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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163761
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】異常検知システム
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/34 20060101AFI20241115BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20241115BHJP
   C21D 9/56 20060101ALN20241115BHJP
【FI】
C21D1/34 P
G06Q10/20
C21D9/56 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079632
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(72)【発明者】
【氏名】坂田 優太
(72)【発明者】
【氏名】伊井 大介
(72)【発明者】
【氏名】富永 健一
【テーマコード(参考)】
4K043
5L049
【Fターム(参考)】
4K043AA01
4K043CA02
4K043DA05
4K043EA06
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】異常点検技術を改善する。
【解決手段】点検対象の設備の画像を撮影する無人撮影装置1と、無人撮影装置1から撮影画像を取得する通信端末4と、通信端末4から撮影画像を取得して当該撮影画像から前記点検対象の異常を特定する異常特定装置6と、を備える異常検知システム100であって、無人撮影装置1と通信端末4とは第1専用ネットワークで無線通信可能であり、通信端末4及び異常特定装置6は第2専用ネットワークで無線通信可能であり、第2専用ネットワークの通信可能距離は第1専用ネットワークの通信可能距離よりも長いことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象の設備の画像を撮影する無人撮影装置と、前記無人撮影装置から撮影画像を取得する通信端末と、前記通信端末から前記撮影画像を取得して当該撮影画像から前記点検対象の異常を特定する異常特定装置と、を備える異常検知システムであって、
前記無人撮影装置と前記通信端末とは第1専用ネットワークで無線通信可能であり、前記通信端末及び前記異常特定装置は第2専用ネットワークで無線通信可能であり、第2専用ネットワークの通信可能距離は第1専用ネットワークの通信可能距離よりも長いことを特徴とする、異常検知システム。
【請求項2】
前記異常特定装置は、鋼板を加熱するラジアントチューブの亀裂を含む異常を特定可能な異常特定プログラムを用いて前記ラジアントチューブの異常を特定可能であって、
前記異常特定プログラムは前記ラジアントチューブの亀裂に係る第1教師データに基づいて機械学習されたものであり、前記第1教師データは、亀裂の撮影画像を基に亀裂の幅、長さ、明瞭度の情報を増やすことを目的に加工された画像を含むことを特徴とする、請求項1に記載の異常検知システム。
【請求項3】
前記異常特定装置は、鋼板を加熱するラジアントチューブの曲がりを含む異常を特定可能な異常特定プログラムを用いて前記ラジアントチューブの異常を特定可能であって、
前記異常特定プログラムは前記ラジアントチューブの曲がりに係る第2教師データに基づいて機械学習されたものであり、前記第2教師データは、複数の角度で撮影された同一の曲がりの画像を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の異常検知システム。
【請求項4】
前記異常特定装置は、前記ラジアントチューブの異常を特定した場合に、特定された異常の存在を示す結果情報を前記通信端末に送信し、
前記結果情報には、異常の危険度を示す危険度表示を含むことを特徴とする、請求項3に記載の異常検知システム。
【請求項5】
前記異常特定装置は、前記ラジアントチューブに係る操業条件を取得して、各ラジアントチューブにおける異常の発生有無及び危険度を予測し、予測された危険度に基づいて各ラジアントチューブに対する優先度を設定し、前記結果情報には、前記優先度を示す優先度表示を含むことを特徴とする、請求項4に記載の異常検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備の異常検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所の設備、例えば、焼鈍炉の加熱装置として、ラジアントチューブ(以下、RTともいう。)が一般的に使用されている。RTは熱伸びによる経年劣化により、チューブに亀裂、チューブ自体が垂れさがるような曲がり等の異常が発生するため、RTに異常が認められた場合は適切に交換する必要がある。従来のRTの点検は、作業者がRTに手足をかけて列間をよじ登り、点検対象となるRTを目視で点検し、異常がある場合はチェックリストに記入する方法によりRTを点検しており、墜転落のリスク、工数増加等の要因となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の点検手法では、異常箇所をチェックリストで記入する必要があり、チェックリストへの記入ミスやRTの異常見逃し等の人的ミスが発生する可能性があった。近年、ドローン等の無人撮影手段を用いて各所の設備を点検することは広く行われているが、無人撮影装置による撮影の安全性を確保しつつ、情報の機密性を確保し、効率的かつ高精度に設備の異常を点検するのに適切なシステム構成については特段考慮されていない。すなわち、従来の異常検知技術には改善の余地があった。
