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特開2024-163809ステーターの製造方法及びステーター
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  • 特開-ステーターの製造方法及びステーター 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163809
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ステーターの製造方法及びステーター
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/12 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
H02K15/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079710
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】峯田 由計
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP12
5H615PP28
5H615SS10
5H615SS13
5H615SS44
(57)【要約】
【課題】ステーターの損傷を抑制しつつ、ローターの配置スペースを確保することが可能なステーターの製造方法を提供する。
【解決手段】環状のステーターコア5にコイル7を取り付けた半製品17をケース3内に収容し、ステーターコア5の内周5aに非磁性体の筒状体9を位置させ、筒状体9の軸方向の端部9a及び9bの剛性が筒状体9の他の部分9cの剛性よりも低く、筒状体9の端部9a及び9bをそれぞれケース3に当接させることで半製品17が収容されたケース3の収容空間3cに対して筒状体9の内部空間9dを密閉し、収容空間3cに樹脂を充填して硬化させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のステーターコアに取り付けられたコイルが樹脂により覆われたステーターの製造方法であって、
前記環状のステーターコアに前記コイルを取り付けた半製品をケース内に収容し、
前記ステーターコアの内周に非磁性体の筒状体を位置させ、前記筒状体の軸方向の端部の剛性が前記筒状体の他の部分の剛性よりも低く、
前記筒状体の前記端部をそれぞれ前記ケースに当接させることで前記半製品が収容された前記ケースの収容空間に対して前記筒状体の内部空間を密閉し、
前記収容空間に樹脂を充填して硬化させる、
ステーターの製造方法。
【請求項2】
請求項1のステーターの製造方法であって、
前記ケースは、モーターハウジングをエンドプレートによって閉止して構成され、前記収容空間に前記半製品を収容した状態で前記軸方向の両側に開口を備え、
前記筒状体は、前記端部がそれぞれ前記開口の縁部に当接し前記内部空間が前記開口に連通する、
ステーターの製造方法。
【請求項3】
請求項1のステーターの製造方法であって、
前記ケースは、モールド型であり、前記収容空間に充填された樹脂の硬化後に取り外される、
ステーターの製造方法。
【請求項4】
請求項1のステーターの製造方法であって、
前記筒状体は、前記端部とその他の部分とで異なる樹脂からなる、
ステーターの製造方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項のステーターの製造方法であって、
前記筒状体は、複数の筒体を軸方向に結合してなり、各筒体は、前記軸方向の端部の剛性が他の部分の剛性よりも低い、
ステーターの製造方法。
【請求項6】
請求項5のステーターの製造方法であって、
前記各筒体の前記端部の一方が前記端部の他方よりも径が小さく、
前記軸方向で隣接する筒体間において前記端部が嵌合する、
ステーターの製造方法。
【請求項7】
環状のステーターコアと、
前記ステーターコアに取り付けられたコイルと、
前記ステーターコアの内周に位置する非磁性体の筒状体と、
前記コイルを覆うと共に前記筒状体と一体化された樹脂部と、
を備え、
前記筒状体の軸方向の端部の剛性が前記筒状体の他の部分の剛性よりも低い、
ステーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステーターコアに取り付けられたコイルが樹脂により覆われたステーターの製造方法及びステーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のステーターの製造方法としては、例えば特許文献1に記載のように、樹脂モールドを用いるものがある。この製造方法では、環状のステーターコアにコイルを取り付けた半製品をハウジング内に収容し、ハウジングにカバーを取り付けて内部に樹脂を充填する。
