(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163818
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】害鳥獣防除システム
(51)【国際特許分類】
A01M 29/06 20110101AFI20241115BHJP
【FI】
A01M29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079725
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】591146239
【氏名又は名称】いであ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】益子 理
(72)【発明者】
【氏名】田悟 和巳
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 史之
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃一
(72)【発明者】
【氏名】西川 正敏
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121AA07
2B121DA26
2B121DA31
2B121DA58
2B121DA63
2B121EA21
2B121FA13
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】害鳥獣を効果的に追い払える害鳥獣防除システムを提供する。
【解決手段】害鳥獣防除システム1は、圃場3内に複数配置され、検知範囲11a、51aに害鳥獣4が侵入したことを検知する赤外線センサ11、51と、赤外線センサ11の検知信号を受けると、害鳥獣4の侵入を検知した検知範囲11a内又は近傍にて害鳥獣4を威嚇する威嚇動作を行う威嚇ロボット20と、赤外線センサ52の検知信号を受けると、害鳥獣4の侵入を検知した検知範囲52a内又は近傍にてカルガモの擬傷行為を模した擬傷動作を行う擬傷ロボット30と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に侵入又は接近した害鳥獣を追い払う害鳥獣防除システムであって、
前記圃場内又は近傍に複数配置され、検知範囲に前記害鳥獣が侵入したことを検知する侵入検知センサと、
前記侵入検知センサの検知信号を受けると、前記害鳥獣の侵入を検知した前記検知範囲内又は近傍にて前記害鳥獣を威嚇する威嚇動作を行う威嚇ロボットと、
前記侵入検知センサの検知信号を受けると、前記害鳥獣の侵入を検知した前記検知範囲内又は近傍にて鳥獣の擬傷行為を模した擬傷動作を行う擬傷ロボットと、
を備えていることを特徴とする害鳥獣防除システム。
【請求項2】
前記侵入検知センサは、前記圃場内又は近傍に複数配置され、検知範囲に前記害鳥獣が侵入したことを検知する第1の侵入検知センサを備え、
前記威嚇ロボットは、前記第1の侵入検知センサの検知信号を受けると、前記第1の侵入検知センサが前記害鳥獣の侵入を検知した前記検知範囲の位置情報に基づいて、前記第1の侵入検知センサが前記害鳥獣の侵入を検知した前記検知範囲内又は近傍へ走行し、前記威嚇動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の害鳥獣防除システム。
【請求項3】
前記侵入検知センサは、前記圃場内に複数配置され、検知範囲に前記害鳥獣が侵入したことを検知する第2の侵入検知センサを備え、
前記擬傷ロボットは、待機時には前記第2の侵入検知センサの検知範囲内に配置され、前記第2の侵入検知センサの検知信号を受けると、前記検知範囲内又は近傍にて前記擬傷動作を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の害鳥獣防除システム。
【請求項4】
前記威嚇ロボットは、
前記害鳥獣を撮像するカメラと、
前記カメラが撮像した撮像画像に基づいて、前記威嚇ロボットに対する前記害鳥獣の位置を検知する位置検知センサと、
