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特開2024-163969化合物又はこれと酸性化合物との塩、及びこれらからなる植物成長調節剤、並びにその化合物の製造方法
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  • 特開-化合物又はこれと酸性化合物との塩、及びこれらからなる植物成長調節剤、並びにその化合物の製造方法 図1
  • 特開-化合物又はこれと酸性化合物との塩、及びこれらからなる植物成長調節剤、並びにその化合物の製造方法 図2
  • 特開-化合物又はこれと酸性化合物との塩、及びこれらからなる植物成長調節剤、並びにその化合物の製造方法 図3
  • 特開-化合物又はこれと酸性化合物との塩、及びこれらからなる植物成長調節剤、並びにその化合物の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163969
(43)【公開日】2024-11-26
(54)【発明の名称】化合物又はこれと酸性化合物との塩、及びこれらからなる植物成長調節剤、並びにその化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/18 20060101AFI20241119BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20241119BHJP
   A01N 43/38 20060101ALI20241119BHJP
   C07D 209/20 20060101ALI20241119BHJP
   C07D 209/30 20060101ALI20241119BHJP
   C07D 209/40 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C07D209/18
A01P21/00
A01N43/38
C07D209/20 CSP
C07D209/30
C07D209/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079739
(22)【出願日】2023-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100151183
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】岡本 専太郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 理絵
(72)【発明者】
【氏名】山田 健
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AB03
4H011BB09
4H011DA13
4H011DD03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】植物体内での代謝を利用して持続的にIBAを供給可能なIBA前駆体化合物、及びそれからなる植物成長調節剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表す化合物又はこれと酸性化合物との塩を植物成長調節剤として用いればよい。式中、各Rは、独立に、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又はアルコキシ基であり、Aは、-OR又は-Oであり、Rは、H又はアルキル基であり、Xは、Li、Na、K、NH 又はN であり、R及びRは、一方がHであることを条件に他方が水酸基又はアミノ基であるか、一体となって(=O)基を形成し、各Rは、独立に、H又は炭素数5以下のアルキル基であり、nは、0~4の整数である。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表す化合物又はこれと酸性化合物との塩。
【化1】
(上記一般式(1)中、各Rは、それぞれ独立に、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Aは、-OR又は-Oであり、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、Xは、Li、Na、K、NH 又はN であり、R及びRは、一方が水素原子であることを条件に他方が水酸基又はアミノ基であるか、一体となって(=O)基を形成し、各Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基であり、nは、0~4の整数である。)
【請求項2】
下記化学式のいずれかで表す化合物又はこれと酸性化合物との塩。
【化2】
【請求項3】
下記化学式のいずれかで表す化合物又はこれと酸性化合物との塩。
【化3】
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の化合物又はこれと酸性化合物との塩からなる植物成長調節剤。
【請求項5】
前記植物成長が、側根及び根毛の形成若しくは伸長である請求項4記載の植物成長調節剤。
【請求項6】
以下の工程(a)~工程(c)を順次行う工程を含むことを特徴とする請求項1記載の化合物の製造方法。
工程(a):下記一般式(A)及び(B)で表す化合物をクロスカップリングさせることにより下記一般式(C)で表す化合物を得る工程
【化4】
(一般式(A)中、各Rは、それぞれ独立に、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Xは、ハロゲン原子であり、Rは、水素原子、又はインドール環窒素に対する保護基であり、nは、0~4の整数である。)
【化5】
(一般式(B)中、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、R3pは、保護基を有してもよい水酸基又はアミノ基である。)
【化6】
(一般式(C)中、Rは、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、R3pは、保護基を有してもよい水酸基又はアミノ基であり、Rは、水素原子、又はインドール環窒素に対する保護基であり、nは、0~4の整数である。)

工程(b):一般式(C)で表す化合物を還元することで、下記一般式(D)で表す化合物を得る工程
【化7】
(一般式(D)中、Rは、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、R3pは、保護基を有してもよい水酸基又はアミノ基であり、Rは、水素原子、又はインドール環窒素に対する保護基であり、nは、0~4の整数である。)

工程(c):一般式(D)で表す化合物で表す化合物において、Rが水素原子であり、かつR3pで表す水酸基又はアミノ基が保護基を持たない場合には本工程を行わず、その他の場合に一般式(D)で表す化合物から脱保護を行うことで、下記一般式(E)で表す化合物を得る工程
【化8】
(一般式(E)中、Rは、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、Rは、水酸基又はアミノ基であり、nは、0~4の整数である。)
【請求項7】
以下の工程(d)~工程(f)を順次行う工程を含むことを特徴とする請求項1記載の化合物の製造方法。
工程(d):下記一般式(F)で表す化合物を還元することにより、下記一般式(G)で表す化合物を得る工程
【化9】
(一般式(F)中、各Rは、それぞれ独立に、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、インドール環窒素に対する保護基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、nは、0~4の整数である。)
【化10】
(一般式(G)中、各Rは、それぞれ独立に、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、インドール環窒素に対する保護基であり、nは、0~4の整数である。)

工程(e):一般式(G)で表す化合物にシアン化物アニオンを作用させることにより、下記一般式(H)で表す化合物を得る工程
【化11】
(一般式(H)中、各Rは、それぞれ独立に、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、インドール環窒素に対する保護基であり、nは、0~4の整数である。)

工程(f):一般式(H)で表す化合物に、炭素数1~5のアルコールの存在下又は不存在下で酸又は塩基を作用させることにより、この化合物に存在するシアノ基を加水分解して下記一般式(I)で表す化合物を得る工程
【化12】
(一般式(I)中、Rは、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、nは、0~4の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物又はこれと酸性化合物との塩、及びこれらからなる植物成長調節剤、並びにその化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーキシンは、植物の発生、成長、分化及び様々な環境応答に関与することが知られている植物ホルモンである。天然オーキシンとしては、インドール-3-酢酸(IAA)が最も普遍的に分布していることが知られている。また、インドール-3-酪酸(IBA)及び4-クロロインドール-3-酢酸(4-CI-IAA)等の天然オーキシンが知られている。
【0003】
主要な天然オーキシンであるIAAやIBAは、化学的に不安定であるし、植物体内においては、IAAを分解するIAAの代謝経路が存在する。そのため、植物の生長調節等の目的でIAAを植物体に適用することは必ずしも現実的でなく、合成オーキシンが農薬又は植物化学調節剤として広く用いられている。こうした合成オーキシンとしては、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、1-ナフタレン酢酸(NAA)、2-メチル-4-クロロフェノキシ酪酸(MCPB)等が知られている。例えば2,4-Dは、除草剤や植物の組織培養試薬等として使用され、MCPBは、水田広葉雑草に対する選択的除草剤として使用されている。
【0004】
一方、IBAは、成長効果、発根促進、細胞伸長促進、形成層細胞の分裂誘導等の活性を有する植物成長調節物質であり、植物組織培養用等に用いられている。ここで、IBAは、オーキシンの生合成経路において、IAAと相互変換されることが知られており、IBAからIAAへの変換はβ酸化によって行われるとされる(例えば、非特許文献1を参照)。こうしたことから、従来、IBAは、IAAを介してこれらの作用を発現するものと考えられてきたが、最近では、IBA独自の作用として、例えば、植物の初期生育における側根の形成がIBAによって制御されるとの報告もなされている(非特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mashiguchi, K.ら, 2011年, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 第108巻, p. 18512-18517
【非特許文献2】Woodward A及びBartel B., 2005年, Annals of Botany, 第95巻, p. 707-735
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、IBAは、成長効果、発根促進、細胞伸長促進、形成層細胞の分裂誘導等の活性を有する他、側根の形成や伸長を促す等の独自の効果を備えるので、その応用利用が期待される。しかしながら、IBAは、上記のように、植物体内でIAAに変換されたり代謝分解されたりする代謝不安定性があり、また、IAAとは異なり、持続的に作用する合成類縁体が知られていない。このため、IBAの応用利用が進んでないのが実情だった。
