(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163775
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】弾性体の試験装置及び試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20241115BHJP
G01M 17/02 20060101ALI20241115BHJP
G01N 19/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G01N3/00 K
G01M17/02
G01N19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079650
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 進也
(72)【発明者】
【氏名】秦 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 健
(72)【発明者】
【氏名】西 駿明
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA11
2G061AA17
2G061AB04
2G061BA19
2G061CA10
2G061CB03
2G061DA01
2G061EA01
2G061EA02
2G061EB07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】連続的に接触面近傍の挙動を観察することのできる、弾性体の試験装置及び試験方法を提供することを目的とする。
【解決手段】試験装置1は、試験片2を載置する透明な台部3と、押圧部4と、接触対象部5と、台部を挟んで押圧部と反対側から試験片の画像を撮像可能な撮像部6と、を備え、試験片と台部とは、水平方向に連続的に相対移動可能であるように構成されている。試験方法は、透明な台部に前記試験片を載置する工程と、押圧部により試験片を台部に押圧する工程と、試験片と押圧部との間に接触対象部が介在した状態で試験片と台部とを水平方向に連続的に相対移動させながら、撮像部により、台部を挟んで押圧部と反対側から試験片の画像を撮像する工程と、を含む。上記装置及び方法において、試験片は、台部に接触する側の透明部と、接触対象部と接触する有色部との積層構造を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体からなる試験片の挙動を観察可能な、弾性体の試験装置であって、
前記試験片を載置する透明な台部と、
前記試験片を前記台部に押圧可能であるように構成された押圧部と、
前記試験片と前記押圧部との間に介在する接触対象部と、
前記台部を挟んで前記押圧部と反対側から前記試験片の画像を撮像可能な撮像部と、を備え、
前記試験片と前記台部とは、水平方向に連続的に相対移動可能であるように構成されており、
前記試験片は、前記台部に接触する側の透明部と、前記接触対象部と接触する有色部との積層構造を有することを特徴とする、試験装置。
【請求項2】
前記有色部は、有色である第1の色相を基調とし、
前記有色部の前記透明部に隣接する側の表面に、前記第1の色相とは異なる有色の色相を有する粉末がランダムに配されている、請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記有色部の厚さは、前記透明部の厚さよりも小さい、請求項1又は2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記試験片は、ゴム部材である、請求項1又は2に記載の試験装置。
【請求項5】
前記撮像部により撮像した前記画像に基づいて、前記試験片の連続的な挙動を評価する、評価部をさらに備え、
前記評価部は、画像相関法を用いて連続的な前記挙動を解析可能であるように構成されている、請求項1又は2に記載の試験装置。
【請求項6】
前記接触対象部は、凹凸面を有し、
前記有色部は、前記凹凸面と接触する、請求項1又は2に記載の試験装置。
【請求項7】
弾性体からなる試験片の挙動を観察可能な、弾性体の試験方法であって、
