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2024-163792プラズマ加熱装置およびプラズマ加熱方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163792
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】プラズマ加熱装置およびプラズマ加熱方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/26 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
H05H1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079673
(22)【出願日】2023-05-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト/高炉を用いた水素還元技術の開発/外部水素や高炉排ガスに含まれるCO2を活用した低炭素化技術等の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】梅本 紘成
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA06
2G084AA16
2G084BB03
2G084BB31
2G084DD18
2G084FF16
2G084FF33
2G084GG02
2G084GG07
2G084GG18
2G084GG24
(57)【要約】
【課題】本発明は、レイアウトに制約があるような狭隘空間でもプラズマ加熱装置を設置できるようにすることを課題とし、そのようなプラズマ加熱装置や加熱方法を提供することを目的とする。
【解決手段】プラズマトーチ1の前部から被加熱物の存在する配管5までをダクト3で接続し、ダクト3内の外気を遮断した密閉空にプラズマジェット2を流すことで、外気に接触せず被加熱物を加熱できる。さらに、ダクト保護の観点から、内部に冷却ガスを吹き出し、ダクト3内面に冷却ガス層14を形成し、ダクトの内面をジェット2の高熱から保護する。プラズマジェット噴射口11周囲から吹き出す第1の冷却ガス12と、ダクト3の軸方向途中から吹き出す第2の冷却ガス16により、ダクト3の内面全体にわたり冷却ガス層14を形成することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管または容器の中の被加熱物を加熱するプラズマ加熱装置であって、
プラズマジェットを噴射するプラズマトーチと、
前記プラズマトーチと前記配管または前記容器との間に配置され、前記プラズマジェットが流れるダクトを有することを特徴とするプラズマ加熱装置。
【請求項2】
前記プラズマトーチの周囲には、前記ダクトの内面に沿うように第1の冷却ガスを吹き出す第1冷却ガス吹き出し口が設けられている、請求項1に記載のプラズマ加熱装置。
【請求項3】
前記ダクトの内面には、前記ダクトの内部に向けて第2の冷却ガスを吹き出す第2冷却ガス吹き出し口が設けられている、請求項2に記載のプラズマ加熱装置。
【請求項4】
前記第2冷却ガス吹き出し口が前記ダクトの軸方向に複数個設置されている、請求項3に記載のプラズマ加熱装置。
【請求項5】
前記第2冷却ガス吹き出し口は、前記プラズマトーチが設けられている側と反対側の前記ダクトの内面に設けられている、請求項4に記載のプラズマ加熱装置。
【請求項6】
配管または容器の中の被加熱物を加熱するプラズマ加熱方法であって、
プラズマジェットを噴射するプラズマトーチと前記配管または前記容器との間に配置されたダクト内に前記プラズマジェットを噴射させて、前記被加熱物を加熱することを特徴とするプラズマ加熱方法。
【請求項7】
前記プラズマトーチの周囲から、前記ダクトの内面に沿うように第1の冷却ガスを吹き出す、請求項6に記載のプラズマ加熱方法。
【請求項8】
前記ダクトの内面から、前記ダクトの内部に向けて第2の冷却ガスを吹き出す、請求項7に記載のプラズマ加熱方法。
【請求項9】
前記ダクトの軸方向の複数個所から前記第2の冷却ガスを吹き出す、請求項8に記載のプラズマ加熱方法。