【0004】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、設備の異常検知技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示の一実施形態に係る異常検知システムは、点検対象の設備の画像を撮影する無人撮影装置と、前記無人撮影装置から撮影画像を取得する通信端末と、前記通信端末から前記撮影画像を取得して当該撮影画像から前記点検対象の異常を特定する異常特定装置と、を備える異常検知システムであって、
前記無人撮影装置と前記通信端末とは第1専用ネットワークで無線通信可能であり、前記通信端末及び前記異常特定装置は第2専用ネットワークで無線通信可能であり、第2専用ネットワークの通信可能距離は第1専用ネットワークの通信可能距離よりも長いことを特徴とする
【0006】
(2)本開示の一実施形態に係る異常検知システムは、(1)に記載の異常検知システムであって、
前記異常特定装置は、鋼板を加熱するラジアントチューブの亀裂を含む異常を特定可能な異常特定プログラムを用いて前記ラジアントチューブの異常を特定可能であって、
前記異常特定プログラムは前記ラジアントチューブの亀裂に係る第1教師データに基づいて機械学習されたものであり、前記第1教師データは、亀裂の撮影画像を基に亀裂の幅、長さ、明瞭度の情報を増やすことを目的に加工された画像を含むことを特徴とする。
【0007】
(3)本開示の一実施形態に係る異常検知システムは、(1)又は(2)に記載の異常検知システムであって、
前記異常特定装置は、鋼板を加熱するラジアントチューブの曲がりを含む異常を特定可能な異常特定プログラムを用いて前記ラジアントチューブの異常を特定可能であって、
前記異常特定プログラムは前記ラジアントチューブの曲がりに係る第2教師データに基づいて機械学習されたものであり、前記第2教師データは、複数の角度で撮影された同一の曲がりの画像を含むことを特徴とする。
【0008】
(4)本開示の一実施形態に係る異常検知システムは、(2)又は(3)に記載の異常検知システムであって、
前記異常特定装置は、前記ラジアントチューブの異常を特定した場合に、特定された異常の存在を示す結果情報を前記通信端末に送信し、
前記結果情報には、異常の危険度を示す危険度表示を含むことを特徴とする。
【0009】
(5)本開示の一実施形態に係る異常検知システムは、(2)乃至(4)のいずれか一項に記載の異常検知システムであって、
前記異常特定装置は、前記ラジアントチューブに係る操業条件を取得して、各ラジアントチューブにおける異常の発生有無及び危険度を予測し、予測された危険度に基づいて各ラジアントチューブに対する優先度を設定し、前記結果情報には、前記優先度を示す優先度表示を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態に係る設備の異常検知システムによれば、無人撮影装置により設備を撮影することで点検者のよじ登り作業を排除し災害リスクを軽減できる。また本異常検知システムにおける通信は、第1専用ネットワーク又は第2専用ネットワークを用いて行われるため、情報漏洩リスクを軽減できる。つまり本開示の一実施形態に係る設備の異常検知システムによれば、設備の異常検知技術を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る異常検知システムの構成例を示す図である。
図2】無人撮影装置の飛行ルートの一例を示す図である。
図3】ラジアントチューブの全体像を示す図である。
図4】ラジアントチューブの構成を示す概要図である。
図5】通信端末が表示する結果情報の一例である。
図6】本開示の一実施形態に係る無人撮影装置1のハードウェア構成を示す図である。
図7】本開示の一実施形態に係る通信端末2のハードウェア構成を示す図である。
図8】本開示の一実施形態に係る通信端末4のハードウェア構成を示す図である。
図9】本開示の一実施形態に係る異常特定装置6のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態に係る異常検知システムついて、図面を参照して説明する。なお、以下、本発明の異常検知システムを適用する設備として焼鈍炉の加熱装置として用いられるRTを例に説明するが、検査対象の設備はRTに限られるものではない。RT以外の設備としてはクレーンのガーターや、煙突内部の亀裂が例示される。
【0013】
各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0014】
図1に、本実施形態に係る異常検知システム100の構成例を示す。異常検知システム100は、無人撮影装置1と、通信端末2と、通信端末4と、異常特定装置6とを含む。
