IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社半導体エネルギー研究所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163896
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241115BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20241115BHJP
   G09G 3/3233 20160101ALI20241115BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241115BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20241115BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241115BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241115BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20241115BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20241115BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20241115BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20241115BHJP
   H10B 12/00 20230101ALI20241115BHJP
【FI】
H01L29/78 626A
G09G3/20 611H
G09G3/20 624B
G09G3/3233
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
H10K59/12
H01L29/78 619A
H01L29/78 616T
H01L29/78 626C
H01L29/78 616U
H01L29/78 617N
H01L29/78 618B
H01L29/78 618F
H01L21/28 301B
H01L29/50 M
H01L27/04 C
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
H10B12/00 671B
H10B12/00 671C
H10B12/00 621C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024077535
(22)【出願日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2023079442
(32)【優先日】2023-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024021494
(32)【優先日】2024-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 求
(72)【発明者】
【氏名】方堂 涼太
(72)【発明者】
【氏名】神保 安弘
(72)【発明者】
【氏名】村川 努
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 暁
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【テーマコード(参考)】
3K107
4M104
5C080
5C094
5C380
5F038
5F048
5F083
5F110
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB06
3K107BB07
3K107BB08
3K107CC14
3K107CC33
3K107CC35
3K107CC36
3K107EE04
3K107FF15
4M104AA03
4M104AA08
4M104AA09
4M104BB01
4M104BB02
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB06
4M104BB07
4M104BB08
4M104BB09
4M104BB13
4M104BB14
4M104BB16
4M104BB17
4M104BB18
4M104BB21
4M104BB29
4M104BB30
4M104BB31
4M104BB32
4M104BB33
4M104BB36
4M104CC01
4M104DD37
4M104DD43
4M104DD56
4M104DD92
4M104FF02
4M104FF04
4M104FF09
4M104FF11
4M104FF13
4M104FF26
4M104FF40
4M104GG08
4M104GG14
4M104GG16
4M104HH13
4M104HH15
5C080AA06
5C080AA07
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD07
5C080DD08
5C080DD26
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ05
5C080JJ06
5C080KK01
5C080KK02
5C080KK20
5C080KK21
5C080KK23
5C080KK25
5C080KK34
5C080KK43
5C080KK47
5C080KK49
5C094AA21
5C094AA22
5C094BA03
5C094DA13
5C094DA15
5C094FB14
5C380AA01
5C380AA03
5C380AB06
5C380AB18
5C380AB34
5C380AC02
5C380AC04
5C380AC07
5C380AC08
5C380AC11
5C380AC12
5C380AC13
5C380AC16
5C380BA02
5C380BA13
5C380BA36
5C380BA40
5C380BB22
5C380BE01
5F038AC05
5F038AC10
5F038AC15
5F038AC16
5F038AC17
5F038CA02
5F038CA16
5F038CD16
5F038DF04
5F038DF05
5F038DF08
5F038EZ02
5F038EZ06
5F038EZ10
5F048AA01
5F048AA07
5F048AB01
5F048AB03
5F048AC01
5F048AC10
5F048BA01
5F048BA14
5F048BA15
5F048BA16
5F048BA19
5F048BB02
5F048BB05
5F048BB08
5F048BB09
5F048BB11
5F048BB15
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC12
5F048BD02
5F048BD06
5F048BD07
5F048BF02
5F048BF03
5F048BF06
5F048BF07
5F048BF11
5F048BF12
5F048BF15
5F048BF16
5F048BG12
5F048BG13
5F048CB01
5F048CB02
5F048CB03
5F048CB04
5F048CB07
5F083AD02
5F083AD04
5F083AD21
5F083AD24
5F083GA01
5F083GA03
5F083GA05
5F083GA06
5F083GA09
5F083GA11
5F083GA21
5F083GA25
5F083JA02
5F083JA03
5F083JA04
5F083JA05
5F083JA06
5F083JA12
5F083JA13
5F083JA14
5F083JA15
5F083JA17
5F083JA19
5F083JA35
5F083JA36
5F083JA37
5F083JA38
5F083JA39
5F083JA40
5F083JA42
5F083JA43
5F083JA53
5F083JA56
5F083JA58
5F083JA60
5F083LA21
5F083MA06
5F083MA16
5F083MA19
5F083NA01
5F083NA02
5F083PR07
5F083PR21
5F083PR22
5F083PR25
5F083PR33
5F083PR40
5F083ZA23
5F110AA01
5F110AA02
5F110AA03
5F110AA04
5F110AA06
5F110AA07
5F110AA08
5F110AA09
5F110AA25
5F110AA30
5F110BB01
5F110BB05
5F110CC09
5F110DD01
5F110DD02
5F110DD03
5F110DD04
5F110DD05
5F110DD06
5F110DD12
5F110DD13
5F110DD14
5F110DD15
5F110DD17
5F110DD24
5F110DD25
5F110EE01
5F110EE02
5F110EE03
5F110EE04
5F110EE05
5F110EE06
5F110EE07
5F110EE09
5F110EE11
5F110EE14
5F110EE15
5F110EE22
5F110EE25
5F110EE30
5F110EE36
5F110EE42
5F110EE44
5F110EE45
5F110EE48
5F110FF01
5F110FF02
5F110FF03
5F110FF04
5F110FF05
5F110FF09
5F110FF10
5F110FF12
5F110FF27
5F110FF28
5F110FF29
5F110FF35
5F110GG01
5F110GG02
5F110GG03
5F110GG04
5F110GG05
5F110GG06
5F110GG07
5F110GG12
5F110GG13
5F110GG14
5F110GG15
5F110GG16
5F110GG17
5F110GG19
5F110GG22
5F110GG23
5F110GG24
5F110GG25
5F110GG26
5F110GG28
5F110GG29
5F110GG32
5F110GG33
5F110GG34
5F110GG35
5F110GG42
5F110GG43
5F110GG44
5F110GG51
5F110GG52
5F110GG54
5F110GG55
5F110GG57
5F110GG58
5F110HJ01
5F110HJ04
5F110HJ06
5F110HJ12
5F110HJ13
5F110HJ17
5F110HJ18
5F110HJ30
5F110HK01
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK04
5F110HK05
5F110HK06
5F110HK07
5F110HK09
5F110HK14
5F110HK21
5F110HK22
5F110HK25
5F110HK32
5F110HK33
5F110HK34
5F110HM02
5F110HM03
5F110HM05
5F110HM13
5F110NN03
5F110NN04
5F110NN22
5F110NN23
5F110NN24
5F110NN27
5F110NN28
5F110NN33
5F110NN34
5F110NN35
5F110NN40
5F110NN71
5F110NN72
5F110NN74
5F110NN77
5F110PP10
5F110PP13
5F110QQ19
(57)【要約】
【課題】寄生容量が小さいトランジスタを提供する。オン電流が大きいトランジスタを提供する。
【解決手段】酸化物半導体層、第1乃至第3の導電層、及び、第1乃至第3の絶縁層を有し、第1の導電層は第1の凹部を有し、第1の導電層上の第1の絶縁層と、第1の絶縁層上の第2の導電層は、第1の凹部と重なる第1の開口部を有し、酸化物半導体層は、第2の導電層の上面、第1の凹部の底面及び側面、第2の導電層の側面、並びに第1の絶縁層の側面と接し、第2の絶縁層は、第1の開口部内で酸化物半導体層の内側に位置し、第3の絶縁層は、第1の絶縁層上で酸化物半導体層の上面及び側面を覆い、かつ、第1の開口部と重なる第2の開口部を有し、第3の導電層は、第1の開口部内で第2の絶縁層を介して酸化物半導体層と重なる部分と、第2の開口部内に位置する部分と、を有する、半導体装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体層、第1の導電層、第2の導電層、第3の導電層、第1の絶縁層、第2の絶縁層、及び、第3の絶縁層を有し、
前記第1の絶縁層は、前記第1の導電層上に位置し、
前記第2の導電層は、前記第1の絶縁層上に位置し、
前記第1の導電層は、第1の凹部を有し、
前記第1の絶縁層及び前記第2の導電層は、前記第1の凹部と重なる位置に第1の開口部を有し、
前記酸化物半導体層は、前記第2の導電層の上面、並びに、前記第1の凹部の底面及び側面と接し、かつ、前記第1の開口部内で、前記第2の導電層の側面、及び前記第1の絶縁層の側面と接し、
前記第2の絶縁層は、前記第1の開口部内で前記酸化物半導体層の内側に位置し、
前記第3の絶縁層は、前記第1の絶縁層上に位置し、前記第1の絶縁層上で前記酸化物半導体層の上面及び側面を覆い、かつ、前記第1の開口部と重なる位置に第2の開口部を有し、
前記第3の導電層は、前記第1の開口部内で前記第2の絶縁層を介して前記酸化物半導体層と重なる部分と、前記第2の開口部内に位置する部分と、を有する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
第4の絶縁層を有し、
前記第1の導電層、及び前記第2の絶縁層は、前記第4の絶縁層上に位置し、
前記第4の絶縁層の上面から前記第1の導電層の前記第1の絶縁層と接する上面までの最短距離は、前記第4の絶縁層の上面から前記第2の絶縁層の下面までの最短距離よりも長い、半導体装置。
【請求項3】
請求項1において、
第4の絶縁層を有し、
前記第1の導電層、及び前記第3の導電層は、前記第4の絶縁層上に位置し、
前記第4の絶縁層の上面から前記第1の導電層の前記第1の絶縁層と接する上面までの最短距離は、前記第4の絶縁層の上面から前記第3の導電層の下面までの最短距離以上である、半導体装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1の導電層は、第4の導電層と、前記第4の導電層上の第5の導電層を有し、
前記第5の導電層は、前記第4の導電層に達する第3の開口部を有し、
前記酸化物半導体層は、前記第4の導電層の上面、及び前記第5の導電層の側面と接する、半導体装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1の導電層は、第4の導電層と、前記第4の導電層上の第5の導電層を有し、
前記第5の導電層は、第2の凹部を有し、
前記第1の開口部は、前記第2の凹部と重なり、
前記酸化物半導体層は、前記第2の凹部の底面及び側面と接する、半導体装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記第2の導電層は、第6の導電層と、前記第6の導電層上の第7の導電層を有し、
断面視において、前記第6の導電層における前記第1の開口部の幅の最大値は、前記第7の導電層における前記第1の開口部の幅の最小値よりも小さく、
前記酸化物半導体層は、前記第6の導電層の上面及び側面、並びに、前記第7の導電層の上面及び側面と接する、半導体装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記第3の導電層は、前記第3の絶縁層の上面と重なる、半導体装置。
【請求項8】
請求項1において、
第8の導電層を有し、
前記第8の導電層は、前記第3の絶縁層の上面、及び、前記第3の導電層の上面と接する、半導体装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記第2の絶縁層は、前記第2の開口部内に位置する部分を有する、半導体装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記第3の絶縁層は、前記第2の絶縁層上に位置する、半導体装置。
【請求項11】
請求項1において、
第9の導電層を有し、
前記第1の絶縁層は、第1の層と、前記第1の層上の第2の層と、を有し、
前記第9の導電層は、前記第1の層上に位置し、
前記第2の層は、前記第9の導電層の上面及び側面を覆い、
断面視において、前記酸化物半導体層は、前記第2の層を介して前記第9の導電層と重なり、かつ、前記第2の絶縁層を介して前記第3の導電層と重なる領域を有する、半導体装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記第1の絶縁層は、前記酸化物半導体層と接する第1の領域を有し、
前記第1の領域は、ハロゲン元素を有する、半導体装置。
【請求項13】
請求項1において、
前記酸化物半導体層は、前記第1の絶縁層と接する第2の領域を有し、
前記第2の領域は、ハロゲン元素を有する、半導体装置。
【請求項14】
請求項12または13において、
前記ハロゲン元素は、塩素、フッ素、臭素、及び、ヨウ素の中から選ばれる一種または複数種である、半導体装置。
【請求項15】
請求項12または13において、
前記ハロゲン元素は、塩素またはフッ素である、半導体装置。
【請求項16】
請求項1において、
前記酸化物半導体層は、前記第1の凹部の底面と接する第3の領域と、前記第2の導電層の上面と接する第4の領域と、を有し、
前記第3の領域及び前記第4の領域は、第1の元素を有し、
前記第1の元素は、ホウ素またはリンである、半導体装置。
【請求項17】
請求項1において、
断面視において、前記第2の開口部内における前記第3の導電層の幅の最大値は、前記第2の導電層における前記第1の開口部の幅の最小値以下である、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置、記憶装置、表示装置、及び電子機器に関する。また、本発明の一態様は、半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置(例えば、タッチセンサ)、入出力装置(例えば、タッチパネル)、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法を一例として挙げることができる。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用した装置であり、半導体素子(トランジスタ、ダイオード、フォトダイオード等)を含む回路、同回路を有する装置等をいう。また、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般をいう。例えば、集積回路、集積回路を備えたチップ、パッケージにチップを収納した電子部品は半導体装置の一例である。また、記憶装置、表示装置、発光装置、照明装置、及び電子機器は、それ自体が半導体装置であり、かつ、それぞれが半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
近年、半導体装置の開発が進められ、LSI、CPU、メモリなどが主に半導体装置に用いられている。CPUは、半導体ウェハを加工し、チップ化された半導体集積回路(少なくともトランジスタ及びメモリ)を有し、接続端子である電極が形成された半導体素子の集合体である。
【0005】
LSI、CPU、メモリなどの半導体回路(ICチップ)は、回路基板、例えばプリント配線基板に実装され、様々な電子機器の部品の一つとして用いられる。
【0006】
また、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)、表示装置のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体材料としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0007】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ状態において極めてリーク電流が小さいことが知られている。例えば、特許文献1には、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が小さいという特性を応用した低消費電力のCPUなどが開示されている。また、例えば、特許文献2には、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が小さいという特性を応用して、長期にわたり記憶内容を保持することができる記憶装置などが、開示されている。
【0008】
また、近年では電子機器の小型化、軽量化に伴い、集積回路のさらなる高密度化への要求が高まっている。また、集積回路を含む半導体装置の生産性の向上が求められている。例えば、特許文献3及び非特許文献1では、酸化物半導体膜を用いる第1のトランジスタと、酸化物半導体膜を用いる第2のトランジスタとを積層させることで、メモリセルを複数重畳して設けることにより、集積回路の高密度化を図る技術が開示されている。また、特許文献4では、酸化物半導体膜を用いるトランジスタのチャネルを縦方向に配置し、集積回路の高密度化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-257187号公報
【特許文献2】特開2011-151383号公報
【特許文献3】国際公開第2021/053473号
【特許文献4】特開2013-211537号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M.Oota et.al,“3D-Stacked CAAC-In-Ga-Zn Oxide FETs with Gate Length of 72nm”,IEDM Tech. Dig.,2019,pp.50-53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一態様は、寄生容量が小さいトランジスタを提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、電気特性が良好なトランジスタを提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、オン電流が大きいトランジスタを提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、微細化または高集積化が可能なトランジスタ、半導体装置、または記憶装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、高精細または高開口率の表示装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、信頼性の高いトランジスタ、半導体装置、表示装置、または記憶装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、消費電力の低い半導体装置、表示装置、または記憶装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、動作速度が速い記憶装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、上記トランジスタ、半導体装置、表示装置、または記憶装置の作製方法を提供することを課題の一つとする。
【0012】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、酸化物半導体層、第1の導電層、第2の導電層、第3の導電層、第1の絶縁層、第2の絶縁層、及び、第3の絶縁層を有し、第1の絶縁層は、第1の導電層上に位置し、第2の導電層は、第1の絶縁層上に位置し、第1の導電層は、第1の凹部を有し、第1の絶縁層及び第2の導電層は、第1の凹部と重なる位置に第1の開口部を有し、酸化物半導体層は、第2の導電層の上面、並びに、第1の凹部の底面及び側面と接し、かつ、第1の開口部内で、第2の導電層の側面、及び第1の絶縁層の側面と接し、第2の絶縁層は、第1の開口部内で酸化物半導体層の内側に位置し、第3の絶縁層は、第1の絶縁層上に位置し、第1の絶縁層上で酸化物半導体層の上面及び側面を覆い、かつ、第1の開口部と重なる位置に第2の開口部を有し、第3の導電層は、第1の開口部内で第2の絶縁層を介して酸化物半導体層と重なる部分と、第2の開口部内に位置する部分と、を有する、半導体装置である。
【0014】
上記の半導体装置は、さらに、第4の絶縁層を有することが好ましい。第1の導電層、及び第2の絶縁層は、第4の絶縁層上に位置し、第4の絶縁層の上面から第1の導電層の第1の絶縁層と接する上面までの最短距離は、第4の絶縁層の上面から第2の絶縁層の下面までの最短距離よりも長いことが好ましい。また、第1の導電層、及び第3の導電層は、第4の絶縁層上に位置し、第4の絶縁層の上面から第1の導電層の第1の絶縁層と接する上面までの最短距離は、第4の絶縁層の上面から第3の導電層の下面までの最短距離以上であることが好ましい。
【0015】
第1の導電層は、第4の導電層と、第4の導電層上の第5の導電層を有することが好ましい。第5の導電層は、第4の導電層に達する第3の開口部を有し、酸化物半導体層は、第4の導電層の上面、及び第5の導電層の側面と接することが好ましい。または、第5の導電層は、第2の凹部を有し、第1の開口部は、第2の凹部と重なり、酸化物半導体層は、第2の凹部の底面及び側面と接することが好ましい。
【0016】
第2の導電層は、第6の導電層と、第6の導電層上の第7の導電層を有することが好ましい。断面視において、第6の導電層における第1の開口部の幅の最大値は、第7の導電層における第1の開口部の幅の最小値よりも小さく、酸化物半導体層は、第6の導電層の上面及び側面、並びに、第7の導電層の上面及び側面と接することが好ましい。
【0017】
第3の導電層は、第3の絶縁層の上面と重なることが好ましい。
【0018】
上記の半導体装置は、さらに、第8の導電層を有することが好ましい。第8の導電層は、第3の絶縁層の上面、及び、第3の導電層の上面と接することが好ましい。
【0019】
第2の絶縁層は、第2の開口部内に位置する部分を有することが好ましい。
【0020】
第3の絶縁層は、第2の絶縁層上に位置することが好ましい。
【0021】
上記の半導体装置は、さらに、第9の導電層を有することが好ましい。第1の絶縁層は、第1の層と、第1の層上の第2の層と、を有し、第9の導電層は、第1の層上に位置し、第2の層は、第9の導電層の上面及び側面を覆い、断面視において、酸化物半導体層は、第2の層を介して第9の導電層と重なり、かつ、第2の絶縁層を介して第3の導電層と重なる領域を有することが好ましい。
【0022】
第1の絶縁層は、酸化物半導体層と接する第1の領域を有し、第1の領域は、ハロゲン元素を有することが好ましい。また、酸化物半導体層は、第1の絶縁層と接する第2の領域を有し、第2の領域は、ハロゲン元素を有することが好ましい。第1の領域及び第2の領域が有するハロゲン元素は、それぞれ、塩素、フッ素、臭素、及び、ヨウ素の中から選ばれる一種または複数種であることが好ましく、塩素またはフッ素であることがより好ましい。
【0023】
酸化物半導体層は、第1の凹部の底面と接する第3の領域と、第2の導電層の上面と接する第4の領域と、を有し、第3の領域及び第4の領域は、第1の元素を有し、第1の元素は、ホウ素またはリンであることが好ましい。
【0024】
断面視において、第2の開口部内における第3の導電層の幅の最大値は、第2の導電層における第1の開口部の幅の最小値以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様により、寄生容量が小さいトランジスタを提供できる。または、本発明の一態様により、電気特性が良好なトランジスタを提供できる。または、本発明の一態様により、オン電流が大きいトランジスタを提供できる。または、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能なトランジスタ、半導体装置、または記憶装置を提供できる。または、本発明の一態様により、高精細または高開口率の表示装置を提供できる。または、本発明の一態様により、信頼性の高いトランジスタ、半導体装置、表示装置、または記憶装置を提供できる。または、本発明の一態様により、消費電力の低い半導体装置、表示装置、または記憶装置を提供できる。または、本発明の一態様により、動作速度が速い記憶装置を提供できる。または、本発明の一態様により、上記トランジスタ、半導体装置、表示装置、または記憶装置の作製方法を提供できる。
【0026】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。図1(B)乃至図1(D)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図2図2は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図3図3(A)及び図3(B)は、本発明の一態様に係る金属酸化物の断面図である。
図4図4(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。図4(B)乃至図4(D)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図5図5(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。図5(B)乃至図5(D)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図6図6は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図7図7(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。図7(B)乃至図7(D)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図8図8(A)乃至図8(D)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図9図9(A)乃至図9(D)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図10図10(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。図10(B)乃至図10(D)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図11図11(A)及び図11(B)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図12図12(A)乃至図12(F)は、半導体装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図13図13(A)乃至図13(F)は、半導体装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図14図14(A)乃至図14(F)は、半導体装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図15図15(A)乃至図15(F)は、半導体装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図16図16(A)乃至図16(F)は、半導体装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図17図17(A)乃至図17(E)は、半導体装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図18図18(A)は、記憶装置の一例を示す平面図である。図18(B)及び図18(C)は、記憶装置の一例を示す断面図である。
図19図19(A)は、記憶装置の一例を示す平面図である。図19(B)は、記憶装置の一例を示す断面図である。
図20図20は、記憶装置の一例を示す断面図である。
図21図21は、記憶装置の一例を示す断面図である。
図22図22は、半導体装置の構成例を説明するブロック図である。
図23図23(A)乃至図23(H)は、メモリセルの回路構成例を説明する図である。
図24図24(A)及び図24(B)は、半導体装置の構成例を説明する斜視図である。
図25図25は、CPUを説明するブロック図である。
図26図26(A)及び図26(B)は、半導体装置の斜視図である。
図27図27(A)及び図27(B)は、半導体装置の斜視図である。
図28図28(A)及び図28(B)は、各種の記憶装置を階層ごとに示す図である。
図29図29(A)及び図29(B)は、表示装置の一例を示す斜視図である。
図30図30は、表示装置の一例を示す断面図である。
図31図31は、表示装置の一例を示す断面図である。
図32図32(A)乃至図32(C)は、表示装置の構成例を示す図である。
図33図33(A)及び図33(B)は、電子部品の一例を示す図である。
図34図34(A)乃至図34(C)は、大型計算機の一例を示す図である。図34(D)は、宇宙用機器の一例を示す図である。図34(E)は、データセンターに適用可能なストレージシステムの一例を示す図である。
図35図35(A)乃至図35(F)は、電子機器の一例を示す図である。
図36図36(A)乃至図36(G)は、電子機器の一例を示す図である。
図37図37(A)乃至図37(F)は、電子機器の一例を示す図である。
図38図38(A)及び図38(B)は、デバイスシミュレーションに用いた半導体装置を示す断面図である。
図39図39は、デバイスシミュレーションにより得られたId-Vgカーブである。
図40図40は、デバイスシミュレーションにより得られた電子密度分布である。
図41図41は、デバイスシミュレーションにより得られたId-Vgカーブである。
図42図42は、デバイスシミュレーションにより得られた電子密度分布である。
図43図43は、デバイスシミュレーションにより得られたId-Vgカーブである。
図44図44(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。図44(B)乃至図44(D)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図45図45は、実施例2のトランジスタの断面STEM像である。
図46図46は、実施例2のトランジスタのId-Vg特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0029】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチングパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0030】
また、図面において示す各構成の、位置、大きさ、及び、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、及び、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、及び、範囲などに限定されない。
【0031】
なお、本明細書等において、「第1」、「第2」という序数詞は、便宜上用いるものであり、構成要素の数、または、構成要素の順序(例えば、工程順、または積層順)を限定するものではない。また、本明細書のある箇所において構成要素に付す序数詞と、本明細書の他の箇所、または特許請求の範囲において、当該構成要素に付す序数詞と、が一致しない場合がある。
【0032】
また、トランジスタは半導体素子の一種であり、電流または電圧を増幅する機能、及び、導通または非導通を制御するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書におけるトランジスタは、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)及び薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含む。
【0033】
本明細書等において、半導体層に酸化物半導体または金属酸化物を用いたトランジスタ、及び、チャネル形成領域に酸化物半導体または金属酸化物を有するトランジスタをOSトランジスタと記すことがある。また、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタをSiトランジスタと記すことがある。
【0034】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネルが形成される領域(チャネル形成領域ともいう)を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0035】
また、「ソース」と「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合、または回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」と「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0036】
なお、半導体の不純物とは、例えば、半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1atomic%未満の元素は不純物といえる。不純物が含まれることにより、例えば、半導体の欠陥準位密度が高くなること、または結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、酸化物半導体の主成分以外の遷移金属などがある。具体的には、例えば、水素、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。なお、水も不純物として機能する場合がある。また、例えば不純物の混入によって、酸化物半導体に酸素欠損(Vとも記す)が形成される場合がある。
【0037】
なお、本明細書等において、酸化窒化物とは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指す。窒化酸化物とは、その組成として酸素よりも窒素の含有量が多い材料を指す。
【0038】
膜に含まれる水素、酸素、炭素、窒素などの元素の含有量の分析には、例えば、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)、またはX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いることができる。目的の元素の含有率が高い(例えば、0.5atomic%以上、または1atomic%以上)場合は、XPSが適している。一方、目的の元素の含有率が低い(例えば0.5atomic%以下、または1atomic%以下)場合には、SIMSが適している。元素の含有量を比較する際には、SIMSとXPSの両方の分析手法を用いた複合解析を行うことがより好ましい。
【0039】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能である。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能である。
【0040】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10度以上10度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5度以上5度以下の場合も含まれる。また、「概略平行」とは、二つの直線が-30度以上30度以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80度以上100度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85度以上95度以下の場合も含まれる。また、「概略垂直」とは、二つの直線が60度以上120度以下の角度で配置されている状態をいう。
【0041】
本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極または配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、コイル、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0042】
本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのソース-ドレイン間のリーク電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い(pチャネル型トランジスタでは、Vthよりも高い)状態をいう。
【0043】
本明細書等において、ノーマリーオンとは、ゲートに電圧を印加しなくてもチャネルが存在し、トランジスタに電流が流れる状態のことをいう。また、ノーマリーオフとは、ゲートに電位を印加しない、またはゲートに接地電位を与えたときに、トランジスタに電流が流れない状態のことをいう。
【0044】
なお、本明細書等において、テーパ形状とは、構造の側面の少なくとも一部が、基板面または被形成面に対して傾斜して設けられている形状のことを指す。例えば、傾斜した側面と基板面または被形成面とがなす角(テーパ角ともいう)が0度より大きく90度未満である領域を有すると好ましい。なお、構造の側面、基板面、及び被形成面は、必ずしも完全に平坦である必要はなく、微小な曲率を有する略平面状、または微細な凹凸を有する略平面状であってもよい。
【0045】
本明細書等において、AはB上に位置する、と記載されている場合、Aの少なくとも一部がB上に位置する。そのため、例えば、AはB上に位置する領域を有する、と言い換えることができる。同様に、AはBと接する、または、AはBと重なる、と記載されている場合、Aの少なくとも一部が、Bと接する、またはBと重なる。そのため、それぞれ、AはBと接する領域を有する、または、AはBと重なる領域を有する、と言い換えることができる。同様に、本明細書等において、AはBを覆う、と記載されている場合、Aの少なくとも一部がBを覆う。そのため、例えば、AはBを覆う領域を有する、と言い換えることができる。
【0046】
本明細書等において、メタルマスク、またはFMM(ファインメタルマスク、高精細なメタルマスク)を用いて作製されるデバイスをMM(メタルマスク)構造のデバイスと呼称する場合がある。また、本明細書等において、メタルマスク、またはFMMを用いずに作製されるデバイスをMML(メタルマスクレス)構造のデバイスと呼称する場合がある。
【0047】
本明細書等では、発光波長が異なる発光素子(発光デバイスともいう)で発光層を作り分ける構造をSBS(Side By Side)構造と呼ぶ場合がある。SBS構造は、発光素子ごとに材料及び構成を最適化することができるため、材料及び構成の選択の自由度が高まり、輝度の向上及び信頼性の向上を図ることが容易となる。
【0048】
本明細書等において、正孔または電子を、「キャリア」といって示す場合がある。具体的には、正孔注入層または電子注入層を「キャリア注入層」といい、正孔輸送層または電子輸送層を「キャリア輸送層」といい、正孔ブロック層または電子ブロック層を「キャリアブロック層」という場合がある。なお、上述のキャリア注入層、キャリア輸送層、及びキャリアブロック層は、明確に区別できない場合がある。また、1つの層が、キャリア注入層、キャリア輸送層、及びキャリアブロック層のうち2つまたは3つの機能を兼ねる場合がある。
【0049】
本明細書等において、発光素子は、一対の電極間にEL層を有する。EL層は、少なくとも発光層を有する。ここで、EL層が有する層(機能層ともいう)としては、発光層、キャリア注入層(正孔注入層及び電子注入層)、キャリア輸送層(正孔輸送層及び電子輸送層)、及び、キャリアブロック層(正孔ブロック層及び電子ブロック層)などが挙げられる。本明細書等では、一対の電極の一方を画素電極と記し、他方を共通電極と記すことがある。
【0050】
本明細書等において、犠牲層(マスク層と呼称してもよい)とは、少なくとも発光層(より具体的には、EL層を構成する層のうち、島状に加工される層)の上方に位置し、製造工程中において、当該発光層を保護する機能を有する。
【0051】
本明細書等において、段切れとは、層、膜、または電極が、被形成面の形状(例えば段差など)に起因して分断される現象を示す。
【0052】
なお、本明細書に係る図面等において、X方向、Y方向、及びZ方向を示す矢印を付す場合がある。なお、本明細書等において、「X方向」とはX軸に沿う方向であり、明示する場合を除き順方向と逆方向を区別しない場合がある。「Y方向」及び「Z方向」についても同様である。また、X方向、Y方向、及びZ方向は、それぞれが互いに交差する方向である。例えば、X方向、Y方向、及びZ方向は、それぞれが互いに直交する方向である。
【0053】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置とその作製方法について図1乃至図17を用いて説明する。
【0054】
本発明の一態様の半導体装置は、酸化物半導体層、第1の導電層、第2の導電層、第3の導電層、第1の絶縁層、第2の絶縁層、及び、第3の絶縁層を有する。
【0055】
酸化物半導体層は、トランジスタの半導体層として機能し、第1の導電層は、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方として機能し、第2の導電層は、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の他方として機能し、第3の導電層は、トランジスタのゲート電極として機能し、第2の絶縁層は、トランジスタのゲート絶縁層として機能する。
【0056】
第1の絶縁層は、第1の導電層上に位置し、第2の導電層は、第1の絶縁層上に位置する。第1の導電層は、第1の凹部を有し、第1の絶縁層及び第2の導電層は、第1の凹部と重なる位置に第1の開口部を有する。酸化物半導体層は、第2の導電層の上面、並びに、第1の凹部の底面及び側面と接し、かつ、第1の開口部内で、第2の導電層の側面、及び第1の絶縁層の側面と接する。第2の絶縁層は、第1の開口部内で酸化物半導体層の内側に位置する。第3の絶縁層は、第1の絶縁層上に位置し、第1の絶縁層上で酸化物半導体層の上面及び側面を覆い、かつ、第1の開口部と重なる位置に第2の開口部を有する。第3の導電層は、第1の開口部内で第2の絶縁層を介して酸化物半導体層と重なる部分と、第2の開口部内に位置する部分と、を有する。
【0057】
本発明の一態様のトランジスタは、第1の導電層に第1の凹部が設けられている。これにより、第1の凹部を設けない場合に比べて、第1の開口部内における、第2の絶縁層の下面の高さ、及び、第3の導電層の下面の高さを、それぞれ低くすることができる。ここで、それぞれの面の高さは、例えば、トランジスタの被形成面を基準として決定できる。したがって、酸化物半導体層にゲート電界がかかりやすくなり、トランジスタの電気特性を良好にすることができる。
【0058】
また、第2の導電層と第3の導電層とが重なる領域には寄生容量が生じるため、当該寄生容量が大きいと、トランジスタの動作が遅くなり、回路の周波数特性が低下する場合がある。
【0059】
そこで、本発明の一態様のトランジスタは、第2の導電層と第3の導電層との間の寄生容量が低減された構成を有することが好ましい。これにより、トランジスタの高速動作を実現できる。また、良好な電気特性を有する半導体装置を提供できる。
【0060】
第3の導電層は、第1の開口部内で第2の絶縁層を介して酸化物半導体層と重なる部分と、第2の開口部内に位置する部分と、を有する。この場合、第3の絶縁層上にゲート配線が配置されることとなり、第2の導電層とゲート配線との間の物理的距離を大きくすることができる。したがって、第2の導電層とゲート配線との間の寄生容量を小さくすることができる。なお、第3の導電層の一部(第3の絶縁層上に位置する部分)がゲート配線として機能してもよく、第3の導電層とは別に第3の絶縁層上にゲート配線を設けてもよい。
【0061】
また、本発明の一態様のトランジスタは、断面視において、第2の開口部内における第3の導電層の幅の最大値が、第2の導電層における第1の開口部の幅の最小値以下であることが好ましい。このような構成とすることで、第2の導電層と第3の導電層との間の寄生容量を極めて小さくすることができる。
【0062】
なお、本明細書等では、単に、「断面視において」と記すが、具体的には、「同一方向からの断面視において」と言い換えられることがある。例えば、複数の構成の関係を説明する場合には、同一方向からの断面視における関係を説明する。このとき、当該複数の構成の関係は、1つの断面図を用いて説明することができる。
【0063】
なお、開口部の代わりに、溝(スリット)が設けられていてもよい。
【0064】
本発明の一態様のトランジスタは、ソース電極とドレイン電極とが、異なる高さに位置し、半導体層を流れる電流は、高さ方向に流れる。すなわち、チャネル長方向が高さ方向(縦方向)の成分を有するといえるため、本発明の一態様のトランジスタは、VFET(Vertical Field Effect Transistor)、縦型トランジスタ、縦型チャネルトランジスタ、縦チャネル型トランジスタなどとも呼ぶことができる。
【0065】
本発明の一態様のトランジスタは、ソース電極、半導体層、及びドレイン電極を、重ねて設けることができるため、半導体層を平面状に配置した、いわゆるプレーナ型のトランジスタと比較して、占有面積を大幅に縮小できる。
【0066】
<半導体装置の構成例1>
図1(A)乃至図1(D)及び図2を用いて、本発明の一態様の半導体装置の構成を説明する。
【0067】
[トランジスタ200A]
図1(A)は、トランジスタ200Aを有する半導体装置の平面図である。図1(B)及び図2は、それぞれ、図1(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図2は、図1(B)の拡大図の一例に相当し、各層の構成例をより詳細に示している。図1(C)は、図1(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。図1(D)は、図1(B)及び図1(C)に示す一点鎖線A5-A6間の断面図である。図1(D)は、絶縁層280を含むXY平面の断面図ということもできる。なお、図1(A)の平面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。以降の平面図においても、一部の要素を省略することがある。
【0068】
図1(A)乃至図1(D)及び図2に示す半導体装置は、基板(図示しない)上の絶縁層210と、絶縁層210上のトランジスタ200Aと、絶縁層210上の絶縁層280と、トランジスタ200A上の絶縁層283と、絶縁層283上の絶縁層285と、絶縁層285上の導電層265と、を有する。絶縁層210、絶縁層280、絶縁層283、及び絶縁層285は、層間膜として機能する。
【0069】
トランジスタ200Aは、導電層220aと、導電層220a上の導電層220bと、絶縁層280上の導電層240aと、導電層240a上の導電層240bと、酸化物半導体層230と、酸化物半導体層230上の絶縁層250と、絶縁層250上の導電層260と、を有する。
【0070】
なお、以下では、導電層220aと導電層220bをまとめて、導電層220と記す場合がある。また、導電層240aと導電層240bをまとめて、導電層240と記す場合がある。
【0071】
トランジスタ200Aにおいて、酸化物半導体層230は半導体層として機能し、導電層260はゲート電極として機能し、絶縁層250はゲート絶縁層として機能し、導電層220はソース電極及びドレイン電極の一方として機能し、導電層240はソース電極及びドレイン電極の他方として機能する。また、導電層265は、ゲート配線として機能する。
【0072】
酸化物半導体層230の、絶縁層280と接する領域の少なくとも一部は、トランジスタ200Aのチャネル形成領域として機能する。酸化物半導体層230の導電層220と接する領域、及び、酸化物半導体層230の導電層240と接する領域は、一方が、ソース領域として機能し、他方がドレイン領域として機能する。つまり、チャネル形成領域は、ソース領域とドレイン領域との間に挟まれている。
【0073】
図1(B)及び図1(C)に示すように、導電層220b、絶縁層280、導電層240a、及び導電層240bには、導電層220aに達する開口部290が設けられている。ここで、開口部290の底部は、導電層220aの上面を含み、開口部290の側壁は、導電層220bの側面、絶縁層280の側面、導電層240aの側面、及び導電層240bの側面を含む。開口部290は、導電層220bが有する開口部と、絶縁層280が有する開口部と、導電層240aが有する開口部と、導電層240bが有する開口部と、を含む。別言すると、絶縁層280が導電層220aと重なる領域に有する開口部は、開口部290の一部であり、導電層220bが導電層220aと重なる領域に有する開口部は、開口部290の別の一部であり、導電層240aが導電層220aと重なる領域に有する開口部は、開口部290の別の一部であり、導電層240bが導電層220aと重なる領域に有する開口部は、開口部290の別の一部である。なお、各層によって、開口部290の平面視における形状及び大きさが異なっていてもよい。また、開口部290の上面形状が円形であるとき、各層が有する開口部は同心円状であってもよく、同心円状でなくてもよい。
