IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通コンポーネント株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163750
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】カッタユニット及びプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/70 20060101AFI20241115BHJP
   B65H 35/06 20060101ALI20241115BHJP
   B26D 1/09 20060101ALI20241115BHJP
   B26D 3/08 20060101ALI20241115BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B41J11/70
B65H35/06
B26D1/09
B26D3/08 Z
B26D7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079614
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】FCLコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】小口 達也
【テーマコード(参考)】
2C058
3C021
【Fターム(参考)】
2C058AC06
2C058AF51
2C058LB09
2C058LB24
2C058LB36
3C021JA05
3C021JA09
(57)【要約】
【課題】用紙の厚さ等に応じてシャー角が自動的に変化し、薄紙及び厚紙のいずれも円滑に切断できるコンパクトなカッタユニット及びプリンタを提供する。
【解決手段】カッタユニットは、固定刃に対して変位可能に構成された可動刃24を有し、可動刃24は、長手方向の一端から略中央に向けて固定刃とは反対側に傾斜する第1の可動刃部24aと、長手方向の他端から略中央に向けて固定刃とは反対側に傾斜する、第1の可動刃部24aとは別部材の第2の可動刃部24bとを備える。カッタユニットはさらに、固定刃と可動刃部24a又は可動刃部24bとがなすシャー角が変化するように、可動刃部24a及び24bを回動可能に保持する保持部材26と、可動刃部24a及び24bを所定の方向に付勢するとともに、切断抵抗の大きさに応じて弾性変形可能な弾性変形部材60とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定刃と、前記固定刃に対して変位可能に構成された可動刃とを有するプリンタであって、
前記可動刃は、長手方向の一端から略中央に向けて前記固定刃とは反対側に傾斜する第1の可動刃部と、長手方向の他端から略中央に向けて前記固定刃とは反対側に傾斜する、前記第1の可動刃部とは別部材の第2の可動刃部とを備え、
前記プリンタはさらに、
前記固定刃と前記第1の可動刃部又は前記第2の可動刃部とがなすシャー角が変化するように、前記第1の可動刃部及び前記第2の可動刃部を回動可能に保持する保持部材と、
前記前記第1の可動刃部及び前記第2の可動刃部を所定の方向に付勢するとともに、切断抵抗の大きさに応じて弾性変形可能な弾性変形部材と、
を有する、プリンタ。
【請求項2】
前記第1の可動刃部及び前記第2の可動刃部の各々は、前記保持部材に形成された回動支点部を中心として回動可能であり、前記第1の可動刃部及び前記第2の可動刃部の各々の回動角度範囲は、前記第1の可動刃部及び前記第2の可動刃部の各々に形成された長穴と、前記保持部材に形成されかつ前記長穴に受容されるストッパ部とによって規定される、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1の可動刃部及び前記第2の可動刃部は、互いに非対称であり、前記可動刃の長手方向の中央から一方の端部側に離れた位置において互いに嵌合することにより略V字形状の前記可動刃を構成する、請求項1又は2に記載のプリンタ。
【請求項4】
パーシャルカット用の溝が、前記第1の可動刃部又は前記第2の可動刃部のいずれか1つのみに形成されている、請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
固定刃に対して変位可能に構成された可動刃を有するカッタユニットであって、
前記可動刃は、長手方向の一端から略中央に向けて前記固定刃とは反対側に傾斜する第1の可動刃部と、長手方向の他端から略中央に向けて前記固定刃とは反対側に傾斜する、前記第1の可動刃部とは別部材の第2の可動刃部とを備え、
前記カッタユニットはさらに、
前記固定刃と前記第1の可動刃部又は前記第2の可動刃部とがなすシャー角が変化するように、前記第1の可動刃部及び前記第2の可動刃部を回動可能に保持する保持部材と、
