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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163797
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241115BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M1/08 A
H02M1/08 301A
H02M1/08 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079686
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八幡 光一
(72)【発明者】
【氏名】ブイ チャン タオ
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740AA01
5H740AA03
5H740BA11
5H740BB05
5H740BB09
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK03
5H740KK04
5H740LL01
5H740MM01
5H770AA02
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA02
5H770GA04
5H770GA13
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770LA01X
(57)【要約】
【課題】ゲート抵抗の切替機能を有する電力変換装置の診断を実現してその信頼性を向上する。
【解決手段】スイッチング速度選択部32は、電圧センサ10と電流センサ20によりそれぞれ計測された電圧HVDCおよび電流Ioの値に基づいて、パワートランジスタTP1の目標スイッチング速度を選択し、目標スイッチング速度の選択結果に応じた切替指令Vselをスイッチング速度切替部53へ送信する。切替状態モニタ部70は、スイッチング速度切替部53においてスイッチング速度の切替に応じて変化するモニタ電圧Vmonを計測し、モニタ電圧Vmonのパルス幅を延長した診断用モニタ電圧Vmondを出力する。スイッチング速度切替診断部33は、駆動信号PWM、切替指令Vselおよび診断用モニタ電圧Vmondに基づいて、スイッチング速度切替部53の診断を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパワー半導体素子を有し、前記パワー半導体素子のスイッチング動作によって直流電力を交流電力に変換する電力変換装置であって、
前記パワー半導体素子を駆動するゲート信号を生成して前記パワー半導体素子に出力するゲート信号生成部と、前記ゲート信号に応じた前記パワー半導体素子のスイッチング速度を切り替えるスイッチング速度切替部と、を有するドライブ回路と、
前記パワー半導体素子の駆動を制御する駆動信号を生成して前記ドライブ回路に出力する駆動信号生成部と、
前記直流電力の電圧を計測する電圧センサと、
前記交流電力の電流を計測する電流センサと、
前記電圧センサと前記電流センサによりそれぞれ計測された前記電圧および前記電流の値に基づいて、前記パワー半導体素子の目標スイッチング速度を選択し、前記目標スイッチング速度の選択結果に応じた切替指令を前記スイッチング速度切替部へ送信するスイッチング速度選択部と、
前記スイッチング速度切替部において前記スイッチング速度の切替に応じて変化するモニタ電圧を計測し、前記モニタ電圧のパルス幅を延長した診断用モニタ電圧を出力する切替状態モニタ部と、
前記駆動信号、前記切替指令および前記診断用モニタ電圧に基づいて、前記スイッチング速度切替部の診断を行うスイッチング速度切替診断部と、を備える電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記ゲート信号生成部は、所定のバイアス電圧が印加されたターンオン用ゲート抵抗と、前記パワー半導体素子の低電位側に接続された第1のターンオフ用ゲート抵抗と、を有し、前記パワー半導体素子のゲート端子の接続先を前記ターンオン用ゲート抵抗と前記第1のターンオフ用ゲート抵抗との間で切り替えることにより前記ゲート信号を生成し、
前記スイッチング速度切替部は、前記第1のターンオフ用ゲート抵抗と並列に接続された第2のターンオフ用ゲート抵抗と、前記第2のターンオフ用ゲート抵抗と前記パワー半導体素子の低電位側との間の電気的接続を前記切替指令に応じて導通または遮断するスイッチ素子と、を有し、
前記切替状態モニタ部は、前記第2のターンオフ用ゲート抵抗と前記スイッチ素子との間の電圧を前記モニタ電圧として計測する電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記スイッチング速度切替部は、前記切替指令がLレベルのときには前記第2のターンオフ用ゲート抵抗と前記パワー半導体素子の低電位側との間の接続を遮断し、前記切替指令がHレベルのときには前記第2のターンオフ用ゲート抵抗と前記パワー半導体素子の低電位側との間の接続を導通するように、前記スイッチ素子を動作させ、
前記スイッチング速度切替診断部は、
前記切替指令がLレベルで前記駆動信号がオンからオフに変化したときに前記診断用モニタ電圧がHレベルであり、かつ、前記切替指令がHレベルで前記駆動信号がオンからオフに変化したときに前記診断用モニタ電圧がLレベルである場合は、前記スイッチング速度切替部が正常であると判断し、
前記切替指令がLレベルで前記駆動信号がオンからオフに変化したときに前記診断用モニタ電圧がLレベルであり、かつ、前記切替指令がHレベルで前記駆動信号がオンからオフに変化したときに前記診断用モニタ電圧がLレベルである場合は、前記スイッチング速度切替部において前記スイッチ素子がオン固着状態であると判断し、
前記切替指令がLレベルで前記駆動信号がオンからオフに変化したときに前記診断用モニタ電圧がHレベルであり、かつ、前記切替指令がHレベルで前記駆動信号がオンからオフに変化したときに前記診断用モニタ電圧がHレベルである場合は、前記スイッチング速度切替部において前記スイッチ素子がオフ固着状態であると判断する電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置であって、
前記スイッチング速度切替診断部は、前記切替指令がLレベルで前記駆動信号がオンからオフに変化したときに前記診断用モニタ電圧がLレベルであり、かつ、前記切替指令がHレベルで前記駆動信号がオンからオフに変化したときに前記診断用モニタ電圧がHレベルである場合は、前記切替状態モニタ部が異常であると判断する電力変換装置。
【請求項5】
請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記スイッチング速度切替部は、前記切替指令がLレベルのときには前記第2のターンオフ用ゲート抵抗と前記パワー半導体素子の低電位側との間の接続を遮断し、前記切替指令がHレベルのときには前記第2のターンオフ用ゲート抵抗と前記パワー半導体素子の低電位側との間の接続を導通するように、前記スイッチ素子を動作させ、
前記スイッチング速度切替診断部は、
前記診断用モニタ電圧の周期を計測し、
前記診断用モニタ電圧の周期が前記駆動信号の周期の2倍である場合は、前記スイッチング速度切替部が正常であると判断し、
前記診断用モニタ電圧の周期が計測できない場合は、前記スイッチング速度切替部において前記スイッチ素子がオン固着状態であると判断し、
前記診断用モニタ電圧の周期が前記駆動信号の周期と一致する場合は、前記スイッチング速度切替部において前記スイッチ素子がオフ固着状態であると判断する電力変換装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の電力変換装置であって、
