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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163971
(43)【公開日】2024-11-26
(54)【発明の名称】交通検知システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/015 20060101AFI20241119BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20241119BHJP
【FI】
G08G1/015
G01S17/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079742
(22)【出願日】2023-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】501170080
【氏名又は名称】株式会社創発システム研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】中堀 一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】尾代 達哉
【テーマコード(参考)】
5H181
5J084
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA02
5H181AA03
5H181AA05
5H181CC03
5H181CC14
5H181DD01
5H181EE07
5J084AA05
5J084AA10
5J084AA14
5J084AB01
5J084AD01
5J084BA49
(57)【要約】
【課題】 LiDAR装置を用い、その走査結果をプロットした画像から車両を検出して車両検知を行うことができる交通検知システムを提供する。
【解決手段】 交通検知システム100は、道路200に設置したLiDAR装置110により道路面と交わるように走査するレーザー光を照射して反射光を受光し、少なくとも、走査の照射角度データと、測定時間差から算出される反射物までの距離データと、走査の測定時刻データを得る。点群プロット処理部130により照射角度のデータと距離のデータと測定時刻データから時間軸に沿った時空間内の点群データとしてプロットする。車両検出部150が点群分離処理部151を含み、点群データが形成する点群軌跡から道路200を通過する1台の通過車両300に起因する一群の点群を推定して分離し、分離した一群の点群を通過車両300として検出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の横または上に配設され、前記道路面と交わるように走査するレーザー光を照射して反射光を受光し、少なくとも、前記走査の照射角度データと、測定時間差から算出される反射物までの距離データと、前記走査の測定時刻データを得るLiDAR装置と、
前記LiDAR装置により得た前記照射角度のデータと前記距離のデータと前記測定時刻データから時間軸に沿った時空間内の点群データとしてプロットする点群プロット処理部と、
前記点群プロット処理部の前記プロットにかかる前記点群データが形成する点群軌跡から、前記道路を通過する1台の通過車両に起因する一群の点群を推定して分離する点群分離処理部を含み、前記点群分離処理部による前記推定および前記分離にかかる前記一群の点群を、前記道路を通過する前記通過車両として検出する車両検出部を備えたことを特徴とする交通検知システム。
【請求項2】
前記時空間が、前記走査の測定時刻ごとに得られる測定データの道路幅方向と高さで形成される直交座標を、前記時間軸に沿って展開した時空間であり、
前記点群プロット処理部による前記時空間内への点群データのプロットにおいて、同一の前記走査の測定時刻に複数のデータが存在する場合、前記走査の測定時刻に対応する前記直交座標において、前記道路幅の方向でソートしてプロットすることを特徴とする請求項1に記載の交通検知システム。
【請求項3】
前記時空間が、前記走査の測定時刻ごとに得られる測定データの前記照射角度と前記距離で形成される極座標を、前記時間軸に沿って展開した時空間であり、
前記点群プロット処理部による前記時空間内への点群データのプロットにおいて、同一の前記走査の測定時刻に複数のデータが存在する場合、前記走査の測定時刻に対応する前記平面に対して、前記照射角度でソートしてプロットすることを特徴とする請求項1に記載の交通検知システム。
【請求項4】
前記車両検出部が、前記一群の点群データが形成する点群軌跡から推定される高さと長さから前記通過車両の車種が四輪車であるか二輪車であるかを判別する車種推定処理部を含むものである請求項1に記載の交通検知システム。
【請求項5】
前記車両検出部が、前記一群の点群データが形成する点群軌跡から推定される高さと長さと前記時間軸上の変化から前記通過車両の速度を推定する車両速度推定部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の交通検知システム。
【請求項6】
前記車両検出部が、前記一群の点群データが形成する点群軌跡の前記時間軸上での変化の有無から、前記道路上を移動する移動車両か前記道路面にある静止物であるかを判断することを特徴とする請求項1に記載の交通検知システム。
【請求項7】
前記車両検出部が、前記一群の点群データが形成する点群軌跡の高さ成分の変化の有無から、前記道路上を移動する移動車両か前記レーザー光照射装置の前方付近を通過する雨雪であるかを判断することを特徴とする請求項1に記載の交通検知システム。
【請求項8】
前記車両検出部の前記検出結果をもとに、前記通過車両の数のカウント処理、時間帯別の前記通過車両の数のカウント処理を含む、統計処理を実行する統計処理部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の交通検知システム。
【請求項9】
前記LiDAR装置による照射面が前記道路の進行方向に複数設定され、それぞれの前記照射面の位置や角度が異なるものであるか、または、前記LiDAR装置が前記道路の進行方向に複数台配設され、それぞれの配置位置が異なりそれぞれの照射面の位置や角度が異なるものであることを特徴とする請求項1に記載の交通検知システム。
【請求項10】
一方の前記照射面を持つ前記LiDAR装置による前記通過車両の検出結果を用いた前記点群分離処理部の処理結果と、他方の前記照射面を持つ前記LiDAR装置による前記通過車両の検出結果を用いた前記点群分離処理部の処理結果とを突合する照合処理部を備えたことを特徴とする請求項9に記載の交通検知システム。
