(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163967
(43)【公開日】2024-11-25
(54)【発明の名称】ホルダ送出装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20241118BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
B25J15/08 A
G01N1/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024133389
(22)【出願日】2024-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】302004942
【氏名又は名称】大谷製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】釣 宏充
(72)【発明者】
【氏名】田村 雅人
(72)【発明者】
【氏名】若生 昌光
【テーマコード(参考)】
2G052
3C707
【Fターム(参考)】
2G052AA11
2G052AB02
2G052AC24
2G052AD06
2G052AD26
2G052BA17
2G052CA02
2G052CA46
2G052HA17
2G052JA21
3C707AS14
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707EU16
3C707EV08
3C707EV28
3C707EW00
3C707GS04
3C707GS11
3C707HS14
3C707HS27
3C707LV04
3C707LV05
3C707LV06
(57)【要約】
【課題】ロボットアームに取り付けられ、溶融金属に浸漬される測定採取器具を装着可能なホルダを把持するものであって、ロボットアームに対してホルダを移動可能とするホルダ送出装置を提供する。
【解決手段】溶融金属に浸漬される測定採取器具を装着可能なホルダを把持するものであってロボットアームに取り付けられるホルダ送出装置であって、前記ホルダは、長尺状であってその先端に前記測定採取器具が装着されるものであり、前記ホルダを挟む少なくとも1組のローラを備え、前記ローラ同士の間隔が可変であって、前記ホルダを把持した状態と前記ホルダを解放した状態とに切り替え可能であり、前記ホルダを把持した状態で少なくとも1つの前記ローラが回転して前記ホルダをその長手方向に沿って進退させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属に浸漬される測定採取器具を装着可能なホルダを把持するものであってロボットアームに取り付けられるホルダ送出装置であって、
前記ホルダは、長尺状であってその先端に前記測定採取器具が装着されるものであり、
前記ホルダを挟む少なくとも1組のローラを備え、
前記ローラ同士の間隔が可変であって、前記ホルダを把持した状態と前記ホルダを解放した状態とに切り替え可能であり、
前記ホルダを把持した状態で少なくとも1つの前記ローラが回転して前記ホルダをその長手方向に沿って進退させることを特徴とするホルダ送出装置。
【請求項2】
複数組の前記ローラを備え、各組の前記ローラが前記ホルダの長手方向に離隔した複数箇所で前記ホルダを挟むことを特徴とする請求項1記載のホルダ送出装置。
【請求項3】
前記ロボットアームに対して着脱自在であることを特徴とする請求項1または2記載のホルダ送出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属に浸漬される測定採取器具を装着可能なホルダを把持するホルダ送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の精錬工程においては、溶融金属の温度や酸素濃度を測定する作業や、少量の溶融金属を採取して分析装置に供する作業が行われる。従来、これらの測定や採取の作業は、手作業により行われていた。より詳しくは、長尺状のホルダとよばれる器具の先端に測定や採取のための器具(測定採取器具)を装着し、作業者がホルダを手に持ち操作して、先端の器具を溶融金属に浸漬していた。この作業は、作業者が高温の溶融金属に接近して行うため、危険で作業負荷が大きいものであった。
【0003】
