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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016394
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】インキ瓶用アダプタ
(51)【国際特許分類】
   B43L 25/00 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
B43L25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118467
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】守屋 知巳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 光樹
(57)【要約】
【課題】ペン先の小さなつけペン等の筆記具を使用する場合であっても、ペン軸が汚れることを抑制しつつ、ペン先に円滑にインキをつけることができるインキ瓶用アダプタを提供する。
【解決手段】本発明のインキ瓶用アダプタ9は、蓋72が取り付けられる略円筒形状の口部71を有するインキ瓶7の内部に配置され、インキを収容するインキ収容空間31と、インキ収容空間31へとインキを導入する開口32と、を有する収容部3と、開口31が形成された底壁21と、底壁21の周縁から立設された側周壁22と、底壁21及び側周壁22に囲まれたインキ導入空間23と、側周壁22及び/又は底壁21に形成されたインキ導入空間23に連通する窓部24a、24bと、を有する有底略円筒形状の導入部2と、インキ瓶7の内部に配置されたときに、インキ収容空間31が口部71の内部に位置するように、収容部3を支持する支持部1と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋が取り付けられる略円筒形状の口部を有するインキ瓶の内部に配置されるインキ瓶用アダプタであって、
インキを収容するインキ収容空間と、該インキ収容空間へとインキを導入する開口と、を有する収容部と、
前記収容部の前記開口が形成された底壁と、前記底壁の周縁から立設された側周壁と、前記底壁及び前記側周壁に囲まれたインキ導入空間と、前記側周壁及び/又は前記底壁に形成された前記インキ導入空間に連通する窓部と、を有する有底略円筒形状の導入部と、
前記インキ瓶の内部に配置されたときに、前記インキ収容空間が前記口部の内部に位置するように、前記収容部を支持する支持部と、を備える、インキ瓶用アダプタ。
【請求項2】
前記窓部が、前記側周壁から前記底壁にかけて延在するように形成されている、請求項1に記載のインキ瓶用アダプタ。
【請求項3】
前記窓部が対向するように二つ形成されている、請求項1又は2に記載のインキ瓶用アダプタ。
【請求項4】
前記インキ収容空間がすり鉢状に形成されている、請求項1に記載のインキ瓶用アダプタ。
【請求項5】
前記インキ収容空間の内壁面に、前記開口から前記インキ収容空間の底部に向かって延在する線状突起部が形成されている、請求項1に記載のインキ瓶用アダプタ。
【請求項6】
前記支持部が、
前記インキ瓶の内部に配置されたときに前記インキ瓶の底面に当接する脚部と、
一端が前記脚部に接続され、他端が前記導入部に接続されている柱状部と、を有する、請求項1に記載のインキ瓶用アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ瓶の内部に配置して用いられるインキ瓶用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
万年筆等の筆記具用インキを収容したインキ瓶は、一般に硬質のガラスで形成されている。例えば万年筆に筆記具用インキを補給するには、万年筆のペン先部をインキ瓶の口から瓶内に挿し込み、筆記具用インキを吸入して補給するが、インキ瓶内のインキが少なくなると、万年筆でうまく吸入することができず、利用できないインキが残ってしまうという問題や、万年筆のペン先を瓶の底面や内壁面に当ててしまい、ペン先を破損してしまうという問題がある。
【0003】