【請求項11】
(方法クレーム)
LiDAR装置を道路の横または上に配設し、前記道路面と交わるように走査するレーザー光を照射して反射光を受光し、その時間差から反射物までの距離を測定し、
前記LiDAR装置の前記測定にかかる前記照射角度のデータと前記距離のデータと測定時刻データから時間軸に沿った時空間内の点群データとして点群プロット処理を実行し、
前記点群プロット処理の前記プロットにかかる前記点群データが形成する点群軌跡から、前記道路を通過する1台の通過車両に起因する一群の点群を推定して分離する点群分離処理を実行し、
前記点群分離処理による前記分離にかかる前記一群の点群を、前記道路を通過する前記通過車両として検出することを特徴とする交通検知方法。
【請求項12】
(プログラムクレーム)
LiDAR装置を道路の横または上に配設し、前記道路面と交わるように走査するレーザー光を照射して反射光を受光し、時間差から反射物までの距離を測定するLiDAR測定処理ステップと、
前記測定処理ステップにかかる前記照射角度のデータと前記距離のデータと測定時刻データから時間軸に沿った時空間内の点群データとしてプロットする点群プロット処理ステップと、
前記点群プロット処理ステップの前記プロット結果の前記点群データが形成する点群軌跡から、前記道路を通過する1台の通過車両およびその運転者に起因する一群の点群を推定して分離する点群分離処理ステップと、
前記点群分離処理ステップによる前記分離にかかる前記一群の点群を、前記道路を通過する前記通過車両として検出する車両検出処理ステップを備え、
コンピュータリソースに前記測定処理ステップと前記点群プロット処理ステップと前記点群分離処理ステップと前記車両検出処理ステップを実行させることを特徴とする交通検知処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路など道路を通行する車両に関する諸情報を収集する交通検知システムに関する。例えば、道路面を走査することにより移動体を捉え、当該移動体の輪郭や動きを分析し、道路を走行する車両の数、車両の種類(大型車か普通乗用車か二輪車か)、車両の速度、車両の車長、渋滞、交通トラブルの有無などを検知する交通検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、道路を通行する通過台数や通過速度や車長などの諸データを計測する通過車両検知システムが知られている。
例えば、「ループコイル」と呼ばれる機器を用いたループコイル式の通過車両検知システムが知られている。ループコイル式の交通検知システムは、ループコイルと呼ばれる導体を道路地中に埋設したシステムである。金属車体である車両が通過すると、地中に埋設したループコイルのインダクタンスが変化する。ループコイル式の交通検知システムは、このループコイルのインダクタンスを道路上に所定間隔(例えば6.9m)を置いて2つ埋設しておき、これら2カ所のループコイルのインダクタンスの変化をそれぞれ検知することで2ヶ所の地点での車両の通過を検知し、交通量を計測するシステムとなっている。ループコイルのインダクタンス変化は精度良く検知することができ、また、ループコイルを埋設した2ヶ所の地点での車両の通過時刻を検知することができるため、ループコイル式の交通検知システムを用いることにより、車両の通過台数のみならず、車両ごとの通過速度や車長などを精度良く計測することができる。現在の技術では、それらデータを99%以上の精度で検知できるとされている。
【0003】
また、レーザーセンサや超音波センサを用いた通過車両検知システムがある。
従来技術である特許文献1で示されたレーザーセンサや超音波センサは、図9(a)や図9(b)に示すように、所定箇所の道路を横切るようにレーザービームや超音波を照射し、照射されたレーザービームや超音波ビームが道路面または道路上を通行する車両の表面という対象物から反射されて受信されるまでの時間を計測し、計測された時間に基づいて対象物までの距離を測定するものである(特許文献1)。
特許文献1によれば、測定データを制御装置において解析すれば、レーザービームまたは超音波ビームの照射対象物がフラット、つまり、道路上を通行する車両がなく道路面から反射して受信されたパターンであれば道路上に通過車両がないと判断でき、レーザービームまたは超音波ビームの照射対象物に凹凸があれば、その一部が道路上を通行する車両から反射して受信されたパターンとして道路上に通過車両があると判断できるとされている。このレーザーセンサや超音波センサを用いた通過車両検知システムは、道路を毀損することなく空間に設置することができるため、上記のループコイルによる通過車両検知システムを用いるシステムなどに見られたような道路埋設を伴う工事の有無、コスト、耐久年数の短さなどの問題は発生しないとされている。
【0004】
従来技術において優れたレーザーセンサを用いた車両検知システムとして、特許文献2に開示された技術が知られている。特許文献2に開示された技術では、2台のレーザーセンサを用いて、道路を通行する車両の数、車両毎の速度、車両毎の車長を精度よく検出するものとなっている。図10に示すように、例えば、道路のA地点にレーザーセンサを設置して直下の道路を通過する車両に対してレーザーを照射して反射を受信することにより車両の進入を検知するとともに、少し離れた道路のB地点にもレーザーセンサを設置して直下の道路を通過する車両に対してレーザーを照射して反射を受信することにより車両の進入を検知することにより、両者のデータを突き合わせれば道路を通行する車両の数、車両毎の速度、車両毎の車長が精度よく検出できる。
【0005】
上記のように、従来の特許文献2に開示された車両検知システムを用いれば、比較的精度良く道路を通行する車両の通過台数や通過速度や車長などの諸データを計測することができると期待される。
【0006】
特許文献2に開示された技術では、レーザーを用いた車両検知に加え、道路上の交通状況自体を直接監視する手段として可視画像を撮影する監視カメラも用いられている。実際に、監視カメラで撮影した撮影画像を基に道路上の交通事情をモニタする道路交通管理が導入されつつある。
【0007】
ここで、監視カメラで撮影した撮影画像を基にした交通管理システムとしては、人間の目視も重要であるが、人間の目視のみに頼った管理ではなく、コンピュータ処理により画像解析を行って、道路上の交通状況自体を自動監視し、道路上で発生する交通トラブルなどを検知することが求められる。
【0008】
【特許文献1】特開2003-308591号公報