【0003】
こうして製造されたステーターは、ステーターコアの内周にローターが配置されて回転電機を構成する。このため、従来の製造方法では、ステーターコアの内周に円柱部を配置して樹脂が充填されないようにし、ローターの配置スペースを確保している。
【0004】
かかる円柱部は、樹脂が硬化した後に取り外す必要がある。しかし、高温状態で樹脂が硬化すると、室温状態では樹脂が収縮するため、円柱部の取り外しに高負荷を必要とし、ステーターを損傷するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6107401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、ローターの配置スペースを確保するためにステーターが損傷するおそれがあった点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、環状のステーターコアに取り付けられたコイルが樹脂により覆われたステーターの製造方法であって、前記環状のステーターコアに前記コイルを取り付けた半製品をケース内に収容し、前記ステーターコアの内周に非磁性体の筒状体を位置させ、前記筒状体の軸方向の端部の剛性が前記筒状体の他の部分の剛性よりも低く、前記筒状体の前記端部をそれぞれ前記ケースに当接させることで前記半製品が収容された前記ケースの収容空間に対して前記筒状体の内部空間を密閉し、前記収容空間に樹脂を充填して硬化させる、ステーターの製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、環状のステーターコアと、前記ステーターコアに取り付けられたコイルと、前記ステーターコアの内周に位置する非磁性体の筒状体と、前記コイルを覆うと共に前記筒状体と一体化された樹脂部と、を備え、前記筒状体の軸方向の端部の剛性が前記筒状体の他の部分の剛性よりも低い、ステーターを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ステーターの損傷を抑制しつつ、ローターの配置スペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施例1に係るステーターを示す概略断面図である。
図2図2は、図1のステーターに用いられる筒状体を示す拡大断面図である。
図3図3は、本発明の実施例1にかかるステーターの製造方法を示す断面図である。
図4図4は、本発明の実施例2に係るステーターの製造方法に用いられる筒状体を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ステーターの損傷を抑制しつつ、ローターの配置スペースを確保するという目的を、筒状体をステーターコアの内周に配置することによって実現した。
【0012】
図3のように、ステーター1の製造方法は、環状のステーターコア5に取り付けられたコイル7が樹脂により覆われたステーター1を製造するものである。まず環状のステーターコア5にコイル7を取り付けた半製品17をケース3内に収容する。ケース3内に収容したステーターコア5の内周には、軸方向の端部9a及び9bの剛性が他の部分9cの剛性よりも低い非磁性体の筒状体9を位置させる。筒状体9の端部9a及び9bをそれぞれケース3に当接させることで半製品17が収容されたケース3の収容空間3cに対して筒状体9の内部空間9dを密閉する。そして、収容空間3cに樹脂を充填して硬化させる。
【0013】
ケース3は、種々のものを採用可能である。一実施形態として、ケース3は、モーターハウジング13をエンドプレート15によって閉止して構成されたものであってもよい。この場合、ケース3は、収容空間3cに半製品17を収容した状態で軸方向の両側に開口3a及び3bを備える。筒状体9は、端部9a及び9bがそれぞれ開口3a及び3bの縁部に当接し、内部空間9dが開口3a及び3bに連通する。
【0014】
筒状体9の材質は、非磁性体であれば種々のものを採用可能である。一実施形態として、筒状体9は、端部9a及び9bとその他の部分9cとで異なる樹脂からなってもよい。
【0015】
筒状体9は、単一の筒体で構成するほか、複数の筒体19を軸方向に結合して構成してもよい。各筒体19は、軸方向の端部19a及び19bの剛性が他の部分19cの剛性よりも低い構成であってもよい。
【0016】