そこで、特許文献1に示すように、ロボットアームにホルダを装着して、人手を介さずに作業を行うことが提案されている。この場合、ロボットアームの先端に長尺状のホルダの一端が固定され、ホルダの他端に装着されたプローブが溶融金属に浸漬される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようにロボットアームの先端に長尺状のホルダの一端が取り付けられる場合、以下のような問題が生じ得る。まず、こうしたロボットアームを稼働させる際には、ロボットアームの周囲に作業者の立ち入りを制限する区域(制限区域)を設定する必要がある。制限区域は、ロボットアームを中心とし、ロボットアームを最大に伸ばした長さと把持するホルダの長さを合わせた長さを半径とする領域となる。よって、ロボットアームの先端に長尺状のホルダの一端を取り付けた場合、制限区域が非常に広くなってしまう。また、長尺状のホルダを適切に操作するには、ロボットアーム自体が十分な自由度や可動域を有するものでなければならず、大型のロボットアームでなければ対応できないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みたものであり、ロボットアームに取り付けられ、溶融金属に浸漬される測定採取器具を装着可能なホルダを把持するものであって、ロボットアームに対してホルダを移動可能とするホルダ送出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、溶融金属に浸漬される測定採取器具を装着可能なホルダを把持するものであってロボットアームに取り付けられるホルダ送出装置であって、前記ホルダは、長尺状であってその先端に前記測定採取器具が装着されるものであり、前記ホルダを挟む少なくとも1組のローラを備え、前記ローラ同士の間隔が可変であって、前記ホルダを把持した状態と前記ホルダを解放した状態とに切り替え可能であり、前記ホルダを把持した状態で少なくとも1つの前記ローラが回転して前記ホルダをその長手方向に沿って進退させることを特徴とする。測定採取器具とは、溶融金属の温度や酸素濃度などを測定する器具、溶融金属を採取する器具および測定と採取の両方を行う器具の何れも含む。
【0008】
また、本発明は、複数組の前記ローラを備え、各組の前記ローラが前記ホルダの長手方向に離隔した複数箇所で前記ホルダを挟むものであってもよい。
【0009】
また、本発明は、前記ロボットアームに対して着脱自在であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ローラによりホルダを挟み把持した状態でホルダを進退させられるので、ホルダの長手方向の中間部を把持してロボットアームを動かすものとすれば、ホルダの端部を把持する場合と比べて、制限区域は狭くて済む。すなわち、たとえばホルダの長手方向の中心を把持するものとすれば、制限区域は、ロボットアームを中心とし、ロボットアームを最大に伸ばした長さと把持するホルダの1/2の長さを合わせた長さを半径とする領域となる。また、ホルダがロボットアームに対して移動可能なので、ホルダがロボットアームに固定されている場合と比べて、ロボットアーム自体の自由度や可動域が小さくても、ホルダを適切に操作できる。適切に操作するとは、測定採取器具が装着されたホルダの先端を、所定の位置へ所定の方向から配置することである。
【0011】
また、複数組のローラによりホルダを挟むものであれば、より安定してホルダを把持することが可能であって、ホルダを進退させる際の直進性が向上する。
【0012】
また、ロボットアームに対して着脱自在なものであれば、本発明のホルダ送出装置と他の装置とを適宜交換して、ロボットアームを種々の目的のために活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ホルダ送出装置の解放状態の説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)はA-A線断面図である。
【
図2】ホルダ送出装置の把持状態の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)はB-B線断面図である。
【
図4(a)】溶融金属の測定採取を行う際の動作の説明図である。
【
図4(b)】溶融金属の測定採取を行う際の動作の説明図である。
【
図4(c)】溶融金属の測定採取を行う際の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な内容について説明する。
図4(a)~(c)に示すように、本発明のホルダ送出装置100は、溶融金属Mに浸漬される測定採取器具を装着可能なホルダ200を把持するものであって、ロボットアーム300に取り付けられる。
【0015】
まず、ホルダ200について説明する。