【特許文献2】特開2022-118950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、特許文献1および特許文献2で開示されている従来技術におけるレーザーを用いた車両検知システムでは、つまり、道路から反射光の受光時間の変化を捉え、通過車両の道路上に設定されたレーザー照射面への進入と退出を捉えるものである。いわゆるレーザー照射面に対する車両の通過をON/OFFを感知するものとなっている。
もともとトラフィックカウンタ―は、ループコイル式から発展してきた経緯があり、コイル電流の変化を見て、道路に埋設したループコイル上を車両が通過したか否かということを検知する仕様となっており、いわゆるループ埋設エリアに対する車両の通過をON/OFFを感知するものであったため、検出手段がループコイルのコイル電流の変化ではなく、非接触で設置できるレーザーの反射光の受光時間の変化に置き換わっても、車両が通過したか否かということを検知することで十分と考えられたからである。
【0010】
なお、特許文献2の交通検知システムでは、可視画像を撮影する監視カメラの撮影画像を併用することにより、車両の通過のみならず、車種などの特定も可能となった技術である。また、夜間の時間帯では取得された画像でも精度良く走行車両を検知することができる点も評価できる。
【0011】
しかし、特許文献1の交通検知システムでは、もともとレーザー照射装置の配設としてガントリータイプの橋梁が前提となっており、コストが大きくなる問題がある。また、特許文献1の交通検知システムは、基本的には車両の通過をON/OFFで検出するものである。特許文献1の交通検知システムでもレーザー照射装置を2台配置すれば、車長を把握することは可能ではある。
【0012】
また、特許文献2の交通検知システムでもコストが大きくなるという点がある。特許文献2の交通検知システムでは、レーザー照射装置に加えてカメラ装置を併用することで、大型車、普通乗用車、小型軽自動車、二輪車などのカテゴリー別の通過台数を検出することができ、大型車、普通乗用車、小型軽自動車、二輪車などのカテゴリー別の通過台数について知りたいというニーズには応えられる技術であるが、レーザー照射装置に加えてカメラ装置を併用するためコストが大きくなってしまう。特にカメラ装置として、昼間用の可視光カメラ、夜間用の赤外線カメラを併用するシステム構成ではコストが大きくなってしまうおそれがある。
【0013】
近年、低価格でもレーザー照射装置の測定に関する解像度も向上し、低価格でも通過車両の速度に対して十分に速い走査速度を持ったレーザー照射装置の利用が可能となってきた。
本発明の交通検知システムは、上記従来技術における問題点を解決するため、ガントリータイプに限らず、道路の側道付近に設置した低価格のレーザー照射装置を用いて、レーザー照射光の道路からの反射光の受光時間から道路上の移動体等までの距離を測定し、その走査速度に応じて得られるデータを利用して、通過車両の車種、つまり、大型車、普通乗用車、小型軽自動車、二輪車などのカテゴリー別の車種まで推定し、それらカテゴリー別の通過台数を検出する交通検知システムを提供することを目的とする。
【0014】
特に、道路の車両レーンが車種ごとのカテゴリーに分かれているケース、例えば、二輪車専用レーンが設定されている場合、二輪車専用レーンは低速車線側に設定されていることが多く、二輪車専用レーンに近い側道側に低価格のレーザー照射装置を配設すれば、二輪車専用レーンを通過する二輪車と、それより高速車線側を通過する大型車、普通乗用車、小型軽自動車が精度良く検出しやすくなると期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の交通検知システムは、道路の横または上に配設され、前記道路面と交わるように走査するレーザー光を照射して反射光を受光し、少なくとも、前記走査の照射角度データと、測定時間差から算出される反射物までの距離データと、前記走査の測定時刻データを得るLiDAR装置と、前記LiDAR装置により得た前記照射角度のデータと前記距離のデータと前記測定時刻データから時間軸に沿った時空間内の点群データとしてプロットする点群プロット処理部と、前記点群プロット処理部の前記プロットにかかる前記点群データが形成する点群軌跡から、前記道路を通過する1台の通過車両およびその運転者に起因する一群の点群を推定して分離する点群分離処理部を含み、前記点群分離処理部による前記推定および前記分離にかかる前記一群の点群を、前記道路を通過する前記通過車両として検出する車両検出部を備えたことを特徴とする交通検知システムである。
【0016】
ここで、時空間としては下記の2つのタイプがあり得る。
第1のタイプの時空間は、走査の測定時刻ごとに得られる道路幅方向の位置と道路面からの高さの直交座標により形成される座標系を、時間軸に沿って展開した時空間である。
この第1のタイプの時空間を用いる場合は、点群プロット処理部130による時空間内への点群データのプロットにおいて、1回の同じ走査において複数のデータが取得されている場合、当該走査の測定時刻に対応する直交座標に対して、道路幅方向でソートしてプロットする。つまり、走査スキャンごとに、時空間上の走査スキャン時刻において得られた点群を道路幅方向の位置でソートしてプロットすれば良い。
第2のタイプの時空間は、走査の測定時刻ごとに得られる照射角度と距離の極座標により形成される座標系を、時間軸に沿って展開した時空間である。
この第2のタイプの時空間を用いる場合は、点群プロット処理部130による時空間内への点群データのプロットにおいて、1回の同じ走査において複数のデータが取得されている場合、当該走査の測定時刻に対応する極座標に対して、照射角度でソートしてプロットする。つまり、走査スキャンごとに、時空間上の走査スキャン時刻において得られた点群を照射角度でプロットすれば、道路幅方向の位置でソートしてプロットすれば良い。
【0017】
また、上記構成により、通過車両の速度に対して、レーザー光照射の走査速度が十分に速ければ、測定で得られた照射角度のデータと距離のデータと測定時刻データから時間軸に沿った時空間内にプロットすれば点群データとして得られる。この点群データは、通過車両の速度によって時間軸方向には多少の幅の誤差が混入するものの、通過車両の輪郭に沿った点群データとなる。車両検出部においてこの点群データを解析すれば、道路を通過する通過車両を検出することができる。
上記構成において、前記点群分離処理部が、前記一群の点群データが形成する点群軌跡の前記時間軸上での変化の有無に注目すれば、前記道路上を移動する移動車両か前記道路面にある静止物であるかを判断することが可能となる。