前記位置検知センサが検知した前記害鳥獣の位置に基づいて、前記害鳥獣を追捕するように前記威嚇ロボットを走行させる走行部を制御する制御部と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の害鳥獣防除システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害鳥獣防除システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シカ、イノシシ等の害獣やカラス等の害鳥(以下、これらを総じて「害鳥獣」という)による農作物への被害が深刻であるため、銃や罠によって害鳥獣を捕獲したり、圃場を防護ネットや電気柵で囲う等の対策が講じられている。しかしながら、猟師の高齢化に伴い害鳥獣の捕獲数は減少しがちであった。また、防護ネットは害鳥獣に破壊され、また電気柵は漏電によって故障することがあった。
【0003】
また、害鳥獣対策として、音で害鳥獣を追い払う方法が知られている。特許文献1には、カラスやスズメ等の害鳥に対して、ディストレスコールや爆音等を発して野鳥の飛来を抑制したり、飛来した野鳥を追い払う装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ディストレスコールや爆音等の害鳥獣対策は、害鳥獣がすぐに慣れてしまうため、その効果が満足に得られないという問題があった。
【0006】
そこで、害鳥獣を効果的に追い払える害鳥獣防除システムを提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明に係る害鳥獣防除システムは、圃場に侵入又は接近した害鳥獣を追い払う害鳥獣防除システムであって、前記圃場内又は近傍に複数配置され、検知範囲に前記害鳥獣が侵入したことを検知する侵入検知センサと、前記侵入検知センサの検知信号を受けると、前記害鳥獣の侵入を検知した前記検知範囲内又は近傍にて前記害鳥獣を威嚇する威嚇動作を行う威嚇ロボットと、前記侵入検知センサの検知信号を受けると、前記害鳥獣の侵入を検知した前記検知範囲内又は近傍にて鳥獣の擬傷行為を模した擬傷動作を行う擬傷ロボットと、を備えている。
【0008】
また、本発明に係る害鳥獣防除システムは、前記侵入検知センサは、前記圃場内又は近傍に複数配置され、検知範囲に前記害鳥獣が侵入したことを検知する第1の侵入検知センサと、を備え、前記威嚇ロボットは、前記第1の侵入検知センサの検知信号を受けると、前記第1の侵入検知センサが前記害鳥獣の侵入を検知した前記検知範囲の位置情報に基づいて、前記第1の侵入検知センサが前記害鳥獣の侵入を検知した前記検知範囲内又は近傍へ走行し、前記威嚇動作を行うことが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る害鳥獣防除システムは、前記侵入検知センサは、前記圃場内に複数配置され、検知範囲に前記害鳥獣が侵入したことを検知する第2の侵入検知センサと、を備え、前記擬傷ロボットは、待機時には前記第2の侵入検知センサの検知範囲内に配置され、前記第2の侵入検知センサの検知信号を受けると、前記検知範囲内又は近傍にて前記擬傷動作を行うことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る害鳥獣防除システムは、前記威嚇ロボットが、前記害鳥獣を撮像するカメラと、前記カメラが撮像した撮像画像に基づいて、前記威嚇ロボットに対する前記害鳥獣の位置を検知する位置検知センサと、前記位置検知センサが検知した前記害鳥獣の位置に基づいて、前記害鳥獣を追捕するように前記威嚇ロボットを走行させる走行部を制御する制御部と、を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、害鳥獣が検知された検知領域内又は付近において、擬傷ロボットが、威嚇動作を行う威嚇ロボットの近くで擬傷動作を模した動作を行うことにより、害鳥獣に対して擬傷ロボットが威嚇ロボットに襲われて負傷したと認識させることができるため、害鳥獣を圃場から効率的に追い払うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る害鳥獣防除システムの構成を示す模式図。
