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特開2024-163751既設杭支持力増強構造および既設杭支持力増強方法
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  • 特開-既設杭支持力増強構造および既設杭支持力増強方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163751
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】既設杭支持力増強構造および既設杭支持力増強方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20241115BHJP
   E02D 27/28 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D27/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079615
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 正貴
(72)【発明者】
【氏名】千野 和彦
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA01
(57)【要約】
【課題】簡易に支持力を増強することを可能とした既設杭支持力増強構造および既設杭支持力増強方法を提案する。
【解決手段】地盤Gに載置されて、既設杭Pに作用する荷重の一部を地表面GLに分散可能となるように、既設杭Pに固定された補強部材2を備える既設杭支持力増強構造1である。この既設杭支持力増強構造1を利用した既設杭支持力増強方法は、既設杭Pの外面に沿って補強部材2を地盤G上に載置する工程と、補強部材2を既設杭Pに固定する工程とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に載置された補強部材を備える既設杭支持力増強構造であって、
前記補強部材は、既設杭に作用する荷重の一部を前記地盤の表面に分散可能となるように、前記既設杭に固定されていることを特徴とする、既設杭支持力増強構造。
【請求項2】
前記既設杭の外面に植設されたジベルをさらに備えており、
前記補強部材は、前記既設杭の外面に沿って打設されたコンクリートの硬化体であることを特徴とする、請求項1に記載の既設杭支持力増強構造。
【請求項3】
前記既設杭を囲うように前記地盤に圧入された壁部材をさらに備えており、
前記補強部材の先端は、前記壁部材に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の既設杭支持力増強構造。
【請求項4】
既設杭の外面に沿って補強部材を地盤上に載置する工程と、
前記補強部材を前記既設杭に固定する工程と、を備えることを特徴とする既設杭支持力増強方法。
【請求項5】
前記既設杭に作用する支持力に応じて前記補強部材を交換する工程をさらに備えていることを特徴とする、請求項4に記載の既設杭支持力増強方法。
【請求項6】
既設杭の外面にジベルを固定する工程と、
前記ジベルを巻き込むように、前記既設杭の外面に沿ってコンクリートを打設して補強部材を形成する工程と、を備えていることを特徴とする、既設杭支持力増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設杭支持力増強構造および既設杭支持力増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
仮設桟橋や仮設構台等の基礎構造として、杭基礎を採用した場合では、想定される上載荷重等に応じて構造形式や配置等を決定する。ところが、杭の施工完了後に計画変更等(施工機械の大型化や交通荷重の増加等)により設計荷重よりも大きな荷重が杭に作用する場合には、基礎構造の支持力を増加させる必要がある。
既設杭の支持力を増加させる方法としては、杭を増設する方法、杭の根入れ深さを増加させる方向や、杭の根入れ部の地盤改良を行うことが考えられる。