そのような問題を解決するために、インキ瓶の内部にアダプタを配置したものが知られている。例えば、特許文献1には、万年筆のペン先が差し込まれるペン先差し込み部を有し、瓶内に残り少なくなったインキをペン先差し込み部に導いて万年筆で吸引可能にするアダプタ(インキリザーバー)が開示されている。特許文献1に開示されているようなアダプタは、一般的に万年筆の大きめのペン先からペン軸の首部(首軸)付近までをアダプタのインキ溜めに溜められたインキに漬け込み、インキを吸入できるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-037085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、筆記具の一つとして、ペン軸の先端部に金属製のペン先やガラス製のペン先を備え、そのペン先をインキ瓶のインキにつけて使用する、つけペンと呼ばれるものがある。つけペンのような小さなペン先を有する筆記具を特許文献1に開示されているようなアダプタに挿し込み、そのペン先をインキ溜めの底に当てようとすると、筆記具のペン軸をインキ瓶の口から奥まで挿し込む必要があるが、ペン軸がインキ瓶の口内面に付着したインキや、インキ溜めに溜められたインキに接触して汚れてしまう。
【0006】
一方、ペン軸が汚れないように、ペン先をインキ溜めの底に当たるまで挿し込まずに使用することもできるが、その場合、ペン先にインキをつける過程において、ペン先を浮かせた状態で静止させる必要が出てくる。しかしながら、このようにペン先にインキをつける動作は筆記具の使用者にとって不便であるし、ペン先にインキがついたかどうかをインキ瓶の外側からは視認しにくいという問題もある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、ペン先の小さなつけペン等の筆記具を使用する場合であっても、ペン軸が汚れることを抑制しつつ、ペン先に円滑にインキをつけることができるインキ瓶用アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、蓋が取り付けられる略円筒形状の口部を有するインキ瓶の内部に配置されるインキ瓶用アダプタであって、インキを収容するインキ収容空間と、該インキ収容空間へとインキを導入する開口と、を有する収容部と、前記収容部の前記開口が形成された底壁と、前記底壁の周縁から立設された側周壁と、前記底壁及び前記側周壁に囲まれたインキ導入空間と、前記側周壁及び/又は前記底壁に形成された前記インキ導入空間に連通する窓部と、を有する有底略円筒形状の導入部と、前記インキ瓶の内部に配置されたときに、前記インキ収容空間が前記口部の内部に位置するように、前記収容部を支持する支持部と、を備える、インキ瓶用アダプタを提供する(発明1)。
【0009】
かかる発明(発明1)によれば、インキ瓶用アダプタがインキ瓶の内部に配置された状態で、インキ瓶の蓋を閉めてインキ瓶をひっくり返すと、インキ瓶内のインキが導入部のインキ導入空間へと導入され、この状態でインキ瓶を元に戻すと収容部の開口からインキ収容空間へとインキが流れ込んで収容される。そして、このインキを収容したインキ収容空間がインキ瓶の口部の内部に位置するように、支持部が収容部を支持するため、ペン先がインキ収容空間の底に当たるまで筆記具をインキ瓶に挿し込もうとしても、筆記具のペン軸をインキ瓶の口から奥まで挿し込む必要はないため、ペン軸が汚れることが抑制される。また、ペン軸を汚すことなく、ペン先がインキ収容空間の底に当たるまで筆記具をインキ瓶に挿し込むことができれば、ペン先にインキをつける過程において、ペン先を浮かせた状態で静止させる必要もなくなり、また、ペン先にインキがついたかどうかをインキ瓶の外側から視認する必要もなくなるため、ペン先に円滑にインキをつけることができるようになる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記窓部が、前記側周壁の端縁から前記底壁にかけて延在するように形成されていることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1、2)においては、前記窓部が対向するように二つ形成されていることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記インキ収容空間がすり鉢状に形成されていてもよい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1)においては、前記インキ収容空間の内壁面に、前記開口から前記インキ収容空間の底部に向かって延在する線状突起部が形成されていてもよい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1)においては、前記支持部が、前記インキ瓶の内部に配置されたときに前記インキ瓶の底面に当接する脚部と、一端が前記脚部に接続され、他端が前記導入部に接続されている柱状部と、を有していてもよい(発明6)。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ペン先の小さなつけペン等の筆記具を使用する場合であっても、ペン軸が汚れることを抑制しつつ、ペン先に円滑にインキをつけることができるインキ瓶用アダプタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るインキ瓶用アダプタの全体構造を示す説明図である。
