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特開2024-163959光モジュール、光トランシーバ、光の強度の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163959
(43)【公開日】2024-11-25
(54)【発明の名称】光モジュール、光トランシーバ、光の強度の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/075 20130101AFI20241115BHJP
   H04B 10/50 20130101ALI20241115BHJP
   H04B 10/61 20130101ALI20241115BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H04B10/075
H04B10/50
H04B10/61
H04J14/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079239
(22)【出願日】2023-05-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)Beyond 5G研究開発促進事業 委託研究 令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構 研究開発課題名:Beyond 5G 超高速・大容量ネットワークを実現する小型低電力波長 変換・フォーマット変換技術の研究開発 研究開発項目1 小型波長変換・フォーマット変換用低電力デジタル信号処理技術の研究開発 研究開発項目2 小型波長変換・フォーマット変換用フロントエンド技術の研究開発 副題:「大容量光ネットワークの利用効率向上に向けた小型低電力波長変換・フォーマット変換技術の研究開発」 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】深津 公良
(72)【発明者】
【氏名】金子 太郎
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA15
5K102AA16
5K102AA17
5K102AD01
5K102AH02
5K102AH14
5K102LA04
5K102LA05
5K102LA22
5K102LA52
5K102MB05
5K102MC13
5K102MD01
5K102MD02
5K102MD03
5K102MD07
5K102MH02
5K102MH03
5K102MH20
5K102MH22
5K102PB06
5K102PB13
5K102PB15
5K102PH11
5K102PH31
5K102PH43
5K102PH49
5K102RB19
5K102RD12
(57)【要約】
【課題】同じ経路で導かれる2つの波長の光の強度を簡易な構成にて監視する。
【解決手段】光増幅器1は、第1の周波数の変調信号M1で波長λ1の第1の光L1を変調し、第2の周波数の変調信号M2で波長λ2の第2の光L2を変調する。光スプリッタ2は、第1の光L1及び第2の光L2を分岐する。受光部3は、分岐された第1の光L1及び第2の光L2を受光し、第1の光L1と第2の光L2とを加算した光の強度を示す検出信号DETを出力する。強度検出部4は、検出信号DETに含まれる第1の周波数の第1の成分と第2の周波数の第2の成分とを抽出し、第1の成分及び第2の成分の振幅を検出する。増幅制御部5は、第1の成分の振幅に基づいて第1の光L1の強度を監視し、第2の成分の振幅に基づいて第2の光L2の強度を監視し、監視結果に基づいて光増幅器1における第1の光L1及び第2の光L2の増幅を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数を有する第1の変調信号で第1の波長の第1の光を変調するとともに前記第1の光を増幅し、前記第1の周波数と異なる第2の周波数を有する第2の変調信号で前記第1の波長と異なる第2の波長の第2の光を変調するとともに前記第2の光を増幅する光増幅器と、
前記光増幅器から出力された前記第1の光及び前記第2の光を分岐する分岐手段と、
前記分岐手段で分岐された前記第1の光及び前記第2の光を受光し、受光した前記第1の光と前記第2の光とを加算した光の強度を示す電気信号を出力する受光手段と、