【請求項10】
前記プラズマトーチが設けられている側と反対側の前記ダクトの内面から、前記ダクトの内部に向けて前記第2の冷却ガスを吹き出す、請求項8に記載のプラズマ加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマトーチを利用した加熱装置(プラズマ加熱装置)およびプラズマ加熱装置を用いた加熱方法(プラズマ加熱方法)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ加熱は、プラズマトーチ(以下、単にトーチと呼ぶ場合がある。)から発生するプラズマジェット(以下、単にジェットと呼ぶ場合がある。)により、被加熱物を加熱するものである。プラズマトーチは、トーチ内のカソードとアノードの間にプラズマ作動ガスを流し、カソードとアノード間に高電圧を印加することにより作動ガスをプラズマ化し、プラズマジェットを噴射する。プラズマ加熱は、このプラズマジェットの輻射熱で被加熱物を加熱するものである。プラズマ温度は2000℃~5000℃程度の超高温となるため、例えば1000℃以下の高温気体の昇温方法として提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に鉄鋼業における高炉への適用が提案されている。高炉は鉄鉱石を高温還元して溶けた鉄(溶銑)を取り出す装置であり、高炉の羽口から1200℃以上の高温空気(熱風とも呼ぶ。)を炉内に吹き込んでいる。その際に吹き込む高温空気は高炉外部の熱風炉で空気を所定の温度まで加熱し、得られた高温空気が、熱風炉と高炉を接続する熱風本管内を通り羽口まで輸送される。特許文献1では、バッチ切り替え式の熱風炉に代えて連続式であるレキュペレータを適用し、レキュペレータで700℃程度まで予熱し、つぎに所定の温度まで加熱するためにプラズマ加熱を利用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-216905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、配管内の高温ガスをプラズマ加熱する場合、プラズマジェットを配管内に噴射するように、その配管の外側にプラズマトーチを設置することになる。その際、プラズマトーチを設置する際に、既存の周辺配管や機器障害物などの既存設備との干渉が問題となり、設置スペースの制約を受ける。例えば、化学プラントや鉄鋼設備のように多くの配管や機器類が配置されている環境では、レイアウトの制約から被加熱ガスが流れる配管に直接プラズマトーチを配置することはできない場合が多い。
【0006】
本発明は、このような問題を解決し、レイアウトの制約があるような狭隘空間でもプラズマ加熱装置を設置できるようにすることを課題とし、そのようなプラズマ加熱装置や加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは課題を達成するため鋭意開発を進め以下の知見を得た。
(ア)
プラズマトーチの大きさや、付属する配管や配線のための必要スペースに比べプラズマジェットの径が小さいことに着目し、トーチ前部から被加熱物の存在する配管や容器までを外気から遮断されたダクトで接続し、ダクト内にプラズマジェットを流すことで、外気に接触せず被加熱物を加熱できることを想起した。例えば、プラズマジェットの径は10~30mm程度のものが多いが、プラズマトーチはその3~10倍の大きさになる。さらに、プラズマトーチにはプラズマ作動ガスや冷却ガス(シュラウトガスとも呼ぶ。)などの配管や、高圧電流配線を配置しなければならない。そのため、プラズマトーチを設置するためには、プラズマジェット径の10~20倍の大きさのスペースが必要になる。そのためプラズマジェットを流すことが可能なダクトでプラズマトーチと配管や容器とを接続することにより、プラズマジェット径の10~20倍の大きさのスペースが確保できない場合であっても、プラズマ加熱装置を配置することができることを見出した。
【0008】
(イ)
