(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163849
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】柑橘果汁含有炭酸飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20241115BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20241115BHJP
C12G 3/04 20190101ALI20241115BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/00 T
A23L2/02 B
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025482
(22)【出願日】2024-02-22
(62)【分割の表示】P 2023079469の分割
【原出願日】2023-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年5月17日 日本全国の容器詰め飲料を販売する店舗にて販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年5月17日 日本全国の容器詰め飲料を販売する店舗にて販売
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】青木 昂史
(72)【発明者】
【氏名】村角 幸樹
【テーマコード(参考)】
4B115
4B117
【Fターム(参考)】
4B115LH03
4B115LH11
4B115LP02
4B117LC03
4B117LC14
4B117LE10
4B117LG02
4B117LG05
4B117LK01
4B117LK04
4B117LK08
4B117LK12
4B117LL01
4B117LL02
4B117LL05
4B117LP18
(57)【要約】
【課題】炭酸による爽快なキレ感(酸味の後残りのしにくさ)を有しながら、柑橘果実らしいうまみによる飲みごたえ(飲用時後半に感じる柑橘果汁感)も有する、柑橘果汁含有炭酸飲料を提供する。
【解決手段】柑橘果汁含有炭酸飲料において、リン酸の含有量を0.10~0.60g/100gとし、ナトリウムの含有量を20~80mg/100gとし、波長680nmにおける吸光度により表される濁度が0.10~0.80となるように調整する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘果汁を含有する炭酸飲料であって、
リン酸を0.10~0.60g/100g含有し、
ナトリウムを20~80mg/100g含有し、
波長680nmにおける吸光度により表される濁度が0.10~0.80である、柑橘果汁含有炭酸飲料。
【請求項2】
柑橘果汁がレモン果汁を含む、請求項1に記載の柑橘果汁含有炭酸飲料。
【請求項3】
甘味度が5.0~14.0である、請求項1又は2に記載の柑橘果汁含有炭酸飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘果汁を含有する炭酸飲料に関する。特に、炭酸の爽快なキレ感を有しながら、柑橘果実らしいうまみによる飲みごたえも有する、柑橘果汁含有炭酸飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は、飲料に含まれる炭酸によって爽快感を感じることができるため、嗜好性に優れた飲料として消費者に広く楽しまれている。特に、柑橘果実の果汁を配合した炭酸飲料は、柑橘の爽やかな風味が炭酸の爽快感とマッチし、近年、非常に人気の高い飲料となっている。
【0003】
炭酸飲料は、一般に、炭酸による刺激や爽快感が好まれており、炭酸の酸味が後残りしにくい、キレのよい炭酸飲料は好まれる傾向にある。一方、柑橘果汁を配合した飲料においては、柑橘果実を想起させるうまみやボディ感を有する飲料が好まれる傾向がある。後味のキレが改善された炭酸飲料としては、イソマルトデキストリンを含有する炭酸飲料(特許文献1)や、乳化香料を含有し、炭酸ガスボリュームが3.0vol以上5.0vol以下である、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料(特許文献2)が開示されている。また、ボディ感を向上させた炭酸飲料としては、クエン酸換算量での酸度が0.02~0.75質量%であり、カフェイン含有量が19.8mg/100g未満であり、カテキン類含有量が3mg/100g以上29mg/100g未満である炭酸飲料(特許文献3)が開示されている。しかし、炭酸による爽快な後味のキレと、柑橘果実のようなうまみや飲みごたえとを両立した柑橘果汁含有炭酸飲料については報告されていない。一般に、炭酸飲料のキレ感を向上させると、飲料のボディ感やうまみ、また、飲みごたえは低下する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-68748号公報
