(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163755
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】タイヤ管理装置、プログラム及びタイヤ管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241115BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079624
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 直人
(72)【発明者】
【氏名】小野 敬俊
(72)【発明者】
【氏名】笠井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】輕部 隆章
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕二郎
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】発信器が内蔵されたタイヤの装着位置を自動判定できるタイヤ管理装置、プログラム及びタイヤ管理方法が提供される。
【解決手段】タイヤ管理装置(10)は、発信器が内蔵されたタイヤの車両への装着状態を管理するタイヤ管理装置であって、読取部(70)によってタイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された発信器から読み取られた発信器ID情報と、発信器ID情報を読み取る際の信号受信強度と、車両の特定位置又は特定位置の近傍に設けられる基準発信器から読み取られた基準発信器ID情報と、基準発信器ID情報を読み取る際の基準信号受信強度と、を取得する取得部(131)と、信号受信強度と基準信号受信強度との比較結果に基づいて作業対象タイヤの車両における装着位置を判定し、発信器ID情報を装着位置に紐づけた装着位置情報を生成する判定部(132)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信器が内蔵されたタイヤの車両への装着状態を管理するタイヤ管理装置であって、
読取部によって前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報を読み取る際の信号受信強度と、前記車両の特定位置又は前記特定位置の近傍に設けられる基準発信器から読み取られた基準発信器ID情報と、前記基準発信器ID情報を読み取る際の基準信号受信強度と、を取得する取得部と、
前記信号受信強度と前記基準信号受信強度との比較結果に基づいて前記作業対象タイヤの前記車両における装着位置を判定し、前記発信器ID情報を前記装着位置に紐づけた装着位置情報を生成する判定部と、を備える、タイヤ管理装置。
【請求項2】
前記取得部は、少なくとも車輪構成の情報を含む前記車両に関するデータである車両データを取得し、
前記判定部は、前記作業対象タイヤの前記装着位置を前記車輪構成の情報に基づいて判定する、請求項1に記載のタイヤ管理装置。
【請求項3】
前記車両データは、前記作業対象タイヤを除く前記車両の他のタイヤに内蔵された前記発信器に関する前記装着位置情報を含み、
前記基準発信器として前記他のタイヤに内蔵された前記発信器が用いられる、請求項2に記載のタイヤ管理装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記信号受信強度と前記基準信号受信強度との比較結果に基づいて前記装着位置を判定する第1判定手法と、前記第1判定手法に加えて前記信号受信強度の極大値の比較によって前記装着位置を判定する第2判定手法と、を前記車輪構成の情報に基づいて切り替え、
取得される発信器ID情報及び信号受信強度は複数であって、読取部によって異なる位置又は異なる時間において読み取られる、請求項2又は3に記載のタイヤ管理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記発信器ID情報の数が前記車輪構成の情報から得られる車輪の数より多い場合に、前記信号受信強度の大きさに基づいて、一部の前記発信器ID情報について前記装着位置を判定しない、請求項2又は3に記載のタイヤ管理装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記発信器ID情報の数が前記車輪構成の情報から得られる車輪の数より少ない場合に、出力部に警告を出力させる、請求項2又は3に記載のタイヤ管理装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記車両を撮影した画像、作業者によって入力された識別情報又は前記車両に内蔵された車両発信器から読み取られた車両発信器ID情報に基づいて特定される前記車両の前記車両データを取得する、請求項2又は3に記載のタイヤ管理装置。
【請求項8】
前記基準発信器は複数である、請求項1又は2に記載のタイヤ管理装置。
【請求項9】
発信器が内蔵されたタイヤの車両への装着状態を管理するタイヤ管理装置に、
読取部によって前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報を読み取る際の信号受信強度と、前記車両の特定位置又は前記特定位置の近傍に設けられる基準発信器から読み取られた基準発信器ID情報と、前記基準発信器ID情報を読み取る際の基準信号受信強度と、を取得することと、
前記信号受信強度と前記基準信号受信強度との比較結果に基づいて前記作業対象タイヤの前記車両における装着位置を判定し、前記発信器ID情報を前記装着位置に紐づけた装着位置情報を生成することと、を実行させる、プログラム。
【請求項10】
発信器が内蔵されたタイヤの車両への装着状態を管理するタイヤ管理方法であって、
