(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163749
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/02 20120101AFI20241115BHJP
B60W 40/076 20120101ALI20241115BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20241115BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241115BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20241115BHJP
【FI】
B60W30/02
B60W40/076
B60W30/10
B60W50/14
G05D1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079613
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】于 歌
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔也
(72)【発明者】
【氏名】木下 智博
【テーマコード(参考)】
3D241
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA15
3D241BA18
3D241BA60
3D241BB22
3D241CA13
3D241CC03
3D241CC18
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01Z
3D241DB27Z
3D241DB42Z
3D241DB48Z
3D241DC45Z
3D241DC47Z
3D241DC49Z
5H301AA01
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG14
5H301GG16
(57)【要約】
【課題】移動体が勾配変化を有する走行路を走行する場合でも、駆動輪が空転することを抑制し、移動体が走行路を走行し続けることができる制御装置、制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】制御装置(10)は、複数の車輪(14)を有する移動体(12)の走行方向の前方に位置する走行路(16)の勾配変化に関する勾配変化情報と、移動体の諸元に関する諸元情報とを取得する取得部(72)と、勾配変化情報と諸元情報とに基づいて、移動体が走行路を走行する経路(R)を計画する計画部(74)と、移動体を経路に沿って走行させる制御を行う制御部(78)とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪(14)を有する移動体(12)の走行方向の前方に位置する走行路(16)の勾配変化に関する勾配変化情報と、前記移動体の諸元に関する諸元情報とを取得する取得部(72)と、
前記勾配変化情報と前記諸元情報とに基づいて、前記移動体が前記走行路を走行する経路(R)を計画する計画部(74)と、
前記移動体を前記経路に沿って走行させる制御を行う制御部(78)と、
を備える制御装置(10)。
【請求項2】
前記走行路は、第1走行路(22)と、前記第1走行路に対して勾配変化部(18)を介して連なる第2走行路(24)とを有し、
前記経路は、前記移動体が前記第2走行路に斜めに侵入する経路である、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記走行路は、第1走行路と、前記第1走行路に対して勾配変化部を介して連なる第2走行路とを有し、
前記経路は、前記移動体が前記第2走行路に斜めに侵入する間、前記複数の車輪が路面と接触した状態を維持する経路である、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記走行路は、第1走行路と、前記第1走行路に対して勾配変化部を介して連なる第2走行路とを有し、
前記諸元情報は、前記移動体の高さに関する情報を含み、
前記経路は、前記移動体が前記第2走行路に斜めに侵入する間、前記移動体の転倒及び横転の少なくとも一方を回避する経路である、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記走行路は、第1走行路と、前記第1走行路に対して勾配変化部を介して連なる第2走行路とを有し、
前記計画部は、前記第2走行路が登坂路(24)であり、前記移動体が第1侵入速度かつ第1侵入角度で前記第2走行路に斜めに侵入する際の横移動距離が前記移動体と前記走行路の端部との距離よりも長い場合、前記移動体が前記第1侵入速度よりも高い第2侵入速度かつ前記第1侵入角度よりも小さい第2侵入角度で前記登坂路に斜めに侵入する経路を前記経路として計画する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記走行路は、第1走行路と、前記第1走行路に対して勾配変化部を介して連なる第2走行路とを有し、
前記諸元情報は、前記移動体の重心の位置に関する情報を含み、
前記計画部は、前記第2走行路が登坂路であり、前記移動体の中心に対して前記重心が前記移動体の幅方向にずれている場合、前記重心がずれている側から前記登坂路に斜めに侵入する経路を前記経路として計画する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記計画部が前記経路を計画できなかった場合に報知する制御を行う報知部(80)をさらに備える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記走行路の路面の状況に関する路面状況情報と前記勾配変化情報とに基づいて、前記複数の車輪のうちの駆動輪が空転したことの原因を判別する判別部(82)と、
前記原因に基づいて、前記駆動輪が空転したことに対する対策情報を出力する出力部(84)と、
をさらに備える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記出力部は、前記原因が前記駆動輪のタイヤの汚れであると判別された場合、前記タイヤの交換又は洗浄を促す情報を前記対策情報に含める、
請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記出力部は、前記原因が前記路面上の異物であると判別された場合、前記異物の除去を促す情報を前記対策情報に含める、
請求項8に記載の制御装置。
【請求項11】
コンピュータ(10)に、
複数の車輪を有する移動体の走行方向の前方に位置する走行路の勾配変化に関する勾配変化情報と、前記移動体の諸元に関する諸元情報とを取得する取得ステップと、
前記勾配変化情報と前記諸元情報とに基づいて、前記移動体が前記走行路を走行する経路を計画する計画ステップと、
前記移動体を前記経路に沿って走行させる制御を行う制御ステップと、
を含む処理を実行させる制御方法。
【請求項12】
コンピュータに、
複数の車輪を有する移動体の走行方向の前方に位置する走行路の勾配変化に関する勾配変化情報と、前記移動体の諸元に関する諸元情報とを取得する取得ステップと、
