(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163908
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】シート包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 83/08 20060101AFI20241115BHJP
A47K 10/16 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B65D83/08 A
A47K10/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095330
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2023079606の分割
【原出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】塚田 里夏
【テーマコード(参考)】
2D135
3E014
【Fターム(参考)】
2D135AA07
2D135AA20
2D135AB03
2D135AB11
2D135CA01
2D135CA02
2D135DA02
2D135DA05
2D135DA11
2D135DA31
3E014LA09
(57)【要約】
【課題】コンパクト化しても、シートの柔らかさが維持され、取出性が低下しにくいシート包装体を提供すること。
【解決手段】複数枚のシートが積層された直方体状のシート積層体と、前記シート積層体を収容する樹脂フィルム製の包装袋と、前記包装袋の天面に形成されて前記シートが引き出される取出口と、を有するシート包装体であって、前記シート包装体は、前記シート積層体が締め付けられた状態で前記包装袋に収容され、前記シートのCD方向の乾燥引張強度が、100cN以上170cN以下であり、前記シートの厚み方向の圧縮仕事量WCが、110gf・cm/cm2以上180gf・cm/cm2以下である、シート包装体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のシートが積層された直方体状のシート積層体と、前記シート積層体を収容する樹脂フィルム製の包装袋と、前記包装袋の天面に形成されて前記シートが引き出される取出口と、を有するシート包装体であって、
前記シート包装体は、前記シート積層体が締め付けられた状態で前記包装袋に収容され、
前記シートのCD方向の乾燥引張強度が、100cN以上170cN以下であり、
前記シートの厚み方向の圧縮仕事量WCが、110gf・cm/cm2以上180gf・cm/cm2以下である、シート包装体。
【請求項2】
前記包装袋を構成する樹脂フィルムの厚みに対する前記圧縮仕事量WCの比が、2.8以上4.5以下である、請求項1に記載のシート包装体。
【請求項3】
前記シート包装体の高さに対する前記圧縮仕事量WCの比が、1.8以上3.4以下である、請求項1に記載のシート包装体。
【請求項4】
前記シート積層体の高さに対する前記圧縮仕事量WCの比が、1.8以上3.2以下である、請求項1に記載のシート包装体。
【請求項5】
前記シートのソフトネス測定装置TSAにより測定したハンドフィール値HFが、60以上である、請求項1に記載のシート包装体。
【請求項6】
前記シートのソフトネス測定装置TSAにより測定した柔らかさピークTS7が、15以下である、請求項1に記載のシート包装体。
【請求項7】
前記シートのソフトネス測定装置TSAにより測定した滑らかさピークTS750が、15以下である、請求項1に記載のシート包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ティシューペーパー等の衛生薄葉紙は、そのウェブが厚紙の箱に収容されたカートンタイプが普及しているが、運搬、保管、廃棄、環境負荷、コスト等の観点から、近年は、樹脂フィルム製の包装袋にウェブが収容されたフィルムパックの需要が高まっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、フィルムパックの個包装体は、さらにフィルム状の包装袋に複数収容された集合包装体として流通する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-177901号公報