前記スイッチング速度切替診断部により前記スイッチ素子がオン固着状態であると判断され、かつ、前記電圧センサによって計測された前記電圧の値が所定の制限電圧以上の場合、前記交流電力の電流を制限する電力変換装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記パワー半導体素子を上アームと下アームにそれぞれ配置した複数のレグが互いに並列接続されたインバータ回路を有し、
前記スイッチング速度切替診断部は、
前記インバータ回路の各上アームに対する前記駆動信号と前記切替指令を同期させたときの前記診断用モニタ電圧の論理積に基づいて、各上アームに対応して設けられた前記スイッチング速度切替部の診断をまとめて実施し、
前記インバータ回路の各下アームに対する前記駆動信号と前記切替指令を同期させたときの前記診断用モニタ電圧の論理積に基づいて、各下アームに対応して設けられた前記スイッチング速度切替部の診断をまとめて実施する電力変換装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記スイッチング速度切替診断部は、前記スイッチング速度切替部の診断を複数回行ったときの各診断結果に基づいて、前記スイッチング速度切替部に対する最終的な診断結果を決定する電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力変換装置の効率を向上させる技術として、特許文献1が知られている。特許文献1には、電流や電圧に応じてパワー半導体素子に接続されるゲート抵抗を切り替え、これによってパワー半導体素子のスイッチング速度を選択することで、特定領域のパワー半導体の損失を低減して電力変換装置の効率を向上させる技術が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、マイクロコンピュータからドライブ回路を介してFET(Field Effect Transistor)等のスイッチ素子へ切替信号を出力することにより、スイッチ素子を介してゲート抵抗の切り替えを行っている。そのため、何らかの原因によってマイクロコンピュータからスイッチ素子へ切替信号を出力できない場合や、スイッチ素子がオン側またはオフ側に固着した場合は、ゲート抵抗の切り替えが実施不可能になるという問題がある。
【0004】
上記問題に関して、特許文献2が知られている。特許文献2には、インバータの主回路を構成するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)に対してゲート信号を印加した際のコレクタ-エミッタ間電圧の状態を監視することにより、IGBTの短絡故障を検出する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-59089号公報
【特許文献2】特開2001-61281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような回路構成では、ゲート抵抗の切替前後でゲート抵抗において生じる電圧変化は非常に短時間であるため、特許文献2の手法を適用しても、この電圧変化を精度良く検知することは難しい。このように、ゲート抵抗の切替機能を有する電力変換装置において、従来の手法ではその診断を行うことが困難であった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、主な目的は、ゲート抵抗の切替機能を有する電力変換装置の診断を実現してその信頼性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電力変換装置は、複数のパワー半導体素子を有し、前記パワー半導体素子のスイッチング動作によって直流電力を交流電力に変換するものであって、前記パワー半導体素子を駆動するゲート信号を生成して前記パワー半導体素子に出力するゲート信号生成部と、前記ゲート信号に応じた前記パワー半導体素子のスイッチング速度を切り替えるスイッチング速度切替部と、を有するドライブ回路と、前記パワー半導体素子の駆動を制御する駆動信号を生成して前記ドライブ回路に出力する駆動信号生成部と、前記直流電力の電圧を計測する電圧センサと、前記交流電力の電流を計測する電流センサと、前記電圧センサと前記電流センサによりそれぞれ計測された前記電圧および前記電流の値に基づいて、前記パワー半導体素子の目標スイッチング速度を選択し、前記目標スイッチング速度の選択結果に応じた切替指令を前記スイッチング速度切替部へ送信するスイッチング速度選択部と、前記スイッチング速度切替部において前記スイッチング速度の切替に応じて変化するモニタ電圧を計測し、前記モニタ電圧のパルス幅を延長した診断用モニタ電圧を出力する切替状態モニタ部と、前記駆動信号、前記切替指令および前記診断用モニタ電圧に基づいて、前記スイッチング速度切替部の診断を行うスイッチング速度切替診断部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゲート抵抗の切替機能を有する電力変換装置の診断を実現してその信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る電力変換装置を含むモータ駆動システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の主要構成を示す回路ブロック図である。
図3】目標スイッチング速度の選択条件の一例を示す図である。
図4】スイッチング速度切替部が正常である場合のタイミングチャートの例を示す図である。
図5】スイッチング速度切替部においてスイッチ素子がオン固着した場合のタイミングチャートの例を示す図である。
図6】スイッチング速度切替部においてスイッチ素子がオフ固着した場合のタイミングチャートの例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る診断処理の内容をまとめた表である。
図8】リンプホーム処理の具体例を示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る診断処理の内容をまとめた表である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る電力変換装置の主要構成を示す回路ブロック図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係るAND回路の入力信号と出力信号の関係をまとめた真理値表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力変換装置を含むモータ駆動システムの概略構成を示すブロック図である。図1に示すモータ駆動システムにおいて、電力変換装置200は、モータ900と高圧バッテリ901の間に接続され、高圧バッテリ901から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ900へ出力することでモータ900を駆動させる。電力変換装置200と高圧バッテリ901の間には、これらの接続状態をコントロールするためのコンタクタ902が設けられている。
【0012】
電力変換装置200は、コントローラ100a、ドライバ100b、インバータ回路300および電圧平滑用キャパシタ500を備える。電力変換装置200には、図示しない上位コントローラから、モータ900を駆動するための指令(例えばトルクや回転指令など)が入力される。インバータ回路300には、複数のパワー半導体素子を上アームと下アームにそれぞれ配置したレグが出力すべき交流電力の相数に対応して複数設けられており、これらのレグが互いに並列接続されることでブリッジ回路を構成している。図1の例では、モータ900が三相交流モータであるため、電力変換装置200はモータ900へ三相交流電力を出力する。したがって、インバータ回路300には三相分のレグが設けられている。