前記勾配変化情報と前記諸元情報とに基づいて、前記移動体が前記走行路を走行する経路を計画する計画ステップと、
前記移動体を前記経路に沿って走行させる制御を行う制御ステップと、
を含む処理を実行させるための制御プログラム(70)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の車軸の少なくとも一つである第1車軸を内燃機関の動力により駆動し、残りの車軸の少なくとも一つである第2車軸を電動力により駆動する車両に搭載された駆動装置が開示されている。駆動装置は、電動力を発生する電動機と、電動機に電力を供給する電力供給手段と、電動機の駆動を制御する制御手段とを有する。駆動装置は、車両の坂路走行時、車両の進行方向に対する坂路が登坂路であるか降坂路であるかに応じて、車両の坂路走行時における電動力を、車両の平坦路走行時における電動力に対して増減させる。これにより、車両の坂路走行時における車両の駆動力をその坂路に応じて制御できるので、例えば登坂時には車両の駆動力を向上し、降坂時にはスリップを抑制しながら駆動するというように、坂路でも平坦路と同じように、車両を安定して走行させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、走行路の勾配変化によっては、複数の車輪のうちのいずれかの車輪が地面から離れてしまう可能性がある。地面から離れた車輪が駆動輪である場合には、駆動輪が空転することにより、移動体が進めなくなる可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、移動体が勾配変化を有する走行路を走行する場合でも、駆動輪が空転することを抑制し、移動体が走行路を走行し続けることができる制御装置、制御方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様は、複数の車輪(14)を有する移動体(12)の走行方向の前方に位置する走行路(16)の勾配変化に関する勾配変化情報と、前記移動体の諸元に関する諸元情報とを取得する取得部(72)と、前記勾配変化情報と前記諸元情報とに基づいて、前記移動体が前記走行路を走行する経路(R)を計画する計画部(74)と、前記移動体を前記経路に沿って走行させる制御を行う制御部(78)と、を備える制御装置(10)である。
【0007】
本開示の第2態様は、コンピュータ(10)に、複数の車輪を有する移動体の走行方向の前方に位置する走行路の勾配変化に関する勾配変化情報と、前記移動体の諸元に関する諸元情報とを取得する取得ステップと、前記勾配変化情報と前記諸元情報とに基づいて、前記移動体が前記走行路を走行する経路を計画する計画ステップと、前記移動体を前記経路に沿って走行させる制御を行う制御ステップと、を含む処理を実行させる制御方法である。
【0008】
本開示の第3態様は、コンピュータに、複数の車輪を有する移動体の走行方向の前方に位置する走行路の勾配変化に関する勾配変化情報と、前記移動体の諸元に関する諸元情報とを取得する取得ステップと、前記勾配変化情報と前記諸元情報とに基づいて、前記移動体が前記走行路を走行する経路を計画する計画ステップと、前記移動体を前記経路に沿って走行させる制御を行う制御ステップと、を含む処理を実行させるための制御プログラム(70)である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、移動体が勾配変化を有する走行路を走行する場合でも、駆動輪が空転することを抑制し、移動体が走行路を走行し続けることができる制御装置、制御方法及び制御プログラムを提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る制御装置が搭載された移動体の斜視図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る移動体が登坂路及び平坦路に垂直に侵入する場合と斜めに侵入する場合の様子を比較する図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る移動体が登坂路に垂直に侵入する場合と斜めに侵入する場合の距離dを比較する図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る移動体のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係る制御装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図6】本開示の第1実施形態に係る制御装置の動作を説明するブロック図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係る移動体が走行する経路の具体的な導出方法を説明する図である。
【
図8】本開示の第1実施形態に係る経路計画処理を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の第1実施形態に係る走行制御処理を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の第2実施形態において走行路の勾配の大小に基づいて計画された経路を比較する図である。
【
図11】本開示の第2実施形態において移動体の高さの高低に基づいて計画された経路を比較する図である。
【
図12】本開示の第2実施形態において移動体に備えられた車輪の間隔の広狭に基づいて計画された経路を比較する図である。
【
図13】本開示の第2実施形態において移動体に備えられたサスペンションの動きの範囲の広狭に基づいて計画された経路を比較する図である。
【
図14】本開示の第3実施形態において移動体の横移動距離hが距離h1よりも短い場合に計画された経路を示す図である。
【
図15】本開示の第3実施形態において移動体の横移動距離hが距離h1よりも長い場合に経路が変更される態様を示す図である。
【
図16】本開示の第4実施形態において移動体の重心の位置に基づいて計画された経路を比較する図である。
【
図17】本開示の第5実施形態に係る移動体を示すブロック図である。
【
図18】本開示の第6実施形態に係る移動体を示すブロック図である。
【
図19】本開示の第6実施形態に係る判別部及び出力部の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
はじめに、本開示の第1実施形態について説明する。
【0012】
図1に示すように、第1実施形態に係る制御装置10は、移動体12に搭載されている。制御装置10は、移動体12の走行を制御する装置である。移動体12は、有人機でもよく、無人機でもよい。また、移動体12は、自律走行型のロボットでもよい。
【0013】
移動体12は、複数の車輪14を有する。複数の車輪14は、前輪、中間輪、及び後輪を有する。一例として、複数の車輪14の総数は、6個である。つまり、移動体12は、6輪車であり、移動体12の左右両側に3個ずつの車輪14が配置された車両である。
図1に示す例では、片側の中間輪の数が1個とされているが、片側の中間輪の数はいくつでもよい。また、複数の車輪14の総数が6個とされているが、複数の車輪14の総数はいくつでもよい。複数の車輪14には、駆動輪及び操舵輪が含まれる。駆動輪及び操舵輪は、異なる車輪14でもよく、同じ車輪14でもよい。
