(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163742
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】巻芯シャフト用チューブおよび巻芯シャフト
(51)【国際特許分類】
B65H 75/18 20060101AFI20241115BHJP
B65H 18/04 20060101ALI20241115BHJP
B65H 75/08 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B65H75/18 C
B65H18/04
B65H75/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079597
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000114710
【氏名又は名称】ヤマウチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉伸
(72)【発明者】
【氏名】山田 大地
【テーマコード(参考)】
3F055
3F058
【Fターム(参考)】
3F055AA01
3F055AA05
3F055AA12
3F055CA02
3F058AA01
3F058AA02
3F058AA03
3F058AB01
3F058BB09
3F058BB11
3F058BB12
3F058BB15
3F058DA04
3F058DB03
3F058DB05
3F058JA16
(57)【要約】
【課題】巻芯を支持するための巻芯シャフトにおいて、らせん状に巻かれているチューブの姿勢をより安定させる。
【解決手段】巻芯シャフト1の円筒体2にらせん状に巻かれる弾性体からなるチューブ3であって、チューブ3の軸方向と直交する断面において、流体が通過する空洞部31は長手方向Xに扁平な形状である。空洞部31の断面における中心31aが、チューブ3の断面における中心3aから空洞部31の扁平形状の短手方向Yの一方Y1側に変位した位置にある。チューブ3の一方側の厚みA2に、空洞部31の扁平形状の長手方向Xの端31bの厚みA1よりも薄い部分35aがある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯シャフトの円筒体にらせん状に巻かれる弾性体からなるチューブであって、
前記チューブの軸方向と直交する断面において、流体が通過する空洞部は扁平形状であり、
前記空洞部の前記断面における中心が、前記チューブの前記断面における中心から前記空洞部の扁平形状の短手方向の一方側に変位した位置にあり、
前記チューブの前記一方側の厚みに、前記空洞部の扁平形状の長手方向の端の厚みよりも薄い部分があることを特徴とする巻芯シャフト用チューブ。
【請求項2】
前記チューブの外形は、前記空洞部の扁平形状の長手方向と同じ方向が長手方向となる扁平形状であることを特徴とする請求項1に記載の巻芯シャフト用チューブ。
【請求項3】
前記チューブの前記一方側が中心から外側に向かって、前記断面において凸形状であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の巻芯シャフト用チューブ。
【請求項4】
円筒体と、
前記円筒体にらせん状に巻かれる請求項1に記載のチューブとを備えていることを特徴とする、巻芯シャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルム、紙、不織布などのシートを加工して製品を製造するメーカーの製造工程において、巻芯へのシートの巻取り、または巻芯からのシートの繰り出しなどに使用される巻芯シャフト用チューブおよび巻芯シャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム、紙、不織布などのシートを加工して製品を製造するメーカーの製造工程において、円筒状の巻芯にシートを巻き取る工程や、巻芯に巻かれたシートを繰り出す工程が存在する。これらの工程では、巻芯に巻芯シャフトを挿入し、巻芯シャフトによって巻芯を回転可能に支持する。巻芯シャフトの一例として、空気圧により紙管を固定する紙管軸が存在する(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図6(A)および
図6(B)は、特許文献1に記載の紙管軸20の主要部を示す断面図であり、
図6(A)および