【特許文献2】特開2021-54517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運搬効率の向上やフィルム樹脂原料の使用量削減等の観点から、フィルムパックのコンパクト化が求められているが、フィルムパックをコンパクト化すると、シートがつぶれて堅くなったり、取出し時にシートが詰まって取出しにくい場合がある。
【0006】
本発明の課題は、コンパクト化しても、シートの柔らかさが維持され、取出性が低下しにくいシート包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の態様は、複数枚のシートが積層された直方体状のシート積層体と、前記シート積層体を収容する樹脂フィルム製の包装袋と、前記包装袋の天面に形成されて前記シートが引き出される取出口と、を有するシート包装体であって、前記シート包装体は、前記シート積層体が締め付けられた状態で前記包装袋に収容され、前記シートのCD方向の乾燥引張強度が、100cN以上170cN以下であり、前記シートの厚み方向の圧縮仕事量WCが、110gf・cm/cm2以上180gf・cm/cm2以下である、シート包装体を提供する。
【0008】
第1の態様では、シートのCD方向の乾燥引張強度が、100cN以上170cN以下であり、シートの厚み方向の圧縮仕事量WCが、110gf・cm/cm2以上180gf・cm/cm2以下であることで、シート積層体が締め付けられた状態で包装袋に収容されていても、シートがつぶれにくく、取出し時にシートが詰まりにくい。そのため、第1の態様によれば、シート包装体をコンパクト化しても、シートの柔らかさが維持され、シートの取出性の低下を抑制することができる。
【0009】
本発明に係る第2の態様は、前記包装袋を構成する樹脂フィルムの厚みに対する前記圧縮仕事量WCの比が、2.8以上4.5以下である、第1の態様に記載のシート包装体を提供する。
【0010】
第2の態様では、包装袋を構成する樹脂フィルムの厚みに対する圧縮仕事量WCの比を2.8以上4.5以下にすることで、取出し時のシートの詰まりをさらに抑制することができる。そのため、第2の態様によれば、シート包装体をコンパクト化しても、シートの柔らかさを維持しながら、シートの取出性の低下を防ぐことができる。
【0011】
本発明に係る第3の態様は、前記シート包装体の高さに対する前記圧縮仕事量WCの比が、1.8以上3.4以下である、第1または第2の態様に記載のシート包装体を提供する。
【0012】
第3の態様では、シート包装体の高さに対する圧縮仕事量WCの比を1.8以上3.4以下にすることで、取出し時のシートの詰まりをさらに抑制することができる。そのため、第3の態様によれば、シート包装体をコンパクト化しても、シートの柔らかさを維持しながら、シートの取出性の低下を防ぐことができる。
【0013】
本発明に係る第4の態様は、前記シート積層体の高さに対する前記圧縮仕事量WCの比が、1.8以上3.2以下である、第1乃至第3の態様のいずれか一つに記載のシート包装体を提供する。
【0014】
第4の態様では、シート積層体の高さに対する圧縮仕事量WCの比を1.8以上3.2以下にすることで、取出し時のシートの詰まりをさらに抑制することができる。そのため、第3の態様によれば、シート包装体をコンパクト化しても、シートの柔らかさを維持しながら、シートの取出性の低下を防ぐことができる。
【0015】
本発明に係る第5の態様は、前記シートのソフトネス測定装置TSAにより測定したハンドフィール値HFが、60以上である、第1乃至第4の態様のいずれか一つに記載のシート包装体を提供する。
【0016】
第5の態様では、シートのソフトネス測定装置TSAにより測定したハンドフィール値HFが60以上であることで、シート包装体をコンパクト化しても、シートの手触り感を維持することができる。
【0017】
本発明に係る第6の態様は、前記シートのソフトネス測定装置TSAにより測定した柔らかさピークTS7が、15以下である、第1乃至第5の態様のいずれか一つに記載のシート包装体を提供する。
【0018】
第6の態様では、シートのソフトネス測定装置TSAにより測定した柔らかさピークTS7が15以下であることで、シート包装体をコンパクト化しても、シートの柔らかさを維持することができる。
【0019】
本発明に係る第7の態様は、前記シートのソフトネス測定装置TSAにより測定した滑らかさピークTS750が、15以下である、第1乃至第6の態様のいずれか一項に記載のシート包装体を提供する。
【0020】
