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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016384
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/008 20060101AFI20240131BHJP
   H01G 9/055 20060101ALI20240131BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01G9/008 303
H01G9/055 100
H01G9/00 290Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118452
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 理帆グミラール
(72)【発明者】
【氏名】大道 秀之
(72)【発明者】
【氏名】末松 俊造
(57)【要約】
【課題】 本開示は、たとえばカーボン層を含む陰極箔に適したステッチ接続構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 陰極箔(6)は、基材箔(12)と、該基材箔上に形成されたカーボン層(14)とを含む。引き出し端子(4)は、端子部(18)と前記端子部から伸びる端子片(20)とを含み、前記端子部および前記端子片の間に前記陰極箔を挟むことによりステッチ接続部(10)で前記陰極箔に接続される。前記引出し端子は、金属表面部(28)と該金属表面部よりも硬い硬化表面部(30)とを有し、前記金属表面部は、前記ステッチ接続部の第一領域(36)で前記基材箔と接触し、前記硬化表面部は、前記ステッチ接続部の第二領域(38)で前記カーボン層に積層する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材箔と、該基材箔上に形成されたカーボン層とを含む陰極箔と、
端子部と、前記端子部から伸びる端子片とを含み、前記端子部および前記端子片の間に前記陰極箔を挟むことによりステッチ接続部で前記陰極箔に接続される引出し端子と
を備え、
前記引出し端子は、金属表面部と該金属表面部よりも硬い硬化表面部とを有し、
前記金属表面部は、前記ステッチ接続部の第一領域で前記基材箔と接触し、
前記硬化表面部は、前記ステッチ接続部の第二領域で前記カーボン層に積層することを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記陰極箔は、前記端子片に接触する箔片を含むことを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記ステッチ接続部に非折り重ねの前記陰極箔が配置されることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記カーボン層は、前記基材箔上に塗布され押圧されたカーボンを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記第一領域および前記第二領域は、前記端子片が前記陰極箔に接触する第一接触部および前記端子部が前記陰極箔に接触する第二接触部の両方に形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項6】
基材箔と、該基材箔上に形成されたカーボン層とを含む陰極箔に、端子部を含み硬化表面部を有する引出し端子を配置する工程と、
ステッチ針を前記引出し端子側から前記引出し端子に突き刺して、前記端子部から伸びる端子片を形成する工程と、
前記端子片を前記陰極箔に押圧し、前記端子部および前記端子片の間に前記陰極箔を挟むことによりステッチ接続部で前記引出し端子を前記陰極箔に接続する工程と
を備え、
前記引出し端子を作製する工程、前記端子片を形成する工程、および前記引出し端子を前記陰極箔に接続する工程の一工程または複数工程において、前記引出し端子に金属表面部を形成し、前記硬化表面部は前記金属表面部よりも硬く、
前記引出し端子を前記陰極箔に接続する工程において、前記金属表面部は、前記ステッチ接続部の第一領域で前記基材箔と接触し、前記硬化表面部は、前記ステッチ接続部の第二領域で前記カーボン層に積層することを特徴とするコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カーボン層を含む陰極箔を備えるコンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサは、陽極箔と、陰極箔と、陽極箔および陰極箔の間に配置されたセパレータとを含み、電気を蓄えることが可能である。このようなコンデンサに関し、アルミニウム箔のみからなる陰極箔を含む基本的なコンデンサが知られている。また、近年、アルミニウム箔とアルミニウム箔上に形成されたカーボン層を含む陰極箔を備えるコンデンサが知られている(たとえば、特許文献1)。カーボン層は、たとえば陰極箔の静電容量を高めるという作用を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-80111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
