(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163786
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20241115BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20241115BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20241115BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20241115BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20241115BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20241115BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20241115BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20241115BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20241115BHJP
B02C 17/14 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/103
C08K5/17
C08L91/00
C08L7/00
C08L9/00
C08J3/12 Z
C08J3/20 Z CEQ
B29B17/04
B02C17/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079665
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀ノ上 翔吾
【テーマコード(参考)】
4D063
4F070
4F401
4J002
【Fターム(参考)】
4D063FF08
4D063FF36
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4D063GD02
4D063GD22
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4J002AC00W
4J002AC00X
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4J002AE00Y
4J002EH046
4J002EN016
4J002FD010
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4J002FD02Y
4J002FD140
4J002GC00
4J002GJ02
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】改質架橋ゴム粒子を含む場合であっても、加工性向上剤を用いることで、ムーニー粘度が低減され、加工性に優れるゴム組成物、及び該ゴム組成物を含むゴム成形体、並びに該ゴム組成物及び該ゴム成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】〔1〕改質架橋ゴム粒子、加工性向上剤及び未架橋ゴム成分を含有し、前記改質架橋ゴム粒子が、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程により処理された改質架橋ゴム粒子であるゴム組成物、〔2〕前記〔1〕のゴム組成物を加硫したゴム成形体、〔3〕改質架橋ゴム粒子、加工性向上剤及び未架橋ゴム成分を配合する工程を有し、前記改質架橋ゴム粒子が、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程により処理された改質架橋ゴム粒子であるゴム組成物の製造方法、及び〔4〕前記〔3〕のゴム組成物の製造方法で得られたゴム組成物を加硫する工程を有するゴム成形体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質架橋ゴム粒子、加工性向上剤及び未架橋ゴム成分を含有し、
前記改質架橋ゴム粒子が、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程により処理された改質架橋ゴム粒子である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記剪断応力を加える工程における処理温度が、10℃以上150℃以下である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記改質架橋ゴム粒子の平均粒子径が、0.3mm以上20mm以下である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記架橋ゴムが、使用済みゴムである、請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記使用済みゴムが、廃タイヤである、請求項4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記加工性向上剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリルアミン誘導体及びプロセスオイルから選ばれる1種以上である、請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記未架橋ゴム成分が、天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれる1種以上である、請求項1~6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記架橋ゴム粒子の下記膨潤率の測定方法により測定される膨潤率に対する、前記改質架橋ゴム粒子の下記膨潤率の測定方法により測定される膨潤率の比(改質架橋ゴム粒子の膨潤率/架橋ゴム粒子の膨潤率)が、0.90以上0.98以下である、請求項1~7のいずれかに記載のゴム組成物。
(膨潤率の測定方法)
