(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163820
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20241115BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G21/00 318
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079731
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】秋月 智雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄介
(72)【発明者】
【氏名】水越 俊翼
【テーマコード(参考)】
2H134
2H270
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134GB02
2H134KG07
2H134KG08
2H134KH01
2H270LA26
2H270LA28
2H270LA80
2H270LB01
2H270LD08
2H270MA28
2H270MC48
2H270MD02
2H270MF08
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC06
(57)【要約】
【課題】非画像形成時に像担持体とクリーニング部材との当接部にトナーを供給して像担持体とクリーニング部材との間の摩擦力を低減し、クリーニング不良の発生を抑制する。
【解決手段】画像形成装置100は、制御部205が、像担持体1の回転が開始してから画像形成動作が開始するまでの非画像形成動作時又は画像形成動作が終了してから像担持体1の回転が停止するまでの非画像形成動作時に、現像部材42が像担持体1に当接して回転している状態で、少なくとも現像部材42の1周分に相当する時間、画像形成動作時のVbackよりも小さいVbackを生成し、現像部材42から像担持体1の表面に移動したトナーをクリーニング部Bに供給する供給動作を実行するように制御する構成とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置に帯電電圧を印加する帯電電圧印加部と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体の表面を露光して前記像担持体の表面に静電像を形成する露光装置と、
トナーを担持して回転可能であり、前記像担持体の表面に当接して現像部を形成し、前記現像部において前記像担持体の表面の前記静電像にトナーを供給して前記像担持体の表面にトナー像を形成する現像部材と、
前記現像部材に現像電圧を印加する現像電圧印加部と、
前記像担持体の表面に当接してクリーニング部を形成し、前記像担持体の表面から前記トナーを除去するクリーニング部材と、
前記現像部における、前記帯電装置により帯電された前記像担持体の表面電位と、前記現像部材に印加される前記現像電圧と、の間の電位差であって、前記表面電位の方が前記現像電圧よりも前記トナーの正規の帯電極性と同極性側に高い電位差であるVbackを生成するように、前記帯電電圧印加部、前記現像電圧印加部及び前記露光装置のうち少なくとも一つを制御する制御部と、を有し、
前記トナー像を前記像担持体の表面に形成する画像形成動作と、前記トナー像を前記像担持体の表面に形成しない非画像形成動作と、を行う画像形成装置において、
前記制御部は、前記像担持体の回転が開始してから前記画像形成動作が開始するまでの前記非画像形成動作時又は前記画像形成動作が終了してから前記像担持体の回転が停止するまでの前記非画像形成動作時に、前記現像部材が前記像担持体に当接して回転している状態で、少なくとも前記現像部材の1周分に相当する時間、前記画像形成動作時の前記Vbackよりも小さい又は大きい前記Vbackを生成し、前記現像部材から前記像担持体の表面に移動した前記トナーを前記クリーニング部に供給する供給動作を実行するように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記像担持体の回転が開始してから前記画像形成動作が開始するまでの前記非画像形成動作時に、前記像担持体の表面電位の絶対値を前記像担持体の停止時の値から前記画像形成動作時の値へと変更すると共に、前記現像電圧の絶対値を前記像担持体の停止時の値から前記画像形成動作時の値へと変更する際の少なくとも一部の期間において、前記供給動作として、前記Vbackを、前記画像形成動作時の前記Vbackよりも小さい第1の値と該第1の値よりも小さい第2の値とするか、又は前記画像形成動作時の前記Vbackよりも大きい第1の値と該第1の値よりも大きい第2の値とするように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記像担持体の回転が開始してから前記画像形成動作が開始するまでの前記非画像形成動作時に、前記像担持体の表面電位の絶対値を段階的に変更すると共に、前記現像電圧の絶対値を段階的に変更する際の少なくとも一部の期間において、前記供給動作として、前記Vbackを前記画像形成動作時の前記Vbackよりも段階的に小さくするか、又は前記画像形成動作時の前記Vbackよりも段階的に大きくするように制御することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記像担持体の表面電位の絶対値を段階的に変更する際の1段当たりの変更幅、又は前記現像電圧の絶対値を段階的に変更する際の1段当たりの変更幅の少なくとも一方を変更して、前記Vbackを段階的に変化させるように制御することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記画像形成動作が終了してから前記像担持体の回転が停止するまでの前記非画像形成動作時に、前記像担持体の表面電位の絶対値を前記画像形成動作時の値から前記像担持体の停止時の値へと変更すると共に、前記現像電圧の絶対値を前記画像形成動作時の値から前記像担持体の停止時の値へと変更する際の少なくとも一部の期間において、前記供給動作として、前記Vbackを、前記画像形成動作時の前記Vbackよりも小さい第1の値と該第1の値よりも小さい第2の値とするか、又は前記画像形成動作時の前記Vbackよりも大きい第1の値と該第1の値よりも大きい第2の値とするように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記画像形成動作が終了してから前記像担持体の回転が停止するまでの前記非画像形成動作時に、前記像担持体の表面電位の絶対値を段階的に変更すると共に、前記現像電圧の絶対値を段階的に変更する際の少なくとも一部の期間において、前記供給動作として、前記Vbackを前記画像形成動作時の前記Vbackよりも段階的に小さくするか、又は前記画像形成動作時の前記Vbackよりも段階的に大きくするように制御することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記像担持体の表面電位の絶対値を段階的に変更する際の1段当たりの変更幅、又は前記現像電圧の絶対値を段階的に変更する際の1段当たりの変更幅の少なくとも一方を変更して、前記Vbackを段階的に変化させるように制御することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、
所定のタイミングで、前記供給動作として前記画像形成動作時の前記Vbackよりも小さい前記Vbackを生成する前記非画像形成動作の第1のモードと、
前記所定のタイミングで、前記供給動作として前記画像形成動作時の前記Vbackよりも大きい前記Vbackを生成する前記非画像形成動作の第2のモードと、
を選択的に実行するように制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
環境を検知する環境検知部を有し、
前記制御部は、
前記環境検知部の検知結果が示す環境が第1の環境の場合に前記第1のモードを実行し、
前記環境検知部の検知結果が示す環境が前記第1の環境よりも高温高湿の第2の環境の場合に前記第2のモードを実行するように制御することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、
所定のタイミングで、前記供給動作として前記画像形成動作時の前記Vbackよりも小さい前記Vbackを生成する前記非画像形成動作の第1のモードと、
前記所定のタイミングで、前記供給動作として前記画像形成動作時の前記Vbackよりも大きい前記Vbackを生成する前記非画像形成動作の第2のモードと、
前記所定のタイミングで、前記供給動作を実行しない前記非画像形成動作の第3のモードと、
を選択的に実行するように制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
環境を検知する環境検知部と、
前記現像部材の使用状態を検知する使用状態検知部と、
を有し、
前記制御部は、
前記環境検知部の検知結果が示す環境が第1の環境でありかつ前記使用状態検知部の検知結果が示す前記現像部材の使用量が第1の使用量の場合に前記第1のモードを実行し、
前記環境検知部の検知結果が示す環境が前記第1の環境よりも高温高湿の第2の環境でありかつ前記使用状態検知部の検知結果が示す前記現像部材の使用量が前記第1の使用量よりも大きい第2の使用量の場合に前記第2のモードを実行し、
前記環境検知部の検知結果が示す環境が前記第1の環境よりも高温高湿かつ前記第2の環境よりも低温低湿の第3の環境である場合に前記第3のモードを実行するように制御することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記第3のモードにおいて、前記Vbackを前記画像形成動作時と略同一の値で略一定とするように制御することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置では、像担持体としての感光体の表面が帯電部材によって一様に帯電処理され、帯電処理された感光体の表面が露光装置によって露光されて、感光体上に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置によって現像剤としてのトナーが供給されて現像され、感光体上にトナー像が形成される。そして、このトナー像が記録材上に転写される。感光体としては、回転可能な感光ドラムが多く用いられる。
【0003】
このような画像形成装置において、感光体の表面から転写残トナーやジャム(記録材の詰まり)が発生した場合の未転写トナーなどを除去する方式として、感光体の表面に当接させて配置したクリーニング部材によって物理的に掻き取る方式がある。クリーニング部材としては、クリーニングブレードが多く用いられる。クリーニングブレードは、長手方向と、この長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する、ウレタンゴムなどの弾性材料で形成された板状のゴム部を有して構成される。クリーニングブレードのゴム部は、長手方向が感光体の表面の移動方向と略直交する方向に沿うように配置される。そして、クリーニングブレードのゴム部は、短手方向の自由端部が感光体の表面の移動方向における上流側を向くように、感光体の回転方向に対してカウンター方向で感光体の表面に当接させられる。
【0004】
クリーニングブレードを用いた画像形成装置では、感光体へのトナーの供給が少ない状態で感光体を回転させ続けると、感光体とクリーニングブレードとの間の摩擦力が上昇する。これにより、クリーニングブレードがびびり(振動)を起こすことがある。クリーニングブレードのびびりは、クリーニング不良の原因になる。クリーニング不良は、トナーがクリーニングブレードによって掻き取られずにクリーニングブレードをすり抜けてしまう現象(以下、単に「すり抜け」ともいう。)である。感光体へのトナーの供給が少ない状態で感光体が回転する状況としては、低印字率の画像のプリント(印字、印刷)が続く場合や、予備回転(画像形成工程の前後の前回転工程、後回転工程など)が行われる場合などが挙げられる。
【0005】
これに対し、非画像形成時に感光体とクリーニングブレードとの当接部にトナーを供給する「供給動作」を行うことで、トナーや外添剤による潤滑効果によって摩擦力を低減し、クリーニングブレードのびびりを抑制する方法がある。特許文献1は、環境や印字率に応じて、供給動作におけるトナーの供給量や供給動作を実行する頻度を制御することを開示している。従来、供給動作では、記録材に転写する通常の画像の形成時と同様の工程により所定のトナーパターン(ベタ黒や細線)を感光体上に形成し、このトナーパターンのトナーを感光体とクリーニングブレードとの当接部に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように供給動作において所定のトナーパターン(ベタ黒や細線)を感光体上に形成すると、そのトナーパターンのトナー自体のすり抜けによりクリーニング不良が発生することがある。これは、トナーパターンを構成するトナーは、十分な電荷を保持しているものが多く、感光体との鏡映力が高いため、クリーニングブレードによって掻き取られにくいことが原因の一つである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、非画像形成時に像担持体とクリーニング部材との当接部にトナーを供給して像担持体とクリーニング部材との間の摩擦力を低減し、クリーニング不良の発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、回転可能な像担持体と、前記像担持体の表面を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置に帯電電圧を印加する帯電電圧印加部と、前記帯電装置により帯電された前記像担持体の表面を露光して前記像担持体の表面に静電像を形成する露光装置と、トナーを担持して回転可能であり、前記像担持体の表面に当接して現像部を形成し、前記現像部において前記像担持体の表面の前記静電像にトナーを供給して前記像担持体の表面にトナー像を形成する現像部材と、前記現像部材に現像電圧を印加する現像電圧印加部と、前記像担持体の表面に当接してクリーニング部を形成し、前記像担持体の表面から前記トナーを除去するクリーニング部材と、前記現像部における、前記帯電装置により帯電された前記像担持体の表面電位と、前記現像部材に印加される前記現像電圧と、の間の電位差であって、前記表面電位の方が前記現像電圧よりも前記トナーの正規の帯電極性と同極性側に高い電位差であるVbackを生成するように、前記帯電電圧印加部、前記現像電圧印加部及び前記露光装置のうち少なくとも一つを制御する制御部と、を有し、前記トナー像を前記像担持体の表面に形成する画像形成動作と、前記トナー像を前記像担持体の表面に形成しない非画像形成動作と、を行う画像形成装置において、前記制御部は、前記像担持体の回転が開始してから前記画像形成動作が開始するまでの前記非画像形成動作時又は前記画像形成動作が終了してから前記像担持体の回転が停止するまでの前記非画像形成動作時に、前記現像部材が前記像担持体に当接して回転している状態で、少なくとも前記現像部材の1周分に相当する時間、前記画像形成動作時の前記Vbackよりも小さい又は大きい前記Vbackを生成し、前記現像部材から前記像担持体の表面に移動した前記トナーを前記クリーニング部に供給する供給動作を実行するように制御することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非画像形成時に像担持体とクリーニング部材との当接部にトナーを供給して像担持体とクリーニング部材との間の摩擦力を低減し、クリーニング不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図5】実施例1におけるプリントシーケンスのタイミングチャート図である。
