(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163784
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】血圧計、血圧計測方法、血圧計測プログラム、学習モデルの構築方法及び学習モデルの構築プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
A61B5/022 400M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079663
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳川 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】西行 健太
(72)【発明者】
【氏名】和田 洋貴
(72)【発明者】
【氏名】内田 滋穂里
(72)【発明者】
【氏名】小泉 昌之
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB01
4C017AC03
4C017AD01
4C017BC30
4C017FF08
(57)【要約】
【課題】少ない教師データでも高精度な血圧計測を実現し得る血圧計を提供する。
【解決手段】本血圧計は、被計測者の腕に巻かれるカフと、上記カフによる上記腕に対する圧力を制御する制御部と、上記カフが上記腕から受けるカフ圧を検出する検出部と、上記カフ圧の時系列変化を用いて上記被計測者の血圧をオシロメトリック法で計測する計測部と、複数の被験者について、前記カフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、真値として採用する血圧に対する上記計測部によって計測される血圧の誤差を目的変数とする機械学習によって構築された補正モデルと、上記検出部によって検出された上記カフ圧の上記時系列変化に関する上記波形の前記情報を上記補正モデルに入力することで上記補正モデルによって出力される誤差を基に、上記計測部によって計測された上記血圧を補正する補正部と、上記補正部によって補正された上記血圧を出力する出力部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測者の腕に巻かれるカフと、
前記カフによる前記腕に対する圧力を制御する制御部と、
前記カフが前記腕から受けるカフ圧を検出する検出部と、
前記カフ圧の時系列変化を用いて前記被計測者の血圧をオシロメトリック法で計測する計測部と、
被験者について、前記カフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、真値として採用する血圧に対する前記計測部によって計測される血圧の誤差を目的変数とする機械学習によって構築された補正モデルと、
前記検出部によって検出された前記カフ圧の前記時系列変化に関する前記波形の前記情報を前記補正モデルに入力することで前記補正モデルによって出力される誤差を基に、前記計測部によって計測された前記血圧を補正する補正部と、
前記補正部によって補正された前記血圧を出力する出力部と、を備える、
血圧計。
【請求項2】
前記真値として採用する前記血圧は、聴診法によって実測される血圧である、
請求項1に記載の血圧計。
【請求項3】
前記波形の前記情報は、前記カフ圧に関する情報を含む、
請求項1に記載の血圧計。
【請求項4】
前記計測部は、前記カフ圧の時系列変化を基にOscilloMetric Waveform(OMW)を取得し、
前記波形の前記情報は、前記OMWの波形を示すOMW情報を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の血圧計。
【請求項5】
前記計測部は、前記OMWを基にOscilloMetric Waveform Envelope(OMWE)を取得し、
前記波形の前記情報は、前記OMWEの波形を示すOMWE情報を含む、
請求項4に記載の血圧計。
【請求項6】
前記補正部は、前記カフ圧の時系列変化及び前記OMW情報を前記補正モデルに入力することで前記補正モデルによって出力される誤差を基に、前記計測部によって計測された前記血圧を補正する、
請求項4に記載の血圧計。
【請求項7】
前記補正部は、前記カフ圧の前記時系列変化及び前記OMWE情報を前記補正モデルに入力することで前記補正モデルによって出力される誤差を基に、前記計測部によって計測された前記血圧を補正する、
請求項5に記載の血圧計。
【請求項8】
被計測者の腕に巻かれるカフによる前記腕に対する圧力を制御する制御ステップと、
前記カフが前記腕から受けるカフ圧を検出する検出ステップと、
前記カフ圧の時系列変化を用いて前記被計測者の血圧をオシロメトリック法で計測する計測ステップと、
