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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163821
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
G03G15/16 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079732
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】皆川 太佑
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA03
2H200FA17
2H200FA18
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA44
2H200GB12
2H200GB22
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200JA02
2H200JB12
2H200JB17
2H200JB46
2H200JB49
(57)【要約】
【課題】記録材の後端が転写ニップ部を抜ける際の像担持体と記録材との間の剥離放電を抑制する。
【解決手段】画像形成装置1は、転写ニップ部NTにより挟持搬送される記録材Pの搬送方向において転写ニップ部NTよりも上流側に配置され、転写ニップ部NTに向けて搬送される記録材Pのトナー像が転写される面である画像形成面に接触可能であり、摩擦帯電により上記画像形成面を像担持体2の帯電極性と同極性に帯電させることが可能な記録材帯電部材14を有し、記録材帯電部材14の記録材Pとの接触部14bは、記録材帯電部材14に対向する位置における記録材Pの面と交差する方向に移動可能である構成とされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な像担持体と、
前記像担持体の表面を所定の極性に帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体の表面に前記所定の極性と同極性に帯電したトナーを供給して前記像担持体の表面にトナー像を形成する現像装置と、
前記像担持体の表面に当接して前記像担持体との間に転写ニップ部を形成し、転写電圧が印加されることで、前記像担持体から前記転写ニップ部を通過する記録材に前記トナー像を転写させる転写部材と、
前記転写部材に前記所定の極性とは逆極性の前記転写電圧を印加する印加部と、
を有する画像形成装置において、
前記転写ニップ部により挟持搬送される前記記録材の搬送方向において前記転写ニップ部よりも上流側に配置され、前記転写ニップ部に向けて搬送される前記記録材の前記トナー像が転写される面である画像形成面に接触可能であり、摩擦帯電により前記画像形成面を前記所定の極性と同極性に帯電させることが可能な記録材帯電部材を有し、
前記記録材帯電部材の前記記録材との接触部は、前記記録材帯電部材に対向する位置における前記記録材の面と交差する方向に移動可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記録材帯電部材は、前記搬送方向において、前記転写ニップ部よりも上流側における前記転写ニップ部に最も近い位置で前記記録材を搬送する搬送部材よりも下流側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記録材帯電部材は、前記転写ニップ部に向けて搬送される前記記録材をガイドする機能を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記録材の前記画像形成面は、前記記録材帯電部材の次に前記像担持体の表面と接触することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記録材帯電部材の前記接触部は、前記記録材から受ける力により移動することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記録材帯電部材の前記接触部は、前記記録材帯電部材の回動又はスライド移動により移動することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記録材帯電部材の前記接触部が前記画像形成面側から前記画像形成面とは反対側の面側に向かう方向に前記記録材帯電部材を付勢する付勢手段を有することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記付勢手段は、第1の種類の前記記録材が前記転写ニップ部に向けて搬送される場合よりも、前記第1の種類の前記記録材よりも坪量が大きい第2の種類の前記記録材が前記転写ニップ部に向けて搬送される場合の方が、前記記録材帯電部材の前記接触部が前記画像形成面とは反対側の面側から前記画像形成面側に向かう方向の下流側に位置することが可能なように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記記録材帯電部材の前記接触部は、前記記録材帯電部材の変形により移動することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記記録材帯電部材は、第1の種類の前記記録材が前記転写ニップ部に向けて搬送される場合よりも、前記第1の種類の前記記録材よりも坪量が大きい第2の種類の前記記録材が前記転写ニップ部に向けて搬送される場合の方が、前記接触部が前記画像形成面とは反対側の面側から前記画像形成面側に向かう方向の下流側に位置することが可能なように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記記録材帯電部材を、前記接触部が前記記録材に接触可能な第1の位置と、前記接触部が前記記録材に接触しない第2の位置と、に移動させることが可能な移動機構を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記移動機構は、第1の種類の前記記録材が前記転写ニップ部に向けて搬送される場合に前記記録材帯電部材を前記第1の位置に配置し、前記第1の種類の前記記録材よりも坪量が大きい第2の種類の前記記録材が前記転写ニップ部に向けて搬送される場合に前記記録材帯電部材を前記第2の位置に配置することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記記録材帯電部材は、少なくとも前記搬送方向における前記記録材の後端部に接触可能であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記記録材帯電部材は、前記搬送方向と直交する方向における画像形成領域の略全域で前記記録材に接触可能であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記印加部は、前記搬送方向における前記記録材の後端部が前記転写ニップ部を抜ける際に、前記搬送方向における前記記録材の中央部が前記転写ニップ部を通過している際に前記転写部材に印加する電圧とは異なる電圧を前記転写部材に印加することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記印加部は、前記搬送方向における前記記録材の後端部が前記転写ニップ部を抜ける際に、前記所定の極性とは逆極性で絶対値が前記搬送方向における前記記録材の中央部が前記転写ニップ部を通過している際に前記転写部材に印加する電圧の絶対値よりも小さい電圧を前記転写部材に印加することを特徴とする請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記印加部は、前記搬送方向における前記記録材の後端部が前記転写ニップ部を抜ける際に、前記所定の極性と同極性の電圧を前記転写部材に印加することを特徴とする請求項15に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置では、像担持体としての感光体の表面が帯電処理され、帯電処理された感光体の表面が画像情報に応じて露光されて、感光体上に静電潜像が形成される。また、感光体上に形成された静電潜像に、帯電したトナーが付着させられて、感光体上にトナー像が形成され、感光体上に形成されたトナー像が紙などのシート状の記録材上に転写される。トナー像が転写された記録材は、感光体から分離されて、定着装置へと搬送される。感光体としては、回転可能な感光ドラムが用いられることが多い。また、感光体から記録材へトナー像を転写させる転写部材としては、転写ローラが用いられることが多い。以下、感光ドラムと転写ローラとを有する画像形成装置を例として説明する。また、記録材に関して先端、後端とは、特に明示しない場合も転写ニップ部を通過する際の記録材の搬送方向における先端、後端のことをいうものとする。
【0003】
転写ローラは、感光ドラムに当接して感光ドラムとの間に転写ニップ部を形成する。そして、転写ローラにトナーの正規の帯電極性とは逆極性の転写電圧が印加されることで、転写ニップ部において感光ドラムと転写ローラとに挟持されて搬送される記録材に電荷が付与されて、感光ドラム上のトナー像が記録材上に転写される。このような構成において、記録材の後端が転写ニップ部を抜ける際に、感光ドラムと記録材との間で剥離放電が発生する場合がある。この剥離放電が発生すると、感光ドラム上の剥離放電の影響を受けた部分と、剥離放電の影響を受けなかった部分とで電位差が生じる。そして、後続する記録材に転写する画像を形成する際に、上記感光ドラム上の電位差を帯電処理によってキャンセルしきれずに黒いスジ(感光ドラムの回転軸線方向に延びるスジ状の濃度ムラ)となって現れる「後端メモリ」という現象が発生することがある。
【0004】
そこで、特許文献1では、記録材の後端側の非画像形成領域(余白部)において、画像形成領域において印加する転写電圧よりも低い弱電圧(後端電圧)を印加することで、上述の後端メモリを抑制する方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-55542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、これまで以上に高い生産性及び高画質の画像形成装置が求められる傾向にある。