【0014】
図2に示すように、移動体12が走行路16を走行する場合に、走行路16が勾配変化部18、20を有することがある。勾配変化部18、20は、勾配変化部18、20を境に走行路16の勾配が変化する部分である。勾配変化部18、20は、走行路16の延在方向に対して交差する方向に延在する。
図2に示す例では、勾配変化部18、20が走行路16の延在方向に対して直交する方向に延在している。また、
図2に示す例において、走行路16は、平坦路22、登坂路24、及び平坦路26を含んでいる。平坦路22及び登坂路24は、勾配変化部18を介して連なっており、登坂路24及び平坦路26は、勾配変化部20を介して連なっている。
【0015】
平坦路22及び登坂路24との関係において、平坦路22は、本開示における「第1走行路」の一例であり、登坂路24は、本開示における「第2走行路」の一例である。また、登坂路24及び平坦路26との関係において、登坂路24は、本開示における「第1走行路」の一例であり、平坦路26は、本開示における「第2走行路」の一例である。
【0016】
図2(A)は、移動体12が登坂路24及び平坦路26に垂直に侵入する場合を示しており、
図2(B)は、移動体12が登坂路24及び平坦路26に斜めに侵入する場合を示している。
図2(A)及び(B)において、上段の図は側面図であり、下段の図は平面図である。
【0017】
移動体12が登坂路24に垂直に侵入するとは、平面視で登坂路24の入口に位置する勾配変化部18の延在方向と移動体12の走行方向とが直交する状態で移動体12が登坂路24に侵入することであり、移動体12が登坂路24に斜めに侵入するとは、平面視で勾配変化部18の延在方向と移動体12の走行方向とが斜めの状態で移動体12が登坂路24に侵入することである。また、移動体12が登坂路24に垂直に侵入するとは、登坂路24の入口に位置する勾配変化部18を垂直に通過することと同義であり、移動体12が登坂路24に斜めに侵入するとは、勾配変化部18を斜めに通過することと同義である。
【0018】
以上、
図2(A)及び(B)を参照しながら、移動体12が登坂路24に侵入する場合について説明したが、移動体12が平坦路26に侵入する場合も上記説明と同様である。
【0019】
図3(A)は、移動体12が登坂路24に垂直に侵入する場合について、走行路16の延在方向に沿った移動体12の車体48の長さaと、車体48と勾配変化部18との間の距離dとを示しており、
図3(B)は、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する場合について、走行路16の延在方向に沿った車体48の長さbと、車体48と勾配変化部18との間の距離dとを示している。
図3(A)及び(B)において、上段の図は側面図であり、下段の図は平面図である。
図3(A)及び(B)では、複数の車輪14の図示が省略されている。
【0020】
図2(A)及び
図3(A)に示すように、移動体12が登坂路24に垂直に侵入する場合、中間輪が地面から離れてしまうことがある。つまり、移動体12が登坂路24に垂直に侵入する場合、距離dは式(1)で表され、式(2)の条件を満たす場合には、中間輪が地面から離れる。ただし、屈曲角度θは、走行路16を側面視した場合の平坦路22と登坂路24との成す角度であり、距離d1は、中間輪を支持するサスペンション46(後述)が伸び切った状態での中間輪の下端と移動体12の車体48との間の距離である。なお、距離d及び距離d1は、勾配変化部18を通り車体48と垂直な線L上に中間輪の中心が位置することを条件とした場合の距離であって、線Lに沿った距離である。
【数1】
【数2】
【0021】
このように、地面から離れてしまった中間輪が駆動輪である場合には、駆動輪が空転することにより移動体12が登坂路24を登れない可能性がある。ここで、走行路16が登坂路24を伴う勾配変化部18を有することが検出された場合に、駆動輪の駆動力を増大させる制御を行うことが考えられる。しかしながら、このようにした場合でも、駆動輪が空転することには変わりがないので、移動体12が登坂路24を登れない可能性がある。
【0022】
そこで、
図2(B)に示すように、制御装置10は、走行路16が登坂路24を伴う勾配変化部18を有する場合、移動体12が登坂路24に斜めに侵入し、登坂路24に侵入した後に走行路16の延在方向に沿って移動する経路Rを計画する。そして、制御装置10は、移動体12を経路Rに沿って走行させる制御を行う。
【0023】
図3(B)に示すように、移動体12が登坂路24に斜めに侵入することにより、移動体12が登坂路24に垂直に侵入する場合の長さaよりも、長さbが短くなり、ひいては、距離dが短くなるので、中間輪が地面から離れることを抑制することができる。つまり、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する場合、距離dは式(3)で表され、長さbは式(4)で表され、式(5)の条件を満たす場合には、中間輪が地面から離れることを抑制することができる。ただし、侵入角度αは、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する場合(具体的には、平面視で移動体12の中心が勾配変化部18上に位置する場合)に、走行路16の延在方向と移動体12の走行方向とのなす角度によって規定される。
【数3】
【数4】
【数5】
【0024】
ここで、具体例について説明する。例えば、登坂路24の勾配が1/12である場合の屈曲角度θを175.2°とし、前後の車輪14の長さを長さaと等しいと仮定して、長さaが280mmである場合、式(1)から距離dは6mmとなる。したがって、式(2)より距離d1が6mm未満である場合、中間輪が地面から離れてしまう。一方、距離d1が4mmである場合に、距離dを4mmとして、式(3)及び(4)から長さb及び侵入角度αを計算すると、長さbが201mmである場合に侵入角度αが44°になる。したがって、侵入角度αが44°以上であれば、中間輪が地面から離れてしまうことを抑制することができる。
【0025】
以上、
図3(A)及び(B)を参照しながら、移動体12が登坂路24に侵入する場合について説明したが、移動体12が平坦路26に侵入する場合にも上記技術的思想が適用される。また、特に図示しないが、移動体12が降坂路に侵入する場合にも上記技術的思想が適用されてもよい。
【0026】
以下、
図2(B)及び
図3(B)に示すように、移動体12が登坂路24に侵入する場合を例に挙げて、制御装置10の具体的な構成を説明する。
【0027】
図4に示すように、移動体12は、制御装置10に加えて、センシング部30と、走行装置32とを備える。一例として、センシング部30は、自律センサ34と、LiDAR(Light Detection And Ranging)センサ36と、ステレオカメラ38と、カメラ40とを備える。
【0028】
