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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016397
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】位相板支持装置および電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/295 20060101AFI20240131BHJP
   H01J 37/26 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01J37/295
H01J37/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118470
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】永沼 朋之
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA04
5C101AA15
5C101BB01
5C101EE72
5C101EE76
(57)【要約】
【課題】位相板の変位を低減できる位相板支持装置を提供する。
【解決手段】位相板支持装置100は、電子顕微鏡において電子波の位相を変化させる位相板を支持する位相板支持装置であって、位相板を支持する位相板ホルダー110と、位相板ホルダーを挟む板バネ120およびサポート部材130と、位相板ホルダー110を加熱するヒーター140と、を含み、板バネ120は、弾性部材であり、ヒーター140で位相板ホルダー110が加熱されることによる位相板ホルダー110の膨張によって変形する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡において電子波の位相を変化させる位相板を支持する位相板支持装置であって、
前記位相板を支持する位相板ホルダーと、
前記位相板ホルダーを挟む第1部材および第2部材と、
前記位相板ホルダーを加熱するヒーターと、
を含み、
前記第1部材は、弾性部材であり、前記ヒーターで前記位相板ホルダーが加熱されることによる前記位相板ホルダーの膨張によって変形する、位相板支持装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記弾性部材は、板バネである、位相板支持装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1部材と前記位相板ホルダーとの間に配置された複数の第1球を含み、
前記第1部材は、前記複数の第1球を介して、前記位相板ホルダーを前記第2部材に押し付ける、位相板支持装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記複数の第1球の各々は、ガラス球である、位相板支持装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記第2部材と前記位相板ホルダーとの間に配置された複数の第2球を含む、位相板支持装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記複数の第2球の各々は、ガラス球である、位相板支持装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記第1部材は、締結部材によって前記第2部材に締結されている、位相板支持装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の位相板支持装置と、
前記位相板支持装置で支持された位相板と、
を含む、電子顕微鏡。
【請求項9】
請求項8において、
試料を凍結した状態で支持可能な試料ホルダーと、
前記位相板を挿入可能な開口部を有する冷却シールドと、
を含む、電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相板支持装置および電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡では、像のコントラストを向上させるために、位相板を試料直下に配置する。位相板は、試料を透過した電子波に位相の変化を与える。位相板により透過波と散乱波のいずれかの位相を相対的に変化させることによって、位相コントラストを向上できる。
【0003】