【0007】
画像形成装置の生産性を高める手段として、記録材の搬送速度を速める場合がある。この場合、単位時間当たりに、より多くのトナーを、感光ドラム上から記録材上に転写する必要があり、より強い転写電圧を転写ローラに印加する必要が生じやすい。一般的に、強い転写電圧を転写ローラに印加すると、トナーの正規の帯電極性とは逆極性、つまり、感光ドラムの帯電極性とは逆極性の、記録材の非画像形成面(非印字面、裏面)の帯電量が増加し、それに伴い前述の剥離放電量も増加することが知られている。
【0008】
また、画像形成装置の画質を向上する手段として、トナーの帯電量を増大させる場合がある。トナーの帯電量を増大させることにより、帯電量が不十分なトナーを低減して、より忠実に静電潜像部にトナーを付着させることができる。これにより、トナー像の乱れを低減でき、より高い画質を達成することができる。この場合、記録材上に存在するトナーの総電荷量がより多くなる。そのため、このトナー像を静電的に記録材上に留めるために、より強い転写電圧を転写ローラに印加して、記録材の非画像形成面をトナーの正規の帯電極性とは逆極性、つまり、感光ドラムとは逆極性に帯電させる必要がある。この場合も、記録材の非画像形成面の帯電量は増加する方向であり、前述の剥離放電量も増加する方向である。
【0009】
このように、例えば画像形成装置の高生産性化や高画質化を図る場合などに、従来の構成では後端メモリを十分に抑制することが難しくなることがある。そのため、従来の方法に代えてあるいは従来の方法を補助して後端メモリを抑制することを可能とする手法が求められている。
【0010】
したがって、本発明の目的は、記録材の後端が転写ニップ部を抜ける際の像担持体と記録材との間の剥離放電を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、回転可能な感光体と、前記感光体の表面を所定の極性に帯電させる帯電装置と、前記帯電装置により帯電された前記感光体の表面に前記所定の極性と同極性に帯電したトナーを供給して前記感光体の表面にトナー像を形成する現像装置と、前記感光体の表面に当接して前記感光体との間に転写ニップ部を形成し、転写電圧が印加されることで、前記感光体から前記転写ニップ部を通過する記録材に前記トナー像を転写させる転写部材と、前記転写部材に前記所定の極性とは逆極性の前記転写電圧を印加する印加部と、を有する画像形成装置において、前記転写ニップ部により挟持搬送される前記記録材の搬送方向において前記転写ニップ部よりも上流側に配置され、前記転写ニップ部に向けて搬送される前記記録材の前記トナー像が転写される面である画像形成面に接触可能であり、摩擦帯電により前記画像形成面を前記所定の極性と同極性に帯電させることが可能な記録材帯電部材を有し、前記記録材帯電部材の前記記録材との接触部は、前記記録材帯電部材に対向する位置における前記記録材の面と交差する方向に移動可能であることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、記録材の後端が転写ニップ部を抜ける際の像担持体と記録材との間の剥離放電を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の画像形成装置の模式的な断面図である。
図2】実施例1の転写ニップ部の近傍の模式的な断面図である。
図3】転写電圧制御を説明するための模式図である。
図4】後端メモリの発生メカニズムを説明するための模式図である。
図5】後端メモリの抑制メカニズムを説明するための模式図である。
図6】実施例1及び比較例1、2の転写上ガイドの模式的な断面図である。
図7】実施例1の変形例の転写上ガイドの模式的な断面図である。
図8】実施例1の他の変形例の模式的な断面図である。
図9】実施例2の画像形成装置における転写ニップ部の近傍の模式的な断面図である。
図10】更に他の実施例の画像形成装置における転写ニップ部の近傍の模式的な断面図である。
図11】更に他の実施例の画像形成装置における記録材帯電部材及び移動機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0015】
[実施例1]
(1)画像形成装置
まず、本実施例の画像形成装置1の全体構成について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置1の模式的な断面図(後述する感光ドラム2の回転軸線方向と略直交する断面を示す断面図)である。本実施例の画像形成装置1は、電子写真方式を用いたモノクロレーザープリンタであって、ホストコンピュータなどの外部装置(図示せず)から入力される画像情報に応じて、シート状の記録材Pにブラック単色画像を形成することができる。
【0016】
画像形成装置1は、像担持体としての回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム2を有する。外部装置から画像形成装置1にプリント指令が入力されると、感光ドラム2は図中矢印R1方向(時計回り方向)に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。本実施例では、感光ドラム2は、アルミニウムシリンダ上に、ポリカーボネート系バインダーを主体とした厚さ20μmのCT層(電荷輸送層:Charge Transfer Layer)を有するOPC(有機光導電体)層が形成された、外径30mmの有機感光ドラムである。
【0017】
感光ドラム2の表面(外周面)は、ローラ型の帯電部材である帯電ローラ3により、トナーの正規の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電ローラ3は、帯電手段としての帯電装置を構成する。本実施例では、帯電ローラ3は、導電性芯金上に導電性弾性層が被覆された単層構成の弾性体ローラである。帯電ローラ3は、その表面(外周面)が感光ドラム2の表面に当接するように配置され、導電性芯金の回転軸線方向の両端部が押圧手段(図示せず)により感光ドラム2に向けて押圧されている。帯電ローラ3は、感光ドラム2の回転に伴い従動回転する。帯電処理時に、帯電ローラ3には、トナーの正規の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)の直流電圧である所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。
【0018】
帯電処理された感光ドラム2の表面は、露光手段としてのレーザースキャナ(露光装置)4により走査露光され、感光ドラム2上に静電潜像(静電像)が形成される。つまり、外部装置から画像形成装置1に入力され画像情報は、ビデオコントローラ110において画像形成装置1が画像を形成するための作像情報に変換される。その後、レーザースキャナ4は、作像情報に基づく発光指示を制御部120から受けて、作像情報に基づく時系列電気デジタル画素信号に応じて変調されたレーザー光Lを出力する。そして、レーザースキャナ4は、そのレーザー光Lにより感光ドラム2の帯電面を走査露光する。これにより、感光ドラム2の表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0019】
感光ドラム2上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置5により現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム2上にトナー像(トナー画像、現像剤像)が形成される。現像装置5は、トナーが収容された現像容器52と、現像容器52に回転可能に支持された現像剤担持体としての現像ローラ51と、を有する。現像ローラ51は、現像容器52内のトナーを担持して、感光ドラム2と現像ローラ51との対向部である現像部へとトナーを搬送し、感光ドラム2上の静電潜像にトナーを供給する。本実施例では、現像時に、現像ローラ51は感光ドラム2に当接する。また、現像時に、現像ローラ51には、トナーの正規の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)の直流電圧である所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。現像装置5は、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム2上の露光部(画像部)に、感光ドラム2の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーを付着させる(反転現像方式)。本実施例では、現像時のトナーの主要な帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。
【0020】
感光ドラム2に対向して、転写手段としてのローラ型の転写部材である転写ローラ8が配置されている。転写ローラ8は、その表面(外周面)が感光ドラム2の表面に当接するように配置されており、感光ドラム2に向けて押圧されて、感光ドラム2の表面と転写ローラ8の表面との間に転写ニップ部(転写部)NTを形成する。感光ドラム2上に形成されたトナー像は、感光ドラム2の回転により転写ニップ部NTへと送られる。本実施例では、感光ドラム2、帯電ローラ3、レーザースキャナ4、現像装置5などにより、画像形成部19が構成される。
【0021】
