(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163867
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20241115BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20241115BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241115BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20241115BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20241115BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241115BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/0432
H01M8/04746
H01M8/04701
H01M8/04858
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075919
(22)【出願日】2024-05-08
(31)【優先権主張番号】202310539898.9
(32)【優先日】2023-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】田村 卓也
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC09
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA58
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127CC01
5H127CC11
5H127DB74
5H127DC22
5H127DC45
5H127DC79
5H127DC80
5H127FF07
5H127FF13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料電池車両が長い下り坂を降坂中で回生電力を発生している場合にも、回生電力を適切に消費させ、また燃料電池の凍結が防止できる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム10は、モータ46に駆動力を発生させる電力を燃料電池スタック18又は蓄電装置44から供給する。モータ46に発生した回生電力を蓄電装置44に充電し得ない場合に、まず、ヒータ82単独で消費させる。次に、ヒータ82で消費させつつヒータ82の廃熱を燃料電池スタック18で回収して燃料電池スタック18を温める。燃料電池スタック18の温度が第1閾値温度Th1まで上昇したときに、エアポンプ28単独で消費させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスとエアポンプから供給される酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池の温度を制御する熱媒体を、前記燃料電池に供給する燃料電池用熱媒体供給装置と、
前記燃料電池の温度を制御する前記熱媒体の温度を検出する燃料電池用熱媒体温度センサと、
前記熱媒体を分岐させてヒータに供給するヒータ用熱媒体供給装置と、
前記ヒータの温度を制御する熱媒体の温度を検出するヒータ用熱媒体温度センサと、
前記燃料電池用熱媒体供給装置を通流する熱媒体と前記ヒータ用熱媒体供給装置を通流する熱媒体を連通又は遮断する切替弁と、を備え、
蓄電装置と前記燃料電池の少なくともいずれから、前記エアポンプ、前記燃料電池用熱媒体供給装置及び前記ヒータ用熱媒体供給装置に補機用電力を供給すると共に、モータに駆動力を発生させる駆動用電力を供給する燃料電池システムであって、
前記モータに発生した回生電力を前記蓄電装置に充電し得ない場合に、燃料電池用熱媒体温度が第1閾値温度未満であって、且つヒータ用熱媒体温度から前記燃料電池用熱媒体温度を引いた温度差が閾値温度差以上となったとき、前記切替弁を連通状態に切り替えて、前記燃料電池用熱媒体温度を上昇させ、
前記燃料電池用熱媒体温度が前記第1閾値温度以上の温度となったとき、前記切替弁を遮断状態に切り替えて、前記エアポンプの回転数を上昇させて前記回生電力を前記エアポンプで消費させる電力消費制御を行う
燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池用熱媒体温度が前記第1閾値温度未満であるときには、前記エアポンプの回転数を上昇させて前記回生電力を前記エアポンプで消費させる前記電力消費制御を行わない
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記モータに発生した前記回生電力を前記蓄電装置に充電し得ない場合に、前記燃料電池用熱媒体温度が前記第1閾値温度未満であって、且つ前記ヒータ用熱媒体温度から前記燃料電池用熱媒体温度を引いた前記温度差が前記閾値温度差未満であるとき、前記切替弁を遮断状態として前記回生電力を前記ヒータに供給して消費させる第1電力消費制御を行う
燃料電池システム。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池システムにおいて、
前記回生電力を前記ヒータに供給して消費させる前記第1電力消費制御中に、前記燃料電池用熱媒体温度が前記第1閾値温度未満であって、且つ前記ヒータ用熱媒体温度から前記燃料電池用熱媒体温度を引いた前記温度差が前記閾値温度差以上となったとき、前記切替弁を連通状態に切り替え、前記回生電力を前記ヒータに供給して消費させつつ、前記燃料電池用熱媒体温度を上昇させ、前記ヒータの廃熱を前記燃料電池で回収し、前記燃料電池を温める第2電力消費制御を行う
燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記切替弁の連通状態時に、前記切替弁の弁開度を全開状態と閉状態との間の中間開度で調整する
燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池用熱媒体温度が前記第1閾値温度以上の温度となったとき、前記切替弁を遮断状態に切り替えて、前記ヒータによる電力消費を止め、前記エアポンプの回転数を上昇させて前記回生電力を前記エアポンプで消費させる第3電力消費制御を行う
燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記モータに前記回生電力が発生する場合は、前記燃料電池システムの降坂時に前記モータによる制動力が発生している場合である
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池の電力等によりモータを駆動する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギの効率化に貢献する燃料電池(FC)に関する研究開発が行われている。
【0003】
例えば、特開2019-140854号公報には、燃料電池車両のモータの回生電力が余剰電力となった場合に、余剰の回生電力を空調回路の加熱部(ヒータ)で消費する技術(第1技術という)が開示されている(前記公報の[0024])。
【0004】
また、前記公報に開示された燃料電池車両では、前記回生電力を消費中に、前記加熱部を通流する熱媒体の温度が上限温度に達した場合、前記熱媒体を前記空調回路と燃料電池との間で循環させる技術(第2技術という)が開示されている(前記公報の[0025])。
【0005】
さらに、前記公報に開示された燃料電池車両では、他の実施例として、前記回生電力を消費中に、前記加熱部を通流する熱媒体の温度が上限温度に達した場合であっても、燃料電池の温度が上限温度に達していない場合には、前記熱媒体を前記空調回路と燃料電池との間で循環させる技術(第3技術という)が開示されている(前記公報の[0029])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記公報に開示された燃料電池車両では、前記第1技術及び第2技術での制御中に、燃料電池の温度を考慮していないので、燃料電池の温度を的確に制御できないという課題がある。
【0008】
従って、燃料電池車両が長い下り坂を降坂中で回生電力を発生している場合には、燃料電池システムが凍結するという課題がある。
【0009】
また、前記公報に開示された燃料電池システムでは、前記第3技術が適用できないときには、処理を終了してしまうので、回生電力を消費することができないという課題がある。
この発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係る燃料電池システムは、燃料ガスとエアポンプから供給される酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池の温度を制御する熱媒体を、前記燃料電池に供給する燃料電池用熱媒体供給装置と、前記燃料電池の温度を制御する前記熱媒体の温度を検出する燃料電池用熱媒体温度センサと、前記熱媒体を分岐させてヒータに供給するヒータ用熱媒体供給装置と、前記ヒータの温度を制御する熱媒体の温度を検出するヒータ用熱媒体温度センサと、前記燃料電池用熱媒体供給装置を通流する熱媒体と前記ヒータ用熱媒体供給装置を通流する熱媒体を連通又は遮断する切替弁と、を備え、蓄電装置と前記燃料電池の少なくともいずれから、前記エアポンプ、前記燃料電池用熱媒体供給装置及び前記ヒータ用熱媒体供給装置に補機用電力を供給すると共に、モータに駆動力を発生させる駆動用電力を供給する燃料電池システムであって、前記モータに発生した回生電力を前記蓄電装置に充電し得ない場合に、燃料電池用熱媒体温度が第1閾値温度未満であって、且つヒータ用熱媒体温度から前記燃料電池用熱媒体温度を引いた温度差が閾値温度差以上となったとき、前記切替弁を連通状態に切り替えて、前記燃料電池用熱媒体温度を上昇させ、前記燃料電池用熱媒体温度が前記第1閾値温度以上の温度となったとき、前記切替弁を遮断状態に切り替えて、前記エアポンプの回転数を上昇させて前記回生電力を前記エアポンプで消費させる電力消費制御を行う。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、モータに回生電力が発生した場合であって、該回生電力を蓄電装置に充電し得ない場合に、ヒータ単独、ヒータ・燃料電池連携及びエアポンプ単独の順で回生電力を消費させるようにしたので、燃料電池システムを凍結させることなく、回生電力を的確に消費させることができる。
【0012】
回生電力が発生している場合には、燃料電池による発電がアイドル状態とされ、スタック温度が低い。スタック温度が低いときに、回生電力によりエアポンプを高速に回転させる(通常回転させる)と、燃料電池システムが凍結する可能性がある。これに対して、この発明では、エアポンプ単独で回生電力を消費する前に、ヒータ単独で回生電力を消費する期間及びヒータ・燃料電池連携により回生電力を消費する期間を設けることで、燃料電池の温度を的確に制御でき、且つ回生電力を確実に消費することができる。延いてはエネルギの効率化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る燃料電池システムが組み込まれた燃料電池自動車の概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す制御装置中の回生電力消費制御部の詳細構成を含む回生電力消費システムのブロック図である。
【
図3】
図3は、前記燃料電池システムの動作説明に供されるフローチャートである。
【
図4】
図4は、燃料電池スタックの電流・電圧特性の説明図である。
【
図5】
図5Aは、切替弁が遮断状態である場合の熱媒体の流れを示す説明図である。
図5Bは、切替弁が連通状態である場合の熱媒体の流れを示す説明図である。
【
図6】
図6は、回生電力の電力消費制御の説明表である。
【
図7】
図7は、回生電力の電力消費説明に供される一例のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
[構成]
図1は、この発明の実施形態に係る燃料電池システム10が組み込まれた燃料電池自動車12の概略構成図である。
【0015】
燃料電池システム10は、燃料電池自動車12以外の船舶、航空機等の飛行体、ロボット等の他の移動体にも組み込み可能である。
【0016】
燃料電池自動車12は、燃料電池システム10と、該燃料電池システム10に電気的に接続される出力部16と、該燃料電池自動車12全体(燃料電池システム10及び出力部16を含む)を制御する制御装置15と、から構成される。
【0017】
制御装置15は、一つではなく、例えば、燃料電池システム10用と出力部16用等、二つ以上の制御装置に分けてもよい。
【0018】