【0007】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、植物体内での代謝を利用して持続的にIBAを供給可能なIBA前駆体化合物、及びそれからなる植物成長調節剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で表す化合物又はこれと酸性化合物との塩が、IBAと同様に、植物体における側根の形成や伸長を促す作用を備えることを見出し、また、これら化合物が、植物体内での代謝によりIBAに変換されることを確認した。本発明は、こうした知見に基づいてなされたものであり、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1)本発明は、下記一般式(1)で表す化合物又はこれと酸性化合物との塩である。
【化1】
(上記一般式(1)中、各Rは、それぞれ独立に、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Aは、-OR又は-Oであり、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、Xは、Li、Na、K、NH 又はN であり、R及びRは、一方が水素原子であることを条件に他方が水酸基又はアミノ基であるか、一体となって(=O)基を形成し、各Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基であり、nは、0~4の整数である。)
【0010】
(2)本発明は、下記化学式のいずれかで表す化合物又はこれと酸性化合物との塩でもある。
【化2】
【0011】
(3)本発明は、下記化学式のいずれかで表す化合物又はこれと酸性化合物との塩でもある。
【化3】
【0012】
(4)本発明は、(1)項~(3)項のいずれか1項記載の化合物又はこれと酸性化合物との塩からなる植物成長調節剤でもある。
【0013】
(5)また本発明は、上記植物成長が側根及び根毛の形成若しくは伸長である(4)項記載の植物成長調節剤である。
【0014】
(6)本発明は、以下の工程(a)~工程(c)を順次行う工程を含むことを特徴とする(1)項記載の化合物の製造方法でもある。
工程(a):下記一般式(A)及び(B)で表す化合物をクロスカップリングさせることにより下記一般式(C)で表す化合物を得る工程
【化4】
(一般式(A)中、Rは、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Xは、ハロゲン原子であり、Rは、水素原子、又はインドール環窒素に対する保護基であり、nは、0~4の整数である。)
【化5】
(一般式(B)中、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、R3pは、保護基を有してもよい水酸基又はアミノ基である。)
【化6】
(一般式(C)中、Rは、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、R3pは、保護基を有してもよい水酸基又はアミノ基であり、Rは、水素原子、又はインドール環窒素に対する保護基であり、nは、0~4の整数である。)

工程(b):一般式(C)で表す化合物を還元することで、下記一般式(D)で表す化合物を得る工程
【化7】
(一般式(D)中、Rは、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、R3pは、保護基を有してもよい水酸基又はアミノ基であり、Rは、水素原子、又はインドール環窒素に対する保護基であり、nは、0~4の整数である。)

工程(c):一般式(D)で表す化合物で表す化合物において、Rが水素原子であり、かつR3pで表す水酸基又はアミノ基が保護基を持たない場合には本工程を行わず、その他の場合に一般式(D)で表す化合物から脱保護を行うことで、下記一般式(E)で表す化合物を得る工程
【化8】
(一般式(E)中、Rは、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、Rは、水酸基又はアミノ基であり、nは、0~4の整数である。)
【0015】
(7)本発明は、以下の工程(d)~工程(f)を順次行う工程を含むことを特徴とする(1)項記載の化合物の製造方法でもある。
工程(d):下記一般式(F)で表す化合物を還元することにより、下記一般式(G)で表す化合物を得る工程
【化9】
(一般式(F)中、各Rは、それぞれ独立に、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、インドール環窒素に対する保護基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、nは、0~4の整数である。)
【化10】
(一般式(G)中、各Rは、それぞれ独立に、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、インドール環窒素に対する保護基であり、nは、0~4の整数である。)

工程(e):一般式(G)で表す化合物にシアン化物アニオンを作用させることにより、下記一般式(H)で表す化合物を得る工程
【化11】
(一般式(H)中、各Rは、それぞれ独立に、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、インドール環窒素に対する保護基であり、nは、0~4の整数である。)

工程(f):一般式(H)で表す化合物に、炭素数1~5のアルコールの存在下又は不存在下で酸又は塩基を作用させることにより、この化合物に存在するシアノ基を加水分解して下記一般式(I)で表す化合物を得る工程
【化12】
(一般式(I)中、Rは、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、nは、0~4の整数である。)
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、植物体内での代謝を利用して持続的にIBAを供給可能なIBA前駆体化合物、及びそれからなる植物成長調節剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、JAX-91又はJAX-44の添加に伴うシロイヌナズナの発根状態を示す画像であり、左から順に、これら化合物を添加しないものの画像、10μMのJAX-91を添加したものの画像、10μMのJAX-44を添加したものの画像になる。
図2図2は、JAX-91又はJAX-44の添加に伴うトマトの発根状態を示す画像であり、左から順に、これら化合物を添加しないものの画像、1μMのJAX-44を添加したものの画像、1μMのJAX-91を添加したものの画像になる。
図3図3は、シロイヌナズナを0~30μMのJAX-44で処理したときの濃度毎の側根原基及び側根の数を算出し、グラフ化したものである。
図4図4は、JAX-44-d8水溶液で処理したシロイヌナズナのサンプルの質量分析チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の化合物の一実施形態、植物成長調節剤の一実施形態、並びに化合物の製造方法の第一実施態様及び第二実施態様について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態や実施態様に何ら限定されるものでなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
【0019】
<化合物又はこれと酸性化合物との塩>
まずは、本発明の化合物又はこれと酸性化合物との塩について説明する。本発明の化合物は、下記一般式(1)で表すものである。「これと酸性化合物との塩」とは、この化合物に強酸を作用させることにより、下記一般式(1)で表すインドール環の窒素原子にプロトンが付加されて得られる化学種を意味する。例えば、この化合物に塩酸を作用させたときには、下記一般式(1)で表すインドール環の窒素原子にプロトンが付加されて塩酸塩となる。このような塩もまた、塩となる前の化合物と同様の作用を備える。以下、「本発明の化合物又はこれと酸性化合物との塩」をまとめて「本発明の化合物」と呼ぶ。
【0020】
【化13】
【0021】
上記一般式(1)において、Rは、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。また、このようなアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。なお、上記一般式(1)においてRが複数存在するとき、各Rはそれぞれ独立に選択される。
【0022】
Aは、-OR又は-Oである。Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基及びエチル基が好ましく挙げられる。Xは、Li、Na、K、NH 又はN である。各Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。なお、Aが-Oとなる場合、カルボン酸化合物でもある上記化合物は、カルボン酸の塩の形をとることになる。
【0023】
及びRは、一方が水素原子であることを条件に他方が水酸基又はアミノ基であるか、一体となって(=O)基を形成する。R及びRが一体となって(=O)基を形成する場合、これらは、これらが結合する炭素原子とともにカルボニル基を形成することになる。
【0024】
nは、0~4の整数である。なお、nが1~4となる場合、インドール環のどの炭素原子にRが結合してもよい。インドール-3-酢酸(IAA)には、4-クロロインドール-3-酢酸のようなインドール置換体が天然に存在し、IAAと同様に植物体の成長調節を行っている。IBAにおいても、そのインドール置換体は、IAAにおけるインドール置換体と同様に植物体の成長調節に作用する。
【0025】
本発明の化合物は、植物体に移行すると下記の化学式に示すような代謝を受け、植物ホルモンであるIBA(インドール-3-酪酸)及びそのインドール置換体に代謝される。すなわち、本発明の化合物は、IBA及びそのインドール置換体の前駆体となる。その結果、この化合物は、植物体内にてIBA及びそのインドール置換体と同等の植物ホルモンとして作用することになり、適用された植物の側根の伸長を促進させる等の植物成長調節剤としての作用を発現する。なお、下記化学式で示す各スタート化合物は、いずれも上記一般式(1)で示す化合物の一例であり、本発明は下記の各スタート化合物に限定されるものではない。また、本発明の化合物が植物体内にてこのような代謝を受けてIBAを生成することは、本発明者らの実験により検証済みである。その実験の詳細については、本明細書の実施例項にて述べる。
【0026】
【化14】
【0027】
本発明の化合物の具体例として、下記化学式に示すものを好ましく挙げることができる。インドール-3-酢酸(IAA)には、4-クロロインドール-3-酢酸のようなインドール置換体が天然に存在し、IAAと同様に植物体の成長調節を行っている。下記具体例には、IBAのインドール置換体に代謝される前駆体も含まれ、これらもIAAにおけるインドール置換体と同様に植物体の成長調節に作用する。
【0028】
【化15】
【0029】
これらの具体例の中でも、下記化学式で表す2つの化合物を特に好ましく挙げることができる。なお、本発明がこれらの具体例に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0030】
【化16】
【0031】
また、本発明の化合物では、カルボキシ基若しくはカルボキシラート基のα位、又はカルボキシ基のアルキルエステルであるアルコキシカルボニル基のα位が不斉炭素となる。このため、本発明の化合物は光学分割により光学活性体となり得るが、本発明の化合物は、光学分割を行わないラセミ体でもよいし、光学分割を行った光学活性体であってもよい。いずれの場合も、本発明の範囲に含まれる。
【0032】
<植物成長調節剤>
本発明の化合物は、上記の通り、植物体内でIBA(インドール-3-酪酸)及びそのインドール置換体に代謝される。そのため、本発明の化合物は、IBA及びそのインドール置換体と同様に、植物体に対して、成長効果、発根促進、細胞伸長促進、形成層細胞の分裂誘導等の活性を有する他、側根の形成や伸長を促す等の効果を備える。
【0033】