紙などのシート状の記録材(記録媒体、転写材)Pは、給送部としての給送カセット9に積載されて収容されている。この記録材Pは、所定の制御タイミングで駆動される給送部材としての給送ローラ10などにより、一枚ずつピックアップされて給送カセット9から送り出される。この記録材Pは、搬送部材としての搬送ローラ対11によりレジストレーション部(以下、「レジ部」ともいう。)7へと送られる。レジ部7には、同期搬送部材としてのレジストレーションローラ対(以下、「レジローラ対」ともいう。)12が設けられている。記録材Pは、レジローラ対12により形成されるレジストレーションニップ部(以下、「レジニップ部」ともいう。)NRで一旦受け止められて、記録材Pの斜行矯正が行われる。また、レジ部7には、記録材検知手段としてのレジストレーションセンサ(以下、「レジセンサ」ともいう。)13が配置されている。レジセンサ13は、記録材Pの先端、後端のそれぞれの到達タイミングを検知する。記録材Pは、レジローラ対12により、感光ドラム2上のトナー像とタイミングが合うようにして転写ニップ部NTへと搬送される。記録材Pは、レジ部7を通過した後、ガイド手段としてのガイド部材である転写上ガイド14及び転写下ガイド15と摺擦されてガイドされながら、転写ニップ部NTへと搬送される。
【0022】
転写ニップ部NTに供給された記録材Pは、感光ドラム2と転写ローラ8とに挟持されて搬送される。本実施例では、転写ローラ8は、外径5mmのSUS(ステンレス鋼)製の芯金上に、肉厚4.5mmのNBR、ヒドリンからなるスポンジ弾性層(発泡弾性体層)が形成された、外径14mmの弾性体ローラである。転写ローラ8には、転写ニップ部NTを記録材Pが搬送される過程において、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である所定の転写電圧(転写バイアス)が印加される。これにより、感光ドラム2上のトナー像が記録材Pの画像形成面(印字面、表面)に転写される。
【0023】
トナー像が転写されて感光ドラム2の表面から分離された記録材Pは、定着手段としての加熱定着装置16へと搬送される。加熱定着装置16は、定着ローラ対により形成される定着ニップ部NFにおいて、未定着のトナー像を担持した記録材Pを搬送しながら加熱及び加圧して、記録材P上にトナー像を定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された後の記録材Pは、加熱定着装置16の定着ニップ部NFから排出されて、搬送部材としての排出ローラ17へと搬送される。記録材Pは、排出ローラ17によって、画像形成装置1の装置本体1aの外部に設けられた排出部としての排出トレイ18上に排出(出力)される。
【0024】
また、記録材Pが分離された後の感光ドラム2の表面に残留したトナー(転写残トナー)は、クリーニング手段としてのクリーニング装置6により除去されて回収される。クリーニング装置6は、感光ドラム2の表面に当接するように配置されたクリーニング部材としてのクリーニングブレード61と、クリーニング容器62と、を有する。クリーニング装置6は、クリーニングブレード61により、回転する感光ドラム2の表面から転写残トナーを掻き取って、クリーニング容器62内に収容する。これにより、感光ドラム2の表面はクリーニングされて、繰り返し作像に供される。
【0025】
なお、本実施例の画像形成装置1は、プリントスピードが55枚/分(レターサイズ紙)で、プロセススピード(感光ドラム2の周速度)は約300mm/sである。
【0026】
また、本実施例では、感光ドラム2と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ3、現像装置5及びクリーニング装置6とは、一体的に画像形成装置1の装置本体1aに対して着脱可能なプロセスカートリッジを構成している。
【0027】
(2)転写ニップ部の近傍の構成
次に、本実施例における転写ニップ部NTの近傍の構成について更に詳しく説明する。図2は、本実施例における転写ニップ部NTの近傍の構成を示す模式的な断面図(感光ドラム2の回転軸線方向と略直交する断面を示す断面図)である。
【0028】
ここで、記録材Pに関して先端、後端とは、特に明示しない場合も転写ニップ部NTを通過する際の記録材Pの搬送方向における先端、後端のことをいうものとする。また、記録材Pの搬送経路に配置された要素に関して上流、下流とは、特に明示しない場合も記録材Pの搬送方向における上流、下流のことをいうものとする。また、画像形成装置1及びその要素について、図1の紙面手前側(矢印A方向の手前側)を「前(正面)」側、紙面奥側(矢印A方向の奥側)を「後(背面)」側とし、この前側と後側とを結ぶ前後方向は感光ドラム2の回転軸線方向(表面の移動方向と略直交する方向)と略平行であるものとする。更に、画像形成装置1及びその要素について、上下は重力方向(鉛直方向)の上下をいうものであるが、直上、直下のみを意味するものではなく、それぞれ注目する要素又は位置を通る水平面よりも上側、下側を含むものである。
【0029】
帯電ローラ3には、感光ドラム2を帯電処理するための、帯電電圧印加手段(帯電電圧印加部)としての直流の帯電電圧電源24が接続されている。
【0030】
また、現像ローラ51には、トナーを感光ドラム2上の静電潜像の画像部に付着させるための、現像電圧印加手段(現像電圧印加部)としての直流の現像電圧電源25が接続されている。
【0031】
また、転写ローラ8には、転写電圧を印加するための、転写電圧印加手段(転写電圧印加部)としての直流の転写正電圧電源20と、転写逆電圧印加手段(転写逆電圧印加部)としての直流の転写負電圧電源21と、が接続されている。また、転写ローラ8には、後述する転写定電流制御を行うための、電流検知手段としての電流検知部(電流検知回路)22が接続されている。なお、転写正電圧電源20及び転写負電圧電源21は、それぞれ電圧検知手段(電圧検知部)としての機能も有している。
【0032】
また、記録材Pの除電手段としての除電部材である除電針23が、転写ニップ部NTの下流側に設けられている。この除電針23は、記録材Pに対して転写ローラ8から付与された電荷の少なくとも一部を除電し、後端メモリを抑制することを目的として設置されている。
【0033】
また、記録材Pを転写ニップ部NTへとガイド(案内)するガイド手段としてのガイド部材である転写上ガイド14及び転写下ガイド15が、転写ニップ部NTの上流側に設けられている。転写上ガイド14は、レジローラ対12よりも下流側(更にレジセンサ13よりも下流側)かつ転写下ガイド15よりも上流側に配置されている。転写下ガイド15は、転写上ガイド14よりも下流側かつ転写ニップ部NTよりも上流側に配置されている。
【0034】
転写上ガイド14は、記録材Pの画像形成面(レジニップ部NRを通過した後最初に転写ニップ部NTを通過する際に感光ドラム2の表面の接触する側の面)に接触して、記録材Pの搬送軌跡を規制する。本実施例では、転写上ガイド14よりも下流側かつ転写ニップ部NTよりも上流側には、記録材Pの画像形成面に接触する部材は設けられていない。したがって、本実施例では、記録材Pの画像形成面は、転写上ガイド14の次に感光ドラム2の表面と接触する。また、転写下ガイド15は、記録材Pの非画像形成面(レジニップ部NRを通過した後最初に転写ニップ部NTを通過する際に感光ドラム2の表面の接触する面とは反対側の面)に接触して、記録材Pの搬送軌跡を規制する。つまり、図2に示す断面におけるレジニップ部NRと転写ニップ部NTとを通る直線L1に対して、転写上ガイド14は図中下方(転写ローラ8側)に侵入しており、転写下ガイド15は図中上方(感光ドラム2側)に侵入している。これにより、記録材Pは、レジ部7を通過した後、転写上ガイド14及び転写下ガイド15と摺擦されてガイドされながら、転写ニップ部NTへと搬送される。このように、転写上ガイド14で一旦図中下方に記録材Pを押し下げるようにガイドし、転写下ガイド15で転写ニップ部NTに向けて記録材Pを図中上方に押し上げるようにガイドする(図2に示す断面において略S字状の記録材Pの搬送軌跡とする)。これにより、記録材Pを転写上ガイド14及び転写下ガイド15によってほぼ一定の形状に変形させながら転写ニップ部NTへと搬送することで、記録材Pの種類や状態によらず適切に転写ニップ部NTに記録材Pを導くことを可能としている。転写上ガイド14については、後述して更に詳しく説明する。
【0035】
(3)転写電圧制御
次に、画像形成動作における転写電圧制御について説明する。本実施例では、画像形成装置1は、転写電圧制御として、ATVC(Auto Transfer Voltage Control)、定電圧制御及び後端電圧制御を組み合わせた制御を行っている。図3は、本実施例における転写電圧制御を説明するための模式図である。図3には、転写電圧の推移を示すグラフ図(下図)と、このグラフ図の横軸に示す各時点で転写ニップ部NTを通過する記録材Pの位置を示す模式図(上図)と、が示されている。
【0036】
まず、ATVCについて説明する。ATVCは、記録材Pが転写ニップ部NTに搬送される前に実行される制御である。ATVCを実行する場合、制御手段としての制御部120が、転写正電圧電源20を制御して、転写ローラ8に初期電圧を印加し、初期電圧の出力が安定するまで待機する。その後、制御部120が、電流検知部22による電流の検知結果を所定の時間にわたりサンプリングし、電流の平均値を算出する。そして、制御部120が、この平均値とATVCの目標電流とを比較し、差分が小さくなるように次に転写ローラ8に印加する電圧を変更する。制御部120は、以上を繰り返すことで、電流検知部22の検知結果の平均値がATVCの目標電流に収束するように制御する(転写定電流制御)。この制御を行うことで、転写ニップ部NTに一定の電流を流すために必要な、基底電圧Vを把握することができる。これにより、ATVCの目標電流Iと、基底電圧Vとから、下記式(1)に基づいて、転写ローラ8(転写ニップ部NT)の電気抵抗値Rを把握することが可能となる。
R=V/I ・・・式(1)
【0037】
上記電気抵抗値Rに基づいて、画像形成時(転写時)の転写電圧を決定することができる。本実施例では、初期電圧を500V、初期電圧の安定待ち時間を100ms、電流のサンプリング時間を50ms、ATVCの目標電流Iを10μAに設定した。なお、電気抵抗値Rを用いる代わりに、目標電流Iを流すために必要な基底電圧Vを用いて、画像形成時(転写時)の転写電圧を決定してもよい。
【0038】