燃料電池システム10は、燃料電池スタック(FCスタック、単に、燃料電池(FC)ともいう)18と、燃料タンク(水素タンク、燃料ガスタンク)20と、酸化剤ガス供給装置22と、燃料ガス供給装置24と、燃料電池用熱媒体供給装置26と、ヒータ用熱媒体供給装置27とから構成される。
酸化剤ガス供給装置22には、エアポンプ(AP)28及び加湿器(HUM)30が含まれる。
【0019】
燃料ガス供給装置24には、インジェクタ(INJ)32、エジェクタ34及び気液分離器36が含まれる。インジェクタ32は、減圧弁に代替してもよい。
【0020】
燃料電池用熱媒体供給装置26には、熱媒体ポンプ(WP)38、サーモ弁37及びラジエータ39が含まれる。
【0021】
ヒータ用熱媒体供給装置27には、熱媒体ポンプ81、ヒータ82、ヒータコア84、3方弁である切替弁85及びこれらを連通する熱媒体の流路143、144、146、148並びに温度センサ83が含まれる。ヒータ用熱媒体供給装置27は、エアコンディショナの一部として構成されている。
出力部16には、電圧変換部42、蓄電部43及びモータ(電動機)46が含まれる。
【0022】
電圧変換部42には、インバータ45と、昇圧コンバータ(SUC)であるDC/DCコンバータ40と、昇降圧コンバータ(SUDC)であるDC/DCコンバータ41とが含まれる。
【0023】
蓄電部43には、高電圧Vbh[V]の蓄電装置(高圧バッテリ、HV BAT)44、降圧コンバータ(SDC)であるDC/DCコンバータ47、及び低電圧Vbl[V]の蓄電装置(低圧バッテリ、LV BAT)48が含まれる。
【0024】
燃料電池スタック18に接続された電圧変換部42及び高電圧Vbhの蓄電装置44を備える蓄電部43の負荷には、主機であるモータ46と、高電圧Vbhの蓄電装置44から電力が供給される高電圧補機であるエアポンプ28と、低電圧補機(例えば、前記エアコンディショナ及びそれぞれ後述する、各種センサ、各種電磁弁、インジェクタ32及び熱媒体ポンプ38等)と、が含まれる。前記低電圧補機には、低電圧Vblを発生する蓄電装置48から電力が供給される。
【0025】
ヒータ82は、電圧変換部42から回生電力に係わる高電圧Vinvが印加可能に構成されている。また、ヒータ82は、図示はしないが、暖房の際に、高電圧Vbhが印加され、電力消費(発熱)可能に構成されている。ヒータ82には、高電圧Vinvに代替して、回生電力をDC/DCコンバータ41により降圧した高電圧Vbhを印加するようにしてもよい。
【0026】
DC/DCコンバータ40は、燃料電池スタック18からの直流電圧の発電電圧である出力電圧Vfcを昇圧変換し、インバータ45の直流端及びDC/DCコンバータ41に駆動用の高電圧を印加する。
【0027】
DC/DCコンバータ41は、前記駆動用の高電圧を、蓄電装置44のバッテリ電圧である高電圧Vbhに降圧し、高電圧Vbhの蓄電装置44を充電する。
【0028】
DC/DCコンバータ47は、高電圧Vbhを低電圧Vblに降圧し、低電圧Vblの蓄電装置48を充電する。
【0029】
インバータ45の直流端には、DC/DCコンバータ41により高電圧Vbhが昇圧変換された高電圧Vinv及び/又はDC/DCコンバータ40により出力電圧Vfcが昇圧変換された高電圧Vinvが駆動電圧として印加される。
【0030】
インバータ45は、直流の前記高電圧Vinvを3相交流に変換してモータ46を駆動する。
燃料電池自動車12は、モータ46が発生する駆動力により走行する。
【0031】
インバータ45は、モータ46の回生電圧を直流の高電圧Vinvに変換する。この直流の高電圧Vinvは、DC/DCコンバータ41により高電圧Vbhに降圧される。高電圧Vbhは蓄電装置44に印加されて蓄電装置44を充電する。
【0032】
なお、蓄電装置44のSOC(充電状態)が満充電状態の満充電閾値SOCthを上回る場合には、高電圧Vinvの回生電圧(回生電力)は、ヒータ82又はエアポンプ28により電力消費(いわゆる廃電)がなされる。蓄電装置44のSOCは、SOCセンサ49により検出され、制御装置15で取得される。
【0033】
燃料電池スタック18は、複数の発電セル50が積層される。発電セル50は、電解質膜・電極構造体52と、該電解質膜・電極構造体52を挟持するセパレータ53、54とを備える。
【0034】
電解質膜・電極構造体52は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である固体高分子電解質膜55と、前記固体高分子電解質膜55を挟持するカソード電極56及びアノード電極57とを備える。
【0035】
カソード電極56及びアノード電極57は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)を有する。ガス拡散層の表面に、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が一様に塗布されることにより、電極触媒層(図示せず)が形成される。電極触媒層は、固体高分子電解質膜55の両面に形成される。
【0036】
一方のセパレータ53の電解質膜・電極構造体52に向かう面には酸化剤ガス入口連通口101と酸化剤ガス出口連通口102とを連通し、カソード電極56に沿うカソード流路(酸化剤ガス流路)58が形成される。
【0037】
他方のセパレータ54の電解質膜・電極構造体52に向かう面には、燃料ガス入口連通口103と燃料ガス出口連通口104とを連通し、アノード電極57に沿うアノード流路(燃料ガス流路)59が形成される。
【0038】
正極端子108及び負極端子106とDC/DCコンバータ40とを接続する配線の間には、燃料電池スタック18の出力電圧Vfcを検出する電圧センサ110が設けられる。さらに、正極端子108とDC/DCコンバータ40とを接続する配線には、発電電流Ifcを検出する電流センサ112が設けられる。
【0039】
電圧センサ110と電流センサ112とにより、発電状態として発電電力を検出する発電状態取得部115が形成される。電圧センサ110は、発電セル50毎、あるいは複数の発電セル50毎に設けてもよい。
【0040】
エアポンプ28は、高電圧の蓄電装置44の高電圧Vbhが印加されるエアポンプ用インバータ(不図示)及び該エアポンプ用インバータの3相交流出力により制御されるエアポンプ用モータ(不図示)により駆動される機械式の過給器等で構成される。
【0041】
エアポンプ28は、外気取入口113から外気(大気、空気)を吸引して加圧し、加湿器30を通じて燃料電池スタック18に供給する等の機能を有する。
【0042】