【
図6】実施例1における前回転シーケンスでのVbackの推移を示すグラフ図である。
【
図7】実施例1における露光量と感光ドラムの表面電位との関係を示すグラフ図である。
【
図8】実施例1における後回転シーケンスでのVbackの推移を示すグラフ図である。
【
図9】実施例1におけるVbackと感光ドラム上のかぶりトナーの量との関係を示すグラフ図である。
【
図10】実施例1における前回転シーケンスでのかぶりトナーの量の推移を示すグラフ図である。
【
図11】実施例1における後回転シーケンスでのかぶりトナーの量の推移を示すグラフ図である。
【
図12】比較例1におけるプリントシーケンスのタイミングチャート図である。
【
図13】比較例2におけるプリントシーケンスのタイミングチャート図である。
【
図14】実施例2におけるプリントシーケンスのタイミングチャート図である。
【
図15】実施例2における前回転シーケンスでのVbackの推移を示すグラフ図である。
【
図16】実施例2における後回転シーケンスでのVbackの推移を示すグラフ図である。
【
図17】実施例2における前回転シーケンスでのかぶりトナーの量の推移を示すグラフ図である。
【
図18】実施例2における後回転シーケンスでのかぶりトナーの量の推移を示すグラフ図である。
【
図19】実施例3の画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図20】実施例3におけるプリント動作の手順の概略を示すフローチャート図である。
【
図21】実施例4の画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図22】実施例4におけるプリント動作の手順の概略を示すフローチャート図である。
【
図23】他の例におけるプリントシーケンスのタイミングチャート図である。
【
図24】実施例1及び実施例2の変形例における前回転シーケンス及び後回転シーケンスでの現像電圧及び感光ドラムの表面電位を示す表である。
【
図25】他の例におけるプリントシーケンスのタイミングチャート図である。
【
図26】他の例におけるプリントシーケンスのタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の材質、形状、それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により、適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0013】
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の模式的な断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いて被転写体としてのシート状の記録材Sにブラック単色画像を形成することが可能なモノクロレーザプリンタである。
【0014】
画像形成装置100は、像担持体としての回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、画像形成装置100にプリント信号が入力されると、駆動手段を構成する駆動源としてのメインモータ10(
図2)によって、
図1中の矢印R1方向(時計回り方向)に所定の周速度で回転駆動される。本実施例では、感光ドラム1の周速度に相当する画像形成装置100のプロセススピードは250mm/sである。
【0015】
感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、転写ローラ5及びクリーニング装置6が配置されている。また、画像形成装置100の下部には、記録材Sが収納されたカセット7が配置されており、カセット7から記録材Sの搬送経路に沿って順に、給送ローラ8、搬送ローラ9、Topセンサ150、定着装置12、排出ローラ15、排出トレイ16が配置されている。
【0016】
回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電ローラ2は、帯電手段としての帯電装置を構成する。帯電ローラ2は、感光ドラム1に当接して帯電部(帯電ニップ)Cを形成する。帯電処理時に、帯電ローラ2には、帯電電圧印加手段(帯電電圧印加部)としての帯電電源(高圧電源)11(
図2)により、感光ドラム1の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性の直流電圧である所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段としての露光装置3によって、画像形成装置100に入力された画像信号(画像情報)に応じて走査露光され、感光ドラム1上に静電潜像(静電像)が形成される。露光装置3については、後述して更に詳しく説明する。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像(トナー画像、現像剤像)が形成される。現像装置4が備えた現像ローラ42は、感光ドラム1に当接して現像部(現像ニップ)Gを形成する。現像装置4については、後述して更に詳しく説明する。
【0017】
感光ドラム1に対向して、転写手段としてのローラ型の転写部材である転写ローラ5が配置されている。転写ローラ5は、転写手段としての転写装置を構成する。転写ローラ5は、感光ドラム1に向けて押圧され、感光ドラム1と転写ローラ5とが当接する転写部(転写ニップ)Nを形成する。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、転写部Nにおいて、感光ドラム1と転写ローラ5とに挟持されて搬送される記録材S上に転写される。転写時に、転写ローラ5には、転写電圧印加手段(転写電圧印加部)としての転写電源(高圧電源)14(
図2)により、トナーの正規の帯電極性(正規極性)とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である所定の転写電圧(転写バイアス)が印加される。
【0018】
紙などの記録材(記録媒体、転写材、シート)Sは、記録材収納部としてのカセット7に収納されている。カセット7に収納された記録材Sは、給送部材としての給送ローラ8などによって1枚ずつ分離されてカセット7から送り出されて、搬送ローラ9へと搬送される。この記録材Sは、搬送部材としての搬送ローラ(レジストローラ)9によって、感光ドラム1上のトナー像とタイミングが合うように転写部Nに供給される。記録材Sの搬送方向において搬送ローラ9と転写部Nとの間には、記録材Sを検知する記録材検知手段として、記録材Sの搬送方向の先端を検知するTopセンサ150が設けられている。Topセンサ150の検知結果を示す信号は、後述するエンジン制御部205(
図2)に入力されて、露光装置3による画像書き出しタイミングの制御などに用いられる。
【0019】
トナー像が転写された記録材Sは、定着手段としての定着装置12へと搬送される。定着装置12は、未定着のトナー像を担持した記録材Sを加熱及び加圧することでトナー像を記録材Sに定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Sは、搬送部材としての排出ローラ15によって、装置本体Mの外部に設けられた排出部としての排出トレイ16上に排出(出力)される。
【0020】
また、記録材Sへのトナー像の転写後に感光ドラム1上に残留したトナー(転写残トナー)は、クリーニング手段としてのクリーニング装置6によって感光ドラム1上から除去されて回収される。クリーニング装置6は、感光ドラム1の表面に当接するように配置されたクリーニング部材としてのクリーニングブレード101と、クリーニング容器102と、を有する。クリーニングブレード101は、感光ドラム1に当接してクリーニング部(クリーニングニップ)Bを形成する。そして、クリーニング装置6は、クリーニングブレード101によって、回転する感光ドラム1の表面から転写残トナーを掻き取って、クリーニング容器102内に回収する。
【0021】
ここで、感光ドラム1の回転方向における帯電ローラ2が感光ドラム1を帯電処理する感光ドラム1上の位置を帯電部(帯電位置)Cとする。帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転方向における感光ドラム1と帯電ローラ2との当接部の上流側及び下流側に形成される感光ドラム1と帯電ローラ2との間の微小な空隙のうちの少なくとも一方で発生する放電によって、感光ドラム1を帯電処理する。ただし、簡単のため、ここでは感光ドラム1上の帯電ローラ2との当接部を帯電部(帯電位置)Cとみなして説明する。また、感光ドラム1の回転方向における露光装置3によりレーザ光が照射される感光ドラム1上の位置を露光部(露光位置)Eとする。また、感光ドラム1の回転方向における現像ローラ42によりトナーが供給される感光ドラム1上の位置(本実施例では感光ドラム1上の現像ローラ42との当接部)を現像部(現像位置)Gとする。また、感光ドラム1の回転方向における記録材Sへのトナー像の転写が行われる感光ドラム1上の位置(本実施例では感光ドラム1上の転写ローラ5との当接部)を転写部(転写位置)Nとする。また、感光ドラム1の回転方向におけるクリーニングブレード101によりトナーが除去される感光ドラム1上の位置(本実施例では感光ドラム1上のクリーニングブレード101との当接部)をクリーニング部(クリーニング位置)Bとする。なお、帯電部C、現像部G、転写部Nの位置は、感光ドラム1の回転方向における中央の位置で代表するものとする。本実施例では、画像形成装置100は、感光ドラム1の回転方向において転写部Nよりも下流側かつ帯電部Cよりも上流側で感光ドラム1の表面を除電する除電装置(前露光装置など)を有していない。
【0022】
また、本実施例では、感光ドラム1と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びクリーニング装置6は、一体的にカートリッジ化されて、装置本体Mに対して着脱可能なプロセスカートリッジ17を構成している。なお、画像形成装置100の装置本体Mは、画像形成装置100からプロセスカートリッジ17を除いた部分である。
【0023】
図2は、本実施例の画像形成装置100の制御構成を示すブロック図である。画像形成装置100には、制御手段としてのエンジン制御部205が設けられている。エンジン制御部205は、演算処理を行う中心的素子である演算処理手段としてのCPU251、記憶手段としてのROM、RAM、不揮発性メモリなどのメモリ(記憶媒体)252、入出力部(図示せず)などを有して構成される。ROMには、制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されており、RAMには、各種センサの検知結果に関する情報、演算結果などが格納される。不揮発性メモリには、各種設定情報や部材の寿命に関する情報などが記憶される。入出力部(I/F)は、エンジン制御部205とエンジン制御部205の外部のデバイスとの間の信号の授受を行う。
【0024】
エンジン制御部205には、例えば、メインモータ10、帯電電源11、後述する現像電源50、後述する供給電源51、後述する規制部材電源52、露光装置3、転写電源14などが接続されており、これらはエンジン制御部205により制御されて動作する。なお、帯電電源11、現像電源50、供給電源51、規制部材電源52、転写電源14は、それぞれトランスなどを有して構成されている。エンジン制御部205は、制御プログラムやデータテーブルに従って画像形成装置100の各部を統括的に制御して動作させる。エンジン制御部205は、ホストコンピュータ(パーソナルコンピュータなど)、画像読取装置などの外部装置(本実施例ではホストコンピュータ)300からプリント信号(画像信号及び画像形成開始信号などの制御指令)が入力され、これに従って画像形成装置100の各部を制御して、プリントシーケンス(プリント動作、ジョブ)を実行させる。
【0025】
2.感光ドラム
本実施例では、感光ドラム1は、導電性材料で形成された支持体としてのアルミシリンダ上に、電気的バリア性を有する下引き層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、がこの順番で積層されて構成されている。帯電ローラ2と接触する感光ドラム1の最表面を構成する電荷輸送層は、ポリカーボネート樹脂などを用いて形成されている。また、本実施例では、画像形成時における帯電ローラ2により帯電処理されて形成される感光ドラム1の表面電位(以下、「暗電位」ともいう。)は-500Vである。
【0026】
3.クリーニングブレード
クリーニング部材としてのクリーニングブレード101は、感光ドラム1の回転方向において転写位置Nよりも下流側かつ帯電位置Cよりも上流側において、感光ドラム1の表面に当接しており、感光ドラム1上のトナーを感光ドラム1上から除去する。
【0027】
クリーニングブレード101は、支持板金と、支持板金の先端に感光ドラム1と当接可能なように固定された弾性を有するゴム部と、を有して構成されている。クリーニングブレード101のゴム部は、長手方向と、この長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する、弾性材料で形成された板状部材で構成されている。クリーニングブレード101のゴム部は、その長手方向が感光体の表面の移動方向と略直交する方向と略平行に配置される。そして、クリーニングブレード101のゴム部は、短手方向の自由端部(ゴム部の先端部)が感光ドラム1の表面の移動方向における上流側を向くように、感光ドラム1の回転方向に対してカウンター方向で感光ドラム1の表面に当接させられている。これにより、クリーニングブレード101は、回転する感光ドラム1の表面からトナーを掻き取るようにして除去する。本実施例では、クリーニングブレード101のゴム部は、ポリウレタン(ウレタンゴム)で形成されており、ウォーレス硬度は75°、厚さは2mmである。また、本実施例では、クリーニングブレード101は、当接角(当接部における感光ドラム1の接線となす角度)30°、当接圧(設定圧)30gf/cmの設定で、感光ドラム1の表面に当接させられている。
【0028】
クリーニングブレード101の当接圧が低すぎると、クリーニング性が確保できず、クリーニング不良が発生することがある。逆に、クリーニングブレード101の当接圧が高すぎると、感光ドラム1とクリーニングブレード101との間の摩擦力が高くなりすぎる。そして、クリーニングブレ-ド101のびびり(振動)、更にはクリーニングブレード101のめくれ(ゴム部の自由端部が感光ドラム1の回転方向の下流側にめくれてしまう現象)が発生することがある。クリーニングブレード101のびびりは、クリーニング不良の原因になる。また、クリーニングブレード101のめくれは、クリーニング不良の原因になると共に、場合よっては装置の破損につながる。
【0029】
また、クリーニングブレード101の当接角、当接圧が適切に設定された場合であっても、感光ドラム1へのトナーの供給が少ない状態で感光ドラム1を回転させ続けると、クリーニングブレード101のびびりが発生することがある。本実施例の画像形成装置100は、これを抑制するために、後述する「供給動作」を実行する。
【0030】
4.現像装置
図3は、本実施例における現像装置4の模式的な断面図である。本実施例では、現像装置4は、接触現像方式を採用しており、現像剤として正規極性(現像時のトナーの主要な帯電極性)が負極性である負帯電性の非磁性一成分現像剤(トナー)を用いる。また、本実施例では、現像装置4は、反転現像方式を採用しており、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の画像部に、感光ドラム1の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーを付着させて現像を行う。
【0031】
