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特開2024-164020トロスピウムを使用した過活動膀胱の治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164020
(43)【公開日】2024-11-26
(54)【発明の名称】トロスピウムを使用した過活動膀胱の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/439 20060101AFI20241119BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
A61K31/439
A61P13/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024121447
(22)【出願日】2024-07-26
(62)【分割の表示】P 2021504826の分割
【原出願日】2019-07-31
(31)【優先権主張番号】62/713,414
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/850,481
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514274409
【氏名又は名称】タリス バイオメディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 規樹
(72)【発明者】
【氏名】ギーシング,デニス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】過活動膀胱の治療方法と、過活動膀胱を有する個体における膀胱の訓練若しくは再訓練、症状緩和の延長、生活の質の改善、及び/又は神経リモデリングの方法と、を提供する。
【解決手段】有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、膀胱に局所的に投与することを含む、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過活動膀胱を有する個体の膀胱を訓練する方法であって、有効量のトロスピウムを少な
くとも約24時間、前記個体の膀胱に局所的に投与することを含む、方法。
【請求項2】
過活動膀胱を有する個体の症状緩和を延長する方法であって、有効量のトロスピウムを
少なくとも約24時間、膀胱に局所的に投与することを含み、前記個体は、トロスピウム
投与が完了した後少なくとも約24時間は症状の緩和を経験する、方法。
【請求項3】
過活動膀胱を有する個体の生活の質を改善する方法であって、有効量のトロスピウムを
少なくとも約24時間、膀胱に局所的に投与することを含み、前記個体の生活の質は、ト
ロスピウムを用いた治療により改善される、方法。
【請求項4】
過活動膀胱を有する前記個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約7日間は
、ベースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する、請求項1~3のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項5】
トロスピウムは、少なくとも約42日間前記膀胱に局所的に連続的に投与される、請求
項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、有効量のトロスピウムを3ヶ月毎に又は必要に応じて(prn)前記膀胱
に局所的に投与することを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間、個体の膀胱に局所的に連続的に投与す
ることを含む、過活動膀胱を治療する方法。
【請求項8】
トロスピウムは、約56日間、約84日間、又は約12週間連続的に投与される、請求
項7に記載の方法。
【請求項9】
トロスピウムは、少なくとも約12週間連続的に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
個体における過活動膀胱の維持療法の方法であって、トロスピウムを少なくとも約24
時間、膀胱に連続的かつ局所的に投与することを含み、前記個体は、過活動膀胱の先行治
療を受けたことがある、方法。
【請求項11】
前記維持療法は、3ヶ月毎に、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、前記膀
胱に局所的に投与することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記維持療法は、必要に応じて(prn)、有効量のトロスピウムを少なくとも約24
時間、前記膀胱に局所的に投与することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記維持療法は、症状再発時に、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、前記
膀胱に局所的に投与することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記維持療法は、前記個体がベースライン症状の少なくとも50%の再発を経験したと
きに、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、前記膀胱に局所的に投与すること
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記先行治療は、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、少なくとも約42日
間、少なくとも約56日間、少なくとも約84日間、又は少なくとも約12週間、前記膀
胱に局所的に投与することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記膀胱内のトロスピウムの濃度が、トロスピウムの投与中、0.1~100μg/m
Lである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記個体の血漿中のトロスピウムの濃度が、トロスピウムの投与中、2ng/mL未満
である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記個体は、特発性過活動膀胱を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法
【請求項19】
前記個体は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有するか、又は以前
に脳卒中にかかったことがある、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記個体は、過活動膀胱の先行治療に失敗したことがある、請求項1~17のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項21】
前記個体は、過活動膀胱の先行治療を受けたことがない、請求項1~19のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項22】
前記個体は、経口療法に失敗したことがあるか又は経口療法に適格でない、請求項1~
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記個体は、尿失禁又は切迫性尿失禁を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項24】
前記方法は、神経リモデリング又は神経回路網のリモデリングをもたらす、請求項1~
23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
切迫感、頻度、又は尿失禁の症状緩和が達成される、請求項1~24のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項26】
前記個体の生活の質スコアが改善される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法
【請求項27】
前記個体の排尿負担感スコアが低減される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方
法。
【請求項28】
前記方法は、異常な尿意を低減させる、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
トロスピウムは、膀胱内デバイスを使用することによって前記膀胱に投与される、請求
項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年8月1日に出願された米国特許仮出願第62/713,414号
及び2019年5月20日に出願された米国特許仮出願第62/850,481号の利益
及びこれらに対する優先権を主張するものである。これらの出願書のそれぞれの内容は、
その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、トロスピウムを膀胱に局所的に送達することによる、過活動膀胱の治療、膀
胱の訓練若しくは再訓練、症状緩和の延長、生活の質の改善、及び/又は過活動膀胱を有
する個体における神経リモデリングの方法に関する。
【背景技術】
【0003】
過活動膀胱、排尿筋不安定、及び尿失禁を含む下部尿路障害は、多数の病理から生じ得
る。これらの病理は、一般に、神経因性、筋原性、又は特発性として分類される。患者の
大部分は、通常、観察可能な病因がないために特発性として特徴付けられる。
【0004】
最近の研究では、尿路上皮の感覚系が、求心性シグナル伝達及び尿筋活動に重要な役割
を果たし得ることを示唆している。de Groat and Yoshimura,H
andb Exp Pharmacol.2009;(194):91-138;Dal
y et al.Current Opinion in Urology 2011,
21:268-274;Birder and Andersson Physiol
Rev 93:653-680,2013を参照されたい。この系の病理は、下部尿路特
発性疾患を抱える多くの患者において重要な役割を果たすことが示唆されている。
【0005】
特発性下部尿路障害を抱える患者に対する標準薬療法は、典型的には経口又は経皮的に
投与される全身治療である。これらの療法は、用量制限的な副作用、効果の低さのいずれ
か又は両方に起因して十分な効能を欠くことが多い。
【0006】
現在、全身性薬物療法に失敗した患者は、2つの代替案のみを有する。第1の代替案は
、膀胱壁内へのBotoxの直接注入であり、これは症状緩和をもたらし得るが、望まし
くないことに、自己カテーテル法を必要とする長期的な尿閉ももたらし得る。第2の代替
案は、InterStim(登録商標)デバイスによってもたらされるような神経刺激で
あり、このデバイスは外科的に埋め込まれ、症状緩和を提供することが示されている。し
かしながら、機器及び外科処置は高価であり、侵襲性が高く、矯正手術又は除去を必要と
する30%の有害事象率をもたらす。
【0007】
過活動膀胱は、切迫性尿失禁の有無にかかわらず、通常は頻尿及び夜間多尿症を伴う尿
意切迫感の下部尿路症状によって特徴付けられる慢性的状態である。過活動膀胱は、成人
における尿失禁又は膀胱制御の喪失の最も一般的な原因であり、米国では成人のおよそ3
300万、すなわち約17%に影響を及ぼしている。米国内の男女間の有病率は類似して
いるが(それぞれ16.0%と16.9%)、症状発現の重症度及び性質は異なり、女性
は、切迫性尿失禁のより高い発生率を示している。また、加齢と共に有病率も著しく増加
する。過活動膀胱は、患者が切迫性尿失禁の症状を示しているかどうかにかかわらず、患
者の健康に関連する生活の質、精神衛生、及び睡眠の質に顕著な影響を及ぼす。米国単独
で年間およそ12億ドルに推定される過活動膀胱の経済的負担もまた深刻である。過活動
膀胱は、腹圧性尿失禁とは異なるが、それらが一緒に発生する状況は通常、混合型尿失禁
として知られる。
【0008】
尿路上皮感覚系は、多数の受容体及びシグナル伝達経路で構成され、その多くは重要な
「対話」を呈している。尿路感覚系の複雑さに起因して、ダリフェナシンなどの選択剤は
、非特異性侵害刺激に続く尿路上皮感覚活性化を十分に調節しない場合がある。同様に、
抗ムスカリン及びカルシウムチャネル活性を呈するオキシブチニンなどの非特異的薬剤は
、相互収縮間隔によって測定されるように尿路上皮反応を阻害しないが、尿閉をもたらし
得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、過活動膀胱を含む下部尿路疾患のためのより多くのより良好な治療選択肢
が依然として必要とされている。望ましくは、このような治療は、薬物の全身投与、並び
に侵襲性が高く高価な外科的処置に関連付けられた1つ以上の問題に対処するであろう。
望ましくは、この治療はまた、痛みのある注射及び繰り返される自己カテーテル法の必要
性を回避又は低減するであろう。望ましくは、この治療は、持続可能な反応を生み出すで
あろう。
【0010】
本明細書において言及されている全ての発行物、特許、特許出願、及び公開出願の開示
は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書に、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間
、個体の膀胱に局所的に投与することを含む、過活動膀胱を有する個体の膀胱を訓練する
方法が提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書に、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間
、膀胱に局所的に投与することを含む、過活動膀胱を有する個体の症状緩和を延長する方
法が提供され、個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約24時間は症状の緩
和を経験する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間
、膀胱に局所的に投与することを含む、過活動膀胱を有する個体の生活の質を改善する方
法が提供され、個体の生活の質は、トロスピウムによる治療で改善される。
【0014】
上記の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、過活動膀胱を有する個体は、ト
ロスピウム投与が完了した後少なくとも約7日間は、ベースライン症状の約50%の緩和
を経験する。
【0015】
上述の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約4
2日間、膀胱に局所的に連続的に投与する。
【0016】
上述の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、本方法は、有効量のトロスピウ
ムを約3か月毎に又は必要に応じて(prn)膀胱に局所的に投与することを更に含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書に、有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間
、個体の膀胱に局所的に連続的に投与することを含む、過活動膀胱を治療する方法が提供
される。
【0018】
上述の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、トロスピウムを約56日間又は
約12週間連続的に投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約1
2週間連続的に投与する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書に、トロスピウムを少なくとも約24時間、膀胱に
連続的かつ局所的に投与することを含む、個体における過活動膀胱の維持療法の方法も提
供され、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けている。いくつかの実施形態では、有効量
のトロスピウムを3か月毎に少なくとも約24時間、膀胱に局所的に投与することを含む
。いくつかの実施形態では、維持療法は、有効量のトロスピウムを必要に応じて(prn
)少なくとも約24時間、膀胱に局所的に投与することを含む。いくつかの実施形態では
、症状再発時に、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、膀胱に局所的に投与す
ることを含む。いくつかの実施形態では、個体がベースライン症状の少なくとも50%の
再発を経験しているときに、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、膀胱に局所
的に投与することを含む。いくつかの実施形態では、先行治療は、有効量のトロスピウム
を少なくとも約24時間、少なくとも約42日間、少なくとも約56日間、又は少なくと
も約12週間、膀胱に局所的に投与することを含む。
【0020】
上述の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、膀胱内のトロスピウムの濃度は
、トロスピウムの投与中、約0.1~100μg/mLである。いくつかの実施形態では
、個体の血漿中のトロスピウムの濃度は、トロスピウムの投与中、約2ng/mL未満で
ある。
【0021】
上述の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、個体は特発性過活動膀胱を有す
る。
【0022】
上述の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、個体は、多発性硬化症、アルツ
ハイマー病、パーキンソン病を有するか、又は以前に脳卒中にかかったことがある。
【0023】
上述の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、個体は、過活動膀胱の先行治療
に失敗したことがある。
【0024】
上述の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、個体は、過活動膀胱の先行治療
を受けたことがない。
【0025】
上述の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、個体は、経口療法に失敗したか
、経口療法に適格でない。
【0026】
上述の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、個体は尿失禁又は切迫性尿失禁
を有する。
【0027】
上述の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、この方法は、神経リモデリング
又は神経回路網のリモデリングをもたらす。いくつかの実施形態では、切迫感、頻度、又
は尿失禁の症状緩和が達成される。いくつかの実施形態では、個体の生活の質スコアが改
善される。いくつかの実施形態では、個体の排尿負担感スコアは低減される。いくつかの
実施形態では、本方法は、異常な尿意を低減する。
【0028】
上述の方法のいずれかによるいくつかの実施形態では、トロスピウムを、膀胱内デバイ
スを使用することによって膀胱に投与する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
ここで図面を参照するが、図面は、例示的であり、限定するものではなく、同様の要素
には同様の番号が付されている。詳細な説明は、同じ参照番号の使用が類似又は同一の項
目を示す、本開示の実施例を示す添付図面を参照して記載される。本開示の特定の実施形
態は、図面に示されるもの以外の要素、成分、及び/又は構成を含むことができ、図面に
示される要素、成分、及び/又は構成のいくつかは、特定の実施形態において存在しなく
てよい。
図1A】拘束端部プラグを含むデバイスの弾性部分の一実施形態の断面側面図である。
図1B図1Aの実施形態の断面端面図である。
図1C】リザーバが浸透圧下にないときの図1Aのデバイスの断面側面図である。
図1D】リザーバが浸透圧下にあるときの図1Aのデバイスの断面側面図である。
図2】予備形成された側壁オリフィス及び2つの拘束端部プラグを有するデバイスの一実施形態の断面側面図である。
図3A】予備形成された側壁オリフィス及び2つの拘束端部プラグを有するデバイスの一実施形態の平面図である。
図3B図3Aの端部プラグのうちの1つの断面拡大図である。
図3C図3Bの端部プラグの分解斜視図である。
図4】薬剤送達デバイスの一実施形態の断面端面図である。
図5A】拘束プラグ及び予備形成された放出ポートを有する薬剤送達デバイスの一実施形態の平面図である。
図5B図5Aのデバイスの拡大断面図である。
図6A】拘束プラグ及び予備形成された放出ポートを有する薬剤送達デバイスの一実施形態の平面図である。
図6B図6Aのデバイスの拡大断面図である。
図7A】トロスピウム又は別の治療薬の局所的かつ連続的送達を提供するために使用され得る膀胱内デバイスを示す。図12Aは、平面図である。
図7B】トロスピウム又は別の治療薬の局所的かつ連続的送達を提供するために使用され得る膀胱内デバイスを示す。図12Bは、図12Aの線3-3で切断した断面図である。
図7C】トロスピウム又は別の治療薬の局所的かつ連続的送達を提供するために使用され得る膀胱内デバイスを示す。図12Cは、展開器具の作業チャネル内に配設されたデバイスの一端部の図であり、部分的断面図で示されている。
図8】TAR-302の挿入後の3、7、21、35、42、及び56日目に評価されたトロスピウムの1日尿中回収量を示す。
図9A】試験のスキーム(図9A)を示す。
図9B】TAR-302の挿入後0日目(ベースライン)、42日目、及び84日目に評価された平均1日失禁エピソード(図9B)と、を示す。
図10A】過活動膀胱治療の有効性を示す。図10Aは、TAR-302又はBotox(登録商標)治療後の投与終了時の経口不応性過活動膀胱患者における、1日切迫性尿失禁エピソードの変化を示す。
図10B】過活動膀胱治療の有効性を示す。図10Bは、TAR-302の処置後の経口不応性患者における1日切迫性尿失禁エピソードの低減と比較して、VESlcare(登録商標)(ソリフェナシンコハク酸塩)又はDetrol(登録商標)LA(トルテロジン酒石酸塩)治療後の経口不耐性過活動膀胱患者における1日切迫性尿失禁エピソードの低減を示す。
図11】TAR-302による治療前、TAR-302による投与終了時の42日目、及びTAR-302が除去されてから42日後の84日目に計算された、TAR-302を用いて治療された個体の排尿負担感スコアを示す。
図12】TAR-302による治療前、TAR-302による投与終了時の42日目、及びTAR-302が除去されてから42日後の84日目に計算された、TAR-302を用いて治療された個体の生活の質スコアを示す。
図13】悩みスコアを評価するための例示的なアンケートを示す。
図14】生活の質スコアを評価するための例示的なアンケートを示す。
図15A】試験のスキーム(図15A)を示す。
図15B】TAR-302の挿入後0日目(ベースライン)、14日目、56日目、及び84日目に評価された平均1日失禁エピソード(図15B)と、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本出願は、有効量のトロスピウムを、過活動膀胱を有する個体の膀胱内に局所的に(例
えば、膀胱内に)投与することが、長期的な症状緩和(例えば、尿失禁の低減)をもたら
し得るという出願人の印象的な発見に少なくとも部分的に基づく。第I相の臨床治験では
、一次作用様式が約42日間の膀胱へのトロスピウムの制御放出である受動的な非再吸収
性トロスピウム放出型膀胱内システム、TAR-302は、トロスピウムが膀胱に投与さ
れる42日中に尿失禁エピソードが低減しただけでなく、トロスピウム投与が終了してか
ら6週間の尿失禁エピソードも驚くほど有意に低減したことが示された。本発明の方法は
、膀胱内の局所的なより高い濃度のトロスピウムと共に副作用が低減されるなど、トロス
ピウムによる経口療法を含む、膀胱治療の以前の方法に勝る実質的な利益を有する。した
がって、いくつかの態様では、本発明は、特発性過活動膀胱を有し、経口療法に失敗した
ことがあり、かつ/又は重篤な再封止剤疾患を有する個体に特に好適である。いくつかの
態様では、本出願は、過活動膀胱を有する個体の膀胱を訓練又は再訓練する方法を提供す
る。いくつかの態様では、本出願は、過活動膀胱を有する個体の症状緩和を延長する方法
を提供する。いくつかの態様では、本出願は、過活動膀胱を有する個体における神経リモ
デリングの方法を提供する。いくつかの態様では、本出願は、過活動膀胱を有する個体に
おける生活の質を改善する方法を提供する。
【0031】
定義
本明細書で使用するとき、文脈上特に明記されない限り、単数形「a」、「an」及び
「the」は複数の指示物を含むものとする。例えば、「a」又は「an」は、「少なく
とも1つ」又は「1つ以上」を意味する。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「個体」は、ヒトなど哺乳類を指す。個体としては、ヒ
ト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、齧歯類、又は霊長類が挙げられるが、これらに限定されな
い。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「有効量」は、特定の障害、状態、又は疾患を治療する
、例えば、その症状のうちの1つ以上を改善する、緩和する、低減する、及び/又は遅延
させるなどに十分な化合物又は組成物の量を指す。
【0034】
本明細書において「約」値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体に関
する実施形態を含む(及び記載する)。例えば、「約7日」は、7日を含む。
【0035】
本明細書で使用される用語「約X~Y」は、「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様
に、本明細書で使用される「約XからYまで」は、「約Xから約Yまで」と同じ意味を有
する。
【0036】
本明細書で使用するとき、「治療」又は「治療すること」は、臨床結果を含む有益な又
は所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のための有益な又は所望の臨
床結果としては、限定するものではないが、疾患から生じる1つ以上の症状を緩和するこ
と、疾患の程度を減らすこと、疾患を安定化させる(例えば、疾患の悪化を防止又は遅延
させる)こと、疾患の再発を防止又は遅延させること、疾患の進行を遅らせる又は低速化
させること、疾患状態を寛解させること、疾患を治療するために必要な1つ以上の他の薬
剤の投与量を減少させること、疾患の進行を遅らせること、及び/又は生活の質を高める
若しくは改善することのうちの1つ以上が挙げられる。本発明の方法は、これらの治療態
様のうちのいずれか1つ以上を企図する。
【0037】
方法
一態様では、本出願は、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、個体の膀胱に
局所的に投与することを含む、過活動膀胱を有する個体の膀胱を訓練する(又は再訓練す
る)方法を提供する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約3、5、又
は7日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約2、3、4、
5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16週間投与する。い
くつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによって、トロスピウムを投
与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日~100mg/日、約1
mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg/日~8mg/日の用
量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの濃度は、トロスピウム投与
中、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、約2
μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/mL、又は約3μg/mL~
約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、トロスピウムを連続的に又は断続的に
投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱を有する個体は、トロスピウム投与が完
了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週間はベースライ
ン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。いくつかの実施形態では、個体は、過活
動膀胱の先行治療を受けている。いくつかの実施形態では、先行治療は経口療法である。
いくつかの実施形態では、個体は、先行治療に反応しないか又は先行治療に対して不応性
である。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は
、特発性過活動膀胱を有する。いくつかの実施形態では、個体は、多発性硬化症、アルツ
ハイマー病、パーキンソン病を有しているか、又は以前に脳卒中にかかったことがある。
【0038】
本出願はまた、有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間(例えば、約42、56
、70、又は84日間)個体の膀胱に局所的に投与することを含む、過活動膀胱を有する
個体の膀胱を訓練する(又は再訓練する)方法を提供する。いくつかの実施形態では、ト
ロスピウムを少なくとも約56日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを
少なくとも約100日間投与する。いくつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用
することによって、トロスピウムを投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを
約1mg/日~100mg/日、約1mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg
/日、約4mg/日~約8mg/日の用量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中ト
ロスピウムの濃度は、トロスピウムが投与されている間、約0.1μg/mL~約20μ
g/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3
μg/mL~約7μg/mL、又は約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの
実施形態では、トロスピウムを連続的に又は断続的に投与する。いくつかの実施形態では
、過活動膀胱を有する個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間
、3週間、4週間、5週間、又は6週間はベースライン症状の少なくとも約50%の緩和
を経験する。いくつかの実施形態では、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けている。い
くつかの実施形態では、先行治療は経口療法である。いくつかの実施形態では、個体は、
先行治療に反応しないか又は先行治療に対して不応性である。いくつかの実施形態では、
個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。いく
つかの実施形態では、個体は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有し
ているか、又は以前に脳卒中にかかったことがある。
【0039】
本出願はまた、有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間(例えば、約42、56
、70、又は84日間)個体の膀胱に局所的に投与することを含む、過活動膀胱を有する
個体の膀胱を訓練する(又は再訓練する)方法を提供し、個体は先行治療を受けたことが
あり、かつ個体は先行治療に対して不応性である。いくつかの実施形態では、トロスピウ
ムを少なくとも約56日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウム(tropsium
)を少なくとも約84日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくと
も約100日間投与する。いくつかの実施形態では、先行治療は経口療法である。いくつ
かの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによって、トロスピウムを投与す
る。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日~100mg/日、約1mg
/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg/日~約8mg/日の用量
で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの濃度は、トロスピウムが投与
されている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約10μg/
mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/mL、又は約3μ
g/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、トロスピウムを連続的に又
は断続的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱を有する個体は、トロスピウ
ム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週間は
ベースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。いくつかの実施形態では、個
体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつ
かの実施形態では、個体は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有して
いるか、又は以前に脳卒中にかかったことがある。
【0040】
別の態様では、本出願は、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、膀胱に局所
的に投与することを含む、過活動膀胱を有する個体の症状緩和を延長する方法を提供し、
個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約24時間は症状の緩和を経験する。
いくつかの実施形態では、切迫感、頻度、尿失禁及び/又は切迫性尿失禁の長期的な症状
