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▶ イノベント バイオロジックス (スウツォウ) カンパニー,リミテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164038
(43)【公開日】2024-11-26
(54)【発明の名称】抗PD-L1抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241119BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241119BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241119BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241119BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241119BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241119BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241119BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241119BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241119BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241119BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20241119BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241119BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241119BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241119BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241119BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241119BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K48/00
A61P37/00
A61P37/04
A61P37/02
A61P31/00
A61K47/68
A61P35/00
G01N33/53 D
G01N33/53 Y
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】38
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024125864
(22)【出願日】2024-08-01
(62)【分割の表示】P 2020525995の分割
【原出願日】2018-12-27
(31)【優先権主張番号】201711449321.X
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811567281.3
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518049935
【氏名又は名称】イノベント バイオロジックス (スウツォウ) カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ、シャオニウ
(72)【発明者】
【氏名】フ、ホアチン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ジュンジャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ビンリャン
(72)【発明者】
【氏名】リ、リー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】PD-L1により良好に結合し、かつ、良好なドラッガビリティーを有する新規な抗PD-L1抗体を提供する。
【解決手段】PD-L1に特異的に結合する抗体および抗体フラグメント、この抗体または抗体フラグメントを含んでなる組成物、この抗体またはその抗体フラグメントをコードする核酸、対応する宿主細胞およびその使用を提供する。さらに、この抗体および抗体フラグメントと他の療法との組合せを使用するある種の療法も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体が
(i)配列番号26もしくは30で示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDRsと、配列番号32もしくは36で示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRs、または
(ii)配列番号27で示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDRsと、配列番号33で示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRs、または
(iii)配列番号28で示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDRsと、配列番号34で示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRs、または
(iv)配列番号29または31で示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDRsと、配列番号35または37で示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRs
を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体が重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(HCDRs)と軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(LCDRs)とを含んでなり、ここで、
HCDR1は、配列番号1、2、3、または4に示されるアミノ酸配列を含んでなり、HCDR2は、配列番号5、6、7、8、または9に示されるアミノ酸配列を含んでなり、HCDR3は、配列番号10、11、12、または13に示されるアミノ酸配列を含んでなり、LCDR1は、配列番号14、15、または16に示されるアミノ酸配列を含んでなり、LCDR2は、配列番号17、18、19、または20に示されるアミノ酸配列を含んでなり、かつ、LCDR3は、配列番号21、22、23、24、または25に示されるアミノ酸配列を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体が重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含んでなり、ここで、
前記重鎖可変領域が、
(i)表Bに挙げられている抗体のいずれか1つのVHに含まれる3つの相補性決定領域(HCDRs);または