加湿器30は、流路31Aと流路31Bとを有する。流路31Aには、エアポンプ28により圧縮され高温化されて乾燥した空気(酸化剤ガス)が流通する。流路31Bには、燃料電池スタック18の酸化剤ガス出口連通口102から酸化剤オフガス出口92を介して排出される排出ガスである酸化剤オフガスが流通する。
【0043】
加湿器30は、エアポンプ28から供給された酸化剤ガスを加湿する機能を有する。すなわち、加湿器30は、前記酸化剤オフガス中に含まれる水分を、流路31Bから内部の多孔質膜を介して流路31Aに流通する供給ガス(酸化剤ガス)に移動させて加湿し、加湿した酸化剤ガスを、酸化剤ガス入口91を通じて燃料電池スタック18に供給する。
【0044】
外気取入口113から酸化剤ガス入口91までの酸化剤ガス供給流路62(酸化剤ガス供給流路62A、62Bを含む)には、外気取入口113から順にエアフローセンサ(AFS:流量センサ)116、エアポンプ28、入口側封止弁118及び加湿器30が設けられている。なお、二重線で描いている酸化剤ガス供給流路62等の流路は、配管により形成されている(以下、同様)。
【0045】
入口側封止弁118は、弁開度が制御装置15により可変制御可能であり、酸化剤ガス供給流路62を開閉する。
【0046】
酸化剤オフガス出口92に連通する酸化剤オフガス排出流路63には、酸化剤オフガス出口92から順に加湿器30及び背圧弁としても機能する出口側封止弁120が設けられている。出口側封止弁120は、弁開度が制御装置15により可変制御可能であり、出口側封止弁120は、酸化剤オフガス排出流路63を開閉する。
【0047】
入口側封止弁118の吸入口と出口側封止弁120の吐出口との間には、酸化剤ガス供給流路62と酸化剤オフガス排出流路63とを連通するバイパス流路66が設けられている。バイパス流路66には、バイパス流路66を開閉するバイパス弁122が設けられている。
【0048】
バイパス弁122の弁開度は、制御装置15により可変制御可能である。バイパス弁122は、燃料電池スタック18をバイパスする酸化剤ガスの流量を調整する。
バイパス流路66と酸化剤オフガス排出流路63との合流路は、排出流路64に連通している。
【0049】
燃料タンク20は、電磁作動式の水素遮断弁21を備え、高純度の水素を高い圧力で圧縮して収容する容器である。
【0050】
燃料タンク20から吐出される燃料ガス(水素)は、燃料ガス供給流路72に設けられたインジェクタ32及びエジェクタ34を通じ、燃料電池スタック18の燃料ガス入口93及び燃料ガス入口連通口103を介してアノード流路59の入口に供給される。
【0051】
この場合、燃料ガス供給流路72には、該燃料ガス供給流路72内の燃料ガスのガス圧力(アノード圧力)Paを検出(測定)する圧力センサ73が設けられる。
【0052】
アノード流路59の出口は、燃料ガス出口連通口104、燃料オフガス出口94及び燃料オフガスの燃料オフガス排出流路74を通じて気液分離器36の入口151に連通され、該気液分離器36にアノード流路59から水素含有ガスである前記燃料オフガスが供給される。
【0053】
実際上、アノード流路59には、燃料電池スタック18の発電により生成された水の一部が、カソード流路58から電解質膜・電極構造体52を逆拡散(透過)して移動してくる。
この逆拡散水を燃料オフガス排出流路74あるいは循環流路77から適切に排水できない場合、燃料電池スタック18のアノード電極57に水が浸入してアノード流路(燃料ガス流路)59を塞いでしまい、燃料電池スタック18の発電安定性の悪化を引き起こす。
【0054】
この不都合を防止するために、水を一時的に貯留する気液分離器36は、前記燃料オフガスを気体成分と液体成分(液水)とに分離する。
【0055】
燃料オフガスの気体成分(燃料オフガス)は、気液分離器36の気体排出口152から排出され、循環流路77を通じてエジェクタ34の吸込口に供給される。
【0056】
逆拡散水からなる、燃料オフガスの液体成分(液水)は、気液分離器36の液体排出口160からドレイン弁164が設けられたドレイン流路162を通じ、排出流路64から排出される排出ガスと混合され排出流路99及び排ガス排気口168を通じて外気に排出される。
【0057】
ドレイン流路162には、前記液水と共に、一部の燃料オフガス(水素含有ガス)が排出される。また、ドレイン流路162には、前記液水の排出完了後には、燃料オフガス(水素含有ガス)のみが排出される。
【0058】
燃料オフガス中の水素ガスを希釈して外部に排出するために、エアポンプ28から吐出した酸化剤ガスの一部がバイパス流路66を通じて、排出流路64に供給されている。
【0059】
ドレイン流路162から水が抜けた後も、ドレイン弁164を開け続けた場合、水素を無駄に捨ててしまうことになる。水素を無駄に捨ててしまうことを回避するために、気液分離器36から水が排水された後は、ドレイン弁164を適切に閉弁する必要がある。
【0060】
酸化剤オフガス排出流路63に流通する酸化剤オフガス(反応しなかった残部の燃料オフガスを含む)に酸化剤ガスのバイパス流路66を通じて供給された酸化剤ガスが混合されて、排出流路64に流通する。
【0061】
排出流路64は、ドレイン流路162に連通し、合流して排出流路99に連通する。
排出流路99では、排出流路64からの酸化剤オフガスにより、ドレイン流路162から吐出される液水と燃料オフガスとの混合流体中の燃料ガスが希釈され、排ガス排気口168を通じて燃料電池自動車12の外部(大気)に排出される。
【0062】
燃料電池システム10の燃料電池用熱媒体供給装置26は、燃料電池スタック18内の熱媒体流路60に熱媒体(クーラント)を流通させる燃料電池用熱媒体流路138を有する。燃料電池用熱媒体流路138は、熱媒体流路60の他に、熱媒体排出流路134、熱媒体供給流路135、熱媒体バイパス流路136、熱媒体排出流路137、サーモ弁37、熱媒体供給流路139、140、141及び熱媒体ポンプ38により構成される。
【0063】
熱媒体供給流路135の出口側と熱媒体排出流路137の入口側との間には、熱媒体を冷却するラジエータ39が接続される。
【0064】
ラジエータ39は熱媒体を冷却する。熱媒体ポンプ38は、前記燃料電池用熱媒体流路138内で熱媒体を循環させる。
【0065】
熱媒体排出流路134に温度センサ76が設けられる。熱媒体供給流路141にも温度センサ79が設けられる。この実施形態において、温度センサ79は、燃料電池用熱媒体温度センサ79という。
【0066】
