(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163819
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】腸内環境改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7048 20060101AFI20241115BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20241115BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20241115BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20241115BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20241115BHJP
A61K 36/45 20060101ALI20241115BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20241115BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20241115BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20241115BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61K31/715
A61P1/10
A61P1/12
A61K36/185
A61K36/45
A61K36/48
A23L33/135
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079727
(22)【出願日】2023-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2023年4月28日に講演要旨集(PDF版)として「第77回 日本栄養・食糧学会大会」のウェブサイトにて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000191755
【氏名又は名称】森下仁丹株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(71)【出願人】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮
(72)【発明者】
【氏名】上田 菜津美
(72)【発明者】
【氏名】安部 綾
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD47
4B018MD52
4B018ME11
4B018MF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA11
4C086EA20
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA73
4C086ZC75
4C088AB12
4C088AB44
4C088AB59
4C088AC04
4C088BA08
4C088CA03
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4C088MA35
4C088MA41
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA73
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】 容易に摂取することができ、かつ腸内細菌叢を構成する腸内細菌のバランスを一層改善することのできる腸内環境改善用組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明の腸内環境改善用組成物は、食物繊維およびアントシアニン系化合物を含有する。本発明の組成物は、例えば、腸内細菌叢に占めるビフィズス菌の割合を高めることにより、摂取した生体内の腸内細菌叢のバランスを改善することができる。このような組成物は、例えば、サプリメント、保健機能食品、医薬品などの経口摂取を目的とする製剤またはその構成材料として有用である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物繊維およびアントシアニン系化合物を含有する、腸内環境改善用組成物。
【請求項2】
前記食物繊維が水溶性食物繊維である、請求項1に記載の腸内環境改善用組成物。
【請求項3】
前記水溶性食物繊維が、グアーガム分解物およびアカシア由来食物繊維からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の腸内環境改善用組成物。
【請求項4】
前記アントシアニン系化合物がアントシアニンである、請求項1に記載の腸内環境改善用組成物。
【請求項5】
前記アントシアニン系化合物が、カシス果実抽出物およびビルベリー果実抽出物からなる群から選択される少なくとも1種の植物抽出物の形態で含有されている、請求項1に記載の腸内環境改善用組成物。
【請求項6】
錠剤または顆粒剤の剤形を有する、請求項1に記載の腸内環境改善用組成物。
【請求項7】
食物繊維および植物抽出物を含有し、該植物抽出物が、カシス果実抽出物およびビルベリー果実抽出物からなる群から選択される少なくとも1種である、腸内環境改善用組成物。
【請求項8】
