(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163861
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置及び更新方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20241115BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20241115BHJP
【FI】
A61B6/03 573
A61B6/42 530R
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075289
(22)【出願日】2024-05-07
(31)【優先権主張番号】18/316,700
(32)【優先日】2023-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VERILOG
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャオホイ ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ルオチャオ チャン
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン クラーク
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA36
4C093EA07
4C093EB13
4C093FA32
4C093FD07
4C093GA06
(57)【要約】
【課題】精度の良い不良画素マップを得ること。
【解決手段】実施形態に係るフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置は、取得部と、特定部と、更新部とを備える。取得部は、キャリブレーションスキャンに基づいて生成された不良画素マップを取得する。特定部は、患者のスキャンを行うことにより、不良画素を特定する。更新部は、不良画素に基づいて不良画素マップを更新する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリブレーションスキャンに基づいて生成された不良画素マップを取得する取得部と、
患者のスキャンを行うことにより、不良画素を特定する特定部と、
前記不良画素に基づいて前記不良画素マップを更新する更新部と、
を備える、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記特定部は、所定のエネルギービンにおける計数結果に基づいて、前記不良画素を特定する、請求項1に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記特定部は、画像再構成を行わずに前記不良画素を特定する、請求項1に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記不良画素の情報に基づいて、前記スキャンにより得られたデータの再構成を行う再構成処理部を更に備える、請求項1に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
X線を検出する検出器を更に備え、
前記特定部は、前記検出器の複数の画素の各画素について、
前記画素で受信された受信光子のエネルギースペクトルを決定し、
前記画素の前記決定されたエネルギースペクトルに基づいて、前記画素が不良画素であるかどうかを特定する、
請求項1に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記特定部は、前記画素における前記受信光子の総計数に対する、予め決定されたエネルギー値よりも大きいエネルギー値を有する受信光子の比率に基づいて、前記画素が不良画素であるかどうかを特定する、請求項5に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記特定部は、前記画素が不良画素であるかどうかを特定するために、前記比率を閾値と比較する、請求項6に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記閾値は、前記検出器のパラメータの特定のセットに対する前記検出器上の前記画素の位置に基づいて変化し、前記閾値は、前記検出器のパラメータの前記特定のセットに基づいてさらに変化する、請求項7に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記特定部は、理論計算、コンピュータシミュレーション、または物理的なスキャンのうちの少なくとも1つから前記閾値を決定する、請求項7に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記特定部は、前記画素の前記決定されたエネルギースペクトルの第2の特定のビンの第2の計数値に対する第1の特定のビンの第1の計数値の比率に基づいて、前記画素が不良画素であるかどうかを特定する、請求項5に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記特定部は、前記画素の前記決定されたエネルギースペクトルの1つ以上の特定のビンにおける計数値の加重平均に基づいて、前記画素が不良画素であるかどうかを特定する、請求項5に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
前記特定部は、前記画素の前記決定されたエネルギースペクトルの1つ以上の特定のビンにおける計数値の分散に基づいて、前記画素が不良画素であるかどうかを特定する、請求項5に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項13】
前記特定部は、前記画素の前記決定されたエネルギースペクトルのエネルギー分布の不規則性を検出するように訓練されたニューラルネットワークの出力に基づいて、前記画素が不良画素であるかどうかを特定する、請求項5に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項14】
前記再構成処理部は、前記更新された不良画素マップを利用することによって、前記スキャンにより得られたデータの再構成を行う、請求項4に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項15】
前記検出器は、光子計数型検出器である、
請求項5に記載のフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項16】
キャリブレーションスキャンに基づいて生成された不良画素マップを取得する取得部と、
スキャンを行うことにより、不良画素を特定する特定部と、
前記不良画素に基づいて前記不良画素マップを更新する更新部と、を備え、