【特許文献2】特許第6790295号公報
【特許文献3】特開2011-182683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、炭酸による爽快なキレ感(酸味の後残りのしにくさ)を有しながら、柑橘果実らしいうまみによる飲みごたえも有する、柑橘果汁含有炭酸飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的について鋭意検討した結果、柑橘果汁を含有する炭酸飲料において、波長680nmの吸光度により表される飲料の濁度を特定の範囲内となるように調整し、さらに特定の濃度範囲のリン酸を含有させ、かつ、特定の濃度範囲のナトリウムを含有させることにより、炭酸飲料らしいキレ感と、柑橘果実らしいうまみによる飲みごたえとを両立することができることを見出した。本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
[1]柑橘果汁を含有する炭酸飲料であって、
リン酸を0.10~0.60g/100g含有し、
ナトリウムを20~80mg/100g含有し、
波長680nmにおける吸光度により表される濁度が0.10~0.80である、柑橘果汁含有炭酸飲料。
[2]柑橘果汁がレモン果汁を含む、[1]に記載の柑橘果汁含有炭酸飲料。
[3]甘味度が5.0~14.0である、[1]又は[2]に記載の柑橘果汁含有炭酸飲料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、炭酸による爽快なキレ感(酸味の後残りのしにくさ)を有しながら、柑橘果実らしいうまみによる飲みごたえ(飲用時後半に感じる柑橘果汁感)も有する、柑橘果汁含有炭酸飲料を提供することができる。一般には、炭酸飲料のキレ感を向上させると、飲料のボディ感やうまみ、また、飲みごたえは低下する傾向にある。特に、飲用時後半に感じられるうまみや、果汁テイスト飲料である場合には果汁感などが、キレ感の向上(後残りのしにくさの向上)により不足する傾向がある。これに対し、本発明にしたがえば、炭酸のキレ感と柑橘の飲みごたえとを両立した柑橘果汁含有炭酸飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、柑橘果汁を含有し、リン酸を0.10~0.60g/100g含有し、ナトリウムを20~80mg/100g含有し、波長680nmにおける吸光度により表される濁度が0.10~0.80である炭酸飲料に関する。
【0009】
<柑橘果汁>
本発明の飲料は柑橘果汁を含有する炭酸飲料である。柑橘果汁とは、柑橘果実の果汁をいう。果汁は、果実を粉砕して搾汁したり、裏ごししたりするなどして得られる液体成分をいい、液体成分を濃縮したもの(濃縮果汁)や、これらの希釈還元物(還元果汁)も含む。果汁は、透明果汁と混濁果汁のいずれでもよく、これらの組み合わせでもよい。混濁果汁とは、食物繊維(例えばプロトペクチン)などの不溶性固形分を含む果汁をいう。また、透明果汁とは、遠心分離法や酵素分解等の不溶性固形分の可溶化方法を用いて、不溶性固形分を可溶化して取り除いた清澄化果汁をいう。
【0010】
飲料における果汁の割合は、0.5~15.0%であることが好ましく、0.8~10.0%がさらに好ましく、0.8~5.0%がさらに好ましく、0.8~2.0%がさらに好ましい。果汁の割合(%)とは、飲料の総質量に対するストレート果汁換算した果汁の割合(質量%)をいい、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)に示される酸度の基準(%)または糖用屈折計示度の基準(°Bx)に基づいて換算される。例えば、JAS規格第6条の濃縮レモンの規格によれば、濃縮レモン果汁をストレート果汁換算する場合に用いられる酸度の基準は4.5%であるから、酸度が22.5%の濃縮レモン果汁を飲料中0.3質量%配合した場合、果汁の割合は1.5%となる。
【0011】