前記前記第1の可動刃部及び前記第2の可動刃部を所定の方向に付勢するとともに、切断抵抗の大きさに応じて弾性変形可能な弾性変形部材と、
を有する、カッタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタユニット及びプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なサーマルプリンタでは、印字用紙等の印刷対象物をプラテンローラとサーマルヘッドとの間に挟み、印字用紙を送りつつサーマルヘッドを加熱することによって印刷・印字を行う。そしてプリンタによっては、印字後の用紙を切断するための、V字形状の刃を備えたV字カッタや、螺旋状の刃を備えたロータリカッタを有する。
【0003】
一般的なV字カッタは、印字用紙の面に平行な直線状の固定刃と、中央部が凹んだV字形状の可動刃とを有し、可動刃を固定刃に向けて移動させることで用紙を円滑に切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-196348号公報
【特許文献2】特開2004-106502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印字された用紙をV字カッタで切断する際、可動刃のシャー角が大きいほど、切断負荷は低くなる。よって用紙が厚紙である場合は、大きいシャー角の可動刃であれば円滑な切断が可能であるが、シャー角が小さい場合は可動刃の駆動源として高出力すなわち大型のモータ等を使用する必要が生じる。一方、用紙が薄紙である場合は、小さいシャー角の可動刃でも円滑な切断が可能であるが、シャー角が大きいと用紙がV字状に折れ曲がりやすい。このようにシャー角が一定のV字カッタでは、可動刃の駆動源を大型化せずに、薄紙と厚紙の双方を円滑に好適に切断できるシャー角を設定することは困難であった。
【0006】
よって用紙の厚さ等に応じてシャー角が自動的に変化し、薄紙及び厚紙のいずれも円滑に切断できるコンパクトなカッタユニット及びプリンタが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、固定刃と、前記固定刃に対して変位可能に構成された可動刃とを有するプリンタであって、前記可動刃は、長手方向の一端から略中央に向けて前記固定刃とは反対側に傾斜する第1の可動刃部と、長手方向の他端から略中央に向けて前記固定刃とは反対側に傾斜する、前記第1の可動刃部とは別部材の第2の可動刃部とを備え、前記プリンタはさらに、前記固定刃と前記第1の可動刃部又は前記第2の可動刃部とがなすシャー角が変化するように、前記第1の可動刃部及び前記第2の可動刃部を回動可能に保持する保持部材と、前記前記第1の可動刃部及び前記第2の可動刃部を所定の方向に付勢するとともに、切断抵抗の大きさに応じて弾性変形可能な弾性変形部材と、を有する、プリンタである。
【0008】
本開示の他の態様は、固定刃に対して変位可能に構成された可動刃を有するカッタユニットであって、前記可動刃は、長手方向の一端から略中央に向けて前記固定刃とは反対側に傾斜する第1の可動刃部と、長手方向の他端から略中央に向けて前記固定刃とは反対側に傾斜する、前記第1の可動刃部とは別部材の第2の可動刃部とを備え、前記カッタユニットはさらに、前記固定刃と前記第1の可動刃部又は前記第2の可動刃部とがなすシャー角が変化するように、前記第1の可動刃部及び前記第2の可動刃部を回動可能に保持する保持部材と、前記前記第1の可動刃部及び前記第2の可動刃部を所定の方向に付勢するとともに、切断抵抗の大きさに応じて弾性変形可能な弾性変形部材と、を有する、カッタユニットである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、可動刃のシャー角が用紙の厚さ等に応じて自動的に変化するので、薄紙及び厚紙のいずれも円滑に切断できるとともに、コンパクトかつ低コストのカッタユニット及びプリンタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るサーマルプリンタの分解斜視図である。
図2図1のサーマルプリンタの斜視図である。
図3】カッタユニットの一部の斜視図である。
図4】可動刃及び保持部材を示す図である。
図5図1のA-A断面図である。
図6図5において可動刃がスライドしている状態を示す図である。
図7】比較例として、シャー角が一定のカッタで薄紙を切断する例を示す。
図8図7よりシャー角が大きいカッタで薄紙を切断する例を示す。
図9図8の例において薄紙が変形した状態を示す。
図10】比較例として、シャー角が一定のカッタで厚紙を切断する例を示す。
図11図10よりシャー角が大きいカッタで厚紙を切断する例を示す。
図12図4の状態からシャー角が変化した状態を示す図である。
図13】可動刃の保持構造の部分拡大図である。
図14図13のB-B断面図である。