前記電気信号に含まれる前記第1の周波数の第1の成分と、前記電気信号に含まれる前記第2の周波数の第2の成分と、を抽出し、前記第1の成分の振幅と前記第2の成分の振幅とを検出する強度検出手段と、
前記第1の成分の振幅に基づいて前記第1の光の強度を監視し、前記第2の成分の振幅に基づいて前記第2の光の強度を監視し、監視結果に基づいて前記光増幅器における前記第1の光及び前記第2の光の増幅を制御する増幅制御手段と、を備える、
光モジュール。
【請求項2】
前記増幅制御手段は、前記第1の成分の振幅及び前記第2の成分の振幅が一定になるように、前記光増幅器を制御する、
請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記増幅制御手段は、予め保持している情報に基づいて、前記光増幅器における前記第1の光及び前記第2の光の増幅の初期設定を行う、
請求項1又は2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記増幅制御手段は、
前記第1の光の強度が第1の範囲内となるように、前記光増幅器における前記第1の光の増幅を制御し、
前記第2の光の強度が第2の範囲内となるように、前記光増幅器における前記第2の光の増幅を制御する、
請求項1又は2に記載の光モジュール。
【請求項5】
受け取った第1の波長多重光信号を第1の波長の第1の光と干渉させることで受信して、受信した信号を復調したデータ信号を出力する受信器と、
前記データ信号に応じて前記第1の波長と異なる第2の波長の第2の光を変調し、変調した光信号を第2の波長多重光信号に多重化して出力する送信器と、
前記受信器から出力された前記データ信号を前記送信器に転送する信号処理手段と、を備え、
前記第1の光及び前記第2の光を出力する光モジュールと、を備え、
前記光モジュールは、第1の周波数を有する第1の変調信号で前記第1の光を変調するとともに前記第1の光を増幅し、前記第1の周波数と異なる第2の周波数を有する第2の変調信号で前記第2の光を変調するとともに前記第2の光を増幅する光増幅器と、
前記光増幅器から出力された前記第1の光及び前記第2の光を分岐する分岐手段と、
前記分岐手段で分岐された前記第1の光及び前記第2の光を受光し、受光した前記第1の光と前記第2の光とを加算した光の強度を示す電気信号を出力する受光手段と、
前記電気信号に含まれる前記第1の周波数の第1の成分と、前記電気信号に含まれる前記第2の周波数の第2の成分と、を抽出し、前記第1の成分の振幅と前記第2の成分の振幅とを検出する強度検出手段と、
前記第1の成分の振幅に基づいて前記第1の光の強度を監視し、前記第2の成分の振幅に基づいて前記第2の光の強度を監視し、監視結果に基づいて前記光増幅器における前記第1の光及び前記第2の光の増幅を制御する増幅制御手段と、を備える、
光トランシーバ。
【請求項6】
第1の周波数を有する第1の変調信号で第1の波長の第1の光を変調するとともに前記第1の光を増幅し、前記第1の周波数と異なる第2の周波数を有する第2の変調信号で前記第1の波長と異なる第2の波長の第2の光を変調するとともに前記第2の光を増幅し、
変調及び増幅された前記第1の光及び前記第2の光を分岐する分岐し、
分岐された前記第1の光及び前記第2の光を受光し、受光した前記第1の光と前記第2の光とを加算した光の強度を示す電気信号を出力し、
前記電気信号に含まれる前記第1の周波数の第1の成分と、前記電気信号に含まれる前記第2の周波数の第2の成分と、を抽出し、前記第1の成分の振幅と前記第2の成分の振幅とを検出し、
前記第1の成分の振幅に基づいて前記第1の光の強度を監視し、前記第2の成分の振幅に基づいて前記第2の光の強度を監視し、監視結果に基づいて前記第1の光及び前記第2の光の増幅を制御する、
光の強度の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光モジュール、光トランシーバ、光の強度の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に適用されるデジタルコヒーレント技術においては、光通信装置内に、ITLA(Integrable Tunable Laser Assembly)などの波長可変光源が光源として搭載される。ITLAから出力された光は、受信側装置と送信側装置とへ向けて分岐される。送信側装置は、入力された光をデータ信号に応じて変調した光信号を送信する。受信側装置は、他の通信装置などから受け取った光信号を、入力される光と干渉させることで、光信号を強度信号に復調する。この場合には、送信側装置へ入力される光の波長と、送信側装置へ入力される光の波長とは同じ波長である。
