(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163988
(43)【公開日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ボタンセル及びボタンセルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/559 20210101AFI20241119BHJP
H01M 50/56 20210101ALI20241119BHJP
H01M 50/566 20210101ALI20241119BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20241119BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20241119BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20241119BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20241119BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20241119BHJP
H01M 50/109 20210101ALI20241119BHJP
H01M 50/153 20210101ALI20241119BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20241119BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20241119BHJP
H01M 50/169 20210101ALI20241119BHJP
H01M 50/181 20210101ALI20241119BHJP
【FI】
H01M50/559
H01M50/56
H01M50/566
H01M50/536
H01M50/533
H01M50/119
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M50/109
H01M50/153
H01M50/545
H01M50/184 E
H01M50/169
H01M50/181
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024077342
(22)【出願日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】23173268
(32)【優先日】2023-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】502350250
【氏名又は名称】ヴァルタ マイクロバッテリー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンフリート ガウグラー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボタンセルの形式の改善された電気化学的エネルギー貯蔵セルであって、巻線状電極分離器アセンブリ内の電極の特に良好な電気的接続により特徴付けられるセル、及び前記セルを製造する方法を提供する。
【解決手段】例えば、以下の特徴を有するセルである。アノード電流コレクタ又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁がその内側に当接する筐体カップ基部101及び/又は蓋120は、筐体カップ基部又は蓋が、内部空間内に向く変形部を有する又は筐体カップ基部又は蓋の隆起が内部空間内へ突出する少なくとも1つの領域11、12を有する、並びに筐体カップ基部又は蓋の内側に当接するアノード電流コレクタ又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁は変形部又は隆起へ溶接される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特徴を有し:
a.気密及び液密的やり方で内部空間を囲む密封筐体(100)及びその中に配置された電極分離器アセンブリ(140)を含む、
b.前記筐体は、筐体カップ基部(101)、周囲側壁(111)及び端子開口を含む金属カップ状筐体部(110)を含み、前記筐体カップ基部(101)及び前記周囲側壁(111)は各々、前記内部空間に向く内側と外側とを有する、
c.前記筐体は前記カップ状筐体部(110)の前記端子開口を閉じる蓋(120)を含み、前記蓋(120)は、前記内部空間に向く内側と外側とを有する、
d.前記電極分離器アセンブリ(140)は、第1の平坦端子端面及び第2の平坦端子端面と前記端面間に配置された巻線シェルとを有する円筒巻線の形式のものである、
e.前記電極分離器アセンブリ(140)は、第1の長手方向縁及びそれに対し平行な第2の長手方向縁を有するアノード電流コレクタを有するリボン状アノード(142)を含む、
f.前記電極分離器アセンブリ(140)は、第1の長手方向縁及びそれに対し平行な第2の長手方向縁を有するカソード電流コレクタを有するリボン状カソード(141)を含む、
g.前記アノード電流コレクタは、負電極材料の層により装填された主領域と、その第1の長手方向縁に沿って延伸し前記電極物質により装填されない自由縁ストリップとを含む、
及び/又は
前記カソード電流コレクタは、正電極材料の層により装填された主領域と、その第1の長手方向縁に沿って延伸し前記電極物質により装填されない自由縁ストリップとを含む、
h.前記アノード(142)及び前記カソード(141)は、前記アノード電流コレクタの前記第1の長手方向縁が前記第1の端子端面から突出するようなやり方で及び/又は前記カソード電流コレクタの前記第1の長手方向縁が前記電極分離器アセンブリ(140)の前記第2の端子端面から突出するようなやり方で前記電極分離器アセンブリ(140)内に配置される、
i.前記筐体(100)内で、前記電極分離器アセンブリ(140)は、前記巻線の前記端面の一方が前記筐体カップ基部(101)に面し前記端面の他方が前記蓋(120)に面するように軸方向にアライメントされる、及び
j.前記アノード電流コレクタの前記第1の長手方向縁又は前記カソード電流コレクタの前記第1の長手方向縁は、前記筐体カップ基部(101)の内側又は前記蓋(120)の内側に直接当接する、
さらに以下の追加特徴を有する、ボタンセルの形式の電気化学的エネルギー貯蔵セル(10;20):
k.前記アノード電流コレクタ又は前記カソード電流コレクタの前記第1の長手方向縁がその内側に当接する筐体カップ基部(101)及び/又は前記蓋(120)は、前記筐体カップ基部又は前記蓋が、前記内部空間内に向く変形部を有する又は前記筐体カップ基部又は前記蓋の隆起が前記内部空間内へ突出する少なくとも1つの領域(11、12)を有する、及び