前記特定部は、所定のエネルギービンにおける計数結果に基づいて、前記不良画素を特定する、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置。
【請求項17】
キャリブレーションスキャンに基づいて生成された不良画素マップを取得することと、
患者のスキャンを行うことにより、不良画素を特定することと、
前記不良画素に基づいて前記不良画素マップを更新することと、
を含む、更新方法。
【請求項18】
キャリブレーションスキャンに基づいて生成された不良画素マップを取得することと、
スキャンを行うことにより、不良画素を特定することと、
前記不良画素に基づいて前記不良画素マップを更新することと、
を含み、
前記不良画素を特定することは、所定のエネルギービンにおける計数結果に基づいて、前記不良画素を特定することを含む、更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置及び更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で提供される背景技術についての説明は、本開示の背景を一般的に示すためのものである。本背景技術のセクションに記載されている範囲での現在記名されている発明者の研究、ならびに出願時に先行技術として認められないことのある記載の態様は、本開示に対する先行技術として明示的にも暗示的にも認められていない。
【0003】
コンピュータ断層撮影(CT)システムおよび方法は、広範にわたって、特に医療イメージングおよび診断に使用されている。CTシステムは一般的に、被検体の身体を通る1枚以上の断面スライスの画像を作成する。X線源などの放射線源は、被検体の身体の片側から身体に放射線を照射する。身体の反対側にある少なくとも1つの検出器(一般的には1つ以上の検出器)が、身体を透過した放射線を受信する。身体を通過した放射線の減衰量は、検出器から受信した電気信号を処理することによって測定される。
【0004】
一般的に、X線源は身体の長軸を中心に回転するガントリに取り付けられる。検出器も同様に、ガントリのX線源の反対側に取り付けられる。一連のガントリ回転角度で投影減衰測定を行い、ガントリとステータとの間に配置されたスリップリングを介してCT投影データをプロセッサに送信し、次いで、例えば、逆ラドン変換、フィルタ補正逆投影、Feld kamp型コーンビーム再構成、逐次再構成、または他の方法などのCT再構成アルゴリズムを使用してCT投影データを処理することにより、身体の断面画像が得られる。
【0005】
従来、エネルギー積分検出器(Energy-Integrating Detector:EID)がCT投影データの測定に使用されてきた。今日、光子計数型検出器(Photon-Counting Detector:PCD)は、エネルギー積分検出器に代わる実現可能な検出器である。PCDに基づくフォトンカウンティングCTシステムでは、直接変換を使用した半導体ベースの検出器が、入射する個々の光子のエネルギーを分解し、積分期間ごとに複数のエネルギービン計数の測定値を生成するために採用されている。
【0006】
光子が検出器のセンサ物質(例えば、CdTe/CZT/Siなど)にエネルギーを蓄積すると、電荷雲(電子雲)が形成され、この電荷雲が、印加された電界の下で陽極に向かってドリフトする。検出器のエネルギー応答の劣化/歪みは、エネルギー蓄積とそれに続く電荷誘導プロセスにおける電荷共有、kエスケープ、および散乱効果、ならびに関連するフロントエンド電子機器の電子ノイズに大きく起因する。有限の信号誘導時間に起因して、高計数率条件では、パルスのパイルアップも検出器のエネルギー応答を歪める。
【0007】
センサ物質の不均一性および関連するフロントエンド電子機器の性能のばらつきにより、統合された検出器画素の実際の検出器応答は、お互いにわずかに異なる。フォワードモデルを適切に較正すれば、ほとんどの検出器は、逆問題を解くことによって、良好な経路長推定を提供することができる測定値を生成することができる。しかし、画素の性能が公称値をはるかに超えている場合、その測定値はもはや使用することができず、さらなる処理のために破棄する必要がある可能性がある。
【0008】
従来のシンチレータベースのEIDとは異なり、欠陥のある光子計数型検出器画素では、(1)ノイズの多い計数バックグラウンド、(2)異常な計数性能、(3)異常なエネルギー分解能、(4)非線形なエネルギー応答、および(5)不正確なエネルギー閾値、といった問題が生じる可能性がある。その結果、画素が正しく較正されない可能性があり、欠陥画素を検出するためのスクリーニング基準(ふるい分け基準)が、従来のエネルギー積分型検出器(EID)システムよりも複雑になる可能性がある。
【0009】
しかし、PCDは、スペクトルCTを実行する能力、および、より高い解像度を得るためにスキャン領域をより小さな画素に分割する能力などを含む多くの利点を有する。スペクトルCTは有利であり得る。スペクトルCTは、X線のエネルギーの関数としてのX線減衰量の変化に関する情報を提供する。スペクトルイメージングでは、複数のエネルギービン計数の測定値を使用して、従来の画像と同じCT値を示す可能性のある異種物質を弁別(分解)する。例えば、骨および水などの異種物質は異なるスペクトル吸収シグネチャ(spectral absorption signatures)を示すため、及び、スペクトル分解CTスキャンを物質成分に分解することができるため、スペクトルCTは望ましい。フォトンカウンティングCTシステムの場合、PCDは積分期間における各検出器画素の総計数の測定値に基づいて、計数画像を生成することができる。EIDに基づく従来のCTシステムと比較して、PCDベースのCTシステムの測定では、検出された各光子の等しい重み付けが行われ、異種物質の解像に最適である。
【0010】
ここで、従来のシンチレータベースの検出器では、被検体スキャンを実行する前に、隣接する良好な画素の測定値から値を補間するなどして、欠陥画素を選別して除く技術が存在するが、光子計数型検出器ではそのような技術は利用できない。また、既存の技術では、患者(被検体)のスキャン中に欠陥画素を検出することに関するいくつかの課題に直面する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0342098号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、精度の良い不良画素マップを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態に係るフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置は、取得部と、特定部と、更新部とを備える。取得部は、キャリブレーションスキャンに基づいて生成された不良画素マップを取得する。特定部は、患者のスキャンを行うことにより、不良画素を特定する。更新部は、不良画素に基づいて不良画素マップを更新する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、光子計数型検出器のPCDビン応答関数の一例を示し、各曲線は各エネルギービンに対する関数の一例を表す図である。
