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2024-163904オレフィン重合用電子供与体、オレフィン重合用触媒、および、オレフィン重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163904
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】オレフィン重合用電子供与体、オレフィン重合用触媒、および、オレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20241115BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024078177
(22)【出願日】2024-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2023079667
(32)【優先日】2023-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 康寛
(72)【発明者】
【氏名】地中 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】道上 憲司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄介
(72)【発明者】
【氏名】板倉 啓太
(72)【発明者】
【氏名】廣井 遼子
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA03P
4J100CA01
4J100DA04
4J100DA41
4J100DA42
4J100FA06
4J100FA09
4J128AA03
4J128AB03
4J128AC05
4J128BA00A
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC15A
4J128BC15B
4J128CA16A
4J128CB23A
4J128CB44A
4J128CB91A
4J128CB91B
4J128DA02
4J128DB03A
4J128EA01
4J128EB04
4J128EC01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA15
4J128GA21
4J128GB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、高い立体規則性を維持しながら、高い流動性を有する、プロピレン系重合体などのオレフィン重合体を与えることのできるオレフィン重合用電子供与体およびオレフィン重合用触媒を提供することを目的とする。
【解決手段】下記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物からなるオレフィン重合用電子供与体:

(式中、nは2または3であり、R1は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHを構成する水素のうちの任意のn1個がR1に置換されており、前記n1は、1または2であり、n1が2の場合には2個あるR1は同一でも互いに異なっていてもよく、R2は、エチル基であり、R3は、メチル基である。)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物からなるオレフィン重合用電子供与体:
【化1】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHのうちの任意の1つにおいて水素がR1 に置換されており、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
【請求項2】
下記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物からなるオレフィン重合用電子供与体:
【化2】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHを構成する水素のうちの任意のn1個がR1 に置換されており、
前記n1は、1または2であり、n1が2の場合には2個あるR1 は同一でも互いに異なっていてもよく、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
【請求項3】
前記n1が2である、請求項2に記載のオレフィン重合用電子供与体。
【請求項4】
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]下記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒:
【化3】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHのうちの任意の1つにおいて水素がR1 に置換されており、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
【請求項5】
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]下記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒:
【化4】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHを構成する水素のうちの任意のn1個がR1 に置換されており、
前記n1は、1または2であり、n1が2の場合には2個あるR1 は同一でも互いに異なっていてもよく、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
【請求項6】
前記n1が2である、請求項5に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項7】
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]下記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物と
を含む触媒に、オレフィンが予備重合されてなるオレフィン重合用触媒:
【化5】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHのうちの任意の1つにおいて水素がR1 に置換されており、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
【請求項8】
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]下記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物と
を含む触媒に、オレフィンが予備重合されてなるオレフィン重合用触媒:
【化6】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHを構成する水素のうちの任意のn1個がR1 に置換されており、
前記n1は、1または2であり、n1が2の場合には2個あるR1 は同一でも互いに異なっていてもよく、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
【請求項9】
前記n1が2である、請求項8に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項10】
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と
を含む触媒[P0]に、オレフィンが予備重合されてなる予備重合触媒成分[P]と、
[C]下記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒:
【化7】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHのうちの任意の1つにおいて水素がR1 に置換されており、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
【請求項11】
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と
を含む触媒[P0]に、オレフィンが予備重合されてなる予備重合触媒成分[P]と、
[C]下記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒:
【化8】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHを構成する水素のうちの任意のn1個がR1 に置換されており、
前記n1は、1または2であり、n1が2の場合には2個あるR1 は同一でも互いに異なっていてもよく、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
【請求項12】
前記n1が2である、請求項11に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項13】
請求項4~12のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒の存在下で、オレフィンを重合あるいは共重合させる工程を含むことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【請求項14】
前記オレフィン重合体のメソペンダット分率(mmmm)が97.7%以上である、請求項13に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項15】
前記オレフィン重合体のMw/Mn値が3.0~12.0である、請求項13に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項16】
前記オレフィン重合体のASTM D1238Eに準拠し、測定温度は230℃として測定されるメルトフローレート(MFR)が10~1200g/10分である、請求項13に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合用電子供与体、オレフィン重合用触媒、および、オレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン製造用触媒として、チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなるチーグラー・ナッタ触媒が広く用いられている。
特に、ポリプロピレンなどの高立体規則性ポリオレフィンを製造する際には、通常、内部ドナー(内部電子供与体)を含む固体状チタン触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、外部ドナー(外部電子供与体)とからなる触媒が用いられている。例えば、内部ドナーとしてカルボン酸エステル類を含む塩化マグネシウム担持型固体状チタン触媒と、有機アルミニウム化合物とともに、外部ドナーとして有機ケイ素化合物とからなるオレフィン重合用触媒が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
しかしながら、上記のような固体状チタン触媒成分を含む触媒を用いてオレフィンを重合させると、いわゆる「剰余チタン化合物」により、高立体規則性ポリオレフィンとともに立体規則性の低いポリオレフィンも副生されるという問題点があった(特許文献3)。
【0004】
一方、近年、自動車業界では環境に配慮した低燃費車の開発が盛んに行われており、自動車材料の分野においても軽量化を目的とした材料の樹脂化やさらなる薄肉化が求められている。このため、バンパー材をはじめとする自動車材料として数多くの実績があるプロピレン系材料における改善の期待は大きく、これまでにないレベルの高立体規則性を有するプロピレン系重合体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08-003215号公報