読取部によって前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報を読み取る際の信号受信強度と、前記車両の特定位置又は前記特定位置の近傍に設けられる基準発信器から読み取られた基準発信器ID情報と、前記基準発信器ID情報を読み取る際の基準信号受信強度と、を取得することと、
前記信号受信強度と前記基準信号受信強度との比較結果に基づいて前記作業対象タイヤの前記車両における装着位置を判定し、前記発信器ID情報を前記装着位置に紐づけた装着位置情報を生成することと、を含む、タイヤ管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ管理装置、プログラム及びタイヤ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リトレッドタイヤの利用拡大等に伴い、タイヤの劣化状態を把握する技術が注目されている。リトレッドのコストを無駄にしないために、タイヤのリトレッドを実施する際には、台タイヤがリトレッド後の使用に耐えられるだけの耐久性を残している必要がある。個々のタイヤの劣化状態を把握して耐久性を判定するために、タイヤの個体識別が必要であり、例えばタイヤに発信器などの電子装置が取り付けられることがある。
【0003】
ここで、例えばタイヤは一部又は全てが交換されることがある。発信器(送信機)が取り付けられたタイヤを交換する場合に、システムで正確な情報を取得するために、交換タイヤに取り付けられた発信器の識別情報を車両の交換位置と対応付けて更新する必要がある。例えば、タイヤを交換する作業者が手動で発信器の識別情報を車両の交換位置と対応付けて更新することで、システムで継続的に情報を取得することができる。しかし、多くの車両を対象とする場合又は多くのタイヤが装着される車両などを対象とする場合に、作業者の作業量が増加し、誤った登録を行うなどのミスが生じやすい。したがって、作業者の登録作業を支援し、誤りを防止するための手法が求められている。例えば特許文献1は、第1信号強度と第2信号強度との合計値及び強度比に基づいて送信機が搭載されたタイヤが装着されている車輪位置を検出するシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、タイヤに取り付けられた送信機から送信される無線信号の受信状態のみに基づいて、車輪位置を検出することができる。特許文献1のシステムは、センサを追加せずに車輪位置の自動検出を可能にする。ここで、例えば演算処理能力に制限があるシステムでは、演算処理の負荷を低減するために、多少のセンサの追加が許容される場合がある。したがって、特許文献1の手法と異なる、発信器が内蔵されたタイヤの装着位置を自動判定できる手法が求められている。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、発信器が内蔵されたタイヤの装着位置を自動判定できるタイヤ管理装置、プログラム及びタイヤ管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一実施形態に係るタイヤ管理装置は、
発信器が内蔵されたタイヤの車両への装着状態を管理するタイヤ管理装置であって、
読取部によって前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報を読み取る際の信号受信強度と、前記車両の特定位置又は前記特定位置の近傍に設けられる基準発信器から読み取られた基準発信器ID情報と、前記基準発信器ID情報を読み取る際の基準信号受信強度と、を取得する取得部と、
前記信号受信強度と前記基準信号受信強度との比較結果に基づいて前記作業対象タイヤの前記車両における装着位置を判定し、前記発信器ID情報を前記装着位置に紐づけた装着位置情報を生成する判定部と、を備える。
この構成により、発信器が内蔵されたタイヤの装着位置を自動的に判定することができる。
【0008】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記取得部は、少なくとも車輪構成の情報を含む前記車両に関するデータである車両データを取得し、
前記判定部は、前記作業対象タイヤの前記装着位置を前記車輪構成の情報に基づいて判定する。
この構成により、判定部による作業対象タイヤの装着位置の自動判定の精度を高めることができる。
【0009】
(3)本開示の一実施形態として、(2)において、
前記車両データは、前記作業対象タイヤを除く前記車両の他のタイヤに内蔵された前記発信器に関する前記装着位置情報を含み、
前記基準発信器として前記他のタイヤに内蔵された前記発信器が用いられる。
この構成により、基準発信器の数を増大させることなく、作業対象タイヤの装着位置を自動的に判定することができる。
【0010】
(4)本開示の一実施形態として、(2)又は(3)において、
前記判定部は、前記信号受信強度と前記基準信号受信強度との比較結果に基づいて前記装着位置を判定する第1判定手法と、前記第1判定手法に加えて前記信号受信強度の極大値の比較によって前記装着位置を判定する第2判定手法と、を前記車輪構成の情報に基づいて切り替え、
取得される発信器ID情報及び信号受信強度は複数であって、読取部によって異なる位置又は異なる時間において読み取られる。
この構成により、ダブルタイヤを有する車両についても判定部による作業対象タイヤの装着位置の自動判定が可能になる。
【0011】
(5)本開示の一実施形態として、(2)から(4)のいずれかにおいて、
前記判定部は、前記発信器ID情報の数が前記車輪構成の情報から得られる車輪の数より多い場合に、前記信号受信強度の大きさに基づいて、一部の前記発信器ID情報について前記装着位置を判定しない。
この構成により、判定部による作業対象タイヤの装着位置の自動判定の精度をさらに高めることができる。