被験者について、前記カフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、真値として採用する血圧に対する前記計測ステップにおいて計測される血圧の誤差を目的変数とする機械学習によって構築された補正モデルに対して前記検出ステップにおいて検出された前記カフ圧の前記時系列変化に関する前記波形の前記情報を入力することで前記補正モ
デルによって出力される誤差を基に、前記計測ステップにおいて計測された前記血圧を補正する補正ステップと、
前記補正ステップにおいて補正された前記血圧を出力する出力ステップと、をコンピュータが実行する、
血圧計測方法。
【請求項9】
被計測者の腕に巻かれるカフによる前記腕に対する圧力を制御する制御ステップと、
前記カフが前記腕から受けるカフ圧を検出する検出ステップと、
前記カフ圧の時系列変化を用いて前記被計測者の血圧をオシロメトリック法で計測する計測ステップと、
被験者について、前記カフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、真値として採用する血圧に対する前記計測において計測される血圧の誤差を目的変数とする機械学習によって構築された補正モデルに対して前記検出ステップにおいて検出された前記カフ圧の前記時系列変化に関する前記波形の前記情報を入力することで前記補正モデルによって出力される誤差を基に、前記計測ステップにおいて計測された前記血圧を補正する補正ステップと、
前記補正ステップにおいて補正された前記血圧を出力する出力ステップと、をコンピュータに実行させる、
血圧計測プログラム。
【請求項10】
真値として採用する血圧に対するオシロメトリック法によって計測される血圧の誤差の入力を受け付ける受け付けステップと、
被計測者の腕に巻かれるカフによるカフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、前記誤差を目的変数とする機械学習によって学習モデルを構築する構築ステップと、をコンピュータが実行する、
学習モデルの構築方法。
【請求項11】
真値として採用する血圧に対するオシロメトリック法によって計測される血圧の誤差の入力を受け付ける受け付けステップと、
被計測者の腕に巻かれるカフによるカフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、前記誤差を目的変数とする機械学習によって学習モデルを構築する構築ステップと、をコンピュータに実行させる、
学習モデルの構築プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧計、血圧計測方法、血圧計測プログラム、学習モデルの構築方法及び学習モデルの構築プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血圧計測によって健康状態を把握することが行われている。特許文献1では、カフを用いて計測された被計測者の血圧と聴診法で実測した被計測者の血圧の相関を記憶し、記憶した相関を用いて被計測者の血圧を補正する技術が記載されている。また、特許文献2では、光電容積脈波を用いて血圧を測定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-309073号公報
【特許文献2】特表2022-516820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オシロメトリック法による血圧計測では、被計測者の上腕や手首に巻かれたカフを加圧した後、徐々に減圧させながらカフ内圧に重畳する圧力振動を検出し、検出した圧力振動を基に血圧が計測される。ここで、被計測者の体動、カフの巻き方、カフを巻く位置等により、検出される圧力振動にノイズが混入することがある。このようなノイズ混入により、オシロメトリック法による血圧計測の精度が低下する虞がある。ここで、機械学習によって血圧計測の精度低下を抑制することも考えられるが、ノイズによる影響を抑制し得る多数の教師データを収集することは容易ではない。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、少ない教師データでも高精度な血圧計測を実現し得る血圧計、血圧計測方法、血圧計測プログラム、学習モデルの構築方法及び学習モデルの構築プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような血圧計によって例示される。本血圧計は、被計測者の腕に巻かれるカフと、上記カフによる上記腕に対する圧力を制御する制御部と、上記カフが上記腕から受けるカフ圧を検出する検出部と、上記カフ圧の時系列変化を用いて上記被計測者の血圧をオシロメトリック法で計測する計測部と、被験者について、上記カフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、真値として採用する血圧に対する上記計測部によって計測される血圧の誤差を目的変数とする機械学習によって構築された補正モデルと、上記検出部によって検出された上記カフ圧の上記時系列変化に関する上記波形の上記情報を上記補正モデルに入力することで上記補正モデルによって出力される誤差を基に、上記計測部によって計測された上記血圧を補正する補正部と、上記補正部によって補正された上記血圧を出力する出力部と、を備える。