【0074】
トランジスタ200Aの構成要素の少なくとも一部は、開口部290内に配置される。具体的には、酸化物半導体層230、絶縁層250、及び導電層260のそれぞれは、少なくとも一部が開口部290内に位置するように配置される。酸化物半導体層230は、開口部290内で、導電層220aの上面、導電層220bの側面、絶縁層280の側面、導電層240aの上面及び側面、並びに、導電層240bの側面と接する。絶縁層250は、開口部290内で酸化物半導体層230の内側に位置し、導電層260は、開口部290内で絶縁層250の内側に位置する。
【0075】
また、酸化物半導体層230及び絶縁層250の、開口部290内に配置される部分は、開口部290の形状を反映して設けられる。具体的には、開口部290の底部及び側壁を覆うように酸化物半導体層230が設けられ、酸化物半導体層230を覆うように絶縁層250が設けられる。そして、開口部290の形状を反映した絶縁層250の凹部の少なくとも一部を埋め込むように導電層260が設けられる。
【0076】
トランジスタ200Aが有する導電層220は、導電層220aと、導電層220a上の導電層220bとを有し、導電層220bには開口部290が設けられている。別言すると、導電層220は凹部を有しており、当該凹部の底面が導電層220aの上面に相当し、当該凹部の側面が導電層220bの開口部290側の側面に相当する。
【0077】
導電層220bが開口部290を有することで、開口部290を有さない場合に比べて、導電層220bの絶縁層280と接する上面の高さよりも、開口部290内における絶縁層250の下面の高さ及び導電層260の下面の高さのそれぞれを低くすることができる。ここで、それぞれの面の高さは、トランジスタの被形成面を基準として決定できる。ここでは、絶縁層210の上面を基準に用いることができる。基準に用いる面は、トランジスタの被形成面に限られない。例えば、トランジスタまたは半導体装置が設けられる基板の上面を基準に用いてもよい。
【0078】
図2に示すように、絶縁層210の上面から導電層220bの絶縁層280と接する上面までの最短距離Tcは、絶縁層210の上面から絶縁層250の下面までの最短距離Taよりも長いことが好ましい。これにより、導電層220bの側面と酸化物半導体層230との接触面積を大きくすることができ、導電層220bと酸化物半導体層230とのコンタクト抵抗を低くすることができる。したがって、導電層220bと酸化物半導体層230とのコンタクト抵抗に起因するトランジスタ200Aのオン電流の低下を、抑制できる。なお、最短距離Taは、開口部290内における絶縁層250の下面に基づいて決定できる。
【0079】
また、図2に示すように、最短距離Tcは、絶縁層210の上面から導電層260の下面までの最短距離Tb以上であることがより好ましく、最短距離Tbよりも長いことがさらに好ましい。これにより、酸化物半導体層230のチャネル形成領域にゲート電界がかかりやすくなり、トランジスタ200Aの電気特性を良好にすることができる。さらに、酸化物半導体層230の導電層220bと接する領域にもゲート電界がかかりやすくなるため、トランジスタ200Aのオン電流を大きくすることができる。また、導電層220と導電層240のどちらをドレイン電極に用いても、トランジスタ200Aの電気特性を良好にすることができる。なお、最短距離Tbは、開口部290内における導電層260の下面に基づいて決定できる。
【0080】
また、導電層220bに、酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。これにより、酸化物半導体層230と導電層220bのコンタクト抵抗を低くすることができる。同様に、導電層240aに酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。これにより、酸化物半導体層230と導電層240aのコンタクト抵抗を低くすることができる。導電層220及び導電層240が積層構造である場合、当該積層構造のうち、チャネル形成領域に最も近い層に酸素を含む導電性材料を用い、酸化物半導体層230とのコンタクト抵抗を低くすることで、ソースとドレインの間の電流経路を短くできるため、トランジスタのオン電流を大きくすることができる。酸素を含む導電性材料としては、導電性を有する金属酸化物(酸化物導電体ともいう)を用いることが好ましい。
【0081】
また、酸化物半導体層230が、導電層240aの上面及び側面と接すると、導電層240aの側面のみと接する場合に比べて、導電層240aとの接触面積が大きくなり、酸化物半導体層230と導電層240aとのコンタクト抵抗をより低くすることができる。したがって、コンタクト抵抗に起因するトランジスタ200Aのオン電流の低下を抑制できる。
【0082】
図1(B)及び図1(C)に示すように、絶縁層283は、酸化物半導体層230の上面及び側面、並びに、導電層240a及び導電層240bのそれぞれの側面を覆う。絶縁層283には、開口部290と重なる位置に、酸化物半導体層230に達する開口部270が設けられている。トランジスタ200Aの構成要素の少なくとも一部は、開口部270内に配置される。具体的には、絶縁層250及び導電層260のそれぞれは、少なくとも一部が開口部270内に位置するように配置される。絶縁層250は、開口部270内で、酸化物半導体層230及び絶縁層283と接する。
【0083】
絶縁層250の、開口部270内に配置される部分は、開口部270の形状を反映して設けられる。具体的には、開口部270の側壁(絶縁層283の側面)を覆うように絶縁層250が設けられる。そして、開口部270の形状を反映した絶縁層250の凹部の少なくとも一部を埋め込むように導電層260が設けられる。
【0084】
トランジスタ200Aにおいて、導電層260は導電層240の上面と重なっていないため、導電層240と導電層260との間の寄生容量を小さくすることができる。図1(B)及び図1(C)に示すように、断面視において、導電層260の幅の最大値は、開口部290の幅Dよりも小さい。このように、導電層260の幅の最大値が、開口部290の幅Dよりも小さいと、導電層260と導電層240の間の寄生容量を小さくでき、好ましい。なお、例えば、図1(B)または図1(C)のように、本発明の一態様の半導体装置における2つの幅の大小関係は、Z方向に平行な1つの断面によって確認することができる。
【0085】
なお、開口部290の幅Dは、深さ方向で変化する場合がある。ここでは、特に、幅Dとして、断面視における、導電層240の開口部290側の2つの側面の間の最短距離を用いる。言い換えると、開口部290の幅Dとして、導電層240における開口部290の幅の最小値を用いる。図1(B)及び図1(C)では、開口部290の幅Dは、導電層240aにおける開口部290の幅の最小値となる。
【0086】
図1(B)及び図1(C)では、開口部270の幅が、開口部290の幅と一致している(幅Dと同じである)例を示している。開口部270の幅は、開口部290の幅Dと、酸化物半導体層230の厚さの2倍との和を超えないことが好ましい。また、開口部270の内部に絶縁層250を設ける場合、開口部270の幅は、開口部290の幅Dと、絶縁層250の厚さの2倍と、の和を超えないことが好ましい。また、開口部270の幅は、開口部290の幅と同じか、それよりも小さいことがより好ましい。これにより、導電層260が導電層240の上面と重ならず、導電層260と導電層240の間の寄生容量を小さくでき、好ましい。なお、本実施の形態では、導電層260が導電層240の上面と重ならない例を主に示すが、導電層260は、導電層240の上面と重なる部分を有していてもよい。当該重なる部分が小さいほど、導電層260と導電層240との間の寄生容量を小さくでき、好ましい。また、開口部270の幅は、開口部290の幅Dから酸化物半導体層230の厚さの2倍を引いた長さよりも大きいことが好ましい。これにより、開口部290の内部に絶縁層283及び絶縁層285が位置することを防止できる。
【0087】
なお、開口部270の幅は、深さ方向で変化する場合がある。ここでは特に、開口部270の幅として、断面視における、絶縁層283に設けられた開口部270の幅の最大値を用いる。
【0088】
導電層260の上面の高さと絶縁層285の上面の高さは揃っている、または概略揃っていることが好ましい。導電層265は、絶縁層285上、絶縁層283上、及び導電層260上に設けられており、導電層260の上面と接する。導電層260と導電層265とは互いに電気的に接続されている、ともいえる。導電層265と導電層240との間には、絶縁層283及び絶縁層285が位置する。これにより、導電層265と導電層240との物理的距離を大きくでき、導電層265と導電層240の間の寄生容量を小さくすることができる。
【0089】
つまり、トランジスタ200Aは、ソース電極及びドレイン電極の他方と、ゲート電極との間の寄生容量、並びに、ソース電極及びドレイン電極の他方と、ゲート配線との間の寄生容量が低減された構成を有する。したがって、回路の周波数特性を高めることができる。
【0090】
図1(B)では、開口部290の外側において、導電層240aの端部、導電層240bの端部、及び、酸化物半導体層230の端部が揃っている構成を示している。後述する作製方法例の通り、導電層240a、導電層240b、及び酸化物半導体層230は、同じマスクを用いて加工することで作製できる。したがって、半導体装置の作製に要するマスク数を削減でき好ましい。なお、本発明はこれに限られるものではない。例えば、X方向またはY方向において、酸化物半導体層230の端部、導電層240aの端部、及び、導電層240bの端部のいずれかが、他よりも内側、または外側に位置する構造であってもよい。
【0091】
導電層240は、導電層220と重なる領域に開口部290を有する。また、導電層240は、絶縁層280が有する開口部290の内部に設けないことが好ましい。つまり、導電層240は、開口部290内における絶縁層280の側面と接する領域を有さないことが好ましい。このような構成にすることで、導電層240及び絶縁層280に、一括で開口部290を形成することができる。また、開口部290内における導電層240の側面と開口部290内における絶縁層280の側面とが揃っていると、開口部290の内部に設ける酸化物半導体層230の膜厚分布を均一にすることができる。また、酸化物半導体層230が導電層240と絶縁層280の段差により分断されることを抑制できる。
【0092】
なお、図1(B)及び図1(C)では、開口部290内における導電層240aの側面と、開口部290内における絶縁層280の側面とが面一である(揃っている、概略揃っているともいえる)構成を示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、開口部290内における導電層240(導電層240a、240bの一方または双方)の側面と、開口部290内における絶縁層280の側面とが不連続になってもよい。また、開口部290内における導電層240の側面の傾きと、開口部290内における絶縁層280の側面の傾きとが互いに異なってもよい。このとき、例えば、開口部290内における導電層240の側面のテーパ角は、開口部290内における絶縁層280の側面のテーパ角よりも小さいことが好ましい。このような構成にすることで、開口部290内における導電層240の側面への、酸化物半導体層230の被覆性が向上し、鬆などの欠陥を低減できる。また、絶縁層280が積層構造である場合、開口部290内における各層の側面の傾きは異なっていてもよい。同様に、導電層240が積層構造である場合、開口部290内における各層の側面の傾きは異なっていてもよい。
【0093】
トランジスタ200Aは、チャネル形成領域を含む酸化物半導体層230に、半導体として機能する金属酸化物(酸化物半導体ともいう)を有する。つまり、トランジスタ200Aは、OSトランジスタといえる。
【0094】
OSトランジスタは、酸化物半導体中のチャネル形成領域に酸素欠損(V)及び不純物が存在すると、電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、酸素欠損近傍の水素が、酸素欠損に水素が入った欠陥(以下、VHと呼ぶ場合がある)を形成し、キャリアとなる電子を生成する場合がある。このため、酸化物半導体中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、OSトランジスタはノーマリーオンとなりやすい。したがって、酸化物半導体中のチャネル形成領域では、酸素欠損及び不純物はできる限り低減されていることが好ましい。言い換えると、酸化物半導体中のチャネル形成領域は、キャリア濃度が低減され、i型化(真性化)または実質的にi型化されていることが好ましい。
【0095】
一方、OSトランジスタのソース領域及びドレイン領域は、チャネル形成領域よりも、酸素欠損が多い、VHが多い、または水素、窒素、金属元素などの不純物濃度が高い、ことでキャリア濃度が増加し、低抵抗化した領域であることが好ましい。すなわち、OSトランジスタのソース領域及びドレイン領域は、チャネル形成領域と比較して、キャリア濃度が高く、低抵抗なn型の領域であることが好ましい。
【0096】
上述したように、酸化物半導体層230は、絶縁層280が有する開口部290の内部に設けられる。また、トランジスタ200Aは、ソース電極及びドレイン電極の一方(ここでは導電層220)が下方に位置し、ソース電極及びドレイン電極の他方(ここでは導電層240)が上方に位置することから、電流が上下方向に流れる構成を有する。つまり、絶縁層280が有する開口部290の側面に沿って、チャネルが形成される。
【0097】
酸化物半導体層230は、開口部290内で、導電層220aの上面と、導電層220bの側面と、導電層240aの上面及び側面と、導電層240bの側面と、に接する。酸化物半導体層230は、さらに、導電層240bの上面の一部とも接する。このように、酸化物半導体層230が導電層240aの側面及び導電層240bの側面だけでなく、導電層240aの上面及び導電層240bの上面にも接することで、酸化物半導体層230と導電層240とが接する面積を大きくすることができる。したがって、酸化物半導体層230と導電層240との間のコンタクト抵抗を低くすることができる。
【0098】
図1(D)に示すように、絶縁層280は酸化物半導体層230の外周全体に接する。よって、トランジスタ200Aのチャネル形成領域は、開口部290内における酸化物半導体層230の外周全体(絶縁層280と接する領域全体)に形成されうる。なお、図1(D)は、酸化物半導体層230のチャネル形成領域を含む、XY平面における断面図ともいえる。
【0099】
トランジスタ200Aのチャネル長は、ソース領域とドレイン領域の間の距離となる。つまり、トランジスタ200Aのチャネル長は、導電層220上の絶縁層280の厚さによって決定される、ということができる。図1(B)及び図1(C)では、トランジスタ200Aのチャネル長Lを破線の両矢印で示している。ここでは、チャネル長Lが、絶縁層280の開口部290側の側面の長さに相当する例を示す。
【0100】
プレーナ型のトランジスタでは、チャネル長がフォトリソグラフィの露光限界で設定されていたが、本発明の一態様においては、絶縁層280の膜厚でチャネル長を設定することができる。よって、トランジスタ200Aのチャネル長を、フォトリソグラフィの露光限界以下の非常に微細な構造(例えば、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、または10nm以下であって、0.1nm以上、1nm以上、または5nm以上)にすることができる。これにより、トランジスタ200Aのオン電流が大きくなり、周波数特性の向上を図ることができる。
【0101】
さらに、上記のように、開口部290内に、チャネル形成領域、ソース領域、及びドレイン領域を形成することができる。これにより、チャネル形成領域、ソース領域、及びドレイン領域が、XY平面上に別々に設けられる、プレーナ型のトランジスタと比較して、トランジスタ200Aは、占有面積を低減できる。したがって、半導体装置を高集積化することができる。また、本発明の一態様の半導体装置を記憶装置に用いる場合、単位面積当たりの記憶容量を大きくすることができる。
【0102】
また、図1(D)に示すように、酸化物半導体層230、絶縁層250、及び導電層260は、同心円状に設けられる。よって、中心に設けられた導電層260の側面は、絶縁層250を介して、酸化物半導体層230の側面と対向する。つまり、平面視において、酸化物半導体層230の周全体がチャネル形成領域になる。このとき、例えば、酸化物半導体層230の外周の長さによって、トランジスタ200Aのチャネル幅が決まる。つまり、トランジスタ200Aのチャネル幅は、開口部290の幅(平面視において開口部290が円形である場合は径)の大きさによって決定される、ということができる。図1(B)乃至図1(D)では、開口部290の幅Dを二点鎖線の両矢印で示している。図1(D)では、トランジスタ200Aのチャネル幅Wを一点鎖線の両矢印で示している。開口部290の幅Dの大きさを大きくすることで、単位面積当たりのチャネル幅を大きくし、オン電流を大きくすることができる。
【0103】
フォトリソグラフィ法を用いて開口部290を形成する場合、開口部290の幅Dはフォトリソグラフィの露光限界で設定される。また、開口部290の幅Dは、開口部290内に設ける、酸化物半導体層230、絶縁層250、及び導電層260それぞれの膜厚によって設定される。開口部290の幅Dは、例えば、5nm以上、10nm以上、または20nm以上であって、100nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、または30nm以下が好ましい。なお、平面視において開口部290が円形である場合、開口部290の幅Dは開口部290の直径に相当し、チャネル幅Wは“D×π”と算出することができる。
【0104】
また、トランジスタ200Aのチャネル長Lは、少なくともトランジスタ200Aのチャネル幅Wよりも小さいことが好ましい。トランジスタ200Aのチャネル長Lは、トランジスタ200Aのチャネル幅Wに対し、0.1倍以上0.99倍以下が好ましく、0.5倍以上0.8倍以下がより好ましい。このような構成にすることで、良好な電気特性及び高い信頼性を有するトランジスタを実現できる。
【0105】
また、平面視で円形になるように開口部290を形成することで、酸化物半導体層230、絶縁層250、及び導電層260は、同心円状に設けられる。これにより、導電層260と酸化物半導体層230の距離が概略均一になるため、酸化物半導体層230にゲート電界を概略均一に印加することができる。
【0106】
なお、本実施の形態では、平面視において開口部290及び開口部270が円形である例について示したが、本発明はこれに限られるものではない。平面視において、開口部290及び開口部270は、それぞれ、例えば、円形、楕円形などの略円形、三角形、四角形(長方形、菱形、正方形を含む)、五角形、星形多角形などの多角形、またはこれら多角形の角が丸い形状とすることができる。なお、多角形としては、凹多角形(少なくとも一つの内角が180度を超える多角形)及び凸多角形(全ての内角が180度以下である多角形)のどちらであってもよい。図1(A)等に示すように、平面視において、開口部290及び開口部270は、円形であることが好ましい。円形とすることにより、開口部を形成する際の加工精度を高めることができ、微細なサイズの開口部を形成することができる。なお、本明細書等において、円形とは真円に限定されない。
【0107】
<半導体装置の構成材料>
以下では、本実施の形態の半導体装置に用いることができる材料について説明する。なお、本実施の形態の半導体装置を構成する各層は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。図1(B)及び図1(C)では、導電層220a、酸化物半導体層230、及び導電層260が、それぞれ、単層構造である例を示す。また、図2では、導電層220a、酸化物半導体層230、及び導電層260が積層構造である例を示す。
【0108】
[酸化物半導体層230]
前述の通り、酸化物半導体層230は、チャネル形成領域を有する。当該チャネル形成領域は、i型(真性)または実質的にi型である。酸化物半導体層230は、さらに、ソース領域及びドレイン領域を有する。当該ソース領域及び当該ドレイン領域は、チャネル形成領域と比較してキャリア濃度が高い、n型の領域(低抵抗領域)である。
【0109】
酸化物半導体層230に用いる半導体材料の結晶性は特に限定されず、非晶質半導体、単結晶半導体、または単結晶以外の結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。単結晶半導体または結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0110】
半導体として機能する金属酸化物のバンドギャップは、2.0eV以上が好ましく、2.5eV以上がより好ましい。バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減できる。OSトランジスタは、オフ電流が小さいため、半導体装置の消費電力を十分に低減できる。また、OSトランジスタの周波数特性が高いため、半導体装置を高速に動作させることができる。
【0111】
酸化物半導体層230に用いることができる金属酸化物として、例えば、インジウム酸化物、ガリウム酸化物、及び亜鉛酸化物が挙げられる。金属酸化物は、少なくともインジウム(In)または亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、金属酸化物は、インジウムと、元素Mと、亜鉛と、の中から選ばれる二または三を有することが好ましい。なお、元素Mは、酸素との結合エネルギーが高い金属元素または半金属元素であり、例えば、酸素との結合エネルギーがインジウムよりも高い金属元素または半金属元素である。元素Mとして、具体的には、アルミニウム、ガリウム、スズ、イットリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、ランタン、セリウム、ネオジム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、及びアンチモンなどが挙げられる。金属酸化物が有する元素Mは、上記元素のいずれか一種または複数種であることが好ましく、アルミニウム、ガリウム、スズ、及びイットリウムから選ばれた一種または複数種であることがより好ましく、ガリウムがさらに好ましい。なお、本明細書等において、金属元素と半金属元素をまとめて「金属元素」と呼ぶことがあり、本明細書等に記載の「金属元素」には半金属元素が含まれることがある。
【0112】
酸化物半導体層230は、例えば、インジウム酸化物(In酸化物)、インジウム亜鉛酸化物(In-Zn酸化物、IZO(登録商標)とも記す)、インジウムスズ酸化物(In-Sn酸化物)、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムガリウム酸化物(In-Ga酸化物)、インジウムガリウムアルミニウム酸化物(In-Ga-Al酸化物)、インジウムガリウムスズ酸化物(In-Ga-Sn酸化物、IGTOとも記す)、ガリウム亜鉛酸化物(Ga-Zn酸化物、GZOとも記す)、アルミニウム亜鉛酸化物(Al-Zn酸化物、AZOとも記す)、インジウムアルミニウム亜鉛酸化物(In-Al-Zn酸化物、IAZOとも記す)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物、ITZO(登録商標)とも記す)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(In-Ga-Zn酸化物、IGZOとも記す)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物、IGZTOとも記す)、インジウムガリウムアルミニウム亜鉛酸化物(In-Ga-Al-Zn酸化物、IGAZO、IGZAO、またはIAGZOとも記す)などを用いることができる。または、シリコンを含むインジウムスズ酸化物、ガリウムスズ酸化物(Ga-Sn酸化物)、アルミニウムスズ酸化物(Al-Sn酸化物)などを用いることができる。
【0113】
金属酸化物に含まれる全ての金属元素の原子数の和に対するインジウムの原子数の割合を高くすることにより、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる。また、オン電流の大きいトランジスタを実現できる。
【0114】
なお、金属酸化物は、インジウムに代えて、または、インジウムに加えて、元素周期表における周期番号が大きい金属元素の一種または複数種を有してもよい。金属元素の軌道の重なりが大きいほど、金属酸化物におけるキャリア伝導は大きくなる傾向がある。よって、周期番号が大きい金属元素を含むことで、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる場合がある。周期番号が大きい金属元素として、第5周期に属する金属元素、及び第6周期に属する金属元素などが挙げられる。当該金属元素として、具体的には、イットリウム、ジルコニウム、銀、カドミウム、スズ、アンチモン、バリウム、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、及びユウロピウムなどが挙げられる。なお、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、及びユウロピウムは、軽希土類元素と呼ばれる。
【0115】
また、金属酸化物は、非金属元素の一種または複数種を有してもよい。金属酸化物が非金属元素を有することで、キャリア濃度の増加、またはバンドギャップの縮小などが生じ、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる場合がある。非金属元素として、例えば、炭素、窒素、リン、硫黄、セレン、臭素、及び水素などが挙げられる。
【0116】
また、金属酸化物に含まれる全ての金属元素の原子数の和に対する亜鉛の原子数の割合を高くすることにより、結晶性の高い金属酸化物となり、金属酸化物中の不純物の拡散を抑制できる。したがって、トランジスタの電気特性の変動が抑制され、信頼性を高めることができる。
【0117】
また、金属酸化物に含まれる全ての金属元素の原子数の和に対する元素Mの原子数の割合を高くすることにより、バンドギャップが大きい金属酸化物とすることができる。また、金属酸化物に酸素欠損が形成されることを抑制できる。したがって、酸素欠損に起因するキャリア生成が抑制され、オフ電流の小さいトランジスタとすることができる。また、トランジスタのしきい値電圧がシフトすることを抑制できる。また、トランジスタの電気特性の変動が抑制され、信頼性を高めることができる。
【0118】
酸化物半導体層230に適用する金属酸化物の組成により、トランジスタの電気特性、及び信頼性が異なる。したがって、トランジスタに求められる電気特性、及び信頼性に応じて金属酸化物の組成を異ならせることにより、優れた電気特性と高い信頼性を両立した半導体装置とすることができる。
【0119】
金属酸化物がIn-M-Zn酸化物の場合、当該In-M-Zn酸化物におけるInの原子数比は元素Mの原子数比以上であることが好ましい。このようなIn-M-Zn酸化物の金属元素の原子数比として、例えば、In:M:Zn=1:1:0.5、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=1:1:2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:1、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5、及び、これらの近傍の組成が挙げられる。なお、近傍の組成とは、所望の原子数比の±30%の範囲を含む。金属酸化物中のインジウムの原子数比を大きくすることで、トランジスタのオン電流、または電界効果移動度などを高めることができる。
【0120】
また、In-M-Zn酸化物におけるInの原子数比は元素Mの原子数比未満であってもよい。このようなIn-M-Zn酸化物の金属元素の原子数比として、例えば、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:3、In:M:Zn=1:3:4、及びこれらの近傍の組成が挙げられる。金属酸化物中のMの原子数の割合を大きくすることで、酸素欠損の生成を抑制することができる。
【0121】
なお、元素Mとして複数の金属元素を有する場合は、当該金属元素の原子数の割合の合計を、元素Mの原子数の割合とすることができる。
【0122】
本明細書等において、含有される全ての金属元素の原子数の和に対するインジウムの原子数の割合を、インジウムの含有率と記す場合がある。他の金属元素においても同様である。
【0123】
また、金属酸化物がIn-Zn酸化物の場合、当該In-Zn酸化物の金属元素の原子数比として、例えば、In:Zn=1:1、In:Zn=2:1、In:Zn=4:1、及びこれらの近傍の組成が挙げられる。また、In-Zn酸化物に、微量の元素Mを含んでいてもよい。例えば、元素MとしてSnを含む場合、当該金属酸化物の金属元素の原子数比として、例えば、In:Sn:Zn=2:0.1:1、In:Sn:Zn=4:0.1:1、及びこれらの近傍の組成が挙げられる。
【0124】
酸化物半導体層230に用いる金属酸化物の組成の分析には、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray Spectrometry)、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectrometry)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS:Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)、または誘導結合高周波プラズマ発光分光法(ICP-AES:Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いることができる。または、これらの手法を複数組み合わせて分析を行ってもよい。なお、含有率が低い元素は、分析精度の影響により、実際の含有率と分析によって得られる含有率が異なる場合がある。例えば、元素Mの含有率が低い場合、分析によって得られる元素Mの含有率が、実際の含有率より低くなる場合がある。また、元素Mの定量が困難となる場合、元素Mが検出下限未満となる場合、または元素Mが検出されない場合がある。
【0125】
金属酸化物の形成には、スパッタリング法、または原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法を好適に用いることができる。なお、金属酸化物をスパッタリング法で形成する場合、成膜後の金属酸化物の組成はターゲットの組成と異なる場合がある。特に亜鉛は、成膜後の金属酸化物における含有率が、ターゲットと比較して50%程度にまで減少する場合がある。また、金属酸化物の成膜には、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE)法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法などを用いてもよい。
【0126】
酸化物半導体層230は、2以上の金属酸化物層を有する積層構造としてもよい。酸化物半導体層230が有する2以上の金属酸化物層は、組成が互いに同じ、または概略同じであってもよい。組成が同じ金属酸化物層の積層構造とすることで、例えば、同じスパッタリングターゲットを用いて形成できるため、製造コストを削減できる。
【0127】
酸化物半導体層230が有する2以上の金属酸化物層は、組成が互いに異なってもよい。
【0128】
図2では、酸化物半導体層230が、酸化物層230aと、酸化物層230a上の酸化物層230bと、の2層構造である例を示す。
【0129】
例えば、酸化物層230aには、酸化物層230bより導電率の高い材料を用いることが好ましい。ソース電極及びドレイン電極(導電層220及び導電層240)と接する酸化物層230aに導電率の高い材料を用いることにより、酸化物半導体層230と導電層220とのコンタクト抵抗、及び酸化物半導体層230と導電層240とのコンタクト抵抗を低くすることができ、オン電流が大きいトランジスタとすることができる。
【0130】
ここで、ゲート電極として機能する導電層260側に設けられる酸化物層230bに導電率の高い材料を用いると、トランジスタ200Aのしきい値電圧がシフトし、ゲート電圧が0V時に流れるドレイン電流(以下、カットオフ電流とも記す)が大きくなってしまう場合がある。具体的には、トランジスタ200Aがnチャネル型のトランジスタである場合に、しきい値電圧が低くなってしまうことがある。したがって、酸化物層230bには、酸化物層230aよりも導電率の低い材料を用いることが好ましい。これにより、トランジスタ200Aがnチャネル型のトランジスタである場合は、しきい値電圧を高くすることができ、カットオフ電流が小さいトランジスタとすることができる。なお、カットオフ電流が小さいことをノーマリーオフと記す場合がある。
【0131】
以上のように、酸化物半導体層230を積層構造とし、酸化物層230aには、酸化物層230bよりも導電率の高い材料を用いることにより、ノーマリーオフ、かつオン電流が大きいトランジスタとすることができる。したがって、低い消費電力と高い性能が両立した半導体装置とすることができる。
【0132】
また、酸化物層230aのキャリア濃度は、酸化物層230bのキャリア濃度より高いことが好ましい。酸化物層230aのキャリア濃度を高くすることにより導電率が高くなり、酸化物半導体層230と導電層220とのコンタクト抵抗、及び酸化物半導体層230と導電層240とのコンタクト抵抗を低くすることができ、オン電流が大きいトランジスタとすることができる。また、酸化物層230bのキャリア濃度を低くすることにより導電率が低くなり、ノーマリーオフのトランジスタとすることができる。
【0133】
なお、酸化物半導体層230は、前述の構成に限られず、酸化物層230aには、酸化物層230bより導電率の低い材料を用いてもよい。また、酸化物層230aのキャリア濃度は、酸化物層230bのキャリア濃度より低くてもよい。
【0134】
また、酸化物層230aに用いる第1の金属酸化物のバンドギャップは、酸化物層230bに用いる第2の金属酸化物のバンドギャップと異なることが好ましい。例えば、第1の金属酸化物のバンドギャップと第2の金属酸化物のバンドギャップの差は、0.1eV以上が好ましく、0.2eV以上がより好ましく、0.3eV以上がさらに好ましい。
【0135】
酸化物層230aに用いる第1の金属酸化物のバンドギャップは、酸化物層230bに用いる第2の金属酸化物のバンドギャップより小さいことが好ましい。これにより、酸化物半導体層230と導電層220とのコンタクト抵抗、及び酸化物半導体層230と導電層240とのコンタクト抵抗を低くすることができ、オン電流が大きいトランジスタとすることができる。また、トランジスタ200Aがnチャネル型のトランジスタである場合はしきい値電圧を高くすることができ、ノーマリーオフのトランジスタとすることができる。また、第2の金属酸化物のバンドギャップが大きいことで、酸化物層230b中、及び、酸化物層230bと絶縁層250との界面に、キャリアが生成及び誘起されることを抑制できる。これにより、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0136】
例えば、第1の金属酸化物の元素Mの含有率は、第2の金属酸化物の元素Mの含有率より低いことが好ましい。より具体的には、例えば、酸化物層230aとして、In:M:Zn=1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物を用い、酸化物層230bとして、In:M:Zn=1:3:2[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物を用いることが好ましい。このとき、元素Mとして、ガリウム、アルミニウム、及びスズの一または複数を用いることが特に好ましい。
【0137】
なお、酸化物半導体層230は、前述の構成に限られず、第1の金属酸化物のバンドギャップが、第2の金属酸化物のバンドギャップより大きくてもよい。
【0138】
また、第1の金属酸化物の元素Mの含有率は、第2の金属酸化物の元素Mの含有率より低いことが好ましい。第1の金属酸化物は、元素Mを微量に含む構成、または元素Mを含まない構成としてもよい。例えば、酸化物層230aに用いる第1の金属酸化物をIn-Zn酸化物とし、酸化物層230bに用いる第2の金属酸化物をIn-M-Zn酸化物とすることが好ましい。具体的には、第1の金属酸化物をIn-Zn酸化物とし、第2の金属酸化物をIn-Ga-Zn酸化物とすることができる。
【0139】
例えば、酸化物層230aとして、In:Zn=1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Zn=2:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Sn:Zn=2:0.1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Zn=4:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Sn:Zn=4:0.1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、またはインジウム酸化物を用いることが好ましい。また、酸化物層230bとして、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、またはIn:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物を用いることが好ましい。これにより、トランジスタ200Aのオン電流を大きくし、かつ、ばらつきが少なく信頼性の高いトランジスタ構造とすることができる。
【0140】
例えば、導電層220または導電層240(積層構造の場合は、酸化物半導体層230のチャネル形成領域に最も近い層)に金属酸化物を用いる場合、酸化物半導体層230(または酸化物層230a)に、In-Zn酸化物、またはIn-Sn-Zn酸化物を用いると、酸化物半導体層230(または酸化物層230a)にIn-Ga-Zn酸化物を用いる場合に比べて、コンタクト抵抗を低減できるため、好ましい。具体的には、図2における導電層220bと導電層240aに、インジウムスズ酸化物(ITOともいう)またはシリコンを添加したインジウムスズ酸化物(ITSOともいう)を用い、酸化物層230aにIn-Zn酸化物、またはIn-Sn-Zn酸化物を用い、酸化物層230bにIn-Ga-Zn酸化物を用いることが好ましい。
【0141】
なお、酸化物半導体層230は、前述の構成に限られず、第1の金属酸化物の元素Mの含有率は、第2の金属酸化物の元素Mの含有率より高くてもよい。
【0142】
酸化物半導体層230は、結晶性を有する金属酸化物層を有することが好ましい。結晶性を有する金属酸化物の構造としては、例えば、CAAC(c-axis aligned crystal)構造、多結晶構造、及び、微結晶(nc:nano-crystal)構造が挙げられる。結晶性を有する金属酸化物層を酸化物半導体層230に用いることにより、酸化物半導体層230中の欠陥準位密度を低減でき、信頼性の高い半導体装置を実現できる。
【0143】
なお、CAAC構造とは、複数のナノ結晶(代表的には、複数のIGZOのナノ結晶)がc軸配向を有し、かつa-b面においては、上記複数のナノ結晶が配向せずに連結した結晶構造である。
【0144】
酸化物半導体層230に用いる金属酸化物層の結晶性が高いほど、酸化物半導体層230中の欠陥準位密度を低減できる。一方、結晶性の低い金属酸化物層を用いることで、大きな電流を流すことができるトランジスタを実現することができる。
【0145】
金属酸化物層の形成時の基板温度(ステージ温度)が高いほど、結晶性の高い金属酸化物層を形成することができる。また、形成時に用いる成膜ガス全体に対する酸素ガスの流量の割合(以下、酸素流量比ともいう)が高いほど、結晶性の高い金属酸化物層を形成することができる。
【0146】
酸化物半導体層230の結晶性は、例えば、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)、または電子線回折(ED:Electron Diffraction)により解析できる。または、これらの手法を複数組み合わせて分析を行ってもよい。
【0147】
酸化物半導体層230は、結晶性が異なる2以上の金属酸化物層の積層構造としてもよい。例えば、第1の金属酸化物層と、当該第1の金属酸化物層上に設けられる第2の金属酸化物層と、の積層構造とし、第2の金属酸化物層は、第1の金属酸化物層より結晶性が高い領域を有する構成とすることができる。または、第2の金属酸化物層は、第1の金属酸化物層より結晶性が低い領域を有する構成とすることができる。このとき、第1の金属酸化物層と第2の金属酸化物層は、互いに異なる組成であってもよく、同じまたは概略同じ組成であってもよい。
【0148】
例えば、酸化物層230aとして、In:M:Zn=1:3:2[原子数比]またはその近傍の組成である金属酸化物、またはIn:M:Zn=1:3:4[原子数比]またはその近傍の組成である金属酸化物を用い、酸化物層230bとして、In:M:Zn=1:1:1[原子数比]またはその近傍の組成である金属酸化物を用いることが好ましい。酸化物層230aに、Inに対するZnの割合が大きい金属酸化物を用いると、酸化物層230aの結晶性を高めることができる。さらに、結晶性の高い酸化物層230a上に酸化物層230bを形成することで、酸化物層230bの結晶性を高めることも容易となる。これにより、酸化物半導体層230全体の結晶性を高めることができ、好ましい。このとき、元素Mとして、ガリウム、アルミニウム、またはスズを用いることが特に好ましい。例えば、互いに異なる組成を有する、IGZOを2層積層してもよい。また、例えば、インジウム酸化物、インジウムガリウム酸化物、及びIGZOの中から選ばれるいずれか一と、IAZO、IAGZO、及びITZO(登録商標)の中から選ばれるいずれか一と、の積層構造を用いてもよい。
【0149】
また、酸化物半導体層230は、3層以上の積層構造であってもよい。酸化物半導体層230は、例えば、酸化物層と、当該酸化物層上の酸化物層230aと、酸化物層230a上の酸化物層230bと、を有する3層構造とすることができる。
【0150】
酸化物層230a及び酸化物層230bには、前述の構成を適用できる。酸化物層230aの下に位置する酸化物層には、酸化物層230bに適用可能な構成と同様の構成を用いることができる。以下では、酸化物層230aを挟む一対の酸化物層としてまとめて説明する。
【0151】
例えば、酸化物層230aとして、In:Zn=1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Zn=2:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Sn:Zn=2:0.1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Zn=4:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Sn:Zn=4:0.1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、またはインジウム酸化物を用いることが好ましい。また、酸化物層230aを挟む一対の酸化物層には、それぞれ、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、またはIn:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物を用いることが好ましい。
【0152】
酸化物層230aを挟む一対の酸化物層は、それぞれ、酸化物層230aよりもバンドギャップが大きいことが好ましい。これにより、酸化物層230aが、バンドギャップが大きい当該一対の酸化物層に挟持され、酸化物層230aが主に電流経路(チャネル)として機能することとなる。酸化物層230aが当該一対の酸化物層により挟持されることで、酸化物層230aの界面及びその近傍のトラップ準位を少なくすることができる。これにより、チャネルが絶縁層界面から遠ざけられた埋め込みチャネル型のトランジスタを実現でき、電界効果移動度を高くすることができる。また、バックチャネル側に形成されうる界面準位の影響が低減され、トランジスタの光劣化(例えば、光負バイアス劣化)を抑制でき、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0153】
酸化物半導体層230の厚さは、3nm以上200nm以下が好ましく、3nm以上100nm以下が好ましく、さらには5nm以上100nm以下が好ましく、さらには10nm以上100nm以下が好ましく、さらには10nm以上70nm以下が好ましく、さらには15nm以上70nm以下が好ましく、さらには15nm以上50nm以下が好ましく、さらには20nm以上50nm以下が好ましい。また、より微細な半導体装置に用いるトランジスタにおいては、酸化物半導体層230の膜厚は、1nm以上、3nm以上、または5nm以上であって、20nm以下、15nm以下、12nm以下、または10nm以下であることが好ましい。
【0154】
また、酸化物半導体層の成膜時において、スパッタリング法と、ALD法と、の2種の成膜方法を用いることが好ましい。例えば、スパッタリング法を用いて、CAAC構造の第1の酸化物半導体を形成したのち、ALD法を用いて第2の酸化物半導体を形成すると、第2の酸化物半導体の原子層が、第1の酸化物半導体のCAAC構造が有する原子レベルの結晶部の隙間、または当該CAAC構造が有するナノ結晶の隙間を、埋める、または修復することが期待される。また、ALD法を用いて第2の酸化物半導体を形成したのち、加熱処理(例えば、100℃以上500℃以下、好ましくは200℃以上450℃以下、さらに好ましくは、300℃以上400℃以下)を行うことができる。当該加熱処理により、第1の酸化物半導体のCAAC構造が有する原子レベルの結晶部の隙間を、第2の酸化物半導体(別言すると、ALD法を用いて形成した各結晶分子)により修復することが期待される。
【0155】
なお、スパッタリング法と、ALD法と、の双方を用いて酸化物半導体層を形成する場合、ALD法にて形成する酸化物半導体層の膜厚が薄いと、スパッタリング法を用いて形成した酸化物半導体層と、ALD法を用いて形成した酸化物半導体層と、の積層構造ではなく、単層構造の酸化物半導体層とみなすことができる。例えば、ALD法にて形成する酸化物半導体層の厚さが、0nmを超えて3nm以下、好ましくは0nmを超えて2nm以下、さらに好ましくは0nmを超えて1nm以下であるとき、スパッタリング法と、ALD法と、の2種の成膜方法を用いて形成した酸化物半導体層を、単層構造とみなすことができる。一方で、ALD法にて形成する酸化物半導体層の厚さが3nmを超える場合、スパッタリング法を用いて形成した酸化物半導体層と、ALD法を用いて形成した酸化物半導体層との、積層構造、多層構造、または多重構造とみなせることがある。
【0156】
上述の2種の成膜方法を用いて形成された酸化物半導体は、CAAC構造が有する結晶部の隙間がALD法により形成された原子層で埋められた構造として捉えることができる。なお、当該構造は、断面SEM(Scanning Electron Microscope)、断面STEM(Scanning Transmission Electron Microscope)、断面TEM(Transmission Electron Microscope)、EDXなどの分析手法により解析することができる。
【0157】
また、上述の2種の成膜方法を用いて形成されたCAAC構造を有する酸化物半導体層は、1種の成膜方法を用いて形成されたCAAC構造の酸化物半導体層と比較して、膜の比誘電率、膜密度、及び膜の硬度のいずれか一または複数が高くなる場合がある。このように、2種の成膜方法を用いて形成されたCAAC構造を有する酸化物半導体層を、トランジスタのチャネル形成領域に用いることで、優れた特性を有するトランジスタ(例えば、オン電流が大きいトランジスタ、電界効果移動度が高いトランジスタ、S値が小さいトランジスタ、周波数特性(f特とも呼称する)が高いトランジスタ、信頼性の高いトランジスタなど)を実現することができる。
【0158】
ここで、酸化物半導体層における、CAAC構造が有する結晶部の隙間がALD法により形成された原子層で埋められた構造について、模式図を用いて説明する。図3(A)及び図3(B)は、本発明の一態様に係る金属酸化物の断面模式図である。
【0159】
図3(A)及び図3(B)は、層状の結晶構造の金属酸化物が、In-M-Zn酸化物である場合の、結晶中の原子配列の模式図である。なお、図3(B)では、原子を球(丸)で表し、金属原子と酸素原子の結合を線で表している。図3(B)において、In-M-Zn酸化物の結晶構造におけるc軸方向(c-axis)は、図中の矢印で表す。また、In-M-Zn酸化物の結晶構造におけるa-b面方向は、図3(B)中の矢印で表すc軸方向と垂直の方向である。
【0160】
図3(A)は、In-M-Zn酸化物を有する金属酸化物370を示す図である。図3(B)は、図3(A)における金属酸化物370の一部である領域372a、及び領域372bにおける、結晶中の原子配列を示す拡大図である。なお、領域372a、及び領域372bを、それぞれ結晶部として呼称してもよい。ここで、図3(A)及び図3(B)に示す金属酸化物370の、組成はIn:M:Zn=1:1:1[原子数比]であり、結晶構造はYbFe型構造とする。また、元素Mは、+3価の金属元素とする。
【0161】
図3(B)に示すように、金属酸化物370が有する結晶は、インジウム(In)と酸素とを有する層374、元素Mと酸素とを有する層378、亜鉛(Zn)と酸素とを有する層376が順に、繰り返し積層されている。層374、層378、及び層376は、被成膜面に概略平行に配置されている。すなわち、金属酸化物370のa-b面は、被成膜面に対して概略平行であり、金属酸化物370のc軸は、被成膜面の法線方向と概略平行である。
【0162】
図3(B)に示すように、上記結晶が有する、層374、層378、層376のそれぞれが、一の金属元素と、酸素とで構成されることで、良好な結晶性で配列され、当該金属酸化物の移動度を高くすることができる。
【0163】
なお、In:M:Zn=1:1:1[原子数比]のIn-M-Zn酸化物は、図3(B)に示す構造に限られるものではない。層374、層378、層376の積層順が変更されてもよい。例えば、層374、層376、層378の順に、繰り返し積層されてもよい。または、層374、層378、層376、層374、層376、層378の順に、繰り返し積層されてもよい。また、層378の元素Mの一部が亜鉛に置換され、層376の亜鉛の一部が元素Mに置換されてもよい。
【0164】
また、図3(B)に示すように、領域372aと、領域372bとの間に、領域380を有する。領域380は、上述のCAAC構造が有する結晶部の隙間の領域に相当する。図3(B)に示すように、領域372aと、領域372bとの間にALDにて成膜する原子が埋め込まれた構造とすることで、膜の密度を向上させることができる。
【0165】
酸化物半導体に含まれる水素が金属原子と結合する酸素と反応して水になり、酸化物半導体中に酸素欠損(V)が形成される場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥(以下、VHと記す)はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン(つまり、しきい値電圧がマイナスの値)となりやすい。また、酸化物半導体中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、酸化物半導体に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。
【0166】
酸化物半導体層230中のVHをできる限り低減し、酸化物半導体層230を高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VHが十分低減された酸化物半導体を得るには、酸化物半導体中の水、水素などの不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を修復することが重要である。VHなどの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。なお、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を修復することを、加酸素化処理と記す場合がある。
【0167】
チャネル形成領域として機能する領域の酸化物半導体のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域として機能する領域の酸化物半導体のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0168】