【0012】
(6)本開示の一実施形態として、(2)から(5)のいずれかにおいて、
前記判定部は、前記発信器ID情報の数が前記車輪構成の情報から得られる車輪の数より少ない場合に、出力部に警告を出力させる。
この構成により、作業者に対して早期に確認を促すことができ、登録の誤りを防止することができる。
【0013】
(7)本開示の一実施形態として、(2)から(6)のいずれかにおいて、
前記取得部は、前記車両を撮影した画像、作業者によって入力された識別情報又は前記車両に内蔵された車両発信器から読み取られた車両発信器ID情報に基づいて特定される前記車両の前記車両データを取得する。
この構成により、車両データの取得において、作業者の作業を減らすことができる。
【0014】
(8)本開示の一実施形態として、(1)から(7)のいずれかにおいて、
前記基準発信器は複数である。
この構成により、複数の基準信号受信強度との比較によって作業対象タイヤの装着位置の自動判定の精度をさらに高めることができる。
【0015】
(8)本開示の一実施形態に係るプログラムは、
発信器が内蔵されたタイヤの車両への装着状態を管理するタイヤ管理装置に、
読取部によって前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報を読み取る際の信号受信強度と、前記車両の特定位置又は前記特定位置の近傍に設けられる基準発信器から読み取られた基準発信器ID情報と、前記基準発信器ID情報を読み取る際の基準信号受信強度と、を取得することと、
前記信号受信強度と前記基準信号受信強度との比較結果に基づいて前記作業対象タイヤの前記車両における装着位置を判定し、前記発信器ID情報を前記装着位置に紐づけた装着位置情報を生成することと、を実行させる。
この構成により、発信器が内蔵されたタイヤの装着位置を自動的に判定することができる。
【0016】
(9)本開示の一実施形態に係るタイヤ管理方法は、
発信器が内蔵されたタイヤの車両への装着状態を管理するタイヤ管理方法であって、
読取部によって前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報を読み取る際の信号受信強度と、前記車両の特定位置又は前記特定位置の近傍に設けられる基準発信器から読み取られた基準発信器ID情報と、前記基準発信器ID情報を読み取る際の基準信号受信強度と、を取得することと、
前記信号受信強度と前記基準信号受信強度との比較結果に基づいて前記作業対象タイヤの前記車両における装着位置を判定し、前記発信器ID情報を前記装着位置に紐づけた装着位置情報を生成することと、を含む。
この構成により、発信器が内蔵されたタイヤの装着位置を自動的に判定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、発信器が内蔵されたタイヤの装着位置を自動判定できるタイヤ管理装置、プログラム及びタイヤ管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るタイヤ管理装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のタイヤ管理装置を備えるタイヤ管理システムの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、基準発信器の設置の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3の構成例での信号受信強度を例示する図である。
【
図5】
図5は、基準発信器の設置の別の例を示す図である。
【
図6】
図6は、他のタイヤの発信器を基準発信器として用いる構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、取得位置の変化による信号受信強度の変化を例示する図である。
【
図8】
図8は、発信器ID情報及び時刻に応じて変化する信号受信強度を説明するための図である。
【
図9】
図9は、読取部が異なる位置又は異なる時間において発信器からの発信器ID情報を読み取る方法の例を示す図である。
【
図10】
図10は、
図9の読み取り方法での信号受信強度の変化を例示する図である。
【
図11】
図11は、タイヤ管理装置が実行するタイヤ管理方法の処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係るタイヤ管理装置10(
図1参照)、プログラム及びタイヤ管理方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0020】
図1は、本実施形態に係るタイヤ管理装置10の構成例を示す。
図2は、
図1のタイヤ管理装置10を備えるタイヤ管理システムの構成例を示す。タイヤ管理装置10は、車両20に装着されるタイヤを管理する。本実施形態において、タイヤ管理装置10は、発信器31が内蔵されたタイヤの車両20への装着状態を管理する。車両20への装着状態の管理は、発信器31が内蔵された個々のタイヤが車両20のどの位置(車輪)に装着されているかを登録して管理することを含む。タイヤ管理装置10が管理するタイヤは特定の種類に限定されず、例えば乗用車用のタイヤであってよいし、トラック又はバス用の大型のタイヤでよいし、OR(Off the Road)タイヤであってよい。また、車両20は、特定の車種に限定されないが、本実施形態においてトラックであるとして説明される。トラックは、複輪(ダブルタイヤ)を有するタイプが含まれる。
【0021】