前記改質架橋ゴム粒子又は前記架橋ゴム粒子を、10MPa、145℃で10分間加熱し、厚さ2mmのシート状成形体とする。得られたシート状成形体を、JIS K 6251:2017に規定のダンベル状5号形の形状の試験片とする。得られた試験片をキシレン100mLに室温(約23℃)で3日間浸漬する。浸漬前の試験片の重量及び浸漬後の試験片の重量を測定し、以下の計算式に基づき、膨潤率を求める。
膨潤率(%)=(浸漬後の試験片の重量/浸漬前の試験片の重量)×100
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のゴム組成物を加硫した、ゴム成形体。
【請求項10】
改質架橋ゴム粒子、加工性向上剤及び未架橋ゴム成分を配合する工程を有し、
前記改質架橋ゴム粒子が、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程により処理された改質架橋ゴム粒子である、ゴム組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載のゴム組成物の製造方法で得られたゴム組成物を加硫する工程を有する、ゴム成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及び該ゴム組成物を用いたゴム成形体、並びに該ゴム組成物及び該ゴム成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の実現に向け、より一層のサステナビリティ(持続可能性)が求められている。
例えば、廃タイヤ等の使用済みのゴムは、定期的な交換が必要な部品に使われることが多く、大量に発生している。使用済みゴムは、例えばサーマルリサイクル用燃料としての使用や、粉末状のゴム等に加工し、弾性材料等の材料としての使用等により再資源化されている。
【0003】
また、特許文献1には、実用的なゴム特性を有する再生ゴム成形品の再生ゴム原料として、それ単独で使用可能な再生脱硫ゴムを提供することを目的として、硫黄架橋結合が切断され,粒径が100nm以下であるカーボンブラックを含有していることを特徴とする再生脱硫ゴムが開示されている。
また、特許文献2には、再生ゴム押出成形品の原料として、それ単独で実用に耐え得るだけのゴム特性を有する再生ゴムを製造できる方法を提供することを目的として、密閉式混練機に入れた加硫ゴムにせん断力を加えることにより流動性と可塑性を与えて再生化処理を施す一方、上記加硫ゴムの元の状態である未加硫状態での見かけの活性化エネルギーの値に基づいて練り仕上げ時間を予め設定しておき、再生化処理中における密閉式混練機の負荷トルクがピークを過ぎた後であって且つこのピーク時を始期とする上記練り仕上げ時間が経過するまでの間に再生ゴムを密閉式混練機から取り出すことを特徴とする再生ゴムの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-227724号公報
【特許文献2】特開2005-231091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2により得られる加硫(架橋)されたゴムが改質されたゴム材料は、十分な脱架橋効果を得るためには、処理時に高温で加熱を行う必要がある。そのため、特許文献1及び2により得られるゴム材料は、分子量の低下や軟化が生じ、ゴム組成物に用いた場合に、物性低下が避けられなかった。
一方、本発明者は、すでに架橋ゴム粒子に振動ミル等で圧縮剪断応力処理を行うことで、改質前の架橋ゴムの粒子よりも、脱架橋された状態となり、ゴム組成物中にこの改質ゴム粒子を配合した場合において、ゴム成分として未架橋ゴムのみ用いた加硫ゴム組成物と同等以上の損失正接、強度及び伸縮性を有する改質架橋ゴム粒子を見出している(特願2022-156500)。
しかしながら、前記改質架橋ゴム粒子は、損失正接、強度及び伸縮性を向上させる効果が見られたが、ゴム組成物へ添加した際にムーニー粘度が高くなり、加工性が十分とは言えなかった。
本発明は、改質架橋ゴム粒子を含む場合であっても、加工性向上剤を用いることで、ムーニー粘度が低減され、加工性に優れるゴム組成物、及び該ゴム組成物を含むゴム成形体、並びに該ゴム組成物及び該ゴム成形体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、使用済みのゴム等の架橋ゴム粒子に、振動ミルによる剪断力を加えた改質架橋ゴム粒子を用いることで、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、以下の〔1〕~〔4〕に関する。
〔1〕改質架橋ゴム粒子、加工性向上剤及び未架橋ゴム成分を含有し、前記改質架橋ゴム粒子が、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程により処理された改質架橋ゴム粒子である、ゴム組成物。
〔2〕前記〔1〕のゴム組成物を加硫した、ゴム成形体。
〔3〕改質架橋ゴム粒子、加工性向上剤及び未架橋ゴム成分を配合する工程を有し、前記改質架橋ゴム粒子が、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程により処理された改質架橋ゴム粒子である、ゴム組成物の製造方法。
〔4〕前記〔3〕のゴム組成物の製造方法で得られたゴム組成物を加硫する工程を有する、ゴム成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、改質架橋ゴム粒子を含む場合であっても、加工性向上剤を用いることで、ムーニー粘度が低減され、加工性に優れるゴム組成物、及び該ゴム組成物を含むゴム成形体、並びに該ゴム組成物及び該ゴム成形体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、改質架橋ゴム粒子、加工性向上剤及び未架橋ゴム成分を含有し、前記改質架橋ゴム粒子が、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程により処理された改質架橋ゴム粒子である。
【0009】
本発明によれば、ムーニー粘度を低減させ、加工性が向上されたゴム組成物を得ることができる。その詳細な理由は定かではないが、次のように考えられる。