【0018】
ここで、上記の点群分離処理部において車両検出部を備え、前記一群の点群データが形成する点群軌跡から前記通過車両の車種を推定することが好ましい。
レーザー光照射装置の照射が道路の側道に配置されたものであれば、レーザー光照射装置に対向する側の輪郭の一部しか得られていないが、車種を特定できる程度の情報が含まれていることが期待できる。例えば、車両が普通乗用車であり、レーザー光照射装置が道路進行方向の左側の側道に配設されている場合、当該普通乗用車の左側面の輪郭の一部しかない点群データであるが、車両の先端、フロント、左ドア付近、リア、車両の後端などが輪郭として得られており、上記したように時間軸方向へのずれが混入しているとしても依然普通乗用車であることは推定するに足る情報が含まれていると言える。車両検出部は、この輪郭の一部しかない点群データを解析することにより、車両車種を推定する。
例えば、車両検出部は、一群の点群データが形成する点群軌跡から推定される高さと長さから通過車両の車種が四輪車であるか二輪車であるかを分別できる。
また、例えば、一群の点群データが形成する点群軌跡から推定される高さと長さと時間軸上の変化から通過車両の速度を推定する車両速度推定部を備えた構成とすることも好ましい。
つまり、一群の点群データは時間軸をもつ時空間上にプロットされた軌跡であるので、推定される高さと長さと時間軸上の変化を分析することにより通過車両の速度を推定することができる。
【0019】
次に、本発明の交通検知システムで想定されるノイズの除去について述べる。浮遊するゴミのような異物はごく一過性のもので影響は小さいとも考えられるが、天候によって雨雪が降っていると、雨雪が頻繁にノイズとして混入するおそれがある。特に雪は雨に比べてレーザー照射装置の照射域を通過する時間が長く、ノイズとして混入しやすいおそれがある。
ここで、雨雪のノイズを分析すると、降ってくる雨雪によるノイズと、一旦地面に落ちた水分を車両が跳ね上げることによるノイズがあり得る。点群分離処理部は雨雪フィルタ処理としては、前者はLiDAR装置の検知物体から時間的に連続しない物体をフィルタ除去する処理が効果的である。後者はLiDAR装置の検知物体の地面からの高さが低い物体やエッジがぼやけて曖昧である物体をフィルタ除去する処理が効果的である。なお、この雨雪フィルタ処理であれば、浮遊ゴミも効果的に排除できるものと期待できる。
この雨雪フィルタ処理を施せば、一群の点群データが道路上を移動する移動車両か、天候に基づくノイズ、つまり、レーザー光照射装置の前方付近を通過する雨雪であるかを判断する処理を効果的に行うことが期待できる。
【0020】
次に、本発明の交通検知システムにおいて、精度を高める構成としては、レーザー光照射装置による照射面が複数ありそれぞれの照射面の位置や角度が異なるものであるか、レーザー光照射装置が複数台あり道路面に対する照射方向が異なるものとする構成があり得る。つまり、複数のレーザー照射面からの測定結果を用いて点群プロット処理を行うことにより、車両検知精度が上がるだけでなく、レーザー光照射装置の照射面の間隔が既知であれば、通過車両の速度等が推定しやすくなる。
【0021】
次に、本発明の交通検知システムにおいて、車両検出部の検出結果より通過車両の数をカウントするカウント処理部を備えた構成も好ましい。道路管理者は車種別の通過台数を知りたいというニーズがあり、台数のカウント結果を通知することができる。
【発明の効果】
【0022】
上記構成により、本発明の交通検知システムによれば、測定で得られた照射角度のデータと距離のデータと測定時刻データから時間軸に沿った時空間内にプロットすることにより点群データが得られ、通過車両の速度によって時間軸方向には多少の幅の誤差が混入するものの、この点群データを用いれば通過車両の輪郭に沿った点群データとなり、通過車両を検出することができる。
また、本発明の交通検知システムによれば、点群軌跡の形状において車両とみなせない軌跡形状であれば、車両でないもの、例えば、雨雪や浮遊するゴミなど非車両物と判断できる。
また、本発明の交通検知システムにかかる点群データを用いた方式であれば、点群データ軌跡のクラスタの分離が他方式に比べて容易であり、車両間隔の小さい過密走行でも点群データのクラスタ分離が可能である。
また、本発明の交通検知システムによれば、点群データ軌跡を分析すれば詳細な車種判別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】交通検知システム100が道路上からデータを収集する道路や走行車両を簡単に示した図である。
図2】実施例1にかかる本発明の交通検知システム100の構成例を簡単に示した図である。
図3】LiDAR装置110のレーザー光照射装置111のレーザー光の照射と受光を繰り返す走査の様子を示す図である。
図4】点群プロット処理部130によって、時間軸に沿った時空間内の点群データとしてプロットした結果の一例を簡単に示した図である。
図5】実証実験において、LiDAR装置110により得られた測定データを点群プロット処理部130によりプロットした点群データの表示例を示す図である。
図6】同じ実証実験において、データを高所からの見下ろし的に可視化したものであり、走行の様子を俯瞰的に見た様子を可視化した図である。
図7】ベトナムのホーチミン市の道路の交通検知の実証実験を行った統計結果を示した図である。
図8】実証実験において1時間あたりの車両300の車種別の交通量をカウントした統計結果を示す図である。
図9】従来におけるレーザーセンサを用いた交通検知装置の例を示す図である。
図10】従来におけるレーザーセンサを用いた交通検知装置の例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の交通検知システムの実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
【実施例0025】
実施例1として、本発明の交通検知システムの基本構成例を示す。
図1は、交通検知システム100が道路上からデータを収集する道路や走行車両を簡単に示したものである。ここでは、図1に示すように道路200近辺に設置される構造体210、レーザー光照射エリア220、車両300が示されている。交通検知システム100は通信可能な状態であれば、図1に示した道路200の付近ではなく、道路管理者の管理センターなどに設置されていても良い。この例では便宜上、図1中に交通検知システム100の存在も示し、さらにその構成要素であるLiDAR装置110を構造体210に配設した形で図示している。
なお、車両300は特に車種は問われない。後述する実施例では、二輪車を中心として説明する。