次に、定電圧制御について説明する。定電圧制御は、主に記録材Pに対してトナーを転写するために実行される制御である。記録材Pが転写ニップ部NTに搬送される前に、ATVCと同様に、制御部120が、転写正電圧電源20を制御して、転写ローラ8に電圧を印加する。転写ローラ8に印加する電圧値は、ATVCの結果、記録材Pの種類、感光ドラム2上に形成されるトナー像の範囲などを参照して決定することができる。例えば、制御部120は、ATVCにおいて求められた目標電流Iを流すために必要な基底電圧Vに、記録材Pの種類ごとに予め設定されている記録材分担電圧を加えることで、画像形成時(転写時)の転写電圧を決定することができる。制御部120は、例えば外部装置から入力されるプリント指令に含まれる記録材Pの種類に関する情報に基づいて、記録材分担電圧を取得することができる。本実施例では、20μA程度の電流が流れるように、トナーの正規の帯電極性(すなわち、感光ドラム2の帯電極性)とは逆極性の直流電圧である例えば+1800Vの電圧を転写正電圧電源20から転写ローラ8に供給する。
【0039】
なお、記録材の種類とは、普通紙、上質紙、再生紙、光沢紙、コート紙、厚紙、薄紙といった一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量や厚さなどの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、品番などを含む。)などの、記録材を区別可能な任意の情報を含む。薄紙の坪量は例えば52~63g/m、普通紙の坪量は例えば64~105g/m)、厚紙の坪量は例えば106~256g/mである。
【0040】
次に、後端電圧制御について説明する。後端電圧制御は、後端メモリを抑制するために実行される制御である。本実施例では、制御部120は、後端電圧制御として、記録材Pの後端が転写ニップ部NTから排出される前から排出された後までの所定の期間、転写ローラ8にトナーの正規の帯電極性(すなわち、感光ドラム2の帯電極性)と同極性の電圧を印加するように制御する。具体的には、本実施例では、上記所定の期間は、記録材Pの後端が転写ニップ部NTから排出される5mm前(記録材Pの後端の余白に相当する領域)から、排出された後の10mmの区間、つまり合計15mmの区間に対応する期間とされる。そして、本実施例では、制御部120は、この所定の期間では、転写正電圧電源20の出力をOFFとし、更に転写負電圧電源21の出力をONとして、-200Vの電圧(後端電圧)を転写ローラ8に印加するように制御する。後端電圧制御により記録材Pの後端の正極性の帯電量を減少させることで、記録材Pの後端が転写ニップ部NTから抜ける際の感光ドラム2と記録材Pとの間での剥離放電を低減することができる。また、後端電圧制御は、レジセンサ13による記録材Pの先端、後端の検知結果と、レジセンサ13と転写ニップ部NTとの間の記録材Pの搬送距離と、が勘案されて決定されたタイミングで実行される。これにより、記録材Pが転写ニップ部NTを通過するタイミングと同期して転写電圧を制御することが可能となる。
【0041】
(4)後端メモリの発生メカニズム
次に、剥離放電に起因した後端メモリの発生メカニズムについて説明する。図4は、後端メモリの発生メカニズムを説明するための模式図である。図4中の「+」の記号、「-」の記号は、感光ドラム2の表面や記録材Pの表面の帯電状態を模式的に示している。
【0042】
図4(a)は、記録材Pが転写ニップ部NTを通過中の状態を示している。前述のとおり、画像形成時(転写時)には転写ローラ8に正極性の転写電圧が印加されている。これにより、記録材Pの非画像形成面には、正極性の電荷が付与され、静電的に感光ドラム2上のトナー像を記録材Pに転写することが可能になる。転写ニップ部NTにおいてトナーの転写が完了すると、記録材Pに付与された電荷は、除電針23によって、ある程度除電される。また、前述のとおり、画像形成のため、感光ドラム2の表面は帯電ローラ3により負極性に帯電処理されている。
【0043】
図4(b)は、記録材Pの後端が転写ニップ部NTから抜けた後の状態を示している。この状態では、記録材Pの非画像形成面には、除電針23によりある程度除電された後の正極性の電荷が付与されている。また、この状態においても、図4(a)の状態と同様、感光ドラム2の表面は、帯電ローラ3によって負極性に帯電されている。しかし、この状態は、図4(a)の状態と異なり、記録材Pの後端が転写ニップ部NTから抜けた後であり、感光ドラム2から分離された記録材Pの後端の近傍と感光ドラム2の表面とが近接する。ここで、記録材Pの非画像形成面は正極性に帯電しており、感光ドラム2の表面は負極性に帯電しているため、記録材Pが感光ドラム2から分離する前においても記録材Pの非画像形成面と感光ドラム2との間には比較的大きい電位差が生じている。この電位差により、記録材Pには電荷が蓄えられ、コンデンサーのような役割を果たす。このように記録材Pに電荷が蓄えられた状態、つまり、記録材Pが帯電した状態で、記録材Pが感光ドラム2から分離すると、見かけの静電容量が急激に減少し、記録材Pと感光ドラム2との間の電位差が急激に増加する。そして、この電位差が放電閾値を上回ると、剥離放電が発生し、感光ドラム2に対して正極性の電荷が急激に移動する。この剥離放電が顕著であると、帯電ローラ3による帯電処理によって剥離放電の影響をキャンセルできず、帯電ローラ3を通過した後においても、剥離放電の影響を受けた箇所が、周囲と比較して部分的に帯電量が小さい状態(電位の絶対値が小さい状態)となる。そのため、現像部において、その帯電量の小さい部分に、より多くのトナーが付着する。結果的に、剥離放電を受けた感光ドラム2上の箇所は、感光ドラム2の1回転後に、黒いスジ状の画像不良(感光ドラム2の回転軸線方向に延びるスジ状の濃度ムラ)として顕在化する。
【0044】
以上が、剥離放電に起因した後端メモリ(転写メモリ)の発生メカニズムである。
【0045】
なお、前述の記録材Pの後端電圧制御により記録材Pの後端付近における転写電圧を変更するのは、上述の後端メモリの発生メカニズムに関して説明した記録材Pの後端付近の帯電量をなるべく低下させ、剥離放電を抑制するためである。
【0046】
(5)記録材帯電部材及び後端メモリの抑制メカニズム
次に、図2を参照して、本実施例の転写上ガイド14について更に詳しく説明する。本実施例では、転写上ガイド14を記録材帯電部材(記録材帯電手段)として利用して、後端メモリを抑制する。
【0047】
本実施例では、記録材帯電部材として機能する転写上ガイド14は、PC(Polycarbonate)樹脂で形成された薄板状の部材である。転写上ガイド14は、感光ドラム2の回転軸線方向と略平行に配置される長手方向と、この長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する。本実施例では、転写上ガイド14は、記録材Pとの接触によっては実質的に変形しない。本実施例では、転写上ガイド14を構成する材料として、体積抵抗率3×1014Ωの材料(PC樹脂)を用いている。そして、転写上ガイド14は、記録材Pとの摺擦により摩擦帯電する(すなわち、記録材Pを摩擦帯電させる)機能を有している。具体的には、本実施例の画像形成装置1において、記録材Pとして例えば記録用紙(普通紙)であるCS-068(坪量68g/m、キヤノン製)が搬送された場合、摩擦帯電により、転写上ガイド14の表面電位が正極性となり、記録材Pの画像形成面の表面電位が負極性となる。なお、転写上ガイド14の表面電位、記録材Pの表面電位は、測定装置としてHIGH SPEED ELECTROSTATIC VOLT METER(Trek社製)を用い、プローブとしてMODEL3800S-2(Trek社製)を用いて測定した。
【0048】
また、転写上ガイド14は、ガイド回動軸14aを回動中心として、図2中の矢印R2方向(時計回り方向)及びその逆方向に回動可能なように構成されている。ガイド回動軸14aの回動軸線は、感光ドラム2の回転軸線方向(転写上ガイド14の長手方向)、すなわち、画像形成装置1の前後方向と略平行である。本実施例では、ガイド回動軸14aは、転写上ガイド14の上流側(レジニップ部NR側)の端部に設けられている。そして、本実施例では、転写上ガイド14は、下流側(転写ニップ部NT側)の先端部14bが記録材Pに接触する。転写上ガイド14は、矢印R2方向に回動していない状態で、先端部14bが、図2に示す断面におけるレジニップ部NRと転写ニップ部NTとを通る直線L1に対して図中下方(転写ローラ8側)に侵入して配置されている。転写上ガイド14がガイド回動軸14aを中心として回動することで、転写上ガイド14の記録材Pとの接触部である先端部14bは、転写上ガイド14に対向する位置における記録材Pの面(レジニップ部NRから転写ニップ部NTへと搬送される記録材Pの面)と交差する方向に移動可能である。また、転写上ガイド14は、感光ドラム2の回転軸線方向における幅が、同方向における感光ドラム2上の画像形成領域(トナー像を形成可能な領域)よりも広い(画像形成領域が転写上ガイド14の幅内に収まる)。画像形成領域の幅(画像形成装置1が画像を形成することが可能な最大の記録材Pに対応する最大幅)は、例えば210mmである。なお、転写上ガイド14は、記録材Pの搬送方向における画像形成面の全域に接触することに限定されるものではなく、記録材Pの搬送軌跡の設定などによっては記録材Pの搬送方向における画像形成面の一部にのみ接触可能であってもよい。ただし、転写上ガイド14は、少なくとも記録材Pの搬送方向における記録材Pの後端及びその付近(後端部)に接触可能であることが望ましい。
【0049】
また、転写上ガイド14は、付勢手段としての弾性部材(付勢部材)である加圧バネ14cにより、転写上ガイド14の先端部14bが記録材Pと接触するように図中下方(矢印R2方向とは逆方向)に回動する方向に加圧されている。そして、画像形成装置1は、記録材Pが転写上ガイド14と転写ニップ部NTとの両方に接触した状態では、転写上ガイド14の先端部14bが記録材Pにより図中上方(矢印R2方向)に押し上げられる力が作用するように構成されている。具体的には、上述のような力が作用するように、レジローラ対12の位置及びレジローラ対12からの記録材Pの排出角度、転写下ガイド15の位置などが調整されている。特に、記録材Pとして一般的に厚紙と呼ばれる坪量が大きい(剛度が高い)紙などが搬送される場合には、記録材Pとして一般的に普通紙と呼ばれる紙や一般的に薄紙と呼ばれる紙などが搬送される場合と比較して、より強い力が転写上ガイド14に作用する。本実施例では、転写上ガイド14の自重と加圧バネ14cの加圧力の設定とにより、転写上ガイド14の先端部14bに0.59Nの力が作用した場合に、転写上ガイド14が図中上方(矢印R2方向)に回動するように設定されている。これは、詳しくは後述するように、剛度が高い厚紙などが搬送された場合に、転写上ガイド14の摩擦帯電が過剰に行われないようにするためである。