【
図2】害鳥獣防除システムの構成を示すブロック図。
【
図3】第2の格納庫の位置関係を模式的に示す平面図。
【
図6】擬傷ロボットの右側の翼部が開閉する様子を示す図であり、(a)は開状態の翼部を示す側面図であり、(b)開状態の翼部を示す平面図であり、(c)は閉状態の翼部を示す側面図であり、(d)閉状態の翼部を示す平面図である。
【
図7】擬傷ロボットの右側の翼部が上下にはばたいている様子を示す図であり、(a)は下方に位置する翼部を示す正面図であり、(b)は上方に位置する翼部を示す正面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る害鳥獣防除システムの構成を示す模式図。
【
図9】第2の格納庫の位置関係を模式的に示す平面図。
【
図11】擬傷ロボットが擬傷動作を模した動作を行っている様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0014】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0015】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る害鳥獣防除システム1を示す模式図である。
図2は、害鳥獣防除システム1のブロック図である。本実施形態に係る害鳥獣防除システム1は、主に、周囲を柵2に囲まれた圃場3に侵入したカラス等の害鳥獣4を追い払うものである。害鳥獣防除システム1は、センサユニット10と、威嚇ロボット20と、擬傷ロボット30と、を備えている。
【0017】
5台のセンサユニット10が、圃場3内に千鳥状に設けられている。センサユニット10は、害鳥獣4を検知可能な侵入検知センサとしての赤外線センサ11と、通信部12と、制御部13と、を備えている。センサユニット10の設置台数は、圃場3全体をカバー可能であれば、4台以下であっても6台以上であっても構わない。
【0018】
赤外線センサ11は、検知範囲11a内への害鳥獣4の侵入を検知すると検知信号を出力する。5台の赤外線センサ11は、圃場3内に死角が生じないように各検知範囲11aが設定される。
【0019】
制御部13は、通信部12及び図示しないネットワークを介して、害鳥獣4の侵入を知らせる検知信号及び害鳥獣4を検知した検知範囲11aの位置情報を威嚇ロボット20に送る。
【0020】
威嚇ロボット20は、圃場3内を走行可能な公知の犬型ロボット等である。威嚇ロボット20は、走行部21と、通信部22と、制御部23と、記憶部24と、を備えている。威嚇ロボット20は、害鳥獣4が検知されていない待機時には、第1の格納庫40内にて待機している。威嚇ロボット20は、待機時に、第1の格納庫40の給電部41を介してバッテリー25の充電を行っている。
【0021】
走行部21は、威嚇ロボット20が四足歩行ロボットの場合には、四肢を動作させるアクチュエータ等であり、威嚇ロボット20が犬型の模型等を載置したキャタピラロボットの場合には、その模型等を載置して走行可能なキャタピラである。
【0022】
制御部23は、通信部22を介して赤外線センサ11の検知信号及び害鳥獣4を検知した検知範囲11aの位置情報を受信すると、記憶部24に予め記憶された第1の格納庫40から害鳥獣4を検知した検知範囲11aまでの移動ルートを呼び出し、この移動ルートに沿うように走行部21を駆動することにより、威嚇ロボット20が、害鳥獣4を検知したセンサユニット10の検知範囲11a又はその近傍に向けて走行する。なお、威嚇ロボット20が圃場3内を走行する経路は、予め整地されているのが好ましい。
【0023】
威嚇ロボット20は、スピーカー26を備えている。威嚇ロボット20が害鳥獣4を検知した赤外線センサ11の検知範囲11a又はその近傍に到着すると、スピーカー26は、害鳥獣4を威嚇するための犬の鳴き声等を発する。すなわち、威嚇ロボット20は、鳴き声を発して害鳥獣4を威嚇する威嚇動作を行う。
