(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163979
(43)【公開日】2024-11-26
(54)【発明の名称】建設機械のための振動発生装置及び動作方法
(51)【国際特許分類】
B06B 1/18 20060101AFI20241119BHJP
B25D 9/26 20060101ALI20241119BHJP
E21B 6/00 20060101ALI20241119BHJP
F15B 21/12 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B06B1/18 A
B25D9/26
E21B6/00
F15B21/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024063345
(22)【出願日】2024-04-10
(31)【優先権主張番号】23169574
(32)【優先日】2023-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514066712
【氏名又は名称】ユーロドリル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】EURODRILL GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルクス メルツホイザー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】極めて効率が良い、特に建設機械用振動発生装置又は振動発生方法を提供する。
【解決手段】ハウジングと、第1の反転点と第2の反転点の間で進退可能なピストンと、少なくとも1つの駆動可能な制御弁を用いて、動作チャンバへの加圧流体の供給と動作チャンバからの加圧流体の排出とをそれぞれ行うことで、ピストンの往復運動を引き起こして振動を発生させることが可能な加圧流体供給部と、少なくとも1つの制御弁を駆動し、動作チャンバ内のピストンの移動を制御して調整できる制御ユニットと、を含む。本発明によれば、制御ユニットは、振動を発生させる第1動作モード、及び衝撃パルスを発生させる第2動作モードでピストンを制御するように構成され、動作チャンバの少なくとも1つの端面に衝撃面が形成され、ピストンが2つの反転点の少なくとも一方に到達したときに打撃面を叩くことで衝撃パルスを発生させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のための、振動を発生させる装置であって、
ハウジング(16)と、
前記ハウジング(16)内の動作チャンバ(20)の中で、第1の反転点と第2の反転点との間で進退移動可能なピストン(18)と、
加圧流体供給部であって、少なくとも1つの駆動可能な制御弁(19)を用いて、前記第1の反転点及び/又は前記第2の反転点の領域において、前記動作チャンバ(20)への加圧流体の供給と前記動作チャンバ(20)からの加圧流体の排出とをそれぞれ行うことで、ピストン(18)の往復運動を引き起こして振動を発生させることが可能な加圧流体供給部と、
前記少なくとも1つの制御弁(19)を駆動するように構成され、前記少なくとも1つの制御弁(19)を用いて、前記動作チャンバ(20)内の前記ピストン(18)の移動を制御して調整できる制御ユニット(30)と、
を含み、
前記制御ユニット(39)は、振動を発生させる第1動作モード、及び衝撃パルスを発生させる第2動作モードで前記ピストン(19)を駆動するように構成され、
前記動作チャンバ(20)の少なくとも1つの端面に打撃面(22)が形成され、前記ピストン(18)が前記反転点の少なくとも一方に到達したときに前記打撃面(22)を叩くことによって衝撃パルスを発生させる、装置。
【請求項2】
前記制御弁(19)は、ソレノイドバルブとして構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記動作チャンバ(20)内の前記ピストン(18)の位置を特定する測定デバイス(32)が設けられる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記測定デバイス(32)は、リニアセンサを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御ユニット(30)を用いて、前記ピストン(18)の周期及び/ストロークを設定及び調整できる、