プラズマトーチの前部にダクトを設置し、ダクト内にプラズマジェットを噴射した場合、ジェットの熱によりダクトの内面が高温に晒されダメージを受ける。ダクトの内面に耐火物ライニングなどによる保護層を形成したとしても、その保護層が熱によるダメージを受けることも避けられない。そこで、トーチの周囲(ダクトの一方の端)からダクトの内面に沿うように冷却ガスを吹き出し、ダクトの内面に沿うように冷却ガス層を形成させることを想起した。これにより、ダクトの内面に(耐火物の保護層がある場合はその保護層も含めて)ダメージを受けることなく、ダクトの内面をプラズマジェットの高熱から保護することが可能となる。
【0009】
(ウ)
一方、ダクトの全長が長くなると、トーチ周囲から吹き出した冷却ガスがプラズマジェットにより高温化したガスとが混合し、トーチからある程度の距離を過ぎると冷却ガス層が形成されず、ダクトの内面全体を保護できなくなる。トーチ周囲からの冷却ガスの流量や速度を上げ、冷却ガス層が形成される範囲を広くすることも可能であるが、それにも限界がある。さらに、冷却ガス速度を上げるための設備投資も大掛かりなる。
そこで、本発明者らは、プラズマトーチ周囲(ダクトの一端側)から吹き出された冷却ガスのみによって冷却ガス層を形成するのではなく、プラズマトーチ周囲から吹き出された冷却ガスとダクトの内面から吹き出された冷却ガスとによってダクトの内面全体に冷却ガス層を形成することができ、ダクトの内面全体をプラズマジェットの高熱から保護することが可能になることを見出した。
【0010】
ダクトの内面から吹き出される冷却ガスは、ダクトの内面に沿うように吹き出すことが望ましいが、ダクト内の中心軸に向かって吹き出してもよい。ダクト内の中心軸に向かって冷却ガスを吹き出すことによって、冷却ガスはプラズマガス流に乗ってダクトの内面に沿って流れるため、ダクトの内面全体に冷却ガス層を形成することができる。
本発明は上記知見に基づき成されたものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0011】
[1]
配管または容器の中の被加熱物を加熱するプラズマ加熱装置であって、
プラズマジェットを噴射するプラズマトーチと、
前記プラズマトーチと前記配管または前記容器との間に配置され、前記プラズマジェットが流れるダクトを有することを特徴とするプラズマ加熱装置。
[2]
前記プラズマトーチの周囲に、前記ダクトの内面に沿うように第1の冷却ガスを吹き出す第1冷却ガス吹き出し口が設けられている、[1]に記載のプラズマ加熱装置。
[3]
前記ダクトの内面に、前記ダクトの内部に向けて第2の冷却ガスを吹き出す第2冷却ガス吹き出し口が設けられている、[2]に記載のプラズマ加熱装置。
[4]
前記第2冷却ガス吹き出し口が前記ダクトの軸方向に複数個設置されている、[3]に記載のプラズマ加熱装置。
[5]
前記第2冷却ガス吹き出し口は、前記プラズマトーチが設けられている側と反対側の前記ダクトの内面に設けられている、前記[4]に記載のプラズマ加熱装置。
[6]
配管または容器の中の被加熱物を加熱するプラズマ加熱方法であって、
プラズマジェットを噴射するプラズマトーチと前記配管または前記容器との間に配置されたダクト内に前記プラズマジェットを噴射させて、前記被加熱物を加熱することを特徴とするプラズマ加熱方法。
[7]
前記プラズマトーチの周囲から、前記ダクトの内面に沿うように第1の冷却ガスを吹き出す、[6]に記載のプラズマ加熱方法。
[8]
前記ダクトの内面から、前記ダクトの内部に向けて第2の冷却ガスを吹き出す、[7]に記載のプラズマ加熱方法。
[9]
前記ダクトの軸方向の複数個所から前記第2の冷却ガスを吹き出す、[8]に記載のプラズマ加熱方法。
[10]
前記プラズマトーチが設けられている側と反対側の前記ダクトの内面から、前記ダクトの内部に向けて前記第2の冷却ガスを吹き出す、前記[8]に記載のプラズマ加熱方法。
[11]
前記[1]~[5]のいずれか一項に記載のプラズマ加熱装置が、熱風炉から高炉まで接続する熱風管に設置されていることを特徴とする、高炉設備。
【発明の効果】
【0012】
配管または容器の中の被加熱物を加熱する場合に、本発明によれば、レイアウトの制約があるような狭隘空間でもプラズマ加熱装置を設置でき、被加熱物を加熱することができる。
