(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163976
(43)【公開日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ハゼ締め装置、およびハゼ締め装置の自動動停止装置
(51)【国際特許分類】
B21D 39/02 20060101AFI20241114BHJP
E04D 3/30 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B21D39/02 F
E04D3/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2024012310
(22)【出願日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2023073821
(32)【優先日】2023-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523148975
【氏名又は名称】日高 正志
(72)【発明者】
【氏名】日高 正志
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AZ01
2E108BB04
2E108BN06
2E108CC01
2E108DD07
2E108DF07
2E108GG15
(57)【要約】
【課題】 ハゼ締め装置の走行状態の安定化を図り、ハゼ締め作業の作業効率およびハゼ締め品質を向上させる。
【解決手段】 複数個の駆動ローラR3…を並列に配置し、これらの駆動ローラR3…間に動力伝達ベルトB1を掛け回して連動させるとともに、ハゼ締め作業に際しては、動力伝達ベルトB1を外すことなく、駆動ローラR3とカシメローラR5との間に仮組された2枚のハゼ折鋼板M,Mのハゼ締めラインM1と共に動力伝達ベルトB1を挟み込んでカシメ作業を実施する。動力伝達ベルトB1がハゼ締めラインM1の保護部材、駆動ローラR3の摩擦増大部材として機能するとともに、ハゼ締め装置の安定な走行状態を実現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインベース板と、該メインベース板に手動の伸縮リンク機構を介して往復スライド動作可能に搭載するサブベース板を備え、
前記メインベース板は、ハゼ締め作業の前提として隣接する2枚のハゼ折鋼板を山形に仮組みした場合において加工対象となる山頂部分の稜線位置におけるハゼ締めライン上を走行する複数個の稜部走行ローラと、前記ハゼ締めラインの両側に形成される谷底部分の各谷線ライン上を走行する各1対の脚付き走行ローラと、前記ハゼ締めラインの一方側の側方に水平姿勢で配置される複数個の駆動ローラと、該駆動ローラを駆動する駆動機構を搭載するとともに、
前記サブベース板は、前記ハゼ締めラインを挟んで前記複数個の駆動ローラに対峙する位置に水平姿勢で配置される成形ローラとカシメローラとを搭載し、
前記メインベース板における複数個の駆動ローラは、前記駆動機構によって動力伝達ベルトを介して同一回転方向に積極駆動されるとともに、前記サブベース板における成形ローラとカシメローラとは、前記サブベース板の往復スライド動作によって前記駆動ローラに対して離接動作をし、前記複数個の駆動ローラとカシメローラおよび成形ローラとは、前記動力伝達ベルトと共にハゼ締めラインを両側方から挟み込むことを特徴とするハゼ折鋼板のハゼ締め装置。
【請求項2】
前記駆動ローラの駆動機構は、2次電池を電源とし、ハゼ折鋼板のハゼ締め作業と異なる用途に供することを目的として市販されている電動回転工具を駆動源として組み付け可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハゼ折鋼板のハゼ締め装置。
【請求項3】
下向きに取り付けられた電動回転工具のグリップに装着されたトリガを押し上げる作動子を備える水平アームと、該水平アームの一方の端部、または両方の端部にリンクアームを介して連結され、ハゼ折鋼板のハゼ締めライン上を稜部走行ローラおよび脚付き走行ローラに先行して走行する重錘ローラとを備え、
該重錘ローラは、ハゼ締めラインの末端から落下する動作によって前記リンクアームを介して前記水平アームを引き付けて水平アームに取り付けられた前記作動子を電動回転工具のトリガから外すことを特徴とするハゼ締め装置の自動停止装置。
