の走行モードを有する場合がある。複数の走行モードでは、それぞれアクセルの入力に対する駆動力(エンジン出力)の増加態様が異なる。運転者は、道路の種別、路面の勾配、路面の状態、天候に応じて走行モードを切り替えることで、ストレスのない快適な走行を行うことができる。また、上述した第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態により、適切な切替条件を実現することが可能となる。したがって、走行モードが複数ある場合であっても切替条件を調整すれば、運転者は、パドル操作後、所望する切替条件に達した場合に、スムーズに自動変速モードに切り替えることができる。しかし、複数の走行モードを有する車両1において、複数の走行モードに対し共通の切替条件を用いるとすると、走行モードの変化に対して切替条件が適応せず、運転者の快適な走行が損なわれるおそれがある。
【0193】
そこで、第4の実施形態では、複数の走行モードそれぞれに対し、個別に切替時間を調整する。
【0194】
図13は、第4の実施形態に係る車両1を示す概略図である。第4の実施形態に係る車両1は、
図6で示した上記第2の実施形態に係る車両1の構成要素であるエンジン100と、駆動輪110と、ドライブシャフト120と、ステアリングホイール130と、自動変速機140と、マイナスパドルスイッチ150aと、プラスパドルスイッチ150bと、シフトレバー160と、制御部170と、ブレーキペダル180と、検知部190とに加えて、走行モード切替スイッチ192をさらに備える。かかる第4の実施形態において、第1の実施形態、第2の実施形態、および、第3の実施形態と同一の機能部についてはそれぞれで既に説明しているので、その詳細な説明を省略する。
【0195】
走行モード切替スイッチ192は、運転席近傍に設けられ、走行モードを切り替えるための運転者の操作を受け付ける。走行モードとしては、例えば、インテリジェンスモード(以下、「Iモード」という。)、スポーツモード(以下、「Sモード」という。)、スポーツシャープモード(以下、「S#モード」という。)が設けられている。Iモードは、動力性能と燃費性能を両立した基本モードである。Sモードは、基本モードより、動力性能を向上させ、アクセルの入力に対する駆動力の増加速度(速度およびエンジン回転数の上昇度合)ならびに応答性を高めたモードである。S#モードは、Sモードより、さらに動力性能を向上させ、アクセルの入力に対する駆動力の増加速度および応答性を高めたモードである。例えば、Iモード、Sモード、S#モードそれぞれのアクセル開度に対する駆動力の特性は、アクセル開度の増加に対し駆動力も増加する点が共通し、同一アクセル開度に対する駆動力は、Iモード≦Sモード≦S#モードの関係となる。
【0196】
図14は、本実施形態に係る制御部170の機能構成の一例を示すブロック図である。また、第4の実施形態に係る制御部170は、
図7で示した上記第2の実施形態に係る制御部170の構成要素であるパドル操作検出部200と、変速比検出部202と、変速比変更部204と、変速モード切替部206と、変化情報算出部208と、切替条件更新部210と、テーブル記憶部212と、単位変化値判定部214と、タイマ計時部216と、ブレーキ操作検出部318と、切替時間延長判定部320と、路面状況判定部322と、テーブル取得部324と、誤操作判定部326とに加えて、走行モード切替部328をさらに含む。なお、ここでは、説明の便宜上、切替条件として、テンポラリマニュアルモードに切り替わってからの経過時間が切替時間以上となった場合に、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動的に切り替わる場合を説明する。
【0197】
走行モード切替部328は、イグニッション投入に応じて、走行モードを基本モードであるIモードに設定する。そして、走行モード切替部328は、走行モード切替スイッチ192に対する運転者の操作に基づいて、走行モードを、Iモード、Sモード、S#モードのいずれか1に切り替える。
【0198】
このような複数の走行モードそれぞれに対し切替時間を調整すれば、車両1では、走行モードそれぞれにおいて、パドル操作後、走行モードそれぞれに適した切替時間に達した場合にスムーズに自動変速モードに切り替わることとなる。そこで、テーブル記憶部212に記憶された切替条件テーブルにおいて、複数の走行モードそれぞれに切替時間を対応付ける。そして、以下に示すように、走行モード毎に切替時間を調整する。
【0199】
変速モード切替部206は、運転者がシフトレバー160をDレンジになるように操作すると、自動変速モードに切り替える。また、変速モード切替部206は、運転者がシフトレバー160をMレンジになるように操作すると、マニュアルモードに切り替える。また、変速モード切替部206は、現在の変速モードが自動変速モードである場合に、運転者によりパドル操作が行われると、テンポラリマニュアルモードに切り替える。また、変速モード切替部206は、現在の変速モードがテンポラリマニュアルモードである場合に、運転者により復帰操作が行われると、自動変速モードに切り替える。