【
図2A】
図2Aは、別々の時間に取得された水ファントム画像の一例を通して、断続的な動作を示す検出器画素の一例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aの水ファントム画像の一例に対応する光子計数型検出器の画素が検出器チャネル方向に沿って受信した、正規化されたビン計数のプロファイルの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、一実施形態による、欠陥画素検出の例示的なフロー図を示す図である。
【
図4】
図4は、一実施態様の1つの基準による、検出器の複数の電流および減衰レベルにわたる光子計数型検出器の画素の光子の割合のヒストグラムの一例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、一実施態様による、欠陥画素検出および補正前後のスキャンおよび検出器応答の例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、一実施態様による、欠陥画素検出および補正前後のスキャンおよび検出器応答の例を示す図である。
【
図5C】
図5Cは、一実施態様による、欠陥画素検出および補正前後のスキャンおよび検出器応答の例を示す図である。
【
図5D】
図5Dは、一実施態様による、欠陥画素検出および補正前後のスキャンおよび検出器応答の例を示す図である。
【
図5E】
図5Eは、一実施態様による、欠陥画素検出および補正前後のスキャンおよび検出器応答の例を示す図である。
【
図5F】
図5Fは、一実施態様による、欠陥画素検出および補正前後のスキャンおよび検出器応答の例を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、一実施態様による、光子計数型検出器チャネルおよび行にわたる光子エネルギーの例を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、一実施態様による、スペクトル歪みのスクリーニング閾値の例を示す図である。
【
図7】
図7は、一実施態様による、コンピュータ断層撮影(CT)スキャナの実施態様の概略図を示す図である。
【
図8】
図8は、
図3に示すワークフローを実行する処理回路の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下で説明する実施形態は、以下の各種の実施形態を含む。
【0016】
例えば、一実施形態では、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置は、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置の検出器の第1の欠陥画素マップであって、キャリブレーションスキャン(較正スキャン)の結果から生成される第1の欠陥画素マップを受信し、患者のスキャンを実行し、患者のスキャンの結果に基づいて第2の欠陥画素マップを決定し、決定された第2の欠陥画素マップに基づいて第1の欠陥画素マップを更新する、ように構成された処理回路、を備える。
【0017】
別の実施形態では、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置の検出器の欠陥画素を決定する方法は、検出器の第1の欠陥画素マップであって、較正スキャンの結果から生成される第1の欠陥画素マップを受信することと、患者のスキャンを実行することと、患者のスキャンの結果に基づいて第2の欠陥画素マップを決定することと、決定された第2の欠陥画素マップに基づいて第1の欠陥画素マップを更新することと、を含む。
【0018】
別の実施形態では、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置は、光子計数型検出器と、光子計数型検出器の第1の欠陥画素マップであって、較正スキャンの結果から生成される第1の欠陥画素マップを受信し、光子計数型検出器の複数の画素の各画素について受信された光子のエネルギースペクトルを決定し、画素の決定されたエネルギースペクトルの予め定められたエネルギービンにおける計数値に基づいて第2の欠陥画素マップを決定し、決定された第2の欠陥画素マップに基づいて第1の欠陥画素マップを更新する、ように構成された処理回路と、を備える。
【0019】
別の実施形態では、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置は、キャリブレーションスキャンに基づいて生成された不良画素マップを取得する取得部と、患者のスキャンを行うことにより、不良画素を特定する特定部と、不良画素に基づいて不良画素マップを更新する更新部と、を備える。
【0020】
別の実施形態では、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影装置は、キャリブレーションスキャンに基づいて生成された不良画素マップを取得する取得部と、スキャンを行うことにより、不良画素を特定する特定部と、不良画素に基づいて不良画素マップを更新する更新部と、を備え、特定部は、所定のエネルギービンにおける計数結果に基づいて、不良画素を特定する。
【0021】
別の実施形態では、更新方法は、キャリブレーションスキャンに基づいて生成された不良画素マップを取得することと、患者のスキャンを行うことにより、不良画素を特定することと、不良画素に基づいて不良画素マップを更新することと、を含む。
【0022】
別の実施形態では、更新方法は、キャリブレーションスキャンに基づいて生成された不良画素マップを取得することと、スキャンを行うことにより、不良画素を特定することと、不良画素に基づいて不良画素マップを更新することと、を含み、不良画素を特定することは、所定のエネルギービンにおける計数結果に基づいて、不良画素を特定することを含む。
【0023】
本開示およびそれに付随する利点の多くのより完全な理解は、添付図面と関連して考慮される場合、以下の詳細な説明を参照することによって提供される。
【0024】
図面において、同様の参照番号は、複数の図を通して同一または対応する部分を示す。さらに、「ほぼ」、「近似」、「約」、および同様の用語は、一般的に、20%、10%、または好ましくは5%のマージン内に特定された値、およびその間の任意の値を含む範囲を指す。
【0025】
