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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163831
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20241115BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241115BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241115BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C08L63/00 C
H05K1/03 610L
H05K1/03 610R
C08K3/22
C08K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142107
(22)【出願日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2023079474
(32)【優先日】2023-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】正田 勲
(72)【発明者】
【氏名】浜坂 智美
(72)【発明者】
【氏名】浜坂 剛
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CD04W
4J002CD05X
4J002DE147
4J002DF016
4J002FD016
4J002FD017
4J002GQ01
4J002HA02
4J002HA08
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】高い流動性を有し、その硬化物が低線膨張係数で高熱伝導率である樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂と、(B)窒化アルミニウムフィラーと、(C)アルミナフィラーとを含み、前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、前記(B)窒化アルミニウムフィラーと前記(C)アルミナフィラーとの合計量が800~1500質量部であり、前記(A)エポキシ樹脂は、(A-1)固体エポキシ樹脂と、(A-2)液体エポキシ樹脂とを含み、前記(B)窒化アルミニウムフィラーは平均粒径D50が0.2~3μm、最大粒径Dmaxが5μm以下であり、前記(C)アルミナフィラーは平均粒径D50が0.05~1.5μmである、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、(B)窒化アルミニウムフィラーと、(C)アルミナフィラーとを含み、
前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、前記(B)窒化アルミニウムフィラーと前記(C)アルミナフィラーとの合計量が800~1500質量部であり、
前記(A)エポキシ樹脂は、(A-1)固体エポキシ樹脂と、(A-2)液体エポキシ樹脂とを含み、
前記(B)窒化アルミニウムフィラーは平均粒径D50が0.2~3μm、最大粒径Dmaxが5μm以下であり、
前記(C)アルミナフィラーは平均粒径D50が0.05~1.5μmである、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)窒化アルミニウムフィラーは比表面積が0.5~10m/gであり、
前記(C)アルミナフィラーは比表面積が1~50m/gであり、
前記(B)窒化アルミニウムフィラーの総表面積S1と、前記(C)アルミナフィラーの総表面積S2との比S2/S1が0.5~2.2である、
請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の樹脂組成物からなる、樹脂組成物フィルム。
【請求項4】
請求項1または2記載の樹脂組成物またはその硬化物を含む、多層プリント配線板。
【請求項5】
請求項1または2記載の樹脂組成物またはその硬化物を含む、部品内蔵基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化、小型化に伴って、多層プリント配線板においては、配線の微細化や高密度化が進んでいる。多層プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。前記絶縁層は、フィルム状の樹脂組成物(樹脂組成物フィルム)を使用することで、効率的に形成することが出来る。樹脂組成物フィルムとしては、熱硬化性のエポキシ樹脂とシリカを含有する樹脂組成物を使用することが一般的である(特許文献1)。多層プリント配線板の絶縁層の形成は、一般的に導体層の上に樹脂組成物フィルムを重ね合わせ、真空ラミネータや熱プレスで、導体層と樹脂組成物を密着させつつ樹脂組成物を熱硬化させることで、積層と接着が行われる。そのため、樹脂組成物フィルムには、導体層の形状に追従するための積層条件における高い流動性が求められており、そのためにエポキシ樹脂として固体エポキシ樹脂と液体エポキシ樹脂を併用することが一般的である。また、絶縁層と導体層(銅配線)の熱による線膨張が大きく異なるため、サーマルサイクル等でクラックが発生する等の信頼性の課題もあり、絶縁層には低線膨張であることも求められる。このため、樹脂組成物フィルムには、線膨張係数を小さくするため、一般的にはシリカが高充填される。
【0003】
また、高密度実装の方法として、これまで基板の表面に実装されてきた電子部品を基板の内部に封止樹脂により埋め込む電子部品内蔵基板技術も注目されている。樹脂基板や銅基板のコアにキャビティを形成し、キャビティにICやコンデンサ等の電子部品を配置した後、キャビティ内に熱硬化性樹脂を埋め込むことで、電子部品は封止、内蔵される。この封止樹脂にも、上記の多層プリント配線板に使用されるような樹脂組成物フィルムが用いることができる。電子部品を配置したコアに樹脂組成物フィルムを重ね合わせ、熱プレスで樹脂組成物をキャビティ内に埋め込み、熱硬化させることで封止する。部品内蔵基板に使用する場合でも、キャビティの埋め込みのための高い流動性と低線膨張であることが求められる。
【0004】
より高密度な実装形態として、電子部品を基板内に内蔵した部品内蔵基板の表面に、上記のセミアディティブ法で多層配線層を形成し、その表面に、さらに電子部品を実装したモジュールも使用されている。
【0005】
さらに、近年では電子機器の小型化、高性能化に伴って、多層プリント配線板や部品内蔵基板における半導体素子の高密度化、高実装化が進んでいる。これに伴い、半導体素子の発熱量も増大しており、その熱を基板から効率的に放熱することが重要となる。そこで、ビルドアップ方式による多層プリント配線板の製造においても、このような課題に対応するべく、樹脂組成物フィルムとして、シリカよりも熱伝導性が高い窒化アルミニウムを使用した高熱伝導率の樹脂組成物を使用することが提案されている(特許文献2)。具体的には、特許文献2には、シラン化合物で処理された窒化アルミニウム又は窒化ケイ素と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含む樹脂組成物が提案されており、その実施例においては最大2.8W/m・Kの熱伝導率を示す樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-132507号公報
