(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163871
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】顔のリフトアップ効果鑑別方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20241115BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241115BHJP
A45D 44/00 20060101ALI20241115BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20241115BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241115BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20241115BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20241115BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
A61B5/107 110
A61B5/107 800
A61B5/00 M
A45D44/00 A
A61K8/02
A61Q19/00
A61K8/64
A61K8/97
A61K8/98
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076488
(22)【出願日】2024-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2023079485
(32)【優先日】2023-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本郷 麻耶
(72)【発明者】
【氏名】二川 朝世
(72)【発明者】
【氏名】平山 賢哉
【テーマコード(参考)】
4C038
4C083
4C117
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB03
4C038VC05
4C083AA072
4C083AA112
4C083AD412
4C083CC02
4C083DD12
4C083DD23
4C083EE12
4C117XB01
4C117XB13
4C117XD05
4C117XE43
4C117XK14
4C117XK19
(57)【要約】
【課題】
本発明は、新規な顔のリフトアップ効果の定量的、又は定性的な鑑別方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
上記課題を解決する手段は、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上を指標として、肌のリフトアップ効果を評価することを特徴とする、肌のリフトアップ効果鑑別方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上を指標として、肌のリフトアップ効果を評価することを特徴とする、肌のリフトアップ効果鑑別方法。
【請求項2】
前記の頬部のボリューム感の左右対称性を指標とする場合には、
頬部のボリューム感の左右差が小さくなるほど、肌のリフトアップ効果が高いと評価し、
前記の頬部肌表面形態の異方性を指標とする場合には、
頬部表面形態の異方性が低くなるほど、肌のリフトアップ効果が高いと評価し、
前記の頬部肌表面の移動様式を指標とする場合には、
肌表面の特徴点について、顔面の中心線を基準として外方向かつ上方向への変化量が多いほど、肌のリフトアップ効果が高いと評価することを特徴とする、
請求項1に記載のリフトアップ効果鑑別方法。
【請求項3】
前記肌のリフトアップ効果鑑別方法は、
各指標の初期値と、一定時間経過後の変化量を比較する工程を含む、
請求項1又は2に記載のリフトアップ効果鑑別方法。
【請求項4】
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性と、
頬部肌表面形態の異方性及び/又は頬部肌表面の移動様式と、の組み合わせを指標とする、請求項1又は2に記載のリフトアップ効果鑑別方法。
【請求項5】
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式の組み合わせを指標とする、請求項1又は2に記載のリフトアップ効果鑑別方法。
【請求項6】
被験者に任意の刺激(だたし、医療行為は除く)を適用する適用工程と、
前記適用工程後の被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値を取得する測定工程と、
前記測定工程の測定値と、予め取得した、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値とを用いた請求項1又は2のリフトアップ効果鑑別方法の鑑別結果に基づき、前記被験者に適した刺激であると判定する判定工程と、
を有することを特徴とする、被験者に適した刺激の選択方法。
【請求項7】
肌に物質を適用する適用工程と、
前記適用工程後の被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値を取得する測定工程と、
前記測定工程の測定値と、予め取得した、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値とを用いた請求項1又は2のリフトアップ効果鑑別方法の鑑別結果に基づき、前記被験者に
適した物質であると判定する判定工程と、
を有することを特徴とする、被験者に適した物質の選択方法。
【請求項8】
肌のリフトアップ効果を鑑別する装置であって、
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性を測定及び評価する左右対称性評価手段、頬部表面形態の異方性を測定及び評価する異方性評価手段、及び頬部肌表面の移動様式を測定及び評価する移動様式評価手段から選ばれる一又は二以上を備え、
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上を指標として肌のリフトアップ効果を解析可能とすることを特徴とする、肌のリフトアップ効果鑑別装置。
【請求項9】
肌のリフトアップ効果鑑別するプログラムであって、
コンピュータを、
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性を測定及び評価する左右対称性評価手段、頬部表面形態の異方性を測定及び評価する異方性評価手段、及び頬部肌表面の移動様式を測定及び評価する移動様式評価手段から選ばれる一又は二以上として機能させ、
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上を指標として肌のリフトアップ効果を解析可能とすることを特徴とする、肌のリフトアップ効果鑑別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔のリフトアップ効果鑑別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔の頬部における肌のたるみは美容上の大きな関心事となっている。
肌のたるみが生じる原因として、老化に伴う真皮の弾力性の低下や、皮下脂肪組織の支持力の低下、又は皮膚を支える筋力の低下等が挙げられる。
顔の肌のたるみを改善するために、特定成分を含有する皮膚外用剤及び経口用組成物と特定の美容マスクを併用する美容セット、並びに前記美容セットの使用した美容方法等が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、顔の肌のたるみを客観的に評価する従来技術として、顎のたるみの進行度合いを評価する方法、さらには、それを用いて顎のたるみを改善するための各種美容処理の有効性を評価する方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-148726号公報
【特許文献2】特許第5981113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、肌のたるみ等のリフトアップ方法に関心が高まっている。あわせて、肌のリフトアップ効果を評価する方法にも関心が高まっている。