自律センサ34は、例えば、IMU(Inertial Measurement Unit)であり、移動体12の3次元の慣性運動を検出し、検出した慣性運動に応じたデータを出力する。LiDARセンサ36は、移動体12の走行方向の前方に位置する物体との距離及び方向を検出し、検出した距離及び方向に応じたデータを出力する。ステレオカメラ38は、2つのカメラで構成されており、移動体12の走行方向の前方に位置する物体との距離を検出し、検出した距離に応じたデータを出力する。カメラ40は、CCD(Charge Coupled Device)センサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子を用いた二次元カメラによって構成されており、移動体12の走行方向の前方に位置する物体を撮像し、撮像により得られた画像をデータとして出力する。
【0029】
走行装置32は、複数の車輪14を含んで構成されている。走行装置32は、駆動装置42と、操舵装置44と、複数のサスペンション46とを備える。駆動装置42は、複数の車輪14のうちの駆動輪を駆動させる装置である。駆動装置42の駆動源は、モータでもよく、エンジンでもよい。また、駆動源は、モータ及びエンジンを備えるハイブリッドユニットでもよい。操舵装置44は、複数の車輪14のうちの操舵輪を操舵する装置である。操舵輪に対して操舵力を付与するアクチュエータは、モータでもよく、油圧アクチュエータでもよい。各サスペンション46は、例えば、バネ及びダンパを備えており、車体48に対して各車輪14を支持している。
【0030】
制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)50と、ROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)54と、ストレージ56と、入出力I/F(Interface)58と、通信I/F60とを備えるコンピュータによって構成されている。CPU50、ROM52、RAM54、ストレージ56、入出力I/F58、及び通信I/F60は、バス62を介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPU50は、各種のプログラムを実行し、走行装置32を制御する。具体的には、CPU50は、ROM52又はストレージ56に格納されている種々のプログラムを読み出し、RAM54を作業領域としてプログラムを実行する。そして、CPU50は、プログラムに従って各種の演算処理を行い、走行装置32を制御する。
【0032】
ROM52は、各種のプログラム及び各種のデータを格納する。RAM54は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ56は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリといった記録媒体で構成される。ストレージ56には、オペレーティングシステムを含む各種のプログラムと、走行装置32を制御するのに用いられる各種の情報が格納されている。
【0033】
通信I/F60は、例えばWi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)といった無線通信規格に基づく無線通信により、移動体12以外の外部装置との間でデータを送受信する。なお、通信I/F60は、有線通信により外部装置との間でデータを送受信してもよい。
【0034】
図5に示すように、ROM52には、制御プログラム70が記憶されている。CPU50は、ROM52に記憶されている制御プログラム70を読み出し、RAM54を作業領域として制御プログラム70を実行する。そして、CPU50は、制御プログラム70に従って経路計画処理及び走行制御処理を実行する。
【0035】
経路計画処理は、CPU50が制御プログラム70に従って取得部72及び計画部74として動作することにより実行される。走行制御処理は、CPU50が制御プログラム70に従って推定部76及び制御部78として動作することにより実行される。
【0036】
図6に示すように、センシング部30は、自律センサ34、LiDARセンサ36と、ステレオカメラ38、及びカメラ40によって得られたデータを含むセンサ情報を、CPU50に対して出力する。
【0037】
ストレージ56には、地図情報及び諸元情報が格納されている。地図情報は、走行路16に関するデジタルの地図情報であり、例えば、走行路16の幅、形状、勾配変化部18の有無、及び走行路16の勾配等の道路情報に、位置を示す位置情報が対応付けられた情報を含んでいる。諸元情報は、移動体12の諸元に関する情報であり、例えば、移動体12の高さ、車体48の長さ、車輪14の間隔、及びサスペンション46の動きの範囲等の情報を含んでいる。
【0038】
取得部72は、センシング部30からCPU50に入力されたセンサ情報と、ストレージ56に格納されている地図情報とに基づいて、走行路16の勾配変化に関する勾配変化情報を取得する。例えば、取得部72は、自律センサ34によって得られたデータに基づいて、移動体12の自己位置を推定し、自己位置に基づいて、地図情報から勾配変化情報を取得する。勾配変化情報は、例えば、勾配変化部18の有無、走行路16の勾配、及び勾配変化部18の位置等の情報を含む。また、取得部72は、ストレージ56に格納されている諸元情報を取得する。
【0039】
なお、取得部72は、地図情報を用いずに、自律センサ34、LiDARセンサ36、ステレオカメラ38、及びカメラ40によって得られたデータに基づいて、勾配変化情報を取得してもよい。また、例えば、GPS(Global Positioning System)等の測位システムからの信号を受信可能な受信器がセンシング部30に用いられてもよい。そして、取得部72は、受信器によって受信された信号に基づいて、移動体12の自己位置を推定し、自己位置に基づいて、地図情報から勾配変化情報を取得してもよい。また、取得部72は、自律センサ34、LiDARセンサ36、ステレオカメラ38、及びカメラ40によって得られたデータに基づいて、移動体12の自己位置を複合的に推定してもよい。
【0040】
計画部74は、取得部72によって取得された勾配変化情報と諸元情報とに基づいて、移動体12が走行路16を走行する経路Rを計画する。経路Rは、移動体12が登坂路24を斜めに侵入し、登坂路24に侵入した後に走行路16の延在方向に沿って移動する経路である(
図2(B)参照)。また、経路Rは、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する間、複数の車輪14が路面と接触した状態を維持する経路である(
図3(B)参照)。つまり、経路Rは、上記式(5)の条件を満たす経路である。経路Rの具体的な導出方法については、後に説明する。
【0041】
推定部76は、センサ情報に基づいて、移動体12の自己位置を推定する。例えば、推定部76は、自律センサ34に基づいて、移動体12の自己位置を推定する。なお、センシング部30に測位システムの受信器が用いられた場合、推定部76は、受信器によって受信された信号に基づいて、移動体12の自己位置を推定してもよい。また、推定部76は、自律センサ34、LiDARセンサ36、ステレオカメラ38、及びカメラ40によって得られたデータに基づいて、移動体12の自己位置を複合的に推定してもよい。
【0042】