サーモ弁37は、熱媒体バイパス流路136に流れる熱媒体が所定温度以上になると、熱媒体バイパス流路136を遮断状態にするように切り替えられ、熱媒体がラジエータ39により廃熱される。また、サーモ弁37は、熱媒体バイパス流路136内の熱媒体の温度が所定温度未満の場合には、熱媒体バイパス流路136が連通状態になるように切り替えられ、熱媒体排出流路134に流れる熱媒体をラジエータ39により冷却しない。
【0067】
以上の燃料電池システム10の各構成要素は、制御装置15によって統括制御される。
なお、入口側封止弁118、出口側封止弁120、ドレイン弁164及び切替弁85は、制御装置15により弁開度が制御される流量調整弁であるが、電磁制御式の開閉弁を用いデューティ制御してもよい。
【0068】
制御装置15は、ECU(Electronic Control Unit)により構成される。ECUは、1以上のプロセッサ(CPU)、メモリ、入出力インタフェース及び電子回路を有するコンピュータにより構成される。1以上のプロセッサ(CPU)は、メモリに記憶された図示しないプログラム(コンピュータ実行可能な指令)を実行する。
【0069】
制御装置15の前記プロセッサは、前記プログラムに従って演算を実行することで、燃料電池自動車12及び燃料電池システム10の運転制御を行う。
また、制御装置15は、前記プログラムを実行することで、回生電力消費(廃電)制御部200として機能する。
【0070】
制御装置15には、燃料電池自動車12の電源スイッチ(電源SW)71が接続されている。電源スイッチ71は、ユーザにより操作され、燃料電池システム10の燃料電池スタック18の発電運転を開始乃至継続(ON)させるか終了(OFF)させる。
【0071】
制御装置15には、また、それぞれ図示しないアクセル開度センサ、車速センサが接続される。電源SW71は、不図示のタイマ(計時器)を利用して、燃料電池システム10のいわゆるRTC起動(自動オンオフ)が可能である。
【0072】
図2は、回生電力消費制御部200の詳しい構成を含む回生電力消費システム220を示している。回生電力消費制御部200は、エアポンプ28、ヒータ82、燃料電池用熱媒体供給装置26及びヒータ用熱媒体供給装置27の動作を制御して、回生電力を効率的に消費させる。
【0073】
回生電力消費制御部200は、電力消費要求制御部202と、ヒータ電力消費制御部204と、エアポンプ電力消費制御部206と、切替弁制御部208と、FC温度監視部210と、ヒータ温度監視部212と、から構成される。
【0074】
なお、ヒータ82の電源入力端子には、高電圧Vinvが印加され、接地端子は、スイッチ87を介して接地されている。スイッチ87がヒータ電力消費制御部204によって閉じられると、ヒータ82は、回生電圧である高電圧Vinvから供給される電流によって発熱する。ヒータ82が発熱することによって回生電力が消費されヒータ用熱媒体Chの温度が上昇する。なお、ヒータ82は、暖房の際には、蓄電装置44の高電圧Vbhから供給される電流によっても発熱する。
【0075】
[動作]
[フローチャートによる説明]
この実施形態に係る燃料電池システム10は、基本的には以上のように構成される。以下、
図3のフローチャートを参照しながら、モータ46の回生電力の電力消費制御に係わる燃料電池システム10の動作について説明する。
【0076】
ステップS1にて、制御装置15は、電源スイッチ71がオン状態であるかオフ状態であるかを判定し、オフ状態継続中又はオン状態からオフ状態にされた(ステップS1:NO)場合には処理をステップS2に進める。
ステップS2にて、制御装置15は、発電を終了する処理を行う。
【0077】
その一方、電源スイッチ71がオン状態継続中又はオフ状態からオン状態にされた(ステップS1:YES)場合には、制御装置15は、処理をステップS3に進める。
【0078】
この実施形態において、ステップS1にて、燃料電池システム10を搭載する燃料電池自動車12の電源スイッチ71は、山頂のコテージ(高地)で駐車中充電後にオン状態(ステップS1:YES)にされる。
【0079】
この後、燃料電池自動車12は、前記高地から坂道を、主に、アクセルペダルを踏み込まないで回生ブレーキをかけながら、いわゆるEV(Electric Vehicle)走行で下り坂を下る降坂中の状態にあるとする。なお、EV走行とは、蓄電装置44の電力だけでモータ46を駆動する走行状態をいう。
【0080】
この降坂中、燃料電池システム10は、燃料ガスを遮断した発電停止状態又は開回路電圧Vocvでの劣化を回避する非常に小電力のアイドル発電状態とされる。
【0081】
ステップS3にて、制御装置15は、モータ46による回生電力が発生しているか否かを判定する。
【0082】
図4は、燃料電池スタック18の電流・電圧特性201を示している。横軸は、発電電流Ifc[A]、縦軸は、発電電圧Vfc[V]である。
【0083】
燃料電池自動車12は、発電電圧Vfcが発電電流Ifcの増減に対して略変化しない通常発電電圧Vn[V]で平地走行等の通常走行を行う。下り坂走行中に、燃料電池スタック18は、アイドル電流Ifcidle(アイドル電圧Vfcidle)で僅かに発電状態、いわゆるアイドル発電状態が維持されている。アイドル発電状態が維持されている間、燃料電池スタック18の温度が検出される。
【0084】
この実施形態では、燃料電池スタック18の温度が、燃料電池スタック18への熱媒体供給口に設けられた燃料電池用熱媒体温度センサ79により検出され、FC温度監視部210で燃料電池用熱媒体温度Tfcとして取得される。
【0085】
アイドル発電状態では、前記高地から低地に向かう外気温の上昇も含めて、燃料電池用熱媒体温度Tfcは緩やかに上昇する。
【0086】
降坂中であって、前記アクセルペダルが踏まれていない状況下で、モータ46は制動力(回生制動力)及び回生電力を発生し、制御装置15によるステップS3の判定が肯定的(ステップS3:YES)とされ、制御装置15は、処理をステップS4に進める。
【0087】
ステップS4にて、制御装置15は、SOCセンサ49により蓄電装置44のSOCを取得し、取得したSOCが、満充電閾値SOCth未満であるか否かを判定する。
【0088】
SOCが満充電閾値SOCth未満である(ステップS4:YES、SOC<SOCth)場合には、制御装置15は、処理をステップS5に進め、SOCが満充電閾値SOCth以上である(ステップS4:NO、SOC≧SOCth)場合には、処理をステップS6に進める。
【0089】
ステップS5にて、制御装置15は、モータ46の回生電力をインバータ45及びDC/DCコンバータ41を介して高電圧Vinvの回生電力に変換する。制御装置15は、高電圧VinvをDC/DCコンバータ41により高電圧Vbhに降圧し、高電圧Vbhとされた回生電力を蓄電装置44に充電し、処理をステップS1に進める。