しかし、特許文献2に記載のように、肌のたるみを評価する方法は、肌のたるみの進行度合いを評価するものしかなく、リフトアップ効果の評価方法は存在しなかった。さらに、肌のリフトアップの印象は、主に視覚的な印象によって形成されており、肌のリフトアップ効果を定量的、又は定性的に鑑別できる指標は存在しなかった。
上記の状況に鑑みて、本発明は、新規な顔のリフトアップ効果の定量的、又は定性的な鑑別方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上を指標として、肌のリフトアップ効果を評価することを特徴とする、肌のリフトアップ効果鑑別方法である。
後述する実施例に示すとおり、本発明者らは、肌のリフトアップ効果の定量的、又は定性的な指標を新たに見出した。
本発明によれば、上記指標を用いて、定量的、又は定性的に肌のリフトアップ効果を鑑別できる。
【0007】
本発明の好ましい形態は、
前記の頬部のボリューム感の左右対称性を指標とする場合には、
頬部のボリューム感の左右差が小さくなるほど、肌のリフトアップ効果が高いと評価し、
前記の頬部肌表面形態の異方性を指標とする場合には、
頬部表面形態の異方性が低くなるほど、肌のリフトアップ効果が高いと評価し、
前記の頬部肌表面の移動様式を指標とする場合には、
肌表面の特徴点について、顔面の中心線を基準として外方向かつ上方向への変化量が多いほど、肌のリフトアップ効果が高いと評価することを特徴とするリフトアップ効果鑑別方法である。
本発明によれば、上記の指標と基準を用いて、定量的、又は定性的に肌のリフトアップ効果を鑑別できる。
【0008】
本発明の好ましい形態は、
各指標の初期値と、一定時間経過後の変化量を比較する工程を含むリフトアップ効果鑑別方法である。
本発明によれば、各指標の初期値と、一定時間経過後の変化量を比較することで、定量的、又は定性的に肌のリフトアップ効果を鑑別できる。
【0009】
本発明の好ましい形態は、
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性と、
頬部肌表面形態の異方性及び/又は頬部肌表面の移動様式と、の組み合わせを指標とするリフトアップ効果鑑別方法である。
【0010】
本発明の好ましい形態は、
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式の組み合わせを指標とする、リフトアップ効果鑑別方法である。
本発明によれば、上記3つの指標を併用することで、より高精度に、リフトアップ効果を鑑別することができる。
【0011】
上記課題を解決する本発明は、
被験者に任意の刺激(だたし、医療行為は除く)を適用する適用工程と、
前記適用工程後の被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値を取得する測定工程と、
前記測定工程の測定値と、予め取得した、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値とを用いた前述のリフトアップ効果鑑別方法の鑑別結果に基づき、前記被験者に適した刺激であると判定する判定工程と、
を有することを特徴とする、被験者に適した刺激の選択方法である。
本発明によれば、被験者に適したリフトアップ効果を有する刺激を判定することができる。
【0012】
上記課題を解決する本発明は、
被験者に任意の刺激(だたし、医療行為は除く)を適用する適用工程と、
前記適用工程後の被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値を取得する測定工程と、
前記測定工程の測定値と、予め取得した、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値とを用いた前述のリフトアップ効果鑑別方法の鑑別結果に基づき、前記被験者に適した物質であると判定する判定工程と、
を有することを特徴とする、被験者に適した物質の選択方法である。
本発明によれば、被験者に適したリフトアップ効果を有する物質を判定することができる。
【0013】
また、上記課題を解決する本発明は、
肌のリフトアップ効果を鑑別する装置であって、
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性を測定及び評価する左右対称性評価手段、頬部表面形態の異方性を測定及び評価する異方性評価手段、及び頬部肌表面の移動様式を測定及び評価する移動様式評価手段から選ばれる一又は二以上を備え、
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上を指標として肌のリフトアップ効果を解析可能とすることを特徴とする、肌のリフトアップ効果鑑別装置でもある。
本発明によれば、定量的又は定性的に、肌のリフトアップ効果を鑑別する装置を提供することができる。
【0014】
また、上記課題を解決する本発明は、
肌のリフトアップ効果を鑑別するプログラムであって、
コンピュータを、
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性を測定及び評価する左右対称性評価手段、頬部表面形態の異方性を測定及び評価する異方性評価手段、及び頬部肌表面の移動様式を測定及び評価する移動様式評価手段から選ばれる一又は二以上として機能させ、
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上を指標として肌のリフトアップ効果を解析可能とすることを特徴とする、肌のリフトアップ効果鑑別プログラムでもある。
本発明によれば、定量的又は定性的に、肌のリフトアップ効果を鑑別するプログラムを提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、新規な顔のリフトアップ効果の定量的、又は定性的な鑑別方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の鑑別方法における、頬部のボリューム感(以降、頬部ボリューム感と記載する。)の左右対称性を取得する方法の具体的な態様を示すフロー図である。
【
図2】本発明の鑑別方法における、頬部表面形態の異方性を取得する方法の具体的な態様を示すフロー図である。
【
図3】本発明の鑑別方法における、頬部肌表面の移動様式を取得する方法の具体的な態様を示すフロー図である。
【
図4】本発明のリフトアップ効果鑑別装置の実施の態様を説明する機能ブロック図である。
【
図5】<試験2>における、1)リフトアップ変化あり群、4)リフトアップ変化なし群の、化粧品使用前後における頬部ボリューム変化量の左右差を示すグラフである。
【
図6】<試験2>における、顔面の輝度分布のヒートマップの一例である。
【
図7】<試験2>における、被験者の全顔の3D画像について、片方の頬のみを引き上げた形態を示す例である。
【
図8】<試験2>における、1)リフトアップ変化あり群の試験品0W使用後(初期値)と、試験品12W使用後の肌のキメやシワ、毛穴を含む肌表面の凹凸異方性の測定結果を示すグラフである。
【
図9】<試験2>における、1)リフトアップ変化あり群、4)リフトアップ変化なし群の異方性の変化傾向を示すグラフである。
【
図10】<試験2>における、オプティカルフロー解析結果を示すグラフの一例である。
【
図11】口角を基準点として特徴点の外上方向移動量を算出する実施形態を示す模式図である。
【
図12】<試験2>における、1)リフトアップ変化あり群、4)リフトアップ変化なし群の特徴点の距離変化比率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、<1>顔のリフトアップ効果鑑別方法、<2>被験者に適した刺激の選択方法、<3>顔のリフトアップ効果鑑別装置、及び<4>顔のリフトアップ効果鑑別プログラムに項分けして詳細に説明する。
【0018】
<1>肌のリフトアップ効果鑑別方法
以下、本発明の肌のリフトアップ効果鑑別方法の実施形態を説明する。
【0019】
本発明の肌のリフトアップ効果鑑別方法は、
被験者の頬部ボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上を指標として、肌のリフトアップ効果を評価することを特徴とする、肌のリフトアップ効果鑑別方法である。
【0020】
本発明にいう、肌のリフトアップとは、肌が引きあがった印象である。
肌が引きあがった印象を与える要因として、顔の立体形状の変化、肌の上方向の移動、肌のたるみの改善等が挙げられる。
前記肌は、好ましくは被験者の顔の肌であり、より好ましくは被験者の頬部の肌である。
【0021】
[各指標について]
以下、各指標について、より詳細を説明する。
【0022】
(i)頬部ボリューム感の左右対称性