図6(B)の左右方向が紙管軸20の軸方向である。特許文献1に記載の紙管軸20は、紙管軸筒20’と、紙管軸筒20’の外周面に形成されたらせん状の溝21bと、溝21bに巻かれたチューブ22と、を備えている。チューブ22には、圧縮空気が供給される。紙管軸20に紙管36(巻芯)が挿入されるときには、チューブ22には圧縮空気が注入されておらず、チューブ22は収縮した状態である。このため、紙管36を紙管軸20に挿入するときに紙管36がチューブ22に引っかかりにくい。よって、紙管36を紙管軸20に対してスムーズに着脱できる。紙管軸20に紙管36を連結する場合、紙管36に紙管軸筒20’を挿入した状態でチューブ22に圧縮空気が注入される。これにより、チューブ22が膨張してチューブ22の外径が大きくなり、チューブ22が紙管36に密着する。これにより、紙管軸20と紙管36が一体回転可能に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チューブ22は、紙管36に接触する外径側部分が肉厚部23を構成している。一方で、チューブ22において、紙管軸筒20’の溝21bに接触する内径側部分の厚みが、肉厚部23の厚みより薄く且つ均等な厚みとなっている。このような構成のため、チューブ22の内径側部分は、外力によって弾性変形するときの方向が定まらない。よって、チューブ22の内径側部分は、紙管軸筒20’にチューブ22が巻かれたときの荷重バランスの不均一などによってチューブ22の幅方向両端部分の変形量を一定にできず、たとえば、
図6(B)に示すように、厚肉部23(チューブ22の外径側部分)が紙管軸筒20’に対して傾いた姿勢となるおそれがある。このような姿勢のままチューブ22に圧縮空気が注入されると、チューブ22の膨張に伴うチューブ22の外径拡大が所望の値まで至らず、チューブ22と紙管36との結合力が弱くなるおそれがある。
【0006】
本開示の目的の一つは、巻芯を支持するための巻芯シャフトにおいて、らせん状に巻かれているチューブの姿勢をより安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、下記の巻芯シャフト用チューブおよび巻芯シャフトを要旨とする。
【0008】
(1) 巻芯シャフトの円筒体にらせん状に巻かれる弾性体からなるチューブであって、
前記チューブの軸方向と直交する断面において、流体が通過する空洞部は扁平形状であり、
前記空洞部の前記断面における中心が、前記チューブの前記断面における中心から前記空洞部の扁平形状の短手方向の一方側に変位した位置にあり、
前記チューブの前記一方側の厚みに、前記空洞部の扁平形状の長手方向の端の厚みよりも薄い部分があることを特徴とする巻芯シャフト用チューブ。
【0009】
(2) 前記チューブの外形は、前記空洞部の扁平形状の長手方向と同じ方向が長手方向となる扁平形状であることを特徴とする前記(1)に記載の巻芯シャフト用チューブ。
【0010】
(3) 前記チューブの前記一方側が中心から外側に向かって、前記断面において凸形状であることを特徴とする、前記(1)または前記(2)に記載の巻芯シャフト用チューブ。
【0011】
(4) 円筒体と、
前記円筒体にらせん状に巻かれる前記(1)~前記(3)の何れか1項に記載のチューブとを備えていることを特徴とする、巻芯シャフト。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、巻芯を支持するための巻芯シャフトにおいて、らせん状に巻かれているチューブの姿勢をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態における巻芯シャフトおよび巻芯の正面図であり、一部を断面で示している。
【
図2】
図2(A)は、
図1の巻芯シャフトの一部を拡大した図である。
図2(B)は、
図2(A)に示す巻芯シャフトに巻芯が一体回転可能に連結された状態を示す図である。
【
図3】
図3は、チューブ単体をチューブの軸方向と直交する断面で示した図である。
【
図4】
図4(A)および
図4(B)は、
図1のIV-IV線に沿う巻芯シャフトの軸直断面図であり、チューブは想像線である二点鎖線で示している。
【
図5】
図5(A)は、変形例における巻芯シャフトの正面図であり、一部を断面で示している。
図5(B)は、
図5(A)に示す巻芯シャフトに巻芯が一体回転可能に連結された状態において、一部を拡大した図を示している。
【
図6】
図6(A)および
図6(B)は、特許文献1に記載の紙管軸の主要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<巻芯シャフトの全体構成>
図1は、本開示の一実施形態における巻芯シャフト1および巻芯100の正面図であり、一部を断面で示している。
図1では、巻芯シャフト1は、巻芯100との連結が解除されている状態を示している。
図2(A)は、
図1の巻芯シャフト1の一部を拡大した図である。