【0200】
また、タイマ計時部216の第1タイマは、上述したように、例えば、運転者のパドル操作からの経過時間を計時する。変速モード切替部206は、運転者のパドル操作後、運転者による復帰操作が行われていない状態で、タイマ計時部216の第1タイマが計時した経過時間が、そのときの走行モードに対応する切替時間以上となったか否かを判定する。そして、変速モード切替部206は、経過時間が、そのときの走行モードに対応する切替時間以上となると、変速モードをテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動で切り替える。
【0201】
切替条件更新部210は、走行モード単位で、切替時間を、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わってから、運転者のパドル操作により自動変速モードからテンポラリマニュアルモードに切り替わるまでの経過時間に更新する。こうして、運転者の所望する切替時間に達した場合に、迅速に自動変速モードに切り替えることができ、変速モードの切り替えに係る運転者の煩わしさを低減させることができる。
【0202】
また、切替条件更新部210は、切替時間延長判定部320により、切替時間を延長する判定がされた場合、その時点の切替時間に特定時間を加算して、新たに、そのときの走行モードの切替時間とする。こうして、運転者が切替時間の延長を望むタイミングにおいて、適切に切替時間を延長することができる。
【0203】
このように、切替条件更新部210は、走行モード毎に切替時間を更新する。なお、運転者が初めて車両1で走行する場合、いずれの走行モードでも切替時間の調整が行われていない。したがって、切替条件更新部210は、任意の走行モードでの走行が初めての場合、走行モードに予め設定された初期値を切替時間として設定し、当該初期値を基準に切替時間を更新する。
【0204】
そうすると、運転者が初めて用いる走行モードでは、必ず、切替時間として初期値が設定され、切替時間の調整に長時間が費やされることになる。換言すれば、任意の走行モードにおける切替時間が調整されていたとしても、他の走行モードでは、再度、初期値から調整しなければならないので、走行モードの数だけ、調整時間を要することとなる。
【0205】
そこで、切替条件更新部210は、運転者が初めて用いる走行モードであっても、調整された他の走行モードの情報を利用し、当該走行モードに、他の走行モードの情報を反映させることで調整時間の短縮を図る。
【0206】
まず、切替条件更新部210は、選択した走行モードを含む複数の走行モードにおいて切替時間の調整が行われているか否か判定する。ここで、切替条件テーブルでは、複数の走行モードそれぞれに対し、切替時間に加え、さらに、初期値、および、調整開始フラグが対応付けられているとする。初期値として、例えば、IモードにはI初期値、SモードにはS初期値、S#モードにはS#初期値が対応付けられている。かかる初期値は任意に設定することができる。
【0207】
調整開始フラグは、切替時間の調整が開始されたか、すなわち、1回でも切替時間が経過時間に更新されたか否かを示し、調整開始フラグが1であれば既に切替時間の調整が開始されており、調整開始フラグが0であれば、まだ切替時間の調整が開始されていないことを示す。調整開始フラグは、運転者が初めて車両1で走行するタイミングでは、全ての走行モードについて0が設定されている。切替条件更新部210は、運転者のパドル操作により自動変速モードからテンポラリマニュアルモードに切り替わると、それまでの経過時間で、走行モードに対応する切替時間を更新するとともに、調整開始フラグを1に変更する。こうして、1回でも切替時間が経過時間に更新されると、その後、調整開始フラグは1を維持する。
【0208】
上記のように、運転者が初めて車両1で走行するタイミングでは、Iモード、Sモード、S#モードの全ての走行モードの調整開始フラグが0となっている。ここで、運転者によって走行モードとしてIモードが選択されたとする。切替条件更新部210は、Iモードでの走行が開始されたことに応じ、Iモードを含む複数の走行モードにおいて初期条件を満たすか否か判定する。ここで、初期条件は、例えば、調整開始フラグが0となっていることである。切替条件更新部210は、Iモードが初期条件を満たし、他のSモード、S#モードも初期条件を満たしているので、Iモードに対応した切替時間としてI初期値を設定する。
【0209】
その後、切替条件更新部210は、Iモードにおいて、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わった後、運転者のパドル操作により自動変速モードからテンポラリマニュアルモードに切り替わると、切替時間を、その経過時間に更新する。こうして、Iモードにおける切替時間が、逐次、適切に調整されることとなる。このとき、切替条件更新部210は、Iモードの調整開始フラグを1に設定する。
【0210】