使用済みゴム等の架橋ゴムをリサイクルする際に、カッターミルやハンマーミル等で剪断応力を加えて加工することにより、粒子状に加工し、新たなゴム成形体の原料の一部として用いていた。しかしながら、カッターミルやハンマーミル等で剪断応力を加える方法の場合、架橋ゴムは、単に粒子化されるのみであった。
一方、本発明で用いる改質架橋ゴム粒子は、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える、いわゆるメカノケミカル処理を施すことで得られるものである。そのため、本発明で用いる改質架橋ゴム粒子は、加えられた剪断応力及び発生したラジカルの作用により、主に架橋ゴムの架橋点の結合が部分的に切断された状態となり、脱架橋された状態となっている。その結果、本発明で用いる改質架橋ゴム粒子は、加工性向上剤及び未架橋ゴム成分と馴染みやすくなるため、ムーニー粘度が低減し、加工性が向上すると考えられる。
また、本発明で用いる改質架橋ゴム粒子は、例えば特許文献1及び2のような、従来の方法で処理されたゴム材料と比較して、分子量の低下等が抑制されるため、ゴム組成物に用いた場合においても、物性の低下を抑制することができる。
また、本発明で用いる改質架橋ゴム粒子は、物性の低下を抑制できることから、より多量にゴム組成物に配合することが可能となる。すなわち、本発明のゴム組成物は、従来の架橋ゴムを用いたゴム組成物よりも、リサイクル性に優れるものである。
【0010】
<改質架橋ゴム粒子>
本発明における改質架橋ゴム粒子は、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程によって処理された改質架橋ゴム粒子である。
本発明における改質架橋ゴム粒子は、上記の工程によって処理されることにより、脱架橋された状態となるため、加工性向上剤及び他の材料と馴染みやすくなり、本発明のゴム組成物のムーニー粘度を低減させ、加工性を向上することができる。
また、本発明における改質架橋ゴム粒子は、上記の工程により処理されるため、脱架橋の際に、架橋点を形成していた硫黄成分は、揮発等によって除去され難く、改質架橋ゴム粒子中に残存しやすい。さらに、この改質架橋ゴム粒子中に残存する架橋点を形成していた硫黄成分は、ゴム成分を再架橋する能力を残していると考えられる。よって、本発明における改質架橋ゴム粒子は、硫黄等の架橋剤を追加せずとも、再架橋することが可能であると考えられる。
【0011】
(架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程)
本発明における改質架橋ゴム粒子は、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程によって処理されることで得られる。振動ミルを用いることで、架橋ゴム粒子に効率的に剪断応力を加えることができ、脱架橋等の改質をさせることができる。その結果、当該改質架橋ゴム粒子を含有する本発明のゴム組成物は、ムーニー粘度が低減され、加工性に優れる。
振動ミルとしては、架橋ゴム粒子に効率的に圧縮剪断応力を加える観点から、振動ロッドミル、振動ボールミル及び振動チューブミルから選ばれる1種が好ましく、振動ロッドミルがより好ましい。
振動ミルによって剪断応力を加える工程としては、バッチ式、連続式のいずれでもよい。
振動ミルの材質、媒体の材質に特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられるが、架橋ゴム粒子の粉砕効率の観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、更に工業的な利用の観点から、鉄又はステンレスがより好ましい。
【0012】
振動ミルとして、振動ロッドミルを用いる場合、架橋ゴム粒子に効率的に剪断応力を加える観点から、ロッドの外径は、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上、更に好ましくは25mm以上であり、好ましくは60mm以下、より好ましくは50mm以下、更に好ましくは45mm以下である。
ロッドの充填率は、振動ミルの機種により好適な範囲が異なるが、架橋ゴム粒子に効率的に剪断応力を加える観点から、振動ロッドミルの体積に対して、好ましくは10体積%以上、より好ましくは30体積%以上、更に好ましくは50体積%以上、より更に好ましくは60体積%以上であり、また好ましくは97体積%以下、より好ましくは90体積%以下、更に好ましくは80体積%以下である。充填率がこの範囲内であれば、架橋ゴム粒子とロッドとの接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、架橋ゴム粒子に効率的に圧縮剪断応力を加えることができる。ここで充填率とは、振動ミルの撹拌部の容積に対するロッドの体積をいう。
【0013】
バッチ処理の場合、処理時間は、振動ミルの種類、ロッドの材質、形状、大きさ及び充填率、架橋ゴム粒子の充填率等により異なるが、架橋ゴム粒子に効率的に剪断応力を加える観点及び生産性の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上であり、そして、好ましくは120分以下、より好ましくは60分以下、更に好ましくは45分以下、更に好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下である。
連続処理を行う場合、架橋ゴム粒子の供給速度は、剪断応力を加える工程における処理速度は振動ミルの種類及び大きさ、ロッドの充填率等により異なるが、生産性の観点から、好ましくは5kg/h以上、より好ましくは10kg/h以上であり、架橋ゴム粒子に効率的に圧縮剪断応力を加える観点から、好ましくは100kg/h以下、より好ましくは80kg/h以下である。
【0014】
処理温度は、熱による改質架橋ゴム粒子の劣化を抑える観点、及びエネルギー負荷を抑える観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
また、処理温度が上記の範囲内であることにより、改質架橋ゴム粒子中に架橋点を形成していた硫黄成分を残存し易くでき、改質架橋ゴム粒子に対して硫黄等の架橋剤を追加せずとも、再架橋し易い状態にできる。
また、本発明は処理温度が上記範囲内であることにより、改質架橋ゴム粒子の分子量の低下等を抑制することができ、ゴム組成物に用いた場合においても、物性の低下を抑制することができる。