この場合において、各筒部19の端部の一方19aが同他方19bよりも径が大きく、軸方向で隣接する筒体19間において端部19a及び19bが嵌合してもよい。
【0017】
製造されたステーター1は、ステーターコア5と、コイル7と、筒状体9と、樹脂部11とを備える。ステーターコア5は、環状であり、コイル7が取り付けられている。筒状体9は、ステーターコア5の内周に位置し、軸方向の端部9a及び9bの剛性が他の部分9cの剛性よりも低い非磁性体製である。樹脂部11は、コイル7を覆うと共に筒状体9を一体化させる。
【実施例0018】
[ステーター]
図1は、本発明の実施例1に係るステーターを示す概略断面図である。図2は、図1のステーターに用いられる筒状体を示す断面図である。
【0019】
図1のステーター1は、図示しないローターと共に回転電機を構成するものである。このステーター1は、ケース3と、ステーターコア5と、コイル7と、筒状体9と、樹脂部11とを有する。
【0020】
ケース3は、モーターハウジング13とエンドプレート15とで構成されている。モーターハウジング13は、アルミニウム等の金属からなる筒状部材である。エンドプレート15は、アルミニウム等の金属からなる板状体である。
【0021】
モーターハウジング13の軸方向の一端は、一体の壁部13aが設けられ、他端は、エンドプレート15が設けられている。これにより、ケース3は、モーターハウジング13をエンドプレート15によって閉止して構成されている。
【0022】
かかるケース3は、軸方向の両側に内外を連通する開口3a及び3bが設けられている。一方の開口3aは、壁部13aに設けられ、他方の開口3bは、エンドプレート15に設けられている。
【0023】
ステーターコア5は、環状に構成され、モーターハウジング13内に配置される。このステーターコア5は、例えば、電磁鋼板からなる環状板材であるコア片を複数積層して円筒状に形成されている。ステーターコア5の内周5aは、軸方向の開口部となっている。
【0024】
コイル7は、例えば銅等からなる丸線をステーターコア5に上下方向に巻装されて構成されている。なお、コイル7は、例えばステーターコア5に取り付けられた銅等からなるU字状の複数のセグメントコイルを結合して構成されてもよい。
【0025】
図1及び図2に示す筒状体9は、ステーターコア5の内周5aに位置し、軸方向の端部9a及び9bの剛性が他の部分である本体部9cの剛性よりも低い非磁性体からなる。この筒状体9は、端部9a及び9bがそれぞれ開口3a及び3bの縁部に軸方向で当接し、内部空間9dが開口3a及び3bに連通する。なお、開口3a及び3bの縁部とは、開口3a及び3bを区画する周縁部をいう。
【0026】
本実施例において、筒状体9は、樹脂によって構成されている。本体部9cと端部9a及び9bの材質は、異なるものとなっている。この筒状体9は、例えば二色成形によって形成することができる。
【0027】
ただし、本体部9cと端部9a及び9bの材質を同一とし、それらの剛性を形状によって異ならせることも可能である。例えば、端部9a及び9bは、パイプの端部をカールしてばねのようにしたものであってもよい。また、筒状体9は、チタン、ステンレス、アルミ等の樹脂以外の非磁性体で構成することも可能である。さらに、筒状体9は、樹脂と樹脂以外の非磁性体とを組み合わせ、例えば端部9a及び9bを樹脂で形成し、本体部9cを樹脂以外の非磁性体で形成してもよい。
【0028】
本体部9cは、筒状体9の大部分を占める円筒状となっている。ただし、本体部9cは、軸方向の長さをより小さいものとしてもよい。また、本体部9cは、円筒状である必要はなく、角筒等の他の横断面形状を有する筒状であってもよい。さらに、本体部9cは、波形状、テーパー状等の他の縦断面形状を有する筒状であってもよい。
【0029】
この本体部9cは、ローターを配置するスペースである内部空間9dを確保するため、肉厚を薄く形成することが好ましい。従って、本実施例のように、樹脂からなる本体部9cは、硬化前の流動性が高い材質とする。また、本体部9cには、モーターの発熱に対する耐熱性が要求される。従って、本体部9cは、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)やLCP(液晶ポリマー)によって構成する。
【0030】
端部9a及び9bは、断面円形のリング状に構成され、Oリングのような形状を有している。端部9a及び9bの断面における径は、本体部9cの径方向の肉厚よりも大きい。なお、端部9a及び9bの断面形状は任意に設定可能である。例えば、端部9a及び9bは、本体部9cの径方向の肉厚よりも小さい径を有してもよい。また、端部9a及び9bは、本体部9cと同様な筒状等とし、軸方向の長さをOリング状の場合より大きくしてもよい。