タイヤに発信器31が内蔵されることによって、タイヤの個体識別が可能になり、個々のタイヤの使用履歴などを管理して、例えばリトレッドの際の台タイヤの耐久性判定などを適切に行うことができる。ただし、車両20に装着されるタイヤは一部又は全てが交換されることがある。タイヤの交換は、新たなタイヤとの交換の他に、車両20に装着されていた複数のタイヤの位置を交換するローテーションを含む。発信器31が取り付けられたタイヤを交換する場合に、正確な情報取得のために、交換タイヤ(作業対象タイヤ)に取り付けられた発信器31の識別情報を車両20の交換位置(新たな装着位置)と対応付けて更新する必要がある。従来、タイヤを交換する作業者が手動で発信器31の識別情報を車両20の交換位置と対応付けて更新することが行われている。しかし、従来の方法では、多くの車両20を対象とする場合又は多くのタイヤが装着される車両20などを対象とする場合に、作業者の作業量が増加し、誤った登録を行うなどのミスが生じやすいという問題があった。本実施形態に係るタイヤ管理装置10は、以下に説明するように、作業対象タイヤの新たな装着位置を自動で判定する機能を備え、作業者の登録作業を支援し、登録の誤りを防止することができる。
【0022】
タイヤ管理装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。制御部13は、取得部131と、判定部132と、出力部133と、を備える。タイヤ管理装置10は、ハードウェア構成として、例えばコンピュータであってよい。タイヤ管理装置10の構成要素の詳細については後述する。
【0023】
本実施形態において、タイヤ管理装置10は交換作業を含むタイヤの修理及び点検を行う場所(以下、修理場所)のコンピュータである。コンピュータは、本実施形態において作業者が使用するスマートフォン又はタブレット端末などの可搬のコンピュータ装置であるが、特定の種類に限定されない。また、タイヤ管理装置10は複数であってよい。
【0024】
ここで、読取部70は、タイヤのそれぞれに取り付けられた発信器31から発信器ID情報を読み取る装置である。発信器ID情報は、個々のタイヤに固有の識別情報である。また、読取部70は発信器ID情報を読み取る際の信号受信強度を測定する。信号受信強度は例えばRSSI(Received Signal Strength Indicator)であってよいが、電波の強さを示すものであれば限定されない。本実施形態において、信号受信強度は図を参照しながら記号で示される。また、信号受信強度は無単位量の数値で表現されることがある。この場合、数値が大きいほど電波が強いことを示す。タイヤ管理装置10は、少なくとも読取部70とともにタイヤ管理システムを構成する。タイヤ管理装置10は、さらにネットワーク40で接続されるサーバ60とともに、タイヤ管理システムを構成してよい。ネットワーク40は、例えばインターネットである。また、ネットワーク40は、例えば一部においてLAN(Local Area Network)を含んで構成されてよい。
【0025】
サーバ60は、例えばタイヤ管理装置10とは別のコンピュータである。サーバ60は例えば情報を蓄積して管理するデータサーバであってよい。サーバ60は、例えば複数のタイヤ管理装置10のそれぞれで行われた登録作業の結果を集約して、個々のタイヤの管理情報をデータベース化して、タイヤ管理データとして蓄積してよい。タイヤ管理データはタイヤの車両20への装着状態を含む。タイヤ管理データはタイヤの修理履歴、タイヤを装着した車両20の走行履歴などを含んでよい。走行履歴は、例えば走行距離、走行速度、加減速度などの情報を含んでよい。走行履歴は、車両20に搭載された各種センサ、車両20の動作を制御するECU(Electronic Control Unit)などから得られるデータを、修理場所の作業者が登録することによってタイヤ管理装置10に送られてよい。また、サーバ60は、個々のタイヤに紐付けられる車両20に関するデータである車両データを管理してよい。車両データは、個々の車両20を特定するための情報(車両特定情報)に紐づけられたデータベースとして構成されてよい。また、車両データは、少なくとも車輪構成の情報を含む。車輪構成の情報は、例えば車両20の車輪の数、車軸の数、複輪(ダブルタイヤ)の有無などの情報を含んでよい。
【0026】
発信器31はタイヤに内蔵されている。タイヤへの内蔵は、例えばタイヤの内部に埋め込まれていること、及び、タイヤの内面の表面に貼付されていることを含む。発信器31は、タイヤから取り外しが困難であり、タイヤと路面との接触による影響を受けない位置であれば、タイヤの内面以外の表面に貼り付けられてよい。発信器31は、所定の信号を発信する。所定の信号は、少なくとも発信器31に固有の識別情報である発信器ID情報を含む。所定の信号は、さらに、製造年月及び製造場所などのタイヤの製造情報を含んでよい。発信器31は、本実施形態のようにRFIDタグであってよいが、所定の信号を発信するものであれば特定種類の機器に限定されない。RFIDタグは、リーダ装置との間で、電磁界、電波などを用いて近距離(数cm~数m程度)の無線通信を行い、情報のやり取りを行う。本実施形態において、読取部70はRFIDタグのリーダ装置である。ここで、発信器31は、パッシブタイプのRFIDタグ、すなわちRFIDタグ自体がデータを発信せずにリーダ装置からの電波を反射するタイプであってよい。また、1つのタイヤに内蔵されている発信器31は複数であってよいが、本実施形態において1つであるとする。
【0027】
図2に示すように、車両発信器31Vが車両20に内蔵されてよい。車両発信器31Vは、車両発信器31Vに固有の識別情報である車両発信器ID情報を含む信号を発信する。車両発信器ID情報は車両20の識別情報として用いられる。また、基準発信器31Sが車両20の特定位置(一例としてリム)又は特定位置の近傍に設けられてよい。基準発信器31Sは、基準発信器31Sに固有の識別情報である基準発信器ID情報を含む信号を発信する。読取部70は、発信器31と同様に、車両発信器31V及び基準発信器31Sから発信される信号を読み取ることができる。
【0028】
ここで、タイヤ管理システムは
