(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163844
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】車両用熱マネジメントシステム及び統合切替弁
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20241115BHJP
F16K 11/07 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
F16K11/07 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216604
(22)【出願日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2023079016
(32)【優先日】2023-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】横井 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】榎島 史修
(72)【発明者】
【氏名】大西 徹
【テーマコード(参考)】
3H067
3L211
【Fターム(参考)】
3H067AA23
3H067AA38
3H067BB02
3H067BB12
3H067CC32
3H067CC33
3H067CC34
3H067DD03
3H067DD32
3H067FF11
3H067GG13
3H067GG23
3L211BA02
3L211BA51
3L211DA22
3L211DA26
3L211DA28
3L211DA30
3L211DA42
3L211GA26
(57)【要約】
【課題】回路構成の簡素化と低廉化とを実現可能な車両用熱マネジメントシステム及びこの車両用熱マネジメントシステムに好適に利用可能な統合切替弁を提供する。
【解決手段】この車両用熱マネジメントシステムは、冷媒回路1と、加熱用媒体回路2と、冷却用媒体回路3とを有する。冷媒回路1又は冷却用媒体回路3には、内気冷却器4が組み込まれている。冷媒回路1及び加熱用媒体回路2には加熱用コンデンサ5が組み込まれ、冷媒回路1及び冷却用媒体回路3には冷却用チラー6が組み込まれている。加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3には、第1熱交換器としての電池温調用熱交換器7及び第2熱交換器としてのラジエータ8が組み込まれている。制御装置9は、統合切替弁40を切替制御して、電池温調用熱交換器7及びラジエータ8に対して、加熱用媒体又は冷却用媒体の一方を選択的に流通させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒を膨張させる膨張弁とを有する冷媒回路と、
加熱用媒体を循環させる加熱用媒体ポンプと、前記加熱用媒体で内気に放熱を行う内気加熱器とを有する加熱用媒体回路と、
冷却用媒体を循環させる冷却用媒体ポンプを有する冷却用媒体回路と、
前記冷媒回路又は前記冷却用媒体回路に組み込まれ、冷媒又は前記冷却用媒体で内気から吸熱を行う内気冷却器と、
前記冷媒回路及び前記加熱用媒体回路に組み込まれ、冷媒で前記加熱用媒体に放熱を行う加熱用コンデンサと、
前記冷媒回路及び前記冷却用媒体回路に組み込まれ、冷媒で前記冷却用媒体から吸熱を行う冷却用チラーと、
前記加熱用媒体回路に組み込まれるとともに前記冷却用媒体回路に組み込まれた第1熱交換器と、
前記加熱用媒体回路に組み込まれるとともに前記冷却用媒体回路に組み込まれた第2熱交換器と、
前記第1熱交換器に前記加熱用媒体又は前記冷却用媒体の一方を選択的に流通させるとともに、前記第2熱交換器に前記加熱用媒体又は前記冷却用媒体の一方を選択的に流通させる統合切替弁と、
前記統合切替弁を制御する制御装置とを備え、
前記統合切替弁は、前記第1熱交換器に前記加熱用媒体を流通させるとともに前記第2熱交換器に前記加熱用媒体を流通させる第1パターン、前記第1熱交換器に前記冷却用媒体を流通させるとともに前記第2熱交換器に前記冷却用媒体を流通させる第2パターン、前記第1熱交換器に前記加熱用媒体を流通させるとともに前記第2熱交換器に前記冷却用媒体を流通させる第3パターン、及び、前記第1熱交換器に前記冷却用媒体を流通させるとともに前記第2熱交換器に前記加熱用媒体を流通させる第4パターンの少なくとも4個のパターンに切り替わるように構成されていることを特徴とする車両用熱マネジメントシステム。
【請求項2】
前記第1熱交換器は、前記加熱用媒体と車載電池との間で熱交換を行うとともに前記冷却用媒体と前記車載電池との間で熱交換を行う電池温調用熱交換器であり、
前記第2熱交換器は、前記加熱用媒体と外気との間で熱交換を行うとともに前記冷却用媒体と外気との間で熱交換を行うラジエータであり、
前記統合切替弁は、前記第2熱交換器に前記加熱用媒体を流通させるとともに前記第1熱交換器に前記加熱用媒体及び前記冷却用媒体の双方を流通させない第5パターン、並びに、前記第2熱交換器に前記冷却用媒体を流通させるとともに前記第1熱交換器に前記加熱用媒体及び前記冷却用媒体の双方を流通させない第6パターンにも切り替わるように構成されている請求項1記載の車両用熱マネジメントシステム。
【請求項3】
第1機器に第1流体又は第2流体の一方を選択的に流通させるとともに、第2機器に前記第1流体又は前記第2流体の一方を選択的に流通させる統合切替弁であって、
弁室を形成するとともに、前記弁室と外部とを連通する複数の開口部を有するケースと、
前記ケースに回転可能に支持された回転軸と、
前記弁室を第1室と第2室とに前記回転軸の軸方向に分割する仕切板と、
前記第1室内に配置された第1弁部及び前記第2室内に配置された第2弁部を有し、前記回転軸と共に回転する回転弁体と、を備え、
前記第1弁部は、前記回転軸の少なくとも周方向に並ぶ少なくとも3個の1-1分室、1-2分室及び1-3分室に前記第1室を仕切り、
前記第2弁部は、少なくとも前記周方向に並ぶ3個の2-1分室、2-2分室及び2-3分室に前記第2室を仕切り、
前記回転弁体の回転に伴って複数の前記開口部と前記第1室内の各分室及び前記第2室内の各分室との連通が切り替わることにより、
前記第1機器に前記第1流体を流通させるとともに前記第2機器に前記第1流体を流通させる第1パターン、前記第1機器に前記第2流体を流通させるとともに前記第2機器に前記第2流体を流通させる第2パターン、前記第1機器に前記第1流体を流通させるとともに前記第2機器に前記第2流体を流通させる第3パターン、及び、前記第1機器に前記第2流体を流通させるとともに前記第2機器に前記第1流体を流通させる第4パターンの少なくとも4個のパターンに切り替わるように構成され、
前記第1パターンでは、前記1-3分室と前記1-1分室とが前記第1機器を介して連通され、前記1-1分室と前記2-3分室とが連通され、前記2-3分室と前記2-1分室とが前記第2機器を介して連通され、かつ、前記2-2分室と前記1-2分室とが連通され、
前記第2パターンでは、前記1-2分室と前記2-2分室とが連通され、前記2-3分室と前記2-1分室とが前記第2機器を介して連通され、前記2-1分室と前記1-3分室とが連通され、かつ、前記1-3分室と前記1-1分室とが前記第1機器を介して連通され、
前記第3パターンでは、前記1-3分室と前記1-1分室とが前記第1機器を介して連通され、前記1-1分室と前記2-2分室とが連通され、前記2-3分室と前記2-1分室とが前記第2機器を介して連通され、かつ、前記2-1分室と前記1-2分室とが連通され、
前記第4パターンでは、前記1-2分室と前記2-3分室とが連通され、前記2-3分室と前記2-1分室とが前記第2機器を介して連通され、前記2-2分室と前記1-3分室とが連通され、かつ、前記1-3分室と前記1-1分室とが前記第1機器を介して連通されることを特徴とする統合切替弁。
【請求項4】
前記第1弁部は、少なくとも前記周方向に並ぶ4個の前記1-1分室、前記1-2分室、前記1-3分室及び1-4分室に前記第1室を仕切り、
前記回転弁体の回転に伴って複数の前記開口部と前記第1室内の各分室及び前記第2室内の各分室との連通が切り替わることにより、
前記第2機器に前記第1流体を流通させるとともに前記第1機器に前記第1流体及び前記第2流体の双方を流通させない第5パターン、及び、前記第2機器に前記第2流体を流通させるとともに前記第1機器に前記第1流体及び前記第2流体の双方を流通させない第6パターンにも切り替わるように構成され、
前記第5パターンでは、前記1-2分室と前記2-3分室とが連通され、前記2-3分室と前記2-1分室とが前記第2機器を介して連通され、かつ、前記2-2分室と前記1-4分室とが連通され、
前記第6パターンでは、前記1-4分室と前記2-2分室とが連通され、前記2-3分室と前記2-1分室とが前記第2機器を介して連通され、かつ、前記2-1分室と前記1-2分室とが連通される請求項3記載の統合切替弁。
【請求項5】
前記複数の開口部は、前記第1流体を前記第1室に流入させる第1流体流入口と、
前記第1流体を前記第1室から前記第2室に向けて送出する第1流体送出口と、
前記第1流体を前記第1室から前記第2室に送入させる第1流体送入口と、
前記第1流体を前記第2室から流出させる第1流体流出口と、
前記第2流体を前記第2室に流入させる第2流体流入口と、
前記第2流体を前記第2室から前記第1室に向けて送出する第2流体送出口と、
前記第2流体を前記第2室から前記第1室に送入させる第2流体送入口と、
前記第2流体を前記第1室から流出させる第2流体流出口と、
前記第1室と前記第1機器の入口側とを連通して前記第1流体又は前記第2流体を前記第1室から前記第1機器に向けて送出する第1機器入口側接続口と、
前記第1室と前記第1機器の出口側とを連通して前記第1流体又は前記第2流体を前記第1機器から前記第1室に送入させる第1機器出口側接続口と、
前記第2室と前記第2機器の入口側とを連通して前記第1流体又は前記第2流体を前記第2室から前記第2機器に向けて送出する第2機器入口側接続口と、
前記第2室と前記第2機器の出口側とを連通して前記第1流体又は前記第2流体を前記第2機器から前記第2室に送入させる第2機器出口側接続口と、を有している請求項3又は4記載の統合切替弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用熱マネジメントシステム及び統合切替弁に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリー式の電気自動車(BEV、Battery Electric Vehicle)には、走行用モータへの供給電力を蓄える蓄電装置として、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等が搭載されている。
【0003】
電池は充放電時に発熱し、高温状態が継続すると劣化が促進する。一方、極低温下では、電池出力が低下する。このため、電気自動車においては、電池を冷却及び加熱するための電池温調システムを搭載することが望ましい。
【0004】
他方、車室内の暖房に内燃機関の燃焼排熱を利用できない電気自動車では、一般に、車室内の暖房に、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータやヒートポンプを利用している。
【0005】
しかし、車載電池をエネルギー源とするPTCヒータを用いた暖房では、エネルギー消費効率が相対的に低く、航続距離が短くなるという課題がある。また、冷媒で外気から吸熱を行うヒートポンプ式の暖房では、車載電池に加えて空気熱もエネルギー源とするため、エネルギー消費効率はPTCヒータを用いた暖房に比べて高いものの、寒冷地などで外気温が極めて低い時に十分に暖房できないという課題がある。
【0006】
特許文献1には、電気自動車に適用して好適な従来の車両用熱マネジメントシステムが開示されている。この車両用熱マネジメントシステムは、冷媒回路と、加熱用媒体回路と、冷却用媒体回路と、制御装置とを備えている。
【0007】
冷媒回路は、冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒を膨張させる膨張弁と、冷媒で内気から吸熱を行う内気冷却器とを有している。加熱用媒体回路は、加熱用媒体を循環させる加熱用媒体ポンプと、加熱用媒体で内気に放熱を行う内気加熱器と、加熱用媒体と外気との間で熱交換を行う加熱側ラジエータとを有している。冷却用媒体回路は、冷却用媒体を循環させる冷却用媒体ポンプと、冷却用媒体を加熱する電気ヒータと、冷却用媒体と外気との間で熱交換を行う冷却側ラジエータとを有している。
【0008】
冷媒回路及び加熱用媒体回路には、冷媒で加熱用媒体に放熱を行う加熱用コンデンサが組み込まれている。冷媒回路及び冷却用媒体回路には、冷媒で冷却用媒体から吸熱を行う冷却用チラーが組み込まれている。加熱用媒体回路及び冷却用媒体回路には、加熱用媒体及び冷却用媒体と車載電池との間で熱交換を行う電池温調用熱交換器が組み込まれている。制御装置は、電池温調用熱交換器に対する加熱用媒体及び冷却用媒体の流通を制御して、電池温調用熱交換器に加熱用媒体又は冷却用媒体の一方を選択的に流通させる。