本発明の化合物の植物体への適用方法は、これまで天然又は合成オーキシンとして農薬や植物化学調節剤として用いられてきたものと同様である。一例として、植物の水耕栽培にて、各種の栄養素とともに本発明の化合物を水耕栽培の養液へ添加することが挙げられる。このときの本発明の化合物の溶液中における好ましい濃度としては、0.1μM~30μMが好ましく挙げられ、0.1μM~10μM以下がより好ましく挙げられる。なお、当業者に周知の通り、「μM」等における「M」の単位は、「mol/L」を意味する。このことは、以下同様である。
【0034】
<本発明の化合物の製造方法の第一実施態様>
上記本発明の化合物の製造方法もまた、本発明の一つである。次に、本発明の化合物の製造方法の第一実施態様について述べる。本実施態様の製造方法は、以下の工程(a)~工程(c)を順次行う工程を含むことを特徴とする。これら各工程について説明する。
【0035】
工程(a)は、下記一般式(A)及び(B)で表す化合物をクロスカップリングさせることにより下記一般式(C)で表す化合物を得るものである。
【0036】
【化17】
【0037】
上記一般式(A)で表す化合物は、一般式(1)で表す本発明の化合物にてインドール環構造部分に転換される。上記一般式(A)において、各Rは、それぞれ独立に、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。また、このようなアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。なお、上記一般式(A)においてRが複数存在するとき、各Rはそれぞれ独立に選択される。nは、0~4の整数である。なお、nが1~4となる場合、インドール環のどの炭素原子にRが結合してもよい。
【0038】
Xは、ハロゲン原子である。このようなハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく挙げられ、これらの中でもヨウ素原子がより好ましく挙げられる。
【0039】
は、水素原子、又はインドール環窒素の保護基となる。本発明の製造方法における各工程での反応にて、インドール環窒素が意図せぬ反応をしてしまい、無用な副生成物を生じることを抑制するためにこのような保護基を用いる場合がある。このような保護基は、当業者にとって良く知られたものであり、そうした各種の保護基を適宜選択して一般式(A)におけるRとすることができる。このような保護基としては、アミノ基に対する保護基を各種挙げることができ、カルバメート系、アミド系、イミド系、スルホンアミド系等の保護基を各種挙げることができる。これらの中でもカルバメート系の保護基を好ましく挙げることができ、その一例として、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基、アリルオキシカルボニル(Alloc)、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0040】
【化18】
【0041】
上記一般式(B)で表す化合物は、一般式(1)で表す本発明の化合物にてペンタン酸骨格の前駆体となる。一般式(B)において、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基及びエチル基が好ましく挙げられる。
【0042】
3pは、保護基を有してもよい水酸基又はアミノ基である。「保護基を有してもよい水酸基又はアミノ基」とは、水酸基、アミノ基、保護基を有する水酸基、又は保護基を有するアミノ基との意味である。
【0043】
水酸基やアミノ基の保護基は、当業者にとって良く知られたものであり、そうした各種の保護基を適宜選択して水酸基又はアミノ基に結合させたものをR3pとすることができる。水酸基の保護基としては、エーテル系、アセタール系、アシル系、シリルエーテル系等の保護基を挙げることができる。これらの中でも、シリルエーテル系の保護基を好ましく挙げることができ、その一例として、tert-ブチルジメチルシリル基を挙げることができる。アミノ基の保護基としては、カルバメート系、アミド系、イミド系、スルホンアミド系等の保護基を各種挙げることができる。これらの中でもカルバメート系の保護基を好ましく挙げることができ、その一例として、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基、アリルオキシカルボニル(Alloc)、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0044】
【化19】
【0045】
上記一般式(C)で表す化合物は、一般式(A)で表す化合物と一般式(B)で表す化合物とをクロスカップリングさせることで得られる。このクロスカップリング反応は、薗頭・萩原クロスカップリング反応と呼ばれ当業者にとって周知の反応なので、適切な条件のもとでこのクロスカップリング反応を行えばよい。そのような条件の一例としては、一般式(A)で表す化合物と一般式(B)で表す化合物とを、パラジウム触媒、ヨウ化銅(I)及びアミン化合物の存在下で加温して反応させることが挙げられる。パラジウム触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のPd(0)錯体化合物や、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のPd(II)錯体を挙げることができる。また、Pd(II)錯体を触媒として用いる場合には、これにトリフェニルホスフィンのようなホスフィン化合物を組み合わせて用いてもよい。アミン化合物としては、トリエチルアミンが好ましく挙げられる。勿論、クロスカップリング反応の条件は、これらに限定されるものではない。
【0046】
一般式(C)におけるR、R及びnは、上記一般式(A)におけるものと同様である。また、一般式(C)におけるR及びR3pは、上記一般式(B)におけるものと同様である。
【0047】
工程(b)は、上記一般式(C)で表す化合物を還元することで、下記一般式(D)で表す化合物を得るものである。この工程を経ることで、一般式(C)における三重結合部分が単結合に還元され、ペンタン酸骨格となる。
【0048】
【化20】
【0049】
上記一般式(C)で表す化合物を還元するには、当業者にとって周知の還元反応を適宜選択して行えばよい。このような還元反応の例として、一般式(C)で表す化合物を含む溶液にパラジウム炭素(パラジウム-活性炭;Pd/Cとも表現される。)を加え、水素雰囲気下でこの溶液を撹拌することを挙げることができる。
【0050】
上記一般式(D)におけるR、R及びnは、上記一般式(A)におけるものと同様である。また、一般式(D)におけるR及びR3pは、上記一般式(B)におけるものと同様である。
【0051】
工程(c)は、上記一般式(D)で表す化合物において、Rが水素原子であり、かつR3pで表す水酸基又はアミノ基が保護基を持たない場合には本工程を行わず、その他の場合に、一般式(D)で表す化合物から脱保護を行うことで、下記一般式(E)で表す化合物を得るものである。工程(c)は、上記一般式(D)で表す化合物が保護基を有する場合に、その保護基を取り去ることことで目的物である一般式(E)で表す化合物を得る工程である。なお、上記一般式(D)で表す化合物が保護基を持たない場合、その化合物自体が既に一般式(E)で表す化合物になるので、工程(c)を行う必要はない。なお、一般式(E)で表す化合物は、上記一般式(1)で表す本発明の化合物に相当するものである。
【0052】
【化21】
【0053】
一般式(D)で表す化合物から脱保護を行うには、この化合物に適用されている保護基に応じた脱保護反応を選択して実行すればよい。このような脱保護反応は、当業者にとって周知である。例えば、この化合物にBocやメトキシカルボニル基等のようなカルバメート系の保護基が適用されていれば、酸や塩基で処理することで脱保護を行うことができる。
【0054】
上記一般式(E)において、R、R及びnは、上記一般式(A)及び(B)におけるものと同じである。また、上記一般式(E)において、Rは、水酸基又はアミノ基である。
【0055】
<本発明の化合物の製造方法の第二実施態様>
次に、本発明の化合物の製造方法の第二実施態様について述べる。本実施態様の製造方法は、以下の工程(d)~工程(f)を順次行う工程を含むことを特徴とする。これら各工程について説明する。
【0056】
工程(d)は、下記一般式(F)で表す化合物を還元することにより、下記一般式(G)で表す化合物を得るものである。
【0057】
【化22】
【0058】
上記一般式(F)において、各Rは、それぞれ独立に、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、水酸基又は炭素数1~5のアルコキシ基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。また、このようなアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。なお、上記一般式(F)においてRが複数存在するとき、各Rはそれぞれ独立に選択される。nは、0~4の整数である。なお、nが1~4となる場合、インドール環のどの炭素原子にRが結合してもよい。
【0059】
は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
【0060】
は、インドール環窒素の保護基となる。このような保護基については、上記一般式(A)について述べたものと同様であるから、ここでの説明を省略する。
【0061】
【化23】
【0062】
上記一般式(G)におけるR、R及びnは、上記一般式(F)におけるものと同様である。
【0063】
上記一般式(F)で表すカルボン酸又はそのアルキルエステルは、還元操作を受けることにより、一般式(G)で表すアルデヒドに変換される。上記一般式(F)で表す化合物を還元するには、当業者にとって周知の還元反応を適宜選択して行えばよい。このような還元反応の例として、一般式(F)で表す化合物に対して、ヒドリド(H)を発生させる化合物を作用させることを好ましく挙げられる。ヒドリドを発生させる化合物としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリブチルスズ等を挙げることができる。これらの化合物を用いて還元反応を行う手段は、当業者に周知なので、そのような周知の手段を適宜選択して本工程を行えばよい。
【0064】
工程(e)は、上記一般式(G)で表す化合物にシアン化物アニオンを作用させることにより、下記一般式(H)で表す化合物を得るものである。
【0065】
【化24】
【0066】
一般式(H)中、R、R及びnは、上記一般式(F)におけるものと同様である。
【0067】
この工程では、シアン化物アニオン(CN)が、一般式(G)で表す化合物のカルボニル基を攻撃して、カルボニル基の炭素原子にシアノ基を結合させるとともに、カルボニル基の酸素原子を水酸基に変換する。
【0068】
シアン化物アニオンを生成させる化合物としては、青酸カリウム、青酸ナトリウム等、各種の青酸塩化合物が挙げられる。こうした化合物を一般式(G)で表す化合物を含む反応溶液に添加することで、本工程所定の化学反応が生じる。
【0069】
工程(f)は、上記一般式(H)で表す化合物に、炭素数1~5のアルコールの存在下又は不存在下で酸又は塩基を作用させることにより、この化合物に存在するシアノ基を加水分解して下記一般式(I)で表す化合物を得るものである。なお、本工程における酸又は塩基の作用により上記の加水分解を生じるとともに、インドール環窒素に結合していた保護基Rも脱保護される。なお、一般式(I)で表す化合物は、上記一般式(1)で表す本発明の化合物に相当するものである。
【0070】
【化25】
【0071】
上記一般式(I)中、R及びnは、上記一般式(F)におけるものと同様である。Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基及びエチル基が好ましく挙げられる。
【0072】