【0024】
威嚇ロボット20は、カメラ27と、位置検知センサ28と、を備えている。威嚇ロボット20が害鳥獣4を検知した赤外線センサ11の検知範囲11a又はその近傍に到着すると、カメラ27は、威嚇ロボット20の周囲を連続的に又は所定間隔おきに断続的に撮像する。位置検知センサ28は、カメラ27が撮像した撮像画像から防除対象の害鳥獣4を認識し、制御部23は、威嚇ロボット20が害鳥獣4を追尾するように走行部21を駆動する。すなわち、威嚇ロボット20は、害鳥獣4を追い回す威嚇動作を行う。
【0025】
カメラ27が撮像した撮像画像において、位置検知センサ28が害鳥獣4を認識不能になると、制御部23は、害鳥獣4を圃場3から追い払ったと判定し、記憶部24に予め記憶された第1の格納庫40までの移動ルートを呼び出し、この移動ルートに沿うように走行部21を駆動して、威嚇ロボット20が第1の格納庫40に帰還する。
【0026】
擬傷ロボット30は、走行部31と、通信部32と、制御部33と、記憶部34と、を備えている。擬傷ロボット30は、害鳥獣4が検知されていない待機時には、第2の格納庫50内にて待機している。擬傷ロボット30は、待機時に、第2の格納庫50の給電部51を介してバッテリー35の充電を行っている。なお、擬傷ロボット30は、バッテリー35で蓄電する構成に代えて、第2の格納庫50に設置された電源ケーブルから給電される構成であっても構わない。
【0027】
第2の格納庫50には、害鳥獣4の接近を検知する侵入検知センサとしての赤外線センサ52が設けられている。赤外線センサ52は、第2の格納庫50の周囲に設定された検知範囲52a内への害鳥獣4の侵入を検知すると検知信号を出力する。なお、害鳥獣4を検知可能であれば、赤外線センサ52を他のセンサに置き換えても構わない。赤外線センサ52が害鳥獣4の接近を検知すると、制御部53は、通信部54及び図示しないネットワークを介して、害鳥獣4の侵入を知らせる検知信号を擬傷ロボット30に送る。
【0028】
なお、
図3に示すように、第2の格納庫50は、害鳥獣4が圃場3内の何れに飛来した場合であっても追い払えるように圃場3内に複数設けられ、擬傷ロボット30が第2の格納庫50にそれぞれ格納されているのが好ましい。
図3に示すレイアウトでは、第2の格納庫50が、圃場3の四隅及び圃場3の中央にそれぞれ隙間を空けて配置されている。なお、符号55は、擬傷ロボット30と第2の格納庫50とを繋ぐリードである。
【0029】
図4に示すように、擬傷ロボット30は、カルガモを模したロボットである。なお、擬傷ロボット30のモデルは、カルガモに限らず、カラス、ムクドリ、ハクセキレイ、スズメ又はハト等であっても構わない。
【0030】
走行部31は、本体36の下部に設けられた左右一対の楕円状の車輪31aと、車輪31aを駆動する図示しないモータと、を備えている。モータを駆動して車輪31aが回転することにより、擬傷ロボット30は上下しながら走行する。車輪31aの外側面には、カルガモの足を模した脚部パーツ31bが接着されている。
【0031】
図4、
図5に示すように、擬傷ロボット30の本体36は、胴体部36aと、頭部36bと、翼部36cと、尾羽部36dと、を備えている。本体36のサイズは、実物のカルガモのサイズに近いものに設定されており、例えば、頭部36bから尾羽部36dまでの全長は35~65cmに設定され、翼部36cを拡げた状態の翼開長は65~90cmに設定されている。
【0032】
胴体部36aには、穴36aaが形成されている。翼部36cや尾羽部36dのはばたき等に連動して、穴36aa内に設置された図示しない発煙装置から煙等を噴出することにより、擬傷ロボット30が銃で撃たれた状態を模すことができる。また、胴体部36aに内蔵されたスピーカー36abから、カルガモの悲鳴音、発砲音、犬の鳴き声又は襲撃音等が発せられる。
【0033】