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記制御ユニット(30)は、前記ピストン(18)を制御する制御プログラムを格納可能なプログラムメモリを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ユニット(30)は、選択デバイスを含み、前記選択デバイスを利用して、オペレータが手動で、及び/又は検出された動作状態に応じて自動で、動作モードを選択できる、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記動作チャンバ(20)に、それぞれ1つの打撃面(22)を有する2つの端面が形成され、前記ピストン(18)が前記打撃面(22)を交互に叩いて衝撃パルスを発生させる、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の振動及び衝撃パルスを発生させる装置(10)が配設されている、建設機械。
【請求項10】
前記建設機械は、土壌及び/又は岩石の掘削に用いられる掘削リグとして構成される、請求項9に記載の建設機械。
【請求項11】
振動及び衝撃パルスを発生させる前記装置(10)は、掘削工具を回転駆動する回転駆動部(14)に配置され、
前記回転駆動部(14)と前記掘削工具(13)又はドリルパイプとの間に制振構成要素(25)が設けられている、請求項9又は10に記載の建設機械。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の装置(10)を駆動する方法であって、
ピストン(18)が、動作チャンバ(20)内で第1の反転点と第2の反転点の間で反転する方式で進退移動され、
加圧流体及び少なくとも1つの駆動可能な制御弁(19)を用いて、前記ピストン(18)の往復運動を引き起こして振動を発生させ、前記加圧流体は、前記第1の反転点及び/又は第2の反転点の領域において、前記動作チャンバ(20)内に導入されると共に、前記動作チャンバ(20)から排出され、
前記少なくとも1つの制御弁(19)が、制御ユニット(30)によって駆動されることで、前記動作チャンバ(20)内の前記ピストン(18)の移動を制御及び調整でき、
前記制御ユニット(30)は、振動を発生させる第1動作モード、及び衝撃パルスを発生させる第2動作モードで前記ピストン(18)を駆動するように構成され、
前記動作チャンバ(20)の少なくとも1つの端面に打撃面(22)が形成され、前記ピストン(18)が、前記第2動作モードにおいて前記反転点の少なくとも一方に到達したときに前記打撃面(22)を叩いて衝撃パルスを発生させる、方法。
【請求項13】
選択デバイスを用いて動作モードが選択及び設定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
振動及び衝撃パルスを発生させる前記装置(10)は、回転駆動可能な掘削工具(13)を有する掘削リグに使用され、
前記装置(10)は、土壌又は岩石内へのボーリング穴の掘り下げ掘削中に前記第2動作モードで駆動されて、前記掘削工具に衝撃パルスを付与し、
前記装置(10)は、前記ボーリング穴からのドリルパイプ(13)の引き抜き中に前記第1動作モードで駆動されて、前記掘削工具(13)の振動を誘発する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
動作状態、特に、掘り下げ掘削、又は掘削リグの掘削工具の引き抜きが、少なくとも1つの検出デバイスによって検出され、
検出された前記動作状態に応じて、前記選択デバイスによって動作モードが自動的に選択されて設定される、請求項12から14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のための振動発生装置に関し、請求項1のプリアンブルに係る本装置は、ハウジングと、ハウジングの動作チャンバ内で第1の復帰点と第2の復帰点との間で進退移動可能なピストンと、第1の反転点及び/又は第2の反転点の領域内で、加圧流体の動作チャンバへの供給及び動作チャンバからの排出を、少なくとも1つの駆動可能な制御弁を介して行える加圧流体供給部であって、ピストンが前記領域内で往復運動するように設定して振動を発生させることが可能な加圧流体供給部と、少なくとも1つの制御弁を駆動するように構成された制御ユニットと、を備え、制御ユニットを用いて、動作チャンバ内のピストンの動きを制御して調整できる装置である。
【0002】