ここで、運転者によって走行モードがIモードからSモードに切り替えられたとする。切替条件更新部210は、Sモードでの走行が開始されたことに応じ、Sモードを含む複数の走行モードにおいて初期条件を満たすか否か判定する。このとき、Sモードは初期条件を満たし、他のS#モードも初期条件を満たすが、Iモードは調整開始フラグが1となっており初期条件を満たさない。切替条件更新部210は、Sモードが初期条件を満たし、Iモードが初期条件を満たさないと、SモードにIモードの情報を反映させる。
【0211】
具体的に、切替条件更新部210は、Sモードに対応した切替時間として、Iモードに対応した切替時間とI初期値との差をS初期値に加算した値を設定する。例えば、Iモードに対応した切替時間がI初期値より2秒大きい場合、切替条件更新部210は、S初期値に2秒加算した値をSモードに対応した切替時間とする。なお、ここでは、切替時間がI初期値より2秒大きい場合を説明したが、切替時間がI初期値より2秒小さい場合、すなわち、差が負の値となる場合、S初期値に負の値である-2秒を加算した値をSモードに対応した切替時間とする。また、切替条件更新部210は、Sモードに対応した切替時間も調整されたとして、Sモードの調整開始フラグを1に設定する。
【0212】
その後、切替条件更新部210は、Sモードにおいて、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替わった後、運転者のパドル操作により自動変速モードからテンポラリマニュアルモードに切り替わると、切替時間を、その経過時間に更新する。こうして、Sモードにおける切替時間が、逐次、適切に調整されることとなる。
【0213】
ここで、運転者によって走行モードがSモードからS#モードに切り替えられたとする。切替条件更新部210は、S#モードでの走行が開始されたことに応じ、S#モードを含む複数の走行モードにおいて初期条件を満たすか否か判定する。このとき、S#モードは初期条件を満たすが、他のIモードおよびSモードは調整開始フラグが1となっており初期条件を満たさない。切替条件更新部210は、S#モードが初期条件を満たし、IモードおよびSモードが初期条件を満たさないと、S#モードに、例えば、Iモードの情報を反映させる。具体的に、切替条件更新部210は、S#モードに対応した切替時間として、Iモードに対応した切替時間とI初期値との差をS#初期値に加算した値を設定する。例えば、Iモードに対応した切替時間がI初期値より3秒大きい場合、切替条件更新部210は、S#初期値に3秒加算した値を、S#モードに対応した切替時間とする。また、切替条件更新部210は、S#モードに対応した切替時間も調整されたとして、S#モードの調整開始フラグを1に設定する。
【0214】
なお、ここでは、S#モードに反映する走行モードをIモードとしたが、かかる場合に限らない。例えば、走行モードそれぞれに優先順位を割り当て、初期条件を満たしていない走行モードのうち、優先順位が最も高い走行モードを反映するとしてもよい。また、走行モードが初期条件を満たさなくなったタイミングが最も古い走行モードを反映するとしてもよい。また、走行モードが初期条件を満たさなくなってから経過時間を切替時間に更新した回数が最も多い走行モードを反映するとしてもよい。
【0215】
図15は、第4の実施形態の変形例に係る制御部170による変速モード切替処理を示すフローチャートである。かかるフローチャートは、所定の割込み周期毎に実行される。なお、運転者が初めて車両1で走行するタイミングでは、Iモード、Sモード、S#モードの全ての走行モードの調整開始フラグが0となっているとする。
【0216】
運転者によって任意の走行モードが選択されたとする。走行モード切替部328は、走行モードを選択された走行モードに切り替える。切替条件更新部210は、当該走行モードでの走行が開始されたことに基づいて、当該走行モードの初期条件を満たすか否か、すなわち、当該走行モードの調整開始フラグ(当該調整開始フラグ)が0であるか否か判定する(S600)。当該走行モードの調整開始フラグが0でなければ(S600におけるNO)、すなわち、当該走行モードによって切替時間の調整が既に開始されていれば、切替条件更新部210は、他の走行モードの情報を反映する必要がないので、変速モード切替処理を終了する。
【0217】
当該走行モードの調整開始フラグが0であれば(S600におけるYES)、切替条件更新部210は、他の走行モードの調整開始フラグ(他の調整開始フラグ)が0であるか否か判定する(S602)。他の走行モードの調整開始フラグが0であれば(S602におけるYES)、反映できる他の走行モードの情報がないので、当該走行モードに対応した切替時間として当該走行モードに対応した初期値を設定する(S604)。
【0218】
続いて、変速モード切替部206は、シフトレバー160に対する運転者の操作に基づいて、復帰操作がされたか否かを判定する(S606)。復帰操作がされなかったと判定された場合(S606におけるNO)、変速モード切替処理を終了する。復帰操作がされたと判定された場合(S606におけるYES)、変速モード切替部206は、変速モードをテンポラリマニュアルモードから自動変速モードに切り替える(S608)。また、切替条件更新部210は、そのときの走行モードに対応した切替時間を、経過時間に更新する(S610)。そして、切替条件更新部210は、当該走行モードの調整開始フラグを1に設定し(S612)、変速モード切替処理を終了する。