図15図13のC-C断面図である。
図16】保持構造に対する可動刃の取付け操作例を示す図である。
図17図16のD部の拡大図である。
図18】保持構造に対する可動刃の取付け操作例を示す図である。
図19図18のE部の拡大図である。
図20】脱落防止部の部分拡大図である。
図21】保持部材の部分拡大図である。
図22図21のF-F断面図であり、可動刃が取付けられる前を示す。
図23図21のF-F断面図であり、可動刃の取付け操作中を示す。
図24図21のF-F断面図であり、可動刃が取付けられた後を示す。
図25】薄紙の切断前の可動刃の状態を示す図である。
図26】薄紙の切断後の可動刃の状態を示す図である。
図27】厚紙の切断前の可動刃の状態を示す図である。
図28】厚紙の切断後の可動刃の状態を示す図である。
図29図27のG部の拡大図である。
図30図28のH部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、好適な実施形態に係るサーマルプリンタ2の分解斜視図であり、図2は、サーマルプリンタ2を図1とは別角度からみた斜視図である。サーマルプリンタ2は、互いに組み合わされて使用されるプリンタユニット4及びカッタユニット6を有する。プリンタユニット4は、フレーム等の支持体8に支持され又は取付けられたカッタ駆動用モータ10、搬送用モータ14及び固定刃18を有し、カッタ駆動用モータ10はギヤボックス12内に配置されたギヤ(後述)に連結される。また搬送用モータ14は、ギヤボックス16内に配置されたギヤ(図示せず)に連結される。
【0012】
図3は、カッタユニット6から、後述する可動刃及び保持部材を除外した状態を示す。カッタユニット6は、本体20に支持され又は取付けられたプラテンローラ22を有し、プラテンローラ22はその軸方向端部に従動ギヤ30を備え、従動ギヤ30はギヤボックス16内のギヤ(図示せず)に係合している。よって搬送用モータ14を駆動することによりプラテンローラ22が回転し、後述する薄紙又は厚紙等の印刷及び切断対象物を搬送することができる。
【0013】
図4は、カッタユニット6に含まれる可動刃24及び保持部材26を示す。可動刃24は、薄紙又は厚紙等の切断対象の面に略平行な刃先を有する固定刃18に対して、切断対象の面に略垂直な方向に直線的に変位可能に構成された略V字形状の刃先を有する。保持部材26は、図2に示す補強板金28等に取付けられ、可動刃24を後述のように回動可能に支持する部材であり、図3に示すギヤ38に係合するラック部40を有する。
【0014】
図5及び図6は、可動刃24を固定刃18に対して移動させる機構を示す。図1に示すように、モータ10が駆動すると、ギヤ32及び34を介して可動刃駆動用ギヤ36及び38が回転し、ギヤ38に係合しているラック40を有する保持部材26が上下に変位する。これに伴い、保持部材26に保持されている可動刃24も上下動し、固定刃18との間に配置されている薄紙又は厚紙等の印刷用紙を切断することができる。
【0015】
再び図4を参照し、可動刃24は、固定刃18に対して互いに独立に変位可能な複数の可動刃部を有する。具体的には、可動刃24は、その長手方向(プリンタの幅方向)の一端から略中央に向けて固定刃18とは反対側に傾斜する第1の可動刃部24aと、長手方向の他端から略中央に向けて固定刃18とは反対側に傾斜する、第1の可動刃部24aとは別部材の第2の可動刃部24bとを有する。図示例では、第1の可動刃部24aは略V字の一方の辺に相当し、第2の可動刃部24bは略V字の他方の辺に相当し、可動刃部24a及び24bは協働して、固定刃18とは反対側に凸となっている略V字形状の可動刃24を形成する。また可動刃部24a及び24bはそれぞれ、上記V字の頂角が可変となるように保持部材26に保持されているが、これについては後述する。
【0016】
図7-11は、比較例として、固定刃と可動刃がなすシャー角が一定のカッタで薄紙又は厚紙を切断する例を示す。一般論として、カッタが受ける切断負荷は切断対象の厚さが小さいほど低く、厚さが大きくなるに従って高くなる。また、シャー角が大きいほど切断負荷は低くなる。そこで図7に示すように、切断対象が薄紙44である場合は、比較的小さいシャー角θ1を形成する可動刃42と固定刃18とを用いることが好ましい。逆に、図8に示すように、比較的大きいシャー角θ2を形成する可動刃46と固定刃18とを用いて薄紙44を切断しようとすると、図9に示すように、剛性が低い薄紙44は可動刃46の形状に応じてV字に折れ曲がってしまい、円滑な切断が困難となり得る。
【0017】
一方、図10に示すように、切断対象が厚紙48である場合は、比較的小さいシャー角θ1を形成する可動刃42と固定刃18とを用いると切断負荷が大きくなるため、可動刃42の駆動源(例えばモータ)を大型化する必要が生じ、プリンタとしての大型化及びコストアップにつながる可能性がある。逆に、図11に示すように、比較的大きいシャー角θ2を形成する可動刃46と固定刃18とを用いると、厚紙48を低い切断負荷で円滑に切断することができる。