緩和が達成される。いくつかの実施形態では、個体は、トロスピウム投与が完了した後少
なくとも約1、2、3、4、5、又は6週間は症状の緩和を経験する。いくつかの実施形
態では、トロスピウムを少なくとも約3、5、又は7日間投与する。いくつかの実施形態
では、トロスピウムを少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12
、13、14、15、又は16週間投与する。いくつかの実施形態では、膀胱内送達デバ
イスを使用することによって、トロスピウムを投与する。いくつかの実施形態では、トロ
スピウムを約1mg/日~100mg/日、約1mg/日~20mg/日、約2mg/日
~10mg/日、約4mg/日~約8mg/日の用量で投与する。いくつかの実施形態で
は、尿中トロスピウムの濃度は、トロスピウムが投与されている間、約0.1μg/mL
~約20μg/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、約2μg/mL~約8μg/
mL、約3μg/mL~約7μg/mL、又は約3μg/mL~約5μg/mLである。
いくつかの実施形態では、トロスピウムを連続的に又は断続的に投与する。いくつかの実
施形態では、過活動膀胱を有する個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約7
日、2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週間はベースライン症状の少なくとも約5
0%の緩和を経験する。いくつかの実施形態では、個体は、過活動膀胱の先行治療を受け
ている。いくつかの実施形態では、先行治療は経口療法である。いくつかの実施形態では
、個体は、先行治療に反応しないか、又は先行治療に対して不応性である。いくつかの実
施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を
有する。いくつかの実施形態では、個体は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキン
ソン病を有しているか、又は以前に脳卒中にかかったことがある。
【0041】
本出願はまた、有効量のトロスピウムを膀胱に局所的に少なくとも約42日間(例えば
、約42、56、70、又は84日間)にわたって投与することを含む、過活動膀胱を有
する個体の症状緩和を延長する方法を提供し、個体は、トロスピウム投与が完了した後少
なくとも約24時間にわたる症状の緩和を経験する。いくつかの実施形態では、切迫感、
頻度、尿失禁及び/又は切迫性尿失禁の長期的な症状緩和が達成される。いくつかの実施
形態では、個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約1、2、3、4、5、又
は6週間は症状の緩和を経験する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも
約56日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約84日間投
与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約100日間投与する。い
くつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによって、トロスピウムを投
与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日~100mg/日、約1
mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg/日~約8mg/日の
用量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの濃度は、トロスピウムが
投与されている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約10μ
g/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/mL、又は約
3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、トロスピウムを連続的
に又は断続的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱を有する個体は、トロス
ピウム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週
間はベースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。いくつかの実施形態では
、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けている。いくつかの実施形態では、先行治療は経
口療法である。いくつかの実施形態では、個体は、先行治療に反応しないか又は先行治療
に対して不応性である。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形
態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつかの実施形態では、個体は、多発性
硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有しているか、又は以前に脳卒中にかかっ
たことがある。
【0042】
本出願はまた、有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間(例えば、約42、56
、70、又は84日間)膀胱に局所的に投与することを含む、過活動膀胱を有する個体の
症状緩和を延長する方法を提供し、個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約
24時間(例えば、トロスピウム投与の完了後少なくとも約2、5、7、10、15、2
0、25、30、35、40日間)は症状の緩和を経験し、個体は先行治療を受けたこと
があり、かつ個体は先行治療に対して不応性である。いくつかの実施形態では、切迫感、
頻度、尿失禁及び/又は切迫性尿失禁の長期的な症状緩和が達成される。いくつかの実施
形態では、個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約1、2、3、4、5、又
は6週間は症状の緩和を経験する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも
約56日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約84日間投
与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約100日間投与する。い
くつかの実施形態では、先行治療は経口療法である。いくつかの実施形態では、膀胱内送
達デバイスを使用することによって、トロスピウムを投与する。いくつかの実施形態では
、トロスピウムを約1mg/日~100mg/日、約1mg/日~20mg/日、約2m
g/日~10mg/日、約4mg/日~約8mg/日の用量で投与する。いくつかの実施
形態では、尿中トロスピウムの濃度は、トロスピウムが投与されている間、約0.1μg
/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、約2μg/mL~約8
μg/mL、約3μg/mL~約7μg/mL、又は約3μg/mL~約5μg/mLで
ある。いくつかの実施形態では、トロスピウムを連続的に又は断続的に投与する。いくつ
かの実施形態では、過活動膀胱を有する個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくと
も約7日、2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週間はベースライン症状の少なくと
も約50%の緩和を経験する。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの
実施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつかの実施形態では、個体は、
多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有しているか、又は以前に脳卒中に
かかったことがある。
【0043】
別の態様では、本出願は、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、膀胱に局所
的に投与することを含む、過活動膀胱を有する個体における神経リモデリングの方法を提
供し、神経リモデリングは、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約24時間(トロ
スピウム投与の完了後少なくとも約2、5、7、10、15、20、25、30、35、
40日間など)持続する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約3、5
、又は7日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約2、3、
4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16週間投与する
。いくつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによって、トロスピウム
を投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日~100mg/日、
約1mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg/日~約8mg/
日の用量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの濃度は、トロスピウ
ムが投与されている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約1
0μg/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/mL、又
は約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、トロスピウムを連
続的に又は断続的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱を有する個体は、ト
ロスピウム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4週間、5週間、又は
6週間はベースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。いくつかの実施形態
では、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けている。いくつかの実施形態では、先行治療
は経口療法である。いくつかの実施形態では、個体は、先行治療に反応しないか又は先行
治療に対して不応性である。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実
施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつかの実施形態では、個体は、多
発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有しているか、又は以前に脳卒中にか
かったことがある。
【0044】
別の態様では、本出願は、有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間(例えば、約
42、56、70、又は84日間)膀胱に局所的に投与することを含む、過活動膀胱を有
する個体における神経リモデリングの方法を提供し、神経リモデリングは、トロスピウム
投与が完了した後少なくとも約24時間(トロスピウム投与の完了後約2、5、7、10
、15、20、25、30、35、40日間など)持続する。いくつかの実施形態では、
トロスピウムを少なくとも約56日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウム
を少なくとも約84日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも
約100日間投与する。いくつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することに
よって、トロスピウムを投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/
日~100mg/日、約1mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4
mg/日~約8mg/日の用量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウム
の濃度は、トロスピウムが投与されている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、
約1μg/mL~約10μg/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL
~約7μg/mL、又は約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態で
は、トロスピウムを連続的に又は断続的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀
胱を有する個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、
4週間、5週間、又は6週間はベースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する
。いくつかの実施形態では、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けている。いくつかの実
施形態では、先行治療は経口療法である。いくつかの実施形態では、個体は、先行治療に
反応しないか又は先行治療に対して不応性である。いくつかの実施形態では、個体はヒト
である。いくつかの実施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつかの実施
形態では、個体は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有しているか、
又は以前に脳卒中にかかったことがある。
【0045】
別の態様では、本出願は、有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間(例えば、約
42、56、70、又は84日間)膀胱に局所的に投与することを含む、過活動膀胱を有
する個体における神経リモデリングの方法を提供し、神経リモデリングは、トロスピウム
投与が完了した後少なくとも約24時間(例えば、トロスピウム投与の完了後少なくとも
約2、5、7、10、15、20、25、30、35、40日間)持続し、個体は先行治
療を受けており、かつ個体は先行治療に対して不応性である。いくつかの実施形態では、
トロスピウムを少なくとも約56日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウム
を少なくとも約56日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも
約100日間投与する。いくつかの実施形態では、先行治療は経口療法である。いくつか
の実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによって、トロスピウムを投与する
。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日~100mg/日、約1mg/
日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg/日~約8mg/日の用量で
投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの濃度は、トロスピウムが投与さ
れている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約10μg/m
L、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/mL、又は約3μg
/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、トロスピウムを連続的に又は
断続的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱を有する個体は、トロスピウム
投与が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週間はベ
ースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。いくつかの実施形態では、個体
はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつか
の実施形態では、個体は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有してい
るか、又は以前に脳卒中にかかったことがある。
【0046】
別の態様では、本出願は、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、膀胱に局所
的に投与することを含む、過活動膀胱を有する個体における生活の質を改善する方法を提
供し、個体の生活の質は、トロスピウム投与が完了してから約24時間後に改善される。
いくつかの実施形態では、個体は、改善された生活の質スコアを有する。いくつかの実施
形態では、個体は、低減された排尿負担感スコアを有する。いくつかの実施形態では、ト
ロスピウムを少なくとも約56日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを
少なくとも約84日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約
100日間投与する。いくつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによ
って、トロスピウムを投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日
~100mg/日、約1mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4m
g/日~約8mg/日の用量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの
濃度は、トロスピウムが投与されている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約
1μg/mL~約10μg/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~
約7μg/mL、又は約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では
、トロスピウムを連続的に又は断続的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱
を有する個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4
週間、5週間、又は6週間はベースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。
いくつかの実施形態では、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けている。いくつかの実施
形態では、先行治療は経口療法である。いくつかの実施形態では、個体は、先行治療に反
応しないか又は先行治療に対して不応性である。いくつかの実施形態では、個体はヒトで
ある。いくつかの実施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつかの実施形
態では、個体は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有しているか、又
は以前に脳卒中にかかったことがある。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱内デバイ
スを有している。
【0047】
別の態様では、本出願は、有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間(例えば、約
42、56、70、又は84日間)膀胱に局所的に投与することを含む、過活動膀胱を有
する個体における生活の質の改善の方法を提供し、生活の質は、トロスピウム投与が完了
した後少なくとも約24時間(トロスピウム投与の完了後約2、5、7、10、15、2
0、25、30、35、40日間など)改善される。いくつかの実施形態では、個体は、
改善された生活の質スコアを有する。いくつかの実施形態では、個体は、低減された排尿
負担感スコアを有する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約56日間
投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約84日間投与する。い
くつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約100日間投与する。いくつかの実
施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによって、トロスピウムを投与する。い
くつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日~100mg/日、約1mg/日~
20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg/日~約8mg/日の用量で投与
する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの濃度は、トロスピウムが投与されて
いる間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、
約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/mL、又は約3μg/m
L~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、トロスピウムを連続的に又は断続
的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱を有する個体は、トロスピウム投与
が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週間はベース
ライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。いくつかの実施形態では、個体は、
過活動膀胱の先行治療を受けている。いくつかの実施形態では、先行治療は経口療法であ
る。いくつかの実施形態では、個体は、先行治療に反応しないか又は先行治療に対して不
応性である。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個
体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつかの実施形態では、個体は、多発性硬化症、ア
ルツハイマー病、パーキンソン病を有しているか、又は以前に脳卒中にかかったことがあ
る。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱内デバイスを有している。
【0048】
別の態様では、本出願は、有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間(例えば、約
42、56、70、又は84日間)膀胱に局所的に投与することを含む、過活動膀胱を有
する個体における生活の質の改善の方法を提供し、生活の質は、トロスピウム投与が完了
してから少なくとも約24時間後に改善され、個体は、先行治療に対して不応性である。
いくつかの実施形態では、個体は、改善された生活の質スコアを有する。いくつかの実施
形態では、個体は、低減された排尿負担感スコアを有する。いくつかの実施形態では、ト
ロスピウムを少なくとも約56日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを
少なくとも約84日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約
100日間投与する。いくつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによ
って、トロスピウムを投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日
~100mg/日、約1mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4m
g/日~約8mg/日の用量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの
濃度は、トロスピウムが投与されている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約
1μg/mL~約10μg/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~
約7μg/mL、又は約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では
、トロスピウムを連続的に又は断続的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱
を有する個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4
週間、5週間、又は6週間はベースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。
いくつかの実施形態では、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けている。いくつかの実施
形態では、先行治療は経口療法である。いくつかの実施形態では、個体は、先行治療に反
応しないか又は先行治療に対して不応性である。いくつかの実施形態では、個体はヒトで
ある。いくつかの実施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつかの実施形
態では、個体は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有しているか、又
は以前に脳卒中にかかったことがある。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱内デバイ
スを有している。
【0049】
また、本明細書には、有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間(例えば、約42
、56、70、又は84日間)膀胱に局所的に投与することを含む、個体における生活の
質スコアを高める方法も提供され、生活の質は、トロスピウム投与が完了してから少なく
とも約24時間後に改善される。いくつかの実施形態では、生活の質の改善は、改善され
た生活の質スコアとして測定される。いくつかの実施形態では、生活の質の改善は、低減
された排尿負担感スコアとして測定される。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少
なくとも約56日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約8
4日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約100日間投与
する。いくつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによって、トロスピ
ウムを投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日~100mg/
日、約1mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg/日~約8m
g/日の用量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの濃度は、トロス
ピウムが投与されている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~
約10μg/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/mL
、又は約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、トロスピウム
を連続的に又は断続的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱を有する個体は
、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4週間、5週間、
又は6週間はベースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。いくつかの実施
形態では、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けている。いくつかの実施形態では、先行
治療は経口療法である。いくつかの実施形態では、個体は、先行治療に反応しないか又は
先行治療に対して不応性である。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつか
の実施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつかの実施形態では、個体は
、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有しているか、又は以前に脳卒中
にかかったことがある。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱内デバイスを有している
【0050】
本明細書では、有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間(例えば、約42、56
、70、84日間)膀胱に局所的に投与することを含む、個体における排尿負担感スコア
を低減する方法が提供され、生活の質は、トロスピウム投与が完了してから少なくとも約
24時間後に改善される。いくつかの実施形態では、生活の質の改善は、改善された生活
の質スコアとして測定される。いくつかの実施形態では、生活の質の改善は、低減された
排尿負担感スコアとして測定される。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくと
も約56日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約84日間
投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約100日間投与する。
いくつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによって、トロスピウムを
投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日~100mg/日、約
1mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg/日~約8mg/日
の用量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの濃度は、トロスピウム
が投与されている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約10
μg/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/mL、又は
約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少な
くとも約84日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを連続的に又は断続
的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱を有する個体は、トロスピウム投与
が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週間はベース
ライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。いくつかの実施形態では、個体は、
過活動膀胱の先行治療を受けている。いくつかの実施形態では、先行治療は経口療法であ
る。いくつかの実施形態では、個体は、先行治療に反応しないか又は先行治療に対して不
応性である。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個
体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつかの実施形態では、個体は、多発性硬化症、ア
ルツハイマー病、パーキンソン病を有しているか、又は以前に脳卒中にかかったことがあ
る。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱内デバイスを有している。
【0051】
別の態様では、本出願は、有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間(例えば、約
42、56、70、又は84日間)個体の膀胱に局所的に連続的に投与することを含む、
過活動膀胱を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なく
とも約56日間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約84日
間投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約100日間投与する
。いくつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによって、トロスピウム
を投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日~100mg/日、
約1mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg/日~約8mg/
日の用量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの濃度は、トロスピウ
ムが投与されている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約1