位相板に電子線が照射されると、ハイドロカーボンなどの汚れが位相板上に堆積してしまう。このような位相板のコンタミネーションを低減するために、例えば、特許文献1の透過電子顕微鏡では、位相板をヒーターで加熱しながら観察を行う。位相板を加熱することによって、コンタミネーションを低減できる。特許文献1では、位相板は、位相板室に外部よりホルダーを用いて挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-86691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
位相板が加熱されると、位相板を支持するホルダーが熱膨張する。これにより、ホルダーが反るなど、ホルダーの変形が生じ、位相板の位置が変化してしまう場合がある。位相板の位置が変化すると、例えば、位相板が他の部材に接触してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る位相板支持装置の一態様は、
電子顕微鏡において電子波の位相を変化させる位相板を支持する位相板支持装置であって、
前記位相板を支持する位相板ホルダーと、
前記位相板ホルダーを挟む第1部材および第2部材と、
前記位相板ホルダーを加熱するヒーターと、
を含み、
前記第1部材は、弾性部材であり、前記ヒーターで前記位相板ホルダーが加熱されることによる前記位相板ホルダーの膨張によって変形する。
【0007】
このような位相板支持装置では、位相板ホルダーを固定するための第1部材が弾性部材であり、ヒーターで位相板ホルダーが加熱されることによる位相板ホルダーの膨張によって第1部材が変形するため、膨張による位相板ホルダーの反りなどの変形を低減でき、位相板の変位を低減できる。
【0008】
本発明に係る電子顕微鏡の一態様は、
前記位相板支持装置と、
前記位相板支持装置で支持された位相板と、
を含む。
【0009】
このような電子顕微鏡では、前記位相板支持装置を含むため、位相板の変位を低減でき
る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る位相板支持装置が搭載された電子顕微鏡の構成を示す図。
図2】本発明の一実施形態に係る位相板支持装置を模式的に示す斜視図。
図3】本発明の一実施形態に係る位相板支持装置を模式的に示す斜視図。
図4】本発明の一実施形態に係る位相板支持装置を模式的に示す断面図。
図5】本発明の一実施形態に係る位相板支持装置を模式的に示す断面図。
図6】位相板が光軸上に配置された状態を模式的に示す図。
図7】比較例に係る位相板支持装置を模式的に示す断面図。
図8】比較例に係る位相板支持装置を模式的に示す断面図。
図9】本発明の一実施形態に係る位相板支持装置の動作を説明するための図。
図10】本発明の一実施形態に係る位相板支持装置の動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0012】
1. 電子顕微鏡
まず、本発明の一実施形態に係る位相板支持装置について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る位相板支持装置100を備えた電子顕微鏡10の構成を示す図である。
【0013】
電子顕微鏡10は、試料Sを透過した電子で透過電子顕微鏡像(TEM像)を結像する透過電子顕微鏡である。電子顕微鏡10は、凍結した状態の試料Sを電子顕微鏡内に導入して観察できる。すなわち、電子顕微鏡10では、クライオ電子顕微鏡法による試料Sの観察が可能である。
【0014】
電子顕微鏡10は、図1に示すように、電子源11と、集束レンズ12と、試料ステージ13と、対物レンズ14と、位相板15と、冷却シールド16と、位相板支持装置100と、中間レンズ17と、投影レンズ18と、撮像装置19と、を含む。
【0015】
電子源11は、電子を発生させる。電子源11は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線を放出する電子銃である。
【0016】
集束レンズ12は、電子源11から放出された電子線を試料Sに照射するためのレンズである。集束レンズ12は、図示はしないが、複数の電子レンズで構成されていてもよい。
【0017】
試料ステージ13は、試料ホルダー13aに支持された試料Sを保持する。試料ステージ13によって試料Sを位置決めできる。試料ホルダー13aは、凍結した状態の試料Sを支持できる。試料ホルダー13aは、例えば、試料Sを保持する先端部が液体窒素温度に保たれている。試料ホルダー13aは、例えば、液体窒素デュワーを備えていてもよい。
【0018】
対物レンズ14は、試料Sを透過した電子で透過電子顕微鏡像(以下、TEM像ともいう)を結像する。
【0019】
位相板15は、対物レンズ14の後焦点面に配置されている。位相板15は、試料Sを透過した電子波に位相の変化を与える。位相板15は、例えば、カーボンの薄膜であり、当該薄膜を透過波と散乱波が通過することによって透過波と散乱波の位相を相対的に変化させる。電子顕微鏡10は、位相板15を移動させる位相板移動機構180を備えている。
