(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163788
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】駆動システム
(51)【国際特許分類】
H02P 25/22 20060101AFI20241115BHJP
H02P 23/06 20160101ALI20241115BHJP
B60L 7/24 20060101ALN20241115BHJP
B60L 9/18 20060101ALN20241115BHJP
B60L 15/20 20060101ALN20241115BHJP
B60L 50/60 20190101ALN20241115BHJP
B60L 58/12 20190101ALN20241115BHJP
【FI】
H02P25/22
H02P23/06
B60L7/24 Z
B60L9/18 P
B60L15/20 Z
B60L50/60
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079669
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】真木 康次
(72)【発明者】
【氏名】奥村 廉
【テーマコード(参考)】
5H125
5H505
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB07
5H125CA01
5H125CB03
5H125EE27
5H125EE42
5H125EE44
5H125FF01
5H505AA19
5H505CC04
5H505CC05
5H505CC09
5H505EE48
5H505HA05
5H505HB01
5H505HB05
5H505LL60
5H505MM13
(57)【要約】
【課題】本発明の実施形態は、コストを抑えつつも信頼性が高く、電気部品の故障に対して冗長化された駆動システムを提供する。
【解決手段】本実施形態に係る駆動システムは、複数の巻線を備える多巻線モータの各巻線にそれぞれ接続される複数のインバータを備える。前記複数のインバータは少なくとも、逆流不可能な第1電力供給源から電力を供給され、前記多巻線モータの第1巻線に接続される第1インバータと、逆流可能な第2電力供給源から電力を供給され、前記多巻線モータの第2巻線に接続される第2インバータとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の巻線を備える多巻線モータの各巻線にそれぞれ接続される複数のインバータを備え、
前記複数のインバータは少なくとも、
逆流不可能な第1電力供給源から電力を供給され、前記多巻線モータの第1巻線に接続される第1インバータと、
逆流可能な第2電力供給源から電力を供給され、前記多巻線モータの第2巻線に接続される第2インバータと、
を備える、駆動システム。
【請求項2】
前記駆動システムは、動作切替部によって切り替えられて動作し、
前記動作切替部は、前記駆動システムを、
前記第1電力供給源、前記第2電力供給源、または前記第1電力供給源と前記第2電力供給源の両方が、前記多巻線モータに電力を供給する第1動作モードと、
前記第1電力供給源が前記多巻線モータに電力を供給し、前記多巻線モータが前記第2電力供給源に電力を供給する第2動作モードと、
のうち少なくとも1つに切り替えて動作させる、請求項1に記載の駆動システム。
【請求項3】
前記第1インバータの高電位側の直流端および前記第1インバータの低電位側の直流端に渡って設けられたブレーキチョッパをさらに備え、
前記動作切替部は、前記駆動システムを、
前記多巻線モータが、前記ブレーキチョッパ、前記第2電力供給源、または前記ブレーキチョッパと前記第2電力供給源の両方に電力を供給する第3動作モードにさらに切り替えて動作させる、請求項2に記載の駆動システム。
【請求項4】
前記第1電力供給源は、前記第1インバータの高電位側の直流端および前記第1インバータの低電位側の直流端に渡って設けられたフィルタコンデンサを備えており、
前記動作切替部は、前記駆動システムを、
前記第2電力供給源が前記多巻線モータに電力を供給し、前記多巻線モータが前記フィルタコンデンサに電力を供給する第4動作モードにさらに切り替えて動作させる、請求項2に記載の駆動システム。
【請求項5】
前記多巻線モータの前記第1巻線および前記第2巻線は、互いに絶縁されている、請求項1に記載の駆動システム。
【請求項6】
前記第1インバータの低電位側の直流端および前記第2インバータの低電位側の直流端が互いに接続されている、請求項1に記載の駆動システム。
【請求項7】
前記多巻線モータの前記第1巻線および前記第2巻線は、それぞれスター結線され、
前記第1巻線の中性点と前記第2巻線の中性点が互いに接続されている、請求項1に記載の駆動システム。
【請求項8】
前記第2電力供給源は、バッテリであり、
前記駆動システムは、制御部によって制御され、
前記制御部は、前記第2電力供給源である前記バッテリの充電率および前記多巻線モータの動作指令に基づいて前記駆動システムの前記第1インバータおよび前記第2インバータの動作を制御する、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の駆動システム。
【請求項9】
前記第1電力供給源は、
前記第1インバータに接続された交流直流変換回路と前記交流直流変換回路に接続された交流電源回路である、または、
前記第1インバータに接続された直流電源回路である、
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータを1つのインバータで駆動する駆動システムには、このインバータが故障した場合は瞬時に故障停止され、故障に対して冗長化されないという問題がある。そこで、従来、2つの巻線を備える2巻線モータを、2つのインバータで駆動する駆動システムが存在する。このような駆動システムとして、例えば、2つのバッテリから電力を供給する駆動システムや、1つのバッテリもしくは交流電源、またはその両方から電力供給を受け、スイッチによって電力供給源を切り替える駆動システムが存在する。
【0003】
しかし、2つのバッテリから電力を供給する駆動システムの場合、高コストのバッテリを2つ用意する必要があり、システムのコストが増加する問題がある。また、1つのバッテリもしくは交流電源、またはその両方から電力供給を受け、スイッチによって電力供給源を切り替える駆動システムの場合、スイッチを多用するため、スイッチ自体の故障や、配線が複雑に接続されることによって、信頼性およびコストの面で問題がある。特に、電力供給源を切り替える一方のスイッチが固着したときは、電力供給源を切り替えるもう一方のスイッチが投入されることで短絡電流が流れ、バッテリの破壊や発火が生じる可能性が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-295720号公報