【0007】
上記血圧計によれば、オシロメトリック法で計測された血圧が上記誤差を用いて補正されるため、血圧の計測精度を高めることができる。さらに、上記血圧計では、真値として採用する血圧に対するオシロメトリック法によって計測される血圧の誤差を目的変数とする。上記誤差の変域は概ね±10mmHgと考えられ、人の最高血圧の変域は概ね80mmHgから200mmHgと考えられる。機械学習においては、教師データの数は目的変
数の変域の広さに比例して増大する傾向にある。換言すれば、目的変数の変域を小さくすることで学習に用いる教師データの数を低減できる。上記血圧計は、最高血圧よりも変域が狭い上記誤差を目的変数とするため、学習に用いる教師データの数を低減できる。すなわち、本血圧計は、少ない教師データでも高精度な血圧計測を実現し得る。なお、真値として採用する血圧は、聴診法によって実測される血圧であってよい。
【0008】
ここで、上記波形の上記情報としては、例えば、上記カフ圧に関する情報を挙げることができる。また、上記計測部は上記カフ圧の時系列変化を基にOscilloMetric Waveform(OMW)を取得し、上記波形の上記情報は、上記OMWの波形を示すOMW情報を含んでもよい。
【0009】
また、上記計測部は、上記OMWを基にOscilloMetric Waveform Envelope(OMWE)を取得し、上記波形の上記情報は、上記OMWEの波形を示すOMWE情報を含んでもよい。
【0010】
ここで、本血圧計は、上記カフ圧の時系列変化及び前記OMW情報の双方を上記補正モデルに入力することで上記補正モデルによって出力される誤差を基に、上記計測部によって計測された上記血圧を補正してもよい。また、本血圧計は、上記カフ圧の上記時系列変化及び上記OMWE情報を上記補正モデルに入力することで上記補正モデルによって出力される誤差を基に、上記計測部によって計測された上記血圧を補正してもよい。
【0011】
開示の技術は、血圧計測方法、血圧計測プログラム、学習モデルの構築方法及び学習モデルの構築プログラムの側面からも把握できる。
【発明の効果】
【0012】
開示の技術によれば、少ない教師データでも高精度な血圧計測を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる血圧計の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る補正部による血圧の補正を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る補正モデルの構築を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る血圧計の処理フローの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、血圧の計測精度の検証結果を例示する図である。
【
図6】
図6は、第1変形例に係る血圧計の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<適用例>
本発明の適用例について説明する。適用例に係る血圧計100は、カフ120を被計測者の腕に巻いて被計測者の血圧を計測する装置である。カフ120は、例えば、被計測者の腕のうち上腕や手首等に巻かれる。すなわち、血圧計100は、手首式血圧計であってもよい。血圧計100では、計測部114がオシロメトリック法によって被計測者の血圧を測定する。計測部114は、計測した被計測者の血圧を補正部115に入力する。
【0015】
補正部115は、計測部114によって計測された血圧を補正モデル116を用いて補正する。補正モデル116は、カフ120によるカフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、真値として採用する血圧に対する計測部114によって計測される血圧の誤差を目的変数とする機械学習によって構築された学習モデルである。カフ圧の時系列変化に関する波形の情報としては、OscilloMetric Waveform(OMW)の波形の情報及びOscilloMetric Waveform Envelo
pe(OMWE)からの波形の情報を挙げることができる。計測部114は、例えば、オシロメトリック法によって血圧を計測する。なお、真値として採用する血圧は、例えば、聴診法によって実測される血圧であってもよい。また、機械学習は、深層学習を含む。
【0016】
補正モデル116は、カフ圧の時系列変化に関する波形の情報が入力されると、真値として採用する血圧に対するオシロメトリック法で計測された血圧の誤差を出力する。補正部115は、補正モデル116から出力された誤差を用いて計測部114によって計測された血圧を補正する。血圧計100では、このような補正により、計測部114によって計測された血圧を聴診法によって実測された血圧に可及的に近づけることができる。