図3に示すように、ホルダ200は、長尺状であって円筒形状のホルダ本体201を備える。ホルダ本体201は、たとえば、外径が3cm程度であって、長さが3m~6m程度である。ホルダ本体201の先端(一方の端部)には、測定採取器具を装着するための接続部(不図示)が設けられ、接続部に測定採取器具が装着される。ここでは、測定採取器具は、溶融金属の温度を測定する測温プローブ202である。測温プローブ202は、略円柱形状である。接続部からケーブル203が延びており、ケーブル203はホルダ本体201の内部を通過する。ホルダ本体201の基端(他方の端部)には、通信装置204が設けられる。通信装置204は、ホルダ本体201より太い略円筒形状であって、ケーブル203が接続される。通信装置204は、ホルダ200やロボットアーム300を含むシステムの制御部(図示省略)と無線で接続される。なお、通信装置204を有さず、ケーブル203が延長されて制御部と有線で接続されてもよい。
【0016】
次に、このようなホルダ200を把持するホルダ送出装置100について説明する。なお、ホルダ送出装置100の説明において、上下左右とは
図1(b)の上下左右を示す。また、
図1(b)の手前側を前側、奥側を後側とする。
図1および
図2に示すように、ホルダ送出装置100は、基礎板1と、固定フレーム2と、可動フレーム3と、2組(4つ)のローラ4を備える。
【0017】
基礎板1は、略正方形の平板からなる。基礎板1は、その厚さ方向が前後方向に一致し、4辺が上下方向または左右方向に平行となる向きである。固定フレーム2と可動フレーム3は、何れも略長方形の平板からなり、基礎板1より左右に長く上下に短い。固定フレーム2と可動フレーム3は、何れもその厚さ方向が前後方向に一致し、4辺が上下方向または左右方向に平行となる向きである。固定フレーム2は、基礎板1の前面の下部に固定されている。可動フレーム3は、基礎板1の前面の上部に、上下動可能に取り付けられている。固定フレーム2と可動フレーム3は、前後方向位置が一致している。可動フレーム3の前面の中央部には、前側に突出する突起部32が設けられている。そして、基礎板1の上端部には、台座板33が取り付けられている。台座板33は、上面視して略長方形の平板からなり、基礎板1より左右幅が狭く、基礎板1の上端の左右方向中央から前側に突出している。台座板33には、エアシリンダ34が取り付けられている。エアシリンダ34は、シリンダ本体341と、シリンダ本体341に対して進退するロッド342を有している。シリンダ本体341は、台座板33の上面に固定されている。ロッド342は、台座板33に形成された孔を通って下向きに突出している。そして、ロッド342の先端が突起部32に接続されている。よって、エアシリンダ34のロッド342を進退させることで、可動フレーム3が上下に動く。
【0018】
ローラ4は、固定フレーム2と可動フレーム3に2つずつ取り付けられており、前後方向軸周りに回転する。固定フレーム2に取り付けられた2つのローラ4を駆動ローラ4a、可動フレーム3に取り付けられた2つのローラ4を押圧ローラ4bと称する。2つの駆動ローラ4aは、固定フレーム2の左右の両端部の前面にそれぞれ設けられる。固定フレーム2の後面には、2つの駆動ローラ4aにそれぞれ対応する位置にモータ42が設けられている。それぞれのモータ42の軸と駆動ローラ4aの回転軸が接続されており、モータ42によって駆動ローラ4aが回転駆動可能となっている。2つの押圧ローラ4bは、可動フレーム3の左右の両端部の前面にそれぞれ設けられる。押圧ローラ4bは、可動フレーム3に対して回転自在である。左側の駆動ローラ4aと押圧ローラ4b同士、右側の駆動ローラ4aと押圧ローラ4b同士は、前後方向位置および左右方向位置が一致する。2つの駆動ローラ4a同士の間隔および2つの押圧ローラ4b同士の間隔は、基礎板1の左右長さと略同じである。ローラ4は、外周面に形成された断面V字状の溝部41を有する。溝部41は周方向に延びておりローラ4の外周面を1周している。
【0019】
このように構成されたローラ4において、左側の駆動ローラ4aと押圧ローラ4bが、ホルダ200を挟む1組のローラ4であり、右側の駆動ローラ4aと押圧ローラ4bが、ホルダ200を挟む他の1組のローラ4である。すなわち、このホルダ送出装置100はホルダ200を挟む2組のローラ4を備える。押圧ローラ4bは、可動フレーム3とともに上下に動くので、上下に位置する駆動ローラ4aと押圧ローラ4bの間隔が可変である。
図1に示すように、可動フレーム3が最も上側に位置するとき、駆動ローラ4aと押圧ローラ4bの間隔は、ホルダ200のホルダ本体201の外径よりも広い。この状態では、ホルダ200はローラ4に把持されないので、ホルダ200を解放した解放状態と称する。一方、
図2に示すように、可動フレーム3が最も下側に位置するとき、駆動ローラ4aと押圧ローラ4bの間隔は、ホルダ200のホルダ本体201の外径よりも狭い。この状態では、ホルダ200はローラ4に把持される。すなわち、駆動ローラ4aと押圧ローラ4bが上下からホルダ本体201を挟み込む。この際、2組のローラ4が、ホルダ本体201の長手方向(左右方向)に離隔した箇所で、それぞれホルダ本体201を挟む。そして、ホルダ本体201がローラ4の溝部41に嵌まるので、把持された状態においてホルダ本体201が前後方向に動かない。この状態を、ホルダ200を把持した把持状態と称する。可動フレーム3を動かすことで、ローラ4の状態を、解放状態と把持状態とに切り替え可能である。