コンピュータ断層撮影(CT)システム用の既知の欠陥画素検出デバイスおよび方法の上記の課題を解決するために、本明細書に開示される装置および方法は、コンピュータ断層撮影(CT)システム内の光子計数型検出器に実装されるように開発された。さらに、これらの方法を適用する本明細書で提供される例は非限定的なものであり、本明細書で説明される方法は、本明細書で提案されるフレームワークを使用して、MRI、PET/SPECTなどの他の医用イメージングモダリティで使用することができる。したがって、本明細書における議論は、本開示の単なる例示的な実施態様を開示し、記載するにすぎない。当業者には理解されるように、本開示は、その精神または本質的特徴から逸脱することなしに、他の特定の形態で具体化されてもよい。したがって、本開示は、本開示の範囲ならびに他の特許請求の範囲を限定するものではなく、例示することを意図している。本明細書における教示の容易に認識可能な変形を含む本開示は、一部、発明の主題が公共の用に共されないような前述の特許請求の範囲の用語の範囲を定義する。さらに、本明細書で説明される機能を実行するように構成された回路は、複数の回路ユニット(例えば、チップ)に実装されてもよいし、単一のチップセット上の回路に機能を組み合わせてもよい。
【0026】
本明細書の実施形態における光子計数エネルギー分解検出器(PCD)を使用した透過測定では、フォワードモデルは以下の式(1)に示すように定式化される。
【0027】
【0028】
式(1)中、Sb(E)は、以下の式(2)に示すように定義されるビン応答関数であり、R(E,E’)は検出器応答関数であり、EbLおよびEbHは、各計数ビンの低エネルギー閾値および高エネルギー閾値である。
【0029】
【0030】
図1は、光子計数型検出器の典型的な応答関数S
b(E)のモデル例を示しており、エネルギーウィンドウ上のロングテールは、電荷共有、kエスケープ、および散乱効果によって誘導される。
図1では、低エネルギーテールは主に、関連する電子ノイズからの有限のエネルギー分解能に起因するものである。N
0は、エアスキャンからの全フラックス(total flux)であり、μ
mおよびl
mは、m番目の基底物質の線形減衰係数および積分経路長であり、W(E)は正規化された入射X線スペクトルである。実際には、W(E)とS
b(E)の両方が正確に分かっているわけではなく、1つの項S
wb(E)= W(E)S
b(E)として組み合わせることができ、これは重み付けビン応答関数として定義される。
【0031】
光子計数型検出器は、センサの製造、フロントエンド電子機器の性能、パッケージングプロセスの点で複雑であることが知られている。光子計数型検出器の欠陥画素は、高いバックグラウンド計数、計数の不均一性、異常なエネルギー応答、不安定性などの問題を示す可能性がある。その結果、その画素は、安定したフォワードモデルで有効な測定を行うことができないか、または、経路長情報に対して無反応なフォワードモデルを有しているかのどちらかであるが、いずれにせよ、その画素は、スキャニング測定、またはさらなる処理において除外されるべきである。
【0032】
以下により詳細に見られるように、欠陥画素は、欠陥画素とみなされるために完全に不活性である必要はなく、欠陥画素は、第1のイメージングプロトコルでは欠陥画素とみなされ、第2のイメージングプロトコルでは欠陥画素とみなされないことがある。また、検出器は使用を重ねるごとに劣化を生じるのが一般的で、時折新しい欠陥画素が現れることもある。加えて、検出器画素の中には断続的な動作を示すことがあり、そのような画素の計数またはスペクトル応答は、比較的短い期間、例えば数時間から数日の間に変化することがある。欠陥画素を適切に識別し、その後のデータ処理で補正しなければ、結果として得られる画像には、診断に影響を及ぼす目に見えるリングアーチファクトが発生する可能性がある。
【0033】
図2Aは、断続的な動作をする欠陥画素の例を示す。この例では、時間Aにおいてキャプチャされた第1のファントムスキャン201は、リングのないスキャンであることが分かる。2時間後、時間Bにおいて、第2のファントムスキャン204は、2時間以内に発生した計数動作が変化した1つの検出器画素を有し、矢印で示されるように、画像内のアーチフィシャルリング(artificial ring)につながる。しかし、その特定の検出器画素の計数動作は数日後に回復し、
図2Aに示されるように、時間Cでキャプチャされた第3のファントムスキャン207でリングのない画像が得られた。
【0034】
図2Bは、光子計数型検出器の検出器画素が検出器チャネル方向に沿って受信した、正規化された計数の例を示す。3つの全てのファントムスキャンは、第2のファントムスキャンの1つの検出器画素が異常な計数応答220を示す以外は、ほとんどの画素で正規化された計数のグラフが重なっていることを示している。この異常な計数応答220は、
図2Aの第2のファントムスキャン204におけるアーチフィシャルリングに対応する。この検出画素は、第1のファントムスキャン中および第3のファントムスキャン中は正常に動作する。さらに、
図2Bに示されるように、1つの隣接する検出器画素が異常な計数応答250を示し、これは3つのファントムスキャン全てで応答しない画素に対応する。
【0035】
この断続的な検出動作の変化する性質は、補正されない場合、そのようなスキャンを使用して再構成された画像の画質の劣化につながる。したがって、このような欠陥画素を基礎となるスキャンでキャプチャし、その後のデータ処理でこれらの欠陥画素の補正を行い、画像再構成の画質を向上させることができるシステム内方法を開発する必要がある。特に、本開示に記載される実施形態は、基礎となるスキャンにおいて断続的な動作をする欠陥画素を検出し、画像再構成においてそのような欠陥画素の補正を提供する装置および方法を提供する。
【0036】
図3は、オンザフライ欠陥画素スクリーニング方法(on-the-fly defective pixel screening method)を使用した欠陥画素の検出のワークフロー300の例を示す。このワークフロー300は、(1)被検体スキャンが行われる前に第1の欠陥マップを生成する較正プロセスであるプロセス(処理)310、(2)被検体スキャン中に実行され、第2の欠陥画素マップを生成するオンザフライ欠陥画素スクリーニング方法であるプロセス340、および(3)プロセス310中に生成された第1の欠陥画素マップをプロセス340中に生成された第2の欠陥画素マップで更新するプロセス370の3つのプロセスを含む。
【0037】
プロセス310において、ステップ302では、較正(キャリブレーション)スキャンが実行される。一般的に、この較正スキャンは、所望の均一な入射X線スペクトルおよびフラックス(flux)を生成する均一な減衰プロファイルを有する矩形スラブを用いたエアスキャンまたは静的スキャンとすることができる。さらに、ステップ304では、較正スキャンから第1の欠陥画素マップ(不良画素マップ)が生成される。すなわち、較正スキャンの全ての欠陥検出器画素のマップが生成され、メモリに記憶される。このように、ステップ304では、キャリブレーションスキャンに基づいて生成された不良画素マップが取得される。
【0038】