【0003】
このような構成においては、送信側装置及び受信側装置へ供給する光の安定化(特許文献1)及び増幅(特許文献2)や、光を各種の変調方式で変調(特許文献3)するなどの処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-244270号公報
【特許文献2】特開2007-193209号公報
【特許文献3】特開2001-133824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この場合、一般に、出力する光の波長がそれぞれ異なる2つの波長可変光源を用いることで、2つの波長に対応することができる。この場合、2つの波長の光のそれぞれの強度を一定に保つことが求められる。異なる光源を2つ搭載すればこれまで同じ方法で光強度を一定に保つことができるが、光源には小型化と低消費電力化が強く求められており、2つの光源を集積すること求められている。この場合、2つの波長の光を出力する光源から送信側及び受信側へ光を導く経路で、2つの波長の光が同じ経路を通過する箇所が生じる。そのため、2つの波長の光の強度を個別に監視することが困難になってしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、同じ経路で導かれる2つの波長の光の強度を簡易な構成にて監視することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様である光モジュールは、第1の周波数を有する第1の変調信号で第1の波長の第1の光を変調するとともに前記第1の光を増幅し、前記第1の周波数と異なる第2の周波数を有する第2の変調信号で前記第1の波長と異なる第2の波長の第2の光を変調するとともに前記第2の光を増幅する光増幅器と、前記光増幅器から出力された前記第1の光及び前記第2の光を分岐する分岐手段と、前記分岐手段で分岐された前記第1の光及び前記第2の光を受光し、受光した前記第1の光と前記第2の光とを加算した光の強度を示す電気信号を出力する受光手段と、前記電気信号に含まれる前記第1の周波数の第1の成分と、前記電気信号に含まれる前記第2の周波数の第2の成分と、を抽出し、前記第1の成分の振幅と前記第2の成分の振幅とを検出する強度検出手段と、前記第1の成分の振幅に基づいて前記第1の光の強度を監視し、前記第2の成分の振幅に基づいて前記第2の光の強度を監視し、監視結果に基づいて前記光増幅器における前記第1の光及び前記第2の光の増幅を制御する増幅制御手段と、を備える。
【0008】
本開示の一態様である光トランシーバは、受け取った第1の波長多重光信号を第1の波長の第1の光と干渉させることで受信して、受信した信号を復調したデータ信号を出力する受信器と、前記データ信号に応じて前記第1の波長と異なる第2の波長の第2の光を変調し、変調した光信号を第2の波長多重光信号に多重化して出力する送信器と、前記受信器から出力された前記データ信号を前記送信器に転送する信号処理手段と、を備え、前記第1の光及び前記第2の光を出力する光モジュールと、を備え、前記光モジュールは、第1の周波数を有する第1の変調信号で前記第1の光を変調するとともに前記第1の光を増幅し、前記第1の周波数と異なる第2の周波数を有する第2の変調信号で前記第2の光を変調するとともに前記第2の光を増幅する光増幅器と、前記光増幅器から出力された前記第1の光及び前記第2の光を分岐する分岐手段と、前記分岐手段で分岐された前記第1の光及び前記第2の光を受光し、受光した前記第1の光と前記第2の光とを加算した光の強度を示す電気信号を出力する受光手段と、前記電気信号に含まれる前記第1の周波数の第1の成分と、前記電気信号に含まれる前記第2の周波数の第2の成分と、を抽出し、前記第1の成分の振幅と前記第2の成分の振幅とを検出する強度検出手段と、前記第1の成分の振幅に基づいて前記第1の光の強度を監視し、前記第2の成分の振幅に基づいて前記第2の光の強度を監視し、監視結果に基づいて前記光増幅器における前記第1の光及び前記第2の光の増幅を制御する増幅制御手段と、を備える。
【0009】