本発明にいう「頬部ボリューム感」とは、頬部の膨らみの程度のことを意味する。好ましくは、顔面に対して水平方向の頬部横断面から見た、頬部前方への膨らみの程度のことを意味する。より好ましくは、頬部のカンペル平面の横断面図から見た、頬部の膨らみの程度のことを意味する。
【0023】
本発明にいう「頬部ボリューム感の左右対称性」は、左右頬部の膨らみの左右差の程度を意味する。好ましくは、顔面に対して水平方向の頬部横断面図からみた、左右頬部の膨らみの左右差の程度を意味する。より好ましくは、カンペル平面の頬部横断面からみた、左右頬部の膨らみの左右差の程度を意味する。
【0024】
(ii)頬部肌表面形態の異方性
本発明にいう「頬部肌表面形態」は、肌のキメやシワ、毛穴を含む肌表面の凹凸である。
さらに、前記頬部肌表面形態は、頬部全体の表面形態である。より好ましくは頬上部の肌表面形態である。
【0025】
本発明にいう「頬部肌表面形態の異方性」は、前記肌表面形態の均一さを意味する。
また、本発明にいう、異方性が低い状態とは、前記頬部肌表面形態が均等で、一定方向に流れる方向性が少ないことをいう。
【0026】
(iii)頬部肌表面の移動様式
本発明にいう「頬部肌表面の移動様式」とは、肌が移動する様子のことを意味する。たとえば、肌のたるみにより肌が下方向に移動することや、肌のハリが改善され肌が上方向に移動することを意味する。
前記顔の特徴点は、被験者の顔面上で経時的な変化が少ない特徴である。
より好ましくは、被験者の顔面中の毛穴、シミ、ほくろ等を特徴点として抽出する。前記特徴点は、経時的な変化が少なければ、その他にも、顔上の要素を適宜選択できる。
前記顔の特徴点は、頬部全体に存在する特徴点である。より好ましくは頬下部の顔の特徴点である。また、前記外上方向は、顔の中心線を基準とした方向である。
【0027】
(iv)指標の組み合わせの好ましい実施の形態について
本発明にいうリフトアップ効果の鑑別方法は、頬部ボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一以上、より好ましくは二以上、さらに好ましくは全てを指標とする。
【0028】
ここで、後述する実施例で示す通り、頬部ボリューム感が左右対称であることはリフトアップ効果を感じやすい条件である。
よって本発明では、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性と、
頬部肌表面形態の異方性及び/又は頬部肌表面の移動様式と、の組み合わせを指標とし、肌のリフトアップ効果を鑑別する形態とすることが好ましい。
【0029】
[評価の方法/基準について]
以下、評価の方法/基準について、より詳細を説明する。
【0030】
後述の実施例で示す通り、頬部ボリューム感の左右差の程度が小さいとき、リフトアップ効果を高く感じることができる。
また、後述の実施例で示す通り、異方性が低い状態のとき、リフトアップ効果を高く感じることができる。
また、後述の実施例で示す通り、肌表面の特徴点について、顔面の中心線を基準として外方向かつ上方向への変化量が多いとき、リフトアップ効果を高く感じることができる。
【0031】
すなわち、本発明において、前記の頬部のボリューム感の左右対称性を指標とする場合には、
頬部のボリューム感の左右差が小さくなるほど、肌のリフトアップ効果が高いと評価し、
前記の頬部肌表面形態の異方性を指標とする場合には、
頬部表面形態の異方性が低くなるほど、肌のリフトアップ効果が高いと評価し、
前記の頬部肌表面の移動様式を指標とする場合には、
肌表面の特徴点について、顔面の中心線を基準として外方向かつ上方向への変化量が多いほど、肌のリフトアップ効果が高いと評価することが好ましい。
【0032】
本発明における「肌のリフトアップ効果の鑑別」は、定量的な鑑別でもよく、予め設定した「肌のリフトアップ効果の指標」を基準とした相対的かつ定性的な鑑別でもよい。
本発明の好ましい形態では、「リフトアップ変化あり」群の平均値を閾値にすることで、特に効果に優れると評価してもよい。
【0033】
本発明の好ましい形態では、肌のリフトアップ効果があると評価する基準は、各指標について以下のとおり定められる。
頬部のボリューム感の左右対称性を指標とする場合、まず、左右の頬それぞれの頬部ボリューム初期値と、一定時間経過後の左右の頬それぞれの頬部ボリューム感評価値を求める。次に、左右の頬部それぞれの、評価値から初期値を差し引くことで、左右の頬部の初期値からのボリューム変化値を求める。右頬部の初期値からのボリューム変化値(評価値-初期値)から、左頬部の初期値からのボリューム変化値(評価値-初期値)を引き、その差を絶対値として算出する方法で、変化量を求める。
前記方法で算出した変化量が、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下のとき、リフトアップ効果に優れると評価してもよい。
また、一定時間経過後の右頬部のボリューム感の数値から、同時間経過後の左頬部のボリューム感の数値を差し引き、頬部のボリューム感の左右差の評価値を求める。次に、初期の右頬部のボリューム感の数値から、左頬部のボリューム感の数値を差し引き、頬部のボリューム感の左右差の初期値を求める。前記評価値から初期値を差し引き、その差を絶対値として算出する方法で、変化量を求めてもよい。
【0034】
また、頬部肌表面形態の異方性を指標とする場合には、頬部表面形態の異方性の初期値と、一定時間経過した頬部表面形態の異方性の測定値とを比較して変化量を求める。
前記変化量が、頬部表面形態の異方性の初期値を基準として、好ましくは-0.05以上、より好ましくは-0.08以上、さらに好ましくは-0.1以上のとき、リフトアップ効果に優れると評価してもよい。
【0035】
さらに、頬部肌表面の移動様式を指標とする場合には、単位面積当たりの外かつ上向き矢印数の初期値と、一定時間経過したあとの値を比較して、変化量を求める。
前記変化量が、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.007以上のときリフトアップ効果に優れると評価してもよい。
また、前記単位面積当たりの外かつ上向き矢印数の解析領域は、好ましくは頬部全体の領域である。より好ましくは頬下部の領域である。
【0036】
定量的な推定手法として、具体的には、顔画像データから得られる測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル))と肌のリフトアップ効果の評価値との相関関係を示す式又はモデルを予め作成しておき、対象者より取得した顔画像データから得られる測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル))を当該式又はモデルと照合することにより、対象者のリフトアップ効果の度合いを鑑別する実施の形態を好ましく挙げることができる。このような実施の形態とすることにより鑑別精度を向上させることができる。
【0037】
ここで、顔画像データから得られる測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル))と肌のリフトアップ効果の評価値との相関関係は、回帰分析等の多変量解析により予め求めておくことができる。該多変量解析としては、目的変数と説明変数との関係を利用できるものが好ましく、判別分析、回帰分析(MLR、PLS、PCR、ロジスティック)を好ましく例示することができる。
【0038】
これらの内、特に好ましいのは重回帰分析(MLR)、非線形回帰分析(PLS:PaRtialLeastSquaRes)である。例えば、測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル))を説明変数、リフトアップ効果の表れた顔を目的変数として重回帰分析をおこなうことで、重回帰式を得ることができる。また、同様にPLSをおこなえば予測式(予測モデル)を得ることができる。
【0039】
以下、顔画像データから得られる測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル))と肌のリフトアップ効果の評価値との相関関係を示す式又はモデルの用意の方法について説明する。
【0040】
精度良い式又はモデルを得る手法として、主成分分析、因子分析、数量化理論一類、数量化理論二類、数量化理論三類、多次元尺度法、教師ありクラスタリング、ニューラルネットワーク、アンサンブル学習法、等の多変量解析を適宜用いることができる。中でも好ましいのは、ニューラルネットワーク、判別分析及び数量化理論一類である。これらの多変量解析は、フリーソフトや市販されているものを用いて行うことができる。
【0041】