図2】同実施形態に係るインキ瓶用アダプタの内部構造を示す説明図である。
図3】同実施形態に係るインキ瓶用アダプタをインキ瓶に取り付けた状態を示す説明図である。
図4】同実施形態に係るインキ瓶用アダプタの使用状態を示す説明図である。
図5】インキ瓶用アダプタ内部の形状の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態にのみ限定されるものではなく、実施形態はあくまでも本発明の技術的特徴を説明するために記載された例示にすぎない。また、各図面に示す形状や寸法はあくまでも本発明の内容の理解を容易にするために示したものであり、実際の形状や寸法を正しく反映したものではない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るインキ瓶用アダプタ9の全体構造を示す説明図である。また、図2はインキ瓶用アダプタ9の内部構造を示す説明図であり、(a)はインキ瓶用アダプタ9を上方からみた平面図、(b)は(a)の平面図におけるA-A断面図、(c)は(a)の平面図におけるB-B断面図である。インキ瓶用アダプタ9は、図3に示すように、蓋72が取り付けられる略円筒形状の口部71を有するインキ瓶7の内部に配置される。インキ瓶用アダプタ9は、図4に示すように、先端にペン先81を有する首部82を備えたつけペン(筆記具)8が挿し込まれるものであり、つけペン8のペン先81を保護しつつ、インキ瓶7内のインキを容易につけペン8のペン先81につけるために用いられるものである。
【0019】
インキ瓶用アダプタ9は、図1及び図2に示すように、インキを収容するインキ収容空間31を有する収容部3が内部に形成された柱状部11と、柱状部11の一端(図中下側の端、すなわち下端)に連続して設けられた円板形状の脚部12とを有する支持部1と、柱状部11の他端(図中上側の端、すなわち上端)に連続して設けられた有底円筒形状の導入部2とを備えている。収容部3は、支持部1の柱状部11の上端部からその内部に向かって穿設されたインキ収容空間31を有し、また、インキ収容空間31の上端面はインキを導入するための略正円形状の開口32となっている。
【0020】
支持部1は、インキ瓶用アダプタ9がインキ瓶7の内部に配置されたときに、インキ収容空間31がインキ瓶7の口部71の内部に位置するように、収容部3を支持するためのものである。本実施形態においては、支持部1を、インキ瓶用アダプタ9がインキ瓶7の内部に配置されたときにインキ瓶7の底面73に当接する脚部12と、脚部12から上方(すなわち、インキ瓶7内において底面73から口部71に向かう方向)に向かって立設されている柱状部11とを備えた構造とし、柱状部11の上端部の内部に収容部3を形成することにより、インキ収容空間31がインキ瓶7の口部71の内部に位置するように、支持部1が収容部3を支持することができるようになっている。
【0021】
支持部1の柱状部11は、インキ瓶用アダプタ9がインキ瓶7の内部に配置されたときに、収容部3のインキ収容空間31をインキ瓶7の口部71の内部に位置させることができる構造であって、一端が脚部12に接続され、他端が導入部2に接続されている構造でさえあればよく、例えば角柱形状であってもよいし、円柱形状や楕円柱形状であってもよいし、その他の異形の断面形状を有する柱状体や、断面形状が変化する柱状体であってもよい。また、柱状部11は、図2に示すように中実形状であってもよいし、部分的あるいは全体的に中空形状であってもよい。
【0022】
導入部2は、収容部3の開口32が形成された底壁21と、底壁21の周縁から立設された側周壁22と、底壁21及び側周壁22に囲まれたインキ導入空間23と、側周壁22及び底壁21に形成されたインキ導入空間23に連通する二つの窓部24a、24bと、を有する。底壁21は平面視で略正円形状の外形を有し、側周壁22は略円筒形状の外形を有するものとなっており、導入部2は全体として略有底円筒形状を呈している。