本発明は、更に、装置の動作方法に関し、請求項12のプリアンブルに係る本方法は、ピストンが、第1の反転点と第2の反転点の間で反転する方式で、動作チャンバ内で前後に移動され、加圧流体及び少なくとも1つの駆動可能な制御弁を用いて、ピストンを往復運動させることで振動を発生させる方法であり、加圧流体は、第1の反転点及び/又は第2の反転点の間の領域内で動作チャンバに導入され、且つ動作チャンバから排出され、少なくとも1つの制御弁が制御ユニットによって駆動され、動作チャンバ内のピストンの動きを制御及び調整できる、方法である。
【背景技術】
【0003】
特許文献1に、建設機械用の振動発生器が開示されている。この既知の振動発生器では、ハウジング内の動作チャンバが、動作ピストンによって2つの圧力チャンバに分割される。この2つの圧力チャンバに対して、入口と出口から意図した方式で加圧流体を供給することで、動作ピストンが反転方式で移動して振動を発生させる。各圧力チャンバに対する加圧流体の適時給排出は、動作ピストン内の複雑なダクトアセンブリによって実現する。また、動作ピストンの内部には制御ピストンが摺動可能に搭載されており、ハウジングの両端面から突出する止め具を用いて、動作ピストンに対する制御ピストンの相対位置を選択的に変化させることで、特定のチャンネルを開閉できるようになっている。したがって、加圧流体の給排出は、このような機械的手段によって達成され、所定のチャンネルが特定の転換点に到達したときに加圧流体の供給と排出が切り替えられる。
【0004】
振動発生器のための同様の機械式制御デバイスは、たとえば、特許文献2,特許文献3、又は特許文献4に記載されている。これらの既知のデバイスは全て、動作ピストンと制御ピストンを備えており、これらのピストンが、ハウジング内に各位置に応じて特定のチャンネルを開閉することによって、2つの対向する圧力チャンバへの目的とする交互の供給を行って、動作ピストンを移動している。
【0005】
特許文献5又は特許文献6から、制御弁を制御する制御ユニットを備えた汎用の振動発生器が知られている。本出願人が出願した特許文献6は、このような制御ユニットを振動発生器又は衝撃機構に利用できることを教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1728564号明細書
【特許文献2】英国特許第920158号明細書
【特許文献3】米国特許第4126103号明細書
【特許文献4】米国特許第4031812号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第3038835号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第3417951号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基となる課題は、極めて効率が良く、特に建設機械で利用できる振動発生装置又は振動発生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題は、請求項1に記載の特徴を有する装置によって達成される一方で、請求項12に記載の特徴を有する方法によっても達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明に係る装置は、制御ユニットが、振動を発生させる第1動作モード、及び衝撃パルスを発生させる第2動作モードでピストンを駆動するように構成されており、動作チャンバの少なくとも1つの端面に打撃面が形成され、動作ピストンが少なくとも1つの反転点に到達したときに打撃面を叩くことで、衝撃パルスを発生させることを特徴とする。
【0010】
本発明の基本的概念は、振動の生成と衝撃パルスの生成の両方を行えるように構成された装置を提供することである。このため、動作チャンバの少なくとも1つの端面に打撃面が形成される。ピストンにも対応する打撃面が設けられて、衝撃パルスを発生させるように構成される。好ましい構成として、動作チャンバは向かい合う2つの端面を備えてよく、2つの端面にそれぞれ打撃面が形成される。したがって、ピストンにも対応する2つの端面を設けることができる。打撃面は、隣接する壁面と比べて硬化されていると好ましい。
【0011】
本発明の一態様によれば、制御ユニットは、振動を発生させる第1動作モードと衝撃パルスが発生する第2動作モードとを有する制御プログラムを含む、又はそのような制御プログラムを用いて構成される。第1動作モードにおいて、動作チャンバ内のピストンは、往復運動中に動作チャンバの端面又は前面を叩かないように制御される。これにより、ピストンの往復運動によって、衝撃パルスを伴わない振動が発生する。本装置はいわゆる線形振動子を構成する。