ここで、金属酸化物(酸化物半導体)中における各不純物の影響について説明する。
【0169】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンまたは炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体のチャネル形成領域における炭素の濃度は、1×1020atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以下、より好ましくは3×1019atoms/cm以下、より好ましくは1×1019atoms/cm以下、より好ましくは3×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1018atoms/cm以下とする。また、SIMSにより得られる酸化物半導体のチャネル形成領域におけるシリコンの濃度は、1×1020atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以下、より好ましくは3×1019atoms/cm以下、より好ましくは1×1019atoms/cm以下、より好ましくは3×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1018atoms/cm以下とする。
【0170】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア濃度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオンとなりやすい。または、酸化物半導体において、窒素が含まれると、トラップ準位が形成される場合がある。この結果、トランジスタの電気特性が不安定となる場合がある。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体のチャネル形成領域における窒素濃度は、1×1020atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以下、より好ましくは1×1019atoms/cm以下、より好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
【0171】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオンとなりやすい。このため、酸化物半導体のチャネル形成領域における水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体のチャネル形成領域における水素濃度は、1×1020atoms/cm未満、好ましくは5×1019atoms/cm未満、より好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。
【0172】
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオンとなりやすい。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体のチャネル形成領域中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0173】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0174】
なお、本実施の形態の半導体装置には、チャネル形成領域に他の半導体材料を用いたトランジスタを適用してもよい。当該他の半導体材料としては、例えば、単体元素よりなる半導体、または化合物半導体が挙げられる。単体元素よりなる半導体として、例えば、シリコン、及びゲルマニウムが挙げられる。化合物半導体として、例えば、ヒ化ガリウム、及びシリコンゲルマニウムが挙げられる。その他、化合物半導体として、例えば、有機半導体、及び、窒化物半導体が挙げられる。なお、前述の酸化物半導体も、化合物半導体の一種である。なお、これらの半導体材料に、ドーパントとして不純物が含まれてもよい。
【0175】
トランジスタの半導体材料に用いることができるシリコンとして、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、及び非晶質シリコンが挙げられる。多結晶シリコンとして、例えば、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly Silicon)が挙げられる。
【0176】
トランジスタの半導体層は、半導体として機能する層状物質を有してもよい。層状物質とは、層状の結晶構造を有する材料群の総称である。層状の結晶構造は、共有結合またはイオン結合によって形成される層が、ファンデルワールス結合のような、共有結合またはイオン結合よりも弱い結合を介して積層している構造である。層状物質は、単位層内における電気伝導性が高く、つまり、2次元電気伝導性が高い。半導体として機能し、かつ、2次元電気伝導性の高い材料をチャネル形成領域に用いることで、オン電流の大きいトランジスタを提供することができる。
【0177】
上記層状物質として、例えば、グラフェン、シリセン、カルコゲン化物などが挙げられる。カルコゲン化物は、カルコゲン(第16族に属する元素)を含む化合物である。また、カルコゲン化物として、遷移金属カルコゲナイド、13族カルコゲナイドなどが挙げられる。トランジスタの半導体層として適用可能な遷移金属カルコゲナイドとして、具体的には、硫化モリブデン(代表的にはMoS)、セレン化モリブデン(代表的にはMoSe)、モリブデンテルル(代表的にはMoTe)、硫化タングステン(代表的にはWS)、セレン化タングステン(代表的にはWSe)、タングステンテルル(代表的にはWTe)、硫化ハフニウム(代表的にはHfS)、セレン化ハフニウム(代表的にはHfSe)、硫化ジルコニウム(代表的にはZrS)、セレン化ジルコニウム(代表的にはZrSe)などが挙げられる。
【0178】
[絶縁層]
半導体装置が有する絶縁層(絶縁層210、絶縁層250、絶縁層280、絶縁層283、絶縁層285など)には、それぞれ、無機絶縁膜を用いることが好ましい。無機絶縁膜としては、例えば、酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、酸化窒化絶縁膜、及び窒化酸化絶縁膜が挙げられる。酸化絶縁膜としては、例えば、酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化マグネシウム膜、酸化ガリウム膜、酸化ゲルマニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ランタン膜、酸化ネオジム膜、酸化ハフニウム膜、酸化タンタル膜、酸化セリウム膜、ガリウム亜鉛酸化物膜、及び、ハフニウムアルミネート膜が挙げられる。窒化絶縁膜としては、例えば、窒化シリコン膜、及び窒化アルミニウム膜が挙げられる。酸化窒化絶縁膜としては、例えば、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化窒化ガリウム膜、酸化窒化イットリウム膜、及び、酸化窒化ハフニウム膜が挙げられる。窒化酸化絶縁膜としては、例えば、窒化酸化シリコン膜、及び窒化酸化アルミニウム膜が挙げられる。また、半導体装置が有する絶縁層には、有機絶縁膜を用いてもよい。
【0179】
例えば、トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁層の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁層に、high-k材料を用いることで物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時の低電圧化が可能となる。また、ゲート絶縁層の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。一方、層間膜として機能する絶縁層には、比誘電率が低い材料を用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。したがって、絶縁層の機能に応じて、材料を選択することが好ましい。なお、比誘電率が低い材料は、絶縁耐力が大きい材料でもある。
【0180】
比誘電率が高い(high-k)材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、ハフニウムジルコニウム酸化物、アルミニウム及びハフニウムを有する酸化物、アルミニウム及びハフニウムを有する酸化窒化物、シリコン及びハフニウムを有する酸化物、シリコン及びハフニウムを有する酸化窒化物、並びに、シリコン及びハフニウムを有する窒化物などが挙げられる。
【0181】
比誘電率が低い材料としては、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、及び窒化酸化シリコンなどの無機絶縁材料、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、及びアクリル樹脂などの樹脂が挙げられる。また、比誘電率が低い他の無機絶縁材料として、例えば、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、並びに、炭素及び窒素を添加した酸化シリコンなどが挙げられる。また、例えば、空孔を有する酸化シリコンが挙げられる。なお、これらの酸化シリコンは、窒素を含むことができる。
【0182】
また、半導体装置が有する絶縁層に、強誘電性を有しうる材料を用いてもよい。強誘電性を有しうる材料としては、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、HfZrO(Xは0よりも大きい実数とする)などの金属酸化物が挙げられる。また、強誘電性を有しうる材料としては、酸化ハフニウムに元素J1(ここでの元素J1は、ジルコニウム、シリコン、アルミニウム、ガドリニウム、イットリウム、ランタン、ストロンチウムなどから選ばれた一つまたは複数)を添加した材料が挙げられる。ここで、ハフニウムの原子数と元素J1の原子数の比は適宜設定することができ、例えば、ハフニウムの原子数と元素J1の原子数の比を1:1またはその近傍にすることができる。また、強誘電性を有しうる材料としては、酸化ジルコニウムに元素J2(ここでの元素J2は、ハフニウム、シリコン、アルミニウム、ガドリニウム、イットリウム、ランタン、ストロンチウムなどから選ばれた一つまたは複数)を添加した材料、などが挙げられる。また、ジルコニウムの原子数と元素J2の原子数の比は適宜設定することができ、例えば、ジルコニウムの原子数と元素J2の原子数の比を1:1またはその近傍にすることができる。また、強誘電性を有しうる材料として、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、タンタル酸ビスマス酸ストロンチウム(SBT)、ビスマスフェライト(BFO)、チタン酸バリウム、などのペロブスカイト構造を有する圧電性セラミックスを用いてもよい。
【0183】
また、強誘電性を有しうる材料としては、元素M1と、元素M2と、窒素と、を有する金属窒化物が挙げられる。ここで、元素M1は、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどから選ばれた一つまたは複数である。また、元素M2は、ホウ素、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジム、ユーロピウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロムなどから選ばれた一つまたは複数である。なお、元素M1の原子数と元素M2の原子数の比は適宜設定することができる。また、元素M1と、窒素と、を有する金属酸化物は、元素M2を含まなくても、強誘電性を有する場合がある。また、強誘電性を有しうる材料としては、上記金属窒化物に元素M3が添加された材料が挙げられる。なお、元素M3は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウムなどから選ばれた一つまたは複数である。ここで、元素M1の原子数、元素M2の原子数、及び元素M3の原子数の比は適宜設定することができる。
【0184】
また、強誘電性を有しうる材料としては、SrTaON、BaTaONなどのペロブスカイト型酸窒化物、κアルミナ型構造のGaFeOなどが挙げられる。
【0185】
なお、上記の説明においては、金属酸化物、及び金属窒化物について例示したがこれに限定されない。例えば、上述の金属酸化物に窒素が添加された金属酸化窒化物、または上述の金属窒化物に酸素が添加された金属窒化酸化物などを用いてもよい。
【0186】
また、強誘電性を有しうる材料としては、例えば、上記に列挙した材料から選ばれた複数の材料からなる混合物または化合物を用いることができる。または、絶縁層を、上記に列挙した材料から選ばれた複数の材料からなる積層構造とすることができる。ところで、上記に列挙した材料などは、成膜条件だけでなく、各種プロセスなどによっても結晶構造(特性)が変わり得る可能性があるため、本明細書等では強誘電性を発現する材料のみを強誘電体と呼ぶだけでなく、強誘電性を有しうる材料とも呼んでいる。
【0187】
ハフニウム及びジルコニウムの一方または両方を含む金属酸化物は、数nmといった薄膜であっても強誘電性を有しうることができる。また、ハフニウム及びジルコニウムの一方または両方を含む金属酸化物は、微小な面積でも強誘電性を有しうることができる。したがって、ハフニウム及びジルコニウムの一方または両方を含む金属酸化物を用いることで、半導体装置の微細化を図ることができる。
【0188】
なお、本明細書等において、強誘電性を有しうる材料を層状にしたものを指して、強誘電体層、金属酸化物膜、または金属窒化物膜と呼ぶ場合がある。また、このような、強誘電体層、金属酸化物膜、または金属窒化物膜を有する装置を、本明細書等において、強誘電体デバイスと呼ぶ場合がある。
【0189】
なお、強誘電性は、外部電場により強誘電体層に含まれる結晶の酸素または窒素が変位することで、発現するとされている。また、強誘電性の発現は、強誘電体層に含まれる結晶の結晶構造に依存すると推定される。よって、絶縁層が強誘電性を発現するには、絶縁層は結晶を含む必要がある。特に絶縁層は、直方晶系の結晶構造を有する結晶を含むと、強誘電性が発現するため好ましい。なお、絶縁層に含まれる結晶の結晶構造としては、立方晶系、正方晶系、直方晶系、単斜晶系、及び六方晶系の中から選ばれるいずれか一または複数であってもよい。また、絶縁層は、アモルファス構造を有していてもよい。このとき、絶縁層は、アモルファス構造と、結晶構造とを有する複合構造としてもよい。
【0190】
また、ハフニウム及びジルコニウムの一方または双方を有する酸化物に、元素周期表における第3族元素(IIIa元素ともいう)を添加することで、当該酸化物中の酸素欠損濃度が高まり、直方晶系の結晶構造を有する結晶が形成されやすくなる。これにより、直方晶系の結晶構造を有する結晶の存在割合が高くなり、残留分極量を大きくすることができるため、好ましい。一方で、第3族元素の添加量が多すぎると、当該酸化物の結晶性が低下し、強誘電性が発現しにくくなる恐れがある。したがって、ハフニウム及びジルコニウムの一方または双方を有する酸化物における第3族元素の含有率は、0.1atomic%以上10atomic%以下が好ましく、0.1atomic%以上5atomic%以下がより好ましく、0.1atomic%以上3atomic%以下がさらに好ましい。ここで、第3族元素の含有率とは、層に含有される全ての金属元素の原子数の和における、第3族元素の原子数の割合を指す。第3族元素としては、スカンジウム、ランタン、及びイットリウムから選ばれる一または複数であることが好ましく、ランタン及びイットリウムの一方または両方であることがより好ましい。
【0191】
また、金属酸化物を用いたトランジスタは、不純物及び酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層で囲むことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。不純物及び酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウム、及び、タンタルから選ばれた一以上を含む絶縁層を、単層で、または積層で用いることができる。具体的には、不純物及び酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層の材料として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどの金属窒化物を用いることができる。
【0192】
具体的には、水及び水素といった不純物と、酸素と、の透過を抑制する機能を有する絶縁層としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、及び酸化タンタルといった金属酸化物が挙げられる。また、水及び水素といった不純物と、酸素と、の透過を抑制する機能を有する絶縁層としては、例えば、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)が挙げられる。また、水及び水素といった不純物と、酸素と、の透過を抑制する機能を有する絶縁層としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化酸化シリコン、及び窒化シリコンといった金属窒化物が挙げられる。
【0193】
また、ゲート絶縁層などの、酸化物半導体層と接する絶縁層、または酸化物半導体層の近傍に設ける絶縁層は、加熱により脱離する酸素(以下、過剰酸素と呼ぶことがある)を含む領域を有する絶縁層であることが好ましい。例えば、過剰酸素を含む領域を有する絶縁層が、酸化物半導体層と接する、または酸化物半導体層の近傍に位置することで、酸化物半導体層が有する酸素欠損を低減することができる。過剰酸素を含む領域を形成しやすい絶縁層として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンなどが挙げられる。
【0194】
絶縁層210は層間膜として機能するため、比誘電率が低いことが好ましい。比誘電率が低い材料を層間膜に用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、それぞれ、熱的に安定であるため、絶縁層210として好適である。
【0195】
また、絶縁層210中の水、水素などの不純物濃度は低減されていることが好ましい。これにより、酸化物半導体層230のチャネル形成領域への、水、水素などの不純物の混入を抑制できる。
【0196】
また、絶縁層210として、水素に対するバリア絶縁層を用いることが好ましい。酸化物半導体層230の外側に設けられる絶縁層210が水素に対するバリア性を有することで、酸化物半導体層230中への水素の拡散を抑制できる。
【0197】
水素に対するバリア絶縁層の材料としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、窒化シリコン、または窒化酸化シリコン等が挙げられる。
【0198】
なお、本明細書等において、バリア絶縁層とは、バリア性を有する絶縁層のことを指す。また、バリア性とは、対応する物質が拡散し難い性質(対応する物質が透過し難い性質、対応する物質の透過性が低い性質、または、対応する物質の拡散を抑制する機能ともいう)とする。なお、対応する物質として記載される場合の水素は、例えば、水素原子、水素分子、並びに、水分子及びOHなどの水素と結合した物質などの少なくとも一を指す。また、対応する物質として記載される場合の不純物は、特段の明示が無い限り、チャネル形成領域または半導体層における不純物を指し、例えば、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの少なくとも一を指す。また、対応する物質として記載される場合の酸素は、例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一を指す。
【0199】
例えば、絶縁層210として、窒化シリコン膜を用いることが好ましい。
【0200】
絶縁層280は、前述の、水素に対するバリア絶縁層を有することが好ましい。絶縁層280は、酸化物半導体層230を囲むように設けられている。酸化物半導体層230の外側に設けられる絶縁層280が水素に対するバリア性を有することで、酸化物半導体層230中への水素の拡散を抑制できる。例えば、絶縁層280は、酸化アルミニウム膜及び窒化シリコン膜のうち一方または双方を有することが好ましい。
【0201】
なお、窒化シリコンは、酸素に対するバリア性も有する。したがって、絶縁層280に窒化シリコンを用いることで、酸化物半導体層230から酸素が引き抜かれ、酸化物半導体層230に過剰な量の酸素欠損が形成されることを抑制できる。
【0202】
また、絶縁層280に窒化シリコンを用いることで、過剰な酸素が酸化物半導体層230に供給されることを防ぐことができる。よって、酸化物半導体層230のチャネル形成領域が酸素過剰になることを防ぐことができるため、トランジスタ200Aの信頼性向上を図ることができる。
【0203】
また、絶縁層280は、それぞれ前述した、酸化絶縁膜、酸化窒化絶縁膜、または、過剰酸素を含む領域を有する絶縁層を有することが好ましい。
【0204】
例えば、過剰酸素を含む領域を有する絶縁層は、酸素を含む雰囲気で、スパッタリング法で成膜することで形成することができる。また、成膜ガスに水素を含む分子を用いなくてもよいスパッタリング法を用いることで、絶縁層280中の水素濃度を低減できる。このように、絶縁層280を構成する少なくとも一部の層を成膜することで、絶縁層280から酸化物半導体層230のチャネル形成領域に酸素を供給し、酸素欠損及びVoHの低減を図ることができる。
【0205】
また、絶縁層280中の水、水素などの不純物濃度は低減されていることが好ましい。これにより、酸化物半導体層230のチャネル形成領域への、水、水素などの不純物の混入を抑制できる。
【0206】
なお、導電層220上の絶縁層280の膜厚が、トランジスタ200Aのチャネル長に対応するため、トランジスタ200Aのチャネル長の設計値に合わせて、絶縁層280の膜厚を適宜設定する。
【0207】
例えば、絶縁層280として、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、または酸化アルミニウム膜の単層構造を用いることが好ましい。または、例えば、絶縁層280として、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、及び、窒化シリコン膜をこの順で積層した3層構造を用いることが好ましい。例えば、絶縁層280として、酸化アルミニウム膜、酸化シリコン膜、及び、酸化アルミニウム膜をこの順で積層した3層構造を用いることが好ましい。
【0208】
絶縁層250は、水素を捕獲及び水素を固着する機能を有することが好ましい。これにより、酸化物半導体層230の水素濃度(特に、トランジスタのチャネル形成領域中の水素濃度)を低減できる。よって、チャネル形成領域中のVHを低減し、チャネル形成領域をi型または実質的にi型とすることができる。
【0209】
水素を捕獲するまたは固着する機能を有する絶縁層の材料としては、ハフニウムを含む酸化物、マグネシウムを含む酸化物、アルミニウムを含む酸化物、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)等の金属酸化物が挙げられる。また、これらの金属酸化物は、さらにジルコニウムを含んでいてもよく、例えば、ハフニウム及びジルコニウムを含む酸化物等が挙げられる。ここで、アモルファス構造を有する金属酸化物では、一部の酸素原子がダングリングボンドを有するため、水素を捕獲するまたは固着する能力が高い。したがって、これらの金属酸化物は、アモルファス構造を有することが好ましい。例えば、これらの酸化物にシリコンを含むことで、アモルファス構造を実現してもよい。例えば、ハフニウム及びシリコンを含む酸化物(ハフニウムシリケート)を用いることが好ましい。なお、金属酸化物は、一部に結晶領域、及び、結晶粒界の一方または双方を有する場合がある。
【0210】
なお、対応する物質を捕獲するまたは固着する機能は、対応する物質が拡散し難い性質を有するともいえる。よって、対応する物質を捕獲するまたは固着する機能を、バリア性と言い換えることができる。
【0211】
ゲート絶縁層が積層構造である場合、酸化物半導体層230と接する層が、水素を捕獲及び水素を固着する機能を有することが好ましい。これにより、酸化物半導体層230に含まれる水素を、より効果的に捕獲させるまたは固着させることができる。よって、酸化物半導体層230中の水素濃度を低減できる。絶縁層250の酸化物半導体層230と接する層として、例えば、ハフニウムシリケートなどを用いるとよい。また、当該層は、アモルファス構造を有することが好ましい。
【0212】
当該層をアモルファス構造にすることで、結晶粒界の形成を抑制することができる。結晶粒界の形成が抑制されることで、当該層の平坦性を高めることができる。これにより絶縁層250の膜厚分布が均一化されて、膜厚が極端に薄い部分を低減することができるため、絶縁層250の耐圧を向上させることができる。また、絶縁層250上に設ける膜の膜厚分布を均一化することができる。
【0213】
また、当該層の結晶粒界の形成を抑制することで、結晶粒界の欠陥準位に起因するリーク電流を低減することができる。よって、絶縁層250をリーク電流の少ない絶縁膜として機能させることができる。
【0214】
また、酸化ハフニウムは高誘電率(high-k)材料であるため、ハフニウムシリケートは、シリコンの含有量によっては、高誘電率(high-k)材料となる。したがって、酸化ハフニウムまたはハフニウムシリケートをゲート絶縁層に用いる場合、ゲート絶縁層の物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁層の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0215】
以上より、絶縁層250として、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方を含む酸化物を用いることが好ましく、アモルファス構造を有し、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方を含む酸化物を用いることがより好ましく、アモルファス構造を有する酸化アルミニウムを用いることがさらに好ましい。
【0216】
また、絶縁層250として、前述の、水素に対するバリア絶縁層を用いることが好ましい。絶縁層250に、水素に対するバリア絶縁層を用いることで、導電層260に含まれる不純物の、酸化物半導体層230への拡散を抑制できる。例えば、窒化シリコンは水素に対するバリア性が高いため、絶縁層250として好適である。
【0217】
このような構成にすることで、良好な電気特性を有する半導体装置を提供できる。また、信頼性が高い半導体装置を提供できる。また、トランジスタの電気特性のばらつきが少ない半導体装置を提供できる。また、オン電流が大きい半導体装置を提供できる。
【0218】
さらに、絶縁層250は、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどの、熱に対し安定な構造の絶縁層を有していてもよい。
【0219】
また、絶縁層250は、一対の、水素を捕獲及び水素を固着する機能を有する絶縁層の間に、熱に対し安定な構造の絶縁層を有していてもよい。
【0220】
また、絶縁層250は、酸素に対するバリア絶縁層を有することが好ましい。これにより、導電層240及び導電層260などの酸化を抑制できる。絶縁層250が積層構造である場合、導電層240または導電層260と接する層が、酸素に対するバリア絶縁層であることが好ましい。特に、絶縁層250を構成する層のうち、導電層240と接する層、及び、導電層260と接する層が、それぞれ、酸素に対するバリア絶縁層であることが好ましい。
【0221】
絶縁層250のうち、導電層260と接する層に、水素及び酸素に対するバリア絶縁層を用いることで、導電層260の酸化を抑制できる。また、酸化物半導体層230に含まれる酸素が導電層260に拡散し、酸化物半導体層230に酸素欠損が形成されることを抑制できる。
【0222】
酸素に対するバリア絶縁層としては、例えば、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方を含む酸化物、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、ガリウム亜鉛酸化物、窒化シリコン、及び窒化酸化シリコンが挙げられる。また、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方を含む酸化物として、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、並びに、ハフニウム及びシリコンを含む酸化物(ハフニウムシリケート)が挙げられる。
【0223】
絶縁層250における導電層240または導電層260と接する層は、少なくとも絶縁層280よりも酸素を透過しにくいことが好ましい。当該層が酸素に対するバリア性を有することで、導電層240の側面が酸化され、当該側面に酸化膜が形成されることを抑制できる。これにより、トランジスタ200Aのオン電流の低下、または電界効果移動度の低下を起こすことを抑制できる。
【0224】
また、絶縁層250を構成する各層は、それぞれ薄膜であることが好ましい。例えば、絶縁層250は、1nm以上20nm以下、好ましくは3nm以上10nm以下とすることで、トランジスタ特性の一つである、サブスレッショルドスイング値(S値ともいう)を小さくすることができる。なお、S値とは、サブスレッショルド領域において、ドレイン電圧が一定で、ドレイン電流を1桁変化させる際の、ゲート電圧の変化量をいう。
【0225】
また、絶縁層250を構成する各層の膜厚は、0.1nm以上10nm以下が好ましく、0.1nm以上5nm以下がより好ましく、0.5nm以上5nm以下がより好ましく、1nm以上5nm未満がより好ましく、1nm以上3nm以下がさらに好ましい。なお、絶縁層250を構成する各層は、少なくとも一部において、上記のような膜厚の領域を有していればよい。
【0226】
また、絶縁層250として、酸化物半導体層230側から、比誘電率が低い材料を有する第1の絶縁層、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する第2の絶縁層、水素及び酸素に対するバリア性を有する第3の絶縁層の順で積層された3層構造を用いることが好ましい。第1の絶縁層が有する比誘電率が低い材料としては、酸化シリコン、または酸化窒化シリコンを用いることが好ましい。第1の絶縁層は、酸化物半導体層230と接する層である。第1の絶縁層に酸化物または酸化窒化物を用いることで、酸化物半導体層230に酸素を供給することができる。また、第3の絶縁層を設けることで、第1の絶縁層に含まれる酸素が導電層260に拡散することを抑制し、導電層260の酸化を抑制できる。また、第1の絶縁層から酸化物半導体層230に供給される酸素量が減少することを抑制できる。
【0227】
絶縁層250として、酸化物半導体層230側から、酸素に対するバリア性を有する第4の絶縁層、比誘電率が低い材料を有する第1の絶縁層、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する第2の絶縁層、水素及び酸素に対するバリア性を有する第3の絶縁層の順で積層された4層構造を用いることが好ましい。第1の絶縁層乃至第3の絶縁層については、前述の3層構造に用いる層と同様の構成を適用できる。第4の絶縁層は、酸化物半導体層230と接する層である。第4の絶縁層が、酸素に対するバリア性を有することで、酸化物半導体層230から酸素が脱離することを抑制できる。第4の絶縁層として、例えば、酸化アルミニウムを用いるとよい。酸化アルミニウムは、水素を捕獲するまたは固着する機能を有するため、酸化物半導体層230と接する第4の絶縁層として好適である。
【0228】
代表的には、第4の絶縁層、第1の絶縁層、第2の絶縁層、及び、第3の絶縁層の膜厚をそれぞれ、1nm、2nm、2nm、及び1nmとする。このような構成にすることで、トランジスタを微細化または高集積化しても良好な電気特性を有することができる。
【0229】
絶縁層283には、水素に対するバリア絶縁層を用いることが好ましい。これにより、絶縁層283の上方から酸化物半導体層230に水素が拡散することを抑制できる。窒化シリコン膜、及び窒化酸化シリコン膜は、それぞれ、自身からの不純物(例えば、水及び水素)の放出が少なく、酸素及び水素が透過しにくい特徴を有するため、絶縁層283に好適に用いることができる。
【0230】
絶縁層283としてスパッタリング法で成膜された窒化シリコンを用いることが特に好ましい。スパッタリング法は、成膜ガスに水素を含む分子を用いなくてよいため、絶縁層283の水素濃度を低減できる。また、絶縁層283をスパッタリング法で成膜することで、密度が高い窒化シリコンを形成することができる。
【0231】
また、絶縁層283として、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する絶縁層を用いてもよい。このような構成にすることで、絶縁層283の上方から酸化物半導体層230に水素が拡散することを抑制し、さらに酸化物半導体層230に含まれる水素を、捕獲させるまたは固着させることができる。したがって、酸化物半導体層230の水素濃度を低減できる。絶縁層283としては、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、またはハフニウムシリケートなどを用いることができる。
【0232】
また、絶縁層283として、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する絶縁層と、水素に対するバリア絶縁層との積層構造としてもよい。例えば、絶縁層283として、酸化アルミニウムと、当該酸化アルミニウム上の窒化シリコンの積層膜を用いてもよい。
【0233】
絶縁層285は、層間膜として機能するため、前述の、比誘電率が低い材料を用いることが好ましい。例えば、絶縁層285は、酸化シリコン膜を有することが好ましい。
【0234】
[導電層]
半導体装置が有する導電層(導電層220、導電層240、導電層260、導電層265など)には、それぞれ、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、亜鉛、タンタル、ニッケル、チタン、鉄、コバルト、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどから選ばれた金属元素、または前述した金属元素を成分とする合金か、前述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。前述した金属元素を成分とする合金として、当該合金の窒化物、または当該合金の酸化物を用いてもよい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0235】
また、タンタルを含む窒化物、チタンを含む窒化物、モリブデンを含む窒化物、タングステンを含む窒化物、ルテニウムを含む窒化物、タンタル及びアルミニウムを含む窒化物、またはチタン及びアルミニウムを含む窒化物などの窒素を含む導電性材料、酸化ルテニウム、ストロンチウム及びルテニウムを含む酸化物、またはランタン及びニッケルを含む酸化物などの酸素を含む導電性材料、チタン、タンタル、またはルテニウムなどの金属元素を含む材料は、酸化されにくい導電性材料、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。なお、酸素を含む導電性材料として、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITOともいう)、酸化チタンを含むインジウムスズ酸化物、シリコンを添加したインジウムスズ酸化物(ITSOともいう)、インジウム亜鉛酸化物(IZO(登録商標)ともいう)、及び、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物などが挙げられる。本明細書等では、酸素を含む導電性材料を用いて成膜される導電膜を、酸化物導電膜と呼ぶことがある。
【0236】
タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料は、導電性が高いため、好ましい。
【0237】
また、上記の材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。
【0238】
なお、トランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を用いる場合において、ゲート電極として機能する導電層には、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造を用いることが好ましい。この場合は、酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けることで、当該導電性材料から脱離した酸素がチャネル形成領域に供給されやすくなる。
【0239】
導電層220及び導電層240は、それぞれ、酸化物半導体層230と接する導電層であるため、それぞれ、酸化されにくい導電性材料、酸化されても電気抵抗が低く保たれる導電性材料、導電性を有する金属酸化物(酸化物導電体ともいう)、または、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。当該導電性材料として、例えば、窒素を含む導電性材料、及び酸素を含む導電性材料が挙げられる。これにより、導電層220及び導電層240の導電率が低下することを抑制できる。
【0240】
導電層220または導電層240として酸素を含む導電性材料を用いることで、導電層220または導電層240が酸素を吸収しても導電性を維持することができる。また、絶縁層210として酸化ハフニウムなどの酸素を含む絶縁層を用いる場合においても、導電層220は導電性を維持できるため好適である。導電層220及び導電層240のそれぞれとして、例えば、ITO、ITSO、IZO(登録商標)などを用いることが好ましい。
【0241】
図2では、導電層220が、導電層220a1と、導電層220a1上の導電層220a2と、導電層220a2上の導電層220bと、の3層構造である例を示す。このとき、例えば、導電層220a1として、酸化されにくい導電性材料、または酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用い、導電層220a2として、導電性が高い材料を用い、導電層220bとして、酸素を含む導電性材料(より好ましくは酸化物導電体)を用いることが好ましい。具体的には、例えば、導電層220a1として窒化チタンを用い、導電層220a2としてタングステンを用い、導電層220bとして酸化物導電体(例えば、ITO、ITSO、またはIZO(登録商標))を用いることが好ましい。この場合、窒化チタンが絶縁層210に接し、タングステンと、酸化物導電体と、が酸化物半導体層230に接する。また、酸化物半導体層230のチャネル形成領域に最も近い層に酸化物導電体が用いられる。タングステンに比べて、酸化物導電体は、酸化物半導体層230とのコンタクト抵抗が低いため、ソースとドレインの間の電流経路を短くでき、トランジスタのオン電流を大きくすることができる。このような構造にすることで、導電層220が酸化物半導体層230と接していても、導電性を維持することができる。また、絶縁層210に酸化物絶縁層を用いる場合、絶縁層210によって導電層220が過剰に酸化されることを抑制できる。また、導電層220a2として、酸化物導電体及び窒化チタンよりも導電性の高い金属材料(ここではタングステン)を用いることで、導電層220の導電性を高めることができる。
【0242】
図2では、導電層240が、導電層240aと、導電層240a上の導電層240bと、の2層構造である例を示す。このとき、例えば、導電層240aとして、酸素を含む導電性材料を用い、導電層240bとして、導電層240aよりも導電性が高い材料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、導電層240aとして、酸化物導電体(例えば、ITO、ITSO、またはIZO(登録商標))を用い、導電層240bとして、ルテニウム、タングステン、窒化チタン、または、窒化タンタルを用いることが好ましい。
【0243】
導電層260には、タングステンなど、導電性が高い材料を用いることが好ましい。また、導電層260として、酸化されにくい導電性材料、または、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料などを用いることが好ましい。当該導電性材料としては、前述の通り、窒素を含む導電性材料(例えば、窒化チタンまたは窒化タンタルなど)、及び酸素を含む導電性材料(例えば、酸化ルテニウムなど)などが挙げられる。これにより、導電層260の導電率が低下することを抑制できる。
【0244】
また、導電層260には、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる金属元素及び酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。また、前述した金属元素及び窒素を含む導電性材料(例えば、窒化チタン、窒化タンタルなど)を用いてもよい。また、インジウムスズ酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、及び、シリコンを添加したインジウムスズ酸化物のうち一つまたは複数を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。このような材料を用いることで、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる水素を捕獲することができる場合がある。または、外方の絶縁層などから混入する水素を捕獲することができる場合がある。
【0245】
図2では、導電層260が、導電層260aと、導電層260a上の導電層260bと、の2層構造である例を示す。このとき、例えば、導電層260aとして窒化チタンを用い、導電層260bとしてタングステンを用いることが好ましい。または、導電層260aとして窒化タンタルを用い、導電層260bとして銅を用いることが好ましい。このような構成とすることで、導電層260の導電率を高めることができる。
【0246】
また、導電層260は、3層以上の積層構造であってもよい。導電層260は、例えば、窒化タンタルと、窒化タンタル上の窒化チタンと、窒化チタン上のタングステンと、の3層構造としてもよい。
【0247】
導電層265は、ゲート配線として機能する層のため、導電性が高いことが好ましい。導電層265には、タングステンを用いることが好ましい。また、導電層265は、導電層260と同様の構成としてもよい。例えば、窒化チタンとタングステンとの2層構造を適用してもよい。
【0248】
[基板]
トランジスタを形成する基板としては、例えば、絶縁体基板、半導体基板、または導電体基板を用いることができる。絶縁体基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムを材料とした半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる化合物半導体基板などがある。さらには、前述の半導体基板内部に絶縁体領域を有する半導体基板、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板などがある。導電体基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。
【0249】
<半導体装置の構成例2>
図4乃至図11を用いて、本発明の他の一態様の半導体装置の構成を説明する。
【0250】
[トランジスタ200B]
図4(A)は、トランジスタ200Bを有する半導体装置の平面図である。図4(B)は、図4(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図4(C)は、図4(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。図4(D)は、図4(B)及び図4(C)に示す一点鎖線A5-A6間の断面図である。
【0251】
トランジスタ200Bは、導電層240aと導電層240bの開口部290側の側面が揃っており、酸化物半導体層230が、導電層240aの側面と、導電層240bの上面及び側面と接する点(導電層240aの上面と接しない点ともいえる)で、トランジスタ200Aと異なる。
【0252】
このように、酸化物半導体層230は、必ずしも導電層240aの上面と接していなくてもよい。
【0253】
トランジスタ200Bにおいて、導電層240a及び導電層240bに用いる材料に特に限定は無い。導電層240aに、導電層240bよりも導電性の高い材料を用いてもよく、導電層240bに、導電層240aよりも導電性の高い材料を用いてもよい。また、導電層240aまたは導電層240bに酸化物導電体を用いることが好ましい。
【0254】
トランジスタ200Bにおいても、導電層220b及び導電層240aに酸素を含む導電性材料(より好ましくは酸化物導電体)を用いることで、酸化物半導体層230とのコンタクト抵抗が低くなり、ソースとドレインの間の電流経路を短くできるため、トランジスタ200Bのオン電流を大きくすることができる。
【0255】
または、導電層240bとして、酸素を含む導電性材料を用い、導電層240aとして、導電層240bよりも導電性が高い材料を用いてもよい。トランジスタ200Bでは、酸化物半導体層230が、導電層240aの側面、並びに、導電層240bの上面及び側面と接しており、導電層240aの上面とは接しない。この場合、酸化物半導体層230において、導電層240bと接する面積の方が、導電層240aと接する面積よりも大きくなる。例えば、導電層240bに酸化物導電体を用い、導電層240aにタングステンなどの、酸化物導電体よりも導電性が高い材料を用いると、主に、酸化物導電体が酸化物半導体層230に接することになる。このような構造にすることで、導電層240が酸化物半導体層230と接していても、導電性を維持することができる。また、導電層240aとして、導電層240bよりも導電性の高い材料を用いることで、導電層240の導電性を高めることができる。また、酸化物半導体層230と導電層240bとのコンタクト抵抗を低くでき、コンタクト抵抗に起因するトランジスタ200Bのオン電流の低下を抑制できる。
【0256】
[トランジスタ200C]
図5(A)は、トランジスタ200Cを有する半導体装置の平面図である。図5(B)及び図6は、それぞれ、図5(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図6は、図5(B)の拡大図の一例に相当し、各層の構成例をより詳細に示している。図5(C)は、図5(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。図5(D)は、図5(B)及び図5(C)に示す一点鎖線A5-A6間の断面図である。
【0257】
トランジスタ200Cは、導電層220bが開口部を有さず、凹部を有している点で、トランジスタ200Aと異なる。
【0258】
トランジスタ200Cが有する導電層220は、導電層220aと、導電層220a上の導電層220bとを有し、導電層220bには凹部が設けられている。別言すると、導電層220は凹部を有しており、当該凹部の底面が導電層220bの凹部の底面に相当し、当該凹部の側面が導電層220bの凹部の側面に相当する。
【0259】
導電層240a、導電層240b、及び絶縁層280が有する開口部290は、導電層220bの凹部と重なっている。ここで、開口部290の底部は、導電層220bの凹部の底面を含み、開口部290の側壁は、導電層220bの凹部の側面、絶縁層280の側面、導電層240aの側面、及び導電層240bの側面を含む。酸化物半導体層230は、開口部290内で、導電層220bの凹部の底面及び側面、絶縁層280の側面、導電層240aの上面及び側面、並びに、導電層240の側面と接する。
【0260】
このように、酸化物半導体層230は、必ずしも導電層220aと接していなくてもよい。
【0261】
導電層220bが開口部290と重なる位置に凹部を有することで、当該凹部を有さない場合に比べて、絶縁層210の上面を基準とした導電層220bの絶縁層280と接する上面の高さよりも、開口部290内における絶縁層250の下面の高さ及び導電層260の下面の高さのそれぞれを低くすることができる。
【0262】
図6に示すように、絶縁層210の上面から導電層220bの絶縁層280と接する上面までの最短距離Tcは、絶縁層210の上面から絶縁層250の下面までの最短距離Taよりも長いことが好ましい。これにより、導電層220bの側面と酸化物半導体層230との接触面積を大きくすることができ、導電層220bと酸化物半導体層230とのコンタクト抵抗を低くすることができる。したがって、導電層220bと酸化物半導体層230とのコンタクト抵抗に起因するトランジスタ200Cのオン電流の低下を、抑制できる。
【0263】
また、図6に示すように、最短距離Tcは、絶縁層210の上面から導電層260の下面までの最短距離Tb以上であることがより好ましく、最短距離Tbよりも長いことがさらに好ましい。これにより、酸化物半導体層230のチャネル形成領域にゲート電界がかかりやすくなり、トランジスタ200Cの電気特性を良好にすることができる。さらに、酸化物半導体層230の導電層220bと接する領域にもゲート電界がかかりやすくなるため、トランジスタ200Cのオン電流を大きくすることができる。また、導電層220と導電層240のどちらをドレイン電極に用いても、トランジスタ200Cの電気特性を良好にすることができる。
【0264】
[トランジスタ200D]
図7(A)は、トランジスタ200Dを有する半導体装置の平面図である。図7(B)は、図7(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図7(C)は、図7(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。図7(D)は、図7(B)及び図7(C)に示す一点鎖線A5-A6間の断面図である。
【0265】
トランジスタ200Dは、導電層240aと導電層240bの開口部290側の側面が揃っており、酸化物半導体層230が、導電層240aの側面と、導電層240bの上面及び側面と接する点(導電層240aの上面と接しない点ともいえる)で、トランジスタ200Cと異なる。
【0266】
トランジスタ200Dにおける導電層240の構成は、トランジスタ200Bにおける構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0267】
[トランジスタ200E]
図8(A)及び図8(B)は、トランジスタ200Eを有する半導体装置の断面図である。図8(A)は、図1(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図8(B)は、図1(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。
【0268】
図8(A)及び図8(B)に示す半導体装置は、絶縁層280を有さず、絶縁層280a、絶縁層280b、及び絶縁層280cを有する点で、図1(A)乃至図1(D)に示す半導体装置と異なる。
【0269】
図8(A)及び図8(B)に示す半導体装置は、絶縁層280aと、絶縁層280a上の絶縁層280bと、絶縁層280b上の絶縁層280cとを有する。
【0270】
絶縁層280aは、絶縁層210の上面に接する領域と、導電層220aの側面に接する領域と、導電層220bの上面及び側面に接する領域と、を有する。絶縁層280cは、導電層240aの下面に接する領域を有する。
【0271】
絶縁層280bは、酸化物半導体層230のチャネル形成領域と接する層である。絶縁層280bに酸素を含む絶縁層を用いることで、酸化物半導体層230に酸素を供給することができる。
【0272】
絶縁層280bは、絶縁層280a及び絶縁層280cの少なくとも一つと比べて、酸素の含有量が多い領域を有することが好ましい。特に、絶縁層280bは、絶縁層280a及び絶縁層280cのそれぞれと比べて、酸素の含有量が多い領域を有することが好ましい。絶縁層280bの酸素の含有量を多くすることにより、絶縁層280b近傍の酸化物半導体層230に、i型の領域を形成することが容易となる。
【0273】
絶縁層280bには、加熱により酸素を放出する膜を用いるとより好ましい。トランジスタ200Eの作製工程中にかかる熱により、絶縁層280bが酸素を放出することで、酸化物半導体層230に酸素を供給することができる。絶縁層280bから酸化物半導体層230、特に酸化物半導体層230のチャネル形成領域に酸素を供給することで、酸化物半導体層230中の酸素欠損及びVHの低減を図ることができ、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0274】