図2(B)は、
図2(A)に示す巻芯シャフト1に巻芯100が一体回転可能に連結された状態を示す図である。
【0016】
図1~
図2(B)に示すように、巻芯シャフト1は、巻芯100を支持するために用いられる。巻芯シャフト1の全長は特に限定されないが、全長が1.0m~1.5m程度の巻芯100を支持するのに適した全長を例示できる。加圧された流体が巻芯シャフト1のチューブ3へ供給されてチューブ3が膨張することにより、巻芯シャフト1が巻芯100に連結(接触)する。これにより、巻芯シャフト1は、巻芯100とトルク伝達可能に連結され、巻芯100と一体回転可能となる。一方、加圧された流体がチューブ3から排出されてチューブ3が収縮することにより、巻芯シャフト1と巻芯100との連結が解除される。これにより、巻芯シャフト1に対して巻芯100を着脱可能となり、巻芯シャフト1を巻芯100へ容易に挿入できるとともに巻芯シャフト1を巻芯100から容易に引き抜くことができる。
【0017】
巻芯シャフト1に着脱される巻芯100は、筒状であればよい。巻芯100として、フィルム、紙、不織布などのシートが巻かれる巻芯を例示できる。巻芯100の内径は、加圧された流体がチューブ3に供給されて膨張したときの巻芯シャフト1の外径と略同じである。チューブ3を膨張させるためにチューブ3に供給される流体として、空気や窒素などの気体、水などの液体を例示できる。本実施形態では、チューブ3に圧縮空気が供給される形態を例に説明する。
【0018】
巻芯シャフト1は、円筒体2と、円筒体2にらせん状に巻かれるチューブ3と、を備えている。
【0019】
巻芯シャフト1は、上記の構成に加えて、一対の端軸4,5と、一対のカラー6,7と、カバー8と、をさらに備えていてもよい。
【0020】
<円筒体>
円筒体2は、軽量であることが好ましく、たとえば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)製である。なお、円筒体2は、CFRP以外の合成樹脂製であってもよいし、アルミニウム合金などの非鉄金属製であってもよいし、鉄製であってもよい。円筒体2の外周面2aは、らせん溝などの溝を形成されておらず、円筒形状である。円筒体2の一対の端部に一対の端軸4,5が固定されている。
【0021】
<端軸>
端軸4,5は、図示しない軸受に支持される部分である。各端軸4,5の一部は、円筒体2から突出しており、この突出した部分が軸受に支持される。
【0022】
一方の端軸4内には、給気孔4aが形成されている。給気孔4aは、圧縮空気が通過する部分である。給気孔4aは、本実施形態では、端軸4の先端(
図1の左端)から端軸4の中心軸線に沿って形成されているとともに、端軸4の外周面に開口している。端軸4の先端側部分にプラグ9が取り付けられている。プラグ9は、図示しないホースを介してエアコンプレッサに接続されることで、エアコンプレッサからの圧縮空気を給気孔4aへ導入する。
【0023】
給気孔4aのうち、端軸4の外周面に開口している部分には、ジョイント10が取り付けられている。ジョイント10は、中空部材であり、チューブ3の一端に接続されている。給気孔4aからの圧縮空気は、ジョイント10を通ってチューブ3の空洞部31内に供給される。
【0024】
<カラー>
端軸4の外周面には、筒状のカラー6が固定されている。カラー6は、ジョイント10と、チューブ3の一部を取り囲むように配置されている。短軸5の外周面には、筒状のカラー7が固定されている。
【0025】
<チューブ>
チューブ3は、たとえばゴム製であり、弾性体からなる。チューブ3は、弾性体であればよく、具体的な材質は限定されない。ゴム以外のチューブ3の材質として、熱可塑性ウレタンエラストマーや、熱可塑性ポリエステル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル樹脂や、ウレタン樹脂などの軟質合成樹脂を例示できる。チューブ3は、たとえば、押出成形やブロー成形によって作られる。
【0026】
チューブ3は、円筒体2の外周面2aにらせん状に巻かれており、円筒体2の長手方向に隣り合う部分同士が直接円筒体2の長手方向に向かい合っている。チューブ3において、円筒体2の長手方向に隣り合う部分同士は、接触していてもよいし、接触していなくてもよい。チューブ3の軸方向におけるチューブ3の一端は、ジョイント10によって固定されている。チューブ3の軸方向におけるチューブ3の他端(図示せず)は、他方の端軸5に固定されたプラグによって固定されているとともに空洞部31が塞がれている。なお、チューブ3の軸方向におけるチューブ3の他端(図示せず)は、端軸5に固定され、且つ、空洞部31が塞がれて圧縮空気が漏れないようにされていればよく、具体的な構成は限定されない。たとえば、チューブ3の軸方向におけるチューブ3の他端部(図示せず)は、バルブなどによって圧縮空気を排出可能に構成されていてもよい。