【0050】
次に、本実施例における後端メモリの抑制メカニズムについて説明する。図5は、本実施例における後端メモリの抑制メカニズムを説明するための模式図である。図5中の「+」の記号、「-」の記号は、感光ドラム2の表面や記録材Pの表面の帯電状態を模式的に示している。前述のとおり、転写上ガイド14の先端部14bは、記録材Pに接触して、記録材Pを摩擦帯電させる。具体的には、本実施例の画像形成装置1において、記録材Pとして例えば記録用紙(普通紙)であるCS-068(坪量68g/m、キヤノン製)が搬送された場合、摩擦帯電により、転写上ガイド14が正極性に帯電し、記録材Pの画像形成面が負極性に帯電する。この作用を表現するために、図5において転写ニップ部NTの上流側(図中右側)の記録材Pの画像形成面(図中上側)に、模式的に記録材Pが負極性に帯電していることを「-」の記号で示している。
【0051】
前述のとおり、記録材Pが転写ニップ部NTを通過した後には、転写ローラ8に印加された正極性の転写電圧の影響で、記録材Pの非画像形成面には、正極性の電荷が付与される。そして、記録材Pの後端が転写ニップ部NTを抜けて感光ドラム2から分離する際に発生する剥離放電により、記録材Pから感光ドラム2に電荷が移動する。この剥離放電により移動する電荷量(ここでは、「剥離放電量」ともいう。)は、記録材Pの帯電量(具体的には感光ドラム2の帯電極性とは逆極性である正極性の帯電量)により決定される。ここで、本実施例では、転写上ガイド14によって記録材Pの画像形成面が負極性に帯電されている。この作用により、画像形成面の負極性と、非画像形成面の正極性とが、結果的に相殺する方向に、記録材Pの帯電量に寄与することになる。つまり、本実施例では、上記転写上ガイド14による作用が存在しなかった場合と比較して、記録材Pが感光ドラム2から分離する際の記録材Pの帯電量を小さくすることが可能となる。これにより、記録材Pが感光ドラム2から分離する際の剥離放電量を低減して、結果的に後端メモリを抑制することが可能となる。
【0052】
(6)記録材帯電部材の材料
次に、記録材帯電部材の材料について更に説明する。まず、記録材帯電部材の摩擦帯電性能の評価方法について説明する。記録材帯電部材の摩擦帯電性能は、概略、記録材Pとして特定のものを選定し、一定の加重で記録材Pと評価したい材料で形成された評価部材とを摺擦した後に、評価部材の表面電位を測定することで評価可能である。本実施例では、記録材帯電部材の摩擦帯電性能の評価用の記録材Pとして、記録用紙(普通紙)であるCS-068(坪量68g/m、キヤノン製)を選定した。記録材Pと評価部材との摩擦条件は、次にとおりとした。評価部材に対する評価用の記録材Pの接触範囲が15mm×15mmの四角状の接触プローブに対して、約0.98Nの加重をかけた状態で、20mm幅の往復運動を5回行った。その後、評価部材の表面電位を、測定装置としてのHIGH SPEED ELECTROSTATIC VOLT METER(Trek社製)にプローブとしてのMODEL3800S-2(Trek社製)を接続したものを用いて測定した。また、評価部材としては、実質的に表面に凹凸の無い略平面状の部材を用いた。更に、評価部材としては、接触プローブの往復幅より十分に幅の広い部材、例えば50mm×50mmの四角状の部材を使用した。
【0053】
表1に、記録材帯電部材の評価部材の材料の例と評価結果を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
例えば、本実施例で転写上ガイド14の材料として用いているPC樹脂の評価結果について説明する。表1に示すように、上述の評価方法におけるPC樹脂の評価部材の表面電位は+1.5~+2.0KV程度であり、記録材Pとの摩擦により評価部材が正極性に帯電していることが認められた。一般的に、摩擦帯電が生じると、一方の部材の帯電極性に対して、他方の部材は逆極性に帯電することが知られている。そのため、この場合、記録材Pは、評価部材との摩擦により負極性に帯電していることになる。本実施例の特徴は、前述のとおり、記録材帯電部材により記録材Pを感光ドラム2の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電させることで、後端メモリを抑制する点にある。この観点では、記録材帯電部材が記録材Pを負極性に摩擦帯電させる構成、つまり、記録材帯電部材が正極性に摩擦帯電する構成あればよい。したがって、PC樹脂は、記録材帯電部材の材料として好適である。
【0056】
同様に、表1に示すように、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)共重合樹脂、PC+ABSアロイ樹脂、POM(Polyoxymethylene)樹脂、PET(Polyethylene Terephthalate)樹脂、PET樹脂にガラス繊維を混合した樹脂、PBT(Poly Butylene Terephthalate)樹脂にガラス繊維を混合した樹脂は、記録材帯電部材の材料として好適である。
【0057】
なお、記録材帯電部材の材料は、記録材Pを感光ドラム2の帯電極性と同極性に摩擦帯電させることが可能であればよく、上記例示の材料に限定されるものではない。また、記録材帯電部材は、上記例示の材料などの樹脂を主体とする材料で全体が構成されていることに限定されるものではない。記録材帯電部材は、記録材Pと接触する表面に、記録材Pを感光ドラム2の帯電極性と同極性に摩擦帯電させることが可能な材料が設けられていればよい。例えば、任意の材料(例えば樹脂)で形成された基体の記録材Pと接触する表面に、上述のような摩擦帯電性能を有する物質や成分を塗布したり、上述のような摩擦帯電性能を有する部材を貼り付けたりすることによっても、同様の効果が得られる。更に、本実施例では、記録材帯電部材は、記録材Pを負極性に摩擦帯電させる部材であるが、これに限定されるものではない。例えば、感光ドラム2の帯電極性が正極性である場合は、記録材帯電部材は、記録材Pを正極性に摩擦帯電させる部材とすればよい。
【0058】
(7)画像出力実験結果
本実施例及び後述する比較例の構成について行った画像出力実験の結果について説明する。画像出力実験では、前述の「後端メモリ」と後述する「黒ポチ画像」の発生程度について評価した。
【0059】
まず、「後端メモリ」の評価方法について説明する。なお、「後端メモリ」の発生メカニズムは前述のとおりである。「後端メモリ」は、常温常湿環境下で、記録材Pの2枚分の連続プリントを実行して評価した。画像形成時(転写時)には、20μA程度の電流が流れるように、+1800Vの電圧を転写正電圧電源20から転写ローラ8に供給した。また、連続プリントにおいて形成する画像のパターンは、1枚目は比較的低印字率の文字画像(印字率5%程度)、2枚目は「後端メモリ」の発生を判別しやすいハーフトーン画像(印字率50%程度)とした。また、記録材Pとして、記録用紙(普通紙)であるCS-068(坪量68g/m、キヤノン製)を用いた。そして、連続プリントにより出力された記録材P上の「後端メモリ(黒スジ状の画像不良)」の発生の有無を目視で確認した。
【0060】
次に、「黒ポチ画像」の発生メカニズム及び評価方法について説明する。「黒ポチ画像」は、記録材帯電部材の摩擦帯電が過剰に行われた場合に発生する画像不良であり、具体的にはハーフトーン画像などを形成した場合に部分的に点々状に濃度が濃くなる現象である。記録材帯電部材が記録材Pとの摩擦によって帯電する帯電量は、画像形成装置1の動作環境、記録材Pの種類、あるいはプリント枚数により変化する。
【0061】
画像形成装置1の動作環境については、比較的低湿の環境で動作した場合、記録材帯電部材の帯電量が大きくなる傾向にある。これは、画像形成装置1の使用環境が低湿環境である場合、記録材帯電部材に蓄積した摩擦帯電電荷が大気中に徐々に放電する自然減衰が起こりにくく、帯電した状態を維持しやすい傾向にあるためである。加えて、画像形成装置1の使用環境が低湿環境である場合、記録材P自体も乾燥していて電気抵抗が高くなりやすい傾向にあり、記録材帯電部材は、同じ枚数の記録材Pと摺擦してもより大きく帯電しやすい傾向にあるためである。また、記録材Pの種類については、坪量の大きい記録材P、つまり、比較的剛度が高い厚紙を使用した場合、記録材帯電部材の帯電量が大きくなる傾向にある。詳しくは後述するように、記録材Pとして厚紙などが搬送される場合に、記録材帯電部材と記録材Pとが強く摺擦する傾向があるためである。これは、特に、本実施例のように記録材帯電部材として機能する転写上ガイド14が回動可能な構成ではなく、後述する比較例1のように記録材帯電部材として機能する転写上ガイド14が回動しない構成である場合に顕著である。更に、プリント枚数については、短時間に多くの枚数の記録材Pに画像を形成した場合、記録材帯電部材の帯電量が大きくなる傾向にある。これは、単位時間当たりの記録材Pによる記録材帯電部材の摺擦時間の割合が増加し、記録材帯電部材の帯電量が多くなるためである。
【0062】
このように、画像形成装置1の動作環境、記録材Pの種類、あるいはプリント枚数により記録材帯電部材の帯電量が大きくなると、記録材帯電部材による記録材Pの摩擦帯電の他に、記録材帯電部材から記録材Pに対する放電現象が発生する。この放電現象が顕著である場合、記録材Pの画像形成面には、この放電現象起因の電荷ムラが生じる場合がある。例えば、本実施例のように、記録材帯電部材が正極性に帯電するものである場合は、記録材Pに対して正極性の放電が行われるため、記録材Pの表面には不均一な点状の正極性の帯電部が生じることになる。そして、本実施例では、トナーは負極性に帯電するものであるため、記録材Pが上述のように不均一な点状の正極性に帯電した状態で転写ニップ部NTに搬送されると、トナー像が記録材Pに転写される際に一部のトナーがこの正極性の帯電部に集まり、他の部分と比較して局所的に画像が濃くなる「黒ポチ画像」として顕在化する。