【0031】
かかる端部9a及び9bは、ケース3の開口3a及び3bの縁部に当接することで、ケース3のステーターコア5、コイル7、及び樹脂部11を収容する収容空間3cに対して筒状体9の内部空間9dを密閉する。ここでの密閉は、収容空間3cに対して筒状体9の内部空間9dを密閉することであり、内部空間9d自体を外部から密閉することをいうのではない。本実施例の端部9a及び9bは、ケース3と本体部9cとの間で軸方向に圧縮されている。
【0032】
これら端部9a及び9bは、上記のように本体部9cよりも剛性が低く、且つ本体部9cと同様の耐熱性が要求される。従って、端部9a及び9bの材質は、シリコンゴムやフッ素ゴム等のゴム製の樹脂、若しくはエラストマー系の樹脂とするのが好ましい。
【0033】
樹脂部11は、ケース3内の収容空間3c内に充填されて硬化されている。この樹脂部11は、コイル7を覆うと共に筒状体9と一体化される。樹脂部11には、不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂等が用いられている。
【0034】
[ステーターの製造方法]
図3は、本発明の実施例1にかかるステーターの製造方法を示す断面図である。
【0035】
ステーター1を製造する際には、図3(A)のように、まずステーターコア5にコイル7を取り付けた半製品17をケース3内に収容する。
【0036】
ステーター1へのコイル7の取り付けは、周知の手法で行うことが可能である。半製品17のケース3内への収容は、例えばモーターハウジング13の開放された上方から半製品17を挿入し、モーターハウジング13の内周の突起(図示せず)等に半製品17のステーターコア5を載置する。これにより、半製品17は、モーターハウジング13内の軸方向の中央部付近に保持される。なお、半製品17の保持位置は、任意に設定可能である。
【0037】
次いで、図3(B)のように、半製品17のステーターコア5の内周に筒状体9を位置させる。具体的には、筒状体9がモーターハウジング13の上方からステーターコア5の内周5aへと挿入される。このとき、筒状体9の一方の端部9aがモーターハウジング13の開口3aの縁部に軸方向で突当られる。
【0038】
次いで、図3(C)のように、モーターハウジング13をエンドプレート15で閉止し、半製品17のケース3への収容を完了させる。かかる閉止は、モーターハウジング13の開放された上方にエンドプレート15が取り付けられることで行われる。エンドプレート15の取り付けは、ボルト等によって行えばよい。
【0039】
このとき、筒状体9の他方の端部9bがエンドプレート15の開口3bの縁部に軸方向で突当られる。これにより、筒状体9は、端部9a及び9bがそれぞれケース3に対して開口3a及び3bの縁部において軸方向に当接し、半製品17が収容されたケース3の収容空間3cに対して筒状体9の内部空間9dを密閉する。
【0040】
端部9a及び9bは、筒状体9の本体部9cよりも剛性が低いため、ケース3に密接し、内部空間9dの収容空間3cに対する密閉を確実に行うことができる。この内部空間9dの密閉は、収容空間3c内に充填された硬化前の樹脂が漏れ出さない程度であればよい。
【0041】
本実施例では、筒状体9の端部9a及び9bが圧縮される程度に行われる。ただし、内部空間9dの収容空間3cに対する密閉ができれば、端部9a及び9bを圧縮する必要はない。
【0042】
端部9a及び9bの圧縮の際は、ケース3のモーターハウジング13とエンドプレート15との間で筒状体9が狭持される。このとき、筒状体9の本体部9cは、端部9a及び9bよりも剛性が高いため、端部9a及び9bを確実に圧縮できる。
【0043】
かかる端部9a及び9bの圧縮により、筒状体9及びケース3の加工精度や累積公差、樹脂熱硬化による膨張等に拘わらず、端部9a及び9bをケース3に当接させることができる。従って、内部空間9dを収容空間3cに対して確実に密閉できる。
【0044】
次いで、図3(D)のように、収容空間3cに樹脂を充填して硬化させて樹脂部11を形成する。なお、本実施例では、ケース3を構成するモーターハウジング13及びエンドプレート15をモールド型として利用するが、上型及び下型等からなる専用のモールド型を用いてもよい。この場合、専用のモールド型がケースを構成する。
【0045】
樹脂の充填は、エンドプレート15に設けられている注入口15aを介して行えばよい。充填された樹脂は、硬化前において収容空間3cから筒状体9の内部空間9d側に漏れ出すことが抑制される。このため、漏れ出した樹脂が硬化することによるバリ等の発生も抑制できる。
【0046】
樹脂を硬化させる際には、本実施例において加熱が行われる。加熱は周知の手法によって行えばよい。