プロセス340において、ステップ342では、被検体スキャンが実行される。一般的に、被検体スキャンは、ファントムスキャン、患者のスキャン、通常、スキャンされる対象の被検体の2D投影であるスカウトスキャン、または、空気もしくは水ファントムを用いた被検体スキャンの前もしくは後に取得される別のスキャンとすることができる。減衰物質の存在下での検出器画素の測定は一様でないため、較正スキャンで欠陥画素の検出に適用される基準または規則は、被検体スキャンの結果に直接適用することはできない。
【0039】
ステップ344では、オンザフライ欠陥画素スクリーニング方法が実行され、被検体スキャン(患者スキャン)の結果から検出された全ての欠陥検出器画素を示す第2の欠陥画素マップが生成される。検出された第2の欠陥画素マップもメモリに記憶される。すなわち、ステップ344では、患者のスキャンが行われることにより、不良画素が特定される。また、ステップ344では、画像再構成を行わずに不良画素が特定される。本明細書において、画素が不良画素であるかどうかを特定することと、画素が欠陥画素であるかどうかを決定することとは、同義である。
【0040】
本明細書に開示される実施形態の一実施態様では、欠陥画素を検出するために、被検体スキャンの各検出器画素で検出された光子のエネルギースペクトルが決定される。さらに、決定されたエネルギースペクトルにおける高エネルギー光子の割合または比率が決定される。
【0041】
本明細書に開示される実施形態の別の実施態様では、被検体スキャンの複数のビューにおいて各検出器画素で検出された光子のエネルギースペクトルが決定される。次に、複数のビューのエネルギースペクトルにおける高エネルギー光子の割合または比率の時間平均を決定して、異常な断続的検出器画素を検出する。
【0042】
ワークフロー300のプロセス370において、ステップ372では、ステップ344で被検体スキャンにおいて識別された断続的な動作をする1つ以上の画素を含む第2の欠陥画素マップを使用して、ステップ304で生成された第1の欠陥画素マップが更新される。すなわち、ステップ372では、不良画素に基づいて不良画素マップが更新される。これにより、精度の良い不良画素マップが得られる。プロセス340において、ステップ344では、断続的な動作をする特定の欠陥画素が被検体スキャン中に識別され、第2の欠陥画素マップに含まれると、第1の欠陥画素マップ内の以前に識別された欠陥画素と共に、特定の欠陥画素が破棄され、周囲の良好な画素を使用した補間値で置き換えられる。ステップ346では、補間値を使用してさらなるデータ処理および画像再構成が行われ、リングのない画像348が得られる。
【0043】
ワークフローは、ワークフロー300においてプロセス340’として示されているプロセス340の反復をさらに含むことができる。プロセス340を繰り返すごとに、断続的な動作をする新たな欠陥画素を被検体スキャンから識別することができ、較正スキャンから生成された第1の欠陥画素マップをさらに更新することができる。更新ステップ372は、後続の被検体スキャンごとに繰り返される。次に、ワークフロー300は、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(CT)スキャナ用のリングアーチファクトのない再構成画像を生成する。
【0044】
オンザフライ欠陥画素スクリーニング方法の一実施形態では、異常なスペクトル応答を持つ検出器画素を識別するために、高エネルギースペクトルの割合が使用される。光子計数型検出器ベースのコンピュータ断層撮影(CT)システムでは、各検出器画素が入射光子のエネルギーを分解する。その結果として、システムは、複数のエネルギービン計数の測定値を、所定の積分期間のマルチエネルギー測定値として生成する。その結果、マルチエネルギー測定値は、入射光子のエネルギースペクトルを形成する。各検出器画素で検出される光子のエネルギースペクトルに基づき、断続的な動作をする欠陥検出器画素を検出するために様々な基準が使用される。
【0045】
各検出器画素で検出された光子のエネルギースペクトルを使用して欠陥検出器画素をスクリーニングするための1つの基準では、エネルギースペクトルにおける高エネルギー光子の割合が計算される。特に、この基準によれば、総スペクトル計数と比較したエネルギースペクトルにおける高エネルギー光子の割合が閾値未満である場合、すなわち、以下の不等式(3)により示される場合に、検出器画素は欠陥があるとみなされる。
【0046】
【0047】
ここで、N>∈は、閾値エネルギー(∈keV)より大きいエネルギーを有する入射光子の数であり、Ntotは、入射光子の総計数であり、T∈は、光子計数型検出器の様々なパラメータ(例えば所与の管電圧下での減衰レベルなど)にわたって閾値エネルギー(∈keV)よりも大きいエネルギーレベルを有する入射光子の最小割合を示す閾値である。
閾値T∈は、理論計算、コンピュータシミュレーション、または光子計数型検出器を使用して生成された物理的なスキャンに基づいて選択される。閾値T∈は通常、管電圧および光子計数型検出器のフィルタ(濾過)を含む、光子計数型検出器のパラメータによって変化する。すなわち、閾値T∈は、光子計数型検出器のパラメータの特定のセットに基づいて変化する。
【0048】
図4は、複数のmAレベルおよび減衰レベルにわたって、サンプルの閾値エネルギーおよびサンプルの管電圧よりも大きいエネルギーを有する光子の割合のヒストグラム410、430、および450の例を示す。これらのヒストグラムの例では、選択されたサンプルの閾値エネルギーは80keV、選択されたサンプルの管電圧は120kVpである。ヒストグラムの例410は、水経路長が0.1cmの、10mA(2)、50mA(5)、100mA(7)、および200mA(9)レベルの管電流にわたって、120kVpの下で80keVよりも大きいエネルギーを有する光子の割合を示す。
【0049】
ヒストグラム430の例は、水経路長が16cmの、10mA、50mA、100mA、および200mAレベル(グラフの左から右へ移動)の管電流にわたって、120kVpの下で80keVよりも大きいエネルギーを有する光子の割合を示す。ヒストグラム例450は、水経路長が32cmの、管電流の50mA、100mA、および200mAレベルにわたって、120kVpの下で80keVよりも大きいエネルギーを有する光子の割合を示し、管電流の全レベルにわたる光子の割合は、ほぼ同様である。
【0050】
3つのヒストグラム410、430、および450の例全てにおいて、検出器画素の大部分、すなわち約99%に対し、検出された光子の10%超が、フラックスレベルおよび経路長に関係なく、閾値エネルギー80keVを超えていることに留意されたい。これらの例から、この特定の場合、被検体スキャンのスクリーニング閾値に使用可能な、選択された閾値エネルギー80keVよりも大きいエネルギーレベルを有する入射光子の最小割合を示す閾値は、0.1であると結論づけることができる。この閾値は、ヒストグラム例410では401として、ヒストグラム例430では403として、ヒストグラム例450では405として示されている。
【0051】