【0015】
従来のゴム材料の処理方法では、ゴム材料の脱架橋を促進するために、再生剤を用いる場合がある。
一方、本発明において、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程に、フェニルヒドラジン/塩化鉄系再生剤、有機アミン/塩化銅系再生剤、チオール/アミン系再生剤及びジメチルスルホキシド/ヨウ化メチル系再生剤等の再生剤を実質的に配合しないことが好ましい。再生剤を実質的に配合しないことにより、改質架橋ゴム粒子の分子量の低下等を抑制することができ、ゴム組成物に用いた場合においても、物性の低下を抑制することができる。実質的に配合しないとは、再生剤の配合量が、架橋ゴム粒子100質量部に対し、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下、より更に好ましくは0質量部である。
【0016】
(架橋ゴム粒子)
本発明において、架橋ゴム粒子は、使用済みゴムを粒子化させたものであることが好ましい。すなわち、本発明において、架橋ゴムは、使用済みゴムであることが好ましい。
使用済みゴムとしては、廃タイヤ、チューブ、ゴムクローラ、コンベアベルト、防振ゴム等が挙げられ、これらの中でも、リサイクル性の観点から、廃タイヤが好ましい。
使用済みゴムのゴムの種類としては、天然ゴム及び合成ゴムの少なくとも1種が含まれてることが好ましい。合成ゴムとしてはジエン系ゴムが好ましく、例えば、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、1,4-ポリブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0017】
架橋ゴム粒子は、前述の使用済みゴムを微粉砕処理することによって得ることができる。また、本発明において、改質架橋ゴム粒子を得る際に、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程の前に、使用済みゴムを微粉砕処理し架橋ゴム粒子を得る工程を有することが好ましい。
微粉砕処理の方法としては、例えば、使用済みゴムをチップ状(35mm程度)に破砕した後、更に粒子化(8mm以下程度)する方法が挙げられる。
使用済みゴムをチップ状に破砕する装置としては、生産性の観点から、シュレッダー、スリッターカッター及びロータリーカッター等が挙げられる。
使用済みゴムを粒子化する粉砕機としては、生産性の観点から、ナイフミル、カッターミル及びハンマーミル等が挙げられる。
【0018】
架橋ゴム粒子の平均粒子径としては、架橋ゴム粒子に効率的に剪断応力を加え、効率的に改質架橋ゴム粒子を得る観点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.2mm以下であり、そして、得られる改質架橋ゴム粒子の平均粒子径及び粒子径分布を後述の範囲にし易くし、ゴム組成物に配合し易くする観点から、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.1mm以上である。
架橋ゴム粒子の中で、粒子径が90μm以下のものの割合は、効率的に改質架橋ゴム粒子を得る観点及びゴム組成物に配合し易くする観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
架橋ゴム粒子の中で、粒子径が150μm以下のものの割合は、効率的に改質架橋ゴム粒子を得る観点及びゴム組成物に配合し易くする観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
架橋ゴム粒子の中で、粒子径が1000μm以下のものの割合は、架橋ゴム粒子に効率的に剪断応力を加え、効率的に改質架橋ゴム粒子を得る観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。
本発明において、架橋ゴム粒子の粒子径分布及び平均粒子径は、ふるい分け試験で測定し、具体的には実施例の方法で測定する。
【0019】
(改質架橋ゴム粒子の物性)
本発明において、改質架橋ゴム粒子の平均粒子径は、ゴム組成物のムーニー粘度を低減させ、加工性を向上させる観点から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは0.7mm以上であり、そして、好ましくは20mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは1mm以下である。
本発明において、改質架橋ゴム粒子の粒子径分布及び平均粒子径の測定は、上記の架橋ゴム粒子の粒子径分布及び平均粒子径の場合と同様に測定し、具体的には実施例の方法で測定する。
本発明において、改質架橋ゴム粒子の中で、粒子径が90μm以下のものの割合は、ゴム組成物のムーニー粘度を低減させ、加工性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
本発明において、改質架橋ゴム粒子の中で、粒子径が150μm以下のものの割合は、ゴム組成物のムーニー粘度を低減させ、加工性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
本発明において、改質架橋ゴム粒子の中で、粒子径が500μm以下のものの割合は、ゴム組成物のムーニー粘度を低減させ、加工性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0020】
架橋ゴム粒子の下記膨潤率の測定方法により測定される膨潤率に対する、改質架橋ゴム粒子の下記膨潤率の測定方法により測定される膨潤率の比(改質架橋ゴム粒子の膨潤率/架橋ゴム粒子の膨潤率)は、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上、更に好ましくは0.90以上、より更に好ましくは0.91以上、より更に好ましくは0.92以上であり、そして、好ましくは0.98以下、より好ましくは0.97以下、更に好ましくは0.96以下である。
(膨潤率の測定方法)