第7の態様では、シートのソフトネス測定装置TSAにより測定した滑らかさピークTS750が15以下であることで、シート包装体をコンパクト化しても、シートの滑らかさを維持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、コンパクト化しても、シートの柔らかさが維持され、取出性が低下しにくいシート包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】シート包装体におけるシートの圧縮仕事量を測定する態様を示す図である。
【
図2】シート包装体に収容されたシート積層体を示す図である。
【
図4】シート包装体におけるシートの取出し抵抗値を測定する態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、各図面における各部材の縮尺は、実際とは異なる場合がある。
【0024】
本明細書では、図の方向を3軸方向(X方向、Y方向、Z方向)の3次元直交座標系を用いて説明する。各図において、左右方向(シート包装体またはシート集合包装体の長手方向)をX方向とし、前後方向(シート包装体またはシート集合包装体の短手方向)をY方向とし、上下方向(シート包装体またはシート集合包装体の高さ方向)をZ方向とする。
【0025】
また、本明細書において、各方向には、実施形態の作用、効果を損なわない程度のずれが許容される。また、直交には、略直交が含まれてもよい。
【0026】
<シート包装体>
本実施形態に係るシート包装体100は、シート積層体SL、包装袋10を有する(
図1、
図2)。本実施形態では、シート積層体SLを構成するシートSの積層方向が高さ方向(Z方向)となるようにシート積層体SLが包装袋10に収容される。なお、シート包装体100は、本実施形態に係るシート包装体の一例である。
【0027】
シート積層体SLは、複数枚(または複数組)のシートSが積層されたものである。シート積層体SLの形状は、直方体状である。シート積層体SLは、包装袋10の天面11に形成される取出口20(OP)を通してシートSが1枚ずつ(または1組ずつ)引き出せるようになっている。
【0028】
シートの材質は、特に限定されず、例えば、紙、不織布又は布等であり、好ましくは薄葉紙である。シートが薄葉紙の場合、パルプ組成は、薄葉紙における公知の組成を用いることができる。パルプの配合割合は、例えば、50質量%以上にすることができ、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%である。
【0029】
また、シートの坪量は、特に限定されないが、プライ数に応じて、紙の場合は、5g/m2以上80g/m2以下であり、好ましくは8g/m2以上50g/m2以下、より好ましくは10g/m2以上14g/m2以下である。また、不織布の場合は、20g/m2以上100g/m2以下のものが望ましい。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)の規定に準拠して測定される。
【0030】
また、シートの厚みは、特に限定されず、JIS P 8111(1998)の環境下で測定された紙厚を採用することができる。例えば、シートが薄葉紙の場合、薄葉紙の紙厚は、1プライ(2プライの場合は2プライ)あたり、40μm以上500μm以下であり、好ましくは70μm以上250μm以下、より好ましくは110μm以上200μm以下である。
【0031】
シートSにおけるMD方向の乾燥引張強度は、任意であるが、好ましくは100cN以上600cN以下であり、より好ましくは200cN以上500cN以下、さらに好ましくは270cN以上470cN以下である。ここで、MD方向は、ティシューペーパーの製造時における繊維の流れ方向(または縦方向)を示す。MD方向の乾燥引張強度は、ティシューペーパーが乾燥状態でMD方向に引っ張られたときの強度を示す。
【0032】
シートSにおけるCD方向の乾燥引張強度は、100cN以上170cN以下であり、好ましくは105cN以上165cN以下、より好ましくは110cN以上155cN以下である。ここで、CD方向は、ティシューペーパーの製造時における繊維の流れ方向と直交する方向(または横方向)を示す。CD方向の乾燥引張強度は、ティシューペーパーが乾燥状態でCD方向に引っ張られたときの強度を示す。
【0033】