l.前記筐体カップ基部(101)又は前記蓋(120)の内側に当接する前記アノード電流コレクタ又は前記カソード電流コレクタの前記第1の長手方向縁は前記変形部又は前記隆起へ溶接される。
【請求項2】
以下の追加特徴の少なくとも1つを有する請求項1に記載のエネルギー貯蔵セル:
a.前記電極分離器アセンブリの前記第1の端子端面及び/又は前記第2の端子端面から突出する前記第1の長手方向縁であって、前記筐体カップ基部(101)又は前記蓋(120)の内側に直接当接する縁は、少なくとも1つの凹領域(143)内で変形される、
b.前記少なくとも1つの凹領域(143)は、前記筐体カップ基部又は前記蓋が前記内部空間内に向く変形部を有する又は前記筐体カップ基部又は前記蓋の前記隆起が前記内部空間内へ突出する前記少なくとも1つの領域(11、12)に対応する、
c.前記内部空間内に向く前記変形部又は隆起は前記少なくとも1つの凹領域(143)内へ押し込まれる又は押圧される。
【請求項3】
以下の追加特徴の少なくとも1つを有する請求項1又は請求項2に記載のエネルギー貯蔵セル:
a.前記内部空間内に向く前記変形部はビードとして設計される、
b.前記ビードは、細長い凹部として前記筐体カップ基部(101)の外側及び/又は前記蓋(120)の外側に、及び細長い隆起として前記筐体カップ基部(101)の内側及び/又は前記蓋(120)の内側に出現する。
【請求項4】
以下の追加特徴の少なくとも1つを有する請求項1~3のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵セル:
a.前記筐体カップ基部又は前記蓋が前記内部空間内に向く変形部を有する又は前記筐体カップ基部又は前記蓋の隆起が前記内部空間内へ突出する前記少なくとも1つの領域(11、12)内には、1又は複数の溶接跡、特に3つの溶接継ぎ目がある、
b.前記筐体カップ基部又は前記蓋が前記内部空間内に向く変形部を有する又は前記筐体カップ基部又は前記蓋の隆起が前記内部空間内へ突出する前記少なくとも1つの領域(11、12)内には、2つ以上の並列溶接継ぎ目、特に、3つの並列溶接継ぎ目がある。
【請求項5】
以下の追加特徴の少なくとも1つを有する請求項1~4のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵セル:
a.前記内部空間内に面する前記筐体カップ基部又は蓋内の前記変形部は線型ビードとして形成される、
b.前記筐体カップ基部及び/又は蓋はいくつかの線型ビード、好適には3つの線形ビードを含む、
c.前記3つのビードは星型で配置され、隣接ビードは120°の角度を形成する。
【請求項6】
以下の追加特徴の少なくとも1つを有する請求項1~5のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵セル:
a.前記アノード電流コレクタの前記第1の長手方向縁又は前記カソード電流コレクタの前記第1の長手方向縁は前記筐体カップ基部(101)の内側又は前記蓋(120)の内側に当接する、
b.前記筐体カップ基部(101)又は前記蓋(120)は、前記筐体カップ基部又は前記蓋が前記内部空間内に向く変形部を有する又は前記筐体カップ基部又は前記蓋の隆起が前記内部空間内へ突出する少なくとも1つの領域(11、12)を有する、
c.前記アノード電流コレクタの前記第1の長手方向縁又は前記カソード電流コレクタの前記第1の長手方向縁は前記変形部又は前記隆起へ溶接される、
d.前記変形部又は前記隆起へ溶接されない前記電流コレクタは電気的導体(160)を介し前記筐体部のうちの1つ、特にストリップ状電気的導体へ電気的に接続される。
【請求項7】
以下の追加特徴の少なくとも1つを有する請求項1~5のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵セル:
a.前記アノード電流コレクタの前記第1の長手方向縁又は前記カソード電流コレクタの前記第1の長手方向縁は、前記筐体カップ基部(101)の内側に当接し、及び、前記筐体カップ基部の内側に当接しない前記電流コレクタの前記第1の長手方向縁は前記蓋(120)の内側に当接する、
b.前記筐体カップ基部(101)及び前記蓋(120)の両方は各々、前記内部空間内に向く変形部を有する又は前記筐体カップ基部又は前記蓋の隆起が前記内部空間内へ突出する少なくとも1つの領域(11、12)を有する、
c.前記アノード電流コレクタの前記第1の長手方向縁及び前記カソード電流コレクタの前記第1の長手方向縁は各々変形部又は隆起へ溶接される。
【請求項8】
以下の追加特徴の少なくとも1つを有する請求項1~7のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵セル:
a.前記筐体カップ(120)のように、前記蓋(120)は、カップ状であり、蓋基部(102)、周囲側壁(121)及び開口縁を有し、前記蓋(120)は前記開口縁を有する前記筐体カップ(110)内へ最初に押し込まれる、
b.前記筐体カップ(110)及び前記蓋(120)は環状電気的絶縁シール(130)により互いに分離される。
【請求項9】
以下の追加特徴の少なくとも1つを有する請求項1~7のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵セル:
a.前記蓋(120)は前記カップ状筐体部(110)の前記端子開口内へ挿入される円盤(102)である、
b.前記円盤(102)は前記カップ状筐体部(110)の前記開口へ溶接される、
c.前記円盤から電気的に絶縁され前記電極の一方へ電気的に接続される電気的極(150)が前記円盤(102)内に通される。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のボタンセルの形式の電気化学的エネルギー貯蔵セル(10;20)を製造する方法であって、以下の工程を含む方法。
a.筐体カップ基部(101)、周囲側壁(111)及び端子開口を含む金属カップ状筐体部(110)を提供する工程であって、前記筐体カップ基部及び前記周囲側壁は各々内側及び外側を有する、工程、
b.内側及び外側を有する蓋(120)を提供する工程、
c.第1の平坦端子端面、第2の平坦端子端面、及び前記端面間に配置された巻線シェルを有する円筒巻線の形式の電極分離器アセンブリ(140)を提供する工程であって、
i.前記電極分離器アセンブリ(140)は、第1の長手方向縁及びそれに対し平行な第2の長手方向縁を有するカソード電流コレクタを有するリボン状カソード(141)を含み、
ii.前記電極分離器アセンブリ(140)は、第1の長手方向縁及びそれに対し平行な第2の長手方向縁を有するアノード電流コレクタを有するリボン状アノード(142)を含み、