現像装置4は、トナーを収容する現像剤収容部としての現像容器41と、トナーを担持して搬送する現像部材(現像剤担持体)としての現像ローラ42と、を有する。また、現像装置4は、現像ローラ42にトナーを供給する現像剤供給部材としての供給ローラ43と、現像ローラ42が担持するトナーの量を規制する現像剤規制部材としての現像ブレード44と、を有する。供給ローラ43及び現像ブレード44は、現像ローラ42に当接するように配置されている。また、現像容器41内(本実施例では略中央)には、トナーを撹拌すると共にトナーを供給ローラ43に供給するための撹拌部材45が設けられている。現像ローラ42には、現像電圧印加手段(現像電圧印加部)としての現像電源(高圧電源)50が接続されている。また、供給ローラ43には、供給電圧印加手段(供給電圧印加部)としての供給電源(高圧電源)51が接続されている。また、現像ブレード44には、規制部材電圧印加手段(規制部材電圧印加部)としての規制部材電源(高圧電源)52が接続されている。
【0032】
本実施例では、画像形成装置100には、現像ローラ42を感光ドラム1に対して当接及び離間させる現像当接離間機構は設けられていない。つまり、本実施例では、現像ローラ42は、現像装置4(プロセスカートリッジ17)が装置本体M内の所定の位置に配置されている状態で常に感光ドラム1に当接している。現像ローラ42は、
図3中の矢印R4方向(反時計回り方向)に回転駆動される。つまり、現像ローラ42は、感光ドラム1と現像ローラ42との当接部において感光ドラム1の表面と現像ローラ42の表面とが順方向に移動するように回転駆動される。また、供給ローラ43は、
図3中の矢印R3方向(反時計回り方向)に回転駆動される。つまり、供給ローラ43は、現像ローラ42と供給ローラ43との当接部において現像ローラ42の表面と供給ローラ43の表面とが逆方向に移動するように回転駆動される。また、撹拌部材45は、
図3中の矢印R2方向(時計回り方向)に回転駆動される。本実施例では、現像ローラ42、供給ローラ43及び撹拌部材45は、感光ドラム1の駆動源と共通の駆動源であるメインモータ10からの駆動力が伝達されて回転する。現像ローラ42、供給ローラ43及び撹拌部材45は、感光ドラム1と同期して回転、停止する。現像時に、現像ローラ42には、現像電源50により、トナーの正規極性と同極性(本実施例では負極性)の直流電圧である現像電圧(現像バイアス)が印加される。また、現像時に、供給ローラ43には、供給電源51により、トナーの正規極性と同極性(本実施例では負極性)で現像電圧よりも絶対値が大きい直流電圧である供給電圧(供給バイアス)が印加される。また、現像時に、現像ブレード44には、規制部材電源52により、トナーの正規極性と同極性(本実施例では負極性)で現像電圧よりも絶対値が大きい直流電圧である規制部材電圧(規制部材バイアス)が印加される。
【0033】
現像装置4の現像動作について説明する。撹拌部材45が回転することで現像ローラ42と供給ローラ43との当接部の近傍の領域Fにトナーが供給されて、一旦、貯留される。上記領域Fに貯留されたトナーは、供給ローラ43が回転することによって、現像ローラ42上に供給される。現像ローラ42に供給されたトナーは、現像ローラ42が回転することによって、現像ローラ42と現像ブレード44との当接部を通過し、適切な層厚で薄層化(コート)されて現像ローラ42上に担持される。この際に、現像ローラ42に供給されたトナーは、現像ブレード44の表面と摺擦されることで、負極性に摩擦帯電される。現像ローラ42にコートされたトナーは、現像ローラ42が回転することによって、感光ドラム1と現像ローラ42との当接部である現像部Gに搬送される。現像部Gでは、感光ドラム1上に形成された静電潜像の画像部の電位と現像ローラ42に印加される現像電圧との間の電位差により形成される電界によって、現像ローラ42上にコートされたトナーの一部が感光ドラム1に転移して付着する。このようにして、静電潜像がトナー像として現像(可視化)される。現像部Gにおいて現像に使用されず現像ローラ42上に残留したトナーは、現像ローラ42と供給ローラ43との当接部において、回転する供給ローラ43によって現像ローラ42上から剥ぎ取られ、領域Fに貯留されたトナーが新たに現像ローラ42上に供給される。
【0034】
ここで、電子写真方式を用いた画像形成装置では、感光ドラム1の表面の非画像部にトナーが付着してしまう現象がある。この現象を、「かぶり」と呼ぶ。一般に、かぶりは、帯電処理後の感光ドラム1の表面が現像部Gに到達した際の感光ドラム1の表面電位と、現像ローラ42の電位と、の間の電位差によってコントロールされる。この電位差を、「バックコントラスト」(以下、「Vback」ともいう。)と呼ぶ。通常、Vbackは、トナーの保持する電荷に対して、感光ドラム1と現像ローラ42との間に形成される電界が現像ローラ42側から感光ドラム1側にトナーを飛ばさない電界となるように設定される。なお、本実施例では、感光ドラム1の表面が帯電部Cから現像部Gまで移動する間の感光ドラム1の表面電位の自然減衰は無視できる程度であるものとする。
【0035】
Vbackを適切に制御することによって、トナーが付着すべきでない部分である非画像部に余分なトナーを付着させないようにすることができる。Vbackが所定値よりも小さい場合には、正規極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを現像ローラ42上に留めておく電界が弱まり、感光ドラム1上の非画像部に正規極性に帯電したトナーが付着するかぶり(正規かぶり)が発生する。逆に、Vbackが所定値よりも大きい場合には、正規極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを現像ローラ42上に留めておく電界が強まる。その一方で、この強まった電界の影響で現像ローラ42上に正規極性とは逆極性(本実施例では正極性)に帯電したトナー(反転トナー)が発生してしまい、感光ドラム1上の非画像部に反転トナーが付着するかぶり(反転かぶり)が発生する。
【0036】
本実施例では、画像形成時には、帯電ローラ2に-1000Vの帯電電圧が印加され、感光ドラム1の表面が-500Vの暗電位(非画像部電位)Vdに一様に帯電処理される。帯電処理された感光ドラム1の表面は、画像信号に応じて露光装置3により露光され、感光ドラム1の表面に-250Vの明電位(画像部電位)Vlが形成される。また、画像形成時には、現像ローラ42に、-350Vの現像電圧Vdcが印加される。画像部(画像領域)及び非画像部(非画像領域)は、感光ドラム1上の画像形成可能領域内に形成される。画像形成可能領域は、感光ドラム1上に現像ローラ42上からトナーを供給可能な領域である。本実施例では、画像形成時の現像部Gにおける感光ドラム1上の明電位Vlと現像電圧Vdcとの間の電位差(=|Vl-Vdc|)である「現像コントラスト」(以下、「Vcont」ともいう。)は100Vである(現像電圧Vdcの方が明電位Vlよりもトナーの正規極性側に高い)。また、本実施例では、画像形成時の現像部Gにおける感光ドラム1上の暗電位Vdと現像電圧Vdcとの間の電位差(=|Vd-Vdc|)であるバックコントラストVbackは150Vである(暗電位Vdの方が現像電圧Vdcよりもトナーの正規極性側に高い)。後述して更に説明するように、本実施例では、画像形成時には、かぶりを起こしたトナー(以下、「かぶりトナー」ともいう。)の量が最小となるようにVbackを150Vに設定している(
図9)。なお、Vcont、Vbackは、現像部Gにおける感光ドラム1の表面電位と現像ローラ42の芯金に印加される現像電圧との間の電位差で表される。また、電圧は、接地電位(0V)との間の電位差で表される。
【0037】
5.露光装置
図4は、本実施例における露光装置3及びその周辺の構成を示す模式図である。本実施例では、露光装置3は、レーザスキャナー(レーザ露光装置)で構成されている。
【0038】
露光装置3には、エンジン制御部205及び画像制御部212が接続されている。エンジン制御部205及び画像制御部212は、露光装置3の動作を制御する。本実施例では、エンジン制御部205と画像制御部212とが異なる基板に設けられている。露光装置3は、レーザ光源200、コリメータレンズ203、ポリゴンミラー204、フォトダイオード(PD)202、ビーム検知(BD:Beam Detect)センサ206、F-θレンズ217、及び折り返しミラー218を有する。また、露光装置3は、画像制御部212から入力されるビデオ信号(画像データ信号)214に応じてレーザ光源200の発光制御を行うレーザ制御部201を有する。画像制御部212は、ホストコンピュータ300(
図2)から入力される画像信号に基づいて、露光装置3の発光制御を行うためのビデオ信号214を生成する処理などを行う。
【0039】
レーザ光源200は、発光素子により二方向へレーザ光を出射する。レーザ光源200から一方向へ出射されたレーザ光はフォトダイオード202に入射する。フォトダイオード202は、入射されたレーザ光を電気信号に変換し、PD信号215としてレーザ制御部201へ送信する。レーザ制御部201は、PD信号215に基づいて、レーザ光が所定の光量となるように、レーザ光源200の出力光量制御(APC:Auto Power control)を行う。レーザ光源200から他の一方向へ出射されたレーザ光は、コリメータレンズ203を介してポリゴンミラー204に照射される。ポリゴンミラー204は、複数の反射面を有し、ポリゴンモータ208によって
図4中の矢印R5方向(反時計回り方向)に回転駆動される回転多面鏡である。本実施例のポリゴンミラー204は、4面の反射面を有する。ポリゴンモータ208は、エンジン制御部205から出力される駆動信号220に応じてポリゴンミラー204を回転駆動する。エンジン制御部205は、ホストコンピュータ300(
図2)からプリント信号が入力されると、後述するようにプリントシーケンスを開始して感光ドラム1の回転駆動などを開始すると共に、ポリゴンミラー204の回転駆動を開始する。ポリゴンミラー204に照射されたレーザ光は、反射面によって感光ドラム1の方向へ偏向される。ポリゴンミラー204が回転することで、偏向角が変化する。この偏向角の変化により、レーザ光は、感光ドラム1上を
図4中の矢印I方向(感光ドラム1の表面の移動方向と略直交する方向)に走査する。このレーザ光は、感光ドラム1を等速で走査するようにF-θレンズ217によって光路が補正され、折り返しミラー218を介して感光ドラム1に照射される。
【0040】
ポリゴンミラー204によって偏向されたレーザ光は、一部がBDセンサ206で受光される。本実施例では、BDセンサ206は、レーザ光が感光ドラム1の走査を開始する前にレーザ光を検出できる位置に配置されている。BDセンサ206は、検出したレーザ光に基づいて第1レベルと第2レベルとを有するBD信号207を生成し、エンジン制御部205へ送信する。BD信号207は、例えば負論理信号であり、BDセンサ206がレーザ光を検出している間は第1レベル(Low)、BDセンサ206がレーザ光を検出していない間は第2レベル(High)となる検出信号である。エンジン制御部205は、取得したBD信号207に基づいて、ポリゴンミラー204の回転周期が所定周期になるように、ポリゴンモータ208を制御する。エンジン制御部205は、BD信号207の周期が所定周期になることで、ポリゴンミラー204の回転周期が所定周期で安定していると判断する。つまり、エンジン制御部205は、BD信号207に基づいて駆動信号220を調整することで、ポリゴンミラー204の回転が所定周期で安定するように、フィードバック制御を行う。また、Topセンサ150は、記録材Sの先端を検知して生成する記録材検知信号210をエンジン制御部205へ送信する。エンジン制御部205は、BD信号207、記録材検知信号210に基づいて、画像制御部212からレーザ制御部201へのビデオ信号214の入力を行わせて、ビデオ信号214に応じた露光動作を行わせる。
【0041】
6.プリントシーケンス
次に、本実施例におけるプリントシーケンス(プリント動作、ジョブ)について説明する。
【0042】
図5は、本実施例におけるプリントシーケンスのタイミングチャート図である。
図5には、プリントシーケンスにおける、現像電圧及び帯電電圧と、メインモータ10及び露光装置3(レーザ露光)の動作と、感光ドラム1の表面電位と、の推移を示している。プリントシーケンスにおける以下に説明する動作は、エンジン制御部205によって制御される。
【0043】
なお、本実施例では、帯電電圧、現像電圧はそれぞれ定電圧制御され、タイミングチャート図中の現像電圧、帯電電圧は、それぞれ帯電電圧、現像電圧の目標値(目標電圧)を示している。なお、定電圧制御とは、印加対象に印加される電圧が目標電圧で略一定となるように電源の出力を調整する制御である。また、タイミングチャート図中の感光ドラム1の表面電位は、露光部Eにおける電位を示している。ただし、本実施例では、前述のように、感光ドラム1の表面が帯電部Cから現像部Gまで移動する間の感光ドラム1の表面電位の自然減衰は無視できる程度である。また、タイミングチャート図中の「T0」、「T1」、「T2」などは、タイミングを示している。また、便宜上、電圧や電位の大小(高低)は、特に別に言及しない場合、絶対値で比較した場合の大小(高低)をいうものとする。
【0044】
プリントシーケンスは、「前回転シーケンス(前回転動作)」、「画像形成シーケンス(画像形成動作)」、及び「後回転シーケンス(後回転動作)」からなる。前回転シーケンスは、画像形成をするために、感光ドラム1の表面電位を0Vから画像形成用の表面電位である暗電位Vdまで立ち上げる制御である。画像形成シーケンスは、感光ドラム1の表面が暗電位Vdに立ち上がった後に、感光ドラム1の表面の一部に画像信号に対応したレーザ露光を行い、感光ドラム1の表面電位を部分的に画像形成用の感光ドラム1の表面電位である明電位Vlまで落とすシーケンスである。後回転シーケンスは、画像形成後の感光ドラム1の表面電位を暗電位Vdから0Vまで立ち下げる制御である。本実施例では、暗電位Vdは-500Vであり、明電位Vlは-250Vである。なお、画像形成時(画像形成動作時)は、上記画像形成シーケンスの期間に相当する。また、非画像形成時(非画像形成動作時)は、画像形成時以外の期間であり、上記前回転シーケンスの期間や上記後回転シーケンスの期間に相当する。
【0045】
本実施例では、非画像形成時に、Vbackを画像形成時よりも小さくする制御を行うことで、かぶりトナーをクリーニング部Bに供給して、感光ドラム1とクリーニングブレード101との間の摩擦力を低減する(「供給動作」)。これにより、クリーニングブレード101の「びびり」を抑制すると共に、そのトナーがクリーニングブレード101をすり抜けることによる「クリーニング不良」を抑制することを可能とする。
【0046】
<前回転シーケンス>
まず、前回転シーケンスについて説明する。
【0047】
エンジン制御部205がホストコンピュータ300からプリント信号を取得すると、現像電源50による現像ローラ42への現像電圧の印加が開始される(T0)。本実施例では、上述のように、後回転シーケンスにおいて感光ドラム1の表面電位は0Vまで落とされる。前回転シーケンスでは、感光ドラム1の起動時にVbackを150Vに維持するために、タイミングT0において、正極性の現像電圧である+150Vの現像電圧の印加が開始される。高圧電源は、出力電圧を目標電圧まで立ち上げるのに時間を要する。そのため、現像電圧の印加が開始された後、現像電圧の立ち上げが終了するのに要する時間が経過してから、メインモータ10が起動(ON)されて、感光ドラム1の回転が開始される(T1)。メインモータ10の回転数は、前述のBD信号207に基づいて所定の回転数になるように制御される。メインモータ10は、回転数を目標の回転数まで立ち上げるのに時間を要する。そのため、メインモータ10が起動された後、メインモータ10の立ち上げが終了するのに要する時間が経過してから、帯電電源11による帯電ローラ2への第1の帯電電圧S1の印加が開始される(T2)。