食物繊維およびアントシアニン系化合物を含有する、腸内細菌叢のビフィズス菌占有率向上剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内環境改善用組成物に関し、より詳細には腸内菌叢を構成する腸内細菌のバランスを改善し得る腸内環境改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腸内細菌は多種多様な菌が大腸内に隙間なく張り付いており、このような塊は例えば腸内細菌叢または腸内フローラと呼ばれている。また、腸内細菌叢では、ヒトの体内で多種類の菌群となってその個体数のバランスが保たれており、善玉菌の個体数を高めた状態でのバランスを保持することが重要とされている。このため、近年ではこの腸内細菌叢の改善、すなわち腸内細菌叢における個体数のバランスをより好適なものに改善しようとするニーズが高まっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、3種以上の難消化性炭水化物原料として、腸内細菌叢の多様性を向上させるためにキチンオリゴ糖以外のオリゴ糖や食物繊維の組み合わせを用いることにより、腸内細菌叢の多様性を向上させるための組成物が開示されている。しかし、当該組成物では、その効果において上記ニーズに応えるには未だ十分とは言い難いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、容易に摂取することができ、かつ腸内細菌叢を構成する腸内細菌のバランスを一層改善することのできる腸内環境改善用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、食物繊維およびアントシアニン系化合物を含有する、腸内環境改善用組成物である。
【0007】
1つの実施形態では、上記食物繊維は水溶性食物繊維である。
【0008】
さらなる実施形態では、上記水溶性食物繊維は、グアーガム分解物およびアカシア由来食物繊維からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0009】
1つの実施形態では、上記アントシアニン系化合物はアントシアニンである。
【0010】
1つの実施形態では、上記アントシアニン系化合物は、カシス果実抽出物およびビルベリー果実抽出物からなる群から選択される少なくとも1種の植物抽出物の形態で含有されている。
【0011】
1つの実施形態では、本発明の腸内環境改善用組成物は、錠剤または顆粒剤の剤形を有する。
【0012】
本発明はまた、食物繊維および植物抽出物を含有し、当該植物抽出物が、カシス果実抽出物およびビルベリー果実抽出物からなる群から選択される少なくとも1種である、腸内環境改善用組成物である。
【0013】
本発明はまた、食物繊維およびアントシアニン系化合物を含有する、腸内細菌叢のビフィズス菌占有率向上剤である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、食物繊維単独を摂取した場合と比較して腸内細菌のバランスを飛躍的に改善することができ、特に腸内細菌叢におけるビフィズス菌の占有率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例および比較例の各々の組成物と、プラセボ組成物とを用いた無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の腸内細菌叢におけるビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の微生物叢中の占有率の結果を示すグラフである。
【
図2】実施例および比較例の各々の組成物と、プラセボ組成物とを用いた無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験において検出することができた腸内細菌の種の多様性(検出された種の数)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳述する。
【0017】
(腸内環境改善用組成物)
本発明の腸内環境改善用組成物は、食物繊維およびアントシアニン系化合物を含有する。
【0018】
本発明において、食物繊維は、生体(例えば、ヒト)の消化酵素では消化されないか、または少なくとも一部が消化困難な難消化性成分であり、例えば飲食品や飲食品を構成する素材(以下、「飲食品素材」ということがある)に含有されているものを指して言う。
【0019】
本発明の組成物を構成する食物繊維はまた、水に対して一部または全部が溶解する性質を有する水溶性食物繊維であることが好ましい。水溶性食物繊維は、水と接触することによってゲル化し、生体の腸内(例えば小腸および大腸の腸壁)に付着する性質を有するものである。
【0020】
水溶性食物繊維の例としては、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、キャロブガム、タマリンドシードガム、アラビアガム等の増粘多糖類、グルコマンナン、ペクチン、ヘミセルロース、リグニン、アルギン酸、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、難消化性澱粉、フコイダン、水溶性大豆多糖類、プルラン、およびアカシア由来食物繊維、ならびにこれらの分解物(例えば、これらの加水分解物)が挙げられる。本発明において食物繊維は、これらの1種または2種以上の任意の組み合わせが使用され得る。腸内環境に有益な腸内細菌が資化し易いとの理由から、アラビアガム、難消化性デキストリン、フェヌグリークガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム等のガラクトマンナン、難消化性澱粉、水溶性大豆多糖類、タマリンドシードガム、プルラン、アカシア由来食物繊維、およびこれらの分解物、ならびにそれらの組み合わせが好ましく;フェヌグリークガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム等のガラクトマンナン、アカシア由来食物繊維、およびにこれらの分解物、ならびにそれらの組み合わせがさらに好ましく;構成するガラクトースとマンノースとの比がガラクトース1分子に対して、マンノース4分子以下であるガラクトマンナン(例えば、フェヌグリークガム、グアーガム、ローカストビーンガム等)、アカシア由来食物繊維、およびこれらの分解物、ならびにそれらの組み合わせがさらに好ましく;ガラクトマンナンの分解物およびアカシア由来食物繊維、ならびにそれらの組み合わせがさらにより好ましく;グアーガムの分解物およびアカシア由来食物繊維、ならびにそれらの組み合わせが最も好ましい。