透明な台部に前記試験片を載置する工程と、
押圧部により前記試験片を台部に押圧する工程と、
前記試験片と前記押圧部との間に接触対象部が介在した状態で前記試験片と前記台部とを水平方向に連続的に相対移動させながら、撮像部により、前記台部を挟んで前記押圧部と反対側から前記試験片の画像を撮像する工程と、を含み、
前記試験片は、前記台部に接触する側の透明部と、前記接触対象部と接触する有色部との積層構造を有することを特徴とする、試験方法。
【請求項8】
前記有色部は、有色である第1の色相を基調とし、
前記有色部の前記透明部に隣接する側の表面に、前記第1の色相とは異なる有色の色相を有する粉末がランダムに配されている、請求項7に記載の試験方法。
【請求項9】
前記有色部の厚さは、前記透明部の厚さよりも小さい、請求項7又は8に記載の試験方法。
【請求項10】
前記試験片は、ゴム部材である、請求項7又は8に記載の試験方法。
【請求項11】
評価部により、前記撮像部により撮像した前記画像に基づいて、画像相関法を用いて連続的な前記挙動を評価する工程をさらに含む、請求項7又は8に記載の試験方法。
【請求項12】
前記接触対象部は、凹凸面を有し、
前記有色部は、前記凹凸面と接触する、請求項7又は8に記載の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体の試験装置及び試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、試験片の画像を撮像し、撮像した画像を用いて試験片の性能を計測することが提案されている。例えば、特許文献1では、画像相関法を用いて、試験前後の画像に基づいて試験片の変形量を計測する装置及び方法について提案されている。また、例えば、特許文献2では、弾性体である試験片に歪を付与して、内部の様子を、X線を用いて撮影し、撮影した画像に基づいて性能を評価する装置及び方法について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-021730号公報
【特許文献2】特開2020-008282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、タイヤのウェット路面走行時のタイヤの制動性を向上させることを考える際には、路面との接触面(踏面)近傍での挙動を観察する必要がある。また、タイヤのウェット性能は、動摩擦の挙動のみならず、静摩擦の挙動も影響するものと考えられるため、連続的な接触面近傍の挙動を観察する手法が求められる。なお、このことは、タイヤに限られるものではなく、弾性体と、それに接触する対象との接触面近傍の挙動が、当該弾性体の性能に影響する場合において一般に発生し得るものである。
【0005】
そこで、本発明は、連続的に接触面近傍の挙動を観察することのできる、弾性体の試験装置及び試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)弾性体からなる試験片の画像に基づいて、前記試験片の挙動を観察可能な、弾性体の試験装置であって、
前記試験片を載置する透明な台部と、
前記試験片を前記台部に押圧可能であるように構成された押圧部と、
前記試験片と前記押圧部との間に介在する接触対象部と、
前記台部を挟んで前記押圧部と反対側から前記試験片を撮像可能な撮像部と、を備え、
前記試験片と前記台部とは、水平方向に連続的に相対移動可能であるように構成されており、
前記試験片は、前記台部に接触する側の透明部と、前記接触対象部と接触する有色部との積層構造を有することを特徴とする、試験装置。
本開示において、「透明」とは、光学的な観察が可能な程度に光を透過させることができることを意味する。
【0007】
(2)前記有色部は、有色である第1の色相を基調とし、
前記有色部の前記透明部に隣接する側の表面に、前記第1の色相とは異なる有色の色相を有する粉末がランダムに配されている、前記(1)に記載の試験装置。
【0008】
(3)前記有色部の厚さは、前記透明部の厚さよりも小さい、前記(1)又は(2)に記載の試験装置。
【0009】