特に、高温の被加熱物をさらに加熱する場合により効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るプラズマ加熱装置の第1の実施形態の一例を示す概念図である。図1(a)はダクトが配管に直接接続している例を示す概念図であり、図1(b)はダクトが熱膨張緩衝用エキスパンションを介して配管に接続している例を示す概念図である。
図2図2は、本発明に係るプラズマ加熱装置の第2の実施形態の一例を示す概念図である。
図3図3は、本発明に係るプラズマ加熱装置の第2の実施形態においてダクト長が長い場合の一例を示す概念図である。
図4図4は、本発明に係るプラズマ加熱装置の第3の実施形態の一例を示す概念図である。
図5図5(a)、(b)は、第3の実施形態における第2の冷却ガス吹き出し口の例を示す概念図である。
図6図6は、実施例における反応炉の熱風経路を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るプラズマ加熱装置やプラズマ加熱方法において、被加熱物は気体、液体、または固体のいずれであってもよく、また被加熱物の組成や形態は特に限定されない。さらに、被加熱物は容器内にあってもよく、また配管内を流動していてもよい。図1~4に本発明に係るプラズマ加熱装置の実施形態の例として、配管内に流れる高温ガスを加熱する場合の概要図を示す。特に断りのない限り、本発明をこれらの図に基づき、配管内を流れる高温ガスを加熱する実施形態を例として説明する。本発明に係る実施形態はこの実施形態に限定されるものではない。
【0015】
[プラズマトーチ]
プラズマトーチ1には、非移行型と移行型(非移送型と移送型とも呼ぶ。)トーチがある。非移行型プラズマトーチは、トーチ内にアノードとカソードの両電極を配置し、両電極間にプラズマ作動ガスを流し、両電極間に高電圧を印加することにより作動ガスをプラズマ化して高温ガスであるプラズマジェットを噴射する。移行型プラズマトーチは、トーチ内にはカソード電極のみ配置し、トーチの外部にある被処理材をアノード電極とし、両電極間に高電圧を印加してプラズマアークを発生させるものである。移行型は両電極間でアーク電流が維持され、熱効率が高く高温が得られるため、被処理材の溶接や切断に用いられる。一方、非移行型は、高温のプラズマジェットを噴射するが、移行型に比べて熱効率が低いものの、被処理材が導電性である必要がなく加熱することができるため、溶射や高温加熱に用いられる。本発明では配管や容器中のガスなどの被加熱物の昇温に利用するため、本発明で採用するプラズマトーチは非移行型プラズマトーチである。本明細書において、特に断りのない限りプラズマトーチとは非移行型プラズマトーチを指す。
【0016】
プラズマトーチ1の内部構造は特に限定されない(トーチ内部構造については図示していない)。例えば、プラズマ溶射に用いられるプラズマトーチや、電縫鋼管などの電気溶接時にプラズマシールドのために用いられるプラズマトーチなどを適用することができる。
【0017】
プラズマ作動ガスの種類も特に限定しない。空気はもちろんのこと、用途に応じて酸素、Ar、水素、窒素、その他の不活性ガスなどが適用できるが、被加熱ガスの種類や環境条件に応じて適宜決定するとよい。
【0018】
[プラズマジェット]
プラズマトーチ1により、プラズマ作動ガスがプラズマ化し高温ガスとして炎状に噴射されるものがプラズマジェット2である。プラズマジェット2の性状(温度、トーチ出口での径やジェット長さなど)は特に限定されない。プラズマトーチ形状や作動ガス流量などによって適宜決定するとよい。プラズマ溶射などで使用するプラズマトーチであれば、トーチ出口でのプラズマジェット径は10~50mm程度であり、ジェットの長さは300~1000mm程度まで得られる。プラズマジェット2の温度も、作動ガスや印加電圧などにより適宜決定すればよい。例えば、空気を作動ガスとした場合でも1000~10000℃程度のプラズマジェットが得られ、プラズマが消滅後は高温ガスとして流れる。本発明に係るプラズマ加熱は、このプラズマジェットやプラズマジェットから派生した高温ガスが有する顕熱を利用するものである。
【0019】
[ダクト]