【0021】
なお、水溶性食物繊維が2つまたはそれ以上の上記分解物で構成されている場合、当該水溶性食物繊維は、未分解の食物繊維を別々に加水分解しかつ混合して得られたものであってもよく、未分解の食物繊維を混合した後に一括して加水分解することにより得られたものであってもよい。
【0022】
また、水溶性食物繊維として使用され得る上記分解物は、未分解の食物繊維に対して作用させる酵素との反応時間やその他の反応条件を変更することによりその分子量を変化させることができる。当該分解物の平均分子量の上限は、飲食品素材への添加が容易であるとの理由から、好ましくは100,000であり、さらに好ましくは40,000である。また、当該分解物の平均分子量の下限は、腸内環境に有益な腸内細菌が資化し易くなることから、好ましくは2,000であり、さらに好ましくは5,000である。
【0023】
このような分解物の平均分子量は、例えばポリエチレングリコール(分子量;2,000、20,000、100,000等)をマーカーにして、高速液体クロマトグラフ法(例えば、株式会社ワイエムシィ製カラム(YMC-Pack Diol-120))を用いて分子量分布を測定することにより測定することができる。
【0024】
本発明において、上記食物繊維または水溶性食物繊維については市販品をそのまま使用することもできる。例えば、グアーガムの分解物としては、サンファイバー(太陽化学株式会社製)、グアファイバー(明治製菓株式会社製)、ファイバロン(大日本製薬株式会社製)が挙げられる。難消化性デキストリンの例としては、パインファイバー(松谷化学工業株式会社製)が挙げられる。低分子化アルギン酸ナトリウムの例としては、ソルギン(株式会社カイゲン製)が挙げられる。水溶性大豆多糖類の例としては、ソヤファイブ(不二製油株式会社製)が挙げられる。
【0025】
本発明において、アントシアニン系化合物は、アントシアニンとその類縁体を包含し、具体的な例としては、アントシアニン、およびアントシアニンを構成する糖部分と脂肪酸(例えば、酢酸、マロン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、キナ酸、酒石酸、シキミ酸、p-ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、p-クマル酸、カフェ酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸、バニリン酸、クロロゲン酸)とが結合したアシル化体、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。アントシアニン系化合物は、抗酸化作用等の生理活性を有する。
【0026】
アントシアニンは、ポリフェノールの一種である一群の化合物であって、アントシアニジンをアグリコンとする配糖体の総称である。アントシアニンに包含される化合物の具体的な例としては、デルフィニジン-3-ルチノシド、デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ガラクトシド、デルフィニジン-3-アラビノシド、シアニジン-3-ルチノシド、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ソホロシド、シアニジン-3-ガラクトシド、シアニジン-3-ソホロシド-5-ラムノシド、シアニジン-3-サンブビオシド、シアニジン-3-サンブビオシド-5-ラムノシド、シアニジン-3-キシロシルルロシド、シアニジン-3-アラビノシド、シアニジン-3-キシロシド、シアニジン-3-(6’’-マロノイル)グルコシド、シアニンジン-3-ジオキサロイルグルコシド、ペチュニジン-3-グルコシド、ペチュニジン-3-ガラクトシド、ペチュニジン-3-ルチノシド、ペチュニジン-3-アラビノシド、ペラルゴニジン-3-ルチノシド、ペオニジン-3-ガラクトシド、ペオニジン-3-グルコシド、ペオニジン-3-ルチノシド、ペオニジン-3-アラビノシド、マルビジン-3-ガラクトシド、マルビジン-3-グルコシドおよびマルビジン-3-アラビノシドが挙げられる。ただし、本発明において、アントシアニンに包含される化合物は、上記アグリコンおよび糖のみに限定されるものではない。
【0027】
本発明において、アントシアニン系化合物は、所定の植物から得られた抽出物の形態で含有されていてもよい。アントシアニン系化合物は、例えば、ブドウ(特に赤ブドウ)、カシス、ビルベリーなどの果実や野菜に豊富に含まれている。入手が容易である、含有量が豊富である等の理由から、本発明の腸内環境改善用組成物は、上記食物繊維とともに、アントシアニン系化合物をカシス果実抽出物、ビルベリー抽出物、またはそれらの組み合わせの形態で含有していてもよい。
【0028】
本発明の腸内環境改善用組成物における上記食物繊維とアントシアニン系化合物との配合比は特に限定されないが、例えば、食物繊維100質量部に対して0.1質量部~100質量部であってもよく、あるいは1質量部~50質量部であってもよい。食物繊維100質量部に対して配合されるアントシアニン系化合物が0.1質量部以上であると、腸内細菌叢を構成する腸内細菌のバランスが食物繊維単独を用いた場合と比較して顕著に改善し易くなる。