しかしながら、完成後の構造物に対して杭を増設するのは困難である。また、杭の根入れを深くする場合は、杭の頭部に杭部材を継ぎ足す必要があるが、杭部材を継ぎ足すには、杭頭に所定の加工を施す必要があるため、予定外の変更に対応するのは困難である。杭の根入れ部を地盤改良しても、杭の周囲の地盤を完全に改良することは困難であり、また、地盤を緩めてしまうおそれがある。
特許文献1には、既設の基礎の増強方法として、既存杭で軸力を仮受けした状態で、既存の基礎スラブの下の地盤を十分な耐力を有する地層まで掘削して、新設の基礎スラブを増築することで支持力の増強を図る方法が開示されている。
しかしながら、構造物が存在している状況での作業となるため、手間がかかる。また、掘削深度が深い場合には、より一層作業に手間と費用が掛かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-169992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡易に支持力を増強することを可能とした既設杭支持力増強構造および既設杭支持力増強方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の既設杭支持力増強構造は、地盤に載置された補強部材を備えるものである。前記補強部材は、既設杭に作用する荷重の一部を前記地盤の表面に分散可能となるように、前記既設杭に固定されている。
また、本発明の既設杭支持力増強方法は、既設杭の外面に沿って補強部材を地盤上に載置する工程と、前記補強部材を前記既設杭に固定する工程とを備えている。
かかる既設杭支持力増強構造および既設杭支持力増強方法によれば、地盤に載置した補強部材を介して、既設杭に作用する荷重を分散することが可能となるため、既設杭の支持力を増強することができる。しかも、本発明の既設杭支持力増強構造は、簡易に構築できるため、施工性に優れている。
【0006】
前記補強部材は、前記既設杭の外面に沿って打設されたコンクリートの硬化体であってもよい。この場合の既設杭支持力増強方法は、既設杭の外面にジベルを固定する工程と、前記ジベルを巻き込むように前記既設杭の外面に沿ってコンクリートを打設して補強部材を形成する工程とを備えているのが望ましい。
かかる既設杭支持力増強構造および既設杭支持力増強方法によれば、既設杭の支持力を簡易に増強させることができる。
【0007】
また、前記既設杭を囲うように前記地盤に圧入された壁部材をさらに備えており、前記補強部材の先端は、前記壁部材に固定されていてもよい。
こうすることで、基礎構造の支持力を増強させることができる。
なお、前記既設杭に作用する支持力が変化する場合には、支持力に応じて前記補強部材を交換してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の既設杭支持力増強構造および既設杭支持力増強方法によれば、既設杭の支持力を簡易に増強することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態に係る既設杭支持力増強構造を示す図であって、(a)は断面図、(b)は平面図である。
図2】補強部材の増強方法の例を示す断面図であって、(a)は増強前、(b)は増強後である。
図3】補強部材の増強方法の他の例を示す断面図であって、(a)は増強前、(b)は増強後である。
図4】支持力の増強方法の例を示す断面図であって、(a)は増強前、(b)は増強後である。
図5】第二実施形態に係る既設杭支持力増強構造を示す図であって、(a)は断面図、(b)は平面図である。
図6】第三実施形態に係る既設杭支持力増強構造を示す図であって、(a)は断面図、(b)は平面図である。
図7】(a)および(b)は第三実施形態に係る既設杭支持力増強構造の他の形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
本実施形態では、仮設構造体(例えば、桟橋、構台、覆工等)の構築後に、既設杭支持力増強構造により、杭(既設杭)の支持力を増加させる場合について説明する。図1に本実施形態の既設杭支持力増強構造1を示す。本実施形態の既設杭Pは、H形鋼からなる。
本実施形態の既設杭支持力増強構造1は、図1(a)および(b)に示すように、地盤Gに載置された補強部材2を備えるものである。補強部材2は、既設杭Pに作用する荷重の一部を地表面GLに分散可能となるように、既設杭Pに固定されている。
【0011】