【0013】
また、電力変換装置200は、高圧バッテリ901から供給される直流電力の電圧を計測する電圧センサ10と、モータ900へ出力される交流電力の電流を計測する電流センサ20とを備える。コントローラ100aは、電圧センサ10と電流センサ20によりそれぞれ計測された直流電力の電圧値および交流電力の電流値に基づいて、上位コントローラからの指令に応じた駆動信号(PWM信号)を生成し、ドライバ100bへ出力する。ドライバ100bは、インバータ回路300の各パワー半導体素子に対してそれぞれ設けられた複数のドライブ回路50を有し、各ドライブ回路50によって対応する上アームまたは下アームの各パワー半導体素子をスイッチング制御する。これによりインバータ回路300が動作し、高圧バッテリ901から供給される直流電力が交流電力に変換される。
【0014】
電圧平滑用キャパシタ500は、高圧バッテリ901とインバータ回路300の間に接続されており、電力変換時に変動するインバータ回路300の印加電圧を平滑化する。電圧平滑用キャパシタ500の両端電圧は、電圧センサ10により、高圧バッテリ901からインバータ回路300への印加電圧として計測される。
【0015】
次に、コントローラ100aとドライブ回路50について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の主要構成を示す回路ブロック図である。図2の回路ブロック図では、インバータ回路300を構成する複数のパワー半導体素子の1つ(例えば、U相上アーム)について、コントローラ100aとドライブ回路50を含んだ電力変換装置200の主要部の回路構成を示している。なお、この回路ブロック図では、当該パワー半導体素子がIGBT等のパワートランジスタTP1と還流ダイオードDP1の並列接続で構成された例を示しているが、例えばMOSFETなど、他の種類の半導体素子を用いてもよい。
【0017】
コントローラ100aは、駆動信号生成部31、スイッチング速度選択部32およびスイッチング速度切替診断部33の各機能ブロックを有する。コントローラ100aにおいて、これらの機能ブロックは、例えばマイコンが所定のプログラムを実行することによりそれぞれ実現される。
【0018】
図1において説明したように、電圧センサ10は高圧バッテリ901から供給される直流電力の電圧HVDCを計測し、その計測結果に応じた電圧信号V-hvdcをコントローラ100aに出力する。また、電流センサ20はモータ900へ出力される交流電力のうち、パワートランジスタTP1に対応する相の電流Ioを計測し、その計測結果に応じた電圧信号V-ioをコントローラ100aに出力する。
【0019】
駆動信号生成部31は、電圧センサ10と電流センサ20からそれぞれ入力される電圧信号V-hvdcおよび電圧信号V-ioに基づいて、これらの信号が表す電圧HVDCおよび電流Ioの値を取得する。そして、取得した電圧HVDCおよび電流Ioの値と、図示しない上位コントローラからの指令とに基づいて、パワートランジスタTP1の駆動を制御するための駆動信号PWMを生成してドライブ回路50へ出力する。駆動信号生成部31は、例えば周知のフィードバック制御によるパルス幅変調を行うことで、駆動信号PWMを生成することができる。
【0020】
スイッチング速度選択部32は、電圧センサ10と電流センサ20からそれぞれ入力される電圧信号V-hvdcおよび電圧信号V-ioに基づいて、これらの信号が表す直流電圧HVDCおよび交流電流Ioの値を取得する。そして、取得した直流電圧HVDCと交流電流Ioの値に基づいて、パワートランジスタTP1の目標スイッチング速度を「低速」または「高速」のいずれかより選択して、その選択結果に応じた切替指令Vselをドライブ回路50へ出力する。
【0021】
スイッチング速度切替診断部33は、駆動信号生成部31とスイッチング速度選択部32からドライブ回路50にそれぞれ出力される駆動信号PWMおよび切替指令Vselと、切替状態モニタ部70から入力される診断用モニタ電圧Vmondとに基づいて、ドライブ回路50が有するスイッチング速度切替部53の診断を行う。なお、切替状態モニタ部70から入力される診断用モニタ電圧Vmondの詳細については後述する。
【0022】
コントローラ100aとドライブ回路50の間には、絶縁素子40,41,42が設けられている。これらの絶縁素子には、例えばフォトカプラやトランス等が用いられる。
【0023】
ドライブ回路50は、ゲート信号制御部51、ゲート信号生成部52およびスイッチング速度切替部53を有する。
【0024】
ゲート信号制御部51には、駆動信号生成部31から出力された駆動信号PWMが絶縁素子40を介して入力される。ゲート信号制御部51は、駆動信号PWMに基づいて、ゲート信号生成部52が有するバッファトランジスタTR1,TR3の動作をそれぞれ制御することにより、ゲート信号生成部52にゲート信号を生成させる。
【0025】
ゲート信号制御部51は、ターンオン用ゲート抵抗Ron、ターンオフ用ゲート抵抗Roff1およびバッファトランジスタTR1,TR3を有する。ターンオン用ゲート抵抗Ronの一端側には所定のバイアス電圧が印加されており、他端側はバッファトランジスタTR3を介してパワートランジスタTP1のゲート端子に接続されている。ターンオフ用ゲート抵抗Roff1の一端側はパワートランジスタTP1の低電位側(エミッタ側)に接続されており、他端側はバッファトランジスタTR1を介してパワートランジスタTP1のゲート端子に接続されている。バッファトランジスタTR1,TR3は、ゲート信号制御部51からの制御信号に応じてオンまたオフにそれぞれ切り替えられることで、パワートランジスタTP1のゲート端子の接続先を切り替える。バッファトランジスタTR1,TR3は、例えばMOSFETを用いて構成される。
【0026】
パワートランジスタTP1をターンオンさせる場合、ゲート信号制御部51は、バッファトランジスタTR3をオン、バッファトランジスタTR1をオフにそれぞれ切り替えるように、ゲート信号生成部52を制御する。これにより、ターンオン用ゲート抵抗Ronを介してパワートランジスタTP1のゲート端子にバイアス電圧が印加され、パワートランジスタTP1がターンオンする。一方、パワートランジスタTP1をターンオフさせる場合、ゲート信号制御部51は、バッファトランジスタTR3をオフ、バッファトランジスタTR1をオンにそれぞれ切り替えるように、ゲート信号生成部52を制御する。これにより、ターンオフ用ゲート抵抗Roff1を介してパワートランジスタTP1のゲート端子がエミッタ端子と同電位になり、パワートランジスタTP1がターンオフする。
【0027】
スイッチング速度切替部53は、ターンオフ用ゲート抵抗Roff1と並列に接続されたターンオフ用ゲート抵抗Roff2と、スイッチ素子TR2とを有する。スイッチング速度切替部53には、スイッチング速度選択部32から出力された切替指令Vselが絶縁素子41を介して入力される。スイッチ素子TR2は、例えばMOSFETを用いて構成される。スイッチング速度切替部53は、切替指令Vselに応じてスイッチ素子TR2のオンオフが切り替えられることで、パワートランジスタTP1のゲート端子とエミッタ端子の間におけるターンオフ用ゲート抵抗Roff2の接続状態を切り替える。これにより、パワートランジスタTP1がターンオフする際の抵抗値を切り替えて、パワートランジスタTP1のスイッチング速度を変更する。
【0028】