この工程では、加水分解を行うために酸又は塩基を用いる。このような酸としては、濃塩酸、硫酸、硝酸、トリフルオロ酢酸等を挙げることができる。また、このような塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。なお、加水分解反応を行うに際しては、トリメチルシリルクロリド等のようなクロロシラン化合物を共存させてもよい。このような化合物は、反応系中で分解されることで酸である塩化水素(塩酸)を発生させ、また、その際にMeSiOSiMe等となって反応系中の水分を取り除く作用を備える。このようにクロロシラン化合物は、反応系中で塩化水素(塩酸)を生成させるので、工程(f)における酸に代えて若しくは酸とともにクロロシラン化合物を用いてもよい。なお、酸に代えてクロロシラン化合物を用いる場合であっても、上記のように塩化水素(塩酸)を生じることになるので、反応系中で「酸を作用させる」ことに変わりはない。
【0073】
「炭素数1~5のアルコールの存在下又は不存在下で」とは、この工程における反応を行う際に、このようなアルコールを任意で添加してもよいことを意味する。このようなアルコールを共存させた場合には、Rが炭素数1~5のアルキル基であるエステルを得ることができ、アルコールを共存させない場合には、Rが水素原子であるカルボン酸を得ることができる。
【実施例0074】
以下、実施例を示すことにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0075】
・メチル-2-ヒドロキシ-5-(1H-インドール-3-イル)ペンタノエート(JAX-44)及び2-ヒドロキシ-インドール-3-イル)ペンタン酸(JAX-77)の合成
【化26】
【0076】
アルゴン雰囲気下、-78℃でtert-ブチル-3-(4-メトキシ-4-オキソブチル)-1H-インドール-1-カルボキシラート(1.41g、4.44mmol)のトルエン(63mL)溶液にジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL、1.0Mトルエン溶液、4.88mL、4.88mmol)を滴下した。-78℃で2時間攪拌した後、1M塩酸(30mL)を加えた。混合物から酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。得られたtert-ブチル-3-(4-オキソブチル)-1H-インドール-1-カルボキシラートの粗生成物をそのまま次の反応に用いた。
【0077】
室温でtert-ブチル-3-(4-オキソブチル)-1H-インドール-1-カルボキシラートの粗生成物の塩化メチレン(6.5mL)溶液に青酸カリウム水溶液(4.7M、6.4mL、30.1mmol)を加え、続いて酢酸(1.73mL、30.2mmol)を加えた。室温で15時間撹拌した後、水(30mL)を加えて希釈した。混合液から塩化メチレン(3×30mL)で抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。得られたtert-ブチル-3-(4-シアノ-4-ヒドロキシブチル)-1H-インドール-1-カルボキシラートの粗生成物をそのまま次の反応に用いた。
【0078】
アルゴン雰囲気下、0℃でtert-ブチル-3-(4-シアノ-4-ヒドロキシブチル)-1H-インドール-1-カルボキシラートの粗生成物のメタノール(9.0mL)及び塩化メチレン(4.5mL)の混合溶液にトリメチルシリルクロリド(2.8mL、22.2mmol)を加え、続いて濃塩酸(0.75mL、8.9mmol)を加えた。室温で22時間攪拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液(70mL)を加えた。混合液から酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1~1:1)で精製し、メチル-2-ヒドロキシ-5-(1H-インドール-3-イル)ペンタノエート(JAX-44;297.4mg)が4工程全収率28%で得られた。
【0079】
また、上で得られた水相に1M塩酸を加えてpH3にした後、酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、ろ液を減圧下濃縮して2-ヒドロキシ-5-(1H-インドール-3-イル)ペンタン酸(JAX-77;532mg)が4工程全収率51%で得られた。
【0080】
メチル-2-ヒドロキシ-5-(1H-インドール-3-イル)ペンタノエート(JAX-44)
H-NMR(500MHz,CDCl):δ(ppm) 7.96(brs,1H,NH),7.59(d,J=8.0Hz,1H,Ar),7.33(d,J=8.0Hz,1H,Ar),7.18(m,1H,Ar),7.10(m,1H,Ar),6.95(s,1H,Ar),4.23(m,1H,CHO),3.74(s,3H,COCH),2.84-2.74(m,2H,ArCHのCH),2.79(m,1H,OH),1.93-1.78(m,3H,CH),1.74(m,1H,CH).
13C-NMR(125MHz,CDCl):δ(ppm) 175.7,136.3,127.4,121.8,121.2,119.1,118.8,116.0,111.0,70.4,52.4,34.1,25.2,24.7.
IR(cm-1): 3409,2950,1727,1456,1222,1096,1009,740.
HRMS(TOF) m/z [M+Na] calcd.for[C1417NaO 270.1106,found270.1113.
【0081】
2-ヒドロキシ-5-(1H-インドール-3-イル)ペンタン酸(JAX-77)
H-NMR(600MHz,DMSO-d6):δ(ppm) 10.7(s,1H,COOH),7.49(m,1H,Ar),7.32(d,J=8.4Hz,1H,Ar),7.08(d,J=1.8Hz,1H,Ar),7.05(m,1H,Ar),6.95(m,1H,Ar),3.97(m,1H,CHO),2.73-2.63(2H,Ar-CHのCH),1.76-1.66(3H,CH),1.59(m,1H,CH),
13CNMR(150MHz,DMSO-d6):δ(ppm) 175.9,136.3,127.2,122.1,120.8,118.3,118.0,114.4,111.3,69.6,33.9,25.7,24.4.
FT-IR(neat、cm-1): 3384,1708,1455,1256,1103,1009,913,737.
【0082】
・1-(メトキシカルボニル)-5-ニトロ-3-ヨードインドールの合成
【化27】
【0083】
アルゴン雰囲気下、室温で5-ニトロインドール(1.99g、12.19mmol)の脱水ジメチルホルムアミド(DMF;20mL)溶液に、砕いた水酸化カリウム(1.73g、30.8mmol)を加えた。同温度で30分間撹拌した後、ヨウ素(3.12g、12.2mmol)の脱水DMF(3.7mL)溶液を反応混合物に添加した。室温で反応混合物を6時間撹拌し、水酸化アンモニウム(0.5%)及び亜硫酸ナトリウム(0.1%)を含む氷水(230mL)を加えた。混合物からn-ヘキサンと酢酸エチルの1:1混合溶液(3×150mL)で抽出し、有機相を冷水(150mL)で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮することで黄色固体の5-ニトロ-3-ヨードインドールを得た。
【0084】
アルゴン雰囲気下、0℃で5-ニトロ-3-ヨードインドール(3.44g、11.9mmol)のジクロロメタン(DCM;75mL)溶液にトリエチルアミン(4.8mL、35.7mmol)及びクロロギ酸メチル(2.76mL、35.7mmol)を加えた。反応混合物を0℃で10分間撹拌した後、室温で25分間撹拌し、これに水(20mL)を加えて反応を停止させた。混合物からDCM(3×50mL)で抽出し、有機相を水(30mL)で洗浄し、さらに飽和食塩水(30mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで、桃色固体の1-(メトキシカルボニル)-5-ニトロ-3-ヨードインドール(3.40g、収率81%)を得た。
【0085】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm) 8.36(m,1H,Ar),8.30(m,2H,Ar),7.91(s,1H,Ar),4.11(s,3H,COOCH).
【0086】
・JAX-89の合成
【化28】
【0087】
アルゴン雰囲気下、50℃にて1-(メトキシカルボニル)-5-ニトロ-3-ヨードインドール(0.53g、1.53mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(5.5mg、0.00784mmol)及びヨウ化銅(I)(0.9mg、0.00473mmol)のDMF(0.8mL)溶液にトリエチルアミン(7.9mL)を加えた溶液に、2-ヒドロキシ-4-ペンチン酸エチル(0.312g,2.19mmol)のジエチルエーテル(1.3mL)溶液を加えた。同温度で反応混合物を4時間撹拌した後、反応混合物に1N塩酸水溶液を0℃にて加えて反応を停止させた。混合物からジエチルエーテル(5×20mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。アルゴン雰囲気下、室温で粗生成混合物(0.61g、1.68mmol)の脱水エタノール(20mL)溶液を撹拌しながら、炭酸カリウム(0.55g、3.98mmol)を添加した。その後、反応混合物を室温にて5時間35分間撹拌し、塩化アンモニウム水溶液を反応混合物に加えて反応を停止させた。混合物からジエチルエーテル(3×10mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することで、黄色油状のJAX-89(0.33g、収率71%)を得た。
【0088】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm) 8.63(s,1H,NH),8.62(d,J=1.5Hz,1H,Ar),8.13(dd,J=2.0,9.0Hz,1H,Ar),7.47(d,J=2.0Hz,1H,Ar),7.41(d,J=9.5Hz,1H,Ar),4.47(q,J=3.0Hz,1H,CHOC),4.38(m,2H,OCH),3.22(d,J=7.0Hz,1H,OH),3.05(dd,J=5.0,17.0Hz,1H,Ar-CC-CHのCH),3.00(dd,J=5.0,16.5Hz,1H,Ar-CC-CHのCH),1.37(t,J=7.3Hz,3H,CH).
13C-NMR(125MHz,CDCl)δ(ppm) 173.4,142.3,137.9,130.6,128.1,118.4,117.0,111.5,101.0,86.9,74.8,69.2,62.4,26.1,14.3.
FT-IR(neat、cm-1): 3330,1733,1541,1335.
【0089】
・JAX-90及びJAX-91の合成
【化29】
【0090】
水素雰囲気下、室温にてJAX-89(0.139g、0.46mmol)及びPd/C(10質量%、18.7mg)の脱水エタノール(4.6mL)溶液を22時間撹拌した。その後、反応混合物を2回セライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで、黄色油状のJAX-90(0.0798g、収率57%)及び褐色油状のJAX-91(0.042g,収率33%)を得た。なお、「セライト」は、アイメリーズフィルトレーションミネラルズ社のCelite(登録商標)である(以下同様)。
【0091】
エチル-2-ヒドロキシ-5-(1H-5-ニトロインドール-3-イル)ペンタノエート(JAX-90)
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm) 8.57(d,J=2.0Hz,1H,Ar),8.37(dd,J=2.0Hz,9.0Hz,1H,Ar),7.38(d,J=9.0Hz,1H,Ar),7.15(d,J=2.5Hz,1H,Ar),4.24(m,3H,OCH,CHO),2.84(m,3H,Ar-CHのCH,OH),1.84(m,4H,CH),1.28(t,J=7.0Hz,3H,CH).