0μg/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/mL、又
は約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、トロスピウムを連
続的に又は断続的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱を有する個体は、ト
ロスピウム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4週間、5週間、又は
6週間はベースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。いくつかの実施形態
では、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けている。いくつかの実施形態では、先行治療
は経口療法である。いくつかの実施形態では、個体は、先行治療に反応しないか又は先行
治療に対して不応性である。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実
施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつかの実施形態では、個体は、多
発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有しているか、又は以前に脳卒中にか
かったことがある。
【0052】
別の態様では、本出願は、有効量のトロスピウムを少なくとも約42日間(例えば、約
42、56、70、又は84日間)個体の膀胱に局所的に連続的に投与することを含む、
過活動膀胱を治療する方法を提供し、個体は先行治療を受け、かつ個体は先行治療に対し
て不応性である。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約56日間投与す
る。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約84日間投与する。いくつか
の実施形態では、トロスピウムを少なくとも約100日間投与する。いくつかの実施形態
では、先行治療は経口療法である。いくつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用
することによって、トロスピウムを投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを
約1mg/日~100mg/日、約1mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg
/日、約4mg/日~約8mg/日の用量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中ト
ロスピウムの濃度は、トロスピウムが投与されている間、約0.1μg/mL~約20μ
g/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3
μg/mL~約7μg/mL、又は約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの
実施形態では、トロスピウムを連続的に又は断続的に投与する。いくつかの実施形態では
、過活動膀胱を有する個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間
、3週間、4週間、5週間、又は6週間はベースライン症状の少なくとも約50%の緩和
を経験する。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個
体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつかの実施形態では、個体は、多発性硬化症、ア
ルツハイマー病、パーキンソン病を有しているか、又は以前に脳卒中にかかったことがあ
る。
【0053】
別の態様では、本出願は、トロスピウムを少なくとも約24時間、膀胱に連続的かつ局
所的に投与することを含む、個体における過活動膀胱の維持療法の方法が提供され、個体
は、過活動膀胱の先行治療を受けたことがある。いくつかの実施形態では、有効量のトロ
スピウムを3か月毎に少なくとも約24時間、膀胱に局所的に投与することを含む。いく
つかの実施形態では、維持期間は、有効量のトロスピウムを必要に応じて(prn)少な
くとも約24時間、膀胱に局所的に投与することを含む。いくつかの実施形態では、症状
再発時に、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、膀胱に局所的に投与すること
を含む。いくつかの実施形態では、個体がベースライン症状の少なくとも50%の再発を
経験しているときに、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、膀胱に局所的に投
与することを含む。いくつかの実施形態では、先行治療は、有効量のトロスピウムを少な
くとも約24時間、少なくとも約42日間、少なくとも約56日間、又は少なくとも約8
4日間、膀胱に局所的に投与することを含む。いくつかの実施形態では、先行治療は経口
療法である。いくつかの実施形態では、個体は、先行治療に対して不応性である。いくつ
かの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによって、トロスピウムを投与す
る。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日~100mg/日、約1mg
/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg/日~約8mg/日の用量
で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの濃度は、トロスピウムが投与
されている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約10μg/
mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/mL、又は約3μ
g/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、トロスピウムを連続的に又
は断続的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱を有する個体は、トロスピウ
ム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週間は
ベースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。いくつかの実施形態では、個
体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。いくつ
かの実施形態では、個体は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病を有して
いるか、又は以前に脳卒中にかかったことがある。
【0054】
本明細書には、トロスピウムをprnで(必要に応じて)、少なくとも約24時間、膀
胱に連続的かつ局所的に投与することを含む、個体における過活動膀胱の維持療法の方法
が提供され、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けたことがある。いくつかの実施形態で
は、維持療法は、トロスピウムを少なくとも約42日間、少なくとも約56日間、又は少
なくとも約84日間、膀胱に局所的に投与することを含む。いくつかの実施形態では、先
行治療は経口療法である。いくつかの実施形態では、先行治療は、膀胱へのトロスピウム
の局所投与を含む。いくつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによっ
て、トロスピウムを投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日~
100mg/日、約1mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg
/日~約8mg/日の用量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの濃
度は、トロスピウムが投与されている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1
μg/mL~約10μg/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約
7μg/mL、又は約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、
トロスピウムを連続的に又は断続的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱を
有する個体は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4週
間、5週間、又は6週間はベースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。い
くつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、特発性過
活動膀胱を有する。いくつかの実施形態では、個体は、多発性硬化症、アルツハイマー病
、パーキンソン病を有しているか、又は以前に脳卒中にかかったことがある。
【0055】
また、本明細書には、トロスピウムを3か月毎に少なくとも約24時間、膀胱に連続的
かつ局所的に投与することを含む、個体における過活動膀胱の維持療法の方法が提供され
、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けたことがある。いくつかの実施形態では、維持療
法は、トロスピウムを少なくとも約42日間、少なくとも約56日間、又は少なくとも約
84日間、膀胱に局所的に投与することを含む。いくつかの実施形態では、先行治療は経
口療法である。いくつかの実施形態では、先行治療は、膀胱へのトロスピウムの局所投与
を含む。いくつかの実施形態では、膀胱内送達デバイスを使用することによって、トロス
ピウムを投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約1mg/日~100mg
/日、約1mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg/日~約8
mg/日の用量で投与する。いくつかの実施形態では、尿中トロスピウムの濃度は、トロ
スピウムが投与されている間、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL
~約10μg/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/m
L、又は約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、トロスピウ
ムを連続的に又は断続的に投与する。いくつかの実施形態では、過活動膀胱を有する個体
は、トロスピウム投与が完了した後少なくとも約7日、2週間、3週間、4週間、5週間
、又は6週間はベースライン症状の少なくとも約50%の緩和を経験する。いくつかの実
施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を
有する。いくつかの実施形態では、個体は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキン
ソン病を有しているか、又は以前に脳卒中にかかったことがある。
【0056】
トロスピウム
トロスピウムは、ムスカリン様受容体アンタゴニストである。過活動膀胱の治療に使用
することが知られており、経口投与用に製剤化されている(例えば、Sanctura(
商標)(Allergan))。他の経口ムスカリン様受容体アンタゴニストと同様に、
患者は、多くの場合、用量制限的な副作用又は有効性の不適切さを経験する。本出願では
、トロスピウムは局所送達用に製剤化される。本明細書に記載されるように、採用される
送達機構に応じて、固体若しくは半固体形態又は液体形態で提供されてもよい。本明細書
に記載されるいくつかの実施形態、デバイス、及びシステムでは、トロスピウムは、トロ
スピウムの薬剤として許容される塩の形態で提供される。いくつかの実施形態では、トロ
スピウムの薬剤として許容される塩は、トロスピウム塩化物である。いくつかの実施形態
では、限定するものではないが、多形体、水和物などを含む他の好適な形態のトロスピウ
ムが使用される。
【0057】
いくつかの実施形態では、トロスピウムは、化合物3-(2-ヒドロキシ-2,2-ジ
フェニルアセトキシ)スピロ[ビシクロ[3.2.1]オクタン-8,1’ピロリジン]
-1’-イウムクロリド及びその任意の薬剤として許容される塩である。化学式は、式I
で与えられる。
【0058】
【化1】
【0059】
投薬レジメン
以下のセクションは、投与及び治療レジメンの様々な態様(実施形態)を記載し、その
全てがもれなく、本明細書に記載の方法に適用される。
【0060】
様々な実施形態では、トロスピウムを治療期間にわたって約0.075mg/日~約1
50mg/日、例えば、約0.15mg/日~150mg/日、約1mg/日~100m
g/日、約1mg/日~20mg/日、約2mg/日~10mg/日、約4mg/日~約
8mg/日の投与量で、膀胱に局所的に(例えば、膀胱内に)投与する。いくつかの実施
形態では、トロスピウムを治療期間にわたって約60mg/日、40mg/日、20mg
/日、15mg/日、10mg/日、又は8mg/日以下の投与量で、膀胱に局所的に(
例えば、膀胱内に)投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約0.1mg/
日、0.5mg/日、1mg/日、2mg/日、3mg/日、又は4mg/日以下の投与
量で、膀胱に局所的に(例えば、膀胱内に)投与する。
【0061】
いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約24時間、2日間、3日間、4
日間、5日間、6日間、又は7日間、個体の膀胱に局所的に(例えば、膀胱内に)投与す
る。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約1、2、3、4、5、6、7
、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16時間、個体の膀胱に局所的に
(例えば、膀胱内に)投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約
6週間、又は42日間、個体の膀胱に局所的に(例えば、膀胱内に)投与する。いくつか
の実施形態では、トロスピウムを少なくとも約8週間、又は56日間、個体の膀胱に局所
的に(例えば、膀胱内に)投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくと
も約12週間、又は84日間、膀胱に局所的に投与する。いくつかの実施形態では、トロ
スピウムを少なくとも約16週間、又は112日間、個体の膀胱に局所的に(例えば、膀
胱内に)投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約1、2、3、
4、5、6、7、8、9、10、11、又は12か月間、個体の膀胱に局所的に(例えば
、膀胱内に)投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを少なくとも約10、2
0、30、40、50、60、70、80、90、又は100日間、個体の膀胱に局所的
に(例えば、膀胱内に)投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを約7日間、
14日間、21日間、28日間、35日間、42日間、49日間、56日間、63日間、
70日間、7784日間、91日間、98日間、105日間、又は112日間、個体の膀
胱に局所的に(例えば、膀胱内に)投与する。
【0062】
いくつかの実施形態では、トロスピウムを1、2、3、4、5、又は6週間毎に少なく
とも約24時間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、又は7日間、個体の膀胱に
局所的に(例えば、膀胱内に)投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを1、
2、3、4、5、又は6か月毎に少なくとも約24時間、2日間、3日間、4日間、5日
間、6日間、又は7日間、個体の膀胱に局所的に(例えば、膀胱内に)投与する。いくつ
かの実施形態では、トロスピウムを1、2、3、4、5、又は6か月毎に少なくとも約1
週間、2週間、3週間、又は4週間、個体の膀胱に局所的に(例えば、膀胱内に)投与す
る。いくつかの実施形態では、トロスピウムを2、3、4、5、又は6か月毎に少なくと
も約5週間又は6週間、個体の膀胱に局所的に(例えば、膀胱内に)投与する。
【0063】
いくつかの実施形態では、トロスピウムを平均量1mg/日~100mg/日、例えば
1mg/日~20mg/日、2mg/日~10mg/日、4mg/日~約8mg/日で最
大約7、14、21、28、35、42日間、49日間、56日間、63日間、70日間
、77日間、84日間、91日間、98日間、105日間、又は112日間、個体の膀胱
に局所的に(例えば、膀胱内に)投与する。いくつかの実施形態では、トロスピウムを平
均量1mg/日~100mg/日、例えば1mg/日~20mg/日、2mg/日~10
mg/日、4mg/日~約8mg/日で最大約6、7、8、9、10、11、又は12か
月間、個体の膀胱に局所的に(例えば、膀胱内に)投与する。
【0064】
いくつかの実施形態では、トロスピウムを平均量約10mg/日で約40~45日間(
約42日間など)個体の膀胱に局所的に(例えば、膀胱内に)投与する。いくつかの実施
形態では、トロスピウムを平均量約10mg/日で約80~87日間(約84日間など)
個体の膀胱に局所的に(例えば、膀胱内に)投与する。いくつかの実施形態では、トロス
ピウムを1回のみ投与する。
【0065】
いくつかの実施形態では、尿中のトロスピウムの濃度は、トロスピウムが投与されてい
る間、約又は少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、
6、7、又は8μg/mLである。いくつかの実施形態では、尿中のトロスピウムの濃度
は、トロスピウムが投与されている間、約2~3μg/mL、約3~4μg/mL、約4
~5μg/mL、約5~6μg/mL、又は約6~7μg/mLである。いくつかの実施
形態では、尿中のトロスピウムの濃度は、トロスピウムが投与されている間、約0.01
~約100μg/mL、例えば、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/m
L~約10μg/mL、約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/
mL、又は約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、尿中のト
ロスピウムの濃度は、トロスピウムが投与されている間、少なくとも約0.01、0.1
、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10μg/mLである。いくつかの実施形
態では、尿中のトロスピウムの平均濃度は、トロスピウムが投与されている間、約0.0
1~約100μg/mL、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約
10μg/mL、又は約2μg/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/m
L、又は約3μg/mL~約5μg/mLである。いくつかの実施形態では、トロスピウ
ムの血漿濃度は、約2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3
、0.2、又は0.1ng/mL未満である。いくつかの実施形態では、トロスピウムの
血漿濃度は、約0.7ng/mL未満である。いくつかの実施形態では、トロスピウムの
血漿濃度は、検出不可能である。
【0066】
いくつかの実施形態では、トロスピウムを、膀胱内送達デバイスを介して膀胱に投与す
る。いくつかの実施形態では、デバイスは、約100mg~2000mgのトロスピウム
(例えば、約200mg~約1600mg、約400mg~約1200mg、約600m
g~約1000mg、約700mg~約900mg、又は約850mgのトロスピウム)
の量を含有する。いくつかの実施形態では、デバイスは、少なくとも約1、2、3、4、
5、又は6週間、個体に保持される。いくつかの実施形態では、デバイスは、少なくとも
約8、10、又は12週間、個体に保持される。いくつかの実施形態では、デバイスは、
約850mgの量のトロスピウムを含み、約42日間、個体に保持される。いくつかの実
施形態では、デバイスは、約850mgの量のトロスピウムを含み、約84日間、個体に
保持される。
【0067】
いくつかの実施形態では、本方法は、有効量のトロスピウムを、先行治療の後に定期的
に、個体の膀胱内に局所的に(例えば、膀胱内に)投与することを含む、維持療法を含む
。いくつかの実施形態では、維持療法は、トロスピウムを必要に応じて投与することを含
む。いくつかの実施形態では、維持療法は、毎月、隔月、又は3か月毎に投与することを
含む。いくつかの実施形態では、維持療法は、トロスピウムを1年当たり1、2、3、4
、5、6、7、8、9、10、11、又は12回以下投与することを含む。いくつかの実
施形態では、維持療法は、個体及び医師によって合意されたスケジュールでトロスピウム
を投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持療法は、過活動膀胱の症状が戻る
ことが予想されるときに、トロスピウムを投与することを含む。いくつかの実施形態では
、維持療法は、症状再発時、例えば、ベースライン症状において少なくとも約10%、2
0%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%の再発が生じたと
きに、トロスピウムを投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持期間は、トロ
スピウムを少なくとも約24時間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、又は7日
間投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持期間は、トロスピウムを少なくと
も約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は
16週間投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持療法は、トロスピウムを少
なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12か月間投与する
ことを含む。いくつかの実施形態では、維持療法は、トロスピウムを少なくとも約10、
20、30、40、50、60、70、80、90、又は100日間投与することを含む
。いくつかの実施形態では、維持療法は、トロスピウムを約7日間、14日間、21日間
、28日間、35日間、42日間、49日間、56日間、63日間、70日間、77日間
、84日間、91日間、98日間、105日間、又は112日間投与することを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、先行治療は、抗ムスカリン剤を投与することを含む。いくつ
かの実施形態では、抗ムスカリン剤を個体の膀胱(例えば、膀胱内)に局所的に投与する
。いくつかの実施形態では、抗ムスカリン剤は、個体に局所治療で経口投与される。いく
つかの実施形態では、抗ムスカリン剤はトロスピウムである。いくつかの実施形態では、
先行治療は、抗コリン剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、先行治療は、
トロスピウムを約42日間又は約56日間、膀胱に局所的に投与することを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、維持療法は、先行治療の完了の直後又は24時間以内に開始
される。いくつかの実施形態では、維持療法は、先行治療が完了した後少なくとも約1、
2、3、4、5、6、又は7日後に開始される。いくつかの実施形態では、維持療法は、
先行治療が完了した後少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、
又は12週間後に開始される。いくつかの実施形態では、維持療法は、先行治療が完了し
た後少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12か月後に開始され
る。
【0070】
いくつかの実施形態では、尿中のトロスピウムの濃度は、先行治療及び/又は維持療法
期間中、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、
7、又は8μg/mLである。いくつかの実施形態では、尿中のトロスピウムの濃度は、
先行治療及び/又は維持期間中、約0.01μg/mL~約100μg/mL、例えば、
約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、約2μg
/mL~約8μg/mL、約3μg/mL~約7μg/mLである。いくつかの実施形態
では、尿中のトロスピウムの平均濃度は、先行治療及び/又は維持療法期間中、少なくと
も約0.01、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10μg/mLであ
る。いくつかの実施形態では、尿中のトロスピウムの平均濃度は、先行治療及び/又は維
持療法期間中、約0.01μg/mL~約100μg/mL、約0.1μg/mL~約2
0μg/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、又は約3μg/mL~約8μg/m
Lである。
【0071】
いくつかの実施形態では、トロスピウムを連続的に投与する。いくつかの実施形態では
、トロスピウムを断続的に投与する。
【0072】
いくつかの実施形態では、膀胱内デバイスを介してトロスピウムを投与し、膀胱内デバ
イスは、少なくとも約24時間、例えば、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8
、9、10、11、又は12週間などの期間にわたって膀胱内に滞留する。いくつかの実
施形態では、膀胱内デバイスは、少なくとも約1、2、3、4、5、又は6か月間、膀胱
内に滞留する。様々な実施形態では、膀胱内デバイスは、約24時間~約6か月、例えば
、約24時間~7日間、約24時間~2週間、約24時間~4週間、約24時間~6週間
、約24時間~8週間、約24時間~10週間、約24時間~12週間などの期間にわた
って、持続的で治療に有効なトロスピウムの濃度を生成する膀胱内トロスピウムの濃度を
達成するために、連続的又は断続的にトロスピウムを放出してよい。いくつかの実施形態
では、トロスピウムを約42日間、膀胱に投与する。いくつかの実施形態では、トロスピ
ウムを約56日間又は112日間、膀胱に投与する。
【0073】
いくつかの実施形態では、デバイス留置時間中のトロスピウムの平均全日尿回収量は、
少なくとも約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、又は3mg/日である。いくつ
かの実施形態では、デバイス留置時間中のトロスピウムの平均全日尿中回収量は、約30
、18、15、12、10、9、又は8mg/日以下である。いくつかの実施形態では、
デバイス留置時間中のトロスピウムの平均全日尿中回収量は、約0.1mg/日~約30
mg/日、約1mg/日~約25mg/日、約2mg/日~約10mg/日、約3mg/
日~約9mg/日である。
【0074】
患者集団
本明細書に記載の方法で治療された個体は、哺乳類であり得る。いくつかの実施形態で
は、個体はヒトである。
【0075】
いくつかの実施形態では、個体は、特発性過活動膀胱を有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けたことがある。いくつ
かの実施形態では、個体は、先行治療に不応性である。いくつかの実施形態では、個体は
、不応性の過活動膀胱を有する。いくつかの実施形態では、個体は、重篤な過活動膀胱を
有する。いくつかの実施形態では、個体は、先行治療に反応しない。いくつかの実施形態
では、個体は、先行治療を進行中である。いくつかの実施形態では、個体は、先行治療の
完了時にベースライン症状の再発を有し、例えば、個体は、ベースライン症状において少
なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は9
0%の再発を有する。いくつかの実施形態では、先行治療は経口療法である。いくつかの
実施形態では、先行治療は局所療法である。いくつかの実施形態では、先行治療は、抗ム
スカリン剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、薬剤は、Botox(登録
商標)、VESlcare(登録商標)(ソリフェナシンコハク酸塩)、及びDetro
l(登録商標)LA(トルテロジン酒石酸塩)からなる群から選択される。いくつかの実
施形態では、先行治療は、抗コリン剤を投与することを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、個体は、過活動膀胱の先行治療を受けたことがない。
【0078】
いくつかの実施形態では、個体は経口治療に適格ではない。例えば、個体は、治療から
の副作用に耐えることができない。いくつかの実施形態では、個体は老齢又は虚弱である
。いくつかの実施形態では、経口治療は抗コリン剤を含む。いくつかの実施形態では、経
口治療は抗ムスカリン剤を含む。いくつかの実施形態では、薬剤は、Botox(登録商
標)、VESlcare(登録商標)(ソリフェナシンコハク酸塩)、及びDetrol
(登録商標)LA(トルテロジン酒石酸塩)からなる群から選択される。
【0079】
いくつかの実施形態において、個体は神経学的状態を有する。いくつかの実施形態では
、神経学的状態は多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、神経学的状態はパーキ
ンソン病である。いくつかの実施形態では、神経学的状態はアルツハイマー病である。い
くつかの実施形態では、個体は脳卒中にかかったことがある。
【0080】
いくつかの実施形態では、個体は、優勢な衝動成分を有する過活動膀胱の症状を有し、
例えば、過活動膀胱の症状の50%超が(頻度とは対照的に)切迫性に関連付けられてい
る。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、
9、10、11、又は12週間に及ぶ、優勢な衝動成分を有する過活動膀胱の症状を有す
る。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10
、11、又は12か月間に及ぶ、優勢な衝動成分を有する過活動膀胱の症状を有する。い
くつかの実施形態では、個体は、24時間当たり約4、5、6、7、8回又はそれ以上の
排尿回数を有する。いくつかの実施形態では、個体は、3日間日記において切迫性に関連
付けられた少なくとも約2、3、4、5、又は6つの尿失禁エピソードを有する。いくつ
かの実施形態では、個体は、24時間毎又は1日当たりに発生する少なくとも1、2、又
は3つのエピソードを有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、個体は、尿失禁又は切迫性尿失禁を有する。
【0082】
いくつかの実施形態では、個体は、約300mL未満(約300mL、250mL、2
00mL、150mL、又は100mL未満など)の排尿後残留量(PVR)を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、個体は女性である。いくつかの実施形態では、個体は男性で
ある。
【0084】
いくつかの実施形態では、個体は約40~約70歳である。いくつかの実施形態では、
個体は、少なくとも約40、45、50、55、60、65、又は70歳である。いくつ
かの実施形態では、個体は、約70、65、60、55、50、45、又は40歳以下で
ある。
【0085】
過活動膀胱
いくつかの実施形態では、過活動膀胱は神経学的状態に関連付けられる。いくつかの実
施形態では、神経学的状態は多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、神経学的状
態はパーキンソン病である。いくつかの実施形態では、神経学的状態はアルツハイマー病
である。いくつかの実施形態では、神経学的状態は以前の脳卒中である。
【0086】
いくつかの実施形態では、過活動膀胱は神経学的状態に関連付けられない。
【0087】
エンドポイント
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、過活動膀胱を有する個体の症
状緩和を延長し、トロスピウムを少なくとも約24時間膀胱に局所的に送達することを含
む。いくつかの実施形態では、個体は、トロスピウムの投与中又はその完了後に、ベース
ライン症状の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、
80%、又は90%の緩和を経験する。いくつかの実施形態では、症状緩和は、切迫感及
び/又は頻度の低減を含む。いくつかの実施形態では、症状緩和は、異常な衝動の低減を
含む。いくつかの実施形態では、切迫感及び/又は頻度は、トロスピウムの投与中又はそ
の完了後に、ベースラインから少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、
60%、70%、80%、又は90%低減される。いくつかの実施形態では、症状緩和は
、尿失禁及び/又は切迫性尿失禁(例えば、1日尿失禁エピソード又は3日以内の尿失禁
エピソード)の低減含む。いくつかの実施形態では、尿失禁及び/又は切迫性尿失禁(例
えば、1日尿失禁エピソード又は3日以内の尿失禁エピソード)は、トロスピウムの投与
中又はその完了後にベースライン症状から少なくとも約10%、20%、30%、40%
、50%、60%、70%、80%、又は90%低減される。いくつかの実施形態では、
症状緩和は、トロスピウムの投与の完了後少なくとも約1、2、3、4、5、6、又は7
日間延長される。いくつかの実施形態では、症状緩和は、トロスピウムの投与の完了後、
少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12週間延長され
る。いくつかの実施形態では、症状緩和は、トロスピウムの投与の完了後少なくとも約3
、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12か月間延長される。
【0088】
いくつかの実施形態では、個体は、トロスピウムの投与中又はその完了後に、1日排尿
エピソードの減少を有する。いくつかの実施形態では、1日排尿エピソードは、トロスピ
ウムの投与中又はその完了後にベースライン症状から少なくとも約2.5%、5%、7.