ここで、精度良い式又はモデルを得るために、顔画像データから得られる測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル))と肌のリフトアップ効果の評価値との相関関係を、入力情報として記憶する記憶部と、
前記相関関係を教師データとして、対象者の顔画像データから該対象者の「肌のリフトアップ効果の度合い」あるいは「リフトアップ効果の表れた顔の度合い」を推定するための変数が機械学習された学習済みモデルを生成する学習部と、
を備える、学習装置を用いることもできる。
【0042】
顔画像データから得られる測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル))と肌のリフトアップ効果の評価値との相関関係を示す式又はモデルを作成するため、顔画像データから得られる測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル))と肌のリフトアップ効果の評価値との相関関係を関連付けたデータベース(DB)を作成することが好ましい。ここで、DBの人数は、好ましくは10人以上、より好ましくは20人以上、より好ましくは50人以上、より好ましくは100人以上、さらに好ましくは200人以上である。
DBの構造としては、例えば行列形式(マトリックス)であれば、行に顔画像データから得られる測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル))を、列にリフトアップ効果の表れた顔の度合いを入力することができる。
【0043】
このDBは、新規に取得した対象者の顔画像データから得られる測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル))と肌のリフトアップ効果の評価値との相関関係を推定したあと、該推定値を追加することで、更新してもよい。必要に応じて、更新したDBに対し上述した多変量解析を行って、式又はモデルを更新することもできる。
【0044】
以下、式又はモデルの作成、又は上記DBの作成にあたって必要となる情報の取得方法を説明する。
【0045】
(1)リフトアップ効果の表れた顔の評価
まず、対象者との相関関係を示す式又はモデルを得るために、評価者が、複数の人物についてリフトアップ効果の表れた顔を目視評価する。評価される人物の数は、少なくとも50以上、好ましくは100以上、より好ましくは500以上である。また、各年代別に同程度の人数分布であることが好ましい。リフトアップ効果の表れた顔に関して、本人による評価と第三者による評価とではギャップが存することが多いため、評価者は第三者であることが望ましい。評価者の選定は、第三者を代指するのに適当な評価者を選ぶという観点でよく、評価者の個人差、男女差、被験者のリフトアップ効果の表れた顔差、嗜好性、さらには再現性等、種々の問題を考慮することが重要である。
例えば、美容分野での評価等の経験や専門性を有する評価者が好ましく挙げられる。評価者の数としては複数、具体的には、5~10名程度が好ましい。複数の評価者による評価結果を統計的に処理することが好ましい。
【0046】
また、外れ値を除いた平均値や中央値等を算出し、各人物のリフトアップ効果の表れた顔の度合いとすることができる。
リフトアップ効果の表れた顔の度合いの評価は、後述する実施例に示すように、顔画像を用いて評価することが望ましい。これは、表情、髪型や背景、あるいは肌色や肌トラブル等による評価精度を低下させる影響を除外できるためである。
【0047】
(2)顔画像データから得られる測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル))と肌のリフトアップ効果の評価値との相関関係の導出 次に、前記対象者の顔画像データから得られる測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル))を測定する。
頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル)の測定方法については、後述の実施例のとおりである。ここで用いる顔画像は、上記のリフトアップ効果の表れた顔の評価に用いた顔画像と同じものであることが好ましい。これにより顔画像データから得られる測定値(頬部ボリューム感の左右差の程度、頬部肌表面形態の異方性の低さ、頬部肌表面の移動様の変化量(ベクトル)と肌のリフトアップ効果の評価値との相関関係をより正確に求めることができる。
【0048】
後述の実施例の通り、本発明の鑑別方法は、各指標の初期値と、一定時間経過後の評価値を測定し、各指標の変化量を比較することが好ましい。
【0049】
なお、本明細書中において各指標の初期値とは、一定時間経過前の、基準となる顔の状態の測定値のことを意味する。また、一定時間、肌に任意の刺激、又は肌に物質を適用する場合、前記刺激又は物質の適用前の、基準となる顔の状態の測定値のことを意味する。
【0050】
各指標の変化量を得るための一定時間とは、好ましくは適用直後、より好ましくは数時間以上、さらに好ましくは1日以上、より好ましくは1週間以上、より好ましくは2週間以上、さらに好ましくは4週間以上、さらに好ましくは8週間以上、特に好ましくは12週間以上である。
また、本発明の好ましい形態では、初期値から上記一定時間、被験者に任意の刺激、又は物質を適用する。各指標について初期値と一定時間経過後の測定値を比較し、適用した刺激、又は物質のリフトアップ効果を評価してもよい。
【0051】
[本発明の実施の形態]
以下、本発明の実施の態様を、
図1~4を用いて説明する。
なお、本発明の実施の形態が下記の形態に限定されるものではないことは、言うまでもない。
【0052】
(i)頬部ボリューム感の左右対称性
図1は、本発明の頬部ボリューム感の左右対称性の評価方法を示すフローチャートである。
図1及び
図4を参照して、左右対称性評価手段1による頬部ボリューム感の測定方法と、指標の取得方法を説明する。
【0053】
・初期値取得工程
まずステップS11にて、左右対称性初期値取得部11により、被験者の初期値左右頬部ボリューム感を測定する。測定結果より、左右頬部ボリューム感初期値データを取得する。
前記頬部ボリューム感初期値データは、被験者の初期の顔の画像データ(「初期値画像データ」)でもよい。好ましくは、頬部横断面の画像データであり、より好ましくは頬部のカンペル平面の横断面図の画像データである。
被験者の顔の初期値画像データの取得は、定法に従い行うことができる。例えば、デジタルカメラ等を利用して顔を撮像し、撮像した情報をデジタル情報としてパソコンに取り込む方法を挙げることができる。好ましくは、VECTRA(Canfield Scientfic社製)、又はVISIA(Canfield Scientfic社製)等を用いて画像データを取得する。
【0054】
また、前記頬部ボリューム感初期値データは、被験者の初期の顔面の輝度分布をヒートマップ化したデータ(「初期値輝度ヒートマップデータ」)でもよい。
前記初期値輝度ヒートマップデータの取得は、定法に従い行うことができる。初期値輝度ヒートマップデータの取得としては、例えば、顔画像の画像解析等を用いた方法を挙げることができる。
【0055】
また、前記頬部ボリューム感初期値データは、被験者の初期の顔の3次元形状データ(「初期値3次元形状データ」)でもよい。
初期値3次元形状データの取得は、定法に従い行うことができる。例えば、市販の全顔三次元形状測定装置を用いてもよい。好ましくは、VECTRA(Canfield Scientific社製)等を用いてデータを取得する。
上記の方法によって、初期値画像データ、初期値輝度ヒートマップデータ、又は初期値3次元形状データの何れかを取得する。また、当該各種データを複数種類組み合わせて、左右頬部ボリューム感初期値データとしてもよい。
【0056】
・評価値取得工程
次にステップS12にて、左右対称性評価値取得部12により、一定時間経過後の左右頬部ボリューム感を測定する。測定結果より、左右頬部ボリューム感評価値データを取得する。
前記頬部ボリューム感評価値データの取得方法は、ステップS11に記載の方法を援用できる。この工程によって、頬部ボリューム感評価値データとして、評価値画像データ、評価値輝度ヒートマップデータ、評価値3次元形状データの何れかを得ることができる。また、当該各種データを二以上組み合わせて、左右頬部ボリューム感評価値データとしてもよい。
ここで、本発明の好ましい形態では、一定時間、肌に任意の刺激を与える、又は肌に物質を適用する、適用工程(ステップS12-1)を含んでいてもよい。適用工程後、ステップS12を行う形態としてもよい。
【0057】
・頬部左右差測定工程
