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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163968
(43)【公開日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ゴム加硫物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20241119BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20241119BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241119BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20241119BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20241119BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20241119BHJP
   C08L 11/00 20060101ALI20241119BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20241119BHJP
   C08L 23/22 20060101ALI20241119BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C08J3/20 Z
C08L21/00
C08K3/013
C08K5/54
C08L7/00
C08L9/00
C08L11/00
C08L23/16
C08L23/22
C08J3/24 Z CEQ
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168528
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】城 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 聡
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA05
4F070AA06
4F070AA08
4F070AA16
4F070AB10
4F070AB16
4F070AC05
4F070AC14
4F070AC23
4F070AC40
4F070AC45
4F070AC47
4F070AC53
4F070AC94
4F070AE01
4F070AE03
4F070AE08
4F070FA03
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC03
4F070GA06
4F070GA10
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002BB151
4J002BB181
4J002BB271
4J002BD121
4J002BG041
4J002CK021
4J002CP031
4J002DA049
4J002DE146
4J002DJ016
4J002EN028
4J002EN038
4J002EN048
4J002EN068
4J002EN078
4J002EN108
4J002ER028
4J002EU048
4J002EU078
4J002EU118
4J002EU138
4J002EU238
4J002EX078
4J002EX087
4J002FD016
4J002FD149
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、より低燃費性、グリップ性に優れたタイヤを可能とするゴム加硫物の製造方法を提供することである。
【解決手段】ゴム(A)、無機充填材(B)、シランカップリング剤(C)、塩基性化合物(D)とを混練して、ゴム組成物を得る工程(A工程)と、前記A工程で得られたゴム組成物に、加硫剤を添加し、加硫することにより、ゴム加硫物を得る工程(B工程)を含む、ゴム加硫物の製造方法であり、シランカップリング剤(C)が、(保護化)メルカプト系有機珪素化合物、アミノ酸、又はその誘導体の骨格を有する有機珪素化合物、及びそれらの縮合物などである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム(A)、無機充填材(B)、シランカップリング剤(C)、塩基性化合物(D)とを混練して、ゴム組成物を得る工程(A工程)と、
前記A工程で得られたゴム組成物に、加硫剤を添加し、加硫することにより、ゴム加硫物を得る工程(B工程)を含む、ゴム加硫物の製造方法であり、
シランカップリング剤(C)が、(保護化)メルカプト系有機珪素化合物、アミノ酸、又はその誘導体の骨格を有する有機珪素化合物、及びそれらの縮合物、式(X)で表される化合物、から選択される少なくとも1種である。
(RO)Si-R-S-C(=O)-C1735 …(X)
[式(X)中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、アルキル基C1735は分枝鎖または直鎖である]
【請求項2】
前記式(X)中、Rがエチルであり、RがCHCHCHであり、かつアルキル基C1735が直鎖のシランカップリング剤である、請求項1に記載のゴム加硫物の製造方法。
【請求項3】
アミノ酸、又はその誘導体の骨格を有する有機珪素化合物が、式[Y-1]で表される有機珪素化合物、及び/又は式[Y-2]で表される有機珪素化合物、及びそれらの縮合物である、請求項1に記載のゴム加硫物の製造方法。
(RO)Si-R-S-C(=O)-C(-R)-NH-R …[Y-1]
[式[Y-1]中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、Rは水素、又は有機基であり、Rは水素、又はアミノ基の保護基である。]、または、
(RO)Si-R-S-C(=O)-R-NH-R10 …[Y-2]
[式[Y-2]中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、Rは置換もしくは無置換の芳香環を含んでいても良い炭素数1~20の二価の炭化水素基であり、R10は水素、あるいはアミノ基の保護基である。]
【請求項4】
(保護化)メルカプト系有機珪素化合物が、一般式[Z]で表される化合物である請求項1に記載のゴム加硫物の製造方法。
11 (R123-n-Si-R13-S-CO-R14…[Z]
(式[Z]中、R11は、それぞれ独立して、炭化水素基、R12は、それぞれ独立して、アルコキシ基、R13は、二価の炭化水素基、R14は炭素数1~18の一価の炭化水素である。nは、0、1または2の整数である。)
【請求項5】
上記ゴム(A)が、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレン共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)から選択される1種である、又は2種以上である、請求項1~4のいずれかに記載のゴム加硫物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム加硫物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、低燃費性、制動性に優れたシリカ配合タイヤを始めとし、防振ゴムや各種ゴムロール等様々なシリカ配合ゴム製品が普及しつつある。しかしながら、シリカ配合ゴム組成物はコンパウンド粘度が著しく上昇するため、シランカップリング剤を配合することにより粘度の上昇を緩和する手法が一般的に取られている。また、シランカップリング剤は、シリカ表面のシラノールと反応することによりシリカ同士の相互作用を低減し、ゴムの損失正接や動的弾性率を下げることが知られている。