また、OSトランジスタの電気特性及び信頼性を良好にするには、酸化物半導体中の水素濃度を十分に低減した上で、酸化物半導体に供給する酸素量を最適化することが重要となる。
【0275】
特に、トランジスタ200Eのチャネル長が短い場合、チャネル形成領域の酸素欠損及びVHの電気特性及び信頼性への影響が特に大きくなる。したがって、酸化物半導体層230中の水素濃度を十分に低減した上で、酸化物半導体層230に供給する酸素量を最適化することで、良好な電気特性及び高い信頼性を有するチャネル長の短いトランジスタを実現できる。
【0276】
絶縁層280bは、スパッタリング法、またはプラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法などの成膜方法で形成することが好ましい。特に、スパッタリング法を用いると、成膜ガスに水素を含むガスを用いなくてよいため、水素の含有量の極めて少ない膜とすることができる。そのため、酸化物半導体層230に水素が供給されることを抑制し、トランジスタ200Eの電気特性の安定化を図ることができる。
【0277】
酸化物半導体層230に供給する酸素量を多くする場合、例えば、絶縁層280bを形成した後に、酸素を含む雰囲気下における加熱処理、または、酸素を含む雰囲気下におけるプラズマ処理を行うとよい。また、絶縁層280bの上面に、スパッタリング法により、酸素雰囲気下で酸化物膜を成膜することで酸素を供給してもよい。その後、当該酸化物膜を除去してもよい。このような処理を行うことで、絶縁層280bに酸素を供給し、酸化物半導体層230に供給される酸素量を増やすことができる。
【0278】
また、酸化物半導体層230の、絶縁層280aに接する領域、及び絶縁層280cに接する領域は、絶縁層280bに接する領域と比較して、供給される酸素の量が少ない。よって、酸化物半導体層230の、絶縁層280aに接する領域、及び絶縁層280cに接する領域は、低抵抗化する場合がある。つまり、絶縁層280aの膜厚を調整することで、ソース領域及びドレイン領域の一方として機能する領域の範囲を制御できる。同様に、絶縁層280cの膜厚を調整することで、ソース領域及びドレイン領域の他方として機能する領域の範囲を制御できる。このように、絶縁層280a及び絶縁層280cの膜厚は、トランジスタに求める特性に合わせて、適宜設定できる。
【0279】
また、絶縁層280bには、比誘電率が低い材料を用いることが好ましい。これにより、配線間に生じる寄生容量を低減できる。絶縁層280bとして、例えば、酸化シリコン、または酸化窒化シリコンを用いることができる。
【0280】
絶縁層280a及び絶縁層280cには、それぞれ、酸素に対するバリア絶縁層を用いることが好ましい。絶縁層280bと導電層220aまたは導電層220bとの間に絶縁層280aを設けることにより、導電層220aまたは導電層220bが酸化され、導電層220aまたは導電層220bの抵抗が高くなることを抑制できる。また、絶縁層280bと導電層240aまたは導電層240bとの間に絶縁層280cを設けることにより、導電層240aまたは導電層240bが酸化され、導電層240aまたは導電層240bの抵抗が高くなることを抑制できる。
【0281】
また、絶縁層280aとして、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する絶縁層を用いてもよい。このような構成にすることで、絶縁層280aの下方から酸化物半導体層230に水素が拡散することを抑制し、さらに酸化物半導体層230に含まれる水素を捕獲させるまたは固着させることができる。よって、酸化物半導体層230の水素濃度を低減できる。絶縁層280aとしては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、またはハフニウム及びシリコンを含む酸化物などを用いることができる。また、例えば、絶縁層280aとして、酸化アルミニウムと、当該酸化アルミニウム上の窒化シリコンの積層膜を用いてもよい。同様に、絶縁層280cとして、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する絶縁層を用いてもよい。
【0282】
一例として、絶縁層280a及び絶縁層280cに窒化シリコンを用い、絶縁層280bに酸化シリコンを用いることができる。
【0283】
[トランジスタ200F]
図8(C)及び図8(D)は、トランジスタ200Fを有する半導体装置の断面図である。図8(C)は、図1(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図8(D)は、図1(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。
【0284】
図8(C)及び図8(D)に示す半導体装置は、絶縁層222を有する点で、図1(A)乃至図1(D)に示す半導体装置と異なる。
【0285】
図8(C)及び図8(D)に示す半導体装置では、絶縁層210上に絶縁層222が設けられ、絶縁層222上に導電層220a及び絶縁層280が設けられている。
【0286】
絶縁層222には、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する絶縁層を用いることが好ましい。これにより、酸化物半導体層230中の水素が導電層220a及び導電層220bを介して絶縁層222に拡散し、当該水素を捕獲させるまたは固着させることができる。したがって、酸化物半導体層230中の水素濃度を低減できる。
【0287】
例えば、絶縁層210として、窒化シリコン膜を用い、絶縁層222として、ハフニウム及びシリコンを含む酸化物膜(ハフニウムシリケート膜)を用いることが好ましい。
【0288】
[トランジスタ200G]
図9(A)及び図9(B)は、トランジスタ200Gを有する半導体装置の断面図である。
【0289】
トランジスタ200Gは、絶縁層280を有さず、絶縁層280d、絶縁層280e、及び、導電層255を有する点で、トランジスタ200A(図1(B)など)と異なる。
【0290】
トランジスタ200Gにおいて、導電層255は、絶縁層280d上に位置し、絶縁層280eは、導電層255の上面及び側面を覆っている。また、断面視において、酸化物半導体層230は、絶縁層280eを介して導電層255と重なり、かつ、絶縁層250を介して導電層260と重なる領域を有する。
【0291】
トランジスタ200Gは、バックゲートとして機能する導電層255を有する。バックゲートを有することで、しきい値電圧の制御が容易となり、また、しきい値電圧の変動を抑制できるため、トランジスタの電気特性及び信頼性を高めることができる。
【0292】
導電層255には、導電層260に用いることができる材料を適用することができる。また、絶縁層280d及び絶縁層280eには、絶縁層280に用いることができる材料を適用することができる。
【0293】
[トランジスタ200H]
図9(C)及び図9(D)は、トランジスタ200Hを有する半導体装置の断面図である。
【0294】
図9(C)及び図9(D)に示す半導体装置は、絶縁層280が、酸化物半導体層230と接し、かつ、ハロゲン元素を有する領域280iを有する点で、トランジスタ200Aと異なる。領域280iは、開口部290の側壁を含む。
【0295】
ハロゲン元素は、塩素、フッ素、臭素、及び、ヨウ素の中から選ばれる一種または複数種であることが好ましく、塩素またはフッ素であることがより好ましい。また、酸素と置換するという観点から、酸素よりも電気陰性度が高いフッ素を用いることが好ましい。
【0296】
領域280iがハロゲン元素を有することで、当該ハロゲン元素を、領域280iから酸化物半導体層230中に供給することができる。ハロゲン元素(X)は、酸化物半導体層230中で、酸素欠損(Vo)にハロゲン元素が入った欠陥(VoX)となり、キャリアとなる電子を生成する機能を有する。例えば、ハロゲン元素として塩素(Cl)を用いる場合、Clは、酸化物半導体層230中(特に絶縁層280と酸化物半導体層230との界面及びその近傍)で、VoClの状態で安定に存在する。このとき、Clは、既存のVoに入り込むだけでなく、酸素と置換することでも、VoClの状態となり得る。
【0297】
一方、Clに置換された酸素(余剰酸素ともいう)は、電子をトラップする機能を有する。また、VoClによるキャリアの生成よりも、酸素によるキャリアトラップが優先して起こる。したがって、絶縁層280と酸化物半導体層230との界面及びその近傍に、負電荷(負の固定電荷ともいう)が形成される。領域280iは、酸化物半導体層230におけるチャネル形成領域と接する。チャネル形成領域に負電荷が存在することで、トランジスタ200Hのしきい値電圧をプラスシフトさせることができる。したがって、トランジスタ200Hが微細な構造である場合、または、トランジスタ200Hのチャネル長が極めて短い場合であっても、トランジスタ200Hをノーマリーオフとすることができる。
【0298】
例えば、絶縁層280に酸化アルミニウム層を用い、ハロゲン元素としてフッ素を用いることが好ましい。なお、絶縁層280は単層構造であっても、積層構造であってもよい。絶縁層280が積層構造である場合、例えば、酸化アルミニウム層のほかに、酸化シリコン層及び窒化シリコン層の一方または双方を有することが好ましい。このとき、アルミニウムと結合していた酸素がフッ素に置換され、脱離した酸素が水素と結合してOH基となることが考えられる(Al-O+F→Al-F+O+H→AlF+OH)。このようにバックチャネル側にAlFが存在することで、チャネル形成領域に負電荷を形成し、トランジスタ200Hのしきい値電圧をプラスシフトさせるだけでなく、水素を捕獲する、または固着する(ゲッタリングともいう)機能も備えることができる。これにより、酸化物半導体層230の水素濃度(特にトランジスタ200Hのチャネル形成領域中の水素濃度)を低減できる。よって、チャネル形成領域中のVoHを低減し、チャネル形成領域をi型または実質的にi型とすることができる。
【0299】
なお、導電層240a、導電層240b、導電層220a、及び導電層220bもハロゲン元素を有することがある。また、導電層240a、導電層240b、導電層220a、または導電層220bから酸化物半導体層230中にハロゲン元素が供給されることがある。図9(C)及び図9(D)では、導電層240a、導電層240b、及び導電層220bの開口部290側の側面にも、領域280iと同様のハッチングを付している。
【0300】
また、酸化物半導体層230が、絶縁層280と接し、かつ、ハロゲン元素を有する領域を有していてもよい。
【0301】
また、図9(C)及び図9(D)に示す半導体装置は、酸化物半導体層230が、不純物元素を有する領域230nを有する点で、トランジスタ200Aと異なる。
【0302】
酸化物半導体層230のソース領域及びドレイン領域は、不純物元素を有することが好ましい。不純物元素として、第1の元素を用いることが好ましい。または、不純物元素として、第1の元素と、水素と、の双方を用いることが好ましい。
【0303】
図9(C)及び図9(D)では、酸化物半導体層230のうち、導電層220aの上面と接する領域の一部、導電層240aの上面と接する領域の一部、及び導電層240bの上面と接する領域の一部を、領域230nとして示す。特に、領域230nに不純物元素を有することが好ましい。
【0304】
なお、導電層240a、導電層240b、導電層220a、及び導電層220bも不純物元素を有することがある。図9(C)及び図9(D)では、導電層240a、導電層240b、及び導電層220aの酸化物半導体層230と接する領域にも、領域230nと同様のハッチングを付している。
【0305】
第1の元素としては、ホウ素、アルミニウム、インジウム、炭素、シリコン、ゲルマニウム、スズ、リン、ヒ素、アンチモン、マグネシウム、カルシウム、チタン、銅、亜鉛、タングステン、モリブデン、タンタル、ハフニウム、セリウム、及び貴ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等)のうち一種または複数種を用いることが好ましい。
【0306】
なお、第1の元素としては、上記の元素に限られず、第一遷移元素(3d遷移元素、3d遷移金属)、第二遷移元素(4d遷移元素、4d遷移金属)、第三遷移元素(5d遷移元素、5d遷移金属)、アルカリ土類金属元素、及び、希土類元素に含まれる元素のうち、一種または複数種を用いることができる。
【0307】
ソース領域及びドレイン領域に、第1の元素を供給することで、第1の元素がこれらの領域中の酸素を奪うなどにより、これらの領域に酸素欠損が生じる。そして、当該酸素欠損が膜中の水素と結合することで、キャリアが生成されるため、ソース領域及びドレイン領域を低抵抗化させることができる。これにより、酸化物半導体層230のシート抵抗、酸化物半導体層230と導電層220とのコンタクト抵抗、及び、酸化物半導体層230と導電層240とのコンタクト抵抗をそれぞれ低くすることができる。したがって、トランジスタのオン電流を大きくすることができる。オン電流を大きくすることで、トランジスタの動作電圧を低くすることができる。これにより、半導体装置の消費電力の低減を図ることができる。
【0308】
第1の元素として、酸素と結合しやすい元素を用いる場合、第1の元素は、半導体層中の酸素と結合した状態で存在する。また、第1の元素として酸素と結合して安定化する元素を用いると、半導体層中の第1の元素は、酸化された状態で安定に存在するため、半導体装置の作製工程中にかかる熱などで脱離しにくく、電気抵抗が低い状態で安定した低抵抗領域を実現できる。このことから、第1の元素として、25℃、1気圧において、酸化物が固体で存在しうる元素を用いることが好ましい。具体的には、好ましい第1の元素として、水素以外の典型非金属元素、典型金属元素、及び遷移元素(遷移金属)が挙げられ、特に好ましい第1の元素として、ホウ素、リン、マグネシウム、アルミニウム、及び、シリコンが挙げられる。
【0309】
以上のことから、第1の元素の一つとして、ホウ素、リン、マグネシウム、アルミニウム、またはシリコンを用いることが好ましい。また、特に、第1の元素の一つとして、ホウ素またはリンを用いることが好ましい。
【0310】
また、水素は、前述の酸素欠損を生じさせる機能に加えて、酸素欠損と結合する機能も有するため、不純物元素として好適である。
【0311】
不純物元素として、第1の元素と、水素と、の双方を用いることで、酸化物半導体層230中のソース領域及びドレイン領域の電気抵抗を低くしやすく、かつ、電気抵抗が低い状態を安定して維持できる。
【0312】
また、第1の元素と、水素と、の双方を供給する場合、原料ガスから生じたイオンを質量分離せずに添加することができるため、生産性を高めることができ、好ましい。例えば、Bガスを用いることで、不純物元素としてホウ素と水素を供給することができる。また、例えば、PHガスを用いることで、不純物元素としてリンと水素を供給することができる。なお、不純物元素の供給方法はこれに限られない。例えば、原料ガスをイオン化し、当該イオンを質量分離することで、特定の元素を添加してもよい。例えば、Bガスを用い、質量分離を行ったのち、領域230nにホウ素を添加してもよい。
【0313】
領域230nは、不純物元素の濃度が、1×1019atoms/cm以上1×1023atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以上5×1022atoms/cm以下、より好ましくは1×1020atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下である領域を含むことが好ましい。なお、不純物元素を複数含む場合は、それぞれの不純物元素の濃度が、上記の範囲であることが好ましい。
【0314】
なお、酸化物半導体層230におけるチャネル形成領域にも、不純物元素が供給される場合がある。または、作製工程中にかかる熱の影響などにより、領域230nに含まれる不純物元素の一部がチャネル形成領域に拡散する場合がある。チャネル形成領域中の不純物元素の濃度は、領域230n中の不純物元素の濃度の10分の1以下であることが好ましく、100分の1以下であることがより好ましい。
【0315】
酸化物半導体層230(領域230nを含む)に含まれる不純物元素の濃度は、例えば、SIMSまたはXPS等の分析法により分析することができる。XPS分析を用いる場合には、表面側または裏面側からのイオンスパッタリングとXPS分析を組み合わせることで、深さ方向の濃度分布を知ることができる。
【0316】
本発明の一態様の半導体装置の作製において、酸化物半導体層230のソース領域及びドレイン領域は、チャネル形成領域と比較して、不純物元素が添加されやすいことが好ましい。そのため、不純物元素は、基板の上面に対して垂直または概略垂直な方向から添加されることが好ましい。このとき、酸化物半導体層230において、基板の上面に対して傾斜している面は、基板の上面に対して平行または概略平行な面と比べて、不純物元素が添加される量が少なくなる。つまり、酸化物半導体層230のソース領域及びドレイン領域は、チャネル形成領域と比較して、不純物元素が添加される量が多くなる。したがって、ソース領域及びドレイン領域を優先的に低抵抗化することができる。
【0317】
[トランジスタ200I]
図10(A)は、トランジスタ200Iを有する半導体装置の平面図である。図10(B)は、図10(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図10(C)は、図10(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。図10(D)は、図10(B)及び図10(C)に示す一点鎖線A5-A6間の断面図である。
【0318】
図10(A)乃至図10(D)に示す半導体装置は、導電層265を有さない点で、前述の各半導体装置と異なる。
【0319】
図10(B)及び図10(C)では、絶縁層250が、絶縁層283に設けられた開口部270内に位置する部分と、絶縁層285の上面に接する部分と、の双方を有する。また、導電層260は、絶縁層283に設けられた開口部270内に位置する部分と、絶縁層285の上面と重なる部分と、の双方を有する。導電層260の、開口部270内における幅は、開口部290の幅Dよりも小さい。したがって、導電層260と導電層240の間の寄生容量を小さくでき、好ましい。また、導電層260は、導電層240aの上面と重なる部分及び導電層240bの上面と重なる部分を有するが、導電層260の当該部分と導電層240aまたは導電層240bとの間には、絶縁層250、絶縁層283、及び絶縁層285が位置する。これにより、導電層260と導電層240aまたは導電層240bとの物理的距離を大きくでき、導電層260と導電層240の間の寄生容量を小さくすることができる。
【0320】
[トランジスタ200J及びトランジスタ200K]
図11(A)は、トランジスタ200Jを有する半導体装置の断面図である。図11(B)は、トランジスタ200Kを有する半導体装置の断面図である。
【0321】
トランジスタ200J及びトランジスタ200Kは、絶縁層250が開口部270内に位置せず、酸化物半導体層230と絶縁層283との間に位置する点で、前述の各半導体装置と異なる。
【0322】
トランジスタ200Jでは、絶縁層250が、酸化物半導体層230、導電層240a、及び導電層240bの、開口部290側とは逆側の端部を覆うように設けられている例を示す。具体的には、絶縁層250は、酸化物半導体層230、導電層240a、及び導電層240bの、開口部290側とは逆側の端部の側面に接している。
【0323】
トランジスタ200Kでは、絶縁層250の端部が、酸化物半導体層230の端部と揃っている例を示す。絶縁層250と酸化物半導体層230は、同じマスクを用いて加工できる。したがって、半導体装置の作製に要するマスク数を増やすことなく、トランジスタ200Kを作製することができる。
【0324】
[トランジスタ200L]
図44(A)は、トランジスタ200Lを有する半導体装置の平面図である。図44(B)は、図44(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図44(C)は、図44(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。図44(D)は、図44(B)及び図44(C)に示す一点鎖線A5-A6間の断面図である。
【0325】
トランジスタ200Lは、絶縁層250が開口部270内に位置せず、酸化物半導体層230と絶縁層283との間に位置する点、絶縁層280が3層構造(絶縁層280a、絶縁層280b、及び絶縁層280c)である点、及び、導電層220が3層構造(導電層220a1、導電層220a2、及び導電層220b)である点で、トランジスタ200D(図7(A)乃至図7(D)参照)と異なる。
【0326】
<半導体装置の作製方法例>
次に、本発明の一態様の半導体装置の作製方法について図12乃至図17を用いて説明する。なお、各要素の材料及び形成方法について、先に説明した部分と同様の部分については説明を省略することがある。
【0327】
半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、PLD法、ALD法等を用いて形成することができる。
【0328】
なお、スパッタリング法にはスパッタリング用電源に高周波電源を用いるRFスパッタリング法、直流電源を用いるDCスパッタリング法、さらにパルス的に電極に印加する電圧を変化させるパルスDCスパッタリング法がある。RFスパッタリング法は主に絶縁膜を成膜する場合に用いられ、DCスパッタリング法は主に金属導電膜を成膜する場合に用いられる。また、パルスDCスパッタリング法は、主に、酸化物、窒化物、炭化物などの化合物をリアクティブスパッタリング法で成膜する際に用いられる。
【0329】
また、CVD法は、プラズマを利用するプラズマCVD(PECVD)法、熱を利用する熱CVD(TCVD:Thermal CVD)法、光を利用する光CVD(Photo CVD)法などに分類できる。さらに用いる原料ガスによって金属CVD(MCVD:Metal CVD)法、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic CVD)法に分けることができる。
【0330】
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。また、熱CVD法は、プラズマを用いないため、被処理物へのプラズマダメージを小さくすることが可能な成膜方法である。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない熱CVD法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、熱CVD法では、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0331】
また、ALD法としては、プリカーサ及びリアクタントの反応を熱エネルギーのみで行う熱ALD法、プラズマ励起されたリアクタントを用いるPEALD法などを用いることができる。
【0332】
CVD法及びALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積するスパッタリング法とは異なる。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性と、を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
【0333】
また、CVD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。例えば、CVD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送または圧力調整に掛かる時間を要さない分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
【0334】
また、ALD法では、異なる複数種のプリカーサを同時に導入することで任意の組成の膜を成膜することができる。または、異なる複数種のプリカーサを導入する場合、各プリカーサのサイクル数を制御することで任意の組成の膜を成膜することができる。
【0335】
また、半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ法、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、またはナイフコート等の湿式の成膜方法により形成することができる。
【0336】
また、半導体装置を構成する薄膜を加工する際には、フォトリソグラフィ法等を用いることができる。または、ナノインプリント法、サンドブラスト法、リフトオフ法などにより薄膜を加工してもよい。また、メタルマスクなどの遮蔽マスクを用いた成膜方法により、島状の薄膜を直接形成してもよい。
【0337】
フォトリソグラフィ法としては、代表的には以下の2つの方法がある。1つは、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、エッチング等により当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法である。もう1つは、感光性を有する薄膜を成膜した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法である。
【0338】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、またはこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線、KrFレーザ光、またはArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外(EUV:Extreme Ultra-violet)光、またはX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線または電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビームなどのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0339】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0340】
[トランジスタ200Aの作製方法例]
前述のトランジスタ200Aを有する半導体装置(図1(A)乃至図1(D)参照)の作製方法例について、図12及び図13を用いて説明する。
【0341】
まず、図12(A)に示すように、基板(図示しない)上に絶縁層210を形成し、絶縁層210上に導電層220aを形成し、導電層220a上に導電層220bを形成し、導電層220b上に絶縁層280を形成し、絶縁層280上に導電層240aを形成し、導電層240a上に導電層240bを形成する。
【0342】
なお、絶縁層280の成膜後に平坦化処理を行い、絶縁層280の上面を平坦化させることが好ましい。平坦化処理としては、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)法を用いた平坦化処理(CMP処理ともいう)が好適である。また、エッチングを用いた平坦化処理(エッチバック処理ともいう)を行ってもよい。絶縁層280の平坦化処理を行うことで、導電層240a及び導電層240bの被形成面を平坦にでき、導電層240a及び導電層240bの段切れを抑制できる。なお、平坦化処理は行わなくてもよく、その場合、製造コストを削減することができる。
【0343】
続いて、図12(B)に示すように、導電層220b、導電層240a、導電層240b、及び絶縁層280の、導電層220aと重なる位置に開口部290を形成する。また、導電層240bは、導電層240aの上面が露出するように加工する。
【0344】
図12(A)に示す構造から図12(B)に示す構造を作製するための加工方法例の詳細については、後述する(図14及び図15参照)。なお、開口部290を形成する工程と、導電層240aの上面が露出するように導電層240bを加工する工程と、の順番は問わない。
【0345】
微細加工及びトランジスタのサイズを小さくするため、開口部290を形成する際には、異方性エッチングを用いて、導電層220bの一部、導電層240aの一部、導電層240bの一部、及び絶縁層280の一部を加工することが好ましい。特に、ドライエッチング法による加工は、微細加工に適しているため好ましい。また、層によって、それぞれ異なる加工条件で開口部290を形成してもよい。なお、導電層220b、導電層240a、導電層240b、及び絶縁層280の材料及び加工条件等によっては、開口部290内における導電層220bの側面の傾き、導電層240aの側面の傾き、導電層240bの側面の傾き、及び、絶縁層280の側面の傾きがそれぞれ異なることがある。
【0346】
また、開口部290の形成工程等により、導電層220aの上面、導電層220bの側面、絶縁層280の側面、導電層240aの上面及び側面、並びに、導電層240bの上面及び側面の少なくとも一つに、ハロゲン元素を含む領域が設けられることがある。当該領域としては、例えば、フッ素を含む領域、塩素を含む領域、またはフッ素及び塩素を含む領域等が挙げられる。当該領域には、例えば、ドライエッチングで用いたエッチングガス由来のハロゲン元素が残存することがある。
【0347】
なお、トランジスタ200B(図4)またはトランジスタ200D(図7)を作製する場合は、導電層240aの上面が露出するように導電層240bを加工する工程を行わなくてよい。また、トランジスタ200C(図5及び図6)またはトランジスタ200D(図7)を作製する場合は、導電層220bに開口部290を設けるのではなく、凹部を形成する。このとき、導電層240a、導電層240b、及び絶縁層280に形成された開口部290では、導電層220bの凹部の底面が露出する。
【0348】
続いて、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、例えば、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下、さらに好ましくは320℃以上450℃以下で行う。
【0349】
加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。例えば、窒素ガスと酸素ガスの混合雰囲気で加熱処理をする場合、酸素ガスを20%程度にすることが好ましい。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。以上のような加熱処理を行うことで、酸化物半導体層230の成膜前に、絶縁層280などに含まれる、水などの不純物を低減できる。
【0350】
また、上記加熱処理で用いるガスは、高純度化されていることが好ましい。例えば、上記加熱処理で用いるガスに含まれる水分量は、1ppb以下が好ましく、0.1ppb以下がより好ましく、0.05ppb以下がさらに好ましい。高純度化されたガスを用いて加熱処理を行うことで、絶縁層280などに水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0351】
続いて、図12(C)に示すように、開口部290を覆うように、酸化物半導体層230を形成する。酸化物半導体層230は、導電層220aの上面、導電層220bの側面、絶縁層280の側面、導電層240aの上面及び側面、並びに、導電層240bの上面及び側面に接して設けられる。
【0352】
酸化物半導体層230は、例えば、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、または、ALD法を用いて成膜することができる。
【0353】
酸化物半導体層230は、導電層220aの上面、導電層220bの側面、絶縁層280の側面、導電層240aの上面及び側面、並びに、導電層240bの上面及び側面に沿って、出来るだけ均一な厚さの膜として形成されることが好ましい。ALD法を用いて成膜することで、薄い膜を制御性よく成膜することができる。したがって、酸化物半導体層230はALD法を用いて成膜することが好ましい。
【0354】
また、酸化物半導体層230の結晶性が高いと、酸化物半導体層230中の不純物の拡散が抑制されるため、トランジスタの電気特性が変動しにくく、信頼性を高めることができる。酸化物半導体層230を、スパッタリング法を用いて成膜すると、ALD法を用いる場合に比べて、結晶性の高い層とすることが容易となり好ましい。
【0355】
酸化物半導体層230をスパッタリング法によって成膜する場合は、スパッタリングガスとして、酸素、または、酸素と貴ガスの混合ガスを用いる。スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を高めることで、成膜される酸化膜中の過剰酸素を増やすことができる。また、上記の酸化膜をスパッタリング法によって成膜する場合は、In-M-Zn酸化物ターゲットなどを用いることができる。
【0356】
酸化物半導体層230をスパッタリング法で形成する場合、スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を、30%を超えて100%以下、好ましくは70%以上100%以下として成膜すると、酸素過剰型の酸化物半導体が形成される。酸素過剰型の酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、比較的高い信頼性が得られる。ただし、本発明の一態様はこれに限定されない。スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を1%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下として成膜すると、酸素欠乏型の酸化物半導体が形成される。酸素欠乏型の酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られる。また、基板を加熱しながら成膜を行うことによって、酸化物半導体層の結晶性を向上させることができる。
【0357】
酸化物半導体層230は、ALD法を用いて成膜した層と、スパッタリング法を用いて成膜した層と、の双方を有することが好ましい。これにより、酸化物半導体層230を被覆性よく成膜し、かつ、酸化物半導体層230の結晶性を高めることができる。酸化物半導体層230は、例えば、スパッタリング法を用いて成膜した層と、ALD法を用いて成膜した層と、をこの順で積層して有することが好ましい。スパッタリング法を用いて成膜された酸化物半導体層は結晶性を有しやすい。そこで、結晶性を有する酸化物半導体層を酸化物半導体層230の下層として設けることで、酸化物半導体層230の上層の結晶性を高めることができる。また、スパッタリング法で成膜した酸化物半導体層にピンホールまたは段切れなどが形成されたとしても、被覆性の良好なALD法で成膜した酸化物半導体層で塞ぐことができる。
【0358】
具体的には、酸化物半導体層230として、スパッタリング法を用いて成膜した層と、ALD法を用いて成膜した層と、をこの順で積層した2層構造、ALD法を用いて成膜した層と、スパッタリング法を用いて成膜した層と、をこの順で積層した2層構造、ALD法を用いて成膜した層と、スパッタリング法を用いて成膜した層と、ALD法を用いて成膜した層と、をこの順で積層した3層構造、スパッタリング法を用いて成膜した層と、ALD法を用いて成膜した層と、スパッタリング法を用いて成膜した層と、をこの順で積層した3層構造などを用いることができる。
【0359】
次に、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、酸化物半導体層230が多結晶化しない温度範囲で行うことが好ましい。加熱処理の温度は、100℃以上650℃以下が好ましく、250℃以上600℃以下がより好ましく、350℃以上550℃以下がさらに好ましい。加熱処理の詳細は前述の記載を参照できる。
【0360】
また、上記加熱処理で用いるガスは、高純度化されていることが好ましい。高純度化されたガスを用いて加熱処理を行うことで、酸化物半導体層230に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0361】
本実施の形態では、加熱処理として、窒素ガスと酸素ガスの流量比を4:1として、450℃の温度で1時間の処理を行う。このような酸素ガスを含む加熱処理によって、酸化物半導体層230中の炭素、水、水素などの不純物を低減できる。このように膜中の不純物を低減することで、酸化物半導体層230の結晶性を向上させ、より密度の高い、緻密な構造にすることができる。これにより、酸化物半導体層230中の結晶領域を増大させ、酸化物半導体層230中における、結晶領域の面内ばらつきを低減できる。よって、トランジスタの電気特性の面内ばらつきを低減できる。
【0362】
また、絶縁層280が酸素を含む場合、加熱処理により、絶縁層280から酸化物半導体層230のチャネル形成領域に酸素を供給することが好ましい。これにより、酸素欠損及びVoHの低減を図ることができる。
【0363】
このように、酸化物半導体層230と接する絶縁層、または、酸化物半導体層230の近傍に位置する絶縁層から、加熱により脱離する酸素(過剰酸素ともいう)が酸化物半導体層230に供給されることがある。過剰酸素は電子をトラップする機能を有するため、負電荷が形成されやすくなる。したがって、トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせ、ノーマリーオフのトランジスタの実現が可能となる。
【0364】
続いて、図12(D)に示すように、酸化物半導体層230、導電層240a、及び導電層240bを島状に加工し、絶縁層280の上面の一部を露出させる。酸化物半導体層230、導電層240a、及び導電層240bは、同じマスクを用いて加工できる。これにより、半導体装置の作製に要するマスク数を削減できるため好ましい。
【0365】
続いて、図12(E)に示すように、絶縁層280、導電層240a、導電層240b、及び酸化物半導体層230を覆うように、犠牲層262を形成する。犠牲層262としては、SOC(Spin On Carbon)膜及びSOG(Spin On Glass)膜が好適である。犠牲層262は、例えば、SOC膜と、SOC膜上のSOG膜と、の2層構造とすることが好ましい。
【0366】
続いて、図12(F)に示すように、犠牲層262の一部を除去する。犠牲層262が残存する領域には、後の工程でゲート絶縁層とゲート電極(絶縁層250と導電層260)が設けられる。したがって、犠牲層262は、導電層240aの上面と重なる部分が少ない、または導電層240aの上面と重ならないことが好ましい。断面視において、犠牲層262の幅は、開口部290の幅Dと、後に形成する絶縁層250の厚さの2倍と、の和を超えないことが好ましい。図12(F)では、犠牲層262の幅が、開口部290の幅Dである例を示す。
【0367】
続いて、図13(A)に示すように、絶縁層280、導電層240a、導電層240b、酸化物半導体層230、及び犠牲層262を覆うように、絶縁層283を形成し、絶縁層283上に絶縁層285を形成する。
【0368】
絶縁層285の厚さを厚くすることで、導電層240bとゲート配線(導電層260または導電層265)との間の距離を大きくすることができ、導電層240bとゲート配線との間の寄生容量を小さくすることができる。
【0369】
例えば、絶縁層285として、スパッタリング法を用いて酸化シリコン膜を形成することが好ましい。
【0370】
ここで、絶縁層283を設けない場合、絶縁層285として、スパッタリング法を用いて酸化シリコン膜を形成する際に、犠牲層262は酸素を含むプラズマに曝されるため、犠牲層262の一部または全てがエッチングされることがある。このように、絶縁層285の形成方法によっては、犠牲層262の形状が縮小する、または犠牲層262が消失する恐れがある。このような理由から、犠牲層262上に形成する絶縁層は、絶縁層285単層ではなく、絶縁層283と絶縁層285との積層構造とすることが好ましい。これにより、犠牲層262及び絶縁層285の材料の選択の幅が広がる、半導体装置の作製の難易度を下げる、などの効果を奏する。
【0371】
絶縁層283に酸化膜を用いる場合、スパッタリング法以外の方法、例えば、ALD法を用いて、形成することが好ましい。例えば、絶縁層283として、ALD法を用いて酸化アルミニウム膜または酸化ハフニウム膜を形成することが好ましい。または、絶縁層283に窒化膜(窒化シリコン膜など)を用いることが好ましい。これにより、絶縁層283及び絶縁層285の形成時に、犠牲層262が意図せず加工されることを抑制できる。
【0372】
続いて、図13(B)に示すように、平坦化処理を行うことで、犠牲層262の上面を露出させ、犠牲層262、絶縁層283、及び、絶縁層285の上面を平坦化させる。平坦化処理としては、CMP処理が好適である。平坦化処理では、少なくとも、絶縁層283及び絶縁層285の一部を除去する。さらに、犠牲層262の一部を除去してもよい。
【0373】
続いて、図13(C)に示すように、犠牲層262を除去する。犠牲層262の除去方法は特に問わない。例えば、アッシングなどのドライエッチングにより、犠牲層262を除去することができる。ここで、図13(C)に示すように、絶縁層283は、開口部290と重なる位置に開口部270を有するということができる。
【0374】
続いて、図13(D)に示すように、開口部270及び開口部290を覆うように、絶縁層250を形成し、絶縁層250上に導電層260を形成する。絶縁層250は、酸化物半導体層230、絶縁層283、及び、絶縁層285に接して設けられる。
【0375】
絶縁層250及び導電層260は、それぞれ、アスペクト比の大きい開口部290内及び開口部270内に形成される。よって、絶縁層250及び導電層260の成膜には、それぞれ、被覆性が良好な成膜方法を用いることが好ましく、CVD法またはALD法などを用いることがより好ましい。
【0376】
続いて、図13(E)に示すように、平坦化処理を行うことで、絶縁層283及び絶縁層285の上面を露出させ、導電層260、絶縁層250、絶縁層283、及び絶縁層285の上面を平坦化させる。平坦化処理としては、CMP処理が好適である。平坦化処理では、少なくとも、導電層260及び絶縁層250における、絶縁層285の上面と重なる部分を除去する。これにより、導電層260における導電層240の上面と重なる部分を除去することができる。これにより、導電層260と導電層240の間に寄生容量が生じることを抑制できる。
【0377】
CMP処理を用いて導電層260における導電層240の上面と重なる部分を除去することで、ドライエッチングを用いる場合などに比べて、マスク枚数の増加を抑制できる。
【0378】
図13(E)に示すように、絶縁層285の上面の高さと導電層260の上面の高さは揃っていることが好ましい。または、絶縁層285の上面の高さと導電層260の上面の高さのうち、一方が他方よりも高くなっていてもよい。絶縁層285と導電層260の材料の研磨レートの違いにより、2層の上面の高さの上下関係を制御できる。
【0379】
続いて、図13(F)に示すように、絶縁層250、絶縁層283、絶縁層285、及び、導電層260上に、導電層265を形成する。
【0380】
導電層265と導電層240aまたは導電層240bとの間には、絶縁層283及び絶縁層285が位置する。これにより、導電層265と導電層240aまたは導電層240bとの物理的距離を大きくでき、導電層265と導電層240の間の寄生容量を小さくすることができる。
【0381】
以上により、本発明の一態様の半導体装置を作製することができる。
【0382】
[加工方法例1]
前述の図12(A)に示す構造から図12(B)に示す構造を作製するための加工方法の一例について、図14(A)乃至図14(F)を用いて説明する。
【0383】
ここでは、導電層220b及び導電層240aとしてITSO膜を形成し、導電層220a及び導電層240bとしてタングステン膜を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0384】
まず、図14(A)に示すように、導電層240b上に、SOC膜261を形成し、SOC膜261上にSOG膜263を形成し、SOG膜263上にレジストマスク267を形成する。レジストマスク267には、導電層220bと重なる位置に開口部を設ける。
【0385】
続いて、図14(B)に示すように、レジストマスク267を用いて、SOG膜263とSOC膜261とに開口部を形成する。当該開口部の形成工程中に、レジストマスク267の一部または全部が消失することがある。レジストマスク267が残存している場合は、レジストマスク267を除去してもよい。
【0386】
続いて、図14(C)に示すように、SOG膜263及びSOC膜261をマスクに用いて、導電層240a及び導電層240bに開口部を形成する。導電層240a及び導電層240bは、異方性の高い条件のドライエッチング法を用いて加工することが好ましい。
【0387】
続いて、図14(D)に示すように、絶縁層280の一部を除去することで、導電層220bの上面を露出させる。絶縁層280の加工方法は特に限定されないが、方法によっては、SOG膜263及びSOC膜261の一部または全てが除去されることがある。図14(D)では、SOC膜261の一部及びSOG膜263の全てが除去され、SOC膜261sが残存している例を示す。
【0388】
続いて、図14(E)に示すように、導電層240bの、SOC膜261sと重なる部分の一部を除去する(サイドエッチングともいえる)。
【0389】
ここで、導電層240bの加工方法は特に限定されない。例えば、ウェットエッチング法、または等方性の高い条件のドライエッチング法を用いて、導電層240bのSOC膜261sと重なる部分の一部を除去することができる。
【0390】
続いて、図14(F)に示すように、導電層220bの一部を除去することで、導電層220aの上面を露出させる。なお、導電層220aの上面を露出させなくてもよく、その場合は、導電層220bに凹部を形成する。導電層240aと導電層220bに同一の材料を用いる場合、SOC膜261sが残存していることで、導電層240aの一部が意図せず消失することを抑制し、導電層220bを選択的に加工できるため好ましい。また、導電層220b及び導電層240aの材料、膜厚等によっては、SOC膜261sが残存していなくてもよい場合がある。導電層220bは、異方性の高い条件のドライエッチング法を用いて加工することが好ましい。また、開口部の洗浄工程により、導電層220bの一部を除去してもよい。
【0391】
その後、SOC膜261sを除去することで、図12(B)に示す構造を作製することができる。
【0392】
[加工方法例2]
前述の図12(A)に示す構造から図12(B)に示す構造を作製するための加工方法の他の一例について、図15(A)乃至図15(F)を用いて説明する。
【0393】
加工方法例1では、絶縁層280等に開口部を設けた後に、導電層240bのサイドエッチングを行う例を示したが、これに限定されない。加工方法例2では、導電層240bのサイドエッチングを行った後に、絶縁層280等に開口部を設ける例を示す。
【0394】
まず、図15(A)に示すように、導電層240b上に、SOC膜261を形成し、SOC膜261上にSOG膜263を形成し、SOG膜263上にレジストマスク267を形成する。レジストマスク267には、導電層220bと重なる位置に開口部を設ける。
【0395】
続いて、図15(B)に示すように、レジストマスク267を用いて、SOG膜263とSOC膜261とに開口部を形成する。なお、図15(A)及び図15(B)の工程は、図14(A)及び図14(B)との工程と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0396】
続いて、図15(C)に示すように、SOG膜263及びSOC膜261をマスクに用いて、導電層240bの一部を除去することで、導電層240aの上面を露出させる。なお、導電層240bは、SOC膜261と重ならない部分だけでなく、SOC膜261と重なる部分の一部も除去する(サイドエッチングともいえる)。
【0397】
ここで、導電層240bの加工方法は特に限定されない。例えば、ウェットエッチング法、または等方性の高い条件のドライエッチング法を用いて、導電層240bを加工することができる。また、異方性の高い条件のドライエッチング法を用いて、導電層240bのSOC膜261と重ならない部分を除去した後、ウェットエッチング法を用いて、SOC膜261と重なる部分の一部を除去してもよい。
【0398】
続いて、図15(D)に示すように、SOG膜263及びSOC膜261をマスクに用いて、導電層240aの一部を除去することで、絶縁層280の上面を露出させる。導電層240aは、異方性の高い条件のドライエッチング法を用いて加工することが好ましい。
【0399】
なお、ここでは、導電層240bのサイドエッチングを行った後に、導電層240aに開口部を設ける例を示すが、これに限定されない。例えば、SOG膜263及びSOC膜261をマスクに用いて、導電層240a及び導電層240bの双方に開口部を形成した後、導電層240bのサイドエッチングを行い、導電層240bのSOC膜261と重なる部分の一部を除去してもよい。
【0400】
続いて、図15(E)に示すように、絶縁層280の一部を除去することで、導電層220bの上面を露出させる。絶縁層280の加工方法は特に限定されないが、方法によっては、SOG膜263及びSOC膜261の一部または全てが除去されることがある。図15(E)では、SOC膜261の一部及びSOG膜263の全てが除去され、SOC膜261sが残存している例を示す。
【0401】
続いて、図15(F)に示すように、導電層220bの一部を除去することで、導電層220aの上面を露出させる。なお、導電層220aの上面を露出させなくてもよく、その場合は、導電層220bに凹部を形成する。導電層240aと導電層220bに同一の材料を用いる場合、SOC膜261sが残存していることで、導電層240aの一部が意図せず消失することを抑制し、導電層220bを選択的に加工できるため好ましい。また、導電層220b及び導電層240aの材料、膜厚等によっては、SOC膜261sが残存していなくてもよい場合がある。導電層220bは、異方性の高い条件のドライエッチング法を用いて加工することが好ましい。また、開口部の洗浄工程により、導電層220bの一部を除去してもよい。
【0402】
その後、SOC膜261sを除去することで、図12(B)に示す構造を作製することができる。
【0403】
[トランジスタ200Jの作製方法例]
前述のトランジスタ200Jを有する半導体装置(図11(A)及び図11(B)参照)の作製方法例について、図16(A)乃至図16(F)を用いて説明する。なお、トランジスタ200Aの作製方法例と同様の部分については、詳細な説明を省略する。
【0404】
まず、トランジスタ200Aの作製方法例と同様に、図12(A)乃至図12(D)までの工程を行う。続いて、図16(A)に示すように、絶縁層280、導電層240a、導電層240b、及び酸化物半導体層230を覆うように、絶縁層250を形成する。
【0405】
その後、絶縁層250上に犠牲層262を形成する。犠牲層262が残存する領域には、後の工程でゲート電極(導電層260)が設けられる。したがって、犠牲層262は、導電層240aの上面と重ならないことが好ましい。図16(B)に示すように、断面視において、犠牲層262の幅は、開口部290の幅Dよりも短いことが好ましい。
【0406】
犠牲層262を絶縁層250上に接して設けることで、犠牲層262を酸化物半導体層230上に接して設ける場合に比べて、半導体装置の作製工程において、酸化物半導体層230に加わるダメージの低減を図ることができ、好ましい。一方で、犠牲層262を酸化物半導体層230上に接して設ける場合、半導体装置の作製工程において、絶縁層250に加わるダメージの低減を図ることができ、好ましい。なお、絶縁層250が積層構造である場合、絶縁層250を構成する一部の層を、犠牲層262よりも前に形成し、残りの層を、犠牲層262を除去した後に形成してもよい。
【0407】
続いて、図16(C)に示すように、絶縁層250及び犠牲層262を覆うように、絶縁層283を形成し、絶縁層283上に絶縁層285を形成する。
【0408】
続いて、図16(D)に示すように、平坦化処理を行うことで、犠牲層262の上面を露出させ、犠牲層262、絶縁層283、及び、絶縁層285の上面を平坦化させる。
【0409】
続いて、図16(E)に示すように、犠牲層262を除去する。
【0410】
続いて、図16(F)に示すように、開口部270及び開口部290を覆うように、導電層260を形成する。導電層260は、開口部270及び開口部290内で、絶縁層250及び絶縁層283に接して設けられる。その後、平坦化処理を行うことで、導電層260、絶縁層283、及び絶縁層285の上面を平坦化させ、絶縁層283、絶縁層285、及び、導電層260上に、導電層265を形成する。
【0411】
以上により、本発明の一態様の半導体装置を作製することができる。
【0412】
[元素の添加]
なお、前述の通り、絶縁層280に、ハロゲン元素を有する領域を設けてもよい。また、酸化物半導体層230にハロゲン元素を有する領域を設けてもよい。また、酸化物半導体層230に前述の第1の元素を有する領域を設けてもよい。また、導電層220a、導電層220b、導電層240a、及び導電層240bの少なくとも一つに当該第1の元素を有する領域を設けてもよい。
【0413】