【0027】
チューブ3には、圧縮空気が通過する空洞部31が形成されている。空洞部31に圧縮空気が供給されることで、チューブ3が膨張する。空洞部31は、チューブ3の軸方向全域に亘って形成されている。
【0028】
図3は、チューブ3単体をチューブ3の軸方向と直交する断面で示した図である。以下では、特に説明無き場合、
図3に示すように、チューブ3に外力が加えられていない自由状態を基準に説明する。
【0029】
チューブ3の軸方向と直交する断面において、空洞部31は扁平形状である。なお、以下では、チューブ3の軸方向と直交する断面を、単に「断面」ともいう。断面において、空洞部31の長手方向Xは、チューブ3が円筒体2に巻かれているときに円筒体2の長手方向(円筒体2の中心軸線2bが延びている方向)と平行になる。この場合の「平行」とは、チューブ3が円筒体2に巻かれているときの空洞部31の長手方向Xが円筒体2の長手方向に対して誤差程度(数度程度)の角度をなして傾いている場合も含む。空洞部31は、断面において長手方向Xに長く、且つ、長手方向Xと直交する短手方向Yに短い長孔形状である。この長孔形状は、長手方向Xの両端部が半円形状であり、且つ、長手方向Xの中間部が上記半円形状同士をつなぐ直線形状によって形成されている。本実施形態では、チューブ3は、断面において長手方向Xに対称(
図3において左右対称)な形状に形成されている。
【0030】
断面において、長手方向Xは、空洞部31の直線形状部分が延びている方向であってもよいし、空洞部31のうち最も離れている2点(端31b,31b)間をつなぐ直線が延びる方向であってもよい。
【0031】
断面において、空洞部31の中心31aは、チューブ3の中心3aから短手方向Yの一方Y1側に変位した位置にある。短手方向Yの一方Y1は、
図2(A)、
図2(B)、および
図3における下方向であり、チューブ3が円筒体2に巻かれているときにおけるチューブ3から円筒体2に向かう方向である。短手方向Yの他方Y2は、
図2(A)、
図2(B)、および
図3における上方向であり、短手方向Yの一方Y1と反対方向である。断面において、空洞部31の中心31aは、空洞部31の図心であり、チューブ3の中心3aは、チューブ3の外表面32で囲まれた領域の図心である。外表面32とは、断面においてチューブ3の外側に露呈している面をいう。断面において、長手方向Xにおける空洞部31の中心31aの位置と長手方向Xにおけるチューブ3の中心3aの位置とは、揃っていることが好ましい。揃っていることで、チューブ3が圧縮空気によって膨張するときのチューブ3の膨張量を長手方向Xの各部で均等にできる。
【0032】
上記の空洞部31の配置により、断面において、チューブ3には、空洞部31の両端31b,31bよりも短手方向Yの一方Y1側に位置している部分35(以下、単に一方側部分35ともいう)と、空洞部31よりも短手方向Yの他方Y2側に位置している部分37(厚肉部37)と、が存在している。一方側部分35は、
図3において、厚みA1を示す寸法線よりも短手方向Yの一方Y1側に位置している部分をいう。端31bは、周面31c上に存在している。
【0033】
断面において、チューブ3のうち短手方向Yの一方Y1側の厚みA2に、空洞部31の長手方向Xの端31bの厚みA1よりも薄い部分がある。すなわち、一方側部分35の厚みA2が、空洞部31の長手方向Xの端31bの厚みA1よりも薄い部分35aがある。ここで、厚みとは、外表面32から空洞部31の周面31cまで測ったとき、最小となる値とする。
【0034】
厚みA2は、断面において、空洞部31の周面31cのうち長手方向Xの端31bよりも短手方向Yの一方Y1側の任意の部分での厚みをいう。厚みA2の最小値A2minは、断面における空洞部31の周面31cの半円形状部分上の点31dを含む薄い部分35aでの厚みである。厚みA1>厚みA2minである。
【0035】
厚みA2
minである薄い部分35aは、長手方向Xにおいて空洞部31の端31b,31bよりも外側には配置されていないことが好ましい。すなわち、
図3において、空洞部31の端31b,31bから短手方向Yの一方Y1側に延伸させた一点鎖線31e,31e間に薄い部分35aの全体が存在していることが好ましい。この好ましい構成であれば、チューブ3のうち一点鎖線31e,31e間の領域の外側にある部分を厚くでき、空洞部31に圧縮空気が供給されたときにチューブ3が長手方向Xに膨らむことをより確実に抑制できる。
【0036】
次に、チューブ3の外形についてより具体的に説明する。
【0037】