改質架橋ゴム粒子又は架橋ゴム粒子を、10MPa、145℃で10分間加熱し、厚さ2mmのシート状成形体とする。得られたシート状成形体を、JIS K 6251:2017に規定のダンベル状5号形の形状の試験片とする。得られた試験片をキシレン100mLに室温(23℃)で3日間浸漬する。浸漬前の試験片の重量及び浸漬後の試験片の重量を測定し、以下の計算式に基づき、膨潤率を求める。
膨潤率(%)=(浸漬後の試験片の重量/浸漬前の試験片の重量)×100
【0021】
前記膨潤率の比が上記の範囲内であることは、すなわち、改質架橋ゴム粒子の膨潤率が、改質される前の架橋ゴム粒子の膨潤率よりも小さいことを示す。
上記膨潤率の測定方法により、改質架橋ゴム粒子がシート状成形体になる段階で、残存する架橋点を形成していた硫黄成分により、再架橋されたためであると考えられる。この時、改質架橋ゴム粒子中で再架橋されると共に、改質架橋ゴム粒子間でも架橋されることにより、改質架橋ゴム粒子のシート状成形体は、全体として架橋がされた状態となるため、前記膨潤率の比が上記の範囲内となるものと考えられる。
また、改質架橋ゴム粒子の前記膨潤率の比が上記の範囲内であることは、上記の通り、再架橋が可能な状態になっていることを示しており、すなわり、改質架橋ゴム粒子そのものは、上述の通り、脱架橋された状態であるものと考えられる。
よって、本発明のゴム組成物は、改質架橋ゴム粒子の前記膨潤率の比が上記の範囲内であることにより、改質架橋ゴム粒子と、加工性向上剤及び未架橋ゴム成分とが馴染みやすくなるため、ムーニー粘度を低減し易くでき、加工性を向上し易くできる。
【0022】
<加工性向上剤>
本発明のゴム組成物は、加工性向上剤を含有する。ゴム組成物が加工性向上剤を含有することにより、混練設備の金属部品等への密着を抑制することができるため、ムーニー粘度を低減させ、加工性を向上させることができる。
本発明において加工性向上剤は、ゴム組成物のムーニー粘度を低減させ、加工性を向上させる観点から、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリルアミン誘導体及びプロセスオイルから選ばれる1種以上であることが好ましく、グリセリン脂肪酸エステル及びステアリルアミン誘導体から選ばれる1種以上であることがより好ましい。加工性向上剤は、単独で、又は2種以上組合せて用いてもよい。
【0023】
(グリセリン脂肪酸エステル)
グリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリンに含まれる3つのOH基の内の少なくとも1つと、脂肪酸のCOOH基とが、エステル結合してなる化合物である。
前記グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン1分子と脂肪酸1分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン1分子と脂肪酸2分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸ジエステル、及びグリセリン1分子と脂肪酸3分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸トリエステルから選ばれる1種以上が好ましく、グリセリン脂肪酸モノエステルがより好ましい。
【0024】
グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、ゴム組成物のムーニー粘度を低減させ、加工性を向上させる観点から、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、より更に好ましくは14以上、より更に好ましくは16以上であり、そして、好ましくは28以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは18以下、である。特に、グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が8以上であることにより、上述の改質架橋ゴム粒子及び未架橋ゴム成分との親和性を高くすることができるため、グリセリン脂肪酸エステルのブルームを抑制し易い。
前記脂肪酸は、直鎖状でも、分岐状でもよいが、直鎖状であることが好ましく、また、飽和脂肪酸でも、不飽和脂肪酸でもよいが、飽和脂肪酸であることが好ましい。前記脂肪酸は、特には、直鎖状飽和脂肪酸であることが好ましい。
前記脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラギン酸、アラキドン酸、ベヘン酸等が挙げられる。これらの中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から選ばれる1種以上が好ましく、パルミチン酸及びステアリン酸から選ばれる1種以上がより好ましく、ステアリン酸が更に好ましい。
【0025】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、ゴム組成物のムーニー粘度を低減させ、加工性を向上させる観点から、ラウリン酸モノグリセライド、ミリスチン酸モノグリセライド、パルミチン酸モノグリセライド、及びステアリン酸モノグリセライドから選ばれる1種以上が好ましく、パルミチン酸モノグリセライド、及びステアリン酸モノグリセライドから選ばれる1種以上がより好ましく、ステアリン酸モノグリセライドが更に好ましい。
【0026】
(ステアリルアミン誘導体)
ステアリルアミン誘導体としては、ステアリルアミンのアミノ基の水素を、アルキル基で置換した化合物が好ましい。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
ステアリルアミン誘導体としては、ゴム組成物のムーニー粘度を低減させ、加工性を向上させる観点から、ジメチルステアリルアミン、ジエチルステアリルアミン、ジプロピルステアリルアミン、エチルメチルステアリルアミン、エチルプロピルステアリルアミン及びメチルプロピルステアリルアミンから選ばれる1種以上が好ましく、ジメチルステアリルアミンがより好ましい。
【0027】
(プロセスオイル)
プロセスオイルとしては、流動点が40℃以下のものが好ましい。
プロセスオイルとしては、ゴム組成物のムーニー粘度を低減させ、加工性を向上させる観点から、アロマティック系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、及びパラフィン系プロセスオイルから選ばれる1種以上が好ましく、ナフテン系プロセスオイルがより好ましい。