次にステップS13にて、頬部左右差測定部13により、ステップS11及びS12で得られた、各初期値データと、同じ種別の評価値データについて、左右頬部それぞれの、頬部ボリューム感変化値データを測定する。右頬部の場合、右頬部ボリューム感評価値データから右頬部ボリューム感初期値データを差し引き、右頬部ボリューム感変化値データを取得する。また、左頬部の場合、左頬部ボリューム感評価値データから左頬部ボリューム感初期値データを差し引き、左頬部ボリューム感変化値データを取得する。
前記左右頬部ボリューム感変化値データの測定方法は、ステップS11及びS12で、被験者の顔の画像データを取得した場合、各画像データ中の、頬部ボリューム感を目視評価することが好ましい。
また、ステップS11及びS12で、輝度ヒートマップデータを取得した場合、各輝度ヒートマップデータ中の、頬部の高い位置の面積を評価することが好ましい。
また、ステップS11及びS12で、3次元形状データを取得した場合、各3次元形状データ中の、頬部ボリューム感の体積を評価することが好ましい。
また、当該各種測定値を複数種類組み合わせて、前記左右頬部ボリューム感変化値データとしてもよい。
【0058】
・左右対称性解析工程
次に、ステップS14にて、左右対称性解析部14により、ステップS13で得られた、同じ種別の右頬部ボリューム感変化値データと、左頬部ボリューム感変化値データ同士を比較する。比較結果から、一定時間経過による頬部ボリューム感の左右差の変化量を解析する。さらに解析結果より、頬部左右対称性変化量データを取得する。
前記頬部左右対称性変化量データは、右頬部ボリューム感変化値データから、左頬部ボリューム感変化値データを差し引くことで、取得することが好ましい。
頬部左右対称性変化量データより、頬部ボリューム感の左右差の程度が小さい場合、肌のリフトアップ効果が高いと評価できる。
【0059】
・判定工程
ここで、本発明の好ましい形態では、
図1中、ステップS15のように、ステップS14の結果から、肌のリフトアップに適した刺激又は物質を判定する、判定工程を有していてもよい。
また、判定工程は、ステップS12-1中の適用工程で適用した、任意の刺激又は物質について行われる。
具体的には、頬部左右対称性変化量データより、頬部ボリューム変化量の左右差が小さい場合、ステップS12-1で適用した任意の刺激又は物質が、肌のリフトアップ効果に適していると判定する工程であることが好ましい。
【0060】
・結果表示工程
また、本発明の好ましい形態では、
図1中、ステップS16のように、ステップS14又はステップS15で得られた結果を表示する、結果表示工程を有していてもよい。
具体的には、ステップS16にて、ステップ14で得られた頬部左右対称性変化量データを表示してもよい。又は、ステップ15の判定工程の結果に基づいて、ステップS12-1で適用した任意の刺激又は物質の判定結果を表示してもよい。
ここで、本工程に相当する
図4中、結果表示手段5は、前記結果を表示できるものであればよく、例えば、液晶ディスプレイ等による表示装置、スピーカー等の音声出力装置あるいはプリンタ等が挙げられる。
【0061】
本発明において、上記のS11~S16の全ての工程を必ずしも行う必要はなく、例えば、頬部ボリューム感の左右対称性と、肌のリフトアップ効果に相関があることから、一定時間経過後の頬部ボリューム感を取得するステップS12、及び前記頬部ボリューム感の左右対称性を解析するステップS14を含む形態であってもよい。
前記測定によって、頬部ボリューム感の左右差が小さい状態のとき、肌がリフトアップした状態であると評価してもよい。
【0062】
(ii)頬部肌表面形態の異方性
図2は、本発明の頬部肌表面形態の異方性の測定方法を示すフローチャートである。
図2及び
図4を参照して、異方性評価手段2による頬部肌表面形態の異方性の測定方法と、指標の取得方法を説明する。
なお、各データの取得方法などは、<頬部ボリューム感の左右対称性>に記載の方法を援用できる。
【0063】
・初期値取得工程
まずステップS21にて、異方性初期値取得部21により、被験者の初期の頬部肌表面形態を測定する。測定結果より、頬部肌表面形態初期値データを取得する。前記頬部肌表面形態初期値データは、被験者の初期の頬部肌表面の画像データ(「初期値画像データ」)でもよい。より好ましくは、頬上部表面の初期値画像データでもよい。
【0064】
また、前記頬部肌表面形態初期値データは、被験者の初期の顔正面から測定した、肌表面形態情報データ(「初期値肌表面形態情報データ」)でもよい。
前記肌表面形態情報データの取得は、定法に従い行うことができる。例えば、市販の肌表面形態情報測定装置を用いてもよい。好ましくは、PRIMOS_CR_LargeField(Canfield Scientific社製)等を用いる。
上記の方法によって、初期値画像データ、又は初期値肌表面形態情報データの何れかを取得する。また、当該各種データを組み合わせて、頬部肌表面形態初期値データとしてもよい。
【0065】
・評価値取得工程
次にステップS22にて、異方性評価値取得部22により、被験者の一定時間経過後の頬部肌表面形態を測定する。測定結果より、頬部肌表面形態評価値データを取得する。
前記頬部肌表面形態評価値データの取得方法は、ステップS21に記載の方法を援用できる。この工程によって、評価値画像データ、又は評価値肌表面形態情報データの何れかを得ることができる。
ここで、本発明の好ましい形態では、上記のように一定時間、肌に任意の刺激を与える、又は肌に物質を適用する、適用工程(ステップS22-1)を含んでいてもよい。適用工程後、ステップS22を行う形態としてもよい。
【0066】
・異方性測定工程
次にステップS23にて、異方性測定部23により、ステップS21及びS22で得られた、各初期値データと、同じ種別の評価値データについて、それぞれ頬部肌表面の異方性を測定する。測定結果から、異方性初期値データと異方性評価値データを取得する。
前記異方性の測定方法は、上記ステップS21及びS22で、頬部肌表面の画像データを取得した場合、異方性を目視評価で評価することが好ましい。
また、上記ステップS21及びS22で肌表面形態データを取得した場合、異方性を数値として評価することが好ましい。
前記頬部肌表面の異方性測定データの取得は、定法に従い行うことができる。例えば、市販の肌表面形態情報測定装置を用いてもよい。好ましくは、PRIMOS_CR_LargeField(Canfield Scientific社製)等を用いる。
【0067】
・異方性解析工程
次にステップS24にて、異方性解析部24により、ステップS23で得られた、異方性初期値データと異方性評価値データを比較する。比較結果から、一定時間経過による、異方性の変化量を解析する。解析結果より、一定時間経過後の異方性が低くなった場合、肌のリフトアップ効果が高いと評価できる。
【0068】
・判定工程及び結果表示工程
本発明の好ましい形態では、
図2中、ステップS25のように、ステップS24の結果から、肌のリフトアップに適した刺激又は物質を判定する、判定工程を有していてもよい。
判定工程は、上記ステップS22-1中の適用工程で適用した、任意の刺激又は物質について行われる。
また、判定工程は、一定時間、刺激又は物質を適用した場合において、異方性が低下した場合、肌のリフトアップ効果に適した刺激であると判定する工程であることが好ましい。
その他判定工程、及び
図2中、ステップS26表示工程の詳細については、上記<頬部ボリューム感の左右対称性>の内容を援用できる。
【0069】
本発明において、上記のS21~S26の全ての工程を必ずしもおこなう必要はない。
例えば、頬部肌表面形態の異方性が低い状態と、肌のリフトアップ効果に相関関係があることから、一定時間経過後の頬部肌表面形態を測定するステップS22、及び異方性を測定するステップS23を含む形態であってもよい。
前記測定によって、異方性が低い状態のとき、肌がリフトアップした状態であると評価してもよい。
【0070】
(iii)頬部肌表面の移動様式
図3は、本発明の頬部肌表面の移動様式の評価方法を示すフローチャートである。
図3及び
図4を参照して、移動様式評価手段3による頬部肌表面の移動様式の測定方法、及び指標の取得方法を説明する。
【0071】
・初期値取得工程
まずステップS31にて、移動様式初期値取得部31により、被験者の初期の頬部肌表面を測定する。測定結果より頬部肌表面初期値データを取得する。
前記、頬部肌表面初期値データは、前顔の肌表面画像データを取得することが好ましい。より好ましくは頬部、特に好ましくは、頬下部表面の肌表面画像データを取得することが好ましい。
なお、頬部表面画像データの取得方法は、上記画像データの取得方法を援用できる。好ましくは、VECTRA(Canfield Scientific社製)、又はVISIA(Canfield Scientific社製)等を用いて取得する。