【0009】
これにより、冷媒回路により車室内の空調を行うとともに、加熱用コンデンサにて冷媒で加熱された加熱用媒体を電池温調用熱交換器に流通させて電池を暖機したり、冷却用チラーにて冷媒で冷却された冷却用媒体を電池温調用熱交換器に流通させて電池を冷却したりしている。また、この車両用熱マネジメントシステムでは、電気ヒータを利用して車室内を暖房したり、電池を暖機したりもしている。さらに、加熱側ラジエータにて加熱用媒体と外気とを熱交換したり、冷却側ラジエータにて冷却用媒体と外気とを熱交換したりして、加熱用媒体及び冷却用媒体を加熱したり、冷却したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記従来の車両用熱マネジメントシステムでは、電池温調用熱交換器に加熱用媒体又は冷却用媒体の一方を選択的に流通させるために、複数の三方弁や開閉弁等を用いている。また、ラジエータを2つ用いたり、電気ヒータを用いたりもしている。このため、構成部品の増加によりシステム全体の回路構成が複雑となり、その分コストも高騰化している。
【0012】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、回路構成の簡素化と低廉化とを実現可能な車両用熱マネジメントシステム及びこの車両用熱マネジメントシステムに好適に利用可能な統合切替弁を提供することを解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の車両用熱マネジメントシステムは、冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒を膨張させる膨張弁とを有する冷媒回路と、
加熱用媒体を循環させる加熱用媒体ポンプと、前記加熱用媒体で内気に放熱を行う内気加熱器とを有する加熱用媒体回路と、
冷却用媒体を循環させる冷却用媒体ポンプを有する冷却用媒体回路と、
前記冷媒回路又は前記冷却用媒体回路に組み込まれ、冷媒又は前記冷却用媒体で内気から吸熱を行う内気冷却器と、
前記冷媒回路及び前記加熱用媒体回路に組み込まれ、冷媒で前記加熱用媒体に放熱を行う加熱用コンデンサと、
前記冷媒回路及び前記冷却用媒体回路に組み込まれ、冷媒で前記冷却用媒体から吸熱を行う冷却用チラーと、
前記加熱用媒体回路に組み込まれるとともに前記冷却用媒体回路に組み込まれた第1熱交換器と、
前記加熱用媒体回路に組み込まれるとともに前記冷却用媒体回路に組み込まれた第2熱交換器と、
前記第1熱交換器に前記加熱用媒体又は前記冷却用媒体の一方を選択的に流通させるとともに、前記第2熱交換器に前記加熱用媒体又は前記冷却用媒体の一方を選択的に流通させる統合切替弁と、
前記統合切替弁を制御する制御装置と、を備え、
前記統合切替弁は、前記第1熱交換器に前記加熱用媒体を流通させるとともに前記第2熱交換器に前記加熱用媒体を流通させる第1パターン、前記第1熱交換器に前記冷却用媒体を流通させるとともに前記第2熱交換器に前記冷却用媒体を流通させる第2パターン、前記第1熱交換器に前記加熱用媒体を流通させるとともに前記第2熱交換器に前記冷却用媒体を流通させる第3パターン、及び、前記第1熱交換器に前記冷却用媒体を流通させるとともに前記第2熱交換器に前記加熱用媒体を流通させる第4パターンの少なくとも4個のパターンに切り替わるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の車両用熱マネジメントシステムでは、統合切替弁の作動により、第1熱交換器に対して加熱用媒体又は冷却用媒体の一方を選択的に流通させるとともに、第2熱交換器に対して加熱用媒体又は冷却用媒体の一方を選択的に流通させる。このため、複数の三方弁や開閉弁等を用いる必要がなく、部品点数を削減できる。
【0015】
そして、統合切替弁の切替制御により、第1パターン又は第2パターンによって、第1熱交換器及び第2熱交換器の双方に加熱用媒体又は冷却用媒体を流通させることで、第1熱交換器及び第2熱交換器の双方にて加熱用媒体を放熱させたり冷却用媒体を吸熱させたりすることができる。これにより、例えば、第1熱交換器の対象及び第2熱交換器の対象の双方を加熱したり冷却したりすることができる。また、統合切替弁の切替制御により、第3パターン又は第4パターンによって、第1熱交換器及び第2熱交換器の一方に加熱用媒体を流通させるとともに他方に冷却用媒体を流通させることで、第1熱交換器及び第2熱交換器の一方にて加熱用媒体を放熱させるとともに他方にて冷却用媒体を吸熱させることができる。これにより、例えば、第1熱交換器の対象及び第2熱交換器の対象の一方を加熱するとともに他方を冷却することができる。
【0016】
車室内の空調に関しては、冷媒回路又は冷却用媒体回路に組み込まれた内気冷却器にて冷媒で内気を冷却して車室内を冷房する。また、例えば冷却用媒体回路に組み込まれた第2熱交換器をラジエータとして機能させれば、ラジエータとして機能する第2熱交換器にて冷却用媒体が外気から吸熱する。これにより、冷媒回路及び冷却用媒体回路に組み込まれた冷却用チラーにて冷媒が冷却用媒体から吸熱し、かつ、冷媒回路及び加熱用媒体回路に組み込まれた加熱用コンデンサにて加熱用媒体が冷媒から吸熱し、そして加熱用媒体回路に組み込まれた内気加熱器にて加熱用媒体で内気を加熱して車室内を暖房する。
【0017】
このように、電気ヒータを別途用いることなく車室内の暖房を行うとともに第1熱交換器や第2熱交換器の対象を加熱するため、構成部品を削減できる。
【0018】
さらに、例えば第2熱交換器をラジエータとして機能させれば、ラジエータとして機能する第2熱交換器に加熱用媒体又は冷却用媒体の一方を選択的に流通させることで、加熱用媒体で外気に放熱したり、冷却用媒体で外気から吸熱したりすることができる。このため、ラジエータとして機能する一つの第2熱交換器によって、システム全体の熱収支において余剰分を放熱したり、不足分を吸熱したりすることができ、構成部品を削減できる。
【0019】
したがって、本発明の車両用熱マネジメントシステムによれば、回路構成の簡素化と低廉化とを実現できる。
【0020】
第1熱交換器は、加熱用媒体と車載電池との間で熱交換を行うとともに冷却用媒体と車載電池との間で熱交換を行う電池温調用熱交換器であることが好ましい。第2熱交換器は、加熱用媒体と外気との間で熱交換を行うとともに冷却用媒体と外気との間で熱交換を行うラジエータであることが好ましい。また、統合切替弁は、第2熱交換器に加熱用媒体を流通させるとともに第1熱交換器に加熱用媒体及び冷却用媒体の双方を流通させない第5パターン、並びに、第2熱交換器に冷却用媒体を流通させるとともに第1熱交換器に加熱用媒体及び冷却用媒体の双方を流通させない第6パターンにも切り替わるように構成されていることが好ましい。
【0021】
この場合、電池温調用熱交換器としての第1熱交換器に対して、加熱用媒体及び冷却用媒体の双方を流通させることなく、ラジエータとしての第2熱交換器に対して加熱用媒体又は冷却用媒体を流通させることができる。この際、ラジエータとしての第2熱交換器に対して加熱用媒体を流通させれば、加熱用媒体が外気に放熱することができ、ラジエータとしての第2熱交換器に対して冷却用媒体を流通させれば、冷却用媒体が外気から吸熱することができる。このため、電池を暖機又は冷却することなく、車室内の暖房や冷房を行うことができる。
【0022】
本発明の統合切替弁は、第1機器に第1流体又は第2流体の一方を選択的に流通させるとともに、第2機器に前記第1流体又は前記第2流体の一方を選択的に流通させる統合切替弁であって、
弁室を形成するとともに、前記弁室と外部とを連通する複数の開口部を有するケースと、
前記ケースに回転可能に支持された回転軸と、
前記弁室を第1室と第2室とに前記回転軸の軸方向に分割する仕切板と、
前記第1室内に配置された第1弁部及び前記第2室内に配置された第2弁部を有し、前記回転軸と共に回転する回転弁体と、を備え、
前記第1弁部は、前記回転軸の少なくとも周方向に並ぶ少なくとも3個の1-1分室、1-2分室及び1-3分室に前記第1室を仕切り、
前記第2弁部は、少なくとも前記周方向に並ぶ3個の2-1分室、2-2分室及び2-3分室に前記第2室を仕切り、
前記回転弁体の回転に伴って複数の前記開口部と前記第1室内の各分室及び前記第2室内の各分室との連通が切り替わることにより、
前記第1機器に前記第1流体を流通させるとともに前記第2機器に前記第1流体を流通させる第1パターン、前記第1機器に前記第2流体を流通させるとともに前記第2機器に前記第2流体を流通させる第2パターン、前記第1機器に前記第1流体を流通させるとともに前記第2機器に前記第2流体を流通させる第3パターン、及び、前記第1機器に前記第2流体を流通させるとともに前記第2機器に前記第1流体を流通させる第4パターンの少なくとも4個のパターンに切り替わるように構成され、
前記第1パターンでは、前記1-3分室と前記1-1分室とが前記第1機器を介して連通され、前記1-1分室と前記2-3分室とが連通され、前記2-3分室と前記2-1分室とが前記第2機器を介して連通され、かつ、前記2-2分室と前記1-2分室とが連通され、
前記第2パターンでは、前記1-2分室と前記2-2分室とが連通され、前記2-3分室と前記2-1分室とが前記第2機器を介して連通され、前記2-1分室と前記1-3分室とが連通され、かつ、前記1-3分室と前記1-1分室とが前記第1機器を介して連通され、
前記第3パターンでは、前記1-3分室と前記1-1分室とが前記第1機器を介して連通され、前記1-1分室と前記2-2分室とが連通され、前記2-3分室と前記2-1分室とが前記第2機器を介して連通され、かつ、前記2-1分室と前記1-2分室とが連通され、
前記第4パターンでは、前記1-2分室と前記2-3分室とが連通され、前記2-3分室と前記2-1分室とが前記第2機器を介して連通され、前記2-2分室と前記1-3分室とが連通され、かつ、前記1-3分室と前記1-1分室とが前記第1機器を介して連通されることを特徴とする。
【0023】
本発明の統合切替弁は、回転弁体の回転に伴って複数の開口部と第1室内の各分室及び第2室内の各分室との連通が切り替わることにより、第1パターン~第4パターンの少なくとも4個のパターンに切り替わる。第1パターンでは、第1機器に第1流体を流通させるとともに第2機器に第1流体を流通させる。第2パターンでは、第1機器に第2流体を流通させるとともに第2機器に第2流体を流通させる。第3パターンでは、第1機器に第1流体を流通させるとともに第2機器に第2流体を流通させる。第4パターンでは、第1機器に第2流体を流通させるとともに第2機器に第1流体を流通させる。こうして、この統合切替弁の作動により、第1機器に対して第1流体又は第2流体の一方を選択的に流通させるとともに、第2機器に対して第1流体又は第2流体の一方を選択的に流通させることができる。
【0024】
したがって、本発明の統合切替弁は、本発明の車両用熱マネジメントシステムに好適に利用することができる。
【0025】
第1弁部は、少なくとも周方向に並ぶ4個の1-1分室、1-2分室、1-3分室及び1-4分室に第1室を仕切ることが好ましい。また、本発明の統合切替弁は、回転弁体の回転に伴って複数の開口部と第1室内の各分室及び第2室内の各分室との連通が切り替わることにより、第5パターン及び第6パターンにも切り替わるように構成されていることが好ましい。第5パターンでは、第2機器に第1流体を流通させるとともに、第1機器に第1流体及び第2流体の双方を流通させないようにし得る。第6パターンでは、第2機器に第2流体を流通させるとともに、第1機器に第1流体及び第2流体の双方を流通させないようにし得る。第5パターンでは、1-2分室と2-3分室とが連通され、2-3分室と2-1分室とが第2機器を介して連通され、かつ、2-2分室と前記1-4分室とが連通される。第6パターンでは、1-4分室と2-2分室とが連通され、2-3分室と2-1分室とが第2機器を介して連通され、かつ、2-1分室と1-2分室とが連通される。
【0026】
この場合、例えば第1機器を電池温調用熱交換器として機能させるとともに第2機器をラジエータとして機能させ、かつ、第1流体として加熱用媒体を採用するとともに第2流体として冷却用媒体を採用すれば、第5パターン又は第6パターンによって、電池温調用熱交換器としての第1機器に対して加熱用媒体及び冷却用媒体の双方を流通させることなく、ラジエータとしての第2機器に対して加熱用媒体又は冷却用媒体を流通させることができる。この際、ラジエータとしての第2機器に対して加熱用媒体を流通させれば、加熱用媒体が外気に放熱することができ、ラジエータとしての第2機器に対して冷却用媒体を流通させれば、冷却用媒体が外気から吸熱することができる。このため、電池を暖機又は冷却することなく、車室内の暖房や冷房を行うことができる。
【0027】