【0017】
ここで、本適用例における補正モデル116は、上記の通り、真値として採用する血圧に対するオシロメトリック法によって計測される血圧の誤差を目的変数とする。当該誤差は、おおむね±10mmHgの範囲内と考えられる。一方、人の最高血圧の値は約80mmHgから200mmHgの範囲内である。
【0018】
すなわち、補正モデル116の目的変数を血圧にすると、上記誤差を目的変数とした場合と比較して、目的変数の変域が10倍程度となる。機械学習では教師データの数は目的変数の変域の広さに比例して増大する傾向があるなるため、上記誤差を目的変数とする本適用例は、血圧を目的変数とする場合よりも補正モデル116の構築に用いる教師データの数を低減できる。すなわち、本適用例によれば、少ない教師データでも高精度な血圧測定を実現できる。
【0019】
<実施形態>
続いて実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる血圧計100の一例を示す図である。血圧計100は、本体110及びカフ120を備える。血圧計100は、カフ120を被計測者の上腕や手首(以下、腕ともいう)に巻いて被計測者の血圧を計測する。
【0020】
カフ120は、帯状に形成され、内部に空気が送気される袋を有する。カフ120が被計測者の腕に巻かれた状態でカフ120内部の袋に送気されると、腕に対するカフによる圧力が上昇する。また、カフ120が被計測者の腕に巻かれた状態でカフ120内部の袋から吸気されると、腕に対するカフによる圧力が低下する。
【0021】
本体110には、例えば、プロセッサ及び記憶部が配置され、記憶部に記憶されたプログラムをプロセッサが実行することで、起動スイッチ111、制御部112、圧力センサ113、計測部114、補正部115、補正モデル116及び出力部117等の各処理部が実現される。換言すれば、血圧計100は、カフ120を有するコンピュータとみなすことができる。なお、起動スイッチ111、制御部112、圧力センサ113、計測部114、補正部115、補正モデル116及び出力部117等の各処理部は、専用のハードウェア回路であってもよい。血圧計100では、起動スイッチ111がオンにされることで血圧計100が起動し、血圧の計測が開始される。
【0022】
制御部112は、カフ120への空気の送気及びカフ120からの吸気を行うことで、カフ120による被計測者の腕に対する圧力を制御する。制御部112は、起動スイッチ111がオンにされると、カフ120の圧力の制御を開始する。
【0023】
圧力センサ113は、カフ120による圧力(カフ圧)を検知するセンサである。圧力センサ113は、検知したカフ圧を計測部114に対して出力する。カフ圧には、例えば、カフ120が腕を圧する圧力と、腕の動脈内を流れる血流の拍動による圧力振動とが含まれる。
【0024】
計測部114は、圧力センサ113によって検知された圧力を基にオシロメトリック法による血圧計測を行う。カフ120による圧力が最高血圧より高くなると動脈が閉塞され、血流の拍動による圧力振動は生じなくなる。一方、カフ120による圧力が最高血圧より低くなると動脈が開き始め、血流の拍動による圧力振動がカフ120による圧力に重畳するようになる。さらにカフ120による圧力が低下して最低血圧未満となると、腕の内部の動脈は開いた状態から少し膨らむように動き、圧力振動は生じなくなる。
【0025】
計測部114は、最高血圧より高い圧力にまで高められた後、最低血圧より低い圧力にまで徐々に減圧されるカフ120のカフ圧の時系列変化を圧力センサ113から取得する。計測部114は、圧力センサ113から取得したカフ圧の時系列変化から血流の動脈内を流れる血流の拍動による圧力振動の時系列変化を抽出する。抽出された圧力振動の時系列変化は、OMWである。計測部114は、さらに、OMWからOMWEを抽出する。計測部114は、OMWから抽出した特徴量(以下、OMW特徴量とも称する)及びOMWEから抽出した特徴量(以下、OMWE特徴量とも称する)を用いて被計測者の血圧を計測する。なお、計測部114はOMW特徴量及びOMWE特徴量のいずれか一方を用いてオシロメトリック法で血圧を計測してもよい。さらに、計測部114は、カフ圧の時系列変化に関する波形の情報を補正部115に出力する。カフ圧の時系列変化に関する波形の情報としては、例えば、OMWの波形を示すOMW情報及びOMWEの波形を示すOMWE情報を挙げることができる。以下では、カフ圧の時系列変化に関する波形の情報として、OMW情報及びOMWE情報の少なくとも一方を用いる場合を一例として説明を行う。
【0026】
計測部114が出力するOMW情報及びOMWE情報としては、例えば、以下の(1)から(28)までの情報を上げることができる。(1)から(14)までの各情報は、OMWやOMWEの波形形状に関する情報ということができる。また、(15)から(20)までの各情報は、カフ圧に関する情報ということができる。