【請求項4】
前記水平アームおよび作動子を介して手動で電動回転工具のトリガをON-OFF操作するスイッチ機構を備えることを特徴とする請求項3に記載のハゼ締め装置の自動停止装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の自動停止装置を備えることを特徴とする請求項2に記載のハゼ折鋼板のハゼ締め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭の車庫や、大小工場等の屋根葺き部材として多用されるハゼ折鋼板のハゼ締め装置、特に、所定の態様で仮に組み合わされるハゼ折鋼板の連結部分であるハゼ締めラインに沿って電動で自走しながらハゼ締めラインをカシメて締付ける動作、すなわちハゼ締めを実行するハゼ締め装置、およびハゼ締め装置の自動停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハゼ折鋼板の提供初期におけるハゼ折鋼板のカシメ連結作業、つまりハゼ締め作業は、業界でガッチャと呼ばれている大型の刈り込み挟み様の手動工具を用い、多点を挟むようにカシメて実施されていたが、今日では、ハゼ折鋼板のハゼ締めラインに沿って自走しながら連続的にカシメ連結する電動のハゼ締め装置が提供されている。
【0003】
連結作業の前提として横並びに配置した2枚のハゼ折鋼板のカシメ連結部分は山形の山頂部分である。この山頂部分の断面形状は、ハゼ折鋼板の種類やサイズ規模等によってやや異なる態様のものもあるが、基本的には、雨切り構造を実現するという共通の目的を有するため、ほぼ共通した構造である。
【0004】
従来提供されている自走方式のハゼ締め装置は、横並びに配置されて山形を形成するように仮組みされた2枚のハゼ折鋼板の山形部分に跨る姿勢で走行しながら山頂部分のハゼ締めラインのカシメ動作を実行するものである。ハゼ締め装置には、一般に金属製のカシメローラと駆動ローラとが組み込まれている。他方、2枚のハゼ折鋼板の山頂部分は、カシメる対象部分として互いに嵌り込む形状に形成されている。ハゼ締め装置は、走行しながらカシメローラと駆動ローラとの間にハゼ締めラインを側方から挟み込んで所定形状に変形させることによりカシメ作業を実行するものである。
【0005】
なお、自走方式といっても作業員が不要という趣旨ではなく、ハゼ締め装置の運転開始および停止、その他動作状態の監視等のため作業員の随行は必要条件である。また、ハゼ締め装置における自走動作は、カシメローラと駆動ローラとがハゼ締めラインを挟み込んで回転駆動されることによって、反作用的に走行するものである。これによって、走行用の駆動機構が省略されている。なお、ハゼ締め装置の電源には商用電源が用いられる他、バッテリ電源を有する市販のドリル装置等の電動回転工具を駆動源として組み込んだユニークなものも知られている。
【0006】
上記のような従来のハゼ締め装置については、幾つかの改善すべき問題点が指摘されている。
【0007】
例えば、屋根葺き部材としてのハゼ折鋼板の普及には、鋼板材料の防錆技術の進歩発展が大きく寄与しているのであるが、ハゼ締め装置を用いた作業の場合においては、錆の発生件数が多いという指摘がある。この問題は、直接的にはハゼ折鋼板の山頂部分のハゼ締めラインを強力に挟み込んだ状態の金属製の駆動ローラが不特定箇所で高頻度で空転することによりハゼ折鋼板表面の防錆被膜が失われることに起因する。
【0008】
この問題を検討すると、駆動ローラの空転は、ハゼ締め装置の走行状態が不安定であって、頻繁に蛇行することに起因することが判明する。この問題は、それでは何故蛇行するのかという問題に帰着する。仮組みされた2枚のハゼ折鋼板のハゼ締めラインは、互いに嵌り合う形状に形成されてはいるが、その部分の形状は非対象であってハゼ締めラインの両側で大きく異なっている。そして、カシメローラは作業負荷の大きい側、つまりハゼ締めラインの変形量が大きい側に配置され、駆動ローラは、作業負荷の小さい平坦な側に配置されている。
【0009】
ハゼ締め装置の蛇行がカシメローラと駆動ローラとの作業負荷の大小関係によって生じるのであれば、両者を機械的に連動させれば問題を解決することができるように思われるが、両者間の間隔は、カシメ作業開始前と開始後とでは異なるのであり、両者を機械的に連動させるには複雑な機械構成が必要とされ、コストアップが避けられない。
【0010】