【0015】
無人撮影装置1は、カメラ等の撮像部を有する。例えば無人撮影装置1は、撮像部による撮影に際して人体に装着(手に把持やヘルメットに装着等)することなく撮影できる装置であればよく、例えば無人飛行体であってよい。無人飛行体はドローンを含む。撮像部により撮影された撮影画像3は、無人撮影装置1から通信端末2に送信される。無人撮影装置1及び通信端末2は、近距離無線通信規格(後述する第1専用ネットワーク)により通信する。以下、本実施形態では、無人撮影装置1がドローンである場合について説明するが、これに限られない。
【0016】
通信端末2及び通信端末4は、無人撮影装置1の監視者、その他の関係者等のオペレータ(以下、単にオペレータともいう。)が有する無人飛行体の操縦・監視機能等を備えた通信端末である。本実施形態では、通信端末2が無人飛行体の操縦機能を備える。また通信端末2は、無人撮影装置1から受信した撮影画像3を通信端末4に送信する。換言すると通信端末4は、無人撮影装置1から撮影画像を取得する。例えば通信端末2は、無人撮影装置1の操縦コントローラーである。通信端末4は、無人飛行体の監視機能を備える。また通信端末4は通信端末2から送信された撮影画像3を表示する表示部を備える。また表示部は、後述するRTの異常診断結果を閲覧可能に表示する。通信端末4は例えばタブレット端末である。通信端末2及び通信端末4は、第1専用ネットワークにより無線通信可能である。なお、無人撮影装置1と通信端末4とは直接通信してもよい。例えば通信端末4は、無人撮影装置1から撮影画像を直接受信してもよい。この場合、無人撮影装置1と通信端末4とは第1専用ネットワークにより通信する。なお、通信端末2と通信端末4との機能を1台の通信端末により構成してもよい。例えば通信端末4が、無人飛行体の操縦・監視機能を備えてもよい。この場合、無人撮影装置1と通信端末4とが第1専用ネットワークにより通信する。
【0017】
異常特定装置6は、検査対象の撮影画像5に基づき異常の有無を検知する異常特定プログラムを有するサーバ装置等である。撮影画像5は、通信端末4から異常特定装置6に送信される。換言すると異常特定装置6は、通信端末4から撮影画像を取得して当該撮影画像から点検対象の異常を特定する。図1において異常検知システム100が備える異常特定装置6は1台である例を示しているが、これに限られない。異常検知システム100は、2台以上の異常特定装置6を備えてもよい。
【0018】
異常特定プログラムは検査対象の設備で発生する異常を機械学習により特定可能となるように構築される。本実施形態ではRTの異常として亀裂に係る異常の画像を含む教師データ(以下、第1教師データともいう。)と、曲がりに係る異常の画像を含む教師データ(以下第2教師データともいう。)を多数学習させて構築した異常特定プログラムである。
【0019】
第1教師データは、亀裂の撮影画像を基に亀裂の幅、長さ、明瞭度の情報を増やすことを目的にピクセル調整した画像を含む。換言すると、第1教師データは、亀裂の撮影画像を基に亀裂の幅、長さ、明瞭度の情報を増やすことを目的に加工された画像を含む。第2教師データは、曲がりのデータとして同一の曲がりを、例えば前後左右から複数の角度で撮影した画像を含む。つまり第2教師データは、複数の角度で撮影された同一の曲がりの画像を含む。このように曲がりについては、複数の角度で撮影された画像を用いて機械学習することにより、曲がりの異常に係る異常検知の精度を向上させることができる。
【0020】
異常特定装置6は、ドローン等の無人撮影装置1により撮影された撮影画像を異常特定プログラムに入力することでRTに異常が発生しているかを判定することができる。また、異常特定装置6は、異常が発生している場合において、亀裂、曲がりのいずれか、又は双方が発生しているかを特定することが可能である。なお、学習させる異常は設備に応じて適宜設定すればよい。
【0021】
本実施形態において無人撮影装置1、通信端末2、及び通信端末4と、通信端末4及び異常特定装置6とは、互いに異なる通信規格により無線通信可能である。以下、無人撮影装置1、通信端末2、及び4との間の通信規格を第1専用ネットワーク、通信端末4と異常特定装置6との間の通信規格を第2専用ネットワークともいう。ここで「専用ネットワーク」とは、限られた範囲内においてアクセス権限が付与された装置がアクセス可能なネットワークのことをいう。
【0022】
第1専用ネットワークは近距離無線通信規格であり、例えば、NFC通信、BlueTooth(登録商標)、WiFi(登録商標)等がこれに該当する。第1専用ネットワークは、プライベートな専用のネットワークであり、初回接続時等に認証された通信機器のみが通信可能である。本実施形態において、無人撮影装置1、通信端末2、及び通信端末4は、予め認証されているものとする。本実施形態ではWiFi(登録商標)を用いた場合を例に説明する。
【0023】
第2専用ネットワークは、第1専用ネットワークに比べて通信可能距離が長い通信規格であり、通信ネットワークを介して無線通信を行う。例えば、第2専用ネットワークは、ローカル5G、プライベートLTE等の無線通信網、基地局によって構成される。第2専用ネットワークは、プライベートな専用のネットワークであり、初回接続時等に認証された通信機器のみが通信可能である。本実施形態において、通信端末4及び異常特定装置6は、予め認証されているものとする。本実施形態ではプライベートLTEを用いた場合を例に説明する。