図2に示される構成に限定されない。例えば、タイヤ管理システムは、タイヤ管理装置10が、サーバ60と統合(一体化)された構成であってよい。例えばタイヤ管理装置10が、サーバ60の機能を兼ねており、必要な全ての情報の取得及び管理を行ってよい。つまり、タイヤ管理システムは、タイヤ管理装置10と読取部70だけで構成されてよい。また、サーバ60の機能は、小型のコンピュータ装置で実現されてよい。小型のコンピュータ装置は、例えばスマートフォン又はタブレット端末などの移動端末を含んでよい。
【0029】
以下、タイヤ管理装置10の構成要素の詳細が説明される。通信部11は、ネットワーク40に接続する1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。通信部11は、例えば4G(4th Generation)、5G(5th Generation)などの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部11は、例えば無線のLAN規格(一例としてIEEE802.11)に対応する通信モジュールを含んでよい。また、通信部11は、例えば有線のLAN規格に対応する通信モジュールを含んでよい。
【0030】
記憶部12は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリなどであるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部12は、例えばタイヤ管理装置10に内蔵されるが、任意のインターフェースを介してタイヤ管理装置10によって外部からアクセスされる構成も可能である。
【0031】
記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出において使用される各種のデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出の結果及び中間データを記憶してよい。例えば記憶部12は取得部131がサーバ60から取得したタイヤ管理データ及び車両データを記憶してよい。また、記憶部12は、基準発信器31Sの基準発信器ID情報と基準発信器31Sが設けられている特定位置を紐づけた情報である基準発信器データを記憶してよい。
【0032】
制御部13は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部13は、タイヤ管理装置10の全体の動作を制御する。
【0033】
ここで、タイヤ管理装置10は、以下のようなソフトウェア構成を有してよい。タイヤ管理装置10の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部12に記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムは、制御部13のプロセッサによって読み込まれると、プロセッサを取得部131、判定部132及び出力部133として機能させる。
【0034】
取得部131は、読取部70によって読み取られた発信器ID情報と、発信器ID情報を読み取る際の信号受信強度と、を取得する。また、取得部131は、読取部70によって読み取られた基準発信器ID情報と、基準発信器ID情報を読み取る際の信号受信強度(基準信号受信強度)と、を取得する。取得部131は、車両20のタイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された発信器31から読み取られた発信器ID情報を取得すればよい。本実施形態において、特に記載がなければ、車両20の全てのタイヤの交換作業が行われ、作業対象タイヤが車両20の全てのタイヤであるとして説明する。ただし、作業対象タイヤは車両20の一部のタイヤであってよい。また、取得部131は、発信器ID情報が読み取られた位置又は時刻も取得してよい。また、取得部131は、読取部70から車両発信器ID情報をさらに取得してよい。読取部70は予め定められた位置で発信器ID情報及び基準発信器ID情報を読み取ってよい。また、読取部70は所定のタイミング(例えば一定間隔)で発信器ID情報及び基準発信器ID情報を読み取ってよい。
【0035】
取得部131は、少なくとも車輪構成の情報を含む車両20の車両データを取得してよい。取得部131は、例えば出力部133から出力される車両特定情報に基づいて特定される(選択される)作業対象である車両20の車両データを、サーバ60から取得してよい。この場合に、取得部131は車両特定情報を取得してよい。車両特定情報は、例えば車両20を撮影した画像、作業者によって入力された識別情報又は車両発信器ID情報であってよい。車両20の画像は、例えばタイヤ管理装置10が備えるカメラ機能で撮影されてよく、特に車両20のナンバープレートを含むものであってよい。作業者によって入力される識別情報は、例えば車両20のナンバープレートの番号であってよい。車両特定情報によって車両データを特定し、取得できることによって、車両データの取得における作業者の作業を減らすことができる。
【0036】
判定部132は、作業対象タイヤに内蔵された発信器31の信号受信強度と基準発信器31Sの基準信号受信強度との比較結果に基づいて、作業対象タイヤの車両20における装着位置を判定する。また、判定部132は、発信器ID情報を装着位置に紐づけた装着位置情報を生成する。上記のように、基準発信器31Sが車両20の特定位置又は特定位置の近傍に設けられており、判定部132は、基準発信器データなどによって特定位置を把握することができる。作業対象タイヤが特定位置の近くにある場合に、作業対象タイヤの発信器31の信号受信強度と特定位置に設けられた基準発信器31Sの基準信号受信強度とは、通信状態に関係なく、ほぼ同じになる。したがって、判定部132は、発信器31の信号受信強度と基準発信器31Sの基準信号受信強度とを比較して、信号受信強度の差が十分に小さいと判定すれば、作業対象タイヤが特定位置の近くにあると判定できる。判定部132は、過去の実績又は実験などから得られた閾値を用いて、信号受信強度の差の大きさが閾値以下であれば、差が十分に小さいと判定してよい。また、基準発信器は複数であってよい。判定部132は、発信器31の信号受信強度と複数の基準発信器31Sの基準信号受信強度とを比較して、信号受信強度が最も近い、すなわち最も信号受信強度の差が小さい基準発信器31Sの特定位置の近くに作業対象タイヤが装着されたと判定できる。複数の基準発信器31Sが設けられる場合に、判定部132は、複数の基準信号受信強度との比較によって作業対象タイヤの装着位置の自動判定の精度をさらに高めることができる。