【0048】
帯電電圧は、30msごとに50Vの変動幅(変更幅)で第1の帯電電圧S1から第10の帯電電圧S10まで階段状(段階的)に立ち上げられるように制御される。なお、このように電圧(あるいは電位)を階段状(段階的)に立ち上げる制御を「階段立ち上げ制御」ともいう。ここで、電圧を30msごとに50Vの変動幅で階段状(段階的)に立ち上げるとは、50Vずつ変更される各段の目標電圧が30msの間維持されることをいう。各段の目標電圧の持続時間は、各段の少なくとも一部の期間で高圧電源の出力電圧が目標電圧になるように設定される。これは、後述する電圧を階段状(段階的)に立ち下げる場合も同様である。本実施例では、帯電電圧の階段立ち上げ制御の開始時(T2)の第1の帯電電圧S1は-550V、帯電電圧の階段立ち上げ制御の最終段(T4)の第10の帯電電圧S10は-1000Vとされる。また、上述のように、1段当たりの帯電電圧の変動幅は50Vとされる。なお、前回転シーケンスが開始されたタイミングT0から帯電電圧の階段立ち上げ制御が開始されるタイミングT2までの帯電電圧(OFF、0V)をS0とする。
【0049】
感光ドラム1の表面電位は、帯電電圧の印加が開始されるタイミングT2までは0Vに維持される。帯電電圧の階段立ち上げ制御が開始された後は、感光ドラム1の表面電位は帯電電圧に対応して第1の表面電位V1から第10の表面電位V10まで階段状(段階的)に大きくなる。本実施例では、帯電電圧の階段立ち上げ制御の開始時の第1の帯電電圧S1に対応して第1の表面電位V1は-50V、帯電電圧の階段立ち上げ制御の最終段の第10の帯電電圧S10に対応して第10の表面電位V10は-500Vとなる。また、1段当たりの感光ドラム1の表面電位の変動幅は50Vとなる。つまり、感光ドラム1の表面電位は、30msごとに50Vの変動幅で第1の表面電位V1から第10の表面電位V10まで階段状(段階的)に立ち上げられる。ここで、本実施例では、感光ドラム1と帯電ローラ2との間における放電開始電圧(放電閾値)は約500Vである。なお、前回転シーケンスが開始されてから感光ドラム1の表面電位の階段立ち上げ制御が開始されるまでの感光ドラム1の表面電位(0V)をV0とする。
【0050】
現像電圧は、Vbackが画像形成時のVbackである150Vから徐々に小さくなるように制御される。つまり、現像電圧は、帯電電圧(感光ドラム1の表面電位)の階段立ち上げ制御に対応して、Vbackが画像形成時のVbackである150Vから徐々に小さくなるように、階段状(段階的)に立ち上げられる。本実施例では、現像電圧の階段立ち上げ制御の開始時(T3)の第1の現像電圧D1は+90V、その後第2の現像電圧D2は+30Vというように、1段当たりの現像電圧の変動幅が60Vとされて、第8の現像電圧D8である-330Vまで順次立ち上げられる。その後、現像電圧の変動幅が20Vとされて、第9の現像電圧D9は-350Vとされる。また、第10の現像電圧D10は、第9の現像電圧D9と同一の-350Vとされる。このようにして、現像電圧は、30msごとに第1の現像電圧D1から第9の現像電圧D9(第10の現像電圧D10)まで階段状(段階的)に切り替えられて立ち上げられる。なお、前回転シーケンスが開始されたタイミングT0から現像電圧の階段立ち上げ制御が開始されるタイミングT3までの現像電圧(+150V)をD0とする。
【0051】
図6は、本実施例における前回転シーケンスでのVbackの推移を示すグラフ図である。
図6には、前回転シーケンスの開始時(現像電圧D0の印加時)、第1~第10の現像電圧D1~D10のそれぞれの印加時のVbackが示されている。
図6に示すように、本実施例では、現像電圧及び感光ドラム1の表面電位を上述のように制御することで、前回転シーケンスにおいてVbackを画像形成時のVbackである150Vから徐々に小さくすることができる。なお、本実施例では、第8の現像電圧D8から第10の現像電圧D10までは、Vbackは画像形成時のVbackに向けて徐々に大きくされる。
【0052】
<画像形成シーケンス>
次に、画像形成シーケンスについて説明する。
【0053】
本実施例では、前述のように、画像形成時には、感光ドラム1の表面電位は、画像形成に最適な暗電位Vdである-500Vとされる。そのために、画像形成時には、帯電電源11により帯電ローラ2に-1000Vの帯電電圧が印加される。一方、画像形成時には、現像電源50により現像ローラ42に-350Vの現像電圧が印加される。すなわち、本実施例では、画像形成時には、Vbackは前回転シーケンスの開始時と同様の150Vとされる。
【0054】
また、エンジン制御部205は、前述のように、ポリゴンミラー204が所定の回転数になるように、ポリゴンモータ208を制御する。つまり、エンジン制御部205は、BD検知センサ206から送信されるBD信号207の取得周期が一定となるように、駆動信号220を調整し、ポリゴンモータ208の回転数をフィードバック制御する。そして、エンジン制御部205は、ホストコンピュータ300からプリント信号を受信すると、所定時間が経過した後に給送ローラ8を回転させるように制御し、記録材Sの給送動作を開始する。記録材Sは、カセット7から搬送路に沿って搬送ローラ9へと搬送される。記録材Sの搬送方向において搬送ローラ9の下流側近傍の搬送路に設置されたTopセンサ150によって記録材Sが検知されると、Top信号210がTopセンサ150からエンジン制御部205を介して画像制御部212に送信される。画像制御部212は、Top信号210を受信すると、所定時間が経過した後にTop信号に同期させたビデオ信号214をレーザ制御部201に送信する。これにより、画像制御部212は、画像と記録材Sとの副走査方向(記録材Sの搬送方向)における同期を行う。また、画像制御部212は、BD信号207に同期させてビデオ信号214をレーザ制御部201に送信することで、画像と記録材Sとの主走査方向(記録材Sの搬送方向と直交する方向)における同期を行う。
【0055】
画像制御部212は、ホストコンピュータ300から出力画像に対応する画像信号(画像データ)を取得すると、適切な画像処理を行った上で、ビデオ信号214に変換し、Top信号210とBD信号207とに同期させた上でレーザ制御部201に送信する。
【0056】
レーザ制御部201は、画像制御部212から送られたビデオ信号214に従い、レーザ光源200のONとOFFとを制御する。感光ドラム1の表面電位は、前述のように、レーザ露光を受けるまでは-500Vの暗電位Vdに制御されている。一方、感光ドラム1の表面電位は、レーザ露光を受けた後は、-250Vの明電位Vlになる。感光ドラム1の表面が現像部Gを通過する際に、現像ローラ42の表面から感光ドラム1の表面の画像部(明電位Vlの部分)に電気的に付勢されたトナーが転移することで、感光ドラム1の表面にレーザ露光部に対応してトナー像が形成される。
【0057】
上述のような画像形成は、搬送方向(感光ドラム1の表面の移動方向)における画像の先端部から開始されて、搬送方向における画像の後端部まで継続される。また、上述のような画像形成は、プリント枚数分だけ行われる。
【0058】
<後回転シーケンス>
次に、後回転シーケンスについて説明する。
【0059】
画像形成シーケンスにおいて画像の後端部までの画像形成が終了すると、第10の帯電電圧S10の印加が終了されると同時に、レーザ制御部201によりレーザ光源200の発光が開始され、第1の露光量P1で感光ドラム1の表面(画像形成可能領域の略全域)の露光が行われる(T5)。第1の露光量P1での露光が行われることで、感光ドラム1の表面電位は、第10の表面電位V10である-500Vから第11の表面電位V11である-450Vに、50V落とされる。第1の露光量P1での露光が終了されると、第1の露光量P1よりも大きい第2の露光量P2での露光が行われることで、感光ドラム1の表面電位は、第10の表面電位V10である-500Vから第12の表面電位V12である-400Vに、100V落とされる。以降、同様に第3の露光量P3から第10の露光量P10まで合計10回の露光が行われることで、最終的に感光ドラム1の表面電位は、第10の表面電位V10である-500Vから第20の表面電位V20である0Vまで500V落とされる。最後の露光である第10の露光量P10での露光は、タイミングT6からタイミングT7まで、感光ドラム1の1周分に相当する時間にわたり行われる。すなわち、感光ドラム1の表面電位が感光ドラム1の全周において第20の表面電位V20である0Vになるまで、最終の露光である第10の露光量P10での露光が継続される(T7)。このようにして、感光ドラム1の表面電位は、30msごとに50Vの変動幅で第10の表面電位V10から第20の表面電位V20まで階段状(段階的)に立ち下げられる。なお、このように電圧(あるいは電位)を階段状(段階的)に立ち下げる制御を「階段立ち下げ制御」ともいう。
図7は、後回転シーケンスにおける感光ドラム1の表面電位V11~V20を形成するため露光量P1~P10と、感光ドラム1の表面電位V11~V20と、の関係を示すグラフ図である。
図7の横軸は、露光部Eでの感光ドラム1の表面におけるレーザ光量、縦軸はそのレーザ光量で形成される感光ドラム1の表面電位を示す。
【0060】
また、後回転シーケンスにおいても、前回転シーケンスと同様に、現像電圧を階段状(段階的)に切り替える制御(階段立ち下げ制御)が行われる。本実施例では、現像電圧は、Vbackが画像形成時のVbackである150Vから徐々に小さくなるように制御される。つまり、現像電圧は、感光ドラム1の表面電位の階段立ち下げ制御に対応して、Vbackが画像形成時のVbackである150Vから徐々に小さくなるように、階段状(段階的)に立ち下げられる。本実施例では、現像電圧の階段立ち下げ制御の開始時(T5)の第10の現像電圧D10である-350Vから、第11の現像電圧D11は-310V、第12の現像電圧D12は-270Vというように、1段当たりの現像電圧の変動幅が40Vとされて、第18の現像電圧D18である-30Vまで順次立ち下げられる。その後、現像電圧の変動幅が60Vとされて、第19の現像電圧D19は+30V、第20の現像電圧D20は+90V、第21の現像電圧D21は+150Vとされる。このようにして、現像電圧は、30msごとに第10の現像電圧D10から第21の現像電圧D21まで階段状(段階的)に切り替えられて立ち下げられる。
【0061】
図8は、本実施例における後回転シーケンスでのVbackの推移を示すグラフ図である。
図8には、後回転シーケンスの開始時(現像電圧D10の印加時)、第11~第21の現像電圧D11~D21のそれぞれの印加時のVbackが示されている。
図8に示すように、本実施例では、現像電圧及び感光ドラム1の表面電位を上述のように制御することで、後回転シーケンスにおいてもVbackを画像形成時のVbackである150Vから徐々に小さくすることができる。なお、本実施例では、第18の現像電圧D18から第21の現像電圧D21までは、Vbackは感光ドラム1の停止時のVbackに向けて徐々に大きくされる。
【0062】
メインモータ10は、後回転シーケンスにおける最終の露光である第10の露光量での露光が終了するタイミングT7で停止(OFF)される。また、現像電源50は、メインモータ10が惰性回転後に完全に停止するタイミングT8で第21の現像電圧D21である+150Vの印加を終了する。メインモータ10の完全な停止と電圧印加の終了をもって、プリントシーケンス(プリント動作)が終了する。
【0063】
7.効果
次に、本実施例の効果について説明する。
【0064】
図9は、本実施例の構成におけるVbackとかぶりトナーの量との関係を示すグラフ図である。
図9において、横軸はVbackを示し、縦軸はかぶりトナーの量に対応するかぶり濃度(%)を示す。かぶり濃度(%)は、「東京電色反射濃度計 TC-6DS/A30」を用いて、次のようにして測定した。所定のVbackを設けた際の感光ドラム1上のかぶりトナーを、感光ドラム1を停止させて透明なテープに付着させ、そのテープを所定の紙に貼り付けて反射濃度を測定した値(平均反射率、白色度)をDs(%)とする。また、かぶりトナーが付着していないテープを上記所定の紙に貼り付けて反射濃度を測定した値(平均反射率、白色度)をDr(%)とする。そして、Ds(%)とDr(%)との差から、かぶり濃度(%)(=Dr(%)-Ds(%))を算出した。
図9に示すように、Vbackには最適値が存在し、小さすぎても、大きすぎても、かぶりトナーの量の最小値は得られない。通常、画像形成時には、Vbackは、かぶりトナーの量が最小になるように設定される。
【0065】
本実施例では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間(時間帯)を設ける。これにより、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、正規極性のかぶりトナーが発生する期間を設けることができる。そして、このようにして発生させたかぶりトナーをクリーニング部Bに供給することで、トナーや外添剤をクリーニングブレード101の自由端部側の先端に滞留させることができる。これによって、感光ドラム1とクリーニングブレード101との間に潤滑性を付与して、クリーニングブレード101の「びびり」を抑制することができる。
【0066】
ここで、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間は、現像ローラ42の1周分に相当する時間以上(すなわち、少なくとも1周分に相当する時間)とする。特に、Vbackを画像形成時よりも小さくすることでかぶり濃度(%)が3%以上となる期間が、現像ローラ42の1周分に相当する時間以上(すなわち、少なくとも1周分に相当する時間)であることが好ましい。なお、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間の長さは、画像形成時よりも小さい複数の異なるVbackの期間がある場合は、それらの期間を合計した長さである。本実施例では、現像ローラ42の1周分に相当する時間は約103ms(外径11.5mm、周速度350mm/s)である。そして、本実施例では、前回転シーケンスでは、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間は、第1~第9の現像電圧D1~D9の印加時の270msである(
図6)。特に、かぶり濃度(%)が3%以上となる期間は、後述するように第4~第9の現像電圧D4~D9の印加時の180msである(
図10)。また、本実施例では、後回転シーケンスでは、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間は、第11~第20の現像電圧D11~D20の印加時の300msである(
図8)。特に、かぶり濃度(%)が3%以上となる期間は、後述するように第14~第20の現像電圧D14~D20の印加時の210msである。Vbackを画像形成時よりも小さくする期間が短すぎる場合には、「びびり」を抑制するために十分な量のかぶりトナーをクリーニング部Bに供給することが難しくなる。一方、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間を長くしすぎると、生産性に影響する可能性がある。特に、前回転シーケンスにおいてVbackを画像形成時よりも小さくする期間を設ける場合には、FPOT(プリント信号の入力から画像が形成された最初の記録材が出力されるまでの時間)が長くなる。これに限定されるものではないが、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間は、現像ローラ42の10周分(典型的には5周分)に相当する時間以下で十分であることが多く、また生産性への影響を抑制する観点からも好ましい。
【0067】