【0024】
図2にRT8を点検する場合の無人撮影装置1の飛行ルートの例を示す。矢印7が、無人撮影装置1の飛行ルートを示している。図2に示すようにRT8列直下の炉底に無人撮影装置1の発着点が設けられる。当該発着点に無人撮影装置1がセットされる。発着点に無人撮影装置1がセットされた状態で点検開始の制御信号が通信端末4から通信端末2を介して発信され、当該制御信号を無人撮影装置1が受信することで点検がスタートする。RT8の全体像及び概要図を図3及び図4に示す。図3に示すように、RT8は焼鈍炉において複数列配置されており、RT8により鋼板が加熱される。また図4に示すように、RT8のチューブ内部では、バーナー81により空気が加熱される。
【0025】
無人撮影装置1の飛行ルートは上述のように予め定められている。本実施形態ではRT1列を縦方向に2分割し、一方は上昇しながら飛行し、他方は降下しながら飛行する。例えば矢印7aの飛行ルートにおいて、無人撮影装置1は上昇しながら飛行する。他方で例えば矢印7bの飛行ルートにおいて、無人撮影装置1は下降しながら飛行する。
【0026】
飛行ルートに対しては予めウェイポイントが設定され、各ウェイポイントでRT8の撮影を実行しながら発着点まで戻るルートである。無人撮影装置1は上述の通り、設定されたウェイポイントにおいて撮影を実行して通信端末4に、通信端末2を経由して第1専用ネットワークを介して当該撮影画像を随時送信する。かかる撮影画像にはドローンが当該画像を撮影した時刻、飛行ルートに設定された何れのウェイポイントで撮影したかを示す撮影位置情報が含まれる。通信端末4は受信した撮影画像5を、第2専用ネットワークを介して異常特定装置6に送信し、撮影画像5を受け取った異常特定装置6にて異常特定プログラムが実行されてRT8の異常の有無が診断される。診断結果は第2専用ネットワークを介して通信端末4に送信され、通信端末4は、診断結果を表示する。オペレータは通信端末4により診断結果を確認することが可能である。
【0027】
本実施形態において無人撮影装置1と通信端末2、通信端末4との間の通信が、近距離無線通信である第1専用ネットワークを介して行われるとしたのは、無人撮影装置1の飛行状態/検査の進捗状況についてはオペレータが視認可能な距離で監視されるべきであり、且つ、無人撮影装置1からの画像送信速度を確保するためである。一方、通信端末4と異常特定装置6との間の通信規格を第2専用ネットワークとしたのは、異常特定プログラムの実行には負荷がかかるため検査場所(測定現場)とは異なる遠隔地に設置された異常特定装置6に対して撮影画像を送信する必要があるからである。
【0028】
なお、本実施形態において無人撮影装置1と異常特定装置6とは直接通信を行わない。すなわち無人撮影装置1の撮影画像は必ず通信端末2及び通信端末4を経由して異常特定装置6に送信される。当該構成により、例えば第2専用ネットワークに障害が発生した場合に、オペレータは通信端末4により、撮影画像そのものをチェックして異常の有無を確認することが可能である。また、撮影画像を異常特定装置6に送信する際に、設備情報(複数存在するRTの内、いずれのRTに対する撮影画像であるかを示す情報)を付加して送信することで、異常特定装置6に格納されている特定のRTにおける過去の診断結果を含めた診断結果情報(以下、結果情報ともいう。)を纏めて通信端末4に送信可能であり、その結果情報を通信端末4で閲覧可能となる。
【0029】
図5に通信端末4が表示する結果情報の一例を示す。通信端末4が表示する結果情報には、検査対象のRTに異常が発生しているか否かを示す矩形枠オブジェクト9と、異常の種類を示す表示オブジェクト10(「亀裂」表示)と、異常判断表示11とが含まれる。矩形枠オブジェクト9により、オペレータは異常箇所を容易に把握できる。また、表示オブジェクト10により、オペレータは異常の種類を容易に把握できる。異常判断表示11は、当該画像に異常が含まれることを示すオブジェクトである。これによりオペレータは異常が含まれる結果情報を容易に把握できる。なお診断結果の表示態様はこれに限られるものではなく、例えば異常の種類に応じて矩形枠オブジェクト9の枠の色を変える等の単一の表示方式で異常の有無及び種類を示すこととしてもよい。
【0030】
また、亀裂の大きさ、曲がりの大きさ等、異常の程度に応じて危険度を併せて表示することとしてもよい。換言すると結果情報は、異常の危険度を示す危険度表示を含んでもよい。図5のテキストオブジェクト12は、危険度表示の一例である。例えば危険度表示は、高、中、低の三段階であってよい。
【0031】