複数の開口部は、第1流体を第1室に流入させる第1流体流入口と、第1流体を第1室から第2室に向けて送出する第1流体送出口と、第1流体を第1室から第2室に送入させる第1流体送入口と、第1流体を第2室から流出させる第1流体流出口と、第2流体を第2室に流入させる第2流体流入口と、第2流体を第2室から第1室に向けて送出する第2流体送出口と、第2流体を第2室から第1室に送入させる第2流体送入口と、第2流体を第1室から流出させる第2流体流出口と、第1室と第1機器の入口側とを連通して第1流体又は第2流体を第1室から第1機器に向けて送出する第1機器入口側接続口と、第1室と第1機器の出口側とを連通して第1流体又は第2流体を第1機器から第1室に送入させる第1機器出口側接続口と、第2室と第2機器の入口側とを連通して第1流体又は第2流体を第2室から第2機器に向けて送出する第2機器入口側接続口と、第2室と第2機器の出口側とを連通して第1流体又は第2流体を第2機器から第2室に送入させる第2機器出口側接続口と、を有していることが好ましい。
【0028】
本発明の統合切替弁は、かかる構成により、前記第1パターン~前記第4パターンの4個のパターンや、前記第1パターン~前記第6パターンの6個のパターンに好適に切り替わることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の車両用熱マネジメントシステムによれば、回路構成の簡素化と低廉化とを実現できる。また、本発明の統合切替弁は、本発明の車両用熱マネジメントシステムに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムの全体構成を模式的に示すシステム構成図である。
【
図2】
図2は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、冷房モードを説明するシステム構成図である。
【
図3】
図3は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに適用した統合切替弁に係り、統合切替弁が第5パターンであり、冷房モードにおける複数の開口部と第1室内の4個の分室及び第2室内の3個の分室との連通状態を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、暖房モードを説明するシステム構成図である。
【
図5】
図5は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに適用した統合切替弁に係り、統合切替弁が第6パターンであり、暖房モードにおける複数の開口部と第1室内の4個の分室及び第2室内の3個の分室との連通状態を説明する模式図である。
【
図6】
図6は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、電池冷却モードを説明するシステム構成図である。
【
図7】
図7は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに適用した統合切替弁に係り、統合切替弁が第4パターンであり、電池冷却モードにおける複数の開口部と第1室内の4個の分室及び第2室内の3個の分室との連通状態を説明する模式図である。
【
図8】
図8は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、電池暖機モードを説明するシステム構成図である。
【
図9】
図9は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに適用した統合切替弁に係り、統合切替弁が第3パターンであり、電池暖機モードにおける複数の開口部と第1室内の4個の分室及び第2室内の3個の分室との連通状態を説明する模式図である。
【
図10】
図10は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、冷房電池暖機(冷房要求大)モードを説明するシステム構成図である。
【
図11】
図11は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに適用した統合切替弁に係り、統合切替弁が第1パターンであり、冷房電池暖機(冷房要求大)モードにおける複数の開口部と第1室内の4個の分室及び第2室内の3個の分室との連通状態を説明する模式図である。
【
図12】
図12は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに係り、暖房電池冷却(暖房要求大)モードを説明するシステム構成図である。
【
図13】
図13は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに適用した統合切替弁に係り、統合切替弁が第2パターンであり、暖房電池冷却(暖房要求大)モードにおける複数の開口部と第1室内の4個の分室及び第2室内の3個の分室との連通状態を説明する模式図である。
【
図14】
図14は、実施例2の車両用熱マネジメントシステムに適用した統合切替弁に係り、統合切替弁が第2パターンであり、暖房電池冷却(暖房要求大)モードにおける複数の開口部と第1室内の3個の分室及び第2室内の3個の分室との連通状態を説明する模式図である。
【
図15】
図15は、実施例2の車両用熱マネジメントシステムに適用した統合切替弁に係り、統合切替弁が第4パターンであり、電池冷却モードにおける複数の開口部と第1室内の3個の分室及び第2室内の3個の分室との連通状態を説明する模式図である。
【
図16】
図16は、実施例2の車両用熱マネジメントシステムに適用した統合切替弁に係り、統合切替弁が第1パターンであり、冷房電池暖機(冷房要求大)モードにおける複数の開口部と第1室内の3個の分室及び第2室内の3個の分室との連通状態を説明する模式図である。
【
図17】
図17は、実施例2の車両用熱マネジメントシステムに適用した統合切替弁に係り、統合切替弁が第3パターンであり、電池暖機モードにおける複数の開口部と第1室内の3個の分室及び第2室内の3個の分室との連通状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。実施例1、2の車両用熱マネジメントシステムは、バッテリー式の電気自動車に搭載される。実施例1、2の車両用熱マネジメントシステムは、車室内の空調を行うとともに、車載電池及び冷却対象機器の温度調整を行う。
【0032】
車載電池は、走行用モータに電力を供給するための蓄電装置を構成する。車載電池は複数の電池セルを有し、各電池セルはリチウムイオン二次電池等の二次電池よりなる。冷却対象機器は、例えば、走行用モータとしてのモータジェネレータや、モータ制御用のインバータ及び昇圧用のDC-DCコンバータを含むパワーコントロールユニット(PCU)、充電器等の電気部品やその他の車載発熱体のことである。
【0033】
(実施例1)
図1~
図13に示す実施例1の車両用熱マネジメントシステムは、
図1にシステム構成図を模式的に示すように、冷媒回路1と、加熱用媒体回路2と、冷却用媒体回路3と、エバポレータ4と、水冷コンデンサ5と、チラー6と、電池熱交換器7と、ラジエータ8と、制御装置9と、統合切替弁40と、を備えている。エバポレータ4は、本発明における「内気冷却器」の一例である。水冷コンデンサ5は、本発明における「加熱用コンデンサ」の一例である。チラー6は、本発明における「冷却用チラー」の一例である。電池熱交換器7は、本発明における「第1機器」又は「第1熱交換器」としての「電池温調用熱交換器」の一例である。ラジエータ8は、本発明における「第2機器」又は「第2熱交換器」の一例である。
【0034】
ここに、システム構成図を示す
図1、
図2、
図4、
図6、
図8、
図10及び
図12において、冷媒回路1及び加熱用媒体回路2の各構成部品を接続する流路(配管)を実線で示し、冷却用媒体回路3の各構成部品を接続する流路(配管)を一点鎖線で示す。また、システム構成図を示す
図1、
図2、
図4、
図6、
図8、
図10及び
図12において、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における電池熱交換器7及びラジエータ8に接続される流路(配管)は、電池熱交換器7及びラジエータ8に対する加熱用媒体HT又は冷却用媒体LTの流れが理解しやすいように便宜的に示しており、電池熱交換器7及びラジエータ8に対する実際の配管構造とは異なる。加熱用媒体HTは、本発明における「第1流体」の一例である。冷却用媒体LTは、本発明における「第2流体」の一例である。
【0035】
また、運転モードを説明する
図2、
図4、
図6、
図8、
図10及び
図12においては、冷媒回路1で冷媒が流れていない流路(配管)を破線で示し、加熱用媒体回路2で加熱用媒体が流れていない流路(配管)を破線で示し、冷却用媒体回路3で冷却用媒体が流れていない流路(配管)を破線で示し、また、熱の流れを太い二点鎖線の矢印で示す。なお、
図2、
図4、
図6、
図8、
図10及び
図12においては、制御装置9の図示を省略する。
【0036】
水冷コンデンサ5は、冷媒回路1及び加熱用媒体回路2の双方に組み込まれて、冷媒回路1と加熱用媒体回路2とを連結している。チラー6は、冷媒回路1及び冷却用媒体回路3の双方に組み込まれて、冷媒回路1と冷却用媒体回路3とを連結している。
【0037】
冷媒回路1は、回路内を循環する冷媒Rと車室内へ送られる室内空気である内気との熱交換により、車室内の空調を行う。また、冷媒回路1は、回路内を循環する冷媒Rと加熱用媒体回路2の加熱用媒体HTとの熱交換により、冷媒Rで加熱用媒体HTに放熱を行い、加熱用媒体HTを加熱したり、回路内を循環する冷媒Rと冷却用媒体回路3の冷却用媒体LTとの熱交換により、冷媒Rで冷却用媒体LTから吸熱を行い、冷却用媒体LTを冷却したりする。加熱用媒体HT及び冷却用媒体LTは、エチレングリコールやプロピレングリコールを主成分とするLLC(ロングライフクーラント)である。
【0038】
冷媒回路1は、圧縮機10と、水冷コンデンサ5と、第1膨張弁11と、第2膨張弁12と、エバポレータ4と、チラー6と、蒸発圧力調整弁(EPR)13とを有している。また、冷媒回路1は、各構成部品を接続する流路として、第1環状流路14と、第1流路15とを有している。第1環状流路14においては、圧縮機10、水冷コンデンサ5、第2膨張弁12、チラー6がこの順で接続、配置されている。第1流路15においては、第1膨張弁11、エバポレータ4、蒸発圧力調整弁13がこの順で接続、配置されている。第1流路15は、第1環状流路14における水冷コンデンサ5と第2膨張弁12との間の第1接続部14aと、第1環状流路14におけるチラー6と圧縮機10との間の第2接続部14bとに接続されている。これにより、第1膨張弁11と第2膨張弁12は、水冷コンデンサ5に対して、互いに並列に配置されている。第1膨張弁11及び第2膨張弁12は、本発明における「膨張弁」の一例である。
【0039】
圧縮機10は、制御装置9により制御され、冷媒Rを圧縮して第1環状流路14及び第1流路15に冷媒Rを循環させる。冷媒回路1における冷媒Rの循環方向は
図1の反時計回り方向である。すなわち、圧縮機10で圧縮された冷媒Rは水冷コンデンサ5に向かう。
【0040】
第1膨張弁11及び第2膨張弁12はいずれも、弁開度が0%~100%の範囲で調整可能な電子式の膨張弁である。第1膨張弁11及び第2膨張弁12の弁開度は制御装置9により制御される。
【0041】
エバポレータ4は、図示しない送風ファンによって車室内に送られる内気と冷媒Rとを熱交換させる。すなわち、エバポレータ4にて、冷媒Rで内気から吸熱を行う。冷媒Rとの熱交換によって冷却された内気は、図示しない送風ファンによって車室内に送られて車室内の冷房に供される。第1膨張弁11の弁開度が0%のときは、エバポレータ4の機能は停止する。
【0042】
蒸発圧力調整弁13は、エバポレータ4内の冷媒の蒸発圧力が設定値よりも下がるのを防止する。
【0043】
チラー6は、冷却用媒体回路3を循環する冷却用媒体LTと冷媒Rとを熱交換させる。すなわち、チラー6にて、冷媒Rで冷却用媒体LTから吸熱を行う。冷媒Rとの熱交換によって冷却された冷却用媒体LTは、冷却用媒体回路3内に配置された電池熱交換器7にて車載電池を冷却する。第2膨張弁12の弁開度が0%のときは、チラー6の機能は停止する。
【0044】
加熱用媒体回路2は、加熱用媒体ポンプ16と、水冷コンデンサ5と、ヒータコア17と、電池熱交換器7と、ラジエータ8と、吸熱器18と、統合切替弁40とを有している。また、加熱用媒体回路2は、各構成部品を接続する流路として、第2環状流路19と、第2流路20とを有している。なお、加熱用媒体回路2における各構成部品の並び順は適宜変更可能である。ヒータコア17は、本発明における「内気加熱器」の一例である。
【0045】
第2流路20は、第2環状流路19における加熱用媒体ポンプ16と水冷コンデンサ5との間の接続部と、第2環状流路19における水冷コンデンサ5とヒータコア17との間の接続部とに接続されている。第2流路20には、吸熱器18が配置されている。これにより、水冷コンデンサ5と吸熱器18とが並列に設けられている。第2環状流路19における加熱用媒体ポンプ16と水冷コンデンサ5との間の接続部には、三方流量調整弁21が配置されている。
【0046】