【特許文献2】WO2014/208352
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、高熱伝導性の樹脂組成物が求められおり、特許文献2のように、最大2.8W/m・Kのフィルム用の樹脂組成物は公知である。しかしながら、近年の電子機器の高密度化、高実装化を考慮すると、より高い熱伝導率が求められている状況である。ところが、多層プリント配線板や部品内蔵基板に使用する樹脂組成物フィルムには熱伝導率だけではなく、高流動性や低線膨張であることも求められることから、その樹脂組成/フィラー組成に制限があり、従来技術では多層プリント配線板や部品内蔵基板の製造に使用する樹脂組成物フィルムとして使用可能な樹脂組成物での高熱伝導率の達成には限界があった。そこで本発明は、高い流動性を有し、その硬化物が低線膨張係数で高熱伝導率である樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定の粒度分布を有する窒化アルミニウムフィラーと、特定の粒径を有するアルミナフィラーを組み合わせて使用することにより、多層プリント配線板や部品内蔵基板の製造に使用する樹脂組成物フィルムとして求められる特性を有しつつ、且つその硬化物が高い熱伝導性を有する樹脂組成物が得られることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、(A)エポキシ樹脂と、(B)窒化アルミニウムフィラーと、(C)アルミナフィラーとを含み、前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、前記(B)窒化アルミニウムフィラーと前記(C)アルミナフィラーとの合計量が800~1500質量部であり、前記(A)エポキシ樹脂は、(A-1)固体エポキシ樹脂と、(A-2)液体エポキシ樹脂とを含み、前記(B)窒化アルミニウムフィラーは平均粒径D50が0.2~3μm、最大粒径Dmaxが5μm以下、であり、前記(C)アルミナフィラーは平均粒径D50が0.05~1.5μmである、樹脂組成物である。
【0010】
前記(B)窒化アルミニウムフィラーは比表面積が0.5~10m/gであり、前記(C)アルミナフィラーは比表面積が1~50m/gであり、前記(B)窒化アルミニウムフィラーの総表面積S1と、前記(C)アルミナフィラーの総表面積S2との比S2/S1が0.5~2.2であることが好ましい。また、前記樹脂組成物からなるフィルムを好ましい形態として挙げることが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、高い流動性を有し、その硬化物が低線膨張で高熱伝導率である樹脂組成物を提供することが出来る。このような樹脂組成物は、フィルム状に成形して使用することで、放熱性能に優れた多層プリント配線板や部品内蔵基板等を、効率的に生産することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。ただし、本発明は次に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0013】
(A)エポキシ樹脂
本発明の樹脂組成物の樹脂としては、エポキシ樹脂が使用される。前記エポキシ樹脂は、分子内に1以上のエポキシ基を含有する化合物(以下、「反応性エポキシ樹脂」と称することもある)を含有することが好ましい。なお、このような反応性エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する低分子化合物であっても良い。前記反応性エポキシ樹脂は、分子内に2以上のエポキシ樹脂を含有することがより好ましい。前記反応性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂全量に対して50質量%以上含むことが好ましい。エポキシ樹脂が反応性エポキシ樹脂を含むことにより、本発明の樹脂組成物を多層プリント配線板や部品内蔵基板の製造用の樹脂組成物フィルムとして使用する場面において、軟化し流動性に優れて多層プリント配線板の導体層、部品内蔵基板のキャビティや電子部品の形状に追従しやすくなるとともに、所望の形状に変化した後に熱硬化して高い強度と耐熱性を有するようになるため、これら基板の信頼性を向上させることが容易となる。エポキシ樹脂全量に対する反応性エポキシ樹脂の配合割合の上限は特に限定されず、エポキシ樹脂全量が反応性エポキシ樹脂であっても良い。
【0014】
前記エポキシ樹脂は、(A-1)固体エポキシ樹脂と、(A-2)液体エポキシ樹脂の双方を含むものである。本発明においては、温度25℃で固体状のエポキシ樹脂を(A-1)固体エポキシ樹脂と言い、25℃で液状のエポキシ樹脂を(A-2)液体エポキシ樹脂と言う。
【0015】
(A)エポキシ樹脂が(A-1)固体エポキシ樹脂を含むことにより、樹脂組成物の熱硬化後の強度や耐熱性を向上させることが出来る。一方で、固体エポキシ樹脂は溶融粘度の高いものが多く、本発明の樹脂組成物を多層プリント配線板や部品内蔵基板の製造時に樹脂組成物フィルムとして使用することを考慮すると、所望の基板形状に追従するよう流動性を高くする必要があり、耐熱性の高い固体エポキシ樹脂に、流動性の高い液体エポキシ樹脂が併せて使用される。
【0016】
固体エポキシ樹脂としては、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、3官能ナフタレン型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂又はフルオレン型エポキシ樹脂が好ましく、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂又はフルオレン型エポキシ樹脂がより好ましい。固体エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP-4700」、「HP-4710」(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、「N-690」、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200L」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP6000」、「HP-6000H」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN-501H」、「EPPN-501HY」、「EPPN-502H」(トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂)、「NC7000L」、「NC-7000H」、「NC-7300L」(ナフトールクレゾールノボラックエポキシ樹脂)、「NC-3000H」、「NC-3000」、「NC-3000L」、「NC-3100」、「NC-3500」(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製の「ESN475」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0017】