補強部材2は、鋼板を加工することにより形成されており、図1(a)に示すように、既設杭Pの外面に添設された添設部21と、添設部21から側方に延設されて地盤Gに載置された接地部22とを備えていて、断面視L字状を呈している。補強部材2は、1枚の鋼板を加工することにより形成してもよいし、複数(例えば2枚)の鋼板を接合することにより形成してもよい。図1(b)に示すように、本実施形態では、既設杭Pの両フランジに補強部材2が固定されている。添設部21は、治具3を介して既設杭Pのフランジに固定されている。本実施形態では、治具3として、挟締金具を使用する。なお、治具3は挟締金具に限定されるものではない。また、添設部21の固定方法は限定されるものではなく、例えば、既設杭Pの側面に溶接してもよい。
【0012】
次に第一実施形態の既設杭支持力増強方法の手順を示す。第一実施形態の既設杭支持力増強構造1の施工(既設杭支持力増強方法に)は、載置工程S11と、固定工程S12とを備えている。
載置工程S11では、既設杭Pの外面に沿って補強部材2を地盤G上に載置する。すなわち、載置工程S11では、補強部材2の添接部21を既設杭Pのフランジに沿わせつつ、補強部材2の接地部22を既設杭Pの周囲の地盤G上に載置する。
固定工程S12では、補強部材2を前記既設杭Pに固定する。
なお、仮設構造体の供用中において、既設杭Pに作用する荷重が変化する場合には、増強工程S13を行う。増強工程S13では、既設杭Pに作用する支持力に応じて補強部材2を増強する。図2図4に増強方法の例を示す。
【0013】
補強部材2の増強方法としては、例えば、図2(a)に示す補強部材2を、図2(b)に示すように、接地部22の長さを大きくした補強部材2に変更することにより、支持力を増加させる方法がある。
また、図3(a)に示す補強部材2を、図3(b)に示すように、板厚を増加させたり、添設部21と接地部22との角部にリブ23が設けられた補強部材2に変更することにより増強を図ってもよい。
さらに、図4(a)に示す既設杭支持力増強構造1に対して、図4(b)に示すように、補強部材2の直下に地盤改良体4を形成することにより支持力を増加させてもよい。地盤改良体4は、補強部材2の下方の地盤Gを地盤改良することにより形成する。
【0014】
以上、第一実施形態の既設杭支持力増強構造1および既設杭支持力増強方法によれば、地盤Gに載置した補強部材2を介して、既設杭Pに作用する荷重を分散することが可能となるため、既設杭Pの支持力を増強することができる。
また、既設杭支持力増強構造1は、補強部材2を簡易に構築できるため、施工性に優れている。また、供用中の仮設構造体(既設杭P)に対して施工できるため、全体的な工期への影響を最小限に抑えることができる。
また、補強部材2は鋼板により形成されているため、入手しやすく、形成しやすい。そのため、製造コストが安い。
必要に応じて補強部材2を交換することが可能なため、状況に応じて、支持力を変化させることができる。
また、地盤改良体4を形成すれば、さらなる支持力の増強を図ることができる。
なお、補強部材2の形状は断面L字状に限定されるものではない。すなわち、補強部材2は、必ずしも添設部21と接地部22を有している必要はない。
【0015】
<第二実施形態>
第二実施形態では、第一実施形態と同様に、仮設構造体(例えば、桟橋、構台、覆工等)の構築後に、既設杭支持力増強構造5により、杭(既設杭P)の支持力を増加させる場合について説明する。図5に第二実施形態の既設杭支持力増強構造5を示す。既設杭Pは、H形鋼からなる。
第二実施形態の既設杭支持力増強構造5は、図5(a)および(b)に示すように、地盤Gに載置された補強部材6を備えるものである。補強部材6は、既設杭Pに作用する荷重の一部を地表面GLに分散可能となるように、既設杭Pに固定されている。
【0016】
補強部材6は、既設杭Pの外面に沿って打設されたコンクリートの硬化体である。本実施形態の補強部材6は、既設杭Pの外周を覆うように形成されており、平面視矩形状を呈している。また、補強部材6は、既設杭Pの外面に植設されたジベル61を介して既設杭Pに固定されている。
【0017】
次に第二実施形態の既設杭支持力増強方法を示す。第二実施形態の既設杭支持力増強構造5を利用した既設杭支持力増強方法は、ジベル固定工程S21と打設工程S22とからなる。
ジベル固定工程S21では、既設杭Pの外面にジベル61を固定するとともに、既設杭Pを取り囲むように型枠を設置する。ジベル61の本数および配置は、適宜決定すればよい。本実施形態のジベル61は、所定の長さの異形鉄筋により構成されているが、ジベル61を構成する材料は限定されるものではない。