ここで、クリーニングブレード101の「びびり」が発生しやすい状態では、感光ドラム1とクリーニングブレード101との間の摩擦力が上昇している。このような条件下で、供給動作として、記録材Sに転写する通常の画像の形成時と同様の工程により所定のトナーパターン(ベタ黒や細線)を感光ドラム1に形成すると、次のようになることがある。つまり、供給動作中の感光ドラム1とクリーニングブレード101との間の摩擦力の変動により、クリーニングブレード101の先端の感光ドラム1に対する当接状態が不安定化してしまうことがある。その結果、そのトナーパターンのトナー自体のすり抜けによりクリーニング不良が発生することがある。
【0068】
これに対して、かぶりトナーの量が最小となる状態よりもVbackが小さい場合に発生するかぶりトナーは、電荷の絶対値が相対的に小さく、感光ドラム1との鏡映力が相対的に低く、また非静電付着力が小さい粒径の大きいトナーが多い傾向がある。そのため、供給動作として、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間を設けて正規極性のかぶりトナーをクリーニング部Bに供給することで、供給動作中にクリーニング部Bに供給したトナー自体のすり抜けは発生しにくい。
【0069】
また、上述以外の効果として、トナーの供給量を徐々に増やすことができることから、摩擦力の変動を小さくした供給動作が可能となり、クリーニングブレード101の先端の当接状態が不安定化しにくいという効果が得られる。更に、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間を現像ローラ42の1周分に相当する時間以上にすることにより、この期間内の後半であるトナーの供給量が多くなる区間において、より粒径の大きいトナーを、クリーニング部Bに供給する傾向とできる。そのため、供給量が多くてもトナー自体のすり抜けが発生しにくく、より高い効果が得られる。これは、トナーを消費しない状態で現像ローラ42を回転している状態(白後)と、トナーを消費した状態で現像ローラ42を回転している状態(黒後)とで、現像ローラ42にコートされたトナーの粒径が異なり、後者の方で粒径が大きくなる傾向にあることによるものであると考えられる。すなわち、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間を現像ローラ42の1周分に相当する時間以上にすることにより、トナーを消費した状態で現像ローラ42を回転している状態が作り出せる。そして、その状態で、トナーの供給量が多くなる区間とすることで、より粒径の大きいトナーを、クリーニング部Bに供給することができる。
【0070】
また、本実施例では、Vbackが150Vの状態から現像ローラ42の回転を開始している。これは、現像ローラ42の回転開始時は、現像ローラ42の停止時間によって、現像ローラ42の回転方向における現像ローラ42と現像ブレード44との当接部から感光ドラム1と現像ローラ42との当接部までの間の現像ローラ42の上に担持されているトナーの電荷量が不安定となるためである。つまり、現像ローラ42の回転初期からかぶりトナーを供給しようとすると、トナーの電荷量が不安定であるためにトナーの供給量がバラつくことがある。したがって、本実施例では、現像ローラ42の回転開始時にはVbackを画像形成動作時と同じ値に設定する。そして、現像ローラ42の回転が行われて、現像ブレード44との当接部を通過した現像ローラ42上のトナーが現像部Gに到達したタイミング以後から、Vbackを変更している。ただし、特に、トナーの電荷量が安定している条件においては、現像ローラ42の回転開始時のVbackは本実施例のVbackに限られず、初めからVbackを画像形成動作時のVbackより小さくしておいてもよい。
【0071】
このように、本実施例では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間を設ける。これにより、クリーニングBにかぶりトナーを供給してクリーニングブレード101の「びびり」を抑制すると共に、そのトナーがクリーニングブレード101をすり抜けることによる「クリーニング不良」を抑制することができる。
【0072】
特に、本実施例では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、クリーニング部Bに供給されるかぶりトナーの量が徐々に増えていくようにする。これにより、そのトナーがクリーニングブレード101をすり抜けることによる「クリーニング不良」をより一層抑制することができる。
【0073】
図10は、本実施例における前回転シーケンスでのかぶりトナーの量(かぶり濃度(%))の推移を示すグラフ図である。
図10には、前回転シーケンスの開始時(現像電圧D0の印加時)、第1~第10の現像電圧D1~D10のそれぞれの印加時のかぶりトナーの量(かぶり濃度(%))が示されている。また、
図11は、本実施例における後回転シーケンスでのかぶりトナーの量(かぶり濃度(%))の推移を示すグラフ図である。
図11には、後回転シーケンスの開始時(現像電圧D10の印加時)、第11~第21の現像電圧D11~D21のそれぞれの印加時のかぶりトナーの量(かぶり濃度(%))が示されている。
【0074】
前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、それぞれ
図6、
図8に示すように現像電圧及び感光ドラム1の表面電位を制御することで、Vbackを画像形成時のVbackである150Vから徐々に小さくすることができる。これにより、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、それぞれ
図10、
図11に示すように、かぶりトナーの量が最小となる状態から、正規極性のかぶりトナーの量を徐々に増やすことができる。
【0075】
上述のように、感光ドラム1とクリーニングブレード101との間の摩擦力が上昇している状態で供給動作として所定のトナーパターン(ベタ黒や細線)を形成すると、クリーニングブレード101の先端の当接状態が不安定化してしまうことがある。これに対して、本実施例では、供給動作として、Vbackを画像形成時よりも徐々に小さくする期間を設ける。これにより、
図10、
図11に示すように、クリーニング部Bへのトナーの供給量を徐々に増やすことができる。これにより、供給動作中の感光ドラム1とクリーニングブレード101との間の摩擦力の変動を小さくすることが可能となる。そのため、クリーニングブレード101の先端の感光ドラム1に対する当接状態が不安定化しにくい。その結果、供給動作中にクリーニング部Bに供給したトナー自体がクリーニングブレード101をすり抜けることによる「クリーニング不良」をより一層抑制することができる。
【0076】
なお、Vbackを画像形成時よりもどの程度小さくするかは、例えば上述のようなVbackを画像形成時よりも小さくする期間の長さなどの関係で、「びびり」を十分に抑制することができるように適宜設定することができる。例えば、1段階の画像形成時よりも小さいVbackを生成する場合、その期間の長さはVbackが小さいほど短くすることができる。また、複数段の画像形成時よりも小さいVbackを生成する場合、各段階の期間の長さはVbackが小さいほど短くすることができ、全段階の期間の長さの合計は、全段階のうちVbackが小さい段階の割合が大きいほど短くすることができる。これに限定されるものではないが、Vbackを画像形成時のVbackの1/1.5以下とする期間を設けることが好ましく、1/2以下とする期間を設けることがより好ましい。なお、この画像形成時よりも小さいVbackは、0Vであってもよい。また、かぶりトナーの量でいえば、かぶり濃度(%)が3%以上となる期間を設けることが好ましく、4%以上となる期間を設けることがより好ましい。これにより、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間の長さが長くなり、生産性に影響する可能性を低減することができる。なお、このかぶり濃度(%)は、15%以下で十分であることが多く、典型的には10%以下である。
【0077】
8.効果確認
次に、本実施例の効果を確認した画像出力実験の結果について説明する。画像出力実験は、本実施例と、比較例1、2と、について行った。
【0078】
比較例1は、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、Vbackを画像形成時よりも小さくすることを行わずに、Vbackを150Vで略一定とした例である。
図12は、比較例1におけるプリントシーケンスのタイミングチャート図である。比較例1では、前回転シーケンスにおいて、現像電圧の階段立ち上げ制御の開始時(T3)の第1の現像電圧D1である+100Vから、第2の現像電圧D2は+50V、第3の現像電圧D3は0Vというように、1段当たりの現像電圧の変動幅が50Vとされて、第10の現像電圧D10である-350Vまで順次立ち上げられる。つまり、現像電圧の1段当たりの変動幅は、帯電電圧の1段当たりの変動幅と同一とされている。これにより、前回転シーケンスにおけるVbackは150Vで略一定に保たれる。また、比較例1では、後回転シーケンスにおいて、現像電圧の階段立ち下げ制御の開始時(T5)の第10の現像電圧D10である-350Vから、第11の現像電圧D11は-300V、第12の現像電圧D12は-250Vというように、1段当たりの現像電圧の変動幅が50Vとされて、第20の現像電圧D20である+150Vまで順次立ち下げられる。つまり、現像電圧の1段当たりの変動幅は、レーザ露光による感光ドラム1の表面電位の1段当たりの変動幅と同一とされている。これにより、後回転シーケンスにおけるVbackは150Vで略一定に保たれる。
【0079】
また、比較例2は、比較例1と同様に、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、Vbackを画像形成時よりも小さくすることを行わずに、Vbackを150Vで略一定とした。更に、比較例2では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、所定のトナーパターンを形成する供給動作が行われる。この供給動作では、所定のトナーパターンとして、感光ドラム1の回転軸線方向における画像形成可能領域の略全域にわたる帯状のベタ黒画像が形成される。
図13は、比較例2におけるプリントシーケンスのタイミングチャート図である。比較例2では、前回転シーケンスにおいて、帯電電圧の階段立ち上げ制御が行われ、露光部Eにおける感光ドラム1の表面電位が第10の表面電位V10である-500Vまで立ち上げられた後に、露光量P10(前述の第10の露光量に相当)での露光が行われて、ベタ黒画像が形成される。また、後回転シーケンスにおいても同様に、露光量P10での露光が行われて、ベタ黒画像が形成される。なお、感光ドラム1の表面の移動方向におけるべた黒画像の幅(露光時間)は、本実施例における供給動作でのかぶりトナーの量と略同じ量のトナーが感光ドラム1に付着するように調整した。
【0080】
なお、比較例1、2の画像形成装置100の構成及び動作は、上述の相違点を除いて実質的に本実施例の画像形成装置100のものと同じである。
【0081】
本実施例及び比較例1、2の画像形成装置100において、画像出力実験(30k枚の耐久試験)を行い、画像出力実験の実行中における「びびり」及び「クリーニング不良」の発生の有無を確認した。「びびり」は、びびりに起因する音の発生の有無を確認することで評価した。また、「クリーニング不良」は、クリーニングブレード101をすり抜けたトナーの有無を確認することで評価した。結果を表1に示す。
【0082】
【0083】
比較例1ではびびりが発生したが、比較例2ではびびりが発生しなかった。これは、比較例2において、非画像形成時に所定のトナーパターンを形成してクリーニング部Bにトナーを供給する供給動作を行ったためであると考えられる。一方、比較例1では5k枚でクリーニング不良が発生し、比較例2では比較例1と比較して延命効果はあったものの15k枚でクリーニング不良が発生した。これは、比較例2において、供給動作中にトナーパターンのトナー自体がクリーニングブレード101をすり抜けたためであると考えられる。つまり、比較例2では、供給動作として、記録材Sに転写する通常の画像の形成時と同様の工程により所定のトナーパターンを形成した。そのため、供給動作中の感光ドラム1とクリーニングブレード101との間の摩擦力の変動により、クリーニングブレード101の先端の感光ドラム1に対する当接状態が不安定化したものと考えられる。
【0084】
これに対して、本実施例では、びびりもクリーニング不良も発生しなかった。本実施例では、供給動作としてVbackを画像形成時よりも小さくする期間を設け、クリーニング部Bにかぶりトナーを供給したことで、びびりを抑制できたものと考えられる。また、そのかぶりトナーは、前述のように電荷が相対的に小さいことなどによりトナー自体のすり抜けが発生しにくいため、供給動作中のクリーニング不良も発生しなかったものと考えられる。更に、本実施例では、供給動作においてVbackを画像形成時よりも徐々に小さくして、クリーニング部Bへのかぶりトナーの供給量を徐々に増やした。これにより、感光ドラム1とクリーニングブレード101との間の摩擦力の変動を小さくして、クリーニングブレード101の先端の感光ドラム1に対する当接状態が不安定化するのを抑制することができる。そのため、供給動作中のクリーニング不良をより一層抑制できたものと考えられる。
【0085】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、回転可能な像担持体(感光ドラム)1と、像担持体1の表面を帯電させる帯電装置(帯電ローラ)2と、帯電装置2に帯電電圧を印加する帯電電圧印加部(帯電電源)11と、帯電装置2により帯電された像担持体1の表面を露光して像担持体1の表面に静電像を形成する露光装置3と、トナーを担持して回転可能であり、像担持体1の表面に当接して現像部Gを形成し、現像部Gにおいて像担持体1の表面の静電像にトナーを供給して像担持体1の表面にトナー像を形成する現像部材(現像ローラ)42と、現像部材42に現像電圧を印加する現像電圧印加部(現像電源)50と、像担持体1の表面に当接してクリーニング部Bを形成し、像担持体1の表面からトナーを除去するクリーニング部材(クリーニングブレード)101と、現像部Gにおける、帯電装置2により帯電された像担持体1の表面電位と、現像部材42に印加される現像電圧と、の間の電位差であって、上記表面電位の方が上記現像電圧よりもトナーの正規の帯電極性と同極性側に高い電位差であるVbackを生成するように、帯電電圧印加部11、現像電圧印加部50及び露光装置3のうち少なくとも一つを制御する制御部(エンジン制御部)205と、を有し、上記トナー像を像担持体1の表面に形成する画像形成動作と、上記トナー像を像担持体1の表面に形成しない非画像形成動作と、を行う。そして、本実施例では、制御部205は、像担持体1の回転が開始してから画像形成動作が開始するまでの非画像形成動作時又は画像形成動作が終了してから像担持体1の回転が停止するまでの非画像形成動作時に、現像部材42が像担持体1に当接して回転している状態で、少なくとも現像部材42の1周分に相当する時間、画像形成動作時のVbackよりも小さいVbackを生成し、現像部材42から像担持体1の表面に移動したトナーをクリーニング部Bに供給する供給動作を実行するように制御する。
【0086】