図1(a)に本発明の実施形態の例(第1実施形態)の概念図を示す。図1(a)に示すように、被加熱物であるガスが流れる配管5とプラズマトーチ1の間には外気と遮断された閉空間になるようにダクト3が配置される。ダクト3の内部は、プラズマトーチ1から噴射したプラズマジェット2が流れる構造になっている。ダクト3を介することにより、配管5から離れた所にプラズマトーチ1を配置しつつ、プラズマジェット2やそれから派生した高温ガスを、外気が混入することなく配管5に導くことができる。そのため配管5内に外気が混入することがない。さらに、プラズマジェット2から派生した高温ガスを確実に配管5内に導くことができるため、プラズマジェット2の持つ顕熱を有効に被加熱物の加熱に利用することができる。
【0020】
プラズマジェット2は、ダクト3の中心軸4に沿って噴射することが好ましい。プラズマジェット2をダクト3の中心軸4に沿って噴射すると、プラズマジェット2が直接ダクト3に接触することがなく、ダクト3の局所的な温度上昇を抑止することができる。
【0021】
ダクト3の内面3-1の形状(ダクトの中心軸に垂直な断面でのダクト内面の形状)は特に限定されない。ダクト3の内面3-1の形状はプラズマジェット2による高温ガスの流量などにより適宜設計すればよい。好ましくはダクト3の内面3-1の形状を円形にするとよい。ダクト3の内面3-1の形状を円形にすることでダクト3の内面3-1とプラズマジェット2との間の距離を一定にすることができ、ダクト3の局所的な温度上昇を抑止することができるからである。
【0022】
またダクト3の材質も特に限定しない。ダクト3自体もプラズマジェット2の輻射熱で加熱されるので一定の耐熱性を要求される。そのため、ダクト3の材質は、例えば、ステンレスなどの耐熱鋼、高炭素鋼や鋳鋼などであるとよい。ダクト3の内面3-1に耐火材を配置するなど耐火物ライニング(図示はしていない。)してもよい。ダクト3の外面を水冷や空冷による冷却構造にしてもよい(図示はしていない)。
【0023】
ダクト3と配管5との間に、熱膨張緩衝用のエキスパンションなどを配置してもよく、プラズマトーチ1から配管5までの間が外気と遮断された密閉構造になっていればよい。図1(b)に、ダクト3と配管5との間に熱膨張緩衝用のエキスパンション6を取り付けた例を示す。
【0024】
[第1の冷却ガス]
プラズマトーチ1からダクト3内にプラズマジェット2を噴射する際、プラズマジェット2自体はダクト3の中心軸4の方向(以下、ダクト3の軸方向という。)に噴射しているものの、プラズマジェット2の輻射熱やプラズマジェット2から派生した高温ガスにより、ダクト3の内面3-1が高温に晒されダメージを受ける。ダクト3の内面3-1に耐火物ライニング(図示せず。)などを施していたとしても、耐火物が熱によるダメージを受けることは避けられない。
そこで、ダクト3の内面3-1をプラズマジェット2や高温ガスによる熱から保護するため、ダクト3の内面3-1に沿うように冷却ガス層14を形成するとよい。
【0025】
図2に本発明の実施形態の例(第2実施形態)として、ダクト3の内面3-1に冷却ガス層14を形成した場合の概念図を示す。図2に示すように、プラズマトーチ1の周囲、詳細にはプラズマトーチ1のプラズマジェット噴射口11の周囲には、冷却ガス(第1の冷却ガス)13の吹き出し口(第1冷却ガス吹き出し口)12が配置されており、第1冷却ガス吹き出し口12からダクト3の中心軸4の軸方向に向けて第1の冷却ガス13が吹き出される。第1冷却ガス吹き出し口12から吹き出された第1の冷却ガス13は、ダクト3の内面3-1全体にわたって冷却ガス層を形成する。なお、第1の冷却ガス13がダクト3の内面3-1に沿って流れるように、プラズマトーチ1の周囲全体、つまりプラズマジェット噴射口11を囲うように複数個の第1冷却ガス吹き出し口12を配置するとよい。
【0026】
第1の冷却ガス13の種類は特に限定しないが、プラズマ作動ガス、または被加熱物となるガスと同じであるとよく、もしくは被加熱物に対し影響がなければ空気でもよい。第1の冷却ガス13の流量や流速も特に限定しない。しかし、流速が遅いとダクト3の内面3-1全体にわたって冷却ガス層14を形成できないことがある。また、冷却ガス流量が少ないと、冷却ガス層14の厚さが不足し、十分にダクト3の内面3-1を保護できない可能性もある。一方、流速が速かったり、流量が多くなったりすると、冷却ガスの供給装置が大きくなり投資がかさむことが懸念されるだけでなく、プラズマジェットによる被加熱物の加熱効率が低下することが考えられる。これらのことを考慮しつつ、第1の冷却ガスの流量、流速を適宜決定するとよい。