陽極箔、陰極箔などの電極箔は、ステッチ接続などの接続手段で引出し端子に接続される。ステッチ接続を形成するためのステッチ接続処理では、互いに重ねられた引出し端子および電極箔に引出し端子側からステッチ針が挿通され、引出し端子に端子孔および端子片が形成され、電極箔に貫通孔および箔片が形成される。端子片は、電極箔の貫通孔を通って電極箔の背面から突出する。端子片および箔片は押圧されて、電極箔の背面に重ねられる。その結果、ステッチ接続が形成され、電極箔が引出し端子に接続される。
【0005】
ところで、カーボン層は、アルミニウム箔などの金属箔およびその酸化物(つまり酸化皮膜)よりも低い静止摩擦係数を有し、カーボン層を含む陰極箔は、金属箔または酸化された金属箔のみからなる陰極箔よりも滑り易い。そのため、端子片を陰極箔に接続する際、より詳細には、端子片および箔片が陰極箔を押圧する際、箔片が根本部分から箔片の先端方向に移動する。そのため、端子片および箔片の押圧力が押圧方向および箔片の移動方向に分散されるため、カーボン層を含む陰極箔では、金属箔または酸化された金属箔のみからなる陰極箔よりも端子片を陰極箔に押し当てるための押圧力が減少する。押圧力の減少のため、端子片により陰極箔が固定しづらいという課題がある。
【0006】
また、端子片に対するカーボン層の接続力は、端子片に対する金属箔または酸化された金属箔の接続力に比べて電気的および物理的に低いという課題がある。
【0007】
そこで、本開示は、たとえばカーボン層を含む陰極箔に適したステッチ接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の側面によれば、コンデンサは陰極箔と引出し端子とを備える。陰極箔は、基材箔と、該基材箔上に形成されたカーボン層とを含む。引出し端子は、端子部と、前記端子部から伸びる端子片とを含み、前記端子部および前記端子片の間に前記陰極箔を挟むことによりステッチ接続部で前記陰極箔に接続される。前記引出し端子は、金属表面部と該金属表面部よりも硬い硬化表面部とを有し、前記金属表面部は、前記ステッチ接続部の第一領域で前記基材箔と接触し、前記硬化表面部は、前記ステッチ接続部の第二領域で前記カーボン層に積層する。
【0009】
上記コンデンサにおいて、前記陰極箔は、前記端子片に接触する箔片を含んでもよい。
【0010】
上記コンデンサにおいて、前記ステッチ接続部に非折り重ねの前記陰極箔が配置されてもよい。
【0011】
上記コンデンサにおいて、前記カーボン層は、前記基材箔上に塗布され押圧されたカーボンを含んでもよい。
【0012】
上記コンデンサにおいて、前記第一領域および前記第二領域は、前記端子片が前記陰極箔に接触する第一接触部および前記端子部が前記陰極箔に接触する第二接触部の両方に形成されてもよい。
【0013】
上記目的を達成するため、本開示の第2の側面によれば、コンデンサの製造方法は、基材箔と、該基材箔上に形成されたカーボン層とを含む陰極箔に、端子部を含み硬化表面部を有する引出し端子を配置する工程と、ステッチ針を前記引出し端子側から前記引出し端子に突き刺して、前記端子部から伸びる端子片を形成する工程と、前記端子片を前記陰極箔に押圧し、前記端子部および前記端子片の間に前記陰極箔を挟むことによりステッチ接続部で前記引出し端子を前記陰極箔に接続する工程とを備え、前記引出し端子を作製する工程、前記端子片を形成する工程、および前記引出し端子を前記陰極箔に接続する工程の一工程または複数工程において、前記引出し端子に金属表面部を形成し、前記硬化表面部は前記金属表面部よりも硬く、前記引出し端子を前記陰極箔に接続する工程において、前記金属表面部は、前記ステッチ接続部の第一領域で前記基材箔と接触し、前記硬化表面部は、前記ステッチ接続部の第二領域で前記カーボン層に積層する。
【発明の効果】
【0014】
本開示の上記側面によれば、たとえば次のいずれかの効果が得られる。
【0015】
(1) 引出し端子の金属表面部が陰極箔の基材箔と接触するので、陰極箔に対する引出し端子の接続が、金属系材料同士の接触により物理的および電気的に安定する。
【0016】
(2) 引出し端子の硬化表面部が陰極箔のカーボン層に食込み、引出し端子に対する陰極箔の滑りまたは相対移動が抑制される。押圧力の減少が抑制され、引出し端子と陰極箔の接続の容易性を高めることができる。
【0017】
(3) 引出し端子の接続時に、金属表面部が伸長または伸展する。硬化表面部により陰極箔の滑りまたは相対移動が抑制されるので、金属表面部に接触している陰極箔の部分が伸長または伸展して基材箔を表出させ、金属表面部を基材箔に接触させることができる。つまり、引出し端子表面の硬さの差を利用して、金属表面部が基材箔に接触する第一領域を形成することができる。
【0018】
(4) 陰極箔の性質に適したステッチ接続を実現できる。
【0019】
(5) カーボン層を含む陰極箔を備えるコンデンサの安定性または信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施の形態に係るコンデンサの端子接続部の一例を示す図である。
図2】陰極箔の端面の一例を示す図である。
図3】引き離された端子片および陰極箔を示す図である。
図4】引出し端子および陰極箔の接触面を説明するための図である。
図5】電極箔への引出し端子の接続工程の一例を示す図である。