【特許文献2】特開平08-143620号公報
【特許文献3】特開昭59-124909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来技術においても、プロピレン系重合体の立体規則性を高めるための試みは種々なされている。ここで、自動車業界を中心に、単に立体規則性が高いだけでなく、成形性の点から高い流動性をも有するプロピレン系重合体が望まれている。ただ、従来技術では、高い流動性を有する重合体を得ようとすると、多くの場合立体規則性は低下する傾向がある。
【0007】
そこで、本発明は、高い立体規則性を維持しながら、高い流動性を有する、プロピレン系重合体などのオレフィン重合体を与えることのできるオレフィン重合用電子供与体およびオレフィン重合用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の固体状チタン触媒成分と特定の外部ドナーとを組み合わせてプロピレンなどのオレフィンを重合することで、高い立体規則性を維持しながら、高い流動性をも有するオレフィン重合体が、得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、例えば、下記[1]~[16]に記載の発明に関する。
[1]
下記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物からなるオレフィン重合用電子供与体:
【化1】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHのうちの任意の1つにおいて水素がR1 に置換されており、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
[2]
下記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物からなるオレフィン重合用電子供与体:
【化2】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHを構成する水素のうちの任意のn1個がR1 に置換されており、
前記n1は、1または2であり、n1が2の場合には2個あるR1 は同一でも互いに異なっていてもよく、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
[3]
前記n1が2である、[2]に記載のオレフィン重合用電子供与体。
【0010】
[4]
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]下記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒:
【化3】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHのうちの任意の1つにおいて水素がR1 に置換されており、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
[5]
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]下記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒:
【化4】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHを構成する水素のうちの任意のn1個がR1 に置換されており、
前記n1は、1または2であり、n1が2の場合には2個あるR1 は同一でも互いに異なっていてもよく、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
[6]
前記n1が2である、[5]に記載のオレフィン重合用触媒。
【0011】
[7]
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]下記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物と
を含む触媒に、オレフィンが予備重合されてなるオレフィン重合用触媒:
【化5】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHのうちの任意の1つにおいて水素がR1 に置換されており、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
[8]
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]下記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物と
を含む触媒に、オレフィンが予備重合されてなるオレフィン重合用触媒:
【化6】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHを構成する水素のうちの任意のn1個がR1 に置換されており、
前記n1は、1または2であり、n1が2の場合には2個あるR1 は同一でも互いに異なっていてもよく、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
[9]
前記n1が2である、[8]に記載のオレフィン重合用触媒。
【0012】
[10]
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と
を含む触媒[P0]に、オレフィンが予備重合されてなる予備重合触媒成分[P]と、
[C]下記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒:
【化7】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHのうちの任意の1つにおいて水素がR1 に置換されており、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
[11]
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と
を含む触媒[P0]に、オレフィンが予備重合されてなる予備重合触媒成分[P]と、
[C]下記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒:
【化8】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHを構成する水素のうちの任意のn1個がR1 に置換されており、
前記n1は、1または2であり、n1が2の場合には2個あるR1 は同一でも互いに異なっていてもよく、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
[12]
前記n1が2である、[11]に記載のオレフィン重合用触媒。
【0013】
[13]
[4]~[12]のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の存在下で、オレフィンを重合あるいは共重合させる工程を含むことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
[14]
前記オレフィン重合体のメソペンダット分率(mmmm)が97.7%以上である、[13]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
[15]
前記オレフィン重合体のMw/Mn値が3.0~12.0である、[13]または[14]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
[16]
前記オレフィン重合体のASTM D1238Eに準拠し、測定温度は230℃として測定されるメルトフローレート(MFR)が10~1200g/10分である、[13]~[15]のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い立体規則性を維持しながら、高い流動性を有するオレフィン重合体を与えることのできるオレフィン重合用電子供与体およびオレフィン重合用触媒を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
[有機ケイ素化合物]
本発明で用いられる有機ケイ素化合物は、下記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物(以下「有機ケイ素化合物(0)」とも呼ばれる。)である:
【0016】
【化9】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHを構成する水素のうちの任意のn1個がR1 に置換されており、
前記n1は、1または2であり、n1が2の場合には2個あるR1 は同一でも互いに異なっていてもよく、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
本発明で用いられる有機ケイ素化合物(0)についての好適かつ例示的な態様のうちの第1の態様において、前記n1は1である。当該第1の態様において、前記有機ケイ素化合物(0)は、下記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物(以下「有機ケイ素化合物(1)」とも呼ばれる。)である。
【0017】
【化10】
(式中、nは2または3であり、
1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、n個あるCHのうちの任意の1つにおいて水素がR1 に置換されており、
2 は、エチル基であり、
3 は、メチル基である。)。
【0018】
すなわち、この第1の態様において、本発明で用いられる有機ケイ素化合物は、下記一般式(1a)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(1b)で表される有機ケイ素化合物、および、下記一般式(1c)で表される有機ケイ素化合物からなる群より選ばれるいずれかの化合物である。
【0019】
【化11】
【0020】
前記一般式(1a)~(1c)において、R1 は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、好ましくは水素原子である。
前記有機ケイ素化合物(1)の特に好ましい例として、2,2-ジメトキシ-1,3-ジエチル-1,3-ジアザ-2-シラシクロペンタンおよび2,2-ジメトキシ-1,3-ジエチル-1,3-ジアザ-2-シラシクロヘキサンが挙げられる。
【0021】
本発明で用いられる有機ケイ素化合物(0)についての好適かつ例示的な態様のうちの第2の態様において、前記n1は2である。
この第2の態様のうちの1つの態様において、2個あるR1 は、ともに、n個あるCHを構成する炭素原子のうちの1個に結合している。この態様において、本発明で用いられる有機ケイ素化合物は、下記一般式(2-1a)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(2-1b)で表される有機ケイ素化合物、および、下記一般式(2-1c)で表される有機ケイ素化合物からなる群より選ばれるいずれかの化合物である。
【0022】
【化12】
【0023】
前記第2の態様のうちのもう1つの態様において、2個あるR1 は、n個あるCHを構成する炭素原子のうちの任意の2個の炭素原子に1つずつ結合している。この態様において、本発明で用いられる有機ケイ素化合物は、下記一般式(2-2a)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(2-2b)で表される有機ケイ素化合物、および、下記一般式(2-2c)で表される有機ケイ素化合物からなる群より選ばれるいずれかの化合物である。