【0023】
導入部2を構成する側周壁22の外径は、インキ瓶7の口部71の内径よりもやや小さく形成されており、これにより、インキ瓶用アダプタ9がインキ瓶7の内部に配置されたときに、導入部2がインキ瓶7の口部71の内部を移動可動ではありながらも、口部71の内部から外れることがない状態を維持することができるようになっている。
【0024】
収容部3は、前述のように、支持部1の柱状部11の上端部に形成されており、柱状部11の上端部からその内部に向かってインキ収容空間31が穿設されている。インキ収容空間31は、開口32から底部33に向かって徐々に断面積が小さくなっていくすり鉢状に形成されている。このようにすり鉢状にインキ収容空間31を形成することにより、インキ収容空間31につけペン8のペン先81が挿し込まれたとき、ペン先81がインキ収容空間31の内壁面及び底面に係合して余計な動きが取れなくなるため、ペン先81が適切に保護される。また、インキ収容空間31をすり鉢状に形成することにより、収容されるインキの量が少なくともインキの自由表面の位置を高くすることができる。
【0025】
本実施形態において、インキ瓶用アダプタ9の支持部1、導入部2及び収容部3は同一の材料で一体に形成されている。その材料は特に限定されるものではなく、例えば、樹脂材料、金属材料、セラミックス材料等を用いることができる。例えば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)等の熱可塑性合成樹脂材料を射出成形することにより、支持部1、導入部2及び収容部3を一体に形成してもよいし、銅やアルミ、ステンレス合金等の金属材料を鋳造や切削加工することによって形成してもよい。また、例えば支持部1、導入部2及び収容部3やそれらの構成要素をそれぞれ別々の部材とし、それらの部材を公知の固着手段(例えば接着剤による接着等)を用いて一つのインキ瓶用アダプタ9に組み立ててもよい。
【0026】
インキ瓶用アダプタ9は、図3及び4に示すようにインキ瓶7に取り付けて用いられる。具体的には、インキ瓶7の蓋72を外してインキ瓶用アダプタ9をインキ瓶7の口部71の上部開口から内部に入れ、インキ瓶用アダプタ9の支持部1の脚部12をインキ瓶7の底面73上に載置し、インキ瓶用アダプタ9の導入部2及び収容部3がインキ瓶7の口部71の内部に位置するように、インキ瓶7の内部に略垂直状態の姿勢で配置される。この状態で蓋72を閉め(図4(a)の状態)、インキ瓶7をひっくり返して蓋72が下側になるようにすると(図4(b)の状態)、インキ瓶7内のインキがインキ瓶用アダプタ9の導入部2の窓部24a、24bからインキ導入空間23に流れ込み、インキ導入空間23にインキが満たされる。この状態では、収容部3のインキ収容空間31には空気が滞留しており、その空気の逃げ場がないため、インキ収容空間31にはインキが入っていかない。その後、インキ瓶7を再度ひっくり返して蓋72が上側になるようにすると、インキ導入空間23に満たされていたインキが、インキ収容空間31に滞留していた空気と入れ替わりながらインキ収容空間31へと移動していき、インキ収容空間31にインキが満たされる。そして、蓋72を外したインキ瓶7の口部71の上部開口からつけペン8のペン先81をインキ瓶用アダプタ9に挿し込み、ペン先81にインキをつけることが可能になる(図4(c)の状態)。
【0027】
そして、インキ瓶用アダプタ9は、インキを収容したインキ収容空間31がインキ瓶7の口部71の内部に位置するように、支持部1が収容部3を支持するため、ペン先81がインキ収容空間31の底部33に当たるまでつけペン8をインキ瓶7に挿し込もうとしても、つけペン8の首部82をインキ瓶7の口部71から奥まで挿し込む必要はないため、首部82やそれよりも上側のペン軸が汚れることが抑制される。また、首部82やそれよりも上側のペン軸を汚すことなく、ペン先81がインキ収容空間31の底部33に当たるまでつけペン8をインキ瓶7に挿し込むことができれば、ペン先81にインキをつける過程において、ペン先81を浮かせた状態で静止させる必要もなくなり、また、ペン先81にインキがついたかどうかをインキ瓶7の外側から視認する必要もなくなるため、ペン先81に円滑にインキをつけることができるようになる。
【0028】