【特許文献2】特開2013-132197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、コストを抑えつつも信頼性が高く、電気部品の故障に対して冗長化された駆動システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る駆動システムは、複数の巻線を備える多巻線モータの各巻線にそれぞれ接続される複数のインバータを備える。前記複数のインバータは少なくとも、逆流不可能な第1電力供給源から電力を供給され、前記多巻線モータの第1巻線に接続される第1インバータと、逆流可能な第2電力供給源から電力を供給され、前記多巻線モータの第2巻線に接続される第2インバータとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るモータ駆動機構の回路構成を表す図。
【
図2】第1実施形態の変形例に係るモータ駆動機構の回路構成を表す図。
【
図3】第2実施形態に係るモータ駆動機構の回路構成を表す図。
【
図4】第2実施形態の変形例に係るモータ駆動機構の回路構成を表す図。
【
図5】第3実施形態に係るモータ駆動機構の回路構成を表す図。
【
図6】第4実施形態に係る駆動システムの第1動作モードを説明するための図。
【
図7】第4実施形態に係る駆動システムの第2動作モードを説明するための図。
【
図8】第4実施形態に係る駆動システムの第3動作モードを説明するための図。
【
図9】第4実施形態に係る駆動システムの第4動作モードを説明するための図。
【
図10】第5実施形態に係るモータ駆動機構の回路構成を表す図。
【
図11】第6実施形態に係るモータ駆動機構の回路構成を表す図。
【
図12】第6実施形態の変形例に係るモータ駆動機構の回路構成を表す図。
【
図13】第7実施形態に係るモータ駆動機構の回路構成を表す図。
【
図14】第7実施形態の変形例に係るモータ駆動機構の回路構成を表す図。
【
図15】第8実施形態に係るモータ駆動機構の回路構成を表す図。
【
図16】第8実施形態に係る駆動システムの制御ブロック図。
【
図17】第9実施形態に係るモータ駆動機構の回路構成を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。実施形態は、本発明を限定するものではない。また、明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るモータ駆動機構100の回路構成を表す図である。モータ駆動機構100は、駆動システムによってモータを駆動する駆動機構の一例であり、本実施形態では、
図1に示すように、モータ10と、駆動システム1と、電力供給源20,30とを備える。
【0010】
本実施形態では、モータ10は、2つの巻線を備える2巻線モータである。すなわち、モータ10は、第1巻線および第2巻線を備え、第1巻線および第2巻線の少なくとも一方に電力が供給されることにより駆動される。なお、モータ10は、第1巻線および第2巻線の少なくとも一方に電力を回生することも可能である。
【0011】
また、モータ10の第1巻線および第2巻線は、互いに磁気的に結合されており、電磁誘導によって相互に電力を供給することが可能である。一方、モータ10の第1巻線および第2巻線は、互いに電気的に接続されていてもよいし、電気的に絶縁されていてもよい。
【0012】
本実施形態では、モータ10の第1巻線および第2巻線は、いずれも、3相交流電流が流れる3相巻線である。なお、モータ10の第1巻線および第2巻線は、3相巻線であることに限定されず、単相交流電流が流れる単相巻線であってもよいし、4相以上の多相交流電流が流れる多相巻線であってもよい。
【0013】
駆動システム1は、モータ10に電力を供給し、モータ10を駆動する。本実施形態に係る駆動システム1は、
図1に示すように、2つのインバータINV1,INV2を備える。ここで、インバータINV1の交流端A1にはモータ10の第1巻線が接続され、インバータINV2の交流端A2にはモータ10の第2巻線が接続されている。駆動システム1は、モータ10の用途に応じて、例えば、電車、エレベータ、自動車等のモータを駆動する駆動システムとして用いられる。なお、モータ10が電力を回生する場合、駆動システム1は、モータ10から電力を供給される。
【0014】
インバータINV1,INV2は、それぞれ、直流電流と3相交流電流を相互に変換する。より詳しくは、インバータINV1は、
図1に示す高電位側の直流端P1および低電位側の直流端N1に入力された直流電流を3相交流電流に変換して交流端A1から出力したり、交流端A1に入力された3相交流電流を直流電流に変換して高電位側の直流端P1および低電位側の直流端N1から出力したりする。同様に、インバータINV2は、高電位側の直流端P2および低電位側の直流端N2に入力された直流電流を3相交流電流に変換して交流端A2から出力したり、交流端A2に入力された3相交流電流を直流電流に変換して高電位側の直流端P2および低電位側の直流端N2から出力したりする。このように、インバータINV1,INV2は直流電流と3相交流電流を相互に変換して、モータ10に電力を供給したり、モータ10から電力を供給されたりする。
【0015】
なお、モータ10の第1巻線および第2巻線が、単相交流電流が流れる単相巻線、または4相以上の多相交流電流が流れる多相巻線である場合、インバータINV1,INV2は、それぞれ、直流電流と、単相交流電流または多相交流電流とを相互に変換する。
【0016】
また、本実施形態では、インバータINV1,INV2は電圧形インバータである。ただし、インバータINV1,INV2の少なくとも一方が電流形インバータであってもよい。
【0017】
また、本実施形態では、
図1に示すように、インバータINV1の直流端P1,N1と、インバータINV2の直流端P2,N2とは、電気的に絶縁されている。なお、これに限られず、インバータINV1の直流端P1,N1とインバータINV2の直流端P2,N2とは、互いに電気的に接続されていてもよい。例えば、インバータINV1の低電位側の直流端N1とインバータINV2の低電位側の直流端N2が互いに電気的に接続されていてもよい。
【0018】
また、インバータINV1は電力供給源20から電力を供給され、インバータINV2は電力供給源30から電力を供給される。以下、電力供給源20および電力供給源30について詳しく説明する。
【0019】
電力供給源20は、
図1に示すように、インバータINV1の直流端P1,N1に接続され、交流電源21、ダイオード整流器DR、直流リアクトルL、およびフィルタコンデンサC1を備える。
【0020】
交流電源21は、3相交流電流を出力する3相交流電源である。
図1に示すように、交流電源21は、ダイオード整流器DRの交流端Adに接続されている。なお、交流電源21は、3相交流電源に限定されず、単相交流電流を出力する単相交流電源、または多相交流電流を出力する多相交流電源であってもよい。また、交流電源21とダイオード整流器DRの交流端Adとの間に、コンタクタ、ブレーカ、ヒューズなどが設けられてもよい。交流電源21は、交流電源回路の一例である。