5%、又は10%低減される。いくつかの実施形態では、低減は、トロスピウムの投与の
完了後、少なくとも約1、2、3、4、5、6、又は7日間延長される。いくつかの実施
形態では、低減は、トロスピウムの投与の完了後、少なくとも約1、2、3、4、5、6
、7、8、9、10、11、又は12週間延長される。いくつかの実施形態では、低減は
、トロスピウムの投与の完了後、少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、11
、又は12か月間延長される。
【0089】
いくつかの実施形態では、個体は、トロスピウムの投与中又はその完了後に、排尿1回
当たりの排尿量の増加を有する。いくつかの実施形態では、排尿1回当たりの排尿量の増
加は、トロスピウムの投与中又はその完了後にベースライン症状から少なくとも約2.5
%、5%、7.5%、10%、20%、25%、30%、35%、又は40%である。い
くつかの実施形態では、増加は、トロスピウムの投与の完了後、少なくとも約1、2、3
、4、5、6、又は7日間延長される。いくつかの実施形態では、増加は、トロスピウム
の投与の完了後、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は
12週間延長される。いくつかの実施形態では、増加は、トロスピウムの投与の完了後、
少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12か月間延長される。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書に、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間
、膀胱に局所的に投与することを含む、個体の生活の質を改善するための方法が提供され
る。いくつかの実施形態では、個体の生活の質スコアが向上する。いくつかの実施形態で
は、個体は、トロスピウムによる局所療法前の事前の生活の質スコアと比較して、トロス
ピウムの局所投与が完了してから少なくとも約24時間後に、改善された生活の質スコア
を有する。いくつかの実施形態では、生活の質スコアは、個体が、例えば、時間なし、わ
ずかな時間、ある程度の時間、長い時間、ほとんどの時間、及び全ての時間などのある期
間に1つ以上の事象を経験した頻度に基づくスコアを含む。いくつかの実施形態では、事
象は、前兆のほとんどない又は全くない突然の尿意に悩まされることを含む。いくつかの
実施形態では、事象は、偶発的な少量の尿漏れに悩まされることを含む。いくつかの実施
形態では、事象は、夜間排尿に悩まされることを含む。いくつかの実施形態では、事象は
、尿意を催したことによる夜間の目覚めに悩まされることを含む。いくつかの実施形態で
は、事象は、排尿への強いに伴う尿漏れに悩まされることを含む。いくつかの実施形態で
は、個体の生活の質スコアは、トロスピウムの局所投与後に約10%、20%、30%、
40%、50%、60%、70%、又は80%改善される。いくつかの実施形態では、個
体の生活の質スコアは、局所的なトロスピウム投与が完了した後少なくとも1週間、少な
くとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6
週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間
、又は少なくとも12週間改善される。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間
、膀胱に局所的に投与することを含む、個体の生活の質スコアを改善するための方法が提
供される。いくつかの実施形態では、個体は、トロスピウムによる局所療法前の事前の生
活の質スコアと比較して、トロスピウムの局所投与が完了してから少なくとも約24時間
後に、改善された生活の質スコアを有する。いくつかの実施形態では、生活の質スコアは
、個体が、例えば、時間なし、わずかな時間、ある程度の時間、長い時間、ほとんどの時
間、及び全ての時間などのある期間に1つ以上の事象を経験した頻度に基づくスコアを含
む。いくつかの実施形態では、事象は、前兆のほとんどない又は全くない突然の尿意に悩
まされることを含む。いくつかの実施形態では、事象は、偶発的な少量の尿漏れに悩まさ
れることを含む。いくつかの実施形態では、事象は、夜間排尿に悩まされることを含む。
いくつかの実施形態では、事象は、尿意を催したことによる夜間の目覚めに悩まされるこ
とを含む。いくつかの実施形態では、事象は、排尿への強いに伴う尿漏れに悩まされるこ
とを含む。いくつかの実施形態では、個体の生活の質スコアは、トロスピウムの局所投与
後に約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%改善され
る。いくつかの実施形態では、個体の生活の質スコアは、局所的なトロスピウム投与が完
了した後少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、
少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくと
も10週間、少なくとも11週間、又は少なくとも12週間改善される。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に、トロスピウムを少なくとも約24時間、個体の
膀胱に送達することを含む、個体の膀胱症状に関連付けられた悩みを軽減する方法が提供
される。いくつかの実施形態では、個体の悩みスコアは低減される。いくつかの実施形態
では、悩みスコアは、トロスピウムによる局所療法の前と比較して、トロスピウムの局所
投与が完了した後少なくとも約24時間後に低減される。いくつかの実施形態では、生活
の質スコアは、個体が、例えば、時間なし、わずかな時間、ある程度の時間、長い時間、
ほとんどの時間、及び全ての時間などのある期間に1つ以上の事象を経験した頻度に基づ
くスコアを含み得る。いくつかの実施形態では、事象は、公共の場所でのトイレへの逃げ
道を前もって考えることを含む。いくつかの実施形態では、事象は、個体の膀胱症状が、
自分に何か問題があると個体に感じさせる頻度に影響を及ぼす膀胱症状を含む。いくつか
の実施形態では、事象は、夜間の安眠の妨げになる膀胱症状を含む。いくつかの実施形態
では、事象は、自身がトイレで過ごす時間量について個体に不満又はいらだちを感じさせ
る膀胱症状を含む。いくつかの実施形態では、事象は、個体にトイレから離れる活動(例
えば、ウォーキング、ランニング、ハイキング)を避けさせる膀胱症状を含む。いくつか
の実施形態では、事象は、睡眠中の個体を目覚めさせる膀胱症状を含む。いくつかの実施
形態では、事象は、個体に自身の身体活動(運動、スポーツなど)を減少させる膀胱症状
を含む。いくつかの実施形態では、事象は、個体に自身のパートナー又は配偶者との問題
を抱えさせる膀胱症状を含む。いくつかの実施形態では、事象は、他者との移動中に、ト
イレに立ち寄らなければならないことから個体に気まずい思いをさせる膀胱症状を含む。
いくつかの実施形態では、事象は、個体の家族及び友人との関係に影響を及ぼす膀胱症状
を含む。いくつかの実施形態では、事象は、個体の膀胱症状によって恥ずかしい思いをす
ることを含む。いくつかの実施形態では、事象は、個体の膀胱症状が、個体に、初めて訪
れる場所に到着した際に最も近いトイレを探させる状況を含む。いくつかの実施形態では
、個体の悩みスコアは、トロスピウムの局所投与後に約10%、20%、30%、40%
、50%、60%、70%、又は80%改善される。いくつかの実施形態では、個体の悩
みスコアは、局所的なトロスピウム投与が完了した後少なくとも1週間、少なくとも2週
間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少な
くとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、又は少な
くとも12週間改善される。
【0093】
いくつかの実施形態では、生活の質スコア[すなわち、健康関連の生活の質(HRQL
)変換スコア]及び悩みスコア(すなわち、症状重症度変換スコア)は、アンケートを介
して被験者の自己評価から計算される。例示的なアンケートを図13図14に示す。評
価は、ベースラインを確立するために、トロスピウム投与の前(その直前など)に行うこ
とができる。評価はまた、トロスピウムの投与中又は投与後の異なる時点で行うことがで
きる。
【0094】
例えば、生活の質スコアは、以下のように、図14の生スコアから計算することができ
、生スコアは、項目1~13の値からの合計スコアであった。生活の質スコア=(最高可
能スコア-実際の生スコア)/可能な生スコア範囲×100であり、最高可能スコアは7
8であり、可能な生スコア範囲は65であった。生活の質スコア値が高いほど、生活の質
が良好であることを示すことに留意されたい。
【0095】
悩みスコアは、以下のように、図13の生スコアから計算することができ、生スコアは
、項目1~6の値からの合計スコアであった。悩みスコア=(実際の生スコア-最低可能
生スコア)/可能な生スコア範囲×100であり、最低可能生スコア=6であり、可能な
生スコア範囲は30であった。悩みスコア値が高いほど、症状重症度又は悩みが大きいこ
とを示し、より低いスコアは最小限の症状重症度を示すことに留意されたい。
【0096】
いくつかの実施形態では、トロスピウムは、本明細書に記載される膀胱内デバイスを介
して送達される。いくつかの実施形態では、個体は、デバイスに対して高い許容性を有す
る(例えば、個体の約30%、20%、15%、10%、5%、又は2%未満は、スケジ
ュールされた治療の完了前にデバイスの除去を必要とする)。
【0097】
いくつかの実施形態では、本方法は、個体における有意なレベルの有害事象を引き起こ
さない。例示的な有害事象としては、尿路感染症(UTI)、膀胱痛、血尿、副鼻腔炎、
及び膀胱不快感が挙げられる。いくつかの実施形態では、個体の約50%、40%、30
%、25%、又は20%未満が治療期間中にUTIを発症する。いくつかの実施形態では
、個体の約50%、40%、30%、25%、又は20%未満が、処置期間中に膀胱痛を
発症する。いくつかの実施形態では、個体の約50%、40%、30%、25%、又は2
0%未満が治療期間中に血尿を発症する。いくつかの実施形態では、個体の約50%、4
0%、30%、25%、又は20%未満が治療期間中に副鼻腔炎を発症する。いくつかの
実施形態では、個体の約50%、40%、30%、25%、又は20%未満が、治療期間
中に膀胱不快感を発症する。
【0098】
いくつかの実施形態では、個体の膀胱尿排泄後残留量(PVR)は、トロスピウムの投
与後、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、又は40
%低減される。いくつかの実施形態では、低減は、トロスピウム投与後、約7日、21日
、又は35日以内に観察される。
【0099】
送達
I.膀胱内デバイス
a.デバイスの形状
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、膀胱内デバイスを使用して有
効量のトロスピウムを膀胱に局所的に送達することを含む。いくつかの実施形態では、膀
胱内デバイスは、配置形状及び保持形状を含む。例えば、デバイスは、管腔(例えば、尿
道)を通って個体の膀胱に挿入するのに適した比較的真っ直ぐな形状又は非コイル状(配
置形状)と、デバイスを膀胱内に保持するのに適した保持形状との間で弾性的に変形可能
であってよい。本開示の目的のために、「比較的拡張した形状」、「比較的大きい外形形
状」又は「保持形状」などの用語は、一般に、意図される埋め込み位置にデバイスを保持
するのに適した任意の形状を意味し、デバイスを膀胱内で保持するのに適した、プレツェ
ル形状又は他のコイル状(例えば、双楕円形又は重複コイル)が挙げられるが、これらに
限定されない。保持形状は、個体の排尿時にデバイスが尿中に取り込まれ、排泄されない
ようにする。同様に、「比較的小さい外形形状」又は「配置形状」などの用語は、一般に
、薬剤送達デバイスを身体内に配置するのに適した任意の形状を意味し、例えば、カテー
テル、膀胱鏡、又は尿道内若しくは膀胱内に位置付けられる他の配置器具、例えば、正常
な尿流の閉塞症を有する個体において膀胱から尿を排出するために使用される恥骨上膀胱
瘻造設又は恥骨上カテーテル(膀胱瘻術(vesicostomy)又は高位膀胱切開術(epicystos
tomy)としても知られる)の作業チャネルを通ってデバイスを配置するのに適した直線形
状又は細長い形状が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、薬
剤送達デバイスは、比較的拡張した形状が自然に想定されてよく、身体内に挿入するため
に、手動で又は外部装置の助けを得て比較的小さい外形形状に変形され得る。例えば、外
部装置は、経尿道挿入用に構成されている挿入器であってよい。配置されると、膀胱内デ
バイスは、当初の比較的拡張した形状に自発的に、つまり自然に戻り得、身体内に保持さ
れる。いくつかの実施形態では、デバイスは、ばねのように挙動し、圧縮荷重に応答して
変形する(例えば、デバイスを配置形状に変形させる)が、負荷が除去されると、自発的
に保持形状に戻る。
【0100】
いくつかの実施形態では、先の段落に記載した膀胱内デバイスの変形機能は、参照によ
り本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2012/0203203号、同第20
13/0158675号、同第2015/0360012号、同第2015016517
7号、同第2015/0165178号、同第20160199544号、並びに国際公
開第2014/145638号、同第2015200752号、及び同第2011/03
1855号に開示されるものなど、形状保持フレーム(すなわち、「保持フレーム」)を
デバイスに含めることによって提供されてよい。いくつかの実施形態では、デバイスは、
保持フレーム管腔を含んでよく、この中に、弾性ワイヤ、例えばニチノールなど超弾性合
金であり得る保持フレームが固定される。保持フレームは、例えば、以前組み込んだ特許
出願に開示されているものなど「プレッツェル」形状又は別のコイル状などの保持形状に
自発的に戻るように構成されてよい。具体的には、保持フレームは、例えば膀胱内など身
体内にデバイスを保持してよい。保持形状は、個体の排尿時にデバイスが尿中に取り込ま
れ、排泄されないようにする。例えば、保持フレームは、デバイスが比較的小さい外形形
状で身体に導入されることを可能にし、デバイスが身体内に入ると比較的拡張した形状に
戻ることができるようにし、排尿筋の収縮及び排尿に関連する流体力など予期される力に
応答して、デバイスが身体内で比較的小さい外形形状をとることを妨げる弾性限界及び弾
性率を有してよい。したがって、デバイスは、展開されると個体の膀胱内に保持され得、
偶発的な排出を制限する、つまり防止する。
【0101】
いくつかの他の実施形態では、膀胱内デバイスの変形機能は、例えば、国際公開第20
16/172704号に記載されるように、少なくとも部分的に熱的に形状設定された弾
性ポリマーでデバイスハウジングを形成することによってもたらされ得る。
【0102】
デバイス本体(すなわち、ハウジング)の形成に使用される材料は、配置形状と保持形
状との間でデバイスを移動できるように、少なくとも部分的に弾性又は可撓性であってよ
い。デバイスが保持形状にあるとき、保持フレーム部分は、薬剤リザーバ部分の内側に位
置する傾向があり得るが、他の場合では、保持フレーム部分は薬剤リザーバ部分の内側、
外側、上方、又は下方に位置付けられ得る。デバイス本体の形成に使用される材料は透水
性であってよく、したがって、デバイスが膀胱内に配置されると、可溶化液(例えば、尿
)が薬剤リザーバ部分に入って、薬剤リザーバ内に収容されている、非液体形態のトロス
ピウム、化学療法薬、免疫調節剤、追加の治療薬、機能剤、又はこれらの組み合わせを可
溶化することができる。例えば、シリコーン又は別の生体適合性エラストマー材料が使用
されてよい。他の実施形態では、デバイス本体は、少なくとも部分的に、非透水性材料で
形成されてよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、デバイス本体は、弾性の生体適合性ポリマー材料で作製され
る。この材料は、非吸収性又は吸収性であってよい。非吸収性材料の例としては、ポリ(
エーテル)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン
)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ウレタン)、セルロース、酢酸セルロース、ポリ(シロ
キサン)、ポリ(エチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、及び他のフッ素化ポリ
マー、並びにポリ(シロキサン)から選択される合成ポリマーが挙げられる。例示的な吸
収性材料、具体的には生分解性又は生体内分解性ポリマーとしては、ポリ(アミド)、ポ
リ(エステル)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、
ポリホスファゼン、疑似ポリ(アミノ酸)、ポリ(グリセロール-セバケート)、ポリ(
乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(カプロラク
トン)、ポリ(カプロラクトン)(PC)導入体、アミノアルコール系ポリ(エステルア
ミド)(PEA)及びポリ(オクタンジオールシトレート)(POC)、並びに他の硬化
性生体吸収性エラストマーから選択される合成ポリマーが挙げられる。PC系ポリマーは
、ゴム状弾性を得るために、リジンジイソシアネート又は2,2-ビス(e-カプロラク
トン-4-イル)プロパンなど追加の架橋剤を必要とし得る。コポリマー、混合物、及び
上記材料の組み合わせも使用され得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、デバイス本体は、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、エチ
ルビニルアセテート(EVA)、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態で
は、デバイス本体は、2種の異なる熱可塑性材料を含み、その一方は親水性熱可塑性ポリ
ウレタンであって、薬剤透過性であり、他方は薬剤不透過性である。薬剤不透過性材料は
、親水性ポリウレタン、親水性ポリエステル、及び親水性ポリアミドからなる群から選択
されてよい。デバイス本体は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第201
6/0310715号に記載されているように、これらの材料のうちの1つ以上を使用し
て、押出プロセス又は共押出プロセスによって形成された環状管を備えてよい。
【0105】
b.薬剤コア/充填物
トロスピウムが膀胱内薬剤送達デバイスから送達される実施形態では、組成物は、デバ
イスが膀胱内の流体(例えば、尿)へと組成物を制御可能に放出する特定の機構に応じ得
る様々な形態でデバイス内に収容されてよい。いくつかの実施形態では、組成物は固体、
半固体、又は他の非液体形態で提供され、このため、有利には、デバイスの使用前の組成
物の安定保存が容易になり得、有利には、組成物が液体溶液の形態で収容された場合に起
こり得る体積よりも小さい体積で保存されるデバイスの組成物充填物を可能にし得る。い
くつかの実施形態では、非液体形態は、錠剤、粒剤、ペレット剤、粉剤、半固体(例えば
、軟膏、クリーム、ペースト、又はゲル)、カプセル、及びこれらの組み合わせから選択
される。一実施形態では、組成物は、米国特許第9,757,546号に記載されている
ミニ錠剤など複数の錠剤の形態である。
【0106】
例えば、トロスピウムは、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液、コロイド、ミセル、又
はエマルションなどの形態をとってよく、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤など処方剤を
含有してよい。あるいは、活性成分は、使用前の好適な媒体、例えば滅菌、発熱物質不含
有水を用いた構成のために、滅菌固体の無菌単離によって、又は溶液からの凍結乾燥によ
って得られる粉末形態であってよい。
【0107】
一実施形態では、トロスピウムは、デバイスハウジング内の放出開口部からトロスピウ
ムの放出を制御するための粘度増強剤を含む1種以上の賦形剤を用いて製剤化される。別
の実施形態では、デバイスリザーバは、トロスピウム及び粘度増強剤の両方を含むが、こ
れらは共製剤化されず、代わりに、例えば別個の錠剤としてリザーバ内の別個の領域に提
供される。ポリエチレンオキシド(PEO)が挙げられるが、これに限定されない好適な
粘度増強剤は、医薬品分野において既知である。実施形態のいくつかの変形例では、粘度
増強剤は、例えば、尿素又は別の浸透剤を用いて提供されて、例えば製剤化されてよい。
【0108】
一実施形態では、トロスピウムは、溶解度増強剤と共に個体の膀胱に送達される。一実
施形態では、溶解性増強剤は尿素である。一実施形態では、尿素は錠剤又は他の個体形態
で提供され、膀胱内薬剤送達デバイスの薬剤リザーバにトロスピウムと共に充填される。
尿素はまた、デバイスに応じて、薬剤リザーバ内での浸透圧の生成を促進する浸透剤とし
て機能し得る。特定の実施形態では、トロスピウム及び浸透剤は、参照により本明細書に
組み込まれる国際公開第2015/026813号(Leeら)に記載されるように、薬
剤リザーバの異なる領域内に位置付けられた別個の充填物(すなわち、粉剤、錠剤、又は
他の個体形態)として構成されている。
【0109】
いくつかの実施形態では、デバイスは、薬剤リザーバ管腔を備えてよい。これらの実施
形態のうちのいくつかでは、各薬剤リザーバ管腔は、1つ又は複数の薬剤錠剤又は他の固
形薬剤ユニットを保持し得る。一実施形態では、デバイスは、多数の別個の薬剤リザーバ
管腔の中で、約10~100個の円柱状薬剤錠剤(ミニ錠剤など)を保持する。特定の実
施形態では、ミニ錠剤はそれぞれ、例えば、約1.5~約3.1mmなど約1.0~約3
.3mmの直径、及び例えば約2.0~約4.5mmなど約1.5~約4.7mmの長さ
を有してよい。いくつかの他の実施形態では、薬剤リザーバ管腔は、粉形態又は粒形態の
トロスピウムを収容する。
【0110】
いくつかの実施形態では、膀胱内デバイスは、トロスピウムと共に機能剤を収容及び放
出する。機能剤は、デバイスからの薬剤の放出を促進し得、かつ/又は膀胱内の尿中のト
ロスピウムの安定化(すなわち、分解の遅延)を促進し得る。例えば、機能剤は、尿中の
トロスピウムのタンパク質分解が懸念される場合、抗プロテアーゼを含んでよい。
【0111】
c.薬剤ハウジング
本明細書に記載の膀胱内デバイスからのトロスピウムの放出は、異なる作用機構によっ
て駆動され、制御され得る。様々な実施形態では、薬剤は、薬剤ハウジングの壁を通じた
拡散によって、薬剤ハウジングの壁内の1つ以上の画定された開口部を通じた拡散によっ
て、薬剤ハウジング内の開口部を通じた浸透圧によって、1つ以上の一時的に形成された
マイクロチャネルを通じた浸透圧によって、膀胱内の尿と接触した製剤の浸食によって、
又はこれらの組み合わせによって、膀胱内薬剤送達デバイスから放出されてよい。いくつ
かの実施形態では、薬剤放出は、デバイスハウジングの一部を画定する薬剤透過性ポリマ
ー又はマトリックス成分を通じた/そこからの薬剤拡散によって制御される。一実施形態
では、デバイスは、薬剤透過性ポリマー成分を含む。
【0112】
壁の厚さなどハウジングのサイズは、他の要因の中で、収容される薬剤(及び、存在す
る場合は機能剤)製剤の体積、デバイス本体/ハウジングからの薬剤の所望の送達速度、
身体内でのデバイスの意図される埋め込み部位、デバイスに対する所望の機械的一体性、
水及び尿に対する所望の放出速度又は透過性、初回放出の開始前の所望の導入時間、及び
身体への挿入の所望の方法又は経路に基づいて選択されてよい。ハウジングが管である実
施形態では、管壁厚は、管材料の機械的特性及び透水性に基づいて決定されてよい。これ
は、薄すぎる管壁が、十分な機械的一体性を有さない場合があり、その一方、厚すぎる管
壁は、デバイスからの初回薬剤放出に望ましくなく長い導入時間を経ることがあり、かつ
/又は尿道若しくは他の狭い身体管腔を通じた送達を可能にするのに十分な可撓性を有さ
ないことがあるためである。
【0113】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、約2mm~約5mmの内径を有する細長い環
状管を含んでよい。薬剤、及び存在する場合、機能剤は、細長い環状管の内径と実質的に
同じ直径を有する固体錠剤であってよい。いくつかの実施形態では、ハウジングは、ある
薬剤を含む、1つ以上の第1のユニット(例えば、錠剤)と、薬剤の放出を促進する、か
つ/又は膀胱内の尿中のトロスピウムの安定化を促進する機能剤を含む1つ以上の第2の
ユニット(例えば、錠剤)と、を保持する。第1のユニットの錠剤のうちの1つ以上は、
管の管腔の約1cm~約3cmの長さを充填してよく、第2のユニットの錠剤のうちの1
つ以上は、管の管腔の約10cm~約15cmの長さを充填してよい。一実施形態では、
第1のユニットの体積対第2のユニットの体積の比は、約0.05~約0.5である。錠
剤充填物の他の長さ及び比率が想定される。
【0114】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、0.2mmの壁厚など約0.1mm~約0.