また、道路200には多様なものがあり得るが、図1では一例として片道2車線のものを図示した。なお、本発明の交通検知システム100は、高速道路、一般の対面交通道路、一方通行道路であっても適用可能であることは言うまでもない。後述する実施例では、二輪車専用レーンが低速車線側に設けられている例を中心として説明する。
【0026】
構造体210は、本発明の交通検知システム100の少なくとも一部の構成を取り付けるための構造物であり、道路200付近に設置されている。図1の構成例では、構造体210はいわゆる道路横に立設された柱状の構造物であるが、道路を跨ぐように設けられた陸橋構造物などでも良い。
なお、交通速度取締システムなど他のシステムとの兼用であっても良く、また、夜間に道路を照らす照明機器などが併設されていても良い。
【0027】
レーザー光照射エリア220は、道路200を通過する車両を検出するため道路上にLiDAR装置110からレーザー光が照射されるエリアである。図1の例では、レーザー光照射エリアに向けてLiDAR装置110が構造体210の所定の高さで所定の角度で設置され、通過する車両に対してレーザー光を照射する仕組みとなっている。
【0028】
次に、交通検知システム100のシステム構成について説明する。
図2は、実施例1にかかる本発明の交通検知システム100の構成例を簡単に示した図である。図2に示す交通検知システム100の基本構成は、LiDAR装置110(レーザー光照射装置111、測定データ解析部112)、点群プロット処理部130、車両検出部150、統計処理部160を備えたものである。データ通信手段は図示していないが、交通制御センターシステムとデータの送受信ができる構成となっている。
【0029】
以下、各構成要素について説明する。
LiDAR装置110は、道路の横または上に配設され、道路面200と交わるように走査するレーザー光を照射して反射光を受光して距離を測定できるものである。この例では、レーザー光照射エリア220に向けてレーザー光照射装置111が構造体210に対して所定の高さで所定の角度で設置され、レーザー光照射エリア220に向けてレーザー光の照射と受光を繰り返しつつ所定の走査をおこなっている。図1の構成例では、レーザー光照射装置111からのレーザー照射角度はほぼ直下付近に設定された例となっている。
【0030】
LiDAR装置110の構成は2台を基本とする。この例では、図1に示すように、LiDAR装置110を近接して2台設置し、レーザー光照射エリア220が一定幅の面である例となっている。
ここでは、一方がメインであり、他方がサブの位置づけとなる。ここでは、LiDAR装置110-1がメインのLiDAR装置、LiDAR装置110-2がサブのLiDAR装置とする。
なお、LiDAR装置110を1台とする構成も可能である。しかし、LiDAR装置110が1台のみであれば、後述する点群プロット処理部130によるプロット結果において車速と車長を分離できないため、車両検出部150の点群分離処理部151による車両ごとの点群分離や車速推定処理部154による車速の推定ができなくなる。もっとも擬似的に平均車速を計算することは可能である。
この実施例では、LiDAR装置110を2台構成とし、いわゆる二次元LiDAR装置を構築した例として説明を続ける。
【0031】
LiDAR装置110-1の配置角度は、道路200を走行する車両300を見下ろす高さから走査面が垂直になる角度に設置する方が精度良いデータが得られる。なお、サブのLiDAR装置110-2は斜めに設置しても良い。設置コストのかかる構造体210を共有するためメインのLiDAR装置110-1とサブのLiDAR装置110-2を1つの構造体210に搭載する場合の工夫である。しかし、精度的にはサブのLiDAR装置110もメインのLiDAR装置110と同様に道路200を鉛直に見下ろす設置が望ましい。この図1に示した例では、メインのLiDAR装置110-1もサブのLiDAR装置110-2も道路200を鉛直に見下ろす向きに設置された例となっている。
【0032】
図3は、LiDAR装置110のレーザー光照射装置111のレーザー光の照射と受光を繰り返す走査の様子を示す図である。レーザー光の走査には様々なパターンがあり得る。なお、図3は走査軌跡が平面を形成する例となっているが、曲面であっても良い。
図3(a)はレーザー光照射装置111から走査用のレーザー照射が回転するように走査するパターンである。なお、走査が必要なレーザー光照射エリア220以外に照射される範囲については、外部に照射しないようにカバー類を設けることも好ましい。
図3(b)はレーザー光照射装置111から走査用のレーザー照射を扇状に繰り返すように走査するパターンである。つまり端部に至るまで回転して走査し、端部に至ると折り返して逆方向に回転して走査し、他方の端部に至るまで走査する。この動きを繰り返すものである。
図3(a)または図3(b)のいずれの走査方法であっても、走査が必要なレーザー光照射エリア220がカバーされるように走査される。
【0033】
レーザー光照射装置111は、図3(a)または図3(b)のいずれの走査方法であっても、レーザー光照射エリア220に対してレーザー光を照射し、レーザー光照射エリア220からの反射光(道路面200や通過車両300で反射したレーザー光)を受光する。走査の回転面に存在する物体との距離を一定の角度分解能をもって測定することができるものである。
【0034】
ここで、レーザー光照射装置111のレーザー走査速度は車両300の速度に比べて十分速いものとする。
例えば、レーザー走査の回転数は1秒間の走査回転数は50~100とする。この走査回転数であれば、10msec~20msec毎に情報を取得することができる。
レーザー光照射装置111を用いれば、走行してくる車両300をスキャン毎(1 回転ごと)に輪切りにするように計測していくことができる。
【0035】
測定データ解析部112は、レーザー照射装置111による測定結果から、少なくとも、走査の照射角度データと、測定時間差から算出される反射物までの距離データと、走査にかかる測定時刻データを得るものである。つまり、本発明の交通検知システム100のLiDAR装置110の測定結果において、少なくとも、照射角度データと、距離データ、測定時刻データの3つがセットとなったデータが、レーザー照射装置111の走査中の照射と反射のたびに得られることとなる。ここでは、レーザー光照射装置111のレーザー走査速度は車両300の速度に比べて十分速いものであるので、車両300のフロント部分の先端がレーザー光照射エリア220に掛かり、車両300のリア部分の後端がレーザー光照射エリア220を抜け出るまでに、時系列に複数回、レーザー光の照射と反射光の受光が繰り返され、測定データ解析部112において、時系列に複数個のデータ(照射角度データと、距離データ、測定時刻データがセットになったもの)が得られることとなる。