本実施例では、制御部205は、像担持体1の回転が開始してから画像形成動作が開始するまでの非画像形成動作時に、像担持体1の表面電位の絶対値を像担持体1の停止時の値から画像形成動作時の値へと変更すると共に、現像電圧の絶対値を像担持体1の停止時の値から画像形成動作時の値へと変更する際の少なくとも一部の期間において、上記供給動作として、Vbackを、画像形成動作時のVbackよりも小さい第1の値と該第1の値よりも小さい第2の値とするように制御する。このとき、本実施例では、特に、制御部205は、像担持体1の回転が開始してから画像形成動作が開始するまでの非画像形成動作時に、像担持体1の表面電位の絶対値を段階的に変更すると共に、現像電圧の絶対値を段階的に変更する際の少なくとも一部の期間において、上記供給動作として、Vbackを画像形成動作時のVbackよりも段階的に小さくするように制御する。また、このとき、制御部205は、像担持体1の表面電位の絶対値を段階的に変更する際の1段当たりの変更幅、又は現像電圧の絶対値を段階的に変更する際の1段当たりの変更幅の少なくとも一方を変更して、Vbackを段階的に変化させるように制御することができる。また、本実施例では、制御部205は、画像形成動作が終了してから像担持体1の回転が停止するまでの非画像形成動作時に、像担持体1の表面電位の絶対値を画像形成動作時の値から像担持体1の停止時の値へと変更すると共に、現像電圧の絶対値を画像形成動作時の値から像担持体1の停止時の値へと変更する際の少なくとも一部の期間において、上記供給動作として、Vbackを、画像形成動作時のVbackよりも小さい第1の値と該第1の値よりも小さい第2の値とするように制御する。このとき、本実施例では、制御部205は、画像形成動作が終了してから像担持体1の回転が停止するまでの非画像形成動作時に、像担持体1の表面電位の絶対値を段階的に変更すると共に、現像電圧の絶対値を段階的に変更する際の少なくとも一部の期間において、上記供給動作として、Vbackを画像形成動作時のVbackよりも段階的に小さくするように制御する。また、このとき、本実施例では、制御部205は、像担持体1の表面電位の絶対値を段階的に変更する際の1段当たりの変更幅、又は現像電圧の絶対値を段階的に変更する際の1段当たりの変更幅の少なくとも一方を変更して、Vbackを段階的に変化させるように制御することができる。
【0087】
以上説明したように、本実施例によれば、非画像形成時にクリーニング部Bにトナーを供給して感光ドラム1とクリーニングブレード101との間の摩擦力を低減すると共に、そのトナーのすり抜けによるクリーニング不良の発生を抑制することができる。
【0088】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0089】
1.本実施例の概要
本実施例では、非画像形成時に、Vbackを画像形成時よりも大きくする制御を行うことで、主に劣化トナーからなるかぶりトナーをクリーニング部Bに供給する(「供給動作」)。これにより、実施例1と同様に「びびり」及び「クリーニング不良」を抑制すると共に、劣化トナーの現像ローラ42の付近への蓄積を低減し、印刷物の非画像部へのかぶり(画像形成時のかぶり)の発生を抑制することを可能とする。
【0090】
2.プリントシーケンス
本実施例におけるプリントシーケンスについて説明する。
【0091】
図14は、本実施例におけるプリントシーケンスのタイミングチャート図である。
図14には、プリントシーケンスにおける、現像電圧及び帯電電圧と、メインモータ10及び露光装置3(レーザ露光)の動作と、感光ドラム1の表面電位と、の推移を示している。プリントシーケンスにおける以下に説明する動作は、エンジン制御部205によって制御される。
【0092】
本実施例における前回転シーケンス及び後回転シーケンスでの帯電電圧(感光ドラム1の表面電位)の制御は、実施例1と同様である。
【0093】
本実施例では、前回転シーケンスにおいて、現像電圧は、Vbackが画像形成時のVbackである150Vから徐々に大きくなるように制御される。つまり、現像電圧は、帯電電圧(感光ドラム1の表面電位)の階段立ち上げ制御に対応して、Vbackが画像形成時のVbackである150Vから徐々に大きくなるように、階段状(段階的)に立ち上げられる。本実施例では、現像電圧の階段立ち上げ制御の開始時(T3)の第1の現像電圧D1は+140V、その後第2の現像電圧D2は+130Vというように、1段当たりの現像電圧の変動幅が10Vとされて、第5の現像電圧D5である-100Vまで順次立ち上げられる。その後、現像電圧の変動幅が90Vとされて、第6の現像電圧D6は+10V、第7の現像電圧D7は-80Vというように、第10の現像電圧D10である-350Vまで立ち上げられる。このようにして、現像電圧は、30msごとに第1の現像電圧D1から第10の現像電圧D10まで階段状(段階的)に切り替えられて立ち上げられる。なお、前回転シーケンスが開始されたタイミングT0から現像電圧の階段立ち上げ制御が開始されるタイミングT3までの現像電圧(+150V)をD0とする。
【0094】
図15は、本実施例における前回転シーケンスでのVbackの推移を示すグラフ図である。
図15には、前回転シーケンスの開始時(現像電圧D0の印加時)、第1~第10の現像電圧D1~D10のそれぞれの印加時のVbackが示されている。
図15に示すように、本実施例では、現像電圧及び感光ドラム1の表面電位を上述のように制御することで、前回転シーケンスにおいてVbackを画像形成時のVbackである150Vから徐々に大きくすることができる。なお、本実施例では、第5の現像電圧D5から第10の現像電圧D10までは、Vbackは画像形成時のVbackに向けて徐々に小さくされる。
【0095】
また、本実施例では、後回転シーケンスにおいても、前回転シーケンスと同様に、現像電圧を階段状(段階的)に切り替える制御(階段立ち下げ制御)が行われる。本実施例では、現像電圧は、Vbackが画像形成時のVbackである150Vから徐々に大きくなるように制御される。つまり、現像電圧は、感光ドラム1の表面電位の階段立ち下げ制御に対応して、Vbackが画像形成時のVbackである150Vから徐々に大きくなるように、階段状(段階的)に立ち下げられる。本実施例では、現像電圧の階段立ち下げ制御の開始時(T5)の第10の現像電圧D10である-350Vから、第11の現像電圧D11は-270V、第12の現像電圧D12は-190Vというように、1段当たりの現像電圧の変動幅が80Vとされて、第16の現像電圧D16である+130Vまで順次立ち下げられる。その後、現像電圧の変動幅が20Vとされて、第17の現像電圧D17から第20の現像電圧D20まで同一である+150Vまで立ち下げられる。このようにして、現像電圧は、30msごとに第10の現像電圧D10から第17の現像電圧D17(第20の現像電圧D20)まで階段状(段階的)に切り替えられて立ち下げられる。
【0096】
図16は、本実施例における後回転シーケンスでのVbackの推移を示すグラフ図である。
図16には、後回転シーケンスの開始時(現像電圧D10の印加時)、第11~第20の現像電圧D11~D20のそれぞれの印加時のVbackが示されている。
図16に示すように、本実施例では、現像電圧及び感光ドラム1の表面電位を上述のように制御することで、後回転シーケンスにおいてもVbackを画像形成時のVbackである150Vから徐々に大きくすることができる。なお、本実施例では、第16の現像電圧D16から第20の現像電圧D20までは、Vbackは感光ドラム1の停止時のVbackに向けて徐々に小さくされる。
【0097】
3.効果
次に、本実施例の効果について説明する。
【0098】
実施例1で説明したように、Vbackには最適値が存在し、小さすぎても、大きすぎても、かぶりトナーの量の最小値は得られない。通常、画像形成時には、Vbackは、かぶりトナーの量が最小になるように設定される(
図9)。
【0099】
本実施例では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間(時間帯)を設ける。これにより、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、正規極性とは逆極性(以下、「反転極性」ともいう。)のかぶりトナーが発生する期間を設けることができる。そして、このようにして発生させたかぶりトナーをクリーニング部Bに供給することで、トナーや外添剤をクリーニングブレード101の自由端部側の先端に滞留させることができる。これによって、感光ドラム1とクリーニングブレード101との間に潤滑性を付与して、クリーニングブレード101の「びびり」を抑制することができる。
【0100】
ここで、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間は、実施例1におけるVbackを画像形成時よりも小さくする期間と同様、現像ローラ42の1周分に相当する時間以上とする。特に、Vbackを画像形成時よりも大きくすることでかぶり濃度(%)が3%以上となる期間が、現像ローラ42の1周分に相当する時間以上であることが好ましい。なお、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間の長さは、画像形成時よりも大きい複数の異なるVbackの期間がある場合は、それらの期間を合計した長さである。本実施例では、現像ローラ42の1周分に相当する時間は約103ms(外径11.5mm、周速度350mm/s)である。そして、本実施例では、前回転シーケンスでは、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間は、第1~第9の現像電圧D1~D9の印加時の270msである(
図15)。特に、かぶり濃度(%)が3%以上となる期間は、後述するように第2~第8の現像電圧D2~D8の印加時の210msである(
図17)。また、本実施例では、後回転シーケンスでは、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間は、第11~第19の現像電圧D11~D19の印加時の270msである(
図16)。特に、かぶり濃度(%)が3%以上となる期間は、後述するように第13~第18の現像電圧D13~D18の印加時の180msである。Vbackを画像形成時よりも大きくする期間が短すぎる場合には、「びびり」を抑制するために十分な量のかぶりトナーをクリーニング部Bに供給することが難しくなる。また、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間が短すぎる場合には、現像ローラ42の全周にわたり現像ローラ42上にコートされたトナーのなかの劣化トナーを感光ドラム1に移行させることが難しいことなどから、後述する劣化トナーの蓄積を抑制する効果を得ることが難しくなる。一方、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間を長くしすぎると、実施例1におけるVbackを画像形成時よりも小さくする場合と同様、生産性に影響する可能性がある。これに限定されるものではないが、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間は、現像ローラ42の10周分(典型的には5周分)に相当する時間以下で十分であることが多く、また生産性への影響を抑制する観点からも好ましい。
【0101】
ここで、実施例1で説明したように、感光ドラム1とクリーニングブレード101との間の摩擦力が上昇している状態で供給動作として所定のトナーパターン(ベタ黒や細線)を形成すると、クリーニングブレード101の先端の当接状態が不安定化してしまうことがある。
【0102】
これに対して、かぶりトナーの量が最小となる状態よりもVbackが大きい場合に発生するかぶりトナーは、後述するように主に劣化トナーからなり、電荷の絶対値が相対的に小さく、感光ドラム1との鏡映力が相対的に低いトナーが多い傾向がある。そのため、供給動作として、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間を設けて反転極性のかぶりトナーをクリーニング部Bに供給することで、供給動作中にクリーニング部Bに供給したトナー自体のすり抜けは発生しにくい。
【0103】
また、実施例1と同様に、上述以外の効果として、トナーの供給量を徐々に増やすことができることから、摩擦力の変動を小さくした供給動作が可能となり、クリーニングブレード101の先端の当接状態が不安定化しにくいという効果が得られる。更に、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間を現像ローラ42の1周分に相当する時間以上にすることにより、この期間内の後半であるトナーの供給量が多くなる区間において、より粒径の大きいトナーを、クリーニング部Bに供給する傾向とできる。そのため、供給量が多くてもトナー自体のすり抜けが発生しにくく、より高い効果が得られる。
【0104】
また、実施例1で説明したのと同様、本実施例では、現像ローラ42の回転開始時にはVbackを画像形成動作時と同じ値に設定する。そして、現像ローラ42の回転が行われて、現像ブレード44との当接部を通過した現像ローラ42上のトナーが現像部Gに到達したタイミング以後から、Vbackを変更している。ただし、特に、トナーの電荷量が安定している条件においては、現像ローラ42の回転開始時のVbackは本実施例のVbackに限られず、初めからVbackを画像形成動作時のVbackより大きくしておいてもよい。
【0105】
このように、本実施例では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間を設ける。これにより、クリーニングBにかぶりトナーを供給してクリーニングブレード101の「びびり」を抑制すると共に、そのトナーがクリーニングブレード101をすり抜けることによる「クリーニング不良」を抑制することができる。
【0106】
特に、本実施例では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、クリーニング部Bに供給されるかぶりトナーの量が徐々に増えていくようにする。これにより、そのトナーがクリーニングブレード101をすり抜けることによる「クリーニング不良」をより一層抑制することができる。
【0107】
図17は、本実施例における前回転シーケンスでのかぶりトナーの量(かぶり濃度(%))の推移を示すグラフ図である。
図17には、前回転シーケンスの開始時(現像電圧D0の印加時)、第1~第10の現像電圧D1~D10のそれぞれの印加時のかぶりトナーの量(かぶり濃度(%))が示されている。また、
図18は、本実施例における後回転シーケンスでのかぶりトナーの量(かぶり濃度(%))の推移を示すグラフ図である。
図18には、後回転シーケンスの開始時(現像電圧D10の印加時)、第11~第20の現像電圧D11~D20のそれぞれの印加時のかぶりトナーの量(かぶり濃度(%))が示されている。
【0108】
前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、それぞれ
図15、
図16に示すように現像電圧及び感光ドラム1の表面電位を制御することで、Vbackを画像形成時のVbackである150Vから徐々に大きくすることができる。これにより、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて、それぞれ
図17、
図18に示すように、かぶりトナーの量が最小となる状態から、反転極性のかぶりトナーの量を徐々に増やすことができる。
【0109】
上述のように、感光ドラム1とクリーニングブレード101との間の摩擦力が上昇している状態で供給動作として所定のトナーパターン(ベタ黒や細線)を形成すると、クリーニングブレード101の先端の当接状態が不安定化してしまうことがある。これに対して、本実施例では、供給動作として、Vbackを画像形成時よりも徐々に大きくする期間を設ける。これにより、
図17、
図18に示すように、クリーニング部Bへのトナーの供給量を徐々に増やすことができる。これにより、供給動作中の感光ドラム1とクリーニングブレード101との間の摩擦力の変動を小さくすることが可能となる。そのため、クリーニングブレード101の先端の感光ドラム1に対する当接状態が不安定化しにくい。その結果、供給動作中にクリーニング部Bに供給したトナー自体がクリーニングブレード101をすり抜けることによる「クリーニング不良」をより一層抑制することができる。
【0110】