この特定の場合、総計数において80keVの閾値エネルギー以上の光子を10%未満しか受信しない、すなわち閾値が0.1未満である任意の検出器画素は、本方法を実施する処理回路による画像再構成の前に欠陥画素として拒絶されることに留意されたい。
【0052】
本開示の一実施形態では、光子計数型検出器内の処理回路は、上述の基準を使用して、オンザフライ欠陥画素スクリーニング方法を実施する。
図5A~
図5Fは、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(CT)スキャナの処理回路による、オンザフライ欠陥画素スクリーニングの説明された基準の実施態様を示す。
図5Aは、時間Aにおける第1の通常の水ファントムスキャンからの画像を示す。
図5Bは、時間B、すなわち時間Aより約1時間後の、第2の通常の水ファントムスキャンからの、欠陥画素によってリング状に生じるアーチフィシャルリング514を有する画像を示す。
【0053】
図5Cは、異なる取得時点、時間Aおよび時間Bにおいて検出器チャネル方向に沿って各検出器画素で受信された総計数を示す。時間Aの検出器画素と比較して計数がずれた時間Bにおいてハイライト表示された検出器画素532は、第2の水ファントムスキャンの画像内のアーチフィシャルリング514に対応する。
【0054】
図5Dは、欠陥画素における受信光子のスペクトル歪みを示す。
図5Eは、第2のファントムスキャンにおいて欠陥画素が異常554を示すエネルギースペクトルにおいて、特定のビン(この例では、ビン6が閾値エネルギー80keVよりも大きいエネルギーを有する光子の計数を含むことが分かる)で選択された閾値エネルギー(例えば、80keV)よりも大きいエネルギーを有する光子の割合を示す。応答552について、高エネルギー光子の割合は0.27であり、設定された閾値0.1よりも大きい。したがって、応答552に対応する検出器画素は欠陥ではない。異常554では、高エネルギー光子の割合が設定された閾値0.1未満であるため、異常554に対応する検出器画素は欠陥画素である。
【0055】
この欠陥画素は、上述のオンザフライ欠陥画素スクリーニングの基準が実装された光子計数型検出器内の処理回路によって検出されると、検出器の画素データから破棄される。
図5Fに示されるように、第3のファントムスキャンの結果、すなわち欠陥画素検出および補正後の画像は、リングのない画像である。
【0056】
各検出器画素で受信された光子のエネルギースペクトルを使用して欠陥検出器画素をスクリーニングするための別の基準では、閾値T∈は、光子計数型検出器チャネルまたは行にわたって空間的に変化し得る。閾値T∈は、光子計数検出器の様々なパラメータにわたって、閾値エネルギー(∈keV)よりも大きいエネルギーレベルを有する入射光子の最小割合を示す。この基準では、閾値に影響を与える光子計数型検出器のパラメータには、減衰レベル、管電圧、フィルタ、および空間的に変化する追加減衰を提供するウェッジが含まれる。
【0057】
図6Aは、0.1cmの水経路長に対して大きなウェッジを有する、選択された10mAの管電流で、選択された120kVpの管電圧の下で、光子計数型検出器アレイ全体にわたって選択された閾値エネルギー(80keV)よりも大きいエネルギーを有する光子の割合を示す。
図6Aでは、高エネルギー光子の割合が検出器面で空間的に変化し、周辺のチャネル602、602’は、ウェッジ減衰により、中央チャネル604よりもエネルギースペクトルにおいてより多くの高エネルギー光子を運ぶことが分かる。この場合、スクリーニング基準を厳しくするように、周辺のチャネルに対してスクリーニングの閾値T
∈を高く設定することができる。
【0058】
検出器チャネルに関するスクリーニング閾値T
∈の結果を示す
図6Bに見られるように、周辺検出器チャネル702、702’は、中央検出器チャネル704のスクリーニング閾値T
∈よりも高い値に設定されたスクリーニング閾値T
∈を有することができる。
【0059】
あるいは、通常、被検体の減衰量が大きくなるにつれて、エネルギースペクトルに占める高エネルギーの光子の割合が増加するため、被検体の減衰量が大きいと予想される領域ではスクリーニング閾値T∈を高く設定することができ、その結果、中心部ではスクリーニング閾値T∈が高くなり、周辺部ではスクリーニング閾値T∈が低くなる。本開示の別の実施形態では、処理回路は、この基準を使用して、オンザフライ欠陥画素スクリーニング方法を実施する。
【0060】
このように、閾値T∈は、光子計数型検出器のパラメータの特定のセットに対する光子計数型検出器上の画素の位置に基づいて変化する。なお、上述したように、閾値T∈は、光子計数型検出器のパラメータの特定のセットに基づいても変化する。
【0061】
本開示の一実施形態では、オンザフライ欠陥画素スクリーニング方法において、光子計数検出器画素の入射光子のエネルギースペクトルの個々のエネルギービン間の比率または割合が、エネルギースペクトル歪みを検出するために使用される。一実施形態では、欠陥画素の基準は、低エネルギービン計数EbLに対する高エネルギービン計数EbHの比率が予め定義された閾値よりも低い場合、この特定の画素のエネルギースペクトルは歪んでいるとみなされ、したがって、この画素は欠陥画素として識別される。すなわち、所定のエネルギービンにおける計数結果に基づいて、不良画素が特定される。
【0062】
本明細書に開示される他の実施形態と同様に、エネルギービン比率基準に使用される閾値は、理論計算、コンピュータシミュレーション、または物理的なスキャンから決定することができる。本明細書で定義される閾値は、光子計数型検出器の管電圧およびフィルタに加えて、比率の計算に使用される2つのエネルギービンのそれぞれのエネルギー範囲、すなわち[EbL, EbH]に依存する。検出器画素のエネルギービン閾値EbLおよびEbHは、スペクトル歪みに対する感度を高めるために調整することができる。本明細書に開示されるオンザフライ欠陥画素スクリーニングの別の実施形態では、処理回路は、エネルギービン閾値基準を使用してオンザフライ欠陥画素スクリーニング方法を実施する。
【0063】
本明細書に開示される他の実施形態は、他の様々な基準に基づいてオンザフライ欠陥画素スクリーニング方法を実施する。これらの基準は、例えば、光子エネルギースペクトルのエネルギービンの異なる組み合わせで複数の比率を計算すること、光子エネルギースペクトルの低エネルギービンの計数率を閾値と比較すること、最大計数率を有するエネルギービンを識別すること、などであり得る。ここで、計数率は、光子エネルギースペクトルのエネルギービンの幅、光子エネルギースペクトルのエネルギービンの集合の加重平均、光子エネルギースペクトルのエネルギービンの集合の分散、および光子エネルギースペクトルのエネルギー分布の異常(不規則性)を検出するためのニューラルネットワークによって正規化される。
【0064】