【0027】
[第2の冷却ガス]
図3に示すように、ダクト3が長くなると、第1の冷却ガス13がダクト3の軸方向全体にわたって十分に到達せず、ダクト3の内面3-1全体にわたって、特に配管5側に有効な厚さの冷却ガス層14が形成できない場合がある。そのような部分はプラズマジェット2からの高熱に対し、さらなる耐熱対策が求められる。
【0028】
図4に本発明の実施形態の例(第3実施形態)として、さらなる耐熱対策を施した場合の概念図を示す。図4に示すように、第1冷却ガス吹き出し口12からダクト3の中心軸4の軸方向に向けて第1の冷却ガス13が吹き出されるとともに、ダクト3の内面3-1に設けられた第2の冷却ガス15の吹き出し口(第2冷却ガス吹き出し口)16からダクト3の内部に向けて冷却ガス(第2の冷却ガス)15が吹き出される。
【0029】
ダクト3が長くなると、第1の冷却ガス13は配管5側(プラズマトーチ1が設けられている側と反対側であって、先端側とも呼ぶ。)のダクト3の内面3-1に到達し難いため、第2冷却ガス吹き出し口16は、ダクト3の内面3-1(好ましくは配管5側のダクト3の内面3-1)に設置するとよい。このように第2冷却ガス吹き出し口16をダクト3の内面3-1に設置することによって、配管5側(先端側)のダクト3の内面3-1であっても冷却ガス層14を形成することができる。
【0030】
これによって、プラズマトーチ1側のダクト3の内面3-1は、第1の冷却ガス13によって形成された冷却ガス層14によって保護され、配管5側(先端側)のダクト3の内面3-1は、第2の冷却ガス15によって形成された冷却ガス層14によって保護されることになる。すなわち、冷却ガス層14は第1の冷却ガス13と第2の冷却ガス15とによって形成される。これによって、ダクト3の内面3-1全体に冷却ガス層14が形成され、ダクト3の内面3-1全体が冷却ガス層14によって保護されることになる。
【0031】
ダクト3の断面周方向(ダクト3の中心軸4に垂直な面でダクトを切断したときのダクトの断面の周方向)においても、第2冷却ガス吹き出し口16は、ダクト3の内面3-1全体に冷却ガス層14が形成されるようにダクト3の内面3-1に複数個設置するとよい。例えば、第2冷却ガス吹き出し口16が、ダクト3の中心軸4に垂直な同一断面内であって、ダクト3の周方向に複数個設置するとよい。
【0032】
また、ダクト3の軸方向の1か所に第2冷却ガス吹き出し口16を設置したとしても、ダクト3が長い場合は、それだけでは不足する場合がある。その場合は、さらにダクト3の軸方向の複数個所に第2冷却ガス吹き出し口16を設置するとよい。図4は、ダクト3の軸方向に3か所の第2冷却ガス吹き出し口16を設置した場合を模式的に示している。この場合も、第1冷却ガス吹き出し口12と同様、ダクト3の断面周方向に複数の吹き出し口が並ぶように複数個設置するとよい。即ち、ダクト3の軸方向の複数の位置であって、それぞれの位置においてダクト3の断面周方向の複数の位置に第2冷却ガス吹き出し口16を設置するとよい。
【0033】
例えば、第2冷却ガス吹き出し口16は、ダクト3の先端側(第1の冷却ガス吹き出し口12が設けられている側と反対側、即ちプラズマトーチ1が設けられている側と反対側であって、配管5側であり、プラズマジェット2の下流側)の領域(例えば、ダクトの中央よりも先端側(プラズマジェットの下流側)の領域)のダクト3の内面3-1に設けられているとよい。そうすることにより、第1の冷却ガス13によっては冷却ガス層14を形成できない領域(ダクト3の先端側(配管5側))に冷却ガス層14を形成することができる。これによって、第2実施形態よりも広範囲(全体的に)にわたってダクト3の内面3-1全体に冷却ガス層14を形成することができ、プラズマジェット2の高熱からダクト3の内面3-1を保護することができる。
【0034】