【0021】
ダイオード整流器DRは、3相交流電流を直流電流に変換する。
図1に示すように、ダイオード整流器DRは、交流端Adに入力された3相交流電流を直流電流に変換して高電位側の直流端Pdおよび低電位側の直流端Ndから出力する。なお、交流電源21が、単相交流電流を出力する単相交流電源、または多相交流電流を出力する多相交流電源である場合、ダイオード整流器DRは、単相交流電流または多相交流電流を直流電流にそれぞれ変換する。ダイオード整流器DRは、交流直流変換回路の一例である。
【0022】
ただし、ダイオード整流器DRは、インバータINV1,INV2と異なり、電力の流れが一方向である。すなわち、ダイオード整流器DRは、交流端Adに入力された3相交流電流を直流電流に変換して高電位側の直流端Pdおよび低電位側の直流端Ndから出力するが、高電位側の直流端Pdおよび低電位側の直流端Ndに入力された直流電流は3相交流電流に変換せず、ダイオード整流器DRの交流端Adからは電流が出力されない。
【0023】
直流リアクトルLは、ダイオード整流器DRが出力した直流電流やダイオード整流器DRの入力電流に含まれる高調波などのノイズを抑制するためのチョークリアクトルである。
図1に示すように、直流リアクトルLの一端は、ダイオード整流器DRの高電位側の直流端Pdに接続され、直流リアクトルLの他端は、インバータINV1の高電位側の直流端P1に接続されている。
【0024】
フィルタコンデンサC1は、ダイオード整流器DRが出力した直流電流を平滑化するための直流コンデンサである。
図1に示すように、フィルタコンデンサC1は、インバータINV1の高電位側の直流端P1およびインバータINV1の低電位側の直流端N1に渡って設けられている。すなわち、フィルタコンデンサC1の一端は、直流リアクトルLの他端、および、インバータINV1の高電位側の直流端P1に接続され、フィルタコンデンサC1の他端は、ダイオード整流器DRの低電位側の直流端Nd、および、インバータINV1の低電位側の直流端N1に接続されている。フィルタコンデンサC1をこのように設けることにより、インバータINV1の入力電圧を安定化することができる。
【0025】
直流リアクトルLおよびフィルタコンデンサC1によって、本実施形態における第1フィルタ回路が構成される。
【0026】
一方、電力供給源30は、
図1に示すように、インバータINV2の直流端P2,N2に接続され、バッテリ31およびフィルタコンデンサC2を備える。
【0027】
バッテリ31は、直流電流を充電および放電する。
図1に示すように、バッテリ31の高電位端は、インバータINV2の高電位側の直流端P2に接続され、バッテリ31の低電位端は、インバータINV2の低電位側の直流端N2に接続されている。
【0028】
フィルタコンデンサC2は、バッテリ31の高電位端およびバッテリ31の低電位端、すなわち、インバータINV2の高電位側の直流端P2およびインバータINV2の低電位側の直流端N2に渡って設けられている。フィルタコンデンサC2をこのように設けることにより、例えば、バッテリ31が放電する場合にインバータINV2の入力電圧を安定化することができ、バッテリ31を充電する場合にバッテリ31の入力電圧を安定化することができる。また、インバータの直流側から流れるPWM波状の電流をフィルタコンデンサC2によって吸収でき、バッテリ31に流れるPWM波状の電流を軽減できる。フィルタコンデンサC2によって、本実施形態における第2フィルタ回路が構成される。
【0029】
なお、図示しないが、本実施形態に係るモータ駆動機構100は、電力供給源20において、いずれか1か所で接地されてもよい。例えば、ダイオード整流器DRの低電位側の直流端Ndが接地される。一方、電力供給源30は、接地されてもよいし、接地されなくてもよい。また、駆動システム1は、別の接地形態をとることも可能である。例えば、ダイオード整流器DRの高電位側の直流端Pdが接地されてもよい。
【0030】
以上のように構成された電力供給源20は、逆流不可能な電力供給源である。すなわち、電力供給源20は、モータ10に電力を供給するが、モータ10から電力が供給されない電力供給源である。より詳しくは、本実施形態に係る電力供給源20において、交流電源21が出力する電力は、ダイオード整流器DR、直流リアクトルL、フィルタコンデンサC1、およびインバータINV1を介してモータ10の第1巻線に供給される。一方、モータ10の第1巻線が出力する電力は、インバータINV1、フィルタコンデンサC1、および直流リアクトルLを介してダイオード整流器DRの直流端P1,N1まで到達するが、上述したようにダイオード整流器DRは電力の流れが一方向であるため、当該電力はダイオード整流器DRによってブロックされ、交流電源21には供給されない。なお、モータ10の第1巻線が出力する電力とは、例えばモータ10が第1巻線に回生した電力や、電磁誘導によってモータ10の第2巻線から第1巻線へ供給された電力である。
【0031】
一方、以上のように構成された電力供給源30は、逆流可能な電力供給源である。すなわち、電力供給源30は、モータ10に電力を供給し、かつ、モータ10から電力が供給される電力供給源である。より詳しくは、本実施形態に係る電力供給源30において、バッテリ31が出力する電力は、フィルタコンデンサC2およびインバータINV2を介してモータ10の第2巻線に供給される。一方、モータ10の第2巻線が出力する電力は、インバータINV2およびフィルタコンデンサC2を介してバッテリ31に供給され、バッテリ31を充電する。なお、モータ10の第2巻線が出力する電力とは、例えばモータ10が第2巻線に回生した電力や、電磁誘導によってモータ10の第1巻線から第2巻線へ供給された電力である。
【0032】
以上説明した第1実施形態に係る駆動システム1は、電気部品の故障に対して冗長化された駆動システムである。すなわち、本実施形態に係る駆動システム1は、2つの巻線を備えるモータ10を、2つのインバータINV1,INV2で駆動する駆動システムであり、一方のインバータおよび当該インバータに接続された電力供給源に故障が発生しても、他方のインバータおよび当該インバータに接続された電力供給源によってモータ10の運転を継続することができる。例えば、インバータINV1が故障した場合や、交流電源21が停電や故障などにより消失した場合、本実施形態に係る駆動システム1は、インバータINV2およびバッテリ31によって、モータ10の動作を停止させることなく、シームレスに非常電源動作に移ることができる。別の例として、バッテリ31が故障した場合、本実施形態に係る駆動システム1は、図示しないコンタクタ、断路器などによってバッテリ31をモータ10から切り離すことで、インバータINV1および交流電源21によって、モータ10に電力を供給することができる。なお、モータ10、コンタクタ、断路器などの機械部品は、上述した電気部品には含まれないものとする。