13C-NMR(125MHz,CDCl)δ(ppm) 175.1,141.1,139.3,126.8,124.5,118.6,117.4,116.1,111.1,70.2,61.6,34.0,25.5,24.5,14.1.
【0092】
エチル-2-ヒドロキシ-5-(1H-5-アミノインドール-3-イル)ペンタノエート(JAX-91)
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm) 7.75(s,1H,Ar),7.15(d,J=8.5Hz,1H,Ar),6.90(dd,J=2.3,10.8Hz,2H,Ar),6.65(dd,J=2.5,8.5Hz,1H,Ar),4.21(m,3H,OCH,CHO),2.71(m,3H,-ArCH,OH),1.80(m,4H,CH),1.26(t,J=7.5Hz,3H,CH).
13C-NMR(125MHz,CDCl)δ(ppm) 175.2,138.8,131.2,128.3,121.9,115.0,112.8,111.6,104.0,70.4,61.5,34.2,25.0,24.8,14.1.
FT-IR(neat、cm-1): 3332,2979,2934,2862,1731,1459.
【0093】
[活性試験(シロイヌナズナ)]
1/2Murashige-Skoog(1/2MS)培地(1%スクロース、0.8%寒天、pH5.8±0.05)を高温高圧条件下で滅菌後、試験化合物のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を目的の濃度になるように培地へ加えた。なお、培地中のDMSOの濃度は0.1%以下ならば植物の成長に影響を与えないことが確認されている。遺伝子組換えされていないシロイヌナズナの種子を10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液で10分間滅菌し、5回洗浄した。本試験での培地はプラスチック製のプレートに作製し、一つの培地につき、プレートの上部に種子を17粒植えた。4℃で1-4日間、植物を冬の低温状況にさらし、発芽を誘導させた後、プレートを立て、種子を植え付けた部分より下をアルミホイルで覆った状態で、22℃、連続光照射条件で8日間育成した。この試験を、10μMのJAX-91を試験化合物として添加したもの、10μMのJAX-44を試験化合物として添加したもの、及び対照としてこれら化合物を添加しないものについてそれぞれ実施した。
【0094】
この試験を開始してから8日目となる発根の状態を示す写真を図1に示す。図1は、JAX-91又はJAX-44の添加に伴うシロイヌナズナの発根状態を示す画像であり、左から順に、これら化合物を添加しないものの画像、10μMのJAX-91を添加したものの画像、10μMのJAX-44を添加したものの画像になる。図1に示す通り、JAX-91やJAX-44を添加したものでは、これらを添加しないものに比べて側根が多く発生していることが確認された。
【0095】
[活性試験(トマト)]
1/2MS培地(1%スクロース、0.8%寒天、pH5.8±0.05)を高温高圧条件下で滅菌後、培地を調製した。遺伝子組換えされていないトマトの種子を10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液で5分間滅菌し、5回洗浄した。本試験での培地はプラスチック製のプレート上に作製した。一つの培地につき、プレートの上部に種子を6粒植えた。4℃で1-4日間静置後、プレートを立て、種子を植え付けた部分より下をアルミホイルで覆った状態で、25℃、連続光条件で5日間育成した。5日間育成したトマトを水に移し、水耕栽培とした。この水耕栽培では、試験化合物のDMSO溶液を水耕栽培の水中に加え、この水が所定濃度の試験化合物を含むようにした。この水耕栽培を25℃にて、5日間の連続光照射条件で行った。この試験を、1μMのJAX-91を試験化合物として添加したもの、1μMのJAX-44を試験化合物として添加したもの、及び対照としてこれら化合物を添加しないものについてそれぞれ実施した。
【0096】
水耕栽培育成を開始してから5日目となる発根の状態を示す写真を図2に示す。図2は、JAX-91又はJAX-44の添加に伴うトマトの発根状態を示す画像であり、左から順に、これら化合物を添加しないものの画像、1μMのJAX-44を添加したものの画像、1μMのJAX-91を添加したものの画像になる。図2に示す通り、JAX-91やJAX-44を添加したものでは、これらを添加しないものに比べて毛根が著しく増加していることが確認された。
【0097】
[JAX-44処理のシロイヌナズナの顕微鏡観察]
JAX-44を0~30μMの濃度別に添加した寒天培地を用いてシロイヌナズナを4日間育成した後、シロイヌナズナの固定と透明化処理を行い、側根原基を微分干渉顕微鏡で観察した。まず、1/2MS培地(1%スクロース、0.8%寒天、pH5.8±0.05)を高温高圧条件下で滅菌後、JAX-44のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を目的の濃度になるように培地へ加えた。遺伝子組換えされていないシロイヌナズナの種子を10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液で10分間滅菌し、滅菌蒸留水で5回洗浄した。本試験での培地はプラスチック製のプレートに作製した。一つの培地につき、プレートの上部に種子を17粒植えた。4℃で1-4日間春化処理後、プレートを立て、種子を植え付けた部分より下をアルミホイルで覆った状態で、22℃、連続光照射条件で4日間育成した。こうして育成したシロイヌナズナを、固定液である4%(w/v)パラホルムアルデヒド溶液に入れ、デシケーター内で真空ポンプにより減圧し、室温で30分静置した。30分後再び減圧、さらに30分静置し、シロイヌナズナの固定を行った。その後固定液を除き、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え1分間静置した。1×PBSを除き、新しい1×PBSを加えて1分間静置することを2回行うことで、シロイヌナズナを洗浄した。1×PBSを除き、植物組織透明化試薬(富士フイルム和光純薬株式会社製、製品名ClearSee)を加えて真空ポンプにより減圧、室温で30分放置した後、再び減圧し、さらに30分放置した。その後大気圧に戻し、遮光して室温で7日間静置した。こうして固定及び透明化されたシロイヌナズナを微分干渉顕微鏡で観察し、濃度毎の側根原基及び側根の数を算出し、グラフ化した。その結果を図3に示す。図3に示すように、JAX-44を用いた場合には、3~10μMの範囲で側根原基数及び側根数が顕著に増加するのが観察された。
【0098】
・重水素化JAX-44(JAX-44-d8)の合成
【化30】
【0099】
20質量%の重硫酸(DSO)を含む重メタノール(CDOD、2.5mL)にJAX-77(46.7mg、0.20mmol)を溶解させて溶液とし、この溶液を60℃で15時間撹拌した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)中に反応混合物をゆっくり注ぎ入れた。混合物からジエチルエーテル(3×10mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過後、ろ液を減圧下濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)で精製することにより、JAX-44-d8(37.6mg、収率74%)を得た。イミダゾール環のC2及びC4-C7炭素における重水素化率は、平均で97%だった。
【0100】
[JAX-44の代謝物の追跡]
上記の手順で合成したJAX-44-d8を用いて、植物体におけるJAX-44の代謝物を追跡した。まず、遺伝子組み換えされていないシロイヌナズナの種子を10%次亜塩素酸で10分間滅菌し、滅菌蒸留水で5回洗浄した。洗浄後、上澄みの蒸留水を除き、0.1%寒天を加えてピペッティングによって種子を分散させた。この滅菌済みの種子を1/2MS培地プレートに250粒程度蒔いた。このプレートを4℃で半日~4日間春化処理を行って発芽を誘発させた後、22℃、24時間明期条件の人工気象器(TOMY、CLE-405、照度42.93μmol・m-2・s-1)にて6日間育成した。育成後、滅菌蒸留水10mLの入った50mLチューブを用意し、そのチューブ1本あたりに約20個体のシロイヌナズナを培地から移し、24時間振とう培養をした。JAX-44-d8の0.1%DMSO溶液を調製し、このDMSO溶液10μLを加えた10mLの水にシロイヌナズナを3時間浸した。その後、シロイヌナズナを回収し、水気を十分とった後、植物個体粉砕用のステンレス製5mmビーズの入った2mLのエッペンチューブに入れ、計量をした。その後、液体窒素を用いて速やかに凍結し、QIAGEN製TissueLyser LTにて45times/sec、25secの設定値で、シロイヌナズナのサンプルを1サンプルにつき2回ずつ粉砕した。
【0101】
シロイヌナズナのサンプルが入ったエッペンチューブにジエチルエーテルを1mL入れ、ボルテックスで約30秒攪拌した。そのチューブを冷蔵庫内で16時間静置した。冷蔵庫から取り出した後に、上澄みをピペットで回収し、漏斗に綿をセットして濾過をした。植物サンプルの入ったエッペンチューブにもう1度ジエチルエーテルを1mL入れ、上澄みを回収して濾過した。その後、この上澄みを減圧濃縮した。濃縮したサンプルをメタノールに溶かし、メンブランフィルターで濾過した後に再度濃縮を行った。この状態のものを質量分析した。その結果を図4に示す。図4は、JAX-44-d8水溶液で処理したシロイヌナズナのサンプルの質量分析チャートである。
【0102】
図4に示す通り、質量分析チャートでは、JAX-44-d8の代謝物であるJAX-77-d5(JAX-44-d8の加水分解体)のピークがm/z273に観察されたとともに、それがさらにIBAにまで代謝されたd5-IBAのピークがm/z207に観察された。これら重水素化されたJAX-77-d5やd5-IBAは、重水素化されたJAX-44-d8を由来とすることが明らかであるから、本発明の化合物が植物体内で代謝を受けることにより、IBAを生成することが確認された。
【0103】
・エチル-2-ヒドロキシ-5-(1-tert-ブトキシカルボニルインドール-3-イル)ペント-4-イノエートの合成
【化31】
【0104】
アルゴン雰囲気下、室温にて1-(tert-ブトキシカルボニル)-3-ヨードインドール(0.310g、0.904mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(25.4mg、0.036mmol)、ヨウ化銅(I)(6.9mg、0.0362mmol)及びトリフェニルホスフィン(18.7mg、0.0723mmol)のテトラヒドロフラン(THF、1.0mL)溶液にトリエチルアミン(0.63mL、4.51mmol)を加えた溶液に、2-ヒドロキシ-4-ペンチン酸エチル(1.129g、0.904mmol)のTHF(1.3mL)溶液を加えた。50℃で反応混合物を42時間撹拌した後、反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させた。混合物から酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製することで、黄色油状のエチル-2-ヒドロキシ-5-(1-tert-ブトキシカルボニルインドール-3-イル)ペント-4-イノエート(0.228g、収率70%)を得た。
HRMS(TOF) m/z [M+Na] calcd. for [C2023NaO 380.1474,found 380.1483.