【0028】
<未架橋ゴム成分>
本発明のゴム組成物は、未架橋ゴム成分を含有する。
未架橋ゴム成分としては、ゴム組成物のムーニー粘度を低減し、加工性を向上させる観点及び入手容易性等の観点から、天然ゴム、及びジエン系合成ゴムから選ばれる1種以上が好ましい。
天然ゴムとしては、SMR、SIR、STR、RSS等が挙げられるが、SMR20、STR20、RSS#3、RSS#4等が好ましい。
また、天然ゴムを変性させた変性天然ゴムを用いることができ、変性天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム、水素化天然ゴム等が挙げられる。
ジエン系合成ゴムとしては、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。
これらの中では、ゴム組成物のムーニー粘度を低減し、加工性を向上させる観点から、天然ゴム、変性天然ゴム、IR、BR、SBR、及びNBRから選ばれる1種以上が好ましく、BR、SBR、天然ゴムから選ばれる1種以上がより好ましく、天然ゴムが更に好ましい。BR又はSBRと天然ゴムとを併用してもよい。
共重合体ゴムは、ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよいが、ゴム組成物のムーニー粘度を低減し、加工性を向上させる観点から、ランダム共重合体が好ましい。
未架橋ゴム成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
(無機充填剤)
本発明のゴム組成物は、得られるゴム成形体の強度等の物性を向上させる観点から、
無機充填剤を含むことが好ましい。無機充填剤としては、シリカ及びカーボンブラックが好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
【0030】
シリカとしては、特に制限はなく、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカを用いることができる。これらの中では、含水ケイ酸を主成分とする湿式法シリカが好ましい。湿式法シリカには、沈殿法シリカ、ゲル法シリカ、ゾルゲル法シリカがあるが、沈殿法シリカがより好ましい。
シリカのBET比表面積(ISO 5794/1に準拠して測定)は、ゴム組成物の加工性を向上させる観点から、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上、更に好ましくは150m2/g以上であり、そして、好ましくは350m2/g以下、より好ましくは300m2/g以下、更に好ましくは250m2/g以下である。
シリカの平均二次粒子径は、ゴム組成物の加工性を向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは18μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは50μm以下である。
【0031】
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEF、GPF、SRF等のグレードのカーボンブラック等の他、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボンとシリカのデュアル・フェイズ・フィラー等を用いることができる。これらの中では、SAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、及びFEFグレードのカーボンブラックから選ばれる1種以上が好ましく、HAFグレードのカーボンブラックがより好ましい。
カーボンブラックのDBP吸収量(ASTM D2414-65Tに準拠して測定)は、好ましくは70cm3/100g以上、より好ましくは80cm3/100g以上、更に好ましくは90cm3/100g以上である。
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2AS、JIS K 6217-2:2017に準拠して測定)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは60m2/g以上、更に好ましくは70m2/g以上である。
【0032】
本発明においては、無機充填剤として、更に必要に応じて、アルミナ、炭酸カルシウム、クレー、タルク、ゼオライト、珪藻土等を用いることができる。
【0033】
(硫黄)
本発明のゴム組成物は、加硫してゴム成形体とするために硫黄を含有することが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。
硫黄は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
(その他の成分)
本発明のゴム組成物は、上記成分の他、本発明の目的を損なわない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種の添加剤、例えば、老化防止剤、スコーチ防止剤、軟化剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、加硫剤、加硫促進剤等を含有することができる。
【0035】
(各成分の含有量)
本発明のゴム組成物において、改質架橋ゴム粒子の含有量は、ムーニー粘度を低減し、加工性を向上させる観点から、未架橋ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、更に好ましくは4質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。
【0036】
本発明のゴム組成物において、未架橋ゴム成分の含有量は、ムーニー粘度を低減し、加工性を向上させる観点から、ゴム組成物中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0037】