すなわち、ある画素の光子エネルギースペクトルの1つ以上の特定のビンにおける計数値の加重平均に基づいて、この画素が欠陥であるかどうかが決定される。また、ある画素の光子エネルギースペクトルの1つ以上の特定のビンにおける計数値の分散に基づいて、この画素が欠陥であるかどうかが決定される。すなわち、所定のエネルギービンにおける計数結果に基づいて、不良画素が特定される。また、ある画素の光子エネルギースペクトルを、光子エネルギースペクトルのエネルギー分布の不規則性を検出するように訓練されたニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークから出力された光子エネルギースペクトルのエネルギー分布の不規則性(ニューラルネットワークの出力)に基づいて、この画素が欠陥であるかどうかが決定される。
【0065】
特定のシナリオでは、検出器画素の断続的な動作は、ミリ秒のような短いタイムスケールである。したがって、オンザフライ欠陥画素スクリーニング方法は、被検体スキャン中に時間的不整合があるかどうかを調べることによって、そのようなシナリオのための拡張実装を有する。オンザフライ欠陥画素スクリーニング方法の実施形態は、隣接するビュー間の計数率(総計数)とエネルギースペクトル(エネルギービン計数)の差を比較することを含む。
【0066】
このような実施形態の基準は、隣接するビューの計数率(総計数)とエネルギースペクトル(エネルギービン計数)の差が、いずれかの画素について、イメージングタスクおよびスキャン条件が与えられた場合に、予め定義された閾値を超える場合、その画素は、断続的な欠陥画素として識別される。この方法は、例えば、フーリエ変換されたビューデータの振幅をチェックすることによって、周波数領域解析に基づく別の基準にさらに拡張される。ある画素が他の画素と比較して異常な周波数振幅を示した場合、それはその画素に問題があることを示すもう1つの指標であり、その画素は拒絶されるべきである。
【0067】
上記に開示された実施形態では、オンザフライ欠陥画素スクリーニングは、検出器においてマイクロ画素レベルで実行される。本実施形態の別の実施態様では、オンザフライ画素スクリーニングはマクロ画素レベルで実行される。マクロ画素レベルで実行されるスクリーニング中、検出器のN×Mグリッド(grid)のマイクロ画素の合計読み出し値または平均読み出し値のいずれかが、さらなる処理に利用される。なお、「N」及び「M」は、自然数である。また、「N」及び「M」の少なくとも一方は、2以上の自然数である。マイクロ画素検出器の測定値は、隣接するマイクロ画素の測定値を組み合わせることによって、マクロ画素の測定値に変換される。その後、検出器画素のマクロ画素測定値を使用して、オンザフライ欠陥画素スクリーニングが実行される。このような実装では、結果の欠陥画素および対応する欠陥画素マップはマクロ画素レベルである。さらに、マクロ画素レベルでの欠陥画素は、隣接するマクロ画素の値を使用して補間される。
【0068】
本開示の別の実施形態では、オンザフライ欠陥画素スクリーニングは、被検体の2Dスカウトスキャンで実行される。この実施態様では、検出器で受信された各画素の最大減衰量および最小減衰量が計算される。理論計算、コンピュータシミュレーション、または光子計数型検出器を使用した物理的なスキャンを使用して計算された減衰の範囲に基づいて、閾値範囲が予め決定される。検出器で受信された各画素の最大減衰量および最小減衰量は、オンザフライ欠陥画素検出のための閾値範囲と比較される。
【0069】
本開示の別の実施形態では、オンザフライ欠陥画素スクリーニングは、ファントムスキャンまたはエアスキャンで実行される。実施形態の一実施態様では、ファントムスキャンまたはエアスキャンは、被検体スキャン前に実行される。実施形態の別の実施態様では、ファントムスキャンまたはエアスキャンは、被検体スキャン後に実行される。一般的に、ファントムスキャンまたはエアスキャンの場合、検出器の各画素の減衰プロファイルは既知である。このようなスキャンを使用した実装では、より正確な閾値をスクリーニングに使用することができる。また、スクリーニングのワークフローを一定の時間ウィンドウで複数回繰り返すことで、断続的な動作をする欠陥画素をキャプチャすることができる。
【0070】
本開示の実施形態に開示された様々な基準に基づく方法のための閾値を選択する際に、ビューごと、またはビューのグループごとの平均エネルギービン計数値を使用することによって、隣接する画素のグループを基準として使用することができる。被検体スキャン中、計数率またはスペクトルが平均値から著しくずれている画素がある場合、その画素は、欠陥画素として識別することができる。
【0071】
一実施形態では、様々な基準に基づく上述のオンザフライ欠陥画素スクリーニング方法は、コンピュータ断層撮影(CT)装置またはスキャナに適用可能であることが理解され得る。
図7は、CT装置またはCTスキャナに含まれる放射線ガントリの実装を示す。
図7に示されるように、X線撮影ガントリ(放射線ガントリ)9900は、側面からの様子が示されており、さらに、X線管9901、環状フレーム9902、および複数列または2次元アレイ型X線検出器9903を含む。X線管9901およびX線検出器9903は、回転軸RAを中心に回転可能に支持された環状フレーム9902上に、例えば患者などの被検体Sを挟んで径方向に取り付けられている。回転ユニット9907は、被検体Sが軸RAに沿って図示されたページの奥または手前方向に移動している間、環状フレーム9902を、例えば0.4秒/回転などの高速で回転させる。
【0072】
本開示によるX線コンピュータ断層撮影(CT)装置の実施形態は、添付図面を参照しながら以下に説明される。なお、X線CT装置は、例えばX線管およびX線検出器が、検査される被検体Sの周りを共に回転する回転/回転型装置、ならびに、多くの検出器素子が環状または面状に配列され、かつX線管のみが検査される被検体Sの周りを回転する固定/回転型装置などの様々な型の装置を含む。本開示は、どちらの型にも適用することができる。ここでは、現在主流である回転/回転型が例示される。
【0073】
マルチスライスX線CT装置は高電圧発生器9909をさらに含み、高電圧発生器9909は、X線管9901がX線を生成するように、スリップリング9908を通してX線管9901に印加される管電圧を発生させる。X線検出器9903は、被検体Sを通り抜けて伝播してきた照射X線を検出するために、被検体Sを挟んでX線管9901から反対側に位置している。X線検出器9903は、例えば光子計数型検出器である。X線検出器9903は、例えば処理回路などの個々の検出器要素またはユニットをさらに含む。
【0074】
CT装置は、X線検出器9903からの検出信号を処理するための他のデバイスをさらに含む。データ取得回路またはデータ取得システム(Data Acquisition System:DAS)9904は、各チャネルのX線検出器9903から出力された信号を電圧信号に変換し、その信号を増幅し、さらにその信号をデジタル信号に変換する。X線検出器9903およびDAS9904は、1回転あたりの所定投影総数(Total number of Projections Per Rotation:TPPR)を管理するように構成される。