【0003】
現在、シランカップリング剤の中でも、低燃費タイヤ用途ではポリスルフィド系カップリング剤が多用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-103794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、より低燃費性、グリップ性に優れたタイヤを可能とするゴム加硫物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討の結果、
項1. ゴム(A)、無機充填材(B)、シランカップリング剤(C)、塩基性化合物(D)とを混練して、ゴム組成物を得る工程(A工程)と、
前記A工程で得られたゴム組成物に、加硫剤を添加し、加硫することにより、ゴム加硫物を得る工程(B工程)を含む、ゴム加硫物の製造方法であり、
シランカップリング剤(C)が、(保護化)メルカプト系有機珪素化合物、アミノ酸、又はその誘導体の骨格を有する有機珪素化合物、及びそれらの縮合物、式(X)で表される化合物、から選択される少なくとも1種である。
(RO)Si-R-S-C(=O)-C1735 …(X)
[式(X)中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、アルキル基C1735は分枝鎖または直鎖である]
項2. 前記式(X)中、Rがエチルであり、RがCHCHCHであり、かつアルキル基C1735が直鎖のシランカップリング剤である、項1に記載のゴム加硫物の製造方法。
項3. アミノ酸、又はその誘導体の骨格を有する有機珪素化合物が、式[Y-1]で表される有機珪素化合物、及び/又は式[Y-2]で表される有機珪素化合物、及びそれらの縮合物である、項1に記載のゴム加硫物の製造方法。
(RO)Si-R-S-C(=O)-C(-R)-NH-R …[Y-1]
[式[Y-1]中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、Rは水素、又は有機基であり、Rは水素、又はアミノ基の保護基である。]、または、
(RO)Si-R-S-C(=O)-R-NH-R10 …[Y-2]
(式[Y-2]中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、Rは置換もしくは無置換の芳香環を含んでいても良い炭素数1~20の二価の炭化水素基であり、R10は水素、あるいはアミノ基の保護基である。
項4.(保護化)メルカプト系有機珪素化合物が、式[Z]で表される化合物である項1に記載のゴム加硫物の製造方法。
11 (R123-n-Si-R13-S-CO-R14…[Z]
(式[Z]中、R11は、それぞれ独立して、炭化水素基、R12は、それぞれ独立して、アルコキシ基、R13は、二価の炭化水素基、R14は炭素数1~18の一価の炭化水素である。nは、0、1または2の整数である。)
項5. 上記ゴム(A)が、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレン共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)から選択される1種である、又は2種以上である、項1~4のいずれかに記載のゴム加硫物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明者らは、A工程において、特定のシランカップリング剤(C)と塩基性化合物(D)の両方を添加して、混練してゴム組成物を得た後、B工程において、加硫剤を添加し、加硫してゴム加硫物を得る。当該ゴム加硫物をタイヤとして用いた際に低燃費性、グリップ性に優れることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ゴム(A)、無機充填材(B)、シランカップリング剤(C)、塩基性化合物(D)とを混練して、ゴム組成物を得る工程(A工程)と、
前記A工程で得られたゴム組成物に、加硫剤を添加し、加硫することにより、ゴム加硫物を得る工程(B工程)を含む、ゴム加硫物の製造方法であり、
シランカップリング剤(C)が、(保護化)メルカプト系有機珪素化合物、アミノ酸、又はその誘導体の骨格を有する有機珪素化合物、及びそれらの縮合物、式(X)で表される化合物、から選択される少なくとも1種である。
(RO)Si-R-S-C(=O)-C1735 …(X)
[式(X)中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、アルキル基C1735は分枝鎖または直鎖である]
【0009】
A工程
本発明のゴム加硫物の製造方法におけるA工程は、ゴム(A)、無機充填材(B)、シランカップリング剤(C)、塩基性化合物(D)とを混練して、ゴム組成物を得る工程である。
【0010】
ゴム組成物
本発明のA工程におけるゴム組成物は、ゴム(A)、無機充填材(B)、シランカップリング剤(C)、塩基性化合物(D)を含むものである。
【0011】
ゴム(A)
A工程におけるゴム組成物に用いるゴム(A)は、特に限定されるものではなく、天然ゴムであっても、合成ゴムであってもよい。また、合成ゴムとしても、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等のジエン系ゴム;ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、フッ素ゴム(FKM)等のオレフィン系ゴム;シリコーンゴム(Q);ウレタンゴム(AU)等を挙げることができる。
【0012】
上記ゴム(A)は、どのような重合方法によって製造されたものでもよく、乳化重合により製造されたゴムであっても、溶液重合によって製造されたゴムであってもよい。また、上記ゴムは、分子末端が変性された、いわゆる末端変性ゴムであってもよい。
【0013】
上記ゴム(A)は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
中でも、シランカップリング剤(C)との反応性の観点から、上記ゴム(A)は、ジエン系ゴムであることがより好ましい。とりわけ、上記ゴムは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、およびエチレン-プロピレンゴム(EPDM)からなる群より選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0015】
A工程において、ゴム組成物に用いるゴム(A)の含有量は、特に限定されないが、例えば、ゴム組成物全体に対して、20~80質量%であればよい。
【0016】
無機充填剤(B)
本発明のA工程におけるゴム組成物に用いる無機充填剤(B)としては、ゴム組成物の混練作業時に通常添加されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、湿式シリカ、乾式シリカおよび水酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つを好適に用いることができる。これらの無機充填材(B)を用いることにより、ゴムの補強性をさらに向上させることができるという効果を得ることができる。中でも、シランカップリング剤との反応性の観点から、湿式シリカが無機填材(B)として用いられることが特に好ましい。また、上記湿式シリカ、乾式シリカおよび水酸化アルミニウムのBET比表面積は20~300m/gであることが好ましく、50~250m/gであることがより好ましく、100~250m/gであることがさらに好ましい。上記無機充填材(B)のBET比表面積が20m/gであれば、無機充填材(B)とゴム(A)とを混ぜ合わせたときの、ゴムの補強性に優れ、ゴムの耐摩耗性が向上する。BET比表面積が300m/g以下であれば、無機充填材(B)とゴム(A)とを混ぜ合わせたときの、ゴムの粘度上昇を抑えることができ、無機充填材(B)とゴムとを、より均一に混練できる。