【0020】
電子顕微鏡10では、位相板15を用いて試料Sの観察を行うことにより試料Sの位相差像を取得できる。位相差像は、位相板15を用いて透過波と散乱波の位相を相対的に変化させて得られるTEM像である。位相差像では、従来のTEM像では可視化が難しい物体の位相変化を、強度の変化として可視化できる。
【0021】
位相板支持装置100は、位相板15を支持する。位相板支持装置100は、位相板15を加熱する。例えば位相板支持装置100は、位相板15を200℃程度に加熱する。これにより、位相板15に対するハイドロカーボンなどの付着を低減でき、コンタミネーションを低減できる。位相板支持装置100の詳細については後述する。
【0022】
冷却シールド16は、試料Sと位相板15の間に配置されている。冷却シールド16には、位相板15が挿入される開口部が設けられている。冷却シールド16は、例えば、液体窒素温度に冷却されている。冷却シールド16によって、加熱された位相板15の熱が試料Sに伝わることを防ぐことができる。冷却シールド16には、電子線を通過させるための孔が設けられている。当該孔は、電子顕微鏡10の光学系の光軸OA上に設けられている。
【0023】
中間レンズ17および投影レンズ18は、対物レンズ14によって結像された像をさらに拡大し、撮像装置19上に結像する。対物レンズ14、中間レンズ17、および投影レンズ18は、電子顕微鏡10の結像系を構成している。
【0024】
撮像装置19は、TEM像を撮影する。撮像装置19は、例えば、CCDカメラやCMOSカメラなどのデジタルカメラである。
【0025】
2. 位相板支持装置
図2および図3は、位相板支持装置100を模式的に示す斜視図である。なお、図3では、便宜上、板バネ120の図示を省略している。図4および図5は、位相板支持装置100を模式的に示す断面図である。なお、図5は、図4の拡大図である。図2図5には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。なお、電子顕微鏡10の光学系の光軸OAは、Z軸に平行である。
【0026】
位相板支持装置100は、図2図5に示すように、位相板ホルダー110と、板バネ120(第1部材の一例)と、サポート部材130(第2部材の一例)と、ヒーター140と、ガラス球150(第1球の一例)と、ガラス球152(第2球の一例)と、を含む。
【0027】
位相板ホルダー110は、位相板15を支持する。位相板ホルダー110は、図示の例では、基部112と、延在部114と、を含む。
【0028】
基部112は、板バネ120とサポート部材130に挟まれている。これにより、位相板ホルダー110がサポート部材130に固定される。基部112には、3つの窪み113が設けられている。3つの窪み113にはそれぞれガラス球150が配置されている。基部112には、ヒーター140が取り付けられている。
【0029】
延在部114は、基部112にネジ102で固定されている。延在部114は、基部112からY軸に沿って延在している。延在部114の先端には、位相板15が取り付けられている。延在部114の後端は、基部112に固定されている。
【0030】
基部112および延在部114は、熱伝導率が高い金属で構成されている。ヒーター140の熱は、基部112および延在部114を介して、位相板15に伝わる。位相板15をヒーター140で加熱することによって、位相板15のコンタミネーションを低減できる。
【0031】
板バネ120とサポート部材130は、位相板ホルダー110の基部112を挟んでいる。板バネ120は、サポート部材130に固定されている。図示の例では、板バネ120の四隅が、サポート部材130の4つの柱状部132にネジ104で締結されている。サポート部材130の柱状部132にはそれぞれネジ穴が設けられている。
【0032】
板バネ120と基部112との間には、ガラス球150が配置されている。板バネ120は、ガラス球150を基部112に押し付けている。図示の例では、板バネ120に複数の切り込みを入れることで、板バネ120に3つの独立したバネ120a,120b,120cが形成されている。3つのバネ120a,120b,120cで3つのガラス球150が基部112に向かって付勢されている。ガラス球150の頂点は、柱状部132の上面よりも上に位置している。
【0033】
板バネ120がサポート部材130に締結されることによって、板バネ120に付勢力が生じる。これにより、板バネ120でガラス球150を介して基部112をサポート部材130に押し付けることができる。この結果、位相板ホルダー110がサポート部材130に固定される。なお、図示の例では、板バネ120をネジ104によってサポート部材130に締結しているが、板バネ120をサポート部材130に締結するための締結部材はネジ104に限定されない。
【0034】