更に、本実施例では、供給動作として反転極性のかぶりトナーをクリーニング部Bに供給することで、供給動作として実施例1のように正規極性のかぶりトナーをクリーニング部Bに供給する場合とは異なり、次のような効果が得られる。
【0111】
つまり、反転極性のかぶりトナーは、正規帯電しにくいトナーである。この反転極性のかぶりトナーの多くは、プリント動作の繰り返しに伴い劣化したトナーである。トナーの劣化は、トナーの外添剤の移行や埋没、又はトナー形状の変形などによって引き起こされる。そのため、供給動作において、反転極性のかぶりトナーの量を増やすことで、劣化したトナーを現像装置4から選択的に排出し、クリーニング装置6に回収することができる。この動作を前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて繰り返し行うことにより、結果的に、正規帯電しにくい劣化トナーの現像ローラ42の付近への蓄積を低減し、印刷物の非画像部へのかぶり(画像形成時のかぶり)の発生を抑制するという効果が得られる。
【0112】
また、トナーの外添剤の移行や埋没、又はトナー形状の変形などにより劣化したトナーは、トナーの流動性が低くなる。これにより、トナーに掛かるストレスが増加しやすく、更なるトナーの外添剤の移行や埋没、又はトナー形状の変形を引き起こすというように、累積的に現象が進みやすい。そのため、供給動作において、反転極性のかぶりトナーの量を増やし、劣化したトナーを現像装置4から選択的に排出することで、上述のように累積的にトナーの外添剤の移行や埋没、又はトナー形状の変形が進むことを抑制することができる。トナーの外添剤の移行が多いと、外添剤により現像ローラ42が汚染され、スジ状(例えば現像ローラ42の表面の移動方向に沿う方向に延びるスジ状)の画像欠陥(以下、「現像スジ」ともいう。)が発生しやすくなる。供給動作において、反転極性のかぶりトナーの量を増やし、劣化したトナーを現像装置4から選択的に排出することで、この現象を抑制するという効果も得られる。
【0113】
なお、Vbackを画像形成時よりもどの程度大きくするかは、例えば上述のようなVbackを画像形成時よりも大きくする期間の長さなどの関係で、「びびり」や「画像形成時のかぶり」を十分に抑制することができるように適宜設定することができる。例えば、1段階の画像形成時よりも大きいVbackを生成する場合、その期間の長さはVbackが大きいほど短くすることができる。また、複数段の画像形成時よりも大きいVbackを生成する場合、各段階の期間の長さはVbackが大きいほど短くすることができ、全段階の期間の長さの合計は、全段階のうちVbackが大きい段階の割合が大きいほど短くすることができる。これに限定されるものではないが、Vbackを画像形成時のVbackの1.5倍以上とする期間を設けることが好ましく、2倍以上とする期間を設けることがより好ましい。なお、この画像形成時よりも大きいVbackは、3倍以下で十分であることが多く、典型的には2.5倍以下である。また、かぶりトナーの量でいえば、かぶり濃度(%)が3%以上となる期間を設けることが好ましく、4%以上となる期間を設けることがより好ましい。これにより、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間の長さが長くなり、生産性に影響する可能性を低減することができる。なお、このかぶり濃度(%)は、15%以下で十分であることが多く、典型的には10%以下である。
【0114】
4.効果確認
次に、本実施例の効果を確認した画像出力実験の結果について説明する。画像出力実験は、本実施例と、比較例1、2と、について行った。比較例1、2は、それぞれ実施例1で説明したものと同じであり、比較例1、2におけるプリントシーケンスの動作はそれぞれ
図12、
図13に示したとおりである。
【0115】
本実施例及び比較例1、2の画像形成装置100において、画像出力実験(30k枚の耐久試験)を行い、「かぶり」及び「現像スジ」の発生の有無を確認した。「かぶり」は、「東京電色反射濃度計 TC-6DS/A30」を用いて、次のようにして測定した。白地部分を有する画像を所定の紙に出力し、出力した画像の白地部分の反射濃度を測定した値(平均反射率、白色度)をDs(%))、上記所定の紙の反射濃度(平均反射率、白色度)をDr(%))とする。そして、Ds(%)とDr(%)との差から、かぶり濃度(%)(=Dr(%)-Ds(%))を算出した。「かぶり」は、画像出力実験を終了する時点で評価した。なお、画像形成時の「かぶり」は、3%を超えると許容範囲外であるものとする。また、「現像スジ」は、画像出力実験の実行中に1k枚ごとの時点でハーフトーン画像を出力し、スジの発生の有無を確認することで評価した。結果を表2に示す。
【0116】
【0117】
比較例1、比較例2では、かぶりは7%を超えるレベルで発生し、現像スジも発生した。
【0118】
これに対して、本実施例では、かぶりは1.5%と許容範囲内であり、現像スジも発生しなかった。本実施例では、供給動作としてVbackを画像形成時よりも大きくする期間を設け、反転極性のかぶりトナーの量を増やすことで、劣化したトナーを現像装置4から選択的に排出し、クリーニング装置6に回収する。これにより、正規帯電しにくい劣化トナーの現像ローラ42の付近への蓄積を低減して、印刷物の非画像部へのかぶり(画像形成時のかぶり)の発生を抑制することができたものと考えられる。また、これによりトナーの外添剤の移行も抑制して、現像スジの発生も抑制することができたものと考えられる。
【0119】
なお、実施例1と同様の画像出力実験により、本実施例においても、非画像形成時にかぶりトナーをクリーニング部Bに供給することで、「びびり」及び「クリーニング不良」を抑制する効果が得られることがわかった。
【0120】
このように、本実施例では、制御部205は、画像形成動作の前又は後の非画像形成動作時に画像形成動作時よりも大きいVbackを生成する供給動作を実行するように制御する。本実施例では、制御部205は、供給動作において、Vbackを、画像形成動作時のVbackよりも大きい第1の値と該第1の値よりも大きい第2の値とするように制御する。このとき、本実施例では、制御部205は、供給動作において、Vbackを画像形成動作時のVbackよりも段階的に大きくするように制御する。また、このとき、制御部205は、像担持体1の表面電位の絶対値を段階的に変更する際の1段当たりの変更幅、又は現像電圧の絶対値を段階的に変更する際の1段当たりの変更幅の少なくとも一方を変更して、Vbackを段階的に変化させることができる。
【0121】
以上説明したように、本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られると共に、劣化トナーの現像ローラ42の付近への蓄積を低減し、印刷物の非画像部へのかぶり(画像形成時のかぶり)の発生を抑制することができる。また、本実施例によれば、現像スジの発生を抑制することができる。
【0122】
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0123】
1.本実施例の概要
本実施例では、画像形成装置100の雰囲気環境(設置環境)に応じて実施例1の制御と実施例2の制御とを使い分ける。これにより、実施例1の効果や実施例2の効果をより効果的に得ることを可能とする。
【0124】
本実施例では、画像形成装置100は、例えば15℃、10%RHの低温低湿下では実施例1の制御を行い(第1のモード)、例えば30℃、80%RHの高温高湿下では実施例2の制御を行う(第2のモード)。
【0125】
これは、クリーニング不良の発生しやすい環境が低温低湿下であることにより、実施例1の効果がより顕著に得られる雰囲気環境が低温低湿環境であることが一つ目の理由である。低温低湿下では、クリーニングブレード101の弾性が低下しやすいこと、また、トナーの電荷量が高くなりやすく、トナーの感光ドラム1との鏡映力が高くなりやすいことから、トナーがクリーニングブレード101を通過しやすくなるためである。
【0126】
また、画像形成時のかぶりや現像スジの発生しやすい環境が高温高湿下であることにより、実施例2の効果がより顕著に得られる雰囲気環境が高温高湿環境であることが二つ目の理由である。高温高湿下では、トナーが柔らかくなりやすいことから、トナーの外添剤の移行や埋没、又はトナー形状の変形などの劣化が進みやすくなるためである。
【0127】
2.制御構成及び制御手順
図19は、本実施例の画像形成装置100の制御構成を示すブロック図である。
図19に示す本実施例における制御構成は、
図2に示す実施例1における制御構成と同様であるが、本実施例では画像形成装置100は更に環境検知手段としての環境検知部である環境センサ(温湿度センサ)21を有する。なお、環境は、画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方における温度又は湿度の少なくとも一方であってよい。本実施例では、環境センサ21は、画像形成装置100の外部の雰囲気環境の温度及び湿度(相対湿度)を検知する。環境センサ21は、温度の検知結果及び湿度の検知結果を示す信号をエンジン制御部205に対して出力する。エンジン制御部205は、環境センサ21から入力された信号に基づいて絶対湿度(水分量)(g/m
3)を求めることができる。
【0128】
図20は、本実施例におけるプリント動作の手順の概略を示すフローチャート図である。エンジン制御部205は、ホストコンピュータ300からプリント信号が入力されると(S101)、環境センサ21から温度情報及び湿度情報を取得して、絶対湿度を求める(S102)。次に、エンジン制御部205は、絶対湿度が予め設定されている所定の閾値未満か否かを判断する(S103)。なお、この閾値は、例えば上述の一つ目の理由と二つ目の理由とに鑑みて、実施例1や実施例2の効果をより効果的に得られるように適宜設定することができる。エンジン制御部205は、S103で閾値未満であると判断した場合は、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいてVbackを画像形成時よりも小さくする実施例1の制御でプリントシーケンスを実行することを決定する(S104)。一方、エンジン制御部205は、S103で閾値未満ではない(閾値以上である)と判断した場合は、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいてVbackを画像形成時よりも大きくする実施例2の制御でプリントシーケンスを実行することを決定する(S105)。そして、エンジン制御部205は、S104又はS105で決定した制御を用いてプリントシーケンスを実行する(S106)。
【0129】
なお、本実施例では、所定の閾値を境として、低温低湿環境では実施例1の制御、高温高湿環境では実施例2の制御を行ったが、これに限定されるものではない。例えば、低温低湿環境を判断する第1の閾値と、高温高湿環境を判断する第2の閾値(第1の閾値よりも高温高湿環境に対応)と、は異なっていてもよい。そして、それら第1の閾値と第2の閾値との間の環境では、供給動作を行わない前述の比較例1と同様の制御を行ってもよい(実施例4参照)。また、例えば、所定の低温低湿環境において実施例1の制御を行い、それ以外の環境では供給動作を行わない前述の比較例1と同様の制御を行ってもよい。また、例えば、所定の高温高湿環境において実施例2の制御を行い、それ以外の環境では供給動作を行わない前述の比較例1と同様の制御を行ってもよい。
【0130】
このように、本実施例では、制御部205は、所定のタイミングで、供給動作として画像形成動作時のVbackよりも小さいVbackを生成する非画像形成動作の第1のモードと、上記所定のタイミングで、供給動作として画像形成動作時のVbackよりも大きいVbackを生成する非画像形成動作の第2のモードと、を選択的に実行するように制御する。本実施例では、画像形成装置100は、環境を検知する環境検知部(環境センサ)21を有し、制御部21は、環境検知部21の検知結果が示す環境が第1の環境の場合に上記第1のモードを実行し、環境検知部21の検知結果が示す環境が上記第1の環境よりも高温高湿の第2の環境の場合に上記第2のモードを実行するように制御する。
【0131】
以上説明したように、本実施例によれば、実施例1の効果や実施例2の効果をより効果的に得ることができる。
【0132】
[実施例4]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0133】
1.本実施例の概要
本実施例では、画像形成装置100の雰囲気環境(設置環境)と、現像装置4の使用状態と、に応じて、実施例1の制御と、実施例2の制御と、比較例1の制御と、を使い分ける。これにより、トナーの消費を低減しつつ、実施例1の効果や実施例2の効果をより効果的に得ることを可能とする。なお、比較例1の制御は、実施例1で説明したとおりである。
【0134】
本実施例では、画像形成装置100は、例えば15℃、10%RHの低温低湿下では、現像装置4の寿命(新品状態を100%、使用不可能な寿命到達状態を0%とする)に対して50%未満の使用状態の場合は実施例1の制御を行い(第1のモード)、現像装置4の寿命に対して50%以上の使用状態の場合は比較例1の制御を行う(第3のモード)。また、画像形成装置100は、例えば30℃、80%RHの高温高湿下では、現像装置4の寿命に対して50%未満の使用状態の場合は比較例1の制御を行い(第3のモード)、現像装置4の寿命に対して50%以上の使用状態の場合は実施例2の制御を行う(第2のモード)。更に、画像形成装置100は、例えば23℃、50%RHの常温常湿下では、現像装置4の使用状態によらず、比較例1の制御を行う。
【0135】
これは、次のような理由によるものである。比較例1の制御は供給動作を行わないため、トナー容量の同じ現像装置4を使用した場合にプリント枚数を増加することができるメリットがある。そこで、実施例1の効果や実施例2の効果をより効果的に得られる場面に限って供給動作を行うようにしている。
【0136】
実施例1の効果をより効果的に得られる場面は、クリーニング不良の発生しやすい環境が低温低湿下であることに加えて、現像装置4の寿命の前半である。これは、低温低湿下では、クリーニングブレード101の弾性が低下しやすいことと、現像装置4の寿命の前半では、トナーの電荷量が高くなりやすく、トナーの感光ドラム1との鏡映力が高くなりやすいこととで、トナーがクリーニングブレードを通過しやすくなる条件が重なるためである。
【0137】
また、実施例2の効果をより効果的に得られる場面は、画像形成時のかぶりや現像スジの発生しやすい環境が高温高湿下であることに加えて、現像装置4の寿命の後半である。これは、高温高湿下では、トナーが柔らかくなりやすいことと、現像装置4の寿命の後半では、トナーの外添剤の移行や埋没、又はトナー形状の変形がより進みやすいこととで、画像形成時のかぶりや現像スジの発生しやすくなる条件が重なるためである。
【0138】
そして、上記二つの場面(低温低湿下かつ現像装置4の寿命の前半、高温高湿下かつ現像装置4の寿命の後半)以外の場面では、比較例1の制御を用いることで供給動作を行なわないことによって、トナーの消費を抑制することを優先する。
【0139】
2.制御構成及び制御手順
図21は、本実施例の画像形成装置100の制御構成を示すブロック図である。
図21に示す本実施例における制御構成は、