(A)エポキシ樹脂が(A-2)液体エポキシ樹脂を含むことにより、樹脂組成物の溶融粘度を低下させ流動性を向上させることが出来る。これにより、本発明の樹脂組成物を多層プリント配線板や部品内蔵基板の製造時に樹脂組成物フィルムとして使用する場面において、加熱加圧成形を行った際に流動性に優れて導体層やキャビティの形状に追従させることが可能となる。
【0018】
液体エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、又はナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル(株)製の「jER828」、「jER828EL」、「jER828US」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER806」、「jER806H」「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0019】
(A-2)液体エポキシ樹脂の25℃における粘度は、好ましくは500poise以下、より好ましくは10~300poise、さらに好ましくは20~200poiseである。この範囲とすることで、樹脂組成物の溶融粘度を低く抑えられ、高い流動性が得られる。
【0020】
(A-1)固体エポキシ樹脂と(A-2)液体エポキシ樹脂の配合比(固体エポキシ樹脂:液体エポキシ樹脂)は、質量比で、9:1~1:9の範囲が好ましく、4:1~1:4の範囲がより好ましく、3:1~1:3の範囲がさらに好ましく、2:1~1:2の範囲が特に好ましい。固体エポキシ樹脂と液体エポキシ樹脂との配合比を上記範囲とすることにより、高い流動性と耐熱性を両立することが容易となる。
【0021】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50~4500、より好ましくは50~3000、さらに好ましくは80~2000、さらにより好ましくは100~1000である。この範囲とすることで、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり、樹脂組成物フィルムとして使用した際に十分な耐熱性と機械的強度をもたらすことが容易となる。なお、エポキシ当量は、JISK7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基当たりの樹脂の質量である。
【0022】
(B)窒化アルミニウムフィラー
本発明の樹脂組成物には、平均粒径D50が0.2~3μm、最大粒径Dmaxが5μm以下である窒化アルミニウムフィラーが配合される。窒化アルミニウムフィラーを配合することにより、樹脂組成物の硬化物が高い熱伝導率を有することが可能となる。さらに、平均粒径を0.2~3μmとすることにより、樹脂組成物をフィルムとして使用するために十μm程度~数百μmのフィルム状に成形しやすくなるとともに、該厚みで高い熱伝導率が得られやすくなる。また、最大粒径Dmaxを5μm以下とすることにより、樹脂組成物の溶融粘度が低くなり、多層プリント配線板や部品内蔵基板の製造時に使用する場面において、加熱加圧成形を行った際に導体層やキャビティの形状への追従性が良好となる。
【0023】
(B)窒化アルミニウムフィラーの平均粒径は、0.3~2μmであることが好ましく、0.5~1.5μmであることがより好ましい。また、最大粒径は、4.5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。
【0024】
なお、本発明において、平均粒径D50は、レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、体積基準で累積50%値となったときの粒径である。また、最大粒径Dmaxは、計測された粒径の最大値である。
【0025】
前記(B)窒化アルミニウムフィラーの製造方法等は特に限定されず、公知の方法で製造した窒化アルミニウムフィラーを使用することが出来る。窒化アルミニウムを製造する方法としては、直接窒化法、還元窒化法、気相合成法などを挙げることができる。窒化アルミニウムフィラーの具体例としては、例えば、窒化アルミニウムフィラーHF-01D((株)トクヤマ製)などが使用できる。また、市販の窒化アルミニウム粉末を、篩や分級装置などにより平均粒径と最大粒径を満たすように粒度分布を調節して使用することも可能である。
【0026】
(B)窒化アルミニウムフィラーの比表面積は特に限定されないが、0.5~10m/gであることが好ましく、0.8~7m/gであることがより好ましく、1.0~5m/gであることがさらに好ましい。比表面積が前記範囲であることにより、エポキシ樹脂への分散性が良好になり、樹脂組成物フィルムとして使用する場合において、樹脂組成物の溶融粘度が低く最適な範囲とすることが容易となる。
【0027】
(B)窒化アルミニウムフィラーには、原料由来あるいは合成法上で意図的に添加されたアルカリ土類元素、希土類元素などの不純物が5質量部程度を上限として含まれていても差し支えない。ただし窒化アルミニウムの結晶性を著しく下落させる不純物量は、熱伝導性低下の原因となるため好ましくない。前記窒化アルミニウムフィラーにおける窒化アルミニウム含有率は95質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましい。
【0028】
(B)窒化アルミニウムフィラーは、表面処理剤により表面処理が行われたフィラーであってもよい。表面処理を施すことで、窒化アルミニウムの耐水性が改善され、エポキシ樹脂との親和性が向上することで、窒化アルミニウムフィラーの充填性が良くなり、樹脂組成物の流動性を向上させることが容易となる。前記表面処理剤としては、例えば、シラン化合物、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤等の公知の処理剤が特に制限なく使用され得る。このうち、特に高い反応率で反応が可能なシラン化合物が好適に使用できる。
【0029】
該表面処理剤として使用されるシラン化合物について、具体的に例示すれば、反応性官能基を有するシラン化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシランの如きアルコキシシラン等が挙げられる。
【0030】
また、官能基が非反応性であるシラン化合物としては、例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
その他使用可能なシラン化合物として、ビニルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリクロロメチルシラン、エチルジメチルクロロシラン、プロピルジメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリクロロシラン、イソプロピルジエチルクロロシラン等のクロロシランが挙げられる。
【0032】
シラン化合物の中でもエポキシ樹脂との親和性の高いものが好ましく、親和性が高いシラン化合物としては、グリシドキシ基やアミノ基など、エポキシ基と反応できる官能基を有するシラン化合物が挙げられる。またエポキシ基との反応性は無いものの、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、フェニル基、ビニル基、スチリル基などの官能基もエポキシ樹脂との親和性が高く、これら官能基を有するシラン化合物も好適である。前記表面処理剤を使用する場合、その使用量は、表面処理前の原料粉末100質量部に対して、0.1~5質量部、好ましくは0.5~4質量部である。