【0036】
点群プロット処理部130は、プロット用の時間軸に沿った時空間を管理でき、測定データ解析部112により得た解析データ、つまり、照射角度のデータ、距離のデータ、走査にかかる測定時刻データを基に、時間軸に沿った時空間内の点群データとしてプロットする部分である。
なお、点群プロット処理部130が管理するプロット用の時間軸に沿った時空間としては下記の2つのタイプがあり得る。
第1のタイプの時空間は、走査の測定時刻ごとに得られる道路幅方向の位置と道路面からの高さの直交座標により形成される座標系を、時間軸に沿って展開した時空間である。
この第1のタイプの時空間を用いる場合は、点群プロット処理部130による時空間内への点群データのプロットにおいて、1回の同じ走査において複数のデータが取得されている場合、当該走査の測定時刻に対応する直交座標に対して、道路幅方向でソートしてプロットする。つまり、走査スキャンごとに、時空間上の走査スキャン時刻において得られた点群を道路幅方向の位置でソートしてプロットする。
次に、第2のタイプの時空間は、走査の測定時刻ごとに得られる照射角度と距離の極座標により形成される座標系を、時間軸に沿って展開した時空間である。
この第2のタイプの時空間を用いる場合は、点群プロット処理部130による時空間内への点群データのプロットにおいて、1回の同じ走査において複数のデータが取得されている場合、当該走査の測定時刻に対応する極座標に対して、照射角度でソートしてプロットする。つまり、走査スキャンごとに、時空間上の走査スキャン時刻において得られた点群を照射角度でプロットすれば、道路幅方向の位置でソートしてプロットすることとなる。
なお、この実施例では、第1のタイプの時空間を用いてプロット処理する例(つまり、走査の測定時刻ごとに得られる道路幅方向の位置と道路面からの高さの直交座標により形成される座標系を時間軸に沿って展開した時空間を用いてプロット処理する例)として説明する。
【0037】
図4は、点群プロット処理部130によって、時間軸に沿った時空間内の点群データとしてプロットした結果の一例を簡単に示したものである。プロットに用いたデータは、メインのLiDAR装置110-1で得られたデータである。図4(a)は複数台の四輪車と複数台の二輪車がレーザー光照射エリア220を通過した場合における時空間内の点群データのプロットを模式的に図示したものとなっている。
図4(b)はカメラの実写映像である。
なお、あたかも、図4(a)のLiDAR110で得たデータを基にした点群データのプロットの表示角度と、図4(b)のカメラの実写映像の撮影角度とが異なり、画像同士は正確に対応していないように見えるが、点群プロット処理部130による点群データのプロット処理において視点は自由に設定できるので、両者の不一致は、単に図4(a)の表示角度を図4(b)の撮影角度に一致させていないというだけであり、両者は表現形式が異なるだけで同じ交通状況を捉えている。
【0038】
図4(a)において横軸方向は時間軸である。つまり、時空間は横軸が時間軸であり、照射角度と測定距離により表現される空間となっている。図4(a)に示した例では、レーザー光照射エリア220を加速も減速もなく一定速度で通過した例となっているものとする。
図4(a)に示す点群データのプロット軌跡は、通過する二輪車と運転者の左側面の外表面を立体的に示したものとなっていることが分かる。また、LiDAR装置110のレーザー照射装置111が構造体210の比較的高い位置から照射されているため、各々の車両300は高さ方向に縮んだように表示されている。
【0039】
なお、図4(a)における点群データのプロットにおいて、二輪車の進行方向のプロット軌跡は、運転者の左側面の外表面の長さ方向の外形をありのまま直接表示するものではなく、時間軸に沿ってプロットされた結果であるので、車両の速度が遅いと時間軸に沿ったプロット軌跡は長く表現され、車両の速度が速いと時間軸に沿ったプロット軌跡は短く表現される点に留意する必要がある。
【0040】
車両検出部150は、点群データのプロットから分離した一群の点群データを基に、車両300であるか否かを検出するものである。さらに、車種の推定処理、車速の推定処理も行うことができる。
この例では、車両検出部150は、点群分離処理部151、照合処理部152、車種推定処理部153、車速推定処理部154を備えた構成となっている。なお、その他にも車長推定処理部など、点群データを基に道路管理者が求める情報を推定する機能を搭載することもできる。
【0041】
点群分離処理部151は、点群プロット処理部130のプロットにかかる点群データが形成する点群軌跡から、道路200を通過する1台の通過車両300およびその運転者に起因する一群の点群を推定して分離する処理を実行するものである。
【0042】
交通密度が小さい道路であれば、1台ごとの車両が間歇的に分散してプロットされ、1塊の点群データが孤立して分離しやすいが、交通密度が大きい道路であれば、複数台の車両が重なり合うようにプロットされてしまうことがあり得る。大型車両や普通乗用車などであれば、1台ごとにある程度の車間距離が保たれていることが想定できるが、二輪車であれば、1つのレーン内に複数台の二輪車が重なるように通過することも想定される。後述する具体的な測定例ではこのような厳しい条件、つまり、二輪車専用レーンを複数台の二輪車が通過する例を示すが、点群分離処理部151は、点群プロット処理部130のプロットにかかる点群データが形成する点群軌跡から1台の通過車両300およびその運転者に起因する一群の点群を推定して分離する。
点群分離処理部151は、下記の処理内容のプログラムを実行させる例がある。
【0043】
『車両候補の生成と点群の割り当て処理』
車両候補を生成し、スキャン毎に供給される測定点を車両候補に割り当てる。割り当ての主な判断基準はすでに同じ車両候補に割り当て済みの点群との時空間上の距離である。すなわち、距離の近い点同士は同一車両から得られた点であるとみなし、同一の車両候補に割り当てる。測定点に対し、割り当てられる車両候補が存在しない場合は、新たな車両候補を生成してそれに割り当てて行く。ここで、点群が時系列にソートされ、さらに道路幅方向にソートされていることによって車両候補の乱立を抑制できる。
なお、第2のタイプの時空間を用いたプロット処理でも、照射角度でソートされることによって車両候補の乱立を抑制できる。
【0044】
『一群の点群データの分離、車両候補の確定』