シート包装体100から取り出した後のシートSは、ソフトネス測定装置TSAにより測定したハンドフィール値HF(以下、HF値という)が、好ましくは60以上、より好ましくは65以上、さらに好ましくは70以上である。なお、HF値の上限は、特に制限されないが、少なく見積もっても100である。
【0034】
ここで、ソフトネス測定装置TSA(以下、TSAという)は、Emtec Electronic社製のティシューソフトネス測定装置(TSA:Tissue Softness Analyzer)を示す。TSAは、ティシュー、生地、レザーなどの平らで柔らかい材料の性質を測る装置である。
【0035】
また、HF値は、TSAで測定される、柔らかさ、滑らかさ、剛性を示す3つのパラメータから算出される。HF値の算出には、Emtec Electronic社の標準アルゴリズムであるFacial IIIが用いられる。本実施形態では、HF値の値が高いほど、ティシューペーパーの手触り感がよいと感じる傾向を示す。
【0036】
また、シート包装体100から取り出した後のシートSは、TSAにより測定した柔らかさピークTS7が、好ましくは15以下、より好ましくは14.5以下、さらに好ましくは14以下である。なお、ピークTS7の下限は、特に制限されないが、多く見積もっても5以上である。
【0037】
ここで、柔らかさピークTS7(以下、TS7という)は、TSAで測定される柔らかさのパラメータを示す。本実施形態では、TS7の値が低いほど、シートSが柔らかいと感じる傾向を示す。なお、TS7は、上述のハンドフィール値HF(HF値)の計算に用いられる。
【0038】
さらに、シート包装体100から取り出した後のシートSは、TSAにより測定した滑らかさピークTS750が、好ましくは15以下、より好ましくは14以下、さらに好ましくは13以下である。なお、ピークTS750の下限は、特に制限されないが、多く見積もっても5以上である。
【0039】
ここで、滑らかさピークTS750(以下、TS750という)は、TSAで測定される滑らかさのパラメータを示す。本実施形態では、TS750の値が低いほど、シートSが滑らかに感じる傾向を示す。なお、TS750は、上述のTS7とともにハンドフィール値HFの計算に用いられる。
【0040】
なお、シート積層体SLは、シートSを1枚または1組ずつ引き出す観点から、各シートが折り込まれた状態で互い違いに積層されたもの(いわゆるポップアップ式のシート積層体SL)であることが好ましい。また、シート積層体SLの形態は、ポップアップ式に引き出せるものに限定されず、複数枚(または複数組)のシートが単に積層されたもの、各シートが折り畳まれた状態で積層されたものでもよい。
【0041】
また、シート積層体SLの寸法は、シート包装体100の長手方向(X方向)の長さを140mm以上230mm以下、シート包装体100の長手方向(X方向)に直交する短手方向または奥行方向(Y方向)の長さを80mm以上120mm以下、高さ方向または厚み方向(Z方向)の厚みを30mm以上100mm以下とすることができる。また、シート積層体SLの容積は、800cm3以上1200cm3以下とすることができる。
【0042】
シート積層体SLを構成するシートの態様は、特に限定されず、例えば、ティシューペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー、ペーパータオル等の衛生薄葉紙に適用可能である。なお、ティシューペーパー、ペーパータオル等のシートには、非保湿タイプのシートに限られず、保湿タイプのシート(ローションティシュー等の保湿成分または保湿剤を含有するシート)も含まれる。また、シートの用途は、特に限定されず、産業用、家庭用、携帯用のいずれにも適用できる。これらの中でも、非保湿タイプのティシューペーパーに好適に用いられる。
【0043】
シート積層体SLの製造方法は、特に限定されない。シート積層体SLの製造方法としては、例えば、ロータリー式インターフォルダ、マルチスタンド式インターフォルダ(1つの折り板でシートを折り込みながら交互に重ねてウェブを製造する装置)等を用いて製造することができる。なお、マルチスタンド式インターフォルダは、シートの供給能力が高い。
【0044】
ロータリー式インターフォルダを用いて製造されたシート積層体SLでは、シートが引き出される方向がMD方向(シートを構成する繊維の流れ方向)となるようにシートが積層される。すなわち、シート包装体100の取出口からシートが引き出される場合のシートの移動方向はMD方向となる。また、シート包装体100内のシート積層体SLの状態においてもシートの移動方向はMD方向となる。