図19に示す実施例3における制御構成と同様であるが、本実施例では画像形成装置100は更に現像装置4の使用状態を検知する使用状態検知手段としての使用状態検知部22を有する。使用状態検知部22としては、例えば公知のものから適宜選択して用いることができる。例えば、トナーの消費量又は残量の指標値に基づくもの、現像ローラ42の使用量の指標値(回転回数や回転時間の累積値など)に基づくもの、これらの両方に基づくものなどが知られている。また、トナーの消費量又は残量を検知する方式としては、例えば、現像装置4を用いて行った画像形成における画像情報(ピクセルカウント、印字率など)に基づくもの、現像装置4内のトナーの量に応じて変化する電極間の静電容量の検知結果に基づくもの、現像装置4内のトナーの量に応じて変化する光の透過量(光量、透過時間など)の検知結果に基づくものが知られている。使用状態検知部22は、現像装置4の使用状態に関する指標値(現像ローラ42の使用量の指標値、トナー消費量又は残量の指標値など)を示す信号をエンジン制御部205に対して出力する。エンジン制御部205は、使用状態検知部22から入力された信号に基づいて現像装置4の使用状態を求めることができる。例えば、取得した指標値と所定の閾値(複数の閾値であってよい)とを用いることで、現像装置4の使用状態(寿命に対して何%であるかなど)を求めることができる。
【0140】
図22は、本実施例におけるプリント動作の手順の概略を示すフローチャート図である。エンジン制御部205は、ホストコンピュータ300からプリント信号が入力されると(S201)、環境センサ21から温度情報及び湿度情報を取得して、絶対湿度を求める(S202)。また、エンジン制御部205は、使用状態検知部22から現像装置4の使用状態に関する指標値の情報を取得して、現像装置4の使用状態(寿命に対して何%であるか)を求める(S203)。次に、エンジン制御部205は、絶対湿度と、予め設定されている低温低湿環境、常温常湿環境、高温高湿環境を区別する所定の閾値と、に基づいて、これらいずれの環境であるかを判断する(S204)。なお、この閾値は、例えば、上述の二つの場面における実施例1や実施例2の制御の効果と、トナーの消費量を抑制する効果と、に鑑みて適宜設定することができる。
【0141】
エンジン制御部205は、S204で低温低湿環境であると判断した場合は、現像装置4の使用状態が寿命に対して50%未満であるか否かを判断する(S205)。エンジン制御部205は、S205で50%未満であると判断した場合は、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいてVbackを画像形成時よりも小さくする実施例1の制御でプリントシーケンスを実行することを決定する(S206)。一方、エンジン制御部205は、S205で50%未満ではない(50%以上である)と判断した場合は、供給動作を行わない比較例1の制御でプリントシーケンスを実行することを決定する(S207)。
【0142】
また、エンジン制御部205は、S204で高温高湿環境であると判断した場合は、現像装置4の使用状態が寿命に対して50%未満であるか否かを判断する(S208)。エンジン制御部205は、S208で50%未満であると判断した場合は、供給動作を行わない比較例1の制御でプリントシーケンスを実行することを決定する(S209)。一方、エンジン制御部205は、S208で50%未満ではない(50%以上である)と判断した場合は、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいてVbackを画像形成時よりも大きくする実施例2の制御でプリントシーケンスを実行することを決定する(S210)。
【0143】
更に、エンジン制御部205は、S204で常温常湿環境であると判断した場合は、供給動作を行わない比較例1の制御でプリントシーケンスを実行することを決定する(S211)。
【0144】
そして、エンジン制御部205は、S206、S207、S209、S210又はS211で決定した制御を用いてプリントシーケンスを実行する(S212)。
【0145】
なお、本実施例では、低温低湿下かつ現像装置4の寿命の前半では実施例1の制御、高温高湿下かつ現像装置4の寿命の後半では実施例2の制御、それ以外の場面は供給動作を行わない比較例1の制御を行ったが、これに限定されるものではない。例えば、低温低湿かつ現像装置4の寿命の前半では実施例1の制御を行い、それ以外の場合は供給動作を行わない比較例1と同様の制御を行ってもよい。また、例えば、高温高湿環境かつ現像装置4の寿命の後半では実施例2の制御を行い、それ以外の場合は供給動作を行わない比較例1と同様の制御を行ってもよい。また、本実施例では、現像装置4の使用状態を所定の閾値を境として、寿命の前半か後半かを判断したが、これに限定されるものではない。現像装置4の使用量が少ない状態を判断する第1の閾値と、現像装置4の使用量が多い状態を判断する第2の閾値(第1の閾値よりも使用量が多い状態に対応)と、は異なっていてもよい。そして、それら第1の閾値と第2の閾値との間の環境では、供給動作を行わない比較例1と同様の制御を行ってもよい。
【0146】
このように、本実施例では、制御部205は、所定のタイミングで、供給動作として画像形成動作時のVbackよりも小さいVbackを生成する非画像形成動作の第1のモードと、上記所定のタイミングで、供給動作として画像形成動作時のVbackよりも大きいVbackを生成する非画像形成動作の第2のモードと、上記所定のタイミングで、供給動作を実行しない非画像形成動作の第3のモードと、を選択的に実行するように制御する。本実施例では、画像形成装置100は、環境を検知する環境検知部(環境センサ)21と、現像部材42の使用状態を検知する使用状態検知部22と、を有し、制御部205は、環境検知部21の検知結果が示す環境が第1の環境でありかつ使用状態検知部22の検知結果が示す現像部材42の使用量が第1の使用量の場合に上記第1のモードを実行し、環境検知部21の検知結果が示す環境が上記第1の環境よりも高温高湿の第2の環境でありかつ使用状態検知部22の検知結果が示す現像部材42の使用量が上記第1の使用量よりも大きい第2の使用量の場合に上記第2のモードを実行し、環境検知部21の検知結果が示す環境が上記第1の環境よりも高温高湿かつ上記第2の環境よりも低温低湿の第3の環境である場合に上記第3のモードを実行するように制御する。また、本実施例では、制御部205は、上記第3のモードにおいて、Vbackを画像形成動作時と略同一の値で略一定とするように制御する。
【0147】
以上説明したように、本実施例によれば、トナーの消費を低減しつつ、実施例1の効果や実施例2の効果をより効果的に得ることができる。
【0148】
[その他の実施例]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0149】
上述の実施例では、本発明をモノクロ画像形成装置に適用した場合について説明したが、本発明はカラー画像形成装置にも適用することができ、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。例えば、それぞれが感光体を備えた複数の画像形成部を備え、各画像形成部において上述の実施例と同様にしてトナー像が形成されるタンデム型のカラー画像形成装置がある。タンデム型のカラー画像形成装置としては、例えば、複数の感光体に形成されたトナー像を記録材搬送ベルトなどの記録材担持体に担持された記録材に順次転写する直接転写方式のカラー画像形成装置がある。また、タンデム型のカラー画像形成装置としては、複数の感光体に形成されたトナー像を中間転写ベルトなどの中間転写体に一次転写した後に記録材に二次転写する中間転写方式のカラー画像形成装置がある。
【0150】
また、上述の実施例では、画像形成シーケンスと後回転シーケンスとの切り替わるタイミングT5で帯電電圧を0Vにしたうえで、レーザ露光を行う方法について説明した(
図5、
図14)。しかし、タイミングT6までは、帯電電圧を-500VとしてタイミングT6で帯電電圧を0Vにしたとしても、上述の実施例と同様のレーザ露光によって感光ドラムの表面電位V11~V20を形成できる。したがって、タイミングT5からタイミングT6までの任意のタイミングで、帯電電圧を0Vに切り替えれば、上述の実施例と同様の効果が得られる。この場合のプリントシーケンスのタイミングチャート図の一例を
図23に示す。
【0151】
また、上述の実施例1では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおける現像電圧及び感光ドラムの表面電位の切り替えは、次のようにした。つまり、感光ドラムの表面電位の階段状の切り替え幅を一定として、現像電圧の階段状の切り替え幅を変更することで、Vbackを画像形成時よりも小さく(実施例1)又は大きく(実施例2)した。しかし、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、現像電圧の階段状の切り替え幅を一定として、感光ドラムの表面電位の階段状の切り替え幅を変更することで、Vbackを画像形成時よりも小さく又は大きくしても同様の効果が得られる。この場合の各段階(ステップ)における現像電圧及び感光ドラムの表面電位の一例を、実施例1及び実施例2に対する変形例として
図24に示す。なお、現像電圧の階段状の切り替え幅と感光ドラムの表面電位の階段状の切り替え幅との両方を変更するようにしてもよい。また、現像電圧及び感光ドラムの表面電位の階段状の切り替えにおける段数は上述の実施例と異なっていてもよい。また、現像電圧及び感光ドラムの表面電位は、階段状ではなく、直線状や曲線状に変化させてもよい。現像電圧及び感光ドラムの表面電位を直線状や曲線状に変化させる場合は、Vbackも直線状又は曲線状に変化する。非画像形成時にVbackを画像形成時よりも小さくする期間又は大きくする期間を設けることができれば、上述の実施例と同様の効果が得られる。ただし、上述のように階段状に切り替える方が、現像電圧を出力する高圧電源と帯電電圧を出力する高圧電源とで、立ち上げ速度又は立ち下げ速度が異なる場合などに、所望のVbackを安定して生成できることなどから好ましい。
【0152】
また、実施例1では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいてVbackを画像形成時のVbackから徐々に小さくした後に、画像形成時のVbackまで徐々に大きくした。しかし、Vbackを画像形成時のVbackまで徐々に大きくする必要はなく、一度に大きくしてもよい。また、実施例2では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいてVbackを画像形成時のVbackから徐々に大きくした後に、画像形成時のVbackまで徐々に小さくした。しかし、Vbackを画像形成時のVbackまで徐々に小さくする必要はなく、一度に小さくしてもよい。
【0153】
また、実施例1では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて現像電圧の階段状の切り替え幅を変更することでVbackを画像形成時よりも小さくしたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、
図25に示すように、現像電圧及び感光ドラムの表面電位の階段立ち上げ制御後かつ画像形成シーケンスの開始前、あるいは画像形成シーケンスの終了後かつ現像電圧及び感光ドラムの表面電位の階段立ち下げ制御前に、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間を設けもよい。例えば、同図に示すように、帯電電圧を変更せずに現像電圧のみを変更したり、現像電圧を変更せずに露光装置による露光を行って感光ドラムの表面電位のみを変更したりすることで、Vbackを画像形成時よりも小さくする期間を設けることができる。ただし、このような制御を行う場合には、例えば現像電圧を変更する方法では、画像形成時に用いている電圧とは異なる電圧を用いることから、より出力範囲の広い現像電圧を必要とする。そのため、実施例1で説明した方法の方が、現像電圧の出力範囲が限られた中で本発明を適用できるというメリットがある。
【0154】
また、実施例2では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスにおいて現像電圧の階段状の切り替え幅を変更することでVbackを画像形成時よりも大きくしたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、
図26に示すように、現像電圧及び感光ドラムの表面電位の階段立ち上げ制御後かつ画像形成シーケンスの開始前、あるいは画像形成シーケンスの終了後かつ現像電圧及び感光ドラムの表面電位の階段立ち下げ制御前に、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間を設けてもよい。例えば、同図に示すように、現像電圧を変更せずに帯電電圧のみを変更したり、帯電電圧の変更や露光装置による露光を行わずに現像電圧のみを変更したりすることで、Vbackを画像形成時よりも大きくする期間を設けることができる。ただし、このような制御を行う場合には、例えば帯電電圧を変更する方法では、画像形成時に用いている電圧とは異なる電圧を用いることから、より出力範囲の広い帯電電圧を必要とする。そのため、実施例2で説明した方法の方が、帯電電圧の出力範囲が限られた中で本発明を適用できるというメリットがある。
【0155】
また、上述の実施例では、前回転シーケンス及び後回転シーケンスの両方においてVbackを画像形成時よりも小さく(実施例1)又は大きく(実施例2)する制御(「供給動作」)を実行したが、これに限定されるものではない。この供給動作は、非画像形成時であれば実行することができ、例えば、前回転シーケンス又は後回転シーケンスのいずれか一方においてのみ実行してもよい。
【0156】
また、例えば、前回転シーケンス及び後回転シーケンスのうち一方ではVbackを画像形成時よりも小さくする実施例1の制御を行い、他方ではVbackを画像形成時よりも大きくする実施例2の制御を行ってもよい。
【0157】
また、上述の実施例では、画像形成装置の電源が投入(電源ON)された後に画像形成装置がプリント信号を待機するスタンバイ状態(待機状態)にある状態で、画像形成装置にプリント信号が入力された場合を例としてプリントシーケンスを説明した。画像形成装置は、電源が投入(電源ON)されたときには、別に起動時動作である前多回転シーケンス(前多回転動作)が実行されるようになっていてよい。前多回転シーケンスでは、例えば、プロセスカートリッジの状態に合わせて適正な帯電、現像、転写電圧設定を決める制御などが実行される。所定の前多回転シーケンスが終了したら、メインモータや各種電源の出力が停止され、画像形成装置はプリント信号が入力するまでスタンバイ状態に保持される。前多回転シーケンスにおいて、帯電電圧、現像電圧を立ち上げる際に、上述の実施例と同様の供給動作を実行してもよい。
【0158】
また、上述の実施例では、画像形成装置には、現像ローラを感光ドラムに対して当接及び離間させる現像当接離間機構は設けられていなかったが、本発明はこのような構成の画像形成装置への適用に限定されるものではない。画像形成装置に現像当接離間機構が設けられていても、例えば、現像ローラが感光ドラムに当接した状態で感光ドラムの回転の開始又は停止が行われる場合などに、上述の実施例と同様の制御を行うことで同様の効果を得ることができる。
【0159】
また、上述の実施例では、帯電処理のみによって感光ドラム上に非画像部電位を形成したが、帯電処理を行った後に画像部に対する露光量よりも小さい露光量で露光(弱露光)を行うことによって感光ドラム上に非画像部電位を形成してもよい。
【0160】
また、像担持体は、ドラム状のものに限定されるものではなく、無端ベルト状のものなどであってもよい。
【0161】
また、Vbackは、所定の範囲内であれば、かぶりトナーの量を十分に少なくすることができることがある。例えば、Vbackは、かぶりトナーの量が最小となる値に対して±50V程度の範囲内であれば、かぶりトナーの量を十分に少なくすることができることがある。画像形成時のVbackと略同一の値で略一定にするとは、このような範囲内での誤差がある場合も含む。
【符号の説明】
【0162】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 露光装置
4 現像装置
5 転写ローラ
6 クリーニング装置
42 現像ローラ
101 クリーニングブレード
205 エンジン制御部