一定時間,新たな点の割当てがなかった車両候補は、当該車両が通り過ぎたと判断し、1台の車両として確定させ、割当てられた点群から車高、車幅、車両位置等を計算し、車両として出力する。このとき持続時間があまりに短い場合には車両ではなく、雨雪やゴミ等による反応とみなして削除する。また、時空間上に近接して別の車両候補があり、それと同一車両であると判断される場合には、一旦別々に生成した車両候補を1つの車両候補にマージする。
【0045】
照合処理モジュール152は、オプション構成であるが、点群分離処理部151による一群の点群の推定精度を向上するため、メインのLiDAR装置110-1から取得したデータからプロットした点群データを用いた車両候補の推定結果と、サブのLiDAR装置110-2から取得したデータからプロットした点群データを用いた車両候補の推定結果とを照合処理を行うものである。
それぞれ独立に取得されたLiDAR装置110のデータを基に、それぞれ独立に推定された結果における同一車両300が対応し合う否かを照合処理モジュール152により照合することにより推定精度が上がる。なお、推定結果がマッチングしない車両300については、複数台の車両300の通過状態により陰に隠れていたり、何か道路上の障害物による影響が及んだりした可能性もあり得ることとなる。この判断や修正はシステム運用者が人手で行っても良く、また、その判断や修正内容を点群分離処理部151に学習させることも好ましい。
【0046】
車種推定処理モジュール153は、車両候補のもつ特徴をもとに車種を推定する。なお、ここでいう車種とは、大型車、普通乗用車、小型車、二輪車などのカテゴリーの種別をいう。メーカー別の車両名まで推定するものでなくても良い。
一群の点群データが示す特徴や輪郭シルエットより、大型車、普通乗用車、軽自動車などの小型車、二輪車の種別の判断はある程度可能と期待できる。
【0047】
車種推定処理モジュール153による点群データの車両車種を判断する手段として、幾つかの処理があり得る。
例えば、パターンマッチング処理がある。データベースを構築し(図示せず)、その中に、車両が想定内の速度で通過した場合に形成される時空間上の点群データのプロット結果を多数パターン記憶しておき、点群分離処理部151から入力された時空間上の点群データの形状同士をパターンマッチングすることにより同定する。なお、車両速度により時間軸方向には伸び縮みが発生するので、マッチングにおいて時間軸方向の長さは調整してマッチングしても良いと考えられる。
【0048】
また、例えば、機械学習による画像認識処理を併用することも可能である。パターンマッチング処理による認識正解率が低い場合も、正解・不正解のデータを蓄積して機械学習させてゆくことにより、パターンマッチング処理による認識正解率を向上させることが期待できる。
【0049】
車種推定処理モジュール153は、点群プロット処理部130による時空間へのプロットの結果において人の目でも車両の輪郭と分かる程度の良質なデータであれば、相当高い認識正解率が得られると考えられる。例えば、車種推定処理モジュール153は、一群の点群データが形成する点群軌跡から推定される高さと長さから通過車両の車種が四輪車であるか二輪車であるかを分別できると期待できる。
点群プロット処理部130による時空間へのプロットの結果には、車両の通過速度に応じて時間軸方向における歪みが混在しているが、車種推定処理モジュール153は点群データが形成する時空間上の形状を基に車両が持つ形状を捉えて判断することが可能である。
【0050】
ここで、車種推定処理モジュール153は、認識対象物が道路を通過する移動体である車両という条件があるため、明らかに車両以外のものはノイズとして除去することができる。
例えば、車種推定処理モジュール153は、一群の点群データが形成する点群軌跡の時間軸上での変化の有無から、道路上を移動する車両300であるか、道路200にある静止物であるかを判断することができる。時間軸上で変化がないものは、レーザー光照射エリア220の道路200付近に静止物として写り込んでいる物体であると判断でき、それは車両300ではないノイズとして除去すれば良い。
【0051】
また、例えば、車種推定処理モジュール153は、一群の点群データが形成する点群軌跡の高さ成分の変化の有無から、道路上を移動する移動車両かレーザー光照射装置110の前方付近を通過する雨雪であるかを判断することでき、それらをノイズとして除去することができる。空中を浮遊するゴミのようなものは一過性のものであるが、雪や雨などは一定時間継続的に降るものであるので、点群プロット処理部130による時空間へのプロット結果に混入する可能性があり、点群分離処理部151により時空間上の一群の点群データとして切り出されてしまう可能性もある。特に雪は雨に比べてレーザー光を反射してレーザー光照射装置110において受光されてしまうことが想定される。そこで、車種推定処理モジュール153が、点群軌跡の高さ成分の変化をチェックすることにより、点群軌跡の高さ成分の変化が無ければ水平に道路上を移動するもの、つまり通過車両と判断でき、点群軌跡の高さ成分の変化が有れば道路に対して降り注いでいるもの、つまり雨雪と判断でき、ノイズとして除去する。
【0052】
車速推定処理モジュール154は、検出された車両300ごとの車速を推定するものである。
ここで、前述の車種推定処理モジュール153による車両の検知は、メインのLiDAR装置110-1の1台のみの測定データの解析で可能である。また、時空間上に現れる時間軸上の長さがあたかも車長方向の可視化された結果と捉えがちであるが、これは、暗に車速と車長を適当に関連付けて認識しているからである。原理的に1台のメインのLiDAR装置110-1の測定データから車両300の速度と車長を分離することはできない。例えば、ある車両300の倍の車長の車両が倍の速度で通過した場合、LiDAR装置110-1の走査で得られる測定データは点群プロット処理部130が時空間上にプロットする結果は同一となり、区別することができない。したがって,速度と車長の検知のためにはもう一台のLiDAR装置110(サブのLiDAR装置110-2)を少し離れた位置に置いて独立に走査して測定し、メインのLiDAR装置110-1との位置差と時間差を利用して、車長と車速を分離する。
【0053】
ここでは、メインのLiDAR装置110-1とサブのLiDAR装置110-2により形成されるレーザー光照射エリア220の進行方向の長さは、3m~10m程度の間隔を想定しており、その間隔では車両300が道路幅方向の移動はほとんどないと仮定できる。実際の実証実験の結果でもレーザー光照射エリア220内での道路幅方向のずれは、多くの車両において0.5m以内に収まっていた。この知見を利用し、時間差および道路幅方向位置差が一定範囲以下である車両を同一車両としてマッチングさせる。