【0037】
図3は、基準発信器31Sの設置の一例を示す図である。
図4は、
図3の構成例での信号受信強度を例示する図である。
図3の例では、車両20がP1、P4、P7及びP10の装着位置を有する。本実施形態において、判定部132は、車輪構成の情報によって装着位置の候補を判定前に把握した上で、装着位置を判定する。判定部132が車両データに基づいて判定前に装着位置の候補を把握することによって、自動判定の精度を高めることができる。また、
図3に示すように、特定位置として、各車輪のリムに基準発信器31Sが設けられている。ここで、基準発信器31Sのそれぞれを区別する場合に、
図3に括弧で示された符号を用いることがある。例えばP1にある車輪のリムに設けられた基準発信器31Sは、他の基準発信器31Sと区別する場合に基準発信器31S_S0001と称されることがある。読取部70は、信号の取得位置として位置「a1」において、作業対象タイヤに内蔵された発信器31及び基準発信器31Sからの信号を読み取る。例えば位置「a1」は、車両20のP1及びP4に近い方の側面(
図3の車両20の右側)であって、車両20の前後方向でややP1の方に近い位置である。
【0038】
図4に示すように、読取部70が読み取る基準信号受信強度は、基準発信器31S_S0001、31S_S0004、31S_S0007、31S_S0010の順に強い。ここで、基準発信器31S_S0001の基準信号受信強度は、レベルL_S0001と称することがあり、他の基準発信器31Sについても同様である。判定部132は、発信器31の信号受信強度と複数の基準発信器31Sの基準信号受信強度とを比較して、信号受信強度が最も近い基準発信器31Sの特定位置の近くに作業対象タイヤが装着されたと判定する。
図4の例において、判定部132は、発信器ID情報が「T0001」である発信器31の信号受信強度とレベルL_S0001とが最も近いため、この発信器31を内蔵する作業対象タイヤの装着位置がP1であると判定する。また、判定部132は、発信器ID情報が「T0004」である発信器31の信号受信強度とレベルL_S0004とが最も近いため、この発信器31を内蔵する作業対象タイヤの装着位置がP4であると判定する。同様に、判定部132は、発信器ID情報が「T0007」、「T0010」である発信器31を内蔵する作業対象タイヤのそれぞれの装着位置がP7、P10であると判定する。このように、判定部132は、基準信号受信強度との比較によって作業対象タイヤの装着位置を自動判定でき、例えば信号受信強度の合計値などを演算することもないため、演算処理の負荷が小さい。したがって、例えば判定部132として機能するプロセッサ等の演算処理能力が高くない場合であっても、本手法を適用することが可能である。
【0039】
また、基準発信器31Sは、車両20の特定位置の近傍に設けられてよく、例えば車両20の外に設けられてよい。例えば
図5に示すように、車両20が止まっており、特定位置である車輪のリムの近傍(路面上)に基準発信器31Sを含む設置物が置かれていてよい。設置物は、例えば工事現場などで区分けに用いられるトラフィックコーンなどであってよいが、特定の物に限定されない。
図5の構成例でも、
図4の構成例の場合と同様に、判定部132は、基準信号受信強度との比較によって作業対象タイヤの装着位置を自動的に判定することができる。
【0040】
ここで、基準発信器31Sの数が多いことは、比較する基準信号受信強度の数が多くなるため、作業対象タイヤの装着位置の自動判定の精度を高めることにつながる。一方で、基準発信器31Sの数が多いことは、システムの部品数が多くなるためコストを上昇させ得る。作業対象タイヤが車両20の一部のタイヤである場合に、基準発信器31Sとして、作業対象タイヤを除く車両20の他のタイヤに内蔵された発信器31が用いられてよい。基準発信器31Sの数を増大させることなく、作業対象タイヤの装着位置を自動的に判定することができる。この場合に、車両データが車両20の他のタイヤに内蔵された発信器31に関する装着位置情報を含み、判定部132は、車両データに基づいて基準発信器31Sとして用いられる他のタイヤの発信器31の位置を把握できる。
【0041】
図6は、他のタイヤの発信器31を基準発信器31Sとして用いる構成例を示す図である。
図6の例において、P7及びP10の装着位置のタイヤは作業対象タイヤでない。作業対象タイヤは1つであって、P1又はP4の位置に装着される。また、判定部132は、車両データに基づいて、発信器ID情報が「T0007」、「T0010」である発信器31を内蔵するタイヤの装着位置がそれぞれP7、P10であることを把握する。そして、判定部132は、発信器ID情報が「T0007」、「T0010」である発信器31を基準発信器31Sとして用いる。読取部70は、位置「a1」において、作業対象タイヤに内蔵された発信器31及び基準発信器31Sからの信号を読み取る。作業対象タイヤに内蔵された発信器31の発信器ID情報が「T0001」であるとする。