【0033】
また、本実施形態に係る駆動システム1によれば、電力供給源20を逆流不可能な電力供給源とすることにより、電力供給源20にダイオード整流器DRのような安価な回路を用いることができる。さらに、電力供給源20の切り離しが一方向でよいため、切り離しのためのスイッチを設ける場合であっても、安価なスイッチを用いることができる。したがって、本実施形態に係る駆動システム1を用いることで、モータ駆動機構100のコストを抑えることができる。
【0034】
また、本実施形態に係る駆動システム1は、運転を継続したままの交換作業、いわゆるホットスワップを実施することができる。例えば
図2に示すように、インバータINV2とモータ10との間にコンタクタCNTを設け、このコンタクタCNTを開放することで、交流電源21からの電力供給でモータ10を動作させつつ、バッテリ31を交換することができる。なお、
図2において、コンタクタCNTに加えて、断路器などを設けてもよい。コンタクタCNTは第1巻線とインバータ入力もしくは整流器入力に挿入し、インバータINV1をホットスワップすることもできる。
【0035】
また、本実施形態に係る駆動システム1を用いて構成されたモータ駆動機構100は、バッテリ31の充放電動作に複数の経路を必要としないシンプルな構成である。また、インバータINV1の直流端P1,N1とインバータINV2の直流端P2,N2とを、電気的に絶縁することができるため、故障部分の切り離しが容易である。このように、本実施形態に係る駆動システム1は、信頼性が高い駆動システムである。
【0036】
また、本実施形態において、電力供給源20は、フィルタコンデンサC1を備えている。駆動システム1の起動時にバッテリ31からフィルタコンデンサC1に充電する、いわゆる初期充電動作を行うことで、交流電源21の電力投入時に発生するラッシュ電流を抑制することができる。
【0037】
また、
図1に示す例では、モータ10が2つの巻線を備える場合について説明したが、本実施形態に係るモータ駆動機構100におけるモータ10は、3つ以上の巻線を備えてもよい。この場合、駆動システム1は、モータ10の巻線の数と同じ数のインバータを備え、モータ10の各巻線に各インバータがそれぞれ接続される。また、モータ駆動機構100は、駆動システム1が備えるインバータの数と同じ数の電力供給源を備え、各電力供給源は、各インバータにそれぞれ接続され、各インバータに電力を供給する。ただし、この場合、各電力供給源のうち、少なくとも1つは逆流不可能な電力供給源とし、少なくとも別の1つは逆流可能な電力供給源とする。2つの巻線を備えるモータ10、および3つ以上の巻線を備えるモータ10は、いずれも多巻線モータの一例である。
【0038】
なお、本実施形態に係る駆動システム1に接続される電力供給源20は、
図1に示すインバータINV1に接続されたダイオード整流器DRと、ダイオード整流器DRに接続された交流電源21との組み合わせに限られない。例えば、電力供給源20は、交流電源21に代えて、ダイオード整流器DRに接続された交流発電機または交流電気鉄道の架線を備えてもよい。なお、電力供給源20が交流電源21とダイオード整流器DRに代えて交流電気鉄道の架線を備える場合、電力供給源20は、さらに当該架線とダイオード整流器DRとの間に設けられた変圧器を備えてもよい。交流発電機および交流電気鉄道の架線は、それぞれ交流電源回路の一例である。
【0039】
(第2実施形態)
また、別の例として、駆動システム1に接続される電力供給源20は、交流電源21およびダイオード整流器DRに代えて、直流電源回路を備えることも可能である。そこで、電力供給源20が、交流電源21およびダイオード整流器DRに代えて、直流電源回路の一例として直流電気鉄道の架線を備える駆動システムについて、第2実施形態として説明する。
図3は、第2実施形態に係るモータ駆動機構100の回路構成を表す図である。以下、本実施形態に係るモータ駆動機構100および駆動システム1について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0040】
図3に示すように、本実施形態に係る電力供給源20は、交流電源21およびダイオード整流器DRに代えて、直流電気鉄道の架線である直流架線22を備える。すなわち、本実施形態に係る電力供給源20は、直流架線22、直流リアクトルL、およびフィルタコンデンサC1を備える。
【0041】
直流架線22は、直流電流を出力する。また、直流架線22は、インバータINV1に接続され、インバータINV1に電力を供給する。より詳しくは、
図3に示すように、直流架線22の高電位端は、直流リアクトルLの一端に接続され、この直流リアクトルLを介してインバータINV1の高電位側の直流端P1に接続されている。直流架線22の低電位端は、インバータINV1の低電位側の直流端N1に接続されている。このように、直流架線22は、ダイオード整流器DRを介さずに、インバータINV1に接続されている。
【0042】
フィルタコンデンサC1は、直流リアクトルLの一端および直流架線22の低電位端、すなわち、インバータINV1の高電位側の直流端P1およびインバータINV1の低電位側の直流端N1に渡って設けられている。
【0043】
以上のように構成された電力供給源20は、逆流不可能な電力供給源である。通常、直流架線22などの電気鉄道の架線には、モータ10の電力を回生することが可能であると考えられている。しかし、回生したエネルギーを消費する他の列車や回生エネルギーを貯蔵する回生電力貯蔵装置が存在することが前提となっている。すなわち、回生したエネルギーを消費する他の列車や回生エネルギーを貯蔵する回生電力貯蔵装置が存在しない場合には、直流架線22は逆流不可能であるとみなされる。
【0044】
したがって、電力供給源20が直流架線22を備える本実施形態に係る駆動システム1は、直流架線22が逆流不可能であるとみなされる状況であっても、運転を継続することができる。
【0045】
なお、電力供給源20が備える直流電源回路は、
図3に示す直流架線22に限られない。例えば、電力供給源20は、直流架線22に代えて、太陽光パネルなどの光電素子、燃料電池、圧電素子、熱電素子などを備えてもよい。太陽光パネルなどの光電素子、燃料電池、圧電素子、および熱電素子は、それぞれ直流電源回路の一例であり、これらのうちいずれを備える電力供給源20も、逆流不可能な電力供給源である。
【0046】
なお、直流電源回路の種類によっては、直流リアクトルLおよび/またはフィルタコンデンサC1を小型化または省略することで、駆動システム1を用いて構成されるモータ駆動機構100のコストを抑えることができる。例えば、直流電源回路として太陽光パネルを用いる場合、直流リアクトルLを省略することができる。
【0047】