なお、異常特定装置6は、ラジアントチューブに係る操業条件を取得し、各ラジアントチューブにおける異常の発生有無及び危険度を予測し、予測された危険度に基づいて各ラジアントチューブに対する優先度を設定してもよい。この場合において、結果情報には、かかる優先度を示す優先度表示を含んでもよい。優先度表示が行われることで、例えば、複数のRT(異なる位置に存在するRT)に異常が発生している場合に、保守作業員はいずれのRTから保守作業を開始すべきかを容易に判断可能である。或いは、優先度の高いRTから順位付けをした上で、通信端末4に結果情報を送信することで当該優先度順の保守作業を促すことが可能である。図5のテキストオブジェクト13は、優先度表示の一例である。例えば優先度表示は、高、中、低の三段階であってよい。なお図5では、1つの箇所の優先度のみが表示される例を示しているがこれに限られない。通信端末4は、複数の箇所の結果情報の優先度を並べて表示してもよい。この場合において、優先度は、各画像に係る各矩形枠14の色により表されてもよい。例えば優先度を高、中、低の3段階で表す場合において、優先度が高い場合は、矩形枠14の色を赤とする。また、優先度が中程度の場合、矩形枠14の色を黄色とする。他方で優先度が低い場合、矩形枠14の色を緑色とする。これにより、オペレータは、容易に優先度が高い画像を認識することができる。
【0032】
なお、上記説明で無人撮影装置1は予め定められた飛行ルートに沿って自律飛行を行っているが、操縦者によるドローン手動操縦においても適用することができる。また、本発明は無人撮影装置1が撮影した動画においても適用可能であるが、データ送受信のデータサイズ縮小の観点から、画像での適用が望ましい。画像とすることで無人撮影装置1の飛行中に随時データを転送し、リアルタイムでAI解析(異常検知)を行うことが可能である。また、無人撮影手段としてはドローン等の無人撮影装置1に限られるものではなく、作業員がカメラを担いでの設備へのよじ登りが発生しない態様で無人で撮影可能な方法であれば、任意の手法を採用可能である。例えば、カメラ等の撮像部を備えた全方位カメラ点検ユニット等を用いてもよい。
【0033】
(実施例)
表1に本実施例に係る異常検知システム100の導入による従来方法との異常識別率および識別時間の比較を示す。亀裂及び曲がりの異常識別率が各段に向上しており、識別時間においても格段の短縮することが可能となった。
【0034】
【表1】
【0035】
(ハードウェア構成)
図6は、本開示の一実施形態に係る無人撮影装置1のハードウェア構成の一例である。図6に示されるように無人撮影装置1は、制御部101と、記憶部102と、通信部103と、測位部104と、撮像部105とを備える。
【0036】
制御部101には、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせが含まれる。プロセッサは、CPU(central processing unit)若しくはGPU(graphics processing unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)又はASIC(application specific integrated circuit)である。制御部101は、無人撮影装置1の各部を制御しながら、無人撮影装置1の動作に関わる処理を実行する。
【0037】
記憶部102には、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせが含まれる。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)である。RAMは、例えば、SRAM(static random access memory)又はDRAM(dynamic random access memory)である。ROMは、例えば、EEPROM(electrically erasable programmable read only memory)である。記憶部102は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部102には、無人撮影装置1の動作に用いられるデータと、無人撮影装置1の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0038】
通信部103には、少なくとも1つの無線通信用インターフェースが含まれる。無線通信用インターフェースは上述の第1専用ネットワークによる通信に対応したインターフェスである。通信部103は無人撮影装置1の動作に用いられるデータを受信し、また無人撮影装置1の動作によって得られるデータを送信する。
【0039】
測位部104は、衛星測位システムに対応する受信機を含む。当該受信機は、例えばGPS(Global Positioning System)に対応するが、これに限られず、任意の衛星測位システムに対応してもよい。また測位部104は、例えばジャイロセンサ、地磁気センサ、及び気圧センサを含む。本実施形態において無人撮影装置1は、測位部104を用いて自機の撮影位置情報、自機が向いている方角、及び自機の傾きを取得可能である。位置情報は、緯度及び経度を含む二次元座標データを含んでもよく、緯度及び経度に加えて高度を含む三次元座標データを含んでもよい。
【0040】
撮像部105は、対象物を撮影するカメラ等の撮像デバイスを含む。撮像デバイスは、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)等で構成されてよい。
【0041】
図7は、本開示の一実施形態に係る通信端末2のハードウェア構成の一例である。図7に示されるように通信端末2は、制御部201と、記憶部202と、通信部203と、入力部204とを備える。
【0042】