iii.前記アノード電流コレクタは、負電極材料の層により装填された主領域と、その第1の長手方向縁に沿って延伸し前記電極物質により装填されない自由縁ストリップとを含み、
及び/又は
前記カソード電流コレクタは、正電極材料の層により装填された主領域と前記電極物質により装填されないその第1の長手方向縁に沿って延伸する自由縁ストリップとを含み、
iiii.前記アノード(142)及び前記カソード(141)は、前記アノード電流コレクタの前記第1の長手方向縁が前記第1の平坦端子端面から突出するようなやり方で及び/又は前記カソード電流コレクタの前記第1の長手方向縁が前記電極分離器アセンブリ(140)の前記第2の平坦端子端面から突出するようなやり方で前記電極分離器アセンブリ(140)内に配置される、工程、
d.前記巻線が、形成される前記筐体内で軸方向にアライメントされ、前記巻線の前記端面の一方が前記筐体カップ基部(101)に面するように前記電極分離器アセンブリ(140)を前記筐体部(120)内へ挿入する工程、
e.前記電極分離器アセンブリ(140)が配置される内部空間を有する気密且つ液密筐体を形成するために、前記蓋(120)と適切ならば環状電気的絶縁シールとを使用することにより前記カップ状筐体部(110)を閉じる工程であって、前記カップ状筐体部(110)を閉じた後、前記アノード電流コレクタの前記第1の長手方向縁及び/又は前記カソード電流コレクタの前記第1の長手方向縁は前記筐体カップ基部(101)の内側及び/又は前記蓋(120)の内側に当接する、
f.前記筐体が閉じられると前記内部空間内に向く少なくとも1つの変形部が前記筐体カップ基部及び/又は前記蓋内へ導入される、
又は、
提供される前記筐体カップ基部又は前記蓋は、前記筐体が閉じられた後に前記内部空間内へ突出する少なくとも1つの突部を有する、及び
g.前記筐体カップ基部(101)の内側又は前記蓋(120)の内側に当接する前記アノード電流コレクタ又は前記カソード電流コレクタの前記第1の長手方向縁は前記変形部又は前記隆起へ溶接される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボタンセルの形式の電気化学的エネルギー貯蔵セル及び同セルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学エネルギー貯蔵素子は蓄積された化学エネルギーを酸化還元反応のおかげで電気エネルギーへ変換し得る。電気化学エネルギー貯蔵素子の最も単純な形式は電気化学セルである。電気化学セルは通常、分離器により互いに分離された正電極及び負電極を含む。放電中、電子が酸化プロセスの結果として負電極において放出される。これは外部電気消費器により引き出され得る電子流を生じ、このため電気化学セルはエネルギー供給器として働く。同時に、電極反応に対応するイオン電流がセル内に発生する。このイオン電流は、分離器を横断し、そしてイオン伝導性電解質により可能にされる。
【0003】
放電が可逆的であれば、すなわち放電中に化学エネルギーの電気エネルギーへの変換を逆転し、そしてセルを再び充電することが可能であれば、これは二次セルであると言われる。二次セル内の負電極のアノードとしての一般的指定及び正電極のカソードとしての一般的指定は電気化学セルの放電機能を指す。
【0004】
2次リチウムイオンセルは、高電流を提供し得、そして比較的高エネルギー密度により特徴付けられるので、多くのアプリケーションのためのエネルギー貯蔵素子として使用される。これらは、セルの電極間をイオンの形式で行き来し得るリチウムの使用に基づく。リチウムイオンセルの負電極及び正電極は、電気化学的不活性成分及び電気化学的活性成分を含む所謂コンポジット電極により一般的に形成される。
【0005】
原理的に、リチウムイオンを吸収し放出し得るすべての材料は2次リチウムイオンセルの電気化学的活性成分(活性材料)として使用され得る。例えば、黒鉛炭素などの炭素ベース粒子が負電極のために使用される。正電極の活性材料は、例えば酸化リチウムコバルト(LiCoO2)、酸化リチウムマンガン(LiMn2O4)、燐酸リチウム鉄(LiFePO4)又はこれらの派生物であり得る。電気化学的活性材料は一般的に粒子形式で電極内に含まれる。
【0006】
電気化学的不活性成分として、コンポジット電極は一般的に、それぞれの活性物質又は対応電極材料の担体として働く平坦及び/又はストリップ状電流コレクタ(特に、金属箔)を含む。負電極の電流コレクタ(アノード電流コレクタ)は例えば銅又はニッケルで作成され得、正電極の電流コレクタ(カソード電流コレクタ)は例えばアルミニウムで作成され得る。更に、電極は、電気化学的不活性成分として電極結合剤(例えばポリビニリデンフルオライド(PVDF:polyvinylidene fluoride)又は例えばカルボキシメチルセルロースのような別の高分子)、伝導性改善添加剤、及び他の添加剤を含み得る。電極結合剤は、電極の機械的安定性を保証し、そしてまた電流コレクタへの活性物質の粘着性をしばしば保証する。
【0007】
電解質として、リチウムイオンセルは通常、有機溶剤(例えば炭酸のエーテル及びエステル)中にリチウムヘキサフルオロホスファート(LiPF6)などのリチウム塩の溶液を含む。
【0008】
コンポジット電極は、リチウムイオンセルを製造する際に電極分離器アセンブリを形成するために1又は複数の分離器と組み合わせられ得る。電極及び分離器は、圧力下で、又は薄層化又はボンディングにより接続され得る。次に、セルの基本的機能はアセンブリに電解質を含浸させることにより確立され得る。
【0009】
多くの実施形態では、電極分離器アセンブリは巻線の形式で形成される又は巻線内へ処理される。例えば、リボン状正電極及びリボン状負電極並びに少なくとも1つのリボン状分離器が、巻線機へ別々に供給され、そして一連の正電極/分離器/負電極と共に巻線内へ螺旋状に巻かれる。他のケースでは、リボン状正電極及びリボン状負電極並びに少なくとも1つのリボン状分離器が、例えば前述の圧力を印可することにより電極分離器アセンブリを形成するために最初に組み合わせられる。別の工程では、アセンブリは巻き上げられ、そして、このようにして形成された電極/分離器アセンブリは筐体内に置かれ、電極同士はそれに応じて接触される。
【0010】
巻かれた電極分離器アセンブリを有するこのようなエネルギー貯蔵セルは通常、円筒状設計を有する。丸いセルとボタンセルとは区別される。円筒形の丸いセルは、その高さがその直径より大きいということにより特徴付けられる。ボタンセルはその直径より小さい高さを有する。ボタンセルは通常、丸いセルよりはるかに小さな寸法及び容量を有する。ボタンセルは、例えば時計、補聴器、無線ヘッドホン等々などの小さな電子デバイスを給電するために好適である。
【0011】
ボタンセルは通常、2つの金属筐体部から成る筐体を有する。例えば、一方の筐体部はカップ状である(所謂セルカップ)一方で、他方は、蓋としてカップ状筐体部の開口を閉じる。蓋は、しばしばカップ状でもあり、そして、その開口縁を有するセルカップ内へ最初に挿入される。