【0063】
「黒ポチ画像」は、相対湿度15%の比較的低湿環境下で、記録材Pの200枚分の連続プリントを実行して評価した。画像形成時(転写時)には、15μA程度の電流が流れるように、+4200Vの電圧を転写正電圧電源20から転写ローラ8に供給した。また、連続プリントにおいて形成する画像のパターンは、「黒ポチ画像」の発生を判別しやすいハーフトーン画像(印字率50%程度)とした。また、記録材Pとして、記録用紙(厚紙)であるSpringhill Digital Index(坪量199g/m、Springhill製)を用いた。そして、連続プリントにより出力された記録材P上の「黒ポチ画像」の発生の有無を目視で確認した。
【0064】
表2に、本実施例及び比較例の性能評価結果を示す。
【0065】
【表2】
【0066】
まず、本実施例の評価結果について説明する。図6(a)は、本実施例の記録材帯電部材として機能する転写上ガイド14の模式的な断面図である。本実施例では、転写上ガイド14による記録材Pの負極性の摩擦帯電が行われことにより、後端メモリは発生しなかった。また、本実施例では、転写上ガイド14の先端部14bは、記録材Pから受ける力により回動して退避することが可能であるため、黒ポチ画像も発生しなかった。このように、本実施例では、「後端メモリ」を抑制するとともに「黒ポチ」を抑制することができ、良好な画質の画像を形成することが可能である。
【0067】
次に、比較例1の評価結果について説明する。図6(b)は、比較例1の記録材帯電部材として機能する転写上ガイド14の模式的な断面図である。比較例1では、ガイド回動軸14a及び加圧バネ14cが設けられておらず、転写上ガイド14は回動(移動)しないように固定配置されている。比較例1の転写上ガイド14のその他の構成は本実施例の転写上ガイド14と実質的に同じである。したがって、比較例1の転写上ガイド14の位置は、本実施例の転写上ガイド14が記録材Pにより回動させられていないときの位置と同じである。比較例1では、本実施例と同様に転写上ガイド14による記録材Pの負極性の摩擦帯電が行われるため、後端メモリは発生しなかった。しかし、比較例1では、転写上ガイド14が回動しないため、特に厚紙が搬送された場合に、本実施例と比較して、より強く転写上ガイド14と記録材Pとが摺擦する。そのため、比較例1では、転写上ガイド14の過剰帯電に起因する黒ポチ画像が軽微に発生した。つまり、本実施例では、厚紙が搬送される場合に、転写上流上ガイド14が記録材Pから受ける加重に応じて回動して退避することが可能である。そのため、本実施例では、記録材Pと転写上ガイド14とが過大な加重で強く摺擦することを抑制することが可能である。そして、この作用により、転写上ガイド14が過剰に帯電することを抑制することができる。一方、比較例1では、転写上ガイド14は回動しない。そのため、比較例1では、記録材Pと転写上ガイド14とが比較的強い力で摺擦することになるため、転写上ガイド14の帯電量が大きくなりやすい。
【0068】
次に、比較例2の評価結果について説明する。図6(c)は、比較例2の転写上ガイド14の模式的な断面図である。比較例2では、転写上ガイド14の記録材Pとの接触部である先端部14bに導電性の材料であるSUSで形成された導電性被覆部材14dが設けられており、更にこの被覆部材14dが電気的に接地されている。比較例1の転写上ガイド14のその他の構成は本実施例の転写上ガイド14と実質的に同じである。比較例2では、本実施例と同様に転写上ガイド14が回動可能であることに加え、そもそも導電性被覆部材14dが電気的に接地されているため、転写上ガイド14が過剰に帯電されることがない。そのため、比較例2では、黒ポチ画像は発生しなかった。しかし、比較例2では、転写上ガイド14による記録材Pの摩擦帯電が行われず、後端メモリが軽微に発生した。
【0069】
以上説明したように、本実施例では、記録材帯電部材として機能する転写上ガイド14は、記録材Pを感光ドラム2の帯電極性と同極性に摩擦帯電させることが可能である。これにより、記録材Pが転写ニップ部NTを抜ける際の感光ドラム2と記録材Pとの間での剥離放電を抑制して、後端メモリを抑制することが可能である。また、本実施例では、記録材帯電部材として機能する転写上ガイド14は、記録材Pとして厚紙が搬送される場合などに、記録材Pから受ける力により回動して退避することが可能である。これにより、転写上ガイド14の摩擦帯電が過剰に行われることを抑制して、黒ポチ画像を抑制することが可能である。このように、本実施例によれば、後端メモリ及び黒ポチ画像の両者を抑制することが可能である。
【0070】
なお、本実施例では、後端電圧制御において、記録材Pの帯電量をなるべく低減する観点から、負極性(感光ドラム2の帯電極性と同極性)の電圧(後端電圧)を印加したが、これに限定されるものではない。例えば、画像形成装置1が負極性の電圧を出力する電源を有していない場合には、後端電圧制御において、画像形成時(転写時)の定電圧制御で印加する転写電圧と比較して絶対値が小さい正極性(感光ドラム2の帯電極性とは逆極性)の電圧を印加してもよい。これにより、可能な限り記録材Pの帯電量を低減することが可能である。つまり、記録材Pの搬送方向における記録材Pの後端部が転写ニップ部NTを抜ける際に、トナーの正規の帯電極性(すなわち、感光ドラム2の帯電極性)とは逆極性で絶対値が記録材Pの搬送方向における記録材Pの中央及びその付近(中央部)が転写ニップ部NTを通過している際に転写ローラ8に印加する電圧の絶対値よりも小さい電圧を転写ローラ8に印加してもよい。更に、記録材帯電部材による後端メモリの抑制効果が高い場合には、例えば本実施例における後端電圧制御を実行する期間と同様の期間に印加する電圧を、画像形成時(転写時)に定電圧制御で印加する転写電圧と同じ電圧とすることも可能である。
【0071】
また、本実施例では、評価用に特定の記録用紙(普通紙、厚紙)を用いた例について説明した。しかし、本発明者の検討によれば、上記例示の特定の記録紙以外の紙であっても、電子写真方式の画像形成装置において用いられる紙であれば、概ね同等の効果が得られる。
【0072】
このように、本実施例では、回転可能な像担持体(感光ドラム)2と、像担持体2の表面を所定の極性に帯電させる帯電装置3と、帯電装置3により帯電された像担持体2の表面に上記所定の極性と同極性に帯電したトナーを供給して像担持体2の表面にトナー像を形成する現像装置5と、像担持体2の表面に当接して像担持体2との間に転写ニップ部NTを形成し、転写電圧が印加されることで、像担持体2から転写ニップ部NTを通過する記録材Pにトナー像を転写させる転写部材8と、転写部材8に上記所定の極性とは逆極性の転写電圧を印加する印加部20、21と、を有する画像形成装置1は、転写ニップ部NTにより挟持搬送される記録材Pの搬送方向において転写ニップ部NTよりも上流側に配置され、転写ニップ部NTに向けて搬送される記録材Pのトナー像が転写される面である画像形成面に接触可能であり、摩擦帯電により上記画像形成面を上記所定の極性と同極性に帯電させることが可能な記録材帯電部材14を有し、記録材帯電部材14の記録材Pとの接触部14bは、記録材帯電部材14に対向する位置における記録材Pの面と交差する方向に移動可能である。本実施例では、記録材帯電部材14は、上記搬送方向において、転写ニップ部NTよりも上流側における転写ニップ部NTに最も近い位置で記録材Pを搬送する搬送部材(レジローラ対)12よりも下流側に配置されている。また、本実施例では、記録材帯電部材14は、転写ニップ部NTに向けて搬送される記録材Pをガイドする機能を有する。また、本実施例では、記録材Pの上記画像形成面は、記録材帯電部材14の次に像担持体2の表面と接触する。また、本実施例では、記録材帯電部材14の接触部14bは、記録材Pから受ける力により移動する。特に、本実施例では、記録材帯電部材14の接触部14bは、記録材帯電部材14の回動により移動する。また、本実施例では、画像形成装置1は、記録材帯電部材14の接触部14bが上記画像形成面側から上記画像形成面とは反対側の面側に向かう方向に記録材帯電部材14を付勢する付勢手段(加圧バネ)14cを有する。そして、本実施例では、付勢手段14cは、第1の種類の記録材Pが転写ニップ部NTに向けて搬送される場合よりも、上記第1の種類の記録材Pよりも坪量が大きい第2の種類の記録材Pが転写ニップ部NTに向けて搬送される場合の方が、記録材帯電部材14の接触部14bが上記画像形成面とは反対側の面側から上記画像形成面側に向かう方向の下流側に位置することが可能なように構成されている。ここで、記録材帯電部材14は、少なくとも上記搬送方向における記録材Pの後端部に接触可能であることが望ましい。また、記録材帯電部材14は、上記搬送方向と直交する方向における画像形成領域の略全域で記録材Pに接触可能であることが望ましい。また、本実施例では、印加部20、21は、上記搬送方向における記録材Pの後端部が転写ニップ部NTを抜ける際に、上記搬送方向における記録材Pの中央部が転写ニップ部NTを通過している際に転写部材8に印加する電圧とは異なる電圧を転写部材8に印加する。印加部20、21は、上記搬送方向における記録材Pの後端部が転写ニップ部NTを抜ける際に、上記所定の極性とは逆極性で絶対値が上記搬送方向における記録材Pの中央部が転写ニップ部NTを通過している際に転写部材8に印加する電圧の絶対値よりも小さい電圧を転写部材8に印加することができる。また、印加部20、21は、上記搬送方向における記録材Pの後端部が転写ニップ部NTを抜ける際に、上記所定の極性と同極性の電圧を転写部材8に印加することができる。
【0073】
(8)実施例1の変形例
次に、実施例1の変形例について説明する。
【0074】
(8-1)接触範囲
まず、転写上ガイド14の記録材Pとの接触範囲に関する変形例について説明する。
【0075】
図7(a)~図7(d)の左図は、実施例1及び変形例の転写上ガイド14の模式的な断面図である。また、図7(a)~図7(d)の右図は、それぞれ左図中の矢印α方向から見た正面図である。
【0076】