【0012】
一方、第2動作モードでは、ピストンが動作チャンバの少なくとも1つの端面を所定の方式で叩く、特に、掘削リグの場合には土壌に面した側を叩くように、少なくとも1つの制御弁を駆動することで、意図する衝撃パルスを発生させる。
【0013】
したがって、本装置は、選択された動作モードに応じて、衝撃パルスを生じない線形振動子として、又は意図する衝撃パルスの生成を行う衝撃機構として、入れ替わり方式で利用可能であり、且つ動作可能である。
【0014】
原則的に、本発明に係る装置には、全ての適切な駆動可能な弁、特に、液圧駆動式、又は電気駆動式の弁を利用できる。本発明の更なる発展形によれば、制御弁は、ソレノイドバルブとして構成されると特に好都合である。弁体は、電磁石アセンブリを用いて閉位置と開位置に制御することができる。この場合、中間位置を設定して、動作チャンバに供給される加圧流体の量を調整できるようにしてもよい。原則的に、任意の加圧流体が供給されてよいが、液圧オイルを用いると好ましい。
【0015】
他の好ましい構成として、測定デバイスを設けて、動作チャンバ内のピストンの位置を特定してもよい。この場合、測定デバイスと制御ユニットとを通信させて、非常に高精度のピストン制御を実現できる。
【0016】
また、測定デバイスに関して、長さ又は位置の測定に利用できるあらゆるセンサ、特に、光学式、静電式、電磁誘導式、磁気式、又は任意の他の方式で動作するセンサを測定デバイスに設けることができる。本発明の一実施形態によれば、測定デバイスがリニアセンサを備えていると特に有利である。この構成は、ピストンがハウジング内で2つの反転点の間を直線移動する場合に特に有用である。
【0017】
また、測定デバイスは、動作チャンバの中及びピストン内の自由空間の中に延びる長尺の第1測定部品を含むように構成されてよい。すなわち、測定部品は、ハウジングの壁の背後に配置されるのではなく、ピストンが移動する動作チャンバ内に直接配置される。この場合の極めて正確な位置測定のために、長尺の第1測定部品がピストン内の対応する自由空間の中まで延在し、ピストンが非接触方式で第1測定部品に沿って摺動すると好ましい。
【0018】
本発明の更なる変形例において、ピストンの周期及び/又はストロークを、制御ユニットによって設定及び調整できると好ましい。周期を変更する場合、具体的には、開閉のタイミング、及び必要に応じて流体エネルギの供給を制御ユニットによって調整する。ピストンのストロークも、駆動可能弁を適宜に開閉させて、2つの反転点の位置を変化させることによって調整できる。このためには、制御ユニットが、入力用コントロールパネル等の入力インターフェースを備えていると好ましい。これに応じて、制御ユニットも、既知の機械コントローラを利用した操作ユニットを用いて、オペレータによって直接駆動されてよい。
【0019】
本発明の更に好ましい実施形態の変形例としては、制御ユニットが、ピストンを制御する各種の制御プログラムを格納できるプログラムメモリを含む構成があり得る。これにより、特定の用途の目的に応じた専用の制御プログラムを格納することができる。特に、制御プログラムは、2つの動作モードと一緒に格納されてよい。また、ピストンストロークの短い高周期を、例えば、プログラムの開始時に設定し、経時的にプログラムが進むにつれて、ピストンストロークが長くなって周期が低下するように設定できる。ピストンの周期及びストロークを制御するために、ほぼ無数の異なるプログラムシーケンスを提供することができる。たとえば、高速推進のためのプログラム、又は非常に穏やかな打ち込みのためのプログラムが提供されてよい。建設機械として動作する場合は、特殊な土壌タイプに応じたプログラムも格納できる。
【0020】
また、有利な実施形態として、制御ユニットが選択デバイスを含み、選択デバイスを利用して、オペレータが手動で、及び/又は検出された動作状態に基づいて自動で動作モードを選択できる構成も実現できる。例えば、オペレータは、振動を発生させる第1動作モードと衝撃パルスを発生させる第2動作モードとを手動で切り替えることができる。選択デバイスは、操作ユニットの一部であってよい。代替又は追加の構成として、制御ユニットは、例えば、本発明に係る装置が搭載された機械の特定の動作状態が存在する場合に、自動的に動作モードの切り替えを開始することもできる。
【0021】