(1)最小値、平均値、最小値。
(2)時間軸がX%(Xは0から100までの数値)時点における値。
(3)値が最大となる時間。
(4)OMWやOMWEの波形と時間軸とで囲まれる領域の面積。
(5)OMWやOMWE波形の尖度、歪度。
(6)OMWやOMWEの波形におけるピークの数。
(7)OMWやOMWEの波形の複雑度(例えば、時系列データ前後差分の平方和)。
(8)OMWやOMWEの波形の所定の時点(例えば、開始から1/3の時点)までの平均値を超える点の数。
(9)OMWやOMWEの波形を所定数(例えば、「4」)の領域に分割し、分割した夫々の領域における勾配。
(10)OMWやOMWEの波形のピーク前の時間をピーク後の時間で割った値。
(11)OMWやOWMEの波形の高さの変化割合。
(12)OMWやOMWEの波形を所定数(例えば、「4」)の領域に分割し、分割した夫々について、外接する矩形に占める波形の面積比。
(13)OMWの上包絡線のピーク時間からOMWの下包絡線のピーク時間を引いた値。
(14)OMWの上包絡線の面積とOMWの下包絡線の面積との面積比。
(15)OMWEピークにおけるカフ圧。
(16)OMWEの1次微分が最大になる点におけるカフ圧、及び、最小になるカフ圧。
(17)OMWEのピーク前半で、ピークからN倍(Nは0より大きく1未満の整数)下がった点におけるカフ圧。
(18)OMWEのピーク後半で、ピークからN倍(Nは0より大きく1未満の整数)
下がった点におけるカフ圧。
(19)OMWEの1次微分最大値からピークまでの時間。
(20)OMWEのピークから1次微分最小値までの時間。
(21)OMWEの時間長。
(22)OMWEのピークまでの時間をOMWEの時間長で除した値。
(23)OMWEをガウスフィッティングしたときにおける平均「-σ」の位置。
(24)OMWEをガウスフィッティングしたときにおける平均「+σ」の位置。
(25)OMWEをガウスフィッティングしたときにおける平均「-σ」の位置におけるOMWEの値。
(26)OMWEをガウスフィッティングしたときにおける平均「+σ」の位置におけるOMWEの値。
(27)OMWEの勾配最大値。
(28)OMWEの勾配最小値。
【0027】
補正部115は、計測部114によって計測された血圧の補正を行う。補正部115は、計測部114によって抽出されたOMW情報及びOMWE情報を補正モデル116に入力する。補正モデル116は、OMW情報及びOMWE情報が入力されると、聴診法によって実測される血圧に対する計測部114によって計測される血圧の誤差を補正値として出力する学習モデルである。補正モデル116は、例えば、本体110に収容された記憶部上に記憶される。補正部115は、補正モデル116から取得した補正値を用いて計測部114によって計測された血圧を補正する。
【0028】
図2は、実施形態に係る補正部115による血圧の補正を模式的に示す図である。
図2を参照して、補正部115による血圧の補正を説明する。計測部114は、被計測者C1のOMWを抽出する(ステップM1)。計測部114は、抽出したOMWからOMWの波形を示すOMW情報を抽出する(ステップM2)。また、計測部114は、OMWからOMWEを抽出し(ステップM3)、抽出したOMWEを基に被計測者C1の血圧をオシロメトリック法で計測する(ステップM4)。さらに、計測部114は、OMWEからOMWEの波形を示すOMWE情報を抽出する(ステップM5)。
【0029】
補正部115は、ステップM2で抽出されたOMW情報及びステップM5で抽出されたOMWE情報を補正モデル116に入力し、聴診法で実測する血圧に対するオシロメトリック法で計測する血圧の誤差を取得し、取得した誤差を基にステップM4で計測された血圧を補正する(ステップM6)。出力部117は、ステップM6で補正された血圧をディスプレイ等に出力する(ステップM7)。
【0030】
ここで、補正部115による補正に用いられる補正モデル116の構築について簡単に説明する。補正モデル116は、OMW情報及びOMWE情報を説明変数とし、聴診法によって実測される血圧に対する計測部114によって計測される血圧の誤差を目的変数とした機械学習によって構築される。
【0031】
図3は、実施形態に係る補正モデル116の構築を模式的に示す図である。
図3を参照して、補正モデル116の構築について説明する。補正モデル116の構築では、複数の被験者(E1、E2、・・・、EN)が用意される。なお、本実施形態では複数の被験者が用意されるが、被験者は1名であってもよい。計測部114は、被験者E1のOMWを抽出する(ステップP1)。計測部114は、抽出したOMWからOMWの波形を示すOMW情報を抽出する(ステップP2)。また、計測部114は、OMWからOMWEを抽出し(ステップP3)、抽出したOMWEを基に被験者E1の血圧をオシロメトリック法で計測する(ステップP4)。さらに、計測部114は、OMWEからOMWEの波形を示すOMWE情報を抽出する(ステップP5)。
【0032】