また、本実施形態では、電力供給源20にダイオードを設け、駆動システム1の起動時にバッテリ31からフィルタコンデンサC1に充電する、いわゆる初期充電動作を行うことで、直流架線22の電力投入時に発生するラッシュ電流を抑制することができる。このようなダイオードは、例えば
図4に示すダイオードDのように、アノードが直流架線22の高電位端に接続され、カソードが直流リアクトルLの一端に接続されるように設けられる。
【0048】
(第3実施形態)
第1実施形態に係る駆動システム1において、インバータINV1の直流リンクに接続されたブレーキチョッパを備える場合について、第3実施形態として説明する。
図5は、第3実施形態に係るモータ駆動機構100の回路構成を表す図である。以下、本実施形態に係るモータ駆動機構100および駆動システム1について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0049】
図3に示すように、本実施形態に係る駆動システム1は、インバータINV1,INV2に加えて、インバータINV1の高電位側の直流端P1およびインバータINV1の低電位側の直流端N1に渡って設けられたブレーキチョッパBCを備える。
【0050】
ブレーキチョッパBCは、その内部に抵抗を備え、モータ10の第1巻線からインバータINV1を介して供給された電力を吸収して消費する。ブレーキチョッパBCを備えていない場合、モータ10から回生電力を吸収しなければならないアプリケーションにおいて、バッテリ31側に故障が発生すると、駆動システム1の冗長性が失われるおそれがある。例えば、モータ10が、力行と、回生ブレーキなどによる電力の回生とを繰り替えすアプリケーションにおいて、バッテリ31側の系統であるバッテリ31、フィルタコンデンサC2、およびインバータINV2のうち少なくとも1つに故障が発生した場合、駆動システム1を停止しなければならず、冗長性が失われることとなる。そこで、このような場合に、モータ10の回生電力を一時的にブレーキチョッパBCに消費させることにより、駆動システム1の冗長性を維持することができる。
【0051】
なお、上述した第1実施形態における電力供給源20と同様に、
図5に示す本実施形態における電力供給源20は、交流電源21に代えて、交流発電機、または交流電気鉄道の架線を備えることが可能である。あるいは、第2実施形態における電力供給源20と同様に、本実施形態における電力供給源20は、交流電源21およびダイオード整流器DRに代えて、直流電気鉄道の架線、太陽光パネルなどの光電素子、燃料電池、圧電素子、熱電素子などを備えてもよい。
【0052】
(第4実施形態)
第1乃至第3実施形態に係る駆動システム1の動作モードについて、第4実施形態として説明する。本実施形態に係る駆動システム1は、動作モードとして、第1乃至第4動作モードを備える。
図6は、本実施形態に係る駆動システム1の第1動作モードを説明するための図である。
図7は、本実施形態に係る駆動システムの第2動作モードを説明するための図である。
図8は、本実施形態に係る駆動システムの第3動作モードを説明するための図である。
図9は、本実施形態に係る駆動システムの第4動作モードを説明するための図である。以下、本実施形態に係るモータ駆動機構100および駆動システム1について、第1乃至第3実施形態との相違点を中心に説明する。
【0053】
図6乃至
図9に示すように、本実施形態に係るモータ駆動機構100は、駆動システム1の動作モードを切り替える動作切替部40をさらに備える。動作切替部40は、駆動システム1を、第1動作モードと、第2動作モードと、第3動作モードと、第4動作モードとのうち少なくとも1つに切り替えて動作させる。本実施形態では、動作切替部40は、駆動システム1が備えるインバータINV1,INV2に接続され、インバータINV1,INV2の動作を切り替えることで、駆動システム1の動作モードを切り替える。動作切替部40の構成は任意であるが、例えば、ベクトル制御のための制御回路や、論理回路、またはボタンなどにより入力操作を受け付ける入力回路によって構成される。あるいは、後述する制御部50が動作切替部40の機能を実現するようにしてもよい。
【0054】
以下、本実施形態に係る駆動システム1の第1乃至第4動作モードについて説明する。
【0055】
第1動作モードは、
図6に示すように、交流電源21、バッテリ31、または交流電源21とバッテリ31の両方が、モータ10に電力を供給する動作モードである。ここで、交流電源21がモータ10に電力を供給するとは、交流電源21がダイオード整流器DR、直流リアクトルL、およびフィルタコンデンサC1を介してインバータINV1に電力を供給し、インバータINV1がモータ10の第1巻線に電力を供給することを意味する。バッテリ31がモータ10に電力を供給するとは、バッテリ31がフィルタコンデンサC2を介してインバータINV2に電力を供給し、インバータINV2がモータ10の第2巻線に電力を供給することを意味する。第1動作モードにおいて、モータ10は力行される。
【0056】
第2動作モードは、
図7に示すように、交流電源21がモータ10に電力を供給し、モータ10がバッテリ31に電力を供給する動作モードである。より詳しくは、第2動作モードでは、交流電源21がモータ10の第1巻線に電力を供給し、この電力が電磁誘導によってモータ10の第2巻線に供給され、モータ10の第2巻線からインバータINV2に交流電流が流れ、この交流電流がインバータINV2によって直流電流へと変換された後にバッテリ31に充電される。
【0057】
効率を無視すれば、第2動作モードにおいて、モータ10には、交流電源21からモータ10への供給電力から、モータ10からバッテリ31への供給電力を差し引いた電力が供給される。また、差し引きの供給電力が負である場合、すなわち、交流電源21からモータ10への供給電力よりも、モータ10からバッテリ31への供給電力が多い場合、バッテリ31には、モータ10からの回生電力の他に、交流電源21から供給される電力が充電される。
【0058】
第3動作モードは、
図8に示すように、モータ10が、ブレーキチョッパBC、バッテリ31、またはブレーキチョッパBCとバッテリ31の両方に電力を供給する動作モードである。ここで、モータ10がブレーキチョッパBCに電力を供給するとは、モータ10の第1巻線からインバータINV1に交流電流が流れ、この交流電流がインバータINV1によって直流電流へと変換された後にブレーキチョッパBCにおいて消費されることを意味する。第3動作モードにおいて、モータ10は電力を回生する回生状態である。
【0059】
第4動作モードは、
図9に示すように、バッテリ31がモータ10に電力を供給し、モータ10がフィルタコンデンサC1に電力を供給する動作モードである。より詳しくは、第4動作モードでは、バッテリ31がモータ10の第2巻線に電力を供給し、この電力が電磁誘導によってモータ10の第1巻線に供給され、モータ10の第1巻線からインバータINV1に交流電流が流れ、この交流電流がインバータINV1によって直流電流へと変換された後にフィルタコンデンサC1に充電される。