柑橘果汁の原料となる柑橘果実としては、例えば、レモン、ライム、シークヮーサー、ダイダイ、ユズ、カボス、スダチ、シトロン、ブッシュカンなどの香酸柑橘類、バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジなどのオレンジ類、グレープフルーツなどのグレープフルーツ類、ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、スウィーティー、デコポンなどの雑柑類、イヨカン、タンカンなどのブンタン類、マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、紀州ミカンなどのミカン類、キンカンなどのキンカン類が挙げられる。本発明により炭酸飲料に柑橘果実らしいうまみによる飲みごたえが付与されるが、本発明で付与されるうまみはレモンに近いので、本発明の炭酸飲料は、柑橘果汁としてレモン果汁を含むことが好ましく、柑橘果汁がレモン果汁のみからなっていてもよい。
【0012】
本発明の飲料は、柑橘果実らしいうまみによる飲みごたえを有する飲料であるので、柑
橘果実の香味を有する飲料であることが好ましい。柑橘果実の香味を有する飲料とは、飲用した際に柑橘果実を想起する香味を感じることができる飲料をいう。上記の通り、本発明で付与されるうまみはレモンに近いので、柑橘果実の香味の中でも、レモンの香味を有する飲料であることは特に好ましい。
【0013】
柑橘果実の香味を有する飲料とする場合、色調も柑橘果汁に近いものとすると、視覚的にも柑橘果実の香味を感じやすくなるため、好ましい。したがって、例えばコーラ様の飲料に配合されるようなカラメル色素は含有しないことが好ましい。また、乳由来の成分は、柑橘果実の爽やかな香味を知覚し難くさせることがあるため、飲料は乳由来の成分を含まないことが好ましい。乳由来の成分としては、例えば、乳、全脂乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、練乳、脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、バター、バターオイル、バターミルク、バターミルクパウダー、カゼイン、ホエー(乳清)、乳清ミネラル、チーズなどが挙げられる。
【0014】
<炭酸飲料>
本発明の飲料は、炭酸ガスを含有させた炭酸飲料である。炭酸ガスは、当業者に通常知られる方法を用いて飲料中に付与することができ、例えば、これらに限定されないが、二酸化炭素を加圧下で飲料に溶解させてもよいし、カーボネーターなどのミキサーを用いて配管中で二酸化炭素と飲料とを混合してもよい。あるいは、二酸化炭素を充填したタンク中に飲料を噴霧することにより二酸化炭素を飲料に吸収させてもよいし、飲料と炭酸水とを混合してもよい。
【0015】
本発明の炭酸飲料における炭酸ガス圧は特に限定されないが、例えば、20℃において1.0~3.5kgf/cm2程度であり、より好ましくは1.2~3.3kgf/cm2、さらに好ましくは1.5~2.5kgf/cm2程度である。飲料の炭酸ガス圧は、適宜調節することが可能である。一態様として、炭酸ガス圧の値は、飲用時の値である。特に、未開栓の飲料を最初に開栓した際の炭酸ガス圧の値である。炭酸ガス圧の測定は、液温を20℃に調整した炭酸飲料を用い、ガス圧測定装置(例えば、京都電子工業株式会社製GVA-500A)を用いて、測定することができる。
【0016】
<リン酸>
本発明の柑橘果汁含有炭酸飲料は、リン酸を0.10~0.60g/100gの濃度で含有する。これにより、炭酸飲料のキレ感(酸味の後残りのしにくさ)を向上させることができる。リン酸の含有量は、より好ましくは0.15~0.50g/100gであり、さらに好ましくは0.16~0.38g/100gである。炭酸飲料にリン酸を含有させる際には、リン酸またはリン酸塩の形で飲料に添加することができる。飲料中のリン酸の濃度(H3PO4換算量)は、イオンクロマトグラフ法により測定することができる。
【0017】
<ナトリウム>
本発明の柑橘果汁含有炭酸飲料は、ナトリウムを20~80mg/100gの濃度で含有する。炭酸飲料中にリン酸を含有させると、キレ感が向上し、後味がすっきりとしすぎて、飲料のボディ感やうまみ、また、飲みごたえが感じにくくなる傾向があるが、ここにさらに20~80mg/100gのナトリウムを含有させることにより、柑橘果実を想起させるような口内にジワッと広がるうまみによる飲みごたえ(飲用時後半に感じる柑橘果汁感)を付与することができることを見出した。ただし、ナトリウムの濃度は高くなりすぎると飲料の塩味が強くなり、果実らしい香味がかえって失われたり、飲料の嗜好性が低下することがある。ナトリウムの含有量は、より好ましくは25~70mg/100gであり、さらに好ましくは30~65mg/100gである。
【0018】
ナトリウムを飲料に含有させる方法としては、例えば、ナトリウム塩の形態で飲料に添