チューブ3の外形は、空洞部31の扁平形状の長手方向Xと同じ方向が長手方向となる扁平形状である。断面において、チューブ3の外形は、チューブ3の外表面32によって構成されている。
【0038】
チューブ3の外表面32は、厚肉部37に存在する平坦面32aと、平坦面32aから短手方向Yの一方Y1側に延伸する一対の円弧面32b,32bと、一対の円弧面32b,32bから短手方向Yの一方Y1側に延伸する一対の側面32c,32cと、一対の側面32c,32c同士をつなぐ湾曲面32dと、を備えている。
【0039】
平坦面32aは、カバー8と直接接触する部分である。平坦面32aは、断面において、長手方向Xに沿った直線状に形成されており、平坦面32aが延びている方向と平行な方向を長手方向Xとして捉えることができる。断面において、空洞部31が平坦面32aと短手方向Yに向かい合っている。一対の円弧面32b,32bは、断面において、約90度の角度範囲に亘って形成されているが、90度以外の角度範囲に亘って形成されていてもよい。長手方向Xに向かい合う一対の円弧面32b,32b間には、空洞部31が配置されていない。長手方向Xにおいて向かい合う一対の側面32c,32cは、チューブ3が円筒体2にらせん状にまかれたとき、円筒体2の長手方向において隣り合う部分同士が向かいあって接触する部分である。一対の側面32c,32cは、断面において短手方向Yに直線状に形成されているが、直線でない形状を含む形状であってもよい。
【0040】
湾曲面32dは、円筒体2の外周面2aに向かい合う面であり、外周面2aと接触する部分である。断面において、湾曲面32dは、短手方向Yにおいてチューブ3の中心3aから遠ざかる方向に向けて凸となる凸形状である。これにより、チューブ3の一方側部分35が、長手方向Xにおけるチューブ3の中心から外側に向かって、断面において凸形状となっている。断面において、湾曲面32dは、空洞部31と短手方向Yに向かい合っている部分を含む大部分が所定の第1曲率半径R1の円弧状に形成されている。また、湾曲面32dは、第1曲率半径R1である部分と一対の側面32c,32cとの間の部分が、第1曲率半径R1よりも小さな第2曲率半径R2の円弧状に形成されている。第2曲率半径R2は、円弧面32bの曲率半径と揃えられていてもよいし、揃えられていなくてもよい。断面での湾曲面32dの端32f,32fは、外表面32において側面32cから曲率半径が変化する点である。
【0041】
上記のように形成することで、断面において、チューブ3の空洞部31の中心31aよりも短手方向Yの一方Y1側の厚みが、湾曲面32dの中心32eから端32f側に進むに従い一旦薄くなり、最小値A2minとなる薄い部分35aにおいて湾曲面32dにおける最薄となり、その後厚くなるように形成される。
【0042】
上記の構成を有するチューブ3は、チューブ3の軸方向にテンション(引張荷重)をかけられた状態で円筒体2に巻かれていることが好ましい。具体的には、
図2(A)に示すように、チューブ3は、円筒体2の外周面2aに接触している箇所における湾曲面32dが平坦になるようにして円筒体2に巻かれている。圧縮空気が供給されておらず空洞部31内の気圧が大気圧であり収縮状態であるときのチューブ3は、短手方向Yにおける空洞部31の高さが小さくなるようにして弾性変形しており、円筒体2に向けて押しつけられている。
【0043】
図4(A)および
図4(B)は、
図1のIV-IV線に沿う巻芯シャフト1の軸直断面図であり、チューブ3は想像線である二点鎖線で示している。
図4(A)は、チューブ3に圧縮空気が供給されておらずチューブ3が収縮した収縮状態を示しており、
図4(B)はチューブ3に圧縮空気が供給されてチューブ3が膨張した膨張状態を、チューブ3の一部を拡大して示している。
【0044】
<カバー>
図2(A)、
図2(B)、
図4(A)および
図4(B)に示すように、チューブ3には、カバー8が取り付けられている。カバー8は、巻芯100と直接接触する部分である。カバー8は、複数(4つ)のカバー部材8aを備えている。各カバー部材8aは同じ構成を有しており、円筒体2の周方向に90度ピッチで配置されている。各カバー部材8aは、円筒体2のうちカラー6,7が配置されていない箇所を覆うように配置されており、軸直断面において、円弧状に形成されている。各カバー部材8aは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネートなどの合成樹脂、または金属など、チューブ3よりも硬い材質で形成されている。各カバー部材8aは、円筒体2の周方向における中間部分が接着剤によってチューブ3に固定されており、チューブ3の平坦面32aに接着されている。
【0045】