第2の冷却ガス15は、ダクト3の内部に向かって吹き出せばよく、その吹き出す方向は特に限定しない。例えば、ダクト3の中心軸4に向かって吹き出してもよい。ダクト3の内部は、プラズマジェット2により、プラズマジェットの軸方向(ダクト3の軸方向と同じ方向)に向かってガスの流れが形成されるため、第2の冷却ガス15もこのプラズマジェットによるガスの流れに乗って、ダクト3の軸方向に流されるためである。
【0035】
また例えば、第2の冷却ガス15を、ダクト3の軸方向(中心軸4と平行な方向)に沿って吹き出してもよい。これによりプラズマジェット2によるガス流れを乱すことが抑制されつつ、第2の冷却ガス15をダクト3の内面3-1に沿って吹き出すことができるからである。例えば図5(a)には、第2冷却ガス吹き出し口16をダクト3の軸方向に傾斜させ、第2の冷却ガス15を第1の冷却ガスの流れにより形成された冷却ガス層14に混合し易いようにした場合を示す。
【0036】
ここで、第2冷却ガス吹き出し口16をダクト3の軸方向に傾斜させるとは、第2冷却ガス吹き出し口から第2の冷却ガスが吹き出す方向を、ダクト3の内面3-1に垂直な方向からダクト3の軸方向へ傾斜させることを意味する。ダクト3の内面3-1に垂直な方向からダクト3の軸方向への傾斜角度は特に限定されないが、好ましくは30°以上、さらに好ましくは45°以上、またさらに好ましくは60°以上傾斜することが好ましい。
【0037】
図5(b)には別の例として、第2冷却ガス吹き出し口16をノズルのようにし、冷却ガス層14の流れ方向であるダクト3の軸方向に向けて第2の冷却ガス15を吹き出す場合を示す。(この場合、ダクト3の軸方向への傾斜角度は90°になる。)これらの例のように、第2の冷却ガス15を、第1の冷却ガスの流れにより形成された冷却ガス層14の流れ方向に吹き出すことにより、冷却ガス層14と混合し易くなる。さらに好ましくは、図5(a)(b)にも示すように、第1の冷却ガスにより形成された冷却ガス層14内で第2の冷却ガス15を吹き出すことが好ましい。
【0038】
第2の冷却ガス15の性状も第1の冷却ガス12同様、特に限定しないが、第2の冷却ガス15は第1の冷却ガス12と同じであることが好ましい。第2の冷却ガス15の流量や流速も特に限定しない。
【0039】
これにより第1の冷却ガス12によって形成された冷却ガス層14では保護できないダクト3の内面3-1(ダクト3の配管5側の内面3-1)を、第2の冷却ガス15によって形成された冷却ガス層14によって保護することができる。そのため、ダクト3の内面3-1の全体をプラズマジェット2の熱から保護することができる。
【実施例0040】
本発明の実施例として、小型高温反応炉への高温空気送風設備への適用について説明する。
図6に本実施例に係る高温反応炉31における高温空気送風経路図(模式図)を示す。高温反応炉31は、熱源として加熱空気を炉内に吹き込み、炉内を高温にして反応を進める装置である。高温反応炉31の周辺や高温空気配管36の周囲は、他設備が干渉してレイアウトの制約があるため、本発明の加熱装置を適用する。
【0041】
図6において、高温反応炉31の高温空気送風設備は、ブロワー32で空気を吸込み昇圧し、昇圧した空気を一旦圧空チャンバー33に溜める。圧空チャンバー33から一部をプラズマ加熱装置の冷却ガス系統に、残りを高温空気送風系統に分割する。高温空気送風系統では、圧空チャンバー33内の空気が送気管35を通って一次加熱装置34に供給され、一次加熱装置34で所用温度まで加熱される(一次加熱装置の内部については図示していない。)。一次加熱装置34で加熱された高温空気は高温空気配管36を通って高温反応炉31に供給される。高温空気配管36には調整弁37が設置され、高温空気の流量が制御される。なお、高温空気配管36の高温空気中に、温度調整用に外部から常温の空気を添加できるように、外部配管38が設置され、外部空気調整弁39で添加流量が制御される。
【0042】
圧空チャンバー33から分岐されたプラズマ加熱装置100の冷却ガス系統は、冷却ガス配管40を通り、第1冷却ガス管41を通って第1の冷却ガスとしてプラズマトーチ1に、第2冷却ガス管42を通って第2の冷却ガスとしてダクト3に供給される。
冷却ガス系統には、図示はしていないが流量制御のための各種弁が設置されている。
【0043】
その他、プラズマ加熱装置100のプラズマ作動ガス系統が必要になる。