翼部36cは、胴体部36aから左右にそれぞれ設けられている。翼部36cは、複数の骨組36caが蝶番等の図示しない関節を介して折り畳み可能に連結されている。骨組36caは、例えば、金属、樹脂又は木材等から成る。関節は、所定角度以上に開かないように開度が制限されているとともに、関節が開状態を維持するように付勢する付勢手段が設けられている。初列風切羽を模した先端側羽36cb、次列風切羽を模した中間羽36cc及び三列風切羽を模した基端側羽36cdは、例えば、金属、樹脂又は木材から成る。
【0034】
尾羽部36dは、図示しない関節を介して胴体部36aに接続されており、尾羽部36dは、図示しないアクチュエータを介して上下に羽ばたき可能に構成されている。
【0035】
擬傷ロボット30は、翼部36cを折り畳む機構37と、翼部36cをはばたかせる機構38と、を備えている。
【0036】
図6(a)、(b)に示すように、翼部36cを折り畳む機構37は、翼部36cの先端から基端に亘って、関節に設けられたリング37aを通るように張り巡らされたワイヤー37bと、ワイヤー37bの基端側に接続されたアクチュエータ(ACTR)37cと、を備えている。アクチュエータ37cが、ワイヤー37bを巻き取ってワイヤー37bに引張力を作用させることにより、
図6(c)、(d)に示すように、関節回りで骨組36caを開く付勢手段の付勢力に抗して骨組36caが折り畳まれる。また、アクチュエータ37cがワイヤー37bに作用させる引張力を解除すると、関節に設けられた付勢手段によって翼部36cが展開される。
【0037】
図7(a)、(b)に示すように、翼部36cをはばたかせる機構38は、胴体部36aに設けられるとともに上腕骨を模した2本一対の骨組36caの一方の支点Pを支持するフレーム38aと、図示しないによって回転可能なギア38bと、2本一対の骨組36caの基端側とギア38bとを連結する連結部材38cと、を備えている。なお、2本一対の骨組36caの先端には、関節36ceを介して1本の前腕骨を模した骨組36caに連結されている。
【0038】
図7(a)に示すように、ギア38bが
図7紙面上で時計回りに回転することにより、連結部材38cが骨組36caの基端側を側方に引っ張ることにより、先端側の骨組36caが倒れ込む。また、
図7(b)に示すように、ギア38bが
図7紙面上で反時計回りに回転することにより、連結部材38cが骨組36caの基端側を下方に引っ張ることにより、先端側の骨組36caが立ち上がる。このような動作を反復することにより、擬傷ロボット30は、カルガモの羽ばたきを模した動作を行うことができる。
【0039】
制御部33は、通信部32を介して害鳥獣4を検知した赤外線センサ52の検知信号を受信すると、擬傷ロボット30は、第2の格納庫50から外に出て、カルガモの擬傷動作を模した動作を所定時間(例えば、20秒間)行う。
【0040】
ここで、擬傷動作とは、野生の鳥獣が傷を負って飛べずにいる様子を演じている動作をいい、擬傷ロボット30が行う擬傷動作を模した動作とは、翼部36c及び尾羽部36dのはばたきや開閉、車輪31aの回転及びスピーカー36abから悲鳴音を発生する等して、カルガモの擬傷動作を模した動作をいう。
【0041】
擬傷ロボット30が、威嚇動作を行う威嚇ロボット20の近くでカルガモの擬傷動作を模した動作を行うことにより、害鳥獣4に対して擬傷ロボット30が威嚇ロボット20に襲われて負傷したと認識させることができる。また、威嚇ロボット20のスピーカー26から犬の鳴き声等を発することにより、害鳥獣4に対して擬傷ロボット30が威嚇ロボット20に襲われていると認識させることができる。
【0042】
その後、擬傷ロボット30に繋がれたリード55が巻き取られることにより、擬傷ロボット30は、第2の格納庫50に帰還する。
【0043】
なお、擬傷ロボット30が第2の格納庫50の外に出る際には、第2の格納庫50内に設けられたバネ等で擬傷ロボット30を付勢して第2の格納庫50外に放出するように構成することが考えられる。
【0044】
また、第2の格納庫50の赤外線センサ52による害鳥獣4の検知に代えて、害鳥獣4を検知したセンサユニット10の検知範囲11aの位置情報を擬傷ロボット30に送り、害鳥獣4を検知した検知範囲11a近傍に位置する第2の格納庫50内の擬傷ロボット30を第2の格納庫50外に放出するように構成しても構わない。