【0024】
【化13】
【0025】
前記一般式(2-1a)~(2-1c)および(2-2a)~(2-2c)において、2個あるR1 は、それぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基である。
ここで、前記2個あるR1 がいずれも水素原子以外である場合、すなわち、前記2個あるR1 がそれぞれ独立にメチル基またはエチル基である場合には、当該2個あるR1 のうちの、少なくとも1個がメチル基であることが好ましく、2個ともメチル基であることがより好ましい。そのような有機ケイ素化合物(0)の特に好ましい例として、2,2-ジメトキシ-1,3-ジエチル-5,5-ジメチル-1,3-ジアザ-2-シラシクロヘキサンが挙げられる。
一方、前記2個あるR1 のうちの1個以上が水素原子である態様の有機ケイ素化合物(0)は、上記有機ケイ素化合物(1)に相当し、その特に好ましい例として、上記有機ケイ素化合物(1)の特に好ましい例として上述した化合物が挙げられる。
【0026】
上記のような有機ケイ素化合物(1)などの有機ケイ素化合物(0)は、例えば、下記のように製造することができる。
【0027】
Macromolecules Vol.29 p.5241, 1996 のSupplementary Experimental Details を参考にしてジアミン(例えば、N,N’-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンまたはN,N’-ジエチルエチレンジアミン)をジエチルエーテル中で2当量のn-BuLi/ヘキサン溶液と反応させる。この反応物を、別途調製したジクロロジメトキシシランのエーテル溶液に、ジエチルエーテル中で滴下して加える。この溶液を還流した後、室温まで冷却し、固形分を濾別して減圧下でエーテルを除去する。
【0028】
得られた粗生成物を減圧下で蒸留して目的物を得る。
本発明において上記有機ケイ素化合物(1)などの有機ケイ素化合物(0)は、オレフィン重合用電子供与体として好適に用いることができる。すなわち、本発明によれば、上記有機ケイ素化合物(0)(例えば、有機ケイ素化合物(1))からなるオレフィン重合用電子供与体が提供される。
【0029】
上記有機ケイ素化合物(1)などの有機ケイ素化合物(0)の好適な用途の1つとして、オレフィン重合用触媒として用いられるチタン触媒を構成するオレフィン重合用電子供与体、例えば、下記「オレフィン重合用触媒」の項で後述するオレフィン重合用触媒を構成する電子供与体が挙げられる。上記有機ケイ素化合物(1)は、チタン触媒を構成するオレフィン重合用電子供与体として用いられたときに、上記一般式(1)においてR2 としてエチル基以外の基を有する有機ケイ素化合物と比べて、重合活性が高く、且つ、より高い立体規則性を有する重合体を与える傾向がある。また、得られる重合体は、比較的小さな分子量を有する傾向があり、高い流動性を有する傾向がある。本発明者らは、上記有機ケイ素化合物(1)の代わりに、上記有機ケイ素化合物(1)以外の有機ケイ素化合物(0)をオレフィン重合用電子供与体として用いたときにも、同様の傾向があることを確認している。
【0030】
[オレフィン重合用触媒]
本発明で用いることができるオレフィン重合用触媒は、上述した有機ケイ素化合物を含むものであれば特に限定されないが、例えば、
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒[0]
が挙げられる。
ここで、本発明の好適かつ例示的な態様において、前記有機ケイ素化合物は、上記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物(すなわち、上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物のうち前記n1が1である有機ケイ素化合物)である。この態様において、前記オレフィン重合用触媒[0]は、
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]上記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒[0-1]である。
また、本発明のもう1つの好適かつ例示的な態様において、前記オレフィン重合用触媒[0]は、
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物であって、n1が2である有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒[0-2]である。
【0031】
以下、前記オレフィン重合用触媒を構成する各成分について説明する。
<固体状チタン触媒成分[A]>
本発明のオレフィン重合用触媒を構成する固体状チタン触媒成分[A](以下、単に「成分[A]」と呼ばれる場合もある。)は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含んでいる。固体状チタン触媒成分[A]は、オレフィン重合用触媒として用いられるチタン触媒を構成する主成分であり、従来公知のチタン触媒で用いられている固体状チタン触媒成分と同様のものであっても良い。
【0032】
前記固体状チタン触媒成分[A]は、例えば、
(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含み、かつ室温でのヘキサン洗浄によってチタンが脱離することがない固体状チタン、
(b)芳香族炭化水素、
(c)液状チタン、および
(d)電子供与体
を接触させる工程を含む方法により調製することができる。
【0033】
≪(a)固体状チタン≫
前記固体状チタン(a)は、マグネシウム化合物、チタン化合物および電子供与体(内部ドナー)などを種々の方法により接触させることにより、公知の固体状チタン触媒成分の調製法(例えば特開平4-096911号公報、特開昭58-83006号公報、特開平8-143580号公報等参照)により製造することができる。
【0034】
マグネシウム化合物
固体状チタン(a)を構成するマグネシウム化合物は固体状態で用いられることが好ましい。この固体状態のマグネシウム化合物は、マグネシウム化合物自体が固体状態であるものであってもよく、または電子供与体との付加物であってもよい。
【0035】
前記マグネシウム化合物としては、特開2004-2742号公報に記載のマグネシウム化合物、具体的には、塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム等のアルコキシマグネシウムハライド、ブトキシマグネシウム等のアルコキシマグネシウムなどが挙げられる。これらのマグネシウム化合物のうち、それ自体で固体状態にあるものは、そのままの形で後述する「チタン化合物」および後述する「電子供与体(内部ドナー)」との接触に供しても良い。
【0036】
ただ、本発明において前記マグネシウム化合物は、多くの場合、一旦電子供与体との付加物(すなわち、当該マグネシウム化合物と電子供与体からなる付加物。以下、単に「付加物」と呼ばれる場合がある。)に変換してから、後述する「チタン化合物」および後述する「電子供与体(内部ドナー)」との接触に供される。特に、前記マグネシウム化合物として結晶の形態の化合物が用いられる場合、そのようなマグネシウム化合物を事前に電子供与体との付加物に変換することにより、後述する「電子供与体(内部ドナー)」など他の成分との接触を円滑に行うことができる。
【0037】
前記電子供与体としては、特開2004-2742号公報に記載のマグネシウム化合物可溶化能を有する化合物、具体的には、アルコール、アルデヒド、アミン、カルボン酸及びこれらの混合物などが挙げられる。前記化合物は、前記マグネシウム化合物と後述する「チタン化合物」と後述する「電子供与体(内部ドナー)」との接触にあたり、前記マグネシウム化合物と当該「電子供与体(内部ドナー)」との接触が円滑になされるための助剤として機能すると考えている。なお、本「マグネシウム化合物」の項において、前記化合物に対して「電子供与体」なる表現は用いられているものの、前記化合物は、固体状チタン(a)および固体状チタン触媒成分[A]において必ずしも含まれていることを要しない。
前記電子供与体としては、アルコールが好ましい。アルコールの中でも、特にエタノールが好適に用いられる。
【0038】
前記付加物は、ハロゲン化マグネシウムなどのマグネシウム化合物と、前記電子供与体とを接触させることにより得ることができる。ここで、前記接触は、炭化水素溶媒(例えば、灯油などの脂肪族炭化水素)中で好適に行うことができる。マグネシウム化合物及び電子供与体の使用量は、その種類、その接触条件等によっても異なるが、マグネシウム化合物を該液状の電子供与体に対して0.1~20モル/リットル、好ましくは0.5~5モル/リットル、より好ましくは1.0~4.5モル/リットル、より好ましくは2.0~4.0モル/リットル、特に好ましくは3.0~3.8モル/リットルとなる量で用いることができる。なお、前記接触が炭化水素溶媒中で行われる場合、炭化水素溶媒におけるマグネシウム化合物の懸濁が適切になされるよう、マグネシウム化合物と電子供与体と炭化水素溶媒を含む混合物にはソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤がさらに含まれていてもよい。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタンジステアレートが挙げられる。
【0039】
チタン化合物
固体状チタン(a)を構成するチタン化合物は液状形態で用いられることが好ましい。このようなチタン化合物としては、例えば、下記式(III)で示される4価のチタン化合物が挙げられる。
Ti(OR5)g4-g ・・・(III)
式(III)中、R5は炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、0≦g≦4である。
前記チタン化合物としては、特に四塩化チタンが好ましい。また、前記チタン化合物は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
電子供与体(内部ドナー)
固体状チタン(a)を構成する電子供与体(内部ドナー)としては、例えば、下記式(IV)で表わされる化合物(以下「化合物(IV)」ともいう。)が挙げられる。
【0041】
【化14】
【0042】
式(IV)中、Rは、炭素原子数1~10、好ましくは2~8、より好ましくは3~6、さらに好ましくは4~5、特に好ましくは4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示し、R'は炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示し、nは0~4の整数を示す。本発明では、nが0の化合物が好ましい。
【0043】
RおよびR'のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。これらの中でもn-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、iso-ブチル基がより好ましい。
【0044】
前記化合物(IV)の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジn-プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジn-ブチル、フタル酸ジイソブチル(本明細書において「ジイソブチルフタレート」と呼ばれる場合もある。)、フタル酸ジn-ペンチル、フタル酸ジネオペンチル、フタル酸ジn-ヘキシル、フタル酸ジn-ヘプチル、フタル酸ジ(メチルヘキシル)、フタル酸ジ(ジメチルペンチル)、フタル酸ジ(エチルペンチル)、フタル酸ジ(2,2,3-トリメチルブチル)、フタル酸ジn-オクチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの中では、フタル酸ジイソブチルが好ましい。