制御部201には、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせが含まれる。プロセッサは、CPU(central processing unit)若しくはGPU(graphics processing unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)又はASIC(application specific integrated circuit)である。制御部201は、通信端末2の各部を制御しながら、通信端末2の動作に関わる処理を実行する。
【0043】
記憶部202には、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせが含まれる。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)である。RAMは、例えば、SRAM(static random access memory)又はDRAM(dynamic random access memory)である。ROMは、例えば、EEPROM(electrically erasable programmable read only memory)である。記憶部202は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部202には、通信端末2の動作に用いられるデータと、通信端末2の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0044】
通信部203には、少なくとも1つの無線通信用インターフェースが含まれる。無線通信用インターフェースは上述の第1専用ネットワークによる通信に対応したインターフェスである。通信部203は通信端末2の動作に用いられるデータを受信し、また通信端末2の動作によって得られるデータを送信する。
【0045】
入力部204には、少なくとも1つの入力用インターフェースが含まれる。入力用インターフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーンである。入力部204は、通信端末2の動作に用いられるデータを入力する操作を受け付ける。
【0046】
図8は、本開示の一実施形態に係る通信端末4のハードウェア構成の一例である。図8に示されるように通信端末4は、制御部401と、記憶部402と、通信部403と、入力部404と、表示部405とを備える。
【0047】
制御部401には、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせが含まれる。プロセッサは、CPU(central processing unit)若しくはGPU(graphics processing unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)又はASIC(application specific integrated circuit)である。制御部401は、通信端末4の各部を制御しながら、通信端末4の動作に関わる処理を実行する。
【0048】
記憶部402には、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせが含まれる。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)である。RAMは、例えば、SRAM(static random access memory)又はDRAM(dynamic random access memory)である。ROMは、例えば、EEPROM(electrically erasable programmable read only memory)である。記憶部402は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部402には、通信端末4の動作に用いられるデータと、通信端末4の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0049】
通信部403には、少なくとも2つの無線通信用インターフェースが含まれる。具体的には無線通信用インターフェースは上述の第1専用ネットワークによる通信に対応したインターフェス、及び第2専用ネットワークによる通信に対応したインターフェスを含む。通信部403は通信端末4の動作に用いられるデータを受信し、また通信端末4の動作によって得られるデータを送信する。
【0050】
入力部404には、少なくとも1つの入力用インターフェースが含まれる。入力用インターフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーンである。また入力用インターフェースは、例えば、音声入力を受け付けるマイクロフォン、又はジェスチャー入力を受け付けるカメラ等であってもよい。入力部404は、通信端末4の動作に用いられるデータを入力する操作を受け付ける。入力部404は、通信端末4に備えられる代わりに、外部の入力機器として通信端末4に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、又はBluetooth(登録商標)などの任意の方式を用いることができる。