ところで、インキを収容したインキ収容空間31がインキ瓶7の口部71の内部に位置するようなインキ瓶用アダプタ9においては、前述のインキ瓶7をひっくり返してインキ導入空間23にインキを満たし、再びインキ瓶7をひっくり返してインキ収容空間31にインキを移動させる際に、インキ導入空間23に導入されたインキと、インキ収容空間31に滞留している空気との入れ替わりがスムーズに行われないおそれがある。すなわち、従来のインキ瓶用アダプタでは、インキ収容空間の側面に内部の空気が抜けていくための連絡通路となる貫通孔が形成されているが、インキ瓶用アダプタ9の導入部2の側周壁22は、インキ瓶7の口部71の内周面にほぼ接しているため、導入部2の側周壁22に貫通孔を設けただけではうまく空気が抜けていかない可能性がある。
【0029】
そこで、本実施形態のインキ瓶用アダプタ9では、窓部24a、24bを側周壁22から底壁21にかけて延在するように形成することにより、インキ導入空間23に導入されたインキと、インキ収容空間31に滞留している空気との入れ替わりがスムーズに行われる構造を実現している。インキ瓶7をひっくり返してインキ導入空間23にインキを満たした状態(図4(b)の状態)では、導入部2の底壁21がインキ導入空間23の天面になるが、窓部24a、24bをインキ導入空間23の側面である側周壁22からこの底壁21にまで延在させることにより、インキ収容空間31に滞留している空気が窓部24a、24bからスムーズに抜けやすくなる。
【0030】
本実施形態においては、窓部24a、24bが対向するように二つ形成されており、それぞれ側周壁22の端縁から底壁21にかけて延在するように形成されている。具体的には、窓部24a、24bは、側周壁22の一部分を上端から下端まで略矩形状に切除し、さらにその側周壁22の切除された部分から連続して底壁21の一部分を開口32の際まで略矩形状に切除することで形成されている。このように窓部24a、24bが形成されていることにより、底壁21は、平面視で、略正円形状の外形から二つの略矩形状の切り欠きが対向するように切除された形状を呈し、また、側周壁22は、窓部24a、24bを間に挟むように二つの部分に分かれ、その分かれた二つの側周壁22はそれぞれ曲面壁形状を呈するようになっている。
【0031】
なお、窓部24a、24bは必ずしも側周壁22から底壁21にかけて延在するように形成されていなくてもよく、例えば、底壁21にのみ形成されていてもよいし、側周壁22にのみ形成されていてもよい。インキ瓶7との関係次第では、側周壁22の端縁から底壁21にかけて延在するように形成されていなくても、インキ導入空間23に導入されたインキと、インキ収容空間31に滞留している空気との入れ替わりはスムーズに行われる。
【0032】
また、窓部24a、24bの形状は特に制限されるものではないが、できる限り大きく形成することが好ましい。窓部24a、24bを大きく形成できれば、導入部2のインキ導入空間23に導入されたインキが収容部3のインキ収容空間31に流れ込む際に、インキ収容空間31に滞留していた空気が窓部24a、24bからインキ導入空間23へと抜けやすくなる。さらに、窓部24a、24bは必ずしも対向するように二つ形成されていなくてもよく、例えば、所定の間隔を空けて三つ以上の窓部が底壁21及び/又は側周壁22に形成されていてもよい。
【0033】
さらに、本実施形態においては、インキ収容空間31の内壁面に、開口32からインキ収容空間31の底部33に向かって延在するリブ(線状突起部)34が等間隔に6本形成されている。インキ収容空間31の内壁面にリブ34が形成されていると、インキがリブ34に沿ってインキ収容空間31の底部33に向かって流れ込みやすくなり、導入部2から収容部3へのインキの移動が促されるので、導入部2のインキ導入空間23に導入されたインキの、収容部3のインキ収容空間31に滞留している空気との入れ替わりがスムーズに行われる。本実施形態において、リブ34はそれぞれ三角錐形状を有し、直線状に形成されているが、これに限られるものではなく、開口32からインキ収容空間31の底部33に向かう方向にインキの流れを形成するように、線状の突起構造が形成されてさえいればよく、リブ34が曲線状、螺旋状に設けられていてもよい。
【0034】
なお、6つのリブ34は、支持部1、導入部2及び収容部3と同じ材料で、収容部3と一体に形成されているが、これに限られるものではなく、支持部1、導入部2及び収容部3と同じ材料で形成されたリブや異なる材料で形成されたリブを、接着、溶接等の公知の固着手段を用いて収容部3のインキ収容空間31の内壁面に固着させていてもよい。
【0035】