図6】陰極箔への引出し端子の接続を説明するための図である。
図7】第2の実施の形態に係るコンデンサの端子接続部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、第1の実施の形態に係るコンデンサの端子接続部の一例を示している。図2は、陰極箔の端面の一例を示している。図1および図2に示す構成は一例であって、斯かる構成に本開示の技術が限定されるものではない。端子接続部は、ステッチ接続により引出し端子4が陰極箔6に接続されている接続場所、つまりステッチ接続部10とその周囲部分を含むものとする。ステッチ接続部10は、端子片20が少なくとも端子部18および陰極箔6に重ねられている領域であって、図1のAにおいて網掛けが付されている部分である。図1のBは、図1のAのIB-IB線断面を示し、図1のCは、図1のBに示されているIC部の拡大断面を示す。
【0022】
コンデンサ2は電子部品の一例であり、たとえば電解コンデンサである。コンデンサ2は、たとえばコンデンサ素子と、引出し端子4と、電解質と、絶縁性ゴムなどの封口部材と、アルミニウムケースなどの外装ケースとを含む。電解質が充填されたコンデンサ素子および引出し端子4の一部が外装ケースの内部に挿入され、封口部材が外装ケースの開口部に設置される。引出し端子4は、封口部材を貫通し、封口部材から突出する。
【0023】
コンデンサ素子は、陰極箔6と、陽極箔と、セパレータとを含む。セパレータが陰極箔6と陽極箔の間に配置されるように、陰極箔6、陽極箔およびセパレータは重ねられるとともに巻回されて、巻回素子が形成される。この巻回素子がコンデンサ素子を形成する。
【0024】
陰極箔6は、コンデンサ2の陰極を構成する。陰極箔6は、たとえば帯状の箔であって、基材箔12とカーボン層14とを含む。基材箔12は、たとえば、アルミニウム箔、タンタル箔、ニオブ箔、チタン箔、ハフニウム箔、ジルコニウム箔、亜鉛箔、タングステン箔、ビスマス箔、アンチモン箔などの弁作用金属箔である。基材箔12の表面は、図2に示されているように、たとえばエッチングにより形成された凹凸16を有し、基材箔12の表面積が拡大されている。基材箔12の表面は、たとえばトンネル状または海綿状のエッチングピットを含んでもよく、このトンネル状または海綿状のエッチングピットが凹凸16を形成してもよい。
【0025】
カーボン層14は、たとえば基材箔12の両面に配置されている。カーボン層14は、基材箔12の一面にのみ配置されてもよい。カーボン層14は、図2に示されているように部分的に凹凸16の内部に侵入し、そのため基材箔12の凹凸16に密着かつ係合している。つまり、カーボン層14は凹凸16に係合する表面形状を有する。カーボン層14は基材箔12の外側に配置され、陰極箔6は基材箔12およびカーボン層14による二層構造または基材箔12の両面にカーボン層14を配置した三層構造を有している。カーボン層14は、主材として炭素材を含み、更に、添加剤としてバインダーおよび分散剤を含む。
【0026】
炭素材は、活性炭、カーボンブラック、カーボンナノホーン、無定形炭素、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化ケッチェンブラック、メソポーラス炭素、繊維状炭素などである。活性炭は、たとえば、やしがらなどの天然植物組織、フェノールなどの合成樹脂、石炭、コークスまたはピッチなどの化石燃料由来のものを原料として生成される。カーボンブラックは、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックまたはサーマルブラックなどである。繊維状炭素は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバなどである。カーボンナノチューブは、グラフェンシートが1層である単層カーボンナノチューブでも、2層以上のグラフェンシートが同軸状に丸まり、チューブ壁が多層をなす多層カーボンナノチューブ(MWCNT)でもよい。
【0027】
炭素材は、球状炭素であるカーボンブラックが好ましい。一次粒子径が平均100ナノメートル以下である球状のカーボンブラックを用いることにより、カーボン層14は密になる。また、陰極箔6の表面にエッチングにより形成された凹凸16の開口径よりも小さな粒子径のカーボンブラックを用いることにより、カーボンブラックが凹凸16の深部に入り込みやすく、カーボン層14は陰極箔6の基材箔12と密着し、カーボン層14と基材箔12との界面抵抗は下がり易くなる。炭素材は、球状炭素と黒鉛とを含む混合物が好ましい。黒鉛は、たとえば天然黒鉛、人造黒鉛、または黒鉛化ケッチェンブラックなどであり、鱗片状、鱗状、塊状、土状、球状または薄片状などの形状を有する。黒鉛は、鱗片状または薄片状であることが好ましく、黒鉛の短径と長径とのアスペクト比が1:5~1:100の範囲であることが好ましい。既述のアスペクト比を有する鱗片状または薄片状の黒鉛は、たとえばエッチングピットなどの凹凸16に球状カーボンを押し込み、カーボン層14の一部がエッチングピットの内部にまで形成できる。そのため、アンカー効果により、カーボン層14が強固に基材箔12に密着できる。
【0028】