【0045】
また、侵入検知センサは、害鳥獣4を検知可能であれば、赤外線センサ11、52に代えて他のセンサであっても構わない。
【0046】
このようにして、本実施形態に係る害鳥獣防除システム1は、圃場3に侵入又は接近した害鳥獣4を追い払う害鳥獣防除システム1であって、圃場3内に複数配置され、検知範囲11a、52aに害鳥獣4が侵入したことを検知する赤外線センサ11、52と、赤外線センサ11の検知信号を受けると、害鳥獣4の侵入を検知した検知範囲11a内又は近傍にて害鳥獣4を威嚇する威嚇動作を行う威嚇ロボット20と、赤外線センサ52の検知信号を受けると、害鳥獣4の侵入を検知した検知範囲52a内にてカルガモの擬傷行為を模した擬傷動作を行う擬傷ロボット30と、を備えている構成とした。
【0047】
このような構成により、擬傷ロボット30が、威嚇動作を行う威嚇ロボット20の近くでカルガモの擬傷動作を模した動作を行うことにより、害鳥獣4に対して擬傷ロボット30が威嚇ロボット20に襲われて負傷したと認識させることができるため、害鳥獣4を圃場3から効率的に追い払うことができる。さらに、威嚇ロボット20及び擬傷ロボット30は、害鳥獣4が飛来する度に表れて協働して害鳥獣4を追い払うことにより、害鳥獣4が防除に慣れることを抑制して、防除効果を長期間に亘って得ることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る害鳥獣防除システム1は、赤外線センサ11が、圃場3内に複数配置され、検知範囲11aに害鳥獣4が侵入したことを検知し、威嚇ロボット20は、赤外線センサ11の検知信号を受けると、赤外線センサ11が害鳥獣4の侵入を検知した検知範囲11aの位置情報に基づいて、赤外線センサ11が害鳥獣4の侵入を検知した検知範囲11a内又は近傍へ走行し、威嚇動作を行う構成とした。
【0049】
このような構成により、威嚇ロボット20は、害鳥獣4が飛来する度に害鳥獣4を検知した検知範囲11a内又は近傍へ走行して害鳥獣4を威嚇することにより、害鳥獣4が防除に慣れることを抑制して、防除効果を長期間に亘って得ることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る害鳥獣防除システム1は、赤外線センサ52が、圃場3内に複数配置され、検知範囲52aに害鳥獣4が侵入したことを検知し、擬傷ロボット30は、待機時には赤外線センサ52の検知範囲52a内に配置され、赤外線センサ52の検知信号を受けると、検知範囲52a内にてカルガモの擬傷動作を行う構成とした。
【0051】
このような構成により、擬傷ロボット30は、害鳥獣4が飛来する度に害鳥獣4を検知した検知範囲52a内にてカルガモの擬傷動作を行うことにより、害鳥獣4が防除に慣れることを抑制して、防除効果を長期間に亘って得ることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、擬傷ロボット30が走行部31により圃場3内を走行する場合を例に説明したが、擬傷ロボット30が圃場3内を移動する構成はこれに限定されず、例えば、圃場3内においてワイヤー又はレールを所定高さに張り巡らせ、擬傷ロボット30を吊り下げる滑車がワイヤー又はレール上で回転することにより、擬傷ロボット30がワイヤー又はレールに沿って移動するように構成されても構わない。
【0053】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る害鳥獣防除システム1について説明する。本実施形態に係る害鳥獣防除システム1は、主に、周囲を柵2に囲まれた圃場3にシカ、イノシシ等の害鳥獣4が接近することを抑制するものである。なお、第2実施形態に係る害鳥獣防除システム1は、センサユニット10が圃場3の外周に設けられている点、擬傷ロボットとしてイノシシを模したロボットを用いる点で上述した第1実施形態に係る害鳥獣防除システム1と異なり、その他の構成は共通するため、共通する説明を省略する。
【0054】