(4)前記試験片は、ゴム部材である、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の試験装置。
【0010】
(5)前記撮像部により撮像した画像に基づいて、前記試験片の連続的な挙動を評価する、評価部をさらに備え、
前記評価部は、画像相関法を用いて解析可能であるように構成されている、前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の試験装置。
【0011】
(6)前記接触対象部は、凹凸面を有し、
前記有色部は、前記凹凸面と接触する、前記(1)~(5)のいずれか1つに記載の試験装置。
【0012】
(7)弾性体からなる試験片の画像に基づいて、前記試験片の挙動を観察可能な、弾性体の試験方法であって、
透明な台部に前記試験片を載置する工程と、
押圧部により前記試験片を台部に押圧する工程と、
前記試験片と前記押圧部との間に接触対象部が介在した状態で前記試験片と前記台部とを水平方向に連続的に相対移動させながら、撮像部により、前記台部を挟んで前記押圧部と反対側から前記試験片を撮像する工程と、を含み、
前記試験片は、前記台部に接触する側の透明部と、前記接触対象部と接触する有色部との積層構造を有することを特徴とする、試験方法。
【0013】
(8)前記有色部は、有色である第1の色相を基調とし、
前記有色部の前記透明部に隣接する側の表面に、前記第1の色相とは異なる有色の色相を有する粉末がランダムに配されている、前記(7)に記載の試験方法。
【0014】
(9)前記有色ゴム部の厚さは、前記透明ゴム部の厚さよりも小さい、前記(7)又は(8)に記載の試験方法。
【0015】
(10)前記試験片は、ゴム部材である、前記(7)~(9)のいずれか1つに記載の試験方法。
【0016】
(11)評価部により、前記撮像部により撮像した画像に基づいて、画像相関法を用いて前記試験片の連続的な挙動を評価する工程をさらに含む、前記(7)~(10)のいずれか1つに記載の試験方法。
【0017】
(12)前記接触対象部は、凹凸面を有し、
前記有色部は、前記凹凸面と接触する、前記(7)~(11)のいずれか1つに記載の試験方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、連続的に接触面近傍の挙動を観察することのできる、弾性体の試験装置及び試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる弾性体の試験装置の概略構成図である。
【
図3】有色部の一例について説明するための図である。
【
図4】試験片の上面図及び2方向からの側面図である。
【
図5】画像相関法に用いるサブセットを模式的に示す図である。
【
図6】垂直歪みの算出について説明するための図である。
【
図7】せん断歪みの算出について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0021】
<弾性体の試験装置>
図1は、本発明の一実施形態にかかる弾性体の試験装置の概略構成図である。本実施形態の弾性体の試験装置1は、弾性体からなる試験片2の連続的な挙動を観察可能であるように構成されている。
図1に示すように、試験片2を載置する透明な台部3と、試験片2を台部3に押圧可能であるように構成された押圧部4と、試験片2と押圧部4との間に介在する接触対象部5と、台部3を挟んで押圧部4と反対側から試験片2を撮像可能な撮像部6と、を備えている。本例では、接触対象部5は、凹凸面5aを有し、凹凸面5aは、後述の有色部2bと接する側の面となる。ただし、接触対象部5は、後述の有色部2bと接する側の面を平滑なものとしても良い。
【0022】
試験片2は、弾性体であり、本例ではゴム部材である。本例では、試験片2の形状は、略直方体であるが、この場合に限定はされない。
図2は、試験片の積層構造を示す図である。
図3は、有色部の一例について説明するための図である。
図1、
図2に示すように、試験片2は、台部3に接触する側の透明部2aと、接触対象部5(この例では凹凸面5a)と接触する有色部2bとの積層構造を有する。
【0023】
図4は、試験片の上面図及び2方向からの側面図である。
図3、