【0033】
該表面処理の方法としては、公知の方法を特に制限なく採用でき、乾式表面処理、湿式表面処理のいずれの方法で行ってもよい。乾式表面処理は、原料粉末と表面処理剤を混合する際に、多量の溶媒を介さない乾式混合による方法であり、例えば、表面処理剤をガス化して原料粉末と混ぜる方法、液状の表面処理剤を噴霧または滴下投入し原料粉末と混ぜる方法、表面処理剤を少量の有機溶媒で希釈して液体量を増やし、さらに噴霧または滴下する方法などが挙げられる。また、湿式表面処理は、原料粉末と表面処理剤を混合する際に、溶媒を介する方法であり、例えば、原料粉末と表面処理剤と溶媒とを混合した後、乾燥などにより溶媒を除去する方法が挙げられる。
【0034】
(C)アルミナフィラー
本発明の樹脂組成物には、平均粒径D50が0.05~1.5μmであるアルミナフィラーが配合される。このように(B)窒化アルミニウムフィラーよりも粒径が小さいアルミナフィラーを配合することで、樹脂組成物中で窒化アルミニウム粒子同士の間隙にアルミナ粒子が入り込み、樹脂組成物の流動性が高い状態を保ったまま、熱伝導性粒子の接触面積を増加させて熱伝導性を向上させることが出来る。
【0035】
(C)アルミナフィラーの平均粒径D50は、0.1~1μmであることが好ましく、0.15~0.8μmであることがより好ましい。また、アルミナフィラーは、最大粒径Dmaxが5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
(C)アルミナフィラーの比表面積は特に限定されないが、1~50m/gであることが好ましく、1.5~30m/gであることがより好ましく、2~20m/gであることがさらに好ましい。比表面積が前記範囲であることにより、(B)窒化アルミニウムフィラーとの組み合わせでエポキシ樹脂に混合する際、エポキシ樹脂への分散性が良好になり、樹脂組成物の溶融粘度を低くすることが容易となる。
【0037】
(C)アルミナフィラーの結晶性は特に制限されないが、結晶性は高いほど好ましく、結晶系はアルファ晶の割合が高いほどより好ましい。アルミナフィラーの結晶性が高いほど、硬化物の熱伝導性の高い樹脂組成物を得ることが容易となる。アルミナフィラーの結晶性は、X線回折法により確認することができる。
【0038】
(C)アルミナフィラーの粒径と(B)窒化アルミニウムフィラーの粒径との関係は特に制限されるものではないが、アルミナフィラーのD50の窒化アルミニウムフィラーのD50に対する比が、0.02~0.9であることが好ましく、0.05~0.8であることがより好ましく、0.10~0.7であることがさらに好ましい。粒径の比が前記範囲であることにより、窒化アルミニウムフィラー及びアルミナフィラーの樹脂への充填性が良くなり、樹脂組成物の溶融粘度を低くすることが容易となる。
【0039】
(C)アルミナフィラーは、表面処理を行なわずに使用してもよく、あるいは、表面処理剤により表面処理が行われたフィラーであってもよい。表面処理したアルミナフィラーを使用する場合には、該表面処理の方法としては、公知の方法を特に制限なく採用でき、乾式表面処理、湿式表面処理のいずれの方法で行ってもよい。前記表面処理剤としては、例えば、シラン化合物、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤等の公知の処理剤が特に制限なく使用され得る。このうち、前記したようなシラン化合物が好適に使用できる。前記表面処理剤を使用する場合、その使用量は、表面処理前の原料粉末100質量部に対して、0.1~5質量部、好ましくは0.5~4質量部である。
【0040】
本発明の樹脂組成物においては、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、(B)窒化アルミニウムフィラーと(C)アルミナフィラーとの合計量が800~1500質量部である。これにより、樹脂組成物の流動性、低線膨張性、高熱伝導性をバランスよく向上させることが出来る。(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、(B)窒化アルミニウムフィラーと(C)アルミナフィラーとの合計量は、900~1400質量部であることが好ましく、1000~1300質量部であることがより好ましい。
【0041】
(B)窒化アルミニウムフィラーと(C)アルミナフィラーの配合量の比は特に限定されないが、前記(B)窒化アルミニウムフィラーの総表面積S1と、前記(C)アルミナフィラーの総表面積S2との比S2/S1が0.5~2.2となるような配合量とすることが好ましい。S2/S1の値を前記範囲とすることにより、樹脂組成物の熱伝導率をより高いものとすることが出来る。この理由は定かではないが、エポキシ樹脂とそれぞれのフィラーとの相互作用のバランスにより、エポキシ樹脂とフィラー界面の密着性が良くなり、フィラーの充填性が向上するためと推察される。S2/S1の値は、0.8~2.1であることがより好ましく、1.0~1.8であることがさらに好ましく、1.1~1.5であることが特に好ましい。なお、(B)窒化アルミニウムフィラーの総表面積S1は、窒化アルミニウムフィラーの比表面積と、窒化アルミニウムフィラーの配合量の積により算出することが出来る。同様に、(C)アルミナフィラーの総表面積S2は、アルミナフィラーの比表面積と、アルミナフィラーの配合量の積により算出することが出来る。
【0042】
その他成分
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、(A)エポキシ樹脂、(B)窒化アルミニウムフィラー、(C)アルミナフィラー以外の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、エポキシ樹脂の硬化剤、硬化促進剤、エポキシ樹脂以外のその他樹脂、その他フィラー、難燃剤、ゴム粒子、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、及び着色剤などが挙げられる。
【0043】
前記エポキシ樹脂の硬化剤は、(A)エポキシ樹脂が反応性エポキシ樹脂を含む場合において、エポキシ樹脂と反応して硬化する機能を有するものである。本発明の樹脂組成物がエポキシ樹脂の硬化剤を含むことによって、本発明の樹脂組成物を熱硬化させた際に、高い強度と耐熱性をもつ硬化物を得ることが容易となる。エポキシ樹脂の硬化剤としては、特に限定されず、公知の硬化剤が使用できる。例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられ、樹脂組成物のフィルムへの成形性や硬化物の耐熱性等の観点からは、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤が好ましい。硬化剤は、1単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0044】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤は、硬化物の耐熱性及び耐水性を勘案すると、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤が好ましい。フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールA型ノボラック、フェノールアラルキルノボラック、ビフェニルアラルキルノボラック、アミノトリアジンノボラック(トリアジン構造含有フェノールノボラック)、トリフェニルメタンノボラック、シクロペンタジエンフェノールノボラック等が好ましい。ナフトール系硬化剤としては、ナフトールアラルキル型フェノールノボラック、アラルキル型ナフトール・フェノールノボラック、ナフトール・クレゾール型ノボラックが好ましい。