本発明のゴム組成物において、無機充填剤の含有量は、得られるゴム成形体の強度等の物性を向上させる観点から、未架橋ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは35質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、そして、好ましくは70質量部以下、より好ましくは65質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。
【0038】
硫黄の含有量は、未加硫のゴム組成物を十分に加硫させる観点、及びムーニー粘度を低減し、加工性を向上させる観点から、未架橋ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上、そして、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0039】
[ゴム成形体]
本発明におけるゴム成形体は、上述の本発明のゴム組成物を加硫したものである。加硫方法としては、公知の方法で行うことができ、具体的には、後述のゴム成形体の製造方法により、加硫を行うことができる。
本発明において、ゴム成形体中に含まれる、改質架橋ゴム粒子及び無機充填剤の含有量は、上述のゴム組成物の場合と同様である。また、未架橋ゴム成分由来の構成成分の含有量は、上述のゴム組成物の未架橋ゴム成分の含有量と同様である。
本発明におけるゴム成形体は、タイヤ、タイヤのインナーライナー、トレッド、トレッドベース、カーカス、サイドウォール、ビード部分等のタイヤ部材の他、各種のゴムベルト、各種のシール材、免振防振材、靴底等のゴム成形体として好適に用いることができ、好ましくはタイヤ部材及びタイヤ、より好ましくはタイヤとして、好適に用いることができる。
【0040】
[ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物の製造方法は、改質架橋ゴム粒子、加工性向上剤及び未架橋ゴム成分を配合する工程を有し、前記改質架橋ゴム粒子が、架橋ゴム粒子に振動ミルによって剪断応力を加える工程により処理された改質架橋ゴム粒子である。
より具体的には、本発明のゴム組成物の製造方法は、以下の工程1及び2を有する。
工程1:未架橋ゴム成分に対して、改質架橋ゴム粒子、加工性向上剤を含有する混合物を混練してゴム混練物を得る工程。
工程2:工程1で得られたゴム混練物に、硫黄を添加混合し、ゴム組成物を得る工程。
【0041】
(工程1)
工程1では、より具体的には、未架橋ゴム成分に対して、改質架橋ゴム粒子、加工性向上剤、並びに必要に応じて無機充填剤、老化防止剤及びステアリン酸等を含有する混合物を、混練機を用いて混錬することで、ゴム混練物を得ることができる。
混練機としては、例えば、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー等が挙げられる。
混練温度としては、未架橋ゴム成分中において、改質架橋ゴム粒子及び加工性向上剤をより分散、装用させ、得られるゴム組成物のムーニー粘度を低減し、加工性を向上させる観点から、好ましくは140℃以上、より好ましくは143℃以上、更に好ましくは146℃以上、より更に好ましくは148℃以上であり、そして、好ましくは165℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは158℃以下、更に好ましくは155℃以下である。
【0042】
(工程2)
工程2では、工程1で得られたゴム混練物に、硫黄を添加混合することで、本発明のゴム組成物を得ることができる。
硫黄を添加混合する温度は、加硫反応が起きないようにする観点から、好ましくは140℃未満、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは125℃以下、より更に好ましくは120℃以下である。硫黄の他、必要に応じて、酸化亜鉛、加硫促進剤等を添加混合して、未加硫のゴム組成物を得ることができる。
【0043】
[ゴム成形体の製造方法]
本発明におけるゴム成形体の製造方法は、上述のゴム組成物を加硫する工程を有する。 より具体的には、上述のゴム組成物を、公知の方法で成形加工し、加熱又は加熱加圧され、加硫されたゴム成形体とすることができる。該加熱又は加熱加圧の温度条件としては、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上、更に好ましくは140℃以上で、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、更に好ましくは150℃以下である。
【0044】
[タイヤの製造方法]
本発明におけるタイヤの製造方法は、上述のゴム組成物を加硫する工程を有することが好ましい。本発明においてタイヤの製造方法としては、具体的には、本発明のゴム成形体の製造法と同様の方法で製造できる。
本発明において、タイヤに含まれる改質架橋ゴム粒子及び無機充填剤の含有量は、上述のゴム組成物の場合と同様である。また、未架橋ゴム成分由来の構成成分の含有量は、上述のゴム組成物の未架橋ゴム成分の含有量と同様である。
本発明のタイヤの製造方法によって得られるタイヤは、一般車両用のタイヤの他、トラック及びバスや建設車両用のタイヤ等にも好適に用いることができる。特にリサイクルのしやすさの観点から、トレッド部に備えることが好ましい。
【実施例0045】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。各性状値は、次の方法により、測定、評価した。
【0046】
[改質架橋ゴム粒子の作製]
(製造例1)
バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、「FV10型」(振動ロッドミル)、ミル内径284mm、奥行き520mm、容器全容量32.9L)に、架橋ゴム粒子(ゴムチップ(粒子)、株式会社新生ゴム製、「#50」、廃タイヤ由来)を500g投入し、ロッドとして、直径30mm、長さ510mm、断面形状が円形のステンレス製のロッド63本を充填し、振幅8mm、振動数20Hzの条件で3分間処理し、改質架橋ゴム粒子を得た。処理後の温度は50℃であった。
【0047】
(製造例2)
製造例1において、処理時間を15分に変更した以外は、同様の条件で、改質架橋ゴム粒子を得た。
【0048】
[ゴム組成物の作製]
<実施例1~5、参考例1及び比較例1~5>