【0012】
このようなボタンセルの液密密閉は、例えば蓋の縁又は肩又は円周縁の上のセルカップの縁をクリンプすることにより実現され、ここでは、セルカップの縁により蓋の肩又は縁又は円周縁に対し押圧されるプラスチックリングがセルカップと蓋との間に配置される。このプラスチックリングは、密封素子として働き、そしてまたセルカップを蓋から電気的に絶縁する。
【0013】
代替的に、ボタンセルはまた、クリンピングが無しで済まされ得るように、セルカップ及び蓋をもっぱら軸方向において一緒に保持することにより、又は少なくとももっぱら圧力ばめ接続により保持することにより密閉され得る。このようなボタンセルは例えば(特許文献1)から知られている。
【0014】
金属筐体部を有するボタンセルでは、筐体部は通常、セルの極としても働く。従って、筐体部は電極へ電気的に接続されなければならなない。正電極及び負電極は、ストリップ状電気的導体が電極ストリップへ取り付けられるようなやり方で筐体部へ接続され得る。正電極のストリップ状電気的導体は巻線の一方の端面から突出し、そして負電極のストリップ状電気的導体は巻線の反対端面から突出する。これらの導体ストリップは電極と電気的に接触するために溶接することによりそれぞれの筐体部へ接続され得る。このタイプのボタンセルは例えば(特許文献2)に示されている。
【0015】
(特許文献3)では、円筒巻線を一緒に形成するリボン状電極及びリボン状分離器を有する2次ボタンセルが説明されている。筐体との接触から端面を保護する電気的絶縁板が、巻線のそれぞれの端面上に配置される。筐体はカップ状筐体部及び蓋から成り、蓋はカップ状筐体部の開口内へ溶接される。巻線の電極の一方は金属アレスターを介し筐体へ接続されるので、筐体はセルの一方の極として働く。蓋内の穴を介し筐体から引っ張り出される別のアレスターが金属極へ直接溶接される。
【0016】
巻線の形式であり且つリボン状電極を有する電極分離器アセンブリを有する円筒形の丸いセルが(特許文献4)から知られている。電極は各々、電極物質により装填された電流コレクタを有する。逆に分極された電極は、正電極の電流コレクタの長手方向縁が巻線の一端面から突出し、そして負電極の電流コレクタの長手方向縁が巻線の他端面から突出するように電極分離器アセンブリ内に互いにオフセットされて配置される。電流コレクタの電気的接触のために、セルは、巻線の一端面上に座すコンタクトシートメタル部材を有し、そして溶接により電流コレクタの一方のコレクタの長手方向縁へ接続される。これは、電流コレクタとそして従ってその全長にわたって関連電極とも電気的に接触することを可能にする。これは、説明されたセル内の内部抵抗を著しく低減する。この結果、大電流の発生がはるかに良く吸収され得、そして熱も巻線からより良く消散され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2009 017 514A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2009 060 800A1号明細書
【特許文献3】特開2008-262825A号公報
【特許文献4】国際公開第2017/215900A1号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
この背景に対して、本発明は、ボタンセルの形式の改善された電気化学的エネルギー貯蔵セルであって巻線状電極分離器アセンブリ内の電極の特に良好な電気的接続により特徴付けられるセルを提供するタスクという目的を設定する。このセルでは、電気化学的電位が可能な限り最適化されることになる。
【0019】
この目的は、請求項1に示すようなボタンセルの形式の電気化学的エネルギー貯蔵セルにより達成される。更に、この目的はこのような電気化学的エネルギー貯蔵セルを製造する方法により解決される。この方法は別の独立請求項の主題である。ボタンセル又はその製造方法の好ましい実施形態もまた、従属請求項から明白になる。
【0020】
本発明による電気化学的エネルギー貯蔵セルは、ボタンセルの形式で設計され、そして常に以下の特徴a~jにより特徴付けられる:
a.気密及び液密的やり方で内部空間を囲む密閉筐体とその中に配置された電極分離器アセンブリとを含む、
b.筐体は、筐体カップ基部、周囲側壁及び端子開口を含む金属カップ状筐体部を含み、筐体カップ基部及び周囲側壁は各々、内部空間内に向く内側と外側とを有する、
c.筐体はカップ状筐体部の端子開口を閉じる蓋を含み、蓋は内部空間内に向く内側と外側とを有する、
d.電極分離器アセンブリは、第1の平坦端子端面及び第2の平坦端子端面とこれらの端面間に配置された巻線シェルとを有する円筒巻線の形式のものである、
e.電極分離器アセンブリは、第1の長手方向縁及びそれに対し平行な第2の長手方向縁を有するアノード電流コレクタを有するリボン状アノードを含む、
f.電極分離器アセンブリは、第1の長手方向縁及びそれに対し平行な第2の長手方向縁を有するカソード電流コレクタを有するリボン状カソードを含む、
g.アノード電流コレクタは、負電極材料の層により装填された主領域と、その第1の長手方向縁に沿って延伸し、そして電極物質により装填されない自由縁ストリップとを含む、及び/又はカソード電流コレクタは、正電極材料の層により装填された主領域と電極物質により装填されないその第1の長手方向縁に沿って延伸する自由縁ストリップとを含む。
h.アノード及びカソードは、アノード電流コレクタの第1の長手方向縁が第1の端子端面から突出するようなやり方で及び/又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁が電極分離器アセンブリの第2の端子端面から突出するようなやり方で電極分離器アセンブリ内に配置される。
i.筐体内で、電極分離器アセンブリは、巻線の端面の一方が筐体カップ基部に面し、そして端面の他方が蓋に面するように軸方向にアライメントされる。
j.アノード電流コレクタの第1の長手方向縁又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁は筐体カップ基部の内側又は蓋の内側に直接当接する。本発明によると、ボタンセルは以下の特徴k~lにより特に特徴付けられる:
k.その内側にアノード電流コレクタ又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁が当接する筐体カップ基部及び/又は蓋は、筐体カップ基部又は蓋が内部空間内に向く変形部を有する又は筐体カップ基部又は蓋の隆起が内部空間内へ突出する少なくとも1つの領域を有する、
l.筐体カップ基部又は蓋の内側に当接するアノード電流コレクタ又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁は変形部又は隆起へ溶接される。
【0021】