図4に示すように、有色部2bは、有色である第1の色相(本例では黒色)を基調2b1としている。また、有色部2bの透明部2aに隣接する側の表面に、第1の色相とは異なる有色の色相を有する粉末(本例では白色粉末)2b2がランダムに配されている。本例では、粉末として白色粉末1種類を用いたが、第1の色相とは異なる他の色相の粉末としても良く、また、第1の色相とは異なる2種類以上の色相の粉末を用いても良い。また、
図2に示すように、本例では、有色部2bの厚さt2は、透明部2aの厚さt1よりも小さい。特には限定されないが、例えば、比t2/t1は、0.05~0.2とすることが好ましい。ただし、本開示において、有色部2bの厚さt2は、透明部2aの厚さt1より大きくても良く、あるいは、同じ厚さとしても良い。このように、透明部2aの厚さt1及び有色部2bの厚さt2を様々に調整することで、様々な厚さ位置での挙動の観察が可能となる。
【0024】
台部3は、本例では、板状の部材である。図示例では、台部3は、板状の固定部7と柱部8とにより固定された状態である。試験片2と台部3とは、水平方向に連続的に相対移動可能であるように構成されている。図示例では、固定された台部3上に潤滑剤9が塗布されており、台部3上の試験片2は、押圧部4により図示下方向への荷重を負荷されながら水平方向への力を加えられることで、(固定された)台部3上を水平方向に連続的に移動可能となっている。一方で、本開示は、この例に限られず、試験片2を固定して、台部3を水平方向に連続的に移動可能であるように構成することもできる。また、潤滑剤9として、又は、潤滑剤9に代えて、試験片2の挙動の環境条件に対応したものを用いることができ、例えば、試験片2としてゴム部材を用い、ウェット条件での試験片2の挙動を測定する場合、潤滑剤9に代えて水を用いることができる。ただし、本開示では、例えばドライ条件での試験片2の挙動を測定する場合等、潤滑剤や水を用いないこともできる。
【0025】
本例では、試験片2は、台部3上を水平方向に連続的に移動するため、
図1に示すように、台部3の水平方向の長さは、試験片2の水平方向の長さよりも十分に大きいことが好ましい。台部3は、少なくとも試験片2が台部3上を相対移動する水平方向範囲内において(厚さ方向全体にわたって)透明である。本例では、台部3は、その全体が透明である。
【0026】
押圧部4は、試験片2を台部3に押圧可能であるように構成されている。具体的には、本例では、押圧部4は、接触対象部5を収容可能な凹部4aと、接触対象部5を収容した状態で接触対象部5を締結して固定する締結部4bと、図示下方に荷重を負荷可能な負荷部4cと、を備えている。凹部4aに接触対象部5を収容した状態で締結部4bにより接触対象部5を固定し、負荷部4cにより図示下方に負荷を加えることで、接触対象部5が試験片2の有色部2bに対して図示下方に負荷を加えることとなり、これにより、試験片2が台部3に押圧される。締結部4bや負荷部4cとしては、任意の既知の機構を用いることができる。
【0027】
接触対象部5は、弾性体である試験片2との接触が想定される部材とすることができ、特には限定されないが例えばタイヤに関する試験が想定される場合、試験片2をゴム部材とし、接触対象部5を路面(例えばアスファルト路面)を模擬した部材とすることができる。様々な路面を模擬するために凹凸面5aを様々なものとすることができる。そのような路面として、特には限定されないが、密粒度アスファルト舗装、砕石マスチックアスファルト舗装、及びポーラスアスファルト舗装等を例示することができる。図示例では、接触対象部5は、押圧部4の凹部4aと略同サイズでありつつも、凹凸面5aにより試験片2を押圧するために、接触対象部5の厚さが凹部4aの深さよりも大きいことが好ましい。
【0028】
撮像部6は、任意の既知のカメラとすることができる。図示例では、撮像部6の近傍に光源10が配置されている。また、図示例では、固定部7、台部3、及び柱部8で囲まれる空間にミラー11が配置されている。台部3は透明であるため、撮像部6は、ミラー11により反射された、試験片2の画像(試験片2の下方から見た像)を連続的に撮像することができる。このように、撮像部6は、台部3を挟んで押圧部4と反対側から試験片2を撮像可能である。前述の通り、試験片2の台部3側は、透明部2aであるため、撮像部6は、有色部2bの画像(有色部2bの下方から見た像)を連続的に取得可能である。