図8は、本実施形態に係る害鳥獣防除システム1を示す模式図である。センサユニット10は、圃場3を覆う柵2の外周に設けられている。赤外線センサ11は、圃場3の周囲に検知範囲11aの死角が生じないように配置される。
【0055】
威嚇ロボット20の制御部23は、通信部22及び図示しないネットワークを介して赤外線センサ11の検知信号及び害鳥獣4を検知した検知範囲11aの位置情報を受信すると、記憶部24に予め記憶された第1の格納庫40から害鳥獣4を検知した検知範囲11aまでの移動ルートを呼び出し、移動ルートに沿って走行部21を駆動することにより、威嚇ロボット20が、害鳥獣4を検知した赤外線センサ11の検知範囲11aの近傍に向けて走行する。
【0056】
擬傷ロボット30は、害鳥獣4が検知されていない待機時には、第2の格納庫50内にて待機している。第2の格納庫50には、害鳥獣4の接近を検知する赤外線センサ52が設けられている。赤外線センサ52は、第2の格納庫50の周囲に設定された検知範囲52a内への害鳥獣4の侵入を検知すると検知信号を出力する。赤外線センサ52が害鳥獣4の接近を検知すると、制御部53は、通信部54及び図示しないネットワークを介して、害鳥獣4の侵入を知らせる検知信号を擬傷ロボット30に送る。
【0057】
図9に示すように、第2の格納庫50は、害鳥獣4が圃場3外周の何れに表れた場合であっても追い払えるように圃場3内に複数設けられ、擬傷ロボット30が第2の格納庫50にそれぞれ格納されているのが好ましい。
図9に示すレイアウトでは、第2の格納庫50が、圃場3の周縁にそれぞれ隙間を空けて配置されている。
【0058】
図10に示すように、擬傷ロボット30は、イノシシを模したロボットである。なお、擬傷ロボット30のモデルは、イノシシに限らず、シカ等であっても構わない。
【0059】
本体39は、胴体部39aと、頭部39bと、脚部39cと、尾部39dと、を備えている。本体39のサイズは、実物のシノシシのサイズに近いものに設定されている。
【0060】
胴体部39aには、穴39aaが形成されている。脚部39cや尾部39dのバタつき等に連動して、穴39aa内に設置された図示しない発煙装置から煙等を噴出することにより、銃で撃たれた状態を模すことができる。また、胴体部39aに内蔵されたスピーカー39abから、イノシシの悲鳴音、発砲音、犬の鳴き声又は襲撃音等が発せられる。
【0061】
4本の脚部39c及び尾部39dは、図示しない関節を介して胴体部39aに接続されており、脚部39c及び尾部39dは、図示しないアクチュエータにより関節回りに揺動するように構成されている。
【0062】
走行部31は、胴体部39aの下方に設けられたキャタピラ31cと、キャタピラ31cから垂直に立設され、先端が胴体部39aを回転可能に支持する支持柱31dと、を備えている。キャタピラ31cが駆動することにより、擬傷ロボット30が走行する。
【0063】
制御部33が、通信部32を介して害鳥獣4を検知した赤外線センサ52の検知信号を受信すると、擬傷ロボット30は、第2の格納庫50から外に出て、イノシシの擬傷動作を模した動作を所定時間(例えば、20秒間)行う。
【0064】
ここで、擬傷ロボット30が行うイノシシの擬傷動作を模した動作とは、脚部39cをバタつかせたり、スピーカー39abから悲鳴音を発生する等して、イノシシの擬傷動作を模した動作をいい、例えば、
図11(a)に示すように、脚部39cをロープRを介して木Tに繋げた状態で脚部39cを揺動させることにより、イノシシが罠にかかって苦しむ状態を模すことができる。また、
図11(b)に示すように、胴体部39aを支持柱31dの支持点31e回りに上下反転させ、脚部39cを前後に揺動させることにより、転倒したイノシシが脚をバタつかせて苦しむ状態を模すことができる。
【0065】
そして、擬傷ロボット30が、威嚇動作を行う威嚇ロボット20の近くでイノシシの擬傷動作を模した動作を行うことにより、害鳥獣4に対して擬傷ロボット30が威嚇ロボット20に襲われて負傷したと認識させることができる。
【0066】