【0045】
また、マルチスタンド式インターフォルダを用いて製造されたシート積層体SLでは、シートが引き出される方向がCD方向(MD方向と直交する方向)となるようにシートが積層される。すなわち、シート包装体100の取出口からシートが引き出される場合のシートの移動方向はCD方向となる。また、シート包装体100内のシート積層体SLの状態においてもシートの移動方向はCD方向となる。
【0046】
なお、マルチスタンド式インターフォルダで積層されたシート積層体SLは、シート積層体SLが直方体状の場合は、シート積層体SLの一方の短側面LSから長手方向(X方向)に見た一対の長側面LLが不揃いとなりやすい(シートの折り目が積層方向(Z方向)にずれやすい)(
図2)。一方、マルチスタンド式インターフォルダは、シートの供給能力が高いため、シート積層体、該シート積層体を収容するシート包装体、および複数のシート包装体を収容するシート集合包装体の生産性を向上させることができる。
【0047】
また、ロータリー式インターフォルダで積層されたシート積層体は、シート積層体が直方体状の場合は、シート積層体の一方の短側面LSから長手方向(X方向)に見た一対の長側面LLが揃いやすい(シートの折り目が積層方向にずれにくい)(
図2)。
【0048】
包装袋10は、シート積層体SLを収容する。
【0049】
包装袋10は、シート積層体SLが収容された状態で、天面11、底面12、正面13、背面14、側面15、側面16を有する。包装袋10では、天面11と底面12が上下方向(Z方向)に対向し、正面13と背面14が前後方向(Y方向)に対向し、側面15と側面16が左右方向(X方向)に対向する。側面15および側面16は、天面11、底面12、正面13、および背面14のいずれにも連続する(
図1参照)。
【0050】
包装袋10に収容されたシート積層体SLは、シート積層体SLの天面LT、底面LB、一対の長側面LL、一対の短側面LSが、包装袋10の天面11、底面12、正面13、背面14、側面15、側面16にそれぞれ対面する。
【0051】
包装袋10の天面11には、取出口20が設けられている。取出口20は、シートが引き出せるようになっている。取出口の形態は、開口OPで構成される(
図4)。取出口20を構成する開口OPは、ミシン目(断続的な切込み)Mを破ることで構成してもよい(
図3)。
【0052】
取出口20を構成する開口OPの形状は、特に限定されず、平面視で直線、細長い長方形、楕円、瓢箪形状、ダンベル形状等である。
【0053】
取出口20(開口OP)の長さ(X方向の長さ)は、特に限定されないが、好ましくは80mm以上140mm以下であり、より好ましくは90mm以上130mm以下、さらに好ましくは100mm以上120mm以下である。
【0054】
包装袋10の天面11の長さ(X方向の長さ)に対する取出口(開口OP)の長さ(X方向の長さ)の比は、特に限定されないが、好ましくは30%以上90%以下であり、より好ましくは40%以上80%以下、さらに好ましくは50%以上70%以下である。
【0055】
取出口20(開口OP)の幅(Y方向の長さ)は、特に限定されないが、好ましくは5mm以上30mm以下であり、より好ましくは10mm以上25mm以下、さらに好ましくは15mm以上20mm以下である。
【0056】
包装袋10の天面11の幅(Y方向の長さ)に対する取出口(開口OP)の幅(Y方向の長さ)の比は、特に限定されないが、好ましくは5%以上45%以下であり、より好ましくは10%以上35%以下、さらに好ましくは15%以上30%以下である。
【0057】
包装袋10は、樹脂フィルム製である。包装袋10を構成する樹脂フィルムは、可撓性である。樹脂フィルムに用いられる樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(PA)等の樹脂を用いることができる。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等を用いることができる。
【0058】
なお、これらの中でも、柔軟で取扱い性に優れ、ヒートシールした場合のシール性も高いこと、安価であること等の点で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が好ましい。また、無臭であり、耐水性・耐薬品性に優れ、低コストで大量生産が可能である点で、ポリエチレンが好ましい。また、堅牢であり、成形しやすく、印刷時の発色がよく、また光沢を付与できること等の点で、ポリプロピレンが好ましい。