【0018】
このように、シャー角が一定のカッタを用いて薄紙及び厚紙の双方を円滑に切断することは容易ではなく、従来はシャー角等の刃の仕様の設定や評価に多くの時間がかかっていた。
【0019】
そこで本開示では、図4及び12に示すように、切断対象の厚さに応じてシャー角が自動的に変化し得る構造を用いる。具体的には、図13-15に示すように、第1の可動刃部24aはその長手方向の外側端部に穴52を有し、穴52は、保持部材26に形成された回動支点部54を受容するように構成されている。また可動刃部24aは、穴52よりも長手方向内側に長穴56を有し、長穴56は、保持部材26に形成された略円柱状のストッパ部58を受容するように構成されている。よって図12に示すように、可動刃部24aは回動支点部54を中心として回動可能であるとともに、その回動角度範囲は、長穴56によって所定の範囲内に規定される。なお保持部材26は、可動刃部24aが保持部材26から抜け落ちないように、より具体的には図4又は12において可動刃部24aが紙面に垂直な方向に手前側に変位しないように、可動刃部24aを保持する脱落防止部62を有することが好ましい。
【0020】
第1の可動刃部24aの長手方向の内側端部は、概ねV字形状の可動刃24の頂点において終端しており、保持部材26の長手方向の略中央に形成された凹部68内に配置された弾性変形部材60によって所定の方向に付勢されている。具体的には、第1の可動刃部24aは、弾性変形部材60によってシャー角が小さくなる方向、すなわち可動刃24のV字の頂角が大きくなる方向に付勢されている。また、第1の可動刃部24aと概ね左右対称の関係にある第2の可動刃部24bも、第1の可動刃部24aと同様に、所定の角度範囲内で回動可能に構成され、その長手方向の内側端部は弾性変形部材60によって所定の方向、具体的にはシャー角が小さくなる方向に付勢されている。よって可動刃部24a及び24bからなる可動刃24のシャー角は、弾性変形部材60の変形量に応じて変化する。また弾性変形部材60の変形量は、用紙切断時に用紙から受ける反力、すなわち切断抵抗に依存する。故に可動刃24のシャー角は、切断抵抗の大きさに応じて自動的に変化し、具体的には薄紙の切断時にはシャー角は小さくなり、厚紙の切断時にはシャー角は大きくなる。このように弾性変形部材60は、可動刃部24a及び24bをシャー角が小さくなる方向に付勢し、切断抵抗の大きさに応じてシャー角が大きくなる方向に弾性変形する。
【0021】
なお図示例の弾性変形部材60はコイルばねであるが、これに限られず、上述の作用効果を奏する他の部材、例えば板ばねでもよい。また可動刃24は例えば金属製であり、保持部材26は例えば樹脂製であるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
図16-20は、保持部材26に対する可動刃部24aの取付け操作の一例を示す。先ず図16に示すように、可動刃部24aの穴52内に保持部材26の回動支点部54を挿入する。ここで図17に示すように、穴52は、穴52の内壁から内側に延びるレール部64を部分的に有する長穴であり、一方、回動支点部54は、長穴52の対向する長辺のレール部64間の距離より大きい寸法を有する上端部を有する。よって図18及び19に示すように、穴52内のレール部64を設けていない箇所に保持部材26の回動支点部54を挿入した後に、回動支点部54がレール部64に係合するように可動刃部24aを保持部材26に対して矢印55の方向に移動させることにより、可動刃部24aは保持部材26に対して抜け落ちない状態で位置決めされる。
【0023】
次に図18及び20に示すように、第1の可動刃部24aがストッパ部58と脱落防止部62との間に挿入されるように、可動刃部24aを矢印57の方向に回動させる。ここで図20及び21に示すように、ストッパ部58は可動刃部24aの刃先方向側の上部に傾斜面59を有するので、可動刃部24aを回動させていくと可動刃部24aがストッパ部58に乗り上げる。ここで、図22に示すように、ストッパ部58は、保持部材26のうち、他の部分よりも肉厚が薄い薄肉部66に形成されているので、図23に示すように薄肉部66が弾性的に撓む。この状態からさらに可動刃部24aを回動させると、図24に示すようにストッパ部58が可動刃部24aの長穴56内に収まり、撓んでいた薄肉部66が元の状態に戻る。
【0024】
第2の可動刃部24bについても、同様の操作によって保持部材26に取付けることができる。このようにして、可動刃部24a及び24bを保持部材26に対して所定角度内で回動可能に取付けることができる。
【0025】