【0045】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、日本化薬(株)製の「GPH-103」、「GPH-65」、「TKG-105」、DIC(株)製の「TD-2093」、「TD-2090」、「LF-6161」、「LF-4871」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1536」、「LA-1356」、日鉄ケミカル(株)製の「ZX-798」、「SN485」、群栄化学(株)の「TPM-100」、「GPNX」、JFEケミカル(株)製の「S-TPM」、「J-DDP」等が挙げられる。
【0046】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の反応性基当量(水酸基当量)は、特に制限されるものではないが、樹脂組成物のフィルムへの成形性や硬化物の耐熱性等の観点から、好ましくは20~4000、より好ましくは50~2000、さらに好ましくは50~1000である。なお、水酸基当量は、1当量の水酸基当たりの樹脂の質量である。
【0047】
活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン構造を有する活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を有する活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤等が挙げられ、硬化物の耐熱性及び耐水性を勘案すると、ジシクロペンタジエン構造を有する活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を有する活性エステル系硬化剤がより好ましい。活性エステル系硬化剤の具体例としては、例えば、DIC(株)製の「HPC-8000-65T」(ジシクロペンタジエン構造を有する活性エステル系硬化剤)、「HPC-8150-62T」(ナフタレン構造を有する活性エステル系硬化剤)等が挙げられる。
【0048】
活性エステル系硬化剤の反応性基当量(活性エステル基当量)は、特に制限されるものではないが、樹脂組成物のフィルムへの成形性や硬化物の耐熱性等の観点から、好ましくは50~2000、より好ましくは50~1000、さらに好ましくは100~500である。なお、活性エステル基当量は、1当量の活性エステル基当たりの樹脂の質量である。
【0049】
本発明の樹脂組成物における前記硬化剤の配合量は、特に制限されるものではないが、硬化物の耐熱性や機械強度を勘案すると、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、硬化剤は50~200であることが好ましく、65~150質量部であることがより好ましく、75~125質量部であることがさらに好ましい。また、硬化剤の水酸基や活性エステル基等の反応性基の合計数は、特に制限されるものではないが、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数に対して、0.5~2であることが好ましく、0.6~1.5であることがより好ましく、0.65~1.25であることがさらに好ましい。ここで、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、同様に硬化剤の反応性基の合計数とは、各硬化剤の質量を反応性基当量で除した値を合計した値である。
【0050】
前記硬化促進剤とは、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤の反応性基との反応やエポキシ基の重合を促進する機能を有するものである。本発明の樹脂組成物がエポキシ樹脂の硬化促進剤を含むことによって、(A)エポキシ樹脂が反応性エポキシ樹脂を含む場合において、本発明の樹脂組成物を熱硬化させる際に、簡便に硬化させることが可能になるとともに、硬化後に高い強度を得ることが容易となる。本発明の樹脂組成物がエポキシ樹脂の硬化剤を含む場合、その配合量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して硬化促進剤は、好ましくは0.01質量部~5質量部、より好ましくは0.05質量部~3質量部、さらに好ましくは0.1質量部~2質量部である。
【0051】
エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、公知の物が特に制限なく使用することが可能であり、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤等が挙げられ、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。硬化促進剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。
【0053】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体等が挙げられる。
【0054】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。
【0055】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0056】
本発明の樹脂組成物がその他の樹脂を含むことによって、樹脂組成物の可撓性等を付与させることも出来る。これにより、樹脂組成物フィルムを成形する際に塗工性が良くなり均一なフィルムが得られ、フィルムが柔軟になり巻き取り性を向上させたり、また、硬化物の耐衝撃性等が向上して割れにくくしたりすることが容易となる。その他の樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、中でもエポキシ樹脂と類似の構造を有するフェノキシ樹脂が、エポキシ樹脂との相溶性が良いために好ましい。これらの熱可塑性樹脂は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格等からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの末端構造でもよい。フェノキシ樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、例えば、三菱ケミカル(株)製の「YX6954BH30」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100BH30」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX7553BH30」等が挙げられる。フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、5000~10000であることが好ましい。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量である。