三方流量調整弁21は、制御装置9により制御され、加熱用媒体回路2を循環する加熱用媒体HTを、水冷コンデンサ5又は吸熱器18の一方に選択的に流通させたり、水冷コンデンサ5及び吸熱器18の双方に流量を調整しつつ流通させたりする。
【0047】
加熱用媒体ポンプ16は、制御装置9により制御され、第2環状流路19及び第2流路20に加熱用媒体HTを循環させる。加熱用媒体回路2における加熱用媒体HTの循環方向は
図1の時計回り方向である。
【0048】
水冷コンデンサ5は、冷媒回路1を循環する冷媒Rと、加熱用媒体回路2を循環する加熱用媒体HTとを熱交換させる。
【0049】
ヒータコア17の近傍には、ヒータコア17に内気を送風する図示しない送風ファンが設けられている。ヒータコア17は、送風ファンによって車室内に送られる内気と加熱用媒体HTとを熱交換させる。すなわち、ヒータコア17にて、加熱用媒体HTで内気に放熱を行う。加熱用媒体HTとの熱交換によって加熱された内気は、図示しない送風ファンによって車室内に送られて車室内の暖房に供される。ヒータコア17の近傍には、ヒータコア17への送風を調整する第1ダンパ17Aが設けられている。図示しない送風ファンを停止したり、第1ダンパ17Aの作動によりヒータコア17への送風を停止したりすることで、ヒータコア17の機能は停止する。
【0050】
電池熱交換器7は、加熱用媒体回路2を循環する加熱用媒体HTと車載電池とを熱交換させる。電池熱交換器7内には、車載電池に隣接された温調用流路が配設されている、電池熱交換器7内において、温調用流路を流通する加熱用媒体HTと車載電池とが熱交換することで、加熱用媒体HTから車載電池への放熱が行われ、車載電池が暖機される。また、電池熱交換器7は冷却用媒体回路3を循環する冷却用媒体LTと車載電池とを熱交換させる。電池熱交換器7内において、温調用流路を流通する冷却用媒体LTと車載電池とが熱交換することで、冷却用媒体LTによる車載電池からの吸熱が行われ、車載電池が冷却される。
【0051】
ラジエータ8は、加熱用媒体回路2を循環する加熱用媒体HTと外気とを熱交換させる。ラジエータ8における加熱用媒体HTと外気との熱交換により、加熱用媒体HTで外気への放熱を行う。また、ラジエータ8は、冷却用媒体回路3を循環する冷却用媒体LTと外気とを熱交換させる。ラジエータ8における冷却用媒体LTと外気との熱交換により、冷却用媒体LTで外気からの吸熱を行う。ラジエータ8の近傍には、ラジエータ8に外気を送風する図示しない冷却ファンと、ラジエータ8への送風を調整する第2ダンパ8Aとが設けられている。図示しない冷却ファンを停止したり、第2ダンパ8Aの作動によりラジエータ8への送風を停止したりすることで、ラジエータ8の機能は停止する。
【0052】
吸熱器18は、加熱用媒体回路2を循環する加熱用媒体HTと冷却対象機器とを熱交換させる。第2流路20は冷却対象機器に隣接された温調用流路に接続されている。吸熱器18内において、この温調用流路を流通する加熱用媒体HTと冷却対象機器とが熱交換することで、加熱用媒体HTによる冷却対象機器からの吸熱が行われ、冷却対象機器が冷却される。
【0053】
冷却用媒体回路3は、冷却用媒体ポンプ22と、ラジエータ8と、電池熱交換器7と、チラー6と、統合切替弁40とを有している。また、冷却用媒体回路3は、各構成部品を接続する流路として、第3環状流路23を有している。なお、冷却用媒体回路3における各構成部品の並び順は適宜変更可能である。
【0054】
冷却用媒体ポンプ22は、制御装置9により制御され、第3環状流路23に冷却用媒体LTを循環させる。冷却用媒体回路3における冷却用媒体LTの循環方向は
図1の反時計回り方向である。
【0055】
図3に示すように、統合切替弁40は、ケース41と、回転軸42と、仕切板43と、回転弁体44と、駆動機構45とを備えている。
【0056】
ケース41は、一端が開口する有底円筒状の一端開口が蓋体41bによって閉鎖されてなり、その内部に円柱状の弁室46を形成している。ケース41の側壁41aには、12個の開口部53aを形成する12個の接続部53が設けられている。各開口部53aは、側壁41aを貫通して、弁室46と、ケース41の外部とを連通している。12個の接続部53のうち所定の4個の接続部53は、所定の接続部53同士が図示しない配管により接続されている。残りの8個の接続部53のうち所定の2個の接続部53が電池熱交換器7に図示しない配管により接続されるとともに、所定の2個の接続部53がラジエータ8に図示しない配管により接続されている。残りの4個の接続部53は、そのうちの2個の接続部53が加熱用媒体回路2における加熱用媒体ポンプ16及びヒータコア17にそれぞれ図示しない配管により接続され、残りの2個の接続部53が冷却用媒体回路3における冷却用媒体ポンプ22及びチラー6にそれぞれ図示しない配管により接続されている。
【0057】
回転軸42は、ケース41に回転可能に支持されている。回転軸42の一端には、回転軸42を回転させる駆動機構45が結合されている。駆動機構45は、制御装置9により制御される。
【0058】
仕切板43は、ケース41の内径と同等の外径を有する円板状をなしている。仕切板43は、弁室46における回転軸42の軸方向の略中央に配置されている。仕切板43は、弁室46内を第1室47と第2室48とに回転軸42の軸方向に分割する。第1室47は、仕切板43よりもケース41の一端側である駆動機構45側に位置する。
【0059】
回転弁体44は、回転軸42に固定されている。回転弁体44は、弁室46内で回転軸42と共に回転する。回転弁体44は、第1弁部49と、第2弁部50とを有している。第1弁部49は第1室47内に配置され、第2弁部50は第2室48内に配置されている。
【0060】
図3、
図5、
図7、
図9等に示すように、第1弁部49は、第1室47内を、回転軸42の周方向及び軸方向に並ぶ4個の1-1分室51a、1-2分室51b、1-3分室51c及び1-4分室51dに仕切っている。第2弁部50は、第2室48内を、回転軸42の周方向及び軸方向に並ぶ3個の2-1分室52a、2-2分室52b及び2-3分室52cに仕切っている。
【0061】
ここに、回転軸42の軸方向において、第1室47内を、上部、中上部、中下部及び下部の4つに区分けする。第1室47内において、1-1分室51aは上部の全周領域と中上部の1/3周領域とを占め、1-2分室51bは中上部及び中下部の1/2周領域を占め、1-3分室51cは下部の全周領域と中下部の1/3周領域とを占め、1-4分室51dは、中上部及び中下部の1/6周領域を占めている。1-1分室51aにおける中上部の1/3周領域と、1-3分室51cにおける中下部の1/3周領域とは、回転軸42の軸方向に並んでいる。回転軸42の軸方向の一端側、すなわち
図3の上方から見て、回転軸42の周方向において、上記1/3周領域と、上記1/2周領域と、上記1/6周領域とは、この順で時計回り方向Tに並んでいる。以下の説明において、時計周り方向Tとは、
図3に矢印で示すように、回転軸42を
図3の上方から見たときの時計回り方向のことである。
【0062】
また、回転軸42の軸方向において、第2室48内を、上部、中上部、中下部及び下部の4つに区分けする。第2室48内において、2-1分室52aは上部の全周領域と中上部の1/2周領域とを占め、2-2分室52bは中上部及び中下部の1/2周領域を占め、2-3分室52cは下部の全周領域と中下部の1/2周領域とを占めている。2-1分室52aにおける中上部の1/2周領域と、2-3分室52cにおける中下部の1/2周領域とは、回転軸42の軸方向に並んでいる。なお、第1室47内において上記1/2周領域を占める1-2分室51bと、第2室48内において上記1/2周領域を占める2-2分室52bとは、周方向に所定角度ずれている。
【0063】
開口部53aは、加熱用媒体流入口54aと、加熱用媒体送出口54bと、加熱用媒体送入口54cと、加熱用媒体流出口54dと、冷却用媒体流入口55aと、冷却用媒体送出口55bと、冷却用媒体送入口55cと、冷却用媒体流出口55dと、第1機器入口側接続口56aと、第1機器出口側接続口56bと、第2機器入口側接続口57aと、第2機器出口側接続口57bと、を有している。加熱用媒体流入口54aは、本発明における「第1流体流入口」の一例である。加熱用媒体送出口54bは、本発明における「第1流体送出口」の一例である。加熱用媒体送入口54cは、本発明における「第1流体送入口」の一例である。加熱用媒体流出口54dは、本発明における「第1流体流出口」の一例である。冷却用媒体流入口55aは、本発明における第2流体流入口の一例である。冷却用媒体送出口55bは、本発明における「第2流体送出口」の一例である。冷却用媒体送入口55cは、本発明における「第2流体送入口」の一例である。冷却用媒体流出口55dは、本発明における「第2流体流出口」の一例である。
【0064】
ここに、ケース41における回転軸42の軸方向の位置を、軸方向の一方である
図3の上方から順に、第1位置~第8位置の8個の位置に区分けする。第1機器出口側接続口56bは、第1位置に在る。加熱用媒体送出口54b及び冷却用媒体流出口55dは、第2位置に在る。加熱用媒体流入口54a及び冷却用媒体送入口55cは、第3位置に在る。第1機器入口側接続口56aは、第4位置に在る。第2機器出口側接続口57bは、第5位置に在る。加熱用媒体流出口54d及び冷却用媒体送出口55bは、第6位置に在る。加熱用媒体送入口54c及び冷却用媒体流入口55aは、第7位置に在る。第2機器入口側接続口57aは、第8位置に在る。
【0065】
そして、加熱用媒体送出口54b、加熱用媒体流入口54a、加熱用媒体流出口54d及び加熱用媒体送入口54cは、回転軸42の軸方向の一方からこの順で軸方向に並んでる。また、第1機器出口側接続口56b、第1機器入口側接続口56a、第2機器出口側接続口57b及び第2機器入口側接続口57aは、回転軸42の軸方向の一方からこの順で軸方向に並んでる。また、冷却用媒体流出口55d、冷却用媒体送入口55c、冷却用媒体送出口55b及び冷却用媒体流入口55aは、回転軸42の軸方向の一方からこの順で軸方向に並んでる。また、加熱用媒体送出口54b、加熱用媒体流入口54a、加熱用媒体流出口54d及び加熱用媒体送入口54cの列と、冷却用媒体流出口55d、冷却用媒体送入口55c、冷却用媒体送出口55b及び冷却用媒体流入口55aの列とは、回転軸42の周方向に180°隔てている。
【0066】
第1室47に通じる加熱用媒体流入口54aには、加熱用媒体回路2のヒータコア17の出口に接続された図示しない配管が接続されている。これにより、加熱用媒体流入口54aは、ヒータコア17を通過した加熱用媒体HTを第1室47に流入させ得る。
【0067】
第1室47に通じる加熱用媒体送出口54bと、第2室48に通じる加熱用媒体送入口54cとは、図示しない配管により接続されている。これにより、加熱用媒体送出口54bは、加熱用媒体HTを第1室47から第2室48に向けて送出し得る。また、加熱用媒体送入口54cは、加熱用媒体HTを第1室47から第2室48に送入させ得る。
【0068】
第2室48に通じる加熱用媒体流出口54dには、加熱用媒体ポンプ16の入口に接続された図示しない配管が接続されている。これにより、加熱用媒体流出口54dは、第2室48から加熱用媒体ポンプ16に向けて加熱用媒体HTを流出させ得る。
【0069】
第2室48に通じる冷却用媒体流入口55aには、冷却用媒体ポンプ22の出口側に接続された図示しない配管が接続されている。これにより、冷却用媒体流入口55aは、冷却用媒体LTを第2室48に流入させ得る。
【0070】
第2室48に通じる冷却用媒体送出口55bと、第1室47に通じる冷却用媒体送入口55cとは、図示しない配管により接続されている。これにより、冷却用媒体送出口55bは、冷却用媒体LTを第2室48から第1室47に向けて送出し得る。また、冷却用媒体送入口55cは、冷却用媒体LTを第2室48から第1室47に送入させ得る。
【0071】
第1室47に通じる冷却用媒体流出口55dには、チラー6の入口に接続された図示しない配管が接続されている。これにより、冷却用媒体流出口55dは、第1室47からチラー6に向けて冷却用媒体LTを流出させ得る。
【0072】
第1室47に通じる第1機器入口側接続口56aには、電池熱交換器7の入口に接続された図示しない配管が接続されている。また、第1室47に通じる第1機器出口側接続口56bには、電池熱交換器7の出口に接続された図示しない配管が接続されている。これにより、第1機器入口側接続口56aは、第1室47と電池熱交換器7の入口側とを連通して加熱用媒体HT又は冷却用媒体LTを第1室47から電池熱交換器7に向けて送出し得る。また、第1機器出口側接続口56bは、第1室47と電池熱交換器7の出口側とを連通して加熱用媒体HT又は冷却用媒体LTを電池熱交換器7から第1室47に送入させ得る。
【0073】
第2室48に通じる第2機器入口側接続口57aには、ラジエータ8の入口に接続された図示しない配管が接続されている。また、第2室48に通じる第2機器出口側接続口57bには、ラジエータ8の出口に接続された図示しない配管が接続されている。これにより、第2機器入口側接続口57aは、第2室48とラジエータ8の入口側とを連通して加熱用媒体HT又は冷却用媒体LTを第2室48からラジエータ8に向けて送出し得る。また、第2機器出口側接続口57bは、第2室48とラジエータ8の出口側とを連通して加熱用媒体HT又は冷却用媒体LTをラジエータ8から第2室48に送入させ得る。