【0029】
図1に示すように、この試験装置1は、撮像部6により撮像した画像に基づいて、試験片2の連続的な挙動を評価する、評価部12をさらに備えている。評価部12は、画像相関法を用いて試験片2の連続的な挙動を解析可能であるように構成されている。評価部12は、任意の既知のプロセッサとすることができる。画像相関法による解析の一例の詳細については、後述する。
【0030】
図1に示すように、この試験装置1は、試験片2と台部3との間で生じる摩擦力(静止摩擦力及び動摩擦力)を計測可能なフォースセンサ13をさらに備えている。図示例では、フォースセンサ13は、押圧部4よりも図示上方に配置されているが、試験片2と台部3との間で生じる摩擦力を計測可能であれば、他の位置に配置しても良い。フォースセンサ13による測定は、撮像部6による撮像と時間的に同期されていることが好ましい。撮像部6により撮像される画像に基づいて算出される接触面近傍の挙動と、摩擦力とを対応させた評価を行うことができるからである。フォースセンサ13が計算部(プロセッサ)を有し、摩擦力から摩擦係数を算出可能であるように構成されていることも好ましい。そのような計算部は、フォースセンサ13とは別に設けても良い。
【0031】
以下、本実施形態の弾性体の試験装置1の作用効果について説明する。
本実施形態の弾性体の試験装置1は、上述したように、試験片2を載置する透明な台部3を備え、試験片2は、台部3に接触する側の透明部2aと、接触対象部5(本例では凹凸面5a)と接触する有色部2bとの積層構造を有する。このため、台部3を挟んで押圧部4と反対側から試験片2の画像を撮像可能な撮像部6によって、試験片2のうち(接触対象部5に近い側の)有色部2bの画像(有色部2bを図示下方から観察した像)を取得可能である。
また、本実施形態の弾性体の試験装置1は、試験片2を台部3に押圧可能であるように構成された押圧部4と、試験片2と押圧部4との間に介在する接触対象部5と、を備え、試験片2と台部3とは、水平方向に連続的に相対移動可能であるように構成されている。このため、試験片2を台部3に押圧しつつ試験片2と台部3とを水平方向に連続的に相対移動させながら、撮像部6により試験片2の画像を連続的に撮像することにより、連続的に、試験片2と接触対象部5(本例では凹凸面5a)との接触面の近傍(凹凸面5a側にある有色部2b)の挙動を観察することができる。
本実施形態の弾性体の試験装置1では、接触対象部5は、凹部4aに収容可能なサイズや形状であれば、交換が容易であるため、様々な接触対象部5に対して、上記のような接触面近傍の連続的な観察を行うことができる。例えば、タイヤに関する試験の場合、様々なアスファルトを模擬した部材に対して、上記の接触面近傍の連続的な観察を行うことができる。また、弾性体2の交換も容易であるため、様々な弾性体2で上記の試験を行うことができる。
【0032】
以下、取得した連続的な画像に基づいて、画像相関法による解析の一例について説明する。
図5は、画像相関法に用いるサブセットを模式的に示す図である。
図5に示すように、まず、好ましくは格子状の配列内において、適切なサイズのサブセット(
図5の例では、格子点9個からなる)を設定し、取得した画像に適用する(サブセットの中心は、
図5において十字で示した部分の十字の交差位置である)。特には限定されないが、一例としては、サブセットのサイズは、0.01~1.0mm×0.01~1.0mmとすることができる。また、特には限定されないが、一例としては、サブセットの間隔(格子点間の間隔)は、0.01~1.0mmとすることができる。
【0033】
取得した各画像に対して、適切な画素数(サブセットの個数)を割り当てる。特には限定されないが、一例としては、画素数は、10~100×10~100とすることができる。ある時刻t1で取得した画像(変形前画像)における1つのサブセット(「サブセット1」と称する)と、ある時刻t2(>t1)で取得した画像(変形後画像)におけるサブセット1とで、サブセット1の中心点(十字の交点)の変位量(x方向及びy方向)を計測する。このとき、中心点周りの輝度分布の相関をとり、最も相関係数が高い点を変位後のサブセットとして設定することが好ましい。このことを繰り返すことにより試験片2の挙動を算出することができる。