また、医師D1は、被験者E1の血圧を聴診法によって実測する(ステップP6)。ステップP6で実測された血圧に対するステップP4で計測された血圧の誤差が算出される(ステップP7)。ステップP2で抽出されたOMW情報及びステップP5で抽出されたOMWE情報を説明変数とし、ステップP7で算出された誤差を目的変数とする機械学習を行う(ステップP8)。ステップP8の機械学習によって、補正モデル116が構築される。
【0033】
ステップP1からP8までの処理が、被験者E2からENの夫々についても実行される。すなわち、補正モデル116は、ひとりの被計測者についての血圧計測精度を高める学習モデルではなく、複数の被験者についての計測結果を用いることでオシロメトリック法による血圧の計測精度を高めるモデルということができる。
【0034】
図1に戻り、出力部117は、補正モデル116によって補正された血圧を出力する。出力部117は、例えば、Liquid Crystal Display(LCD)、Plasma Display Panel(PDP)、無機Electroluminescence(EL)パネル、有機ELパネルである。出力部117は、プリンタやスピーカであってもよい。
【0035】
<処理フロー>
図4は、本実施形態に係る血圧計100の処理フローの一例を示す図である。以下、
図4を参照して、血圧計100の処理フローの一例について説明する。
【0036】
ステップS1では、起動スイッチ111がオンにされることで、血圧計100が起動する。ステップS2では、制御部112は、カフ120に送気して被計測者の腕を加圧する。制御部112は、最高血圧より高い圧力までカフ120による加圧を行った後、カフ120の圧力を徐々に下げる。
【0037】
ステップS3では、計測部114は、圧力センサ113によって検出されるカフ圧を基にOMWを抽出し、抽出したOMWからOMW情報を抽出する。また、計測部114は、OMWからOMWEを抽出し、OMWE情報を抽出する。計測部114は、OMWEを用いたオシロメトリック法によって、被計測者の血圧を計測する。
【0038】
ステップS4では、計測部114は、被計測者の血圧測定が完了したか否かを判定する。計測部114は、例えば、被計測者の最高血圧及び最低血圧の双方を計測した場合に、血圧測定を完了と判定してよい。完了した場合(ステップS4でYES)、処理はステップS5に進められる。完了していない場合(ステップS4でNO)、処理はステップS2に進められる。
【0039】
ステップS5では、制御部112は、カフ120の空気を抜く。ステップS6では、補正部115は、ステップS3で抽出されたOMW情報及びOMWE情報を補正モデル116に入力して、聴診法によって実測される血圧に対するオシロメトリック法によって計測される血圧の誤差を取得する。補正部115は、補正モデル116から取得した誤差を用いてステップS3で計測された血圧を補正する。
【0040】
ステップS7では、出力部117は、ステップS6で補正された血圧を出力する。
【0041】
<検証>
以上説明した実施形態に係る血圧計100による血圧の計測精度について検証を行ったので、説明する。
図5は、血圧の計測精度の検証結果を例示する図である。
図5では、実
施形態との比較のため、オシロメトリック法によって計測された血圧(最低血圧:DBP、最高血圧:SBP)を補正モデルによって補正しないもの(補正なし)、及び、目的変数を血圧として補正モデルを構築した比較例を用意した。そして、比較例及び実施形態の夫々について、補正モデルへの入力データとしてOMWE情報を用いるもの(比較例1、実施形態1)、OMWE情報とOME情報の双方を用いるもの(比較例2、実施形態2)を用意した。
【0042】
本検証では、複数の被験者夫々について血圧の計測を複数回実施して計測結果を取得した。本検証においては、取得した計測結果について、Standard Deviation of Error(SDE)による評価が行われる。
【0043】
図5を参照すると、「実施形態1」及び「実施形態2」は、「補正なし」、「比較例1」及び「比較例2」よりも高い精度を示した。また、
図5を参照すると、補正モデルへの入力データとしてOMWE情報を用いてもOMW情報及びOMWE情報の双方を用いても、「補正なし」、「比較例1」及び「比較例2」よりも「実施形態1」及び「実施形態2」は高い精度を示した。
【0044】
<実施形態の作用効果>
本実施形態によれば、計測部114によって計測された血圧が補正部115によって補正されるため、血圧の計測精度を可及的に高めることができる。ここで、補正モデル116は、聴診法によって実測される血圧に対するオシロメトリック法によって計測される血圧の誤差を目的変数とする。適用例でも説明した通り、上記誤差の変域は上記血圧の変域の1/10程度となる。教師データの数は目的変数の変域の広さに比例して増大する傾向があるため、上記誤差を目的変数とする本実施形態によれば、血圧を目的変数とする場合よりも補正モデル116の構築に用いる教師データの数を低減できる。すなわち、本実施形態によれば、より少ない教師データでより高精度の血圧測定を実現できる。