【0105】
・JAX-49の合成
【化32】
【0106】
水素雰囲気下、室温にてエチル-2-ヒドロキシ-5-(1-tert-ブトキシカルボニルインドール-3-イル)ペント-4-イノエート(0.913g、2.55mmol)及びPd(OH)/C(10質量%、91.3mg)のエタノール(25.5mL)懸濁液を22時間撹拌した。その後、反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。この粗生成物の酢酸エチル(26.9mL)溶液に濃塩酸(1.35mL、16.1mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=15:1)で精製することで、褐色油状のJAX-49(91.8mg、収率13%)を得た。
【0107】
H-NMR(600MHz,CDCl):δ(ppm) 7.95(brs,1H,NH),7.60(d,J=8.4Hz,1H,Ar),7.35(d,J=7.8Hz,1H,Ar),7.19(m,1H,Ar),7.11(m,1H,Ar),6.98(m,1H,Ar),4.27-4.18(3H,OCH,CHO),3.04-2.60(3H,Ar-CHのCH,OH),1.95-1.86(2H,CH),1.84(m,1H,CH),1.75(m,1H,CH),1.26(t,J=7.2Hz,3H,CH).
13C-NMR(150MHz,CDCl):δ(ppm) 175.3,136.3,127.5,121.9,121.2,119.1,118.9,116.2,111.0,70.4,61.6,34.2,25.1,24.8,14.2.
FT-IR(neat、cm-1): 3413,1731,1457,1099,1019,741.
【0108】
・tert-ブチル3-(4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-エトキシ-5-オキソペント-1-イン-1-イル)-1H-インドール-1-カルボキシレートの合成
【化33】
【0109】
-4℃にて、2-((ジフェニルメチレン)アミノ)酢酸エチルエステル(1.0g、3.7mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB、0.12g、0.37mmol)及び3-ブロモプロプ-1-イン(0.45mL)のトルエン(3.1mL)溶液に粉砕した水酸化カリウム(0.33g、5.9mmol)を加えた。同温度にて、反応混合物を2時間30分間撹拌することでエチル2-((ジフェニルメチレン)アミノ)ペント-4-イノエートを得た。2℃にて、混合物に6N塩酸をpH2となるまで添加した。反応混合物を室温に戻し、そのまま6日間撹拌した。反応混合物にエタノール(3.0mL)を加えて4時間撹拌を続けてから、減圧下で有機溶媒を除去した。得られた混合物に6N水酸化ナトリウム水溶液をpH10となるまで加え、二炭酸ジ-tert-ブチル(BocO、3.6mL、16mmol)を加えた。室温で5日間反応させた後、ジエチルエーテル(50mL×3)で抽出し、6N水酸化ナトリウム水溶液でpH10になるまで有機相を処理し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄してから無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相を濾別し、減圧下濃縮することで黄色油状のエチル2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ペント-4-イノエート(0.55g、収率62%)を得た。
【0110】
アルゴン雰囲気下、50℃にて3-ヨード-1H-インドール-1-カルボキシレート13(0.11g、0.29mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(12mg、0.017mmol)及びヨウ化銅(I)(2.2mg、0.012mmol)のDMF(0.8mL)溶液にトリエチルアミン(1.5mL)を加えた溶液に、エチル2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ペント-4-イノエート(0.085g、0.35mmol)のジエチルエーテル(0.3mL)溶液を加えた。同温度で反応混合物を24時間撹拌した後、反応混合物に1N塩酸水溶液を0℃にてpH1になるまで加えて反応を停止させた。混合物からジエチルエーテル(3×20mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した。これを無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することで黄色固体のtert-ブチル3-(4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-エトキシ-5-オキソペント-1-イン-1-イル)-1H-インドール-1-カルボキシレート(0.11g、収率75%)を得た。
【0111】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 8.12(d,J=8.0Hz,1H,Ar),7.69(s,1H,Ar),7.62(d,J=8.0Hz,1H,Ar),7.34(t,J=7.6Hz,1H,Ar),7.28(t,J=7.6Hz,1H,Ar),5.46(m,1H,CHCN),4.54-4.58(1H,CNH),4.20-4.33(2H,OCH),2.98-3.09(2H,CC-CH),1.66(s,9H,N-Boc),1.46(s,9H,NHBoc),1.29(t,J=6.8Hz,3H,OCHCHのCH).
【0112】
.JAX-106の合成
【化34】
【0113】
水素雰囲気下、tert-ブチル3-(4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-エトキシ-5-オキソペント-1-イン-1-イル)-1H-インドール-1-カルボキシレート(0.086g、0.19mmol)及びPd/C(10質量%、18mg)の脱水エタノール(1.9mL)懸濁液を室温にて6日間撹拌した。その後、反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製することで、黄色油状のtert-ブチル3-(4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-エトキシ-5-オキソペンチル)-1H-インドール-1-カルボキシレート(0.055g、収率63%)を得た。
【0114】
tert-ブチル3-(4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-エトキシ-5-オキソペンチル)-1H-インドール-1-カルボキシレート(9.3mg、0.020mmol)、トリフルオロ酢酸(TFA、0.22mL)及び塩化メチレン(0.22mL)の溶液を室温で1時間撹拌し、反応混合物を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=15:1)で精製することで、褐色油状のJAX-106(3.6mg、収率69%)を得た。
【0115】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.99(brs,1H,-NH),7.56(d,J=8.0Hz,1H,Ar),7.32(d,J=8.0Hz,1H,Ar),7.17(t,J=7.2Hz,1H,Ar),7.09(t,J=7.2Hz,1H,Ar),6.98(s,1H,Ar),4.14(q,J=7.2Hz,2H,OCHCH),3.63(m,1H,CHN),1.93-1.67(4H,CHCH),1.24(t,J=7.2Hz,3H,CH).
13C-NMR(150MHz,CDCl):δ(ppm) 171.3,136.4,127.6,122.0,121.6,119.3,118.9,115.9,111.2,60.6,31.7,24.8,22.8,21.2,14.3.
HRMS(ESI-TOF) m/z [M+H] calcd for [C1521 261.1603,found 261.1607.
FT-IR(neat、cm-1): 3410,2928,1735,1679,1458,1339,1230,1201,1021,742.
【0116】
・JAX-108-Liの合成
【化35】
【0117】
室温にて、JAX-106(20.4mg、0.078mmol)のメタノール(0.3mL)及びHO(3.0μL、0.167mmol)溶液に水酸化リチウム(5.2mg、0.124mmol)を加え、1.5時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、残渣を脱水メタノールで洗浄した。不溶物を濃縮することで、JAX-108のリチウム塩(4.7mg、収率25%)を得た。
【0118】
・メチル2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(1H-インドール-3-イル)ペンタノエートの合成
【化36】
【0119】
アルゴン雰囲気下、JAX-44(129.6mg、0.52mmol)及びトリエチルアミン(220μL、1.6mmol)のDMF(2.7mL)溶液に、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBSCl、261mg、1.73mmol)及び4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、6.4mg、0.052mmol)を0℃にて撹拌しながら加えた。反応混合物を室温にて10時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)を加えた。混合物からジエチルエーテル(3×15mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1から9:1)で精製することで、無色油状のメチル2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(1H-インドール-3-イル)ペンタノエート(154.9mg、収率82%)を得た。
【0120】
H-NMR(CDCl,600MHz):δ(ppm) 7.95(brs,1H),7.60(d,J=7.8Hz,1H),7.35(d,J=8.4Hz,1H),7.19(m,1H),7.11(m,1H),6.97(m,1H),4.26(m,1H),3.70(s,3H),2.79(m,2H),1.92-1.76(4H),0.91(s,9H),0.08(s,3H),0.06(s,3H).
13C-NMR(CDCl,150MHz):δ(ppm) 174.4,136.3,127.5,121.8,121.1,119.1,118.9,116.3,111.0,72.2,51.7,35.0,25.7(3C),25.5,24.8,18.3,-5.0,-5.3.
FT-IR(neat、cm-1): 3409,2951,2930,2855,1740,1457,1357,1254,1210,1124,1009,841,780,741,667.