(ii)表Aに示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3の組合せ
を含んでなり;かつ/または
前記軽鎖可変領域が、
(i)表Bに挙げられている抗体のいずれか1つのVLに含まれる3つの相補性決定領域(LCDRs);または
(ii)表Aに示されるLCDR1、LCDR2、およびLCDR3の組合せ
を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体が軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含んでなり、
(i)前記重鎖可変領域は、配列番号26もしくは30から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;かつ/または
前記軽鎖可変領域は、配列番号32もしくは36から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;
(ii)前記重鎖可変領域は、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるもしくからなり;かつ/または
前記軽鎖可変領域は、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;
(iii)前記重鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;かつ/または
前記軽鎖可変領域は、配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;
(iv)前記重鎖可変領域は、配列番号29もしくは31から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;かつ/または
前記軽鎖可変領域は、配列番号35もしくは37から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗体が軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含んでなり、ここで、
(i)前記重鎖可変領域は、配列番号26もしくは30のアミノ酸配列を含んでなり;かつ/または
前記軽鎖可変領域は、配列番号32もしくは36のアミノ酸配列を含んでなり;
(ii)前記重鎖可変領域は、配列番号27のアミノ酸配列を含んでなり;かつ/または
前記軽鎖可変領域は、配列番号33のアミノ酸配列を含んでなり;
(iii)前記重鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を含んでなり;かつ/または
前記軽鎖可変領域は、配列番号34のアミノ酸配列を含んでなり;
(iv)前記重鎖可変領域は、配列番号29もしくは31のアミノ酸配列を含んでなり;かつ/または
前記軽鎖可変領域は、配列番号35もしくは37のアミノ酸配列を含んでなる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記抗体が
(a)以下を含んでなるもしくはからなる重鎖:
(i)配列番号38、42、43、もしくは44から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(ii)配列番号38、42、43、もしくは44から選択されるアミノ酸配列;および/または
(b)以下を含んでなるもしくはからなる軽鎖:
(i)配列番号46もしくは50から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(ii)配列番号46もしくは50から選択されるアミノ酸配列;あるいは
(a)以下を含んでなるもしくはからなる重鎖:
(i)配列番号39のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(ii)配列番号39のアミノ酸配列;および/または
(b)以下を含んでなるもしくはからなる軽鎖:
(i)配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(ii)配列番号47のアミノ酸配列;あるいは
(a)以下を含んでなるもしくはからなる重鎖:
(i)配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;もしくは
(ii)配列番号40のアミノ酸配列;および/または
(b)以下を含んでなるもしくはからなる軽鎖:
(i)配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(ii)配列番号48のアミノ酸配列;あるいは
(a)以下を含んでなるもしくはからなる重鎖:
(i)配列番号41もしくは45から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(ii)配列番号41もしくは45から選択されるアミノ酸配列;および/または
(b)以下を含んでなるもしくはからなる軽鎖:
(i)配列番号49もしくは51から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(ii)配列番号49もしくは51から選択されるアミノ酸配列
を含んでなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
下記の特徴:
(1)PD-L1(例えば、ヒトPD-L1)と高い親和性で結合する、例えば、PD-L1と約2nM未満の平衡解離定数(K)で結合する;
(2)抗体またはそのフラグメントが、ヒトPD-L1を発現する細胞と、例えば約2nM以下のEC50で結合する;
(3)抗体またはそのフラグメントが、PD-L1に関連した活性を、例えば約0.7nM以下のEC50で遮断する;
(4)抗体またはそのフラグメントが、例えば、既知の抗PD-L1抗体、例えばテセントリクよりも良好にT細胞機能を増強する;
(5)抗体またはそのフラグメントが、例えば、MLRにおいて、例えば、既知の抗PD-L1抗体、例えばテセントリクよりも良好にT細胞増殖を増強する;
(6)抗体またはそのフラグメントが、、例えば、既知の抗PD-L1抗体、例えばテセントリクよりも良好にIFN-γ分泌を増強する;
(7)抗体またはそのフラグメントが、例えば、既知の抗PD-L1抗体、例えばテセントリクよりも良好にIL-2分泌を増強する;
(8)Zenixカラムアッセイにおいて、保持時間(RT)が約10分未満;
(9)PD-L1の1以上の活性を阻害する、例えば、下記のうち1以上をもたらす:腫瘍浸潤リンパ球の増加、T細胞受容体媒介増殖の増加、または癌細胞の免疫回避の減少;
(10)抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を誘導する;
(11)PD-L1に対して、表3に挙げられている抗体のいずれか1つと同じまたは類似の結合親和性および/または特異性を示す;
(12)表3に挙げられている抗体のいずれか1つのPD-L1への結合を阻害する(例えば、競合的に阻害する);
(13)表3に挙げられている抗体のいずれか1つと同じまたは重複するエピトープに結合する;
(14)PD-L1との結合をめぐって表3に挙げられている抗体のいずれか1つと競合する;
(15)表3に挙げられている抗体のいずれか1つの1以上の生物学的特徴を有する