本開示の一態様である光の強度の制御方法は、第1の周波数を有する第1の変調信号で第1の波長の第1の光を変調するとともに前記第1の光を増幅し、前記第1の周波数と異なる第2の周波数を有する第2の変調信号で前記第1の波長と異なる第2の波長の第2の光を変調するとともに前記第2の光を増幅し、変調及び増幅された前記第1の光及び前記第2の光を分岐する分岐し、分岐された前記第1の光及び前記第2の光を受光し、受光した前記第1の光と前記第2の光とを加算した光の強度を示す電気信号を出力し、前記電気信号に含まれる前記第1の周波数の第1の成分と、前記電気信号に含まれる前記第2の周波数の第2の成分と、を抽出し、前記第1の成分の振幅と前記第2の成分の振幅とを検出し、前記第1の成分の振幅に基づいて前記第1の光の強度を監視し、前記第2の成分の振幅に基づいて前記第2の光の強度を監視し、監視結果に基づいて前記第1の光及び前記第2の光の増幅を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、同じ経路で導かれる2つの波長の光の強度を簡易な構成にて監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる光モジュールが用いられる光トランシーバの構成を模式的に示す図である。
図2】実施の形態1にかかる光モジュールの構成を模式的に示す図である。
図3】実施の形態1にかかる光モジュールの構成をより詳細に示す図である。
図4】検出信号の強度と、検出信号に含まれる第1の光の信号成分及び第2の光の信号成分と、を示す図である。
図5】実施の形態1でのフィードバック制御のフローチャートである。
図6】実施の形態2にかかる光モジュールの構成を模式的に示す図である。
図7】実施の形態2でのフィードフォワード制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0013】
実施の形態1
実施の形態1にかかる光モジュールについて説明する。実施の形態1にかかる光モジュールは、互いに波長が異なる第1の光L1及び第2の光L2を出力する、波長可変光源モジュールとして構成される。
【0014】
図1に、実施の形態1にかかる光モジュールが用いられる光トランシーバ1000の構成を模式的に示す。光トランシーバ1000は、受信器1001、送信器1002、信号処理部1003及び本実施の形態にかかる光モジュール100を有する。
【0015】
光モジュール100は、互いに波長が異なる第1の光L1及び第2の光L2を、それぞれ、受信器1001及び送信器1002へ出力する。以下では、第1の光L1の波長をλ1とする。第2の光L2の波長をλ2とする。
【0016】
受信器1001は、他の光トランシーバなどから、波長λ1の光信号が波長多重された波長多重光信号SIG1を受け取る。受信器1001は、光モジュール100から受け取った第1の光L1を波長多重光信号SIG1と干渉させることで、波長λ1の光信号を選択的に受信する。そして、受信器1001は、受信した波長λ1の光信号を復調したデータ信号DATを、信号処理部1003へ出力する。
【0017】
信号処理部1003は、受け取ったデータ信号DATを送信器1002へ転送する。信号処理部1003は、デジタルコヒーレント用のデジタル信号処理部(DSPDigital Signal Processor)として構成される。DSPには、いわゆるループバックと称される、受け取った信号をそのまま出力する機能を有している。そこで、信号処理部1003が有するループバックを利用することで、受け取ったデータ信号DATを、送信器1002へ転送することが可能である。また、例えば、信号処理部1003は図示しない電気コネクタを介してホスト装置と接続しており、信号処理部1003はホスト装置からの電気信号Aを送信器1002に転送し、信号処理部1003は受信器1001からの電気信号Bをホスト装置に転送してもよい。
【0018】
送信器1002は、光モジュール100から受け取った第2の光L2をデータ信号DATに基づいて変調し、変調した光信号を波長多重光信号SIG2に波長多重する。そして、送信器1002は、波長多重光信号SIG2を送信先の光トランシーバなどへ出力する。
【0019】
以上説明したように、光トランシーバ1000は、受信した波長λ1の光信号を、波長λ2の光信号に変換することができる。
【0020】
次に、光モジュール100について説明する。図2に、実施の形態1にかかる光モジュール100の構成を模式的に示す。光モジュール100は、光増幅器1、光スプリッタ2、受光部3、強度検出部4及び増幅制御部5を有する。
【0021】