【0020】
ローラ4によりホルダ200を把持した状態で、モータ42により駆動ローラ4aを駆動すると、ホルダ200がその長手方向(左右方向)に沿って移動する。駆動ローラ4aを時計回りに回転させれば、ホルダ200は右へ移動し、駆動ローラ4aを反時計回りに回転させれば、ホルダ200は左へ移動する。
【0021】
基礎板1の後面には、着脱装置6のオス部61が取り付けられている。着脱装置6の詳細は後述する。
【0022】
次に、このホルダ送出装置100が取り付けられるロボットアーム300について説明する。このロボットアーム300は、多関節ロボットアームであり、制御部の制御により回転・伸縮する。
【0023】
図1および
図2に示すように、このロボットアーム300の先端側に、着脱装置6のメス部62が取り付けられている。着脱装置6は、このメス部62と、ホルダ送出装置100に取り付けられたオス部61から構成される。着脱装置6により、ホルダ送出装置100がロボットアーム300に対して着脱自在である。着脱装置6は、オス部61とメス部62とを容易に着脱可能、すなわち締結状態と離脱状態とに切り替え可能であって、締結状態において、オス部61とメス部62とを物理的かつ電気的に接続する。オス部61をホルダ送出装置100以外の各種の装置に取り付けておけば、ホルダ送出装置100と他の装置とを適宜交換できる。
【0024】
次に、このように構成されたホルダ送出装置100、ホルダ200およびロボットアーム300により、溶融金属の測定や採取を行う場合の手順を説明する。ここでは、
図4(a)~(c)に示すように、溶解炉400内の溶融金属Mの温度を測定する場合を想定する。溶解炉400の炉壁401に、開口部402が形成されており、この開口部402からホルダ200を差し入れる。なお、開口部402は、溶融金属Mの液面から2mの高さに直径300mmの孔が形成されたものである。開口部402の位置が低すぎると、溶融金属Mにより閉塞するおそれがあるため、開口部402はある程度以上の高さ位置に設けられる。また、溶融金属Mの液面と溶解炉400外の床面の高さが同じであるとする。そして、当初、ホルダ送出装置100がロボットアーム300に取り付けられており、ホルダ200はホルダ送出装置100に把持されておらず、さらに測温プローブ202がホルダ本体201に取り付けられていない状態とする。ホルダ本体201と測温プローブ202は、それぞれ所定の位置に載置されている。ホルダ本体201の長さは5mとする。
【0025】
まず、ロボットアーム300を駆動して、ホルダ送出装置100をホルダ本体201の長手方向の中央部に位置させる。ローラ4を解放状態とし、駆動ローラ4aと押圧ローラ4bでホルダ本体201を挟み、ローラ4を把持状態として、ホルダ本体201を把持する。次に、ロボットアーム300を駆動して、ホルダ本体201の先端に測温プローブ202を取り付ける。所定の位置に載置された測温プローブ202に対してホルダ本体201を挿脱することで、測温プローブ202を着脱できる。次に、ロボットアーム300を駆動して、開口部402を通して測温プローブ202を溶融金属Mに浸漬し、温度を測定する。この際の詳細な動作は後述する。次に、測定が完了したら、測温プローブ202を溶融金属Mから引き揚げる。そして、所定の位置においてホルダ本体201から測温プローブ202を取り外す。以上で、温度測定の一通りの手順が完了する。
【0026】
この後、所定時間経過後に、ホルダ本体201に再び測温プローブ202を取り付けて、溶融金属Mの温度を測定してもよい。また、測温プローブ202に替えて他の器具を取り付けてもよい。たとえば、酸素濃度を測定するためのプローブを取り付けて溶融金属Mの酸素濃度を測定してもよいし、採取器具を取り付けて溶融金属Mを採取してもよい。溶融金属Mの熱によりホルダ本体201が損傷した場合、ホルダ本体201を交換してもよい。ホルダ送出装置100をロボットアーム300から取り外し、他の装置を取り付けて、ロボットアーム300を他の用途に用いてもよい。
【0027】
ここで、ロボットアーム300により溶解炉400の開口部402を通して測温プローブ202を溶融金属Mに浸漬する際の動作について詳述する。まず、
図4(a)に示すように、ロボットアーム300に取り付けられたホルダ送出装置100が、測温プローブ202が取り付けられたホルダ本体201を把持した状態とする。このとき、ホルダ送出装置100はホルダ本体201の長手方向の中央部を把持している。次に、