【0058】
本発明の樹脂組成物がフェノキシ樹脂を含む場合、その配合量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~50質量部、より好ましくは0.5質量部~30質量部、さらに好ましくは1質量部~20質量部である。
【0059】
前記その他フィラーは、窒化アルミニウム及びアルミナ以外の材質からなるフィラーであり、例えば、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭化ケイ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、ダイヤモンドなどを含んでいても良い。
【0060】
その他フィラーの配合量は、(B)窒化アルミニウムフィラーと(C)アルミナフィラーの合計量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、含まないことが特に好ましい。また、その他のフィラーの粒径は、(B)窒化アルミニウムフィラーよりも小さいことが好ましく、平均粒径が2μm未満であることがより好ましく、1.5μm未満であることがさらに好ましい。また最大粒径も(B)窒化アルミニウムフィラーよりも小さいことが好ましく、最大粒径が4.5μm未満であることがより好ましく、4μm未満であることがさらに好ましい。
【0061】
本発明の樹脂組成物には、その他成分として、難燃剤やゴム粒子が含まれてもよい。難燃剤は、本発明の樹脂組成物を半導体製品に使用した際に難燃性を付与するものであり、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられ、これら難燃剤は1種単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、ゴム粒子を含むことにより、樹脂組成物を熱硬化させた際の内部応力を緩和して硬化物の反りを低減し、また耐衝撃性を付与することもできる。ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などの微粒子が挙げられ、その平均粒径は1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましい。さらに、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、及び着色剤などの添加剤が含まれてもよい。
【0062】
本発明の樹脂組成物は、高い流動性を有し、且つその硬化物は線膨張係数が低く熱伝導率が高いとの特徴を有する。
【0063】
樹脂組成物が高い流動性を有することにより、樹脂組成物フィルムとして使用する際に、多層プリント配線板の導体層、部品内蔵基板のキャビティや電子部品の形状に追従して密着性を高めることが容易となる。本発明の樹脂組成物は、90~140℃の範囲における溶融粘度の最小値が13000poise以下であることが好ましく、9000poise以下であることがより好ましい。樹脂組成物フィルムを使用した多層プリント配線板の製造においては、熱プレスの条件は90~140℃の範囲で適切な温度を選択して行われることが多い。樹脂組成物の90~140℃の範囲での溶融粘度の最小値が13000poise以下であれば、多層プリント配線板や部品内蔵基板の製造における加熱加圧成形時の条件として該最小値となる温度付近を選択することで、樹脂組成物が高い流動性を有する条件で取り扱うことが出来る。前記樹脂組成物の90~140℃の範囲での溶融粘度の最小値は、取り扱い性の観点から、300poise以上であることが好ましく、500poise以上であることがより好ましい。溶融粘度の測定は、粘弾性測定装置(回転型レオメータ)を用いて動的粘弾性の温度分散測定を行なうことで、複素粘度として求めることができる。
【0064】
本発明の樹脂組成物の硬化物の線膨張係数は、25ppm/℃以下であることが好ましく、22ppm/℃以下であることがより好ましい。一般的には導体層である銅の線膨張係数17ppm/℃に近づくほどよいとされている。線膨張係数は、熱機械分析装置を用いて測定でき、ガラス転移温度までの線膨張率変化の傾きより求めることができる。
【0065】
本発明の樹脂組成物の相対密度は、0.90以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましく、0.97以上であることがさらに好ましい。相対密度は、使用した各材料の密度と配合比から求められた密度(理論密度)に対する、樹脂組成物の硬化物試料を測定した密度の比で表され、理論密度と試料密度が一致する場合には1となる。相対密度が高いことは、樹脂へのフィラーの充填性が高く、樹脂組成物中にボイド等の欠陥が少なく、且つ各成分の界面の密着性に優れていることを示しており、これにより樹脂組成物の流動性、熱伝導性、強度、耐久性などが向上する傾向にある。相対密度の上限値は特に限定されないが、通常は1.0以下である。なお、樹脂組成物の硬化物の密度は、アルキメデス法により測定することができる。
【0066】
本発明の樹脂組成物の硬化物の熱伝導率は、3.5W/m・K以上であることが好ましく、4.0W/m・K以上であることがより好ましく、4.5W/m・K以上であることがさらに好ましく、5.0W/m・K以上であることが特に好ましい。硬化物の熱伝導率が高い樹脂組成物を樹脂組成物フィルムとして使用することで、多層プリント配線板や部品内蔵基板の放熱性を向上させることが出来る。熱伝導率は高いほど好ましいが、一般的には30W/m・K以下である。熱伝導率は、温度波熱分析法(アイフェイズ法)により測定することが出来る。
【0067】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、ブレンダーやミキサーなどを使用した公知の方法で、樹脂とフィラーと必要に応じてその他の成分を混合することで製造することが出来る。前記混合の際には、各成分を同時に混合機等に添加して混合してもよいし、各成分を順次混合機等に添加して混合してもよい。この際の添加順は特に制限されない。さらに、前記混合は、必要により、加熱下で行ってもよく、不活性ガス雰囲気等の雰囲気を調整した下で行ってもよい。
【0068】
本発明の樹脂組成物は、流動性が高く、その硬化物が高い熱伝導性と低い線膨張であることから、前記の多層プリント配線板の絶縁層や部品内蔵基板の封止樹脂に好適に使用できる。また、これら用途の他、例えば、接着フィルム、金属張積層板の絶縁層、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂等、放熱性の必要な種々の用途においても広範囲に使用できる。本発明の樹脂組成物を前記のような用途に使用する場合、工業的には一般に、フィルム状の形態に成形した樹脂組成物フィルムとして用いることが好適である。
【0069】
本発明の樹脂組成物フィルムは、本発明の樹脂組成物がフィルム状に成形されたものであり、その厚さは、好ましくは5~250μm、より好ましくは10~200μm、さらに好ましくは20~150μmである。
【0070】