このようにして、本実施形態に係る害鳥獣防除システム1は、圃場3に接近した害鳥獣4を追い払う害鳥獣防除システム1であって、圃場3の外周に複数配置され、検知範囲11aに害鳥獣4が侵入したことを検知する赤外線センサ11と、圃場3内に複数配置され、検知範囲52aに害鳥獣4が侵入したことを検知する赤外線センサ52と、赤外線センサ11の検知信号を受けると、害鳥獣4の侵入を検知した検知範囲11aの近傍にて害鳥獣4を威嚇する威嚇動作を行う威嚇ロボット20と、赤外線センサ52の検知信号を受けると、害鳥獣4の侵入を検知した検知範囲52a内にてイノシシの擬傷動作を行う擬傷ロボット30と、を備えている構成とした。
【0067】
このような構成により、擬傷ロボット30が、威嚇動作を行う威嚇ロボット20の近くでイノシシの擬傷動作を模した動作を行うことにより、害鳥獣4に対して擬傷ロボット30が威嚇ロボット20に襲われて負傷したと認識させることができるため、害鳥獣4を圃場3から効率的に追い払うことができる。さらに、威嚇ロボット20及び擬傷ロボット30は、害鳥獣4が接近する度に表れて協働して害鳥獣4を追い払うことにより、害鳥獣4が防除に慣れることを抑制して、防除効果を長期間に亘って得ることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る害鳥獣防除システム1は、赤外線センサ11が、圃場3の外周に複数配置され、検知範囲11aに害鳥獣4が侵入したことを検知し、威嚇ロボット20は、赤外線センサ11の検知信号を受けると、赤外線センサ11が害鳥獣4の侵入を検知した検知範囲11aの位置情報に基づいて、赤外線センサ11が害鳥獣4の侵入を検知した検知範囲11aの近傍へ走行し、威嚇動作を行う構成とした。
【0069】
このような構成により、威嚇ロボット20は、害鳥獣4が接近する度に害鳥獣4を検知した検知範囲11a近傍へ走行して害鳥獣4を威嚇することにより、害鳥獣4が防除に慣れることを抑制して、防除効果を長期間に亘って得ることができる。
【0070】
また、本実施形態に係る害鳥獣防除システム1は、赤外線センサ52が、圃場3内に複数配置され、検知範囲52aに害鳥獣4が侵入したことを検知し、擬傷ロボット30は、待機時には赤外線センサ52の検知範囲52a内に配置され、赤外線センサ52の検知信号を受けると、検知範囲52a内にてイノシシの擬傷動作を行う構成とした。
【0071】
このような構成により、擬傷ロボット30は、害鳥獣4が接近する度に害鳥獣4を検知した検知範囲52a内にてイノシシの擬傷動作を行うことにより、害鳥獣4が防除に慣れることを抑制して、防除効果を長期間に亘って得ることができる。
【0072】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。また、上述した各実施形態を適宜組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0073】
1:害鳥獣防除システム、2:柵、3:圃場、4:害鳥獣
10:センサユニット、11:赤外線センサ(侵入検知センサ)、11a:検知範囲、12:通信部、13:制御部
20:威嚇ロボット、21:走行部、22:通信部、23:制御部、24:記憶部、25:バッテリー、26:スピーカー、27:カメラ、28:位置検知センサ
30:擬傷ロボット、31:走行部、31a:車輪、31b:脚部パーツ、31c:キャタピラ、31d:支持柱、32:通信部、33:制御部、34:記憶部、35:バッテリー、36:本体、36a:胴体部、36aa:穴、36ab:スピーカー、36b:頭部、36c:翼部、36ca:骨組、36cb:先端側羽、36cc:中間羽、36cd:基端側羽、36ce:関節、36d:尾羽部、37a:リング、37b:ワイヤー、37c:アクチュエータ、38a:フレーム、38b:ギア、38c:連結部材、39:本体、39a:胴体部、39aa:穴、39ab:スピーカー、39b:頭部、39c:脚部、39d:尾部
40:第1の格納庫、41:給電部
50:第2の格納庫、51:給電部、52:赤外線センサ(侵入検知センサ)、52a:検知範囲、53:制御部、54:通信部、55:リード
P:支点、R:ロープ、T:木