加する方法を挙げることができる。ナトリウム塩としては、飲用可能なナトリウム塩であればよく、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、L-アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、L-アスパラギン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム等を用いることができるが、特にこれらに限定されない。好ましくは塩化ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、L-アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウムが用いられる。
【0019】
飲料中のナトリウムの含有量は、原子吸光光度計を用いて分析することができる。また、ナトリウム塩として配合した場合には、ナトリウム元素の含有量として算出することができる。
【0020】
<波長680nmにおける吸光度により表される濁度>
本発明の柑橘果汁含有炭酸飲料は、視覚的に濁りのある飲料である。そのメカニズムは明らかではないが、飲料に濁りがあると、飲料の柑橘果実らしい飲みごたえがより知覚しやすくなる傾向がある。飲料の濁りは、液体の濁度を測定する公知の手法を用いることにより、数値化することができる。例えば紫外可視分光光度計(UV-1600(株式会社島津製作所製)など)を用いて測定した波長680nmにおける吸光度をもって飲料の濁り度合を規定することができる。具体的には、本発明の飲料は、波長680nmにおける吸光度により表される濁度が0.10~0.80の範囲である。より好ましくは0.15~0.80であり、さらに好ましくは0.30~0.75であり、さらに好ましくは0.50~0.70である。一般に、濁度が大きい場合(例えば、0.30より大きい場合)、視覚的に濁りがかなり強いように見え、心理面から炭酸飲料の爽快さが感じられにくくなるおそれがあるが、本発明の柑橘果汁含有炭酸飲料は、上記の通り、良好なキレ感を有しており、飲みごたえがありながら爽快さも同時に楽しめる飲料となる。
【0021】
飲料に適度な濁りを付与する方法としては、特に限定されないが、乳化香料を添加する方法や混濁果汁あるいは混濁エキスを添加する方法などが挙げられる。飲料に均一な濁りを付与することができる点から、乳化香料を添加する方法が好ましい。乳化香料とは、オイル香料を乳化剤で乳化した、水中油(O/W)型の香料をいう。乳化香料には、オイルと剤以外の成分が含まれていてもよい。乳化香料を構成する乳化剤は、特に限定されるものではないが、例えば、親水基と親油基(疎水基)の両方を備えている物質を用いることでき、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム、またはガティガムから選択される1種以上の乳化剤であることが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、植物油由来のグリセリンを脱水縮合したポリグリセリンと植物油由来の脂肪酸とをエステル結合させた乳化剤である。アラビアガムは、ネムノキ科アカシア属アラビアゴムノキの樹液(分泌液)から得ることができ、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸などの糖から構成される多糖類を主成分とする乳化剤である。ガティガムは、ガティノキの樹液(分泌液)から得ることができ、アラビノース、ガラクトース、マンノース、キシロース、グルクロン酸などの糖から構成される多糖類を主成分とする乳化剤である。オイルは、飲料に適した精油であればよく、例えば柑橘精油や植物油脂(パーム油、ヤシ油など)が挙げられるが、本発明の飲料の香味に合わせて、柑橘精油を用いることが好ましい。柑橘精油としては、例えば、レモン精油、グレープフルーツ精油、オレンジ精油、ライム精油、和柑橘精油等を挙げることができる。特に、レモン精油が好ましい。乳化香料を含有させる場合の量は、飲料の香味や所望の濁りに応じて適宜設定することができる。
【0022】
<甘味度>
本発明の飲料は、甘味度が5.0~14.0であることが好ましい。甘味度はより好ましくは6.0~12.0であり、さらに好ましくは7.0~11.5であり、さらに好ま
しくは7.5~11.0である。甘味度とは、飲料100g中にショ糖1gを含有する飲料の甘さを「1」とした、飲料の甘味を表す指標である。飲料の甘味度は、各甘味成分の含有量を、ショ糖の甘味1に対する各甘味成分の甘味の相対比に基づいて、ショ糖の相当量に換算して、次いで飲料に含まれる全ての甘味成分のショ糖甘味換算量(果汁等由来の甘味成分も含む)を総計することによって求められる。ショ糖の甘味1に対する各種代表的な甘味成分の甘味の相対比を表1に示す。表1に記載のない甘味成分については、当該甘味成分を製造あるいは販売しているメーカーが提示する甘味度を用いたり、「飲料用語辞典」(株式会社ビバリッジジャパン社、平成11年6月発行)のP62に記載の甘味度測定方法に沿って溶液温度を体温に近い37℃として評価することができる。