【0029】
本発明の腸内環境改善用組成物は、上記食物繊維およびアントシアニン系化合物以外に、その他成分を含有していてもよい。その他成分としては、特に限定されないが、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、界面活性剤、油脂、および他の添加剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
賦形剤の例としては、乳糖、乳糖造粒物、コーンスターチ、L-システイン、トレハロース、マルチトール、およびソルビトール、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
結合剤の例としては、結晶セルロース、澱粉、ショ糖、α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、およびポリエチレングリコール、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
滑沢剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、タルク、および微粒二酸化ケイ素、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
崩壊剤の例としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、部分α化デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩(ナトリウム塩、カルシウム塩)や誘導体、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
界面活性剤の例としては、アミドベタイン型の両性界面活性剤およびイミダゾリン型の両性界面活性剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。安全性が高い界面活性剤として、天然物由来の両性界面活性剤を用いることが好ましい。天然物由来の両性界面活性剤の例としてはレシチンが挙げられる。
【0035】
油脂の例としては、ナタネ種子油、ホホバ油、大豆油、パーム油、ココナッツ油、およびそれらの水素添加処理(いわゆる水添処理)が施された油脂、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
その他の添加剤の例としては、発泡剤、着色剤、着香剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、pH調整剤、香料、および香油、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
本発明の腸内環境改善用組成物における上記その他成分の含有量は特に限定されず、当業者によって適切な量が適宜選択され得る。
【0038】
本発明の腸内環境改善用組成物は、ヒトや愛玩動物、家畜、家禽、養殖魚などの動物に対して経口または経管により摂取可能な組成物を包含し、例えば、飲食品、飼料(餌料)および医薬品のそれ自体またはこれらの構成材料の1つとして使用される。本発明の組成物はまた、任意の剤形を有していてもよく、当該剤形の具体的な例としては粉末剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、液剤(懸濁剤、乳剤などを含む)が挙げられる。容易に経口摂取できるとの理由から、粉末剤、丸剤、錠剤および顆粒剤のうち、いずれかの剤形を有していることが好ましい。
【0039】
本発明の腸内環境改善用組成物が飲食品として使用される場合、当該飲食品の例としては、一般食品;サプリメント;特定保健用食品、栄養機能食品、および機能性表示食品等の保健機能食品;清涼飲料水;茶飲料;コーヒー飲料;加工乳;乳飲料;豆乳類;および酒類が挙げられる。
【0040】
飲食品には、上記食物繊維およびアントシアニン系化合物、ならびに必要に応じて含有されるその他成分以外に飲食品素材や飲食品用の添加剤が含まれていてもよい。
【0041】
飲食品素材としては、特に限定されないが、例えば、植物エキス、野菜類、肉エキス、肉類、魚粉、油脂類、糖類などが挙げられる。飲食品用の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、賦形剤(例えば、デキストリン、セルロース、結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、甘味料、着色料、保存料、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防カビ剤、イーストフード、ガムベース、かんすい、苦味料、酵素、光沢剤、香料、酸味料、調味料、凝固剤、乳化剤、pH調整剤、膨張剤、栄養強化剤、溶媒(例えば、水およびエタノール)などが挙げられる。飲食品に含有され得る飲食品素材および飲食品用の添加剤の含有量は、特に限定されず、当業者によって適切な含有量が適宜選択され得る。
【0042】
本発明の腸内環境改善用組成物が飼料(餌料)として使用される場合、当該飼料(餌料)の例としては、ペットフード、配合飼料、および濃厚飼料が挙げられる。
【0043】