また、仮に両者を機械的に連動させたとしても蛇行問題の解決にはほとんど貢献しないと考えられる。なぜなら、カシメローラはハゼ締めラインの一方の側方において、走行するハゼ締め装置を進行させないように機能するが、駆動ローラは、ハゼ締めラインの他方の側方においてハゼ締め装置を進行させるように機能する。これでは、ハゼ締め装置が蛇行するのは当然ともいえる。
【0011】
従来のハゼ締め装置について指摘される他の問題点としては、特に充電方式のバッテリ電源を有する市販のドリル装置等を駆動源として組み込んだハゼ締め装置について、ハゼ折鋼板の末端におけるハゼ締め装置の停止操作に関する問題がある。
【0012】
この問題は、商用電源を用いる装置の場合は、ハゼ締め装置は電源コードを引いて自走するのであるから、手元の電源スイッチを切って簡単に装置を停止させることができるので、問題にならない。
【0013】
屋根葺き材としてハゼ折鋼板を用いる屋根は、一般的に、緩い勾配の片流れの屋根として設計構築される。ハゼ締め装置は、通常、屋根の棟側から軒先側に向けてハゼ折鋼板上にセットされる。この後、随行作業員によって電源が投入され、ハゼ締め装置はハゼ締め作業を実行しながら軒先側に向かって走行する。このまま放置すればハゼ締め装置は軒先から転落することとなる。この結果、ハゼ締め作業が電動化されるとは言え、作業員は一刻も気を緩めることなく装置停止操作のタイミングに気を配る必要がある。すなわち、これが従来指摘されているハゼ締め装置停止の問題点である。
【0014】
なお、ハゼ締め装置は、ドリル装置等を逆転させることにより屋根の軒先側から棟側に向けて走行させることも可能であるが、この場合にもハゼ締め装置の停止問題が伴うことは同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来技術を考慮し、新たな問題点を発生させることなく従来のハゼ締め装置から提出された2つの問題点を解消しようとするものである。
そして、その前提として問題解決の方向性、条件等が検討された。
【0016】
駆動ローラの空転問題の解決策としては、ハゼ折鋼板山頂部分のハゼ締めラインと複数個の駆動ローラと従来のように点接触ではなく、広い面積で接触させるような工夫が必要である。また、空転問題は、ハゼ締め装置の蛇行のみならず、駆動ローラとハゼ締めライン間に負荷に応じた十分な摩擦力が働かないことにも原因するので、駆動ローラの表面の摩擦力を増大させる工夫が必要である。さらに、ハゼ折鋼板の防錆被膜の剥離の問題については、駆動ローラとハゼ折鋼板の山頂部分との間に非金属を介在させるような工夫が必要であるとの結論に至った。
【0017】
また、従来指摘されているハゼ締め装置の停止操作の問題に関しては、例えば、ハゼ締め装置にハゼ折鋼板の末端を検出するセンサを取り付け、センサに基づいて駆動する電磁ソレノイド等の適当なアクチュエータによって、駆動源として搭載したドリル装置等の電源スイッチをON-OFFすることで簡単に解決することができることのように思われるかもしれない。
【0018】
しかし本発明のハゼ締め装置は、現場作業員によって直ちに手当できない故障要素を有しないことを開発ポリシーとしているとともに、ハゼ締め作業の現場は多種多様な金属部材が混在することが通常であることを考慮すれば、電気的な手段では、センサが誤作動する恐れを完全に払拭することができない。そこで、ハゼ折鋼板の末端の検出は、機械的に明快な方法で実施することが適切であるとの結論に至った。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために本発明が採用する手段を次に説明する。
【0020】
(解決手段1)
本発明のハゼ締め装置は、メインベース板と、メインベース板に手動の伸縮リンク機構を介して往復スライド動作可能に搭載するサブベース板を備え、メインベース板は、ハゼ締め作業の前提として隣接する2枚のハゼ折鋼板を山形に仮組みした場合において加工対象となる山頂部分の稜線位置のハゼ締めライン上を走行する複数個の稜部走行ローラと、ハゼ締めラインの両側に形成される各谷線ライン上を走行する各1対の脚付き走行ローラと、ハゼ締めラインの一方側の側方に水平姿勢で配置される複数個の駆動ローラと、この駆動ローラを駆動する駆動機構を搭載している。また、サブベース板には、ハゼ締めラインを挟んで複数個の駆動ローラに対峙する位置に水平姿勢で配置される成形ローラおよびカシメローラが搭載されている。メインベース板における複数個の駆動ローラは、駆動機構によって動力伝達ベルトを介して同一回転方向に積極駆動されるとともに、サブベース板におけるカシメローラは、サブベース板の往復スライド動作によって駆動ローラに対して離接動作をし、複数個の駆動ローラとカシメローラおよび成形ローラとは、動力伝達ベルトと共にハゼ締めラインを両側方から挟み込むことを特徴とする。