打設工程S22では、ジベル61を巻き込むように、型枠内にコンクリートを打設して補強部材6を形成する。
【0018】
以上、第二実施形態の既設杭支持力増強構造5および既設杭支持力増強方法によれば、地盤Gに載置した補強部材6を介して、既設杭Pに作用する荷重を分散することが可能となるため、既設杭Pの支持力を増強することができる。
また、既設杭支持力増強構造5は、補強部材6を簡易に構築できるため、施工性に優れている。
既設杭Pの周囲の床付け面(地表面GL)が傾斜していたり、不陸であったりしても、補強部材6を構成する場所打ちのコンクリートにより傾斜や不陸を吸収できるため、安定した支持力増強効果を得ることができる。
なお、補強部材6の下方の地盤Gに地盤改良体4を形成すれば、さらなる支持力の増強を図ることができる。
【0019】
<第三実施形態>
第三実施形態では、第一実施形態と同様に、仮設構造体(例えば、桟橋、構台、覆工等)の構築後に、既設杭支持力増強構造7により、杭(既設杭P)の支持力を増加させる場合について説明する。図6に第三実施形態の既設杭支持力増強構造7を示す。既設杭Pは、H形鋼からなる。
第三実施形態の既設杭支持力増強構造7は、図6(a)および(b)に示すように、地盤G(地表面GL)に載置された補強部材8と、既設杭Pを囲うように地盤Gに圧入された壁部材81とを備えるものである。
【0020】
補強部材8は、既設杭Pの外面に固定されたコンクリート製の部材であり、既設杭Pに作用する荷重の一部を地表面GLに分散可能となるように、既設杭Pに固定されている。補強部材8の一端(基端)は既設杭Pのウェブまたはフランジに固定されたジベル等を介して既設杭Pに固定されており、補強部材8の他端(先端)は、壁部材81の内面に固定されたジベル等を介して壁部材81に固定されている。
壁部材81は、断面矩形状の鋼管を、既設杭Pを囲うように地中に圧入することにより形成されている。
【0021】
なお、補強部材8を構成する材料は、コンクリートに限定されるものではなく、例えば鋼材(例えば、H形鋼、溝型鋼、角鋼管等)であってもよい、補強部材8を鋼材により構成する場合には、既設杭Pや壁部材81に溶接または治具を介して固定すればよい。
また、壁部材81は、必ずしも連続している必要はなく、図7(a)および(b)に示すように、複数の壁部材81,81を、隙間をあけて配設してもよい。隙間をあけて複数の壁部材81を配設する場合(不連続にする場合)は、同一形状の壁部材81,81を既設杭Pを挟んで対向するように設置(既設杭Pに対して対称形で設置)して、既設杭Pを囲うようにする。
壁部材81は、必ずしも矩形状である必要はなく、例えば図7(b)に示すように、平面視円形状に配置してもよい。
【0022】
以上、第三実施形態の既設杭支持力増強構造7および既設杭支持力増強方法によれば、地盤Gに載置した補強部材8および壁部材81を介して、既設杭Pに作用する荷重を地盤Gに分散することが可能となるため、既設杭Pの支持力を増強することができる。
また、既設杭支持力増強構造7は、入手しやすい材料により形成できるため、製造コストが安い。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
既設杭Pは、H形鋼に限定されるものではなく、例えば、鋼管杭であってもよい。また、補強部材2は、鋼板に限定されるものではなく、例えば、山留めH鋼材等でもよい。
補強部材の床付け面に凹凸を有している場合には、床付け面を整地してもよい。
また、補強部材の接地面よりも大きな面積を有した鉄板を補強部材と地表面GLとの間に介設して、支持力確保に必要な接地面積を大きくしてもよい。
既設杭支持力増強構造1,5,7の仕様を検討する場合には、各部材および地盤Gをモデル化し、既設杭Pに作用させる荷重を漸増させるプッシュオーバー解析を行うのが望ましい。
【符号の説明】
【0024】
1 既設杭支持力増強構造
2 補強部材
21 添設部
22 接地部
23 リブ
3 治具
4 地盤改良体
5 既設杭支持力増強構造
6 補強部材
61 ジベル
7 既設杭支持力増強構造
8 補強部材
81 壁部材
G 地盤
P 既設杭
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7