筐体カップ基部又は蓋が内部空間内に向く変形部を有する又は筐体カップ基部又は蓋の隆起が内部空間内へ突出する少なくとも1つの領域は以下では隆起及び/又は変形領域とも呼ばれる。金属カップ状筐体部は以下では筐体カップとも呼ばれる。
【0022】
本発明によるこのエネルギー貯蔵セル又は本発明によるこのボタンセルの特定利点は、電極の少なくとも1つが筐体カップ基部及び/又は蓋(すなわち筐体の端面要素へ)へ直接接触させられるということである。例えば(特許文献3)報によるボタンセル内に提供されるような別個の電気的導体を介する電極の電気的接続とは対照的に、筐体の端面への電流コレクタの長手方向縁の直接的電気的接続はセルの内部抵抗を低減するので大電流の発生がよりうまく吸収され得る。加えて、熱は巻線状電極分離器アセンブリからよりうまく消散され得る。
【0023】
提供される別の方策:即ち「電極の長手方向縁は、長手方向縁が筐体カップ基部又は蓋の内方向突出領域へ溶接されるようなやり方で筐体の端面要素へ電気的に接続される」は第1に、製造プロセス(特に大量生産に関する)を容易にする。他方で、これは、筐体のそれぞれの端面要素とそれぞれの電極の長手方向縁との間の特に安定且つ信頼できる接続を可能にする。
【0024】
隆起及び/又は変形領域は、例えば筐体カップの基部又は蓋の厚さが基部又は蓋の平均厚と比較して増加される領域であり得る。いくつかの好ましい実施形態では、隆起は、もっぱら内側上に配置され、従って外側から見えない。しかし、特に好適には、隆起及び/又は変形領域は内部空間内に向く筐体カップの基部又は蓋の変形部である。
【0025】
全体として、少なくとも1つの隆起及び/又は変形領域は、電流コレクタ(及び従って電極)のそれぞれの第1の長手方向縁への特に良好な直接電気的接続を可能にする。
【0026】
筐体カップ及び蓋の両方は好適にはシートメタルから成る。例えば、シートメタルは1枚の鋼又は1枚のニッケルメッキ鋼であり得る。アルミニウム又は銅で作られるシートメタルも可能である。
【0027】
蓋は、0.05mm~1.5mm、好適には0.1mm~1.0mm、より好適には0.1mm~0.5mm、更に好適には0.15mm~0.3mm、代替的には0.08mm~0.2mmの範囲内の壁厚を有することが特に好ましい。これは、アノード電流コレクタの第1の長手方向縁又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁が内側に直接当接する蓋の領域に特に当てはまる。
【0028】
筐体カップは0.05mm~1.5mm、好適には0.1mm~1.0mm、より好適には0.1mm~0.5mm、更に好適には0.15mm~0.3mm、代替的には0.08mm~0.2mmの範囲内の壁厚を有することが特に好ましい。これは筐体カップの基部に特に当てはまる。
【0029】
本発明によるエネルギー貯蔵セルの特に好ましい実施形態では以下の追加特徴a~cのうちの少なくとも1つにより特徴付けられる:
a.電極分離器アセンブリの第1の端子端面及び/又は第2の端子端面から突出する第1の長手方向縁であって筐体カップ基部又は蓋の内側に直接当接する長手方向縁は少なくとも1つの凹領域内で変形される。
b.少なくとも1つの凹領域は、筐体カップ基部又は蓋が内部空間内に向く変形部を有する又は筐体カップ基部又は蓋の隆起が内部空間内へ突出する少なくとも1つの領域に対応する。
c.内部空間内に向く変形部又は隆起は少なくとも1つの凹領域内へ押し込まれる又は押圧される。
【0030】
好適には、上述の特徴a及びb、又は特に好適には上述の特徴a、b、及びcは組み合わせで実現される。
【0031】
従って、これらの特に好ましい且つ有利ないくつかの実施形態では、巻線状電極分離器アセンブリは端面の一方又は両方上に1又は複数の凹領域であって少なくとも1つの隆起及び/又は変形領域に対応する凹領域を有する。
【0032】
この文脈では、用語「対応する」は、隆起エリア及び/又は変形エリアが巻線の端面上の対応凹領域内へ直接突出するということを意味するものと理解されることが好ましい。
【0033】
凹領域内へ突出する隆起領域及び/又は変形領域は、筐体部品への電流コレクタの信頼できる溶接が可能であるように、電流コレクタの長手方向縁のそれぞれの部分と少なくとも1つの隆起及び/又は変形領域との間の最適機械的接触を生じる。またそして非常に重要であるのは:凹領域と凹領域内へ突出し得る隆起領域及び/又は変形領域との組み合わせは製造中の筐体部内の巻線の正しい位置決めを容易にし得るということである。
【0034】
少なくとも1つの凹領域は、巻線の端面上のそれぞれの電流コレクタの突出長手方向縁の変形により形成され得る。それぞれの電流コレクタの長手方向縁を変形する際、長手方向縁は有向変形に晒されることが好ましく、そして例えば、定義された方向に曲げられ得る又は折り畳まれ得る。いくつかの研究は、巻線の端面領域の対応点における巻線のこのような前処理又は変形が筐体カップ基部又は蓋とそれぞれの電流コレクタ縁との間の電気的接触を著しく改善し、そして溶接を容易にし得るということを示した。
【0035】
少なくとも1つの隆起及び/又は変形領域の実施形態に関し、好ましい実施形態では、以下の追加特徴a及びbの少なくとも1つが提供される:
a.内部空間内に向く変形部はビードとして設計される。
b.ビードは、凹部として(特に細長い凹部として)筐体カップ基部の外側及び/又は蓋の外側に、並びに隆起として(特に細長い隆起として)筐体カップ基部及び/又は蓋の内側に、出現する。
【0036】
特に好ましいのは、互いに組み合わせで実現される前述の特徴a及びbである。
【0037】
ビードは、例えばエンボスプロセス又は他の成形プロセスにより非常に容易に生成され得る。ビードの領域内の筐体要素の壁厚は上に既に指示したように一定であることが好ましい。これに関するさらなる詳細は本発明によるセルの製造プロセスに関連して以下に説明される。
【0038】
特に好適には、内部空間内に向く変形部(特にビード)は、2mm~12mm、好適には2mm~8mmの範囲内の長さと0.5mm~4mm、好適には1mm~3mm、特に好適には1mm~2.5mmの範囲内の幅とを有する。これは本明細書において開示される変形部のすべての実施形態に当てはまる。
【0039】
変形部の絶対長及び幅は本発明によるエネルギー貯蔵素子の寸法に適合化される。
【0040】
好適には、変形部は2~20の範囲内(特に好適には4~12の範囲内)の係数だけ広いよりむしろより長い。
【0041】
特に好ましい実施形態では、本発明によるエネルギー貯蔵セルは以下の追加特徴a及びbの少なくとも1つにより特徴付けられる:
a.筐体カップ基部又は蓋が内部空間内に向く変形部を有する又は筐体カップ基部又は蓋の隆起が内部空間内へ突出する少なくとも1つの領域内には、1又は複数の溶接跡(特に3つの溶接継ぎ目)がある。