スイッチング速度選択部32においてパワートランジスタTP1の目標スイッチング速度が「低速」に選択され、これに応じた切替指令Vselがスイッチング速度切替部53に入力されている場合、スイッチ素子TR2がオフに切り替えられる。これにより、パワートランジスタTP1のターンオフ時の抵抗値は、ターンオフ用ゲート抵抗Roff1の抵抗値となる。一方、スイッチング速度選択部32においてパワートランジスタTP1の目標スイッチング速度が「高速」に選択され、これに応じた切替指令Vselがスイッチング速度切替部53に入力されている場合、スイッチ素子TR2がオンに切り替えられる。これにより、パワートランジスタTP1のターンオフ時の抵抗値は、ターンオフ用ゲート抵抗Roff1,Roff2の合成抵抗値となり、これはターンオフ用ゲート抵抗Roff1単体での抵抗値よりも小さい。したがって、目標スイッチング速度が「低速」である場合と比べて、パワートランジスタTP1のスイッチング速度が高速化される。
【0029】
図3は、スイッチング速度選択部32における目標スイッチング速度の選択条件の一例を示す図である。図3において、横軸はパワートランジスタTP1に流れるコレクタ電流Icの電流実行値(Arms)、縦軸はパワートランジスタTP1に印加されるコレクタ-エミッタ間のピーク電圧値Vcep(V)をそれぞれ表している。
【0030】
コレクタ電流Icが所定の電流閾値Igcよりも大きい場合、スイッチング速度選択部32は、パワートランジスタTP1の目標スイッチング速度を「低速」に選択する。これにより、スイッチング速度切替部53においてスイッチ素子TR2がオフに切り替えられ、ターンオフ用ゲート抵抗Roff1の抵抗値に応じたスイッチング速度でパワートランジスタTP1がターンオフされる。ターンオフ用ゲート抵抗Roff1の抵抗値は、例えば曲線321で示したように、大電流時においてもピーク電圧値VcepがパワートランジスタTP1の耐圧Vlimitを超えないように調整されている。
【0031】
コレクタ電流Icが電流閾値Igc以下の場合、スイッチング速度選択部32は、パワートランジスタTP1の目標スイッチング速度を「高速」に選択する。これにより、スイッチング速度切替部53においてスイッチ素子TR2がオンに切り替えられ、ターンオフ用ゲート抵抗Roff1,Roff2の合成抵抗値Roff1・Roff2/(Roff1+Roff2)に応じたスイッチング速度でパワートランジスタTP1がターンオフされる。この合成抵抗値はターンオフ用ゲート抵抗Roff1の抵抗値よりも小さいため、スイッチ素子TR2がオフの場合よりもスイッチング速度が高速化される。
【0032】
なお、図3の例ではパワートランジスタTP1のコレクタ電流Icと電流閾値Igcとの比較結果に応じて目標スイッチング速度を切り替えているが、例えば電圧センサ10による直流電力の電圧HVDCの計測結果など、他の指標を切替条件に用いて目標スイッチング速度を切り替えてもよい。また、図3の例では目標スイッチング速度を「低速」または「高速」の2段階で切り替える例を示しているが、複数の切替条件を設定することで3段階以上の切替を行ってもよい。
【0033】
図2の説明に戻ると、スイッチング速度切替部53において、ターンオフ用ゲート抵抗Roff2とスイッチ素子TR2の間には、絶縁素子42を介して切替状態モニタ部70が接続されている。切替状態モニタ部70は、この接続点の電圧変化を、スイッチング速度切替部53においてスイッチング速度の切替に応じて変化するモニタ電圧Vmonとして計測する。そして、計測したモニタ電圧Vmonのパルス幅を延長し、これを診断用モニタ電圧Vmondとして出力する。
【0034】
スイッチング速度切替部53においてパワートランジスタTP1をターンオフした際のモニタ電圧Vmonは、スイッチ素子TR2の切替状態に応じて変化する。すなわち、スイッチ素子TR2がオフに切り替えられている場合は、パワートランジスタTP1がターンオフする際に、ゲート端子からターンオフ用ゲート抵抗Roff1に電流が流れることでモニタ電圧Vmonが瞬間的に上昇し、その後はゲート端子の電圧低下に伴ってモニタ電圧Vmonも次第に低下する。一方、スイッチ素子TR2がオンに切り替えられている場合は、パワートランジスタTP1がターンオフしても、上記接続点はパワートランジスタTP1のエミッタ端子と同電位のままであるため、モニタ電圧Vmonは変化しない。したがって、パワートランジスタTP1をターンオフした際のモニタ電圧Vmonの変化を観測し、その観測結果がスイッチ素子TR2の切替状態と適合しているか否かを確認することで、スイッチング速度切替部53が正常に動作しているか否かを診断することができる。
【0035】
しかしながら、パワートランジスタTP1のターンオフ時にモニタ電圧Vmonが上昇している時間、すなわちバッファトランジスタTR3をオフ、バッファトランジスタTR1をオンにそれぞれ切り替えてからゲート端子の電圧が0Vに低下するまでの時間は、一般的にコントローラ100aの演算周期と比べると極めて短時間である。そのため、コントローラ100aでモニタ電圧Vmonをそのまま計測しても、その変化を検知するのは困難である。そこで、本実施形態の電力変換装置200は、スイッチング速度切替部53においてモニタ電圧Vmonの上昇が計測された場合、そのパルス幅を切替状態モニタ部70で延長して診断用モニタ電圧Vmondを得るようにしている。このときの延長後のパルス幅は、コントローラ100aが確実に検知できる時間であればよく、例えば数10~100μs程度の範囲内で任意に設定することができる。切替状態モニタ部70は、例えば一般的なワンショット回路等を用いて実現できる。
【0036】
なお、図2の回路構成では切替状態モニタ部70を絶縁素子42の後段に配置しているが、絶縁素子42の前段に配置してもよい。
【0037】
切替状態モニタ部70から出力される診断用モニタ電圧Vmondは、コントローラ100aに入力される。コントローラ100aにおいて、スイッチング速度切替診断部33は、この診断用モニタ電圧Vmondをモニタ電圧Vmonの代わりに用いて、スイッチング速度切替部53の診断を行う。すなわち、診断用モニタ電圧Vmondがスイッチ素子TR2の切替状態に応じて前述のような変化をするか否かを確認することで、スイッチング速度切替部53が正常に動作しているか否かを診断することができる。
【0038】
次に、図4図6のタイミングチャートを用いて、スイッチング速度切替診断部33が行うスイッチング速度切替部53の診断の具体例を説明する。
【0039】
図4は、スイッチング速度切替部53が正常である場合のタイミングチャートの例を示す図である。図4では上から順に、駆動信号PWM、パワートランジスタTP1のゲート電圧Vge、切替指令Vsel、スイッチ素子TR2のゲート-ソース間電圧Vgs、モニタ電圧Vmon、診断用モニタ電圧Vmondの時間変化をそれぞれ表している。
【0040】
まず、時刻t0では、駆動信号PWMと切替指令VselがともにLレベルであり、このとき診断用モニタ電圧VmondはLレベルとなっている。
【0041】
次に、時刻t1において、駆動信号生成部31が駆動信号PWMをオフ(Lレベル)からオン(Hレベル)に変化させると、ドライブ回路50はゲート信号制御部51によりバッファトランジスタTR1,TR3を制御して、パワートランジスタTP1のゲート端子にバイアス電圧を印加する。これにより、ゲート電圧Vgeが上昇してパワートランジスタTP1がターンオンする。このときモニタ電圧Vmonは、バッファトランジスタTR1がオフになっているため、ゲート電圧Vgeが変化してもLレベルから変化しない。したがって、診断用モニタ電圧VmondもLレベルから変化しない。
【0042】