飼料には、上記食物繊維およびアントシアニン系化合物、ならびに必要に応じて含有されるその他成分以外に飼料素材や飼料用の添加剤が含まれていてもよい。飼料素材としては、特に限定されないが、例えば、穀物粉、牧草粉、卵殻粉、貝殻粉、魚粉、植物エキス、野菜類、肉エキス、肉類、油脂類、糖類などが挙げられる。飼料用の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、保存料、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊剤、酸化防止剤、防カビ剤、酵素、光沢剤、香料、酸味料、乳化剤、pH調整剤、膨張剤、栄養強化剤、溶媒(例えば、水およびエタノール)などが挙げられる。飼料に含有され得る飼料素材および飼料用の添加剤の含有量は、特に限定されず、当業者によって適切な含有量が適宜選択され得る。
【0044】
本発明の腸内環境改善用組成物が医薬品として使用される場合、当該医薬品には、上記食物繊維およびアントシアニン系化合物、ならびに必要に応じて含有されるその他成分以外に他の医薬成分や医薬品用の添加剤が含まれていてもよい。他の医薬成分の例としては、特に限定されず、例えば経口医薬品として採用され得る種々の医薬成分が包含される。医薬品用の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、賦型剤、着色剤、着香剤、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、pH調整剤などが挙げられる。医薬品に含まれ得る他の添加剤の具体的な例としては、デキストリン、セルロース、結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、タルク、二酸化ケイ素(例えば、軽質無水ケイ酸または含水二酸化ケイ素)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、澱粉類、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、寒天末、エステル油、ロウ、高級脂肪酸、高級アルコール、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、多価アルコール、水、エタノールなどが挙げられる。医薬品に含有され得る他の医薬成分および医薬品用の添加剤の含有量は、特に限定されず、当業者によって適切な含有量が適宜選択され得る。
【0045】
本発明の腸内環境改善用組成物において、上記食物繊維およびアントシアニン系化合物がともに配合されていることにより、例えば当該組成物をヒトが摂取すると、その腸管内に存在するビフィズス菌(例えば、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の微生物)が食物繊維を資化することにより増殖し、その一方でアントシアニン系化合物が当該腸管内の酸化ストレスを減少させるものと考えられる。その結果、腸内環境がこのような状態に晒されることによってビフィズス菌が増殖し易くなり、相乗的に増加する。これに伴って、腸内細菌叢を構成する腸内細菌全体の個体数が変化し、全体として腸内細菌叢を構成する腸内細菌のバランスを改善することができる。
【0046】
このことから、上記食物繊維およびアントシアニン系化合物を含有する配合物はまた、腸内細菌叢のビフィズス菌の占有率を向上させるための組成物(すなわち、腸内細菌叢のビフィズス菌占有率向上剤)としても機能し得る。
【0047】
本発明において、上記腸内細菌叢の占有率が向上し得るビフィズス菌は、例えば、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の微生物である。
【0048】
ビフィドバクテリウム属の微生物の具体的な例としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B. bifidum)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(B. adolescentis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B. infantis)、ビフィドバクテリウム・ブレーべ(B. breve)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(B. lactis)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(B. pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(B. animalis)、ビフィドバクテリウム・アクチノコロニフォルム(B. actinocoloniiforme)、ビフィドバクテリウム・アエミリアナム(B. aemilianum)、ビフィドバクテリウム・アエロフィルム(B. aerophilum)、ビフィドバクテリウム・アエスクラピ(B. aesculapii)、ビフィドバクテリウム・アングラタム(B. angulatum)、ビフィドバクテリウム・アンセリス(B. anseris)、ビフィドバクテリウム・アピリ(B. apri)、ビフィドバクテリウム・アクイケフィリ(B. aquikefiri)、ビフィドバクテリウム・アステロイデス(B. asteroides)、ビフィドバクテリウム・アヴェサニ(B. avesanii)、ビフィドバクテリウム・ビアヴァティ(B. biavatii)、ビフィドバクテリウム・ボヘミカム(B. bohemicum)、ビフィドバクテリウム・ボンビ(B. bombi)、ビフィドバクテリウム・ボウム(B. boum)、ビフィドバクテリウム・カリミコニス(B. callimiconis)、ビフィドバクテリウム・カリトリチダラム(B. callitrichidarum)、ビフィドバクテリウム・カリトリコス(B. callitrichos)、ビフィドバクテリウム・カニス(B. canis)、ビフィドバクテリウム・カストリス(B. castoris)、