b.筐体カップ基部又は蓋が内部空間内に向く変形部を有する又は筐体カップ基部又は蓋の隆起が内部空間内へ突出する少なくとも1つの領域内には、2つ以上の並列溶接継ぎ目(特に、3つの並列溶接継ぎ目)がある。
【0042】
好適には、前述の特徴a及びbは互いに組み合わせで実現される。
【0043】
溶接跡は、例えばレーザ溶接により生成された、溶接スポットから、又は溶接スポットで形成された継ぎ目から、又は連続溶接継ぎ目から成り得る。溶接跡はまた、筐体カップの基部又は蓋の外側の溶接電極の痕跡であり得る又はそれを含み得る。
【0044】
溶接跡(特に溶接継ぎ目又は溶接スポット)は、溶融する程度まで長手方向縁及び筐体カップ基部又は蓋を局所的に加熱するために例えば長手方向縁及び筐体カップ基部又は蓋を通って強い電流を流すことによりアノード電流コレクタ又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁が筐体カップ基部又は蓋へ溶接されると、生成される。溶接跡(特に溶接継ぎ目又は溶接スポット)は筐体カップ基部又は蓋の外側上で見えることが好ましい。
【0045】
特に好適には、溶接継ぎ目又は溶接スポットはレーザにより生成される。そうでなければ、例えば、電流(抵抗溶接)を印可することによる溶接が好適な選択である。
【0046】
溶接は外側から実行されることが好ましい。レーザの場合、レーザは、電流コレクタを溶融する前に筐体カップ基部又は蓋を最初に貫通する。電流を使用することにより溶接する場合、必要とされる溶接電極が、溶接を達成するために筐体カップ基部又は蓋の外側で使用されることが好ましい。これは、電流コレクタの導電率が筐体カップ基部又は蓋の導電率より高ければ、効率的である。
【0047】
既に上に述べたように、溶接継ぎ目はまた、有利に互いに近い一連の隣接溶接スポットにより実現され得る。他の実施形態では、連続溶接継ぎ目又はいくつかの連続溶接継ぎ目も提供され得る。
【0048】
特に好ましい実施形態では、本発明によるエネルギー貯蔵セルは以下の追加特徴a~cの少なくとも1つにより特徴付けられる:
a.内部空間内に面する筐体カップ基部又は蓋内の変形部は線型ビードとして形成される。
b.筐体カップ基部及び/又は蓋はいくつかの線型ビード(好適には3つの線形ビード)を含む。
c.3つのビードは星型で配置され、隣接ビードは120°の角度を形成する。
【0049】
特に好ましいやり方では、前述の特徴a及びb、又は特に好適には前述の特徴a、b、及びcは互いに組み合わせで実現される。
【0050】
好適には、溶接跡は変形部又はビード内に(好適には変形部又はビードの最深領域内に)位置決めされる。
【0051】
原理的に、少なくとも1つの隆起及び/又は変形領域はまた、様々な形式で実現され得る、及び/又は3個未満又は4個以上のビードが提供され得る(例えば5又は7個のビードも提供され得る)。少なくとも1つの隆起及び/又は変形領域(特にビードの変形領域)の特定実施形態及びジオメトリはボタンセル又はエネルギー貯蔵セルのサイズ及び寸法へ適合化されることが好ましい。例えば、星型で配置された3つ以上のビード(ビードはボタンセルのそれぞれの端面の表面の上に均一に分散される)はボタンセルの商用設計に好適である。このようにして、ボタンセルの端面に対するそれぞれの電極の均一な電気的接続が実現され得る。
【0052】
本発明によるエネルギー貯蔵セル又は本発明によるボタンセルの好ましい実施形態では、セルは、筐体カップ基部及び/又は蓋内にその深さが0.05mm~0.60mm、好適には0.10mm~0.50mm、より好適には0.20mm~0.40mmの範囲内にある1又は複数の変形部又はビードを有するという点で特徴付けられる。略0.30mmの深さが特に好ましい。
【0053】
好ましい実施態様では、本発明によるエネルギー貯蔵セル又はボタンセルは更に、その端面の一方又は両方内の領域内に1又は複数の凹領域を有する巻線状電極分離器アセンブリを有するという点で特徴付けられる。その深さは、特には0.05~0.45mm、好適には0.15mm~0.35mm、より好適には略0.25mmの範囲内に在り得る。
【0054】
好適には、凹領域の寸法は隆起エリア及び/又は変形エリアの寸法に対応する。
【0055】
筐体への電流コレクタの長手方向縁の直接接続は電極分離器アセンブリの端面の一方又は両方上に提供され得る。
【0056】
接続が一方の端面上にだけに提供されれば、アノード電流コレクタの長手方向縁だけ又はカソード電流コレクタの長手方向縁だけが電極分離器アセンブリの対応端面から突出する自由縁ストリップを有しなければならない。他の電極は例えば、それ自体既知のやり方で、特に、別個のアレスターにより(例えばそれぞれの電流コレクタへ溶接されるストリップ状金属箔により)電気的に接触され得る。
【0057】
従って、本発明によるエネルギー貯蔵セルの第1の基本的実施形態では、第1の電流コレクタ縁を少なくとも1つの隆起及び/又は変形領域へ溶接することによる電極の説明された電気的接続は電極分離器アセンブリの片側にだけ実現される。この実施形態では、エネルギー貯蔵セルは、特に、以下の特徴a~dの少なくとも1つにより特徴付けられる:
a.アノード電流コレクタの第1の長手方向縁又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁は筐体カップ基部の内側又は蓋の内側に当接する。
b.筐体カップ基部又は蓋は、筐体カップ基部又は蓋が内部空間内に向く変形部を有する又は筐体カップ基部又は蓋の隆起が内部空間内へ突出する少なくとも1つの領域を有する。
c.アノード電流コレクタの第1の長手方向縁又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁は変形部又は隆起へ溶接される。
d.変形部又は隆起へ溶接されない電流コレクタは、電気的導体を介し(特に、ストリップ状電気的導体(例えばストリップ状金属箔導体)を介し)筐体部の1つへ電気的に接続される。
【0058】
好適には、前述の特徴a、b、及びcは組み合わせで実現される。特に好ましいやり方では、前述の特徴a~dは組み合わせで実現される。
【0059】
本発明によるエネルギー貯蔵セルの更に好ましい実施形態では、電極の前述の電気的接続は、電極ストリップの長手方向縁を溶接することによりエネルギー貯蔵セルの両側の筐体へ直接配置される。従って、好ましい実施形態では、エネルギー貯蔵セルは以下の追加特徴a~cの少なくとも1つにより特徴付けられる:
a.アノード電流コレクタの第1の長手方向縁又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁は、筐体カップ基部の内側に当接し、筐体カップ基部の内側に当接しない電流コレクタの第1の長手方向縁は蓋の内側に当接する。
b.筐体カップ基部及び蓋の両方は各々、内部空間内に向く変形部を有する又は筐体カップ基部又は蓋の隆起が内部空間内へ突出する少なくとも1つの領域を有する。