【0045】
本発明では、前記電子供与体(内部ドナー)として、前記化合物(IV)以外の別の電子供与体を用いてもよい。
別の電子供与体としては、例えば、複数の原子を介して存在する2個以上のエーテル結合を有する化合物(以下「ポリエーテル化合物」ともいう。)が挙げられる。
【0046】
前記ポリエーテル化合物としては、エーテル結合間に存在する原子が、炭素、ケイ素、酸素、窒素、イオウ、リン、ホウ素、またはこれらから選択される2種以上の原子である化合物などを挙げることができる。これらのうちエーテル結合間の原子に比較的嵩高い置換基が結合しており、2個以上のエーテル結合間に存在する原子に複数の炭素原子が含まれる化合物が好ましい。例えば、下記式(3)で表されるポリエーテル化合物が好ましい。
【0047】
【化15】
【0048】
前記式(3)において、mは1~10の整数、好ましくは3~10の整数、より好ましくは3~5の整数である。R11、R12、R31~R36は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素、水素、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、硫黄、リン、ホウ素およびケイ素から選択される少なくとも1種の元素を有する置換基である。R11およびR12は、それぞれ独立に、好ましくは炭素原子数1~10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数2~6の炭化水素基である。R31~R36は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子または炭素原子数1~6の炭化水素基である。
【0049】
11およびR12の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。これらの中では、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基が好ましい。R31~R36の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基が挙げられる。これらの中では、水素原子、メチル基が好ましい。任意のR11、R12、R31~R36(好ましくはR11、R12)は、共同してベンゼン環以外の環を形成していてもよく、主鎖中に炭素以外の原子が含まれていてもよい。
【0050】
前記ポリエーテル化合物の具体例としては、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジエチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-プロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-エチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(2-シクロヘキシルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-(2-エチルヘキシル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジエトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジブトキシプロパン、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジ-sec-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジ-tert-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジネオペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-シクロヘキシルメチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,3-ジシクロヘキシル-1,4-ジエトキシブタン、2,3-ジイソプロピル-1,4-ジエトキシブタン、2,4-ジイソプロピル-1,5-ジメトキシペンタン、2,4-ジイソブチル-1,5-ジメトキシペンタン、2,4-ジイソアミル-1,5-ジメトキシペンタン、3-メトキシメチルテトラヒドロフラン、3-メトキシメチルジオキサン、1,2-ジイソブトキシプロパン、1,2-ジイソブトキシエタン、1,3-ジイソアミロキシエタン、1,3-ジイソアミロキシプロパン、1,3-ジイソネオペンチロキシエタン、1,3-ジネオペンチロキシプロパン、2,2-テトラメチレン-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ペンタメチレン-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ヘキサメチレン-1,3-ジメトキシプロパン、1,2-ビス(メトキシメチル)シクロヘキサン、2-シクロヘキシル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-イソプロピル-2-イソアミル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-シクロヘキシル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-イソプロピル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-イソブチル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-シクロヘキシル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシシクロヘキサン、2-シクロヘキシル-2-エトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-イソプロピル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシシクロヘキサン、2-イソプロピル-2-エトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-イソブチル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシシクロヘキサン、2-イソブチル-2-エトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン等を例示することができる。
【0051】
これらの中では、1,3-ジエーテル類が好ましく、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジメトキシプロパンがより好ましい。これらの化合物は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0052】
≪固体状チタン(a)の調製≫
前記固体状チタン(a)は、前記マグネシウム化合物と、前記チタン化合物と、前記電子供与体との接触により調製することができる。この際、固体状態のマグネシウム化合物を炭化水素溶媒に懸濁して用いることが好ましい。また、これら各成分を接触させる際に、液状形態のチタン化合物を1回用いて固形物(1)を生成させてもよく、得られた固形物(1)にさらに液状形態のチタン化合物を接触させて固形物(2)を生成させてもよい。
【0053】
すなわち、チタン化合物として液状形態のチタン化合物が用いられる場合、前記固体状チタン(a)は、例えば、
前記マグネシウム化合物、前記電子供与体、および、炭化水素溶媒を含む混合物と、前記チタン化合物とを反応させ、固形物(1)を得る工程(SST-1)
を含む製造方法によって得ることができる。
【0054】
前記炭化水素溶媒の例として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、セタンなどの脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼンなどの非ハロゲン系芳香族炭化水素溶媒;並びに、ハロゲン含有芳香族炭化水素溶媒などが挙げられる。本発明では、前記炭化水素溶媒として脂肪族炭化水素溶媒、または、ハロゲンを含まない芳香族炭化水素溶媒を好ましく用いることができる。
【0055】
前記製造方法は、前記工程(SST-1)に加えて、
前記工程(SST-1)で得られる固形物(1)と、第2のチタン化合物とを反応させ、固形物(2)を得る工程(SST-2)
をさらに含んでいてもよい。ここで、前記第2のチタン化合物として、上述したチタン化合物が挙げられる。前記第2のチタン化合物は、前記工程(SST-1)で用いられるチタン化合物(第1のチタン化合物)と同じであってもよく互いに異なっていてもよいが、多くの場合、同じである。
【0056】
さらに、この固形物(1)または(2)を必要に応じて炭化水素溶媒で洗浄してから固体状チタン(a)を調製することが好ましい。
上記のような各成分の接触は、通常-70℃~+200℃、好ましくは-50℃~+150℃、より好ましくは-30℃~+130℃の温度で行われる。固体状チタン(a)を調製する際に用いられる各成分の量は、調製方法によって異なり一概に規定できないが、例えばマグネシウム化合物1モル当り、電子供与体は0.01~10モル、好ましくは0.1~5モルの量で、チタン化合物は0.01~1000モル、好ましくは0.1~200モルの量で用いることができる。なお、必要に応じて用いうる上記界面活性剤の量および上記アルコールの量は、本発明の目的が害されない範囲内で適当量とすることができる。
【0057】
本発明では、このようにして得られた固形物(1)または(2)をそのまま固体状チタン(i)として用いることができるが、この固形物を0~150℃の炭化水素溶媒で洗浄することが好ましい。
【0058】
前記洗浄に用いられる炭化水素溶媒の例として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、セタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの非ハロゲン系芳香族炭化水素溶媒、並びに、ハロゲン含有芳香族炭化水素溶媒などが挙げられる。これらのうち、脂肪族炭化水素溶媒または非ハロゲン系芳香族炭化水素溶媒が好ましく、脂肪族炭化水素溶媒がより好ましく用いられる。脂肪族炭化水素溶媒の中でも特にデカンが好適に使用される。
【0059】
固形物の洗浄に際しては、炭化水素溶媒は、固形物1gに対して通常10~500ml、好ましくは20~300mlの量で用いられる。ここで、固形物の洗浄に用いる炭化水素溶媒の量は、例えば、固形物1gに対して20~100mlとしてもよいが、100mlを多少超えることを妨げるものではなく、例えば、200ml程度になってもかまわない。このようにして得られる固体状チタン(a)は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有している。この固体状チタン(a)では、電子供与体/チタン(重量比)が6以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
このようにして得られた固体状チタン(a)は、室温でのヘキサン洗浄によってチタンが脱離することがない。
【0060】
≪(b)芳香族炭化水素≫
前記固体状チタン(a)との接触に用いられる芳香族炭化水素(b)としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、これらのハロゲン含有炭化水素などが挙げられる。これらの中では、キシレンが好ましく、パラキシレンがより好ましい。前記固体状チタン(a)を、このような芳香族炭化水素(b)と接触させることにより、低立体規則性成分を副生する、いわゆる「剰余チタン化合物」を低減することができる。