【0051】
表示部405には、少なくとも1つの表示出力用インターフェースが含まれる。表示出力用インターフェースは、例えば、情報を映像で出力するディスプレイである。ディスプレイは、例えば、LCD(liquid crystal display)又は有機EL(electro luminescence)ディスプレイである。表示部405は、通信端末4の動作によって得られるデータを表示出力する。表示部405は、通信端末4に備えられる代わりに、外部の出力機器として通信端末4に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)などの任意の方式を用いることができる。
【0052】
通信端末4の機能は、本実施形態に係るプログラムを、通信端末4に相当するプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、通信端末4の機能は、ソフトウェアにより実現される。プログラムは、通信端末4の動作をコンピュータに実行させることで、コンピュータを通信端末4として機能させる。すなわち、コンピュータは、プログラムに従って通信端末4の動作を実行することにより通信端末4として機能する。
【0053】
図9は、本開示の一実施形態に係る異常特定装置6のハードウェア構成の一例である。図9に示されるように、異常特定装置6は、制御部601と、記憶部602と、通信部603とを備える。
【0054】
制御部601には、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせが含まれる。プロセッサは、CPU若しくはGPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA又はASICである。制御部601は、異常特定装置6の各部を制御しながら、異常特定装置6の動作に関わる処理を実行する。
【0055】
記憶部602には、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせが含まれる。半導体メモリは、例えば、RAM又はROMである。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。ROMは、例えば、EEPROMである。記憶部602は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部602には、異常特定装置6の動作に用いられるデータと、異常特定装置6の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0056】
通信部603には、少なくとも1つの無線通信用インターフェースが含まれる。具体的には無線通信用インターフェースは上述の第2専用ネットワークによる通信に対応したインターフェスを含む。通信部603は異常特定装置6の動作に用いられるデータを受信し、また異常特定装置6の動作によって得られるデータを送信する。
【0057】
異常特定装置6の機能は、本実施形態に係るプログラムを、異常特定装置6に相当するプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、異常特定装置6の機能は、ソフトウェアにより実現される。プログラムは、異常特定装置6の動作をコンピュータに実行させることで、コンピュータを異常特定装置6として機能させる。すなわち、コンピュータは、プログラムに従って異常特定装置6の動作を実行することにより異常特定装置6として機能する。
【0058】
本実施形態においてプログラムは、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読取り可能な記録媒体は、非一時的なコンピュータ読取可能な媒体を含み、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記録したDVD(digital versatile disc)又はCD-ROM(compact disc read only memory)などの可搬型記録媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。またプログラムの流通は、プログラムを外部サーバのストレージに格納しておき、外部サーバから他のコンピュータにプログラムを送信することにより行ってもよい。またプログラムはプログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0059】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
100 異常検知システム
1 無人撮影装置
2 通信端末
3 撮影画像
4 通信端末
5 撮影画像
6 異常特定装置
7、7a、7b 矢印
8 RT
81 バーナー
9 矩形枠オブジェクト
10 表示オブジェクト
11 異常判断表示
12、13 テキストオブジェクト
14 矩形枠
101、201、401、601 制御部
102、202、402、602 記憶部
103、203、403、603 通信部
104 測位部
105 撮像部
204、404 入力部
405 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9