【0047】
加熱が行われると、全体として熱膨張が生じる。このとき、筒状体9は、ケース3に対する熱膨張差がある。本実施例では、端部9a及び9bがケース3に圧縮されて当接することで、この熱膨張差を吸収することができる。従って、内部空間9dを収容空間3cに対して確実に密閉でき、加熱時にも樹脂の漏れ出しを抑制することができる。
【0048】
こうして収容空間3c内の樹脂が硬化することによって、本実施例では、ケース3付きのステーター1が製造される。なお、専用のモールド型をケースとして用いる場合、ケースが収容空間3cに充填された樹脂の硬化後に取り外されて、ケースの無い状態のステーターが製造される。
【0049】
こうして製造されたステーター1では、ローターの配置スペースをステーターコア5の内周5aに位置させた筒状体9の内部空間9dによって区画する。このため、本実施例では、従来のような円柱体を使用することがない。従って、本実施例では、ステーター1の損傷を抑制しつつ、ローターの配置スペースを確保することが可能となる。また、本実施例では、従来必要とした円柱体の管理も必要ない。
【0050】
しかも、本実施例では、筒状体9の剛性が低い端部9a及び9bがケース3に当接することにより、収容空間3cに充填された硬化前の樹脂が筒状体9の内部空間9dへ漏れ出すことが抑制される。このため、樹脂の漏れ出しによるバリの発生等を抑制できる。
【0051】
また、ケース3は、モーターハウジング13をエンドプレート15によって閉止して構成され、収容空間3cに半製品17を収容した状態で軸方向の両側にステーターコア5の内周に連通する開口3a及び3bを備える。筒状体9は、端部9a及び9bがそれぞれ開口3a及び3bの縁部に当接し内部空間9dが開口3a及び3bに連通する。
【0052】
従って、本実施例では、モーターハウジング13及びエンドプレート15をモールド型として用いることができる。
【0053】
筒状体9は、端部9a及び9bと本体部9cとで異なる樹脂からなるので、簡単な構成で端部9a及び9bのケース3への当接による内部空間9dの収容空間3cに対する密閉を行うことができる。
【実施例0054】
図4は、本発明の実施例2に係るステーターの製造方法に用いられる筒状体を示す概略断面図である。なお、実施例2は、基本構成が実施例1と共通するため、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0055】
実施例2のステーター1の製造方法では、図4のように、筒状体9の構成を実施例1に対して変更されている。その他は、実施例1と同一である。
【0056】
筒状体9は、複数の筒体19を軸方向に結合してなる。各筒体19は、軸方向の端部19a及び19bの剛性が他の部分である本体部19cの剛性よりも低い。本体部19cは、実施例1の筒状体9の本体部9cよりも軸方向に短く、その他は同様に構成された筒状である。この本体部19cは、一端から他端へ向けて漸次径が大きくなっている。ここでの径は、内径及び外径である。
【0057】
端部19a及び19bは、実施例1の筒状体9の端部9a及び9bと同様に構成されたリング状である。端部19a及び19bは、本体部19cの径に応じ、一方の端部19aのリング状の内径及び外径が、他方の端部19bのリング状の内径及び外径よりも小さく形成されている。
【0058】
本実施例では、一方の端部19aが他方の端部19bの内周に篏合するサイズとなっている。軸方向で隣接する筒体19間において、端部19a及び19bが篏合している。なお、一方の端部19aの外径が他方の端部19bの内径と篏合できるように同程度であればよい。
【0059】
従って、本実施例においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。加えて、本実施例では、筒状体9を製造するための抜き勾配を設定する場合に、筒状体9の一端と他端との径の差を小さくすることができる。従って、筒状体9の一端に合わせてローターとステーター1との間の隙間を設定しても、筒状体9の他端で当該隙間が大きくなりすぎることを抑制できる。
【0060】
しかも、筒状体9を複数の筒体19で構成しても、端部19a及び19bの篏合によって複数の筒体19を一体に取り扱うことができる。
【符号の説明】
【0061】
1 ステーター
3 ケース
3a、3b 開口
3c 収容空間
5 ステーターコア
5a 内周
7 コイル
9 筒状体
9a、9b 端部
9c 本体部
9d 内部空間
11 樹脂部
13 モーターハウジング
15 エンドプレート
17 半製品
19 筒体
19a、19b 端部
19c 本体部

図1
図2
図3
図4