例えば、図17(A)に示すように、前述の図12(B)に示す構造を形成した後に、絶縁層280の開口部290における側面にハロゲン元素188を供給する。絶縁層280において、ハロゲン元素188が供給された領域を領域280iとして示す。領域280iは、少なくとも、絶縁層280の開口部290における側面を含む。なお、ハロゲン元素188は、導電層240a、導電層240b、導電層220a、及び導電層220bの一つ以上にも供給されることがある。
【0414】
ここで、図17(A)では、開口部290の側壁が、基板の上面に対して垂直である例を示す。また、本発明の一態様の半導体装置において、開口部290の側壁は、基板の上面に対して垂直もしくは概略垂直であるか、テーパ形状である。したがって、基板の上面に対して垂直または概略垂直にハロゲン元素188を添加すると、所望の領域に均一にハロゲン元素188を供給することが難しい場合がある。
【0415】
そこで、図17(A)に示すように、基板の上面に対して0度より大きく90度未満で傾けた方向からハロゲン元素188が添加されることが好ましい。図17(A)では、絶縁層210の上面に対して角度θ188だけ傾けた状態でハロゲン元素188を添加する例を示す。角度θ188は、0度より大きく90度未満が好ましく、15度以上80度以下であることが好ましい。これにより、絶縁層280の開口部290における側面にハロゲン元素を供給することが容易となる。また、一方向からの添加に限定されず、角度を変化させて段階的にハロゲン元素188を供給することで、所望の領域により均一にハロゲン元素188を供給することができ、好ましい。
【0416】
ハロゲン元素188に用いることができる元素は、前述の通りである。
【0417】
ハロゲン元素188の供給には、プラズマイオンドーピング法またはイオン注入法を好適に用いることができる。これらの方法は、深さ方向の濃度プロファイルを、イオンの加速電圧とドーズ量等により、高い精度で制御することができる。
【0418】
なお、例えば、処理する基板、及び、装置におけるイオン照射部の一方または双方を傾けることで、角度θ188を上記の範囲内とすることができる。
【0419】
原料ガスをイオン化し、当該イオンを質量分離して添加するイオン注入法を用いることで、供給されるハロゲン元素188の純度を高めることができる。領域280iは、酸化物半導体層230のチャネル形成領域と接する領域である。したがって、ハロゲン元素188を供給する際に、領域280iに他の不純物元素も供給されると、酸化物半導体層230のチャネル形成領域に当該不純物元素が拡散し、トランジスタの特性及び信頼性に影響を及ぼす恐れがある。したがって、イオン注入法を用い、領域280iにハロゲン元素188を高純度で供給することが好ましい。
【0420】
また、原料ガスをイオン化し、当該イオンを質量分離せずに添加するプラズマイオンドーピング法を用いることで、生産性を高めることができる。
【0421】
ハロゲン元素188の供給に用いるイオン注入装置またはイオンドーピング装置は、LTPSトランジスタなどのSiトランジスタの製造にも用いられるため、既存のLTPS製造ラインの装置を流用することができ、新たな設備投資を必要としないため好ましい。これにより、半導体装置の製造に係る設備投資費用を安くすることができる。
【0422】
ハロゲン元素188の原料ガスとしては、前述のハロゲン元素を含むガスを用いることができる。当該ガスとしては、ハロゲン単体のガス、または、ハロゲン化物ガスのいずれを用いることもできる。フッ素を供給する場合、代表的には、Fガス、BFガス、Cガス、Cガス、Cガス、CFガス、SFガス、CHFガス、CHガス、CHFガスなどを用いることができる。また、塩素を供給する場合には、代表的には、Clガス、BClガス、SiClガス、CClガスを用いることができる。また、これらの原料ガスを水素または貴ガスで希釈した混合ガスを用いてもよい。また、イオン源は、気体に限られず、固体または液体を加熱して気化させてもよい。
【0423】
ハロゲン元素188の供給は、絶縁層280の組成、密度、及び、厚さなどを考慮して、加速電圧及びドーズ量などの条件を設定することで制御することができる。
【0424】
なお、ハロゲン元素188の供給方法に限定は無く、例えばプラズマ処理、または、加熱による熱拡散を利用した処理などを用いてもよい。プラズマ処理法の場合、供給するハロゲン元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、プラズマ処理を行うことによって、ハロゲン元素を供給することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置、アッシング装置、プラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置等を用いることができる。
【0425】
また、ハロゲン元素188の供給工程は、基板を加熱しながら行ってもよい。これにより、絶縁層280において、ハロゲン元素188が添加される際に加わるダメージを、修復することができる。つまり、絶縁層280に対して、ハロゲン元素188の添加と、当該添加に伴い加わるダメージの修復と、を並行して行うことができる。
【0426】
ハロゲン元素188の供給工程における基板温度は、150℃以上基板の歪み点未満が好ましく、さらには200℃以上500℃以下が好ましく、さらには200℃以上450℃以下が好ましく、さらには250℃以上400℃以下が好ましく、さらには250℃以上350℃以下、または、300℃以上400℃以下が好ましく、さらには300℃以上350℃以下が好ましい。
【0427】
その後、基板を加熱しながら酸化物半導体層230を成膜することで、領域280iから酸化物半導体層230にハロゲン元素を供給できることがある。また、酸化物半導体層230を形成した後に行う加熱処理の際に、領域280iから酸化物半導体層230にハロゲン元素を供給できることがある。
【0428】
このように、本発明の一態様の半導体装置では、絶縁層280に、ハロゲン元素188を添加し、その後、絶縁層280から酸化物半導体層230にハロゲン元素188を供給するため、元素添加に伴って酸化物半導体層230のチャネル形成領域にダメージが加わること、及び、元素添加に伴ってチャネル形成領域の結晶性が低くなることなどを抑制できる。したがって、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0429】
または、図17(B)に示すように、前述の図12(C)に示す構造を形成した後に、開口部290内に位置する酸化物半導体層230の側面にハロゲン元素188を供給してもよい。酸化物半導体層230において、ハロゲン元素188が供給された領域を領域230iとして示す。領域230iは、少なくとも、開口部290内に位置する酸化物半導体層230の側面を含む。なお、ハロゲン元素188は、絶縁層280、導電層240a、導電層240b、導電層220a、及び導電層220bの一つ以上にも供給されることがある。
【0430】
また、例えば、図17(C)に示すように、前述の図12(B)に示す構造を形成した後に、導電層220aの上面、導電層240aの上面、及び導電層240bの上面に不純物元素189を供給する。導電層220aにおいて、不純物元素189が供給された領域を220nとして示す。同様に、導電層240a及び導電層240bにおいて、不純物元素189が供給された領域を領域240nとして示す。
【0431】
その後、酸化物半導体層230を成膜し、加熱処理等を行うことで、領域220n、及び、領域240nから、酸化物半導体層230のソース領域及びドレイン領域に不純物元素189を供給することができる。
【0432】
導電層220または導電層240を介して不純物元素189を酸化物半導体層230に供給することで、酸化物半導体層230に直接、不純物元素189を添加する場合に比べて、酸化物半導体層230の結晶性が低下することを抑制できる。そのため、結晶性の低下により電気抵抗が増大することを抑制できる。
【0433】
または、図17(D)に示すように、前述の図12(C)に示す構造を形成した後に、酸化物半導体層230に不純物元素189を供給してもよい。酸化物半導体層230において、不純物元素189が供給された領域を領域230nとして示す。
【0434】
酸化物半導体層230に不純物元素189を添加することで、酸化物半導体層230のシート抵抗、酸化物半導体層230と導電層220とのコンタクト抵抗、及び、酸化物半導体層230と導電層240とのコンタクト抵抗をそれぞれ低減させることができる。
【0435】
酸化物半導体層230に直接、不純物元素189を添加したのち、酸化物半導体層230上に絶縁層250を成膜することで、絶縁層250が不純物元素189の添加によるダメージを受けることを抑制できる。
【0436】
不純物元素189は、基板の上面に対して垂直または概略垂直な方向から添加されることが好ましい。この場合、酸化物半導体層230において、基板の上面に対して傾斜している面、または、垂直もしくは概略垂直な面は、基板の上面に対して平行または概略平行な面と比べて、不純物元素が添加される量が少なくなる。つまり、酸化物半導体層230のソース領域及びドレイン領域は、チャネル形成領域と比較して、不純物元素が添加される量が多くなる。したがって、ソース領域及びドレイン領域を優先的に低抵抗化することができる。
【0437】
図17(D)では、酸化物半導体層230と導電層220aの上面との界面及びその近傍と、酸化物半導体層230と導電層240a、240bの上面との界面及びその近傍と、に領域230nが形成される例を示す。
【0438】
不純物元素189に用いることができる元素は、前述の通りである。
【0439】
不純物元素189の供給には、プラズマイオンドーピング法またはイオン注入法を好適に用いることができる。これらの方法は、深さ方向の濃度プロファイルを、イオンの加速電圧とドーズ量等により、高い精度で制御することができる。
【0440】
原料ガスをイオン化し、当該イオンを質量分離して添加するイオン注入法を用いることで、供給される不純物元素の純度を高めることができる。イオン注入法を用いる場合、不純物元素189として、前述の第1の元素を用いることが好ましく、ホウ素またはリンを用いることがより好ましい。不純物元素189として、酸素と結合して安定化する元素を用いることで、電気抵抗が低い状態で安定した領域230nを実現できる。
【0441】
また、原料ガスをイオン化し、当該イオンを質量分離せずに添加するプラズマイオンドーピング法を用いることで、生産性を高めることができる。プラズマイオンドーピング法を用いる場合、不純物元素189として、第1の元素と、水素と、の双方を用いることが好ましく、ホウ素またはリンと、水素と、の双方を用いることがさらに好ましい。不純物元素189として、酸素と結合して安定化する元素と、水素と、の双方を用いることで、領域230nの電気抵抗を低くしやすく、かつ、電気抵抗が低い状態を安定して維持できる。
【0442】
不純物元素189の供給に用いるイオン注入装置またはイオンドーピング装置は、LTPSトランジスタなどのSiトランジスタの製造にも用いられるため、既存のLTPS製造ラインの装置を流用することができ、新たな設備投資を必要としないため好ましい。これにより、半導体装置の製造に係る設備投資費用を安くすることができる。
【0443】
不純物元素189の供給処理において、酸化物半導体層230のうち、導電層220aの上面または導電層240a、240bの上面と重なる部分の不純物元素の濃度が、他の領域の当該不純物元素の濃度よりも高くなるように、処理条件を制御することが好ましい。これにより、酸化物半導体層230のソース領域及びドレイン領域に、最適な濃度の不純物元素189を供給することができる。
【0444】
不純物元素189の原料ガスとしては、前述の不純物元素を含むガスを用いることができる。ホウ素を供給する場合、代表的にはBガス、BFガスなどを用いることができる。また、リンを供給する場合には、代表的にはPHガスを用いることができる。また、これらの原料ガスを水素または貴ガスで希釈した混合ガスを用いてもよい。
【0445】
その他、原料ガスとして、CH、N、NH、AlH、AlCl、SiH、Si、F、HF、H、(CMg、及び貴ガス等を用いることができる。また、イオン源は、気体に限られず、固体または液体を加熱して気化させてもよい。
【0446】
例えば、ホウ素及び水素を含むガスを用いて、不純物元素189として、ホウ素と水素を供給することが好ましい。この場合、質量分離せずに不純物元素189を添加でき、かつ、酸化物半導体層230の低抵抗化が容易となるため、半導体装置の生産性及び特性の双方の向上を図ることができ、好ましい。
【0447】
また、ハロゲン元素188の供給工程と不純物元素189の供給工程で同一の原料ガスを用いると、製造コストを抑制でき、好ましい。例えば、BFガスをイオン化し、当該イオンを質量分離することで、ハロゲン元素188としてフッ素を供給することができ、また、不純物元素189としてホウ素を供給することができる。
【0448】
不純物元素189の供給は、酸化物半導体層230の組成、密度、及び、厚さなどを考慮して、加速電圧及びドーズ量などの条件を設定することで制御することができる。
【0449】
なお、不純物元素189の供給方法に限定は無く、例えばプラズマ処理、または、加熱による熱拡散を利用した処理などを用いてもよい。プラズマ処理法の場合、供給する不純物元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、プラズマ処理を行うことによって、不純物元素を供給することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置、アッシング装置、プラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置等を用いることができる。
【0450】
また、不純物元素189の供給工程は、基板を加熱しながら行うことが好ましい。これにより、酸化物半導体層230において、不純物元素189が添加される際に加わるダメージを、修復することができる。つまり、酸化物半導体層230に対して、不純物元素189の添加と、当該添加に伴い加わるダメージの修復と、を並行して行うことができる。
【0451】
不純物元素189の供給工程における基板温度は、150℃以上基板の歪み点未満が好ましく、さらには200℃以上500℃以下が好ましく、さらには200℃以上450℃以下が好ましく、さらには250℃以上400℃以下が好ましく、さらには250℃以上350℃以下、または、300℃以上400℃以下が好ましく、さらには300℃以上350℃以下が好ましい。
【0452】
不純物元素189を供給した後に、加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理を行うことで、不純物元素189の供給工程で酸化物半導体層230が受けたダメージの修復を図ることができる。
【0453】
不純物元素189として、酸素と結合して安定化する元素を用いることで、半導体装置の作製工程中にかかる熱などで不純物元素189が脱離することを抑制できる。したがって、不純物元素189の添加後に、加熱処理を行う、または基板を加熱しながら成膜工程などを行っても、領域230nにおいて、電気抵抗が低い状態を維持することができる。
【0454】
また、図17(E)に示すように、絶縁層250を介して、酸化物半導体層230に不純物元素189を添加してもよい。なお、このとき、絶縁層250にも不純物元素189が供給されることがある。領域230nは、絶縁層250よりも不純物元素189の濃度が高い部分を有すると、領域230nの電気抵抗をより低くできるため、好ましい。
【0455】
絶縁層250を介して不純物元素189を酸化物半導体層230に供給することで、酸化物半導体層230に直接、不純物元素189を添加する場合に比べて、酸化物半導体層230の結晶性が低下することを抑制できる。そのため、結晶性の低下により電気抵抗が増大することを抑制できる。
【0456】
また、不純物元素189の添加後に、絶縁層250を成膜すると、絶縁層250の成膜室内が汚染される恐れがある。このことからも、絶縁層250を成膜した後に、不純物元素189を添加することが好ましい。
【0457】
ここで、不純物元素189が添加される方向における絶縁層250の厚さは、導電層220aの上面、導電層240aの上面、または導電層240bの上面に沿って設けられている領域に比べて、絶縁層280の側面に沿って設けられている領域の方が厚くなる。これにより、酸化物半導体層230における、導電層220aの上面、導電層240aの上面、または導電層240bの上面に沿って設けられている領域は、絶縁層280の側面に沿って設けられている領域に比べて、不純物元素189が添加される量が多くなる。このように、酸化物半導体層230のチャネル形成領域に不純物元素189が入ることを抑制し、ソース領域及びドレイン領域を優先的に低抵抗化することができる。
【0458】
以上のように、本発明の一態様の半導体装置は、酸化物半導体にゲート電界がかかりやすい構成を有する。したがって、トランジスタの電気特性を良好にすることができる。
【0459】
また、本発明の一態様の半導体装置は、ソース電極またはドレイン電極と、ゲート電極との間の寄生容量、並びに、ソース電極またはドレイン電極と、ゲート配線との間の寄生容量が低減された構成を有する。したがって、回路の周波数特性を高めることができる。
【0460】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0461】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の記憶装置について図18乃至図21を用いて説明する。本発明の一態様の記憶装置は、メモリセルを有する。当該メモリセルは、トランジスタ及び容量素子を有する。
【0462】
<記憶装置の構成例1>
図18(A)乃至図18(C)を用いて、トランジスタ及び容量素子を有する記憶装置の構成を説明する。図18(A)は、トランジスタ200A及び容量素子100を有する記憶装置の平面図である。図18(B)は、図18(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図18(C)は、図18(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。
【0463】
図18(A)乃至図18(C)に示す記憶装置は、基板(図示しない)上の絶縁層140と、絶縁層140上の導電層110と、導電層110上のメモリセル150と、導電層110上の絶縁層180と、絶縁層280と、絶縁層283と、絶縁層285と、絶縁層285上の導電層265と、を有する。絶縁層140、絶縁層180、絶縁層280、絶縁層283、及び絶縁層285は、層間膜として機能する。導電層110及び導電層265は、配線として機能する。
【0464】
メモリセル150は、導電層110上の容量素子100と、容量素子100上のトランジスタ200Aと、を有する。
【0465】
容量素子100は、導電層110上の導電層115と、導電層115上の絶縁層130と、絶縁層130上の導電層220aと、を有する。導電層220aは一対の電極の一方(上部電極と呼ぶ場合がある)として機能し、導電層115は一対の電極の他方(下部電極と呼ぶ場合がある)として機能し、絶縁層130は誘電体として機能する。つまり、容量素子100は、MIM(Metal-Insulator-Metal)容量を構成している。なお、導電層220bを容量素子100の上部電極の一部とみなすこともできる。
【0466】
図18(B)及び図18(C)に示すように、絶縁層180には、導電層110に達する開口部190が設けられている。導電層115の少なくとも一部は、開口部190内に配置されている。なお、導電層115は、開口部190内において導電層110の上面に接する領域と、開口部190内において絶縁層180の側面に接する領域と、絶縁層180の上面の少なくとも一部に接する領域と、を有する。絶縁層130は、少なくとも一部が開口部190内に位置するように配置されている。導電層220aは、少なくとも一部が開口部190内に位置するように配置されている。なお、導電層220aは、図18(B)及び図18(C)に示すように、開口部190を埋め込むように設けることが好ましい。なお、開口部190の内部に設ける膜は、それぞれ、ALD法を用いて形成することが好ましい。これにより、当該膜の被覆性が良好となる。例えば、導電層115、絶縁層130、及び、導電層220aは、それぞれ、ALD法を用いて形成することが好ましい。
【0467】
容量素子100は、開口部190内において、底面だけでなく、側面においても上部電極と下部電極とが誘電体を挟んで対向する構成となっており、単位面積当たりの静電容量を大きくすることができる。よって、開口部190の深さを深くするほど、容量素子100の静電容量を大きくすることができる。このように容量素子100の単位面積当たりの静電容量を大きくすることにより、記憶装置の読み出し動作を安定にすることができる。また、記憶装置の微細化または高集積化を推し進めることができる。
【0468】
図18(B)及び図18(C)では、開口部190の側壁が、導電層110の上面に対して垂直である例を示す。このとき、開口部190は円筒形状を有する。このような構成にすることで、記憶装置の微細化または高集積化を図ることができる。
【0469】
開口部190の側壁及び導電層110の上面に沿って導電層115及び絶縁層130が積層して設けられている。また、開口部190を埋めるように、絶縁層130上に導電層220aが設けられている。このような構成を有する容量素子100は、トレンチ型容量またはトレンチ容量と呼称してもよい。
【0470】
また、容量素子100上に、絶縁層280が配置されている。絶縁層280は、絶縁層130上に位置する部分と、導電層220b上に位置する部分と、を有する。
【0471】
トランジスタ200Aは、導電層220aと、導電層220a上の導電層220bと、絶縁層280上の導電層240と、酸化物半導体層230と、酸化物半導体層230上の絶縁層250と、絶縁層250上の導電層260と、を有する。酸化物半導体層230は半導体層として機能し、導電層260はゲート電極として機能し、絶縁層250はゲート絶縁層として機能し、導電層220a及び導電層220bはソース電極及びドレイン電極の一方として機能し、導電層240はソース電極及びドレイン電極の他方として機能する。
【0472】
トランジスタ200Aについては、実施の形態1(図1及び図2)における説明を参照することができるため、詳細な説明は省略する。また、メモリセル150が有するトランジスタは、トランジスタ200Aに限定されず、実施の形態1で例示した各トランジスタを適用することができる。
【0473】
図18(A)乃至図18(C)に示すように、トランジスタ200Aは、容量素子100と重なるように設けられる。また、トランジスタ200Aの構造の一部が設けられる開口部290及び開口部270は、容量素子100の構造の一部が設けられる開口部190と重なる領域を有する。特に、導電層220a(及び導電層220b)は、トランジスタ200Aのソース電極及びドレイン電極の一方としての機能と、容量素子100の上部電極としての機能とを有するため、トランジスタ200Aと容量素子100は、構造の一部を共有することになる。このような構成にすることで、平面視において、占有面積を大きく増加させることなく、トランジスタ200A及び容量素子100を設けることができる。これにより、メモリセル150の占有面積を低減できるため、メモリセル150を高密度に配置し、記憶装置の記憶容量を大きくすることができる。言い換えると、記憶装置を高集積化することができる。図18(B)及び図18(C)では、開口部190の幅が、開口部290の幅及び開口部270の幅のそれぞれよりも小さい例を示す。開口部190の幅と、開口部290の幅または開口部270の幅と、の大小関係は特に限定されない。微細化の観点から、開口部190の幅は、開口部290の幅と同じかそれよりも小さいことが好ましい。同様に、開口部190の幅は、開口部270の幅と同じかそれよりも小さいことが好ましい。
【0474】
また、トランジスタ200Aを容量素子100の上方に設けることで、トランジスタ200Aは、容量素子100の作製時の熱履歴を受けない。したがって、トランジスタ200Aにおいて、しきい値電圧の変動、及び寄生抵抗の増大などの電気特性の劣化、並びに電気特性の劣化に伴う電気特性のばらつきの増大などを抑制できる。
【0475】
本実施の形態に示す記憶装置の回路図を図23(A)に示す。図23(A)に示すように、図18(A)乃至図18(C)に示す構成は、メモリセルとして機能する。メモリセル951は、トランジスタM1と容量素子CAとを有する。ここで、トランジスタM1はトランジスタ200Aに対応し、容量素子CAは容量素子100に対応する。
【0476】
トランジスタM1のソース及びドレインの一方は、容量素子CAの一対の電極の一方に接続される。トランジスタM1のソース及びドレインの他方は、配線BILに接続される。トランジスタM1のゲートは、配線WOLに接続される。容量素子CAの一対の電極の他方は、配線CALに接続される。
【0477】
ここで、配線BILは導電層240に対応し、配線WOLは導電層265に対応し、配線CALは導電層110に対応する。図18(A)乃至図18(C)に示すように、導電層265はX方向に延在して設けられ、導電層240はY方向に延在して設けられることが好ましい。このような構成にすることで、配線BILと、配線WOLは互いに交差して設けられる。また、図18(A)では、配線CAL(導電層110)が面状に設けられているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、配線CALは、配線WOL(導電層265)に平行に設けられてもよいし、配線BIL(導電層240)に平行に設けられてもよい。
【0478】
なお、メモリセルについては、後の実施の形態で詳細に説明する。
【0479】
[容量素子100]
容量素子100は、導電層115と、絶縁層130と、導電層220aと、を有する。また、導電層115の下方に導電層110が設けられている。導電層115は、導電層110と接する領域を有する。
【0480】
導電層110は、絶縁層140上に設けられる。導電層110は、配線CALとして機能し、例えば、面状に設けることができる。導電層110は、実施の形態1の[導電層]の項目に記載の導電性材料を用いて、単層または積層で形成することができる。例えば、導電層110として、タングステンなどの、導電性が高い導電性材料を用いることができる。このように導電性が高い導電性材料を用いることで、導電層110の導電性を向上させ、配線CALとして十分に機能させることができる。
【0481】
また、導電層115は、酸化されにくい導電性材料、または、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料などを、単層または積層で用いることが好ましい。例えば、窒化チタン、またはシリコンを添加したインジウムスズ酸化物などを用いてもよい。または、例えば、タングステンの上に窒化チタンを積層した構造にしてもよい。または、例えば、第1の窒化チタンの上にタングステンを積層し、当該タングステンの上に第2の窒化チタンを積層した構造にしてもよい。このような構造にすることで、絶縁層130に酸化物を用いる場合、絶縁層130によって導電層115が酸化されることを抑制できる。また、絶縁層180に酸化物を用いる場合、絶縁層180によって導電層115が酸化されることを抑制できる。
【0482】
絶縁層130は、導電層115上に設けられる。絶縁層130は、導電層115の上面及び側面に接するように設けられる。つまり、絶縁層130は、導電層115の側端部を覆う構造にすることが好ましい。これにより、導電層115と導電層220aがショートすることを防止できる。
【0483】
また、絶縁層130の側端部と導電層115の側端部が一致する構造にしてもよい。このような構造にすることで、絶縁層130と導電層115を同一のマスクを用いて形成することができ、記憶装置の作製工程を簡略化することができる。
【0484】
絶縁層130として、比誘電率が高い(high-k)材料を用いることが好ましい。絶縁層130としてhigh-k材料を用いることで、リーク電流を抑制できる程度に絶縁層130を厚くし、かつ容量素子100の静電容量を十分確保することができる。
【0485】
また、絶縁層130は、high-k材料からなる絶縁層を積層して用いることが好ましく、比誘電率が高い(high-k)材料と、当該high-k材料より絶縁耐力が大きい材料との積層構造を用いることが好ましい。例えば、絶縁層130として、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムの順番で積層された絶縁膜を用いることができる。また、例えば、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムの順番で積層された絶縁膜を用いることができる。また、例えば、ハフニウムジルコニウム酸化物、酸化アルミニウム、ハフニウムジルコニウム酸化物、酸化アルミニウムの順番で積層された絶縁膜を用いることができる。酸化アルミニウムのような、比較的絶縁耐力が大きい絶縁層を積層して用いることで、絶縁耐力が向上し、容量素子100の静電破壊を抑制できる。
【0486】
また、絶縁層130として、強誘電性を有しうる材料を用いてもよい。強誘電性を有しうる材料の詳細については、実施の形態1の記載も参照できる。
【0487】
ハフニウム及びジルコニウムの一方または両方を含む金属酸化物は、数nmといった薄膜に加工しても強誘電性を有しうることができるため、絶縁層130として好ましい。絶縁層130の膜厚は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましく、10nm以下(代表的には、2nm以上9nm以下)がさらに好ましい。また、例えば、膜厚を、8nm以上12nm以下にすることが好ましい。薄膜化することができる強誘電体層とすることで、容量素子100を、微細化されたトランジスタなどの半導体素子に組み合わせて半導体装置を形成することができる。
【0488】
また、ハフニウム及びジルコニウムの一方または両方を含む金属酸化物は、微小な面積でも強誘電性を有しうることができるため、絶縁層130として好ましい。例えば、強誘電体層の平面視における面積(占有面積)が、100μm以下、10μm以下、1μm以下、または0.1μm以下であっても、強誘電性を有することができる。また、10000nm以下、または1000nm以下であっても、強誘電性を有する場合がある。面積が小さい強誘電体層とすることで、容量素子100の占有面積を小さくすることができる。
【0489】
強誘電体は、絶縁体であって、外部から電場を与えることによって内部に分極が生じ、かつ当該電場をゼロにしても分極が残る性質を有する。このため、当該材料を誘電体として用いた容量素子(以下、強誘電体キャパシタと呼ぶ場合がある)を用いて、不揮発性の記憶素子を形成することができる。強誘電体キャパシタを用いた、不揮発性の記憶素子は、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、強誘電体メモリなどと呼ばれることがある。例えば、強誘電体メモリは、トランジスタと、強誘電体キャパシタを有し、トランジスタのソース及びドレインの一方が、強誘電体キャパシタの一方の端子に電気的に接続された構成を有する。よって、容量素子100として強誘電体キャパシタを用いる場合、本実施の形態で示す記憶装置は、強誘電体メモリとして機能する。
【0490】
導電層220aは、絶縁層130の上面の一部に接して設けられる。導電層220aの側端部は、X方向及びY方向のいずれにおいても、導電層115の側端部よりも内側に位置することが好ましい。なお、絶縁層130が導電層115の側端部を覆う構造においては、導電層220aの側端部は、導電層115の側端部よりも外側に位置してもよい。
【0491】
絶縁層180は層間膜として機能するため、比誘電率が低いことが好ましい。比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。絶縁層180としては、比誘電率が低い材料を含む絶縁層を、単層または積層で用いることができる。酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。
【0492】
なお、図18(B)及び図18(C)では、絶縁層180を単層で示したが、本発明はこれに限られるものではない。絶縁層180は、2層の積層構造であってもよく、3層以上の積層構造であってもよい。
【0493】
<記憶装置の構成例2>
本実施の形態に示す、トランジスタ200A及び容量素子100を有するメモリセル150は、記憶装置のメモリセルとして用いることができる。トランジスタ200Aは、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。トランジスタ200Aは、オフ電流が小さいため、これを記憶装置に用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、または、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ないため、記憶装置の消費電力を十分に低減できる。また、トランジスタ200Aの周波数特性が高いため、記憶装置の読み出し、及び書き込みを高速に行うことができる。
【0494】
メモリセル150を3次元的にマトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成することができる。
【0495】
図19(A)は、記憶装置の平面図である。図19(A)では、X方向及びY方向に2個×2個のメモリセル(メモリセル150a乃至メモリセル150d)を配置する例を示す。
【0496】
図19(B)は、図19(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。図19(A)及び図19(B)では、2個のメモリセル(図19(B)ではメモリセル150a及びメモリセル150b)が共通の配線(導電層246)に接続されている。
【0497】
ここで、図19(A)及び図19(B)に示すメモリセル150a及びメモリセル150bのそれぞれは、メモリセル150と同様の構成を有する。メモリセル150aは、容量素子100a及びトランジスタ200aを有し、メモリセル150bは、容量素子100b及びトランジスタ200bを有する。また、図19(A)に示すメモリセル150c及びメモリセル150dについても、メモリセル150と同様の構成を有する。よって、図19(A)及び図19(B)に示す記憶装置において、図18に示した記憶装置を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。また、メモリセル150a乃至メモリセル150dの詳細については、<記憶装置の構成例1>におけるメモリセル150の記載を参照できる。
【0498】
図19(A)及び図19(B)に示すように、配線WOLとして機能する導電層265は、メモリセル150a及びメモリセル150bに、それぞれ設けられる。また、図19(A)に示すように、1つの導電層265が、メモリセル150aとメモリセル150cに共通して設けられ、他の1つの導電層265が、メモリセル150bとメモリセル150dに共通して設けられる。また、配線BILの一部として機能する1つの導電層240は、メモリセル150a及びメモリセル150bに、共通に設けられる。つまり、導電層240は、メモリセル150aの酸化物半導体層230と、メモリセル150bの酸化物半導体層230に接する。また、他の1つの導電層240が、メモリセル150c及びメモリセル150dに、共通に設けられる。
【0499】
図19(B)では、導電層240が、導電層240aと、導電層240a上の導電層240bと、の2層構造である例を示す。
【0500】
ここで、図19(A)及び図19(B)に示す記憶装置は、メモリセル150a及びメモリセル150bと電気的に接続してプラグ(接続電極とよぶこともできる)として機能する、導電層245及び導電層246を有する。導電層245は、絶縁層140、絶縁層180、絶縁層130、及び、絶縁層280に形成された開口部内に配置され、導電層240aの下面に接する。また、導電層246は、絶縁層287、絶縁層285、絶縁層283、及び酸化物半導体層230に形成された開口部内に配置され、導電層240bの上面に接する。なお、導電層245及び導電層246は、導電層240に適用可能な導電性材料などを用いることができる。
【0501】
導電層246は、導電層240aの上面と接する構成とすることもできる。または、導電層246は、酸化物半導体層230の上面と接する構成とすることもできる。つまり、導電層240bは、導電層246と重なる位置に開口部を有していてもよい。また、酸化物半導体層230は、導電層246と重なる位置に開口部を有していなくてもよい。メモリセルとプラグの接続箇所としては、導電層240及び酸化物半導体層230を構成する各層のうち、導電層246とのコンタクト抵抗が低い層が、導電層246と接することが好ましい。
【0502】
同様に、導電層245は、導電層240bの下面または酸化物半導体層230の下面と接する構成とすることもできる。つまり、導電層240aは、導電層246と重なる位置に開口部を有していてもよい。導電層240及び酸化物半導体層230を構成する層のうち、導電層245とのコンタクト抵抗が低い層が、導電層245と接することが好ましい。
【0503】
また、導電層240及び酸化物半導体層230を構成する層のうち、配線抵抗が低い層が、導電層245及び導電層246と接することが好ましい。
【0504】
絶縁層287は、層間膜として機能するため、比誘電率が低いことが好ましい。比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。
【0505】
また、絶縁層287中の水、水素などの不純物濃度は低減されていることが好ましい。これにより、酸化物半導体層230のチャネル形成領域に、水、水素などの不純物が混入することを抑制できる。
【0506】
導電層245及び導電層246は、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、及びダイオードなどの回路素子、配線、電極、または、端子と、メモリセル150a及びメモリセル150bを電気的に接続するためのプラグまたは配線として機能する。例えば、導電層245が、図19(B)に示す記憶装置の下に設けられたセンスアンプ(図示しない)に電気的に接続され、導電層246が、図19(B)に示す記憶装置の上に設けられた同様の記憶装置(図示しない)と電気的に接続される構成にすることができる。この場合、導電層245及び導電層246は、配線BILの一部として機能する。このように、図19(B)に示す記憶装置の上または下に記憶装置などを設けることで、単位面積当たりの記憶容量を大きくすることができる。
【0507】
また、メモリセル150aとメモリセル150bは、一点鎖線A3-A4の垂直二等分線を対称軸とした線対称の構成となっている。よって、トランジスタ200aとトランジスタ200bも、導電層245及び導電層246を挟んで、対称の位置に配置される。ここで、導電層240は、トランジスタ200aのソース電極及びドレイン電極の他方としての機能と、トランジスタ200bのソース電極及びドレイン電極の他方としての機能とを有する。また、トランジスタ200a及びトランジスタ200bは、プラグとして機能する導電層245及び導電層246を共有する。このように、2つのトランジスタと、プラグとの接続を上述の構成とすることで、微細化または高集積化が可能な記憶装置を提供できる。
【0508】
なお、配線CALとして機能する導電層110は、メモリセル150a及びメモリセル150bに、それぞれ設けてもよいし、メモリセル150a及びメモリセル150bに、共通に設けてもよい。ただし、図19(B)に示すように、導電層110は、導電層245と離隔して設け、導電層110と導電層245がショートしないようにする。
【0509】
また、図20では、図19(A)に示す4個のメモリセルがZ方向にn層(nは3以上の整数)積層されている例を示す。図20は、図19(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。
【0510】
図20に示す記憶装置は、n層のメモリ層160を有する。具体的には、メモリ層160[1]上にメモリ層160[2]が設けられ、メモリ層160[2]上に、さらに、(n-2)層のメモリ層が設けられており、最上段にメモリ層160[n]が設けられている。1層のメモリ層160が有するメモリセルの数は特に限定されず、2以上のメモリセルを有することができる。導電層245、導電層246、導電層247、及び導電層248等によって、n層のメモリ層160が有するメモリセルが、n層のメモリ層160の下に設けられたセンスアンプ(図示しない)と電気的に接続される。
【0511】
図20では、導電層245が導電層240の下面と接し、導電層246が酸化物半導体層230の上面と接する例を示している。前述の通り、導電層245及び導電層246などのプラグと、各メモリセルとの接続箇所は様々な態様が可能であり、図20の構成に限定されない。
【0512】
図20に示すように、複数のメモリセルを積層することにより、メモリセルアレイの占有面積を増やすことなく、セルを集積して配置することができる。つまり、3Dメモリセルアレイを構成することができる。
【0513】
図21に、センスアンプを含む駆動回路が設けられる層上に、メモリセルを有する層が積層して設けられた記憶装置の断面構成例を示す。
【0514】
図21では、トランジスタ300の上方にメモリセル150(トランジスタ200A及び容量素子100)が設けられている。
【0515】
トランジスタ300は、センスアンプが有するトランジスタの一つである。
【0516】
図21に示すメモリセル150については、<記憶装置の構成例1>におけるメモリセル150の記載を参照できる。
【0517】
図21に示すように、メモリセル150と重なるように、センスアンプを設ける構成にすることで、ビット線を短くすることができる。これにより、ビット線容量を小さくでき、記憶装置の高速駆動が可能となる。
【0518】
図21に示す記憶装置は、実施の形態3で説明する半導体装置900と対応させることができる。具体的には、トランジスタ300は、半導体装置900におけるセンスアンプ927が有するトランジスタに相当する。また、メモリセル150は、メモリセル950と対応する。
【0519】
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、ゲートとして機能する導電層316と、ゲート絶縁層として機能する絶縁層315と、基板311の一部からなる半導体領域313と、ソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a及び低抵抗領域314bと、を有する。トランジスタ300は、pチャネル型またはnチャネル型のいずれでもよい。
【0520】
ここで、図21に示すトランジスタ300はチャネルが形成される半導体領域313(基板311の一部)が凸形状を有する。また、半導体領域313の側面及び上面を、絶縁層315を介して、導電層316が覆うように設けられている。なお、導電層316は仕事関数を調整する材料を用いてもよい。このようなトランジスタ300は半導体基板の凸部を利用していることからFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するためのマスクとして機能する絶縁層を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体膜を形成してもよい。
【0521】
なお、図21に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成または駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いることができる。
【0522】
各構造体の間には、層間膜、配線、及びプラグ等が設けられた配線層が設けられていてもよい。また、配線層は、設計に応じて複数層設けることができる。ここで、プラグまたは配線として機能する導電層は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と電気的に接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電層の一部が配線として機能する場合、及び導電層の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0523】
例えば、トランジスタ300上には、層間膜として、絶縁層320、絶縁層322、絶縁層324、及び絶縁層326が順に積層して設けられている。また、絶縁層320及び絶縁層322には導電層328が埋め込まれ、絶縁層324及び絶縁層326には導電層330が埋め込まれている。なお、導電層328及び導電層330はプラグ、または配線として機能する。
【0524】
また、層間膜として機能する絶縁層は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。例えば、絶縁層322の上面は、平坦性を高めるためにCMP法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0525】
絶縁層326及び導電層330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図21において、絶縁層350、絶縁層352、及び絶縁層354が順に積層して設けられている。また、絶縁層350、絶縁層352、及び絶縁層354には、導電層356が形成されている。導電層356は、プラグ、または配線として機能する。
【0526】
層間膜として機能する、絶縁層352、及び絶縁層354等は、前述の、半導体装置または記憶装置に用いることができる絶縁層を用いることができる。
【0527】
プラグ、または配線として機能する導電層、例えば、導電層328、導電層330、及び導電層356等としては、導電層240に適用可能な導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステン、モリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウム、銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0528】
トランジスタ200Aが有する導電層240は、導電層643、導電層642、導電層644、導電層645、導電層646、導電層356、導電層330、及び、導電層328を介して、トランジスタ300のソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314bと、電気的に接続されている。
【0529】
導電層643は、絶縁層280に埋め込まれている。導電層642は、絶縁層130上に設けられ、絶縁層641に埋め込まれている。導電層642は、導電層220aと同一の材料、及び、同一の工程で作製することができる。導電層644は、絶縁層180及び絶縁層130に埋め込まれている。導電層645は、絶縁層647に埋め込まれている。導電層645は、導電層110と同一の材料、及び、同一の工程で作製することができる。導電層646は、絶縁層648に埋め込まれている。絶縁層648によって、トランジスタ300と、導電層110と、が電気的に絶縁されている。
【0530】
以上のように、本実施の形態の記憶装置は、寄生容量が低減されたトランジスタを有するため、動作速度を高めることができる。また、本実施の形態の記憶装置は、容量素子とトランジスタと、を重ねて有するため、メモリセルの平面視における占有面積を小さくでき、集積度の高い記憶装置を実現できる。
【0531】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0532】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置900について説明する。半導体装置900は記憶装置として機能できる。
【0533】
図22に、半導体装置900の構成例を示すブロック図を示す。図22に示す半導体装置900は、駆動回路910と、メモリアレイ920と、を有する。メモリアレイ920は、1以上のメモリセル950を有する。図22では、メモリアレイ920がマトリクス状に配置された複数のメモリセル950を有する例を示している。
【0534】
メモリセル950には、実施の形態2で説明した記憶装置(メモリセル150など)を適用することができる。
【0535】
駆動回路910は、PSW931(パワースイッチ)、PSW932、及び周辺回路915を有する。周辺回路915は、周辺回路911、コントロール回路912(Control Circuit)、及び電圧生成回路928を有する。
【0536】
半導体装置900において、各回路、各信号及び各電圧は、必要に応じて、適宜取捨することができる。あるいは、他の回路または他の信号を追加してもよい。信号BW、信号CE、信号GW、信号CLK、信号WAKE、信号ADDR、信号WDA、信号PON1、信号PON2は外部からの入力信号であり、信号RDAは外部への出力信号である。信号CLKはクロック信号である。
【0537】
また、信号BW、信号CE、及び信号GWは制御信号である。信号CEはチップイネーブル信号であり、信号GWはグローバル書き込みイネーブル信号であり、信号BWはバイト書き込みイネーブル信号である。信号ADDRはアドレス信号である。信号WDAは書き込みデータであり、信号RDAは読み出しデータである。信号PON1、信号PON2は、パワーゲーティング制御用信号である。なお、信号PON1、信号PON2は、コントロール回路912で生成してもよい。
【0538】
コントロール回路912は、半導体装置900の動作全般を制御する機能を有するロジック回路である。例えば、コントロール回路912は、信号CE、信号GW及び信号BWを論理演算して、半導体装置900の動作モード(例えば、書き込み動作、読み出し動作)を決定する。または、コントロール回路912は、この動作モードが実行されるように、周辺回路911の制御信号を生成する。
【0539】
電圧生成回路928は負電圧を生成する機能を有する。信号WAKEは、信号CLKの電圧生成回路928への入力を制御する機能を有する。例えば、信号WAKEとしてHレベルの信号が与えられると、信号CLKが電圧生成回路928へ入力され、電圧生成回路928は負電圧を生成する。
【0540】
周辺回路911は、メモリセル950に対するデータの書き込み及び読み出しをするための回路である。周辺回路911は、行デコーダ941(Row Decoder)、列デコーダ942(Column Decoder)、行ドライバ923(Row Driver)、列ドライバ924(Column Driver)、入力回路925(Input Cir.)、出力回路926(Output Cir.)、及びセンスアンプ927(Sense Amplifier)を有する。
【0541】
行デコーダ941及び列デコーダ942は、信号ADDRをデコードする機能を有する。行デコーダ941は、アクセスする行を指定するための回路であり、列デコーダ942は、アクセスする列を指定するための回路である。行ドライバ923は、行デコーダ941が指定する行を選択する機能を有する。列ドライバ924は、データをメモリセル950に書き込む機能、メモリセル950からデータを読み出す機能、読み出したデータを保持する機能等を有する。
【0542】
入力回路925は、信号WDAを保持する機能を有する。入力回路925が保持するデータは、列ドライバ924に出力される。入力回路925の出力データが、メモリセル950に書き込むデータ(Din)である。列ドライバ924がメモリセル950から読み出したデータ(Dout)は、出力回路926に出力される。出力回路926は、Doutを保持する機能を有する。また、出力回路926は、Doutを半導体装置900の外部に出力する機能を有する。出力回路926から出力されるデータが信号RDAである。
【0543】
PSW931は周辺回路915へのVDDの供給を制御する機能を有する。PSW932は、行ドライバ923へのVHMの供給を制御する機能を有する。ここでは、半導体装置900の高電源電位がVDDであり、低電源電位はGND(接地電位)である。また、VHMは、ワード線を高レベルにするために用いられる高電源電位であり、VDDよりも高い。信号PON1によってPSW931のオン・オフが制御され、信号PON2によってPSW932のオン・オフが制御される。図22では、周辺回路915において、VDDが供給される電源ドメインの数を1としているが、複数にすることもできる。この場合、各電源ドメインに対してパワースイッチを設ければよい。
【0544】
図23(A)乃至図23(H)を用いて、メモリセル950に適用できるメモリセルの構成例について説明する。
【0545】
なお、以下において、2つの構成要素が接続すると記載した場合には、回路素子(トランジスタ、スイッチ、ダイオード、抵抗素子など)を介して電気的に接続されることを含む。電気的接続とは、2つの構成要素間で電流が流れる状態になりうることをいう。なお、2つの構成要素間がスイッチまたはトランジスタを介して接続される場合も、これらがオン状態のときに電流が流れる状態になりうるため、電気的接続に含まれる。
【0546】
[DOSRAM]
図23(A)に、DRAMのメモリセルの回路構成例を示す。本明細書などにおいて、OSトランジスタを用いたDRAMを、DOSRAM(Dynamic Oxide Semiconductor Random Access Memory)と呼ぶ。メモリセル951は、トランジスタM1と、容量素子CAと、を有する。