【0017】
A工程において、ゴム組成物に用いる無機充填材(B)の含有量は、これに限定されるものではないが、ゴム(A)100重量部に対して、10~150重量部であることが好ましく、20~120重量部であることがより好ましく、60~120重量部であることがさらに好ましい。
【0018】
シランカップリング剤(C)
本発明のA工程におけるゴム組成物に用いるシランカップリング剤(C)は、特に限定されるものではないが、(保護化)メルカプト系有機珪素化合物、アミノ酸、又はその誘導体の骨格を有する有機珪素化合物、及びそれらの縮合物、式(X)で表される化合物を例示することができる。
(RO)Si-R-S-C(=O)-C1735 …(X)
[式(X)中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、アルキル基C1735は分枝鎖または直鎖である]
【0019】
式(X)で表される化合物
式(X)で表される化合物として、下記のものを例示することができる。
(RO)Si-R-S-C(=O)-C1735 …[X]
[式(X)中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキル、好ましくはメチルまたはエチルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素、好ましくはCH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCH、CH(CH)、CHCH(CH)、C(CH、CH(C)、CHCHCH(CH)、CHCH(CH)CHを意味し、アルキル基C1735は分枝鎖または直鎖である]
【0020】
式(X)中、Rがエチルであってよく、RがCHCHCHであってよく、かつアルキル基C1735が直鎖((CH16CH)であってよい。
【0021】
式(X)で表される化合物としては、例えば、下記に例示する化合物を例示することができる。
【0022】
(CHO)Si-CH-S-C(=O)-C1735
(CHO)Si-CHCH-S-C(=O)-C1735
(CHO)Si-CHCHCH-S-C(=O)-C1735
(CHO)Si-CHCHCHCH-S-C(=O)-C1735
(CHO)Si-CHCHCHCHCH-S-C(=O)-C1735
(CHCHO)Si-CH-S-C(=O)-C1735
(CHCHO)Si-CHCH-S-C(=O)-C1735
(CHCHO)Si-CHCHCH-S-C(=O)-C1735
(CHCHO)Si-CHCHCHCH-S-C(=O)-C1735、または、
(CHCHO)Si-CHCHCHCHCH-S-C(=O)-C1735
【0023】
式(X)で表される化合物は、補助塩基の存在で、適当な溶媒中で、式(X-1)(RO)Si-R-SHに相応するメルカプトシランをステアリン酸塩化物と反応させ、生成した固体残渣から濾別し、溶媒を留去することにより製造することができる。
[式(X-1)中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキル、好ましくはメチルまたはエチルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素、好ましくはCH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCH、CH(CH)、CHCH(CH)、C(CH、CH(C)、CHCHCH(CH)、CHCH(CH)CHを意味する。]
【0024】
式(X-1)中、Rがエチルであってよく、RがCHCHCHであってよく、かつアルキル基C1735が直鎖((CH16CH)であってよい。
【0025】
式(X)で表される化合物の製造に用いる、式(X-1)(RO)Si-R-SHのメルカプトシランとしては、以下の化合物を例示することができる。
【0026】
(CHO)Si-CH-SH、
(CHO)Si-CHCH-SH、
(CHO)Si-CHCHCH-SH、
(CHO)Si-CHCHCHCH-SH、
(CHO)Si-CHCHCHCHCH-SH、
(CHCHO)Si-CH-SH、
(CHCHO)Si-CHCH-SH、
(CHCHO)Si-CHCHCH-SH、
(CHCHO)Si-CHCHCHCH-SH、または、
(CHCHO)Si-CHCHCHCHCH-SH。
【0027】
式(X)で表される化合物の製造に用いる、補助塩基としてトリエチルアミンまたは別のアミンを使用してもよい。溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素や、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素や、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒や、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶媒や、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒や、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒や、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン系溶媒等が例示される。また、溶媒はこれらの1種類または2種類以上を用いてもよい。
【0028】
アミノ酸、又はその誘導体の骨格を有する有機珪素化合物、及びそれらの縮合物
アミノ酸、又はその誘導体の骨格を有する有機珪素化合物として、式[Y-1]で表される有機珪素化合物、及び/又は式[Y-2]で表される有機珪素化合物を例示することができる。
(RO)Si-R-S-C(=O)-C(-R)-NH-R …[Y-1]
[式[Y-1]中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、Rは水素、又は有機基であり、Rは水素、又はアミノ基の保護基である。]、または、
(RO)Si-R-S-C(=O)-R-NH-R10 …[Y-2]
[式[Y-2]中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、Rは置換もしくは無置換の芳香環を含んでいても良い炭素数1~20の二価の炭化水素基であり、R10は水素、あるいはアミノ基の保護基である。]
【0029】
アミノ酸、又はその誘導体の骨格を有する有機珪素化合物として、式[Y-1]で表される有機珪素化合物を例示することができる。
(RO)Si-R-S-C(=O)-C(-R)-NH-R …(Y-1)
[式[Y-1]中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、Rは水素、又は有機基であり、Rは水素、又はアミノ基の保護基である。]
【0030】
式[Y-1]で表される有機珪素化合物において、Rは水素、又は有機基であり、有機基としてはアミノ酸側鎖基、アミノ酸側鎖基より誘導される基を例示することができる。アミノ酸側鎖基とは、アミノ酸由来の側鎖に位置する官能基を意味しており、具体的には-(CH-NH-C(NH)(=NH)(アルギニン側鎖基)、-(CHNH(リシン側鎖基)、-CHOH(セリン側鎖基)、-CHOHCH(スレオニン側鎖基)、-CH-C-OH(チロシン側鎖基)、-CHCONH(アスパラギン側鎖基)、-CHCOOH(アスパラギン酸側鎖基)、-(CHCONH(グルタミン側鎖基)、-(CHCOOH(グルタミン酸側鎖基)、-CHSH(システイン側鎖基)、-H(グリシン側鎖基)、-CH(アラニン側鎖基)、-CHC(C=CH-N=CH-NH-)(ヒスチジン側鎖基)、-CH(CH)CHCH(イソロイシン側鎖基)、-CHCH(CH(ロイシン側鎖基)、-(CHSCH(メチオニン側鎖基)、-CH(フェニルアラニン側鎖基)、-CH-C(C=CH-NH-Ph-)(トリプトファン側鎖基)、-CH(CH(バリン側鎖基)等が挙げられる。Rは、水素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のチオエーテル(-S-)を有するアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族基であることが好ましく、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~5のアルキル基、置換もしくは無置換のチオエーテル(-S-)を有する炭素数1~5のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~10の芳香族基であることがより好ましい。