次に、時刻t2において、駆動信号生成部31が駆動信号PWMをオン(Hレベル)からオフ(Lレベル)に変化させると、ドライブ回路50はゲート信号制御部51によりバッファトランジスタTR1,TR3を制御して、パワートランジスタTP1のゲート端子に対するバイアス電圧の印加を停止する。これにより、ゲート電圧Vgeが下降して0Vになり、パワートランジスタTP1がターンオフする。このとき、スイッチ素子TR2のドレイン-ソース間にゲート電圧Vgeが印加されることで、モニタ電圧Vmonが瞬間的に上昇し、その後はゲート電圧Vgeと同様に0Vまで下降する。通常、このモニタ電圧Vmonの上昇から下降までの時間は数μsec~1μsec程度と非常に短く、コントローラ100aが駆動信号PWMの変化をトリガにして計測するのは困難である。
【0043】
モニタ電圧Vmonが上記のように変化すると、切替状態モニタ部70はそのパルス幅を延長し、診断用モニタ電圧Vmondとして出力する。これにより、診断用モニタ電圧Vmondは、時刻t2から所定のパルス幅でHレベルとなる。
【0044】
その後、時刻t2から所定の待機時間(診断用モニタ電圧Vmondのパルス幅以内の時間)を経過した時刻t3において、スイッチング速度切替診断部33は、診断用モニタ電圧VmondがHレベルであることを確認する。これにより、切替指令VselがLレベルであるときの期間Trlにおけるスイッチング速度切替部53の診断を行うことができる。
【0045】
その後、時刻t4において、スイッチング速度選択部32が切替指令VselをLレベルからHレベルに変化させると、これに応じてスイッチ素子TR2のゲート-ソース間電圧VgsがLレベルからHレベルに変化することで、スイッチ素子TR2がオンに切り替えられる。
【0046】
次に、時刻t5において、駆動信号生成部31が駆動信号PWMをオフ(Lレベル)からオン(Hレベル)に変化させると、時刻t1と同様に、ドライブ回路50はゲート信号制御部51によりバッファトランジスタTR1,TR3を制御して、パワートランジスタTP1のゲート端子にバイアス電圧を印加する。これにより、ゲート電圧Vgeが上昇してパワートランジスタTP1がターンオンする。このとき、モニタ電圧Vmonと診断用モニタ電圧Vmondも時刻t1と同様に、Lレベルから変化しない。
【0047】
次に、時刻t6において、駆動信号生成部31が駆動信号PWMをオン(Hレベル)からオフ(Lレベル)に変化させると、時刻t2と同様に、ドライブ回路50はゲート信号制御部51によりバッファトランジスタTR1,TR3を制御して、パワートランジスタTP1のゲート端子に対するバイアス電圧の印加を停止する。これにより、ゲート電圧Vgeが下降して0Vになり、パワートランジスタTP1がターンオフする。一方、このときスイッチ素子TR2がオンであるため、モニタ電圧Vmonは時刻t2とは異なり、Lレベルのままで変化しない。したがって、診断用モニタ電圧VmondもLレベルから変化しない。
【0048】
その後、時刻t6から前述の待機時間を経過した時刻t7において、スイッチング速度切替診断部33は、診断用モニタ電圧VmondがLレベルのままで変化しないことを確認する。これにより、切替指令VselがHレベルであるときの期間Trhにおけるスイッチング速度切替部53の診断を行うことができる。
【0049】
最後に、時刻t8において、スイッチング速度切替診断部33は一連の診断を終了する。スイッチング速度切替診断部33による診断結果は、例えばコントローラ100aから上位コントローラへ出力される。
【0050】
図5は、スイッチング速度切替部53においてスイッチ素子TR2がオン固着した場合のタイミングチャートの例を示す図である。スイッチ素子TR2のオン固着とは、例えば絶縁素子41の出力異常やスイッチ素子TR2のショート故障等により、スイッチ素子TR2が切替指令Vselに関わらず常にオン状態となる場合のことである。なお、図5において表される各信号は、図4と同様である。
【0051】
まず、時刻t0では、駆動信号PWMと切替指令VselがともにLレベルである。このとき、スイッチ素子TR2がオン固着していることでゲート-ソース間電圧VgsがHレベルとなっているが、モニタ電圧VmonはLレベルのままであるため、診断用モニタ電圧Vmondは図4の場合と同様にLレベルとなっている。
【0052】
次に、時刻t1において、駆動信号生成部31が駆動信号PWMをオフ(Lレベル)からオン(Hレベル)に変化させると、ドライブ回路50はゲート信号制御部51によりバッファトランジスタTR1,TR3を制御して、パワートランジスタTP1のゲート端子にバイアス電圧を印加する。これにより、ゲート電圧Vgeが上昇してパワートランジスタTP1がターンオンする。このとき診断用モニタ電圧Vmondは、図4の場合と同様にLレベルから変化しない。
【0053】
次に、時刻t2において、駆動信号生成部31が駆動信号PWMをオン(Hレベル)からオフ(Lレベル)に変化させると、ドライブ回路50はゲート信号制御部51によりバッファトランジスタTR1,TR3を制御して、パワートランジスタTP1のゲート端子に対するバイアス電圧の印加を停止する。これにより、ゲート電圧Vgeが下降して0VになりパワートランジスタTP1がターンオフするが、図4の場合とは異なり、スイッチ素子TR2がオンであるため、モニタ電圧VmonはLレベルから変化しない。したがって、診断用モニタ電圧VmondもLレベルのままとなる。
【0054】
その後、時刻t2から所定の待機時間を経過した時刻t3において、スイッチング速度切替診断部33は、診断用モニタ電圧Vmondが正常時にはHレベルとなるべきところ、Lレベルのままで変化しないことを確認する。これにより、切替指令VselがLレベルであるときの期間Trlにおける診断結果として、スイッチング速度切替部53が異常であると判断できる。
【0055】
時刻t4以降は、図4の場合と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
図6は、スイッチング速度切替部53においてスイッチ素子TR2がオフ固着した場合のタイミングチャートの例を示す図である。スイッチ素子TR2のオフ固着とは、例えば絶縁素子41の出力異常やスイッチ素子TR2のオープン故障等により、スイッチ素子TR2が切替指令Vselに関わらず常にオフ状態となる場合のことである。なお、図6において表される各信号は、図4図5と同様である。
【0057】
時刻t0~t3では、図4の場合と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
時刻t4において、スイッチング速度選択部32が切替指令VselをLレベルからHレベルに変化させる。このとき、スイッチ素子TR2がオフ固着しているため、ゲート-ソース間電圧VgsはLレベルのままで変化しない。
【0059】
次に、時刻t5において、駆動信号生成部31が駆動信号PWMをオフ(Lレベル)からオン(Hレベル)に変化させると、ドライブ回路50はゲート信号制御部51によりバッファトランジスタTR1,TR3を制御して、パワートランジスタTP1のゲート端子にバイアス電圧を印加する。これにより、ゲート電圧Vgeが上昇してパワートランジスタTP1がターンオンする。このとき診断用モニタ電圧Vmondは、図4の場合と土曜にLレベルから変化しない。
【0060】
次に、時刻t6において、駆動信号生成部31が駆動信号PWMをオン(Hレベル)からオフ(Lレベル)に変化させると、ドライブ回路50はゲート信号制御部51によりバッファトランジスタTR1,TR3を制御して、パワートランジスタTP1のゲート端子に対するバイアス電圧の印加を停止する。これにより、ゲート電圧Vgeが下降して0VになりパワートランジスタTP1がターンオフする。このとき図4の場合とは異なり、スイッチ素子TR2がオフであるため、時刻t2と同様に、スイッチ素子TR2のドレイン-ソース間にゲート電圧Vgeが印加されることで、モニタ電圧Vmonが瞬間的に上昇し、その後はゲート電圧Vgeと同様に0Vまで下降する。切替状態モニタ部70は、このときのモニタ電圧Vmonのパルス幅を延長し、診断用モニタ電圧Vmondとして出力する。これにより、診断用モニタ電圧Vmondは、時刻t6から所定のパルス幅でHレベルとなる。