各カバー部材8aのうち、円筒体2の周方向の一方側端部の外周面には、周方向に沿った所定範囲に切欠8bが形成されている。また、各カバー部材8aのうち、円筒体2の周方向の他方側端部の内周面には、周方向に沿った所定範囲に切欠8cが形成されている。
【0046】
チューブ3が収縮状態にあるとき、隣り合う2つのカバー部材8a,8aにおいて、一方のカバー部材8aの切欠8bが形成されている部分と、他方のカバー部材8aの切欠8cが形成されている部分とが、円筒体2の径方向に重なるようにして配置されている。
【0047】
以上が、巻芯シャフト1の概略構成である。
【0048】
<巻芯シャフトの動作の一例>
巻芯シャフト1は、以下のようにして巻芯100との連結および連結解除がなされる。
【0049】
チューブ3が収縮状態のとき、巻芯シャフト1の外径、すなわち、カバー8の外径は、巻芯100の内径未満であり、巻芯100を巻芯シャフト1に対して着脱可能である。
【0050】
一方、チューブ3に圧縮空気が注入されてチューブ3が膨張すると、空洞部31内の空間が膨らみ、チューブ3の厚肉部37と各カバー部材8aは、円筒体2の径方向外方に移動する。これにより、隣り合う2つのカバー部材8aにおいて、カバー部材8a同士の重なりを維持しつつ、切欠8bが切欠8cから抜ける方向への相対移動が生じる。このような動作により、カバー部材8a間からチューブ3が露呈することなく、カバー8の外径が大きくなり、カバー8の外周面と巻芯100の内周面とが連結される。これにより、巻芯シャフト1と巻芯100とが一体回転可能に連結される。この状態で端軸4,5が軸受(図示せず)に支持された状態の巻芯シャフト1が巻芯100とともに回転することで、巻芯100へのシート巻取り、または、巻芯100からのシートの繰り出しが行われる。
【0051】
そして、巻芯100の使用が終わると、チューブ3から圧縮空気が抜かれ、チューブ3が収縮状態となる。これにより、カバー8の外径が巻芯100の内径未満になり、巻芯シャフト1から巻芯100を抜くことができる。
【0052】
<効果の一例>
以上説明したように、本実施形態によると、断面において、空洞部31が扁平形状であり、空洞部31が短手方向Yの一方Y1側にオフセット配置されており、さらに、チューブ3の一方側部分35において、厚みA2が、空洞部31の長手方向Xの端31bの厚みA1よりも薄い部分35aがある。この構成によると、円筒体2に巻かれたチューブ3は、収縮状態と膨張状態の間を変化するとき、厚肉部37、および空洞部31の長手方向Xの両側部分はほとんど弾性変形せず、薄い部分35aなど、空洞部31対して短手方向Yの一方Y1側にある部分が主に弾性変形する。このように、チューブ3において、チューブ3を支える円筒体2に近い箇所が弾性変形する一方で、空洞部31の厚肉部37や空洞部31の長手方向Xの両側部分はほとんど弾性変形しない。よって、断面において、チューブ3の平坦面32aが円筒体2の中心軸線2bと平行な状態を維持しやすく、平坦面32aが中心軸線2bに対して傾いた姿勢になることを抑制できる。その結果、らせん状に巻かれているチューブ3の姿勢をより安定させることができる。よって、収縮状態および膨張状態の何れか一方から他方に変化するときのチューブ3の変形態様をより所望の態様にできる。その結果、チューブ3を膨張状態にさせたときに、設計通りにカバー8の外径を変化させることができ、カバー8と巻芯100との結合(連結)力を設計通りの値にできる。
【0053】
また、本実施形態によると、チューブの外形は、空洞部31の扁平形状の長手方向Xと同じ方向が長手方向となる扁平形状である。この構成によると、チューブ3が円筒体2に接触できる長さ、およびチューブ3がカバー部材8aに接触できる長さをより長くできる。これにより、長手方向Xが円筒体2の中心軸線2bに対して傾くことを抑制でき、チューブ3が円筒体2により安定した姿勢で支持される。さらに、チューブ3とカバー部材8aとの接触面積をより多くできる。その結果、チューブ3は、膨張状態においてもカバー部材8aを安定した姿勢に維持できる。
【0054】
また、本実施形態によると、一方側部分35は、長手方向Xの中心から外側に向かって、断面において凸形状である。この構成によると、チューブ3が収縮状態にあるときに、凸形状部分が円筒体2の外周面2aに押されることで大きく弾性変形でき、その分、チューブ3における空洞部31の長手方向Xの両側部分の弾性変形を抑制できる。よって、円筒体2に対してチューブ3をより安定した姿勢にできる。
【0055】