以上説明してきたインキ瓶用アダプタ9によれば、ペン先の小さなつけペン等の筆記具を使用する場合であっても、ペン軸が汚れることを抑制しつつ、ペン先に円滑にインキをつけることができる。また、このようなインキ瓶用アダプタ9を用いることにより、インキ瓶の口部の口径を小さくしても、ペン軸が汚れることなく、筆記具のペン先にインキをつけることができるようになるため、インキ瓶のデザインの自由度を高めることにもつながる。
【0036】
収容部3のインキ収容空間31及び開口32の形状、及び導入部2の窓部24a、24bの形状の変形例を、図5を参照しながら以下に説明する。なお、図5においては、前述のインキ瓶用アダプタ9と同様の構成については同じ符号が用いられており、その説明は省略する。
【0037】
<変形例1>
図5(a)は、変形例1のインキ瓶用アダプタ9Aを上方からみた平面図である。インキ瓶用アダプタ9Aは、インキ瓶用アダプタ9の収容部3の開口32の形状と、導入部2の窓部24a、24bの形状をそれぞれ変更したものである。インキ瓶用アダプタ9Aでは、収容部3の開口32Aを楕円状にすることで底壁21における窓部24Aa、24Abを形成可能なスペースを増やしている。また、窓部24Aa、24Abの形状を略矩形状から略扇形状に変更するとともに、インキ導入空間23の中心方向にまで窓部24Aa、24Abが延在するように形成することで、インキ収容空間31からインキ導入空間23を介して空気が抜けやすくなる。
【0038】
<変形例2>
図5(b)は、変形例2のインキ瓶用アダプタ9Bを上方からみた平面図である。インキ瓶用アダプタ9Bは、インキ瓶用アダプタ9の収容部3の開口32の形状をそのままに、その位置を片方の窓部に向かって(図中左側に向かって)ずらして形成しており、そのずれに合わせて導入部2の窓部24Ba、24Bbの形状をそれぞれ変更したものである。インキ瓶用アダプタ9Bでは、開口32Bがずれた分だけ窓部24Baは小さな略矩形状となり、窓部24Bbは大きな略区形状となっている。インキ瓶7をひっくり返してインキ導入空間23にインキを満たした状態(図4(b)の状態)から再びインキ瓶7をひっくり返すときに、大きな窓部24Bbが上になるようにしながらひっくり返すことで、インキ収容空間31からインキ導入空間23を介して空気が抜けやすくなる。
【0039】
<変形例3>
図5(c)は、変形例3のインキ瓶用アダプタ9Cを上方からみた平面図である。インキ瓶用アダプタ9Cは、インキ瓶用アダプタ9の導入部2の窓部24a、24bの形状及び位置はそのままに、収容部3の開口32の形状を変更したものである。インキ瓶用アダプタ9Cでは、開口32Cに中心方向に向かって張り出した張り出し部321が四つ形成されており、開口32Cが平面視で×字形状になっている。この張り出し部321は、インキ瓶用アダプタ9のインキ収容空間31の内壁面に形成されていたリブ34と同様の効果を奏する。
【0040】
以上、本発明に係るインキ瓶用アダプタについて図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。例えば、本実施形態におけるインキ瓶用アダプタ9は、支持部1が柱状部11と脚部12とを有し、柱状部11の上端部に収容部3を形成することにより、インキ収容空間31がインキ瓶7の口部71の内部に位置するように構成されていたが、支持部1の構造はこのようなものに限定されるものではない。例えば、支持部1の脚部12は、インキ瓶内にインキ瓶用アダプタを安定的に配置させることができるものであれば、円板形状以外の形状であってもよいし、柱状部11のみでインキ瓶内にインキ瓶用アダプタを安定的に配置させることができれば、脚部そのものを設けないようにしてもよい。
【0041】
また、収容部3を支持部1の内部ではなく、導入部2の下側に独立して設け、導入部2の側周壁の外周面に何らかの構造物を設け、当該構造物によって導入部2をインキ瓶7の口部71の内周面に固定することによって、インキ収容空間31がインキ瓶7の口部71の内部に位置するように、収容部3を支持する構造にしてもよい。
【0042】
さらに、インキ収容空間31の形状は、一定のインキ収容量を確保することができさえすれば、すり鉢状に限定されるものではなく、例えば円柱状、多角柱状の空間として形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
9 インキ瓶用アダプタ
1 支持部
11 柱状部
12 脚部
2 導入部
21 底壁
22 側周壁
23 インキ導入空間
3 収容部
31 インキ収容空間
32 開口
33 底部
34 リブ
7 インキ瓶
71 口部
72 蓋
73 底面
8 つけペン
81 ペン先
82 首部
図1
図2
図3
図4
図5