【0072】
・基準値取得工程
ここで、本発明の好ましい形態では、ステップS31の工程後、任意でステップS32(基準値取得工程)を行ってもよい。ステップS32では、移動様式基準値取得部32により、ステップS31で取得した頬部表面画像初期値データより、移動様式の基準となる顔部基準値を取得する。
前記基準値は、顔の中心部に存在し、経時変化を起こしにくい部位であれば特に限定されない。例えば、顔の中心線、顔の中心部の毛穴、シミ、ほくろ等が挙げられる。
【0073】
・評価値取得工程
次にステップS33にて、評価値取得部33により、被験者の一定時間経過後の頬部表面を測定する。測定結果より、頬部肌表面評価値データを取得する。前記、頬部表面画像評価値データの取得方法は、ステップS31に記載の方法を援用できる。
ここで、本発明の好ましい形態では、上記のように一定時間、肌に任意の刺激を与える、又は肌に物質を適用する、適用工程(ステップS33―1)を含んでいてもよい。適用工程後、ステップS33を行う形態としてもよい。
【0074】
・特徴点取得工程
次にステップS34にて、特徴点取得部34により、ステップS31及びS33で得られた、初期値データと、評価値データについて、肌表面の特徴点の位置を測定する。
この工程によって、初期値特徴点位置情報及び評価値特徴点位置情報を取得する。
前記肌表面の特徴点は、頬部に存在し、経時変化を起こしにくい部位であれば特に限定されない。例えば、顔の中心線、顔の中心部の毛穴、シミ、ほくろ等が挙げられる。
また、本工程において、好ましくは頬部に存在する特徴点の位置情報を取得する。より好ましくは、頬下部に存在する特徴点の位置情報を取得する。
【0075】
・移動様式測定工程
次にステップS35にて、移動様式測定部35により、ステップS34で得られた、初期値と一定時間経過後の特徴点位置情報を比較する。比較結果より、一定時間経過後の特徴点の移動方向、及び移動量を測定する。
前記特徴点の移動方向、及び移動量の測定方法は特に限定されない。好ましくは、VECTRA(Canfield Scientific社製)、MATLAB(登録商標)(The MathWorks社製)等を用いて測定を行う。
【0076】
・移動様式解析工程
次に、ステップS36にて、移動様式解析部36により、S35で得られた、一定時間経過後の特徴点の移動方向、及び移動量を解析する。具体的には、S32で得られた顔部基準値から外上方向に移動した特徴点の数から外上方向移動特徴点数を求める。さらに前記特徴点数から移動量を解析し、外上方向移動量を求める。前記解析結果より、初期値と比較して一定時間経過後の、外上方向移動特徴点数、及び外上方向移動量が大きくなった場合、肌のリフトアップ効果が高いと評価できる。
前記外上方向移動特徴点数、外上方向移動量の取得方法は、特に限定されない。好ましくは、VECTRA(Canfield Scientific社製)を用いて取得する。
【0077】
位置情報を取得する特徴点は一つ又は複数であってもよい。複数の特徴点の移動様式について解析する場合、それぞれの特徴点について得られた移動量の分布の算術平均値、加重平均、中央値、最小値又は最大値を移動量として取得しても良い。
【0078】
前記ステップS36の移動様式解析工程は、より好ましくは、前記特徴点のオプティカルフロー解析を行い、特徴点の動きベクトルを解析する。
例えば、オプティカルフロー解析は、ステップS31及びS33で得られた、頬部表面画像データを用いて、特徴点を抽出してもよい。また、ステップS34で得られた、初期値及び評価値特徴点位置情報を用いてもよい。
その後、各特徴点の動きベクトルの特定を行ってもよい。動きベクトルは初期値と測定値の画像を比較した時の、特徴点の変化量などによって求めてもよい。
さらにその後、動きベクトルの解析を行ってもよい。動きベクトルの解析では、前記特徴点の変化量を矢印として画像データ上に表す。前記矢印のうち、S32で得られた顔部基準値から外上方向に移動した矢印を抽出する。
その後、前記外上方向に移動した矢印の本数を計測し、外上方向矢印数を得る。前記外上方向矢印数が多いほど、肌のリフトアップ効果が高いと判定できる。
なお、オプティカルフロー解析の実行には、市販の表計算ソフト又はプログラムを使用することができる。より好ましくは、MATLAB(登録商標)(The MathWorks社製)等を使用する。
【0079】
移動様式解析工程において、口角を基準点として特徴点の外上方向移動量を算出する実施形態としてもよい。当該実施形態について
図11を参照しながら説明する。本実施形態では、以下の何れかの直線を基準線Lとして設定する。
・口角と目尻を結ぶ直線(
図11中、Lで示す直線)。
・口角を起点とし、顔の中心線から任意の角度(例えば45°)をもって外上向き方向へ延びる直線。
【0080】
当該実施形態では、基準点(口角)から特徴点までの距離rの基準線Lへの射影距離に基づき、外上方向移動量を算出する。ここでいう射影距離は、基準点(口角)と特徴点とを結ぶ直線が基準線Lに対して角度θをもって傾いているとき、r・cosθで表すことができる距離を指す(
図11参照)。
【0081】
移動様式解析工程では、初期値の射影距離(「r0・cosθ」とする。)と一定時間経過後の射影距離(「rk・cosθ」とする。)の比較により、外上方向移動量を算出する。
例えば、初期値の射影距離と一定時間経過後の射影距離の差分(rk・cosθ-r0・cosθ=Δr・cosθ)を外上方向移動量として算出してもよい。この場合、Δr・cosθが正の値を示す場合、肌のリフトアップ効果があると評価できる。
また、初期値の射影距離に対する一定時間経過後の射影距離の比率(rk・cosθ/r0・cosθ)を外上方向移動量として算出してもよい。この場合、当該比率が1超の値を示す場合、肌のリフトアップ効果があると評価できる。
【0082】
・判定工程及び結果表示工程
本発明の好ましい形態では、
図3中、ステップS37のように、ステップS36の結果から肌のリフトアップに適した刺激又は物質を判定する、判定工程を有していてもよい。
判定工程は、上記ステップS33-1中の適用工程で適用した、任意の刺激又は物質について行われる。
また、判定工程は、一定時間、刺激又は物質を適用した場合において、特徴点の移動方向、及び移動量が大きくなった場合、肌のリフトアップ効果に適した刺激であると判定する工程であることが好ましい。
その他判定工程、表示工程の詳細については、上記<頬部ボリューム感の左右対称性>の内容を援用できる。
【0083】
<2>被験者に適した刺激又は物質の選択方法
次に、本発明における鑑別方法を利用した、被験者の肌のリフトアップに適した刺激又は物質の選択方法について説明する。なお、各指標の取得方法等は、上記の記載を援用できる。
【0084】
本発明は、被験者に任意の刺激、又は被験者の肌に物質(だたし、医療行為は除く)を適用する適用工程と、
前記適用工程後の被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値を取得する測定工程と、
前記測定工程の測定値と、予め取得した、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値とを用いた前述のリフトアップ効果鑑別方法の鑑別結果に基づき、前記被験者に適した刺激であると判定する判定工程と、を有することを特徴とする、被験者に適した刺激又は物質の選択方法である。
【0085】
ここで、任意の刺激としては、旅行体験、会話体験(カウンセリング、コミュニケーション)、芸術鑑賞(音楽、演劇、パフォーマンス、絵画、読書、美術品)、食事体験、スポーツ体験(運動体験、スポーツ鑑賞)、入浴体験(温泉、サウナ)、睡眠、アニマルセラピー(動物とのふれあい)、創作活動、趣味、美容手段を挙げることができる。
【0086】
美容手段としては、顔パック、マッサージ手法、アロマ等を挙げることができる。
【0087】
また、本発明は、
肌に物質を適用する適用工程と、
前記適用工程後の被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値を取得する測定工程と、 前記測定工程の測定値と、予め取得した、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値を用いた前述のリフトアップ効果鑑別方法の鑑別結果に基づき、前記被験者に適した物質であると判定する判定工程と、
を有することを特徴とする、被験者に適した物質の選択方法でもある。
【0088】
また、本発明は、2種以上の物質を、2以上の対象者に対し各々適用する適用工程と、 前記適用工程後の被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値を取得する測定工程と、