【0054】
このように、車速推定処理モジュール154に与えられるデータは、前提として、すでに点群分離処理部151による車両候補の選定と、照合処理部152による車両候補の照合処理により、それぞれ車両300が特定されている。
車速推定処理モジュール154は、同一の車両として同定されている2つの点群データを用いて、当該車両300の車速v[m/s]は、道路面でのメインのLiDAR装置110-1とサブのLiDAR装置110-2との間の距離D[m]と、メインのLiDAR装置110-1で車両300のフロントの先端が検知された時刻T11と、サブのLiDAR装置110-2で車両300のフロントの先端が検知された時刻T21から、下記の数式1で車速v[m/s]が得られる。
[数式1]
v=D/(T11-T21)
また、車長Lは、メインのLiDAR装置110-1で車両300のフロントの先端が検知された時刻T11と車両300のリアの後端が検知された時刻T12と車速vから下記の数式2で得られる。
[数式2]
L=v(T12-T21)
【0055】
なお、参考データとして、車両300の車長Lは、軽自動車は、3m40cm程度、普通乗用車は4m前後、大型車は5m~25m程度である。そこで、例えば、大型車、小型車を区別するのであれば、車両300の車長Lが5m以上であれば大型車、5m未満であれば小型車として分類することができる。また、車長Lが0.5m以下や30m以上など、車長Lとして想定される範囲から大きく外れた場合は、[数式1]や[数式2]で計算された結果に何らかの誤りが混入していると推定できる。
【0056】
次に、統計処理部160は、車両検出部150による車両300の検出結果より、通過車両300の総数のカウント処理、時間帯別の通過車両300のカウント処理、渋滞発生の有無の検知、渋滞が発生しやすい時間帯の把握など様々な統計処理を実行するものである。
以上が、交通検知システム100の各構成要素の説明である。
【0057】
以下、交通検知システム100を用いて、車両検出処理の実例を示す。
図5は、ベトナムのホーチミン市内のあるトンネルの自動二輪車専用レーンにレーザー光照射エリア220を設けてレーザー光照射装置110を配設し、測定データ解析部112により得られた測定データを取得し、それらを点群プロット処理部130によりプロットした点群データの例である。
この実例は、図示において手前側が二輪車専用レーンとなっており、奥側が自動車専用レーンとなっている。
ベトナムのホーチミン市は二輪車の交通量が多いと言われており、ピーク時には入り乱れるような超過密状態で秒間約3台の自動二輪車が通過していき、1時間あたり1万台の交通量を超えると言われている。このような交通流に対して、日本の交通事情を前提とした従来技術における交通検知システムでは、そもそも二輪車の検知が不可能であったり、著しく精度が低下したりすることが予想される。
【0058】
図5に示すように、図示の手前側の二輪車専用レーンには過密状態で二輪車が走行しているが、車両検知部150による処理、つまり、点群分離処理部151、照合処理部152の処理結果により、時空間上、四輪車、二輪車とも車両300ごとに高精度で分離され可視化できていることが分かる。
図6は、同様のデータを高所からの見下ろし的に可視化したものであり、走行の様子を俯瞰的に見た様子を可視化することもできていることが分かる。
なお、図5図6は時空間における横方向の時間の表示が異なっており、両図において車両300同士の横方向の位置はずれているように表示されている。
【0059】
次に、さらに、車種推定処理部153による推定結果をもとに、統計処理部160が統計処理した結果を示す。
図7は、ベトナムのホーチミン市の道路の交通検知の実証実験を行った統計結果を示したものである。図7は1時間あたりの1車線あたりの通過車両を検証した結果を統計的に示したものである。
図7では、本発明の交通検知システム100を用いた車両検知数と、比較のために現地に設置されているビデオカメラ画像認識式の車両検知器による車両検知数の結果とを比較して示している。
両者の検知数は概ね一致しており、本発明の交通検知システム100による四輪車の検知はある信頼に足る精度で行えていることが検証できた。
【0060】
交通量が多い平日夕方の10分間を対象に四輪車と二輪車の台数を車種別に細かく比較すると、本発明の交通検知システム100による車両検知数とビデオカメラ映像からの目視でのカウントによる検知数は、双方とも四輪車233台、二輪車1505台であり一致した。台数が非常に多いため、ビデオカメラ画像認識式の車両検知器による車両検知数にもカウントエラーが含まれている可能性があり、また、本発明の交通検知システム100による交通検知では誤検知による検知漏れや二重カウント等が含まれている可能性はあるものの、本発明の交通検知システム100による交通検知処理は信頼に足る精度を有していると考えられることが検証できた。
【0061】
次に、統計処理部160が統計処理した結果として、車両300の車種別の通過台数をカウントした結果を示す。
図8は、1時間あたりの車両300の車種別の交通量をカウントした結果を示す図である。四輪車は、車高の違いにより、大型車と小型車を分類してカウントした。
図8に示すように、二輪車の交通量は、特に平日の朝と夕のピーク時の二輪車の交通量が多く、1時間あたり1万台を超えることがわかった。
統計処理部160の統計処理により、1車線しか無い二輪車専用レーンに1秒当たり約3台の二輪車が走行していることが判明したが、そのような二輪車の交通が過密状態であっても、本発明の交通検知システム100によれば、正確に検知できていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の交通検知システムの交通検知システムは、一般道や高速道路を通過する車両を検知することができる交通検知システムとして広く適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
100 交通検知システム
110 LiDAR装置
111 レーザー照射装置
112 測定データ解析装部
130 点群プロット処理部
150 車両検知部
151 点群分離処理部
152 照合処理部
153 車種推定処理部
154 車速推定処理部
160 統計処理部
200 道路
210 構造体
220 車両検知エリア
300 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10