【0074】
制御装置9は、電子制御装置よりなり、冷媒回路1、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3の作動を制御する。詳しくは、制御装置9は、冷媒回路1において、圧縮機10、第1膨張弁11及び第2膨張弁12の作動を制御する。制御装置9は、加熱用媒体回路2において、加熱用媒体ポンプ16、ヒータコア17、三方流量調整弁21、及びラジエータ8の作動を制御する。制御装置9は、冷却用媒体回路3において、冷却用媒体ポンプ22、及びラジエータ8の作動を制御する。制御装置9は、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3において、統合切替弁40の作動を制御する。
【0075】
ヒータコア17及びラジエータ8は、制御装置9により、以下のように切替制御される。
【0076】
すなわち、加熱用媒体回路2におけるヒータコア17は、図示しない送風ファンが作動するとともに第1ダンパ17Aが開放されることで、ヒータコア17に内気が送風される作動状態と、図示しない送風ファンが停止するか、あるいは第1ダンパ17Aが閉鎖されることで、ヒータコア17に内気が送風されない停止状態とに切替制御される。ヒータコア17の作動状態では、加熱用媒体HTと内気とが熱交換され、加熱用媒体HTが内気に放熱する。
【0077】
加熱用媒体回路2におけるラジエータ8は、図示しない冷却ファンが作動するとともに第2ダンパ8Aが開放されることで、ラジエータ8に外気が送風される作動状態と、図示しない冷却ファンが停止するか、あるいは第2ダンパ8Aが閉鎖されることで、ラジエータ8に外気が送風されない停止状態とに切替制御される。加熱用媒体回路2におけるラジエータ8の作動状態では、加熱用媒体HTと外気とが熱交換され、加熱用媒体HTが外気に放熱する。
【0078】
冷却用媒体回路3におけるラジエータ8は、図示しない冷却ファンが作動するとともに第2ダンパ8Aが開放されることで、ラジエータ8に外気が送風される作動状態と、図示しない冷却ファンが停止するか、あるいは第2ダンパ8Aが閉鎖されることで、ラジエータ8に外気が送風されない停止状態とに切替制御される。冷却用媒体回路3におけるラジエータ8の作動状態では、冷却用媒体LTと外気とが熱交換され、冷却用媒体LTが外気から吸熱する。
【0079】
加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における統合切替弁40は、制御装置9の制御により、第1パターン~第6パターンに切替制御されて、電池熱交換器7に加熱用媒体HT又は冷却用媒体LTの一方を選択的に流通させるとともに、ラジエータ8に加熱用媒体HT又は冷却用媒体LTの一方を選択的に流通させる。
【0080】
制御装置9は、駆動機構45を作動させて、回転軸42と共に回転弁体44を所定角度ずつ回転させることで、ケース41の12個の開口部53aと、第1室内47内の1-1分室51a、1-2分室51b、1-3分室51c及び1-4分室51d並びに第2室48内の2-1分室52a、2-2分室52b及び2-3分室52cとの連通を切り替えることにより、統合切替弁40を第1パターン~第6パターンの6個のパターンに切り替える。
【0081】
この実施例の統合切替弁40は、駆動機構45の作動により回転軸42と共に回転弁体44が時計周り方向Tに60°ずつ回転することにより、
図13に示す0°位置、
図7に示す60°位置、
図3に示す120°位置、
図11に示す180°位置、
図9に示す240°位置、
図5に示す300°位置の各状態になることで、第1パターン~第6パターンのいずれかに切り替わる。
【0082】
具体的には、
図11に示すように、回転弁体44が180°位置にあるとき、統合切替弁40が第1パターンとなる。後述するように、この車両用熱マネジメントシステムが冷房電池暖機(冷房要求大)モードで運転する際に、統合切替弁40が第1パターンになる。
【0083】
第1パターンでは、第1室47において、加熱用媒体送出口54b及び第1機器出口側接続口56bが1-1分室51aに開口し、冷却用媒体流出口55d及び冷却用媒体送入口55cが1-2分室51bに開口し、加熱用媒体流入口54a及び第1機器入口側接続口56aが1-3分室51cに開口している。また、この第1パターンでは、第2室48において、加熱用媒体流出口54d及び第2機器出口側接続口57bが2-1分室52aに開口し、冷却用媒体送出口55b及び冷却用媒体流入口55aが2-2分室52bに開口し、加熱用媒体送入口54c及び第2機器入口側接続口57aが2-3分室52cに開口している。
【0084】
これにより、第1パターンでは、1-1分室51aと2-3分室52cとが連通され、1-3分室51cと1-1分室51aとが第1機器又は第1熱交換器としての電池熱交換器7を介して連通され、2-2分室52bと1-2分室51bとが連通され、かつ、2-3分室52cと2-1分室52aとが第2機器又は第2熱交換器としてのラジエータ8を介して連通されている。
【0085】
こうして、第1パターンでは、統合切替弁40が、電池熱交換器7に加熱用媒体HTを流通させるとともに、ラジエータ8に加熱用媒体HTを流通させる。
【0086】
また、
図13に示すように、回転弁体44が0°位置にあるとき、統合切替弁40が第2パターンとなる。後述するように、この車両用熱マネジメントシステムが暖房電池冷却(暖房要求大)モードで運転する際に、統合切替弁40が第2パターンになる。
【0087】
第2パターンでは、第1室47において、第1機器出口側接続口56b及び冷却用媒体流出口55dが1-1分室51aに開口し、加熱用媒体送出口54b及び加熱用媒体流入口54aが1-2分室51bに開口し、冷却用媒体送入口55c及び第1機器入口側接続口56aが1-3分室51cに開口している。また、この第2パターンでは、第2室48において、第2機器出口側接続口57b及び冷却用媒体送出口55bが2-1分室52aに開口し、加熱用媒体流出口54d及び加熱用媒体送入口54cが2-2分室52bに開口し、冷却用媒体流入口55a及び第2機器入口側接続口57aが2-3分室52cに開口している。
【0088】
これにより、第2パターンでは、1-2分室51bと2-2分室52bとが連通され、1-3分室51cと1-1分室51aとが第1機器又は第1熱交換器としての電池熱交換器7を介して連通され、2-1分室52aと1-3分室51cとが連通され、かつ、2-3分室52cと2-1分室52aとが第2機器又は第2熱交換器としてのラジエータ8を介して連通されている。
【0089】
こうして、第2パターンでは、統合切替弁40が、電池熱交換器7に冷却用媒体LTを流通させるとともに、ラジエータ8に冷却用媒体LTを流通させる。
【0090】
また、
図9に示すように、回転弁体44が240°位置にあるとき、統合切替弁40が第3パターンとなる。後述するように、この車両用熱マネジメントシステムが電池暖機モードで運転する際に、統合切替弁40が第3パターンになる。
【0091】
第3パターンでは、第1室47において、第1機器出口側接続口56b及び加熱用媒体送出口54bが1-1分室51aに開口し、冷却用媒体流出口55d及び冷却用媒体送入口55cが1-2分室51bに開口し、加熱用媒体流入口54a及び第1機器入口側接続口56aが1-3分室51cに開口している。また、この第3パターンでは、第2室48において、第2機器出口側接続口57b及び冷却用媒体送出口55bが2-1分室52aに開口し、加熱用媒体流出口54d及び加熱用媒体送入口54cが2-2分室52bに開口し、冷却用媒体流入口55a及び第2機器入口側接続口57aが2-3分室52cに開口している。
【0092】
これにより、第3パターンでは、1-1分室51aと2-2分室52bとが連通され、1-3分室51cと1-1分室51aとが第1機器又は第1熱交換器としての電池熱交換器7を介して連通され、2-1分室52aと1-2分室51bとが連通され、かつ、2-3分室52cと2-1分室52aとが第2機器又は第2熱交換器としてのラジエータ8を介して連通されている。
【0093】
こうして、第3パターンでは、統合切替弁40が、電池熱交換器7に加熱用媒体HTを流通させるとともに、ラジエータ8に冷却用媒体LTを流通させる。
【0094】
また、
図7に示すように、回転弁体44が60°位置にあるとき、統合切替弁40が第4パターンとなる。後述するように、この車両用熱マネジメントシステムが電池冷却モードで運転する際に、統合切替弁40が第4パターンになる。
【0095】
第4パターンでは、第1室47において、第1機器出口側接続口56b及び冷却用媒体流出口55dが1-1分室51aに開口し、加熱用媒体送出口54b及び加熱用媒体流入口54aが1-2分室51bに開口し、冷却用媒体送入口55c及び第1機器入口側接続口56aが1-3分室51cに開口している。また、この第4パターンでは、第2室48において、第2機器出口側接続口57b及び加熱用媒体流出口54dが2-1分室52aに開口し、冷却用媒体送出口55b及び冷却用媒体流入口55aが2-2分室52bに開口し、加熱用媒体送入口54c及び第2機器入口側接続口57aが2-3分室52cに開口している。
【0096】
これにより、第4パターンでは、1-2分室51bと2-3分室52cとが連通され、1-3分室51cと1-1分室51aとが第1機器又は第1熱交換器としての電池熱交換器7を介して連通され、2-2分室52bと1-3分室51cとが連通され、かつ、2-3分室52cと2-1分室52aとが第2機器又は第2熱交換器としてのラジエータ8を介して連通されている。
【0097】
こうして、第4パターンでは、統合切替弁40が、電池熱交換器7に冷却用媒体LTを流通させるとともに、ラジエータ8に加熱用媒体HTを流通させる。
【0098】
また、
図3に示すように、回転弁体44が120°位置にあるとき、統合切替弁40が第5パターンとなる。後述するように、この車両用熱マネジメントシステムが冷房モードで運転する際に、統合切替弁40が第5パターンになる。
【0099】
第5パターンでは、第1室47において、第1機器出口側接続口56bが1-1分室51aに開口し、加熱用媒体送出口54b及び加熱用媒体流入口54aが1-2分室51bに開口し、第1機器入口側接続口56aが1-3分室51cに開口し、冷却用媒体流出口55d及び冷却用媒体送入口55cが1-4分室51dに開口している。また、この第5パターンでは、第2室48において、第2機器出口側接続口57b及び加熱用媒体流出口54dが2-1分室52aに開口し、冷却用媒体送出口55b及び冷却用媒体流入口55aが2-2分室52bに開口し、加熱用媒体送入口54c及び第2機器入口側接続口57aが2-3分室52cに開口している。
【0100】
これにより、第5パターンでは、1-2分室51bと2-3分室52cとが連通され、2-2分室52bと1-4分室51dとが連通され、かつ、2-3分室52cと2-1分室52aとが第2機器又は第2熱交換器としてのラジエータ8を介して連通されている。
【0101】
こうして、第5パターンでは、統合切替弁40が、ラジエータ8に加熱用媒体HTを流通させるとともに、電池熱交換器7に加熱用媒体HT及び冷却用媒体LTの双方を流通させないようにする。
【0102】
また、
図5に示すように、回転弁体44が300°位置にあるとき、統合切替弁40が第6パターンとなる。後述するように、この車両用熱マネジメントシステムが暖房モードで運転する際に、統合切替弁40が第6パターンになる。
【0103】
第6パターンでは、第1室47において、第1機器出口側接続口56bが1-1分室51aに開口し、冷却用媒体流出口55d及び冷却用媒体送入口55cが1-2分室51bに開口し、第1機器入口側接続口56aが1-3分室51cに開口し、加熱用媒体送出口54b及び加熱用媒体流入口54aが1-4分室51dに開口している。また、この第5パターンでは、第2室48において、第2機器出口側接続口57b及び冷却用媒体送出口55bが2-1分室52aに開口し、加熱用媒体流出口54d及び加熱用媒体送入口54cが2-2分室52bに開口し、冷却用媒体流入口55a及び第2機器入口側接続口57aが2-3分室52cに開口している。
【0104】
これにより、第6パターンでは、1-4分室51dと2-2分室52bとが連通され、2-1分室52aと1-2分室51bとが第1機器又は第1熱交換器としての電池熱交換器7を介して連通され、かつ、2-3分室52cと2-1分室52aとが第2機器又は第2熱交換器としてのラジエータ8を介して連通されている。
【0105】
こうして、第6パターンでは、統合切替弁40が、ラジエータ8に冷却用媒体LTを流通させるとともに、電池熱交換器7に加熱用媒体HT及び冷却用媒体LTの双方を流通させないようにする。
【0106】
こうして、制御装置9は、統合切替弁40を切替制御することにより、電池熱交換器7及びラジエータ8に対する加熱用媒体HT及び冷却用媒体LTの流通を制御する。すなわち、制御装置9は、電池熱交換器7及びラジエータ8に対して、加熱用媒体HT又は冷却用媒体LTの一方を選択的に流通させたり、どちらも流通させないようにしたりする。