光増幅器1は、入力される第1の光L1及び第2の光L2をそれぞれ増幅する。また、光増幅器1は、増幅制御部5から与えられる変調信号M1及びM2に応じて、第1の光L1及び第2の光L2をそれぞれ変調する。そして、光増幅器1は、増幅及び変調した第1の光L1及び第2の光L2を、光スプリッタ2へ出力する。なお、変調信号M1は、第1の変調信号とも称する。変調信号M2は、第2の変調信号とも称する。
【0022】
光増幅器1について、より詳細に説明する。図3に、実施の形態1にかかる光モジュール100の構成をより詳細に示す。図3では、第1の光L1及び第2の光L2の伝搬経路を示すにあたり、第1の光L1及び第2の光L2のビームの広がりを表示している。
【0023】
光増幅器1は、第1の光L1を増幅及び変調する第1の光増幅部11と、第2の光L2を増幅及び変調する第2の光増幅部12と、を有する。
【0024】
第1の光増幅部11は、光源6から入射する第1の光L1を、増幅制御部5から入力される制御信号CON1に応じた増幅率にて増幅する。
【0025】
また、第1の光増幅部11は、増幅制御部5から入力される変調信号M1に応じて、第1の光L1を変調する。この例では、変調信号M1は、周波数f1の正弦波信号である。第1の光増幅部11で増幅及び変調された第1の光L1は、周波数f1で周期的に強度が変動する光として、光スプリッタ2へ出力される。なお、周波数f1を、第1の周波数とも称する。
【0026】
第1の光増幅部11から出力された第1の光L1の強度P1は、第1の光増幅部11に与えられる電流I1の関数として、以下の式で表される。
【数1】
式[1]において、rは重畳される変調成分の振幅であり、F1は第1の光L1の強度と電流I1との関係を示す関数である。この関数は、光増幅器の特性に依存しており、あらかじめ導出しておく。
【0027】
第2の光増幅部12は、光源6から入射する第2の光L2を、増幅制御部5から入力される制御信号CON2に応じた増幅率にて増幅する。
【0028】
また、第2の光増幅部12は、増幅制御部5から入力される変調信号M2に応じて、第2の光L2を変調する。この例では、変調信号M2は、周波数f2の正弦波信号である。第2の光増幅部12で増幅及び変調された第2の光L2は、周波数f2で周期的に強度が変動する光として、光スプリッタ2へ出力される。なお、周波数f2を、第2の周波数とも称する。
【0029】
第2の光増幅部12から出力される第2の光L2の強度P2は、第2の光増幅部12に与えられる電流I2の関数として、以下の式で表される。
【数2】
式[2]において、rは、式[1]と同様に、重畳される変調成分の振幅であり、F2は第2の光L2の強度と電流I2との関係を示す関数である。この関数は、光増幅器の特性に依存しており、あらかじめ導出しておく。
【0030】
光スプリッタ2は、入射する第1の光L1を、出力ポートPT1と受光部3とへ分岐する。また、光スプリッタ2は、入射する第2の光L2を、出力ポートPT2と受光部3とへ分岐する。ここでは、光スプリッタ2によって受光部3へ反射される光の比率をγ、光スプリッタ2を透過して光モジュール100の外部へ出力される光の比率を1-γとする。
【0031】
出力ポートPT1及びPT2は、それぞれ光ファイバF1及びF2によって他の光部品などに接続される。これにより、例えば、第1の光L1は受信器1001へ出力され、第2の光L2は送信器1002へ出力される。
【0032】
受光部3は、光スプリッタ2で分岐された第1の光L1及び第2の光L2を受け取る。そして、受光部3は、第1の光L1及び第2の光L2が加算された光の強度に応じた検出信号DETを、強度検出部4へ出力する。受光部3は、例えば、フォトダイドードにより構成できる。この場合、受光部3は、第1の光L1及び第2の光L2が加算された光の強度を示す電流信号を、検出信号DETをとして強度検出部4へ出力する。
【0033】
強度検出部4は、検出信号DETに所定の信号処理を行うことで、第1の光L1及び第2の光L2のそれぞれの強度を検出する。上述したように、検出信号DETは、周波数f1で周期的に変動する第1の光L1の強度の成分と、周波数f2で周期的に変動する第2の光L2の強度の成分と、が重畳された信号である。
【0034】
したがって、検出信号DETの信号強度は、以下の式で示される。
【数3】
式[3]において、ηは受光部3における変換効率である。ηは、上通の通り、光スプリッタ2における光の分岐比率である。
【0035】