【0021】
上記解決手段1について説明する。メインベース板およびサブベース板は、ハゼ締め装置の基本的構造部材であり、他の部材の取付に供される。サブベース板は、メインベース板に対して往復スライド動作可能である。この往復スライド動作は、簡単な手動の伸縮リンク機構によって行われる。
【0022】
メインベース板には、ハゼ締め作業用の多くの機構部品が取り付けられている。これらの部材は、山形に仮組みした状態のハゼ折鋼板を念頭において配置されている。山形に仮組みされたハゼ折鋼板の山頂部分の稜線位置、および、この近傍は、ハゼ締め作業の対象になる部分であり、この発明ではハゼ締めラインと総称している。
【0023】
メインベース板には、ハゼ締めライン上を走行するための3個の稜部走行ローラが所定間隔離して直立姿勢で直列に配置されているとともに、ハゼ締めラインの斜め下の両側に形成される各谷線ライン上を走行する各1対の脚付き走行ローラとが取り付けられている。これによって、メインベース板およびメインベース板に取り付けられたサブベース板は、山形に仮組みされたハゼ折鋼板上に走行可能に跨ることができる。
【0024】
ハゼ締め装置の重量による荷重は、主に3個の稜部走行ローラによって支持され、谷線ライン上の各1対の脚付き走行ローラは、主にハゼ締め作業の反動によるハゼ締め装置の横揺れを阻止するように機能することができる。
【0025】
メインベース板に取り付けられた複数個の駆動ローラは、ハゼ締めラインの一方側の側方に水平姿勢で配置され.駆動機構によって動力伝達ベルトを介して同一回転方向に積極駆動される。複数個の駆動ローラが動力伝達ベルトによって連結されることによってハゼ締めラインに対して一定長さの板状体として機能し、ハゼ締め装置の蛇行を効果的に阻止することができる。
【0026】
また、サブベース板には、成形ローラおよびカシメローラが搭載され、これらのローラは、ハゼ締めラインを挟んで駆動ローラに対峙する位置に配置される。駆動ローラと、カシメローラおよび成形ローラは、サブベース板の往復スライド動作によって駆動ローラに対して離接動作をし、この結果、複数個の駆動ローラとカシメローラおよび成形ローラとは、動力伝達ベルトと共にハゼ締めラインを両側方から挟み込むように動作する。したがって、金属製の駆動ローラとハゼ締めラインとが直接接触しないので、ハゼ折鋼板の防錆被膜が剥離するのを防止することができる。
【0027】
(解決手段2)
駆動ローラの駆動機構は、2次電池を電源とし、ハゼ折鋼板のハゼ締め作業と異なる用途に供することを目的として市販されている電動回転工具を駆動源として組み付け可能に構成することができる。
【0028】
充電可能なバッテリ電源を有する電動工具の最大の利点は電源コードを必要としないことであり、このような電動回転工具を駆動源として組み付け可能とすることにより、ハゼ締め装置全体について電源コード不要の利便性を及ぼすことができる。
【0029】
(解決手段3)
ハゼ締め装置には、次のような構成の自動停止装置を組み付けることができる。自動停止装置は、下向きに取り付けられた電動回転工具のグリップに装着されたトリガを押し上げる作動子を備える水平アームと、この水平アームの一方の端部、または両方の端部にリンクアームを介して連結され、ハゼ折鋼板のハゼ締めライン上を稜部走行ローラおよび脚付き走行ローラに先行して走行する重錘ローラとを備え、この重錘ローラは、ハゼ締めラインの末端から落下しようとする動作によってリンクアームを介して水平アームを引き付けて水平アームに取り付けられた作動子を電動回転工具のトリガから外す構成である。
【0030】
重錘ローラには、リンクアームおよび水平アームを作動させるに必要な重さが与えられている。ハゼ締め装置がハゼ折鋼板の終端に差し掛かると、先頭位置を走行する重錘ローラがハゼ折鋼板の末端か落下するように下垂し、リンクアームを介して水平アームを引き付ける。この際リンクアームは、重錘ローラの落下動作を水平アームの左右方向の水平動作に変換するように機能し、この結果、水平アームが引き付けられ、水平アームに取り付けられた作動子がトリガから外れるという仕組みである。
【0031】