【0061】
その後、時刻t6から所定の待機時間を経過した時刻t7において、スイッチング速度切替診断部33は、診断用モニタ電圧Vmondが正常時にはLレベルとなるべきところ、Hレベルであることを確認する。これにより、切替指令VselがHレベルであるときの期間Trhにおける診断結果として、スイッチング速度切替部53が異常であると判断できる。
【0062】
最後に、時刻t8において、スイッチング速度切替診断部33は一連の診断を終了し、その診断結果を上位コントローラへ出力する。
【0063】
図7は、本発明の第1の実施形態に係るスイッチング速度切替診断部33による診断処理の内容をまとめた表である。図7の表330に示したように、スイッチング速度切替診断部33は、駆動信号PWMがオン(Hレベル)からオフ(Lレベル)に変化したときの切替指令Vselと診断用モニタ電圧Vmondの組み合わせにより、スイッチング速度切替部53の状態を判断する。
【0064】
表330において、行331は、図4で説明した正常状態を表している。この場合、切替指令VselがLレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときには、診断用モニタ電圧VmondがHレベルであり、かつ、切替指令VselがHレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときには、診断用モニタ電圧VmondがLレベルであることを確認することで、スイッチング速度切替部53が正常であると判断できる。
【0065】
表330において、行332は、図5で説明したスイッチ素子TR2のオン固着状態を表している。この場合、切替指令VselがLレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときには、診断用モニタ電圧VmondがLレベルであり、かつ、切替指令VselがHレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときには、診断用モニタ電圧VmondがLレベルであることを確認することで、スイッチング速度切替部53においてスイッチ素子TR2がオン固着状態であると判断できる。
【0066】
スイッチ素子TR2がオン固着状態の場合、パワートランジスタTP1のゲート抵抗は、常にターンオフ用ゲート抵抗Roff1,Roff2の合成抵抗値となる。そのため、大電流時には通常よりもゲート抵抗が低い状態となることでサージ電圧が増加し、これがパワートランジスタTP1の耐圧を超えると、パワートランジスタTP1が故障してしまう危険がある。こうした事態を避けるため、スイッチング速度切替診断部33によりスイッチング速度切替部53の異常(スイッチ素子TR2のオン固着)が診断された場合は、電力変換装置200において、表330の行332に示すように、電圧センサ10から得られる直流電圧HVDCの状態に応じてインバータ回路300の出力電流を絞る等のリンプホーム処理を行うことが好ましい。なお、リンプホーム処理の具体例については、後で図8を参照して説明する。
【0067】
表330において、行333は、図6で説明したスイッチ素子TR2のオフ固着状態を表している。この場合、切替指令VselがLレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときには、診断用モニタ電圧VmondがHレベルであり、かつ、切替指令VselがHレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときには、診断用モニタ電圧VmondがHレベルであることを確認することで、スイッチング速度切替部53においてスイッチ素子TR2がオフ固着状態であると判断できる。
【0068】
スイッチ素子TR2がオフ固着状態の場合、パワートランジスタTP1のゲート抵抗は、常にターンオフ用ゲート抵抗Roff1となる。そのため、小電流時には通常よりもゲート抵抗が高い状態となることでパワートランジスタTP1の損失が増加するが、これによってパワートランジスタTP1の故障が生じることはない。そのため、この場合は診断結果に対するアラームを出力して、リンプホームは実施しない。
【0069】
表330において、行334は、図4図6で説明した以外の場合を表している。この場合、切替指令VselがLレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときには、診断用モニタ電圧VmondがLレベルであり、かつ、切替指令VselがHレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときには、診断用モニタ電圧VmondがHレベルである。すなわち、切替指令Vselと診断用モニタ電圧Vmondの関係が正常時とは反対になっており、これは通常ではありえない状態である。そのため、このような状態を確認した場合、スイッチング速度切替診断部33は、切替状態モニタ部70が異常であると判断して、診断結果に対するアラームを出力する。
【0070】
図8は、リンプホーム処理の具体例を示す図である。前述のように、スイッチング速度切替診断部33においてスイッチ素子TR2のオン固着が診断された場合、電力変換装置200は、インバータ回路300の出力電流を絞るためのリンプホーム処理を実施する。図8では、このリンプホーム処理の具体例の概要を示している。図8において、横軸はパワートランジスタTP1に流れるコレクタ電流Icの電流実行値(Arms)、縦軸はパワートランジスタTP1に印加されるコレクタ-エミッタ間のピーク電圧値Vcep(V)をそれぞれ表している。
【0071】
図3で説明したように、スイッチ素子TR2が正常である場合は、コレクタ電流Icが電流閾値Igcよりも大きい場合はスイッチ素子TR2がオフに切り替えられることで、パワートランジスタTP1のゲート抵抗値を大きくして、ピーク電圧値VcepがパワートランジスタTP1の耐圧Vlimitを超えないように制御される。しかしながら、スイッチ素子TR2がオン固着の場合は、パワートランジスタTP1のゲート抵抗値を大きくすることができないため、そのままではピーク電圧値Vcepが図8の曲線81に示すように変化し、耐圧Vlimitを超えてしまうことがある。
【0072】
そこで、スイッチング速度切替診断部33でスイッチ素子TR2のオン固着が診断された場合、駆動信号生成部31は、駆動信号PWMの生成処理において、コレクタ電流Icが耐圧Vlimitに対応する上限値Ic_limitを超えないように制限するリンプホーム処理を行う。これにより、スイッチ素子TR2がオン固着した場合であっても、パワートランジスタTP1が大電流によって破壊されてしまうのを防ぐことができる。
【0073】
ただし、高圧バッテリ901からインバータ回路300に印加される直流電圧HVDCが所定の制限電圧HVDC-limpよりも低い場合は、スイッチ素子TR2がオン固着しても、ピーク電圧値Vcepは図8の曲線82に示すように変化し、パワートランジスタTP1の耐圧Vlimitを超えるおそれがない。したがってこの場合には、リンプホーム処理を行わなくてもよい。
【0074】
以上、本発明の第1の実施形態によれば、スイッチング速度切替部53の診断により、電力変換装置200の信頼性を向上させることが可能となる。
【0075】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0076】