炭素材が黒鉛と球状炭素の混合物である場合において、黒鉛と球状炭素の併用による作用を得るため、黒鉛と球状炭素の混合物に対する黒鉛の質量比〔黒鉛の質量/(黒鉛の質量+球状炭素の質量)〕は、たとえば25%以上90%以下の範囲である。
【0029】
バインダーは、たとえばスチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデンまたはポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂系バインダーであって、炭素材を結合させる。分散剤は、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0030】
陽極箔は、コンデンサ2の陽極を構成する。陽極箔は、たとえば既述の弁作用金属箔であって、帯状の箔である。陽極箔の表面には多孔質構造を有する拡面部が形成されている。多孔質構造は、たとえば、エッチングにより形成されたトンネル状のピット、海綿状のピット、または密集した紛体間の空隙により成る。拡面部の表面は、化成処理により形成された誘電体酸化皮膜を含んでいる。陽極箔は、陽極側の引出し端子にステッチ接続または他の接続手段により接続される。
【0031】
セパレータは、陽極箔と陰極箔6の間に配置され、陽極箔と陰極箔6の間の短絡を防止する。セパレータは、絶縁材料であって、セパレータ部材としてクラフトを含み、マニラ麻、エスパルト、ヘンプ、レーヨン、セルロース、これらの混合材などの他のセパレータ部材を含んでもよい。
【0032】
引出し端子4は、たとえばアルミニウムなどの導電性金属で形成されている。引出し端子4は、たとえば、リード線と端子部18と端子片20とを含むリード端子である。リード線はたとえばアーク溶接で端子部18に接続されている。端子部18は、陰極箔6に重ねられており、平坦部と、平坦部に形成された端子孔22とを含む。端子片20は、端子部18の端子孔22の縁部から伸び、陰極箔6の反対面に回り込み、陰極箔6の反対面に圧接される。
【0033】
引出し端子4は、端子部18および端子片20の間に陰極箔6を挟むことによりステッチ接続部10で陰極箔6に接続される。ステッチ接続部10において、引出し端子4の端子片20の接触面24(図3)が陰極箔6の接触面26(図3)に接触し、引出し端子4の端子部18の接触面が陰極箔6の他の接触面に接触する。
【0034】
図4のAは、引出し端子の接触面を説明するための図であり、図3において「IVA」が付された矢印の向きにおける接触面24を示している。図4のBは、陰極箔の接触面を説明するための図であり、図3において「IVB」が付された矢印の向きにおける接触面26を示している。図4のAおよび図4のBは、接触面24、26のイメージまたは概要を表す図であり、図4のAおよび図4のBで表されているイメージまたは概要により本開示の技術が限定されるものではない。接触面24、26は、図3に示されているように、たとえば端子片20を陰極箔6および端子部18から引き離すことによって露出させることができる。
【0035】
引出し端子4は、接触面24に金属表面部28と硬化表面部30とを有する。金属表面部28は、引出し端子4に含まれる非酸化の導電性金属を主に含み、引出し端子4に含まれる導電性金属の酸化物をわずかに含んでいてもよい。金属表面部28における酸化物の割合は、金属表面部28が非酸化の導電性金属と同じまたはほぼ同じ性質を有するように、抑制されている。金属表面部28は、金属表面部28-1を含んでもよく、金属表面部28-2を含んでもよい。金属表面部28-1は、わずかに離間している硬化表面部30の間に形成され、細長い表面形状を有する。金属表面部28-2は、硬化表面部30の面密度が低い領域に形成され、シート状の表面形状を有する。金属表面部28は、直接視認できないものの光学顕微鏡または電子顕微鏡により確認可能な大きさを有していてもよい。金属表面部28は、たとえば金属光沢により硬化表面部30と区別できる。
【0036】
硬化表面部30は、金属表面部28よりも硬く、たとえば引出し端子4に含まれる導電性金属の酸化物を含む酸化表面部である。酸化表面部は、たとえば引出し端子4からの漏れ電流を抑制するため引出し端子4の表面に形成され、引出し端子4に含まれる導電性金属の酸化物と同じまたはほぼ同じ性質を有する。硬化表面部30は、接触面24において、たとえば斑点(つまり表面にまばらに分散している点)またはストライプ状に存在している点を形成する。硬化表面部30は、片寄って散らばっていてもよく、一様に配置されていてもよい。硬化表面部30は、硬化表面部30の形成時において、部分的に形成されてもよく、ステッチ接続処理時の引出し端子4の変形により断裂させて、硬化表面部30-1、30-2を形成してもよい。硬化表面部30-1、30-2が離間すると、引出し端子4の導電性金属、つまり地金が硬化表面部30-1、30-2の間に表出して、たとえば金属表面部28-1が形成される。硬化表面部30は、たとえば金属表面部28よりも突出している。硬化表面部30は、部分的に金属表面部28よりも突出していなくてもよい。
【0037】
金属表面部28および硬化表面部30の性質は、たとえば以下のように表される。
(1) 硬化表面部30は金属表面部28よりも硬い。
(2) 金属表面部28は硬化表面部30よりも変形性が高い。
(3) 金属表面部28は硬化表面部30よりも他の金属、特に非酸化金属との機械的および電気的な接続力が高い。
【0038】