【0547】
なお、トランジスタM1は、フロントゲート(単にゲートと呼ぶ場合がある。)、及びバックゲートを有していてもよい。このとき、バックゲートは定電位または信号が与えられる配線に接続されていてもよいし、フロントゲートとバックゲートとが接続されていてもよい。
【0548】
トランジスタM1の第1端子は、容量素子CAの第1端子と接続され、トランジスタM1の第2端子は、配線BILと接続され、トランジスタM1のゲートは、配線WOLと接続されている。容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。
【0549】
配線BILは、ビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CAの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、及び読み出し時において、配線CALには、低レベル電位(基準電位という場合がある。)を印加するのが好ましい。
【0550】
データの書き込み及び読み出しは、配線WOLに高レベル電位を印加し、トランジスタM1をオン状態にし、配線BILと容量素子CAの第1端子を導通状態(電流を流すことが可能な状態)にすることで行われる。
【0551】
また、メモリセル950に用いることができるメモリセルは、メモリセル951に限定されず、回路構成の変更を行うことができる。例えば、図23(B)に示すメモリセル952を用いてもよい。メモリセル952は、容量素子CA、及び配線CALを有さない場合の例である。トランジスタM1の第1端子は、電気的にフローティングの状態である。
【0552】
メモリセル952において、トランジスタM1を介して書き込まれた電位は、破線で示す第1端子とゲートとの間の容量(寄生容量ともいう)に保持される。このような構成とすることで、メモリセルの構成を大幅に簡略化することができる。
【0553】
なお、トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特性を有している。トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM1のリーク電流を非常に低くすることができる。つまり、書き込んだデータをトランジスタM1によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。または、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセル951、及びメモリセル952に対して多値データ、またはアナログデータを保持することができる。
【0554】
[NOSRAM]
図23(C)に、2トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの回路構成例を示す。メモリセル953は、トランジスタM2と、トランジスタM3と、容量素子CBと、を有する。本明細書などにおいて、トランジスタM2にOSトランジスタを用いたゲインセル型のメモリセルを有する記憶装置を、NOSRAM(Nonvolatile Oxide Semiconductor RAM)と呼ぶ。
【0555】
トランジスタM2の第1端子は、容量素子CBの第1端子と接続され、トランジスタM2の第2端子は、配線WBLと接続され、トランジスタM2のゲートは、配線WOLと接続されている。容量素子CBの第2端子は、配線CALと接続されている。トランジスタM3の第1端子は、配線RBLと接続され、トランジスタM3の第2端子は、配線SLと接続され、トランジスタM3のゲートは、容量素子CBの第1端子と接続されている。
【0556】
配線WBLは、書き込みビット線として機能し、配線RBLは、読み出しビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CBの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、データ保持の最中、データの読み出し時において、配線CALには、低レベル電位(基準電位という場合がある)を印加するのが好ましい。
【0557】
データの書き込みは、配線WOLに高レベル電位を印加し、トランジスタM2をオン状態にし、配線WBLと容量素子CBの第1端子を導通状態にすることで行われる。具体的には、トランジスタM2がオン状態のときに、配線WBLに記録する情報に対応する電位を印加し、容量素子CBの第1端子、及びトランジスタM3のゲートに該電位を書き込む。その後、配線WOLに低レベル電位を印加し、トランジスタM2をオフ状態にすることによって、容量素子CBの第1端子の電位、及びトランジスタM3のゲートの電位を保持する。
【0558】
データの読み出しは、配線SLに所定の電位を印加することによって行われる。トランジスタM3のソース-ドレイン間に流れる電流、及びトランジスタM3の第1端子の電位は、トランジスタM3のゲートの電位、及びトランジスタM3の第2端子の電位によって決まるため、トランジスタM3の第1端子に接続されている配線RBLの電位を読み出すことによって、容量素子CBの第1端子(またはトランジスタM3のゲート)に保持されている電位を読み出すことができる。つまり、容量素子CBの第1端子(またはトランジスタM3のゲート)に保持されている電位から、このメモリセルに書き込まれている情報を読み出すことができる。
【0559】
また、例えば、配線WBLと配線RBLを一本の配線BILとしてまとめた構成であってもよい。そのメモリセルの回路構成例を図23(D)に示す。メモリセル954は、メモリセル953の配線WBLと配線RBLを一本の配線BILとして、トランジスタM2の第2端子、及びトランジスタM3の第1端子が、配線BILと接続されている構成となっている。つまり、メモリセル954は、書き込みビット線と、読み出しビット線と、を1本の配線BILとして動作する構成となっている。
【0560】
図23(E)に示すメモリセル955は、メモリセル953における容量素子CB及び配線CALを省略した場合の例である。また、図23(F)に示すメモリセル956は、メモリセル954における容量素子CB及び配線CALを省略した場合の例である。このような構成とすることで、メモリセルの集積度を高めることができる。
【0561】
なお、少なくともトランジスタM2にはOSトランジスタを用いることが好ましい。特に、トランジスタM2、及びトランジスタM3にOSトランジスタを用いることが好ましい。
【0562】
OSトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特性を有しているため、書き込んだデータをトランジスタM2によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。または、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセル953、メモリセル954、メモリセル955、メモリセル956に対して多値データ、またはアナログデータを保持することができる。
【0563】
トランジスタM2としてOSトランジスタを適用したメモリセル953、メモリセル954、メモリセル955、及びメモリセル956は、NOSRAMの一態様である。
【0564】
なお、トランジスタM3としてSiトランジスタを用いてもよい。Siトランジスタは電界効果移動度を高めることができるほか、pチャネル型トランジスタとすることもできるため、回路設計の自由度を高めることができる。
【0565】
また、トランジスタM3としてOSトランジスタを用いた場合、メモリセルを単極性回路で構成することができる。
【0566】
また、図23(G)に、3トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセル957を示す。メモリセル957は、トランジスタM4乃至トランジスタM6と、容量素子CCと、を有する。
【0567】
トランジスタM4の第1端子は、容量素子CCの第1端子と接続され、トランジスタM4の第2端子は、配線BILと接続され、トランジスタM4のゲートは、配線WOLと接続されている。容量素子CCの第2端子は、トランジスタM5の第1端子と、配線GNDLと、に接続されている。トランジスタM5の第2端子は、トランジスタM6の第1端子と接続され、トランジスタM5のゲートは、容量素子CCの第1端子と接続されている。トランジスタM6の第2端子は、配線BILと接続され、トランジスタM6のゲートは配線RWLと接続されている。
【0568】
配線BILは、ビット線として機能し、配線WOLは、書き込みワード線として機能し、配線RWLは、読み出しワード線として機能する。配線GNDLは、低レベル電位を与える配線である。
【0569】
データの書き込みは、配線WOLに高レベル電位を印加し、トランジスタM4をオン状態にし、配線BILと容量素子CCの第1端子を導通状態にすることで行われる。具体的には、トランジスタM4がオン状態のときに、配線BILに記録する情報に対応する電位を印加し、容量素子CCの第1端子、及びトランジスタM5のゲートに該電位を書き込む。その後、配線WOLに低レベル電位を印加し、トランジスタM4をオフ状態にすることによって、容量素子CCの第1端子の電位、及びトランジスタM5のゲートの電位を保持する。
【0570】
データの読み出しは、配線BILに所定の電位をプリチャージして、その後、配線BILを電気的に浮遊状態にし、かつ配線RWLに高レベル電位を印加することによって行われる。配線RWLが高レベル電位となるため、トランジスタM6はオン状態となり、配線BILとトランジスタM5の第2端子が導通状態となる。このとき、トランジスタM5の第2端子には、配線BILの電位が印加されることになるが、容量素子CCの第1端子(またはトランジスタM5のゲート)に保持されている電位に応じて、トランジスタM5の第2端子の電位、及び配線BILの電位が変化する。ここで、配線BILの電位を読み出すことによって、容量素子CCの第1端子(またはトランジスタM5のゲート)に保持されている電位を読み出すことができる。つまり、容量素子CCの第1端子(またはトランジスタM5のゲート)に保持されている電位から、このメモリセルに書き込まれている情報を読み出すことができる。
【0571】
なお、少なくともトランジスタM4にOSトランジスタを用いることが好ましい。
【0572】
なお、トランジスタM5及びM6としてSiトランジスタを用いてもよい。前述した通り、Siトランジスタは、半導体層に用いるシリコンの結晶状態などによっては、OSトランジスタよりも電界効果移動度が高くなる場合がある。
【0573】
また、トランジスタM5及びM6としてOSトランジスタを用いた場合、メモリセルを単極性回路で構成することができる。
【0574】
[OS-SRAM]
図23(H)に、OSトランジスタを用いたSRAM(Static Random Access Memory)の一例を示す。本明細書などにおいて、OSトランジスタを用いたSRAMを、OS-SRAM(Oxide Semiconductor-SRAM)と呼ぶ。なお、図23(H)に示すメモリセル958は、バックアップ可能なSRAMのメモリセルである。
【0575】
メモリセル958は、トランジスタM7乃至トランジスタM10と、トランジスタMS1乃至トランジスタMS4と、容量素子CD1と、容量素子CD2と、を有する。なお、トランジスタMS1、及びトランジスタMS2は、pチャネル型トランジスタであり、トランジスタMS3、及びトランジスタMS4は、nチャネル型トランジスタである。
【0576】
トランジスタM7の第1端子は、配線BILと接続され、トランジスタM7の第2端子は、トランジスタMS1の第1端子と、トランジスタMS3の第1端子と、トランジスタMS2のゲートと、トランジスタMS4のゲートと、トランジスタM10の第1端子と、に接続されている。トランジスタM7のゲートは、配線WOLと接続されている。トランジスタM8の第1端子は、配線BILBと接続され、トランジスタM8の第2端子は、トランジスタMS2の第1端子と、トランジスタMS4の第1端子と、トランジスタMS1のゲートと、トランジスタMS3のゲートと、トランジスタM9の第1端子と、に接続されている。トランジスタM8のゲートは、配線WOLと接続されている。
【0577】
トランジスタMS1の第2端子は、配線VDLと接続されている。トランジスタMS2の第2端子は、配線VDLと接続されている。トランジスタMS3の第2端子は、配線GNDLと接続されている。トランジスタMS4の第2端子は、配線GNDLと接続されている。
【0578】
トランジスタM9の第2端子は、容量素子CD1の第1端子と接続され、トランジスタM9のゲートは、配線BRLと接続されている。トランジスタM10の第2端子は、容量素子CD2の第1端子と接続され、トランジスタM10のゲートは、配線BRLと接続されている。
【0579】
容量素子CD1の第2端子は、配線GNDLと接続され、容量素子CD2の第2端子は、配線GNDLと接続されている。
【0580】
配線BIL及び配線BILBは、ビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能し、配線BRLは、トランジスタM9、及びトランジスタM10のオン状態、オフ状態を制御する配線である。
【0581】
配線VDLは、高レベル電位を与える配線であり、配線GNDLは、低レベル電位を与える配線である。
【0582】
データの書き込みは、配線WOLに高レベル電位を印加し、かつ配線BRLに高レベル電位を印加することによって行われる。具体的には、トランジスタM10がオン状態のときに、配線BILに記録する情報に対応する電位を印加し、トランジスタM10の第2端子側に該電位を書き込む。
【0583】
ところで、メモリセル958は、トランジスタMS1乃至トランジスタMS2によってインバータループを構成しているため、トランジスタM8の第2端子側に、該電位に対応するデータ信号の反転信号が入力される。トランジスタM8がオン状態であるため、配線BILBには、配線BILに印加されている電位、すなわち配線BILに入力されている信号の反転信号が出力される。また、トランジスタM9、及びトランジスタM10がオン状態であるため、トランジスタM7の第2端子の電位、及びトランジスタM8の第2端子の電位は、それぞれ容量素子CD2の第1端子、及び容量素子CD1の第1端子に保持される。その後、配線WOLに低レベル電位を印加し、かつ配線BRLに低レベル電位を印加し、トランジスタM7乃至トランジスタM10をオフ状態にすることによって、容量素子CD1の第1端子、及び容量素子CD2の第1端子の電位を保持する。
【0584】
データの読み出しは、あらかじめ配線BIL及び配線BILBを所定の電位にプリチャージした後に、配線WOLに高レベル電位を印加し、配線BRLに高レベル電位を印加することによって、容量素子CD1の第1端子の電位が、メモリセル958のインバータループによってリフレッシュされ、配線BILBに出力される。また、容量素子CD2の第1端子の電位が、メモリセル958のインバータループによってリフレッシュされ、配線BILに出力される。配線BIL及び配線BILBでは、それぞれプリチャージされた電位から容量素子CD2の第1端子の電位、及び容量素子CD1の第1端子の電位に変動するため、配線BILまたは配線BILBの電位から、メモリセルに保持された電位を読み出すことができる。
【0585】
なお、トランジスタM7乃至トランジスタM10としてOSトランジスタを適用することが好ましい。これにより書き込んだデータをトランジスタM7乃至トランジスタM10によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。または、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。
【0586】
なお、トランジスタMS1乃至トランジスタMS4としてSiトランジスタを用いてもよい。
【0587】
半導体装置900が有する駆動回路910とメモリアレイ920は同一平面上に設けてもよい。また、図24(A)に示すように、駆動回路910とメモリアレイ920を重ねて設けてもよい。駆動回路910とメモリアレイ920を重ねて設けることで、信号伝搬距離を短くすることができる。また、図24(B)に示すように、駆動回路910上にメモリアレイ920を複数層重ねて設けてもよい。
【0588】
続いて、上記記憶装置などの半導体装置を備えることができる演算処理装置の一例について説明する。
【0589】
図25に、演算装置960のブロック図を示す。図25に示す演算装置960は、例えばCPU(Central Processing Unit)に適用することができる。また、演算装置960は、CPUよりも並列処理可能なプロセッサコアを多数(数10~数100個)有するGPU(Graphics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)、NPU(Neural Processing Unit)などのプロセッサにも適用することができる。
【0590】
図25に示す演算装置960は、基板990上に、ALU991(ALU:Arithmetic logic unit、演算回路)、ALUコントローラ992、インストラクションデコーダ993、インタラプトコントローラ994、タイミングコントローラ995、レジスタ996、レジスタコントローラ997、バスインターフェース998、キャッシュ999、及びキャッシュインターフェース989を有している。基板990は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。書き換え可能なROM及びROMインターフェースを有してもよい。また、キャッシュ999及びキャッシュインターフェース989は、別チップに設けてもよい。
【0591】
キャッシュ999は、別チップに設けられたメインメモリとキャッシュインターフェース989を介して接続される。キャッシュインターフェース989は、メインメモリに保持されているデータの一部をキャッシュ999に供給する機能を有する。またキャッシュインターフェース989は、キャッシュ999に保持されているデータの一部を、バスインターフェース998を介してALU991またはレジスタ996等に出力する機能を有する。
【0592】
後述するように、演算装置960上に積層して、メモリアレイ920を設けることができる。メモリアレイ920はキャッシュとして用いることができる。このとき、キャッシュインターフェース989はメモリアレイ920に保持されているデータをキャッシュ999に供給する機能を有していてよい。またこのとき、キャッシュインターフェース989の一部に、駆動回路910を有することが好ましい。
【0593】
なお、キャッシュ999を設けず、メモリアレイ920のみをキャッシュとして用いることもできる。
【0594】
図25に示す演算装置960は、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際の演算装置960はその用途によって多種多様な構成を有している。例えば、図25に示す演算装置960を含む構成を一つのコアとし、当該コアを複数含み、それぞれのコアが並列で動作する、いわゆるマルチコアの構成とすることが好ましい。コアの数が多いほど、演算性能を高めることができる。コアの数は多いほど好ましいが、例えば2個、好ましくは4個、より好ましくは8個、さらに好ましくは12個、さらに好ましくは16個またはそれ以上とすることが好ましい。また、サーバ用途など非常に高い演算性能が求められる場合には、16個以上、好ましくは32個以上、さらに好ましくは64個以上のコアを有するマルチコアの構成とすることが好ましい。また、演算装置960が内部演算回路、データバスなどで扱えるビット数は、例えば8ビット、16ビット、32ビット、64ビットなどとすることができる。
【0595】
バスインターフェース998を介して演算装置960に入力された命令は、インストラクションデコーダ993に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ992、インタラプトコントローラ994、レジスタコントローラ997、タイミングコントローラ995に入力される。
【0596】
ALUコントローラ992、インタラプトコントローラ994、レジスタコントローラ997、タイミングコントローラ995は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行う。具体的にALUコントローラ992は、ALU991の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ994は、演算装置960のプログラム実行中に、外部の入出力装置、周辺回路などからの割り込み要求を、その優先度、マスク状態などから判断し、処理する。レジスタコントローラ997は、レジスタ996のアドレスを生成し、演算装置960の状態に応じてレジスタ996の読み出し及び書き込みを行う。
【0597】
また、タイミングコントローラ995は、ALU991、ALUコントローラ992、インストラクションデコーダ993、インタラプトコントローラ994、及びレジスタコントローラ997の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ995は、基準クロック信号を元に、内部クロック信号を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号を上記各種回路に供給する。
【0598】
図25に示す演算装置960において、レジスタコントローラ997は、ALU991からの指示に従い、レジスタ996における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ996が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持が選択されている場合、レジスタ996内のメモリセルへの、電源電位の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ996内のメモリセルへの電源電位の供給を停止することができる。
【0599】
メモリアレイ920と演算装置960は、重ねて設けることができる。図26(A)及び図26(B)に半導体装置970Aの斜視図を示す。半導体装置970Aは、演算装置960上に、メモリアレイが設けられた層930を有する。層930には、メモリアレイ920L1、メモリアレイ920L2、及びメモリアレイ920L3が設けられている。演算装置960と各メモリアレイは、互いに重なる領域を有する。半導体装置970Aの構成を分かりやすくするため、図26(B)では演算装置960及び層930を分離して示している。
【0600】
メモリアレイを有する層930と演算装置960を重ねて設けることで、両者の接続距離を短くすることができる。よって、両者間の通信速度を高めることができる。また、接続距離が短いため消費電力を低減できる。
【0601】
メモリアレイを有する層930と演算装置960とを積層する方法としては、演算装置960上に直接メモリアレイを有する層930を積層する方法(モノリシック積層ともいう)を用いてもよいし、演算装置960と層930とをそれぞれ異なる基板上に形成し、2つの基板を貼り合せ、貫通ビアまたは導電膜の接合技術(Cu-Cu接合など)を用いて電気的に接続する方法を用いてもよい。前者は貼合わせにおける位置ずれを考慮する必要がないため、チップサイズを小さくできるだけでなく、作製コストを削減できる。
【0602】
ここで、演算装置960にキャッシュ999を有さず、層930に設けられるメモリアレイ920L1、920L2、及び920L3は、それぞれキャッシュとして用いることができる。このとき、例えばメモリアレイ920L1をL1キャッシュ(レベル1キャッシュともいう)として用い、メモリアレイ920L2をL2キャッシュ(レベル2キャッシュともいう)として用い、メモリアレイ920L3をL3キャッシュ(レベル3キャッシュともいう)として用いることができる。3つのメモリアレイのうち、メモリアレイ920L3が最も容量が大きく、かつ、最もアクセス頻度が低い。また、メモリアレイ920L1が最も容量が小さく、かつ最もアクセス頻度が高い。
【0603】
なお、演算装置960に設けられるキャッシュ999をL1キャッシュとして用いる場合は、層930に設けられる各メモリアレイを、それぞれ下位のキャッシュ、またはメインメモリとして用いることができる。メインメモリはキャッシュよりも容量が大きく、アクセス頻度の低いメモリである。
【0604】
また、図26(B)に示すように、駆動回路910L1、駆動回路910L2、及び駆動回路910L3が設けられている。駆動回路910L1は接続電極940L1を介してメモリアレイ920L1と接続されている。同様に駆動回路910L2は接続電極940L2を介してメモリアレイ920L2と、駆動回路910L3は接続電極940L3を介してメモリアレイ920L3と接続されている。
【0605】
なお、ここではキャッシュとして機能するメモリアレイを3つとした場合を示したが、1つまたは2つでもよいし、4つ以上であってもよい。
【0606】
メモリアレイ920L1をキャッシュとして用いる場合、駆動回路910L1はキャッシュインターフェース989の一部として機能してもよいし、駆動回路910L1がキャッシュインターフェース989と接続される構成としてもよい。同様に、駆動回路910L2、駆動回路910L3も、キャッシュインターフェース989の一部として機能する、またはこれと接続される構成としてもよい。
【0607】
メモリアレイ920をキャッシュとして機能させるか、メインメモリとして機能させるかは、各駆動回路910が有するコントロール回路912によって決定される。コントロール回路912は、演算装置960から供給された信号に基づいて、半導体装置900が有する複数のメモリセル950の一部をRAMとして機能させることができる。
【0608】
半導体装置900は、複数のメモリセル950の一部をキャッシュとして機能させ、他の一部をメインメモリとして機能させることができる。すなわち半導体装置900はキャッシュとしての機能と、メインメモリとしての機能を併せ持つことができる。本発明の一態様に係る半導体装置900は、例えば、ユニバーサルメモリとして機能できる。
【0609】
また、一つのメモリアレイ920を有する層930を演算装置960に重ねて設けてもよい。図27(A)に半導体装置970Bの斜視図を示す。
【0610】
半導体装置970Bでは、一つのメモリアレイ920を複数のエリアに分けて、それぞれ異なる機能で使用することができる。図27(A)では、領域L1をL1キャッシュとして、領域L2をL2キャッシュとして、領域L3をL3キャッシュとして用いる場合の例を示している。
【0611】
また半導体装置970Bでは、領域L1乃至領域L3のそれぞれの容量を状況に応じて変えることができる。例えばL1キャッシュの容量を増やしたい場合には、領域L1の面積を大きくすることにより実現する。このような構成とすることで、演算処理の効率化を図ることができ、処理速度を向上させることができる。
【0612】
また、複数のメモリアレイを積層してもよい。図27(B)に半導体装置970Cの斜視図を示している。
【0613】
半導体装置970Cは、メモリアレイ920L1を有する層930L1と、その上にメモリアレイ920L2を有する層930L2と、その上にメモリアレイ920L3を有する層930L3とが積層されている。最も演算装置960に物理的に近いメモリアレイ920L1を上位のキャッシュに用い、最も遠いメモリアレイ920L3を下位のキャッシュまたはメインメモリに用いることができる。このような構成とすることで、各メモリアレイの容量を増大させることができるため、より処理能力を向上させることができる。
【0614】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0615】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る記憶装置の応用例について説明する。
【0616】
一般に、コンピュータなどの半導体装置では、用途に応じて様々な記憶装置が用いられる。図28(A)に、半導体装置に用いられる各種の記憶装置を階層ごとに示す。上層に位置する記憶装置ほど速い動作速度が求められ、下層に位置する記憶装置ほど大きな記憶容量と高い記録密度が求められる。図28(A)では、最上層から順に、CPUなどの演算処理装置にレジスタ(register)として混載されるメモリ、L1キャッシュ(L1 cache)、L2キャッシュ(L2 cache)、L3キャッシュ(L3 cache)、メインメモリ(main memory)、ストレージ(storage)等がある。なお、ここではL3キャッシュまで有する例を示したが、さらに下位のキャッシュを有していてもよい。
【0617】
CPUなどの演算処理装置にレジスタとして混載されるメモリは、演算結果の一時保存などに用いられるため、演算処理装置からのアクセス頻度が高い。よって、記憶容量よりも速い動作速度が求められる。また、レジスタは演算処理装置の設定情報などを保持する機能も有する。
【0618】
キャッシュは、メインメモリ(main memory)に保持されているデータの一部を複製して保持する機能を有する。使用頻繁が高いデータを複製してキャッシュに保持しておくことで、データへのアクセス速度を高めることができる。キャッシュに求められる記憶容量はメインメモリより少ないが、メインメモリよりも速い動作速度が求められる。また、キャッシュで書き換えられたデータは複製されてメインメモリに供給される。
【0619】
メインメモリは、ストレージ(storage)から読み出されたプログラム、データなどを保持する機能を有する。
【0620】
ストレージは、長期保存が必要なデータ、演算処理装置で使用する各種のプログラムなどを保持する機能を有する。よって、ストレージには動作速度よりも大きな記憶容量と高い記録密度が求められる。例えば3D NANDなどの高容量かつ不揮発性の記憶装置を用いることができる。
【0621】
本発明の一態様に係る酸化物半導体を用いた記憶装置(OSメモリ(OS memory))は、動作速度が速く、長期間のデータ保持が可能である。そのため図28(A)に示すように、本発明の一態様に係る記憶装置は、キャッシュが位置する階層とメインメモリが位置する階層の双方に好適に用いることができる。また、本発明の一態様に係る記憶装置は、ストレージが位置する階層にも適用することができる。
【0622】
また、図28(B)では、キャッシュの一部にSRAMを、他の一部に本発明の一態様のOSメモリを適用した場合の例を示す。
【0623】
キャッシュのうち、最も下位に位置するものを、LLC(Last Level cache)と呼ぶことができる。LLCはこれよりも上位のキャッシュよりも速い動作速度は求められないものの、大きな記憶容量を有することが望ましい。本発明の一態様のOSメモリは動作速度が速く、長期間のデータ保持が可能であるため、LLCに好適に用いることができる。なお、本発明の一態様のOSメモリは、FLC(Final Level cache)にも適用することができる。
【0624】
例えば、図28(B)に示すように、上位のキャッシュ(L1キャッシュ、L2キャッシュ等)にSRAMを用い、LLCに本発明の一態様のOSメモリを用いる構成とすることができる。また、図28(B)に示すように、メインメモリにはOSメモリだけでなくDRAMを適用することもできる。
【0625】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0626】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について説明する。
【0627】
本発明の一態様の半導体装置は、表示装置、または、当該表示装置を有するモジュールに用いることができる。当該表示装置を有するモジュールとしては、当該表示装置にフレキシブルプリント回路基板(Flexible printed circuit、以下、FPCと記す)もしくはTCP(Tape Carrier Package)等のコネクタが取り付けられたモジュール、COG(Chip On Glass)方式もしくはCOF(Chip On Film)方式等により集積回路(IC)が実装されたモジュール等が挙げられる。
【0628】
また、本実施の形態の表示装置はタッチパネルとしての機能を有していてもよい。例えば、表示装置には、指などの被検知体の近接または接触を検知できる様々な検知素子(センサ素子ともいえる)を適用することができる。
【0629】
センサの方式としては、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、光学方式、及び、感圧方式が挙げられる。
【0630】
静電容量方式としては、例えば、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式がある。また、投影型静電容量方式としては、例えば、自己容量方式、相互容量方式がある。相互容量方式を用いると、同時多点検出が可能となるため好ましい。
【0631】
タッチパネルとしては、例えば、アウトセル型、オンセル型、及び、インセル型が挙げられる。なお、インセル型のタッチパネルは、表示素子を支持する基板と対向基板のうち一方または双方に、検知素子を構成する電極が設けられた構成をいう。
【0632】
[表示モジュール]
図29(A)に、表示モジュール170の斜視図を示す。表示モジュール170は、表示装置600Aと、FPC298と、を有する。なお、表示モジュール170が有する表示装置は表示装置600Aに限られず、後述する表示装置600Bであってもよい。
【0633】
表示モジュール170は、基板291及び基板299を有する。表示モジュール170は、表示部297を有する。表示部297は、表示モジュール170における画像を表示する領域であり、後述する画素部294に設けられる各画素からの光を視認できる領域である。
【0634】
図29(B)に、基板291側の構成を模式的に示した斜視図を示している。基板291上には、回路部292と、回路部292上の画素回路部293と、画素回路部293上の画素部294と、が積層されている。また、基板291上の画素部294と重ならない部分に、FPC298と接続するための端子部295が設けられている。端子部295と回路部292とは、複数の配線により構成される配線部296により電気的に接続されている。
【0635】
本発明の一態様の半導体装置は、回路部292及び画素回路部293の一方または双方に適用することができる。
【0636】
画素部294は、周期的に配列した複数の画素294aを有する。図29(B)の右側に、1つの画素294aの拡大図を示している。図29(B)では、1つの画素294aが、赤色の光を呈する副画素130R、緑色の光を呈する副画素130G、及び、青色の光を呈する副画素130Bを有する例を示す。
【0637】
副画素は、表示素子を有する。表示素子としては、様々な素子を用いることができ、例えば、液晶素子及び発光素子が挙げられる。その他、シャッター方式または光干渉方式のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子、マイクロカプセル方式、電気泳動方式、エレクトロウェッティング方式、または電子粉流体(登録商標)方式等を適用した表示素子などを用いることもできる。また、光源と、量子ドット材料による色変換技術と、を用いたQLED(Quantum-dot LED)を用いてもよい。
【0638】
発光素子としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)、OLED(Organic LED)、半導体レーザなどの、自発光型の発光素子が挙げられる。LEDとして、例えば、ミニLED、マイクロLEDなどを用いることができる。
【0639】
本実施の形態の表示装置における画素の配列に特に限定はなく、様々な方法を適用することができる。画素の配列としては、例えば、ストライプ配列、Sストライプ配列、マトリクス配列、デルタ配列、ベイヤー配列、及びペンタイル配列が挙げられる。図29(B)では、画素の配列にストライプ配列が適用された場合を例に示す。
【0640】
画素回路部293は、周期的に配列した複数の画素回路293aを有する。
【0641】
1つの画素回路293aは、1つの画素294aが有する複数の素子の駆動を制御する回路である。1つの画素回路293aは、1つの発光素子の発光を制御する回路が3つ設けられる構成とすることができる。例えば、画素回路293aは、1つの発光素子につき、1つの選択トランジスタと、1つの電流制御用トランジスタ(駆動トランジスタ)と、容量と、を少なくとも有する構成とすることができる。このとき、選択トランジスタのゲートにはゲート信号が、ソースにはソース信号が、それぞれ入力される。これにより、アクティブマトリクス型の表示装置が実現されている。
【0642】
回路部292は、画素回路部293の各画素回路293aを駆動する回路を有する。例えば、ゲート線駆動回路、及び、ソース線駆動回路の一方または双方を有することが好ましい。このほか、演算回路、メモリ回路、及び電源回路等の少なくとも一つを有していてもよい。
【0643】
FPC298は、外部から回路部292にビデオ信号または電源電位等を供給するための配線として機能する。また、FPC298上にICが実装されていてもよい。
【0644】
表示モジュール170は、画素部294の下側に画素回路部293及び回路部292の一方または双方が重ねて設けられた構成とすることができるため、表示部297の開口率(有効表示面積比)を極めて高くすることができる。また、画素294aを極めて高密度に配置することが可能で、表示部297の精細度を極めて高くすることができる。
【0645】
このような表示モジュール170は、極めて高精細であることから、HMDなどのVR向け機器またはメガネ型のAR向け機器に好適に用いることができる。例えば、レンズを通して表示モジュール170の表示部を視認する構成の場合であっても、表示モジュール170は極めて高精細な表示部297を有するためにレンズで表示部を拡大しても画素が視認されず、没入感の高い表示を行うことができる。また、表示モジュール170はこれに限られず、比較的小型の表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。例えば腕時計などの装着型の電子機器の表示部に好適に用いることができる。
【0646】
[表示装置の構成例1]
図30に、表示装置600Aの断面図を示す。表示装置600Aは、MML(メタルマスクレス)構造が適用された表示装置の一例である。つまり、表示装置600Aは、ファインメタルマスクを用いずに作製された発光素子を有する。
【0647】
MML構造が適用された表示装置が有する発光素子における島状の発光層は、発光層を一面に成膜した後、フォトリソグラフィ法を用いて加工することで形成される。したがって、これまで実現が困難であった高精細の表示装置または高開口率の表示装置を実現することができる。さらに、発光層を各色で作り分けることができるため、極めて鮮やかでコントラストが高く、表示品位の高い表示装置を実現できる。例えば、表示装置が、青色の光を発する発光素子、緑色の光を発する発光素子、及び赤色の光を発する発光素子の3種類で構成される場合、発光層の成膜、及び、フォトリソグラフィによる加工を3回繰り返すことで、3種類の島状の発光層を形成することができる。
【0648】
MML構造のデバイスは、メタルマスクを用いることなく製造することができるため、メタルマスクの合わせ精度に起因する精細度の上限を超えることができる。また、メタルマスクを用いずにデバイスを作製する場合、メタルマスクの製造に係る設備、及び、メタルマスクの洗浄工程を不要にすることができる。また、フォトリソグラフィによる加工には、トランジスタを作製する際に用いる装置と共通または同様の装置を用いることができるため、MML構造のデバイスを作製するために特別な装置を導入する必要はない。このように、MML構造は、製造コストを低く抑えることが可能となるため、デバイスの大量生産に適している。
【0649】
MML構造が適用された表示装置では、例えば、ペンタイル配列などの特殊な画素配列を適用し疑似的に精細度を高める必要がないため、R、G、Bの副画素をそれぞれ一方向に配列させた、いわゆるストライプ配列で、かつ、高精細(例えば500ppi以上、1000ppi以上、2000ppi以上、3000ppi以上、または5000ppi以上)の表示装置を実現することができる。
【0650】
また、発光層上に犠牲層を設けることで、表示装置の作製工程中に発光層が受けるダメージを低減し、発光素子の信頼性を高めることができる。なお、犠牲層は、完成した表示装置に残存していてもよく、作製工程中に除去されていてもよい。例えば、図30及び図31に示す犠牲層618aは、発光層上に設けられていた犠牲層の一部である。
【0651】
また、エリアマスクを用いた成膜工程と、レジストマスクを用いた加工工程と、を採用することで、比較的簡単なプロセスにて発光素子を作製することができる。
【0652】
図30は、本発明の一態様の表示装置(半導体装置)である表示装置600Aの断面概略図である。表示装置600Aは、基板410上に画素回路、駆動回路などが設けられた構成となっている。なお、図30の表示装置600Aでは、素子層620、素子層630、及び素子層660に加えて、配線層670についても図示している。配線層670は、配線が設けられる層である。
【0653】
素子層630には、表示装置の画素回路が設けられることが好ましい。素子層620には、表示装置の駆動回路(ゲートドライバ及びソースドライバのうち一方または双方)が設けられることが好ましい。また、素子層620には、演算回路、記憶回路などの各種回路が1種以上設けられていてもよい。
【0654】
素子層620は、一例として、基板410を有し、基板410上には、トランジスタ400dが形成されている。また、トランジスタ400dの上方には、配線層670が設けられており、配線層670には、トランジスタ400dを、素子層630に設けられた導電層またはトランジスタなど(図30では導電層514)と電気的に接続する配線が設けられている。また、配線層670の上方には、素子層630、及び素子層660が設けられており、素子層630は、一例として、トランジスタMTCKなどを有する。素子層660は、発光素子650(図30では、発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650B)などを有する。
【0655】
トランジスタ400dは、素子層620に含まれているトランジスタの一例である。また、トランジスタMTCKは、素子層630に含まれるトランジスタの一例である。また、発光素子(発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650B)は、素子層660に含まれる発光素子の一例である。
【0656】
基板410には、例えば、半導体基板(例えば、シリコンまたはゲルマニウムを材料とした単結晶基板)を用いることができる。また、基板410には、半導体基板以外としては、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、サファイアガラス基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、または基材フィルムを用いることができる。なお、本実施の形態では、基板410は、シリコンを材料として有する半導体基板として説明する。そのため、素子層620に含まれるトランジスタは、Siトランジスタとすることができる。
【0657】
トランジスタ400dは、素子分離層412と、導電層416と、絶縁層415と、絶縁層417と、基板410の一部からなる半導体領域413と、ソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域414a及び低抵抗領域414bと、を有する。このため、トランジスタ400dは、Siトランジスタとなっている。なお、図30では、トランジスタ400dのソースまたはドレインが、導電層428、導電層430、及び、導電層456を介して、素子層630に設けられた導電層514と電気的に接続されている構成を示しているが、本発明の一態様の表示装置の電気的な接続構成は、これに限定されない。
【0658】
トランジスタ400dは、例えば、半導体領域413の上面及びチャネル幅方向の側面が、ゲート絶縁層として機能する絶縁層415を介して導電層416に覆われる構成にすることによって、Fin型にすることができる。トランジスタ400dをFin型にすることにより、実効上のチャネル幅が増大することができ、トランジスタ400dのオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ400dのオフ特性を向上させることができる。また、トランジスタ400dは、Fin型でなくプレーナ型としてもよい。
【0659】
なお、トランジスタ400dは、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。またはトランジスタ400dを複数設け、pチャネル型、及びnチャネル型の双方を用いてもよい。
【0660】
半導体領域413のチャネルが形成される領域と、その近傍の領域と、ソース領域またはドレイン領域となる低抵抗領域414a及び低抵抗領域414bと、には、シリコン系半導体を含むことが好ましく、具体的には、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、上述した各領域は、例えば、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、または窒化ガリウムを用いて形成されてもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。または、トランジスタ400dは、例えば、ヒ化ガリウムとヒ化アルミニウムガリウムを用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0661】
ゲート電極として機能する導電層416には、ヒ素、またはリンといったn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素またはアルミニウムといったp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料を用いることができる。または、導電層416には、例えば、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料といった導電性材料を用いることができる。
【0662】
なお、導電層の材料によって仕事関数が決まるため、当該導電層の材料を選択することで、トランジスタのしきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電層に窒化チタン、及び窒化タンタルの一方または双方の材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電層にタングステン及びアルミニウムの一方または双方の金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0663】
素子分離層412は、基板410上に形成されている複数のトランジスタ同士を分離するために設けられている。素子分離層は、例えば、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法、STI(Shallow Trench Isolation)法、またはメサ分離法を用いて形成することができる。
【0664】
図30に示すトランジスタ400d上には、絶縁層420及び絶縁層422が、基板410側から順に積層して設けられている。
【0665】
絶縁層420及び絶縁層422として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、及び窒化アルミニウムから選ばれた一以上を用いることができる。
【0666】
絶縁層422は、絶縁層420及び絶縁層422に覆われているトランジスタ400dなどによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁層422の上面は、平坦性を高めるためにCMP法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0667】
絶縁層420及び絶縁層422には、絶縁層422より上方に設けられているトランジスタMTCKなどと接続する導電層428が埋め込まれている。なお、導電層428は、プラグまたは配線としての機能を有する。
【0668】
表示装置600Aでは、トランジスタ400d上に配線層670が設けられている。配線層670は、例えば、絶縁層424と、絶縁層426と、導電層430と、絶縁層450と、絶縁層452と、絶縁層454と、導電層456と、を有する。
【0669】
絶縁層422上及び導電層428上には、絶縁層424と絶縁層426とが順に積層して設けられている。また、導電層428に重なる領域において、絶縁層424と絶縁層426とには、開口部が形成されている。また、当該開口部には導電層430が埋め込まれている。
【0670】
また、絶縁層426上、及び導電層430上には、絶縁層450と絶縁層452と絶縁層454とが順に積層して設けられている。また、導電層430に重なる領域において、絶縁層450と絶縁層452と絶縁層454とには、開口部が形成されている。また、当該開口部には導電層456が埋め込まれている。
【0671】
導電層430及び導電層456は、トランジスタ400dと接続するプラグまたは配線としての機能を有する。
【0672】
なお、例えば、絶縁層424及び絶縁層450は、後述する絶縁層592と同様に、水素、酸素、及び水から選ばれた一以上に対するバリア性を有する絶縁層を用いることが好ましい。また、絶縁層426、絶縁層452、及び絶縁層454としては、後述する絶縁層594と同様に、配線間に生じる寄生容量を低減するために、比誘電率が比較的低い絶縁層を用いることが好ましい。また、絶縁層426、絶縁層452、及び絶縁層454は、層間絶縁膜及び平坦化膜としての機能を有する。
【0673】
また、導電層456は、水素、酸素、及び水から選ばれた一以上に対するバリア性を有する導電層を含むことが好ましい。
【0674】
なお、水素に対するバリア性を有する導電層としては、例えば、窒化タンタルを用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ400dからの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁層450と接する構造であることが好ましい。
【0675】
また、絶縁層454及び導電層456の上方には、絶縁層513が設けられている。また、絶縁層513上には、絶縁層IS1が設けられている。また、絶縁層IS1及び絶縁層513には、プラグまたは配線として機能する導電層が埋め込まれている。これにより、トランジスタ400dを、素子層630に設けられた導電層514と電気的に接続することができる。または、トランジスタMTCKのソースまたはドレインとトランジスタ400dのソースまたはドレインとを電気的に接続してもよい。
【0676】
絶縁層IS1上には、トランジスタMTCKが設けられている。また、トランジスタMTCK上には、絶縁層IS4、絶縁層574、及び絶縁層581がこの順に積層して設けられている。また、絶縁層IS3と絶縁層IS4と絶縁層574と絶縁層581とには、プラグまたは配線として機能する導電層MPGが埋め込まれている。図30において破線で囲った領域の拡大図に示すように、導電層MPGは、絶縁層283、及び、酸化物半導体層230に設けられた開口部を介して、導電層240と直接接することが好ましい。導電層MPGと導電層240とが直接接するとコンタクト抵抗を低減でき、好ましい。または、導電層MPGと酸化物半導体層230が接し、導電層MPGと導電層240とが酸化物半導体層230を介して電気的に接続してもよい。
【0677】
絶縁層574は、水及び水素(例えば、水素原子及び水素分子の一方または双方)といった不純物の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。つまり、絶縁層574は、当該不純物がトランジスタMTCKに混入することを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。また、絶縁層574は、酸素(例えば、酸素原子及び酸素分子の一方または双方)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁層574は、絶縁層IS2、絶縁層IS3、及び絶縁層IS4のそれぞれより酸素透過性が低いことが好ましい。
【0678】
そのため、絶縁層574は、水及び水素といった不純物の拡散を抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁層574は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(例えば、NO、NO、及びNO)、及び銅原子といった不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、及び酸素分子の一方または双方)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。
【0679】