図7(a)は、実施例1の転写上ガイド14を示している。転写上ガイド14によって記録材Pを感光ドラム2の帯電極性と同極性に摩擦帯電させて後端メモリを抑制する観点では、転写上ガイド14は、長手方向において記録材Pに対してムラなく均一に接触することが望ましい。また、長手方向における転写上ガイド14と記録材Pとの接触幅(以下、単に「接触幅」ともいう。)は、少なくとも画像形成領域よりも広い(接触幅内に画像形成領域が収まる)ことが望ましい。そのため、図7(a)に示すように、転写上ガイド14の記録材Pと接触する部分に凹凸形状を設けず、長手方向において転写上ガイド14が記録材Pと均一に接触するようにすることが望ましい。また、図7(a)に示すように、長手方向における接触幅を画像形成領域よりも広くすることで、十分な範囲で記録材Pの摩擦帯電が行われるようにすることが望ましい。
【0077】
一方、例えば以下に説明するような種々の制約を受けて、図7(a)に示すような構成とすることが難しい場合が想定される。
【0078】
まず、例えば組立性を改善することなどを目的として、転写上ガイド14を長手方向において分割する場合が想定される。あるいは、型を用いて転写上ガイド14を成形するにあたり、例えば成形安定性を確保することなどを目的として、転写上ガイド14に部分的に凹溝が形成される場合が想定される。いずれの場合も、例えば図7(b)に示すように、転写上ガイド14に、長手方向における所定の幅(図7(b)中の「b」)で、記録材Pと接触しない部分が生じることが想定される。図7(b)に示すような凹溝を有する転写上ガイド14を変形例1とする。
【0079】
また、例えば記録材Pの搬送のための寸法精度を向上することなどを目的として、転写上ガイド14の一部にリブ形状が設けられる場合が想定される。この場合は、例えば図7(c)に示すように、転写上ガイド14に、長手方向における所定の間隔(図7(c)中の「c」)で、記録材Pの表面に向けて突出したリブが設けられることが想定される。図7(c)に示すようなリブを有する転写上ガイド14を変形例2とする。
【0080】
更に、例えば転写上ガイド14のソリを低減することなどを目的として、転写上ガイド14の長手方向の幅を画像形成領域よりも狭くする場合が想定される。この場合は、例えば図7(d)に示すように、画像形成領域内(典型的には両端部)に、長手方向における所定の範囲(図7(d)中の「d」)で、転写上ガイド14が存在しない領域が生じることが想定される。図7(d)に示すように長手方向における接触幅が画像形成領域よりも狭い転写上ガイド14を変形例3とする。
【0081】
表3は、上述の変形例の性能評価結果を示す。性能評価の項目は後端メモリであり、評価方法は前述のものと同じである。
【0082】
【表3】
【0083】
まず、凹溝形状を有する変形例1として凹溝の幅bが異なる変形例1-1~1-3の評価結果について説明する。変形例1-1の転写上ガイド14は、比較的狭い幅であるb=2mmの幅の凹溝を有する。変形例1-1の構成では、凹溝の幅bが狭いため、転写上ガイド14による剥離放電の抑制効果が十分であった。あるいは、変形例1-1の構成では、剥離放電が微小に発生していても、後端メモリは視覚的に確認できない程度であった。そのため、変形例1-1の構成では、後端メモリは実質的に発生しなかった。変形例1-2の構成(b=5mm)においても、変形例1-1と同様に、後端メモリは実質的に発生しなかった。変形例1-3の転写上ガイド14は、比較的広い幅であるb=10mmの幅の凹溝を有する。変形例1-3の構成では、凹溝の幅bが広いため、記録材Pに対して転写上ガイド14の接触が不十分な領域が存在し、軽微に後端メモリが発生した。以上のように、例えば図7(b)に示すように転写上ガイド14が凹溝を有する場合は、凹溝の幅bは5mm以下程度であることが望ましい。
【0084】
次に、リブ形状を有する変形例2としてリブの幅cが異なる変形例2-1~2-3の評価結果について説明する。変形例2-1の転写上ガイド14は、比較的広い間隔であるc=60mmの間隔でリブを有する。変形例2-1の構成では、リブの間隔cが広いため、転写上ガイド14による剥離放電の抑制効果が十分であった。あるいは、変形例2-1の構成では、剥離放電が微小に発生していても、後端メモリは視覚的に確認できない程度であった。そのため、変形例2-1の構成では、後端メモリは実質的に発生しなかった。変形例2-2の構成(c=30mm)においても、変形例2-1と同様に、後端メモリは実質的に発生しなかった。変形例2-3の転写上ガイド14は、比較的狭い間隔であるc=10mmの間隔でリブを有する。変形例2-3の構成では、リブの間隔cが狭いため、記録材Pに対して転写上ガイド14の接触が不十分な領域が存在し、軽微に後端メモリが発生した。以上のように、例えば図7(c)に示すように転写上ガイド14がリブを有する場合は、リブの間隔cは30mm以上程度であることが望ましい。
【0085】
更に、長手方向における接触幅が画像形成領域よりも狭い変形例3として画像形成領域の両端部の転写上ガイド14が存在しない領域の幅dが異なる変形例3-1~3-3の評価結果について説明する。変形例3-1の転写上ガイド14は、比較的狭い範囲であるd=5mmの範囲で長手方向における画像形成領域の両端部に転写上ガイド14が存在しない領域がある。変形例3-1の構成では、転写上ガイド14が存在しない領域が狭いため、転写上ガイド14による剥離放電抑制効果が十分であった。あるいは、変形例3-1の構成では、剥離放電が微小に発生していても、後端メモリは視覚的に確認できない程度であった。そのため、変形例3-1の構成では、後端メモリは実質的に発生しなかった。変形例3-2の構成(d=10mm)においても、変形例3-1と同様に、後端メモリは実質的に発生しなかった。変形例3-3の転写上ガイド14は、比較的広い範囲であるd=20mmの範囲で長手方向における画像形成領域の両端部に転写上ガイド14が存在しない領域がある。変形例3-3の構成では、転写上ガイド14が存在しない領域が広いため、記録材Pに対して転写上ガイド14の接触が不十分な領域が広く存在し、特に長手方向の端部の領域で軽微に後端メモリが発生した。以上のように、例えば図7(d)に示すように長手方向における接触幅が画像形成領域よりも狭い場合は、画像形成領域における転写上ガイド14が存在しない領域の幅dは10mm以下程度であることが望ましい。
【0086】
なお、変形例の構成について具体的な数値を使用して説明したが、本発明は上記例示の数値のものに限定されるものではない。記録材帯電部材は、望ましくは長手方向において記録材Pの略全域に接触することで所定の摩擦帯電を行い、後端メモリを抑制することができればよい。そのため、上記例示の数値範囲以外においても、後端メモリを許容範囲内に抑制することができるのであれば、記録材帯電部材の形状や寸法を変更した構成を採用することが可能である。
【0087】
(8-2)退避構成
次に、転写上ガイド14の退避構成に関する変形例について説明する。
【0088】
前述のとおり、実施例1では、ガイド回動軸14aは、転写上ガイド14の上流側(レジニップ部NR側)の端部に配置されており、転写上ガイド14の下流側(転写ニップ部NT側)の先端部14bが回動して退避する。しかし、例えば各種部材の配置や記録材Pのスムーズな搬送の観点から、実施例1のような位置にガイド回動軸14aを配置することが難しい場合が想定される。そのような場合は、以下に説明するような構成としてもよい。図8(a)、(b)の左図は、転写上ガイド14の他の変形例の模式的な断面図である。また、図8(a)の右図は図8(a)の左図中の矢印α方向から見た正面図であり、図8(b)の右図は図8(b)の左図中の矢印β方向から見た上面図である。
【0089】
例えば、図8(a)に示すように、ガイド回動軸14aを転写上ガイド14の下流側(転写ニップ部NT側)の端部に設けることも可能である。この場合、転写上ガイド14の上流側(レジニップ部NR側)の端部が記録材Pと接触して、この端部が回動して退避する。なお、転写上ガイド14の上流側の端部と下流側の端部との間の位置にガイド回動軸14aを設けてもよい。
【0090】
また、転写上ガイド14は回動することに限定されるものではなく、図8(b)に示すように、スライド移動するようするようにしてもよい。図8(b)に示す構成では、画像形成装置1には、転写上ガイド14をスライド移動可能に支持しかつガイドする、ガイド退避溝14eが設けられている。また、この構成では、転写上ガイド14には、ガイド退避溝14eにルーズに嵌合される係合部14fが設けられている。図示の例では、転写上ガイド14の四隅、すなわち、上流側の端部における長手方向の両端部及び下流側の端部における長手方向の両端部にそれぞれ2個ずつの係合部14fが設けられている。また、この構成では、転写上ガイド14は、記録材Pと接触するように図中下方に向けて加圧バネ(図示せず)により加圧されている。そして、転写上ガイド14は、記録材Pからの反力を受けた際には、ガイド退避溝14eに沿って図中上方にスライド移動して退避することが可能である。このような構成によっても、転写上ガイド14の記録材Pとの接触部である先端部14bを、転写上ガイド14に対向する位置における記録材Pの面(レジニップ部NRから転写ニップ部NTへと搬送される記録材Pの面)と交差する方向に移動可能とすることができる。
【0091】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0092】
実施例1では、転写上ガイド14は、回動することによって、転写上ガイド14の記録材Pとの接触部である先端部14bが転写上ガイド14に対向する位置における記録材Pの面と交差する方向に移動可能な構成とされていた。これに対して、本実施例では、転写上ガイドは、変形可能なシート状の部材で構成されている。そして、本実施例では、転写上ガイドは、変形することによって、転写上ガイド14の記録材Pとの接触部である先端部が転写上ガイド14に対向する位置における記録材Pの面と交差する方向に移動可能な構成とされる。
【0093】