本発明の樹脂組成物フィルムの製造方法は特に制限されず、従来公知の方法でフィルム化することができる。中でも好適な方法としては、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解、混合して樹脂組成物のワニスを調製し、この樹脂組成物のワニスを、ダイコーターなどを使用して支持体上に塗工した後、加熱や熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて、樹脂組成物フィルムを製造する方法を挙げることができる。
【0071】
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるソルベントナフサ等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組合せ混合して使用してもよい。
【0072】
前記有機溶剤の沸点は、乾燥時に容易に除去することができることから、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。樹脂組成物のワニスにおける有機溶剤の含有量は特に限定されず、支持体への塗工性などを考慮して適宜調整すればよい。
【0073】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物フィルム中の有機溶剤の含有量が好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となるように乾燥させることが好ましく、樹脂組成物ワニスに使用した有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば、60℃~150℃で1~5分間加熱乾燥させることにより、樹脂組成物の熱による硬化が進行し過ぎない程度に樹脂組成物フィルムを得ることができる。
【0074】
本発明の樹脂組成物フィルムは、部分硬化状態にあり、所謂Bステージフィルムと呼ばれるものであることが好ましい。部分硬化状態にあり、完全には硬化していないため、多層プリント配線板や部品内蔵基板の製造工程の中で容易に導体層の形状に追従することができるとともに、その後にさらに硬化が進行して強度や耐久性を向上させることもできる。
【0075】
前記支持体としては、各種のプラスチックフィルムを好適に使用できる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのオレフィン系フィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられ、中でも、平滑性と耐熱性に優れ、かつ、安価なポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。樹脂組成物フィルムを塗工する際の濡れ性や、各種半導体基板を製造する際の離形性等を勘案して、支持体のプラスチックフィルムの塗工面側には、離型処理、マット処理、コロナ放電処理等を施してあってもよい。また、銅箔やアルミニウム箔などの金属箔も支持体として使用することができる。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が好適に使用できる。金属箔を支持体に用いることで、各種基板製造において金属箔を積層する工程が省け、接着強度も高くできる。支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~150μmの範囲が好ましく、10μm~100μmの範囲がより好ましく、10~60μmの範囲がさらに好ましい。
【0076】
樹脂組成物フィルムにおいて、支持体と接していない面には、支持体に準じた保護フィルムがさらに積層されていてもよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、5μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物フィルム表面へのゴミ等の付着や傷付きを防止することができる。保護フィルムを積層することで、樹脂組成物フィルムをロール状に巻き取ることも可能となる。多層プリント配線板や部品内蔵基板、その他の半導体材料を製造する際には、保護フィルムを剥がして使用する。
【0077】
前記樹脂組成物フィルムは、流動性や埋込性が高く、その硬化物の熱伝導率が高く、線膨張係数が低いことから、多層プリント配線板の絶縁層の形成や部品内蔵基板の封止樹脂に好適に使用できる。また、例えば、接着フィルム、金属張積層板の絶縁層、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂等、放熱性の必要な種々の用途においても広範囲に使用できる。
【実施例0078】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。使用した各種材料および物性測定条件を以下に記す。
【0079】
<エポキシ樹脂>
(A-1)固体エポキシ樹脂には、以下のものを使用した。
・NC-3000(日本化薬(株)製ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、エポキシ当量276、軟化点58℃)
・EPPN-501HY(日本化薬(株)製トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、エポキシ当量166、軟化点60℃)
・HP-4700(DIC(株)製4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量163、軟化点92℃)
上記の固体エポキシ樹脂は、それぞれメチルエチルケトンに溶解して、エポキシ樹脂50質量%の溶液として樹脂組成物の作製に使用した。
(A-2)液体エポキシ樹脂には、jER828(三菱ケミカル(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量189、粘度(25℃)135poise)を使用した。
【0080】
<窒化アルミニウムフィラー>
(B)窒化アルミニウムフィラーには、以下のものを使用した。
・B-1:HF-01D((株)トクヤマ製)を下記方法に従ってN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM-573)で表面処理をしたもの。平均粒径0.9μm、最大粒径3.3μm、比表面積2.8m/g。
・B-2:HF-01D((株)トクヤマ製)を下記方法に従って3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM-503)で表面処理をしたもの。平均粒径0.9μm、最大粒径3.4μm、比表面積2.6m/g。
・B-3:窒化アルミニウム粉末Hグレード((株)トクヤマ製)を下記方法に従ってN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM-573)で表面処理をしたもの。平均粒径1.1μm、最大粒径6.5μm、比表面積2.6m/g。
表面処理は、原料粉末600gと5gの表面処理剤、及びイソプロピルアルコール1200gをガラス製ナスフラスコに入れ、フッ素樹脂製攪拌羽根で30分攪拌し、次いで、ロータリーエバポレータにてイソプロピルアルコールを50℃で減圧除去した後、100℃で減圧乾燥することで行った。
【0081】
<アルミナフィラー>
(C)アルミナフィラーには、以下のものを使用した。
・AA-03F(住友化学(株)製、平均粒径0.28μm、比表面積6.4m/g)
・NXA-150(住友化学(株)製、平均粒径0.20μm、比表面積9.7m/g)
・AHPA-0.5AF(サソール社製、平均粒径0.44μm、比表面積8.0m/g)