本発明の更なる実施形態によれば、動作チャンバに、打撃面をそれぞれ1つずつ有する2つの端面を形成し、作業ピストンが打撃面を交互に叩いて、衝撃パルスを発生させると好ましい。したがって、ピストンにも対応する2つの打撃面が設けられてよい。
【0022】
本発明は、前述した装置が搭載されて、振動及び衝撃パルスを発生させることを特徴とする建設機械も含む。特に、このような建設機械は、土木工事用として提供及び構成され得る。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、建設機械は、地面及び/又は岩石を掘削する掘削リグとして構成されると特に有利である。掘削リグは、ドリルパイプ及び/又は掘削器具を回転駆動する回転駆動部を有する。
【0024】
本発明に係る装置は、回転駆動部に装着されても、又は回転駆動部に組み込まれてもよい。
【0025】
本装置が、第1動作モードに従って、衝撃接触せずに振動を発生させるように駆動される場合は、特に、いわゆる過負荷掘削を行うことができる。この場合、掘削器具の回転動作に、周期的または不規則な振動をする動作が重ね合わされる。重畳された振動は、少なくとも掘削器具の接触領域において、土壌の疑似液状化を実現できるため、掘削の進行が向上する。振動が加えられると、ボーリング穴からの掘削器具の引き抜きも容易になる。
【0026】
衝撃パルスを発生させる装置が第2動作モードで駆動される場合には、衝撃掘削を実行できる。これは、より硬い岩石層を破砕する際に特に有利である。
【0027】
また、特に好ましい構成として、振動及び衝撃パルスを発生させる装置が掘削器具を回転駆動する回転駆動部に設置されて、回転駆動部と、掘削器具又はドリルパイプの間に、制振構成要素が設けられる。制振構成要素は、皿ばねアセンブリを含むことができ、たとえば、回転駆動部を保護することを支援して、本装置によって掘削器具又はドリルパイプに付与される振動又は衝撃が、回転駆動部に伝わらないように、又は減衰された方式で伝わるようにすることを実現できる。制振構成要素は、回転駆動部と、掘削工具又はドリルパイプとの間にトルクを伝達するように構成されてよい。制振構成要素を保護するために、特に、掘削器具が引き出される際に、衝撃パルスを発生させる動作モードから振動を発生させる動作モードへの切り替えを制御ユニットで行えると有用である。
【0028】
本発明に係る方法は、制御ユニットが、振動を発生させる第1動作モード及び衝撃パルスを発生させる第2動作モードでピストンを制御するように構成され、動作チャンバの少なくとも1つの端面に打撃面が形成され、第2動作モードにおいて、動作ピストンが少なくとも1つの反転点に到達したときに打撃面を叩いて衝撃パルスを発生させることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る方法は、特に、前述した装置を用いて実施できる。これにより、前述した利点が得られる。
【0030】
本発明に係る方法の好ましい発展様式は、選択デバイスを用いて動作モードが選択及び設定されることである。この選択は、オペレータによって手動方式で実行されても、又は制御ユニットのプログラムによって動作状態に応じた自動方式で実行されてもよい。選択された動作モードに応じて、少なくとも1つの制御弁の動作状態が制御ユニットによって変更されることで、第1動作モードに従って衝撃接触を伴わない振動が生成される、又は第2動作モードに従って衝撃パルスが生成される。
【0031】
本方法の更なる発展形によれば、振動及び衝撃パルスを発生させる装置は、回転駆動可能な掘削器具を備える掘削リグに用いられても好ましく、この場合、装置は、土壌又は岩盤内にボーリング穴を掘り下げる際に第2動作モードで駆動されて、掘削器具に衝撃パルスを付与し、掘削器具をボーリング穴から引き出す際に第1動作モードで駆動されて、掘削器具に振動を誘発する。
【0032】
本方法は、掘削器具がドリルパイプと共に又はドリルパイプを伴わずに回転駆動される掘削方法を構成する。掘削プロセスの状態に応じて、回転動作に振動又は衝撃パルスが重ね合わさせる。この場合、特に、掘り下げ掘削中に衝撃掘削を実行でき、その際に、第2動作モードに従って回転移動に衝撃パルスが組み合わされる。掘削穴から掘削器具を効率的に回収するために、装置は、衝撃パルスを伴わずに振動を発生させる第1動作モードに切り替えられる。引き抜き中の掘削器具の軸方向の振動によって摩擦作用が抑制されるため、引き抜き処理全体が容易になると共に、ボーリング穴の壁面に対してより穏やかな引き抜きが行われて、制振構成要素が実現し得る。振動は、掘削器具の回転を伴って、又は掘削器具の回転を伴わずに付与することができる。この回転は、引き抜き中に逆回転の動作として実行されると好ましい。