(1)電力変換装置200は、複数のパワー半導体素子(パワートランジスタTP1)を有し、パワートランジスタTP1のスイッチング動作によって直流電力を交流電力に変換する。電力変換装置200は、パワートランジスタTP1を駆動するゲート信号を生成してパワートランジスタTP1に出力するゲート信号生成部52と、ゲート信号に応じたパワートランジスタTP1のスイッチング速度を切り替えるスイッチング速度切替部53と、を有するドライブ回路50と、パワートランジスタTP1の駆動を制御する駆動信号PWMを生成してドライブ回路50に出力する駆動信号生成部31と、直流電力の電圧HVDCを計測する電圧センサ10と、交流電力の電流Ioを計測する電流センサ20と、スイッチング速度選択部32と、切替状態モニタ部70と、スイッチング速度切替診断部33とを備える。スイッチング速度選択部32は、電圧センサ10と電流センサ20によりそれぞれ計測された電圧HVDCおよび電流Ioの値に基づいて、パワートランジスタTP1の目標スイッチング速度を選択し、目標スイッチング速度の選択結果に応じた切替指令Vselをスイッチング速度切替部53へ送信する。切替状態モニタ部70は、スイッチング速度切替部53においてスイッチング速度の切替に応じて変化するモニタ電圧Vmonを計測し、モニタ電圧Vmonのパルス幅を延長した診断用モニタ電圧Vmondを出力する。スイッチング速度切替診断部33は、駆動信号PWM、切替指令Vselおよび診断用モニタ電圧Vmondに基づいて、スイッチング速度切替部53の診断を行う。このようにしたので、ゲート抵抗の切替機能を有する電力変換装置200の診断を実現して信頼性を向上することができる。
【0077】
(2)ゲート信号生成部52は、所定のバイアス電圧が印加されたターンオン用ゲート抵抗Ronと、パワートランジスタTP1の低電位側に接続された第1のターンオフ用ゲート抵抗Roff1と、を有し、パワートランジスタTP1のゲート端子の接続先をターンオン用ゲート抵抗Ronとターンオフ用ゲート抵抗Roff1との間で切り替えることによりゲート信号を生成する。スイッチング速度切替部53は、ターンオフ用ゲート抵抗Roff1と並列に接続された第2のターンオフ用ゲート抵抗Roff2と、ターンオフ用ゲート抵抗Roff2とパワートランジスタTP1の低電位側との間の電気的接続を切替指令Vselに応じて導通または遮断するスイッチ素子TR2と、を有する。切替状態モニタ部70は、ターンオフ用ゲート抵抗Roff2とスイッチ素子TR2との間の電圧をモニタ電圧Vmonとして計測する。このようにしたので、スイッチ素子TR2の状態に応じて変化するモニタ電圧Vmonを計測することができる。
【0078】
(3)スイッチング速度切替部53は、切替指令VselがLレベルのときにはターンオフ用ゲート抵抗Roff2とパワートランジスタTP1の低電位側との間の接続を遮断し、切替指令VselがHレベルのときにはターンオフ用ゲート抵抗Roff2とパワートランジスタTP1の低電位側との間の接続を導通するように、スイッチ素子TR2を動作させる。スイッチング速度切替診断部33は、
(a)切替指令VselがLレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときに診断用モニタ電圧VmondがHレベルであり、かつ、切替指令VselがHレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときに診断用モニタ電圧VmondがLレベルである場合は、スイッチング速度切替部53が正常であると判断し(図7の行331)、
(b)切替指令VselがLレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときに診断用モニタ電圧VmondがLレベルであり、かつ、切替指令VselがHレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときに診断用モニタ電圧VmondがLレベルである場合は、スイッチング速度切替部53においてスイッチ素子TR2がオン固着状態であると判断し(図7の行332)、
(c)切替指令VselがLレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときに診断用モニタ電圧VmondがHレベルであり、かつ、切替指令VselがHレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときに診断用モニタ電圧VmondがHレベルである場合は、スイッチング速度切替部53においてスイッチ素子TR2がオフ固着状態であると判断する(図7の行333)。
このようにしたので、スイッチ素子TR2のオン固着状態やオフ固着状態が生じた場合に、これを確実に判断することができる。
【0079】
(4)スイッチング速度切替診断部33は、切替指令VselがLレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときに診断用モニタ電圧VmondがLレベルであり、かつ、切替指令VselがHレベルで駆動信号PWMがオンからオフに変化したときに診断用モニタ電圧VmondがHレベルである場合は、切替状態モニタ部70が異常であると判断する(図7の行334)。このようにしたので、切替状態モニタ部70が異常である場合にもこれを確実に判断することができる。
【0080】
(5)スイッチング速度切替診断部33によりスイッチ素子TR2がオン固着状態であると判断され、かつ、電圧センサ10によって計測された電圧HVDCの値が所定の制限電圧HVDC-limp以上の場合、図8に示したリンプホーム処理によって交流電力の電流を制限することが好ましい。このようにすれば、スイッチ素子TR2がオン固着した場合であっても、パワートランジスタTP1が大電流によって破壊されてしまうのを防ぐことができる。
【0081】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図9を用いて説明する。本実施形態に係る電力変換装置は、第1の実施形態と同様の構成を有している。本実施形態と第1の実施形態との相違点は、スイッチング速度切替診断部33におけるスイッチング速度切替部53の診断方法にある。
【0082】
本実施形態では、スイッチング速度切替診断部33は、診断用モニタ電圧Vmondの周期を計測し、その計測結果に基づいてスイッチング速度切替部53の状態を判断する。具体的には、以下で説明する図9の表にしたがって、スイッチング速度切替部53が正常であるか異常であるかを判断し、スイッチング速度切替部53の診断を行う。
【0083】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るスイッチング速度切替診断部33による診断処理の内容をまとめた表である。図9の表340に示したように、スイッチング速度切替診断部33は、診断用モニタ電圧Vmondの周期を計測し、その周期を駆動信号PWMの周期と比較することにより、スイッチング速度切替部53の状態を判断する。
【0084】
表340において、行341は、スイッチ素子TR2のオフ固着状態を表している。この場合、切替指令VselがLレベルとHレベルであるときに駆動信号PWMをそれぞれオンオフする処理を1セットとして、この処理を周期的に繰り返すと、診断用モニタ電圧VmondがHレベルとなる周期は、図6で示したように駆動信号PWMの周期と一致する。これを確認することで、スイッチング速度切替部53においてスイッチ素子TR2がオフ固着状態であると判断できる。
【0085】
表340において、行342は、スイッチング速度切替部53が正常な状態を表している。この場合、上記処理を周期的に繰り返すと、診断用モニタ電圧VmondがHレベルとなる周期は、図4で示したように駆動信号PWMの周期の2倍(1周期当たりの回数が半分)となる。これを確認することで、スイッチング速度切替部53においてスイッチング速度切替部53が正常であると判断できる。
【0086】