【0061】
≪(c)液状チタン≫
前記固体状チタン(a)との接触に用いられる液状チタン(c)としては、該固体状チタン(a)を調製する際に用いたチタン化合物と同様のものを挙げることができる。それらの中でも、テトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタンが好ましい。前記液状チタン(c)は、前記固体状チタン(a)を調製する際に用いたチタン化合物と同じであってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。ただ、本発明の典型的な態様において、前記液状チタン(c)は、前記固体状チタン(a)を調製する際に用いた前記チタン化合物と同じである。
【0062】
≪(d)電子供与体≫
前記固体状チタン(a)との接触に用いられる電子供与体(d)の例としては、上述した電子供与体(内部ドナー)で例示したものと同じものを挙げることができる。それらの中でも、前記固体状チタン(a)の調製に使用した電子供与体と同じものを用いることが好ましい。前記電子供与体(d)は、前記固体状チタン(a)を調製する際に用いた前記電子供与体(内部ドナー)と同じであってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。ただ、本発明の典型的な態様において、前記電子供与体(d)は、前記固体状チタン(a)を調製する際に用いた前記電子供与体(内部ドナー)と同じである。
【0063】
≪固体状チタン触媒成分[A]の調製方法≫
固体状チタン(a)、芳香族炭化水素(b)、液状チタン(c)および電子供与体(d)の接触は、通常110~160℃、好ましくは115℃~150℃、より好ましくは120℃~140℃の温度で、通常1分間~10時間、好ましくは10分間~5時間、より好ましくは30分間~3時間行われる。
【0064】
この接触では、芳香族炭化水素(b)は、固体状チタン(a)1gに対して通常1~10000ml、好ましくは5~5000ml、より好ましくは10~1000ml、さらに好ましくは10~100ml、特に好ましくは10~50mlの量で用いられる。液状チタン(c)は、芳香族炭化水素(b)100mlに対して通常0.1~50ml、好ましくは0.2~20ml、より好ましくは0.3~10ml、さらに好ましくは0.5~5.0ml、特に好ましくは0.7~3.0mlの範囲で用いられる。電子供与体(d)は、芳香族炭化水素(b)100mlに対して通常0.01~10ml、好ましくは0.02~5ml、より好ましくは0.03~3ml、さらに好ましくは0.05~1.0ml、特に好ましくは0.1~0.5mlの量で用いられる。
【0065】
固体状チタン(a)、芳香族炭化水素(b)、液状チタン(c)および電子供与体(d)の接触順序は、特に限定されることなく、同時または逐次に接触させることができる。
固体状チタン(a)、芳香族炭化水素(b)、液状チタン(c)および電子供与体(d)は、不活性ガス雰囲気下、攪拌下に接触させることが好ましい。例えば、充分に窒素置換された攪拌機付きガラス製フラスコ中で、固体状チタン(a)、芳香族炭化水素(b)、液状チタン(c)および電子供与体(d)のスラリーを、通常110~160℃、好ましくは115℃~150℃、より好ましくは120℃~140℃で、攪拌機を100~1000rpm、好ましくは150~800rpm(例えば200~800rpmであるが200rpmを若干下回ってもよい。)の回転数で、通常1分間~10時間、好ましくは10分間~5時間、より好ましくは30分間~3時間、攪拌して、固体状チタン(a)、芳香族炭化水素(b)、液状チタン(c)および電子供与体(d)を接触させることが望ましい。
【0066】
接触後の固体状チタン(a)と芳香族炭化水素(b)とは、濾過により分離することができる。
このような固体状チタン(a)と芳香族炭化水素(b)との接触により、固体状チタン(a)よりもチタン含有量が減少された固体状チタン触媒成分[A]が得られる。具体的には、チタン含有量が固体状チタン(a)よりも25重量%(質量%)以上少ない、好ましくは30~95重量%(質量%)少ない、より好ましくは40~90重量%(質量%)少ない、さらに好ましくは50~80重量%(質量%)少ない固体状チタン触媒成分[A]が得られる。
【0067】
上記のようにして得られる固体状チタン触媒成分[A]は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含み、かつ、通常の場合、下記要件(k1)~(k4)を満たし、好ましくは下記要件(k5)をさらに満たしている。
【0068】
(k1)固体状チタン触媒成分[A]のチタン含有量は2.5重量%(質量%)以下(すなわち、0質量%を超えて2.5質量%以下)、好ましくは0.1~2.2重量%(質量%)、より好ましくは0.2~2.0重量%(質量%)、特に好ましくは0.3~1.8重量%(質量%)、最も好ましくは0.4~1.5重量%(質量%)である。
【0069】
(k2)電子供与体の含有量は8~30重量%(質量%)、好ましくは9~25重量%(質量%)、より好ましくは10~20重量%(質量%)である。
【0070】
(k3)電子供与体/チタン(重量比(質量比))は7以上、好ましくは7.5~35、より好ましくは8~30、特に好ましくは8.5~25である。
【0071】
(k4)固体状チタン触媒成分[A]は、室温でのヘキサン洗浄によってチタンが実質的に脱離されることがない。なお、固体状チタン触媒成分[A]のヘキサン洗浄とは、固体状チタン触媒成分[A]1gに対して、通常10~500ml、好ましくは20~100mlの量のヘキサンで洗浄することをいい、その際の洗浄時間は例えば5分間とすることができる。室温とは15~25℃である。また、チタンが実質的に脱離されることがないとは、ヘキサン洗浄液中のチタン濃度が0.1g/リットル以下であることを意味する。
【0072】
(k5)固体状チタン触媒成分[A]は、通常、平均粒径が5~70μmであり、好ましくは7~65μmであり、より好ましくは8~60μmであり、さらに好ましくは10~55μmである。
【0073】
ここで、マグネシウム、ハロゲン、チタンおよび電子供与体の量は、それぞれ固体状チタン触媒成分[A]の単位重量(単位質量)あたりの重量%(質量%)であり、マグネシウム、ハロゲンおよびチタンはプラズマ発光分光分析(ICP法)により、電子供与体はガスクロマトグラフィーにより定量される。また、触媒の平均粒径は、デカリン溶媒を用いた遠心沈降法により測定される。
【0074】
ここで、前記電子供与体に関連して、上記「固体状チタン(a)の調製」で上述したように、固体状チタン(a)を製造する過程において、エタノールなどのアルコールが併用される場合があり、この場合、得られる固体状チタン(a)が当該アルコールを含有することがある。ただ、そのような固体状チタン(a)を用いて固体状チタン触媒成分[A]を得た場合においても、当該固体状チタン触媒成分[A]が前記アルコールをほとんどまたは全く含まないときには、当該アルコールを電子供与体として見る必要はない。ここで前記アルコールについて「ほとんどまたは全く含まない」とは、固体状チタン触媒成分[A]中の前記アルコール濃度が1質量%以下であることを意味する。
【0075】
上記の固体状チタン触媒成分[A]は、オレフィン重合用触媒成分として用いると、オレフィン(例えば、プロピレン)を高活性で重合させることができるとともに、立体規則性の低いポリオレフィン(例えば、立体規則性の低いポリプロピレン)の生成量が少なく、高立体規則性のポリオレフィン(例えば、高立体規則性のポリプロピレン)を安定に製造することができる。オレフィンの中でも特にプロピレンの重合用触媒成分として好適に使用される。
【0076】
<有機金属化合物触媒成分[B]>
本発明のオレフィン重合用触媒を構成する有機金属化合物触媒成分[B](以下、単に「成分[B]」と呼ばれる場合もある。)は、オレフィン重合用触媒として用いられるチタン触媒を構成する第2の成分であり、従来公知のチタン触媒で用いられている有機金属化合物成分と同様のものであっても良い。有機金属化合物触媒成分[B]は、典型的には、周期律表の1族、2族または13族に属する金属を含む有機金属化合物であり、例えば、有機アルミニウム化合物、第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化合物、第2族金属の有機金属化合物などが挙げられる。なお、有機金属化合物触媒成分[B]は、2種以上を併用してもよい。
【0077】
≪有機アルミニウム化合物≫
前記有機アルミニウム化合物は、例えば下記式で示される。
a nAlX3-n
式中、Raは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、Xはハロゲンまたは水素であり、nは1~3である。
【0078】
aとなりうる炭素原子数1~12の炭化水素基として、例えばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などが挙げられる。
【0079】
また、前記有機アルミニウム化合物として、下記式で示される化合物を挙げることもできる。
a nAlY3-n
式中、Raは上記と同様であり、Yは-ORb基、-OSiRc 3基、-OAlRd 2基、-NRe 2基、-SiRf 3基または-N(Rg)AlRh 2基であり、nは1~2であり、Rb、Rc、RdおよびRhはメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、Reは水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、RfおよびRgはメチル基、エチル基などである。
【0080】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物が挙げられる。
・Ra nAl(ORb)3-n で表される化合物、例えばジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなど。
・Ra nAl(OSiRc)3-n で表される化合物、例えばEt2Al(OSiMe3)、(iso-Bu)2Al(OSiMe3)、(iso-Bu) 2Al(OSiEt3)など。
・Ra nAl(OAlRd 2)3-nで表される化合物、例えばEt2AlOAlEt2、(iso-Bu) 2AlOAl(iso-Bu) 2 など。
【0081】
前記有機アルミニウム化合物のうちでも、Ra 3Alで表される有機アルミニウム化合物が好ましく用いられる。Ra 3Alで表される有機アルミニウム化合物の中でもトリエチルアルミニウムが好適に使用される。
【0082】
<有機ケイ素化合物[C]>
本発明のオレフィン重合用触媒を構成する有機ケイ素化合物[C](以下、単に「成分[C]」と呼ばれる場合もある。)は、上記「有機ケイ素化合物」の項で上述した上記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物(すなわち、有機ケイ素化合物(1))などの上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物(すなわち、有機ケイ素化合物(0))である。
【0083】
有機ケイ素化合物(1)などの有機ケイ素化合物(0)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記固体状チタン触媒成分[A]と上記有機ケイ素化合物(1)とを組み合わせてオレフィン重合用触媒として用いることにより、これまでにないレベルの高立体規則性を有するプロピレン系重合体を得ることができる。例えば、上記一般式(1)においてR2 としてエチル基以外の基(例えば、メチル基またはフェニル基)を有する有機ケイ素化合物と比べて、重合活性が高く、且つ、より高い立体規則性を有する重合体を与える傾向がある。また、得られる重合体は、比較的小さな分子量を有する傾向があり、高い流動性を有する傾向がある。