陰極箔6の接触面26では、カーボン層14がたとえば斑点を形成する。カーボン層14は、片寄って散らばっていてもよい。カーボン層14が確認されない領域では、たとえば基材箔12が表出している。カーボン層14の一部は、接触面24上の硬化表面部30の一部と位置および形状が類似する。したがって、このようなカーボン層14は、硬化表面部30の押し付けにより形成されたと考えられる。つまり、ステッチ接続部10では、図1のCに示すように、金属表面部28が基材箔12に接触して第一領域36が形成され、硬化表面部30がカーボン層14に積層して第二領域38が形成されている。第一領域36では、金属と金属の接触、圧接または圧着により、電気的および物理的に安定した接続が得られる。第二領域38では、カーボン層14への硬い硬化表面部30の食込みにより、端子片20に対する陰極箔6の滑りまたは相対移動が抑制される。第一領域36および第二領域38の所在は、接触面24における金属表面部28または硬化表面部30の位置と、接触面26における基材箔12またはカーボン層14の位置との比較により確認できる。
【0039】
ステッチ接続部10には、第一領域36および第二領域38以外の領域が形成されてもよい。たとえば、金属表面部28の一部はカーボン層14に接触してもよく、硬化表面部30の一部は基材箔12に接触してもよい。
【0040】
カーボン層14は、たとえばステッチ接続処理時の陰極箔6の変形により伸長、伸展、断裂または離間する。カーボン層14の伸長または伸展により、ステッチ接続処理前のカーボン層14よりも薄いカーボン層が形成されてもよい。
【0041】
カーボン層14の断裂または離間により陰極箔6の基材箔12、つまり地金が表出してもよい。表出した基材箔12は、表出部13を含んでもよい。表出部13は、図4のBに示すように、わずかに離間しているカーボン層14の間に形成され、細長い表面形状を有する。表出した基材箔12は、直接視認できないものの光学顕微鏡または電子顕微鏡により確認可能な大きさを有していてもよい。カーボン層14は黒色などの色彩により基材箔12と区別できる。
【0042】
電解質は、電解液、ゲル電解質、導電性高分子を含む固体電解質などである。電解質が電解液またはゲル電解質と、導電性高分子を含む固体電解質とを備えて所謂ハイブリッド型の電解コンデンサが形成されてもよい。
【0043】
電解コンデンサの電解液では、溶媒に溶質が溶解されており、必要に応じて添加剤が添加されている。溶媒はプロトン性の極性溶媒または非プロトン性の極性溶媒の何れでもよい。プロトン性の極性溶媒は、たとえば、一価アルコール類、多価アルコール類、オキシアルコール化合物類、水などである。非プロトン性の極性溶媒は、たとえば、スルホン系、アミド系、ラクトン類、環状アミド系、ニトリル系、オキシド系などである。溶質は、アニオンおよびカチオンの成分を含み、典型的には、有機酸若しくはその塩、無機酸若しくはその塩、または有機酸と無機酸との複合化合物若しくはそのイオン解離性のある塩であり、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。アニオンとなる酸およびカチオンとなる塩基が溶質成分として別々に電解液に添加されてもよい。
【0044】
固体電解質を用いる場合は、たとえば、導電性ポリマーが電解質層に含有される。導電性ポリマーは共役系高分子またはドーピングされた共役系高分子である。共役系高分子は、公知の共役系高分子を特に限定なく使用することができる。共役系高分子は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレンなどであり、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などが好ましい。共役系高分子は、単独で用いられてもよく、2種類以上を組み合わせても良く、または、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。
【0045】
図5は、コンデンサの製造工程のうち、電極箔への引出し端子の接続工程の一例を示している。図6は、陰極箔への引出し端子の接続を説明するための図である。図5に示す構成は一例であり、図6は、陰極箔6への引出し端子4の接続のイメージまたは概要を表す図であり、図5に示されている構成および図6で表されているイメージまたは概要により本開示の技術が限定されるものではない。
【0046】
コンデンサ2の製造工程は、本開示のコンデンサの製造方法の一例であって、たとえば陽極箔の作製工程、陰極箔6の作製工程、セパレータの作製工程、引出し端子4の作製工程、電極箔への引出し端子4の接続工程、コンデンサ素子の作製工程、コンデンサ素子の封入工程を含む。
【0047】
陽極箔の作製工程では、たとえば、既述の弁作用金属箔の表面に多孔質構造を有する拡面部を形成し、拡面部が形成された弁作用金属箔の表面に化成処理により誘電体酸化皮膜を形成する。拡面部は、直流エッチング、交流エッチング、または弁作用金属箔への金属粒子などの蒸着もしくは焼結により形成される。直流エッチングまたは交流エッチングでは、典型的には、塩酸などのハロゲンイオンを含む酸性水溶液中に漬けられた弁作用金属箔に直流電流または交流電流が印加される。誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属箔を裁断して、陽極箔が作製される。