【0075】
上述のデータは、非接触データ送信機9905を介して、X線撮影ガントリ9900の外部にあるコンソールに収容された前処理デバイス9906に送られる。前処理デバイス9906は、本明細書に開示される他の実施形態で説明されるような様々な基準に基づいて、生データまたはオンザフライ欠陥画素スクリーニング方法に対する感度補正などの特定の補正を実行する。
【0076】
一実施形態では、前処理デバイス9906は、上述の実施形態で説明されるように、様々な基準に基づいてオンザフライ欠陥画素スクリーニング方法を実施する。前処理デバイス9906は、例示的なワークフロー300などの様々な基準に基づいて、オンザフライ欠陥画素スクリーニング方法の様々なステップを実行するように構成された処理回路を含む。
【0077】
図8は、
図3に示すワークフロー300を実行する処理回路9920の構成の一例を示す図である。
図8に示すように、処理回路9920は、取得機能9920aと、特定機能9920bと、更新機能9920cとを備える。取得機能9920aは、ステップ304の処理を実行する。特定機能9920bは、ステップ344の処理を実行する。更新機能9920cは、ステップ372の処理を行う。取得機能9920aは、取得部又は受信部の一例である。特定機能9920bは、特定部の一例である。更新機能9920cは、更新部の一例である。
【0078】
メモリ9912は、再構成処理直前の段階で投影データとも呼ばれる、結果データを記憶する。メモリ9912は、再構成デバイス9914、入力デバイス9915、およびディスプレイ9916と共に、データ/制御バス9911を介してシステムコントローラ9910に接続される。システムコントローラ9910は、CTシステムを駆動させるのに十分なレベルに電流を制限する電流調整器9913を制御する。
【0079】
検出器は、様々な世代のCTスキャナシステムにおいて、患者などのスキャンされる被検体Sに対して回転および/または固定される。一実施態様では、上述のCTシステムは、第3世代ジオメトリシステムと第4世代ジオメトリシステムとが組み合わせられた例であり得る。第3世代のシステムでは、X線管9901およびX線検出器9903は、環状フレーム9902に径方向に取り付けられ、環状フレーム9902が回転軸RAを中心に回転することにより、被検体Sの周りを回転する。第4世代のジオメトリシステムでは、検出器は患者の周囲に固定配置され、X線管9901は患者の周囲を回転する。代替的実施形態では、X線撮影ガントリ9900は、Cアームおよびスタンドによって支持される環状フレーム9902上に配列された多数の検出器を有する。
【0080】
メモリ9912は、X線検出器ユニット9903でX線の放射照度を示す測定値を記憶することができる。さらに、メモリ9912は、欠陥画素を検出すること、第1の欠陥画素マップを更新すること、およびそれに応じて画像再構成前に欠陥画素を破棄することを含む、例示的なワークフロー300などの、オンザフライ欠陥画素スクリーニング方法の様々なステップを実行するための専用プログラムを記憶することができる。前処理デバイス9906によって実行される投影データの再構成処理は、例えば、検出器の較正、検出器非線形性、および極効果に対する補正を含むことができる。
【0081】
再構成デバイス9914によって実行される後再構成処理は、画像のフィルタリングおよび平滑化、ボリュームレンダリング処理、ならびに画像差分処理を、必要に応じて含むことができる。画像再構成処理は、様々なCT画像再構成方法を実施することができる。再構成デバイス9914は、メモリを使用して、例えば、投影データ、再構成された画像、較正データおよびパラメータ、ならびにコンピュータプログラムを記憶することができる。本明細書では、上述したように、再構成デバイス9914は、不良画素の情報に基づいて、患者のスキャンにより得られたデータの再構成を行う。すなわち、再構成デバイス9914は、ステップ346の処理を行う。再構成デバイス9914は、再構成処理部の一例である。
【0082】
本明細書で説明する方法およびシステムは、多くの実施態様で実施することができるが、一般的に、本明細書で説明する様々な基準に基づいてオンザフライ欠陥画素スクリーニング方法を実行するための処理回路に関する。一実施形態では、処理回路は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、または複合プログラマブルロジックデバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)のうちの1つ、またはそれらの組み合わせとして実装される。FPGAまたはCPLDの実装は、VHDL、Verilog、またはその他のハードウェア記述言語でコード化されてよく、そのコードはFPGAもしくはCPLD内の電子メモリに直接格納されてもよく、または個別の電子メモリとして記憶されてもよい。
【0083】
さらに、メモリ9912および処理回路のメモリは、ROM、EPROM、EEPROM、またはフラッシュメモリなどの不揮発性であってもよい。メモリ9912および処理回路のメモリは、静的または動的RAMなど揮発性であり得、FPGAまたはCPLDとメモリとの間の相互作用だけでなく電子メモリを管理するための、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサなどのプロセッサが提供され得る。処理回路は、それぞれが単一のスレッドもしくは複数のスレッドをサポートし、それぞれが単一のコアもしくは複数のコアを有する単一のプロセッサまたはマルチプロセッサを実装してもよい。
【0084】
一実施態様では、再構成画像はディスプレイ9916に表示することができる。ディスプレイ9916は、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、OLED、LED、または当技術分野で知られている他のディスプレイであり得る。メモリ9912は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、フラッシュドライブ、RAM、ROM、または当技術分野で知られているその他の電子記憶装置であり得る。
【0085】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、精度の良い不良画素マップを得ることができる。
【0086】
特定の実施態様を説明してきたが、これらの実施態様は例としてのみ提示されたものであり、本発明の教示を限定することを意図したものではない。実際に、本明細書に記載されている新たな方法、装置およびシステムは、様々な他の形態で具現化されてもよく、さらに、本明細書に記載される方法、装置およびシステムの形態における様々な省略、置換および変更は、本開示の精神から逸脱することなく行われ得る。
【符号の説明】
【0087】
9920a 取得機能
9920b 特定機能
9920c 更新機能