図9は、本実施例における転写ニップ部NTの近傍の模式的な断面図(感光ドラム2の回転軸線方向と略直交する断面を示す断面図)である。本実施例では、画像形成装置1は、シート状の転写上ガイド30を有する。この転写上ガイド30は、感光ドラム2の回転軸線方向と略平行に配置される長手方向と、この長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する。本実施例では、この転写上ガイド30は、樹脂製の薄膜(シート、フィルム)で構成されている。また、本実施例では、転写上ガイド30の材料はPCであり、厚さは350μmである。そして、本実施例では、転写上ガイド30は、下流側(転写ニップ部NT側)の先端部30bが記録材Pに接触する。転写上ガイド30は、変形していない状態で、下流側の先端部30bが、図9に示す断面におけるレジニップ部NRと転写ニップ部NTとを通る直線L1に対して図中下方(転写ローラ8側)に侵入して配置されている。本実施例では、このシート状の転写上ガイド30が、記録材帯電部材(記録材帯電手段)として機能する。つまり、本実施例では、このシート状の転写上ガイド30が、実施例1の転写上ガイド14と同様に、記録材Pを感光ドラム2の帯電極性と同極性に摩擦帯電させる機能を有している。
【0094】
また、転写上ガイド30は、ガイド保持部材30aによって保持(支持)されている。本実施例では、転写上ガイド30は、下流側の端部側がガイド保持部材30aから約15mm突出するように、上流側の端部側がガイド保持部材30aに貼り付けられて固定されている。これにより、転写上ガイド30の下流側(転写ニップ部NT側)の先端部30bは変形により図中上方に移動可能とされている。転写上ガイド30を構成するシートの厚さとガイド保持部材30aからの突出量を調整することで、変形に要する力を調整することが可能である。本実施例では、実施例1と同様に、転写上ガイド30の先端部30bに0.59Nの力が作用した場合に、転写上ガイド30の先端部30bが図中上方に変形するように設定されている。
【0095】
上述のように、本実施例では、転写上ガイド30により記録材Pを感光ドラム2の帯電極性と同極性に摩擦帯電させることが可能である。これにより、記録材Pが転写ニップ部NTを抜ける際の剥離放電を低減して後端メモリを抑制することができる。また、本実施例では、例えば記録材Pとして厚紙などが搬送される場合に転写上ガイド30が変形して退避する。これにより、転写上ガイド30の過剰帯電を抑制して黒ポチ画像を抑制することができる。すなわち、実施例1では転写上ガイド14の回動により達成していた効果を、本実施例では転写上ガイド30の変形により達成することが可能である。
【0096】
表4は、本実施例の転写上ガイド30の性能評価結果を示す。性能評価の項目は後端メモリ及び黒ポチ画像であり、評価方法は実施例1で説明したものと同じである。
【0097】
【表4】
【0098】
本実施例の構成においても、実施例1と同様に、転写上ガイド30による記録材Pの摩擦帯電が行われたため、後端メモリは発生しなかった。また、本実施例の構成では、厚紙を搬送した場合に転写上ガイド30の先端部30bが変形して退避することが可能であるため、実施例1と同様に、転写上ガイド30の過剰帯電が抑制され、黒ポチ画像も発生しなかった。
【0099】
なお、本実施例では転写上ガイド30の材料はPCであるが、これに限定されるものではない。実施例1で説明したとおり、記録材Pを所定の極性に摩擦帯電させることが可能な材料であれば適宜用いることが可能である。
【0100】
また、転写上ガイド30の形状に関しては、実施例1の変形例として説明したとおり、望ましくは長手方向において記録材Pの略全域に接触することで所定の摩擦帯電を行い、後端メモリを抑制することができればよい。そのため、後端メモリを許容範囲内に抑制することができるのであれば、転写上ガイド30の形状は適宜変更することが可能である。例えば、実施例1の変形例として説明したとおり、溝形状を設ける(長手方向において分割する)、リブ形状を設ける、長手方向の幅を短くして画像形成領域の端部に転写上ガイド30が存在しない領域を設けるなどしてもよい。
【0101】
このように、本実施例では、実施例1と同様、記録材帯電部材14の接触部14bは、記録材Pから受ける力により移動する。特に、本実施例では、記録材帯電部材14の接触部14bは、記録材帯電部材14の変形により移動する。そして、本実施例では、記録材帯電部材14は、第1の種類の記録材Pが転写ニップ部NTに向けて搬送される場合よりも、上記第1の種類の記録材Pよりも坪量が大きい第2の種類の記録材Pが転写ニップ部NTに向けて搬送される場合の方が、接触部14bが記録材Pの画像形成面とは反対側の面側から画像形成面側に向かう方向の下流側に位置することが可能なように構成されている。
【0102】
[その他の実施例]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0103】
上述の実施例では、記録材をガイドするガイド部材が記録材帯電部材の機能を有していたが、画像形成装置はガイド部材とは別に記録材帯電部材を有していてもよい。図10は、ガイド部材とは別個の記録材帯電部材を有する画像形成装置における転写ニップ部の近傍の模式的な断面図である。なお、図10において上述の実施例におけるものと同一又は対応する機能を有する要素には実施例1と同一の符号を付している。図10に示す画像形成装置1は、転写上ガイド14よりも下流側かつ転写下ガイド15よりも上流側に、記録材Pの画像形成面に接触する記録材帯電部材31を有する。記録材帯電部材31は、記録材Pに対向する面で構成された接触部31bで記録材Pと接触する。そして、記録材帯電部材31は、記録材Pと接触するように加圧バネ31aによって図中下方に向けて加圧されている。このような構成によっても、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。なお、図10に示す画像形成装置1では、転写上ガイド14は、図6(b)に示したものと同様に固定配置されていてよい。
【0104】
また、上述の実施例では、例えば厚紙などの剛性が高い記録材が搬送される場合に、記録材帯電部材が記録材に接触した状態で退避することで、記録材帯電部材と記録材とが過大な加重で強く摺擦することを抑制した。これに対し、例えば厚紙などの剛性が高い記録材が搬送される場合に、記録材帯電部材を記録材と接触しないようにしてもよい。図11は、記録材帯電部材を記録材に接触しないように移動させることが可能な画像形成装置の要部の模式図である。なお、図11において上述の実施例又は図10におけるものと同一又は対応する機能を有する要素には実施例1と同一の符号を付している。図11に示す画像形成装置1は、図10に示した構成と同様の記録材帯電部材31及び加圧バネ31aを有する。そして、図11に示す画像形成装置1は、記録材帯電部材31を加圧バネ31aの付勢力に抗して図中上方(記録材Pの搬送軌跡から離れる方向)に移動させることが可能な移動機構40を有する。移動機構40は、記録材帯電部材31の長手方向の両端部に設けられた受け部31cにそれぞれ当接して回転可能なカム41と、カム41を回転駆動する駆動部42と、を有する。駆動部42は、駆動源としてのモータ、及び駆動伝達部材などを有して構成される。制御部120は、駆動部42を制御することで、記録材帯電部材31を、記録材Pに接触可能な第1の位置(接触位置)と、記録材Pに接触しない第2の位置(離間位置)と、に配置することができる。カム41により、加圧バネ31aの付勢力に抗して記録材帯電部材31を図中上方に押し上げることで、記録材帯電部材31を第1の位置から第2の位置に移動させることができる。また、カム41による押圧を解除することで、記録材帯電部材31が自重と加圧バネ31aの加圧力とにより第2の位置から第1の位置に移動することを許すことができる。
【0105】
例えば、制御部120は、外部装置から入力されるプリント指令に含まれる記録材Pの種類に関する情報に基づいて、所定の種類の記録材Pが搬送される場合に、記録材帯電部材31を記録材Pに接触しない第2の位置に配置するように制御することができる。例えば、予め設定された所定の閾値以上の坪量の記録用紙が搬送される場合に、記録材帯電部材31を第2の位置に配置することができる。これにより、例えば厚紙などの剛性が高い記録材Pが搬送される場合に、記録材Pが記録材帯電部材31により摩擦帯電されないようにすることができる。なお、例えば記録材Pとして厚紙が用いられる場合には、定着性の向上などを目的として、記録材Pとして普通紙が用いられる場合よりも記録材Pの搬送速度が低くされる場合がある。記録材Pの搬送速度が低い場合には、記録材Pの搬送速度が高い場合よりも、転写電圧を弱くすることが可能であることなどにより、記録材Pが転写ニップ部NTを抜ける際の剥離放電が発生しにくくなる場合がある。このような場合には、上述のように例えば記録材Pとして厚紙が用いられる場合に記録材帯電部材31による記録材Pの摩擦帯電を行わないようにしても、後端メモリの問題は発生しにくい。このように、画像形成装置1は、記録材帯電部材31を、接触部31bが記録材Pに接触可能な第1の位置と、接触部31bが記録材Pに接触しない第2の位置と、に移動させることが可能な移動機構40を有していてよい。そして、移動機構40は、第1の種類の記録材Pが転写ニップ部NTに向けて搬送される場合に記録材帯電部材31を上記第1の位置に配置し、上記第1の種類の記録材Pよりも坪量が大きい第2の種類の記録材Pが転写ニップ部NTに向けて搬送される場合に記録材帯電部材31を上記第2の位置に配置することができる。
【0106】
また、実施例1やその他の例において、記録材帯電部材を加圧バネによって記録材と接触する方向に付勢する構成について説明したが、記録材帯電部材の構成(重さなど)によっては、記録材帯電部材を重力(自重)のみにより付勢する構成としてもよい。
【0107】
また、像担持体は、ドラム状のものに限定されるものではなく、無端ベルト状のものなどであってもよい。
【0108】
また、転写部材はローラ状のものに限定されるものではなく、ブラシ状、ブレード状、パッド状、フィルム状のものなどであってもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 画像形成装置
2 感光ドラム
3 帯電ローラ
4 レーザースキャナ
5 現像装置
6 クリーニング装置
8 転写ローラ
14 転写上ガイド
14a ガイド回動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11