水及び水素といった不純物と、酸素と、の透過を抑制する機能を有する絶縁層には、実施の形態1で例示した、不純物及び酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層に用いることができる材料を適用できる。
【0680】
特に、絶縁層574には、酸化アルミニウム、または窒化シリコンを用いることが好ましい。これにより、水及び水素といった不純物が絶縁層574の上方からトランジスタMTCKに拡散することを抑制できる。または、絶縁層IS3等に含まれる酸素が、絶縁層574の上方に、拡散することを抑制できる。
【0681】
絶縁層581は、層間膜として機能する膜であって、絶縁層574よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁層581の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁層581の比誘電率は、絶縁層574の比誘電率の、0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。絶縁層581を誘電率が低い材料とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0682】
また、絶縁層581は、膜中の水及び水素といった不純物の濃度が低減されていることが好ましい。この場合、絶縁層581には、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、または窒化シリコンを用いることができる。また、絶縁層581には、例えば、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素と窒素を添加した酸化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、及び空孔を有する酸化シリコンといった材料は、加熱により脱離する酸素を含む領域を容易に形成することができるため好ましい。また、絶縁層581には、樹脂を用いることができる。また、絶縁層581に適用できる材料は、上述した材料を適宜組み合わせたものとしてもよい。
【0683】
絶縁層574上及び絶縁層581上には、絶縁層592、及び絶縁層594がこの順に積層して設けられている。
【0684】
また、絶縁層592には、基板410、トランジスタMTCKから、絶縁層592より上方の領域(例えば、発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650Bなどが設けられている領域)に、水、及び水素といった不純物が拡散しないようなバリア性を有する絶縁膜(バリア性絶縁膜と呼称する)を用いることが好ましい。したがって、絶縁層592は、水素原子、水素分子、及び水分子といった不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、状況によっては、絶縁層592は、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(例えば、NO、NO、及びNO)、及び銅原子といった不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、及び酸素分子の一方または双方)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。
【0685】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。
【0686】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectrometry)を用いて分析することができる。例えば、絶縁層424の水素の脱離量は、TDSにおいて、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁層424の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm以下、好ましくは5×1015atoms/cm以下であることが好ましい。
【0687】
絶縁層594は、絶縁層581と同様に、誘電率が低い層間膜とすることが好ましい。このため、絶縁層594には、絶縁層581に適用できる材料を用いることができる。
【0688】
なお、絶縁層594は、絶縁層592よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁層594の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁層594の比誘電率は、絶縁層592の比誘電率の、0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。絶縁層594にを誘電率が低い材料とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0689】
また、絶縁層IS3、絶縁層IS4、絶縁層574、及び絶縁層581には、プラグまたは配線として機能する導電層MPGが埋め込まれ、絶縁層592及び絶縁層594には、プラグまたは配線として機能する導電層596が埋め込まれている。特に、導電層MPG及び導電層596は、絶縁層594より上方に設けられている発光素子などと電気的に接続されている。また、プラグまたは配線としての機能を有する導電層は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電層の一部が配線として機能する場合、及び導電層の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0690】
各プラグ、及び配線(例えば、導電層MPG、導電層428、導電層430、導電層456、導電層514、及び導電層596)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、及び金属酸化物材料から選ばれた一以上の導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステン、またはモリブデンといった高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウム、または銅といった低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0691】
絶縁層594上及び導電層596上には、絶縁層598及び絶縁層599が順に形成されている。
【0692】
絶縁層598は、一例として、絶縁層592と同様に、水素、酸素、及び水から選ばれた一以上に対するバリア性を有する絶縁層を用いることが好ましい。また、絶縁層599としては、絶縁層594と同様に、配線間に生じる寄生容量を低減するために、比誘電率が比較的低い絶縁層を用いることが好ましい。また、絶縁層599は、層間絶縁膜及び平坦化膜としての機能を有する。
【0693】
絶縁層599上には、発光素子650及び接続部640が形成されている。
【0694】
接続部640は、カソードコンタクト部と呼ばれる場合があり、発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650Bのそれぞれのカソード電極に電気的に接続されている。図30に示す接続部640では、導電層611a乃至導電層611cと同一の工程、同一の材料で形成された導電層が、後述する共通電極615と、電気的に接続されている。なお、図30では、当該導電層が、後述する共通層614を介して、共通電極615と電気的に接続される例を示すが、当該導電層と共通電極615とが直接接していてもよい。
【0695】
なお、接続部640は、平面視において表示部の四辺を囲むように設けられてもよく、または、表示部内(例えば、隣り合う発光素子650同士の間)に設けられてもよい(図示しない)。
【0696】
発光素子650Rは、画素電極として、導電層611aを有する。同様に、発光素子650Gは、画素電極として、導電層611bを有し、発光素子650Bは、画素電極として、導電層611cを有する。
【0697】
導電層611a、導電層611b、導電層611cは、それぞれ、絶縁層599に埋め込まれた導電層(プラグ)を介して、絶縁層594に埋め込まれている導電層596と接続されている。
【0698】
発光素子650Rは、層613aと、層613a上の共通層614と、共通層614上の共通電極615と、を有する。また、発光素子650Gは、層613bと、層613b上の共通層614と、共通層614上の共通電極615と、を有する。また、発光素子650Bは、層613cと、層613c上の共通層614と、共通層614上の共通電極615と、を有する。
【0699】
発光素子の一対の電極(画素電極及び共通電極)を形成する材料としては、金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを適宜用いることができる。当該材料としては、具体的には、アルミニウム、マグネシウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、インジウム、スズ、モリブデン、タンタル、タングステン、パラジウム、金、白金、銀、イットリウム、ネオジムなどの金属、及びこれらを適宜組み合わせて含む合金が挙げられる。また、当該材料としては、インジウムスズ酸化物(In-Sn酸化物、ITOともいう)、In-Si-Sn酸化物(ITSOともいう)、インジウム亜鉛酸化物(In-Zn酸化物)、及びIn-W-Zn酸化物などを挙げることができる。また、当該材料としては、アルミニウム、ニッケル、及びランタンの合金(Al-Ni-La)等のアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)、並びに、銀とマグネシウムの合金、及び、銀とパラジウムと銅の合金(Ag-Pd-Cu、APCとも記す)等の銀を含む合金が挙げられる。その他、当該材料としては、上記例示のない元素周期表の第1族または第2族に属する元素(例えば、リチウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム)、ユウロピウム、イッテルビウムなどの希土類金属及びこれらを適宜組み合わせて含む合金、グラフェン等が挙げられる。
【0700】
表示装置600Aには、SBS構造が適用されている。SBS構造は、発光素子ごとに材料及び構成を最適化することができるため、材料及び構成の選択の自由度が高まり、輝度の向上及び信頼性の向上を図ることが容易となる。
【0701】
また、表示装置600Aは、トップエミッション型である。トップエミッション型は、トランジスタ等を発光素子の発光領域と重ねて配置できるため、ボトムエミッション型に比べて画素の開口率を高めることができる。
【0702】
なお、層613aは、導電層611aの上面及び側面を覆うように形成されている。同様に、層613bは、導電層611bの上面及び側面を覆うように形成されている。また、同様に、層613cは、導電層611cの上面及び側面を覆うように形成されている。したがって、導電層611a、導電層611b、及び導電層611cが設けられている領域全体を、発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650Bの発光領域として用いることができるため、画素の開口率を高めることができる。
【0703】
発光素子650Rにおいて、層613aと共通層614をまとめてEL層と呼ぶことができる。また、同様に、発光素子650Gにおいて、層613bと共通層614をまとめてEL層と呼ぶこともできる。また、同様に、発光素子650Bにおいて、層613cと共通層614をまとめてEL層と呼ぶことができる。
【0704】
EL層は、少なくとも発光層を有する。発光層は、1種または複数種の発光物質を有する。発光物質としては、青色、紫色、青紫色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、または赤色などの発光色の光を呈する物質を適宜用いる。また、発光物質として、近赤外光を発する物質を用いることもできる。
【0705】
発光素子が有する発光物質としては、例えば、蛍光を発する物質(蛍光材料)、燐光を発する物質(燐光材料)、熱活性化遅延蛍光を示す物質(熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料)、及び、無機化合物(量子ドット材料等)が挙げられる。
【0706】
発光層は、発光物質(ゲスト材料)に加えて、1種または複数種の有機化合物(ホスト材料、アシスト材料等)を有していてもよい。1種または複数種の有機化合物としては、正孔輸送性の高い物質(正孔輸送性材料)及び電子輸送性の高い物質(電子輸送性材料)の一方または双方を用いることができる。また、1種または複数種の有機化合物として、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)、またはTADF材料を用いてもよい。
【0707】
EL層は、発光層の他に、正孔注入性の高い物質を含む層(正孔注入層)、正孔輸送性材料を含む層(正孔輸送層)、電子ブロック性の高い物質を含む層(電子ブロック層)、電子注入性の高い物質を含む層(電子注入層)、電子輸送性材料を含む層(電子輸送層)、及び、正孔ブロック性の高い物質を含む層(正孔ブロック層)のうち一つまたは複数を有することができる。その他、EL層は、バイポーラ性の物質及びTADF材料の一方または双方を含んでいてもよい。
【0708】
発光素子には低分子化合物及び高分子化合物のいずれを用いることもでき、無機化合物を含んでいてもよい。発光素子を構成する層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0709】
発光素子には、シングル構造(発光ユニットを1つだけ有する構造)を適用してもよく、タンデム構造(発光ユニットを複数有する構造)を適用してもよい。発光ユニットは、少なくとも1層の発光層を有する。タンデム構造は、複数の発光ユニットが電荷発生層を介して直列に接続された構成である。電荷発生層は、一対の電極間に電圧を印加したときに、2つの発光ユニットの一方に電子を注入し、他方に正孔を注入する機能を有する。タンデム構造とすることで、高輝度発光が可能な発光素子とすることができる。また、タンデム構造は、シングル構造と比べて、同じ輝度を得るために必要な電流を低減できるため、信頼性を高めることができる。なお、タンデム構造をスタック構造と呼ぶことができる。
【0710】
また、発光素子にマイクロキャビティ構造を付与することにより色純度を高めることができる。
【0711】
層613a、層613b、及び層613cは、フォトリソグラフィ法により島状に加工されている。そのため、層613a、層613b、及び層613cは、それぞれその端部において、上面と側面との成す角が90度に近い形状となる。一方、例えば、FMM(Fine Metal Mask)を用いて形成された有機膜は、その厚さが端部に近いほど徐々に薄くなる傾向があり、例えば端部まで1μm以上10μm以下の範囲にわたって、上面がスロープ状に形成されるため、上面と側面の区別が困難な形状となる。
【0712】
層613a、層613b、及び層613cは、上面と側面の区別が明瞭となる。これにより、隣接する層613aと層613bにおいて、層613aの側面の一と、層613bの側面の一は、互いに対向して配置される。これは、層613a、層613b、及び層613cのうちいずれの組み合わせにおいても同様である。
【0713】
層613a、層613b、及び層613cは、少なくとも発光層を有する。例えば、層613aが、赤色の光を発する発光層を有し、層613bが緑色の光を発する発光層を有し、層613cが、青色の光を発する発光層を有する構成であると好ましい。また、それぞれの発光層は、上記以外の色としては、シアン、マゼンタ、黄、または白を適用することができる。
【0714】
層613a、層613b、及び層613cは、発光層と、発光層上のキャリア輸送層(電子輸送層または正孔輸送層)と、を有することが好ましい。層613a、層613b、及び層613cの表面は、表示装置の作製工程中に露出する場合があるため、キャリア輸送層を発光層上に設けることで、発光層が最表面に露出することを抑制し、発光層が受けるダメージを低減することができる。これにより、発光素子の信頼性を高めることができる。
【0715】
共通層614は、例えば電子注入層、または正孔注入層を有する。または、共通層614は、電子輸送層と電子注入層とを積層して有していてもよく、正孔輸送層と正孔注入層とを積層して有していてもよい。共通層614は、発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650Bで共有されている。なお、共通層614は設けられていなくてもよく、発光素子が有するEL層全体が、層613a、層613b、及び層613cのように、島状に設けられていてもよい。
【0716】
また、共通電極615は、発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650Bで共有されている。また、図30に示すように、複数の発光素子が共通して有する共通電極615は、接続部640に含まれている導電層に電気的に接続される。
【0717】
絶縁層625は、水及び酸素の一方または双方に対するバリア絶縁層としての機能を有することが好ましい。また、絶縁層625は、水及び酸素の一方または双方の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。また、絶縁層625は、水及び酸素の一方または双方を捕獲する機能、または固着する(ゲッタリングともいう)機能を有することが好ましい。絶縁層625が、これらの機能のうち少なくとも一つを有することで、外部から各発光素子に拡散しうる不純物(代表的には、水及び酸素の一方または双方)の侵入を抑制することが可能な構成となる。当該構成とすることで、信頼性の高い発光素子、さらには、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0718】
また、絶縁層625は、不純物濃度が低いことが好ましい。これにより、絶縁層625からEL層に不純物が混入し、EL層が劣化することを抑制することができる。また、絶縁層625において、不純物濃度を低くすることで、水及び酸素の一方または双方に対するバリア性を高めることができる。例えば、絶縁層625は、水素濃度及び炭素濃度の一方、好ましくは双方が十分に低いことが望ましい。
【0719】
絶縁層627としては、有機材料を有する絶縁層を好適に用いることができる。有機材料としては、感光性の樹脂を用いることが好ましく、例えば、アクリル樹脂を含む感光性の樹脂組成物を用いることができる。なお、本明細書などにおいて、アクリル樹脂とは、ポリメタクリル酸エステル、またはメタクリル樹脂だけを指すものではなく、広義のアクリル系ポリマー全体を指す場合がある。
【0720】
絶縁層627に用いることができる有機材料は上記に限られるものではない。例えば、絶縁層627には、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、またはこれら樹脂の前駆体を適用することができる場合がある。また、絶縁層627として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、プルラン、水溶性のセルロース、またはアルコール可溶性のポリアミド樹脂といった有機材料を適用することができる場合がある。また、絶縁層627には、例えば、感光性の樹脂として、フォトレジストを用いることができる場合がある。なお、感光性の樹脂としては、ポジ型の材料、またはネガ型の材料が挙げられる。
【0721】
絶縁層627には可視光を吸収する材料を用いてもよい。絶縁層627が発光素子からの発光を吸収することで、発光素子から絶縁層627を介して隣接する発光素子に光が漏れること(迷光)を抑制することができる。これにより、表示装置の表示品位を高めることができる。また、表示装置に偏光板を用いなくても、表示品位を高めることができるため、表示装置の軽量化及び薄型化を図ることができる。
【0722】
可視光を吸収する材料としては、黒色などの顔料を含む材料、染料を含む材料、光吸収性を有する樹脂材料(例えば、ポリイミド)、及び、カラーフィルタに用いることのできる樹脂材料(カラーフィルタ材料)が挙げられる。特に、2色、または3色以上のカラーフィルタ材料を積層または混合した樹脂材料を用いると、可視光の遮蔽効果を高めることができるため好ましい。特に3色以上のカラーフィルタ材料を混合させることで、黒色または黒色近傍の樹脂層とすることが可能となる。
【0723】
絶縁層627は、例えば、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ法、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、またはナイフコートといった湿式の成膜方法を用いて形成することができる。特に、スピンコートにより、絶縁層627となる有機絶縁膜を形成することが好ましい。
【0724】
絶縁層627は、EL層の耐熱温度よりも低い温度で形成する。絶縁層627を形成する際の基板温度としては、代表的には、室温以上であり、かつ、200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
【0725】
なお、絶縁層627は、側面にテーパ形状を有していることが好ましい。絶縁層627の側面端部を順テーパ形状(90°未満であり、60°以下が好ましく、45°以下がより好ましい)にすることで、絶縁層627の側面端部上に設けられる、共通層614及び共通電極615に、段切れ、または局所的な薄膜化などを生じさせることなく、被覆性良く成膜することができる。これにより、共通層614及び共通電極615の面内均一性を向上させることができ、表示装置の表示品位を向上させることができる。
【0726】
また、表示装置の断面視において、絶縁層627の上面は凸曲面形状を有することが好ましい。絶縁層627の上面の凸曲面形状は、中心に向かってなだらかに膨らんだ形状であることが好ましい。絶縁層627をこのような形状にすることで、絶縁層627上全体で、共通層614及び共通電極615を被覆性良く成膜することができる。
【0727】
また、絶縁層627は、二つのEL層の間の領域(例えば、層613aと層613bとの間の領域)に形成される。このとき、絶縁層627の一部が、一方のEL層(例えば、層613a)の側面端部と、もう一方のEL層(例えば、層613b)の側面端部に挟まれる位置に配置されることになる。
【0728】
また、絶縁層627の一方の端部が画素電極として機能する導電層611aと重なり、絶縁層627の他方の端部が画素電極として機能する導電層611bと重なることが好ましい。このような構造にすることで、絶縁層627の端部を層613a(層613b)の平坦または概略平坦な領域の上に形成することができる。よって、絶縁層627のテーパ形状を、上記の通り加工することが比較的容易になる。
【0729】
以上のように、絶縁層627などを設けることにより、層613aの平坦または概略平坦な領域から層613bの平坦または概略平坦な領域まで、共通層614及び共通電極615に段切れ箇所、及び局所的に膜厚が薄い箇所が形成されることを防止できる。よって、各発光素子間において、共通層614及び共通電極615に、段切れ箇所に起因する接続不良、及び局所的に膜厚が薄い箇所に起因する電気抵抗の上昇が発生することを抑制できる。
【0730】
本実施の形態の表示装置は、発光素子間の距離を狭くすることができる。具体的には、発光素子間の距離、EL層間の距離、または画素電極間の距離を、10μm未満、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、500nm以下、200nm以下、100nm以下、90nm以下、70nm以下、50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下、または10nm以下とすることができる。別言すると、本実施の形態の表示装置は、隣接する2つの島状のEL層の間隔が1μm以下の領域を有し、好ましくは0.5μm(500nm)以下の領域を有し、さらに好ましくは100nm以下の領域を有する。このように、各発光素子間の距離を狭めることで、高い精細度と、大きな開口率を有する表示装置を提供することができる。
【0731】
発光素子650上には、保護層631が設けられている。保護層631は、発光素子650を保護するパッシベーション膜として機能する膜である。発光素子を覆う保護層631を設けることで、発光素子に水及び酸素といった不純物が入り込むことを抑制し、発光素子650の信頼性を高めることができる。保護層631は、少なくとも無機絶縁膜を含む単層構造または積層構造とすることが好ましい。無機絶縁膜としては、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜などの酸化物膜または窒化物膜が挙げられる。または、保護層631としてインジウムガリウム酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)などの半導体材料を用いてもよい。なお、保護層631は、ALD法、CVD法、及びスパッタリング法などを用いて形成できる。なお、保護層631として、無機絶縁膜を含む構成について例示したがこれに限定されない。例えば、保護層631として、無機絶縁膜と、有機絶縁膜との積層構造としてもよい。
【0732】
保護層631と、基板610と、は接着層607を介して接着されている。発光素子の封止には、固体封止構造または中空封止構造などが適用できる。図30では、基板410と基板610との間の空間が、接着層607で充填されており、固体封止構造が適用されている。または、当該空間を不活性ガス(窒素またはアルゴンなど)で充填し、中空封止構造を適用してもよい。このとき、接着層607は、発光素子と重ならないように設けられていてもよい。また、当該空間を、枠状に設けられた接着層607とは異なる樹脂で充填してもよい。
【0733】
接着層607には、紫外線硬化型の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、または熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤といった各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シートを用いてもよい。
【0734】
表示装置600Aは、トップエミッション型である。発光素子が発する光は、基板610側に射出される。そのため、基板610には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。例えば、基板610には、基板410に適用できる基板のうち、可視光に対する透過性が高い基板を選択することができる。画素電極は可視光を反射する材料を含み、対向電極(共通電極615)は可視光を透過する材料を含む。
【0735】
なお、本発明の一態様の表示装置は、トップエミッション型ではなく、発光素子が発する光が基板410側に射出されるボトムエミッション型としてもよい。なお、この場合、基板410には、可視光に対する透過性が高い基板を選択する。
【0736】
[表示装置の構成例2]
図31に、表示装置600Bの断面図を示す。
【0737】
表示装置600Bは、基板541及び基板610に可撓性を有する基板を用いることで、可撓性を有する表示装置(フレキシブルディスプレイともいう)とすることができる。基板541は、接着層543によって絶縁層545と貼り合わされている。基板610は、接着層607によって保護層631と貼り合わされている。
【0738】
表示装置600Bの素子層660は、層613a、層613b、及び層613cに、同一の構成を適用し、さらに、着色層628R、着色層628G、及び着色層628Bを設けた点で、主に、表示装置600Aの素子層660と異なる。
【0739】
層613a、層613b、及び層613cは、同一の工程、同一の材料で形成される。また、層613a、層613b、及び層613cは、互いに離隔されている。EL層を発光素子ごとに島状に設けることで、隣接する発光素子間のリーク電流(横方向リーク電流、横リーク電流、またはラテラルリーク電流と呼称する場合がある)を抑制することができる。これにより、クロストークに起因した意図しない発光を防ぐことができ、かつ隣接する発光素子間の色の混色を抑制することができるため、コントラストの極めて高い表示装置を実現できる。
【0740】
例えば、図31に示す発光素子650R、650G、650Bは、白色の光を発する。発光素子650R、650G、650Bが発する白色の光が、着色層628R、着色層628G、及び着色層628Bを透過することで、所望の色の光を得ることができる。
【0741】
なお、マイクロキャビティ構造を適用することで、白色の光を発する構成の発光素子は、赤色、緑色、または青色などの特定の波長の光が強められて発光する場合もある。
【0742】
発光素子650Rの発光は、着色層628Rを介して表示装置600Bの外部に赤色の光として取り出される。同様に、発光素子650Gの発光は、着色層628Gを介して表示装置600Bの外部に緑色の光として取り出される。発光素子650Bの発光は、着色層628Bを介して表示装置600Bの外部に青色の光として取り出される。
【0743】
白色の光を発する発光素子には、タンデム構造を用いることが好ましい。
【0744】
または、例えば、図31に示す発光素子650R、650G、650Bは、青色の光を発する。このとき、層613a、層613b、及び層613cは、青色の光を発する発光層を1層以上有する。青色の光を呈する副画素においては、発光素子650Bが発する青色の光を取り出すことができる。また、赤色の光を呈する副画素及び緑色の光を呈する副画素においては、発光素子650Rと着色層628Rの間、及び、発光素子650Gと着色層628Gの間に、色変換層を設けることで、発光素子650Rまたは発光素子650Gが発する青色の光をより長波長の光に変換し、赤色または緑色の光を取り出すことができる。色変換層を透過した光を、着色層を介して取り出すことで、所望の色の光以外を着色層で吸収し、副画素が呈する光の色純度を高めることができる。
【0745】
着色層は特定の波長域の光を選択的に透過し、他の波長域の光を吸収する有色層である。例えば、赤色の波長域の光を透過する赤色(R)のカラーフィルタ、緑色の波長域の光を透過する緑色(G)のカラーフィルタ、青色の波長域の光を透過する青色(B)のカラーフィルタなどを用いることができる。各着色層には、金属材料、樹脂材料、顔料、染料のうち一つまたは複数を用いることができる。着色層は、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を用いたエッチング方法などでそれぞれ所望の位置に形成する。
【0746】
表示装置600Bの素子層630は、表示装置600Aの素子層630と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0747】
表示装置600Bは、素子層620を有さず、素子層635を有する点で、表示装置600Aと異なる。素子層635は、素子層630と同様の構成を有する。
【0748】
素子層635が有するトランジスタの少なくとも一部は、プラグ及び配線等を介して、素子層630が有する導電層またはトランジスタと電気的に接続される。なお、素子層630と素子層635の間に、配線層670が設けられていてもよい。
【0749】
素子層635には、表示装置の画素回路及び駆動回路の一方または双方が設けられることが好ましい。
【0750】
図31では、OSトランジスタを有する素子層を2層積層する例(素子層630及び素子層635)を示すが、素子層の積層数はこれに限られず、3層以上としてもよい。例えば、OSトランジスタを有する素子層を3層以上積層する場合は、一番下の層を、表示装置の駆動回路(ゲートドライバ及びソースドライバの一方または双方)に用い、一番上の層を、表示装置の画素回路に用い、その間に位置する層は、それぞれ、画素回路または駆動回路に用いることが好ましい。
【0751】
なお、Siトランジスタは、代表的には、単結晶Siウェハ上に形成されるため、可撓性を有する構成とするのが困難である。一方で、図31に示すように、Siトランジスタを用いずに、OSトランジスタのみで表示装置を構成する場合、比較的簡単な製造プロセスにて、可撓性を有する構成とすることができる。
【0752】
[発光素子の構成例]
次に、本発明の一態様の表示装置に用いることができる発光素子について説明する。以下では、主に、図30及び図31に示す構成とは異なる、発光素子の構成例について説明する。
【0753】
図32(A)に、発光素子を複数有する表示部の一部における上面概略図を示す。表示部は、赤色の光を呈する発光素子61R、緑色の光を呈する発光素子61G、及び青色の光を呈する発光素子61Bをそれぞれ複数有する。図32(A)では、各発光素子の区別を簡単にするため、各発光素子の発光領域内にR、G、Bの符号を付している。また、図32(A)では、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の3つの発光色を有する構成について例示したがこれに限定されない。例えば、4つ以上の色を有する構成としてもよい。
【0754】
図32(B)は、図32(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図32(B)に示す、発光素子61R、発光素子61G、及び発光素子61Bは、それぞれ絶縁層363上に設けられ、画素電極として機能する導電層171、及び共通電極として機能する導電層173を有する。絶縁層363としては、無機絶縁膜及び有機絶縁膜の一方または双方を用いることができる。
【0755】
発光素子61Rは、画素電極として機能する導電層171と共通電極として機能する導電層173との間に、EL層172Rを有する。EL層172Rは、赤色の波長域にピークを有する光を発する発光性の化合物を有する。発光素子61Gが有するEL層172Gは、緑色の波長域にピークを有する光を発する発光性の化合物を有する。発光素子61Bが有するEL層172Bは、青色の波長域にピークを有する光を発する発光性の化合物を有する。
【0756】
画素電極として機能する導電層171は、発光素子毎に設けられている。また、共通電極として機能する導電層173は、各発光素子に共通な一続きの層として設けられている。画素電極として機能する導電層171と共通電極として機能する導電層173のいずれか一方に可視光に対して透光性を有する導電膜を用い、他方に反射性を有する導電膜を用いる。
【0757】
例えば、発光素子61Rがトップエミッション型である場合、発光素子61Rから射出される光175Rは、導電層173側に射出される。発光素子61Gがトップエミッション型である場合、発光素子61Gから射出される光175Gは、導電層173側に射出される。発光素子61Bがトップエミッション型である場合、発光素子61Bから射出される光175Bは、導電層173側に射出される。
【0758】
画素電極として機能する導電層171の端部を覆って、絶縁層272が設けられている。絶縁層272の端部は、テーパ形状であることが好ましい。絶縁層272には、無機絶縁膜及び有機絶縁膜の一方または双方を用いることができる。
【0759】
絶縁層272は、隣接する発光素子が意図せず電気的に短絡し、誤発光することを防ぐために設ける。また、EL層の形成にメタルマスクを用いる場合、メタルマスクが導電層171に接触しないようにする機能も有する。
【0760】
EL層172R、EL層172G、及びEL層172Bは、それぞれ画素電極として機能する導電層171の上面に接する領域と、絶縁層272の表面に接する領域と、を有する。また、EL層172R、EL層172G、及びEL層172Bの端部は、絶縁層272上に位置する。
【0761】
図32(B)に示すように、発光色の異なる発光素子間において、2つのEL層の間に隙間が設けられている。このように、EL層172R、EL層172G、及びEL層172Bが、互いに接しないように設けられていることが好ましい。これにより、隣接する2つのEL層を介して電流が流れ、意図しない発光が生じること(クロストークともいう)を好適に防ぐことができる。そのため、コントラストを高めることができ、表示品位の高い表示装置を実現できる。
【0762】
EL層172R、EL層172G、及びEL層172Bは、メタルマスクなどのシャドーマスクを用いた真空蒸着法などにより、作り分けることができる。または、フォトリソグラフィ法により、これらを作り分けてもよい。フォトリソグラフィ法を用いることで、メタルマスクを用いた場合では実現することが困難である高い精細度の表示装置を実現することができる。
【0763】
また、共通電極として機能する導電層173上には、発光素子61R、発光素子61G、及び発光素子61Bを覆って、保護層271が設けられている。保護層271は、上方から各発光素子に水などの不純物が拡散することを防ぐ機能を有する。保護層271の材料としては、前述の保護層631の材料を参照できる。
【0764】
図32(C)には、白色の光を呈する発光素子61Wを示す。発光素子61Wは、画素電極として機能する導電層171と共通電極として機能する導電層173との間に白色の光を呈するEL層172Wを有する。
【0765】
EL層172Wとしては、例えば、それぞれの発光色が補色の関係になるように選択された、2以上の発光層を積層した構成とすることができる。また、発光層間に電荷発生層を挟持した、タンデム型のEL層を用いてもよい。
【0766】
図32(C)には、3つの発光素子61Wを並べて示している。左の発光素子61Wの上部には着色層264Rが設けられている。着色層264Rは、赤色の光を透過するバンドパスフィルタとして機能する。同様に、中央の発光素子61Wの上部には緑色の光を透過する着色層264Gが設けられ、右の発光素子61Wの上部には、青色の光を透過する着色層264Bが設けられている。これにより、表示装置はカラーの画像を表示することができる。
【0767】
ここで、隣接する2つの発光素子61W間において、EL層172Wが分離されている。これにより、隣接する2つの発光素子61Wにおいて、EL層172Wを介して電流が流れて意図しない発光が生じることを防ぐことができる。特に、EL層172Wとして、2つの発光層の間に電荷発生層が設けられる積層型のEL層を用いた場合では、精細度が高いほど、すなわち隣接画素間の距離が小さいほど、クロストークの影響が顕著となり、コントラストが低下してしまうといった問題がある。そのため、このような構成とすることで、高い精細度と、高いコントラストを兼ね備える表示装置を実現できる。
【0768】
EL層172Wの分離は、フォトリソグラフィ法により行うことが好ましい。これにより、発光素子間の間隔を狭めることができるため、例えばメタルマスク等のシャドーマスクを用いた場合と比較して、高い開口率の表示装置を実現することができる。
【0769】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0770】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置の応用例について、図33乃至図37を用いて説明する。
【0771】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、電子部品、大型計算機、宇宙用機器、データセンター(Data Center:DCとも呼称する)、及び、各種電子機器に用いることができる。本発明の一態様の半導体装置を用いることで、電子部品、大型計算機、宇宙用機器、データセンター、及び、各種電子機器の、低消費電力化及び高性能化が実現できる。
【0772】
また、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置を、各種電子機器の表示部に用いることができる。本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置は、高精細化及び高解像度化が容易である。
【0773】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。
【0774】
特に、本発明の一態様の表示装置は、精細度を高めることが可能なため、比較的小さな表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。このような電子機器としては、例えば、腕時計型及びブレスレット型の情報端末機(ウェアラブル機器)、並びに、ヘッドマウントディスプレイなどのVR向け機器、メガネ型のAR向け機器、及び、MR向け機器など、頭部に装着可能なウェアラブル機器等が挙げられる。
【0775】
本発明の一態様の表示装置は、HD(画素数1280×720)、FHD(画素数1920×1080)、WQHD(画素数2560×1440)、WQXGA(画素数2560×1600)、4K(画素数3840×2160)、8K(画素数7680×4320)といった極めて高い解像度を有していることが好ましい。特に4K、8K、またはそれ以上の解像度とすることが好ましい。また、本発明の一態様の表示装置における画素密度(精細度)は、100ppi以上、300ppi以上、500ppi以上、1000ppi以上、2000ppi以上、3000ppi以上、5000ppi以上、または7000ppi以上とすることが好ましい。このように高い解像度及び高い精細度の一方または双方を有する表示装置を用いることで、臨場感及び奥行き感などをより高めることが可能となる。また、本発明の一態様の表示装置の画面比率(アスペクト比)については、特に限定はない。例えば、表示装置は、1:1(正方形)、4:3、16:9、16:10など様々な画面比率に対応することができる。
【0776】
本実施の形態の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を検知、検出、または測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0777】
本実施の形態の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。
【0778】
[電子部品]
電子部品700が実装された基板(実装基板704)の斜視図を、図33(A)に示す。図33(A)に示す電子部品700は、モールド711内に半導体装置710を有している。図33(A)は、電子部品700の内部を示すために、一部の記載を省略している。電子部品700は、モールド711の外側にランド712を有する。ランド712は電極パッド713と電気的に接続され、電極パッド713は半導体装置710とワイヤ714を介して電気的に接続されている。電子部品700は、例えばプリント基板702に実装される。このような電子部品が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板702上で電気的に接続されることで実装基板704が完成する。
【0779】
また、半導体装置710は、駆動回路層715と、記憶層716と、を有する。なお、記憶層716は、複数のメモリセルアレイが積層された構成である。駆動回路層715と、記憶層716と、が積層された構成は、モノリシック積層の構成とすることができる。モノリシック積層の構成では、TSV(Through Silicon Via)などの貫通電極技術、及び、Cu-Cu直接接合などの接合技術、を用いることなく、各層間を接続することができる。駆動回路層715と、記憶層716と、をモノリシック積層の構成とすることで、例えば、プロセッサ上にメモリが直接形成される、いわゆるオンチップメモリの構成とすることができる。オンチップメモリの構成とすることで、プロセッサと、メモリとのインターフェース部分の動作を高速にすることが可能となる。
【0780】
また、オンチップメモリの構成とすることで、TSVなどの貫通電極を用いる技術と比較し、接続配線などのサイズを小さくできるため、接続ピン数を増加させることも可能となる。接続ピン数を増加させることで、並列動作が可能となるため、メモリのバンド幅(メモリバンド幅ともいう)を向上させることが可能となる。
【0781】
また、記憶層716が有する、複数のメモリセルアレイを、OSトランジスタを用いて形成し、当該複数のメモリセルアレイをモノリシックで積層することが好ましい。複数のメモリセルアレイをモノリシック積層の構成とすることで、メモリのバンド幅、及びメモリのアクセスレイテンシの一方または双方を向上させることができる。なお、バンド幅とは、単位時間あたりのデータ転送量であり、アクセスレイテンシとは、アクセスしてからデータのやり取りが始まるまでの時間である。なお、記憶層716にSiトランジスタを用いる構成の場合、OSトランジスタと比較し、モノリシック積層の構成とすることが困難である。そのため、モノリシック積層の構成において、OSトランジスタは、Siトランジスタよりも優れた構造であるといえる。
【0782】
また、半導体装置710を、ダイと呼称してもよい。なお、本明細書等において、ダイとは、半導体チップの製造工程で、例えば円盤状の基板(ウエハともいう)などに回路パターンを形成し、さいの目状に切り分けて得られたチップ片を表す。なお、ダイに用いることのできる半導体材料として、例えば、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、または窒化ガリウム(GaN)などが挙げられる。例えば、シリコン基板(シリコンウエハともいう)から得られたダイを、シリコンダイという場合がある。
【0783】
次に、電子部品730の斜視図を図33(B)に示す。電子部品730は、SiP(System in Package)またはMCM(Multi Chip Module)の一例である。電子部品730は、パッケージ基板732(プリント基板)上にインターポーザ731が設けられ、インターポーザ731上に半導体装置735、及び複数の半導体装置710が設けられている。
【0784】
電子部品730では、半導体装置710を広帯域メモリ(HBM:High Bandwidth Memory)として用いる例を示している。また、半導体装置735は、CPU、GPU、またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路に用いることができる。
【0785】
パッケージ基板732は、例えば、セラミックス基板、プラスチック基板、または、ガラスエポキシ基板を用いることができる。インターポーザ731は、例えば、シリコンインターポーザ、または樹脂インターポーザを用いることができる。
【0786】
インターポーザ731は、複数の配線を有し、端子ピッチの異なる複数の集積回路を電気的に接続する機能を有する。複数の配線は、単層または多層で設けられる。また、インターポーザ731は、インターポーザ731上に設けられた集積回路をパッケージ基板732に設けられた電極と電気的に接続する機能を有する。これらのことから、インターポーザを「再配線基板」または「中間基板」と呼ぶ場合がある。また、インターポーザ731に貫通電極を設けて、当該貫通電極を用いて集積回路とパッケージ基板732を電気的に接続する場合もある。また、シリコンインターポーザでは、貫通電極として、TSVを用いることもできる。
【0787】
HBMでは、広いメモリバンド幅を実現するために多くの配線を接続する必要がある。このため、HBMを実装するインターポーザには、微細かつ高密度の配線形成が求められる。よって、HBMを実装するインターポーザには、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0788】
また、シリコンインターポーザを用いた、SiP及びMCM等では、集積回路とインターポーザ間の膨張係数の違いによる信頼性の低下が生じにくい。また、シリコンインターポーザは表面の平坦性が高いため、シリコンインターポーザ上に設ける集積回路とシリコンインターポーザ間の接続不良が生じにくい。特に、インターポーザ上に複数の集積回路を横に並べて配置する2.5Dパッケージ(2.5次元実装)では、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0789】
一方で、シリコンインターポーザ、及びTSVなどを用いて端子ピッチの異なる複数の集積回路を電気的に接続する場合、当該端子ピッチの幅などのスペースが必要となる。そのため、電子部品730のサイズを小さくしようとした場合、上記の端子ピッチの幅が問題になり、広いメモリバンド幅を実現するために必要な多くの配線を設けることが、困難になる場合がある。そこで、前述したように、OSトランジスタを用いたモノリシック積層の構成が好適である。TSVを用いて積層したメモリセルアレイと、モノリシック積層したメモリセルアレイと、を組み合わせた複合化構造としてもよい。
【0790】
また、電子部品730と重ねてヒートシンク(放熱板)を設けてもよい。ヒートシンクを設ける場合は、インターポーザ731上に設ける集積回路の高さを揃えることが好ましい。例えば、本実施の形態に示す電子部品730では、半導体装置710と半導体装置735の高さを揃えることが好ましい。
【0791】
電子部品730を他の基板に実装するため、パッケージ基板732の底部に電極733を設けてもよい。図33(B)では、電極733を半田ボールで形成する例を示している。パッケージ基板732の底部に半田ボールをマトリクス状に設けることで、BGA(Ball Grid Array)実装を実現できる。また、電極733を導電性のピンで形成してもよい。パッケージ基板732の底部に導電性のピンをマトリクス状に設けることで、PGA(Pin Grid Array)実装を実現できる。
【0792】
電子部品730は、BGA及びPGAに限らず様々な実装方法を用いて他の基板に実装することができる。実装方法としては、例えば、SPGA(Staggered Pin Grid Array)、LGA(Land Grid Array)、QFP(Quad Flat Package)、QFJ(Quad Flat J-leaded package)、及び、QFN(Quad Flat Non-leaded package)が挙げられる。
【0793】
[大型計算機]
次に、大型計算機5600の斜視図を図34(A)に示す。図34(A)に示す大型計算機5600には、ラック5610にラックマウント型の計算機5620が複数格納されている。なお、大型計算機5600を、スーパーコンピュータと呼称してもよい。
【0794】
計算機5620は、例えば、図34(B)に示す斜視図の構成とすることができる。図34(B)において、計算機5620は、マザーボード5630を有し、マザーボード5630は、複数のスロット5631、複数の接続端子を有する。スロット5631には、PCカード5621が挿入されている。加えて、PCカード5621は、接続端子5623、接続端子5624、接続端子5625を有し、それぞれ、マザーボード5630に接続されている。
【0795】
図34(C)に示すPCカード5621は、CPU、GPU、記憶装置などを備えた処理ボードの一例である。PCカード5621は、ボード5622を有する。また、ボード5622は、接続端子5623と、接続端子5624と、接続端子5625と、半導体装置5626と、半導体装置5627と、半導体装置5628と、接続端子5629と、を有する。なお、図34(C)には、半導体装置5626、半導体装置5627、及び半導体装置5628以外の半導体装置を図示しているが、それらの半導体装置については、以下に記載する半導体装置5626、半導体装置5627、及び半導体装置5628の説明を参照できる。
【0796】
接続端子5629は、マザーボード5630のスロット5631に挿入することができる形状を有しており、接続端子5629は、PCカード5621とマザーボード5630とを接続するためのインターフェースとして機能する。接続端子5629の規格としては、例えば、PCIeなどが挙げられる。
【0797】
接続端子5623、接続端子5624、接続端子5625は、例えば、PCカード5621に対して電力供給、信号入力などを行うためのインターフェースとすることができる。また、例えば、PCカード5621によって計算された信号の出力などを行うためのインターフェースとすることができる。接続端子5623、接続端子5624、接続端子5625のそれぞれの規格としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、SATA(Serial ATA)、SCSI(Small Computer System Interface)などが挙げられる。また、接続端子5623、接続端子5624、接続端子5625から映像信号を出力する場合、それぞれの規格としては、HDMI(登録商標)などが挙げられる。
【0798】
半導体装置5626は、信号の入出力を行う端子(図示しない)を有しており、当該端子をボード5622が備えるソケット(図示しない)に対して差し込むことで、半導体装置5626とボード5622を電気的に接続することができる。
【0799】
半導体装置5627は、複数の端子を有しており、当該端子をボード5622が備える配線に対して、例えば、リフロー方式のはんだ付けを行うことで、半導体装置5627とボード5622を電気的に接続することができる。半導体装置5627としては、例えば、FPGA、GPU、CPUなどが挙げられる。半導体装置5627として、例えば、電子部品730を用いることができる。
【0800】
半導体装置5628は、複数の端子を有しており、当該端子をボード5622が備える配線に対して、例えば、リフロー方式のはんだ付けを行うことで、半導体装置5628とボード5622を電気的に接続することができる。半導体装置5628としては、例えば、記憶装置などが挙げられる。半導体装置5628として、例えば、電子部品700を用いることができる。