また、前記固体状チタン触媒成分[A]と、上記有機ケイ素化合物(1)以外の上記有機ケイ素化合物(0)とを組み合わせてオレフィン重合用触媒として用いる場合にも、前記固体状チタン触媒成分[A]と上記有機ケイ素化合物(1)とを組み合わせてオレフィン重合用触媒として用いる場合と同様に、高立体規則性を有するプロピレン系重合体を得ることができる。
【0084】
上記一般式(1)においてR2 としてプロピル基を有する有機ケイ素化合物では、オレフィン重合用触媒として用いたときに高い重合活性は得られるものの、上記有機ケイ素化合物(1)を用いた場合と比べて得られる重合体の分子量が大幅に高くなる傾向があり、流動性は低下する傾向がある。そのような有機ケイ素化合物を用いて得られるオレフィン重合用触媒を用いて、上記有機ケイ素化合物(1)を用いて得られる重合体と同様の分子量の重合体を得るためには、オレフィンの重合反応系において多量の水素を存在させる必要がある傾向がある。しかし、オレフィンの重合反応系において多量の水素を存在させることは、重合反応に用いる容器に強い耐圧性を要求することとなり、重合体の生産性およびコスト等の観点から現実的ではない場合がある。
【0085】
<オレフィン重合用触媒の構成>
上述したように、本発明で用いることができるオレフィン重合用触媒として、例えば、
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒[0]
が挙げられる。
ここで、本発明の好適かつ例示的な態様において、前記オレフィン重合用触媒[0]は、
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]上記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒[0-1]である。
また、本発明のもう1つの好適かつ例示的な態様において、前記オレフィン重合用触媒[0]は、
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物であって、n1が2である有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒[0-2]である。
【0086】
このようなオレフィン重合用触媒[0]に該当する第1の好適なオレフィン重合用触媒は、
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒[I]である。ここで、上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物は、上記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物であってもよく、あるいは、上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物であって、n1が2である有機ケイ素化合物であってもよい。
【0087】
前記オレフィン重合用触媒[I]は、そのままの状態でオレフィン重合に供しても良く、あるいは、予めオレフィンを予備重合させてなる予備重合触媒(p)の形でオレフィン重合に供しても良い。このことから、オレフィン重合用触媒[0]に該当する第2の好適なオレフィン重合用触媒は、
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と、
[C]上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物と
を含む触媒に、オレフィンが予備重合されてなるオレフィン重合用触媒[II]である。ここで、上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物は、上記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物であってもよく、あるいは、上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物であって、n1が2である有機ケイ素化合物であってもよい。
【0088】
前記オレフィン重合用触媒[II]は、そのままの状態で予備重合触媒(p)としてオレフィン重合に供しても良く、あるいは、予備重合触媒成分として用い、第2の成分[B]及び/または第2の成分[C]をさらに含む複合触媒の形でオレフィン重合に供しても良い。
【0089】
なお、本明細書において、成分[B]のうち、予備重合触媒成分を構成する成分[B]を成分[B0]と、予備重合触媒成分に対して添加される第2の成分[B]を成分[B1]とそれぞれ呼ぶ場合がある。同様に、成分[C]のうち、予備重合触媒成分を構成する成分[C]を成分[C0]と、予備重合触媒成分に対して添加される第2の成分[C]を成分[C1]とそれぞれ呼ぶ場合がある。
【0090】
ここで、前記オレフィン重合用触媒[0]が、成分[A]等を含む予備重合触媒成分と、第2の成分[B]及び/または第2の成分[C]とを含む複合触媒である場合、成分[C]は、前記予備重合触媒成分の構成成分(すなわち、成分[C0])としてオレフィン重合用触媒[0]に含まれていてもよく、あるいは、第2の成分[C](すなわち、成分[C1])の形で含まれていても良い。すなわち、オレフィン重合用触媒[0]が成分[C]を第2の成分[C](すなわち、成分[C1])の形で含む場合、前記成分[C]は、必ずしも、前記予備重合触媒成分の構成成分(すなわち、成分[C0])として含まれていることを要さない。このことから、オレフィン重合用触媒[0]に該当する第3の好適なオレフィン重合用触媒は、
[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分と、
[B]有機金属化合物触媒成分と
を含む触媒[P0]に、オレフィンが予備重合されてなる予備重合触媒成分[P]と、
[C]上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物と
を含むオレフィン重合用触媒[III]である。ここで、上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物は、上記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物であってもよく、あるいは、上記一般式(0)で示される有機ケイ素化合物であって、n1が2である有機ケイ素化合物であってもよい。
【0091】
前記オレフィン重合用触媒[III]において、前記成分[B]は、予備重合触媒成分[P]の構成成分(すなわち、成分[B0])を構成し、前記成分[C]は、予備重合触媒成分[P]に対して添加される第2の成分[C](すなわち、成分[C1])を構成している。前記触媒[P0]は、成分[C](すなわち、成分[C0])をさらに含んでいてもよい。また、上記予備重合触媒成分[P]に対しては、成分[C]のほかに、さらに成分[B](すなわち、成分[B1])が配合されていてもよい。
【0092】
ここで、成分[B0]および成分[B1]の例として、上記<有機金属化合物触媒成分[B]>に例示した成分が挙げられる。成分[B0]および成分[B1]は、いずれも、1種単独であっても良く、あるいは、2種以上の組み合わせであっても良い。成分[B0]と成分[B1]とは同一であっても良く、あるいは、互いに異なっていてもよい。
【0093】
また、成分[C0]および成分[C1]の例として、上記<有機ケイ素化合物[C]>に例示した成分が挙げられる。成分[C0]および成分[C1]は、いずれも、1種単独であっても良く、あるいは、2種以上の組み合わせであっても良い。成分[C0]と成分[C1]とは同一であっても良く、あるいは、互いに異なっていてもよい。
【0094】
[オレフィン重合用触媒の製造方法]
前記オレフィン重合用触媒は、前記固体状チタン触媒成分[A]と、前記有機金属化合物触媒成分[B]と、前記有機ケイ素化合物[C]とを接触させる工程を含む方法により製造することができる。例えば、上記オレフィン重合用触媒[I]は、前記成分[A]と、前記成分[B]と、前記成分[C]とを直接混合する工程を含む方法により製造することができる。
【0095】
本発明では、これら各成分[A]、[B]および[C]からオレフィン重合用触媒を形成する際に、必要に応じて他の成分を用いることもできる。
本発明では、上記のような各成分から予備重合触媒(p)が形成されていてもよい。予備重合触媒(p)は、多くの場合、上述した各成分[A]、[B]および[C]および必要に応じて用いられる他の成分の存在下に、プロピレンなどのオレフィンを予備重合させることにより形成される。このような予備重合触媒(p)は、通常、予備重合触媒成分として用いられ、前記成分[C1]としての有機ケイ素化合物[C]および前記成分[B1]としての有機金属化合物触媒成分[B]とともにオレフィン重合用触媒を形成するが、予備重合触媒(p)のみをオレフィン重合用触媒として用いることができる場合もある。本発明では、予備重合触媒(p)に対して、上述した各成分[A]、[B]および[C]および必要に応じて用いられる他の成分の存在下に、プロピレンなどのオレフィンを再度予備重合させることもできるが、予備重合させる回数は1回であることが好ましい。
【0096】
例えば、上記オレフィン重合用触媒[II]は、前記成分[A]と、前記成分[B]と、前記成分[C]とを含む混合物の存在下でオレフィンを予備重合する工程を含む方法により製造することができる。
【0097】
一方、オレフィン重合用触媒が予備重合触媒(p)と前記成分[C1]としての成分[C]とを含む場合、当該予備重合触媒(p)は、前記成分[C0]としての成分[C]を必ずしも含まなくてもよい。このような態様の予備重合触媒(p)は、上述した各成分[A]および[B]および必要に応じて用いられる他の成分の存在下に、プロピレンなどのオレフィンを予備重合させることにより形成することができる。この態様の予備重合触媒(p)は、前記成分[C1]としての成分[C]および前記成分[B1]としてのオプショナルの成分[B]とともにオレフィン重合用触媒を形成することができる。
【0098】
例えば、上記オレフィン重合用触媒[III]は、
前記成分[A]と、前記成分[B]とを含む混合物(触媒[P0])の存在下でオレフィンを予備重合する工程(S1)と、
前記予備重合によって得られる予備重合触媒成分[P]と前記成分[C]とを混合する工程(S2)と
を含む方法により製造することができる。ここで前記工程(S1)において、前記混合物は、前記成分[C0]としての成分[C]を含んでいてもよい。また、前記工程(S2)における混合にあたり、前記成分[B1]としての成分[B]がさらに添加されていてもよい。
【0099】
[オレフィン重合体の製造方法]
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、上述したオレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合あるいは共重合させる工程を含む。
【0100】
本発明の好適且つ例示的な態様において、前記オレフィンは、プロピレンを含む。この態様において、本発明のオレフィン重合体の製造方法は、上述したオレフィン重合用触媒の存在下でプロピレンを重合させる工程を含むことになる。
【0101】
ここで、前記プロピレンの重合の一例として、プロピレンの単独重合が挙げられる。
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合体がプロピレン重合体である場合、当該プロピレン重合体は、バイオマス由来プロピレンを含んでいてもよい。当該重合体を構成するプロピレンは、バイオマス由来プロピレンのみからなるものでもよいし、あるいは、バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの両方を含んでもよい。
【0102】