(解決手段4)
ハゼ締め装置の自動停止装置は、水平アームおよび作動子を介して手動で電動回転工具のトリガをON-OFF操作するスイッチ機構を備えることができる。実際のハゼ締め作業においては、何らかの理由で走行中のハゼ締め装置を停止させたり、再運転させたい場合が生じ得る。このような場合に備えて自動停止装置の構成中に手動のスイッチ機構を設けておく趣旨である。
【0032】
(解決手段5)
請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の自動停止装置を備えることを特徴とする請求項2に記載のハゼ折鋼板のハゼ締め装置。
【0033】
バッテリ電源の電気ドリル等の電動回転工具を駆動源とする本発明のハゼ締め装置は、本発明の自動停止装置を組み込んだ構成とすることができるという趣旨である。
【発明の効果】
【0034】
本発明のハゼ締め装置は、動力伝達ベルトを介して同一回転方向に駆動されるように連結された複数個の駆動ローラ、および山形を形成するように組み合わされたハゼ折鋼板の山頂部分のハゼ締めライン上を走行する複数個の稜部走行ローラ、とハゼ折鋼板の谷底部分の各谷線ライン上を走行する各1対の脚付き走行ローラを取り付けたメインベース板に、複数個の駆動ローラに対応する成形ローラとカシメローラを搭載したサブベース板をスライド動作可能に取り付けた基本構成により、ハゼ締め装置をハゼ折鋼板の山頂部分に跨る姿勢で走行させながらサブベース板をスライド動作させることにより複数個の駆動ローラとカシメローラおよび成形ローラとの間隔を変化させ、これらのローラ間に動力伝達ベルトを介在させた状態でハゼ締めラインを挟み込んでハゼ締め作業を実行することができる。すなわち、実質においてサブベース板をスライドさせるのみの極めて簡単な作業によりハゼ締め作業を進行させることができる。この際、複数個の駆動ローラとハゼ締めラインとの間には動力伝達ベルトが介在するので、ハゼ締めラインの防錆被膜の損傷が阻止されるとともに、ハゼ締め装置の蛇行も阻止することができる。
【0035】
駆動源として充電バッテリ方式の電動回転工具を取り付け可能としたハゼ締め装置は、任意の電動回転工具を取り付けることにより、コードレスの利便性をハゼ締め装置全体の利便性として発揮することができる。
【0036】
本発明のハゼ締め装置の自動停止装置は、ハゼ締め装置を走行可能に支持する稜部走行ローラおよび脚付き走行ローラに先行して走行する重錘ローラと、重錘ローラの落下動作を水平アームの水平動作に変換するリンクアームを備え、水平アームに取り付けた作動子を介して電動回転工具のトリガをON-OFFする機械的構成のみによってハゼ締め装置を自動停止装置させることができる。この際、重錘ローラが他の走行ローラに先行する位置に配置されているのでハゼ締め装置全体がハゼ折鋼板から落下するような事態の発生を確実に阻止することができるとともに、センサ等の電気的手段を用いていないので堅牢である。
【0037】
水平アームに手動で電動回転工具のトリガをON-OFF操作するスイッチ機構を組み込んだ自動停止装置は、運転中のハゼ締め装置を手動で停止させ、または停止しているハゼ締め装置を手動で運転開始させることができるので、予期しない状態の発生等に簡単に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明のハゼ締め装置の動作状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明のハゼ締め装置の反対視点の斜視図である。
【
図4】本発明のハゼ締め装置のメインベース板を示す斜視図である。
【
図5】本発明のハゼ締め装置のメインベース板の側面図である。
【
図6】本発明のハゼ締め装置のメインベース板の裏面図ある。
【
図7】本発明のハゼ締め装置のサブベース板の斜視図である。
【
図8】本発明のハゼ締め装置のサブベース板の側面視の断面図である。
【
図11】本発明のハゼ締め装置の自動停止装置の斜視図である。
【
図12】本発明のハゼ締め装置の自動停止装置の動作説明図である。
【
図13】本発明のハゼ締め装置の自動停止装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を引用しながら本発明のハゼ締め装置の実施の形態例を説明する。なお、ここでは、駆動機構の駆動源として既製品の電動回転工具を利用するとともに、本発明のハゼ締め装置の自動停止装置を組み付けた例を説明する。