【0107】
上記構成を有する実施例1の車両用熱マネジメントシステムは、制御装置9の制御により、例えば、以下に説明するように、冷房モード、暖房モード、電池冷却モード、電池暖機モード、冷房電池暖機(冷房要求大)モード、暖房電池冷却(暖房要求大)モードの各運転モードで作動する。
【0108】
統合切替弁40の各パターンにおける状態を示す
図3、
図5、
図7、
図9、
図11及び
図13においては、加熱用媒体HTの流れを太い実線の矢印で示し、冷却用媒体LTの流れを太い一点鎖線の矢印で示す。
【0109】
(冷房モード)
図2に示すように、冷房モードでは、圧縮機10、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が作動状態とされ、第2膨張弁12が停止状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ22及びラジエータ8が作動状態とされ、ヒータコア17が停止状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における統合切替弁40は第5パターンとされる。また、三方流量調整弁21は、加熱用媒体HTが吸熱器18が配置された第2流路20ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0110】
これにより、冷媒回路1では、圧縮機10で圧縮されて吐出された冷媒Rは、水冷コンデンサ5、第1膨張弁11、エバポレータ4、蒸発圧力調整弁13をこの順で流通する。圧縮機10から吐出された冷媒Rは、水冷コンデンサ5を経由して第1膨張弁11にて膨張された後、エバポレータ4に導入される。そして、エバポレータ4にて冷媒Rと内気との熱交換により、内気が冷媒Rに放熱する。その結果、内気が冷却される。冷媒Rによって冷却された内気は室内の冷房に供される。エバポレータ4から流出した冷媒Rは圧縮機10で圧縮された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0111】
加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体HTが水冷コンデンサ5に導入される。水冷コンデンサ5では、冷媒Rと加熱用媒体HTとの間で熱交換が行われ、冷媒Rが加熱用媒体HTに放熱する。そして、水冷コンデンサ5から出た加熱用媒体HTは、停止状態のヒータコア17を経て統合切替弁40に導入される。
【0112】
図3に示すように、統合切替弁40では、ヒータコア17から出た加熱用媒体HTは、加熱用媒体流入口54aから1-2分室51b内に流入する。加熱用媒体送出口54bを介して1-2分室51bから送出した加熱用媒体HTは、加熱用媒体送入口54cを介して2-3分室52cに送入される。第2機器入口側接続口57aを介して2-3分室52cから出た加熱用媒体HTは、作動状態のラジエータ8に導入される。ラジエータ8では、冷媒Rにより加熱された加熱用媒体HTが外気に放熱する。ラジエータ8から出た加熱用媒体HTは、第2機器出口側接続口57bから2-1分室52aに入る。そして、その加熱用媒体HTは、加熱用媒体流出口54dを介して2-1分室52aから流出して、加熱用媒体ポンプ16に導入される。このように、冷房モードでは、統合切替弁40が第5パターンとなり、加熱用媒体回路2における加熱用媒体HTは、電池熱交換器7を流れずに、ラジエータ8を流れる。
【0113】
冷却用媒体回路3では、冷却用媒体ポンプ22で圧送された冷却用媒体LTが統合切替弁40に導入され、冷却用媒体流入口55aから2-2分室52b内に流入する。冷却用媒体送出口55bを介して2-2分室52bから送出した冷却用媒体LTは、冷却用媒体送入口55cを介して1-4分室51dに送入される。そして、冷却用媒体LTは、冷却用媒体流出口55dを介して1-4分室51dから流出して、チラー6を通過後、冷却用媒体ポンプ22に導入される。このように、冷房モードでは、統合切替弁40が第5パターンとなり、冷却用媒体回路3における冷却用媒体LTは、電池熱交換器7及びラジエータ8の双方を流れない。なお、冷房モードでは、冷却用媒体回路3において、冷却用媒体LTをラジエータ8にも流す必要がないため、冷却用媒体ポンプ22を停止状態としてもよい。
【0114】
こうして、冷媒回路1の冷却能力に応じて車室内を冷房することができる。
【0115】
ここに、吸熱器18の冷却対象機器が高温なため、冷却対象機器を冷却する必要がある場合は、三方流量調整弁35は、加熱用媒体HTが吸熱器18及び水冷コンデンサ5の双方に流れる状態とされる。これにより、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体HTが吸熱器18にも流れるため、ラジエータ8にて外気に放熱して冷却された加熱用媒体HTによって、冷却対象機器を冷却することができる。
【0116】
(暖房モード)
図4に示すように、暖房モードでは、圧縮機10、第2膨張弁12が作動状態とされ、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が停止状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ22、ヒータコア17及びラジエータ8が作動状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における統合切替弁40は第6パターンとされる。また、三方流量調整弁21は、加熱用媒体HTが吸熱器18側ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0117】
これにより、冷却用媒体回路3では、冷却用媒体ポンプ22で圧送された冷却用媒体LTが統合切替弁40に導入される。
図5に示すように、統合切替弁40に導入された冷却用媒体LTは、冷却用媒体流入口55aから2-3分室52c内に流入する。第2機器入口側接続口57aを介して2-3分室52cから出た冷却用媒体LTは、作動状態のラジエータ8に導入される。ラジエータ8では、冷却用媒体LTと外気との熱交換により、冷却用媒体LTが外気から吸熱する。外気によって加熱された冷却用媒体LTはラジエータ8から出て、第2機器出口側接続口57bから2-1分室52aに入る。冷却用媒体送出口55bを介して2-1分室52aから送出した冷却用媒体LTは、冷却用媒体送入口55cを介して1-2分室51bに送入される。そして、その外気によって加熱された冷却用媒体LTは、冷却用媒体流出口55dを介して1-2分室51bから流出して、チラー6に導入される。このように、暖房モードでは、統合切替弁40が第6パターンとなり、冷却用媒体回路3における冷却用媒体LTは、電池熱交換器7を流れずに、ラジエータ8を流れる。
【0118】
冷媒回路1では、圧縮機10で圧縮された冷媒Rが水冷コンデンサ5、第2膨張弁12、チラー6をこの順で流通する。チラー6では、冷却用媒体LTと冷媒Rとの熱交換により、冷却用媒体LTが冷媒Rに放熱する。冷却用媒体LTによって加熱された冷媒Rは、圧縮機10で圧縮されてさらに加熱された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0119】
加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体HTが水冷コンデンサ5に導入される。水冷コンデンサ5では、冷媒Rと加熱用媒体HTとの熱交換により、加熱用媒体HTが冷媒Rから吸熱する。その結果、加熱用媒体HTが加熱される。冷媒Rによって加熱された加熱用媒体HTは、作動状態のヒータコア17に導入される。ヒータコア17では、加熱用媒体HTと内気との熱交換により、内気が加熱用媒体HTから吸熱する。その結果、内気が加熱されて、車室内の暖房に供される。
【0120】
ヒータコア17から出た加熱用媒体HTは、統合切替弁40に導入される。
図5に示すように、統合切替弁40に導入された加熱用媒体HTは、加熱用媒体流入口54aから1-4分室51d内に流入する。加熱用媒体送出口54bを介して1-4分室51dから送出した加熱用媒体HTは、加熱用媒体送入口54cを介して2-2分室52bに送入される。そして、その加熱用媒体HTは、加熱用媒体流出口54dを介して2-2分室52bから流出して、加熱用媒体ポンプ16に導入される。このように、暖房モードでは、統合切替弁40が第6パターンとなり、加熱用媒体回路2における加熱用媒体HTは、電池熱交換器7及びラジエータ8の双方を流れない。
【0121】
こうして、空気熱を利用しつつ、冷媒回路1の暖房能力に応じて車室内を暖房することができる。
【0122】
(電池冷却モード)
図6に示すように、電池冷却モードでは、圧縮機10及び第2膨張弁12が作動状態とされ、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が停止状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ22及びラジエータ8が作動状態とされ、ヒータコア17が停止状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における統合切替弁40は第4パターンとされる。また、三方流量調整弁21は、加熱用媒体HTが吸熱器18側ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0123】
これにより、冷却用媒体回路3では、冷却用媒体ポンプ22で圧送された冷却用媒体LTが統合切替弁40に導入される。
図7に示すように、統合切替弁40に導入された冷却用媒体LTは、冷却用媒体流入口55aから2-2分室52b内に流入する。冷却用媒体送出口55bを介して2-2分室52bから送出した冷却用媒体LTは、冷却用媒体送入口55cを介して1-3分室51cに送入される。第1機器入口側接続口56aを介して1-3分室51cから出た冷却用媒体LTは、電池熱交換器7に導入される。電池熱交換器7では、冷却用媒体LTと車載電池との熱交換により、車載電池が冷却用媒体LTに放熱する。その結果、車載電池が冷却される。車載電池によって加熱された冷却用媒体LTは、第1機器出口側接続口56bを介して1-1分室51aに入る。そして、その車載電池によって加熱された冷却用媒体LTは、冷却用媒体流出口55dを介して1-1分室51aから流出して、チラー6に導入される。このように、電池冷却モードでは、統合切替弁40が第4パターンとなり、冷却用媒体回路3における冷却用媒体LTは、電池熱交換器7を流れて、ラジエータ8を流れない。
【0124】
冷媒回路1では、圧縮機10で圧縮された冷媒Rが水冷コンデンサ5、第2膨張弁12、チラー6をこの順で流通する。チラー6では、冷却用媒体LTと冷媒Rとの熱交換により、冷却用媒体LTが冷媒Rに放熱する。その結果、冷却用媒体LTが冷却される。冷却用媒体LTによって加熱された冷媒Rは、圧縮機10で圧縮された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0125】
加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体HTが水冷コンデンサ5に導入される。水冷コンデンサ5では、冷媒Rと加熱用媒体HTとの熱交換により、冷媒Rが加熱用媒体HTに放熱する。その結果、冷媒Rが冷却される。冷媒Rによって加熱された加熱用媒体HTは、停止状態のヒータコア17を通過後、統合切替弁40に導入される。
【0126】
図7に示すように、統合切替弁40に導入された加熱用媒体HTは、加熱用媒体流入口54aから1-2分室51b内に流入する。加熱用媒体送出口54bを介して1-2分室51bから送出した加熱用媒体HTは、加熱用媒体送入口54cを介して2-3分室52cに送入される。そして、その加熱用媒体HTは、第2機器入口側接続口57aを介して作動状態のラジエータ8に導入される。ラジエータ8では、加熱用媒体HTと外気との熱交換により、加熱用媒体HTが外気に放熱する。その結果、加熱用媒体HTが冷却される。ラジエータ8にて外気に放熱した加熱用媒体HTは、第2機器出口側接続口57bを介して2-1分室52aに入る。そして、その外気に放熱した加熱用媒体HTは、加熱用媒体流出口54dを介して2-1分室52aから流出して、加熱用媒体ポンプ16に導入される。このように、電池冷却モードでは、統合切替弁40が第4パターンとなり、加熱用媒体回路2における加熱用媒体HTは、電池熱交換器7を流れずに、ラジエータ8を流れる。
【0127】
こうして、冷媒回路1の冷却能力に応じて車載電池を冷却することができる。
【0128】
(電池暖機モード)