4mmの壁厚を有する細長い環状管であってよい。ハウジング材料は、1つ以上の生体適
合性エラストマーを含んでよい。ハウジング材料は、ハウジングが、25A~80A、例
えば25A、50A、65A、70A、又は80Aのデュロメータを有するように選択さ
れてよい。
【0115】
様々な実施形態では、膀胱内デバイスは、本明細書で提供される方法に記載されるよう
に膀胱内の尿中の薬剤の持続的な治療有効濃度を生成する膀胱内の薬剤の濃度を達成する
ため、連続的又は断続的に薬剤を放出してよい。特定の実施形態では、膀胱内デバイスは
、1mg/日~1000mg/日、例えば20mg/日~300mg/日、又は25mg
/日~300mg/日の量でトロスピウムを放出してよい。特定の実施形態では、これら
の放出速度は、本明細書に記載される治療期間にわたって提供される。特定の実施形態で
は、これらの放出速度は、14日~21日の治療期間にわたって提供される。
【0116】
d.浸透及び拡散システム
in vivo配置に続いて、デバイスはトロスピウムを放出する。上記のように、放
出は、デバイスの内部と外部との浸透圧勾配、浸透圧力下でデバイス内の1つ以上のオリ
フィス又は通過孔を通過する薬剤に起因して生じ得る。放出はまた、拡散によって生じ得
、それによって、薬剤は、デバイスの内部と外部との薬剤濃度勾配に起因して、デバイス
内の1つ以上のオリフィス若しくは通過孔、及び/又はデバイスの薬剤透過壁を通過する
。単一デバイス内でのこれらの放出モードの組み合わせが可能であり、いくつかの実施形
態では、個々のいずれかのモードでは容易に達成することができない全体的な薬物放出プ
ロファイルを達成するために好ましい。
【0117】
デバイスが個体形態の薬剤を含むいくつかの実施形態では、デバイスからの薬剤の溶出
は、デバイス内の薬剤の溶解後に生じる。体液がデバイスに入り、薬剤に接触し、薬剤を
可溶化し、その後、溶解した薬剤はデバイスから拡散するか、又は浸透圧下若しくは拡散
を介してデバイスから流れる。この「溶解した薬剤」は、薬剤の固体形態の実質的な溶解
の後に残る懸濁液中の薬剤のマイクロ及びナノスケール粒子を含んでよく、また、例えば
、デバイスハウジング内の開口部を通じて、デバイスから放出されることも可能である。
例えば、薬剤は、膀胱内の尿と接触すると可溶化されてよい。特定の実施形態では、ハウ
ジングの透水壁部分は水溶液中の薬剤に対して透過性であり、可溶化された薬剤は壁部分
を介して放出され、本明細書で「経壁拡散」とも称される。デバイスが個体の膀胱内に配
置された後、尿は壁を通じて浸透し、リザーバに入り、トロスピウム、及び存在する場合
は機能剤を可溶化する。いくつかの実施形態では、薬剤は、次いで、デバイスの内部と外
部との間の薬剤濃度勾配のために、制御された速度で壁を通じて直接拡散する。例えば、
ハウジング及び/又は任意の水若しくは薬剤透過性壁部分は、シリコーン、熱可塑性ポリ
ウレタン、エチレン-co-ビニルアセテート(EVA)、又はこれらの組み合わせであ
ってよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、膀胱内デバイスは、(i)本体内に画定されたリザーバとの
境界を付ける壁を備える本体であって、壁は予備形成された貫通孔を有し、透水性部分を
含み、本体は弾性部分を含む、本体と、(ii)リザーバ内に配置された、トロスピウム
を含む製剤と、(iii)本体の開口部を閉鎖し、本体の弾性部分に接触する拘束プラグ
であって、開口部はリザーバと流体連通しており、壁の透水性部分は、水がデバイスに入
り、リザーバ内の製剤と接触することを可能にするように構成され、デバイスからのトロ
スピウムの放出は、(a)壁内の予備形成された貫通孔を通してトロスピウムを放出する
ことと、(b)1つ以上のマイクロチャネルを形成するのに有効な静水圧のリザーバ内で
の生成時に、本体の弾性部分と拘束プラグとの間の、開口部まで延在する1つ以上のマイ
クロチャネルの過渡形成を介してトロスピウムを放出することと、によって制御される、
拘束プラグと、を含む。製剤は、複数の錠剤の形態であってもよく、本体はシリコーン管
の形態であってもよい。これらの実施形態は、参照により本明細書に組み込まれるPCT
/US18/16463号に更に記載されている。
【0119】
第1の態様では、図1A図1Dに示されるように、本明細書に記載される薬剤送達デ
バイス50は、関連部分において参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第
2016/0008271号(Lee)に記載されているように、デバイス本体の遠位開
口部(複数可)を介した薬剤放出を可能にするため、デバイス本体52の弾性部分(複数
可)54に接触する1つ以上の拘束プラグ56を含む。しかしながら、米国特許出願公開
第2016/0008271号(Lee)のオリフィスなし(すなわち、既定の開口シス
テムなし)とは対照的に、特定の実施形態では、図2及び図3Aに示されるように、デバ
イスは、デバイス本体52の壁に配設された少なくとも1つの予備形成された貫通孔(す
なわち、オリフィス)66を含む。
【0120】
このように、特定の実施形態では、図1図4に示されるように、薬剤送達デバイス5
0は、本体52内に画定されたリザーバ60との境界を付ける壁を有する本体52であっ
て、壁は、少なくとも1つの予備形成された貫通孔66が配設されており、かつ透水性部
分64を含み、本体52は弾性部分54を含む、本体52と、薬剤を含有する製剤58で
あって、製剤58はリザーバ60内に配置されている、製剤58と、本体52の開口部を
閉鎖し、本体52の弾性部分54と接触する少なくとも1つの拘束プラグ56であって、
開口部はリザーバ60と流体連通している、少なくとも1つの拘束プラグ56と、を含む
。壁の透水性部分64は、水が薬剤送達デバイス50に入り、リザーバ60内に配置され
た製剤58に接触することを可能にするように構成され、デバイス50からの薬剤58の
放出は、(i)壁内の少なくとも1つの予備形成された貫通孔66(すなわち、開口部、
オリフィス)を介して薬剤58を放出することと、(ii)1つ以上のマイクロチャネル
62を形成するのに有効な静水圧の生成時に、本体52の弾性部分54と少なくとも1つ
の拘束プラグ56との間の、開口部まで延在する1つ以上のマイクロチャネル62の過渡
形成を介して薬剤を放出することと、のうちの少なくとも1つによって制御される。これ
らの実施形態では、拘束プラグ56は、デバイス50の遠位端開口部で部分的又は全体的
に封止されなくてよい。このようなシステムは、一貫した再現可能な薬剤放出プロファイ
ルを提供する一方で、貫通孔が部分的又は完全に詰まっているときに薬剤の放出を有益に
提供するレリーフ弁システムを提供することが見出されている。このように、デバイスは
、薬剤リザーバ内の静水圧が、拘束プラグを介したポイント放出が生じる拘束プラグ(複
数可)の閾値圧力に達しない限り、かつその時点まで、予備形成されたオリフィスを介し
て薬剤を放出するように動作してよい。例えば、少なくとも1つの予備形成された貫通孔
を介した薬剤の放出は、浸透圧的に駆動されてよい。
【0121】
第2の態様では、図5図6に示されるように、本明細書に記載された薬剤送達デバイ
ス50は、デバイス本体52の弾性部分(複数可)54と接触する1つ以上の拘束プラグ
56を有する、封止された遠位端(接着剤70で封止された状態が示されている)を含み
、拘束プラグ56に隣接するデバイス本体52(例えば、側壁)内に予備形成された放出
ポート(複数可)68を介した薬剤放出を可能にする。弾性部分54は、(図9図10
に示されるように)デバイス50の端部又はその近くにあってもよく、又はそうでなけれ
ばデバイスの中心又はその近くなど、デバイスの長さに沿って配設されてもよい。拘束(
retraining)プラグ(複数可)56は、デバイス本体52内の1つ以上の予備形成された
放出ポート(複数可)68に隣接して位置してもよく、これにより、拘束プラグ(複数可
)56は、薬剤リザーバ60内の閾値静水圧が到達されていないときに、予備形成された
放出ポート(複数可)68を被覆し、かつ効果的に閉鎖する。そのような実施形態では、
デバイスの拘束プラグ56及び弾性部分54は、薬剤リザーバ60が閾値静水圧に達した
ときに過渡的に形成される1つ以上のマイクロチャネル62が、薬剤リザーバ60から予
備形成された放出ポート(複数可)68まで延在することを除き、上述のもの及び米国特
許出願公開第2016/0008271号(Lee)に記載されたものと同様であってよ
い。
【0122】
このように、特定の実施形態では、図5図6に示されるように、薬剤送達デバイス5
0は、本体内に画定されたリザーバ60に境界と付ける壁を備える管状本体52であって
、壁は、透水性部分64及び弾性部分54を有し、少なくとも1つの予備形成された放出
ポート68(例えば、貫通孔、開口、オリフィス、スリット)が配設されている、管状本
体52と、薬剤を含有する製剤58であって、製剤58は、リザーバ60内に配置され、
壁の透水性部分64は、水が薬剤送達デバイスに入り、リザーバ60に位置する製剤58
に接触することを可能にする、製剤58と、本体52の弾性部分54と接触し、少なくと
も1つの予備形成された放出ポート68に隣接するリザーバ60内に固定された少なくと
も1つの拘束プラグ56であって、少なくとも1つの拘束プラグ56は、1つ以上のマイ
クロチャネル62を形成するのに有効なリザーバ60内に静水圧の生成時に、本体の弾性
部分54と少なくとも1つの拘束プラグ56との間の、少なくとも1つの予備形成された
放出ポート68まで延在する、1つ以上のマイクロチャネル62の過渡形成によって、少
なくとも1つの予備形成された放出ポート68を介して、デバイスからの薬剤の放出を制
御する、少なくとも1つの拘束プラグ56と、を含む。これらの実施形態のうちの特定の
ものでは、少なくとも1つの予備形成された放出ポート68は、本体52の壁内に配設さ
れた貫通孔又はスリットである。
【0123】
所望の薬剤放出プロファイルを達成するために、拘束プラグ56及び予備形成された放
出ポート68の任意の好適な数及び場所が使用されてよい。例えば、図5Bに示されるよ
うに、デバイス50は、単一の拘束プラグ56が両方の開口部に隣接して位置付けられる
ように、管状デバイス本体52内で互いに180度離間した開口部として本明細書に示さ
れる、2つの予備形成されたポート68を含んでよい。図5Bに示すように、一対の開口
部68及び対応する拘束プラグ56は、デバイスのそれぞれの遠位端に又はその近くに提
供されてよい。例えば、図6Bに示すように、スリットとして本明細書に示される単一の
予備形成されたポート68は、それぞれの拘束プラグ56に隣接して配置されてよい。図
6Bに示すように、予備形成されたポート68及び対応する拘束プラグ56は、デバイス
のそれぞれの遠位端に又はその近くに提供されてよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、薬剤送達デバイスは、いずれもその全体が参照により本明細
書に組み込まれる国際公開第2014/145638号及び米国特許出願公開第2016
/0310715号に記載されているような透過システムを含む。いくつかの実施形態で
は、薬剤送達デバイスは、第1の壁構造及び親水性の第2の壁構造によって境界された閉
鎖薬剤リザーバ管腔と、薬剤リザーバ管腔内に収容されたトロスピウムを含む製剤と、を
有するハウジングを含み、第1の壁構造は、水に対して透過性又は不透過性であり、かつ
薬剤に対して不透過性であり、第2の壁構造は、トロスピウムに対して透過性である。
【0125】
いくつかの実施形態では、デバイスハウジングは、第1の壁構造として機能する第1の
材料、及び第2の壁構造として機能する第2の材料で作製された、デバイスの薬剤リザー
バを境界づけ、画定する壁を有し、したがって、薬剤放出は本質的に第2の材料のみを介
して生じる。一実施形態では、デバイスは、開口部を含まず、薬剤放出は、第2の壁構造
を通じた拡散のみによる。本明細書で使用するとき、用語「薬剤に対して不透過性」及び
「水に対して不透過性」は、壁構造が薬剤又は水に対して実質的に不透過性であることを
指し、したがって、薬剤又は水は、治療放出期間にわたって、本質的に壁構造を介して放
出されない。膀胱内で使用するために、デバイスは、排尿筋の収縮中に柔軟(すなわち、
容易に屈曲し、柔らかな感触)であることが望ましい。これは、患者に対する不快感及び
刺激を回避又は軽減するためである。したがって、構造の第1及び第2の材料のデュロメ
ータは設計上の考慮事項であり、高デュロメータ材料の割合は、膀胱内で好適に適合する
ようにしつつも、所与のサイズのデバイスハウジングを構築することにおいて制限され得
る。例えば、Tecophilic(商標)熱可塑性ポリウレタン(Lubrizol
Corp.)は、80A~65Dなど70A超のショア硬度を有し得る一方で、シリコー
ン管は、50A~70Aのショア硬度を有し得る。したがって、水膨潤親水性、薬剤透過
性の第2の材料でデバイス全体を作製するのではなく、これらの2つの異なるポリマー材
料の組み合わせを利用することが有利であり得る。
【0126】
第1及び第2の壁構造の配置は、様々な形態をとることができる。特定の実施形態では
、第1の壁構造は円筒管であり、第2の壁構造は、円筒管の少なくとも一方の端部に配設
された端壁である、又は第1の壁構造及び第2の壁構造は互いに隣接し、共に円筒管を形
成する。すなわち、薬剤放出は、閉鎖デバイスハウジングの一部を画定する薬剤透過性構
成要素を通じた薬剤拡散によって制御される。薬剤透過性壁構造は、デバイスから所望の
速度の制御された薬剤拡散を提供するように位置し、寸法付けられ、材料特性を有してよ
い。いくつかの実施形態では、薬剤透過性壁は、管の端部又はその付近において管の管腔
内に、任意選択的に内側ワッシャと外側ワッシャとの間に挟まれて安定化されたディスク
を含んでよい。いくつかの実施形態では、薬剤透過性壁は、管状ハウジングの側壁の一部
、又は管状ハウジングの端部に位置する端部プラグの一部である。
【0127】
透水性材料で形成された壁部分の長さ及び幅は、デバイスハウジングによって画定され
たリザーバへの所望の速度の水流をもたらすように選択されてよい。一実施形態では、透
水性壁部分の幅は、管腔軸に対して垂直な断面で見たときに壁を画定する弧角によって定
量化されてよい。デバイスハウジングの透水性領域は、浸透水吸収の選択された面積、し
たがって速度をもたらすように、更に好適な生体適合性エラストマーで形成されたデバイ
スの好適な全体的寸法及び弾性を有利に維持するように制御されてよい。有利には、共押
出プロセスによってデバイスハウジングを形成することによって、透水性領域の構造的変
化は、処理パラメータを選択することによって従来の共押出デバイスで作製することがで
き、それにより、複数の構造デバイス構成を費用効果的に製造する能力を有益に提供する
。いくつかの実施形態では、透水性領域の長さは、デバイスの全長の一部のみに沿って延
びる。したがってかかる実施形態では、透水性領域のより大きい弧角を使用することがで
き、その一方で、薬剤放出速度を、長期間にわたって望ましいレベルに維持することがで
きる。このような膀胱内デバイスハウジングは、例えば、米国特許第2016/0310
715号に記載されている。
【0128】
いくつかの実施形態では、壁は、壁の周囲にわたって様々な厚さを有してよく、例えば
、薬剤透過性部分は、薬剤不透過性部分の厚さよりも薄い厚さを有してよい。更に、より
薄い薬剤透過性壁構造は、隣接するより厚い薬剤不透過性壁構造体に対して様々な位置に
配置されてよい。いくつかの実施形態では、薬剤放出は、閉鎖デバイスハウジングの一部
を画定する薬剤透過性構成要素を通じた薬剤拡散によって制御される。薬剤透過性壁構造
は、デバイスから所望の速度の制御された薬剤拡散を提供するように位置し、寸法付けら
れ、材料特性を有してよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、薬剤送達デバイスは、互いに隣接し、薬剤リザーバ管腔を画
定する管を共に形成する第1の壁構造及び第2の壁構造と、薬剤リザーバ管腔内に収容さ
れた薬剤と、を含むハウジングを備え、(i)第2の壁構造、又は第1の壁構造及び第2
の壁構造の両方は水に対して透過性であり、(ii)第1の壁構造は薬剤に対して不透過
性であり、第2の壁構造は薬剤に対して透過性であり、その結果、薬剤は、第2の壁構造
を通って拡散することによってin vivoで放出可能であり、(iii)第2の壁構
造は、管の長手方向軸に垂直な断面において、管の断面積の90パーセント未満を含み、
(iv)第1の壁構造は、第1のポリウレタン組成物を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、デバイスは、第1の閉鎖端と第2の閉鎖端との間に延在する
薬剤リザーバ管腔と、薬剤リザーバ管腔内に収容された薬剤と、を有する細長い弾性ハウ
ジングを備え、(i)ハウジングは、薬剤に対して不透過性である第1の材料で全体が形
成された第1の環状セグメントと、薬剤に対して透過性である第2の材料で少なくとも部
分的に形成されており、第2の環状セグメント内の第2の材料を通って拡散することによ
って薬剤をin vivoで放出するように構成されている第2の環状セグメントと、を
備え、(ii)第1の環状セグメントは、第2の環状セグメントの第1の端部と一体的に
形成され、接続されている第1の端部を有する。
【0131】
いくつかの実施形態では、薬剤リザーバ管腔を画定する壁は、様々な厚さを有してよい
。異なる厚さの壁を有するハウジングは、ハウジングの可撓性、圧縮性、又はその両方を
改善し得る。異なる壁厚はまた、薬剤リザーバ管腔内での固形薬剤ユニットの固定に役立
つことがあり得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、膀胱内デバイス本体又はハウジングは、組立プロセス中の薬
剤リザーバへの薬剤充填物の充填後に封止を必要とする開口部(例えば、環状管の対向端
部にある)を含んでよい。モノリシックハウジング及びモジュール式ハウジングユニット
などハウジングのこれらの画定された開口部又は端部のいずれかは、開口部の遮断が望ま
しい場合に封止されてよい。この封止は、封止物質又は構造によって達成されてよい。封
止構造は、特に、ステンレス鋼など金属、シリコーンなどポリマー、セラミック、若しく
はサファイア、若しくは接着剤、又はこれらの組み合わせなど生体適合性材料で形成され
てよい。封止物質又は構造は、生分解性又は生体分解性であってよい。一実施形態では、
医療グレードのシリコーン接着剤又は他の接着剤が、流体又は有効な形態で開口部に充填
され、次いでハウジング開口部内で硬化して、開口部を封止する。いくつかの実施形態で
は、ハウジングは、デバイスから薬剤を放出するための1つ以上の所定の開口部を含む。
これらの薬剤放出開口部は、封止される、規定の開口部ではない。他の実施形態では、ハ
ウジングは、所定の薬剤放出開口部を含まない。
【0133】
いくつかの実施形態では、デバイスは、所定の薬剤放出開口部(すなわち、オリフィス
)を有さずに薬剤を放出する。所定の薬剤放出開口部を有さないデバイスからの薬剤の放
出は、拡散又は浸透圧によって駆動され得る。かかる好適な「オリフィスを有さない」放
出システムの例は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/14406
6号(TB130)及び米国特許出願公開第2014/0276636号(TB134)
に記載されている。
【0134】
いくつかの実施形態では、薬剤送達デバイスは、参照により本明細書に組み込まれる米
国特許出願公開第2016/0199544号、米国特許第8,679,094号、及び
米国特許公開第2016/0008271号に記載されているような浸透システムを含む
【0135】
いくつかの実施形態では、薬剤送達デバイスは、参照により本明細書に組み込まれる米
国特許公開第2016/0279399号(TB 137)に記載されているような浸透
システムを含む。このようなシステムを使用するいくつかの実施形態では、トロスピウム
は、デバイスを個体の膀胱に挿入する前に、液体形態でデバイスハウジング内に装填され
てよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、デバイスは、リザーバを画定するハウジングと、リザーバ内
に収容された第1のユニットであって、第1のユニットは薬剤を含む、第1のユニットと
、第1のユニットとは異なる位置でリザーバ内に収容された第2のユニットであって、第
2のユニットは、ハウジングからのトロスピウムのin vivo放出を容易にする機能
剤を含む、第2のユニットと、を備える。いくつかの実施形態では、デバイスは、リザー
バを画定するハウジングと、リザーバ内に収容された第1のユニットであって、第1のユ
ニットは薬剤を含む、第1のユニットと、第1のユニットとは異なる位置でリザーバ内に
収容された第2のユニットであって、第2のユニットは、膀胱内の尿中のトロスピウムの
安定化を促進する機能剤(例えば、抗プロテアーゼ剤)を含む、第2のユニットと、を備
える。いくつかの実施形態では、第1のユニットは、少なくとも1種の薬剤(例えば、ゲ
ムシタビンなどのトロスピウム)を含む1つ以上の固形錠剤又は粉剤を含み、第2のユニ
ットは、1つ以上の固形錠剤又は粉剤(例えば、尿素など浸透剤を含む)を含む。いくつ
かの実施形態では、ハウジングは、第1及び第2のユニットの固形錠剤の全てが整列され
て収容されている管腔(すなわち、リザーバ)を有する、細長いエラストマー管の形態で