自律センサ34を用いて移動体12の自己位置が推定される場合、予め定められた相対座標系における相対位置が自己位置として推定される。一方、測位システムの受信器によって受信された信号に基づいて移動体12の自己位置が推定される場合、測位システムによって定められた絶対座標系における絶対位置が自己位置として推定される。
【0043】
制御部78は、推定部76によって推定された移動体12の自己位置と、計画部74によって計画された経路Rとに基づいて、移動体12を経路Rに沿って走行させる制御を、走行装置32の駆動装置42及び操舵装置44に対して行う。
【0044】
続いて、
図7を参照しながら、経路Rの具体的な導出方法について説明する。
図7に示すように、移動体12は、登坂路24に斜めに侵入するために、勾配変化部18よりも手前の位置(以下、「横移動開始位置」と称する)で横移動を開始する。ここで、移動体12の速度をvとし、勾配変化部18と横移動開始位置との間の距離をsとし、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する場合の侵入角度をαとし、移動体12が横移動開始位置から登坂路24に侵入後までの横移動距離をhとする。ただし、移動体12の速度vは一定とする。
【0045】
横移動開始位置から勾配変化部18に到達するまでに要する時間tは、式(6)で算出され、横移動開始位置から勾配変化部18に到達するまでのヨーレイトyrは、式(7)で算出され、横移動距離hは、式(8)で算出される。ただし、v1は、移動体12の横移動速度であり、式(9)で算出される。
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【0046】
計画部74(
図6参照)は、上述の時間t、ヨーレイトyr、横移動距離h、及び横移動速度v1を定数とし、これらの定数に基づいて、三次曲線である経路Rを計画する。
【0047】
次に、本開示の第1実施形態に係る制御装置10を用いた制御方法について説明する。
【0048】
先ず、
図8を参照しながら、経路計画処理について説明する。経路計画処理は、例えば、移動体12の走行方向の前方に登坂路24を伴う勾配変化部18が位置することが検知される毎に実行される。経路計画処理では、先ず、ステップST10で、取得部72が、勾配変化情報及び諸元情報を取得する。ステップST10は、本開示に係る「取得ステップ」の一例である。
【0049】
次いで、ステップST12で、計画部74が、ステップST10で取得された勾配変化情報及び諸元情報に基づいて、移動体12が走行路16を走行する経路Rを計画する。これにより、移動体12の走行方向の前方に登坂路24を伴う勾配変化部18が位置する場合には、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する経路Rが計画される。ステップST10は、本開示に係る「計画ステップ」の一例である。ステップST12の処理の後、経路計画処理は終了する。
【0050】
続いて、
図9を参照しながら、走行制御処理について説明する。走行制御処理は、経路計画処理によって経路Rが計画された場合に実行される。走行制御処理では、先ず、ステップST20で、推定部76が、センサ情報に基づいて、移動体12の自己位置を推定する。
【0051】
次いで、ステップST22で、制御部78は、ステップST20で推定された移動体12の自己位置と、経路計画処理によって計画された経路Rとに基づいて、移動体12を経路Rに沿って走行させる制御を、走行装置32の駆動装置42及び操舵装置44に対して行う。これにより、移動体12の走行方向の前方に登坂路24を伴う勾配変化部18が位置する場合には、移動体12が経路Rに沿って走行することにより、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する。ステップST22は、本開示に係る「制御ステップ」の一例である。
【0052】
次いで、ステップST24で、CPU50は、移動体12が経路Rを走行し終えたか否かを判断する。ステップST24において、移動体12が経路Rを走行し終えていない場合には、判定が否定されて、走行制御処理はステップST20に移行する。一方、ステップST24において、移動体12が経路Rを走行し終えた場合には、判定が肯定されて、走行制御処理は終了する。
【0053】
次に、本開示の第1実施形態の効果について説明する。
【0054】
以上詳述した通り、第1実施形態に係る制御装置10では、取得部72が、移動体12の走行方向の前方に位置する走行路16の勾配変化に関する勾配変化情報と、移動体12の諸元に関する諸元情報とを取得する。また、計画部74が、勾配変化情報と諸元情報とに基づいて、移動体12が走行路16を走行する経路Rを計画する。したがって、移動体12が登坂路24に侵入する前に、複数の車輪14のうちの駆動輪が地面から離れてしまうことを抑制することができる経路Rを計画することができる。そして、制御部78が、計画部74によって計画された経路Rに沿って移動体12を走行させる制御を行う。これにより、駆動輪が地面から離れてしまうことを抑制することができる。この結果、駆動輪が空転することを抑制することができるので、移動体12が登坂路24を登りきることができる。
【0055】
また、経路Rは、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する経路である。したがって、
図3に示すように、走行路16の延在方向に沿った車体の長さが、移動体12が登坂路24に垂直に侵入する場合(この場合の長さはa)よりも、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する場合(この場合の長さはb)の方が短くなり、ひいては、車体48と勾配変化部18との間の距離dが短くなるので、中間輪が地面から離れることを抑制することができる。
【0056】
また、経路Rは、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する間、複数の車輪14が路面と接触した状態を維持する経路である。したがって、例えば、いずれかの車輪14が地面から離れてしまう場合に比して、複数の車輪14が路面と接触した状態を維持することにより、高い安定性と高い推進力を得ることができる。
【0057】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態について説明する。
【0058】
第2実施形態では、上述の第1実施形態に対して、制御装置10(
図6参照)の構成が次のように異なる。すなわち、計画部74は、経路Rを計画するにあたって、横移動距離h及び侵入角度αを算出する場合に、移動体12の高さを考慮する。すなわち、計画部74は、勾配変化情報に含まれる勾配と、諸元情報に含まれる車輪14の間隔及びサスペンション46の動きの範囲とに加えて、諸元情報に含まれる移動体12の高さも考慮して、横移動距離h及び侵入角度αを算出する。
【0059】
横移動距離h及び侵入角度αを算出する場合に、勾配と、車輪14の間隔とには、正の係数がそれぞれ掛け算され、移動体12の高さと、サスペンション46の動きの範囲とには、負の係数がそれぞれ掛け算される。係数は、移動体12の諸元等に応じて予め定められる。そして、計画部74は、算出した横移動距離h及び侵入角度αに基づいて、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する間、移動体12の転倒及び横転の少なくとも一方を回避する経路を経路Rとして計画する。