【0801】
大型計算機5600は並列計算機としても機能できる。大型計算機5600を並列計算機として用いることで、例えば、人工知能の学習、及び推論に必要な大規模の計算を行うことができる。
【0802】
[宇宙用機器]
本発明の一態様の半導体装置は、宇宙用機器に好適に用いることができる。
【0803】
本発明の一態様の半導体装置は、OSトランジスタを含む。OSトランジスタは、放射線照射による電気特性の変動が小さい。つまり放射線に対する耐性が高いため、放射線が入射しうる環境において好適に用いることができる。例えば、OSトランジスタは、宇宙空間にて使用する場合に好適に用いることができる。具体的には、OSトランジスタを、スペースシャトル、人工衛星、または、宇宙探査機に設けられる半導体装置を構成するトランジスタに用いることができる。放射線として、例えば、X線、及び中性子線が挙げられる。なお、宇宙空間とは、例えば、高度100km以上を指し、本明細書に記載の宇宙空間は、熱圏、中間圏、及び成層圏のうち一つまたは複数を含むことができる。
【0804】
図34(D)には、宇宙用機器の一例として、人工衛星6800を示している。人工衛星6800は、機体6801と、ソーラーパネル6802と、アンテナ6803と、二次電池6805と、制御装置6807と、を有する。なお、図34(D)においては、宇宙空間に惑星6804を例示している。
【0805】
また、図34(D)には示していないが、二次電池6805に、バッテリマネジメントシステム(BMSともいう)、またはバッテリ制御回路を設けてもよい。前述のバッテリマネジメントシステム、またはバッテリ制御回路に、OSトランジスタを用いると、消費電力が低く、かつ宇宙空間においても高い信頼性を有するため好適である。
【0806】
また、宇宙空間は、地上に比べて100倍以上、放射線量の高い環境である。なお、放射線として、例えば、X線、及びガンマ線に代表される電磁波(電磁放射線)、並びにアルファ線、ベータ線、中性子線、陽子線、重イオン線、中間子線などに代表される粒子放射線が挙げられる。
【0807】
ソーラーパネル6802に太陽光が照射されることにより、人工衛星6800が動作するために必要な電力が生成される。しかしながら、例えばソーラーパネルに太陽光が照射されない状況、またはソーラーパネルに照射される太陽光の光量が少ない状況では、生成される電力が少なくなる。よって、人工衛星6800が動作するために必要な電力が生成されない可能性がある。生成される電力が少ない状況下であっても人工衛星6800を動作させるために、人工衛星6800に二次電池6805を設けるとよい。なお、ソーラーパネルは、太陽電池モジュールと呼ばれる場合がある。
【0808】
人工衛星6800は、信号を生成することができる。当該信号は、アンテナ6803を介して送信され、例えば地上に設けられた受信機、または他の人工衛星が当該信号を受信することができる。人工衛星6800が送信した信号を受信することにより、当該信号を受信した受信機の位置を測定することができる。以上より、人工衛星6800は、衛星測位システムを構成することができる。
【0809】
また、制御装置6807は、人工衛星6800を制御する機能を有する。制御装置6807としては、例えば、CPU、GPU、及び記憶装置の中から選ばれるいずれか一または複数を用いて構成される。なお、制御装置6807には、本発明の一態様であるOSトランジスタを含む半導体装置を用いると好適である。OSトランジスタは、Siトランジスタと比較し、放射線照射による電気特性の変動が小さい。つまり放射線が入射しうる環境においても信頼性が高く、好適に用いることができる。
【0810】
また、人工衛星6800は、センサを有する構成とすることができる。例えば、可視光センサを有する構成とすることにより、人工衛星6800は、地上に設けられている物体に当たって反射された太陽光を検出する機能を有することができる。または、熱赤外センサを有する構成とすることにより、人工衛星6800は、地表から放出される熱赤外線を検出する機能を有することができる。以上より、人工衛星6800は、例えば地球観測衛星としての機能を有することができる。
【0811】
なお、本実施の形態においては、宇宙用機器の一例として、人工衛星について例示したがこれに限定されない。例えば、本発明の一態様の半導体装置は、宇宙船、宇宙カプセル、宇宙探査機などの宇宙用機器に好適に用いることができる。
【0812】
以上の説明の通り、OSトランジスタは、Siトランジスタと比較し、広いメモリバンド幅の実現が可能なこと、放射線耐性が高いこと、といった優れた効果を有する。
【0813】
[データセンター]
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、データセンターなどに適用されるストレージシステムに好適に用いることができる。データセンターは、データの不変性を保障するなど、データの長期的な管理を行うことが求められる。長期的なデータを管理する場合、膨大なデータを記憶するためのストレージ及びサーバの設置、データを保持するための安定した電源の確保、あるいはデータの保持に要する冷却設備の確保、など建屋の大型化が必要となる。
【0814】
データセンターに適用されるストレージシステムに本発明の一態様の半導体装置を用いることにより、データの保持に要する電力の低減、データを保持する半導体装置の小型化を図ることができる。そのため、ストレージシステムの小型化、データを保持するための電源の小型化、冷却設備の小規模化、などを図ることができる。そのため、データセンターの省スペース化を図ることができる。
【0815】
また、本発明の一態様の半導体装置は、消費電力が少ないため、回路からの発熱を低減することができる。よって、当該発熱によるその回路自体、周辺回路、及びモジュールへの悪影響を低減できる。また、本発明の一態様の半導体装置を用いることにより、高温環境下においても動作が安定したデータセンターを実現できる。よってデータセンターの信頼性を高めることができる。
【0816】
図34(E)にデータセンターに適用可能なストレージシステムを示す。図34(E)に示すストレージシステム7010は、ホスト7001(Host Computerと図示)として複数のサーバ7001sbを有する。また、ストレージ7003(Storageと図示)として複数の記憶装置7003mdを有する。ホスト7001とストレージ7003とは、ストレージエリアネットワーク7004(SAN:Storage Area Networkと図示)及びストレージ制御回路7002(Storage Controllerと図示)を介して接続されている形態を図示している。
【0817】
ホスト7001は、ストレージ7003に記憶されたデータにアクセスするコンピュータに相当する。ホスト7001同士は、ネットワークで互いに接続されていてもよい。
【0818】
ストレージ7003は、フラッシュメモリを用いることで、データのアクセススピード、つまりデータの記憶及び出力に要する時間を短くしているものの、当該時間は、ストレージ内のキャッシュメモリとして用いることのできるDRAMが要する時間に比べて格段に長い。ストレージシステムでは、ストレージ7003のアクセススピードの長さの問題を解決するために、通常ストレージ内にキャッシュメモリを設けてデータの記憶及び出力に要する時間を短くしている。
【0819】
前述のキャッシュメモリは、ストレージ制御回路7002及びストレージ7003内に用いられる。ホスト7001とストレージ7003との間でやり取りされるデータは、ストレージ制御回路7002及びストレージ7003内の当該キャッシュメモリに記憶されたのち、ホスト7001またはストレージ7003に出力される。
【0820】
前述のキャッシュメモリのデータを記憶するためのトランジスタとして、OSトランジスタを用いてデータに応じた電位を保持する構成とすることで、リフレッシュする頻度を減らし、消費電力を小さくすることができる。またメモリセルアレイを積層する構成とすることで小型化が可能である。
【0821】
[電子機器]
図35(A)乃至図35(F)を用いて、頭部に装着可能なウェアラブル機器の一例を説明する。これらウェアラブル機器は、ARのコンテンツを表示する機能、VRのコンテンツを表示する機能、SRのコンテンツを表示する機能、MRのコンテンツを表示する機能のうち少なくとも一つを有する。電子機器が、AR、VR、SR、及びMRなどの少なくとも一つのコンテンツを表示する機能を有することで、使用者の没入感を高めることが可能となる。
【0822】
図35(A)に示す電子機器700Aは、一対の表示パネル751と、一対の筐体721と、通信部(図示しない)と、一対の装着部723と、制御部(図示しない)と、撮像部(図示しない)と、一対の光学部材753と、フレーム757と、一対の鼻パッド758と、を有する。
【0823】
表示パネル751には、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。したがって極めて精細度の高い表示が可能な電子機器とすることができる。また、制御部(図示しない)には、本発明の一態様の半導体装置を適用することができる。これにより、電子機器の消費電力を低減することができる。
【0824】
電子機器700Aは、光学部材753の表示領域756に、表示パネル751で表示した画像を投影することができる。光学部材753は透光性を有するため、使用者は光学部材753を通して視認される透過像に重ねて、表示領域に表示された画像を見ることができる。したがって、電子機器700Aは、AR表示が可能な電子機器である。
【0825】
電子機器700Aには、撮像部として、前方を撮像することのできるカメラが設けられていてもよい。また、電子機器700Aは、ジャイロセンサなどの加速度センサを備えることで、使用者の頭部の向きを検知して、その向きに応じた画像を表示領域756に表示することもできる。
【0826】
通信部は無線通信機を有し、当該無線通信機により映像信号等を供給することができる。なお、無線通信機に代えて、または無線通信機に加えて、映像信号及び電源電位が供給されるケーブルを接続可能なコネクタを備えていてもよい。
【0827】
また、電子機器700Aには、バッテリが設けられており、無線及び有線の一方または双方によって充電することができる。
【0828】
筐体721には、タッチセンサモジュールが設けられていてもよい。タッチセンサモジュールは、筐体721の外側の面がタッチされることを検出する機能を有する。タッチセンサモジュールにより、使用者のタップ操作またはスライド操作などを検出し、様々な処理を実行することができる。例えば、タップ操作によって動画の一時停止または再開などの処理を実行することが可能となり、スライド操作により、早送りまたは早戻しの処理を実行することなどが可能となる。また、2つの筐体721のそれぞれにタッチセンサモジュールを設けることで、操作の幅を広げることができる。
【0829】
図35(B)に示す電子機器800A、及び、図35(C)に示す電子機器800Bは、それぞれ、一対の表示部820と、筐体821と、通信部822と、一対の装着部823と、制御部824と、一対の撮像部825と、一対のレンズ832と、を有する。
【0830】
表示部820には、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。したがって極めて精細度の高い表示が可能な電子機器とすることができる。これにより、使用者に高い没入感を感じさせることができる。また、制御部824には、本発明の一態様の半導体装置を適用することができる。これにより、電子機器の消費電力を低減することができる。
【0831】
表示部820は、筐体821の内部の、レンズ832を通して視認できる位置に設けられる。また、一対の表示部820に異なる画像を表示させることで、視差を用いた3次元表示を行うこともできる。
【0832】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、VR向けの電子機器ということができる。電子機器800Aまたは電子機器800Bを装着した使用者は、レンズ832を通して、表示部820に表示される画像を視認することができる。
【0833】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、レンズ832及び表示部820が、使用者の目の位置に応じて最適な位置となるように、これらの左右の位置を調整可能な機構を有していることが好ましい。また、レンズ832と表示部820との距離を変えることで、ピントを調整する機構を有していることが好ましい。
【0834】
装着部823により、使用者は電子機器800Aまたは電子機器800Bを頭部に装着することができる。なお、図35(B)などにおいては、メガネのつる(テンプルなどともいう)のような形状として例示しているがこれに限定されない。装着部823は、使用者が装着できればよく、例えば、ヘルメット型またはバンド型の形状としてもよい。
【0835】
撮像部825は、外部の情報を取得する機能を有する。撮像部825が取得したデータは、表示部820に出力することができる。撮像部825には、イメージセンサを用いることができる。また、望遠、広角などの複数の画角に対応可能なように複数のカメラを設けてもよい。
【0836】
なお、ここでは撮像部825を有する例を示したが、対象物の距離を測定することのできる測距センサ(以下、検知部ともよぶ)を設ければよい。すなわち、撮像部825は、検知部の一態様である。検知部としては、例えばイメージセンサ、または、ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging)などの距離画像センサを用いることができる。カメラによって得られた画像と、距離画像センサによって得られた画像とを用いることにより、より多くの情報を取得し、より高精度なジェスチャー操作を可能とすることができる。
【0837】
電子機器800Aは、骨伝導イヤフォンとして機能する振動機構を有していてもよい。例えば、表示部820、筐体821、及び装着部823のいずれか一または複数に、当該振動機構を有する構成を適用することができる。これにより、別途、ヘッドフォン、イヤフォン、またはスピーカなどの音響機器を必要とせず、電子機器800Aを装着しただけで映像と音声を楽しむことができる。
【0838】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、入力端子を有していてもよい。入力端子には映像出力機器等からの映像信号、及び、電子機器内に設けられるバッテリを充電するための電力等を供給するケーブルを接続することができる。
【0839】
本発明の一態様の電子機器は、イヤフォン750と無線通信を行う機能を有していてもよい。イヤフォン750は、通信部(図示しない)を有し、無線通信機能を有する。イヤフォン750は、無線通信機能により、電子機器から情報(例えば音声データ)を受信することができる。例えば、図35(A)に示す電子機器700Aは、無線通信機能によって、イヤフォン750に情報を送信する機能を有する。
【0840】
また、電子機器がイヤフォン部を有していてもよい。図35(C)に示す電子機器800Bは、イヤフォン部827を有する。例えば、イヤフォン部827と制御部824とは、互いに有線接続されている構成とすることができる。イヤフォン部827と制御部824とをつなぐ配線の一部は、筐体821または装着部823の内部に配置されていてもよい。また、イヤフォン部827と装着部823とがマグネットを有していてもよい。これにより、イヤフォン部827を装着部823に磁力によって固定することができ、収納が容易となり好ましい。
【0841】
なお、電子機器は、イヤフォンまたはヘッドフォンなどを接続することができる音声出力端子を有していてもよい。また、電子機器は、音声入力端子及び音声入力機構の一方または双方を有していてもよい。音声入力機構としては、例えば、マイクなどの集音装置を用いることができる。電子機器が音声入力機構を有することで、電子機器に、いわゆるヘッドセットとしての機能を付与してもよい。
【0842】
図35(D)及び図35(E)に、VR向けのゴーグル型の電子機器850Aの斜視図を示す。図35(D)及び図35(E)では、筐体845内に、それぞれ湾曲した一対の表示装置840(表示装置840_R及び表示装置840_L)を有する例を示している。また、電子機器850Aは、動き検出部841、視線検出部842、演算部843、通信部844、レンズ848、操作ボタン851、装着具854、センサ855、ダイヤル856などを有する。
【0843】
2つの表示装置840を有することで、使用者は片方の目につき1つの表示装置を見ることができる。これにより、視差を用いた3次元表示等を行う際であっても、高い解像度の映像を表示することができる。また、表示装置840は使用者の目を概略中心とした円弧状に湾曲している。これにより、使用者の目から表示装置840の表示面までの距離が一定となるため、使用者はより自然な映像を見ることができる。また、表示装置840に、光の輝度または色度が見る角度によって変化してしまう、いわゆる視野角依存性がある場合であっても、表示装置840の表示面の法線方向に使用者の目が位置する構成にできるため、特に水平方向については実質的にその影響を無視することができるため、より現実感のある映像を表示することができる。
【0844】
図35(E)に示すように、レンズ848は、表示装置840と使用者の目の位置との間に位置する。図35(E)では、視度調節のためにレンズの位置を変化させるダイヤル856を有する例を示している。なお、電子機器850Aがオートフォーカス機能を有する場合には、視度調節のためのダイヤル856を有さなくてもよい。
【0845】
図35(F)には、1枚の表示装置840を有するゴーグル型の電子機器850Bを示している。このような構成とすることで、部品点数を削減することができる。
【0846】
表示装置840は、左右2つの領域にそれぞれ右目用の画像と、左目用の画像の2つの画像を並べて表示することができる。これにより、両眼視差を用いた立体映像を表示することができる。なお、表示装置840には、視差を用いた2つの異なる画像を並べて表示させてもよいし、視差を用いずに2つの同じ画像を並べて表示させてもよい。
【0847】
また、表示装置840の全域に亘って、両方の目で視認可能な一つの画像を表示してもよい。これにより、視野の両端に亘ってパノラマ映像を表示することが可能となるため、現実感が高まる。
【0848】
表示装置840に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。本発明の一態様の表示装置は、極めて精細度が高いため、レンズ848を用いて拡大したとしても、使用者に画素が視認されることなく、より現実感の高い映像を表示することができる。
【0849】
図36(A)に示す電子機器6500は、スマートフォンとして用いることのできる携帯情報端末機である。
【0850】
電子機器6500は、筐体6501、表示部6502、電源ボタン6503、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、光源6508、及び制御装置6509などを有する。
【0851】
図36(B)に示す電子機器6520は、タブレット端末として用いることのできる携帯情報端末機である。
【0852】
電子機器6520は、筐体6501、表示部6502、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、制御装置6509、及び接続端子6519などを有する。
【0853】
電子機器6500及び電子機器6520のそれぞれにおいて、表示部6502はタッチパネル機能を備える。また、制御装置6509は、例えば、CPU、GPU、及び記憶装置の中から選ばれるいずれか一または複数を有する。本発明の一態様の半導体装置は、表示部6502及び制御装置6509の一方または双方に用いることができる。
【0854】
図36(C)は、電子機器6500または電子機器6520が有する筐体6501のマイク6506側の端部を含む断面概略図である。
【0855】
筐体6501の表示面側には透光性を有する保護部材6510が設けられ、筐体6501と保護部材6510に囲まれた空間内に、表示パネル6511、光学部材6512、タッチセンサパネル6513、プリント基板6517、バッテリ6518等が配置されている。
【0856】
保護部材6510には、表示パネル6511、光学部材6512、及びタッチセンサパネル6513が接着層(図示しない)により固定されている。
【0857】
表示部6502よりも外側の領域において、表示パネル6511の一部が折り返されており、当該折り返された部分にFPC6515が接続されている。FPC6515には、IC6516が実装されている。FPC6515は、プリント基板6517に設けられた端子に接続されている。
【0858】
表示パネル6511には本発明の一態様のフレキシブルディスプレイを適用することができる。そのため、極めて軽量な電子機器を実現できる。また、表示パネル6511が極めて薄いため、電子機器の厚さを抑えつつ、大容量のバッテリ6518を搭載することもできる。また、表示パネル6511の一部を折り返して、画素部の裏側にFPC6515との接続部を配置することにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0859】
図36(D)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7103により筐体7101を支持した構成を示している。
【0860】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0861】
図36(D)に示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチ、及び、別体のリモコン操作機7111により行うことができる。または、表示部7000にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7000に触れることでテレビジョン装置7100を操作してもよい。リモコン操作機7111は、当該リモコン操作機7111から出力する情報を表示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機7111が備える操作キーまたはタッチパネルにより、チャンネル及び音量の操作を行うことができ、表示部7000に表示される映像を操作することができる。
【0862】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機及びモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0863】
図36(E)に、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、外部接続ポート7214、及び、制御装置7215などを有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。制御装置7215は、例えば、CPU、GPU、及び記憶装置の中から選ばれるいずれか一または複数を有する。本発明の一態様の半導体装置は、表示部7000及び制御装置7215の一方または双方に用いることができる。
【0864】
図36(F)及び図36(G)に、デジタルサイネージの一例を示す。
【0865】
図36(F)に示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0866】
図36(G)は円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0867】
図36(F)及び図36(G)において、表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0868】
表示部7000が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0869】
表示部7000にタッチパネルを適用することで、表示部7000に画像または動画を表示するだけでなく、使用者が直感的に操作することができ、好ましい。また、路線情報もしくは交通情報などの情報を提供するための用途に用いる場合には、直感的な操作によりユーザビリティを高めることができる。
【0870】
また、図36(F)及び図36(G)に示すように、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400は、使用者が所持するスマートフォン等の情報端末機7311または情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。例えば、表示部7000に表示される広告の情報を、情報端末機7311または情報端末機7411の画面に表示させることができる。また、情報端末機7311または情報端末機7411を操作することで、表示部7000の表示を切り替えることができる。
【0871】
また、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400に、情報端末機7311または情報端末機7411の画面を操作手段(コントローラ)としたゲームを実行させることもできる。これにより、不特定多数の使用者が同時にゲームに参加し、楽しむことができる。
【0872】
また、本発明の一態様の半導体装置及び表示装置は、移動体である自動車の運転席周辺に適用することができる。
【0873】
図37(A)は、自動車の室内におけるフロントガラス周辺を表す図である。図37(A)では、ダッシュボードに取り付けられた表示パネル9001a、表示パネル9001b、及び、表示パネル9001c、並びに、ピラーに取り付けられた表示パネル9001dを示している。
【0874】
表示パネル9001a乃至表示パネル9001cは、ナビゲーション情報、スピードメーター、タコメーター、走行距離、燃料計、ギア状態、エアコンの設定などを表示することで、様々な情報を提供することができる。また、表示パネルに表示される表示項目及びレイアウトなどは、ユーザの好みに合わせて適宜変更することができ、デザイン性を高めることができる。表示パネル9001a乃至表示パネル9001cは、照明装置として用いることもできる。
【0875】
表示パネル9001dには、車体に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界(死角)を補完することができる。すなわち、自動車の外側に設けられた撮像手段からの画像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。表示パネル9001dは、照明装置として用いることもできる。
【0876】
図37(B)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、例えばスマートウォッチ(登録商標)として用いることができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うこと、及び、充電を行うこともできる。なお、充電動作は無線給電により行ってもよい。
【0877】
図37(B)に示す携帯情報端末9200は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を検知、検出、または測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0878】
図37(C)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。携帯情報端末9201は、筐体9000aと、筐体9000bと、表示部9001と、操作ボタン9056と、を有している。
【0879】
筐体9000aと筐体9000bと、は、ヒンジ9055により結合されており、ヒンジ9055によって、2つ折りが可能となっている。
【0880】
携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された2つの筐体(筐体9000a及び筐体9000b)に支持されている。
【0881】
図37(D)乃至図37(F)は、折り畳み可能な携帯情報端末9202を示す斜視図である。また、図37(D)は携帯情報端末9202を展開した状態、図37(F)は折り畳んだ状態、図37(E)は図37(D)と図37(F)の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図である。このように、携帯情報端末9202は、3つ折りが可能である。
【0882】
携帯情報端末9202が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。
【0883】
図37(C)乃至図37(F)において、表示部9001に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。例えば、表示部9001は、曲率半径0.1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0884】
携帯情報端末9201及び携帯情報端末9202は、それぞれ、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
【0885】
なお、本発明の一態様の半導体装置を、電子部品、大型計算機、宇宙用機器、データセンター、及び電子機器の中から選ばれるいずれか一または複数に適用することで、消費電力を低減することができる。そのため、半導体装置の高性能化、または高集積化に伴うエネルギー需要の増加が見込まれる中、本発明の一態様の半導体装置を用いることで、二酸化炭素(CO)に代表される、温室効果ガスの排出量を低減させることも可能となる。また、本発明の一態様の半導体装置は、低消費電力であるため地球温暖化対策としても有効である。
【0886】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【実施例0887】
本実施例では、デバイスシミュレーションを行い、本発明の一態様の半導体装置の電気特性を評価した結果について説明する。
【0888】
図38(A)及び図38(B)に、本実施例の計算で仮定した半導体装置の断面図を示す。図38(A)に示す半導体装置は、導電層220bの厚さが均一(10nm)である。一方、図38(B)に示す半導体装置は、導電層220bの厚さが、酸化物半導体層230と接する部分と、絶縁層280aと接する部分と、で異なる。それ以外の構成は、図38(A)と図38(B)で同様である。図38(B)に示す半導体装置において、導電層220bは、深さ10nmの凹部を有している。具体的には、導電層220bにおいて、酸化物半導体層230と接する部分の厚さは10nmであり、絶縁層280aと接する部分の厚さは20nmである。
【0889】
各層にて使用することを想定した材料について説明する。導電層220及び導電層240は、それぞれ、タングステン膜とITSO膜の2層構造を想定したが、計算の簡略化のためITSO膜の仕事関数を用いて計算した。絶縁層280は窒化シリコン膜(絶縁層280a、SiNx)、酸化シリコン膜(絶縁層280b、SiOx)、及び、窒化シリコン膜(絶縁層280c)をこの順で積層した3層構造、絶縁層250は酸化アルミニウム膜(絶縁層250a)、酸化シリコン膜(絶縁層250b)、酸化ハフニウム膜(絶縁層250c)、及び窒化シリコン膜(絶縁層250d)をこの順で積層した4層構造、導電層260はタングステン膜、絶縁層283は窒化シリコン膜、絶縁層285は酸化シリコン膜を想定した。酸化物半導体層230はIn:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物膜を想定した。
【0890】
本実施例のデバイスシミュレーションに用いたパラメータの一覧を表1に示す。また、トランジスタのチャネルホール径(チャネル幅に相当)は60nmΦ、チャネル長は35nmと仮定した(L/W=35nm/60nmΦ)。表1に示すように、絶縁層280bと酸化物半導体層230の界面には負の固定電荷を与えている。これは、Id-Vgカーブの立ち上がりを実測値に近づけるためである。また、表1では、絶縁層280bと酸化物半導体層230の界面に、界面準位を設定する場合の界面準位(DOS(Density Of States))のエネルギー(Energy)分布のグラフも合わせて示す。グラフ中、Ecは伝導帯下端を意味し、Evは価電子帯上端を意味する。当該グラフに示すように、界面準位を設定する場合のピーク値Ntaは1×1013cm-2/eVであり、エネルギー減衰幅Wtaは0.1eVである。
【0891】
【表1】
【0892】
本実施例では、デバイスシミュレーションを行い、トランジスタのドレイン電流-ゲート電圧特性(Id-Vg特性)を算出した。具体的には、導電層220をソース電極とし、導電層240をドレイン電極とした場合のトランジスタのId-Vg特性と、導電層240をソース電極とし、導電層220をドレイン電極とした場合のトランジスタのId-Vg特性と、を算出した。
【0893】
図39に、図38(A)に示すトランジスタのId-Vg特性(ドレイン電圧Vd=0.1V、1.2V)を示す。また、表2に、各Id-Vg特性から算出した、オン電流(Ion、単位:μA)、シフト電圧(Vsh、単位:V)、サブスレッショルドスイング値(S値、単位:mV/dec)を示す。ここで、Vshは、トランジスタのId-Vgカーブが、Id=1pAの直線と交差するときのVgである。また、S値とは、ドレイン電圧一定にてドレイン電流を1桁変化させるサブスレッショルド領域でのゲート電圧の変化量をいう。
【0894】
【表2】
【0895】
図39のVd=1.2Vの結果から、トランジスタの下側の電極に相当する導電層220をドレイン電極にした場合は、上側の電極に相当する導電層240をドレイン電極にした場合に比べて、Ion、及びS値が良好な値を示し、Vshがよりプラスになることがわかった。図39において、Vd=0.1Vの結果はほとんど重なっており、導電層220と導電層240のどちらをドレイン電極に用いても、トランジスタの電気特性はほとんど変わらなかった。
【0896】
図40に、Vg=Vsh、Vd=1.2Vにおける、酸化物半導体層230の電子密度分布を比較した結果を示す。図40では、電子密度が高いほど白色に近づき、電子密度が低いほど黒色に近づく。図40に示すように、導電層240をドレイン電極(Drain)に用いると、ソース電極(Source)である導電層220の近傍の酸化物半導体層230の電子密度が高い結果が得られた。一方、導電層220をドレイン電極に用いる場合、酸化物半導体層230の電子密度は、ソース電極である導電層240の近傍で高く、ドレイン電極である導電層220の近傍で低い結果が得られた。
【0897】
図38(A)に示すトランジスタは、絶縁層280b等に設けられた開口部に、酸化物半導体層230、及びゲート絶縁層として機能する絶縁層250a乃至絶縁層250dが設けられている。このようなトランジスタ構造の場合、酸化物半導体層230の導電層220近傍にはゲート電界が届きにくく、酸化物半導体層230中の電子を制御しにくくなることがある。そのため、電子密度が高いソース電極が導電層220である場合、酸化物半導体層230中の電子密度を下げにくくなることがある。このことから、導電層220をドレイン電極として機能させる場合の方が、導電層220をソース電極として機能させる場合に比べて、Vsh及びS値が良好な値になったと考えられる。
【0898】
導電層220をドレイン電極に用いる場合と、導電層240をドレイン電極に用いる場合と、のトランジスタの特性の差を小さくするためには、酸化物半導体層230の導電層220近傍にゲート電界が届きやすくすることが好ましい。例えば、酸化物半導体層230及び絶縁層250a乃至絶縁層250dの膜厚の和を小さくすることで、酸化物半導体層230の導電層220近傍にゲート電界が届きやすくすることができる。一方で、酸化物半導体層230及び絶縁層250a乃至絶縁層250dの膜厚の和を小さくすることには限界がある。そこで、図38(B)に示すように、導電層220の、導電層260と重なる位置に凹部を設けることが好ましい。
【0899】
図41に、図38(B)に示すトランジスタのId-Vg特性(ドレイン電圧Vd=0.1V、1.2V)を示す。また、表3に、各Id-Vg特性から算出した、オン電流(Ion、単位:μA)、シフト電圧(Vsh、単位:V)、サブスレッショルドスイング値(S値、単位:mV/dec)を示す。
【0900】
【表3】
【0901】
図41では、導電層220をドレイン電極に用いた場合の結果を実線で示し、導電層240をドレイン電極に用いた場合の結果を点線で示している。図41に示すように、Vd=0.1V、及びVd=1.2Vの双方の結果において、導電層220と導電層240のどちらをドレイン電極に用いても、トランジスタの電気特性はほとんど変わらなかった。また、表2と表3を比較すると、図38(A)に示すトランジスタに比べて、図38(B)に示すトランジスタは、Ion、及びS値が良好な値を示した。
【0902】
図42に、Vg=Vsh、Vd=1.2Vにおける、酸化物半導体層230の電子密度分布を比較した結果を示す。図42から、酸化物半導体層230の導電層220近傍にゲート電界が届きやすくなり、電子密度を制御しやすくなっていることがわかる。
【0903】
以上のことから、図38(B)に示すように、導電層220の、導電層260と重なる位置に凹部を設けることで、酸化物半導体層230の導電層220近傍にゲート電界が届きやすくなり、電子密度を制御しやすくなったと考えられる。
【0904】
なお、図41は、絶縁層280bと酸化物半導体層230の界面にアクセプター界面準位を設定した結果である。一方、図43に、当該界面準位を設定しない場合の結果を示す。また、表4に、各Id-Vg特性から算出した、オン電流(Ion、単位:μA)、シフト電圧(Vsh、単位:V)、サブスレッショルドスイング値(S値、単位:mV/dec)を示す。
【0905】
【表4】
【0906】
図43及び表4の結果から、図41及び表3の結果に比べて、Ion及びS値が良好な値を示していることがわかる。
【0907】
以上のことから、本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタのソース電極及びドレイン電極のうち、下側の電極に相当する導電層220の近傍において、酸化物半導体層230にゲート電界が届きやすく、良好な電気特性が得られることがわかった。したがって、導電層220をドレイン電極とした場合と、導電層240をドレイン電極とした場合と、の双方において、良好な電気特性が得られることがわかった。また、導電層220をドレイン電極とした場合と、導電層240をドレイン電極とした場合と、における、トランジスタの電気特性の差を小さくできることがわかった。
【実施例0908】
本実施例では、トランジスタを含む半導体装置を作製し、トランジスタの電気特性を評価した結果について説明する。
【0909】
本実施例では、図44(A)乃至図44(D)に示すトランジスタ200Lに相当するトランジスタを作製した。
【0910】
<半導体装置の作製>
まず、シリコンウエハ上に下地絶縁膜及び絶縁層210を設け、絶縁層210上に導電層220(導電層220a1、導電層220a2、及び導電層220b)を設けた。絶縁層210は、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、並びに、シリコン及びハフニウムを有する酸化膜をこの順で積層して形成した。導電層220a1は、スパッタリング法で成膜した膜厚約5nmの窒化チタン膜を用いて形成した。導電層220a2は、スパッタリング法で成膜した膜厚約20nmのタングステン膜を用いて形成した。導電層220bは、スパッタリング法で成膜した膜厚約20nmのITSO膜を用いて形成した。
【0911】
次に、絶縁層280(絶縁層280a、絶縁層280b、及び絶縁層280c)を形成した。まず、絶縁層280aとして、PEALD法で膜厚約5nmの窒化シリコン膜を形成した。続いて、絶縁層280bとなる絶縁層として、スパッタリング法で酸化シリコン膜を形成した。続いて窒化シリコン膜を形成した後、CMP処理を行い、窒化シリコン膜を除去し、酸化シリコン膜の上面を平坦化させた。当該CMP処理を行うことで、導電層220上に絶縁層280bとして、膜厚約80nmの酸化シリコン膜を形成した。続いて、絶縁層280cとして、スパッタリング法で膜厚約10nmの窒化シリコン膜を形成した。
【0912】
次に、導電層240aを、スパッタリング法で成膜した膜厚約15nmのタングステン膜を用いて形成した。続いて、導電層240bを、スパッタリング法で成膜した膜厚約10nmのITSO膜を用いて形成した。
【0913】
次に、以下に説明するように、ドライエッチング法などを用いて開口部290を形成した。
【0914】
まず、SOC膜、SOG膜、レジスト膜を順に塗布法により形成した。続いて、フォトリソグラフィを用いてレジストパターンを形成し、レジストパターンを用いてSOG膜及びSOC膜を加工して、マスクパターンを形成した。形成したマスクパターンを用いて、ドライエッチングを行い、開口部290を形成した。
【0915】
次に、酸化物半導体層230を形成した。酸化物半導体層230は3層構造とした。1層目は、熱ALD法で、膜厚約2nmのインジウム亜鉛酸化物膜(In:Zn=2:1)を成膜した。基板加熱の温度は、200℃とした。2層目は、スパッタリング法で、膜厚約5nmのインジウムスズ亜鉛酸化物膜を成膜した。なお、In:Sn:Zn=4:0.1:1[原子数比]の酸化物ターゲットを用いた。また、基板加熱の温度は、250℃とした。3層目は、熱ALD法で、膜厚約3nmのインジウム亜鉛酸化物膜(In:Zn=2:1)を成膜した。基板加熱の温度は、200℃とした。
【0916】
次に、絶縁層250を形成した。絶縁層250は、3層構造とした。1層目は、熱ALD法で、膜厚約1nmの酸化アルミニウム膜を成膜した。基板加熱の温度は、300℃とした。2層目は、PEALD法で、膜厚約2nmの酸化シリコン膜を成膜した。基板加熱の温度は、350℃とした。3層目は、熱ALD法で、膜厚が約2nmの酸化ハフニウム膜を成膜した。基板加熱の温度は、250℃とした。
【0917】
次に、絶縁層250上に犠牲層262(図16(B)参照)を形成した。まず、SOC膜、SOG膜、レジスト膜を順に塗布法により形成した。続いて、フォトリソグラフィを用いてレジストパターンを形成し、レジストパターンを用いてSOG膜及びSOC膜を加工して、犠牲層262を形成した。
【0918】
次に、絶縁層283として、熱ALD法で、膜厚約3nmの酸化アルミニウム膜を成膜した。基板加熱の温度は、300℃とした。続いて、絶縁層285となる絶縁層として、スパッタリング法で酸化シリコン膜を形成した。続いて窒化シリコン膜を形成した後、CMP処理を行い、窒化シリコン膜を除去し、酸化シリコン膜の上面を平坦化させた。当該CMP処理を行うことで、導電層240上に絶縁層285として、膜厚約65nmの酸化シリコン膜を形成した。その後、アッシングにより、犠牲層262を除去した。
【0919】
次に、導電層260を形成した。導電層260は2層構造とした。1層目は、金属CVD法で成膜した、膜厚約5nmの窒化チタン膜を用いて形成した。基板加熱の温度は、400℃とした。2層目は、金属CVD法で成膜した、膜厚約250nmのタングステン膜を用いて形成した。基板加熱の温度は、400℃とした。その後、CMP処理を行うことで、導電層260の上面を平坦化した。
【0920】
次に、導電層265を、スパッタリング法で成膜した膜厚約30nmのタングステン膜を用いて形成した。
【0921】
<トランジスタの断面観察結果>
本実施例で作製したトランジスタの断面STEM(Scanning Transmission Electron Microscopy)観察を行った。図45に断面STEM像を示す。図45に示すように、良好な形状のトランジスタが作製できたことが確認できた。
【0922】
<トランジスタの電気特性評価>
本実施例で作製したトランジスタの電気特性を評価した。ここでは、開口部290の開口部の幅が約60nmで、平面視において、開口部の形状が略円形であるトランジスタの電気特性を評価した。電気特性として、Id-Vg特性を測定した。
【0923】
図46に、Id-Vg特性結果を示す。図46において、縦軸はドレイン電流Id[A]を表し、横軸はゲート-ソース間電圧(Vg)[V]を表す。図46では、9個のトランジスタのId-Vg特性結果を重ねて記している。ドレイン電圧Vdは0.1V及び1.2Vとし、ソース電圧Vsを0Vとし、ゲート電圧Vgを-4Vから+4Vまで、0.1V刻みで印加した。また、当該測定は、室温で行った。
【0924】
また、トランジスタのオン電流Ion、S値、シフト電圧Vshをそれぞれ算出した。オン電流Ionは、ドレイン電圧Vdが1.2VのId-Vg特性において、Vg=Vsh+2.5Vとなる時のドレイン電流の値とした。また、S値は、ドレイン電圧Vdが1.2VのId-Vg特性において、ドレイン電流Idが1pAとなる点において算出した。また、シフト電圧Vshは、ドレイン電圧Idが1.2VのId-Vg特性において、ドレイン電流Idが1pAとなる時のゲート電圧Vgの値として求めた。
【0925】
トランジスタのオン電流Ionの中央値は、44.1μAであり、S値の中央値は82mV/decであり、シフト電圧Vshの中央値は-0.60Vであり、シフト電圧Vshのばらつきσは41mVであった。
【0926】
以上のように、本実施例で作製したトランジスタは、良好なスイッチング特性を示しており、オン電流が高いことが確認できた。
【符号の説明】
【0927】
61B:発光素子、61G:発光素子、61R:発光素子、61W:発光素子、100a:容量素子、100b:容量素子、100:容量素子、110:導電層、115:導電層、130B:副画素、130G:副画素、130R:副画素、130:絶縁層、140:絶縁層、150a:メモリセル、150b:メモリセル、150c:メモリセル、150d:メモリセル、150:メモリセル、160[2]:メモリ層、160[n]:メモリ層、160:メモリ層、170:表示モジュール、171:導電層、172B:EL層、172G:EL層、172R:EL層、172W:EL層、173:導電層、175B:光、175G:光、175R:光、180:絶縁層、188:ハロゲン元素、189:不純物元素、190:開口部、200A:トランジスタ、200a:トランジスタ、200B:トランジスタ、200b:トランジスタ、200C:トランジスタ、200D:トランジスタ、200E:トランジスタ、200F:トランジスタ、200G:トランジスタ、200H:トランジスタ、200I:トランジスタ、200J:トランジスタ、200K:トランジスタ、210:絶縁層、220a:導電層、220b:導電層、220n:領域、220:導電層、222:絶縁層、230a:酸化物層、230b:酸化物層、230i:領域、230n:領域、230:酸化物半導体層、240a:導電層、240b:導電層、240n:領域、240:導電層、245:導電層、246:導電層、247:導電層、248:導電層、250a:絶縁層、250b:絶縁層、250c:絶縁層、250d:絶縁層、250:絶縁層、255:導電層、260a:導電層、260b:導電層、260:導電層、261s:SOC膜、261:SOC膜、262:犠牲層、263:SOG膜、264B:着色層、264G:着色層、264R:着色層、265:導電層、267:レジストマスク、270:開口部、271:保護層、272:絶縁層、280a:絶縁層、280b:絶縁層、280c:絶縁層、280d:絶縁層、280e:絶縁層、280i:領域、280:絶縁層、283:絶縁層、285:絶縁層、287:絶縁層、290:開口部、291:基板、292:回路部、293a:画素回路、293:画素回路部、294a:画素、294:画素部、295:端子部、296:配線部、297:表示部、298:FPC、299:基板、300:トランジスタ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁層、316:導電層、320:絶縁層、322:絶縁層、324:絶縁層、326:絶縁層、328:導電層、330:導電層、350:絶縁層、352:絶縁層、354:絶縁層、356:導電層、363:絶縁層、370:金属酸化物、372a:領域、372b:領域、374:層、376:層、378:層、380:領域、400d:トランジスタ、410:基板、412:素子分離層、413:半導体領域、414a:低抵抗領域、414b:低抵抗領域、415:絶縁層、416:導電層、417:絶縁層、420:絶縁層、422:絶縁層、424:絶縁層、426:絶縁層、428:導電層、430:導電層、450:絶縁層、452:絶縁層、454:絶縁層、456:導電層、513:絶縁層、514:導電層、541:基板、543:接着層、545:絶縁層、574:絶縁層、581:絶縁層、592:絶縁層、594:絶縁層、596:導電層、598:絶縁層、599:絶縁層、600A:表示装置、600B:表示装置、607:接着層、610:基板、611a:導電層、611b:導電層、611c:導電層、613a:層、613b:層、613c:層、614:共通層、615:共通電極、618a:犠牲層、620:素子層、625:絶縁層、627:絶縁層、628B:着色層、628G:着色層、628R:着色層、630:素子層、631:保護層、635:素子層、640:接続部、641:絶縁層、642:導電層、643:導電層、644:導電層、645:導電層、646:導電層、647:絶縁層、648:絶縁層、650B:発光素子、650G:発光素子、650R:発光素子、650:発光素子、660:素子層、670:配線層、700A:電子機器、700:電子部品、702:プリント基板、704:実装基板、710:半導体装置、711:モールド、712:ランド、713:電極パッド、714:ワイヤ、715:駆動回路層、716:記憶層、721:筐体、723:装着部、730:電子部品、731:インターポーザ、732:パッケージ基板、733:電極、735:半導体装置、750:イヤフォン、751:表示パネル、753:光学部材、756:表示領域、757:フレーム、758:鼻パッド、800A:電子機器、800B:電子機器、820:表示部、821:筐体、822:通信部、823:装着部、824:制御部、825:撮像部、827:イヤフォン部、832:レンズ、840_L:表示装置、840_R:表示装置、840:表示装置、841:動き検出部、842:視線検出部、843:演算部、844:通信部、845:筐体、848:レンズ、850A:電子機器、850B:電子機器、851:操作ボタン、854:装着具、855:センサ、856:ダイヤル、900:半導体装置、910:駆動回路、911:周辺回路、912:コントロール回路、915:周辺回路、920:メモリアレイ、923:行ドライバ、924:列ドライバ、925:入力回路、926:出力回路、927:センスアンプ、928:電圧生成回路、930:層、931:PSW、932:PSW、941:行デコーダ、942:列デコーダ、950:メモリセル、951:メモリセル、952:メモリセル、953:メモリセル、954:メモリセル、955:メモリセル、956:メモリセル、957:メモリセル、958:メモリセル、960:演算装置、970A:半導体装置、970B:半導体装置、970C:半導体装置、989:キャッシュインターフェース、990:基板、991:ALU、992:ALUコントローラ、993:インストラクションデコーダ、994:インタラプトコントローラ、995:タイミングコントローラ、996:レジスタ、997:レジスタコントローラ、998:バスインターフェース、999:キャッシュ、5600:大型計算機、5610:ラック、5620:計算機、5621:PCカード、5622:ボード、5623:接続端子、5624:接続端子、5625:接続端子、5626:半導体装置、5627:半導体装置、5628:半導体装置、5629:接続端子、5630:マザーボード、5631:スロット、6500:電子機器、6501:筐体、6502:表示部、6503:電源ボタン、6504:ボタン、6505:スピーカ、6506:マイク、6507:カメラ、6508:光源、6509:制御装置、6510:保護部材、6511:表示パネル、6512:光学部材、6513:タッチセンサパネル、6515:FPC、6516:IC、6517:プリント基板、6518:バッテリ、6519:接続端子、6520:電子機器、6800:人工衛星、6801:機体、6802:ソーラーパネル、6803:アンテナ、6804:惑星、6805:二次電池、6807:制御装置、7000:表示部、7001sb:サーバ、7001:ホスト、7002:ストレージ制御回路、7003md:記憶装置、7003:ストレージ、7010:ストレージシステム、7100:テレビジョン装置、7101:筐体、7103:スタンド、7111:リモコン操作機、7200:ノート型パーソナルコンピュータ、7211:筐体、7212:キーボード、7213:ポインティングデバイス、7214:外部接続ポート、7215:制御装置、7300:デジタルサイネージ、7301:筐体、7303:スピーカ、7311:情報端末機、7400:デジタルサイネージ、7401:柱、7411:情報端末機、9000a:筐体、9000b:筐体、9000:筐体、9001a:表示パネル、9001b:表示パネル、9001c:表示パネル、9001d:表示パネル、9001:表示部、9003:スピーカ、9005:操作キー、9006:接続端子、9007:センサ、9008:マイクロフォン、9055:ヒンジ、9056:操作ボタン、9200:携帯情報端末、9201:携帯情報端末、9202:携帯情報端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46