【0040】
ハゼ締め装置10は、基本的構造部材としてメインベース板11およびサブベース板12を備える(
図1,
図2)。メインベース板11は長方形に形成され、サブベース板12は、長辺方向および短辺方向を同じくするメインベース板11の三分の一程のサイズに形成されている。メインベース板11とサブベース板12との間には手動の伸縮リンク機構15が介在している。伸縮リンク機構15は、メインベース板11の短辺方向に伸縮動作をする向きに取付られ、この結果、サブベース板12は、メインベース板11上で短辺方向に往復スライド動作をすることができる。
【0041】
メインベース板11の4隅には、それぞれ下垂姿勢の伸縮脚13を備える脚付き走行ローラR2が取り付けられている(
図1,
図2,
図3)。伸縮脚13の中間部は、長孔とノブ付きボルトの組合せによる連結構造とされており、長孔の範囲で無工具で長さ調節をすることができる。なお、メインベース板11の短辺方向に位置する2個の脚付き走行ローラとR2,R2の相互間隔は、ハゼ締め作業の前提として仮組された2枚のハゼ折鋼板M,Mの谷線ラインM2,M2の間隔に適合するように設定されている(
図1)。
【0042】
メインベース板11には、駆動機構14の主要部材である充電バッテリ方式の電動回転工具14Aが取り付けられている(
図1,
図2,
図3)。電動回転工具14Aは、下向き姿勢で固定ポスト14Bに固定されている。電動回転工具14Aの回転軸は、その下方に配置された減速ギヤボックス14Cに接続され,作業負荷に応じた減速比が付与される。
【0043】
メインベース板11の長手方向の中心位置には、直立姿勢の3個の稜部走行ローラR1…が一直線上に並べて配置されている(
図4)。3個の稜部走行ローラR1…は、いずれもメインベース板11を切り欠いて、一定寸法裏面側に突出する状態で位置決めされている(
図4,
図5)。
【0044】
ハゼ締め作業に際してハゼ締め装置10は、3個の稜部走行ローラR1…を仮組された2枚のハゼ折鋼板M,Mのハゼ締めラインM1上に位置決めするとともに、2対の脚付き走行ローラとR2,R2…を仮組された2枚のハゼ折鋼板M,Mの谷線ラインM2,M2上に位置決めした状態でハゼ折鋼板M,M上に設置される(
図1)。
【0045】
メインベース板11の裏面側には、同一径の3個の駆動ローラR3…が、所定間隔を保ち、水平姿勢で一直線上に並べて配置されている(
図5,
図6)。この3個の駆動ローラR3…には、動力伝達ベルトB1が掛け回され、同一回転方向に同期駆動される。動力伝達ベルトB1には、歯付きのVベルトが採用され、滑りを生じさせることなく強力なトルクを伝達することができる。
【0046】
なお、後述するように、この動力伝達ベルトB1は、表面側をハゼ折鋼板M、Mのハゼ締めラインM1の側面に押し付けるようにして使用される(
図1参照)。この場合、動力伝達ベルトB1が駆動ローラR3…との関係において滑りが発生しないとしても、ハゼ締めラインM1との関係において滑りが発生するとすれば、歯付きのVベルトを採用したことの意味が損なわれてしまう。この動力伝達ベルトB1の表面側の滑りは、殊に、雨天時に生じる。この問題に対しては、実験の結果、雨天時対策として、動力伝達ベルトB1の表面側に図示しない滑り止めパターンを形成することが有効であるとの結論を得た。この滑り止めパターンは、動力伝達ベルトB1の表面に刻印して形成してもよく、滑り止めパターン付きのテープを貼着して形成してもよい。その他、滑り止め効果を発揮する限り、任意の方法を選択することができるものとする。
【0047】
メインベース板11には、複数個の透孔H1…、H2が形成されている(
図4,
図6)。透孔H1…は、サブベース板12に組み付けられるカシメローラR5および2個の成形ローラR4、R4の軸孔であり、長孔として形成されている。また、透孔H2は、電動回転工具14Aの回転軸のソケット孔であり、これは、歯付きの丸孔として形成されている。
【0048】
他方、サブベース板12には、メインベース板11の透孔H1…に対応する透孔H3…が形成され、サブベース板12の取付に使用される(
図7,
図8)。両者間に介在する伸縮リンク機構15は、ブラケットで挟み込んだ構造の操作レバー15Aと小型のシリンダ15Bとからなり、サブベース板12は、透孔H3、H3を貫通する押え板付きのボルト15C、15Cによってスライド動作可能にメインベース板11に固定される(
図5)。
【0049】