前記測定工程の測定値と、予め取得した、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値を用いた前述のリフトアップ効果鑑別方法の鑑別結果に基づき、前記被験者に適した物質であると判定する判定工程と、
を有する被験者に適した物質の選択方法とすることもできる。
【0089】
物質としては、市販の化合物(ペプチドを含む)、公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術によって得られた化合物群、植物や海洋生物由来の天然成分、動物組織抽出物などの物質を挙げることができる。
【0090】
動植物由来の抽出物は、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。
また、植物由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等を挙げることができる。
【0091】
本発明における、予め取得した、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上の測定値は、被験者に任意の刺激、又は物質を適用する前の測定値である。
また、前記適用工程の期間は、好ましくは適用直後、より好ましくは数時間以上、さらに好ましくは1日以上、より好ましくは1週間以上、より好ましくは2週間以上、さらに好ましくは4週間以上、さらに好ましくは8週間以上、特に好ましくは12週間以上である。
さらに、被験者に任意の刺激、又は物質を適用する頻度は、1週間あたり1回以上、好ましくは2回以上、より好ましくは1日1回以上、さらに好ましくは1日2回以上とすることができる。
【0092】
本発明における、任意の刺激及び物質の適用範囲は、好ましくは顔全体及び頸部である。より好ましくは顔全体であり、さらに好ましくは頬部全体である。また、前記適用範囲は、各指標の好ましい形態に合わせて、頬上部、頬下部、又は頬部全体の何れかを選択してもよい。
【0093】
また、本発明により被験者に適していると判定された刺激又は物質の結果は、肌の手入れ(スキンケア)や化粧方法に関するカウンセリングにおいても有用な指標となり得る。
【0094】
<3>顔のリフトアップ効果鑑別装置
また、本発明は肌のリフトアップ効果を鑑別する装置にも関する。
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0095】
本発明の肌のリフトアップ効果鑑別装置は、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性を測定及び評価する左右対称性評価手段1、頬部表面形態の異方性を測定及び評価する異方性評価手段2、及び頬部肌表面の移動様式を測定及び評価する移動様式評価手段3から選ばれる一又は二以上を備え、
被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上を指標として肌のリフトアップ効果を解析可能とすることを特徴とする。
【0096】
本発明における、左右対称性評価手段1、異方性評価手段2、移動様式評価手段3は上述の説明を援用することができる。
本発明の好ましい形態は、上記3つの指標を測定する手段に加え、肌のリフトアップ効果を解析可能とする手段を有する。
【0097】
前記3つの指標の取得、及び解析手段は、例えば演算装置と、主記憶装置と、補助記憶装置と、各種の入出力装置と、を備える、汎用的なコンピュータ装置を用いて行われていてもよい。その補助記憶装置として、コンピュータ装置を先述した各手段として機能させるため、後述のリフトアップ効果鑑別装置プログラムを記憶させて使用してもよい。そして、該プログラムを機能させる際には、プログラムを必要に応じて主記憶装置上に展開し、演算装置による処理を行ってもよい。
【0098】
以降、
図4を参照し、上記3つの指標を測定する手段と、肌のリフトアップ効果を解析可能とする手段について詳細に説明する。
【0099】
具体的には、本実施例の鑑別装置は、左右対称性評価手段1、異方性評価手段2、移動様式評価手段3の3つの指標獲得手段を備える。本発明の好ましい形態では、上記手段からから選ばれる一又は二以上の指標獲得手段を使用して、肌のリフトアップ効果の鑑別を行う。
なお、各指標の好ましい組み合わせ、及び各指標獲得手段で行われる工程は、上述の鑑別方法に記載の説明を援用できる。
【0100】
さらに、本発明の鑑別装置は、前記指標獲得手段(左右対称性評価手段1、異方性評価手段2、移動様式評価手段3)の測定結果を総合して、肌のリフトアップ効果を解析する解析手段4を有する。加えて、前記解析結果を表示する結果表示手段5を有していてもよい。
【0101】
前記結果表示手段5は、解析手段4の結果などを表示できるものであればよく、例えば、前記汎用的なコンピュータ装置を、画面表示機能を備える表示装置(液晶、ディスプレイ等)に接続して表示させてもよい。また、スピーカー等の音声出力装置あるいはプリンタ等を接続して用いてもよい。
【0102】
<4>顔のリフトアップ効果鑑別プログラム
また、本発明は肌のリフトアップ効果を鑑別するプログラムにも関する。
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0103】
本発明のリフトアップ効果を鑑別するプログラムは、コンピュータを、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性を測定及び評価する左右対称性評価手段1、頬部表面形態の異方性を測定及び評価する異方性評価手段2、及び頬部肌表面の移動様式を測定及び評価する移動様式評価手段3から選ばれる一又は二以上として機能させ、被験者の頬部のボリューム感の左右対称性、頬部肌表面形態の異方性、及び頬部肌表面の移動様式から選ばれる一又は二以上を指標として肌のリフトアップ効果を解析可能とさせる、実施の形態とすることが好ましい。
【0104】
ここで、本発明の推定プログラムの好ましい実施の形態は、前述の説明を援用することができる。
【実施例0105】
以下、本願発明の基となった試験結果を示す。
「肌のリフトアップ」に影響する肌の状態を抽出するため、以下の実験を行った。
【0106】
<試験1>リフトアップに関する印象評価試験
まず、「リフトアップ効果」の官能検査を行った。
【0107】
・試験品連用工程
官能検査は、健康な日本人女性(35~54歳)36名を被験者とし行った。被験者に試験品を12週間、顔面に朝晩2回連用させ、連用前後の被験者の顔面写真を撮影した。
なお、試験品の処方は以下の通りである。
試験品:既存の化粧料(クリーム)に、1質量%モモ葉エキスを混合し、試験品を得た。
【0108】
・リフトアップ印象評価工程
以下の評価方法で、試験品連用前後の被験者の顔面写真を、専門パネラー(男2名女3名、30~50代)5名が印象評価した。
【0109】
[評価方法]
(1)前記試験品の連用工程で得られた、試験品連用前(以降0Wと表記する。)及び3か月連用後(以降12Wと表記する。)の2枚の顔面画像をランダムに左右に並べ、かつ0W又は12W連用後の画像かわからないよう、ブラインド状態でパネラーに提示した。(2)2枚の画像について「リフトアップ感」を1.「変化なし」、2.「やや変化を感じる」、3.「変化を感じる」の3件法で評価した。
(3)専門パネラーによる評価後、ブラインド状態を解き、評価者が2.「やや変化を感じる」、3.「変化を感じる」と評価した画像の週数を確認し、リフトアップ感について以下の基準に従い評価を行った。
【0110】
評価基準は以下の通りである。
[評価基準]
1)変化あり:専門パネラー5名中4名以上が、連用前と比較し連用後が「変化を感じる」「やや変化を感じる」と評価
2)やや変化あり:専門パネラー5名中3名が、連用前と比較し連用後が「変化を感じる」「やや変化を感じる」と評価
3)やや変化なし:専門パネラー5名中3名が、連用前と比較し連用後が「変化なし」と評価
4)変化なし:専門パネラー5名中4名以上が、連用前と比較し連用後が「変化なし」と評価
【0111】
【0112】
・結果
表1より、試験品12W連用後、評価者5名中4名以上が0Wと比較して、連用後が「変化を感じる」「やや変化を感じる」と評価した被験者は、10名であった(以降、「1)変化あり群」と記載する。)。
また評価者5名中4名以上が、0Wと比較して連用後が「変化なし」と評価した被験者は、8名であった(以降、「4)変化なし群」と記載する。)。
【0113】
[印象評価結果と関連する肌状態変化値解析試験]