c.アノード電流コレクタの第1の長手方向縁及びカソード電流コレクタの第1の長手方向縁は各々変形部又は隆起へ溶接される。
【0060】
好適には、前述の特徴a、b及びcは組み合わせで実現される。
【0061】
本発明によるエネルギー貯蔵セルの筐体は、本発明による前述の特徴とは別に、従来のボタンセル内に実現され得る。
【0062】
例えば、以下の特徴a及びbが筐体の設計に関し提供され得る:
a.筐体カップのように、蓋は、カップ状であり、そして蓋基部、周囲側壁及び開口縁を有し、蓋は開口縁を有する筐体カップ内へ最初に押し込まれる。
b.筐体カップ及び蓋は環状電気的絶縁シールにより互いに分離される。
【0063】
好適には、前述の特徴a及びbは組み合わせで実現される。
【0064】
これらの場合、「蓋基部は内部空間内に向く変形部を有する又は蓋の隆起が筐体の内部空間内へ突出する少なくとも1つの領域を有する」ことが好ましい。
【0065】
環状シールは、電気化学セルを密閉するために一般的に使用されるプラスチック(例えばポリアミド、ポリエーテルケトン)から成り得る。
【0066】
本発明によるエネルギー貯蔵セルの筐体の別の実施形態では、以下の特徴a~cの少なくとも1つが実現され得る:
a.蓋はカップ状筐体部の端子開口内へ挿入される円盤である。
b.円盤はカップ状筐体部の開口内へ溶接される。
c.円盤から電気的に絶縁され、そして電極の一方へ電気的に接続される電気的極は円盤を貫通する。
【0067】
好適には、上述の特徴a、b及びcは組み合わせで実現される。
【0068】
本発明によるエネルギー貯蔵セルは好適にはリチウムイオンセルである。従って、電流コレクタが充電される電極物質は好適にはリチウムイオンセルの従来の電極物質である。好適には、エネルギー貯蔵セルは、リチウムイオンセルのために一般的に使用される電解質を含む。
【0069】
電極分離器アセンブリ内で、アノード及びカソードは少なくとも1つの分離器により互いに分離される。分離器は好適にはリボン状である。分離器は例えば微孔プラスチック膜又はフリース(fleece)から成り得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、電極分離器アセンブリ内の電極はまた、固体電解質の層を介し互いに接続され得る。このとき、この層は分離器としても働く。液体電解質はこれらのケースでは強制的に必要とされるものではない。
【0071】
本発明によるエネルギー貯蔵セルの好ましい実施形態の筐体カップ基部はアノードと接触するために提供されることが好ましい。アノード電流コレクタは好適には銅又は銅合金(特には銅箔)から成る。カソード電流コレクタは好適にはアルミニウム又はアルミニウム合金(特にはアルミ箔)から成る。
【0072】
本発明によるエネルギー貯蔵素子は好適には最大高≦1.5cm及び最大径≦2.5cmを有する。
【0073】
本発明は更に、ボタンセルの形式の(特に上述の特徴を有するボタンセルの形式の)電気化学的エネルギー貯蔵セルを製造する方法を含む。本方法は常に下記工程を含む:
a.筐体カップ基部、周囲側壁及び端子開口を含む金属カップ状筐体部を提供する工程であって、筐体カップ基部及び周囲側壁は各々内側及び外側を有する、工程、
b.内側及び外側を有する蓋を提供する工程、
c.第1の平坦端子端面及び第2の平坦端子端面及びこれらの端面間に配置された巻線シェルを有する円筒巻線の形式の電極分離器アセンブリを提供する工程であって、
i.電極分離器アセンブリは、第1の長手方向縁及びそれに対し平行な第2の長手方向縁を有するカソード電流コレクタを有するリボン状カソードを含む、
ii.電極分離器アセンブリは、第1の長手方向縁及びそれに対し並列な第2の長手方向縁を有するアノード電流コレクタを有するリボン状アノードを含む、
iii.アノード電流コレクタは、負電極材料の層により装填された主領域と、その第1の長手方向縁に沿って延伸し、そして電極物質により装填されない自由縁ストリップとを含む、及び/又はカソード電流コレクタは、正電極材料の層により装填された主領域と電極物質により装填されないその第1の長手方向縁に沿って延伸する自由縁ストリップとを含む、
iiii.アノード及びカソードは、アノード電流コレクタの第1の長手方向縁が第1の平坦端子端面から突出するようなやり方で及び/又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁が電極分離器アセンブリの第2の平坦端子端面から突出するようなやり方で電極分離器アセンブリ内に配置される、工程、
d.巻線が、形成される筐体内で軸方向にアライメントされ、そして巻線の端面の一方が筐体カップ基部に面するように電極分離器アセンブリを筐体部内へ挿入する工程、
e.電極分離器アセンブリが配置される内部空間を有する気密且つ液密筐体を形成するために、蓋と適切ならば環状電気的絶縁シールとを使用することによりカップ状筐体部を閉じる工程であって、この密閉後、アノード電流コレクタの第1の長手方向縁及び/又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁は筐体カップ基部内側及び/又は蓋の内側に当接する、工程を含み、
f.筐体が閉じられると内部空間内に向く少なくとも1つの変形部が筐体カップ基部及び/又は蓋内へ導入される、又は、提供される筐体カップ基部又は蓋は、筐体が閉じられた後に内部空間内へ突出する少なくとも1つの突部を有する、
g.筐体カップ基部の内側上又は蓋の内側に当接するアノード電流コレクタ又はカソード電流コレクタの第1の長手方向縁は変形部又は隆起へ溶接される。
【0074】
蓋及びカップ状筐体部の筐体カップ基部は、少なくとも1つの変形部又は少なくとも1つの隆起と共に提供され得る。例えば、蓋及び筐体カップ基部は、少なくとも1つの変形部又は少なくとも1つの隆起を既に有するシート材から生成され得る。しかし、後の段階において変形部を蓋又は筐体カップ基部内へ導入する(例えば工程dの前に)ことも可能である。変形は、蓋又はカップ状筐体部を製造するプロセス内へ取り込まれ得るスタンピングプロセス又は従来の成形方法により開始されることが好ましい。
【0075】
蓋及びカップ状筐体部の両方、隆起、変形部、電極分離器アセンブリ、及びまた溶接中に生成される溶接跡は電気化学的エネルギー貯蔵セルに関連して上に説明された。参照は本明細書では対応説明に対しなされる。
【0076】
参照はまた、本発明によるエネルギー貯蔵セルに関連して述べられた好ましい実施形態(その中へ変形部又は隆起が突出する凹領域など)に対しなされる。
【0077】
巻線状電極分離器アセンブリはカップ状筐体部内へ最初に挿入され得る。次に、電極のそれぞれの長手方向縁の溶接は、筐体カップが蓋により閉じられる前に筐体カップ基部の領域内で発生し得る。
【0078】
しかし、溶接はまた、筐体が閉じられた後に発生し得、ここでは、外側からの溶接が次に必要とされる。外側からの溶接は例えば抵抗溶接又はレーザ溶接により実現され得る。