図4に、検出信号DETの強度と、検出信号DETに含まれる第1の光L1の信号成分及び第2の光L2の信号成分と、を示す。このように、検出信号DETは、第1の光L1の信号成分ηγP1と第2の光L2の信号成分ηγP2とが加算された信号となる。なお、第1の光L1の信号成分及び第2の光L2の信号成分を、それぞれ、第1の成分及び第2の成分とも称する。
【0036】
したがって、周波数f1の信号成分のみを通す周波数フィルタに検出信号DET通すことで、強度検出部4は、検出信号DETから、第1の光L1の変動成分である周波数f1の信号成分を抽出することができる。そして、強度検出部4は、第1の光L1の変動成分の振幅A1を示す振幅信号SA1を、増幅制御部5へ出力する。
【0037】
同様に、周波数f2の信号成分のみを通す周波数フィルタに検出信号DET通すことで、強度検出部4は、検出信号DETから、第2の光L2の変動成分である周波数f2の信号成分を抽出することができる。そして、強度検出部4は、第2の光L2の変動成分の振幅A2を示す振幅信号SA2を、増幅制御部5へ出力する。
【0038】
増幅制御部5は、光増幅器1の第1の光増幅部11及び第2の光増幅部12に、それぞれ、上述した変調信号M1及びM2を出力する。
【0039】
また、増幅制御部5は、振幅信号SA1に基づき、第1の光L1の変動成分の振幅が一定となるように、制御信号CON1によって第1の光増幅部11を制御する。第1の光増幅部11は、制御信号CON1に応じて、電流I1の値を調整することで、第1の光L1の変動成分の振幅を一定にすることができる。
【0040】
同様に、増幅制御部5は、振幅信号SA2に基づき、第2の光L2の変動成分の振幅が一定となるように、制御信号CON2によって第2の光増幅部12を制御する。第2の光増幅部12は、制御信号CON2に応じて、電流I2の値を調整することで、第2の光L2の変動成分の振幅を一定にすることができる。
【0041】
次いで、光源6について説明する。図3では、光源6の構成例を示している。光源6は、互いに波長が異なる第1の光L1及び第2の光L2を出力可能な波長可変光源として構成される。光源6は、レーザ素子61及び外部共振器62を有する。
【0042】
レーザ素子61は、同じ基板上に、延伸方向と直交する方向に離隔して平行に配列された、活性媒質からなる第1ストライプ611及び第2ストライプ612が形成されている。レーザ素子の2つの端面には、それぞれ、高反射膜61Aと無反射膜61Bとが形成されている。レーザ素子61は、第1ストライプ611及び第2ストライプ612の、無反射膜61Bが形成されている端面から、異なる波長のレーザ光である光LA1及び光LA2を、外部共振器62へ出射する。図3に表示した光LA1及び光LA2の経路は、それぞれのビーム中心の軌跡を示している。
【0043】
外部共振器62は、第1の共振部621及び第2の共振部622を有している。また、外部共振器62の光が入射及び出射する端面には、無反射膜62Aが形成されている。第1の共振部621は、レーザ素子61から入射する光LA1を、レーザ素子61の端面と第1の共振部621内の反射手段との間で共振させることで、第1の波長のレーザ光である第1の光L1を、光増幅器1へ出射する。第2の共振部622は、レーザ素子61から入射する光LA2を、レーザ素子61の端面と第2の共振部622内の反射手段との間で共振させることで、第2の波長のレーザ光である第2の光L2を、光増幅器1へ出射する。
【0044】
第1の共振部621及び第2の共振部622は、各種の共振器として構成されてもよい。第1の共振部621及び第2の共振部622は、例えば、2つのリング導波路からなる波長フィルタを設けることで、共振する光の波長を選択する共振器として構成してもよい。この場合、リング導波路にヒータを設け、リング共振器の温度を変えることでリング導波路の屈折率を調整して、第1の共振部621及び第2の共振部622で共振する第1の光L1及び第2の光L2を、それぞれ所望の波長に制御することができる。
【0045】
第1の共振部621及び第2の共振部622においては、第1の光L1及び第2の光L2の出射導波路は、無反射膜の反射率をより低減させるため、出射端面に対して傾斜している。よって、第1の光L1及び第2の光L2は、出射端面に対して傾斜した方向へ出射する。
【0046】
また、光モジュール100には、図3に示す様に、第1のレンズ7、アイソレータ8及び第2のレンズが配置されてもよい。
【0047】