サポート部材130は、位相板ホルダー110を支持している。サポート部材130は、位相板移動機構180に接続されている。図示の例では、サポート部材130は、位相板移動機構180のロッド182にネジ104で固定されている。位相板移動機構180によって、位相板15を光軸OA上に配置したり、位相板15を光軸OA上から退避させたりすることができる。
【0035】
サポート部材130には、3つの窪み134が設けられている。3つの窪み134には、それぞれガラス球152が配置されている。Z方向から見て、サポート部材130の3つの窪み134は、位相板ホルダー110の3つの窪み113と重なっている。
【0036】
ヒーター140は、位相板ホルダー110の基部112に取り付けられている。ヒーター140は、位相板ホルダー110を加熱する。ヒーター140は、位相板ホルダー110を介して、位相板15を加熱する。ヒーター140が発した熱は、基部112および延在部114を介して、位相板15に伝わる。
【0037】
板バネ120は、複数のガラス球150を介して、位相板ホルダー110をサポート部材130に押し付けている。板バネ120は、位相板ホルダー110に接していない。複数のガラス球150を介して、位相板ホルダー110をサポート部材130に押し付けることによって、位相板ホルダー110をサポート部材130に固定しつつ、ヒーター140の熱を板バネ120に伝わりにくくすることができる。図示の例では、ガラス球150の数は、3つであるがその数は2以上であれば特に限定されない。ここでは、ガラス球150を用いてヒーター140の熱を板バネ120に伝わりにくくする場合について説明し
たが、ガラス球150の代わりに、位相板ホルダー110よりも熱伝導率の低い材料からなる球を用いてもよい。
【0038】
サポート部材130には、複数のガラス球152を介して、位相板ホルダー110が固定されている。サポート部材130は、位相板ホルダー110に接していない。位相板ホルダー110が複数のガラス球152を介してサポート部材130に固定されることによって、ヒーター140の熱をサポート部材130に伝わりにくくすることができる。図示の例では、ガラス球152の数は、3つであるがその数は2以上であれば特に限定されない。ここでは、ガラス球152を用いてヒーター140の熱をサポート部材130に伝わりにくくする場合について説明したが、ガラス球152の代わりに、位相板ホルダー110よりも熱伝導率の低い材料からなる球を用いてもよい。
【0039】
図6は、位相板15が光軸OA上に配置された状態を模式的に示す図である。図6に示すように、位相板15は、冷却シールド16に設けられた開口部2に挿入される。開口部2の光軸OAに沿った大きさは、例えば、1mm程度である。また、位相板ホルダー110の延在部114の厚さは、例えば、0.5mm程度である。
【0040】
ここで、板バネ120は、位相板15をヒーター140で加熱することによる位相板ホルダー110の膨張によって変形する。これにより、位相板15の光軸OAに沿った変位を低減できる。したがって、位相板15が冷却シールド16に接触することを防ぐことができる。以下、位相板支持装置100が位相板15の光軸OAに沿った変位を低減できる理由について比較例を用いて説明する。
【0041】
図7および図8は、比較例に係る位相板支持装置1000を模式的に示す断面図である。比較例に係る位相板支持装置1000では、板バネ120の代わりに、位相板15をヒーター140で加熱することによる位相板ホルダー110の膨張によって変形しない板1200を用いている。
【0042】
図7に示すように、位相板支持装置1000では、板1200とサポート部材130をネジ104で締結し、板1200とサポート部材130で位相板ホルダー110を挟むことによって、位相板ホルダー110をサポート部材130に固定している。ここで、ヒーター140で位相板ホルダー110が加熱されると、基部112が膨張しようとする。しかし、ガラス球150とガラス球152で基部112が固定されているため、ガラス球150とガラス球152で挟まれている基部112の部分が固定端となり、基部112の膨張が妨げられる。この結果、図7に破線で示すように、基部112が反る。基部112が反ると、図8に破線で示すように、延在部114が-Z方向に変位し、位相板15や延在部114が冷却シールド16に接触してしまう。
【0043】