【0031】
式[Y-1]で表される有機珪素化合物において、Rは水素、又はアミノ基の保護基である。アミノ基の保護基としては、アミノ基の保護基として作用する基であれば特に限定されないが、tert-ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アセチル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、ベンジル基、4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4’-スルホニル基、5-ジメチルアミノナフタレン-1-スルホニル基、2,4-ジニトロフェニル基、2-ニトロフェニルスルフェニル基、クロロアセチル基、ホルミル基等が挙げられる。Rは、水素、tert-ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、オクタノイル基であることが好ましい。
【0032】
式[Y-1]で表される有機珪素化合物において、置換しうる置換基としては、メチル、エチル、イソプロピル等のアルキル基、フェニル等のアリール基、ベンジル等のアラルキル基、ビニル基等の不飽和炭化水素基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲノ基、アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0033】
アミノ酸、又はその誘導体の骨格を有する有機珪素化合物として、式[Y-2]で表される有機珪素化合物を例示することができる。
(RO)Si-R-S-C(=O)-R-NH-R10 …[Y-2]
[式[Y-2]中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、Rは置換もしくは無置換の芳香環を含んでいても良い炭素数1~20の二価の炭化水素基であり、R10は水素、あるいはアミノ基の保護基である。]
【0034】
式[Y-2]中、Rは互いに独立してHまたは(C~C)アルキルを意味し、Rは直鎖(C~C)二重結合炭化水素または分枝鎖(C~C)二重結合炭化水素、飽和(C~C)二重結合炭化水素または不飽和(C~C)二重結合炭化水素を意味し、Rは置換もしくは無置換の芳香環を含んでいても良い炭素数1~20の二価の炭化水素基であり、R10は水素、あるいはアミノ基の保護基である。
【0035】
式[Y-2]で表される有機珪素化合物において、Rは置換もしくは無置換の芳香環を含んでいても良い炭素数1~20の二価の炭化水素基であり、置換もしくは無置換の芳香環を含んでいても良い炭素数1~12の二価の炭化水素基が好ましく、置換もしくは無置換の炭素数1~8のアルキレン基が特に好ましい。
【0036】
式[Y-2]で表される有機珪素化合物において、R10は水素、又はアミノ基の保護基である。アミノ基の保護基としては、アミノ基の保護基として作用する基であれば特に限定されないが、tert-ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アセチル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、ベンジル基、4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4’-スルホニル基、5-ジメチルアミノナフタレン-1-スルホニル基、2,4-ジニトロフェニル基、2-ニトロフェニルスルフェニル基、クロロアセチル基、ホルミル基等が挙げられる。R10は、水素、tert-ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、オクタノイル基であることが好ましい。
【0037】
式[Y-2]で表される有機珪素化合物において、置換しうる置換基としては、メチル、エチル、イソプロピル等のアルキル基、フェニル等のアリール基、ベンジル等のアラルキル基、ビニル基等の不飽和炭化水素基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲノ基、アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0038】
本発明の有機珪素化合物の製造方法は特に限定されることがないが、具体的には、カルボジイミド縮合剤と塩基の存在下、メルカプトシランをN-保護アミノ酸、又はN-保護アミノカルボン酸と反応させることにより製造する方法を例示することができる。
【0039】
N-保護アミノ酸はアミノ酸のアミノ基を公知の保護基、例えば段落「0031」等で記載された保護基で保護されたものであり、具体的に例示すると、Boc-アラニン、Boc-フェニルアラニン、Boc-メチオニン、Z-アラニン、Z-フェニルアラニン、Z-メチオニン、Ac-アラニン、Ac-フェニルアラニン、Ac-メチオニン、N-(オクタノイル)アラニン、N-(オクタノイル)フェニルアラニン、N-(オクタノイル)メチオニン等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0040】
N-保護アミノカルボン酸はアミノカルボン酸のアミノ基を公知の保護基、例えば段落「0036」で記載された保護基で保護されたものであり、具体的に例示すると、3-Boc-アミノプロパン酸、3-Z-アミノプロパン酸、3-Ac-アミノプロパン酸、3-(オクタノイル)アミノプロパン酸、4-Boc-アミノ酪酸、4-Z-アミノ酪酸、4-Ac-アミノ酪酸、4-(オクタノイル)アミノ酪酸、5-Boc-アミノ吉草酸、5-Z-アミノ吉草酸、5-Ac-アミノ吉草酸、5-(オクタノイル)アミノ吉草酸、6-Boc-アミノカプロン酸、6-Z-アミノカプロン酸、6-Ac-アミノカプロン酸、6-(オクタノイル)アミノカプロン酸、7-Boc-アミノヘプタン酸、7-Z-アミノヘプタン酸、7-Ac-アミノヘプタン酸、7-(オクタノイル)アミノヘプタン酸、8-Boc-アミノオクタン酸、8-Z-アミノオクタン酸、8-Ac-アミノオクタン酸、8-(オクタノイル)アミノオクタン酸、9-Boc-アミノナノン酸、9-Z-アミノナノン酸、9-Ac-アミノナノン酸、9-(オクタノイル)アミノナノン酸、11-Boc-アミノウンデカン酸、11-Z-アミノウンデカン酸、11-Ac-アミノウンデカン酸、11-(オクタノイル)アミノウンデカン酸、12-Boc-アミノドデカン酸、12-Z-アミノドデカン酸、12-Ac-アミノドデカン酸、12-(オクタノイル)アミノドデカン酸、13-Boc-アミノトリデカン酸、13-Z-アミノトリデカン酸、13-Ac-アミノトリデカン酸、13-(オクタノイル)アミノトリデカン酸等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。なお、Bocはtert-ブチルオキシカルボニル基の略称、Zはベンジルオキシカルボニル基の略称、Acはアセチル基の略称である。
【0041】