また、本実施形態によると、チューブ3において、空洞部31の長手方向Xの両側部分は、収縮状態および膨張状態のいずれにおいても長手方向Xへの弾性変形量が極めて小さくされている。このため、円筒体2にチューブ3がらせん状に巻かれてチューブ3のうち長手方向Xに隣り合う部分同士が直接接触している場合でも、チューブ3の各部が長手方向Xに膨張および収縮せず、チューブ3において長手方向Xに隣り合う部分間に隙間ができることを抑制できる。よって、チューブ3のうち長手方向Xに隣り合う部分間に、チューブ3の弾性変形のためのスペースを空けておかずに済み、チューブ3を密に巻いてチューブ3とカバー部材8aとの接触面積をより多くできる。よって、チューブ3とカバー8との結合力をより大きくできる。
【0056】
また、本実施形態によると、チューブ3は、テンションをかけて強く円筒体2に巻かれることで、チューブ3の一方側部分35が短手方向Yの他方Y2側に弾性変形している。そして、チューブ3が圧縮空気によって膨張するときには、チューブ3の一方側部分35が主に弾性変形してチューブ3がテンション付与前の形状に復元するような動きをすることで、チューブ3カバー8を介して巻芯100に連結される。この構成であれば、予めテンションが付与されていた分、チューブ3は、収縮状態から膨張状態になったときでも、短手方向Yに作用する引張荷重がゼロか、または小さい値にできる。よって、この引張荷重に起因するチューブ3の劣化を抑制でき、より長期間に亘ってチューブ3を繰り返し収縮状態と膨張状態とに変化させることができ、チューブ3の寿命をより長くできる。
【0057】
なお、
図4(B)によく示されているように、カバー部材8aのうち切欠8bが形成されている側のエッジ8dが、チューブ3の厚肉部37に接触している。このため、チューブ3の膨張と収縮の繰り返し動作でエッジ8dからチューブ3に作用する荷重により、チューブ3に摩擦が生じる。これにより、カバー部材8aのエッジ8dがチューブ3の表面を揉むような挙動を示す。特に、圧縮空気が低圧で使用された場合に、カバー部材8aのエッジ8d付近において、チューブ3のうちカバー部材8aと接触している箇所は膨張量が相対的に小さい一方で、カバー部材8aと接触していない箇所は膨張量が相対的に大きくなる。この場合、上述した揉むような挙動によるエッジ8dからチューブ3への摩擦力が強くなる。このような揉むような挙動は、チューブ3に代えて従来のチューブを採用した巻芯シャフト、すなわち、チューブのうち樹脂カバーに接触する箇所から空洞部までの厚みと、空洞部から円筒体に接触する箇所までの厚みが同じ従来のチューブを採用した巻芯シャフトにおいても同様に存在する。従来の巻芯シャフトでは、カバー部材のエッジと擦れる位置でのチューブが薄い。よって、上述した揉むような挙動によるカバー部材のエッジとの摩擦によってチューブに短期間で傷が発生し、傷口を通じ空洞部内からチューブ外へ空気が漏れるおそれがある。
【0058】
一方で、本実施形態によると、チューブ3のうち樹脂カバー部材8aに接触する厚肉部37が厚くされている。その結果、上述した揉むような挙動によるチューブ3の平坦面32aへの摩擦接触に対してチューブ3に傷が生じにくい。また、傷が生じたとしても、厚肉部37が厚いので、傷が空洞部31まで到達せずに済む。よって、カバー部材8aとチューブ3との摺動に起因するチューブ3の傷および空気漏れをより長期間に亘って確実に抑制できる。さらに、上述したように本実施形態では、チューブ3は、円筒体2に強く巻かれることでテンションをかけられて円筒体2側に押し縮められている。そして、チューブ3が圧縮空気によって膨張するときには、チューブ3の一方側部分35における薄い部分35aが主に弾性変形することでチューブ3がテンション付与前の形状に復元するような動きをすることで、チューブ3がカバー8を介して巻芯100に連結される。この構成により、厚肉部37は、平坦面32aを含めチューブ3の収縮および膨張に伴い形状変化がないか、または形状変化が少なく、チューブ3が膨張したときでも平坦面32aの平坦形状を維持できる。これにより、カバー部材8aのエッジ8dとチューブ3の平坦面32aとの接触領域を大きくでき、平坦面32aのごく一部のみがエッジ8dと接触することで生じる傷を抑制できる。さらに、チューブ3がテンションをかけて押し縮められた収縮状態から膨張状態へ状態が変わるに際し、チューブ3の外径側表面である平坦面32aは、チューブ3の膨張による形状変化がないか、または形状変化が少ない。よって、カバー部材8aのエッジ8dとチューブ3の平坦面32aとの摩擦がないか、摩擦量が少ないため、平坦面32aでの傷の発生を少なくできる。仮に、上述した従来のチューブのように、カバー部材と接する部分が薄いと、チューブが膨張状態のときに断面においてカバー部材側に向けて凸となる円弧状に膨らみ、エッジ8dがチューブの凸の先端にのみ接触して、チューブに傷が生じやすい。さらに、従来のチューブでは、チューブが収縮状態から膨張状態へ状態が変わるに際し、チューブの外径側表面は、チューブの膨張による形状変化が大きいので、カバー部材のエッジとの摩擦が大きく、傷が生じやすい。一方で、本実施形態では、このような傷の発生をより確実に抑制できる。特に、本実施形態のように、チューブ3の短手方向Yの一方Y1側に薄い部分35aを設ける構成と、この一方側部分35において断面凸形状を設ける構成と、短手方向Yの他方Y2側に厚肉部37および平坦面32aを設ける構成の相乗効果により、上述した揉むような挙動に起因するチューブ3の傷の発生を顕著に少なくできる。