のうちの1以上を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の、PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体がIgG1またはIgG4の形態の抗体または抗原結合フラグメントであり、場合により、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントがκ軽鎖定常領域、例えば、ヒトκ軽鎖定常領域を含んでなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記抗体がヒト化抗体またはヒト抗体またはキメラ抗体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗原結合フラグメントが、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFvなどの一本鎖抗体、(Fab’)フラグメント、シングルドメイン抗体、ダイアボディ(dAb)、または直鎖抗体からなる群から選択される抗体フラグメントである、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
前記抗体が、二重特異性または多重特異性抗体、好ましくはPD-L1およびLAG-3に結合する二重特異性抗体である、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸。
【請求項14】
好ましくはpTT5ベクターなどの発現ベクターである、請求項13に記載の核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項15】
請求項13に記載の核酸または請求項14に記載のベクターを含んでなる宿主細胞であって、好ましくは原核生物または真核生物であり、より好ましくは大腸菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、または抗体またはその抗原結合フラグメントの生産に好適な他の細胞からなる群から選択され、最も好ましくは293細胞またはCHO細胞である、宿主細胞。
【請求項16】
抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを製造する方法であって、請求項15に記載の宿主細胞を請求項1~12のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸の発現に好適な条件でインキュベートすること、および場合により、前記抗体またはその抗原結合フラグメントを単離することを含んでなり;場合により、前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを前記宿主細胞から回収することをさらに含んでなる、方法。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントと細胞傷害性薬剤などの付加的物質とを含んでなる、免疫複合体。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは請求項17に記載の免疫複合体と、場合により医薬補助材料とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは請求項17に記載の免疫複合体、付加的治療薬、および場合により、医薬補助材料を含んでなり;好ましくは、前記付加的治療薬が、化学療法薬、他の抗体(例えば、抗LAG-3抗体、例えば、ヒト抗原に結合する抗LAG-3抗体、好ましくは、抗LAG-3抗体はヒト化されている)、細胞傷害性薬剤、ワクチン、抗感染活性薬、または免疫調節薬(例えば、共刺激分子の活性化剤または免疫チェックポイント分子の阻害剤)からなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項20】
前記抗LAG-3抗体が、
(i)配列番号75で示される重鎖可変領域の3つの重鎖相補性決定領域(HCDRs)、および/または
(ii)配列番号76で示される軽鎖可変領域の3つの軽鎖相補性決定領域(LCDRs)
を含んでなる、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗LAG-3抗体が、重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、ここで、
(i)前記VHは、相補性決定領域(CDRs)HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含んでなり、前記HCDR1は、配列番号69のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記HCDR2は、配列番号70から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはそのアミノ酸配列からなり;前記HCDR3は、配列番号71のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;および/または
(ii)前記VLは、相補性決定領域(CDRs)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含んでなり、前記LCDR1は、配列番号72のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記LCDR2は、配列番号73のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記LCDR3は、配列番号74から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはそのアミノ酸配列からなる、
請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
被験体または個体において腫瘍または感染性疾患を予防または治療するための薬物の調製における、有効量の請求項1~12のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または請求項17に記載の免疫複合体の使用。
【請求項23】
被験体または個体において腫瘍または感染性疾患を予防または治療するための薬物の調製における、有効量の請求項1~12のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、請求項17に記載の免疫複合体、または請求項18もしくは19に記載の医薬組成物、および抗LAG-3抗体(例えば、ヒト抗原に結合する抗LAG-3抗体、好ましくは、抗LAG-3抗体はヒト化されている)の使用。
【請求項24】
前記腫瘍が癌、例えば、消化管腫瘍、例えば、消化管癌、例えば、結腸癌であるか;または前記感染性疾患が慢性感染症である、請求項22または23に記載の使用。
【請求項25】
前記薬物が他の療法の1以上と組み合わせて投与されてよく、前記療法は、例えば、治療法および/または他の治療薬を含み、好ましくは、前記治療法は、外科療法および/もしくは放射線療法を含み、または前記治療薬は、化学療法薬、細胞傷害性薬剤、ワクチン、抗感染活性薬、他の抗体(例えば、抗LAG-3抗体、例えば、ヒト抗原に結合する抗LAG-3抗体、好ましくは、抗LAG-3抗体はヒト化されている)、または免疫調節薬(例えば、共刺激分子の活性化剤または免疫チェックポイント分子の阻害剤)からなる群から選択される、請求項22~24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記抗LAG-3抗体が、
(i)配列番号75で示される重鎖可変領域の3つの重鎖相補性決定領域(HCDRs)、および/または