【0033】
本発明の特に好ましい実施形態の変形例では、動作状態、具体的には、掘削リグにおける掘り下げ掘削であるのか、又は掘削器具の引き抜きであるのかが、少なくとも1つの検出デバイスを用いて検出され、動作モードは、検出された動作状態に応じて選択デバイスによって自動で選択されて設定される。具体的には、検出デバイスは、掘り下げ掘削、すなわち、掘削方向の前進が行われているのか、又は引き抜き、すなわち、ボーリング穴からの撤退移動が行われているのかを検出できる。この後、検出された動作状態に応じて、2つの動作モード間の切り替えを自動で行うことができ、具体的には、掘り下げ掘削中に第2動作モードに従って衝撃パルスを発生させている状態から、第1動作モードで振動を発生させる状態に、掘削器具を引き抜く際に自動で切り替えることができる。
【0034】
検出デバイスは、掘削器具の進出移動、回転速度、及びトルクのうちの少なくとも1つ以上も検出できると好ましく、制御ユニットは、検出結果に基づいて、現場で土壌層についての結論を引き出すように構成される。たとえば、回転速度と前進速度の低下、又はトルクの上昇は、より硬い土壌層が存在する現場であることを示す指標になり得る。このような場合、制御ユニットは、衝撃パルスを発生させるように、自動で装置を第2モードに切り替えることができる。
【0035】
逆に、軟らかい土壌層が検出された場合、制御ユニットは、装置を第1動作モードに切り替えて、振動を用いた過負荷掘削を実行することができる。自動切り替えに代えて、制御ユニットは、操作ユニットを介して、動作モードを切り替えることを促すメッセージ又は提案を機械のオペレータに提示又は表示してもよい。掘り下げ掘削中は、通常、振動と衝撃パルスのいずれを発生させるのかを選択することができる。本発明に係る装置では、どのような場合においても、引き抜き時には振動を発生させる。
【0036】
本発明について、図面に模式的に示した好ましい例示的実施形態を参照して更に説明する。図面は下記のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明に係る装置を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明に係る装置の別の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に、掘削リグ用のドリル駆動アセンブリ1を模式的に示す。ドリル駆動アセンブリ1には、本発明に係る、振動及び衝撃パルスを発生させる装置10が搭載される。駆動アセンブリ1は、全ての機能部品を収容できる筐体5を含んでよい。遠位端に掘削器具13を装着できるドリルパイプ12が筐体5から突出している。ドリルパイプ12は、流体圧モータ等の駆動部14によって、動力伝達部15を介して、ドリルパイプ12の軸線を中心に回転駆動されるように構成されてよい。駆動部14及び動力伝達部15が、いわゆるドリル駆動部を構成する。
【0039】
ドリル駆動部とドリルパイプ12の間に制振構成要素25を配置して、ドリル駆動部に伝達される振動及び衝撃を減衰することができる。掘削器具13の切削エッジは、掘削器具13の回転動作によって穴の底の物質を除去できる。
【0040】
本発明によれば、装置10は、ハウジング16と共に動力伝達部15に装着され、基本的に、振動及び衝撃パルスを発生させるように構成される。ハウジング16は、ゴム部品17を介して装着することができ、ゴム部品17は、生成された振動がハウジング16から筐体5に伝わることを抑制する。ドリル駆動部は、軸線方向ガイド11内に変位可能に搭載できる。また、動力伝達部15は、装置10の振動の生成とは切り離された方式で駆動できる。この場合、例示的な方式では、生成された振動を直接ドリルパイプ12に伝達でき、ひいてはシャフトを介して掘削器具13に伝達できる。このシャフトは、中空シャフトとして形成された出力シャフト内に挿入できる。動力伝達部15によって生成された回転運動は、歯部又は他の歯形部品によって、中空シャフトからドリルパイプ12、ひいては掘削工具13に伝達でき、この歯部又は他の歯形部品は、生成された軸方向の振動を動力伝達部15から切り離すものである。制振構成要素25は、追加の振動分離部を提供する。これに代えて、シャフトが回転運動を伝達し、中空シャフトが生成された振動を伝達してもよい。
【0041】