【0060】
例えば、
図10(A)に示すように、屈曲角度θが小さい場合(すなわち、勾配が大きい場合)には、横移動距離hが長く、かつ、侵入角度αが大きい経路Rが計画される。一方、
図10(B)に示すように、屈曲角度θが大きい場合(すなわち、勾配が小さい場合)には、横移動距離hが短く、かつ、侵入角度αが小さい経路Rが計画される。
【0061】
また、例えば、
図11(A)に示すように、移動体12の高さが高い場合(すなわち、移動体12の重心が高い場合)には、横移動距離hが短く、かつ、侵入角度αが小さい経路Rが計画される。一方、
図11(B)に示すように、移動体12の高さが低い場合(すなわち、移動体12の重心が低い場合)には、横移動距離hが長く、かつ、侵入角度αが大きい経路Rが計画される。
【0062】
また、例えば、
図12(A)に示すように、車輪14の間隔が広い場合には、横移動距離hが長く、かつ、侵入角度αが大きい経路Rが計画される。一方、
図12(B)に示すように、車輪14の間隔が狭い場合には、横移動距離hが短く、かつ、侵入角度αが小さい経路Rが計画される。
【0063】
また、例えば、
図13(A)に示すように、サスペンション46の動きの範囲が広い場合には、横移動距離hが短く、かつ、侵入角度αが小さい経路Rが計画される。一方、
図13(B)に示すように、サスペンション46の動きの範囲が狭い場合には、横移動距離hが長く、かつ、侵入角度αが大きい経路Rが計画される。
【0064】
以上詳述した通り、第2実施形態では、諸元情報が、移動体12の高さに関する情報を含み、計画部74は、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する間、移動体12の転倒及び横転の少なくとも一方を回避する経路を経路Rとして計画する。したがって、計画部74によって計画された経路Rに沿って移動体12が走行する場合には、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する間、移動体12の転倒及び横転の少なくとも一方を回避することができる。
【0065】
[第3実施形態]
次に、本開示の第3実施形態について説明する。
【0066】
第3実施形態では、上述の第1実施形態に対して、制御装置10(
図6参照)の構成が次のように異なる。すなわち、計画部74は、経路Rを計画するにあたって、横移動距離hと距離h1との長短関係を考慮する。距離h1は、移動体12と走行路16の端部との距離であり、地図情報に含まれる走行路16の幅と、諸元情報に含まれる移動体12の幅と、取得部72によって推定された移動体12の自己位置とに基づいて算出される。また、計画部74は、計画する経路Rに移動体12の速度に関する情報を含める。
【0067】
例えば、
図14に示すように、計画部74は、既定の条件で算出した横移動距離hが距離h1よりも短い場合(すなわち、h<h1である場合)、既定の条件に含まれる第1侵入速度V1かつ既定の条件で算出した第1侵入角度α1で登坂路24に斜めに侵入する経路を経路Rとして計画する。
【0068】
一方、例えば、
図15の上図に示すように、既定の条件で算出した横移動距離hが距離h1よりも長くなる場合(すなわち、h>h1である場合)がある。この場合に、計画した経路Rに沿って移動体12が走行すると、移動体12が走行路16から逸脱することになる。
【0069】
そこで、計画部74は、既定の条件で算出した横移動距離hが距離h1よりも長い場合には、
図15の下図に示すように、第1侵入角度α1よりも小さい第2侵入角度α2で登坂路24に斜めに侵入する経路を経路Rをとして計画する。この場合に、計画部74は、横移動距離hが距離h1よりも短くなる(すなわち、h<h1になる)ように、経路Rを計画する。
【0070】
また、計画部74は、第2侵入角度α2で登坂路24に斜めに侵入する場合に移動体12が登坂を登りきれない事態が生じないように、移動体12が第1侵入速度V1よりも高い第2速度V2で登坂路24に斜めに侵入する経路を経路Rとして計画する。
【0071】
以上詳述した通り、第3実施形態では、計画部74は、移動体12が第1侵入速度V1かつ第1侵入角度α1で登坂路24に斜めに侵入する際の横移動距離hが距離h1よりも長い場合、移動体12が第1侵入速度V1よりも高い第2速度V2かつ第1侵入角度α1よりも小さい第2侵入角度α2で登坂路24に侵入する経路Rを計画する。これにより、移動体12が走行路16から逸脱することを回避しつつ登坂路24を登りきることができる。
【0072】
[第4実施形態]
次に、本開示の第4実施形態について説明する。
【0073】
第4実施形態では、上述の第1実施形態に対して、制御装置10(
図6参照)の構成が次のように異なる。すなわち、計画部74は、経路Rを計画するにあたって、移動体12の重心の位置を考慮する。重心の位置は、取得部72によって取得される。重心の位置は、自律センサ34によって得られたデータに基づいて導出されてもよく、重心の位置を検出する検出器によって得られたデータに基づいて導出されてもよい。取得部72は、重心の位置を取得した場合、重心の位置を諸元情報に含める。
【0074】
図16(A)及び(B)に示すように、移動体12に搭載された荷物90が移動体12の中心に対して移動体12の幅方向にずれている場合がある。例えば、
図16(A)に示す例では、移動体12に搭載された荷物90が移動体12の中心に対して右側にずれており、
図16(B)に示す例では、移動体12に搭載された荷物90が移動体12の中心に対して左側にずれている。
【0075】
移動体12に搭載された荷物90が移動体12の中心に対して右側にずれている場合、移動体12の重心も荷物90が搭載された側にずれる。したがって、例えば、移動体12に搭載された荷物90が移動体12の中心に対して右側にずれている場合に、移動体12が右側へ横移動しながら登坂路24に斜めに侵入すると、移動体12が遠心力を受けて右側に横転する可能性がある。同様に、移動体12に搭載された荷物90が移動体12の中心に対して左側にずれている場合に、移動体12が左側へ横移動しながら登坂路24に斜めに侵入すると、移動体12が遠心力を受けて左側に横転する可能性がある。
【0076】
そこで、計画部74は、移動体12の中心に対して重心が移動体12の幅方向にずれている場合、重心がずれている側から登坂路24に斜めに侵入する経路Rを計画する。例えば、
図16(A)に示すように、移動体12の中心に対して重心が右側にずれている場合、計画部74は、右側から登坂路24に斜めに侵入する経路Rを計画する。一方、
図16(B)に示すように、移動体12の中心に対して重心が左側にずれている場合、計画部74は、左側から登坂路24に斜めに侵入する経路Rを計画する。
【0077】
以上詳述した通り、第4実施形態では、計画部74は、移動体12の中心に対して重心が移動体12の幅方向にずれている場合、重心がずれている側から登坂路24に斜めに侵入する経路Rを計画する。これにより、移動体12が登坂路24に斜めに侵入する場合に、移動体12が遠心力を受けて横転することを抑制することができる。
【0078】
なお、第4実施形態では、移動体12が登坂路24から平坦路26に侵入する際(