【0045】
また、本実施形態において、被計測者の体動、カフの巻き方、カフを巻く位置等によるノイズは、OMW情報及びOMWE情報にも含まれる。ここで、補正モデル116は、OMW情報及びOMWE情報を説明変数として構築される。そのため、補正モデル116は、このようなノイズを考慮して、聴診法によって実測される血圧に対するオシロメトリック法によって計測された血圧の誤差を出力できる。すなわち、本実施形態によれば、オシロメトリック法による血圧計測をより高精度で実施できる。
【0046】
ここで、カフを用いた血圧計測では人体に圧力をかけることから上記誤差の算出のもとになるオシロメトリック法によって計測される血圧のデータを多数収集することは困難である。本実施形態では、上記誤差を目的変数とすることで目的変数の変域を狭めることができ、ひいては、目的変数の偏りによる影響を抑制できる。そのため、オシロメトリック法によって計測される血圧のデータが少ないことで計測された血圧のデータに偏りが生じても、血圧計測をより高精度で実施できる。
【0047】
<第1変形例>
以上説明した実施形態では、本体110内の記憶部に補正モデル116が記憶された。しかしながら、補正モデル116は本体110内の記憶部以外に記憶されてもよい。
図6は、第1変形例に係る血圧計100Aの一例を示す図である。第1変形例に係る血圧計100Aは、補正モデル116が本体110内の記憶部ではなく、本体110とコンピュータネットワークN1で接続されたサーバ200に記憶される点、及び、補正部115に代えて補正部115Aを備える点で、実施形態に係る血圧計100とは異なる。
【0048】
コンピュータネットワークN1は、情報処理装置を相互に接続するネットワークである
。コンピュータネットワークN1は、有線であっても無線であってもよい。コンピュータネットワークN1は、例えば、インターネットである。
【0049】
補正部115Aは、コンピュータネットワークN1を介して、サーバ200に記憶された補正モデル116にアクセスする。すなわち、補正部115Aは、抽出されたOMW情報及びOMWE情報をコンピュータネットワークN1を介してサーバ200に対して送信する。
【0050】
サーバ200は、血圧計100Aから受信したOMW情報及びOMWE情報を補正モデル116に入力し、オシロメトリック法によって計測される血圧の聴診法によって計測される血圧に対する誤差を取得する。サーバ200は、当該誤差をコンピュータネットワークN1を介して本体110に送信する。補正部115Aは、サーバ200から受信した誤差を用いて計測部114によって計測された血圧を補正する。
【0051】
第1変形例によれば、補正モデル116を用いた誤差の算出の演算処理をサーバ200に実行させることができる。そのため、本体110内における演算負荷を低減できる。
【0052】
<その他の変形>
以上説明した実施形態では、
図4を参照して加圧式の血圧計測について説明したが、本実施形態に係る血圧計100は減圧式で血圧計測を行ってもよい。
【0053】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【0054】
<コンピュータが読み取り可能な記録媒体>
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させる情報処理プログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0055】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、Compact Disc-Recordable(CD-R)、Compact Disc-ReWriterable(CD-RW)、Digital Versatile Disc(DVD)、ブルーレイディスク(BD)、Digital Audio Tape(DAT)、8mmテープ、フラッシュメモリ、外付け型のハードディスクドライブやSolid State Drive(SSD)等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体として内蔵型のハードディスクドライブ、SSDやROM等がある。
【0056】
<付記1>
被計測者の腕に巻かれるカフ(120)と、
前記カフ(120)による前記腕に対する圧力を制御する制御部(112)と、
前記カフ(120)が前記腕から受けるカフ圧を検出する検出部(113)と、
前記カフ圧の時系列変化を用いて前記被計測者の血圧をオシロメトリック法で計測する計測部(114)と、
被験者について、前記カフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、真値として採用する血圧に対する前記計測部によって計測される血圧の誤差を目的変数とする機械学習によって構築された補正モデル(116)と、