図8に示すように、電池暖機モードでは、圧縮機10及び第2膨張弁12が作動状態とされ、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が停止状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ22及びラジエータ8が作動状態とされ、ヒータコア17が停止状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における統合切替弁40が第3パターンとされる。また、三方流量調整弁21は、加熱用媒体HTが吸熱器18側ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0129】
これにより、冷却用媒体回路3では、冷却用媒体ポンプ22で圧送された冷却用媒体LTが統合切替弁40に導入される。
図9に示すように、統合切替弁40に導入された冷却用媒体LTは、冷却用媒体流入口55aから2-3分室52c内に流入する。第2機器入口側接続口57aを介して2-3分室52cから出た冷却用媒体LTは、作動状態のラジエータ8に導入される。ラジエータ8では、冷却用媒体LTと外気との熱交換により、冷却用媒体LTが外気から吸熱する。その結果、冷却用媒体LTが加熱される。外気によって加熱された冷却用媒体LTは、第2機器出口側接続口57bを介して2-1分室52aに入る。冷却用媒体送出口55bを介して2-1分室52aから送出した冷却用媒体LTは、冷却用媒体送入口55cを介して1-2分室51bに送入される。そして、その外気によって加熱された冷却用媒体LTは、冷却用媒体流出口55dを介して1-2分室51bから流出して、チラー6に導入される。このように、電池暖機モードでは、統合切替弁40が第3パターンとなり、冷却用媒体回路3における冷却用媒体LTは、電池熱交換器7を流れずに、ラジエータ8を流れる。
【0130】
冷媒回路1では、圧縮機10で圧縮された冷媒Rが水冷コンデンサ5、第2膨張弁12、チラー6をこの順で流通する。チラー6では、冷却用媒体LTと冷媒Rとの熱交換により、冷媒Rが冷却用媒体LTから吸熱する。その結果、冷媒Rが加熱される。冷却用媒体LTによって加熱された冷媒Rは、圧縮機10で圧縮されてさらに加熱された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0131】
加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体HTが、水冷コンデンサ5に導入される。水冷コンデンサ5では、冷媒Rと加熱用媒体HTとの熱交換により、加熱用媒体HTが冷媒Rから吸熱する。その結果、加熱用媒体HTが加熱される。冷媒Rによって加熱された加熱用媒体HTは、停止状態のヒータコア17を通過後、統合切替弁40に導入される。
【0132】
図9に示すように、統合切替弁40に導入された加熱用媒体HTは、加熱用媒体流入口54aから1-3分室51c内に流入する。第1機器入口側接続口56aを介して1-3分室51cから出た加熱用媒体HTは、電池熱交換器7に導入される。電池熱交換器7では、加熱用媒体HTと車載電池との熱交換により、車載電池が加熱用媒体HTから吸熱する。その結果、車載電池が加熱される。電池熱交換器7にて車載電池に放熱した加熱用媒体HTは、第1機器出口側接続口56bを介して1-1分室51aに入る。加熱用媒体送出口54bを介して1-1分室51aから送出した加熱用媒体HTは、加熱用媒体送入口54cを介して2-2分室52bに送入される。そして、その車載電池に放熱した加熱用媒体HTは、加熱用媒体流出口54dを介して2-2分室52bから流出して、加熱用媒体ポンプ16に導入される。このように、電池暖機モードでは、統合切替弁40が第3パターンとなり、加熱用媒体回路2における加熱用媒体HTは、電池熱交換器7を流れて、ラジエータ8を流れない。
【0133】
こうして、空気熱を利用しつつ、冷媒回路1の暖機能力に応じて車載電池を暖機することができる。
【0134】
(冷房電池暖機(冷房要求大)モード)
図10に示すように、冷房電池暖機(冷房要求大)モードでは、圧縮機10、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が作動状態とされ、第2膨張弁12が停止状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ22及びラジエータ8が作動状態とされ、ヒータコア17が停止状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における統合切替弁40は第1パターンとされる。また、三方流量調整弁21は、加熱用媒体HTが吸熱器18側ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0135】
これにより、冷媒回路1では、圧縮機10で圧縮されて吐出された冷媒Rは、水冷コンデンサ5、第1膨張弁11、エバポレータ4、蒸発圧力調整弁13をこの順で流通する。圧縮機10から吐出された冷媒Rは、水冷コンデンサ5を経由して第1膨張弁11にて膨張された後、エバポレータ4に導入される。そして、エバポレータ4にて冷媒Rと内気との熱交換により、内気が冷媒Rに放熱する。その結果、内気が冷却される。冷媒Rによって冷却された内気は室内の冷房に供される。エバポレータ4から流出した冷媒Rは圧縮機10で圧縮された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0136】
加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体HTが水冷コンデンサ5に導入される。水冷コンデンサ5では、冷媒Rと加熱用媒体HTとの熱交換により、加熱用媒体HTが冷媒Rから吸熱する。その結果、加熱用媒体HTが加熱される。冷媒Rによって加熱された加熱用媒体HTは、停止状態のヒータコア17を経過後、統合切替弁40に導入される。
【0137】
図11に示すように、統合切替弁40に導入された加熱用媒体HTは、加熱用媒体流入口54aから1-3分室51c内に流入する。第1機器入口側接続口56aを介して1-3分室51cから出た加熱用媒体HTは、電池熱交換器7に導入される。電池熱交換器7では、加熱用媒体HTと車載電池との熱交換により、車載電池が加熱用媒体HTから吸熱する。その結果、車載電池が加熱される。電池熱交換器7にて車載電池に放熱した加熱用媒体HTは、第1機器出口側接続口56bを介して1-1分室51aに入る。加熱用媒体送出口54bを介して1-1分室51aから送出した加熱用媒体HTは、加熱用媒体送入口54cを介して2-3分室52cに送入される。第2機器入口側接続口57aを介して2-3分室52cから出た加熱用媒体HTは、作動状態のラジエータ8に導入される。ラジエータ8では、加熱用媒体HTと外気との熱交換により、加熱用媒体HTが外気に放熱する。その結果、加熱用媒体HTが冷却され、大きな冷房要求に応えることができる。外気に放熱した加熱用媒体HTは、第2機器出口側接続口57bを介して2-1分室52aに入る。そして、その外気に放熱した加熱用媒体HTは、加熱用媒体流出口54dを介して2-1分室52aから流出して、加熱用媒体ポンプ16に導入される。このように、冷房電池暖機(冷房要求大)モードでは、統合切替弁40が第1パターンとなり、加熱用媒体回路2における加熱用媒体HTは、電池熱交換器7及びラジエータ8の双方を流れる。
【0138】
冷却用媒体回路3では、冷却用媒体ポンプ22で圧送された冷却用媒体LTが統合切替弁40に導入され、冷却用媒体流入口55aから2-2分室52b内に流入する。冷却用媒体送出口55bを介して2-2分室52bから送出した冷却用媒体LTは、冷却用媒体送入口55cを介して1-2分室51bに送入される。そして、冷却用媒体LTは、冷却用媒体流出口55dを介して1-2分室51bから流出して、チラー6を通過後、冷却用媒体ポンプ22に導入される。このように、冷房電池暖機(冷房要求大)モードでは、統合切替弁40が第1パターンとなり、冷却用媒体回路3における冷却用媒体LTは、電池熱交換器7及びラジエータ8の双方を流れない。なお、冷房電池暖機(冷房要求大)モードでは、冷却用媒体回路3において、冷却用媒体LTをラジエータ8にも流す必要がないため、冷却用媒体ポンプ22を停止状態としてもよい。
【0139】
こうして、加熱用媒体HTが外気に放熱することで、大きな冷房要求に応えつつ冷媒回路1の冷房能力に応じて車室内を冷房することができるとともに、冷媒回路1の暖機能力に応じて車載電池を暖機することができる。
【0140】
(暖房電池冷却(暖房要求大)モード)
図12に示すように、暖房電池冷却(暖房要求大)モードでは、圧縮機10及び第2膨張弁12が作動状態とされ、第1膨張弁11及び蒸発圧力調整弁13が停止状態とされる。また、加熱用媒体ポンプ16、冷却用媒体ポンプ22、ヒータコア17及びラジエータ8が作動状態とされる。そして、加熱用媒体回路2及び冷却用媒体回路3における統合切替弁40は第2パターンとされる。また、三方流量調整弁21は、加熱用媒体HTが吸熱器18側ではなく水冷コンデンサ5側を流れる状態とされる。
【0141】
これにより、冷却用媒体回路3では、冷却用媒体ポンプ22で圧送された冷却用媒体LTが統合切替弁40に導入される。
図13に示すように、統合切替弁40に導入された冷却用媒体LTは、冷却用媒体流入口55aから2-3分室52c内に流入する。第2機器入口側接続口57aを介して2-3分室52cから出た冷却用媒体LTは、作動状態のラジエータ8に導入される。ラジエータ8では、冷却用媒体LTと外気との熱交換により、冷却用媒体LTが外気から吸熱する。その結果、冷却用媒体LTが加熱される。外気によって加熱された冷却用媒体LTは、第2機器出口側接続口57bを介して2-1分室52aに入る。冷却用媒体送出口55bを介して2-1分室52aから送出した冷却用媒体LTは、冷却用媒体送入口55cを介して1-3分室51cに送入される。そして、その外気によって加熱された冷却用媒体LTは、第1機器入口側接続口56aを介して電池熱交換器7に導入される。電池熱交換器7では、冷却用媒体LTと車載電池との熱交換により、車載電池が冷却用媒体LTに放熱する。その結果、車載電池が冷却される。車載電池によって加熱された冷却用媒体LTは、第1機器出口側接続口56bを介して1-1分室51aに入る。そして、その車載電池によって加熱された冷却用媒体LTは、冷却用媒体流出口55dを介して1-1分室51aから流出して、チラー6に導入される。このように、暖房電池冷却(暖房要求大)モードでは、統合切替弁40が第2パターンとなり、冷却用媒体回路3における冷却用媒体LTは、電池熱交換器7及びラジエータ8の双方を流れる。
【0142】
冷媒回路1では、圧縮機10で圧縮された冷媒Rが水冷コンデンサ5、第2膨張弁12、チラー6をこの順で流通する。チラー6では、冷却用媒体LTと冷媒Rとの熱交換により、冷媒Rが冷却用媒体LTから吸熱する。その結果、冷媒Rが加熱される。冷却用媒体LTによって加熱された冷媒Rは、圧縮機10で圧縮されてさらに加熱された後、水冷コンデンサ5に導入される。
【0143】
加熱用媒体回路2では、加熱用媒体ポンプ16で圧送された加熱用媒体HTが、水冷コンデンサ5、作動状態のヒータコア17をこの順で流通する。水冷コンデンサ5では、冷媒Rと加熱用媒体HTとの熱交換により、加熱用媒体HTが冷媒Rから吸熱する。その結果、加熱用媒体HTが加熱される。冷媒Rによって加熱された加熱用媒体HTは、作動状態のヒータコア17に導入される。ヒータコア17では、加熱用媒体HTと内気との熱交換により、内気が加熱用媒体HTから吸熱する。その結果、内気が加熱されて、車室内の暖房に供される。これにより、加熱用媒体HTが冷却され、大きな暖房要求に応えることができる。ヒータコア17を経過した加熱用媒体HTは統合切替弁40に導入される。
【0144】
図13に示すように、統合切替弁40に導入された加熱用媒体HTは、加熱用媒体流入口54aから1-2分室51b内に流入する。加熱用媒体送出口54bを介して1-2分室51bから送出した加熱用媒体HTは、加熱用媒体送入口54cを介して2-2分室52bに送入される。そして、その加熱用媒体HTは、加熱用媒体流出口54dを介して2-2分室52bから流出して、加熱用媒体ポンプ16に導入される。このように、暖房電池冷却(暖房要求大)モードでは、統合切替弁40が第2パターンとなり、加熱用媒体回路2における加熱用媒体HTは、電池熱交換器7及びラジエータ8の双方を流れない。
【0145】
こうして、冷媒回路1の冷却能力に応じて車載電池を冷却することができるとともに、空気熱及び車載電池から吸熱した熱を利用することで、大きな暖房要求に応えつつ冷媒回路1の暖房能力に応じて室内を暖房することができる。
【0146】
以上のとおり、実施例1の車両用熱マネジメントシステムでは、統合切替弁40の作動により、電池熱交換器7に対して、加熱用媒体HT又は冷却用媒体LTの一方を選択的に流通させることで、車載電池を暖機したり、冷却したりする。また、ラジエータ8に対しても、加熱用媒体HT又は冷却用媒体LTの一方を選択的に流通させることで、加熱用媒体HTで外気に放熱したり、冷却用媒体LTで外気から吸熱したりすることができる。このため、複数の三方弁や開閉弁等を用いる必要がなく、部品点数を削減できる。
【0147】