本発明のシランカップリング剤(C)としては、式[Y-1]、[Y-2]で表される有機珪素化合物を加水分解後に縮合反応させて得られた縮合物(オリゴマー)であっても良く、他の成分と縮合反応させて得られた縮合物(オリゴマー)であっても良い。他の成分としては二価以上の炭素数1~60の分子内に窒素原子を含んでいてもよいアルキルポリオール及び/又は二価以上の炭素数2~60の分子内に窒素原子を含んでいてもよい(ポリ)アルキルエーテルポリオールが例示され、炭素数2~60のアルキルポリオール及び/又は炭素数2~60の(ポリ)アルキルエーテルポリオールが好ましく、炭素数2~30のアルキルポリオール及び/又は炭素数2~30の(ポリ)アルキルエーテルポリオールがより好ましい。
【0042】
本発明の二価以上の炭素数1~60の分子内に窒素原子を含んでいてもよいアルキルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が例示される。二価以上の炭素数2~60の分子内に窒素原子を含んでいてもよい(ポリ)アルキルエーテルポリオールとしては、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示される。
【0043】
(保護化)メルカプト系有機珪素化合物
(保護化)メルカプト系有機珪素化合物としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等の、化合物としてメルカプト基を有しているメルカプト系有機珪素化合物、及び、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン等の化合物としてはメルカプト基を有していない(メルカプト基が保護されている)有機珪素化合物であって、熱、薬剤等を加えられることにより、後発的にメルカプト基を有することになる保護化メルカプト系有機珪素化合物を例示することができる。
【0044】
(保護化)メルカプト系有機珪素化合物としては、以下式[Z]で表される化合物であることが好ましい。
11 (R123-n-Si-R13-S-CO-R14…[Z]
(式[Z]中、R11は、それぞれ独立して、炭化水素基、R12は、それぞれ独立して、アルコキシ基、R13は、二価の炭化水素基、R14は炭素数1~18の一価の炭化水素である。nは、0、1または2の整数である。)
11は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
12は、それぞれ独立して、アルコキシ基であり、好ましくは炭素数1~8のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシ基である。
13は、二価の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~18の二価の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基である。
14は炭素数1~18の一価の炭化水素基であることが好ましく、炭素数8~18の一価の炭化水素基であることがより好ましい。
nは、0、1または2である。
【0045】
(保護化)メルカプト系有機珪素化合物を具体的に例示すると、NXT、式[1]で表されるNXT-LowV、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独又は混合して使用することもできる。市販品を用いてもよく、通常知られている公知の合成方法で合成してもののいずれを用いてもよい。
【化1】
【0046】
中でも、シランカップリング剤(C)として、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタデカノイルチオプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0047】
A工程において、ゴム組成物に用いるシランカップリング剤(C)の含有量としては、ゴム100質量部に対して、1~30質量部を含有することが好ましく、2~25質量部を含有することがより好ましく、3~15質量部を含有することが特に好ましい。
【0048】
その他のシランカップリング剤
本発明のゴム組成物には、上述したシランカップリング剤(C)以外に、通常ゴムに配合されるシランカップリング剤を組み合わせて配合してもよい。その他のシランカップリング剤として、例えば、ビニル系有機珪素化合物、アルキル系有機珪素化合物、エポキシ系有機珪素化合物、メタクリル系有機珪素化合物、(ポリ)スルフィド系有機珪素化合物、及びそれらの縮合物から少なくとも一種を含有してもよい(以下、これらの有機珪素化合物を「他の有機珪素化合物」と総称する場合がある)。
【0049】
本発明のゴム組成物では、他の有機珪素化合物、即ち、ビニル系有機珪素化合物、アルキル系有機珪素化合物、エポキシ系有機珪素化合物、メタクリル系有機珪素化合物、(ポリ)スルフィド系有機珪素化合物、及びそれらの縮合物から選択される少なくとも一種を含有する場合には、無機充填材100質量部に対して0.1~20質量部を配合することが好ましく、0.5~15質量部を配合することがより好ましく、0.5~10質量部とすることが更に好ましく、0.5~5.0質量部とすることがより更に好ましい。
【0050】
本発明のビニル系有機珪素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリクロロビニルシラ等が例示される。
【0051】
本発明のアルキル系有機珪素化合物としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトシキシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が例示される。
【0052】
本発明のエポキシ系有機珪素化合物としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
【0053】
本発明のメタクリル系有機珪素化合物としては、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
【0054】
本発明の(ポリ)スルフィド系有機珪素化合物としては、式(2)で表されるポリスルフィド系シランカップリング剤が例示され、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
(R15-O)3-m(R15)-Si-R16-S-R16-Si-(R15)(O-R15)3-m・・・(2)
(式(2)中、R15は独立して炭素数1~18のアルキル基、C2a+1O-((CHO)で表されaは1~18、bは1~6、cは1~18であるポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル基から選択され、R16は炭素数1~9のアルキレン基又は二価のフェニル基、lは1~9、mは0、1、又は2の整数である。)
【0055】
併用される他の有機珪素化合物を具体的に例示すると、株式会社大阪ソーダ製のカブラス2とカブラス4、デグサ社製の、前記カブラス-2タイプに相当するSi-75、前記カブラス-4タイプに相当するSi-69、下記式(3)で表されるSi-363、モメンティブ社製の、前記カブラス-4タイプに相当するA-1289、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランであるA-189、前記カブラス-4タイプに相当する信越化学社製のKBE-846、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独又は混合して使用することもできる。
【0056】
【化2】
【0057】
また、本発明の有機珪素化合物、及びビニル系有機珪素化合物、アルキル系有機珪素化合物、エポキシ系有機珪素化合物、メタクリル系有機珪素化合物、(ポリ)スルフィド系有機珪素化合物、及びそれらの縮合物から少なくとも一種は、それらの合計質量がシリカ系充填材100質量部に対し30質量部を超えないことが好ましい。