自然界に存在する炭素原子には、12C、13Cおよび14Cという3つの同位体が存在し、これら3つの同位体比は、環境中ではほぼ一定(12C:13C:14C=0.99:0.01:10-12)であること、並びに、これらの同位体のうち14Cは放射性同位体(β崩壊の半減期5730年)であることが知られている。ここで、バイオマス由来プロピレンについては、全炭素中の14C同位体の割合が10-12~10-14程度であるのに対し、化石燃料中には、14Cの放射性壊変のため、14Cが含まれていないことも知られている。そこで、バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンとは、14C同位体が含まれるか否かによって区別することができる。
【0103】
バイオマス由来プロピレンとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるプロピレンで、炭素として14C同位体を10-12程度の割合で含有し、ASTM D 6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC:percent of Modern Carbon)が100(pMC)程度である。バイオマス由来プロピレンは、従来公知の方法により得ることができ、そのような方法の例として、例えば、(a)バイオマス原料を発酵させて得られるエタノールを脱水して得られるエチレンと、バイオマス原料を発酵させて得られる1-ブタノール、もしくは、バイオマス原料を発酵させて得られるエタノールを二量化させて得られる1-ブタノールを脱水して得られる1-ブテンとをメタセシス反応させる工程を含む方法、並びに、(b)バイオマス原料を発酵させて得られるイソプロパノールを脱水する工程を含む方法などが挙げられる。本発明の製造方法によってプロピレン単独重合体を得る場合、当該プロピレン単独重合体がバイオマス由来プロピレンを含むことは環境負荷低減(主に温室効果ガス削減)の観点から好ましい。重合用触媒、重合プロセス、重合温度、などの重合体製造条件が同等であれば、原料プロピレンがバイオマス由来プロピレンを含んでいても、炭素として14C同位体を10-12~10-14程度の割合で含む以外の分子構造は化石燃料由来プロピレンからなるプロピレン単独重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0104】
また前記プロピレン重合体は、バイオマス由来プロピレンとともに、あるいは、バイオマス由来プロピレンの代わりに、ケミカルリサイクル由来プロピレンを含んでいてもよい。当該重合体を構成するプロピレンは、ケミカルリサイクル由来プロピレンのみからなるものでもよいし、あるいは、ケミカルリサイクル由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンおよび/またはバイオマス由来プロピレンを含んでもよい。ケミカルリサイクル由来プロピレンは、従来から知られている方法により得られる。本発明の製造方法によってプロピレン重合体を得る場合、当該プロピレン重合体がケミカルリサイクル由来プロピレンを含むことは環境負荷低減(主に廃棄物削減)の観点から好ましい。原料モノマーがケミカルリサイクル由来モノマーを含んでいても、ケミカルリサイクル由来モノマーは廃プラスチックなどの重合体を解重合、熱分解等でプロピレンなどのモノマー単位にまで戻したモノマー、ならびに該モノマーを原料にして製造したモノマーであるので、重合用触媒、重合プロセス、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、分子構造は化石燃料由来モノマーからなるプロピレン重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0105】
プロピレンの重合を行う際に、プロピレンに加えて、プロピレン以外の他のコモノマー(以下、「他のコモノマー」)として、プロピレン以外の他のオレフィン(以下、「他のオレフィン」)またはジエン化合物を少量重合系内に共存させてランダム共重合体を製造することもできる。このような他のオレフィンの例として、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテンなどの炭素数2~8のオレフィンが挙げられる。これらの中ではエチレンが好ましい。前記プロピレン重合体がランダム共重合体である場合、前記他のコモノマーの含有量は、好ましくは6モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。
【0106】
ここで、前記他のオレフィンがエチレンの場合、当該エチレンは、プロピレンと同様にバイオマス由来のエチレンのみからなるものでもよいし、バイオマス由来エチレンと化石燃料由来エチレンの両方を含んでもよい。また、前記他のオレフィンとしてのエチレンは、ケミカルリサイクル由来エチレンのみからなるものでもよいし、ケミカルリサイクル由来エチレンと化石燃料由来エチレンおよび/またはバイオマス由来エチレンを含んでもよい。プロピレン、エチレン以外の他のオレフィンについても同様である。
【0107】
[オレフィン重合体の物性]
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合体は、メソペンダット分率(mmmm)が好ましくは97.7%以上、より好ましくは97.9%以上、さらに好ましくは98.1%以上、特に好ましくは98.3%以上である。上限値については、特に制限はないが、例えば、100%以下である。メソペンダット分率(mmmm)が前記の範囲にあるとオレフィン重合体の高剛性化の点で好ましい。メソペンダット分率(mmmm)は13C-NMRスペクトルのピーク強度比から算出することができる。
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合体は、Mw/Mn値が好ましくは3.0~12.0、より好ましくは4.0~11.0、さらに好ましくは5.0~9.0、特に好ましくは6.0~8.0である。Mw/Mn値は、例えば、下記実施例中「分子量分布」に記載の条件で測定したクロマトグラムを公知の方法によって解析することによって得られる。
【0108】
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合体は、デカン可溶成分量が好ましくは5.0重量%(質量%)以下、より好ましくは3.0重量%(質量%)以下、さらに好ましくは2.0重量%(質量%)以下、特に好ましくは1.5重量%(質量%)以下である。下限値については、特に制限はないが、例えば、0.01重量%(質量%)以上である。デカン可溶成分量が前記の範囲にあるとオレフィン重合体の高剛性化の点で好ましい。
【0109】
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合体は、メルトフローレート(MFR)が好ましくは10~1200g/10分、より好ましくは50~1000g/10分、さらに好ましくは100~800g/10分、特に好ましくは120~600g/10分である。メルトフローレート(MFR)が前記の範囲にあると、得られるオレフィン重合体を射出成形品とするときに、当該射出成形品の薄肉化と機械的強度とを両立させやすくなる点で好ましい。メルトフローレート(MFR)はASTM D1238Eに準拠し、測定温度は230℃として測定することができる。
【0110】
本発明では、重合は溶液重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法いずれにおいても実施することができる。重合がスラリー重合の反応形態を採る場合、反応溶媒として、不活性有機溶媒を用いることもできるし、反応温度において液状のオレフィンを用いることもできる。
【0111】
不活性有機溶媒としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;脂環族炭化水素;芳香族炭化水素;ハロゲン化炭化水素、あるいはこれらの接触物などを挙げることができる。これらの中では、特に脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。
【0112】
重合に際しては、固体状チタン触媒成分[A]または予備重合触媒(p)は、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、通常は約1×10-5~1ミリモル、好ましくは約1×10-4~0.5ミリモルの量で用いられる。ここで、固体状チタン触媒成分[A]または予備重合触媒(p)の量は、例えば、約1×10-4~0.1ミリモルとすることができるが、0.1ミリモルを多少超えることを妨げるものではない。
【0113】
有機ケイ素化合物[C]は、有機金属化合物触媒成分[B]の金属原子1モルに対し、通常0.001~10モル、好ましくは0.01~5モル、より好ましくは0.05~1.0モル、さらに好ましくは0.1~0.5モル、特に好ましくは0.15~0.3モルの量で用いられる。
【0114】
有機金属化合物触媒成分[B]は、該成分[B]中の金属原子が重合系中のチタン原子1モルに対し、通常1~2000モル、好ましくは2~500モル、より好ましくは10~400モル、さらに好ましくは50~350モル、特に好ましくは100~300モルとなるような量で用いられる。
有機ケイ素化合物[C]は、固体状チタン触媒成分[A]のチタン原子換算1モルに対し、通常、1~300モル、好ましくは5~200モル、より好ましくは10~100モル、さらに好ましくは15~70モル、特に好ましくは20~55モルの量で用いられる。
【0115】
なお、この重合時に予備重合触媒(p)を用いると、有機ケイ素化合物[C]および/または有機金属化合物触媒成分[B]を添加しなくてもよい場合がある。予備重合触媒(p)、成分[B]および成分[C]からオレフィン重合用触媒が形成されるときには、これら各成分[B]および[C]は上記のような量で用いることができる。
【0116】
重合時に水素を用いれば、得られるオレフィン重合体(例えばプロピレン重合体)の分子量を調節することができ、MFRの大きい重合体が得られる。
本発明では、重合は、通常、20~150℃、好ましくは50~100℃、より好ましくは55~90℃、さらに好ましくは60~80℃の温度で、また常圧~100kg/cm2、好ましくは2~50kg/cm2の圧力下で行われる。
【0117】
本発明では、重合を、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を、反応条件を変えて2段以上に分けて行うこともできる。また、本発明では、プロピレンの単独重合体を製造してもよく、またプロピレン以外のオレフィンからランダム共重合体またはブロック共重合体などを製造してもよい。
【0118】
本発明の重合方法によって得られるオレフィン重合体は、高い立体規則性を有しながら、高い流動性をも有している。このようなオレフィン重合体は、そのままの状態で、あるいは、必要に応じて、当該オレフィン重合体以外の他の樹脂、充填剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤などの他の成分をさらに含む組成物の形で用いることができる。前記オレフィン重合体に配合しうる前記他の成分は、1種単独であっても良く、あるいは、2種以上の組み合わせであってもよい。また前記オレフィン重合体を含む組成物における前記他の成分の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではない。
【0119】
前記オレフィン重合体、および、前記オレフィン重合体を含む組成物は、従来公知の種々の成形方法により成形体とすることができる。前記オレフィン重合体は、高い立体規則性を有しながら、高い流動性をも有していることから、成形性に優れ、例えば自動車用部品、家電部品、食品容器、医療容器など様々な分野に好適に用いることができる。前記自動車用部品としては、例えば、バンパーやインストルメンタルパネル等の自動車内外装部材、ルーフ、ドアパネル、フェンダー等の外板材などが挙げられる。