そして、この車両用熱マネジメントシステムでは、一つのラジエータ8にて外気との吸放熱を行って、システム全体の熱収支において余剰分を放熱したり、不足分を吸熱したりすることができるとともに、電気ヒータを別途用いることなく車室内の暖房及び電池の暖機を行ことができるため、構成部品を削減できる。
【0148】
したがって、実施例1の車両用熱マネジメントシステムによれば、回路構成の簡素化と低廉化とを実現できる。
【0149】
また、この統合切替弁40は、回転弁体44の回転に伴って12個の開口部53aと第1室47内の4個の分室及び第2室48内の3個の分室との連通が切り替わることにより、第1パターン~第6パターンの6個のパターンに切り替わる。これにより、電池熱交換器7に加熱用媒体HT及び冷却用媒体LTの一方を流通させるとともにラジエータ8に加熱用媒体HT及び冷却用媒体LTの他方を流通させたり、電池熱交換器7に加熱用媒体HT及び冷却用媒体LTの一方を流通させるとともにラジエータ8に加熱用媒体HT及び冷却用媒体LTの他方を流通させたり、電池熱交換器7に対して加熱用媒体HT及び冷却用媒体LTの双方を流通させることなく、ラジエータ8に対して加熱用媒体HT又は冷却用媒体LTを流通させたりすることができる。
【0150】
したがって、この統合切替弁40は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムに好適に利用することができる。
【0151】
(実施例2)
図14~
図17に示す実施例2の車両用熱マネジメントシステムは、実施例1の車両用熱マネジメントシステムにおいて、統合切替弁40の構成を変更している。
【0152】
実施例2の車両用熱マネジメントシステムにおける統合切替弁40Aは、実施例1の車両用熱マネジメントシステムにおける統合切替弁40の回転弁体44の代わりに、回転弁体44Aを用いている。この回転弁体44Aにおける第1弁部49Aは、第1室47内を、回転軸42の周方向及び軸方向に並ぶ3個の1-1分室51a、1-2分室51b及び1-3分室51cに仕切っている。
【0153】
ここに、回転軸42の軸方向において、第1室47内を、上部、中上部、中下部及び下部の4つに区分けする。第1室47内において、1-1分室51aは上部の全周領域と中上部の1/2周領域とを占め、1-2分室51bは中上部及び中下部の1/2周領域を占め、1-3分室51cは下部の全周領域と中下部の1/2周領域とを占めている。1-1分室51aにおける中上部の1/2周領域と、1-3分室51cにおける中下部の1/2周領域とは、回転軸42の軸方向に並んでいる。
【0154】
回転弁体44Aにおける第2弁部50Aは、実施例1における回転弁体44の第2弁部50と同一の形状を有しており、第2室48内を、回転軸42の周方向及び軸方向に並ぶ3個の2-1分室52a、2-2分室52b及び2-3分室52cに仕切っている。なお、第1室47内において上記1/2周領域を占める1-2分室51bと、第2室48内において上記1/2周領域を占める2-2分室52bとは、周方向に所定角度ずれている。
【0155】
この実施例の統合切替弁40Aは、駆動機構45の作動により回転軸42と共に回転弁体44Aが時計周り方向Tに90°ずつ回転することにより、
図14に示す0°位置、
図15に示す90°位置、
図16に示す180°位置、
図17に示す270°位置の各状態になることで、第1パターン~第4パターンのいずれかに切り替わる。
【0156】
具体的には、
図16に示すように、回転弁体44Aが180°位置にあるとき、統合切替弁40Aが第1パターンとなる。第1パターンでは、第1室47において、第1機器出口側接続口56b及び加熱用媒体送出口54bが1-1分室51aに開口し、冷却用媒体流出口55d及び冷却用媒体送入口55cが1-2分室51bに開口し、加熱用媒体流入口54a及び第1機器入口側接続口56aが1-3分室51cに開口している。また、この第1パターンでは、第2室48において、加熱用媒体流出口54d及び第2機器出口側接続口57bが2-1分室52aに開口し、冷却用媒体送出口55b及び冷却用媒体流入口55aが2-2分室52bに開口し、加熱用媒体送入口54c及び第2機器入口側接続口57aが2-3分室52cに開口している。
【0157】
これにより、第1パターンでは、1-1分室51aと2-3分室52cとが連通され、1-3分室51cと1-1分室51aとが第1機器又は第1熱交換器である電池熱交換器7を介して連通され、2-2分室52bと1-2分室51bとが連通され、かつ、2-3分室52cと2-1分室52aとが第2機器又は第2熱交換器であるラジエータ8を介して連通されている。
【0158】
こうして、第1パターンでは、統合切替弁40Aが、電池熱交換器7に加熱用媒体HTを流通させるとともに、ラジエータ8に加熱用媒体HTを流通させる。
【0159】
また、
図14に示すように、回転弁体44Aが0°位置にあるとき、統合切替弁40Aが第2パターンとなる。第2パターンでは、第1室47において、第1機器出口側接続口56b及び冷却用媒体流出口55dが1-1分室51aに開口し、加熱用媒体送出口54b及び加熱用媒体流入口54aが1-2分室51bに開口し、冷却用媒体送入口55c及び第1機器入口側接続口56aが1-3分室51cに開口している。また、この第2パターンでは、第2室48において、第2機器出口側接続口57b及び冷却用媒体送出口55bが2-1分室52aに開口し、加熱用媒体流出口54d及び加熱用媒体送入口54cが2-2分室52bに開口し、冷却用媒体流入口55a及び第2機器入口側接続口57aが2-3分室52cに開口している。
【0160】
これにより、第2パターンでは、1-2分室51bと2-2分室52bとが連通され、1-3分室51cと1-1分室51aとが第1機器又は第1熱交換器としての電池熱交換器7を介して連通され、2-1分室52aと1-3分室51cとが連通され、かつ、2-3分室52cと2-1分室52aとが第2機器又は第2熱交換器としてのラジエータ8を介して連通されている。
【0161】
こうして、第2パターンでは、統合切替弁40Aが、電池熱交換器7に冷却用媒体LTを流通させるとともに、ラジエータ8に冷却用媒体LTを流通させる。
【0162】
また、
図17に示すように、回転弁体44Aが270°位置にあるとき、統合切替弁40Aが第3パターンとなる。第3パターンでは、第1室47において、第1機器出口側接続口56b及び加熱用媒体送出口54bが1-1分室51aに開口し、冷却用媒体流出口55d及び冷却用媒体送入口55cが1-2分室51bに開口し、加熱用媒体流入口54a及び第1機器入口側接続口56aが1-3分室51cに開口している。また、この第3パターンでは、第2室48において、第2機器出口側接続口57b及び冷却用媒体送出口55bが2-1分室52aに開口し、加熱用媒体流出口54d及び加熱用媒体送入口54cが2-2分室52bに開口し、冷却用媒体流入口55a及び第2機器入口側接続口57aが2-3分室52cに開口している。
【0163】
これにより、第3パターンでは、1-1分室51aと2-2分室52bとが連通され、1-3分室51cと1-1分室51aとが第1機器又は第1熱交換器としての電池熱交換器7を介して連通され、2-1分室52aと1-2分室51bとが連通され、かつ、2-3分室52cと2-1分室52aとが第2機器又は第2熱交換器としてのラジエータ8を介して連通されている。
【0164】
こうして、第3パターンでは、統合切替弁40Aが、電池熱交換器7に加熱用媒体HTを流通させるとともに、ラジエータ8に冷却用媒体LTを流通させる。
【0165】
また、
図15に示すように、回転弁体44Aが90°位置にあるとき、統合切替弁40Aが第4パターンとなる。第4パターンでは、第1室47において、第1機器出口側接続口56b及び冷却用媒体流出口55dが1-1分室51aに開口し、加熱用媒体送出口54b及び加熱用媒体流入口54aが1-2分室51bに開口し、冷却用媒体送入口55c及び第1機器入口側接続口56aが1-3分室51cに開口している。また、この第4パターンでは、第2室48において、第2機器出口側接続口57b及び加熱用媒体流出口54dが2-1分室52aに開口し、冷却用媒体送出口55b及び冷却用媒体流入口55aが2-2分室52bに開口し、加熱用媒体送入口54c及び第2機器入口側接続口57aが2-3分室52cに開口している。
【0166】
これにより、第4パターンでは、1-2分室51bと2-3分室52cとが連通され、1-3分室51cと1-1分室51aとが第1機器又は第1熱交換器としての電池熱交換器7を介して連通され、2-2分室52bと1-3分室51cとが連通され、かつ、2-3分室52cと2-1分室52aとが第2機器又は第2熱交換器としてのラジエータ8を介して連通されている。
【0167】
こうして、第4パターンでは、統合切替弁40Aが、電池熱交換器7に冷却用媒体LTを流通させるとともに、ラジエータ8に加熱用媒体HTを流通させる。
【0168】
統合切替弁40Aの各パターンにおける状態を示す
図14~
図17においては、加熱用媒体HTの流れを太い実線の矢印で示し、冷却用媒体LTの流れを太い一点鎖線の矢印で示す。
【0169】
この車両用熱マネジメントシステムでは、制御装置9が統合切替弁40Aを第1パターン~第4パターンに切替制御することにより、電池冷却モード、電池暖機モード、冷房電池暖機(冷房要求大)モード、暖房電池冷却(暖房要求大)モードの各運転モードで作動する。
【0170】
具体的には、車両用熱マネジメントシステムは、統合切替弁40Aが第1パターンのときに冷房電池暖機(冷房要求大)モードで運転し、統合切替弁40が第2パターンのときに暖房電池冷却(暖房要求大)モードで運転し、統合切替弁40Aが第3パターンのときに電池暖機モードで運転し、統合切替弁40Aが第4パターンのときに電池冷却モードで運転する。
【0171】
その他の構成及び作用は、実施例1の車両用熱マネジメントシステムと同様である。
【0172】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0173】
例えば、実施例1及び2の統合切替弁40及び40Aにおいて、回転弁体44及び44Aの形状を変更して各分室の形状や大きさを変更するとともに、それに応じて各分室に接続させる各開口部53aの配置を変更してもよい。
【0174】
実施例1の車両用熱マネジメントシステムは、実施例1で例示した運転モードの他に、例えば、統合切替弁40が第4パターンのときにエバポレータ4を作動させての冷房電池冷却モード、統合切替弁40が第3パターンのときにヒータコア17を作動させての暖房電池暖機モード、統合切替弁40が第3パターンのときにエバポレータ4を作動させての冷房電池暖機(暖機要求大)モード、統合切替弁40が第4パターンのときにヒータコア17を作動させての暖房電池冷却(冷却要求大)モードで作動させることもできる。また、冷房モード及び冷房電池暖機モードにおいてヒータコア17を作動させて室内を除湿したり、暖房モード及び暖房電池冷却モードにおいてエバポレータ4を作動させて室内を除湿したりしてもよい。
【0175】
内気冷却器としてのエバポレータ4に代えて、冷却用媒体回路3に内気冷却器としてのクーラコアを配置してもよい。クーラコアは、例えばチラー6と冷却用媒体ポンプ22との間に配置するとよい。クーラコアは、車室内に送られる内気と冷却用媒体LTとを熱交換させるものである。すなわち、クーラコアにて冷却用媒体LTで内気から吸熱を行う。冷却用媒体LTとの熱交換によって冷却された内気は、車室内に送られて車室内の冷房に供される。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の車両用熱マネジメントシステムは、例えばバッテリー式の電池自動車に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0177】
1…冷媒回路
2…加熱用媒体回路
3…冷却用媒体回路
4…エバポレータ(内気冷却器)
5…水冷コンデンサ(加熱用コンデンサ)
6…チラー(冷却用チラー)
7…電池熱交換器(第1機器、第1熱交換器、電池温調用熱交換器)
8…ラジエータ(第2機器、第2熱交換器)
9…制御装置
10…圧縮機
11…第1膨張弁(膨張弁)
12…第2膨張弁(膨張弁)
16…加熱用媒体ポンプ
17…ヒータコア(内気加熱器)
22…冷却用媒体ポンプ
40、40A…統合切替弁
41…ケース
42…回転軸
43…仕切板
44、44A…回転弁体
46…弁室
47…第1室
48…第2室
49、49A…第1弁部
50、50A…第2弁部
51a…1-1分室
51b…1-2分室
51c…1-3分室
51d…1-4分室
52a…2-1分室
52b…2-2分室
52c…2-3分室
53a…開口部
54a…加熱用媒体流入口(第1流体流入口)
54b…加熱用媒体送出口(第1流体送出口)
54c…加熱用媒体送入口(第1流体送入口)
54d…加熱用媒体流出口(第1流体流出口)
55a…冷却用媒体流入口(第2流体流入口)
55b…冷却用媒体送出口(第2流体送出口)
55c…冷却用媒体送入口(第2流体送入口)
55d…冷却用媒体流出口(第2流体流出口)
56a…第1機器入口側接続口
56b…第1機器出口側接続口
57a…第2機器入口側接続口
57b…第2機器出口側接続口
HT…加熱用媒体(第1流体)
LT…冷却用媒体(第2流体)