ある。固形錠剤の直径は、管腔の直径と実質的に同じであってよい。
【0137】
浸透放出が所望の薬剤放出モードである場合、第2のユニット内の機能剤は、薬剤の浸
透放出を促進する浸透剤を含んでよい。例えば、浸透剤は、浸透剤が可溶化及び/又はそ
の後の薬剤放出を促進するように、薬剤よりも高い溶解度を有し得る。これは、浸透圧送
達に基づくデバイスから、低溶解度の又は典型的には拡散を介してのみ送達される他の薬
剤の送達を有益に可能にする。デバイスは、十分な量の機能剤及び/又は薬剤が可溶化さ
れて浸透圧勾配を達成する導入期間を呈し得る。
【0138】
続いて、デバイスは、長期間にわたってゼロ次放出速度を呈し、続いて減衰期間にわた
って低減した、非ゼロ次放出速度を呈し得る。所望の送達速度は、デバイスの様々なパラ
メータを制御/選択することによって達成され得、これらのパラメータとしては、透水性
壁の表面積及び厚さ、壁の形成に使用される材料の水に対する透過性、開口部の形状、サ
イズ、数、及び配置、並びに薬剤及び機能剤の溶解プロファイルが挙げられるが、これら
に限定されない。
【0139】
本明細書に記載のデバイスはまた、拡散のみによって、又は浸透圧放出との組み合わせ
で薬剤を放出するように構成されてよい。デバイスはまた、可溶化された薬剤が、ハウジ
ングの一部又はその内部の1つ以上の開口部を通過できるように構成されてよい。
【0140】
あるいは、又は透水性壁部分と組み合わせて、ハウジングは、流体がin vivoで
リザーバに入ることができるように構成されている、少なくとも1つの開口部を含んでよ
い。ハウジングはまた、可溶化された薬剤が通過できるように構成されている、1つ以上
の開口部又は通過孔を含んでよい。
【0141】
浸透システムのいくつかの実施形態では、デバイスハウジングは、透水性である第1の
エラストマー材料と、非透水性である第2のエラストマー材料とを含み、両材料は、ハウ
ジング内に収容された薬剤に対して不透過性であるように選択される。
【0142】
図7A図7Cは、本明細書に記載される方法において有用な、膀胱内デバイスの一実
施形態を示す。デバイス100は、薬剤リザーバ部分102及び保持フレーム部分104
を含む。図7Aでは、デバイス100は、個体の膀胱内での保持に適した比較的膨張した
形状で示されている。図7Cでは、デバイス100は、尿道内に挿入し、尿道を通じて患
者の膀胱内に挿入するための、例えば膀胱鏡又は他のカテーテルなどの配置器具200の
作業チャネル202を介した配置用に比較的小さい外形形状で示されている。膀胱内への
配置(デバイスの放出)に続いて、デバイス100は、薬剤送達デバイスを膀胱内に保持
するために、比較的膨張した形状をとってよい。例示の実施形態では、薬剤送達デバイス
100の薬剤リザーバ及び保持フレーム部分102、104は長手方向に整列され、それ
らの長さに沿って一体的に形成されるか、ないしは別の方法で互いに連結される。
【0143】
薬剤送達デバイス100は、薬剤リザーバ管腔108及び保持フレーム管腔110を画
定する弾性又は可撓性デバイス本体106を含む。薬剤リザーバ管腔108は、薬剤リザ
ーバ部分102を形成するために、複数の固体薬剤ユニット112の形態である薬剤(例
えば、トロスピウム)を収容するように構成されている。隣接する薬剤ユニット112の
間に形成された隙間116又は割れ目は、薬剤ユニット112が、互いを基準として移動
することを可能にし、そのためデバイス100は、固体形態の薬剤が充填されているにも
かかわらず可撓性である。保持フレーム管腔110は、保持フレーム部分104を形成す
るために保持フレーム114を収容するように構成されている。
【0144】
図7Bの断面図に示すように、デバイス本体106は、薬剤リザーバ管腔108を画定
する管又は壁122と、保持フレーム管腔110を画定する管又は壁124と、を含む。
管122、124及び管腔108、110は実質的に円筒形であり得、薬剤リザーバ管腔
108は、保持フレーム管腔110よりも相対的に大きい直径を有するが、他の構成は、
例えば、送達される薬剤の量、保持フレームの直径、及び配置器具の内径などの配置上の
考慮事項に基づいて選択され得る。デバイス本体106は、成形又は押出成形などによっ
て一体的に形成されてもよいが、管122、124の別個の構造及び組立が可能である。
保持フレーム管腔110を画定する壁124は、薬剤リザーバ管腔108を画定する壁1
22の全長に沿って延在してもよく、これにより、保持フレーム管腔110は、図示のよ
うに薬剤リザーバ管腔108と同じ長さを有するが、他の実施形態では、1つの壁は他の
壁よりも短くてよい。更に、2つの壁122、124は、例示の実施形態ではデバイスの
全長に沿って取り付けられているが、断続的な取り付けを用いることもできる。
【0145】
図7Aに示されるように、薬剤リザーバ管腔108には、多数の薬剤ユニット112が
直列配置で装填される。例えば、約20~約80個の薬剤ユニット112など約10~約
100個の薬剤ユニット112が装填されてよい。薬剤ユニットは、例えば、錠剤、ビー
ズ、又はカプセルであってよい。本質的に、リザーバ及び薬剤ユニットのサイズに応じて
、任意の数の薬剤ユニットが使用されてよい。薬剤リザーバ管腔108は、薬剤リザーバ
管腔108の両端部には比較的円形の開口部として示される開放端部130及び132を
含む。開口部のうちの少なくとも1つは、デバイス装填及びアセンブリ中に薬剤リザーバ
管腔108内に配置される薬剤ユニット112の進入を提供する。
【0146】
端部プラグ120は、薬剤ユニット112の装填後に開口部130及び132をブロッ
クする。端部プラグ120は円筒形であってよく、摩擦係合及び/又は接着剤若しくは他
の締結手段によって薬剤リザーバ管腔108内に固定されてよい。それぞれの端部プラグ
120は、示されるように、薬剤リザーバ管腔108から薬剤を放出するための通路を提
供するための開口部118を含む。いくつかの代替的な実施形態では、端部プラグのうち
の1つのみが開口部を含む。いくつかの他の代替実施形態では、端部プラグのいずれも開
口部を含まず、これらの実施形態のうちのいくつかでは、管壁122は、薬剤を放出する
ための画定された開口部を含む。
【0147】
保持フレーム管腔110には、図7Aに示される重なり合うコイル形状に(熱的に)形
状設定された、ニチノールワイヤなどの弾性ワイヤであり得る保持フレーム114が装填
される。保持フレーム114は、デバイス100が比較的小さい外形形状で身体に導入さ
れることを可能にし、デバイス100が身体内に入ると比較的拡張した形状に戻ることが
できるようにし、排尿筋の収縮及び排尿に関連する流体力など予期される力に応答して、
デバイスが身体内で比較的小さい外形形状をとることを妨げる弾性限界及び弾性率を有し
てよい。
【0148】
e.浸食ベースシステム
低溶解度薬剤を含む錠剤と共に使用され得るいくつかの実施形態では、薬剤は、錠剤面
を露出してデバイスに固定された錠剤形態で提供され、その結果、米国特許第9,107
,816号に記載されているように、デバイスからの薬剤の放出が、制御された浸食/溶
解によって生じる。いくつかの実施形態では、デバイスは、モジュール式ハウジングを備
えてよい。モジュール式ハウジングは、典型的には、少なくとも2つの別個のハウジング
ユニットで形成され、各ユニットは少なくとも1つの固形薬剤ユニットを収容する。各ハ
ウジングユニットが形成される材料は、固形薬剤ユニットを収容することができる少なく
とも1つの薬剤リザーバ管腔を画定する。薬剤リザーバ管腔は、1つ以上の画定された開
口部を有してよい。例えば、薬剤リザーバ管腔は、その内部に収容された少なくとも1つ
の固形薬剤ユニットの対応する、対向する端面を露出させる2つの対向する開口部を有し
てよい。特定の実施形態では、モジュール式ハウジング内の少なくとも2つの別個のハウ
ジングユニットは、直接的又は間接的に、保持フレームによって接続される。いくつかの
実施形態では、モジュール式ハウジングユニットは保持フレーム上に配置されて、「ブレ
スレット」デザインを形成してよい。デバイスは、1つのハウジングユニット又は複数の
ハウジングユニットを有してよい。ハウジングユニットの数は、接続される保持フレーム
のサイズによってのみ制限され得る。
【0149】
いくつかの実施形態では、別個のハウジングユニットのうちの1つ以上は、共有保持フ
レームが通って延在する保持フレーム管腔を含む。特定の実施形態では、各ハウジングユ
ニットの保持フレーム管腔及び薬剤リザーバ管腔は、互いに平行に配置される。特定の実
施形態では、各ハウジングユニットの保持フレーム管腔及び薬剤リザーバ管腔は、互いに
垂直に配置される。更なる実施形態では、各ハウジングユニットの保持フレーム管腔及び
薬剤リザーバ管腔は、0°(平行)及び90°(垂直)以外の角度、例えば5°、10°
,30°、45°、60°、又は85°で配置される。更なる実施形態では、本明細書に
記載のデバイスは、以下の構成、つまり、(1)保持フレーム管腔及び薬剤リザーバ管腔
は、互いに実質的に平行に配置される、(2)保持フレーム管腔及び薬剤リザーバ管腔は
、互いに実質的に垂直に配置される、(3)保持フレーム管腔及び薬剤リザーバ管腔は、
0°(平行)及び90°(垂直)以外の角度で配置される、のうちの少なくとも2つを有
する2つ以上のハウジングユニットを含む。
【0150】
f.一体型シリコーン薬剤送達システム
いくつかの実施形態では、デバイスは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる
国際公開第2015/200752号に記載されるように弾性ポリマー薬剤マトリックス
を含んでよい。
【0151】
g.複数の放出部分を有するデバイス
いくつかの実施形態では、デバイスは、少なくとも2つの薬剤放出部分を含み、少なく
とも1つの放出部分は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第201
1/031855号に記載されるように、別の放出部分とは異なる速度で薬剤を放出する
。放出部分は、特に、異なる構成を有することによって、異なる製剤を収容することによ
って、若しくは異なる放出機構を使用することによって、異なる構成を有することによっ
て、又はこれらの組み合わせによって、異なる放出速度を達成してよい。放出部分は、所
望の放出プロファイルを達成するように組み合わされてよい。例えば、デバイスは、特に
、初回放出の開始前に異なる導入時間若しくは遅延時間を呈する、放出開始後に異なる速
度で、若しくは異なる放出曲線に従って薬剤を放出する、又は薬剤充填量が実質的に使い
果たされる前に異なる期間にわたって薬剤を放出する、又はこれらの組み合わせである放
出部分を含んでよい。異種の放出部分は、比較的短い初回遅延時間を示し、その後、長期
間にわたって比較的一定の速度で持続的な放出を示すなど、全体として、薬物送達デバイ
スからの所望の放出プロファイルを達成するように組み合わされてよい。
【0152】
いくつかの実施形態では、デバイスには、従来の薬剤錠剤よりも小さいサイズであり得
る、多数の固形薬剤錠剤の形態の薬剤が充填される。デバイスは薬剤の身体内への放出を
制御するため、薬剤自体は、薬剤放出を制御する賦形剤をほとんど又は全く含まなくてよ
い。その代わりに、薬剤錠剤中に存在する賦形剤は、主として又は完全に錠剤化プロセス
又はin vivoでの可溶化を促進するために存在してよい。したがって、デバイスは
、体積基準又は重量基準で高い薬剤充填物を提供し得るが、デバイスは、最小限に侵襲的
な方法でのin vivo配置のために十分に小さくてもよい。
【0153】
薬剤ハウジングはまた、埋め込み時又はin vivo可溶化後の液体又は半個体形態
のいずれかでの薬剤の放出を可能にする。壁は、薬剤ハウジングを通ってその全長に沿っ
ての薬剤流出を可能にする、薬剤透過性材料で形成されてよい。壁はまた、少なくとも部
分的に薬剤形態に応じて薬剤に対して半透過性である材料で形成されてよい。例えば、壁
は、荷電形態などある形態では薬剤に対して透過性であってよいが、非荷電形態(例えば
、塩基形態対塩形態)など別の形態ではそうでなくてよい。壁はまた、薬剤が薬剤ハウジ
ングを出ることを可能にする、完全に貫通して形成された1つ以上の開口部又は通路を含
んでよい。
【0154】
薬剤部分は、本明細書に記載の特徴又は構成の任意の組み合わせを有することができる
。つまり、開口部が設けられても、省略されても、通過孔で代用されても、又は追加の開
口部若しくは通過孔で増強されてもよく、ハウジングは、連続気泡構造又は独立気泡構造
を有する多孔質壁を有してよく、1つ以上の分解性タイミング構造又は解放調節構造は、
ハウジング、又はこれらの任意の組み合わせに関連し得る。
【0155】
薬剤錠剤は、薬剤ハウジングの構成に応じて、直列配置以外の任意の配置で整列されて
よい。薬剤錠剤は、説明したように薬剤ハウジング全体以外の薬剤ハウジングの任意の部
分を充填してよい。薬剤錠剤を充填していない薬剤ハウジングの任意の部分を充填するた
めに、シリコーン接着剤などの充填材料が使用され得る、又は空気が使用されて、デバイ
スの浮力を増大させ得る。薬剤錠剤の組成は、同じであってよい、又はデバイスに沿って
異なってよい。薬剤はまた、他の液体、半個体、又は個体形態(例えば、顆粒)など薬剤
錠剤以外の形態であってよい。
【0156】
いくつかの実施形態では、薬剤送達デバイスは、単一の保持部分に関連する、少なくと
も2つの別個の又は分離した薬剤部分を含む。薬剤部分は、それぞれ保持部分に関連する
別個の薬剤ハウジングであってよい、又は薬剤部分は、保持部分に関連する単一の薬剤ハ
ウジング内の別個の領域であってよい。
【0157】
各薬剤部分は、薬剤ハウジングの壁の一部、及び薬剤部分を第2の薬剤部分から分離す
る少なくとも1つの仕切構造によって画定され得る。仕切構造は、特に円筒、球体、又は
ディスクなどハウジング内に挿入されるプラグであってよく、そのサイズにより、又は接
着剤を使用して、定位置に固定される。仕切構造はまたハウジングの一部であって、鋳造
などによって、その内部に直接形成されてよい。
【0158】
少なくとも2つの別個の部分を有するデバイスは、対応する数の薬剤リザーバから少な
くとも2つの薬剤充填物の制御された放出に適していてよい。2つの別個の部分は、本明
細書に記載のものと同じ構成又は異なる構成を有してよい。2つの薬剤充填物は、互いに
同じであってよく、又はとりわけ、活性成分含有量若しくは賦形剤含有量などの含有量、
塩形態若しくは塩基形態などの形態、液体、半固体、若しくは固体状態などの状態、又は
これらの組み合わせなどの内容物に関して互いに異なってよい。したがって、2つの別個
の部分は、同じ放出機構若しくは異なる放出機構介して、同じ速度で若しくは異なる速度
で、2つの薬剤充填物を同時に若しくは異なる時間に、又はこれらの組み合わせで放出し
てよい。
【0159】
例えば、ある薬剤部分は、埋め込み後に薬剤充填物を比較的迅速に放出するように構成
されてよく、別の薬剤部分は、放出開始前の導入時間を経験するように構成されてよく、
又はこれらの組み合わせであってよい。異なる薬剤部分における2つの充填物の放出の開
始は、段階的であり得る。急速放出薬剤部分の例としては、比較的薄い壁を有するシリコ
ーンチューブなど比較的即効性の浸透ポンプとして作動する薬剤部分、液体形態若しくは
特別に製剤化された固体形態など急速放出形態で薬剤が充填される薬剤部分、比較的即効
性の分解性タイミング構造に関連する薬剤部分、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
したがって、デバイスは、初期急性期中、及び維持期中に薬剤を放出してよい。
【0160】
別の例として、ある薬剤部分は、他の薬剤充填物よりも比較的速い速度でその薬剤充填
物を放出するように構成されてよい。例えば、ある薬剤部分は、埋め込み後に比較的速や
かに開始される拡散放出のために低水溶性を有する薬剤充填物を収容してよく、別の薬剤
部分は、導入期間後の浸透放出のために高水溶性である薬剤充填物を収容してよい。別の
例として、ある薬剤部分は、即効分解性タイミング膜を有する開口部を介した急速放出の
ために液体状態の薬剤充填物を収容してよく、別の薬剤部分は、in vivoでの可溶
化後の遅延放出のために固形錠剤の別の薬剤充填物を収容してよい。更に別の例として、
ある薬剤部分は比較的固い壁を有してよく、別の薬剤部分は、拡散により放出速度を増加
させ得る、その壁を通って形成された多数の開口部若しくは孔、又は壁を通じた水若しく
は薬剤の浸透の増加により放出速度を増加させ得る独立気泡多孔壁を有してよい。
【0161】
放出部分は、所望の放出プロファイルを達成するように組み合わされてよい。例えば、
デバイスは、特に、初回放出の開始前に異なる導入時間若しくは遅延時間を呈する、放出
開始後に異なる速度で、若しくは異なる放出曲線に従って薬剤を放出する、又は薬剤充填
量が実質的に使い果たされる前に異なる期間にわたって薬剤を放出する、又はこれらの組
み合わせである放出部分を含んでよい。異種の放出部分は、比較的短い初回遅延時間を示
し、その後、長期間にわたって比較的一定の速度で持続的な放出を示すなど、全体として
、薬物送達デバイスからの所望の放出プロファイルを達成するように組み合わされてよい
【0162】
単一デバイス内で複数の別個の薬剤部分を組み合わせることにより、デバイスは、トロ
スピウムの所望の放出プロファイルを呈してよい。デバイスからの放出プロファイルは、
全体として、別個の部分の放出プロファイルの合計であってよい。例えば、第1の部分は
、放出開始前に最小遅延時間を呈し、第2の部分は、浸透圧勾配が発達するために短い導
入期間を呈し、第3の部分は、分解性構造が溶解又は分解するために、開始前により長い
遅延を呈する。任意のある1つの部分から放出が開始すると、放出速度は、長期間にわた
って比較的ゼロ次であり、減衰期間が続いてよい。3つの別個の部分は例であり、所望の
放出プロファイルを達成するために、別個の部分の任意の数又は組み合わせが使用され得
ることに留意されたい。
【0163】
異なる薬剤部分は、単一の管状ハウジング内の単に分離された領域であり得るため、デ
バイスは有利には、構築し、配置するのに比較的単純であり得、更に異なる薬剤部分は、
異なる薬剤充填物、開口部の配置、及び分解性タイミング構造のために異なる放出プロフ
ァイルを呈する。薬剤部分が、例えば、異なる材料、厚さ、又は多孔質セル構造の壁を使
用する他の実施形態では、ハウジングはその長さに沿って異なってよく、又は別個の薬剤
ハウジングが使用されてよい。したがって、制御された放出は、様々な方法で達成され得
る。
【0164】
II.ゲル
別の実施形態では、コーティング物質が、膀胱内で膀胱壁に(例えば、膀胱内の尿路の
領域に)適用されてよく、コーティング物質は、トロスピウムと、コーティング物質の膀
胱壁への付着を促進し、治療期間にわたって制御された連続的な薬剤の放出をもたらす1
種以上の賦形剤材料と、を含む。コーティング物質は、ゲル、軟膏、クリーム、ペースト
、フィルム、エマルションゲル、錠剤、ポリマー、又はこれらの組み合わせなど粘膜付着
性製剤であってよい。粘膜付着性製剤ポリマーとしては、ハイドロゲル又は親水性ポリマ
ー、ポリカルボフィル(例えば、カーボポールなど)、キトサン、ポリビニルピロリドン
(PVP)、レクチン、ポリエチレングリコール化ポリマー、セルロース、又はこれらの
組み合わせが挙げられてよい。好適なセルロースとしては、メチルセルロース(MC)、
カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、又
はこれらの組み合わせが挙げられる。コーティング物質は、浸透促進剤を含んでよい。浸
透促進剤の非限定的な例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、カルボキシメチ
ルセルロースナトリウム(NaCMC)、脂質、界面活性剤、又はこれらの組み合わせが
挙げられる。コーティング物質は、コーティング物質が膀胱壁に係合するように、膀胱内
に配置されてよい。
【0165】
コーティング物質は、配置器具を使用して膀胱内に配置されてよい。配置器具は、身体
の天然管腔を進んで、意図された埋め込み部位に到達するように設計された任意のデバイ
スであってよい。膀胱内での配置のために、配置器具は、個体の膀胱まで個体の尿道又は
恥骨上膀胱瘻造設若しくは恥骨上カテーテルを通過するようなサイズ及び形状であってよ
い。配置器具は、カテーテル若しくは膀胱鏡、又は特別に設計されたデバイスなど既知の
デバイスであってよい。配置器具は、コーティング物質を身体内に配置するために使用さ
れ、その後に身体から除去され、コーティング物質の全体的が身体内に埋め込まれたまま
にする。一旦このように埋め込まれると、コーティング物質は、長期間にわたって薬剤を
身体内に放出し得る。同等の処置を使用して、本明細書に記載のデバイス又は薬剤のいず
れかを、他の天然管腔を通して身体の他の部分に配置することができる。例えば、配置器
具を使用して、配置器具に尿道又は恥骨上膀胱瘻造設を通らせることによって、液体薬剤
又は製剤を膀胱内に配置することができる。
【実施例0166】
実施例1:過活動膀胱の治療のためのトロスピウムの膀胱内送達
この試験の目的は、トロスピウム放出膀胱内システム(Trospium-Releasing Intravesi
cal System:TAR-302)を用いたトロスピウムの持続的な局所送達を確認すること
であった。TAR-302は、受動的な非再吸収性トロスピウム放出膀胱内システムであ
り、その一次作用様式は、ある期間、例えば42日間の膀胱内へのトロスピウムの制御放
出である。
【0167】
I.パートA.