装置10は、ハウジング16の動作チャンバ20内に変位可能に搭載されたピストン18を含み、ピストン18により、動作チャンバ20の内部が2つの圧力チャンバに分割される。動作チャンバ20内の2つの圧力チャンバには、加圧流体、特に液圧作動流体を加圧媒体供給部によって交互に供給できる。加圧流体は、加圧流体ラインPにおいて供給され、制御弁19によって、ピストン18の両側の圧力チャンバに交互に給排出される。
【0042】
制御弁19は、例えば、2位置4ポートの電磁弁であってよい。ただし、他の適切な任意の弁も利用でき、例えば、回転式のスプール弁、比例弁、及び/又はサーボ弁と共に利用することができる。ピストン18の非加圧側となる各チャンバは、制御弁19によって、それぞれ交互に無圧のタンクラインTに接続することができる。このピストン18への交互の加圧によって、動作チャンバ20内の2つの反転点の間でピストン18の折り返し運動が引き起こされる。
【0043】
反転点の位置とピストン18の周期は、制御ユニット30によって、具体的には、メモリプログラマブル論理制御(Memory Programmable Logic Control,MPLC)によって、制御弁19を介して制御及び設定することができる。
【0044】
ピストン18の現在の位置は、動作チャンバ20の上部の測定デバイス32によって検出されて制御ユニット30に送られるが、これについては詳細を省く。ピストン18の実際のストロークと周期を特定して確認し、ここで得られる変数として設定することもできる。
【0045】
特に、第1動作モードを実行する第1制御プログラム、及び第2動作モードを実行する第2制御プログラムが、制御ユニット30に格納される。第1動作モードにおいて、制御ユニット30は、ピストン18が動作チャンバ20の2つの端面に接触せずに進退するように制御弁19を駆動する。これにより、第1動作モードでは、衝撃接触を行わずに振動を発生させることができる。
【0046】
選択デバイス(詳細には示していない)によって制御ユニット30に第2動作モードが設定されると、制御弁18によって圧力媒体が供給されて、ピストンが、少なくとも動作チャンバ20の下側端面、すなわち打撃面22として形成された面を接触方式で叩いて衝撃パルスを発生させる。これにより、掘削中に、ドリルパイプ12及び掘削工具13に衝撃パルスを伝達できる。
【0047】
図2に、本発明に係る更なる駆動アセンブリ1を示す。この駆動アセンブリ1は、掘削リグ、特に、本発明に係る装置10による土壌又は岩石の掘削に用いられ、図には、ドリル駆動部を有するドリルパイプ12と装置との接続部が主に示されている。トルクは、模式的に図示した駆動部14によって、中空出力部品を備える動力伝達部15を介していわゆる挿入体21まで伝達される。挿入体21は、軸線方向に変位可能で、且つトルク伝達可能な方式で、管状のドリルパイプ12に接続される。挿入体21の上部側において、装置10から振動又は衝撃パルスを挿入体21、ひいてはドリルパイプ12に伝達できる。装置10も簡単な模式図でのみ示されている。
【0048】
挿入体21は、動力伝達部15の中空出力部品内で軸線方向に変位可能であるが、例えば、適切なスプラインの溝と歯の係合によりトルク伝達可能な方式で配置される。動力伝達部15を備えたドリル駆動部と、ドリルパイプ12の上端との間に環状の制振構成要素25が設けられる。環状の制振構成要素25は、
図2に模式的に示した皿バネアセンブリ26を含むことができる。これにより、ドリルパイプ12とドリル駆動部との間に、少なくともほとんどの振動/衝撃を切り離す構成を提供できる。
【0049】
本発明に係るアセンブリにおいて、制御ユニット30は、特に、ボーリング穴からドリルパイプ12を引き抜く際に、模式的に示した土壌内で、引き抜き移動中のドリルパイプ12に衝撃パルスが加わることを確実に防止できる。このような衝撃パルスは、引き抜き移動中に衝撃パルスに脆弱な、例示した制振構成要素25に対して、特に和らげられる。その結果、制振構成要素の寿命を大幅に延ばすことができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のための、振動を発生させる装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内の動作チャンバの中で、第1の反転点と第2の反転点との間で進退移動可能なピストンと、
加圧流体供給部であって、少なくとも1つの駆動可能な制御弁を用いて、前記第1の反転点及び/又は前記第2の反転点の領域において、前記動作チャンバへの加圧流体の供給と前記動作チャンバからの加圧流体の排出とをそれぞれ行うことで、ピストンの往復運動を引き起こして振動を発生させることが可能な加圧流体供給部と、