【0048】
陰極箔6の作製工程では、たとえば、エッチングにより既述の弁作用金属箔の表面に凹凸16を形成して、基材箔12が作製される。陰極箔6のエッチングは、陽極箔のエッチングと同じでもよく、異なっていてもよい。基材箔12にカーボン層14を形成し、カーボン層14が形成された基材箔12を裁断して、陰極箔6が作製される。
【0049】
カーボン層14は次のように作製される。既述の炭素材、バインダーおよび分散剤を希釈液に加え、ミキサー、ジェットミキシング(噴流衝合)、超遠心処理、超音波処理などの分散処理によりこれらを混合して、スラリーを形成する。希釈液は、たとえばアルコール、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、アミド系溶媒、水およびこれらの混合物などである。アルコールは、たとえばメタノール、エタノールまたは2-プロパノールである。アミド系溶媒は、たとえばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。
【0050】
スラリーを基材箔12に塗布し、溶媒を揮発させてカーボン層14を形成し、カーボン層14をプレスする。プレスは、たとえば炭素材を凹凸16の細孔にまで押し込むことができ、炭素材を凹凸16の凹凸面に沿って変形させることができ、たとえばカーボン層14と基材箔12との密着性および定着性を向上させる。炭素材が黒鉛を含む場合、プレスは、黒鉛を整列させるとともに、黒鉛を基材箔12の凹凸16に沿うように変形させる。プレスは、黒鉛が凹凸16に圧接されるときに球状炭素を凹凸16の内部に押し込み、スラリーを基材箔12に密着させ、その結果、カーボン層14を基材箔12に密着させる。炭素材が球状炭素のみの場合、たとえば一次粒子径が平均100ナノメートル以下である球状炭素が凹凸16に入り込み、カーボン層14と基材箔12との界面抵抗が低減できる。また、炭素材が球状炭素のみの場合、カーボン層14の表面の静止摩擦係数が向上し、端子片20を陰極箔6に押圧した際に滑りにくくなり、接続性が安定したステッチ接続が得られる。
【0051】
セパレータの作製工程では、既述のセパレータ部材を裁断して、セパレータが作製される。
【0052】
引出し端子4の作製工程では、既述の導電性金属をたとえばプレスして、端子部18を作製する。リード線をアーク溶接などにより端子部18に接続する。化成処理により酸化皮膜を端子部18に形成して、ステッチ接続前の引出し端子4を作製する。
【0053】
電極箔への引出し端子4の接続工程では、引出し端子4を陰極箔6および陽極箔にそれぞれ接続する。
【0054】
図5のAに示すように、ステッチ接続前の陰極箔6が下型などの第1の型42の上に設置され、ステッチ接続前の引出し端子4(具体的には端子部18)が陰極箔6の上面、つまり端子配置面に重ねられる。上型などの第2の型44が引出し端子4の上面に設置される。そのため、陰極箔6および引出し端子4が第1の型42および第2の型44の間に挟まれて、第1の型42および第2の型44により保持される。
【0055】
第1の型42は透孔50を有し、第2の型44は透孔52を有している。透孔52は透孔50よりも小さく、透孔50の真上に配置されている。ステッチ針46はたとえば円柱状の軸部に鋭角、且つ角錐形の先端部を有し、透孔52の上に配置される。
【0056】
ステッチ針46を図5のAに示されているブロック矢印の向きに下降させ、図5のBに示すように、ステッチ針46が引出し端子4および陰極箔6に引出し端子4側から挿通される。ステッチ針46の挿通により、貫通孔32および箔片34が陰極箔6に形成され、端子孔22および端子片20が引出し端子4に形成される。下降されたステッチ針46を上昇させて、ステッチ針46を引出し端子4および陰極箔6から抜き去る。
【0057】
成形型48は、たとえば平坦な押し当て面を上側に有し、透孔50の下側に配置される。成形型48を図5のBに示されているブロック矢印の向きに上昇させ、押し当て面が引出し端子4および陰極箔6、特に端子片20および箔片34を陰極箔6側から押圧する。図5のCに示されるように、端子片20および箔片34は第2の型44と成形型48の間に挟まれる。端子片20および箔片34が押圧により折返されて、引出し端子4が陰極箔6に接続される。
【0058】
図6のAに示されているように、押圧前において、引出し端子4の端子片20は、表面に、たとえば金属表面部28および硬化表面部30を有し、陰極箔6(具体的には箔片34)は、基材箔12を覆うカーボン層14を有する。端子片20は、表面に硬化表面部30のみを有してもよく、陰極箔6は、表面に部分的にカーボン層14を有していてもよい。
【0059】
図6のBにおけるブロック矢印の方向に端子片20が陰極箔6に押圧されると、押圧力は、引出し端子4および陰極箔6において、破線矢印の方向の張力を発生させる。硬い硬化表面部30は、たとえばカーボン層14に食い込み、図6のCに示すように第二領域38が形成される。第二領域38では、端子片20および陰極箔6の間の滑りまたは相対移動が、たとえばスパイク効果により抑制される。張力は、引出し端子4および陰極箔6を接触面24、26に沿って伸長または伸展する。端子片20では、硬化表面部30よりも高い変形性を有するたとえば金属表面部28が伸長または伸展し、陰極箔6では、たとえば金属表面部28に接触している部分が金属表面部28の伸長または伸展に応じて伸長または伸展する。陰極箔6の伸長または伸展は、たとえばカーボン層14を断裂および離間させ、基材箔12が断裂したカーボン層14の間に表出する。金属表面部28が表出した基材箔12に接触して、図6のCに示すように第一領域36が形成される。