【0121】
・ベンジル3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-メトキシ-5-オキソペンチル)-1H-インドール-1-カルボキシレートの合成
【化37】
【0122】
アルゴン雰囲気下、メチル2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(1H-インドール-3-イル)ペンタノエート(379mg、1.05mmol)のDMF(5.3mL)溶液に水素化ナトリウム(51mg、1.28mmol、60%オイルディスパーション)を0℃にて撹拌しながら添加した。同温度にて30分間撹拌した後、クロロギ酸ベンジル(CbzCl、180μL、1.27mmol)を添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)を加えた。混合物からジエチルエーテル(3×15mL)で抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1から15:1)で精製することで、無色油状のベンジル3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-メトキシ-5-オキソペンチル)-1H-インドール-1-カルボキシレート(439mg、収率84%)を得た。
【0123】
H-NMR(CDCl,600MHz):δ(ppm) 8.16,(brs,1H),7.53-7.46(m,3H),7.44-7.35(m,4H),7.31(m,1H),7.24(m,1H),5.44(s,2H),4.23(m,1H),3.69(s,3H),2.70(t,J=6.6Hz,2H),1.91-1.73(m,4H),0.89(s,9H),0.07(s,3H),0.03(s,3H).
13C-NMR(CDCl,150MHz):δ(ppm) 174.1,150.9,135.7,135.2,130.7,128.7(2C),128.6,128.4(2C),124.5,122.7,121.9,121.6,119.1,115.2,72.0,68.5,51.7,34.9,25.7(3C),24.6,24.5,18.3,-5.0,-5.4.
FT-IR(neat、cm-1): 2951,2930,2855,1733,1454,1396,1356,1244,1127,1090,1022,836,748.
HRMS(TOF) m/z [M+Na] calcdfor [C2837NNaOSi] 518.2339,found 518.2323.
【0124】
・ベンジル3-(4-ヒドロキシ-5-メトキシ-5-オキソペンチル)-1H-インドール-1-カルボキシレートの合成
【化38】
【0125】
アルゴン雰囲気下、ベンジル3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-メトキシ-5-オキソペンチル)-1H-インドール-1-カルボキシレート(171.3mg、0.33mmol)のTHF(1.7mL)溶液にTBAF(0.7mL、0.7mmol、1M THF溶液)を0℃にて加えた。同温度で25分間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)を加えた。混合物から酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1から6:1)で精製することで、無色油状のベンジル3-(4-ヒドロキシ-5-メトキシ-5-オキソペンチル)-1H-インドール-1-カルボキシレート(106.8mg、収率85%)を得た。
【0126】
H-NMR(CDCl,600MHz):δ(ppm) 8.17(brs,1H),7.54-7.47(m,3H),7.44-7.35(m,4H),7.32(m,1H),7.25(m,1H),5.44(s,2H),4.23(m,1H),3.75(s,3H),2.77-2.66(m,3H),1.93-1.83(m,2H),1.81(m,1H),1.73(m,1H).
13C-NMR(CDCl,150MHz):δ(ppm) 175.6,150.8,135.6,135.2,130.6,128.7(2C),128.6,128.4(2C),124.6,122.7,121.9,121.5,119.0,115.3,70.2,68.5,52.5,34.0,24.5,24.2.
FT-IR(neat、cm-1): 3485,2949,1730,1453,1398,1357,1245,1095,1024,753,698.
HRMS(TOF) m/z [M+Na] calcd for[C2223NNaO 404.1474,found 404.1474.
【0127】
・ベンジル3-(5-メトキシ-4,5-ジオキソペンチル)-1H-インドール-1-カルボキシレートの合成
【化39】
【0128】
アルゴン雰囲気下、ベンジル3-(4-ヒドロキシ-5-メトキシ-5-オキソペンチル)-1H-インドール-1-カルボキシレート(69.7mg、0.18mmol)及び炭酸水素ナトリウム(76.0mg、0.90mmol)の塩化メチレン(1.8mL)溶液にDess-Martinペルヨージナン(DMP、116.3mg、0.27mmol)を0℃にて加えた。同温度で3時間撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)を加えた。混合物からジエチルエーテル(3×10mL)で抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することで、無色油状のベンジル3-(5-メトキシ-4,5-ジオキソペンチル)-1H-インドール-1-カルボキシレート(67.4mg、収率97%)を得た。
【0129】
H-NMR(CDCl,600MHz):δ(ppm) 8.17(brs,1H),7.54(d,J=8.4Hz,1H),7.51-7.48(m,2H),7.45-7.36(m,4H),7.33(m,1H),7.26(m,1H),5.45(s,2H),3.83(s,3H),2.93(t,J=7.2Hz,2H),2.74(t,J=7.8Hz,2H),2.07(tt,J=7.8,7.2Hz,2H).
13C-NMR(CDCl,150MHz):δ(ppm) 193.9,161.3,150.8,135.7,135.2,130.4,128.7(3C),128.5(2C),124.7,122.8,122.3,120.8,119.0,115.3,68.6,52.9,38.7,24.0,22.3.
FT-IR(neat、cm-1): 2950,2361,1726,1452,1397,1357,1244,1082,1034,752,698.
HRMS(TOF) m/z [M+Na] calcd for [C2221NNaO 402.1317,found 402.1333.
【0130】
・JAX-80の合成
【化40】
【0131】
水素雰囲気下、ベンジル3-(5-メトキシ-4,5-ジオキソペンチル)-1H-インドール-1-カルボキシレート(85.5mg、0.23mmol)及びPd/C(10質量%、12.0mg)の酢酸エチル(3.0mL)懸濁液を室温にて30分間撹拌した。その後、反応混合物をセライトろ過し、ろ液にピリジン(91μL、1.2mmol)を加え、30℃未満にておよそ3mLとなるまで減圧下濃縮した。得られた混合物を室温で2時間撹拌し、30℃未満にて減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することで、無色固体のJAX-80(43.9mg、収率80%)を得た。
【0132】
H-NMR(CDCl,600MHz):δ(ppm) 7.98(brs,1H),7.60(d,J=7.8Hz,1H),7.36(d,J=7.8Hz,1H),7.20(m,1H),7.12(m,1H),6.99(m,1H),3.80(s,3H),2.91(t,J=7.2Hz,2H),2.83(t,J=7.5Hz,2H),2.09(tt,J=7.5,7.2Hz,2H).
13C-NMR(CDCl,150MHz):δ(ppm) 194.3,161.4,136.4,127.3,122.0,121.6,119.3,118.8,115.2,111.1,52.8,38.9,24.2,23.4.
FT-IR(neat、cm-1): 3406,2945,2361,1726,1452,1270,1244,1087,744,670.
HRMS(TOF) m/z [M+Na] calcd for [C1415NNaO 268.0950,found 268.0946.
【0133】
・1-(メトキシカルボニル)-5-クロロ-3-ヨードインドールの合成
【化41】
【0134】
アルゴン雰囲気下、室温で5-クロロインドール(1.04g、6.9mmol)の脱水DMF(11.5mL)溶液に、砕いた水酸化カリウム(1.02g、17.2mmol)を加えた。同温度で30分間撹拌した後、ヨウ素(1.77g、6.9mmol)の脱水DMF(2.1mL)溶液を反応混合物に添加した。室温で反応混合物を6時間撹拌し、水酸化アンモニウム(0.5%)及び亜硫酸ナトリウム(0.1%)を含む氷水(230mL)を加えた。混合物からn-ヘキサンと酢酸エチルの1:1混合液(3×150mL)で抽出し、有機相を冷水(150mL)で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮することで黄色固体の5-クロロ-3-ヨードインドールを得た。
【0135】
アルゴン雰囲気下、0℃で5-クロロ-3-ヨードインドール(2.14g、7.71mmol)のジクロロメタン(DCM;48mL)溶液にトリエチルアミン(14.6mL、0.33M)及びクロロギ酸メチル(1.79mL、5.37mmol)を加えた。反応混合物を0℃で10分間撹拌した後、室温で30分間撹拌し、これに水を加えて反応を停止させた。混合物からDCM(3×50mL)で抽出し、有機相を水(30mL)で洗浄し、さらに飽和食塩水(30mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで、褐色固体の1-(メトキシカルボニル)-5-クロロ-3-ヨードインドール(2.22g、収率86%)を得た。
【0136】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm) 8.05(d,J=8.0Hz,1H,Ar),7.74(s,1H,Ar),7.37(d,J=2.5Hz,1H,Ar),7.31(dd,J=2.3,8.8Hz,1H,Ar),4.04(s,3H,CH).
13C-NMR(125MHz,CDCl)δ(ppm) 150.1,133.3,133,2,130.8,129.6,121.3(2C),116.1,65.1,54.2.
FT-IR(neat、cm-1): 1734.7,1443.5,772.4,639.3.
【0137】
・エチル5-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-2-ヒドロキシペント-4-イノエートの合成
【化42】
【0138】
アルゴン雰囲気下、50℃にて1-(メトキシカルボニル)-5-クロロ-3-ヨードインドール(0.66g、1.97mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(6.92mg、0.0099mmol)及びヨウ化銅(I)(1.12mg、0.006mmol)のトリエチルアミン(10.3mL)溶液に、2-ヒドロキシ-4-ペンチン酸エチル(0.336g、2.36mmol)のDMF(1.7mL)溶液を加えた。同温度で反応混合物を33時間25分間撹拌した後、反応混合物に1N塩酸水溶液を0℃にて加えて反応を停止させた。混合物からジエチルエーテル(5×20mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。アルゴン雰囲気下、室温で粗生成混合物の脱水エタノール(20mL)溶液を撹拌しながら、炭酸カリウム(0.60g、4.14mmol)を添加した。その後、反応混合物を室温にて15時間撹拌し、塩化アンモニウム水溶液を反応混合物に加えて反応を停止させた。混合物からジエチルエーテル(3×10mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水(10mL)で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮してエチル5-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-2-ヒドロキシペント-4-イノエート(0.26g、収率45%)を得た。
【0139】
・JAX-93の合成
【化43】
【0140】
水素雰囲気下、室温にてエチル5-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-2-ヒドロキシペント-4-イノエート(0.62g、2.13mmol)及びPd/C(10質量%、0.68g)の脱水エタノール(21mL)溶液を1時間撹拌した。その後、反応混合物を2回セライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1から塩化メチレン:酢酸エチル=1:9)で精製することで、褐色油状のJAX-93(8.3mg,収率1.4%)を得た。
【0141】
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm) 7.94(s,1H,Ar),7.54(s,1H,Ar),7.27(s,1H,Ar),7.13(d,J=9.0Hz,1H,Ar),7.01(s,1H,Ar),4.22(m,CHOH,3H,OCH),2.75(m,3H,Ar-CHのCH,OH),1.81(m,4H,CH),1.27(t,J=7.5Hz,3H,CH).