第1のレンズ7及びアイソレータ8は、光増幅器1と光スプリッタ2との間に配置される。光増幅器1から異なる方向に出射された第1の光L1及び第2の光L2は、拡散しながら第1のレンズ7に入射する。第1のレンズ7は、第1の光L1及び第2の光L2を互いに平行な光線に変換する。平行な光線となった第1の光L1及び第2の光L2は、アイソレータ8を通過した後に、光スプリッタ2に入射する。これにより、第1の光L1及び第2の光L2がアイソレータ8を通過した後に反射され、反射光としてアイソレータ8に入射しても、反射光はアイソレータ8で遮断される。これにより、光増幅器1及び光源6への反射光の入射を防止することができる。
【0048】
第2のレンズ9は、光スプリッタ2の出力側に配置される。第2のレンズ9は、光スプリッタ2から入射する第1の光L1及び第2の光L2を収束させて、それぞれ出力ポートPT1及びPT2へ向けて出射する。
【0049】
次に、第1の光L1及び第2の光L2の強度のフィードバック制御について説明する。図5に、実施の形態1にかかるフィードバック制御のフローチャートを示す。
【0050】
ステップS1
受光部3は、第1の光L1と第2の光L2とを加算した光の強度を示す検出信号DETを出力する。
【0051】
ステップS2
強度検出部4は、検出信号DETを周波数分離することで、第1の光L1についての振幅信号SA1と、第2の光L2についての振幅信号SA2と、を取得する。
【0052】
ステップS3
強度検出部4は、振幅信号SA1から、第1の光L1の周波数f1の信号成分の振幅A1を算出する。また、強度検出部4は、振幅信号SA2から、第2の光L2の周波数f2の信号成分の振幅A2を算出する。
【0053】
ステップS4
増幅制御部5は、振幅A1が所定の範囲R1に収まっているかを判定する。なお、所定の範囲R1は、第1の範囲とも称する。
【0054】
ステップS5
振幅A1が所定の範囲R1に収まっていない場合、増幅制御部5は、振幅A1を所定の範囲R1に収めるため、光増幅器1へ制御信号CON1を出力する。
【0055】
ステップS6
光増幅器1は、制御信号CON1に応じて、第1の光増幅部11の電流I1を調整する。
【0056】
ステップS7
増幅制御部5は、振幅A2が所定の範囲R2に収まっているかを判定する。なお、所定の範囲R2は、第2の範囲とも称する。
【0057】
ステップS8
振幅A2が所定の範囲R2に収まっていない場合、増幅制御部5は、振幅A2を所定の範囲R2に収めるため、光増幅器1へ制御信号CON2を出力する。
【0058】
ステップS9
光増幅器1は、制御信号CON2に応じて、第2の光増幅部12の電流I2を調整する。
【0059】
図5では、ステップS4~S6の処理の後にステップS7~S9の処理が行われるものとしたが、これは例示に過ぎない。ステップS7~S9の処理を先に行った後にステップS4~S6の処理を行ってもよいし、ステップS4~S6の処理とステップS7~S9の処理とを、並行して行ってもよい。
【0060】
これにより、光モジュール100は、第1の光L1及び第2の光L2の強度が所望の値となるように、フィードバック制御を行うことができる。
【0061】
なお、上記のステップS1~S9からなるフィードバック制御を、常時又は簡潔的に行うことで、継続して第1の光L1及び第2の光L2の強度を制御することができる。
【0062】
したがって、本構成によれば、フィードバック制御により、第1の光L1及び第2の光L2のそれぞれの強度を、高い精度で制御することが可能となる。
【0063】
なお、本実施の形態におけるように、2つの波長の光を監視する場合、受光部と強度検出部とのペアを2つ設けて、2つのペアによって2つの波長の光のそれぞれを監視することも考え得る。しかし、この場合には、部品の数が増加してしまい、光モジュールの大型化や、光モジュールの製造コストの増大に繋がる。
【0064】
これに対し、光モジュール100は、単一の受光部3で受光した光に基づいて、第1の光L1及び第2の光L2のそれぞれの強度を監視する簡素な構成を有している。これにより、光モジュールを小型化でき、かつ、製造コストを低減することができる。
【0065】
実施の形態2
実施の形態1では、第1の光L1及び第2の光L2の強度の監視結果に基づくフィードバック制御について説明した。一方で、光モジュールを運用する場合、まず、第1の光L1及び第2の光L2の強度の初期設定を行うフィードフォワード制御を行うこととなる。そこで、本実施の形態では、第1の光L1及び第2の光L2の強度のフィードフォワード制御について説明する。
【0066】