図7の左図は、読取部70が位置「a1」において読み取った信号の信号受信強度を示す。レベルL_T0007、L_T0010は、それぞれ基準発信器31Sとして扱われる発信器ID情報が「T0007」、「T0010」である発信器31の信号受信強度である。判定部132は、発信器ID情報が「T0001」である発信器31の信号受信強度がレベルL_T0007により近いため、この発信器31を内蔵する作業対象タイヤの装着位置がP1であると判定してよい。
【0042】
ここで、読取部70は、複数の位置において、発信器31及び基準発信器31Sからの信号を読み取ってよい。この場合に、読取部70が複数であって異なる場所に設けられてよいし、1つの読取部70が移動することによって複数の位置で信号を読み取ってよい。
図6の例において、読取部70は、位置「a1」及び「a2」において、作業対象タイヤに内蔵された発信器31及び基準発信器31Sからの信号を読み取ってよい。このとき、取得部131は、発信器ID情報が読み取られた位置も取得してよい。判定部132は、
図7のように読取部70が位置「a1」及び「a2」において読み取った信号の信号受信強度を用いて、それぞれで作業対象タイヤの装着位置を判定して、判定結果を照合する検証処理を実行してよい。
図7の例では、位置「a1」及び「a2」での信号受信強度を用いた判定は、いずれも作業対象タイヤの装着位置がP1であり、判定結果が一致している。ここで、検証結果で不一致が生じた場合に、判定部132は再度の判定を行ってよい。判定部132が、複数の位置において読み取られた信号受信強度を用いて作業対象タイヤの装着位置を判定し、判定結果を検証することによって、判定精度をさらに高めることができる。
【0043】
ここで、ダブルタイヤを有する車両20では、ダブルタイヤを構成する2つの車輪に装着されるタイヤの発信器31の信号受信強度が異なることがある。例えば内輪側のタイヤの発信器31の信号受信強度が小さい場合に、基準信号受信強度との比較だけでは装着位置の特定が難しい場合がある。このような場合に、判定部132は、読取部70によって異なる位置又は異なる時間において読み取られた、複数の発信器ID情報及び信号受信強度を用いて装着位置を判定してよい。複数の発信器ID情報及び信号受信強度を得るために、読取部70と発信器31との相対的な距離を変化させながら、発信器ID情報が読み取られればよい。
【0044】
図8は、発信器ID情報及び時刻に応じて変化する信号受信強度を説明するための図である。
図8及び
図10における信号受信強度は無単位量の数値であって、数値が大きいほど電波が強いことを示す。
図8の例において、例えば時刻「t3」において、発信器ID情報として「T0002」が読み取られて、その受信の際の信号受信強度が「10」である。同じ時刻「t3」において、発信器ID情報として「T0003」も読み取られて、その受信の際の信号受信強度が「3」である。また、時刻「t3」より後の時刻「t4」において、発信器ID情報として「T0002」が再び読み取られて、その受信の際の信号受信強度は「5」に低下している。取得部131は、読取部70から
図8に示されるような発信器ID情報と信号受信強度を取得する。つまり、取得部131が取得する発信器ID情報及び信号受信強度は複数であって、読取部70によって異なる位置又は異なる時間において読み取られる。また、読取部70は基準発信器ID情報及び時刻に応じて変化する基準信号受信強度も読み取る。取得部131は、読取部70から基準発信器ID情報及び基準信号受信強度も取得する。
【0045】
図9は、読取部70が異なる位置又は異なる時間において発信器31からの発信器ID情報を読み取る方法の例を示す図である。
図10は、
図9の読み取り方法での信号受信強度の変化を例示する図である。例えば作業者が読取部70を持ちながら、車両20の一方の側面(
図9の車両20の右側)近くを歩くことによって、発信器31からの複数の発信器ID情報を読み取ることができる。この場合に、発信器ID情報は異なる時間に異なる位置で取得される。
図9の例では、時刻tが「t1」のときに読取部70が最前部の前輪付近にあるが、作業者が読取部70を持ちながら車両20の後方に移動するため、時刻「t7」で読取部70が最後部の後輪付近にある。
図9では、P3の位置の近傍に基準発信器31S_S0003が設けられている。
【0046】
判定部132は、上記の複数の位置の信号受信強度を用いた判定(
図6及び
図7参照)などを実行することができる。つまり、判定部132は、信号受信強度と基準信号受信強度との比較結果に基づいて装着位置を判定する第1判定手法を用いることができる。ここで、ダブルタイヤを有する車両20では、ダブルタイヤを構成する2つの車輪に装着されるタイヤの発信器31の信号受信強度が同じように変化し、装着位置の近くで同時に大きくなる。したがって、これらを区別するために、信号受信強度の大小を比較する必要がある。判定部132は、第1判定手法に加えて信号受信強度の極大値の比較によって装着位置を判定する第2判定手法を用いてよい。例えば判定部132は、第1判定手法と第2判定手法を車輪構成の情報に基づいて切り替えてよい。
図9の例で判定部132は、車輪構成の情報から車両20がダブルタイヤを有することを把握し、第2判定手法に切り替えて装着位置を判定する。このような車輪構成の情報に基づく判定手法の切り替えにより、ダブルタイヤを有する車両20についても判定部132による作業対象タイヤの装着位置の自動判定が可能になる。ここで、判定部132は、車両20がダブルタイヤを有しない場合に、第1判定手法を用いて装着位置を判定し、演算の負荷を軽減することができる。
【0047】
図9の例では、車両20がP1~P12の装着位置を有する。
図10に示すように、発信器IDがT0001~T0006である発信器31及び基準発信器IDがS0003である基準発信器31Sからの信号受信強度が時刻tに応じて変化している。発信器IDがT0001~T0006である発信器31は、P1~P6の装着位置のタイヤに内蔵されていると推定される。