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム(B. catenulatum)、ビフィドバクテリウム・カチュロラム(B. catulorum)、ビフィドバクテリウム・セビダラム(B. cebidarum)、ビフィドバクテリウム・コエリナム(B. choerinum)、ビフィドバクテリウム・コレエピ(B. choloepi)、ビフィドバクテリウム・コミューン(B. commune)、ビフィドバクテリウム・コリネフォルメ(B. coryneforme)、ビフィドバクテリウム・クリセチ(B. criceti)、ビフィドバクテリウム・クニクリ(B. cuniculi)、ビフィドバクテリウム・デンティコレンス(B. denticolens)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(B. dentium)、ビフィドバクテリウム・ドリコティディス(B. dolichotidis)、ビフィドバクテリウム・エリスロセビィ(B. erythrocebi)、ビフィドバクテリウム・エルムリス(B. eulemuris)、ビフィドバクテリウム・フィーカル(B. faecale)、ビフィドバクテリウム・フェルシネウム(B. felsineum)、ビフィドバクテリウム・ガリカム(B. gallicum)、ビフィドバクテリウム・ガリナルム(B. gallinarum)、ビフィドバクテリウム・グロボーサム(B. globosum)、ビフィドバクテリウム・ゲルディ(B. goeldii)、ビフィドバクテリウム・ハパリ(B. hapali)、ビフィドバクテリウム・インペラトリス(B. imperatoris)、ビフィドバクテリウム・インディカム(B. indicum)、ビフィドバクテリウム・イノピナタム(B. inopinatum)、ビフィドバクテリウム・イタリカム(B. italicum)、ビフィドバクテリウム・ジャッチ(B. jacchi)、ビフィドバクテリウム・カシワノヘンス(B. kashiwanohense)、ビフィドバクテリウム・レムラム(B. lemurum)、ビフィドバクテリウム・レオントピテシィ(B. leontopitheci)、ビフィドバクテリウム・マグナム(B. magnum)、ビフィドバクテリウム・マルゴレシィ(B. margollesii)、ビフィドバクテリウム・メリシカム(B. merycicum)、ビフィドバクテリウム・ミニマム(B. minimum)、ビフィドバクテリウム・モンゴリエンセ(B. mongoliense)、ビフィドバクテリウム・モラビエンス(B. moraviense)、ビフィドバクテリウム・ムカラベンス(B. moukalabense)、ビフィドバクテリウム・マイオソティス(B. myosotis)、ビフィドバクテリウム・オエディポディス(B. oedipodis)、ビフィドバクテリウム・オロムセンス(B. olomucense)、ビフィドバクテリウム・パノス(B. panos)、ビフィドバクテリウム・パルメ(B. parmae)、ビフィドバクテリウム・パブロラム(B. parvulorum)、ビフィドバクテリウム・ポルシナム(B. porcinum)、ビフィドバクテリウム・プリマチウム(B. primatium)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラタム(B. pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・サイクラエロフィラム(B. psychraerophilum)、ビフィドバクテリウム・プロラム(B. pullorum)、ビフィドバクテリウム・ラモーサム(B. ramosum)、ビフィドバクテリウム・ロイテリ(B. reuteri)、ビフィドバクテリウム・ロウセティ(B. rousetti)、ビフィドバクテリウム・ルミナレ(B. ruminale)、ビフィドバクテリウム・ルミナンティウム(B. ruminantium)、ビフィドバクテリウム・サエクラレ(B. saeculare)、ビフィドバクテリウム・サグイニ(B. saguini)、ビフィドバクテリウム・サミリィ(B. samirii)、ビフィドバクテリウム・スカリゲラム(B. scaligerum)、ビフィドバクテリウム・スカルドビィ(B. scardovii)、ビフィドバクテリウム・シミアラム(B. simiarum)、ビフィドバクテリウム・ステレンボッシェンス(B. stellenboschense)、ビフィドバクテリウム・スターコリス(B. stercoris)、ビフィドバクテリウム・サブタイル(B. subtile)、ビフィドバクテリウム・スイス(B. suis)、ビフィドバクテリウム・サームアシドフィラム(B. thermacidophilum)、ビフィドバクテリウム・サーモフィラム(B. thermophilum)、ビフィドバクテリウム・ティビグラヌリ(B. tibiigranuli)、ビフィドバクテリウム・ティシーエリ(B. tissieri)、ビフィドバクテリウム・ツルミエンス(B. tsurumiense)、ビフィドバクテリウム・ヴァンシンデレニィ(B. vansinderenii)、ビフィドバクテリウム・ヴェスペルティリオニス(B. vespertilionis)、およびビフィドバクテリウム・キシロコペ(B. xylocopae)が挙げられる。
【0049】
本発明の腸内環境改善用組成物および腸内細菌叢のビフィズス菌占有率向上剤の摂取量(または投与量)は、摂取する生体(ヒトまたは動物)の種類、年齢、身長、体重、一日当たりの食事量等によって変動するため、特に限定されないが、例えば、健常な成人男性における一日当たりの摂取量は、例えば100mg~40000mgにすることができる。
【0050】