13C-NMR(125MHz,CDCl)δ(ppm) 175.3,134.7,128.6,124.9,122.6,122.2,118.4,116.1,112.0,70.3,61.7,34.1,25.1,24.6,14.2.
FT-IR(neat、cm-1): 3423.0,2980.5,2930.3,2861.8,1726.0,795.5.
【0142】
・1-(メトキシカルボニル)-5-フルオロ-3-ヨードインドールの合成
【化44】
【0143】
アルゴン雰囲気下、室温で5-フルオロインドール(1.02g、7.54mmol)の脱水DMF(11.5mL)溶液に、砕いた水酸化カリウム(1.08g、19.2mmol)を加えた。同温度で30分間撹拌した後、ヨウ素(1.94g、7.64mmol)の脱水DMF(2.1mL)溶液を反応混合物に添加した。室温で反応混合物を6時間撹拌し、水酸化アンモニウム(0.5%)及び亜硫酸ナトリウム(0.1%)を含む氷水(230mL)を加えた。混合物からn-ヘキサンと酢酸エチルの1:1混合液(3×150mL)で抽出し、有機相を冷水(150mL)で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮することで黄色固体の5-フルオロ-3-ヨードインドールを得た。
【0144】
アルゴン雰囲気下、上記手順で得た5-フルオロ-3-ヨードインドールのDCM(53.1mL)溶液に、0℃にて、トリエチルアミン(3.4mL、24.4mmol)及びクロロギ酸メチル(1.98mL、25.6mmol)を加えた。反応混合物を0℃で10分間撹拌した後、室温で20時間間撹拌し、これに水を加えて反応を停止させた。混合物からDCM(3×50mL)で抽出し、有機相を水(30mL)で洗浄し、さらに飽和食塩水(30mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで、褐色固体の1-(メトキシカルボニル)-5-フルオロ-3-ヨードインドール(2.38g、収率99%)を得た。
【0145】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm) 8.11(s,1H,Ar),7.78(s,1H,Ar),7.10(m,2H,Ar),4.04(s,3H,COOCH).
13C-NMR(125MHz,CDCl)δ(ppm) 159.8(d,J=240Hz),150.2,133.3(d,J=9.5Hz),131.1,116.2(d,J=8.4Hz),116.2(d,J=2.5Hz),107.3(d,J=23.9Hz),65.4(d,J=4.9Hz)
FT-IR(neat、cm-1): 1747,1442,1252,614.
【0146】
・エチル5-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-2-ヒドロキシペント-4-イノエートの合成
【化45】
【0147】
アルゴン雰囲気下、50℃にて1-(メトキシカルボニル)-5-フルオロ-3-ヨードインドール(0.64g、2.00mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(7.03mg、0.01mmol)及びヨウ化銅(I)(1.2mg、0.006mmol)のトリエチルアミン(10.4mL)溶液に、2-ヒドロキシ-4-ペンチン酸エチル(0.58g、4.1mmol)のDMF(1.7mL)溶液を加えた。同温度で反応混合物を24時間撹拌した後、反応混合物に1N塩酸水溶液を0℃にて加えて反応を停止させた。混合物からジエチルエーテル(5×20mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。アルゴン雰囲気下、室温で粗生成混合物の脱水エタノール(20mL)溶液を撹拌しながら、炭酸カリウム(0.73g、5.3mmol)を添加した。その後、反応混合物を室温にて6時間撹拌し、塩化アンモニウム水溶液を反応混合物に加えて反応を停止させた。混合物から酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水(10mL)で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮して得た残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することで、黄色油状のエチル5-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-2-ヒドロキシペント-4-イノエート(0.214g、収率39%)を得た。
【0148】
・JAX-92の合成
【化46】
【0149】
水素雰囲気下、室温にてエチル5-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-2-ヒドロキシペント-4-イノエート(0.092g、0.33mmol)及びPd/C(10質量%、9.2mg)の脱水エタノール(3.29mL)溶液を1時間撹拌した。その後、反応混合物を2回セライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで、黄色油状のJAX-92(0.037g,収率40%)を得た。
【0150】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm) 7.91(brs,1H,Ar),7.26(m,2H,Ar),7.22(dd,J=2.75Hz,5.48Hz,1H,Ar),7.03(d,J=2.5Hz,1H,Ar),6.93(dt,J=2.5Hz,9.0Hz,1H,Ar),4.22(m,3H,OCH,CHO),2.75(m,3H,Ar-CHのCH,OH),1.80(m,4H,CH),1.27(t,J=7.0Hz,3H,CH).
【0151】
・7-ニトロ-3-インドールの合成
【化47】
【0152】
アルゴン雰囲気下、室温で7-ニトロインドール(2.0g、12.3mmol)の脱水DMF(21mL)溶液に、砕いた水酸化カリウム(1.7g、31mmol)を加えた。これにヨウ素(3.2g、12mmol)の脱水DMF(3.7mL)溶液を反応混合物に添加した。室温で反応混合物を2.5時間撹拌し、水酸化アンモニウム(0.5%)及び亜硫酸ナトリウム(0.1%)を含む氷水(230mL)を加えた。混合物からn-ヘキサンと酢酸エチルの1:1混合液(4×50mL)で抽出し、有機相を冷水(150mL)で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮することで黄色固体の7-ニトロ-3-ヨードインドール(3.5g、収率99%)を得た。
【0153】
H-NMR(600MHz,CDCl):δ(ppm) 10.07(s,1H,NH),8.24(d,J=7.8Hz,1H,Ar),7.84(d,J=7.8Hz,1H,Ar),7.50(d,J=3.0Hz,1H,Ar),7.32(dd,J=7.8,7.8Hz,1H,Ar)
【0154】
・JAX-104の合成
【化48】
【0155】
アルゴン雰囲気下、45℃にて7-ニトロ-3-ヨードインドール(0.50g、1.74mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(65mg、0.092mmol)及びヨウ化銅(I)(12mg、0.061mmol)のトリエチルアミン(9.0mL)及びDMF(1.0mL)溶液に、2-ヒドロキシ-4-ペンチン酸エチル(0.30g、2.1mmol)のジエチルエーテル(1.8mL)溶液を加えた。同温度で反応混合物を24時間撹拌した後、反応混合物に1N塩酸水溶液を0℃にてpH1となるように加えて反応を停止させた。混合物からジエチルエーテル(3×50mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジエチルエーテル=3:1)で精製することで、黄色固体のJAX-104(0.34g、収率65%)を得た。
【0156】
H-NMR(600MHz,CDCl):δ(ppm) 9.89(s,1H,NH),8.18(d,J=8.4Hz,1H,Ar),8.05(d,J=8.4Hz,1H,Ar),7.51(d,J=1.6Hz,1H,Ar),7.28(dd,J=8.4,8.4Hz,1H,Ar),4.45(dd,J=11.4,4.8Hz,1H,CHO),4.26-4.37(2H,OCH)3.20(d,J=6.0Hz,1H,OH),3.04(dd,J=17.4,4.8Hz,1H,CC-CH),2.98(dd,J=16.2,4.8Hz,1H,CC-CH),1.33(t,J=6.6Hz,3H,CH).
13C-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 173.3,133.2,132.2,129.6,128.4,128.0,120.1,119.9,100.4,86.8,74.8,69.1,62.1,62.2,14.2.
HRMS(ESI-TOF) m/z [M+Na] calcd for [C1514NaO 325.0800,found 325.0788.
FT-IR(neat、cm-1)3421,2981,2935,2236,1734,1547,1517,1483,1326,1234.
【0157】
・JAX-105の合成
【化49】
【0158】
水素雰囲気下、室温にてJAX-104(0.051g、0.17mmol)及びPd/C(10質量%、5.7mg)の脱水エタノール(1.6mL)懸濁液を26時間撹拌した。その後、反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することで、黄色油状のJAX-105(0.036g、収率77%)を得た。
【0159】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 9.71(s,1H,NH),8.59(s,2H,NH),7.20(d,J=7.6Hz,1H,Ar),6.90(dd,J=8.0,7.6Hz,1H,Ar),6.84(s,1H,Ar),6.69(d,J=7.2Hz,1H,Ar),4.19-4.24(3H,CHO,OCH),3.68(m,1H,OH),2.70-2.76(2H,Ar-CHのCH),1.67-1.92(4H,CH),1.24(t,J=7.2Hz,3H,CH
13C-NMR(125MHz,CDCl):δ(ppm) 176.0,130.2,129.3,128.1,121.9,120.4,117.5,112.1,109.7,71.0,62.2,34.8,25.7,25.4,14.7.
HRMS(ESI-TOF) m/z [M+H] calcd for [C1521 277.1552,found 277.1555.
FT-IR(neat、cm-1)3337,2929,2857,2360,1729,1631,1444,1370,1230,1099.
図1
図2
図3
図4