本発明の成形体の成形法としては、特に限定されず、重合体の成形法として公知の様々な方法を採用することができるが、特に射出成形やプレス成形が好ましい。
【実施例0120】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例に記載された各種物性の測定方法は以下のとおりである。
【0121】
〔メソペンダット分率(mmmm)〕
重合体の立体規則性の指標の1つであり、そのミクロタクティシティーを調べたペンタッド分率(mmmm,%)は、プロピレン重合体においてMacromolecules 8,687(1975)に基づいて帰属した13C-NMRスペクトルのピーク強度比より算出した。
【0122】
13C-NMRスペクトルは、Bruker BioSpin Corp.製AVANCE III Cryo-500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒,試料濃度50mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は45゜(5.00μ秒)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は5,000回、21.59 ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。
【0123】
<分子量分布>
分子量分布の指標であるMw/Mn値は、下記条件で測定したクロマトグラムを公知の方法によって解析することによって得た。
装置:Waters製ゲル浸透クロマトグラフAllianceGPC2000型
カラム:東ソー製TSKgel GMH6-HT x2 + TSKgel GMH6-HTL x2
移動相:o-ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
流速:1.0ml/min
温度:140℃
カラム校正:東ソー製単分散ポリスチレン
試料濃度:0.15%(w/v)
注入量:0.4ミリリットル
【0124】
<メルトフローレート(MFR)>
ASTM D1238Eに準拠し、測定温度は230℃とした。
【0125】
<デカン可溶成分量>
ガラス製の測定容器にプロピレン系重合体約6グラム(この重量を、下式においてb(グラム)と表した)、デカン500ml、およびデカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃に昇温してプロピレン重合体を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間掛けて23℃まで徐冷した。得られたプロピレン重合体の析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G-4規格のグラスフィルターにて減圧濾過した。濾液の100mlを採取し、これを減圧乾燥してデカン可溶成分の一部を得た。この重量を、下式においてa(グラム)と表した。この操作の後、デカン可溶成分量を下記式によって決定した。
デカン可溶成分含有率(重量%)=100×(500×a)/(100×b)
【0126】
[実施例1]
<固体状チタン(a-1)の調製>
内容積2リットルの高速撹拌装置(特殊機化工業製)を充分窒素置換した後、該装置に精製灯油700ml、塩化マグネシウム10g、エタノール24.2gおよびソルビタンジステアレート(花王アトラス(株)製「エマゾール320」)3gを装入した。この系を撹拌下で昇温し、120℃および800rpmの条件で30分間撹拌した。高速撹拌下、内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブを用いて、予め-10℃に冷却された精製灯油1リットルを張り込んである2リットルのガラスフラスコ(攪拌機付)に移液した。得られた固体を濾過し、精製n-ヘキサンで充分洗浄することにより、塩化マグネシウム1モルに対してエタノールが2.8モル配位した固体状付加物を得た。
【0127】
次いで、前記固体状付加物(マグネシウム原子に換算して45ミリモル)をデカン20mlに懸濁させた後、-20℃に保持した四塩化チタン195ml中に、攪拌下で全量導入した。この混合液を5時間かけて80℃に昇温し、ジイソブチルフタレート1.8ml(6.2ミリモル)を添加した。引き続き110℃まで昇温して1.5時間攪拌した。
【0128】
1.5時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、100℃のデカンおよび室温のヘキサンによって、ろ液中にチタンが検出されなくなるまで洗浄した。ここで、前記100℃のデカンによる洗浄は、100℃のデカン200mlで3回行い、前記室温のヘキサンによる洗浄は、室温のヘキサン200mlで2回行った。このようにして、チタン3.8重量%、マグネシウム16重量%、ジイソブチルフタレート18.2重量%、エタノール残基1.1重量%を含有する固体状チタン(a-1)を得た。
得られた固体状チタン(a-1)の量は5.8gであった。
なお、固形物の洗浄に用いた炭化水素溶媒の量(すなわち、前記100℃のデカンと前記室温のヘキサンとの合計量)は、得られた固体状チタン(a-1)の収量から計算すると、固形物1gに対して172mlであった。
【0129】
<固体状チタン触媒成分(A-1)の調製>
充分に窒素置換された200mlのガラス製反応器に、得られた固体状チタン(a-1)6.8g、パラキシレン113ml、デカン11ml、四塩化チタン2.5ml(23ミリモル)及びジイソブチルフタレート0.34ml(1.2ミリモル)を入れた。反応器内の温度を130℃に昇温し、その温度で1時間、攪拌して接触処理した後、熱ろ過により固体部を採取した。ここで、前記攪拌は、回転数200rpmで行った。この固体部を101mlのパラキシレンに再懸濁させ、さらに四塩化チタン1.7ml(15ミリモル)及びジイソブチルフタレート0.22ml(0.8ミリモル)を添加した。
【0130】
次いで、130℃に昇温し、該温度を保持しながら1時間攪拌して反応させた。ここで、前記反応を行っている間の攪拌は、回転数200rpmで行った。反応終了後、再び熱ろ過にて固液分離を行い、得られた固体部を100℃のデカン及び室温のヘキサンによって触媒中のパラキシレンが1重量%以下となるまで洗浄した。ここで、前記100℃のデカンによる洗浄は、100℃のデカン200mlで3回行い、前記室温のヘキサンによる洗浄は、室温のヘキサン200mlで2回行った。このようにして、チタン1.3重量%、マグネシウム20重量%、ジイソブチルフタレート13.8重量%を含有する固体状チタン触媒成分(A-1)を得た。
得られた固体状チタン触媒成分(A-1)の量は5.5gであった。
前記固体部の洗浄に用いたヘキサンの量は、得られた固体状チタン触媒成分(A-1)の収量から計算すると、固体状チタン触媒成分(A-1)1gに対して、73mlであった。固体状チタン触媒成分(A-1)の一部を採取し、デカリン溶媒を用いた遠心沈降法により固体状チタン触媒成分(A-1)の平均粒径を測定したところ、平均粒径は40μmであった。
【0131】
<本重合>
ヘプタン7mlを入れた30mlガラス容器に、トリエチルアルミニウムを0.35ミリモル、外部電子供与体として2,2-ジメトキシ-1,3-ジエチル-1,3-ジアザ-2-シラシクロペンタン(Ex-1)を0.07ミリモル、および得られた固体状チタン触媒成分(A-1)をチタン原子換算で0.0028ミリモル装入し、20℃で10分間接触させてオレフィン重合用触媒を調製した。次いで、プロピレン500gを装入した内容積2リットルのオートクレーブ内に、前記オレフィン重合用触媒を装入して20℃で10分間重合を行った後、さらに水素7.5リットルを装入し、系内の温度を70℃に昇温して1時間重合を行った。次いで、エタノールを添加することにより重合を停止し、未反応のプロピレンをパージしてポリプロピレンを得た。
【0132】
[実施例2]
実施例1において、本重合にて装入した外部供与体をEx-1から2,2-ジメトキシ-1,3-ジエチル-1,3-ジアザ-2-シラシクロヘキサン(Ex-2)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0133】
[実施例3]
<予備重合触媒(p-1)の調製>
窒素置換された200mlのガラス製反応器に、ヘキサン50ml、トリエチルアルミニウム5ミリモル、2,2-ジメトキシ-1,3-ジエチル-1,3-ジアザ-2-シラシクロヘキサン(Ex-2)0.75ミリモル、および実施例1で得られた固体状チタン触媒成分(A-1)をチタン原子換算で0.25ミリモル装入した後、系内の温度を20℃に保ちながら、1.47リットル/時間の量でプロピレンを1時間供給した。この操作により、固体状チタン触媒成分(A-1)1g当り3gのプロピレンが予備重合された予備重合触媒(p-1)を得た。
【0134】
<本重合>
内容積2リットルのオートクレーブに、プロピレン500gと水素7.5リットルとを装入し、系内の温度を60℃に昇温した。その後、トリエチルアルミニウムを1ミリモル、2,2-ジメトキシ-1,3-ジエチル-1,3-ジアザ-2-シラシクロヘキサン(Ex-2)を0.2ミリモルおよび上記で得られた予備重合触媒(p-1)をチタン原子換算で0.004ミリモル添加することにより重合を開始した。系内の温度を70℃に保ちながら1時間重合を行った。次いで、エタノールを添加することにより重合を停止し、未反応のプロピレンをパージしてポリプロピレンを得た。結果を表1に示す。
【0135】
[実施例4]
実施例1において、本重合にて装入した外部供与体をEx-1から2,2-ジメトキシ-1,3-ジエチル-5,5-ジメチル-1,3-ジアザ-2-シラシクロヘキサン(Ex-3)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0136】
[比較例1]
実施例1において、本重合にて装入した外部供与体をEx-1から2,2-ジメトキシ-1,3-ジメチル-1,3-ジアザ-2-シラシクロペンタン(C-1)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0137】
[比較例2]
実施例1において、本重合にて装入した外部供与体をEx-1から2,2-ジメトキシ-1,3-ジイソプロピル-1,3-ジアザ-2-シラシクロヘキサン(C-2)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0138】
[比較例3]
実施例1において、本重合にて装入した外部供与体をEx-1から2,2-ジメトキシ-1,3-ジ(シクロヘキシル)-1,3-ジアザ-2-シラシクロヘキサン(C-3)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0139】
[比較例4]
実施例1において、本重合にて装入した外部供与体をEx-1から2,2-ジメトキシ-1,3-ジメチル-1,3-ジアザ-2-シラシクロヘキサン(C-4)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0140】
[比較例5]
実施例1において、本重合にて装入した外部供与体をEx-1から2,2-ジメトキシ-1,3-ジプロピル-1,3-ジアザ-2-シラシクロヘキサン(C-5)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0141】
[比較例6]
実施例1において、本重合にて装入した外部供与体をEx-1から2,2-ジメトキシ-1,3-ジ(メチルシクロヘキシル)-1,3-ジアザ-2-シラシクロヘキサン(C-6)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0142】
[比較例7]
実施例1において、本重合にて装入した外部供与体をEx-1から2,2-ジメトキシ-1,3-ジフェニル-1,3-ジアザ-2-シラシクロヘキサン(C-7)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0143】
【表1】