表340において、行343は、スイッチ素子TR2のオン固着状態を表している。この場合、図5で示したように診断用モニタ電圧VmondはHレベルとならないため、上記処理を周期的に繰り返しても、診断用モニタ電圧VmondがHレベルとなる周期は計測不能である。これを確認することで、スイッチング速度切替部53においてスイッチ素子TR2がオン固着状態であると判断できる。
【0087】
なお、図7に示した表330における行334の状態、すなわち切替指令Vselと診断用モニタ電圧Vmondの関係が正常時とは反対になっている場合に、診断用モニタ電圧VmondがHレベルとなる周期は、正常時と同様に駆動信号PWMの周期の2倍となる。そのため、この場合は切替状態モニタ部70が異常の可能性があるが、本実施形態では正常と判断する。
【0088】
以上、本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、スイッチング速度切替部53の診断により、電力変換装置200の信頼性を向上させることが可能となる。
【0089】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、スイッチング速度切替部53は、切替指令VselがLレベルのときにはターンオフ用ゲート抵抗Roff2とパワートランジスタTP1の低電位側との間の接続を遮断し、切替指令VselがHレベルのときにはターンオフ用ゲート抵抗Roff2とパワートランジスタTP1の低電位側との間の接続を導通するように、スイッチ素子TR2を動作させる。スイッチング速度切替診断部33は、診断用モニタ電圧Vmondの周期を計測し、その周期に基づいて、スイッチング速度切替部53の診断を行う。具体的には、
(a)診断用モニタ電圧Vmondの周期が駆動信号PWMの周期の2倍である場合は、スイッチング速度切替部53が正常であると判断し(図9の行342)、
(b)診断用モニタ電圧Vmondの周期が計測できない場合は、スイッチング速度切替部53においてスイッチ素子TR2がオン固着状態であると判断し(図9の行343)、
(c)診断用モニタ電圧Vmondの周期が駆動信号PWMの周期と一致する場合は、スイッチング速度切替部53においてスイッチ素子TR2がオフ固着状態であると判断する(図9の行341)。
このようにしたので、第1の実施形態と同様に、スイッチ素子TR2のオン固着状態やオフ固着状態を確実に判断することができる。
【0090】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、図10および図11を用いて説明する。
【0091】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る電力変換装置の主要構成を示す回路ブロック図である。図10の回路ブロック図において、第1の実施形態で説明した図2の回路ブロック図との相違点は、切替状態モニタ部70とコントローラ100aの間にAND回路80が設けられている点である。
【0092】
AND回路80は、インバータ回路300において上アームを構成する3つのパワートランジスタに対して共通に設けられており、これら上3アーム分のパワートランジスタの各切替状態モニタ部70から診断用モニタ電圧Vmondが入力される。AND回路80は、入力された上3アーム分の診断用モニタ電圧Vmondの論理積を演算し、その演算結果をコントローラ100aに出力する。なお、各アームの駆動信号PWMおよび切替指令Vselは、互いに同期して出力されるものとする。
【0093】
スイッチング速度切替診断部33は、AND回路80から入力される上3アーム分の診断用モニタ電圧Vmondの論理積に基づいて、上3アーム分のスイッチング速度切替部53の診断をまとめて行う。これにより、ソフト側の負荷を低減して、より効率的にスイッチング速度切替部53の診断を行うことが可能となる。なお、下3アームについても同様の構成が可能である。
【0094】
図11は、本発明の第3の実施形態に係るAND回路80の入力信号と出力信号の関係をまとめた真理値表である。図11の表に示すとおり、AND回路80に入力される上3アーム分の診断用モニタ電圧Vmondのうちいずれか1アームでもLレベルになると、AND回路80からの出力信号はLレベルとなる。なお、この出力信号による上3アーム分のスイッチング速度切替部53の診断は、第1の実施形態で説明した図7の表330に従って、第1の実施形態と同様に行うことができる。
【0095】
以上説明した本発明の第3の実施形態によれば、電力変換装置200は、パワー半導体素子を上アームと下アームにそれぞれ配置した複数のレグが互いに並列接続されたインバータ回路300を有する。スイッチング速度切替診断部33は、インバータ回路300の各上アームに対する駆動信号PWMと切替指令Vselを同期させたときの診断用モニタ電圧Vmondの論理積に基づいて、各上アームに対応して設けられたスイッチング速度切替部53の診断をまとめて実施する。また、インバータ回路300の各下アームに対する駆動信号PWMと切替指令Vselを同期させたときの診断用モニタ電圧Vmondの論理積に基づいて、各下アームに対応して設けられたスイッチング速度切替部53の診断をまとめて実施する。このようにしたので、インバータ回路300の各アームに対して設けられたスイッチング速度切替部53の診断を効率的に行うことができる。
【0096】
なお、以上説明した各実施形態では、切替指令VselがLレベルとHレベルであるときに駆動信号PWMをオンオフする処理を1周期ずつ行い、このときの診断用モニタ電圧Vmondを用いてスイッチング速度切替部53の診断を行っているが、誤診断を防止するため、スイッチング速度切替部53の診断を複数回行ったときの各診断結果に基づいて、スイッチング速度切替部53に対する最終的な診断結果を得るようにしてもよい。例えば、切替指令VselがLレベルとHレベルであるときに、駆動信号PWMをそれぞれ複数回ずつオンオフし、その都度スイッチング速度切替部53の診断を行う。そして、得られた各診断結果の合計値を、最終的な診断結果として用いることができる。
【0097】
また、以上説明した各実施形態において、スイッチング速度切替診断部33がスイッチング速度切替部53の診断を行うタイミングは、任意に設定することができる。例えば、電力変換装置200に起動時に初期診断として実施してもよいし、電力変換装置200の運用中にリアルタイムで実施してもよい。
【0098】
また、以上説明した各実施形態では、パワートランジスタTP1のターンオフ側のスイッチング切替機能について説明しているが、同様の機能を用意すれば、ターンオン側についても適用可能である。
【0099】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0100】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
10:電圧センサ、20:電流センサ、31:駆動信号生成部、32:スイッチング速度選択部、33:スイッチング速度切替診断部、40,41,42:絶縁素子、50:ドライブ回路、51:ゲート信号制御部、52:ゲート信号生成部、53:スイッチング速度切替部、70:切替状態モニタ部、80:AND回路、100a:コントローラ、100b:ドライバ、200:電力変換装置、300:インバータ回路、500:電圧平滑用キャパシタ、900:モータ、901:高圧バッテリ、TP1:パワートランジスタ、DP1:還流ダイオード、Ron:ターンオン用ゲート抵抗、Roff1,Roff2:ターンオフ用ゲート抵抗、TR1,TR3:バッファトランジスタ、TR2:スイッチ素子
図1
図2
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図6
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図9
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図11