前記検出部(113)によって検出された前記カフ圧の前記時系列変化に関する前記波形の前記情報を前記補正モデル(116)に入力することで前記補正モデル(116)によって出力される誤差を基に、前記計測部(114)によって計測された前記血圧を補正する補正部(115)と、
前記補正部(115)によって補正された前記血圧を出力する出力部(117)と、を備える、
血圧計(100)。
<付記2>
前記真値として採用する前記血圧は、聴診法によって実測される血圧である、
付記1に記載の血圧計(100)。
<付記3>
前記波形の前記情報は、前記カフ圧に関する情報を含む、
付記1に記載の血圧計(100)。
<付記4>
前記計測部(114)は、前記カフ圧の時系列変化を基にOscilloMetric
Waveform(OMW)を取得し、
前記波形の前記情報は、前記OMWの波形を示すOMW情報を含む、
付記1から3のいずれかひとつに記載の血圧計(100)。
<付記5>
前記計測部(114)は、前記OMWを基にOscilloMetric Waveform Envelope(OMWE)を取得し、
前記波形の前記情報は、前記OMWEの波形を示すOMWE情報を含む、
付記1から4のいずれかひとつに記載の血圧計(100)。
<付記6>
前記補正部(115)は、前記カフ圧の時系列変化及び前記OMW情報を前記補正モデル(116)に入力することで前記補正モデル(116)によって出力される誤差を基に、前記計測部(114)によって計測された前記血圧を補正する、
付記4に記載の血圧計(100)。
<付記7>
前記補正部(115)は、前記カフ圧の前記時系列変化及び前記OMWE情報を前記補正モデル(116)に入力することで前記補正モデル(116)によって出力される誤差を基に、前記計測部(114)によって計測された前記血圧を補正する、
付記5に記載の血圧計(100)。
<付記8>
被計測者の腕に巻かれるカフ(120)による前記腕に対する圧力を制御する制御ステップと、
前記カフ(120)が前記腕から受けるカフ圧を検出する検出ステップと、
前記カフ圧の時系列変化を用いて前記被計測者の血圧をオシロメトリック法で計測する計測ステップと、
被験者について、前記カフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、真値として採用する血圧に対する前記計測ステップにおいて計測される血圧の誤差を目的変数とする機械学習によって構築された補正モデル(116)に対して前記検出ステップにおいて検出された前記カフ圧の前記時系列変化に関する前記波形の前記情報を入力することで前記補正モデルによって出力される誤差を基に、前記計測ステップにおいて計測された前記血圧を補正する補正ステップと、
前記補正ステップにおいて補正された前記血圧を出力する出力ステップと、をコンピュータが実行する、
血圧計測方法。
<付記9>
被計測者の腕に巻かれるカフ(120)による前記腕に対する圧力を制御する制御ステ
ップと、
前記カフ(120)が前記腕から受けるカフ圧を検出する検出ステップと、
前記カフ圧の時系列変化を用いて前記被計測者の血圧をオシロメトリック法で計測する計測ステップと、
被験者について、前記カフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、真値として採用する血圧に対する前記計測において計測される血圧の誤差を目的変数とする機械学習によって構築された補正モデル(116)に対して前記検出ステップにおいて検出された前記カフ圧の前記時系列変化に関する前記波形の前記情報を入力することで前記補正モデルによって出力される誤差を基に、前記計測ステップにおいて計測された前記血圧を補正する補正ステップと、
前記補正ステップにおいて補正された前記血圧を出力する出力ステップと、をコンピュータに実行させる、
血圧計測プログラム。
<付記10>
真値として採用する血圧に対するオシロメトリック法によって計測される血圧の誤差の入力を受け付ける受け付けステップと、
被計測者の腕に巻かれるカフによるカフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、前記誤差を目的変数とする機械学習によって学習モデルを生成する生成ステップと、をコンピュータが実行する、
学習モデルの生成方法。
<付記11>
真値として採用する血圧に対するオシロメトリック法によって計測される血圧の誤差の入力を受け付ける受け付けステップと、
被計測者の腕に巻かれるカフによるカフ圧の時系列変化に関する波形の情報を説明変数とし、前記誤差を目的変数とする機械学習によって学習モデルを生成する生成ステップと、をコンピュータに実行させる、
学習モデルの生成プログラム。
【符号の説明】
【0057】
100・・血圧計
100A・・血圧計
110・・本体
111・・起動スイッチ
112・・制御部
113・・圧力センサ
114・・計測部
115・・補正部
115A・・補正部
116・・補正モデル
117・・出力部
120・・カフ
200・・サーバ
C1・・被計測者
D1・・医師
E1・・被験者
N1・・コンピュータネットワーク