前記少なくとも1つの制御弁を駆動するように構成され、前記少なくとも1つの制御弁を用いて、前記動作チャンバ内の前記ピストンの移動を制御して調整できる制御ユニットと、
を含み、
前記制御ユニットは、振動を発生させる第1動作モード、及び衝撃パルスを発生させる第2動作モードで前記ピストンを駆動するように構成され、
前記動作チャンバの少なくとも1つの端面に打撃面が形成され、前記ピストンが前記反転点の少なくとも一方に到達したときに前記打撃面を叩くことによって衝撃パルスを発生させる、装置。
【請求項2】
前記制御弁は、ソレノイドバルブとして構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記動作チャンバ内の前記ピストンの位置を特定する測定デバイスが設けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記測定デバイスは、リニアセンサを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御ユニットを用いて、前記ピストンの周期及び/ストロークを設定及び調整できる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記ピストンを制御する制御プログラムを格納可能なプログラムメモリを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、選択デバイスを含み、前記選択デバイスを利用して、オペレータが手動で、及び/又は検出された動作状態に応じて自動で、動作モードを選択できる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記動作チャンバに、それぞれ1つの打撃面を有する2つの端面が形成され、前記ピストンが前記打撃面を交互に叩いて衝撃パルスを発生させる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
請求項1に記載の振動及び衝撃パルスを発生させる装置が配設されている、建設機械。
【請求項10】
前記建設機械は、土壌及び/又は岩石の掘削に用いられる掘削リグとして構成される、請求項9に記載の建設機械。
【請求項11】
振動及び衝撃パルスを発生させる前記装置は、掘削工具を回転駆動する回転駆動部に配置され、
前記回転駆動部と前記掘削工具又はドリルパイプとの間に制振構成要素が設けられている、請求項9に記載の建設機械。
【請求項12】
請求項1に記載の装置を駆動する方法であって、
ピストンが、動作チャンバ内で第1の反転点と第2の反転点の間で反転する方式で進退移動され、
加圧流体及び少なくとも1つの駆動可能な制御弁を用いて、前記ピストンの往復運動を引き起こして振動を発生させ、前記加圧流体は、前記第1の反転点及び/又は第2の反転点の領域において、前記動作チャンバ内に導入されると共に、前記動作チャンバから排出され、
前記少なくとも1つの制御弁が、制御ユニットによって駆動されることで、前記動作チャンバ内の前記ピストンの移動を制御及び調整でき、
前記制御ユニットは、振動を発生させる第1動作モード、及び衝撃パルスを発生させる第2動作モードで前記ピストンを駆動するように構成され、
前記動作チャンバの少なくとも1つの端面に打撃面が形成され、前記ピストンが、前記第2動作モードにおいて前記反転点の少なくとも一方に到達したときに前記打撃面を叩いて衝撃パルスを発生させる、方法。
【請求項13】
選択デバイスを用いて動作モードが選択及び設定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
振動及び衝撃パルスを発生させる前記装置は、回転駆動可能な掘削工具を有する掘削リグに使用され、
前記装置は、土壌又は岩石内へのボーリング穴の掘り下げ掘削中に前記第2動作モードで駆動されて、前記掘削工具に衝撃パルスを付与し、
前記装置は、前記ボーリング穴からのドリルパイプの引き抜き中に前記第1動作モードで駆動されて、前記掘削工具の振動を誘発する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
動作状態、特に、掘り下げ掘削、又は掘削リグの掘削工具の引き抜きが、少なくとも1つの検出デバイスによって検出され、
検出された前記動作状態に応じて、選択デバイスによって動作モードが自動的に選択されて設定される、請求項12に記載の方法。
ることが提供される。
【外国語明細書】