【0060】
第4動作モードは、例えば、駆動システム1の起動時にフィルタコンデンサC1を充電する、いわゆる初期充電動作を行うために用いられる。既に説明したように、初期充電動作を行うことにより、交流電源21の電力投入時に発生するラッシュ電流を抑制することができる。本実施形態に係るモータ駆動機構100においては、第4動作モードの存在により、初期充電動作を行うための回路である初期充電回路を別途設ける必要がなくなるため、モータ駆動機構100のコストを抑えることができる。
【0061】
なお、
図6乃至
図9では、電力供給源20が交流電源21およびダイオード整流器DRを備える場合を示したが、上述した駆動システム1の各動作モードは、
図3に示す電力供給源20が直流架線22を備える場合についても同様である。
【0062】
また、
図6、
図7、および
図9ではブレーキチョッパBCが図示されておらず、
図8ではブレーキチョッパBCが図示されている。これは、駆動システム1が
図6に係る第1動作モード、
図7に係る第2動作モード、または
図9に係る第4動作モードで動作する場合には、ブレーキチョッパBCの有無は任意であることを表し、駆動システム1が
図8に係る第3動作モードで動作する場合には、ブレーキチョッパBCが必要であることを表している。すなわち、ブレーキチョッパBCを備えていない第1実施形態に係る駆動システム1に動作切替部40を接続した場合、駆動システム1は、第1動作モード、第2動作モード、および第4動作モードとして動作することができるが、第3動作モードとして動作することはできない。
【0063】
なお、駆動システム1を第1動作モードまたは第2動作モードで動作させる場合、フィルタコンデンサC1は設けられていなくてもよい。
【0064】
以上説明したように、第4実施形態に係る駆動システム1によれば、動作切替部40によって駆動システム1の動作モードを切り替えることにより、駆動システム1を様々な状況で適切に動作させることができる。
【0065】
また、
図6乃至
図9に示すように、本実施形態に係る駆動システム1の動作モードを切り替えるためには別途のスイッチを設ける必要が無い。これにより、例えば、動作モードを切り替えた際にスイッチが固着することで、交流電源21とバッテリ31が短絡するリスクを回避することができ、より信頼性の高い駆動システム1を提供することができる。
【0066】
(第5実施形態)
第1実施形態に係るモータ駆動機構100におけるモータ10の具体例について、第5実施形態として説明する。
図10は、第5実施形態に係るモータ駆動機構100の回路構成を表す図である。以下、本実施形態に係るモータ駆動機構100および駆動システム1について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、以下の内容は、第2実施形態および第3実施形態に係るモータ駆動機構100におけるモータ10にも適用可能である。
【0067】
図10に示すように、本実施形態では、モータ10は、いずれも3相巻線である第1巻線11と、第2巻線12とを備える。また、第1巻線11および第2巻線12は、いずれもスター結線されている。なお、第1巻線11および第2巻線12は、3相巻線以外の巻線、例えば単相巻線や4相以上の多相巻線であってもよい。また、第1巻線11および第2巻線12は、スター結線に限定されず、デルタ結線されていてもよい。
【0068】
本実施形態に係るモータ駆動機構100において、モータ10の第1巻線11および第2巻線12は、互いに電気的に絶縁されている。また、インバータINV1とインバータINV2は、互いに電気的に絶縁されている。よって、本実施形態では、電力供給源20およびインバータINV1によって構成される第1系統と、電力供給源30およびインバータINV2によって構成される第2系統とが電気的に絶縁されている。
【0069】
以上説明したように、第5実施形態に係るモータ駆動機構100では、上述した第1系統と第2系統が電気的に絶縁されているため、一方の系統に故障が発生した場合であっても、その影響が他方の系統に波及しない。このため、駆動システム1として、信頼性の高い駆動システムを提供することができる。
【0070】
(第6実施形態)
第5実施形態に係る駆動システム1において、インバータINV1,INV2の直流電位を同一電位にした場合について、第6実施形態として説明する。
図11は、第6実施形態に係るモータ駆動機構100の回路構成を表す図である。以下、本実施形態に係るモータ駆動機構100および駆動システム1について、第5実施形態との相違点を中心に説明する。
【0071】
図11に示すように、本実施形態では、インバータINV1の低電位側の直流端N1およびインバータINV2の低電位側の直流端N2が互いに接続され、上述した第1系統および第2系統が同一電位となっている。すなわち、第1系統におけるインバータINV1の低電位側の直流端N1と、第2系統におけるインバータINV2の低電位側の直流端N2とが同一電位となっている。
【0072】
したがって、第6実施形態に係るモータ駆動機構100によれば、第1系統および第2系統が電気的に接続されているため、一方の系統に故障が発生した場合にその影響が他方の系統に波及するリスクが増加するものの、インバータINV1,INV2を制御する制御信号を共通の電位にすることができる。そのため、制御回路の設計が簡素化され、モータ駆動機構100のコストを抑えることができる。また、モータ10とバッテリ31に高い絶縁耐圧が要求されなくなるため、モータ駆動機構100のコストをより抑えることができる。
【0073】
なお、インバータINV1,INV2の直流電位を同一電位にする構成は、
図11に示す例に限られない。例えば、
図12に示すように、インバータINV1の高電位側の直流端P1およびインバータINV2の高電位側の直流端P2が互いに接続されてもよい。
【0074】
(第7実施形態)
第6実施形態に係るモータ駆動機構100において、モータ10の各巻線をスター結線とし、それらの中性点電位同士を短絡した場合について、第7実施形態として説明する。
図13は、第7実施形態に係る駆動システム1の回路構成を表す図である。以下、本実施形態に係るモータ駆動機構100および駆動システム1について、第6実施形態との相違点を中心に説明する。
【0075】
図13に示すように、本実施形態では、モータ10の第1巻線11および第2巻線12は、それぞれスター結線され、第1巻線11の中性点11nと第2巻線12の中性点12nが互いに電気的に接続されている。すなわち、本実施形態では、インバータINV1の低電位側の直流端N1と、インバータINV2の低電位側の直流端N2とが互いに電気的に接続されることに加えて、モータ10の第1巻線11と第2巻線12とが互いに電気的に接続されている。これにより、インバータINV1,INV2およびモータ10によって、一つの閉回路が形成され、第1系統および第2系統は、インバータINV1,INV2の零相電圧を使用して、互いに電力を融通することができる。