本発明の腸内環境改善用組成物および腸内細菌叢のビフィズス菌占有率向上剤はいずれも、ヒトが摂取する場合、上記食物繊維およびアントシアニン系化合物のそれぞれの許容一日摂取量(ADI)以下の範囲内で当該摂取が行われることが好ましい。
【実施例0051】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
表1に示す組成にしたがって組成物(E1)、(C1)~(C3)の各々を、以下にて詳細に説明する。
【0053】
(実施例1:組成物(E1))
100質量部のグアーガム分解物(分子量2,000~100,000)と、1.25質量部のカシス果実由来アントシアニン(この質量部に相当する森下仁丹株式会社製カシスエキスMJを使用した)とを組み合わせて組成物(E1)とした。
【0054】
(比較例1:組成物(C1))
カシス果実由来アントシアニンを組み合わせることなかったこと以外は実施例1と同様のグアーガム分解物の一日当たりの摂取量にして組成物(C1)とした。
【0055】
(比較例2:組成物(C2))
グアーガム分解物を組み合わせることなかったこと以外は実施例1と同様のカシス果実由来アントシアニンの一日当たりの摂取量にして組成物(C2)とした。
【0056】
(無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験による組成物(C1)~(C3)および(E1)の評価)
20代の男性で構成される被験者を、無作為に対照群(第I群;23名)、比較例1の組成物(C1)を摂取する群(第II群;25名)、比較例2の組成物(C2)を摂取する群(第III群;26名)、および実施例1の組成物(E1)を摂取する群(第IV群;21名)の4群に割り付けた。なお、対照群の被験者には、食物繊維(グアーガム分解物)の代わりにマルトデキストリン100質量部を使用し、かつアントシアニン系化合物(カシス果実由来のアントシアニン)の代わりにマルチトール1.25質量部を使用した組成物(C3)(プラセボ組成物(C3))を摂取させることにした。
【0057】
これら被験者による摂取期間を4週間に設定し、かつ表1に示す一日当たりの摂取量で、第I群に組成物(C3)を、第II群に組成物(C1)を、第III群に組成物(C2)を、第IV群に組成物(E1)を毎日摂取させた。
【0058】
【0059】
なお、これらの摂取前と、摂取期間(4週間)の経過後に各被験者から糞便の提供を受け、摂取前後の各糞便に含まれる細菌について、16S rRNAメタゲノム解析を行い、腸内細菌叢を構成する細菌の種類およびその割合を算出した。
【0060】
具体的には、抽出した細菌DNAを鋳型として、16S rRNA遺伝子のV3-V4領域をPCR反応により増幅した。なお、この反応には、2nd PCR用の配列がテイルとしてついている、以下のものを使用した:
フォワードプライマー341F (5'-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCCTACGGGNGGCWGCAG-3’)(配列番号1)
リバースプライマー805R (5'-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGGACTACHVGGGTATCTAATCC-3')(配列番号2)。
【0061】
このPCR産物を鋳型とし、Illumina sequencing adapterとIndex配列とを付加したプライマーを用いたPCR反応により、精製産物のタグ付けを行った(2nd PCR)。
【0062】
得られた全てのサンプルを等濃度で混合してライブラリーを調製し、次世代シーケンサー(MiSeq;Illumina社製)で各サンプルの塩基配列を読み取った。
【0063】
その後、得られた塩基配列を用いて、クオリティフィルターを行った後、菌叢解析専用のプログラム(QIIME2(http://qiime2.org/))を用いて解析を行い、各被験者の腸内細菌叢を構成するビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の微生物の占有率、および腸内細菌の種の多様性(検出された種の数)を算出した。結果を、
図1および
図2に示す。
【0064】
菌叢解析の結果、
図1に示すように、実施例1の組成物(E1)を摂取した被験者(第I群)では、摂取開始前(0w)におけるビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の微生物の占有率が、摂取開始4週間経過後(4w)に約2倍にまで増加(7.01%から14.03%に増加)していた。
【0065】
これに対し、比較例1の組成物(C1)を摂取した被験者(第II群)や比較例2の組成物(C2)を摂取した被験者(第III群)では、摂取開始前(0w)と摂取開始4週間経過後(4w)との間で同占有率に大きな変化を観察することができなかった。
【0066】
次に、
図2に示すように、実施例1の組成物(E1)を摂取した被験者(第I群)では、摂取開始前(0w)と摂取開始4週間経過後(4w)との間で検出された腸内細菌の種の数が大幅に増加していた。同様の傾向は、比較例2の組成物(C2)を摂取した被験者(第III群)でも確認することができた。
【0067】
これに対し、比較例1の組成物(C1)を摂取した被験者(第II群)では、摂取開始前(0w)と摂取開始4週間経過後(4w)との間で検出された腸内細菌の種の数に大きな変化を観察することができなかった。
【0068】
このことから、グアーガム分解物(水溶性食物繊維)とアントシアニン(アントシアニン系化合物)とを組み合わせた実施例1の組成物(E1)は、これを摂取したヒトの腸内細菌叢を構成するビフィドバクテリウム属微生物の占有率を向上させ、その腸内環境を効果的に改善することができるものであることがわかる。