【0060】
硬化表面部30に重なっているカーボン層14が断裂および離間すると、たとえば硬化表面部30がカーボン層14の断裂および離間に応じて断裂および離間して、硬化表面部30-1、30-2および金属表面部28-1が形成されてもよい。硬化表面部30-1、30-2はたとえばカーボン層14に積層して第二領域38が形成され、金属表面部28-1は、断裂したカーボン層14の間のたとえば表出部13に接触して第一領域36が形成される。
【0061】
図6のCに示されているように、金属表面部28がカーボン層14に接触して、第三領域58が形成されてもよい。硬化表面部30に重なっているカーボン層14が断裂および離間すると、硬化表面部30が、断裂したカーボン層14の間に表出した表出部13に接触して、第四領域60が形成されてもよい。
【0062】
陽極箔への引出し端子4の接続工程は、陰極箔6への引出し端子4の接続工程と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0063】
コンデンサ素子の作製工程では、第1のセパレータを陽極箔および陰極箔6の間に配置するとともに第2のセパレータを陽極箔または陰極箔6の外側に配置する。陽極箔、陰極箔6、第1および第2のセパレータを巻回して、コンデンサ素子が作製される。
【0064】
コンデンサ素子の封入工程では、電解液などの電解質が含浸されたコンデンサ素子が外装ケースの内部に挿入され、その後外装ケースの開口部に封口部材が取り付けられて、コンデンサ2が作製される。
【0065】
第1の実施の形態によれば、たとえば以下の効果が得られる。
【0066】
(1) 引出し端子4の金属表面部28が陰極箔6の基材箔12と接触する。陰極箔6に対する引出し端子4の接続が、金属系材料同士の接触により物理的および電気的に安定する。
【0067】
(2) 金属表面部28よりも硬い硬化表面部30がカーボン層14に食込み、引出し端子4に対する陰極箔6の滑りまたは相対移動が抑制される。押圧力の減少が抑制され、引出し端子4と陰極箔6の接続の容易性を高めることができる。
【0068】
(3) 引出し端子4の接続時に、金属表面部28が伸長または伸展する。硬化表面部30により陰極箔6の滑りまたは相対移動が抑制されるので、金属表面部28に接触している陰極箔6の部分が伸長または伸展して基材箔12を表出させ、金属表面部28を基材箔12に接触させることができる。
【0069】
(4) カーボン層14を含む陰極箔6の性質に適したステッチ接続を実現でき、カーボン層14を含む陰極箔6を備えるコンデンサ2の安定性または信頼性を高めることができる。
【0070】
(5) ステッチ接続部10では、箔片34が陰極箔6に折り重ねられている。つまり、カーボン層14同士が重なり、陰極箔6が滑り易くなる。また、カーボン層14の形成過程において、カーボンが押圧されているので、カーボン層14の表面粗さが小さくなり、陰極箔6が滑り易くなる。このような滑り易い陰極箔6に対して、硬化表面部30の食込みは有効に作用できる。

第2の実施の形態
【0071】
図7は、第2の実施の形態に係るコンデンサの端子接続部の一例を示している。図7において図1と同一部分には同一符号を付してある。図7に示す構成は一例であって、斯かる構成に本開示の技術が限定されるものではない。
【0072】
第1の実施の形態に係るコンデンサ2では、陰極箔6が箔片34を含み、この箔片34が端子片20に接触している。陰極箔6がステッチ接続部10で折り重ねられている。第2の実施の形態に係るコンデンサ72では、図7に示すように、陰極箔6が箔片34を含まず、非折り重ねの陰極箔6がステッチ接続部10に配置される。コンデンサ72では、一層の陰極箔6が端子部18と端子片20の間に挟まれている。箔片34を含まないことを除き、コンデンサ72は、コンデンサ2と同様であり、その説明を割愛する。
【0073】
コンデンサ72の製造工程は、陰極箔6の作製工程および電極箔への引出し端子4の接続工程を除き、第1の実施の形態で述べたコンデンサ2の製造工程と同様であり、同様の工程の説明を割愛する。
【0074】
陰極箔6の作製工程は、たとえば第1の実施の形態で述べた陰極箔6の作製工程を含む。第2の実施の形態における陰極箔6の作製工程では、ステッチ針46の断面形状よりも大きい形状を有する貫通孔32を予め陰極箔6に形成する。
【0075】
電極箔への引出し端子4の接続工程は、以下に示す相違点を除き、第1の実施の形態で述べた電極箔への引出し端子4の接続工程と同様であり、同様の工程の説明を割愛する。
相違点: 陰極箔6に予め形成された貫通孔32がステッチ針46の進路上に配置されるように、陰極箔6が設置される。そのため、ステッチ針46が貫通孔32の内部を通過する。箔片34が形成されず、端子片20が押圧により折返されて、非折り重ねの陰極箔6に接続される。
【0076】
第2の実施の形態によれば、たとえば以下の効果が得られる。
【0077】
(1) 第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0078】