サブベース板12の裏面には、カシメローラR5と、その両側の2個の成形ローラR4、R4とが取り付けられている(
図7,
図8)。サブベース板12は、カシメローラR5と2個の成形ローラR4、R4の軸をメインベース板11に形成した透孔H1…を通過させて組み付けられる。したがって、カシメローラR5と、2個の成形ローラR4、R4は、メインベース板11の駆動ローラR3…に対峙する姿勢でメインベース板11の裏面側に現れている(
図10)。
【0050】
2個の成形ローラR4、R4は、ハゼ締め装置10が、ハゼ締めラインM1に沿って何れの方向に進行する場合にも、カシメローラR5に先行して予備カシメ作業を行うことによって、カシメローラR5に加わる負荷を軽減するように機能することができる。
【0051】
ハゼ締め装置10の自動停止装置20は、スイッチ機構23を備える水平アーム21と、それぞれ、リンクアーム22を介して水平アーム21の両端に取り付ける重錘ローラR6、R6とからなる(
図9,
図10,
図11)。また、スイッチ機構23は、電動回転工具14Aのトリガを作動させる作動子23Aと、手動で作動子23Aを上下動操作する操作レバー23Bを備える。
【0052】
各リンクアーム22は、中間部で略直角をなすように屈曲形成された腕部材であり、中間部を固定ブラケット22Aを介して首振り動作可能にメインベース板11に取り付けられる(
図9,
図10)。各リンクアーム22の水平部分の先端部には、重錘ローラR6が取り付けられている(
図9,
図10,
図11)。また、各リンクアーム22の直立部分は、水平アーム21の端部に連結されている。このような構造によりリンクアーム22の水平部分の首振り動作の上下動成分を、リンクアーム22の直立部分の首振り動作の水平動成分に変換して水平アーム21に伝達することができる。なお、各リンクアーム22と水平アーム21との連結部分には、長孔H4が介在し、重錘ローラR6の上下動に一定の遊び範囲が設定されている。
【0053】
自動停止装置20は、2個の重錘ローラR6、R6が稜部走行ローラR1…と同一線上に並び、かつ、2個の重錘ローラR6、R6がリンクアーム22、22の水平部分を介してメインベース板11の外部に位置するようにメインベース板11に組み付けられる(
図9,
図10)。この際、スイッチ機構23の作動子23Aは、電動回転工具14Aの直近の側方に位置するように位置決めされる。
【0054】
自動停止装置20は、2個の重錘ローラR6、R6が仮組された2枚のハゼ折鋼板M、Mのハゼ締めラインM1上を走行するように設置して使用する(
図1,
図12,
図13)。つまり、2個の重錘ローラR6、R6は、ハゼ締め装置10の3個の稜部走行ローラR1…と同じ箇所を稜部走行ローラR1…に先行して走行する。この配置関係は、電動回転工具14Aを逆転させて走行する場合にも、同様に成立する(
図12,
図13)。
【0055】
ハゼ締め装置10がハゼ締め作業を実行しながらハゼ折鋼板M、M上を自走し、ハゼ折鋼板M、Mの終端に接近すると、ハゼ締めラインM1上を先行する自動停止装置20の重錘ローラR6が終端から落下しようとリンクアーム22を介して首を振るように動作する。この結果、リンクアーム22の直立部分が水平アーム21を引き付け、水平アーム21に取り付けられたスイッチ機構23の作動子23Aが電動回転工具14Aのトリガの側方に逃げて電動回転工具14Aが停止する。電動回転工具14Aは、減速ギヤボックス14Cを経由して使用されており、電動回転工具14Aが停止すると、大きなブレーキ力が発生しハゼ締め装置10は、即時に停止し、ハゼ締め装置10の落下が未然に阻止される。なお、走行中のハゼ締め装置10は、水平アーム21に取り付けられたスイッチ機構23の操作レバー23Bを操作して手動で停止させることもできる。
【0056】
ハゼ締め装置10は、防塵、防雨、防錆、防護、美感の調整等を目的とする樹脂製または金属製の外装ケーシング30を備えることができる(
図3)。
【符号の説明】
【0057】
M ハゼ折鋼板
M1 ハゼ締めライン
M2 谷線ライン
B1 動力伝達ベルト
R1 稜部走行ローラ
R2 脚付き走行ローラ
R3 駆動ローラ
R4 成形ローラ
R5 カシメローラ
R6 重錘ローラ
10 ハゼ締め装置
11 メインベース板
12 サブベース板
14 駆動機構
14A 電動回転工具
15 伸縮リンク機構
20 自動停止装置
21 水平アーム
22 リンクアーム
23 スイッチ機構
23A 作動子