本実施例ではプラズマ作動ガスとして空気を用いているので、プラズマ作動ガス用ブロワー43で空気を吸込み昇圧し、調圧した空気を一旦作動ガスチャンバー44に溜める。プラズマ作動ガスとして空気以外のガスを使用する場合は、そのガスボンベ等から作動ガスを吸い込み、ブロワー43で昇圧してプラズマ作動ガスチャンバー44に溜める。プラズマ作動ガスチャンバー44から供給されるプラズマ作動ガスは、プラズマ作動ガス配管45を通りプラズマトーチ1に供給される。プラズマ作動ガス系統においても、図示はしていないが流量制御のための各種弁が設置されている。プラズマトーチ1には、図示はしていないが、プラズマ発生用に高圧電源を供給する設備および供給配線も設置されている。
【0044】
本実施例においては、一次加熱装置34で常温の空気を約1000℃まで加熱し、その後、高温空気配管の高温反応炉の手前でプラズマ加熱装置100を設置して、約1100℃まで昇温して、高温反応炉31に高温空気を供給した。その際、プラズマ加熱装置100には長さ500mmで内径100mmのステンレス鋼製のダクト3を取り付けた。ダクト3の内面3-1には耐火物ライニングを施した。
【0045】
プラズマ加熱装置100には、第1冷却ガス吹き出し口12を、プラズマトーチ1の周囲に6か所設置した。また、第2冷却ガス吹き出し口16として、ダクト3の内面3-1に、プラズマトーチ1側のダクト3の端面(プラズマトーチとの接続箇所)からから200mm、300mm、400mmの位置で、ダクト3の周方向に6か所設置した。また、試験中のダクト3の内面3-1の温度を測定するため、ダクト3に温度センサー(熱電対)をプラズマトーチ1側から150mm、250mm、350mm、450mmの位置に取り付け、ダクト3の内面3-1の温度(想定ダクト内面温度)を伝熱計算により求めた。
【0046】
プラズマ加熱装置100にて、高温空気配管36の空気を加熱し、その際のプラズマ加熱装置100のダクト3の内面3-1の温度を測定した。試験結果を表1に示す。なお、いずれの試験においても、一次加熱装置34の出口で約1000℃であり、高温反応炉入口で約1100℃まで加熱された高温空気が得られた。
【0047】
【表1】
【0048】
レイアウトの制約があるような場所でも、本発明に係るプラズマ加熱装置100を適用することで、高温空気を加熱することが可能であり、さらに、プラズマ加熱装置100に第1の冷却ガス13および第2の冷却ガス15を吹き出すことにより、ダクト内耐火物表面温度を低下させることができ、ダクト3の内面3-1を保護できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は製鉄業や化学産業のみならず、高温気体加熱を伴う全産業において利用することができる。例えば、製鉄設備の高炉では、熱風炉で空気を加熱した高温ガス(高温空気)を製造して、高炉羽口から高炉内に吹き込むことで高炉内の高温還元反応を進めている。この熱風炉から高炉までを接続する熱風管において、高温ガスの温度低下が発生する場合などに、本発明に係るプラズマ加熱装置を適用することができる。また、例えば水素による鉄鉱石の還元反応炉における高温ガス配管や、化学プラントでの高温ガス配管などに適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
100 プラズマ加熱装置
1 プラズマトーチ
2 プラズマジェット
3 ダクト
3-1 ダクトの内面
4 ダクトの中心軸
5 配管
6 エキスパンション
11 プラズマジェット噴射口
12 第1冷却ガス吹き出し口
13 第1の冷却ガス
14 冷却ガス層
15 第2の冷却ガス
16 第2冷却ガス吹き出し口
31 高温反応炉
32 高温空気用ブロワー
33 圧空チャンバー
34 一次加熱装置
35 送気管
36 高温空気配管
37 高温空気調整弁
38 外部配管
39 外部空気調整弁
40 冷却ガス配管
41 第1冷却ガス配管
42 第2冷却ガス配管
43 プラズマ作動用ガスブロワー
44 プラズマ作動ガスチャンバー
45 プラズマ作動ガス供給配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6