(ii)配列番号76で示される軽鎖可変領域の3つの軽鎖相補性決定領域(LCDRs)
を含んでなる、請求項23~25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
前記抗LAG-3抗体が、重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、ここで、
(i)前記VHは、相補性決定領域(CDRs)HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含んでなり、前記HCDR1は、配列番号69のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記HCDR2は、配列番号70から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはそのアミノ酸配列からなり;前記HCDR3は、配列番号71のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;かつ/または
(ii)前記VLは、相補性決定領域(CDRs)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含んでなり、ここで、前記LCDR1は、配列番号72のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記LCDR2は、配列番号73のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記LCDR3は、配列番号74から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはそのアミノ酸配列からなる、
請求項23~25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
サンプルにおいてPD-L1を検出するための方法であって、
(a)前記サンプルを請求項1~12のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させること;および
(b)抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントおよびPD-L1の複合体の形成を検出すること、場合により、抗PD-L1抗体が検出可能に標識される
を含んでなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PD-L1に特異的に結合する新規な抗体およびその抗体フラグメントならびにこの抗体または抗体フラグメントを含んでなる組成物に関する。加えて、本発明は、この抗体またはその抗体フラグメントをコードする核酸、この核酸を含んでなる宿主細胞、および関連の使用に関する。さらに、本発明は、これらの抗体および抗体フラグメントの治療的および診断的使用に関する。特に、本発明は、これらの抗体および抗体フラグメントと他の療法、例えば、治療法または薬剤の併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラム細胞死-リガンド1(Programmed death-ligand 1)(PD-L1)は、慢性感染症、妊娠、組織同種移植、自己免疫疾患、および癌の際に免疫系の応答の抑制に関与するタンパク質である。PD-L1は、T細胞、B細胞および単球の表面で発現されるプログラム細胞死1(PD-1)と呼ばれる阻害性の受容体と結合することにより免疫応答を調節する。PD-L1はまた、他の受容体B7.1(B7-1またはCD80としても知られる)との相互作用を介してT細胞機能に負の調節を行う。PD-L1/PD-1およびPD-L1/B7.1複合体の形成は、T細胞受容体シグナル伝達に負の調節を行い、続いてT細胞の活性化の下方調節および抗腫瘍免疫活性の阻害をもたらす。PD-L1は、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、肺腫瘍、黒色腫、卵巣腫瘍、唾液腺腫瘍(salivary tumors)、胃腫瘍、および甲状腺腫瘍などの様々な固形腫瘍を含む多くの癌で過剰発現される。腫瘍細胞におけるPD-L1の過剰発現は、腫瘍浸潤を促進する可能性があり、不良な予後と関連している場合が多い。
【0003】
よって、当技術分野では、PD-L1により良好に結合し、かつ、良好なドラッガビリティーを有する新規な抗PD-L1抗体の需要がなおある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、PD-L1に結合する抗体分子が開示される。抗体またはその抗体フラグメントをコードする核酸、ならびにその抗体分子を生産するための発現ベクター、宿主細胞、および方法も提供される。また、抗PD-L1抗体分子、多重特異性または二重特異性抗体分子を含んでなる免疫複合体、および医薬組成物も提供される。本明細書に開示される抗PD-L1抗体分子は、腫瘍性疾患および感染性疾患を治療、予防および/または診断するために単独で使用することもできるし、または他の療法、例えば、治療薬または治療法と併用することもできる。加えて、本明細書では、PD-L1を検出するための組成物および方法、ならびに抗PD-L1抗体分子を用いて腫瘍および/または感染性疾患を含む様々な疾患を予防または治療するための方法も開示される。
【0005】
よって、いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、PD-L1に(特異的に)結合する。いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、ヒトPD-L1に(特異的に)結合する。
【0006】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントは、PD-L1(例えば、ヒトPD-L1)に高い親和性で結合し、例えば、PD-L1に約50nM未満、好ましくは約20nM以下、より好ましくは約15nM以下、より好ましくは約10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、または2nM以下、最も好ましくは約1.5nM、1.4nM、1.3nM、1.2nM、1.1nM、1nM、0.9nM、または0.8nM以下の平衡解離定数(K)で結合する。いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体は、PD-L1に0.1~10nM、好ましくは0.5~10nM、より好ましくは0.6~10nM、0.7~8nM、および0.7~5nM、最も好ましくは0.5~1.5nM、0.7~1.5nM、および0.7~1nMのKで結合する。いくつかの実施態様では、PD-L1は、ヒトPD-L1である。いくつかの実施態様では、抗体の結合親和性は、生物学的光干渉法(例えば、Fortebio親和性測定)を用いて決定される。
【0007】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、ヒトPD-L1を発現する細胞に、例えば、約4nM、3.5nM、3nM、2.9nM、2.8nM、2.7nM、2.6nM、2.5nM、2.4nM、2.3nM、2.2nM、2.1nM、2nM、1.9nM、1.8nM、1.7nM、または1.6nM以下のEC50で結合する。いくつかの実施態様では、結合は、フローサイトメトリー(例えば、FACS)を用いて決定される。いくつかの実施態様では、ヒトPD-L1を発現する細胞は、ヒトPD-L1を発現するCHO細胞である。