【0059】
なお、包装袋10を形成する材質には、生分解性材料(ポリ乳酸などの生分解性プラスチック等)、バイオマス材料(バイオマスフィルム等の再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの)を用いることができる。
【0060】
包装袋10を形成する樹脂フィルムの形態は、特に限定されず、上述の樹脂が単層で形成された単層フィルム、上述の樹脂を積層したラミネートフィルム、上述の樹脂とパルプ紙または不織布とを貼合またはラミネートしたフィルム、または上述の2種類以上の樹脂の混合物で形成された混合フィルムであってもよい。
【0061】
包装袋10を形成する樹脂フィルムの厚みは、特に限定されず、好ましくは20μm以上100μm以下、より好ましくは25μm以上70μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上50μm以下である。樹脂フィルムの厚みを20μm以上とすることでシートが収容される包装袋10としての十分な強度を確保することができ、100μm以下とすることで包装袋10の柔らかさ及び軽量性を確保できるとともにコストが抑えられる。
【0062】
また、包装袋10の包装態様は、特に限定されない。本実施形態では、例えば、筒状の樹脂フィルムの両端部を折り畳んでシール(封止)する包装(キャラメル包装)、ガセット状に折り込まれた筒状の樹脂フィルムの両端部またはいずれか一方の端部をシール(封止)する包装(ピロー包装)、熱収縮性の樹脂フィルムを加熱して被包装体に密着させる包装(シュリンク包装)、またはこれらを組み合わせた包装等を採用することができる。これらの中でも、シート積層体SLに対するコンパクションの制御が容易な点で、キャラメル包装が好ましい(
図1参照)。
【0063】
キャラメル包装では、シート積層体SLを樹脂フィルムで長手方向(X方向)の両端が開口する筒型に巻き込むようにして包み、その巻き込み方向に重畳する部分を融着処理や接着剤によって接着する。次に、筒型の樹脂フィルムの長手方向(X方向)の両端を、シート積層体SLの端面側に折り込み、その際に形成される略三角形又は略台形の片の少なくとも各先端縁部同士を重ねて融着処理や接着剤によって接着して、筒型の開口を封止する。本実施形態では、筒状の樹脂フィルムの両端部(包装袋10の側面15、16)が折り畳まれてシールされている(
図1参照)。
【0064】
シート包装体100では、シート積層体SLが締め付けられた状態で包装袋10に収容されている。具体的には、シート包装体100の容積が、包装袋10に収容される前のシート積層体SLの容積に対して小さくとなるように、シート積層体SLにコンパクション(圧縮)がかけられている。
【0065】
このときのコンパクションは、シートSの厚み方向(Z方向)の圧縮仕事量WCが、110gf・cm/cm2以上180gf・cm/cm2以下、好ましくは115gf・cm/cm2以上170gf・cm/cm2以下、より好ましくは120gf・cm/cm2以上160gf・cm/cm2以下となるように調整される。
【0066】
ここで、シートSの厚み方向(Z方向)の圧縮仕事量WCは、圧縮試験器(カトーテック社製、KES-G5)を用いて、シート包装体100をシート積層体SLの積層方向が地面と垂直になるように置いた状態で、シート包装体100の上面に端子T(接触面積2.0cm
2)を接触させ(
図1)、荷重500gf/cm
2の荷重したときの圧縮仕事量WCを示す。
【0067】
また、コンパクションは、包装袋10を構成する樹脂フィルムの厚みに対する圧縮仕事量WCの比(以下、「圧縮仕事量WC/樹脂フィルムの厚み」という)が、好ましくは2.8以上4.5以下、より好ましくは2.9以上4.2以下、さらに好ましくは3.0以上4.0以下となるように調整される。
【0068】
また、コンパクションは、シート包装体100の高さH1(シート積層体SLが収容された状態の包装袋10の高さ)(Z方向)に対する圧縮仕事量WCの比(以下、「圧縮仕事量WC/シート包装体の高さ」という)が、好ましくは1.8以上3.4以下、より好ましくは1.9以上3.3以下、さらに好ましくは2.0以上3.2以下となるように調整される。
【0069】
さらに、コンパクションは、シート積層体の高さH2に対する圧縮仕事量WCの比(以下、「圧縮仕事量WC/シート積層体の高さ」という)が、好ましくは1.8以上3.2以下、より好ましくは1.9以上3.1以下、さらに好ましくは2.0以上3.0以下となるように調整される。