【0058】
塩基性化合物(D)
A工程におけるゴム組成物に用いる塩基性化合物(D)としては、特に制限されないが、第1級アミン化合物(d-1)、第2級アミン化合物(d-2)、及び第3級アミン化合物(d-3)等を例示することができる。
【0059】
第1級アミン化合物(d-1)としては、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、1,2-ジメチルプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、イソアミルアミン、tert-アミルアミン、3-ペンチルアミン、n-アミルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、2-オクチルアミン、tert-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、n-アミノデカン、n-アミノウンデカン、n-ドデシルアミン、n-トリデシルアミン、2-トリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、n-オレイルアミン、ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミン、3-フェニルプロピルアミン、エタノールアミン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン等の直鎖又は分岐炭化水素基を有するアルキルアミン等を例示することができる。
【0060】
また、脂環式アミンであるシクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミンや、芳香族アミンであるアニリン等も例示することができる。さらに、3-イソプロポキシプロピルアミン、イソブトキシプロピルアミン、モルフォリン等のエーテルアミンも例示することができる。
【0061】
第2級アミン化合物(d-2)としては、N,N-ジプロピルアミン、N,N-ジブチルアミン、N,N-ジペンチルアミン、N,N-ジヘキシルアミン、N,N-ジペプチルアミン、N,N-ジオクチルアミン、N,N-ジノニルアミン、N,N-ジデシルアミン、N,N-ジウンデシルアミン、N,N-ジドデシルアミン、N,N-ジステアリルアミン、N-メチル-N-プロピルアミン、N-エチル-N-プロピルアミン、N-プロピル-N-ブチルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、(3-(ブチルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン、
等のジアルキルモノアミン、およびピペリジン等の環状アミンを例示することができる。
【0062】
第3級アミン化合物(d-3)としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、キヌクリジン、ジメチルアミノエタノール、ピリジン、(3-(ジメチルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン、(3-(ジエチルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン等を例示することができる。
【0063】
さらに、本発明では、ひとつの化合物中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物(d-4)も用いることができる。ジアミン化合物(d-4)としては、エチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル‐1,3‐プロパンジアミン、N,N’‐ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、N,N-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,6-ヘキサンジアミン、N,N-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、イミダゾール、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(プロトンスポンジ)、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を例示することができる。
【0064】
また、本発明の塩基性化合物(D)として、上述したもの以外に、ジエチレントリアミン、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-о-トリルグアニジン、1,2,3-トリフェニルグアニジン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン等を例示することができる。
【0065】
本発明のゴム組成物においては、塩基性化合物(D)として、上述したものを単独で、または複数を組み合わせ用いてもよい。
【0066】
中でも、塩基性化合物(D)として、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、キヌクリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-о-トリルグアニジン、1,2,3-トリフェニルグアニジン、ヘキサメチレンテトラミンが好ましく、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、1,3-ジフェニルグアニジンがより好ましい。
【0067】
本発明のゴム組成物における塩基性化合物の配合量は、ゴム100質量部に対して、0.1~10質量部であればよく、0.1~5質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましく、0.5~3質量部であることがさらに好ましく、0.5~1.5質量部であることが最も好ましい
【0068】
A工程における混練条件
A工程では、ゴム(A)と、無機充填剤(B)とシランカップリング剤(C)を、塩基性化合物(D)を混練して、ゴム組成物を得る工程である。
【0069】
A工程は、加硫剤を添加し、加硫するB工程の前に行うことが好ましい。すなわち、A工程では、無機充填剤(B)とシランカップリング剤(C)と塩基性化合物(D)を、加硫剤を添加する前にゴムと混練することにより、ゴム組成物が得られる工程である。
【0070】
A工程では、ゴム(A)と、無機充填剤(B)とシランカップリング剤(C)と塩基性化合物(D)を、80~250℃で混練することが好ましく、80~200℃で混練することがより好ましい。かかる温度範囲で上記成分を混練することにより、混練物をゲル化やスコーチさせること無く無機充填剤等を均一に分散せしめ好適に各成分を混練することができる。また、A工程では、加硫剤が添加されていないため、架橋の形成を気にすることなく、比較的高温で混練を行うことが可能となる。A工程の混練時間は特に制限はないが、例えば1分~1時間である。
【0071】
A工程における混練には、通常ゴム工業にて使用されるロール、加圧ニーダー、インターミキサー、バンバリーミキサー等の各種混合機械を用いることができる。
【0072】
A工程における、ゴム(A)、無機充填剤(B)とシランカップリング剤(C)と塩基性化合物(D)の添加順は特に制限がないが、先にゴム(A)のみを添加し、予備混練した後、他の成分の順に添加することが好ましい。
【0073】
通常、ゴム加硫物を得る場合、A工程では、ゴム(A)、無機充填剤(B)、シランカップリング剤(C)を混練し、ゴム組成物を得た後、B工程において、塩基性化合物(D)や加硫剤等を添加し、加硫を行い、ゴム加硫物を得るのが一般的であるが、本発明の製造方法におけるポイントは、A工程において、ゴム(A)、無機充填剤(B)、シランカップリング剤(C)に加えて、塩基性化合物(D)も添加した上で、混練し、ゴム組成物を得た後、B工程において、加硫剤等を添加し、加硫を行い、ゴム加硫物を得ることで、低燃費性、グリップ性に優れたタイヤを可能とするゴム加硫物を得ることができる。