表2に示す原料成分を準備し、酸化亜鉛、硫黄、加硫促進剤を除く成分を表2に示す配合処方で、バンバリーミキサーを用いて、最高温度150℃で4分間混練し、ゴム混練物を得た。得られたゴム混練物を最高温度150℃で2分30秒間再度混練した。次に、得られたゴム混練物に、酸化亜鉛、硫黄、加硫促進剤を添加し、最高温度110℃で2分間混練して、ゴム組成物(未加硫)を得た。
なお、参考例1は、架橋ゴム粒子及び改質架橋ゴム粒子のいずれも含まない例である。
【0049】
表1及び2に示す各成分の詳細は、以下の通りである。
〔未架橋ゴム成分〕
・NR:天然ゴム:RSS #3
〔ゴム粒子〕
・架橋ゴム粒子:株式会社新生ゴム製、製品名:#50(ゴムチップ粉(粒子)、廃タイヤ由来)
〔加工性向上剤〕
・加工性向上剤1:花王株式会社製、製品名:エキセルVS-95(ステアリン酸モノグリセライド)
・加工性向上剤2:花王株式会社製、製品名:ファーミンDM8098(ジメチルステアリルアミン)
・加工性向上剤3:日本サン石油株式会社製、製品名:サンセン410(ナフテン系プロセスオイル)
〔無機充填剤〕
・カーボンブラック:東海カーボン株式会社製、製品名:シースト3、(HAF、DBP吸収量:101cm3/100g、N2AS:79m2/g)
〔添加剤〕
・老化防止剤:大内新興化学工業株式会社製、製品名:ノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
・ステアリン酸:花王株式会社製、商品名:ルナックS-70V
・酸化亜鉛:富士フイルム和光純薬株式会社製、製品名:酸化亜鉛(一級)
・硫黄:富士フイルム和光純薬株式会社製、製品名:硫黄(粉末、化学用)
・加硫促進剤:大内新興化学工業株式会社製、製品名:ノクセラーCZ-G(スルフェンアミド系加硫促進剤、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0050】
[評価方法]
<ゴム粒子の粒子径分布測定>
JIS Z 8801-1:2019に規定される、目開きが90、150、250、500、1000及び2800μmの試験用篩を、受け皿の上に下から順に重ね合わせた。最上の篩上に試料を入れ、電磁式ふるい振とう機(レッツェ社製、AS200 ベーシック)を用いて、3分間振とうして、試料を分級した。なお、前記の各試験用篩は、飯田製作所社製の実用新案型を用いた。結果を表1に示す。
【0051】
<ゴム粒子の平均粒子径の測定>
前記粒子径分布測定において、各ふるいに残留したゴム粒子の重さを測定してから、各ふるいの目開きのサイズと、該ふるいを通過できなかった粒子(該ふるい上に残留する粒子と、より大きな目開きのふるいに残留した粒子とを合わせたもの)全体に対する質量比(残留百分率)Rを片対数グラフ(横軸:粒子径(対数目盛)、縦軸:残留百分率)にプロットし、R=50%に相当する粒子径を求めて平均粒子径とした。結果を表1に示す。
【0052】
<改質架橋ゴム粒子における膨潤率の比の測定>
(試験片の作成)
架橋ゴム粒子(株式会社新生ゴム製、製品名:#50)並びに製造例1及び2の改質架橋ゴム粒子を、厚さ2mm、11cm×17cmのSUS板で囲まれた枠内に充填し、10MPa、145℃で10分間加熱して、それぞれのシート状成形体を得た。得られたシート状成形体を、JIS K 6251:2017に規定のダンベル状5号形の形状に打ち抜き加工し、膨潤率測定用の試験片を作製した。
(膨潤率及び膨潤率の比の測定)
前記試験片をキシレン100mLに室温(約23℃)で3日間浸漬した。浸漬前の試験片の重量及び浸漬後の試験片の重量を測定し、以下の計算式に基づき、膨潤率を求めた。
膨潤率(%)=(浸漬後の試験片の重量/浸漬前の試験片の重量)×100
求めた膨潤率より、架橋ゴム粒子(すなわち、改質前のゴム粒子)の膨潤率に対する製造例1又は2の改質架橋ゴム粒子の膨潤率の比(改質架橋ゴム粒子の膨潤率/架橋ゴム粒子の膨潤率)を求めた。求めた膨潤率の比を、表1に示す。
【0053】
<ゴム組成物のムーニー粘度の測定>
実施例、参考例及び比較例のゴム組成物(未加硫)について、JIS K 6300-1:2013に基づき、株式会社上島製作所製の「MVR VR-1130」を用い、100℃にてムーニー粘度[ML1+4]を測定した。ムーニー粘度は、参考例1のゴム組成物のムーニー粘度を100とした時の相対値を示した。ムーニー粘度の数値が小さいほど加工性が良好であることを示す。結果を表2に示す。
【0054】
【0055】
表1の結果より、製造例1及び2の改質架橋ゴム粒子は、改質されていない架橋ゴムの粒子よりも平均粒子径が大きくなっていることが確認された。振動ミルによって剪断応力を加える工程により処理されたことにより、架橋ゴム粒子内の架橋点が切断され、架橋点であった硫黄成分は一部が再架橋したため、製造例1及び2の改質架橋ゴム粒子の粒子径が大きくなったと推測される。
また、製造例1及び2の改質架橋ゴム粒子の試験片は、改質される前の架橋ゴム粒子の試験片の膨潤率に対する改質架橋ゴム粒子の試験片の膨潤率の比が低下していることから、振動ミルによる剪断応力を加える工程により、脱架橋されていることが確認された。一方、改質架橋ゴム粒子を加硫せずに145℃で10分間加熱することで、シート状成形体が得られている点から、硫黄架橋結合に存在する硫黄原子は、ある程度の反応性を有する硫黄官能基も存在していると考えられる。
よって、表1より、本発明で用いられる改質架橋ゴム粒子は、振動ミルによって剪断応力を加える工程により処理されたことによって、脱架橋されると共に、硫黄などの架橋剤を加えずとも、再架橋が可能な状態に改質されていることが確認できる。
また、以上より、本発明の改質架橋ゴム粒子を未架橋ゴムと併用してゴム成形体を製造することで、ゴム成分として未架橋ゴムのみを用いる場合に比べて、添加する硫黄量を低減できることが期待される。
【0056】
【0057】
また、表2より、改質架橋ゴム粒子及び加工性向上剤を含む実施例1~5は、改質されていない架橋ゴム粒子を含み、加工性向上剤を含まない比較例1、並びに改質されていない架橋ゴム粒子及び加工性向上剤を含む比較例2及び3と比較して、ムーニー粘度が低減されていることが確認できる。
また、改質架橋ゴム粒子及び加工性向上剤を含む実施例1~5は、改質架橋ゴム粒子を含むものの、架橋性向上剤を含まない比較例4及び5と比較して、ムーニー粘度が低減されていることが確認できる。
したがって、本発明のゴム組成物は、ムーニー粘度が低減され、加工性に優れることが確認できる。