10人の被験者をこの試験に組み入れた。これらの被験者は、経口薬に失敗した特発性
過活動膀胱患者であった。TAR-302を試験0日目に挿入器を通して膀胱内に入れ、
試験42日目に除去した。TAR-302は、膀胱内において42日間の留置時間中、1
日当たり約4~8mgの投与量で徐々にトロスピウムを放出する。図3Aを参照されたい
【0168】
トロスピウムの1日尿中回収量を3、7、21、35、42、及び56日目に評価した
。PKサンプリング日におけるトロスピウムの平均全日回収量は、3.03~8.31m
g/日の範囲で約6.28mg/日である。灰色の破線は、約20mgのBID又は60
mgのQD.Sanctura FDAラベルによる)の投与量での経口トロスピ
ウム投与による、推定される1日トロスピウム回収量を表す。図8を参照されたい。
【0169】
TAR-302療法は、良性の有害事象プロファイルをもたらした。従来の抗ムスカリ
ン全身性副作用、うっ滞、又はエンクラステーションのエビデンスは観察されなかった。
投与終了時(すなわち、42日目)に、平均1日尿失禁エピソードは、ベースラインの5
.42から1.28まで低減された。図9Bを参照されたい。経口不応性患者におけるT
AR-302の有効性は、平均1日尿失禁エピソードにおいてベースラインから2.7の
低減をもたらしたBotox(登録商標)よりも優れている。図10Aを参照されたい。
TAR-302の有効性はまた、平均1日尿失禁エピソードにおいてベースラインから1
.4及び0.8の減少をそれぞれもたらした、VESlcare(登録商標)(ソリフェ
ナシンコハク酸塩)及びDetrol(登録商標)LA(トルテロジン酒石酸塩)の経口
投与よりも優れている。図10Bを参照されたい。更に驚くべきことに、TAR-302
の除去後に持続的反応が観察された。TAR-302を除去した6週間後の84日目に、
被験者は、5.42のエピソードのベースラインよりも55%低い、2.44の1日尿失
禁エピソードを平均して有した。図9Bを参照されたい。
【0170】
排尿負担感スコア及び生活の質スコアも、図11図12に示されるように、TAR-
302により有意に改善された。TAR-302による42日間の治療後、排尿負担感ス
コアの40.3%の減少が観察された。TAR-302の除去から6週間後、排尿負担感
スコアは、19.1ポイント低減され、臨床的に意味のある改善であった。図12。同様
に、TAR-302を用いた42日間の治療期間の終了時に、生活の質スコアの有意な4
2.2ポイント増加が観察された。TAR-302の除去の6週間後の84日目でさえも
、生活の質スコアの有意な17.9ポイントの改善が観察された。
【0171】
a.評価項目
TAR-302の安全性を含む一次評価項目は、報告された有害事象(AE)、被験薬
事象(IPE)、身体的検査(PE)、バイタルサイン、臨床検査室試験、スケジュール
された膀胱鏡検査、膀胱超音波、膀胱内排尿後残留量(PVR)、及び併用薬の使用に基
づいて、試験全体を通して評価された。
【0172】
二次評価項目は、以下を含む。
1.TAR-302の忍容性については、例えば、指定された期間のTAR-302の
留置に耐え、被験者停止基準又は他の薬剤若しくはデバイス構成関連の有害事象のいずれ
かを満たすことによる予定除去日より前のTAR-302の除去を必要としなかった被験
者の割合に基づいて、試験全体を通して評価した。
2.血漿及び尿の薬物動態解析を0日目から56日目まで評価した。例えば、血漿中ト
ロスピウム曝露及び尿中トロスピウム曝露を試験し、解析した。
3.ベースラインを超える失禁の低減を0日目から84日目まで評価した。例えば、1
日の尿失禁エピソード(失禁は、不随意的な尿漏れの事例として定義される)の数におけ
るベースラインからのマイナス変化を評価し、解析した。
4.1日の排尿エピソードの低減を0日目から56日目まで評価した。例えば、被験者
がトイレに排尿する回数におけるベースラインからのマイナス変化を評価し、解析した。
5.排尿1回当たりの排尿量の増加を0日目から56日目まで評価した。例えば、別個
の24時間にわたって測定されたベースラインを超える増加を評価し、解析した。
【0173】
他の評価項目としては、0日目から84日目まで評価された生活の質(QoL)が挙げ
られる。例えば、QoLの改善のエビデンスを、被験者に過去4週間に関する以下の質問
のうちのいずれか又は組み合わせに回答させることによって評価した。a.被験者が不快
な尿意に悩まされた程度。b.被験者が、前兆のほとんどない又は全くない突然の尿意に
よって悩まされた程度。c.被験者が、偶発的な少量の尿漏れに悩まされた程度。e.被
検者が、夜間排尿に悩まされた程度。f.被験者が、尿意を催したことによる夜間の目覚
めに悩まされた程度。g.排尿への強い欲求に伴う尿漏れに悩まされた程度。h.被験者
の膀胱症状が、被験者に公共の場所でのトイレへの「逃げ道」を前もって考えさせ頻度。
i.被験者の膀胱症状が、自分に何か問題があると被験者に感じさせた頻度。j.被験者
の膀胱症状が、夜間の安眠の妨げになった頻度。k.被験者の膀胱症状が、自身のトイレ
で過ごす時間量について被験者に不満又はいらだちを感じさせた頻度。l.被験者の膀胱
症状が、被験者にトイレから離れる活動(例えば、ウォーキング、ランニング、ハイキン
グ)を避けさせた頻度。m.被験者の膀胱症状が、睡眠中の被験者を目覚めさせた頻度。
n.被験者の膀胱症状が、被験者に自身の身体活動(運動、スポーツなど)を減少させた
頻度。o.被験者の膀胱症状が、被験者に自身のパートナー又は配偶者との問題を抱えさ
せた頻度。p.被験者の膀胱症状が、被験者に、他者との移動中に、トイレに立ち寄らな
ければならないことから個体に気まずい思いをさせた頻度。q.被験者の膀胱症状が、被
験者の家族及び友人との関係に影響を及ぼした頻度。r.被験者の膀胱症状が、被験者に
恥ずかしい思いをさせた頻度。s.被験者の膀胱症状が、被験者に、初めて訪れる場所に
到着した途端に最も近いトイレを探させた頻度。
【0174】
b.適格性基準
組み入れ基準は以下を含む。1.被験者は、少なくとも6か月間、切迫性尿失禁又は切
迫性要素が優勢な混合型尿失禁を伴う過活動膀胱(OAB)(頻度/切迫性)の症状を有
する。例えば、被験者は、日記に記録されるように24時間当たり8回以上の排尿、又は
3日間日記に記録された、切迫感に関連付けられた少なくとも4つの失禁エピソードを有
する(被験者は、24時間毎又は1日当たりに発生する少なくとも1つのエピソードを有
しなければならない)。2.被験体は、OABの治療用の抗コリン薬に不適切な反応又は
制限的な副作用を有する。
【0175】
除外基準は以下を含む。1.被験者の年齢が18歳未満である。2.OABは、神経学
的状態によって引き起こされている。3.スクリーニング時に重度の腎機能不全が存在す
る(糸球体濾過量30mL/分未満)。4.スクリーニング時に何らかの原因の重度の多
尿症がある(尿量4,000mL/日超)。5.骨盤放射線歴がある。6.治験責任医師
が試験の組み入れに適さないとみなす膀胱癌又は膀胱の病状のいずれかの病歴がある。7
.期待される治癒効果を伴って治療された、転移又は死の危険性が無視できるものを除い
て、12か月以内に活動性悪性腫瘍が存在する。8.被験者は、TAR-302の安全な
配置、留置使用、又は除去を妨げ得る何らかの膀胱又は尿道の解剖学的特徴を有する。9
.治験責任医師の判断において、被験者は、重度の腹圧性尿失禁歴を有する。10.被験
者は、活動性膀胱結石又は試験登録前6か月以内の膀胱結石の病歴を有する。11.被験
者は、再発性症候性尿路感染症(UTI)(1年当たり4回超)の病歴を有する。12.
被験者は、尿閉又は胃閉又は制御不能狭角緑内障のいずれかを有する。13.被験者は、
300mL以上の排尿後残留量(PVR)を有する。14.被験者は、トロスピウム、化
学的に関連する薬剤、又は成分賦形剤に対する既知の過敏症を有する。15.被験者は、
シリコーン及びニチノールを含むデバイス材料に対して既知の過敏症を有する。16.被
験者は、積極的に経口トロスピウムを服用している。17.インフォームドコンセントフ
ォーム(ICF)に署名する前の30日以内に、OABの治療のための現在の薬(すなわ
ち、抗コリン薬、β-3アドレナリン作動性アゴニスト、抗けいれん薬、抗うつ薬、又は
ホルモン)に投与量を新たに追加又は変更した。試験の最終来院時まで、安定した投与量
を継続しなければならない。これらの薬物は、以前に使用され、中止されている場合、0
日目前に2週間を超える期間、停止されていなければならない。18.スクリーニング来
院前の過去9ヶ月以内に、膀胱内オナボツリナムトキシンを使用した。19.スクリーニ
ング来院前の過去30日以内に膀胱内抗コリン薬を使用した。20.被験者は、OABの
治療のための非薬物適用ベースの療法(すなわち、InterStim療法)の病歴があ
る。非侵襲性神経調節(すなわち、Percutaneous Tibial Nerv
e Stimulation(PTNS))の病歴は、試験0日目の少なくとも8週間前
に中止した場合に認められる。21.妊婦である(スクリーニング時に尿試験により検証
)又は授乳中である又は妊娠の可能性があり、許容可能な避妊方法を使用していない女性
被験者。22.被験者は、試験計画書の不履行をもたらし得る医学的状態を有する。23
.被験者は、スクリーニング来院前の60日以内に別の薬剤、デバイス、又は行動試験に
参加している。24.被験者は、治験責任医師の判断において、参加を禁忌とする、いず
れかの重度の心血管、肺、肝、腎、胃腸、婦人科、内分泌腺、免疫学的、皮膚科学的、神
経病学的、又は精神医学的疾患又は疾病の病歴又は存在を有する。25.スクリーニング
来院前の3ヶ月以内に以下のいずれかの病歴があること。膀胱癌とは無関係の骨盤、腰の
手術又は処置を含む、大病/大手術(入院を必要とする);ほとんどの外来処置は除外さ
れない;腎又は尿管結石疾患又は器具使用;出産。
【0176】
II.パートB.
本非盲検第1b相試験では、経口療法に対して不応性又は不耐性の特発性過活動膀胱(
iOAB)を有する患者における、TAR-302の安全性、忍容性、及び予備的有効性
を評価した。試験の被験者は、試験登録時に3日間にわたって少なくとも4つの失禁エピ
ソードを有する必要があった。被験者は、膀胱内滞留時間42日間のTAR-302の単
回投与を受けた。TAR-302を、挿入カテーテルを用いて配置し、膀胱鏡を介して除
去した。血液及び尿中の薬物動態(PK)解析を実施した。TAR-302に対する反応
は、3日間の尿失禁日記を使用して評価し、生活の質は、OAB-qショートフォーム(
OAB-q SF)を使用して評価した。
【0177】
結果
11人の被験者は、試験を成功裏に完了した。ベースライン特性を表1に示す。TAR
-302は、試験全体を通して十分に忍容された。TAR-302に潜在的に関連するA
Eは全て軽度であり、血尿(n=4)、膀胱不快感(n=2)、及び膀胱痛(n=2)を
含んだ。抗ムスカリン性曝露の典型が観察されたAEは、36日目の一過性の口渇の単一
の報告1件のみ存在し、これは自発的に解決された。2人の被験者は、挿入処置に潜在的
に関連すると考えられるUTIを経験した。
【0178】
PK解析は、トロスピウムレベルが試験全体で3.27μg/mLに平均化され、経口
トロスピウム(0.5~1μg/mL)で達成された予想尿レベルをはるかに上回ったこ
とを示した(2019年3月にアクセスされたSanctura FDA Packag
e Insertを参照されたい)。これらの膀胱内濃度は、無視できる全身曝露(平均
:0.22ng/mL)を生成した。
【0179】
【表1】
【0180】
被験者は、ベースラインの5.57事象から、42日目(p<0.01)の1.4事象
まで、平均1日切迫性尿失禁(UI)エピソードの75%の低減を経験した。11人の被
験者のうちの3人は、42日目に完全に排泄を抑制することができた。被験者はまた、O
AB-q SFによって測定されたように、症状の悩み及び健康関連の生活の質の両方に
おいて臨床的かつ統計的に有意な改善を経験した。症状の悩みサブスケールにおける平均
スコアは、41ポイント減少し(ベースラインにおいて74、42日目において33、p
<0.01)、HRQOLサブスケールにおける平均スコアは、45ポイント増加した(
ベースラインにおいて32、42日目において77、p<0.001)。
【0181】
驚くべきことに、被験者は、42日目のTAR-302の除去後に、この期間中に更な
る治療的介入がないにもかかわらず、永続的な症状の恩恵を経験したように見えた。平均
UIエピソードは、ベースラインよりも有意に低いままだった(84日目に2.67 U
Iエピソード/日、-52%、p<0.05)。UI改善の更なる尺度を表2に示す。更
に、両方のOABq-SFサブスケールに対する臨床的(統計的ではない)改善も、84
日目に観察された。症状の煩わしさは、19ポイント減少し(ベースラインにおいて74
対84日目において55)、HRQOLは18ポイント増加した(ベースラインにおいて
32対84日目において50、最低限の臨床的に意味のある変化=10ポイント)。
【0182】
【表2】
【0183】
TAR-302は、経口療法により十分に制御されていない、切迫性尿失禁を有する患
者の症状の管理における、安全性、忍容性、及び予備的有効性を促進することを実証した
【0184】
実施例2
この試験では、TAR-302を試験0日目に挿入器を通して過活動膀胱を有する被験
者の膀胱内に入れ、試験56日目に除去し、直後に別の挿入器でTAR-302を入れ、
112日目に除去する。被験者は、prnで(必要に応じて)TAR-302を用いた更
なる治療を受ける。
【0185】
I.評価項目
一次評価項目は、報告された有害事象(AE)、被験薬事象(IPE)、身体的検査(
PE)、バイタルサイン、臨床検査室試験、スケジュールされた膀胱鏡検査、膀胱超音波
、膀胱内排尿後残留量(PVR)、及び付随する薬物の使用に基づいて、試験全体を通し
て評価されたTAR-302の安全性を含む。
【0186】
二次評価項目は、以下を含む。
1.TAR-302の忍容性については、例えば、指定された期間のTAR-302の
留置に耐え、被験者停止基準又は他の薬剤若しくはデバイス構成関連の有害事象のいずれ
かを満たすことによる予定除去日より前のTAR-302の除去を必要としなかった被験
者の割合に基づいて、試験全体を通して評価した。
2.血漿及び尿の薬物動態解析を0日目から112日目まで評価した。例えば、血漿中
トロスピウム曝露及び尿中トロスピウム曝露を試験し、解析する。
3.ベースラインを超える失禁の低減を、試験への参加期間に対して評価した。例えば
、1日尿失禁のエピソード(失禁は、不随意的な尿漏れの事例として定義される)の数に
おけるベースラインからのマイナス変化を評価し、解析する。
4.1日排尿エピソードの低減を0日目から112日目まで評価した。例えば、被験者
がトイレに排尿する回数のベースラインからのマイナス変化を評価し、解析する。
5.排尿1回当たりの排尿量の増加を0日目から112日目まで評価した。例えば、別
個の24時間にわたって測定されたベースラインを超える増加を評価し、解析する。
【0187】
他の評価項目としては、0日目から112日目まで評価される生活の質(QoL)が挙
げられる。例えば、QoLの改善のエビデンスを、被験者に過去4週間に関する以下の質
問のうちのいずれか又は組み合わせに回答させることによって評価する。a.被験者が不
快な尿意に悩まされた程度。b.被験者が、前兆のほとんどない又は全くない突然の尿意
によって悩まされた程度。c.被験者が、偶発的な少量の尿漏れに悩まされた程度。e.