【0034】
このようにして算出した変位に基づいて、歪みを算出することができる。歪みの算出は、既知の手法により行うことができる。
【0035】
ここでは、2次元歪みの算出方法について例示説明する。なお、撮像部6(カメラ)を2台用いてステレオ測定して、歪みの3次元測定を行うこともできる。3次元の場合についても、既知の手法で歪みの算出を行うことができるため、3次元の場合については詳細な説明を省略する。
2次元歪みの場合、垂直歪みについて、
図6に示すような変位の場合、P点及びQ点の変位は、それぞれ以下の式1及び式2で表すことができる。
(式1)
(式2)
このとき、長さの変化は、以下の式3で表すことができ、垂直歪みは、以下の式4で表すことができる。
(式3)
(式4)
以上のように、式1~式4を用いて、プロセッサ等により、変位に基づいて垂直歪みを算出することができる。
【0036】
せん断歪みについて、
図7に示すような変位の場合、P点及びQ点の変位は、それぞれ以下の式5及び式6で表すことができる。
(式5)
(式6)
また、P点に対するQ点のx方向の相対的な変位は、以下の式7で表すことができる。
(式7)
P点に対するR点のy方向の相対的な変位は、以下の式8で表すことができる。
(式8)
せん断歪み(QPRの角度の変化)は、以下の式9で表すことができる。
(式9)
以上のように、式5~式9を用いて、プロセッサ等により、変位に基づいてせん断歪みを算出することができる。
【0037】
<弾性体の試験方法>
次に、本発明の一実施形態にかかる弾性体の試験方法について例示説明する。本実施形態の方法は、特には限定されないが、一例としては、上述の実施形態にかかる弾性体の試験装置1を用いて実行することができる。
【0038】
本実施形態の弾性体の試験方法は、弾性体からなる試験片2の挙動を観察可能な、弾性体の試験方法である。本実施形態の弾性体の試験方法は、透明な台部3に試験片2を載置する工程と、押圧部4により試験片2を台部3に押圧する工程と、試験片2と押圧部4との間に接触対象部5(本例では、凹凸面5a)が介在した状態で試験片2と台部3とを水平方向に連続的に相対移動させながら、撮像部6により、台部3を挟んで押圧部4と反対側から試験片2の画像を撮像する工程と、を含む。そして、試験片2は、台部3に接触する側の透明部2aと、接触対象部5(本例では、凹凸面5a)と接触する有色部2bとの積層構造を有する。
【0039】
本実施形態の弾性体の試験方法では、上記台部3が透明であり、試験片2は、台部3に接触する側の透明部2aと、接触対象部5(本例では、凹凸面5a)と接触する有色部2bとの積層構造を有する。このため、上記撮像する工程によって、試験片2のうち(接触対象部5(本例では、凹凸面5a)に近い側の)有色部2bの画像(有色部2bを図示下方から観察した像)を取得可能である。
また、本実施形態の弾性体の試験方法は、透明な台部3に試験片2を載置する工程と、押圧部4により試験片2を台部3に押圧する工程と、試験片2と押圧部4との間に、接触対象部5(本例では、凹凸面5a)が介在した状態で試験片2と台部3とを水平方向に連続的に相対移動させながら、撮像部6により、台部3を挟んで押圧部4と反対側から試験片2の画像を撮像する工程と、を含むため、試験片2を台部3に押圧しつつ試験片2と台部3とを水平方向に連続的に相対移動させながら、撮像部6により試験片2の画像を連続的に撮像することにより、連続的に、試験片2と接触対象部5(本例では、凹凸面5a)との接触面の近傍(接触対象部5(本例では、凹凸面5a)側にある有色部2b)の挙動を観察することができる。様々な接触対象部5に対して、上記のような接触面近傍の連続的な観察を行うことができる。例えば、タイヤに関する試験の場合、様々なアスファルトを模擬した部材に対して、上記の接触面近傍の連続的な観察を行うことができる。また、様々な弾性体2で上記の試験を行うことができる。
【0040】
ここで、本開示の装置及び方法において、有色部2bは、有色である第1の色相を基調2b1とし、有色部2bの透明部2aに隣接する側の表面に、第1の色相とは異なる有色の色相を有する粉末(例えば白色粉末)2b2がランダムに配されていることが好ましい。試験片2を台部3に押圧しつつ試験片2と台部3とを水平方向に連続的に相対移動させた際の有色部2bの変位を観察しやすくなるからである。