・AA-1.5(住友化学(株)製、平均粒径1.7μm、比表面積1.3m/g)
【0082】
<硬化剤>
エポキシ樹脂の硬化剤には以下のものを使用した。
・HPC-8000-65T(DIC(株)製ジシクロペンタジエン構造を有する活性エステル系硬化剤、活性エステル基当量223、不揮発分65質量%のトルエン溶液)
・GPH-103(日本化薬(株)製ビフェニルアラルキルフェノールノボラック、水酸基当量230、軟化点103℃)
固体のGPH-103はメチルエチルケトンに溶解して、50質量%溶液として樹脂組成物の作製に使用した。
【0083】
<硬化促進剤>
硬化促進剤には、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、富士フィルム和光純薬(株)製)を使用した。
【0084】
<フェノキシ樹脂>
フェノキシ樹脂には、YX6954BH30(三菱ケミカル(株)製ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂、重量平均分子量40670、不揮発分30質量%のシクロヘキサノン/メチルエチルケトン(1/1)溶液)を使用した。
【0085】
<フィラーの平均粒径と最大粒径の測定>
窒化アルミニウムフィラーまたはアルミナフィラーを、窒化アルミニウムフィラーの場合はエタノールに、アルミナフィラーの場合は水に、濃度0.2質量%で分散し、200W程度の超音波照射を2分間行うことにより分散させた試料について、レーザー回折散乱型粒度分布計(マイクロトラック・ベル(株)製:MICROTRACK-MT3300EXII)を用いて粒度分布を測定した。得られた粒径の体積頻度分布(粒度分布)において、粒径が小さい方から体積頻度を累積して、累積値が50%となる粒径D50を平均粒径、計測された粒径の最大値Dmaxを最大粒径とした。
【0086】
<フィラーの比表面積の測定>
窒化アルミニウムフィラーおよびアルミナフィラーの比表面積は、流動式比表面積自動測定装置((株)島津製作所製:フローソーブII-2300型)を用いて、BET法(窒素吸着1点法)により求めた。測定には粉末試料を2g使用し、予め窒素ガスフロー中、100℃で乾燥処理を1時間実施したもの用いた。
【0087】
<最低溶融粘度の測定>
実施例および比較例で作製した樹脂組成物フィルムを支持体のポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がし取り、粘弾性測定装置(回転型レオメータ)(Anton Paar社製:MCR302e)を用いて溶融粘度を測定した。ジオメトリには直径10mmのパラレルプレートを使用して、ギャップ1mm、温度範囲60℃から180℃までを周波数1Hz、ひずみ10%で動的粘弾性を測定し、90~140℃の範囲における複素粘度の最小値を最低溶融粘度とした。
【0088】
<線膨張係数の測定>
実施例および比較例で作製した樹脂組成物フィルムを、幅5mmの短冊状に切り出して180℃で90分間加熱処理して熱硬化させた。得られた硬化物について、熱機械分析装置(NETZSCH社製:TMA4000SE)を用いて引張加重法で、サンプル長(チャック間)20mm、荷重1g、30℃から220℃までを昇温速度5℃/分で、2回連続測定した。2回目の測定結果における、30℃からガラス転移温度(TMA曲線の傾きが変化する温度)までの線膨張率変化の傾きより線膨張係数を算出した。
【0089】
<熱伝導率の測定>
実施例および比較例で作製した樹脂組成物フィルムを、180℃で90分間加熱処理して熱硬化させた。得られた硬化物の熱伝導率(W/m・K)は、熱拡散率(m/秒)×密度(kg/m)×比熱(J/kg・K)で求めた。なお、熱拡散率は温度波熱分析法((株)アイフェイズ製:ai-Phase Mobile 1u、ISO22007-3)により測定した。同一試験片について、12回測定を行って平均値を採用した。また、密度はアルキメデス法(メトラー・トレド社製:XS204V)、比熱は示差走査熱量計(DSC)法((株)リガク製:Thermo Plus Evo DSC8230)を使用して測定した。
【0090】
<相対密度の測定>
硬化物の相対密度は、上記で測定した密度の実測値と計算により求めた理論値との比、実測値/理論値で算出した。ここで密度の理論値は、窒化アルミニウムフィラー、アルミナフィラー、フィラー成分を除いた残りの成分の密度をそれぞれ、3.26g/m、3.98g/m、1.17g/mとして、各成分の配合割合より計算により求めた。
【0091】
〔実施例1〕
(A-2)液体エポキシ樹脂jER828を50質量部、硬化剤HPC-8000-65Tを135質量部(不揮発分として87.8質量部)、フェノキシ樹脂YL6954BH30を33質量部(不揮発分として9.9質量部)、硬化促進剤DMAPを0.8質量部、(C)アルミナフィラーAA-03Fを430質量部、これらを撹拌混合した。そこへ、(A-1)固体エポキシ樹脂NC3000を不揮発分として50質量部(調整したメチルエチルケトン溶液として100質量部)と、(B)窒化アルミニウムフィラーB-1を740質量部、メチルエチルケトン300質量部を加えてホモディスパーを用いて30分間撹拌した後、3本ロールを用いて混練した。さらに、メチルエチルケトンを適宜追配して粘度を調節した後、ろ過、脱泡して樹脂組成物のワニスを調整した。
次いで、上記で得た樹脂組成物ワニスを、支持体(離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(東山フィルム(株)製、HY-NS80、厚み38μm))の離型処理面に、乾燥後の厚みが80μmとなるように均一に塗布し、80℃で3分間乾燥させて樹脂組成物フィルム(Bステージ)を作製した。
樹脂組成物フィルムの組成と評価結果を表1に示す。
【0092】
〔実施例2~19、比較例1~8〕
表1、2に示すとおりに樹脂組成物フィルムの組成を変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを製造した。樹脂組成物フィルムの組成と評価結果を表1、2に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
窒化アルミニウムフィラーとアルミナフィラーを組み合わせて使用した実施例1~19の樹脂組成物においては、フィラーの充填性と分散性が良好で、フィルムの溶融粘度と線膨張係数が低く、熱伝導率、相対密度が高くなることを確認した。特に、窒化アルミニウムフィラーとアルミナフィラーの総表面積の比S2/S1を0.5~2.2の範囲とした実施例1~4、6、8、10、12~19では、高い熱伝導率の樹脂組成物フィルムが得られている。
【0096】
窒化アルミニウムフィラーとアルミナフィラーの合計量が多すぎると(比較例2)、フィラーの充填性が低下するために溶融粘度が増大して相対密度も低下する。その結果、熱伝導率も逆に低下に転じる。また、フィラーの合計量が少なすぎると(比較例1)、溶融粘度は低くなるものの、熱伝導率は不足し、線膨張係数も大きくなる。アルミナフィラーを配合せず、窒化アルミニウムフィラーのみを使用した場合には(比較例3~6)、フィラーの充填性が悪くなることで溶融粘度が高くなり、相対密度と熱伝導率も低くなる。最大粒径Dmaxの大きい窒化アルミニウムフィラーの場合には(比較例3,5,7)、溶融粘度が高くなる。アルミナフィラーの平均粒径が大きい場合(比較例8)、溶融粘度が高くなり、熱伝導率も低くなる。