【0076】
したがって、第7実施形態に係るモータ駆動機構100によれば、上述した第1系統および第2系統のうち、一方の系統の電気部品に故障が発生した場合、その影響が他方の系統に波及するリスクがより増加するものの、インバータINV1,INV2の零相電圧を使用して、各系統が互いに電力を融通することができ、制御性を向上させることができる。
【0077】
なお、
図14に示すように、インバータINV1,INV2の低電位側の直流端N1,N2を互いに接続していない第5実施形態に係る駆動システム1においても、モータ10の各巻線をスター結線とし、それらの中性点電位同士を短絡することが可能である。
【0078】
(第8実施形態)
第1実施形態に係る駆動システム1の制御について、第8実施形態として説明する。
図15は、第8実施形態に係るモータ駆動機構100の回路構成を表す図である。
図16は、第8実施形態に係る駆動システム1の制御ブロック図である。以下、本実施形態に係るモータ駆動機構100および駆動システム1について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0079】
本実施形態に係るモータ駆動機構100は、
図15に示すように、駆動システム1を制御する制御部50をさらに備える。制御部50は、例えばマイコン、DSPなどの制御回路である。本実施形態では、制御部50は、インバータINV1およびインバータINV2に接続され、バッテリ31の充電率およびモータ10の動作指令に基づいてインバータINV1およびインバータINV2の動作を制御する。ここで、モータ10の動作指令は、モータ10の速度指令、トルク指令等である。
【0080】
また、
図15に示すように、本実施形態では、電力供給源20およびインバータINV1によって主系統61が構成され、電力供給源30およびインバータINV2によって副系統62が構成される。なお、主系統61は上述の第1系統と同様であり、副系統62は上述の第2系統と同様である。
【0081】
以下、制御部50による駆動システム1の制御の一例について、
図16に示す制御ブロック図を用いて説明する。なお、
図16における「主系統」および「副系統」は、それぞれ、
図15における主系統61および副系統62のことである。
【0082】
図16に示すように、制御部50には、まず、バッテリ31の充電率およびモータ10の動作指令が入力される。なお、
図16において、バッテリ31の充電率は、充電率を意味するState Of Chargeの省略形である「SOC」と表され、モータ10の動作指令は、「モータ指令」と表されている。バッテリ31の充電率は、例えばバッテリ31の電圧を表す信号である。モータ10の動作指令は、例えばモータ10の速度指令や、トルク指令等を表す信号である。なお、モータ10の動作指令は、制御部50が生成した信号であってもよいし、制御部50とは別の制御部などから制御部50に入力された信号であってもよい。
【0083】
次に、制御部50は、バッテリ31の充電率およびモータ10の動作指令に基づいて、駆動システム1の動作モードを選択し、指令値を生成する。なお、本実施形態に係る駆動システム1は、ブレーキチョッパBCを備えていないため、駆動システム1の動作モードは、上述した第4実施形態における第1動作モード、第2動作モード、および第4動作モードである。よって、制御部50は、第1動作モード、第2動作モード、および第4動作モードのうち、いずれか1つを選択する。また、本実施形態では、制御部50は、指令値として主系統61の電流指令値および副系統62の電流指令値を生成する。
【0084】
次に、
図16に示すように、制御部50は、主系統61の電流指令値および副系統62の電流指令値に基づいて、電流制御、および、モータ10の誘起電圧によるフィードフォワード制御を経て、主系統61の電圧指令値および副系統62の電圧指令値を生成する。なお、
図16において、モータ10の誘起電圧によるフィードフォワード制御は、「誘起電圧FF」と表されている。そして、制御部50は、主系統61の電圧指令値および副系統62の電圧指令値に基づいて、例えばPWM制御を行うことでインバータINV1,INV2をそれぞれ制御する。すなわち、
図15に示すように、制御部50は、インバータINV1,INV2を制御する制御信号を出力し、これらの制御信号をインバータINV1,INV2にそれぞれ入力して、インバータINV1,INV2の動作を制御する。
【0085】
以上説明したように、本実施形態に係る駆動システム1は、制御部50に接続され、制御部50は、バッテリ31の充電率およびモータ10の動作指令に基づいて、駆動システム1が備えるインバータINV1,INV2の動作を制御する。これにより、バッテリ31の充電率に応じて、モータ10の動作を適切に制御することができる。
【0086】
なお、バッテリ31の充電率およびモータ10の動作指令に基づいてインバータINV1,INV2を制御する方法は、
図16に示す制御ブロックに限定されない。例えば、
図16に示す制御ブロックにおいて、モータ10の誘起電圧によるフィードフォワード制御を省略してもよい。
【0087】
また、制御部50には、バッテリ31の充電率およびモータ10の動作指令以外の信号を、バッテリ31の充電率およびモータ10の動作指令のうち少なくともいずれかに代えて、またはバッテリ31の充電率およびモータ10の動作指令とともに入力してもよい。バッテリ31の充電率およびモータ10の動作指令以外の信号の例には、バッテリ31の温度を表す信号などが存在する。
【0088】
また、以上の説明では、第1実施形態に係る駆動システム1の制御について説明したが、第2実施形態または第3実施形態に係る駆動システム1の制御についても同様である。ただし、既に説明したように、ブレーキチョッパBCを備える第3実施形態に係る駆動システム1は、
図8に示す第3動作モードでも動作することができる。よって、第3実施形態に係る駆動システム1を制御部50によって制御する場合、制御部50は、動作モードの選択において、第4実施形態における第1乃至第4動作モードのいずれか1つを選択することができる。
【0089】
(第9実施形態)
第3実施形態に係る駆動システム1において、冗長性を向上させるための構成の一例について、第9実施形態として説明する。
図17は、第9実施形態に係るモータ駆動機構100の回路構成を表す図である。以下、本実施形態に係るモータ駆動機構100および駆動システム1について、第3実施形態との相違点を中心に説明する。なお、
図17における第3実施形態に係る駆動システム1に代えて、第1実施形態または第2実施形態に係る駆動システム1を用いてもよい。
【0090】
本実施形態に係るモータ駆動機構100は、
図17に示すように、モータ10と、駆動システム1と、電力供給源20,30と、スイッチ24,34と、制御部50とを備える。
【0091】
本実施形態に係る駆動システム1は、第3実施形態に係る駆動システム1と同様に、インバータINV1,INV2と、ブレーキチョッパBCとを備える。