図2(B)参照)、移動体12の中心に対して重心が移動体12の幅方向にずれている場合にも、計画部74は、重心がずれている側から平坦路26に斜めに侵入する経路Rを計画してもよい。このようにしても、移動体12が平坦路26に斜めに侵入する場合に、移動体12が遠心力を受けて横転することを抑制することができる。
【0079】
一方、移動体12が平坦路26から降坂路に侵入する際に、移動体12の中心に対して重心が移動体12の幅方向にずれている場合、計画部74は、重心がずれている側と反対側から降坂路に斜めに侵入する経路Rを計画してもよい。このようにしても、移動体12が降坂路に斜めに侵入する場合に、移動体12が遠心力を受けて横転することを抑制することができる。
【0080】
[第5実施形態]
次に、本開示の第5実施形態について説明する。
【0081】
第5実施形態では、上述の第1実施形態に対して、移動体12及び制御装置10の構成が次のように異なる。すなわち、移動体12は、報知装置100を備える。報知装置100は、移動体12の周囲に対して報知を行う装置であり、例えば、発光器、スピーカ、モニタ、及びバイブレータ等を備える。また、移動体12の通信I/F60は、管理センター110の管理装置112と通信可能に接続されている。管理センター110は、移動体12の走行を管理する組織である。管理装置112は、例えば、サーバー等によって構成される。
【0082】
CPU50は、報知部80としても動作する。報知部80は、計画部74によって経路Rが計画できなかった場合に報知する制御を行う。報知する制御としては、例えば、報知装置100を作動させることにより、移動体12の周囲に対して報知を行わせること、及び、通信I/F60を介して管理装置112に対して報知情報を送信することが挙げられる。報知情報は、計画部74によって経路Rが計画できなかった旨を報知する情報である。計画部74によって経路Rが計画できなかった場合としては、例えば、通信障害又は故障等により、取得部72によって勾配変化情報及び諸元情報の少なくとも一方が取得されなかった等が挙げられる。
【0083】
なお、制御部78は、計画部74によって経路Rが計画できなかった場合に、走行装置32を停止させる制御を行ってもよい。
【0084】
以上詳述した通り、第5実施形態では、計画部74によって経路Rが計画できなかった場合には、報知部80によって報知する制御が行われる。したがって、移動体12が経路Rを計画できなかったこと、ひいては、移動体12が経路Rに沿って移動できないことを、移動体12の周囲又は管理センター110に知らせることができる。
【0085】
[第6実施形態]
次に、本開示の第6実施形態について説明する。
【0086】
第6実施形態では、上述の第1実施形態に対して、移動体12及び制御装置10の構成が次のように異なる。すなわち、
図18に示すように、移動体12は、報知装置100を備える。報知装置100については、第5実施形態で説明した通りである。
【0087】
CPU50は、判別部82及び出力部84としても動作する。取得部72は、移動体12の前方に位置する走行路16がカメラ40によって撮像されることにより得られた画像を取得する。そして、取得部72は、画像に基づいて、走行路16の路面の状況に関する路面状況情報を取得する。路面状況情報には、例えば、路面上に異物があるか否かの情報、路面に異常があるか否かの情報、及び、路面の摩擦係数等の情報が含まれる。路面の摩擦係数は、画像に含まれる路面の輝度に基づいて推定される。また、取得部72は、勾配変化情報を取得する。勾配変化情報は、第1実施形態で説明した通り、走行路16の勾配等の情報を含む。
【0088】
判別部82は、取得部72によって取得された路面状況情報と勾配変化情報とに基づいて、複数の車輪14のうちの駆動輪が空転したことの原因を判別する。出力部84は、判別部82によって判別された原因に基づいて、駆動輪が空転したことに対する対策情報を生成し、対策情報を出力する。出力部84から出力された対策情報は、通信I/F60を介して管理センター110の管理装置112に対して送信される。出力部84から出力された対策情報は、報知装置100に出力されてもよい。
【0089】
例えば、
図19に示すように、判別部82は、路面状況情報に基づいて、異物及び異常がないと判別した場合には、第1テーブル120に基づいて原因を判別し、異物又は異常があると判別した場合には、第2テーブル122に基づいて原因を判別する。
【0090】
第1テーブル120及び第2テーブル122には、路面の摩擦係数及び勾配と、原因との関係が規定されている。NO.1の原因は、原因が勾配であることを示し、NO.2の原因は、原因が摩擦係数であることを示し、NO.3の原因は、原因が駆動輪のタイヤの汚れであることを示し、NO.4の原因は、原因が異物又は異常であることを示している。
【0091】
そして、判別部82は、異物及び異常がない場合、第1テーブル120に基づいて、次の要領で原因を判別する。すなわち、判別部82は、摩擦係数が大で勾配が大である場合には、NO.1の原因を選択し、摩擦係数が大で勾配が小である場合には、NO.3の原因を選択する。また、判別部82は、摩擦係数が小で勾配が大である場合には、NO.1及びNO.2の原因を選択し、摩擦係数が小で勾配が小である場合には、NO.2の原因を選択する。
【0092】
一方、判別部82は、異物又は異常がある場合、第2テーブル122に基づいて、次の要領で原因を判別する。すなわち、判別部82は、摩擦係数が大で勾配が大である場合には、NO.1及びNO.4の原因を選択し、摩擦係数が大で勾配が小である場合には、NO.4の原因を選択する。また、判別部82は、摩擦係数が小で勾配が大である場合には、NO.1、NO.2、及びNO.4の原因を選択し、摩擦係数が小で勾配が小である場合には、NO.2及びNO.4の原因を選択する。
【0093】
出力部84は、第3テーブル124に基づいて、対策情報を生成する。対策情報Aは、経路Rの見直し、対策情報Bは、摩擦力の高いタイヤへの交換、対策情報Cは、タイヤの清掃、対策情報Dは、異物の除去又は異常の解消を示している。なお、タイヤの交換には、管理装置112の指令で動作する交換ロボットが用いられてもよい。また、タイヤの清掃及び異物の除去には、管理装置112の指令で動作する清掃ロボットが用いられてもよい。
【0094】
そして、出力部84は、第3テーブル124に基づいて、次の要領で対策情報を生成する。すなわち、出力部84は、判別部82によってNO.1の原因が選択された場合には、対策情報Aを生成し、判別部82によってNO.2の原因が選択された場合には、対策情報Bを生成する。また、出力部84は、判別部82によってNO.3の原因が選択された場合には、対策情報Cを生成し、判別部82によってNO.4の原因が選択された場合には、対策情報Dを生成する。
【0095】
以上詳述した通り、第5実施形態では、判別部82が、走行路16の路面の状況に関する路面状況情報と勾配変化情報とに基づいて、複数の車輪14のうちの駆動輪が空転したことの原因を判別する。そして、出力部84は、原因に基づいて、駆動輪が空転したことに対する対策情報を出力する。したがって、対策情報に基づいて、駆動輪が空転したことの原因に応じた対策を講じることができる。
【0096】