【0219】
また、他の走行モードの調整開始フラグ(他の調整開始フラグ)が0でなければ(S602におけるNO)、切替条件更新部210は、当該走行モードに他の走行モードに対応した切替時間に関する情報を反映させる(S614)。具体的に、切替条件更新部210は、当該走行モードに対応した切替時間として、他の走行モードに対応した切替時間と他の走行モードの初期値との差を当該走行モードの初期値に加算した値を設定する。そして、切替条件更新部210は、当該走行モードの調整開始フラグを1に設定し(S616)、変速モード切替処理を終了する。
【0220】
こうして、運転者が初めて用いる走行モードであっても、調整された他の走行モードの情報を利用し、当該走行モードに他の走行モードの情報を反映させることができるので、当該走行モードに対応した切替時間の調整に時間を費やさずに済み、切替時間の調整時間を短縮することが可能となる。
【0221】
なお、ここでは、第1走行モードをIモード、第1初期値を第1走行モードの初期値であるI初期値、第2走行モードをSモード、第2初期値を第2走行モードの初期値であるS初期値とし、第1走行モードの開始時において、第1走行モードが初期条件を満たし、第2走行モードが初期条件を満たすと、第1走行モードに対応した切替時間として第1初期値を設定する例を挙げて説明した。また、第1走行モードをSモード、第1初期値を第1走行モードの初期値であるS初期値、第2走行モードをIモード、第2初期値を第2走行モードの初期値であるI初期値とする例、第1走行モードの開始時において、第1走行モードが初期条件を満たし、第2走行モードが初期条件を満たしていないと、第1走行モードに対応した切替時間として、第2走行モードに対応した切替時間と第2初期値との差を第1初期値に加算した値を設定した。しかし、かかる場合に限らず、第1走行モード、第2走行モードは、それぞれIモード、Sモード、S#モードのいずれも採用することが可能である。
【0222】
また、ここでは、初期値であるI初期値、S初期値、S#初期値の関係性に言及していないが、Iモード、Sモード、S#モードの特性により、それぞれの初期値に関係性を設けた方がよい場合、例えば、I初期値>S初期値>S#初期値や、I初期値<S初期値<S#初期値としたり、I初期値を基準に、S初期値とS#初期値とに予め差を設けてもよい。
【0223】
また、ここでは、説明の便宜上、切替条件として、テンポラリマニュアルモードに切り替わってからの経過時間が切替時間以上となった場合に、テンポラリマニュアルモードから自動変速モードに自動的に切り替わる場合を説明した。しかし、かかる場合に限らず、切替条件として、第1の実施形態のように、テンポラリマニュアルモードに切り替わってからの変速比変化値が変速比切替値以上であることや、所定のタイミングからの経過時間が切替時間以上であることを採用することもできる。
【0224】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0225】
なお、上述した実施形態に係る車両1による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、または、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせのうちいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部または外部に設けられる非一時的な記憶媒体(non-transitory media)に予め格納される。そして、プログラムは、例えば、非一時的な記憶媒体(例えば、ROM)から一時的な記憶媒体(例えば、RAM)に読み出され、CPUなどのプロセッサにより実行される。
【0226】
また、上述した実施形態によれば、上記車両1の各機能の処理を実行するためのプログラムを提供することができる。さらに、当該プログラムが格納された、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記憶媒体を提供することもできる。非一時的な記憶媒体は、例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のディスク型記憶媒体であってもよいし、または、フラッシュメモリ、USBメモリ等の半導体メモリであってもよい。
【符号の説明】
【0227】
1 車両
150 パドルスイッチ
160 シフトレバー
170 制御部
172 プロセッサ
174 メモリ
190 検知部
192 走行モード切替スイッチ
200 パドル操作検出部
202 変速比検出部
204 変速比変更部
206 変速モード切替部
208 変化情報算出部
210 切替条件更新部
212 テーブル記憶部
214 単位変化値判定部
216 タイマ計時部
318 ブレーキ操作検出部
320 切替時間延長判定部
322 路面状況判定部
324 テーブル取得部
326 誤操作判定部
328 走行モード切替部