【0092】
インバータINV1の交流端A1には、スイッチ24の一端が接続され、このスイッチ24を介してモータ10の第1巻線が接続されている。インバータINV2の交流端A2には、スイッチ34の一端が接続され、このスイッチ34を介してモータ10の第2巻線が接続されている。
【0093】
また、インバータINV1は逆流不可能な電力供給源20から電力が供給され、インバータINV2は逆流可能な電力供給源30から電力が供給される。
【0094】
電力供給源20は、
図17に示すように、交流電源21、スイッチ23、ダイオード整流器DR、直流リアクトルL、およびフィルタコンデンサC1を備える。交流電源21には、スイッチ23の一端が接続され、スイッチ23の他端は、ダイオード整流器DRの交流端Adに接続されている。すなわち、交流電源21は、スイッチ23を介してダイオード整流器DRに接続されている。
【0095】
スイッチ23は、
図17に示すように、交流電源21とダイオード整流器DRとの間に設けられ、交流電源21からダイオード整流器DRを切り離す。例えば、系統擾乱による異常電圧が継続した場合や、スイッチ23以降の回路、すなわち、ダイオード整流器DR、直流リアクトルL、フィルタコンデンサC1、駆動システム1、および電力供給源30において故障が発生した場合に、スイッチ23を開放することで、交流電源21からダイオード整流器DRを切り離す。これにより、例えば、交流電源21がモータ駆動機構100全体の故障を引き起こしたり、モータ駆動機構100のうち交流電源21以外の部分が交流電源21の異常を発生させたりすることを抑制することができる。
【0096】
なお、
図17では、スイッチ23としてコンタクタが設けられているが、スイッチ23は、ブレーカ、パワーリレー等であってもよい。スイッチ23は、切り離し回路の一例である。これらは、後述のスイッチ24,32,33,34についても同様である。
【0097】
電力供給源30は、バッテリ31、スイッチ32,33、およびフィルタコンデンサC2を備える。バッテリ31の高電位端には、スイッチ32の一端が接続され、スイッチ32の他端は、インバータINV2の高電位側の直流端P2に接続されている。バッテリ31の低電位端には、スイッチ33の一端が接続され、スイッチ33の他端は、インバータINV2の低電位側の直流端N2に接続されている。すなわち、バッテリ31は、スイッチ32,33を介してインバータINV2に接続されている。
【0098】
スイッチ32は、
図17に示すように、バッテリ31の高電位端と、フィルタコンデンサC2およびインバータINV2との間に設けられ、バッテリ31の高電位端からフィルタコンデンサC2およびインバータINV2を切り離す。本実施形態では、フィルタコンデンサC2および/またはインバータINV2に故障が発生した場合や、バッテリ31が故障した場合に、スイッチ32を開放することで、バッテリ31の高電位端からフィルタコンデンサC2およびインバータINV2を切り離す。
【0099】
同様に、スイッチ33は、
図17に示すように、バッテリ31の低電位端とフィルタコンデンサC2およびインバータINV2との間に設けられ、バッテリ31の低電位端からフィルタコンデンサC2およびインバータINV2を切り離す。本実施形態では、フィルタコンデンサC2および/またはインバータINV2に故障が発生した場合や、バッテリ31が故障した場合に、スイッチ33を開放することで、バッテリ31の低電位端からフィルタコンデンサC2およびインバータINV2を切り離す。
【0100】
バッテリ31が故障した場合や、フィルタコンデンサC2および/またはインバータINV2に故障が発生した場合にスイッチ32,33を開放することにより、バッテリ31の重大なインシデントである発火、発煙、爆発などを抑制することができる。駆動システム1を用いて構成されるモータ駆動機構100において、このような重大なインシデントが生じるリスクが大きいと判断される場合は、スイッチ32,33の両方を開放する。一方、モータ駆動機構100において、重大なインシデントが生じるリスクが小さいと判断される場合は、スイッチ32,33のいずれか一方を開放してもよいし、スイッチ32,33のいずれか一方を配線に置き換えてもよい。
【0101】
スイッチ24は、
図17に示すように、インバータINV1とモータ10の第1巻線との間に設けられ、モータ10からインバータINV1を切り離す。本実施形態では、電力供給源20およびインバータINV1に故障が発生した場合や、モータ10が故障した場合に、スイッチ24を開放することで、モータ10からインバータINV1を切り離す。これにより、例えば、インバータINV1が故障した場合にモータ10への影響を切り離すことや、インバータINV1をモータ10の故障から保護することができる。
【0102】
スイッチ34は、
図17に示すように、インバータINV2とモータ10の第2巻線との間に設けられ、モータ10からインバータINV2を切り離す。本実施形態では、電力供給源30およびインバータINV2に故障が発生した場合や、モータ10が故障した場合に、スイッチ34を開放することで、モータ10からインバータINV2を切り離す。これにより、例えばインバータINV2が故障した場合にモータ10への影響を切り離すことや、インバータINV2をモータ10の故障から保護することができる。
【0103】
本実施形態では、制御部50は、
図17に示すように、インバータINV1,INV2およびスイッチ23,24,32,33,34を制御する。制御部50によるインバータINV1,INV2の制御は、例えば
図16に示す制御ブロックによって行われる。制御部50によるスイッチ23,24,32,33,34の制御は、例えばバッテリ31の両端電圧や、バッテリ31の温度に基づいて行われる。
【0104】
なお、スイッチ23,24,32,33,34のうち少なくとも1つが、制御部50とは別の図示しない制御部によって制御されてもよい。
【0105】
以上説明したように、第9実施形態に係る駆動システム1によれば、電気部品に故障が発生した場合に、スイッチ23,24,32,33,34を適宜切り離すことにより、故障の影響を最小限に抑制することができる。そのため、第3実施形態に係る駆動システム1の冗長性をより向上させることができる。
【0106】
また、本実施形態に係る駆動システム1によれば、モータ10が故障した場合にも、スイッチ24,34を開放することで、電気部品を保護することができる。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1 駆動システム
10 モータ
11 第1巻線
12 第2巻線
11n,12n 中性点
21 交流電源
22 直流架線
23,24,32,33,34 スイッチ
31 バッテリ
40 動作切替部
50 制御部
100 モータ駆動機構
BC ブレーキチョッパ
C1,C2 フィルタコンデンサ
DR ダイオード整流器
INV1,INV2 インバータ
L 直流リアクトル