図4(b)に示すように、ロボットアーム300を駆動して、ホルダ本体201の先端(測温プローブ202が取り付けられた側)を、開口部402の前に位置させる。溶融金属Mの液面は開口部402より下方なので、ホルダ本体201の先端が液面の方を向くように、先端に対して基端が上になる姿勢(ホルダ本体201の中心軸が図中の一点鎖線と一致する姿勢、以下において導入姿勢とする)とする。開口部402とロボットアーム300との位置関係によっては、ホルダ本体201の中央部を把持したままで導入姿勢とすることができない場合もある。その場合、ホルダ送出装置100の駆動ローラ4aを駆動して、ホルダ本体201をその基端方向に移動させればよい。次に、
図4(c)に示すように、ホルダ送出装置100の駆動ローラ4aを駆動して、ホルダ本体201をその先端方向に移動させる。このとき、ロボットアーム300は静止している。ホルダ本体201の先端に取り付けられた測温プローブ202が溶融金属Mに浸漬したら、駆動ローラ4aを停止することで、ホルダ本体201も停止する。その状態で溶融金属Mの温度を測定し、測定が完了したら、浸漬時とは逆の動作により、測温プローブ202を溶融金属Mから引き揚げ、ホルダ本体201を溶解炉400の外に取り出す。
【0028】
このように、本発明のホルダ送出装置100によれば、ローラ4によりホルダ200のホルダ本体201を挟み把持した状態でホルダ本体201を進退させられるので、ホルダ本体201の長手方向の中間部を把持してロボットアーム300を動かせば、ホルダ本体201の端部を把持する場合と比べて、制限区域は狭くて済む。すなわち、たとえばロボットアーム300を最大に伸ばした長さを3mとし、ホルダ本体201の長さを5mとして、ホルダ本体201の長手方向の中心を把持すれば、制限区域は、ロボットアーム300の根元を中心として、ロボットアーム300の長さ3mとホルダ本体201の1/2の長さ2.5mを合わせた長さ5.5mを半径とする領域となる。比較例として、従来のようにロボットアームがホルダ本体の端部を把持する場合は、ロボットアームの長さ3mとホルダ本体の長さ5mを合わせた長さ8mを半径とする領域となるので、面積比では半分以下となる。また、
図4(b)に示すように、本発明による場合に必要とされるロボットアーム300の到達高さH1は、従来のようにロボットアームがホルダ本体の端部を把持する場合に必要とされるロボットアームの到達高さH2と比べて、低くて済む。そして、ホルダ本体201がロボットアーム300に対して移動可能なので、ホルダ本体201がロボットアーム300に固定されている場合と比べて、ロボットアーム300自体の自由度や可動域が小さくても、ホルダ200を適切に操作できる。本発明によれば、
図4(b)に示すように、高さH1においてホルダ本体201を保持すれば、後はロボットアーム300を動かす必要はなく、ホルダ送出装置100によってホルダ本体201を移動させることができるが、従来のようにロボットアームがホルダ本体の端部を把持する場合、単に高さH2においてホルダ本体を把持すればよいのではなく、そこからホルダ本体を長手方向に沿って移動させるための自由度や可動域がなければならないので、より大型のロボットアームが必要とされる。すなわち、本発明によれば、より小型のロボットアーム300により溶融金属Mの測定採取が可能であるから、費用が抑えられる。また、2組のローラ4によりホルダ本体201を挟むので、より安定してホルダ本体201を把持することが可能であって、ホルダ本体201を進退させる際の直進性が向上する。また、固定フレーム2と可動フレーム3のうち、固定フレーム2のローラ4にモータ42を接続して駆動ローラ4aとしてあるので、モータ42が可動フレーム3の動作による振動の影響を受けず、安定して動作する。また、ホルダ送出装置100はロボットアーム300に対して着脱自在なので、ホルダ送出装置100と他の装置とを適宜交換して、ロボットアーム300を種々の目的のために活用できる。
【0029】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨の範囲内で各部の形状・構造を適宜変更できる。たとえば、ホルダ送出装置は、ホルダを挟む少なくとも1組のローラを有するものであればよい。1組のローラと、ホルダが長手方向に移動するように案内するガイド部材を有するものであってもよい。また、少なくとも1つのローラが駆動ローラであればよい。可動フレームのローラが駆動ローラであってもよいし、全てのローラが駆動ローラであってもよい。ホルダ送出装置が取り付けられるロボットアームは、一例を示したものであり、使用場所の環境に応じて適宜選択できる。
【符号の説明】
【0030】
4 ローラ
100 ホルダ送出装置
200 ホルダ
202 測温プローブ(測定採取器具)
300 ロボットアーム