【0074】
これは、A工程において、ゴム(A)、無機充填剤(B)、シランカップリング剤(C)に加えて、塩基性化合物(D)も添加した上で、混練することで、チオエステル結合の分解を促進してメルカプトシランをより多く発生させるためである。
【0075】
B工程
本発明のゴム加硫物の製造方法におけるB工程は、A工程で得られたゴム組成物に通常ゴム工業で用いられる配合剤を添加し、加硫することにより、ゴム加硫物を得る工程である。
【0076】
B工程において、A工程で得られたゴム組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない限り、通常ゴム工業で用いられる配合剤を使用できる。例えば、加硫剤、ステアリン酸等の加工助剤、チタネート系等のカップリング剤、フェニル-α-ナフチルアミンやN-フェニル-N’ -(1、3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン等の老化防止剤、カーボンブラック、炭酸カルシウム等の充填剤、スルフェンアミド系架橋促進剤、亜鉛華(酸化亜鉛)等の架橋促進(助)剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘着付与剤、スコーチ防止剤等を使用できる。
【0077】
かかる加硫剤としては、ゴム組成物の混練作業時に通常添加されるものであれば特に限定されるものではないが、硫黄、セレン、有機過酸化物、モルホリンジスルフィド、チウラム系化合物およびオキシム系化合物から選択される少なくとも一つであることがより好ましい。
【0078】
本発明に係るゴム組成物に含有される上記加硫剤の含有量も特に限定されるものではないが、ゴム100重量部に対して、0.1~20重量部であることが好ましく、0.2~15重量部であることがより好ましく、0.5~10重量部であることがさらに好ましい。
【0079】
上記加硫剤の含有量が、ゴム100重量部に対して、0.1重量部以上であることにより、ゴムを好適に架橋することができるため好ましい。また上記加硫剤の含有量が、ゴム100重量部に対して、20重量部以下であることにより、ゴム状弾性を保つことが可能であるため好ましい。
【0080】
スルフェンアミド系架橋促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N-第三ブチル-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N-第三ブチル-ジ(2-ベンゾチアゾール)スルフェンイミド等が挙げられる。
【0081】
ゴム組成物における架橋促進(助)剤の配合量は、ゴム100質量部に対して、0.1~15質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、3~9質量部であることが特に好ましい。架橋促進(助)剤の配合量とは、架橋促進剤及び架橋促進助剤に該当するものの合計配合量であり、架橋促進剤及び架橋促進助剤を両方使用する場合には、それらの合計配合量を表す。
【0082】
加工助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリルアミン、オレイルアミン等の高級脂肪族アミン等が挙げられる。
【0083】
ゴム組成物における加工助剤の配合量は、ゴム100質量部に対して、例えば、300質量部以下、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。
【0084】
軟化剤としては、カルナバワックス、セレシンワックス等の石油系ワックス;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等のポリグリコール;ワセリン、パラフィン、ナフテン等の脂肪族炭化水素;シリコーン系オイル等が挙げられる。
【0085】
ゴム組成物における軟化剤の配合量は、ゴム100質量部に対して、例えば、300質量部以下、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。
【0086】
ゴム組成物における老化防止剤の配合量は、ゴム100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0087】
ゴム組成物は、更にカーボンブラックを含有してもよい。カーボンブラックとしては、以下のものに限定されないが、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが挙げられる。
【0088】
カーボンブラックの配合量は、ゴム100質量部に対して、0.5~100質量部含有することが好ましく、1~90質量部含有することがより好ましく、2~80質量部含有することが特に好ましい。
【0089】
B工程における加硫条件
B工程では、上記A工程で得られたゴム組成物に適宜、上述した配合材を添加し、加硫することにより、ゴム加硫物が得られる。すなわち、架橋用ゴム組成物が得られる。B工程では、上記A工程で得られたゴム組成物に上述した配合材(例えば、加硫剤等)添加し、100℃以上で混練することが好ましい。好ましくは120~230℃で、1分~3時間加熱してゴム加硫物を得る。また、加硫の際には金型を用いても良い。
【0090】
ゴム組成物の利用
B工程において得られたゴム加硫物は、ゴム製品として様々な用途に利用することができる。かかるゴム加硫物の形状は特に限定されるものではなく、タイヤ、チューブ、ベルト、ホース、工業用品等として利用することができる。
【0091】
ゴム加硫物は、上述したように、ヒステリシスロスが小さいため、例えば、タイヤとして用いたときに、タイヤ走行時のエネルギーロスを小さくすることができ、転がり抵抗を低減させることができる。それゆえ、とりわけ、タイヤ(特にトレッド部分)等の動的に使用されるゴム部品で好適に使用することができる。
【0092】
【実施例0093】
以下の実施例において本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0094】
(合成例1)式(X)で表されるシランカップリング剤の製造((EtO) Si-(CH -S-C(=O)-C 17 35 の製造)
石油エーテル(沸点範囲50~70℃)1300ml中の3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン98.66gの溶液に、5℃でトリエチルアミン48.15gを添加した後、加熱可能な滴下漏斗を用いてステアリン酸塩化物125.35gを滴加した。90分還流で加熱した後、冷却した懸濁液を濾過し、フィルターケーキを石油エーテルで二回再洗浄し、得られた濾液をまとめ、溶剤を除去した。H-NMR分析により同定される式(X)で表されるシランカップリング剤186.71g(有機珪素化合物1)を得た。物性値を以下に示す。
H NMR(400MHz、CDCl)δ3.8(q、J=6.8Hz、6H)、2.9(t、J=7.2Hz、2H)、2.5(t、J=8.0Hz、2H)、1.7-1.6(m、4H)、1.4-1.2(m、28H)、1.2(t、J=6.8Hz、9H)、0.9(t、J=6.8Hz、3H)、0.8-0.6(m、2H)
【0095】
〔ゴム加硫物の製造〕実施例1~2、比較例1~2