【0090】
蓄電装置44に充電し得ない場合、ステップS6にて、制御装置15の電力消費要求制御部202は、FC温度監視部210で監視している温度センサ79による熱媒体温度(燃料電池用熱媒体温度Tfcという)が、第1閾値温度Th1以上か否かを監視する。
【0091】
高地からの下り坂走行の初期状態では、燃料電池スタック18は冷えているので、ステップS6の判定は否定的(ステップS6:NO、燃料電池用熱媒体温度Tfcが第1閾値温度Th1未満)とされ、制御装置15は、処理をステップS7に進める。
【0092】
ステップS7にて、制御装置15の電力消費要求制御部202は、ヒータ温度監視部212で監視している温度センサ83による熱媒体温度(ヒータ用熱媒体温度Thtという)から燃料電池用熱媒体温度Tfcを引いた温度差(差分温度)(Tht-Tfc)が閾値温度差(差分閾値温度)ΔTth以上の温度か否かを判定する。
【0093】
高地からの下り坂走行の初期状態では、ヒータ82も冷えているので、ステップS7の判定は否定的{(Tht-Tfc)<ΔTth、(ステップS7:NO)}とされ、制御装置15は、処理をステップS8(第1電力消費制御)に進める。
【0094】
ステップS8にて、ヒータ温度監視部212は、切替弁制御部208に切替弁85の動作指示を送る。また、ステップS8にて、電力消費要求制御部202は、ヒータ電力消費制御部204に対し、ヒータ電力消費要求を指示してもよい。
【0095】
動作指示により切替弁制御部208は、切替弁85を遮断状態に切り替える。
【0096】
ヒータ電力消費要求指示によりヒータ電力消費制御部204は、ヒータ82を通電状態にする。通電状態において、ヒータ82は、高電圧Vinvの回生電力により発熱する。
【0097】
図5Aは、切替弁85が遮断状態(燃料電池用熱媒体Cfとヒータ用熱媒体Chを遮断している状態)に切り替えられている場合(ステップS8の処理中)の熱媒体Cf、Chの通流経路を示している。
【0098】
ヒータ用熱媒体Chは、ヒータ用熱媒体供給装置27内を循環しているので、ヒータ用熱媒体Chの温度Thtは、ヒータ電力消費制御部204の制御に基づくヒータ82による回生電力の電力消費に応じて徐々に上昇する。
【0099】
ステップS8の回生電力の電力消費制御を第1電力消費制御又はヒータ単独電力消費制御という。
ステップS8の処理後、ステップS1:YES、ステップS3:YES、ステップS4:NO、ステップS6:NO及びステップS7:NO後のステップS8の第1電力消費制御中に、ヒータ用熱媒体温度Thtが上昇する。ヒータ用熱媒体温度Thtが上昇し、ステップS7の判定が肯定的{(Tht-Tfc)≧ΔTth、(ステップS7:YES)}とされると、制御装置15は、処理をステップS9に進める。
【0100】
ステップS7の判定が肯定的となった場合、制御装置15は、ヒータ用熱媒体温度Thtがそれ以上には上昇しないようにヒータ82(ヒータ用熱媒体供給装置27)での回生電力の電力消費を制限してもよい。
【0101】
ステップS9にて、回生電力消費制御部200のヒータ温度監視部212は、切替弁85を連通状態にする動作指示を切替弁制御部208に送る。
また、ステップS9にて、電力消費要求制御部202は、FC温度監視部210からの廃熱回収許可情報(ステップS7:YES)に基づき、切替弁制御部208に廃熱回収許可情報を送る。
【0102】
切替弁制御部208は、前記廃熱回収許可情報及び前記動作指示により切替弁85を遮断状態から連通状態(燃料電池用熱媒体Cfとヒータ用熱媒体Chを連通している状態)に切り替える。切替弁85の連通状態時に、切替弁85の弁開度は、全開状態と閉状態との間の中間開度で調整するようにしてもよい。
【0103】
図5Bは、切替弁85が連通状態に切り替えられている場合(ステップS9の処理中)の熱媒体Cf、Chの通流経路を示している。
【0104】
ヒータ用熱媒体供給装置27の流路144を通流しているヒータ用熱媒体Chは、切替弁85を通過し、流路140を通流している燃料電池用熱媒体Cfと合流し、流路141を介して燃料電池スタック18に導入される。
【0105】
ステップS9の処理により、ヒータ82により温度上昇したヒータ用熱媒体Chの廃熱が燃料電池用熱媒体Cfに伝達され、燃料電池スタック18の温度を上昇させることで燃料電池スタック18が廃熱回収状態にされる。
ステップS9の回生電力の電力消費制御を第2電力消費制御又はヒータ・燃料電池連携電力消費制御という。
【0106】
ステップS9の処理を行うことによる廃熱回収状態になると、燃料電池スタック18の温度、すなわち燃料電池用熱媒体温度Tfcの上昇速度が大きくなる。一方、ヒータ用熱媒体温度Thtは緩やかに下降する。
【0107】
従って、ステップS9の処理後に、ステップS1:YES、ステップS3:YES、ステップS4:NO、ステップS6:NO、ステップS7:YES、ステップS9の処理が繰り返される。
なお、この処理の繰り返し中に、ステップS7の条件式(Tht-Tfc≧ΔTth)を満足するように、切替弁制御部208は、FC温度監視部210により監視される燃料電池用熱媒体温度Tfc及びヒータ温度監視部212により監視されるヒータ用熱媒体温度Thtに基づき、切替弁85の連通開度(弁開度)を調整してもよい。
【0108】
この処理の繰り返し中に、燃料電池スタック18の燃料電池用熱媒体温度Tfcが上昇し、ステップS6の判定が肯定的(Tfc≧Th1、ステップS6:YES)となったとき、制御装置15(回生電力消費制御部200の電力消費要求制御部202)は、処理をステップS10に進める。
【0109】
ステップS10にて、回生電力消費制御部200のFC温度監視部210は、切替弁85を連通状態から遮断状態にする動作指示を切替弁制御部208に送ると共に、エアポンプ電力消費許可情報(AP電力消費許可情報)を電力消費要求制御部202に送る。
ステップS10にて、電力消費要求制御部202は、ヒータ電力消費制御部204へのヒータ電力消費要求を取り下げる。また、切替弁制御部208への廃熱回収許可情報を取り下げる。さらに、電力消費要求制御部202は、エアポンプ電力消費制御部206にエアポンプ電力消費要求を送る。
ステップS10にて、エアポンプ電力消費制御部206は、エアポンプ28の回転数を所定回転数まで上昇させると共に、エアポンプ28からの酸化剤ガスが燃料電池スタック18に過剰に供給されないようにバイパス弁122を開弁する。