【0023】
【0024】
飲料の甘味度は、甘味成分を用いて調整することができる。甘味成分としては、例えば、表1に記載されている甘味成分を用いることができるが、それ以外の甘味成分を用いてもよい。また、飲料中に甘味成分を甘味料として直接配合してもよいし、甘味成分を含有する果汁やエキス等を配合してもよい。好ましい甘味成分は、果糖、異性化糖、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、オリゴ糖(マルトオリゴ糖など)、糖アルコール(エリスリトール、キシリトールなど)、及び高甘味度甘味料(クラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビアなど)であり、特に好ましい甘味成分は、果糖、ショ糖、アセスルファムカリウム、及びスクラロースである。
【0025】
<その他>
本発明の柑橘果汁含有炭酸飲料には、通常の飲料と同様、糖分や甘味料、柑橘果汁以外
の果汁、各種添加剤等を配合してもよい。各種添加剤としては、例えば、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を配合することができる。ただし、上記した通り、本発明の飲料は、柑橘果実らしいうまみによる飲みごたえを有する飲料であるので、柑橘果実の香味を有する飲料であることが好ましい。
【0026】
本発明の柑橘果汁含有炭酸飲料の酸度は特に限定されないが、0.28~0.48質量%程度であってもよく、0.30~0.45質量%程度であってもよい。炭酸飲料の酸度(クエン酸換算)は、例えば、電位差自動滴定装置(例えば、京都電子工業製AT-500N)を用いて中和滴定法によって測定することができる。具体的には、以下の方法で測定することができる:
飲料サンプル10gに蒸留水を加えて総量50mlとした後、撹拌しながら水酸化ナトリウム溶液(0.1N、容量分析用試薬)をpHが8.0になるまでビュレットから滴下する。次いで、下式に基づいて、クエン酸換算の酸度を算出する。
飲料の酸度(質量%)=滴定量(ml)×F×A×(100/サンプル量(g))
F:約1.00(0.1N水酸化ナトリウム溶液のファクター)
A:0.0064(水酸化ナトリウム溶液1mlに相当するクエン酸のグラム数)。
【0027】
本発明の柑橘果汁含有炭酸飲料は、ソフトドリンクなどの非アルコール飲料であってもよいし、アルコール飲料であってもよい。
【0028】
本発明の柑橘果汁含有炭酸飲料は、汎用の容器に容器詰めされて閉栓され、飲用時に開栓される形態の、容器詰め飲料とすることができる。容器は特に制限されず、例えば、プラスチックボトル(PETボトルなど)、アルミ缶、スチール缶、瓶などを挙げることができる。なかでも、プラスチックボトルは好ましい。
【0029】
また、本発明の飲料は、加熱殺菌された容器詰飲料とすることもできる。加熱殺菌を行う場合、その方法は特に限定されず、例えばUHT殺菌及びレトルト殺菌等の通常の手法を用いて行うことができる。加熱殺菌処理の温度は特に限定されないが、例えば65~130℃、好ましくは85~120℃である。加熱殺菌処理の時間は特に限定されないが、例えば10~40分である。ただし、上記の条件と同等の殺菌価が得られれば適当な温度で数秒、例えば5~30秒での加熱殺菌処理でもよい。
【0030】
本発明の柑橘果汁含有炭酸飲料は、上述した成分を適宜配合することにより製造することができる。本発明の飲料の製造において、各種成分の配合順序は特に限定されるものではない。また、本発明の飲料の製造においては、上記に示した成分及び材料を配合する工程やそれらの含有量を調整する工程も含むことができる。また、必要に応じて、殺菌、容器詰めなどの工程を適宜設けることができる。例えば、飲料組成物を容器に充填した後にレトルト殺菌などの加熱殺菌を行う方法や、飲料組成物を殺菌して容器に充填する方法により、殺菌された容器詰め飲料を製造することができる。
【実施例0031】
具体的な実験例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実験例に限定されるものではない。
【0032】
<実験例1>