図25及び26は、実施形態に係る可動刃24及び固定刃18によって薄紙44を切断する例を示す。図25に示す切断前は、弾性変形部材60からの付勢力によって可動刃のシャー角は最も小さい状態にあるが、薄紙44による切断抵抗は比較的小さいので、図26に示すように切断時にも、弾性変形部材60は実質的に弾性変形せず、故にシャー角は実質的に変化しない。換言すれば、弾性変形部材60は薄紙44の切断抵抗では実質変形しないように構成され、例えば弾性変形部材60がコイルばねである場合は、コイルばね60は、薄紙44の切断抵抗では実質変形しないようなばね定数を有する。よって薄紙44はシャー角が小さい状態で切断できるので、薄紙44は図9に示したように可動刃のV字形状に沿って折れ曲がることなく、円滑に切断される。
【0026】
図27及び28は、実施形態に係る可動刃24及び固定刃18によって厚紙48を切断する例を示す。図27に示す切断前は、弾性変形部材60からの付勢力によってシャー角は最も小さい状態にあるが、厚紙48による切断抵抗は比較的大きいので、図28に示すように切断時には、弾性変形部材60が弾性変形し、故にシャー角が大きくなる。換言すれば、弾性変形部材60は厚紙48の切断抵抗によって弾性変形するように構成され、例えば弾性変形部材60がコイルばねである場合は、コイルばね60は、厚紙48の切断抵抗によって圧縮されるようなばね定数を有する。よって厚紙48はシャー角が大きい状態で切断できるので、可動刃の駆動源を大型化することなく、円滑に切断される。
【0027】
本実施形態では、シャー角は可動刃24の形状や長穴56の寸法等に基づいて適宜設定可能であるが、例えば5~10°の範囲で可変とすることができる。この場合は例えば、切断抵抗が小さい薄紙はシャー角が最小の5°の状態で切断可能であり、厚紙はその厚さに応じてシャー角が7~10°の状態で切断可能である。なお本開示における薄紙とは、例えば厚さ50-80μmのレシート用紙等であり、厚紙とは、例えば厚さ100-200μmのチケット用紙等である。
【0028】
このように本実施形態では、コイルばね60のばね定数を適切に選択することにより、薄紙44の切断時にはシャー角が変化せず、厚紙48の切断時はシャー角が自動的に大きくなる可動刃を実現することができる。よって本開示によれば、可動刃を駆動するモータ等を大型化せずとも、薄紙及び厚紙の双方を円滑に切断することができるので、コンパクトでありながら用途の広いプリンタ及びカッタユニットが提供される。
【0029】
図29及び30はそれぞれ、図27のG部及び図28のH部の拡大図であり、カッタユニットがいわゆるパーシャルカットタイプである場合の可動刃の好適な構成例を示す。一般論として、V字形状の可動刃を有するプリンタでは、可動刃の一部に溝を形成することにより、用紙を完全には切断しない、いわゆるパーシャルカットを行うことができる。しかし本実施形態では、可動刃24が略中央において可動刃部24a及び24bに分割されているので、可動刃部24a及び24bの各々に凹み等を形成して可動刃部24a及び24bが協働して1つの溝を構成するようにすると、可動刃部24a及び24bが回動したときに溝の形状や大きさが変化する。よって、用紙の未切断の部分の長さが変化してしまい、結果として所望のパーシャルカットが行えない虞がある。
【0030】
そこで図29に示すように、可動刃部24a又は24bの一方(図示例では第2の可動刃部24b)にのみ、例えばU字形状のパーシャルカット用の溝70を形成することが好ましい。つまりこの例では、可動刃部24a及び24bは、互いに非対称であり、可動刃24の長手方向の中央から一方の端部側に離れた位置において互いに嵌合することによって略V字形状の可動刃24を構成しており、パーシャルカット用の溝70は可動刃部24a又は24bの一方にのみ形成されている。このようにすれば、例えば図30に示すように可動刃部24a及び24bが回動してもU字溝70の形状や大きさは変化しないので、用紙の未切断の部分の長さも変化せず、結果として所望のパーシャルカットを行うことができる。
【0031】
本開示の実施形態はサーマルプリンタに係るものであるが、本開示の適用対象はこれに限られず、固定刃に対して可動刃が直線的に移動するスライド式のカッタユニットを有する他の種類のプリンタにも適用可能である。また本実施形態では、固定刃18はプリンタユニット4に設けられているが、カッタユニット6に設けることも可能である。さらに、実施形態では弾性変形部材60は1つのコイルばねであるが、可動刃部の個数に応じてコイルばねを2つ以上設けてもよいし、上述のようにコイルばね以外の弾性変形部材を使用してもよい。
【符号の説明】
【0032】
2 サーマルプリンタ、4 プリンタユニット、6 カッタユニット、18 固定刃、
22 プラテンローラ、24 可動刃、24a,24b 可動刃部、26 保持部材、
40 ラック、44 薄紙、48 厚紙、52 穴、54 回動支点部、
56 長穴、58 ストッパ部、60 弾性変形部材、62 脱落防止部、
64 レール部、66 薄肉部、70 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30