印象評価結果における1)変化あり群、4)変化なし群の両群を比較して、有意差が得られる肌物性を抽出した。
【0114】
・方法
以下の試験項目について、1)変化あり群、4)変化なし群の、試験品連用前の初期値(以降0Wと記載)、試験品連用1か月後(4週間)、及び3か月連用後(12週間後、以降12Wと記載)の肌物性を測定した。
【0115】
なお、試験項目及び測定に使用した装置は以下の通りである。
・表面形態情報(Canfield Scientific社製PRIMOS_CR_LargeField)
・全顔3D形状、皮膚移動度及び写真(Canfield Scientific社製VECTRA M3)
・角層水分量(I.B.S社製Skicon)
・粘弾性(Courage+Khazaka社製キュートメーター)
・アンケートによる本人実感
【0116】
・結果
1)変化あり群の連用後の肌物性は、次に示す1又は2以上の特徴を有することが分かった。
(特徴)
(i)頬部ボリュームの左右対称性
・頬部ボリューム感の左右対称性が良化していた。
(ii)頬部表面形態の変化
・頬部肌表面形態の異方性が小さくなっていた。
(iii)頬部肌表面の移動様式
・連用前後で、顔の中心から外かつ上に向かって肌表面が移動していた。
【0117】
<試験2>各指標の、顔のリフトアップ効果との関連性実験
上記実験で得られた(i)~(iii)の特徴について、肌のリフトアップ効果との関連性を確かめる実験を行った。
【0118】
[試験(i)頬部ボリュームの左右対称性について]
・試験内容
(1)VECTRA(Canfield Scientific社製)を用いて、1)変化あり群、4)変化なし群の頬部左右のボリューム感を測定した。頬部ボリューム感の測定では、VECTRAに搭載されているソフトを用いて、連用前後の頬部の体積変化を算出した。
(2)前記取得した頬部の体積変化について、左右差を算出した。
(3)前記取得した頬部の体積変化の左右差について、1)変化あり群、4)変化なし群で有意差があるかを確かめた。
【0119】
・結果
1)変化あり群、4)変化なし群の、頬部左右のボリューム感の変化の傾向を示した結果を
図5に示す。なお、図中グラフの縦軸は連用前後の頬部の体積変化の左右差の大きさを示す。
図5より、1)変化あり群の頬部の体積変化の左右差(グラフ左)は、4)変化なし群(グラフ右)と比べて小さいことが分かった。
【0120】
[リフトアップ効果と頬部の左右対称性の関連性検証実験]
1)変化あり群の被験者の、0Wと12Wの顔の輝度分布ヒートマップを測定した。輝度分布ヒートマップの測定結果を
図6に示す。
図6より、基準値と比較して、12W経過後は、頬の高い位置の面積が減少し、反対側の頬の高い位置の面積と近づいていた(
図6中、画像中黒丸印内部)。
また、VECTRA(Canfield Scientific社製)を用いて、4)変化あり群の被験者の顔正面の3D画像を測定した。また12Wの結果を加工し、頬片側のみボリュームを付与(
図7中、画像中黒四角印内部)した画像を作成した。画像を
図7に示す。
図7の結果について前述同様に印象評価を実施したところ、12Wの結果(
図7中、中、12W)と比較して、12W経過後の左頬上部のみのボリューム感を増加させた画像(
図7中、右、12w+頬上部片側)の方が変化なしと評価された。
上記結果より、頬上部の肌表面の上昇自体がリフトアップ効果の印象には直結しないことがわかった。そして、
図7においては、片側頬上部のみのボリューム感の増加により、左右対称性が崩れることでリフトアップ効果が損なわれたことが示唆された。
【0121】
・まとめ
試験(i)の結果から、頬のボリューム感変化の左右差が大きいと、リフトアップ効果を感じにくいことが分かった。すなわち、頬のボリューム感が左右対称であることが、リフトアップ効果を感じやすい条件であると分かった。
得られた知見から、頬部左右対称性の良化と試験1の印象評価の結果が関連付けられた。
よって頬部左右対称性は、リフトアップ効果を測る指標の一つとなることがわかった。
【0122】
[試験(ii)頬部表面形態の変化について]
・試験内容
PRIMOS_CR_LargeField(Canfield Scientific社製)を用いて、試験品0W連用後と、試験品12W連用後の、被験者の頬上部のキメ、毛穴の異方性を測定した。前記異方性の測定結果について、前記試験1で得られた、1)変化あり群、4)変化なし群で有意差があるかを確かめた。
【0123】
・結果
1)変化あり群の試験品0W使用後と、試験品12W使用後のキメやシワ、毛穴を含む肌表面の凹凸の異方性の測定結果を
図8に示す。また、1)変化あり群、4)変化なし群の異方性の変化傾向を
図9に示す。なお、異方性の変化傾向のデータは、PRIMOS_CR_LargeField(Canfield Scientific社製)の測定値を、付属のソフトウェアで解析することにより取得した。
図8の縦軸は異方性の測定値、
図9の縦軸は1)変化あり群、4)変化なし群それぞれの試験品12W使用前後の異方性の変化値を示す。
図8及び
図9より、1)変化あり群では、12W経過後、前記異方性が減少する傾向があることが分かった。
図9より、4)変化なし群では、12W経過後、異方性が増大する傾向があることが分かった。
【0124】
・まとめ
試験(ii)の結果から、肌表面の凹凸の異方性の減少と試験1の印象評価の結果が関連付けられた。
よって、頬部肌表面の異方性が、リフトアップ効果を測る指標の一つとなることが分かった。
【0125】
[試験(iii)頬部肌表面の移動様式について(1)]
・試験内容
試験品0W使用後と、試験品12W使用後の、被験者の頬下部肌表面の移動様式を測定した。前記移動様式の測定結果について、前記試験1で得られた、1)変化あり群、4)変化なし群で有意差があるかを確かめた。
【0126】
各被験者について、連用前後の被験者の顔面写真を、VECTRA M3(Canfield Scientific社製)を使用して取得し、試験品連用前後における肌の移動量を算出した。肌の移動量には、肌の移動距離及び移動方向が含まれ、肌の移動量は顔面写真中の矢印で示される。肌の移動量の算出には、MATLAB(登録商標)(MathWorks社製)によるオプティカルフロー解析を用いた。
肌の移動量のうち、頬下部の肌の移動量に着目し、顔の中心から外かつ上向きの矢印の本数を合計した。結果を
図10に示す。
【0127】
・結果
図10の縦軸は、オプティカルフロー解析によって得られた、肌の単位面積当たりの、顔の中心から外かつ上向に移動した矢印の本数を示す。
図10より、1)変化あり群では、肌表面の外上方向の移動様式が大きいことが分かった(図中右)。
一方、2)変化なし群では、肌表面の外上方向の移動様式が小さいことが分かった(図中左)。
【0128】
・まとめ
試験(iii)(1)の結果から、頬下部の肌表面の、外上方向の移動と、試験1の印象評価の結果が関連付けられた。
よって頬部肌表面の移動様式が、リフトアップ効果を測る指標の一つとなることが結論付けられた。
【0129】
[試験(iii)頬部肌表面の移動様式について(2)]
・試験内容
被験者の頬下部肌表面にある特定の毛穴を特徴点として定め、試験品0W使用後と、試験品12W使用後に撮影した被験者の顔画像より、当該特徴点の外上方向移動量を
図11に図示する方法で測定した。具体的には、口角と目尻を結ぶ直線(
図11中、Lで示す直線)を基準線として定め、基準点(口角)から特徴点までの距離rの基準線Lへの射影距離(r・cosθ)を求めた。試験品0W使用後における射影距離(「r
0・cosθ」とする。)に対する、試験品12W使用後の射影距離(「r
12・cosθ」とする。)を特徴点の距離変化比率(r
12・cosθ/r
0・cosθ)を測定した。前記外上方向移動量の測定結果について、前記試験1で得られた、1)変化あり群、4)変化なし群で有意差があるかを確かめた。
【0130】
・結果
図12に示すとおり、1)変化あり群では、特徴点の距離変化比率が有意に1超の値を示すことがわかった(図中右)。
一方、2)変化なし群では、特徴点の距離変化比率は、ほぼ1であることがわかった。
【0131】
・まとめ
試験(iii)(2)の結果から、頬下部の肌表面の、外上方向の移動と、試験1の印象評価の結果が関連付けられた。
よって頬部肌表面の移動様式が、リフトアップ効果を測る指標の一つとなることが結論付けられた。
【0132】
[試験結果まとめ]
試験(i)~(iii)の結果から、本発明における、顔のリフトアップ効果を鑑別する指標が、リフトアップ効果の印象評価の結果と関連付けられた。
すなわち、本実施例の結果によれば、頬部の左右対称性、頬部表面形態の異方性、頬部肌表面の移動様式の何れかの使用に基づいて、被験者の肌のリフトアップ効果を鑑別できることが分かった。