レモン果汁、クエン酸、及びリン酸を表2に記載の含有量となるように純水に添加し、得られた飲料に乳化香料を添加して、波長680nmにおける吸光度により表される濁度が0.60となるように調整した。また、果糖とショ糖(グラニュー糖)を用いて、甘味度を9.2に調整した。これにガス圧が2.5kgf/cm2となるように炭酸ガスを含
有させ、PETボトルに充填して、コントロールとサンプル1-1~1-4のレモン果汁含有炭酸飲料を製造した。サンプルの酸度(クエン酸換算)はいずれも0.38質量%であった。なお、レモン果汁には少量のナトリウムが含まれるが、飲料中のレモン果汁由来のナトリウムの含有量は、0.02mg/100g程度であった。
【0033】
得られた各サンプルについて、炭酸によるキレ感(飲用後の酸味の後残りのしにくさ)と、柑橘(レモン)果実らしいうまみによる飲みごたえ(飲用時後半に感じる柑橘果汁感)について、3名の専門パネラーで官能評価した。評価手順は、まず、3名の専門パネラーでコントロールのサンプルを飲用し、上記のキレ感(酸味の後残りのしにくさ)と飲みごたえ(飲用時後半に感じる柑橘果汁感)について議論をした。その後、各自で1-1~1-4のサンプルを飲用し、各自が評価を行い、各サンプルの結果を3名で議論して、下記の基準に基づいて点数をつけた。結果を表2に示す。
・炭酸によるキレ感:4点 キレ感が強い。3点 キレ感がやや強い。2点 キレ感がやや
弱い。1点 キレ感が弱い。
・飲みごたえ:4点 柑橘果実らしいうまみによる飲みごたえが強い。3点 柑橘果実らしいうまみによる飲みごたえがやや強い。2点 柑橘果実らしいうまみによる飲みごたえが
やや弱い。1点 果実らしいうまみによる飲みごたえが弱い。
【0034】
【0035】
表2の結果より、レモン果汁含有炭酸飲料にリン酸を加えることにより、炭酸のキレ感が向上することがわかる。しかし、炭酸のキレ感が向上するにつれて、後味がすっきりとしすぎてしまい、レモン様のうまみや味わいが感じにくくなり、飲みごたえが低下する結果となった。
【0036】
<実験例2>
レモン果汁、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、リン酸、及び食塩(塩化ナトリウム)を表3に記載の含有量となるように純水に添加し、得られた飲料に乳化香料を添加して、波長680nmにおける吸光度により表される濁度が0.60となるように調整した。また、果糖とショ糖(グラニュー糖)を用いて、甘味度を9.2に調整した。これにガス圧が2.5kgf/cm2となるように炭酸ガスを含有させ、PETボトルに充填して、コントロール1~3とサンプル2-1~2-4のレモン果汁含有炭酸飲料を製造した。
【0037】
得られた各サンプルについて、炭酸によるキレ感(飲用後の酸味の後残りのしにくさ)と、柑橘(レモン)果実らしいうまみによる飲みごたえ(飲用時後半に感じる柑橘果汁感)について、実験例1と同様の手順で官能評価した。なお、サンプル2-1の評価に際してはコントロール1を事前に飲用し、サンプル2-2~2-6の評価に際してはコントロ
ール2を事前に飲用し、サンプル2-7の評価に際してはコントロール3を事前に飲用した。結果を表3に示す。
【0038】
【0039】
表3の結果より、所定量のリン酸に加え、ナトリウムを所定の量で含有させることにより、炭酸のキレ感を維持しながら、柑橘果実らしいうまみによる飲みごたえを向上させることができることがわかる。ただし、ナトリウムの含有量が100mg/100gのサンプル2-6は塩味を強く感じたため、ナトリウムの含有量の上限は80mg/100g程
度がよいことがわかった。
【0040】
<実験例3>
レモン果汁、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、及びリン酸を表4に記載の含有量となるように純水に添加し、得られた飲料に乳化香料を添加して、波長680nmにおける吸光度により表される濁度が0.60となるように調整した。また、果糖とショ糖(グラニュー糖)を用いて、甘味度を表4に記載の値となるように調整した。これにガス圧が2.5kgf/cm2となるように炭酸ガスを含有させ、PETボトルに充填して、コントロール4及び5とサンプル3-1及び3-2のレモン果汁含有炭酸飲料を製造した。
【0041】
得られた各サンプルについて、炭酸によるキレ感(飲用後の酸味の後残りのしにくさ)と、柑橘(レモン)果実らしいうまみによる飲みごたえについて、実験例1と同様の手順で官能評価した。なお、サンプル3-1の評価に際してはコントロール4を事前に飲用し、サンプル3-2の評価に際してはコントロール5を事前に飲用した。結果を表4に示す。
【0042】
【0043】
表4の結果より、甘味度が5.0または14.0の場合でも、所定量のリン酸と所定量のナトリウムとを含有させることによって、キレ感の向上と飲みごたえとの両方が得られることがわかる。