被検者が、夜間排尿に悩まされた程度。f.被験者が、尿意を催したことによる夜間の目
覚めに悩まされた程度。g.排尿への強い欲求に伴う尿漏れに悩まされた程度。h.被験
者の膀胱症状が、被験者に公共の場所でのトイレへの「逃げ道」を前もって考えさせ頻度
。i.被験者の膀胱症状が、自分に何か問題があると被験者に感じさせた頻度。j.被験
者の膀胱症状が、夜間の安眠の妨げになった頻度。k.被験者の膀胱症状が、自身のトイ
レで過ごす時間量について被験者に不満又はいらだちを感じさせた頻度。l.被験者の膀
胱症状が、被験者にトイレから離れる活動(例えば、ウォーキング、ランニング、ハイキ
ング)を避けさせた頻度。m.被験者の膀胱症状が、睡眠中の被験者を目覚めさせた頻度
。n.被験者の膀胱症状が、被験者に自身の身体活動(運動、スポーツなど)を減少させ
た頻度。o.被験者の膀胱症状が、被験者に自身のパートナー又は配偶者との問題を抱え
させた頻度。p.被験者の膀胱症状が、被験者に、他者との移動中に、トイレに立ち寄ら
なければならないことから個体に気まずい思いをさせた頻度。q.被験者の膀胱症状が、
被験者の家族及び友人との関係に影響を及ぼした頻度。r.被験者の膀胱症状が、被験者
に恥ずかしい思いをさせた頻度。s.被験者の膀胱症状が、被験者に、初めて訪れる場所
に到着した途端に最も近いトイレを探させた頻度。
【0188】
実施例3:特発性過活動膀胱(iOAB)及び尿失禁を有する被験者を対象にTAR-
302-5018によって膀胱内に送達されたトロスピウムの予期的多施設共同非盲検試
験-パート1。
TAR-302-5018は、850mgの塩化トロスピウムを収容し、in vit
ro試験における42日間の留置期間にわたって平均10mg/日を放出することが示さ
れている。この平均1日放出率は、1500mL/日の尿生成率を仮定して、ヒトにおい
て7μg/mLの尿濃度を生成すると推定される。
【0189】
I.目的
試験の目的は、最大42日間のTAR-302-5018の1回の投与サイクルの安全
性及び忍容性を評価することと、TAR-302-5018の42日留置期間中の尿及び
血漿中のトロスピウム曝露の薬物動態(PK)を評価することと、尿失禁、尿の症状(排
尿の頻度エピソード及び排尿量)、及び生活の質(QoL)の症状に対するトロスピウム
の膀胱内連続放出の効果を決定することと、を含む。
【0190】
II.方法論
経口抗コリン性療法に対して不応性又は不耐性の緊迫性尿失禁を伴うiOABを有する
被験者を、試験に組み入れるためにスクリーニングした。0日目に、TARIS挿入器に
よってTAR-302-5018を適格な被験者に経尿道的に送達した。42日目に、可
撓性又は剛性の膀胱鏡検査のいずれかによって、TAR-302-5018を除去した。
安全性及び有効性評価のために、被験者をTAR-302-5018の除去後およそ42
日間追跡し、84日目(±7日)で完了した。加えて、0日目、3日目(±1日)、7日
目(±1日)、21日目(±1日)、35日目(±2日)、42日目、及び56日目(±
2日)の来院時に、PK評価を行った。安全性の評価及び試験手順の注意のため、13日
目(±1日)、27日目(±1日)、38日目(±1日)、及び49日目(±1日)の来
院の合間に被験者に電話連絡した。
【0191】
およそ10人の被験者をこの試験の一部に組み入れるように計画した。12人の被験者
を登録し、TAR-302-5018の挿入を実施した。これらの12人の被験者を治療
意図(Intent-to-Treat:ITT)集団及び安全性集団に組み入れた。11人の被験者の
試験を完了し、パープロトコル(Per-Protocol:PP)集団に組み入れた。
【0192】
III.組み入れのための診断及び主な基準
この試験に参加するのに適格であるために、被検者は、登録時に以下の組み入れ基準を
全て満たしている必要があった。1.少なくとも6か月間、切迫性尿失禁又は切迫性要素
が優勢な混合型尿失禁を伴う過活動膀胱(OAB)(頻度/切迫性)の症状。これは、被
験者が、日記に記録されるように24時間当たり8回以上の排泄、及び/又は3日間日記
に記録された、切迫感に関連付けられた少なくとも4つの失禁エピソードを有する(又は
1日24時間毎に少なくとも1つのエピソードが生じた必要がある)ことを意味する。2
.OABの治療用の抗コリン薬による不適切な反応又は制限的な副作用。
【0193】
被験者は、以下の除外基準のいずれか1つが当てはまる場合、試験への組み入れに適格
ではなかった。1.年齢18歳未満。2.神経学的状態によって引き起こされるOAB。
3.スクリーニング時の重度の腎機能不全の存在(糸球体濾過量30mL/分未満)。4
.スクリーニング時の何らかの原因による重度の多尿症の存在(尿量4,000mL/日
超)。5.骨盤放射線歴。6.治験責任医師が試験の組み入れに適さないとみなした膀胱
癌又は膀胱の病状のいずれかの病歴。7.治癒効果の期待をもって治療された転移又は死
の危険性が無視できるものを除く、12か月以内の活動性悪性腫瘍。8.TAR-302
-5018の安全な配置、留置使用、又は除去を妨げ得る何らかの膀胱又は尿道の解剖学
的特徴を有する被験者。9.治験責任医師の判断において、被験者は、重度の腹圧性尿失
禁の病歴を有していた。10.活動性膀胱結石又は試験登録前6か月以内の膀胱結石の病
歴を有する被験者。11.再発性症候性尿路感染症(UTI)の病歴(1年当たり4回超
)。12.尿閉又は胃閉又は制御不能狭角緑内障のいずれかを有する被験者。13.30
0mL以上の排尿後残留量(PVR)。14.トロスピウム、化学的関連薬、又は成分賦
形剤に対する既知の過敏症を有する被験者。15.シリコーン及びニチノールを含むデバ
イス材料に対して既知の過敏症を有する被験者。16.積極的に経口トロスピウムを服用
している被験者。17.インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名する前の3
0日以内における、OABの治療のための現在の薬(すなわち、抗コリン薬、β-3アド
レナリン作動性アゴニスト、抗けいれん薬、抗うつ薬、又はホルモン)への投与量の新た
な追加又は変更。試験の最終来院時まで、安定した投与量を継続しなければならない。こ
れらの薬物は、以前に使用され、中止されている場合、0日目前に2週間を超える期間、
停止されていなければならない。18.スクリーニング来院前の過去9ヶ月以内に膀胱内
オナボツリナムトキシンを使用した。19.スクリーニング来院前の過去30日以内に膀
胱内抗コリン薬を使用した。20.OAB治療のための非投薬療法(すなわち、Inte
rstim療法)の病歴。Percutaneous Tibial Nerve St
imulation(PTNS))などの非侵襲性神経調節は、試験0日目の少なくとも
8週間前に中止した場合に認められた。21.妊婦である(スクリーニング時に尿試験に
より検証)又は授乳中である又は妊娠の可能性のあり、許容可能な避妊方法を使用してい
ない女性被験者。22.被験者が、試験計画書の不履行をもたらし得る医学的状態を有し
ていた。23.被験者が、書面によるインフォームドコンセントを提供することを拒否し
た。24.被験者は、アンケート及び/又は日記を完成させること、並びに/又は全ての
計画書で義務付けられた試験の来院時に来ることができなかったか又はそれに難色を示し
た。25.スクリーニング来院前の60日以内における別の薬剤、デバイス、又は行動試
験への参加。26.治験責任医師の判断において参加が禁忌とされる、いずれかの重度の
心血管、肺、肝、腎、胃腸、婦人科、内分泌腺、免疫学的、皮膚科学的、神経病学的、又
は精神医学的疾患又は疾病の病歴又は存在。27.スクリーニング来院前3ヶ月以内の以
下のいずれかの履歴:膀胱癌とは無関係の骨盤、腰の手術又は処置を含む、大病/大手術
(入院を必要とする);ほとんどの外来処置は除外されなかった;腎又は尿管結石疾患又
は器具使用;出産。28.血液サンプルを提供することが困難であること。29.治験責
任医師又はTARISの判断において、被験者を登録に適さないとした他の不特定な理由
【0194】
IV.エンドポイント
a.一次安全性エンドポイント
挿入、42日の連続曝露、及び除去にあたってのTAR-302-5018の安全性。
安全性は、治療中に発生した有害事象(Treatment-Emergent Adverse Event:TEAE)
、臨床検査室試験、バイタルサイン、身体的検査、膀胱超音波、被験薬事象(IPE)、
膀胱PVR評価、膀胱鏡検査、及び併用薬を介して評価した。
【0195】
b.二次安全性エンドポイント
挿入、42日の連続曝露、及び除去にあたってのTAR-302-5018の忍容性。
忍容性は、計画書固有の被験者停止基準又は他の薬剤若しくはデバイス構成に関する有害
事象(AE)のいずれかを満たすことによるスケジュールされた日より前の除去を必要と
しないものと定義された。血漿及び尿のPK解析(0日目、3日目(±1日)、7日目(
±1日)、21日目(±1日)、35日目(±2日)、42日目、及び56日目(±2日
)に基づく)。血漿及び尿サンプルを使用して、来院間の最大濃度(Cmax)、最大濃
度の試験日(Tmax)、42日目の除去時の濃度(Ctau)、0日目~42日目の平
均濃度(Cave42)、0日目~56日目の平均濃度(Cave56)を決定した。
【0196】
c.予備的な有効性エンドポイント
尿失禁の1日のエピソード数におけるベースラインからのマイナス変化として定義され
た尿失禁の低減であり、尿失禁事象は、0日目(ベースライン)、42日目、84日目(
±7日)の来院前3日間で被験者膀胱日記に記録されるように、不随意的な尿漏れの事例
として定義された。0日目(ベースライン)、3日目(±1日)、7日目(±1日)、2
1日目(±1日)、35日目(±2日)、42日目、及び56日目(±2日)の来院前2
4時間中に被験者日記に記録されるように、被験者がトイレに放尿する回数におけるベー
スラインからのマイナス変化として定義された1日排尿エピソードの低減。試験的評価:
0日目(ベースライン)、3日目(±1日)、7日目(±1日)、21日目(±1日)、
35日目(±2日)、42日目、及び56日目(±2日)の来院前24時間にわたって測
定され、被験者によって日記に記録される、ベースラインを超えた排尿1回当たりの排尿
量の増加。
【0197】
d.追加の有効性エンドポイント
0日目、42日目、及び84日目(±7日)に試験部位で完了するOAB-qショート
フォームによって評価される、QoLの改善のエビデンス。
【0198】
V.統計的方法
a.解析集団
ITT集団:正常に行われたか否かにかかわらず、0日目のTAR-302-5018
挿入処置が試みられた、登録された全ての被験者を含む。
【0199】
PP集団:TAR-302-5018挿入処置が正常に行われ、重大な計画書逸脱なし
に42日間の全治療期間にTAR-302-5018を保持した全ての被験者を含む。重
大な計画書逸脱は、データベースロックの前に定義された。
【0200】
安全性集団:TAR-302-5018挿入処置が正常に行われた、登録された全ての
被検者を含む。この試験では、ITT及び安全性集団は同一であり、ITT集団の結果が
提示されている。
【0201】
b.サンプルサイズの決定
サンプルサイズは、統計的考慮事項に基づくものではなかった。
【0202】
c.有効性
指定された来院前3日間の尿失禁エピソード数、指定された来院前3日間の排尿回数、
及び24時間の収集期間毎の全排尿量を、ベースラインからの変化と共に、時点別に記述
的に要約した。被験者反応の概要(尿失禁エピソードのベースラインからの50%超の減
少、尿失禁エピソードのベースラインからの75%超の減少、及び尿失禁エピソードのベ
ースラインからの100%の減少)を42日目及び84日目に提示した。OAB-qショ
ートフォームのスコアを、臨床試験報告書に定義されるように変換した。変換した症状の
重症度スコア及び変換した健康関連のQoLスコアを時点別に記述的に要約した。
【0203】
d.薬物動態
血漿中及び尿中トロスピウムを、時間別に記述的に要約した。血漿及び尿のCmax、
Tmax、Ctau、Cave42、及びCave56を記述的に要約した。
【0204】
e.安全性
Medical Dictionary for Regulatory Activ
ities(MedDRA)バージョン20.0を使用して、AEをコード化した。Me
dDRAシステム器官クラス及び好ましい用語によって、TEAEを要約した。TEAE
を更に、重症度、(薬剤構成、デバイス構成、又はTARIS挿入器との)関係、及び期
間(0日目~42日目、42日目~49日目[±1日]、及び0日目~49日目[±1日
])別に要約した。重篤な有害事象(SAE)も記述的に要約した。ベースラインからの
変化と共に、バイタルサイン及び臨床検査評価を記述的に要約した。身体的検査日を列挙
した。TAR-302-5018の留置期間について、耐性のある被験者の人数を提示し
た。IPEを記述的に要約した。膀胱PVR結果を記述的に要約した。膀胱超音波エンク
ラステーションの結果を被験者別に列挙した。膀胱尿路の膀胱鏡評価を被験者別に列挙し
た。以前の薬及び併用薬を、世界保健機関のDrug Dictonary Enhan
ced(B3 2017年12月版)を使用してコード化し、記述的に要約した。
【0205】
VI.概要及び結論
a.有効性の結果
失禁エピソードの平均数は、ベースラインと比較した場合に、42日目前の3日間で約
75%、84日目(±7日)前の3日間で約52%減少した。
【0206】
42日目に、PP集団の被験者の約82%は、尿失禁エピソードにおいてベースライン
から50%超の減少を有し、被検者の64%はベースラインから75%超の減少を有し、
被験者の27%はベースラインから100%の減少を有した。84日目(±7日)に、こ
れらの被験者の約46%は、ベースラインからの50%超の減少を報告し、18%は、ベ
ースラインからの75%超の減少を報告した。
【0207】
PP集団では、24時間期間中の平均排尿エピソード数は、ベースライン後の全ての時
点でベースラインから減少し、3日目(±1日)、7日目(±1日)、21日目(±1日
)、35日目(±2日)、42日目、及び56日目(±2日)でおよそ8%、12%、1
2%、14%、8%、及び11%の減少が観察された。
【0208】
PP集団では、平均24時間尿量は、3日目(±1日)、7日目(±1日)、21日目
(±1日)、35日目(±2日)、42日目、及び56日目(±2日)にベースラインか
ら減少した。しかしながら、これらの所見は、膀胱PVRの減少と共に観察された。
【0209】
PP集団では、変換した症状重症度の平均スコアは、42日目に約55%、84日目(
±7日)に約26%減少し、被験者から報告された症状重症度の減少を示した。
【0210】
PP集団では、変換された健康関連の生活の質(HRQL)の平均スコアは、42日目
に約143%、84日目(±7日)に約58%増加し、被験者から報告されたQoLの増
加を示した。
【0211】
b.薬物動態の結果
TAR-302-5018システムを挿入した後、トロスピウム尿中濃度は、3日目に
11人の被験者のうちの9人、及び7日目(±1日)にPP集団の被験者11人全員で(
7日目の平均濃度5258ng/mLによって)定量化した。
【0212】
尿濃度の大部分は、2000~6000ng/mLの予測範囲内にあり、標的濃度は4
2日目まで維持された。平均尿中トロスピウム濃度は、21日目(±1日)(平均526
5ng/mL)で最大であり、35日目(±2日)に3822ng/mL、42日目に3
565ng/mLまで低下した。
【0213】
検出可能な血漿濃度は稀であった。測定可能なトロスピウム血漿濃度を有するサンプル
は、一貫した時間経過を呈さず、観察された濃度は、測定された尿中濃度、尿量、又は回
収量と相関していなかった。独立した生物学的分析法を使用した確認解析によると、血漿
サンプルの外部汚染が、検出可能なトロスピウム濃度を有するサンプルのうちの2つの知
見に影響を与えた疑いがある。これら2つのサンプルを除外すると、試験全体のトロスピ
ウム濃度は一貫して低かった(0.7ng/mL未満)。
【0214】
全体的に、本試験の尿及び血漿濃度は、以前の非臨床試験における知見と概ね一致して
いた。
【0215】
c.安全性の結果
TAR-302-5018は、良好な忍容性を有した。忍容性の計画書固有の定義に基
づいて、TAR-302-5018に対して耐性がないと見なされた被験者はいなかった
【0216】
TEAE又はIPEのいずれかにより、早期に治療を中止した被験者はいなかった。1
人の被験者が、21日目に同意を撤回し、TAR-302-5018を中断したが、残り
の11人の被験者は、42日目の来院まで計画どおりにTAR-302-5018の使用
を継続し、試験を完了した。
【0217】
42日間の治療期間中の最も一般的なTEAEは、血尿(被験者12中4人、33.3
%)、UTI(被験者12人中2人、16.7%)、膀胱痛(被験者12人中2人、16
.7%)、膀胱不快感(被験者12人中2人、16.7%)、及び副鼻腔炎(被験者12
人中2人、16.7%)であった。AEの大部分は軽度であった。
【0218】
1つの薬剤関連のTEAEとして口渇が報告された。最も頻繁なデバイス関連TEAE
は、血尿(被験者12中4人、33.3%)、膀胱不快感(被験者12人中2人、16.
7%)、及び膀胱痛(被験者12人中2人、16.7%)であった。2人の被験者は、少
なくとも1つのTARIS挿入器関連TEAEを報告した。事象としては、悪心、嘔吐、
寒気、発熱、UTI、白血球数の増加、乳酸性アシドーシス、排尿障害、血尿、及び腎周
囲水腫が挙げられ、1人の被験者において全て(8.3%)、他の被験者において1件の
尿道痛報告(8.3%)があった。
【0219】
実験室パラメータにおけるベースラインからの平均変化は、概ね小さかった。ベースラ
イン後の(任意のレベルでの)潜在出血の知見は、21日目(±1日)で最も大きく(4
1.7%)、42日目で27.3%、84日目(±7日)で9.1%まで減少した。4人
の被験者は、TEAEとして報告された血尿の知見を有し、これらの報告のうちの1つは
、UTIのSAEを有する被験者におけるものであった。
【0220】
血圧、心拍数、呼吸数、及び体温におけるベースラインからの平均変化は小さく、臨床
的に意味のあるものではなかった。バイタルサイン異常に関連するTEAEを有した被験
者はいなかった。
【0221】
平均膀胱PVRは、スクリーニングから7日目(±1日)、21日目(±1日)、及び
35日目(±2日)にそれぞれおよそ21%、42%、及び29%減少した。
【0222】
膀胱共検査では、尿路上皮出血は観察されず、膀胱結石のエビデンス及び膀胱憩室のエ
ビデンスも観察されなかった。21日目(±1日)又は除去時の膀胱超音波評価では、エ
ンクラステーションの症例は観察されなかった。
【0223】
TAR-302-5018の損傷を含む1件のIPEが報告されており、治験責任医師
は、システムを除去するために把持している間に生じたことを疑った。被験者は、不快感
もいずれの他のTEAEも報告しなかった。
【0224】
d.結論
全体として、TAR-302-5018は、許容可能な安全プロファイルを有すること
が見出され、42日間の留置期間にわたって良好に忍容され、目標とした予想範囲内の尿
濃度を一貫して生成し、全身曝露は制限的であった。この患者集団では、排尿数の減少、
被験者報告による症状重症度スコアの減少、及びQoLの改善と共に、切迫性尿失禁エピ
ソード数の顕著な減少が観察された。最大の効果は、42日目に観察されたが、ベースラ
インからの持続的で意味のある改善は、TAR-302-5018の除去から6週間後に
行われる最終試験評価においても明らかであった。
【0225】
実施例4:特発性過活動膀胱(iOAB)及び尿失禁を有する被験者を対象にTAR-
302-5018によって膀胱内に送達されたトロスピウムの予期的多施設共同非盲検試
験-パート2。
トロスピウム放出膀胱内システム(TAR-302-5018)を試験0日目に挿入器
を通して膀胱内に入れ、試験84日目に除去する。TAR-302-5018は、84日
の留置時間中に徐々にトロスピウムを放出する。
【0226】
I.評価項目
図15Aに示すように、TAR-302-5018の安全性を0、14、56、84、
及び112日目に評価した。安全性については、報告されたAE、被験薬事象(IPE)
、身体的検査(PE)、バイタルサイン、臨床検査室試験、スケジュールされた膀胱鏡検
査、膀胱超音波、膀胱内排尿後残留量(PVR)、及び併用薬の使用に基づいて、試験全
体を通して評価した。
【0227】
TAR-302-5018の忍容性を評価した。指定された期間TAR-302-50
18の留置に耐え、被験者停止基準又は他の薬剤若しくはデバイス構成関連の有害事象の
いずれかを満たすことによる予定日より前のTAR-302-5018の除去を必要とし
ない被験者の割合。
【0228】
血漿及び尿の薬物動態解析[時間枠:0日目から112日目まで]を実施した。これは
、血漿中トロスピウム曝露及び尿中トロスピウム曝露の解析を含む。
【0229】
ベースラインを超える尿失禁の減少[時間枠:0日目から112日目まで]を評価した
。1日の尿失禁のエピソード数におけるベースラインからの変化を評価した。尿失禁は、
不随意的な尿漏れの事例として定義される。
【0230】
1日排尿エピソードの低減[時間枠:0日目から112日目まで]を評価した。被験者
がトイレに排尿する回数のベースラインからの変化を評価した。
【0231】
排尿1回当たりの排尿量の増加[時間枠:0日目から112日目まで]を評価した。別
個の24時間の期間に測定したとおりのベースラインからの変化を評価した。
【0232】
他の評価項目には、OAB-q Short Formによって評価される生活の質ス
コア及び悩みスコアが挙げられる。
【0233】
II.組み入れ基準
少なくとも6か月間、切迫性尿失禁又は切迫性要素が優勢な混合型尿失禁を伴う特発性
過活動膀胱(iOAB)(頻度/切迫感)の症状を有する患者が組み入れられた。これら
の被験者は、日記に記録されるように24時間当たり8回以上の排尿、又は3日間日記に
記録された、切迫感に関連付けられた少なくとも4つの失禁エピソードを有し得る(又は
24時間毎に少なくとも1つのエピソードが生じる)。
【0234】
被験者が、OABの治療のための以前の経口薬に対する不十分な反応又はそれによる制
限的な副作用を経験している場合も、治験責任医師の判断において患者を組み入れた。
【0235】
III.除外基準
以下に列挙される条件のいずれかを満たす患者を除外した。1.年齢18歳未満。2.
神経学的膀胱の状態。3.真性糖尿病を有する被験者(タイプ1及びタイプ2の両方)は
、スクリーニング時に尿試験紙を介して、7.5%未満のHbA1cレベルを有する最適
な血糖コントロールを示し、3+グルコースとして定義された重度の糖尿ではないことを
実証しなければならない。4.スクリーニング時の何らかの原因による重度の多尿症の存
在(尿量3,000mL/日超)。5.夜間(午後)睡眠時に採取された、最初の朝(午
前)の排尿も含まれる24時間尿の総量の30%超と定義された、試験スクリーニング時
の夜行性多尿症の存在。6.骨盤照射歴。7.治験責任医師が試験への組み入れに適さな
いとみなす膀胱癌又は膀胱の病状のいずれかの病歴。8.0日目に30日以内の膀胱を空
にするために、間欠的カテーテル法(IC)を現在使用していること。9.治験責任医師
の判断において、IPの安全な配置、留置使用、又は除去を妨げ得る何らかの膀胱又は尿
道の解剖学的特徴(例えば、尿道狭窄)を有する被験者。10.活動性膀胱結石又は試験
登録前6か月以内の膀胱結石の病歴を有する被験者。11.0日目から30日以内の肉眼
的血尿。12.0日目から30日以内の制御不能な出血、出血性素因、又は基礎となる凝
固障害の病歴。13.治験責任医師の判断において、被験者は重度の腹圧性尿失禁の病歴
を有する。14.0日目前6ヶ月で2回を超える症候性尿路感染症の病歴があること。1
5.0日目から90日以内に尿閉又は胃閉又は制御不能狭角緑内障のいずれかを有する被
験者。16.100mL以上の排尿後残留量(PVR)。17.トロスピウム、化学的関
連薬、又は成分賦形剤に対する既知の過敏症を有する被験者。18.シリコーン及びニチ
ノールを含むデバイス材料に対して既知の過敏症を有する被験者。19.0日目前の2週
間以内に、切迫性尿失禁の治療のために抗コリン薬又はβ-3アゴニストを使用した。2
0.スクリーニング来院前の過去9ヶ月以内に膀胱内オナボツリナムトキシンの使用歴が
ある。21.スクリーニング来院前の過去14日以内に膀胱内抗コリン薬を投与した。2
2.OABの治療のための処置ベースの神経調節療法(例えば、InterStim療法
、Percutaneous Tibial Nerve Stimulation[P
TNS])の病歴。23.妊娠している(スクリーニング時に血清試験により検証された
もの)又は授乳中の女性被験者。24.被験者は、治験責任医師の判断において、試験計
画書の不履行をもたらし得る医学的状態を有する。25.アンケート、日記を完成させる
こと、又は全ての計画書で義務付けられた試験来院時に来ることができないか又はそれに
難色を示している被験者。26.スクリーニング来院前の60日以内に、別の薬剤、デバ
イス、又は行動試験に参加した。27.いずれかの重度の心血管、肺、肝、腎、胃腸、婦
人科、内分泌腺、免疫学的、皮膚科学的、神経病学的、又は精神医学的疾患若しくは疾病
の病歴又は存在、あるいは治験責任医師又はTARISの判断において、被験者の登録を
適さないとする他の不特定な理由。28.スクリーニング来院前3か月以内の以下のいず
れかの履歴:i.骨盤、腰の手術又は処置を含む、大病/大手術(入院を必要とする);
ほとんどの外来処置は除外されない;ii.出産。29.0日目前6ヶ月以内の前立腺生
検又は手術(切除又は非切除)の病歴。30.重度の骨盤臓器脱の病歴(等級3以上)。
31.血液サンプルを提供することが困難であること。32.スクリーニング前12か月
以内に薬物又はアルコール依存症の既知の病歴。33.治験責任医師又はTARISの判
断において、被験者を登録に適さないとした他の不特定な理由。
【0236】
図15Aに示すように、1日の尿失禁事象を0、14、56、84、及び112日目に
評価した。図15Bに示すように、治療前に、患者は1日当たり平均5.23回の尿失禁
エピソードを経験した。14日目に、平均1日尿失禁エピソードは、ベースラインから2
.9まで低減され、44%減少した。56日目に、平均1日尿失禁エピソードは、ベース
ラインから3.0まで低減され、43%減少した。84日目に、平均1日尿失禁エピソー
ドは、ベースラインから2.3まで低減され、56%減少した。これは、膀胱へのトロス
ピウムの長期的な局所送達が、過活動膀胱の治療に有効であることを示している。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
【手続補正書】
【提出日】2024-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過活動膀胱を有する個体の膀胱を訓練する方法であって、有効量のトロスピウムを少なくとも約24時間、前記個体の膀胱に局所的に投与することを含む、方法。
【外国語明細書】