また、NO.1、NO.2、及びNO.4の原因(すなわち、タイヤの汚れ以外の原因)が選択された場合には、タイヤを清掃するための清掃ロボットを出動させる無駄を省くことができる。
【0097】
なお、出力部84は、駆動輪が空転したことの原因が駆動輪のタイヤの汚れであると判別された場合、タイヤの交換又は洗浄を促す情報を対策情報に含めてもよい。このようにすると、管理装置112で対策情報が受信された場合に、管理センター110において、タイヤの交換又は洗浄を行うための処理(例えば、交換ロボット又は清掃ロボットを作動させる処理)に移行することができる。
【0098】
また、出力部84は、駆動輪が空転したことの原因が路面上の異物であると判別された場合、異物の除去を促す情報を対策情報に含めてもよい。このようにすると、管理装置112で対策情報が受信された場合に、管理センター110において、異物の除去を行うための処理(例えば、清掃ロボットを作動させる処理)に移行することができる。
【0099】
以上、本開示の第1乃至第9実施形態について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0100】
例えば、上記各実施形態において、制御装置10は、移動体12に搭載されているが、移動体12以外の外部装置に搭載されていてもよい。そして、外部装置が、移動体12と通信可能に接続され、外部装置からの指令を受けて移動体12が走行してもよい。外部装置は、専用の指令装置でもよいし、サーバーでもよい。
【0101】
また、上記各実施形態において、制御装置10は、経路Rを計画する経路計画処理を行う機能と、走行装置32を制御する走行制御処理を行う機能とを有しているが、経路計画処理を行う機能を有する第1制御装置と、走行制御処理を行う機能を有する第2制御装置とに分かれていてもよい。
【0102】
また、第1制御装置及び第2制御装置は、いずれも移動体12に搭載されていてもよいが、いずれか一方は、外部装置に搭載されていてもよい。また、第1制御装置及び第2制御装置は、いずれも外部装置に搭載されていてもよく、異なる外部装置にそれぞれ搭載されていてもよい。
【0103】
本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0104】
本開示の特徴を以下の通り示す。
(付記1)
複数の車輪(14)を有する移動体(12)の走行方向の前方に位置する走行路(16)の勾配変化に関する勾配変化情報と、前記移動体の諸元に関する諸元情報とを取得する取得部(72)と、
前記勾配変化情報と前記諸元情報とに基づいて、前記移動体が前記走行路を走行する経路(R)を計画する計画部(74)と、
前記移動体を前記経路に沿って走行させる制御を行う制御部(78)と、
を備える制御装置(10)。
(付記2)
前記走行路は、第1走行路(22)と、前記第1走行路に対して勾配変化部(18)を介して連なる第2走行路(24)とを有し、
前記経路は、前記移動体が前記第2走行路に斜めに侵入する経路である、
付記1に記載の制御装置。
(付記3)
前記走行路は、第1走行路と、前記第1走行路に対して勾配変化部を介して連なる第2走行路とを有し、
前記経路は、前記移動体が前記第2走行路に斜めに侵入する間、前記複数の車輪が路面と接触した状態を維持する経路である、
付記1又は付記2に記載の制御装置。
(付記4)
前記走行路は、第1走行路と、前記第1走行路に対して勾配変化部を介して連なる第2走行路とを有し、
前記諸元情報は、前記移動体の高さに関する情報を含み、
前記経路は、前記移動体が前記第2走行路に斜めに侵入する間、前記移動体の転倒及び横転の少なくとも一方を回避する経路である、
付記1から付記3の何れか一つに記載の制御装置。
(付記5)
前記走行路は、第1走行路と、前記第1走行路に対して勾配変化部を介して連なる第2走行路とを有し、
前記計画部は、前記第2走行路が登坂路(24)であり、前記移動体が第1侵入速度かつ第1侵入角度で前記第2走行路に斜めに侵入する際の横移動距離が前記移動体と前記走行路の端部との距離よりも長い場合、前記移動体が前記第1侵入速度よりも高い第2侵入速度かつ前記第1侵入角度よりも小さい第2侵入角度で前記登坂路に斜めに侵入する経路を前記経路として計画する、
付記1から付記4の何れか一つに記載の制御装置。
(付記6)
前記走行路は、第1走行路と、前記第1走行路に対して勾配変化部を介して連なる第2走行路とを有し、
前記諸元情報は、前記移動体の重心の位置に関する情報を含み、
前記計画部は、前記第2走行路が登坂路であり、前記移動体の中心に対して前記重心が前記移動体の幅方向にずれている場合、前記重心がずれている側から前記登坂路に斜めに侵入する経路を前記経路として計画する、
付記1から付記5の何れか一つに記載の制御装置。
(付記7)
前記計画部が前記経路を計画できなかった場合に報知する制御を行う報知部(80)をさらに備える、
付記1から付記6の何れか一つに記載の制御装置。
(付記8)
前記走行路の路面の状況に関する路面状況情報と前記勾配変化情報とに基づいて、前記複数の車輪のうちの駆動輪が空転したことの原因を判別する判別部(82)と、
前記原因に基づいて、前記駆動輪が空転したことに対する対策情報を出力する出力部(84)と、
をさらに備える、
付記1から付記7の何れか一つに記載の制御装置。
(付記9)
前記出力部は、前記原因が前記駆動輪のタイヤの汚れであると判別された場合、前記タイヤの交換又は洗浄を促す情報を前記対策情報に含める、
付記8に記載の制御装置。
(付記10)
前記出力部は、前記原因が前記路面上の異物であると判別された場合、前記異物の除去を促す情報を前記対策情報に含める、
付記8に記載の制御装置。
(付記11)
コンピュータ(10)に、
複数の車輪を有する移動体の走行方向の前方に位置する走行路の勾配変化に関する勾配変化情報と、前記移動体の諸元に関する諸元情報とを取得する取得ステップと、
前記勾配変化情報と前記諸元情報とに基づいて、前記移動体が前記走行路を走行する経路を計画する計画ステップと、
前記移動体を前記経路に沿って走行させる制御を行う制御ステップと、
を含む処理を実行させる制御方法。
(付記12)
コンピュータに、
複数の車輪を有する移動体の走行方向の前方に位置する走行路の勾配変化に関する勾配変化情報と、前記移動体の諸元に関する諸元情報とを取得する取得ステップと、
前記勾配変化情報と前記諸元情報とに基づいて、前記移動体が前記走行路を走行する経路を計画する計画ステップと、
前記移動体を前記経路に沿って走行させる制御を行う制御ステップと、
を含む処理を実行させるための制御プログラム(70)。
【符号の説明】
【0105】
10…制御装置、12…移動体、14…車輪、16…走行路、18、20…勾配変化部、22、26…平坦路、24…登坂路、30…センシング部、32…走行装置、34…自律センサ、36…LiDARセンサ、38…ステレオカメラ、40…カメラ、42…駆動装置、44…操舵装置、46…サスペンション、48…車体、50…CPU、52…ROM、54…RAM、56…ストレージ、58…入出力I/F、60…通信I/F、62…バス、70…制御プログラム、72…取得部、74…計画部、76…推定部、78…制御部、80…報知部、82…判別部、84…出力部、90…荷物、100…報知装置、110…管理センター、112…管理装置、120…第1テーブル、122…第2テーブル、124…第3テーブル