250ccバンバリーミキサータイプのアタッチメントBR-250を備えたラボプラストミル10C100(東洋精機株式会社製)にて混練試験を行った。装置温度は100℃のオイル循環加熱とし、ミキサーのロータ回転速度は80rpm一定とした。配合はゴム100gベースにて試験を行った。手順はゴム成分を30秒間素練りした後、表1の配合(I)に示される薬剤を添加し、30秒間混練した。次いで表1の配合(II)に示される薬剤を添加して3分間混練後、ゴム組成物を得た(A工程)。尚、実施例・比較例の有機珪素化合物の量は、実施例・比較例における有機珪素化合物中の珪素量が同じになるように調整した。また、実施例・比較例で添加する硫黄の量は系内の硫黄量が同じになるように調整した。排出したゴム組成物は室温の6インチロールにて冷却後、表1の配合(III)に示される架橋剤成分を添加し6分間混練して、約2mmの厚みのゴム加硫物(未架橋シート)を得た(B工程)。翌日、残りのコンパウンドを160℃で20分間熱プレス架橋し、試験用サンプル(架橋シート)を得た。なお、実施例1~2では、塩基性化合物をA工程で添加し、比較例1~2では塩基性化合物をB工程で添加している。
【0096】
<動的粘弾性試験>
試験用サンプル(架橋シート)から幅4mm×長さ25mm×厚み2mmの試験片を打ち抜き、株式会社ユービーエム製Rheogel-4000にて、チャック間距離20mm、初期歪0.05%、10Hzの条件下で、tanδを測定した。なお測定温度範囲は-40~80℃とした。
【0097】
以下に実施例及び比較例で用いた配合剤を示す。
*1 JSR株式会社製 SL552
*2 東ソーシリカ株式会社製 Nipsil AQ(BET比表面積215m/g)
*3 日本石油株式会社製 Sunthene415
*4 日油株式会社製 ステアリン酸さくら
*5 大内新興化学工業株式会社製 ノクラック6C
*6 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名「N X T 」
*7 堺化学工業株式会社製 酸化亜鉛2種
*8 大内新興化学工業株式会社製 1,3-ジフェニルグアニジン
*9 大内新興化学工業株式会社製 ノクセラーCZ
*10 細井化学工業株式会社製 コロイド硫黄
*11 株式会社東京化成工業株式会社製 3-アミノプロピルトリエトキシシラン
【0098】
【表1】
【0099】
実施例1~2、比較例1~2で得られた試験用サンプル(架橋シート)について、上述した動的粘弾性試験を行った結果を表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
表2に示される通り、本願発明の製造方法を用いた実施例1~2(A工程において、塩基性化合物(D)を添加して混練)は、一般的な製造方法を用いた比較例1~2(B工程において、塩基性化合物(D)を添加して混練)と比較して、0℃のtanδは大きくグリップ性も優れることが示唆され、60℃のtanδが小さく燃費性に優れることが示唆された。通常、60℃のtanδの値が小さくなると、0℃のtanδの値も小さくなる傾向があるが、本願発明の有機珪素化合物を用いた実施例1は、グリップ性と燃費性の両方で優れる点でも好ましい。
【0102】
(合成例2)式(Y-2)で表されるシランカップリング剤の製造
温度計、磁気攪拌装置を備えた1000mLの三口フラスコに10.8g(82.3mmol)の6-アミノヘキサン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)、50gの超純水、150gのTHF(富士フイルム和光純薬株式会社製)、12.5g(123.4mmol)のトリエチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を加えた。フラスコ内を磁気攪拌装置で攪拌しながら5℃まで冷却した後、13.4g(82.3mmol)のn-オクタノイルクロリド(東京化成工業株式会社製)を加えた。その後、室温まで昇温し終夜攪拌した。反応終了後、減圧濃縮してTHFを除去し、塩酸でpHを1に調整した。生成した白色固体を濾過し、濾残を超純水で洗浄した。得られた濾残をエタノールに溶解させ、そこに超純水を加えて再結晶させた。得られた固体を濾過し、濾残を超純水で洗浄し、乾燥させてN-オクタノイル-6-アミノヘキサン酸を20.0g(収率97%)得た。
【0103】
温度計、磁気攪拌装置を備えた500mLの三口フラスコに上で得られた20.0g(77.7mmol)のN-オクタノイル-6-アミノヘキサン酸、500gのジクロロメタン(富士フイルム和光純薬株式会社製)、18.5g(77.7mmol)の3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(東京化成工業株式会社製)、0.95g(7.8mmol)のN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を加えた。フラスコ内を磁気攪拌装置で攪拌しながら5℃まで冷却した後、17.6g(85.5mmol)のN,N‘-ジシクロヘキシルカルボジイミド(富士フイルム和光純薬株式会社製)を加えた。その後、室温まで昇温し3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を濾過して濾液を減圧濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=8/2)で精製し、無色透明の液体である有機珪素化合物2(式[4])を26.6g(収率72%)得た。物性値を以下に示す。
H NMR(400MHz、CDCl)δ 5.4(br、1H)、3.8(q、J=6.8Hz、6H)、3.2(q、J=6.8Hz、2H)、2.9(t、J=7.6Hz、2H)、2.5(t、J=7.6Hz、2H)、2.1(t、J=7.6Hz、2H)、1.7-1.6(m、6H)、1.6-1.4(m、2H)、1.4-1.3(m、10H)、1.2(t、J=6.8Hz、9H)、0.9-0.8(m、3H)、0.7-0.6(m、2H)
【0104】
【化3】
【0105】
(合成例3)式(Y-1)で表されるシランカップリング剤の製造
温度計、磁気攪拌装置を備えた200mLの三口フラスコに12.0g(53.8mmol)のN-カルボベンゾキシ-L-アラニン(東京化成工業株式会社製)、120gのジクロロメタン(富士フイルム和光純薬株式会社製)、12.8g(53.8mmol)の3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(東京化成工業株式会社製)、0.66g(5.4mmol)のN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を加えた。フラスコ内を磁気攪拌装置で攪拌しながら5℃まで冷却した後、12.2g(59.1mmol)のN,N‘-ジシクロヘキシルカルボジイミド(富士フイルム和光純薬株式会社製)を加えた。その後、室温まで昇温し3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をろ過してろ液を減圧濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製し、無色透明の液体である有機珪素化合物3(式[5])を19.5g(収率82%)得た。物性値を以下に示す。
H NMR(500MHz、CDCl)δ 7.4-7.3(m、5H)、5.3-5.2(m、1H)、5.2-5.1(m、2H)、4.5-4.4(m、1H)、3.8(q、J=7.0Hz、6H)、2.9(t、J=7.5Hz、2H)、1.8-1.6(m、2H)、1.4(d、J=7.5Hz、3H)、1.2(t、J=7.0Hz、9H)、0.8-0.7(m、2H)
【0106】
【化4】
【0107】
実施例1と同じ方法で、表3に示す配合でゴム加硫物を製造し、試験用サンプル(架橋シート)を得た。試験用サンプルについて、上述した動的粘弾性試験を行った結果を表4に示す。
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
表4に記載される通り、本願発明の製造方法を用いた実施例3、4(A工程において、塩基性化合物(D)を添加して混練)は、0℃のtanδは大きくグリップ性も優れることが示唆され、60℃のtanδが小さく燃費性に優れることが示唆された。