図6に、実施の形態2にかかる光モジュール200の構成を模式的に示す。光モジュール200は、光モジュール100の増幅制御部5を、増幅制御部10に置き換えた構成を有する。
【0067】
第1の光L1及び第2の光L2の強度のフィードフォワード制御を行う場合、増幅制御部10は、第1の光増幅部11及び第2の光増幅部12のそれぞれに、目標となる強度に対応した制御信号CON1及びCON2を出力する。そのためには、制御信号CON1の値、例えば電圧と、第1の光L1の強度との対応関係を予め把握しておかなければならない。同様に、制御信号CON2の値、例えば電圧と、第2の光L2の強度との対応関係を予め把握しておかなければならない。
【0068】
制御信号と光の強度との対応関係は、例えば、増幅制御部10に予めテーブル情報として保持しておくことが可能である。増幅制御部10は、適宜テーブル情報TABを参照して、目標の強度に対応した制御信号CON1及びCON2を、それぞれ第1の光増幅部11及び第2の光増幅部12に与えることができる。
【0069】
次いで、実施の形態2にかかるフィードフォワード制御動作について説明する。図71に、実施の形態2でのフィードフォワード制御のフローチャートを示す。
【0070】
ステップS11
増幅制御部10は、外部の装置などから、第1の光L1及び第2の光L2の目標強度を指定する指示INSを受け取る。指示INSは、例えば、図1に示す信号処理部1003や、光モジュール100又は光トランシーバ1000内に設けられた、図示しない制御手段から与えられてもよい。
【0071】
ステップS12
増幅制御部10は、予め保持しているテーブル情報TABを参照して、指示された目標強度に対応した制御信号CON1及びCON2を出力する。
【0072】
ステップS13
第1の光増幅部11は、制御信号CON1に応じて、電流I1の初期値を設定する。同様に、第2の光増幅部12は、制御信号CON2に応じて、電流I2の初期値を設定する。
【0073】
ステップS11~S13では、第1の光L1及び第2の光L2のそれぞれの強度を監視することなく、指示INSに基づいて光増幅器1の電流I1及び第2の光増幅部12の電流I2を設定した。そのため、この時点では、第1の光L1及び第2の光L2のそれぞれの強度が目標の強度となっているかは不明である。
【0074】
そこで、実施の形態1で説明したフィードバック制御を続けて開始することで、第1の光L1及び第2の光L2のそれぞれの強度を目標値とすることができる。
【0075】
以上、本構成によれば、フィードフォワード制御によって、第1の光L1及び第2の光L2のそれぞれの強度の初期設定を行うことができる。その後、増幅制御部10が第1の光L1及び第2の光L2のそれぞれの強度のフィードバック制御を行うことで、それぞれの強度を高い精度で制御することが可能となる。
【0076】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の光トランシーバ及び光モジュールの構成は、説明の便宜上簡略化してものであり、他の各種の部品が含まれてもよいことは、言うまでもない。
【0077】
上述の実施の形態で参照した図においては、構成要素間での信号の伝達について矢印を用いて表したが、これは2つの構成要素間で一方向のみに信号が伝達されることを意味するものではなく、必要に応じて双方向の信号のやり取りが可能である。
【0078】
上述の実施の形態で説明した光源6の構成は、例示に過ぎない。第1の光L1及び第2の光L2を光増幅器1へ同様に出力できる限り、光源の構成は、他の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 光増幅器
2 光スプリッタ
3 受光部
4 強度検出部
5、10 増幅制御部
6 光源
7 第1のレンズ
8 アイソレータ
9 第2のレンズ
10 増幅制御部
11 第1の光増幅部
12 第2の光増幅部
61 レーザ素子
61A 高反射膜
61B、62A 無反射膜
62 外部共振器
100 光モジュール
111 第1の光増幅部
112 第2の光増幅部
611 第1ストライプ
612 第2ストライプ
621 第1の共振部
622 第2の共振部
1000 光トランシーバ
1001 受信器
1002 送信器
1003 信号処理部
CON1、CON2 制御信号
L1 第1の光
L2 第2の光
M1、M2 変調信号
PT1、PT2 出力ポート
SA1、SA2 振幅信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7