【0041】
また、本開示の装置及び方法において、有色部2bの厚さt2は、透明部2aの厚さt1よりも小さいことが好ましい。上述の通り、有色部2bを下方から観察することになるため、有色部2bの厚さが、観察したい接触面近傍に対応した厚さであることが好ましいからである。ただし、有色部2bの厚さt2は、透明部2aの厚さt1より大きくても良く、あるいは、同じ厚さとしても良い。このように、透明部2aの厚さt1及び有色部2bの厚さt2を様々に調整することで、様々な厚さ位置での挙動の観察が可能となる。
【0042】
また、本開示の装置及び方法において、試験片2は、ゴム部材であることが好ましい。
【0043】
また、本開示の装置では、撮像部6により撮像した画像に基づいて、試験片2の連続的な挙動を評価する、評価部12をさらに備え、評価部12は、画像相関法を用いて連続的な試験片の挙動を解析可能であるように構成されていることが好ましい。接触面近傍の変位、ひいては歪み等の解析に適しているからである。同様の理由により、本開示の方法では、評価部12により、撮像部6により撮像した画像に基づいて、画像相関法を用いて連続的な試験片の挙動を評価する工程をさらに含むことが好ましい。
ただし、本開示において、画像に基づいて試験片2の連続的な挙動を評価する手法は、他の既知の手法を用いることもできる。
【0044】
本開示の装置及び方法において、接触対象部5は、凹凸面5aを有し、有色部2bは、凹凸面5aと接触することが好ましい。例えば試験片がタイヤを模擬したゴム部材であり、接触対象部5がアスファルトを模擬した部材である場合など、接触対象部5が凹凸面5aを有する場合にも本開示の装置及び方法が有用である。ただし、凹凸面5aに代えて平滑面としても、同様に接触面近傍の挙動を観察することができ有用である。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。また、以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例0046】
本発明の効果を確かめるため、
図1に示したような試験装置を試作した。透明な台部に試験片を載置し、押圧部により試験片を台部に押圧ながら、試験片を台部に対して水平方向に連続的に相対移動させながら、撮像部により試験片の画像を撮像した。試験片としては、ゴム材料を用いた。試験片は、台部に接触する側の透明部(透明ゴム)と、凹凸面と接触する有色部(黒色ゴムを用いて表面に白色の酸化チタン粉末をランダムに配した)との積層構造を有するものとした。有色部(黒色ゴム)の厚さt2を1.5mmとし、透明部(透明ゴム)の厚さt1を4.0mmとした。接触対象物としては、アスファルト路面を模擬した部材として、密粒度アスファルト舗装、ポーラスアスファルト舗装(13mmTop)、ポーラスアスファルト舗装(5mmTop)、及び砕石マスチックアスファルト舗装の4種類を用意し、接触対象物を代えて試験を行った。これらの舗装では、アスファルトは、ENEOS社製:ストレートアスファルト60/80、もしくはニチレキ社製:タフファルトスーパー、骨材は東京石灰工業株式会社社製のものを用いた。画像の取得の他に、フォースセンサによる摩擦力の測定も同時に行った。
【0047】
図8は、フォースセンサにより測定した摩擦係数の時間変化を示す図である。
図9~
図12では、
図8のグラフを接触対象物毎に示している。これらは、ウェット路面を模擬して台部上に厚さ7mmの水膜を入れた状態での試験結果を示している。
【0048】
図13~
図16は、各アスファルト部材における、摩擦係数の時間変化を示す図、及び歪みの時間変化を示す図である。
図13~
図16に示すように、取得した画像に基づいて画像相関法により歪みを算出し、歪み(y方向垂直歪み)の時間変化を算出することができた。また、その際の摩擦係数の時間変化との対比を行うこともできた。なお、y方向は、試験片であるゴム部材の滑りが進行していく方向である。
図13~
図16では、乾燥路面を模擬して水膜を設けなかった。