【0079】
本発明のさらなる特徴及び利点は添付図面と併せた好ましい例の以下の説明から明かになる。一般的に、本発明によるセルの示される特徴は、別々に、又は他の示された特徴と組み合わせで実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】本発明によるボタンセルの筐体の一実施形態(透視図)である。
【
図2】
図1によるボタンセル筐体のようなビードを有する筐体を有するボタンセルの断面図である。
【
図3】本発明によるボタンセルの別の実施形態の筐体(透視図)である。
【
図4】
図3のボタンセル筐体のようなビード及び極ブッシングを有する筐体を有するボタンセルの断面図である。
【
図5A】本発明によるエネルギー貯蔵セルの筐体の筐体カップ基部の写真図である。
【
図5B】本発明の好ましい実施形態による巻かれた電極分離器アセンブリの端面領域の写真図である。
【
図6A】3つのビード及びビード内の溶接継ぎ目を有する本発明によるエネルギー貯蔵セルの筐体カップ基部の概略図である。
【
図6B】3つの溶接継ぎ目を有する筐体カップ基部内のビードの顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1はボタンセル10の形式の本発明によるエネルギー貯蔵セルの例示的実施形態を示し、ここでの焦点は筐体100であり、従ってセルの内部は示されない。円筒状筐体100は筐体カップ基部101及び蓋基部102を有する。この実施形態では、筐体カップ基部101及び蓋基部102は各々、星状配置のセルの内部空間内に向く3つの変形部11及び12を有する。これらの変形部11及び12は、筐体カップ基部101又は蓋基部102の外側の細長い凹部としてそして筐体カップ基部101又は蓋基部102の内側の細長い隆起として出現するビードとして形成される。
【0082】
図2は
図1によるボタンセル筐体のようなビードを有する筐体を有するボタンセルの断面図を示し、この断面は筐体カップ基部内のビード11のうちの1つと蓋基部102内のビード12のうちの1つとを貫通するものである。
【0083】
セル10の筐体は筐体カップ基部101及び周囲側壁111を有する金属カップ状筐体部110含み、その末端縁は端子開口を画定する。更に、筐体は蓋基部102及び周囲側壁121を有する金属カップ状蓋120を含む。蓋120は筐体部110内へ挿入され、それぞれの周囲側壁111、121、そして従ってまた筐体部110、120はシール130により互いに電気的に絶縁される。
【0084】
概略的に示された巻線状電極分離器アセンブリ140はボタンセル10の筐体の内側に配置される。電極分離器アセンブリ140はリボン状アノード142及びリボン状カソード141により形成される。電極分離器アセンブリ140内で、アノード142及びカソード141はリボン状分離器(ここでは示されない)により互いに分離される。アノード142及びカソード141は各々、電極物質(また示されない)により被覆された電流コレクタにより形成される。この実施形態では、アノード142及びカソード141の両方又はそれらの電流コレクタは各々、電極物質により被覆されない第1の長手方向縁を有する。カソード141の自由な第1の長手方向縁は、この実施形態において示される巻き付けられた電極分離器アセンブリ140の上側端面から突出する。アノード142の自由な第1の長手方向縁は電極分離器アセンブリ140の下側端面から突出する。筐体カップ基部101又は蓋基部102と電極との電気的接触は電流コレクタのこれらの自由な長手方向縁を介しなされ、筐体カップ基部101の内側又は蓋基部102の内側に当接する電流コレクタの自由縁ストリップ又は第1の長手方向縁は、内部空間内に向く筐体カップ基部101の隆起11へ又は内部空間内に向く蓋基部102の隆起12へ溶接される。溶接領域はこの図解では矢印により指示される。
【0085】
図3は本発明によるボタンセル20の別の実施形態を示し、ここでは、
図1のように、図解の焦点は筐体100にあり、従って電極分離器アセンブリは示されない。この例では、金属筐体基部101だけが3つのビード11を備える。対照的に、この例示的実施形態ではセル20の正の接続コンタクトを外側ヘ導く極150はボタンセル20の蓋基部102の領域内に提供される。当然、セルの極性はまた逆であり得る。
【0086】
図4は、
図3によるボタンセルのようにビード及び極150を有するボタンセルの断面図を示す。セル20は、筐体カップ基部101及び周囲側壁111を有する金属カップ状筐体部110を含む。この例では、蓋は金属円盤102により形成される。この円盤は、カップ状筐体部110の端子開口内へ挿入され、そして周囲を溶接することによりその中へ固定される。円盤状蓋基部102は、電気的極150が誘導される中央開口を有する。極150は絶縁体151により円盤又は蓋基部102から電気的に絶縁される。
【0087】
ストリップ状カソード141はストリップ状アレスター160を介し極150へ電気的に接続される。この例では、上に示された電極分離器アセンブリ140の端面は、円盤状絶縁素子170により蓋基部102及びアレスター160から絶縁される。これは例えば絶縁円盤又は箔であり得る。この絶縁素子170は、電極分離器アセンブリ140の内側のカソード141と接触することができるために、アレスター160が誘導される中心穴を含む。
【0088】
図5Aは本発明によるエネルギー貯蔵セルの筐体カップ基部101の写真表現を示す。その隆起側がセルの内部空間内へ突出する3つのビード11がはっきり見える。セルの内側のこれらの領域では、接触は、電極分離器アセンブリのアノード又はカソードの電流コレクタのそれぞれの長手方向縁と溶接することによりなされる。
【0089】
図5Bは、巻線状電極分離器アセンブリ140の写真図を示し、ここでは、巻線の端面の一方は、
図5Aのチャネル状凹部11に対応する3つの凹領域143を有する。これらの凹領域143は巻線の端面を機械的に変形することにより生成され得る。巻線及び対応筐体部のこの逆成形により、電気的接続の精度及び信頼性が最適化される(すなわちこれらの領域内の溶接により)。加えて、これらの凹領域143の助けにより、組み立てられる筐体内の巻線の位置決めは筐体カップ基部(又は適用可能ならば蓋基部)の突出領域を使用するアライメントにより簡単にされ得る。
【0090】
図6Aは、電流コレクタのそれぞれの長手方向縁を筐体カップ基部又は蓋基部へ接続する可能性を示す。
図6Aは、筐体の内部空間内へ突出する3つの細長い凹部11を有する筐体カップ基部101を概略的に示す。3つの矢印が、形成される溶接継ぎ目を示すために3つの凹部11の各々内に示される。
【0091】
図6Bは、その中に形成された3つの溶接継ぎ目を有するチャネル状凹部11のうちの1つの顕微鏡図を示す。
図6Cは、巻線状電極分離器アセンブリの端面内の対応凹領域143の顕微鏡図を示す。
【外国語明細書】