ステップS10にて、モータ46の回生電力がエアポンプ28により消費される。
ステップS10の回生電力の電力消費制御を第3電力消費制御又はエアポンプ単独電力消費制御という。
【0110】
ステップS10の処理後、ステップS1:YES、ステップS3:YES、ステップS4:NO、ステップS6:YES、ステップS10の処理の繰り返し中に、燃料電池自動車12が、降坂走行を終了する。降坂走行を終了し、例えば、平地走行に切り替わると、ステップS3の判定が否定的(ステップS3:NO)とされ、燃料電池自動車12の燃料電池システム10は、回生電力の電力消費制御を終了する。
【0111】
ステップS10の回生電力の消費制御(第3電力消費制御)中に、燃料電池用熱媒体温度Tfcを一定の第1閾値温度Th1に維持するために、サーモ弁37の弁開度を調整して、ラジエータ39による燃料電池用熱媒体Cfの冷却を併用してもよい。
【0112】
図6は、理解の便宜のために、
図3のフローチャートを参照して説明したステップS8~S10の回生電力の電力消費制御(切替弁85の制御を含む)の説明表250をまとめて示している。
【0113】
[タイミングチャートによる説明]
図3のフローチャートにより説明した動作の一例を
図7のタイミングチャートを参照して説明する。
【0114】
図7におけるAP電力消費要求(
図7中、上から3番目に示している)は回生電力をエアポンプ28で消費するための要求であって、ヒータ電力消費要求(
図7中、上から4番目に示している)は回生電力をヒータ82で消費するための要求である。
【0115】
なお、回生電力は、蓄電装置44を介さず直接、補機類で消費されてもよい。又は、蓄電装置44から補機類に電力を供給しながら蓄電装置44が満充電閾値SOCthを上回らないように充放電を繰り返し消費されてもよい。どちらの場合にも回生電力の電力消費と判断される。
【0116】
時点t0にて電源スイッチ71(
図7中、最上段に示している)がオフ状態からオン状態に遷移する(ステップS1:YES)。時点t0にて、燃料電池自動車12の降坂に伴う回生電力(ステップS3:YES)の電力消費要求(
図7中、上から2番目に示している)が発生すると同時に電力消費要求制御部202からヒータ電力消費制御部204に対し前記ヒータ電力消費要求が発生する。
【0117】
時点t0にて、切替弁85が遮断状態のままヒータ82が通電されて回生電力の電力消費が開始される(ステップS8、
図5A、第1電力消費制御)。
時点t0にて、燃料電池システム10は、発電停止状態での待機又はアイドル発電状態を開始する。時点t0にて、燃料電池システム10を搭載した燃料電池自動車12は、モータ46によるEV走行で降坂を開始する。
【0118】
降坂時に前記モータ46が発生する回生電力のヒータ82による電力消費(ヒータ単独による第1電力消費制御)により、時点t0よりヒータ用熱媒体温度Tht(
図7中、最下段に示している)が上昇を開始する。
【0119】
時点t1にて、ヒータ用熱媒体温度Thtから燃料電池用熱媒体温度Tfc(
図7中、下から3番目に示している)を引いた温度差(Tht-Tfc)が閾値温度差ΔTth以上となった{(Tht-Tfc)≧ΔTth}ときに、電力消費要求制御部202から廃熱回収許可情報が切替弁制御部208に送られる。
【0120】
不等式{(Tht-Tfc)≧ΔTth}を{Tht≧(Tfc+ΔTth)}に変形して言い換えれば、ヒータ用熱媒体温度Thtが燃料電池用熱媒体温度Tfcに閾値温度差ΔTthを加えた温度以上の温度になったとき(時点t1)に、電力消費要求制御部202から廃熱回収許可情報が切替弁制御部208に送られる。
【0121】
前記廃熱回収許可情報に基づく切替弁制御部208からの切替弁動作指示(
図7中、下から2番目に示している)により時点t1~時点t2の間にて、切替弁85が連通状態とされ(
図5B)、ヒータ82で発生した廃熱が燃料電池スタック18により回収される(ステップS9、
図5B、ヒータ・燃料電池連携による第2電力消費制御)。
【0122】
そのため、
図7中、下から3番目に示すように、時点t1~時点t2の間で燃料電池用熱媒体温度Tfcの上昇速度が大きくなる。
【0123】
時点t2にて、燃料電池用熱媒体温度Tfcが第1閾値温度Th1に到達する(ステップS6:YES)。
時点t2にて、エアポンプ電力消費許可情報(
図7中、下から4番目に示している)が「否」状態から「可」状態に移る。また、時点t2以降、燃料電池用熱媒体温度Tfcは、一定値である第1閾値温度Th1に温度制御される。
【0124】
これにより、時点t3にて、電力消費要求制御部202からエアポンプ電力消費制御部206に対してエアポンプ電力消費要求が発生し、同時に、ヒータ電力消費要求が取り下げられる。時点t4からエアポンプ28の回転数(
図7中、上から5番目に示している)を所定回転数まで上昇させることによる回生電力の電力消費が開始される(ステップS10、エアポンプ単独による第3電力消費制御)。
【0125】
時点t6にて、例えば、燃料電池自動車12が下り坂から平地に至り、該平地での駐車を開始すると、モータ46では、回生電力が発生しない(ステップS3:NO)。
時点t6にて、電力消費要求制御部202は、エアポンプ電力消費要求を取り下げる。
時点t6以降、燃料電池システム10は、アイドル発電状態とされる。
【0126】
[付記]
上述した開示に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)燃料電池システム10は、燃料ガスとエアポンプ28から供給される酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池18と、前記燃料電池の温度を制御する熱媒体を、前記燃料電池に供給する燃料電池用熱媒体供給装置26と、前記燃料電池の温度を制御する前記熱媒体の温度を検出する燃料電池用熱媒体温度センサ79と、前記熱媒体を分岐させてヒータ82に供給するヒータ用熱媒体供給装置27と、前記ヒータの温度を制御する熱媒体の温度を検出するヒータ用熱媒体温度センサ83と、前記燃料電池用熱媒体供給装置を通流する熱媒体と前記ヒータ用熱媒体供給装置を通流する熱媒体を連通又は遮断する切替弁85と、を備え、蓄電装置44と前記燃料電池の少なくともいずれから、前記エアポンプ、前記燃料電池用熱媒体供給装置及び前記ヒータ用熱媒体供給装置に補機用電力を供給すると共に、モータ46に駆動力を発生させる駆動用電力を供給する燃料電池システムであって、前記モータに発生した回生電力を前記蓄電装置に充電し得ない場合に、燃料電池用熱媒体温度が第1閾値温度Th1未満であって、且つヒータ用熱媒体温度から前記燃料電池用熱媒体温度を引いた温度差(Tht-Tfc)が閾値温度差ΔTth以上となったとき、前記切替弁を連通状態に切り替えて、前記燃料電池用熱媒体温度を上昇させ、前記燃料電池用熱媒体温度が前記第1閾値温度以上の温度となったとき、前記切替弁を遮断状態に切り替えて、前記エアポンプの回転数を上昇させて前記回生電力を前記エアポンプで消費させる電力消費制御を行う。