(2) カーボン層14同士が接触せず、陰極箔6の滑りまたは相対移動を抑制することができる。押圧力の減少が一層抑制され、陰極箔6に対する引出し端子4の接続性を高めることができる。
【0079】
第1の実施の形態および第2の実施の形態の特徴事項や変形例を以下に列挙する。
【0080】
(1) コンデンサ素子、引出し端子4、外装ケース、封口部材、電解質などは第1の実施の形態で述べたものに限定されない。これらの素材は、アルミ電解コンデンサまたは類似のコンデンサで採用されている他の素材でもよい。たとえば、引出し端子4はタブ端子でもよく、封口部材は外部端子を取り付けたフェノール積層板でもよい。コンデンサ素子に電解液を含浸させた後、コンデンサ素子から導出した引出し端子4を封口部材の外部端子に接続してもよく、コンデンサ素子および封口部材を外装ケースに挿入して、封口部材で封止した構造としてもよい。コンデンサ素子は、たとえば平坦な複数の陽極箔、陰極箔6およびセパレータが積層された積層素子でもよい。カーボン層14の素材は第1の実施の形態で述べたものに限定されない。カーボン層14を形成する素材は、カーボンを含む任意の導電性部材でもよい。また、基材箔12に対するカーボン層14の密着または係合状態は、第1の実施の形態で述べたものに限定されない。
【0081】
(2) 第1の実施の形態および第2の実施の形態では、引出し端子4が陰極箔6の上に配置され、ステッチ針46が上から引出し端子4および陰極箔6を刺し、成形型48が下から引出し端子4および陰極箔6を押圧している。引出し端子4、陰極箔6、ステッチ針46および成形型48がたとえば第1の実施の形態で述べたこれらの配置に対して上下逆になるように、または任意の角度ほど回転させて配置されてもよい。
【0082】
(3) 第1の実施の形態および第2の実施の形態では、陰極箔6と引出し端子4の両方を第1の型42と第2の型44に挟んで保持した状態で、ステッチ針46を引出し端子4および陰極箔6に挿通し、端子片20を押圧して、ステッチ接続部10を形成したが、これに限らない。たとえば、陰極箔6と引出し端子4の両方を第1の型42と第2の型44に挟んで保持した状態で、ステッチ針46を引出し端子4および陰極箔6に挿通した後、第1の型42と第2の型44による保持を解除し、少なくとも端子片20が形成された状態で、陰極箔6と引出し端子4を次の工程に送り、少なくとも端子片20が形成された面側と、引出し端子4側から挟むように平坦な押し当て面を備える成形型で押圧してステッチ接続部10を形成してもよい。
【0083】
(4) 第1の実施の形態では陰極箔6が箔片34を含み、第2の実施の形態では陰極箔6が箔片34を含まない。陰極箔6は、第1の実施の形態に示されている箔片34よりも小さな箔片を含んでもよい。陰極箔6の作製工程では、ステッチ針46の断面形状よりも小さな形状を有する貫通孔32を予め陰極箔6に形成してもよく、ステッチ針46が貫通孔32の内部を通過して、小さな箔片34が形成されてもよい。箔片34が小さくなることで、陰極箔6と箔片34の積層部分の面積が、貫通孔32を形成する製造方法による引出し端子4と陰極箔6とのステッチ接続部10における陰極箔6と箔片34との積層部分の面積より小さくなり、陰極箔6の滑りまたは相対移動を抑制することができる。そのため、押圧力の減少が一層抑制され、陰極箔6に対する引出し端子4の接続性を高めることができる。
【0084】
(5) 第1の実施の形態で述べたように、第一領域36~第四領域60は接触面24、26(つまり、端子片20が陰極箔6に接触する第一接触部)に形成されてもよい。しかしながら、第一領域36~第四領域60は端子部18と陰極箔6の接触面(つまり、端子部18が陰極箔6に接触する第二接触部)に形成されてもよい。第一領域36~第四領域60は第一接触部と第二接触部の両方に形成されてもよい。接触部の位置に関わらず、第一領域36および第二領域38により既述の効果が得られる。また、第一接触部および第二接触部の両方に第一領域36および第二領域38が形成されると、二つの接触部により陰極箔6に対する引出し端子4の固定が強固になり、接続性が向上する。
【0085】
以上説明したように、本開示の最も好ましい実施の形態などについて説明したが、本開示は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、または明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本開示の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本開示の技術は、カーボン層を含む陰極箔と引出し端子の接続およびこれらを含むコンデンサに用いることができ、有用である。
【符号の説明】
【0087】
2、72 コンデンサ
4 引出し端子
6 陰極箔
10 ステッチ接続部
12 基材箔
13 表出部
14 カーボン層
16 凹凸
18 端子部
20 端子片
22 端子孔
24、26 接触面
28、28-1、28-2 金属表面部
30、30-1.30-2 硬化表面部
32 貫通孔
34 箔片
36 第一領域
38 第二領域
46 ステッチ針
58 第三領域
60 第四領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7