図10の例において、P7~P12の装着位置に装着されたタイヤは読取部70の位置から十分に離れており、これらのタイヤの発信器31からの信号が受信されない。P7~P12の装着位置のタイヤに内蔵されている発信器31からの信号を受信するために、例えば作業者が読取部70を持ちながら車両20の他方の側面(
図9の車両20の左側)近くを歩いてよい。
【0048】
判定部132は、P1、P2、P3及びP5、P4及びP6の装着位置で順に信号受信強度がピーク(極大)を示すことを、車輪構成の情報によって把握する。判定部132は、第1判定手法(信号受信強度と基準信号受信強度との比較)を用いてP1、P2のタイヤの発信器31の発信器IDがそれぞれT0001、T0002であると判定してよい。判定部132は、ダブルタイヤについて、上記のように信号受信強度の大小を比較する。つまり、判定部132は、同時にピークを示す発信器31について、信号受信強度の小さい方を内輪側、信号受信強度の大きい方を外輪側、と判定する。判定部132は、P3、P5のタイヤの発信器31の発信器IDがそれぞれT0003、T0005であると判定する。また、判定部132は、P4、P6のタイヤの発信器31の発信器IDがそれぞれT0004、T0006であると判定する。そして、判定部132は発信器ID情報を装着位置に紐づけた装着位置情報を生成する。
【0049】
判定部132は判定結果についての検証機能を備えてよい。例えば判定部132は、発信器ID情報の数が車輪構成の情報から得られる車輪の数より多い場合に、信号受信強度の大きさに基づいて、一部の発信器ID情報について装着位置を判定しなくてよい。
図10の例で仮に信号受信強度が1以下である別の発信器31からの情報が得られても、判定部132は対応付ける車輪の数(
図10の例で6つ)より多いとして、装着位置を判定しなくてよい。このような検証機能によって、判定部132による作業対象タイヤの装着位置の自動判定の精度をさらに高めることができる。また、判定部132は、発信器ID情報の数が車輪構成の情報から得られる車輪の数より少ない場合に、出力部133に警告を出力させてよい。警告によって作業者に対して早期に確認を促すことができ、登録の誤りを防止することができる。
【0050】
出力部133は、判定部132によって生成された装着位置情報を出力する。例えば出力部133は装着位置情報を自動でサーバ60に出力してよい。このとき、作業者の登録作業の負担を無くすことができる。また、例えば出力部133は装着位置情報を、タブレット端末などであるタイヤ管理装置10のディスプレイに表示させてよい。作業者は、発信器ID情報と装着位置との紐づけを確認し、問題がなければ出力部133に装着位置情報をサーバ60に出力させる指示をしてよい。このとき、作業者の登録作業の負担を大幅に軽減することができる。また、出力部133は、上記のように判定部132から警告の出力指示がある場合に、警告をタブレット端末などであるタイヤ管理装置10のディスプレイに表示させてよい。また、出力部133は、車両特定情報をサーバ60に出力してよい。
【0051】
図11は、タイヤ管理装置10の制御部13が実行するタイヤ管理方法の処理を例示するフローチャートである。タイヤ管理方法の処理は、例えばタイヤの交換作業が行われるタイミングで開始されてよい。
【0052】
取得部131は車両特定情報を取得する(ステップS1)。作業対象である車両20の車両データは、車両特定情報に基づいて特定される。出力部133は、車両特定情報をサーバ60に出力する。サーバ60は、車両特定情報に基づいて特定される車両20の車両データを、タイヤ管理装置10に送信してよい。
【0053】
取得部131は、車両20の車両データを取得する(ステップS2)。判定部132は、車両データに含まれる車輪構成の情報によって装着位置の候補を判定前に把握し、作業対象タイヤの装着位置の自動判定の精度を高めることができる。
【0054】
取得部131は、読取部70から発信器ID情報と信号受信強度を取得する(ステップS3)。また、取得部131は、読取部70から基準発信器ID情報と基準信号受信強度を取得する。
【0055】
判定部132は、上記の手法によって、作業対象タイヤの車両20における装着位置を判定する(ステップS4)。
【0056】
判定部132は、発信器ID情報を装着位置に紐づけた装着位置情報を生成する(ステップS5)。
【0057】
出力部133は、判定部132によって生成された装着位置情報を例えばサーバ60に出力する(ステップS6)。例えばサーバ60は、装着位置情報を新たな登録情報として、タイヤ管理データを更新してよい。
【0058】
以上のように、本実施形態に係るタイヤ管理装置10、プログラム及びタイヤ管理方法は、上記の構成によって、発信器31が内蔵されたタイヤの装着位置を自動判定できる。本実施形態に係るタイヤ管理装置10、プログラム及びタイヤ管理方法では、信号受信強度と基準信号受信強度との比較結果に基づく判定によって、演算の負荷を従来手法に比べて低減することが可能である。
【0059】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム及びプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献】
【0060】
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本開示の一実施形態は「No.9 産業と技術革新の基盤をつくろう」等に貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0061】
10 タイヤ管理装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
20 車両
31 発信器
31S 基準発信器
31V 車両発信器
40 ネットワーク
60 サーバ
70 読取部
131 取得部
132 判定部
133 出力部