【0127】
このように、モータに回生電力が発生した場合であって、該回生電力を蓄電装置に充電し得ない場合に、ヒータ単独、ヒータ・燃料電池連携及びエアポンプ単独の順で回生電力を消費させるようにしたので、燃料電池システムを凍結させることなく、回生電力を的確に消費させることができる。
【0128】
言い換えれば、回生電力が発生している場合には、燃料電池による発電がアイドル状態とされ、スタック温度が低い。スタック温度が低いときに、回生電力によりエアポンプを高速に回転させる(通常回転させる)と、燃料電池システムが凍結する可能性がある。
【0129】
これに対して、この発明では、エアポンプ単独で回生電力を消費する前に、ヒータ単独で回生電力を消費する期間及びヒータ・燃料電池連携により回生電力を消費する期間を設けることで、燃料電池の温度を的確に制御でき、且つ回生電力を確実に消費することができる。延いてはエネルギの効率化に寄与する。
【0130】
(付記2)付記1に記載の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池用熱媒体温度が前記第1閾値温度未満であるときには、前記エアポンプの回転数を上昇させて前記回生電力を前記エアポンプで消費させる前記電力消費制御を行わない。
これにより、燃料電池の凍結を確実に防止することができる。
【0131】
(付記3)付記1に記載の燃料電池システムにおいて、前記モータに発生した前記回生電力を前記蓄電装置に充電し得ない場合に、前記燃料電池用熱媒体温度が前記第1閾値温度未満であって、且つ前記ヒータ用熱媒体温度から前記燃料電池用熱媒体温度を引いた前記温度差が前記閾値温度差未満であるとき、前記切替弁を遮断状態として前記回生電力を前記ヒータに供給して消費させる第1電力消費制御を行う。
【0132】
このように、モータに回生電力が発生した場合であって、該回生電力を蓄電装置に充電し得ない場合に、前記燃料電池用熱媒体温度が第1閾値温度未満であって、且つ前記ヒータ用熱媒体温度から前記燃料電池用熱媒体温度を引いた温度差が閾値温度差未満であるとき、切替弁を遮断状態として前記回生電力をヒータ単独で消費させる第1電力消費制御を行う。
【0133】
回生電力が発生している場合には、燃料電池による発電がアイドル状態とされ、スタック温度が低い。スタック温度が低いときに、回生電力によりエアポンプを高速に回転させる(通常回転させる)と、燃料電池システムが凍結する可能性がある。これに対して、この第1電力消費制御中には、ヒータ単独で回生電力を消費するので、燃料電池の温度を的確に制御でき、且つ回生電力を確実に消費することができる。延いてはエネルギの効率化に寄与する。
【0134】
(付記4)付記3に記載の燃料電池システムにおいて、前記回生電力を前記ヒータに供給して消費させる前記第1電力消費制御中に、前記燃料電池用熱媒体温度が前記第1閾値温度未満であって、且つ前記ヒータ用熱媒体温度から前記燃料電池用熱媒体温度を引いた前記温度差が前記閾値温度差以上となったとき、前記切替弁を連通状態に切り替え、前記回生電力を前記ヒータに供給して消費させつつ、前記燃料電池用熱媒体温度を上昇させ、前記ヒータの廃熱を前記燃料電池で回収し、前記燃料電池を温める第2電力消費制御を行う。
【0135】
このように、回生電力をヒータで消費し、且つヒータで温められたヒータ用熱媒体を燃料電池用熱媒体に合流させて燃料電池で熱を回収する第2電力消費制御を行うようにしたので、燃料電池システムの凍結を回避しながら、燃料電池の温度を上昇させることができる。
【0136】
(付記5)付記1に記載の燃料電池システムにおいて、前記切替弁の連通状態時に、前記切替弁の弁開度を全開状態と閉状態との間の中間開度で調整する。
【0137】
このように、切替弁の連通状態時に前記切替弁の弁開度を調整することで、ヒータ用熱媒体の廃熱を的確に燃料電池(燃料電池用熱媒体)で回収することができる。
【0138】
(付記6)付記1又は2に記載の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池用熱媒体温度が前記第1閾値温度以上の温度となったとき、前記切替弁を遮断状態に切り替えて、前記ヒータによる電力消費を止め、前記エアポンプの回転数を上昇させて前記回生電力を前記エアポンプで消費させる第3電力消費制御を行う。
【0139】
このように、燃料電池用熱媒体温度が第1閾値温度以上の温度となっているので、換言すれば、燃料電池の温度が比較的に高い温度になっているので燃料電池側が暖機されていることから、エアポンプの回転数を上昇させても燃料電池システムの凍結を回避することができる。また、回生電力をエアポンプで確実に消費することができる。この場合、ヒータを暖房用空調機として、燃料電池と独立に動作させることができる。
【0140】
(付記7)付記1に記載の燃料電池システムにおいて、前記モータに前記回生電力が発生する場合は、前記燃料電池システムの降坂時に前記モータによる制動力が発生している場合である。
【0141】
これにより、燃料電池システムの降坂時にモータに発生する回生電力をヒータ、又はヒータと燃料電池用熱媒体、又はエアポンプで消費することで、降坂時に、確実に制動力を発生できると共に、燃料電池の過冷却を防止することができる。
【0142】
なお、本開示は、上述した開示に限らず、本開示の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【0143】
例えば、上述した開示では、切替弁制御部208へ回生電力消費制御部200に設けられたヒータ温度監視部212から動作指示を送っているが、廃熱回収許可情報を基に他の異なる制御部を介して切替弁85を制御してもよい。
【符号の説明】
【0144】
10…燃料電池システム 12…燃料電池自動車
15…制御装置 16…出力部
18…燃料電池スタック(燃料電池) 26…燃料電池用熱媒体供給装置
27…ヒータ用熱媒体供給装置 28…エアポンプ
44…蓄電装置 46…モータ
79…燃料電池用熱媒体温度センサ(温度センサ)
82…ヒータ
83…ヒータ用熱媒体温度センサ(温度センサ)
84…ヒータコア 85…切替弁
200…回生電力消費制御部(制御部)