【0070】
本実施形態のシート包装体100では、シートSのCD方向の乾燥引張強度が、100cN以上170cN以下であり、シートSの厚み方向(Z方向)の圧縮仕事量WCが、110gf・cm/cm2以上180gf・cm/cm2以下であることで、シート積層体SLが締め付けられた状態で包装袋10に収容されていても、シートSがつぶれにくく、取出し時にシートSが詰まりにくい。そのため、本実施形態では、シート包装体100をコンパクト化しても、シートSの柔らかさが維持され、シートSの取出性の低下を抑制することができる。
【0071】
本実施形態のシート包装体100では、「圧縮仕事量WC/樹脂フィルムの厚み」を2.8以上4.5以下にすることで、取出し時のシートSの詰まりをさらに抑制することができる。そのため、本実施形態では、シート包装体100をコンパクト化しても、シートSの柔らかさを維持しながら、シートSの取出性の低下を抑制することができる。
【0072】
本実施形態のシート包装体100では、「圧縮仕事量WC/シート包装体の高さ」を1.8以上3.4以下にすることで、取出し時のシートSの詰まりをさらに抑制することができる。そのため、本実施形態では、シート包装体100をコンパクト化しても、シートSの柔らかさを維持しながら、シートSの取出性の低下を抑制することができる。
【0073】
本実施形態のシート包装体100では、「圧縮仕事量WC/シート積層体の高さ」を1.8以上3.2以下にすることで、取出し時のシートSの詰まりをさらに抑制することができる。そのため、本実施形態では、シート包装体100をコンパクト化しても、シートSの柔らかさを維持しながら、シートSの取出性の低下を抑制することができる。
【0074】
本実施形態のシート包装体100では、シートSのソフトネス測定装置TSAにより測定したハンドフィール値HFが60以上であることで、シート包装体100をコンパクト化しても、シートSの手触り感を維持することができる。
【0075】
本実施形態のシート包装体100では、シートSのソフトネス測定装置TSAにより測定した柔らかさピークTS7が15以下であることで、シート包装体100をコンパクト化しても、シートSの柔らかさを維持することができる。
【0076】
本実施形態のシート包装体100では、シートSのソフトネス測定装置TSAにより測定した滑らかさピークTS750が15以下であることで、シート包装体100をコンパクト化しても、シートSの滑らかさを維持することができる。
【実施例0077】
以下、本発明について、さらに実施例を用いて具体的に説明する。実施例、比較例の評価は、以下の条件で行った。実施例1~4、比較例1~4の条件および評価結果は、下記および表1に示す。
【0078】
[シート包装体(個包装体)]
シート積層体SL(ウェブ)として非保湿タイプのティシューペーパーが交互に折り畳まれてポップアップ式に1組ずつ引き出せるように積層されたウェブ(シート積層体)を、厚み約40μmのポリエチレンのラミネートフィルムで形成され、天面11に取出口(ダンベル形状のミシン目)が形成された個包装フィルム(包装袋)でキャラメル包装した個包装体(シート包装体)を用意した(
図1~
図3参照)。
【0079】
[乾燥引張強度]
個包装体に収容するティシューペーパーの乾燥引張強度を、JIS P 8113(2006)の規定に準拠して測定した。ティシューペーパーは縦方向(MD方向)、横方向(CD方向)ともに幅25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いた。試験機は、引張圧縮試験機(ミネベア社製、TG-200N)を用いた。測定は、つかみ間隔を100mmに設定して、試験片の両端を試験機のつかみに締め付け、ティシューペーパーの紙片を上下方向に引張り荷重をかけ、ティシューペーパーが破断したときの指示値(デジタル値)を読み取る手順で行った。引張速度は縦方向:100mm/min、
横方向:50mm/minとした。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の乾燥引張強度とした。また、縦横比は、横方向に対する縦方向の引張強度の比として算出した。
【0080】
[圧縮仕事量WC]
圧縮試験器(カトーテック社製、KES-G5)を用いて、以下の条件で、シート包装体100をシート積層体SLの積層方向が地面と垂直になるように置いた状態で、シート包装体100の上面に端子T(接触面積2.0cm