図9および図10は、位相板支持装置100の動作を説明するための図である。ヒーター140で位相板ホルダー110が加熱されると、基部112が膨張しようとする。このとき、基部112がZ軸に沿って膨張すると、板バネ120が変形するため、基部112の膨張が妨げられない。例えば、図10に示すように、板バネ120は、基部112のZ軸に沿った膨張によって反る。この結果、基部112がZ軸に沿って膨張することによる基部112の反りを低減できる。さらに、位相板ホルダー110は、板バネ120によってサポート部材130に固定されているため、ガラス球150とガラス球152で挟まされている基部112の部分が固定端とならずに、基部112のY軸に沿った膨張を妨げない。この結果、基部112がY軸に沿って膨張することによる基部112の反りを低減できる。したがって、位相板支持装置100では、位相板15の光軸OAに沿った変位を低減できる。例えば、位相板支持装置100では、比較例に係る位相板支持装置1000に比べて、位相板15のZ軸に沿った変位を約1/10に低減できる。
【0044】
3. 効果
位相板支持装置100は、位相板15を支持する位相板ホルダー110と、位相板ホルダー110を挟む板バネ120およびサポート部材130と、位相板ホルダー110を加熱するヒーター140と、を含み、板バネ120は、弾性部材であり、ヒーター140で位相板ホルダー110が加熱されることによる位相板ホルダー110の膨張によって変形する。このように、位相板支持装置100では、位相板ホルダー110をサポート部材130に固定するための板バネ120が位相板ホルダー110の膨張によって変形するため、位相板15の光軸OAに沿った変位を低減できる。したがって、位相板支持装置100では、位相板15および位相板ホルダー110が冷却シールド16に接触することを防ぐことができる。
【0045】
また、常温時には、位相板ホルダー110の厚さ(Z軸に沿った大きさ)が加熱時よりも減少するが、板バネ120が位相板ホルダー110の厚さの減少に追従するため、位相板ホルダー110をサポート部材130に確実に固定できる。したがって、位相板15を水平に保つことができる。
【0046】
位相板15や位相板ホルダー110が冷却シールド16に接触すると、位相板15の温度が低下し、位相板15にハイドロカーボンなどが付着してしまう。また、位相板15の温度が不安定になるため、熱ドリフトにより位相板15が移動してしまう。また、位相板15や位相板ホルダー110が冷却シールド16に接触すると、冷却シールド16の温度が不安定になったり、冷却シールド16を冷却している液体窒素の消費が多くなったりしてしまう。このように、位相板15および位相板ホルダー110が冷却シールド16に接触すると、様々な問題が生じる。
【0047】
位相板支持装置100は、板バネ120と位相板ホルダー110との間に配置された複数のガラス球150を含み、板バネ120は、複数のガラス球150を介して、位相板ホルダー110をサポート部材130に押し付ける。そのため、位相板支持装置100では、板バネ120で位相板ホルダー110をサポート部材130に固定しつつ、位相板ホルダー110に設けられたヒーター140の熱を板バネ120に伝わりにくくすることができる。
【0048】
位相板支持装置100では、サポート部材130と位相板ホルダー110との間に配置された複数のガラス球152を含む。そのため、位相板支持装置100では、位相板ホルダー110に設けられたヒーター140の熱をサポート部材130に伝わりにくくすることができる。
【0049】
位相板支持装置100では、板バネ120は、ネジ104によってサポート部材130に締結されている。板バネ120がサポート部材130に締結されることによって、板バネ120に付勢力が生じ、板バネ120で位相板ホルダー110をサポート部材130に押し付けることができる。
【0050】
電子顕微鏡10は、位相板支持装置100と、位相板支持装置100に支持された位相板15を含む。そのため、電子顕微鏡10では、位相板15の光軸OAに沿った変位を低減できる。
【0051】
電子顕微鏡10は、試料Sを凍結した状態で支持可能な試料ホルダー13aと、位相板15を挿入可能な開口部2を有する冷却シールド16と、を含む。電子顕微鏡10では、位相板15を位相板支持装置100で支持しているため、位相板15の光軸OAに沿った変位を低減でき、位相板15が冷却シールド16に接触することを防ぐことができる。
【0052】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0053】
2…開口部、10…電子顕微鏡、11…電子源、12…集束レンズ、13…試料ステージ、13a…試料ホルダー、14…対物レンズ、15…位相板、16…冷却シールド、17…中間レンズ、18…投影レンズ、19…撮像装置、100…位相板支持装置、102…ネジ、104…ネジ、110…位相板ホルダー、112…基部、113…窪み、114…延在部、120…板バネ、120a…バネ、120b…バネ、120c…バネ、130…サポート部材、132…柱状部、134…窪み、140…ヒーター、150…ガラス球、152…ガラス球、180…位相板移動機構、182…ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10