【0059】
以上、本開示の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。なお、以下では、上述の実施形態と異なる構成について主に説明し、同様の構成には図に同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
<変形例>
上述の実施形態では、チューブ3がカバー8を介して巻芯100に連結される形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。
【0061】
図5(A)は、変形例における巻芯シャフト1Aの正面図であり、一部を断面で示している。
図5(A)では、巻芯シャフト1Aは、巻芯100との連結が解除されている状態を示している。
図5(B)は、
図5(A)に示す巻芯シャフト1Aに巻芯100が一体回転可能に連結された状態において、一部を拡大した図を示している。
【0062】
図5(A)および
図5(B)に示すように、巻芯シャフト1Aは、円筒体2Aの外周面2aAにらせん溝2dが形成されており、このらせん溝2dにチューブ3が巻かれている点と、カバー8が設けられていないことによりチューブ3が直接巻芯100と接触する点が、巻芯シャフト1と異なっている。
【0063】
チューブ3がらせん溝2dに巻かれていることで、チューブ3のうち円筒体2Aの長手方向に隣り合う部分は接触していない。また、収縮状態において、チューブ3の平坦面32aが円筒体2Aの外周面2aAと面一に配置されており、チューブ3が巻芯シャフト1の周囲の部品に不意に接触することが抑制されている。
【0064】
上記の構成を有する巻芯シャフト1において、
図5(A)に示す収縮状態のチューブ3の空洞部31に圧縮空気が供給されることで、チューブ3の一方側部分35が弾性変形し、
図5(B)に示すように膨張状態になる。これにより、厚肉部37のうちの平坦面32aを含む一部がらせん溝2dから突出し、巻芯100の内周面に接触し、巻芯シャフト1Aが巻芯100に連結される。また、チューブ3から圧縮空気が排出されることで、チューブ3は、
図5(B)に示す膨張状態から
図5(A)に示す収縮状態に戻る。
【0065】
この変形例では、
図5(B)によく示されているように、チューブ3の膨張時に、円筒体2Aの長手方向とチューブ3の長手方向Xとが平行になるように配置されているチューブ3が、円筒体2Aの長手方向に対して垂直に膨張する。これにより、巻芯100の内周面に平坦面32aのほぼ全体が接触でき、その結果、確実に巻芯シャフト1が巻芯100に連結される。
【0066】
<他の変形例>
(1)上述の実施形態および変形例では、チューブ3の外形の断面形状が、空洞部31の長手方向Xに細長い横長の扁平形状である例を説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。チューブ3の外形の断面形状は、空洞部31の長手方向Xと短手方向Yに関して同じ長さの略正方形であってもよいし、空洞部31の短手方向Yに細長い縦長の扁平形状であってもよい。
【0067】
(2)上述の実施形態および変形例では、断面において、湾曲面32dが、チューブ3の一方側が中心から外側に向かって1つの凸形状を有している形態を例に説明したが、この通りでなくてもよい。断面において、湾曲面32dが、チューブ3の一方側が中心から外側に向かうに従い凸形状を2つ以上有していてもよい。
【0068】
(3)上述の実施形態および変形例では、断面において、空洞部31が長孔形状である形態を例に説明したが、この通りでなくてもよい。断面において、空洞部31は、長手方向Xに扁平な楕円形状などであってもよく、長手方向Xに扁平な形状であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示は、巻芯シャフト用チューブおよび巻芯シャフトとして適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1,1A 巻芯シャフト
2,2A 円筒体
3 チューブ
3a チューブの断面における中心
31 空洞部
31a 空洞部の断面における中心
35a 空洞部の扁平形状の長手方向の端の厚みよりも薄い部分
A1 空洞部の扁平形状の長手方向の端の厚み
X 空洞部の扁平形状の長手方向
Y 空洞部の扁平形状の短手方向