2)を接触させ(
図1)、荷重500gf/cm
2の荷重したときの圧縮仕事量WCを測定した。
・試料: 布・フィルム等
・SENS:10
・力計の種類:1kg
・SPEED RANGE:0.1cm/s
・DEF感度:20mm/10V
・加圧面積:2cm
2
・取込み間隔:0.1sec
・測定荷重:10
・上限荷重:500gf/cm
2
【0081】
[圧縮仕事量WC/樹脂フィルムの厚み]
得られた圧縮仕事量WCから、包装袋を構成する樹脂フィルム(個包装フィルム)の厚みに対する圧縮仕事量WCの比(圧縮仕事量WC/樹脂フィルムの厚み)を算出した。
【0082】
[圧縮仕事量WC/シート包装体の高さ]
得られた圧縮仕事量WCから、シート包装体(個包装体)の高さ(シート積層体が収容された状態の包装袋の高さ)に対する圧縮仕事量WCの比(圧縮仕事量WC/シート包装体の高さ)を算出した。
【0083】
[圧縮仕事量WC/シート積層体の高さ]
得られた圧縮仕事量WCから、シート積層体(ウェブ)の高さに対する圧縮仕事量WCの比(圧縮仕事量WC/シート積層体の高さ)を算出した。
【0084】
[取出し抵抗(取出性)]
精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフAG-X)に個包装体(シート包装体)をセットし、個包装体の下部は動かないように固定し、シートを垂直方向(P方向)へ500mm/minの速度で引き上げ、個包装体からシートが引き出されるまでにかかる抵抗値の最大値(取出し抵抗値)を計測した(
図4)。取出し抵抗値は、2~10組目まで10回測定した平均値(取出し抵抗F1値)および2~5組目まで10回測定した平均値(取出し抵抗F2値)として算出した。取出性の評価は、取出し抵抗F1値が2.7未満、取出し抵抗F2値が2.5未満の場合は取出性が良好と評価し、取出し抵抗F1値が2.7以上、取出し抵抗F2値が2.5以上の場合は取出性が不良と評価した。
【0085】
[TSA測定/HF値]
ティシューソフトネス測定装置(Emtec Electronic社製、TSA(Tissue Softness Analyzer))を用いて、シート包装体100から取り出した後のシートSについて、ハンドフィール値HF(HF値)を測定した。TSA測定は、恒温恒湿環境下(温度23℃、湿度50%)で行った。HF値が60以上の場合は、シートSの手触り感が良好と評価し、60未満の場合はシートSの手触り感が不良と評価した。
【0086】
[TSA測定/柔らかさピークTS7]
ティシューソフトネス測定装置(Emtec Electronic社製、TSA(Tissue Softness Analyzer))を用いて、シート包装体100から取り出した後のシートSについて、柔らかさピークTS7を測定した。TSA測定は、恒温恒湿環境下(温度23℃、湿度50%)で行った。柔らかさピークTS7が15以下の場合は、シートSが柔らかいと評価し、15を超える場合はシートSが堅いと評価した。
【0087】
[TSA測定/滑らかさピークTS750]
ティシューソフトネス測定装置(Emtec Electronic社製、TSA(Tissue Softness Analyzer))を用いて、シート包装体100から取り出した後のシートSについて、滑らかさピークTS750を測定した。TSA測定は、恒温恒湿環境下(温度23℃、湿度50%)で行った。滑らかさピークTS750が15以下の場合は、シートSが滑らかと評価し、15を超える場合はシートSが粗い(ざらざらする)と評価した。
【0088】
【0089】
表1より、シートのCD方向の乾燥引張強度が100cN以上170cN以下で、シートの厚み方向の圧縮仕事量WCが110gf・cm/cm2以上180gf・cm/cm2以下のシート包装体は、コンパクト化されていても、シートの柔らかさが維持され、取出性が低下しにくいことが判った(実施例1~4)
【0090】
一方、シートのCD方向の乾燥引張強度が100cN以上170cN以下の条件およびシートの厚み方向の圧縮仕事量WCが110gf・cm/cm2以上180gf・cm/cm2以下の条件の少なくとも1つの条件を満たさないシート包装体は、コンパクト化されると、シートが堅くなったり、シートの取出性が低下することが判った(比較例1~4)。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。