【0008】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、PD-L1の関連活性を、例えば、約10nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、または0.7nM以下、好ましくは0.1~1nM、0.5~1nM、0.6~1nM、0.6nM、0.7nM、0.8nM、0.9nM、または1nMのEC50で遮断する。いくつかの実施態様では、PD-L1の関連活性は、PD-L1のPD-1への結合である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、MOAアッセイにおいて、PD-L1のPD-1への結合を、約10nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、または0.7nM以下、好ましくは0.1~1nM、0.5~1nM、0.6~1nM、0.6nM、0.7nM、0.8nM、0.9nM、または1nMのEC50で阻害する。いくつかの実施態様では、この細胞は、CHO細胞である。
【0009】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、T細胞機能を増強する。いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、T細胞増殖を増強する。いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、IFN-γ分泌を増強する。いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、IL-2分泌を増強する。いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、IFN-γ分泌とIL-2分泌の両方を増強する。いくつかの実施態様では、この増強は混合リンパ球反応(MLR)により決定される。いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントのT細胞を活性化させる能力は、テセントリクなどの既知の抗PD-L1抗体よりも良好である。
【0010】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、既知の抗PD-L1抗体(例えばテセントリク)よりも粘稠度が低く、従って、より良好なドラッガビリティーを有する。いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、Zenixカラムクロマトグラフィーにおいて、約10分、約9分、または約8分未満、好ましくは約7~9分、好ましくは約7~8.5分、約7.5~8.5分、約7~8分、または約7.5~8分、例えば、約7.5分、7.6分、7.7分、7.8分、7.9分、8分、8.1分、8.2分、8.3分、8.4分、8.5分の保持時間(RT)を有する。
【0011】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、PD-L1の1以上の活性を阻害する、例えば、下記:腫瘍浸潤リンパ球の増加、T細胞受容体媒介増殖の増加、または癌細胞の免疫回避の減少のうち1以上を引き起こす。
【0012】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントは、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を誘導し得る。
【0013】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体は、単独で、または他の療法(例えば、治療法および/もしくは薬剤)と組み合わせて、腫瘍(例えば、癌)または感染(例えば、慢性感染症)の治療に有効である。いくつかの実施態様では、腫瘍は、免疫回避腫瘍(tumor immune escape)である。いくつかの実施態様では、腫瘍は癌である。いくつかの実施態様では、腫瘍は消化管腫瘍である。いくつかの実施態様では、癌は結腸癌である。
【0014】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントの重鎖および/または軽鎖は、METDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号68)などのシグナルペプチド配列をさらに含んでなる。
【0015】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体はまた、抗PD-L1抗体のアミノ酸配列の変異体、ならびに上記の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントのいずれかと同じエピトープに結合する抗体も包含する。
【0016】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体は、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含んでなる。いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、またはIgEの形態の抗体である。いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEの重鎖定常領域からなる群から選択される;特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4の重鎖定常領域からなる群から選択される重鎖定常領域、より詳しくは、IgG1またはIgG4の重鎖定常領域、例えば、ヒトIgG1またはIgG4の重鎖定常領域を含んでなる。一つの実施態様では、重鎖定常領域は、ヒトIgG1またはヒトIgG4の重鎖定常領域である。いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体に含まれるマウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、およびIgG3からなる群から選択される。
【0017】
別の実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体分子は、例えば、κまたはλ軽鎖定常領域、好ましくはκ(例えば、ヒトκ)軽鎖定常領域から選択される軽鎖定常領域を有する。
【0018】
別の実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、IgG4(例えば、ヒトIgG4)の重鎖定常領域を含んでなる。一つの実施態様では、ヒトIgG4は、EUナンバリングに従って228番の置換(例えば、SerからProへの置換)を含んでなる。別の実施態様では、ヒトIgG4は、114~115番(EUナンバリング)のAAに突然変異を含む(Armour KL1, Clark MR, Hadley AG, Williamson LM, Eur J Immunol., Aug., 1999; 29(8):2613-24, Recombinant human IgG molecules lacking Fcgamma receptor I binding and monocyte triggering activities)。別の実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、IgG1(例えば、ヒトIgG1)の重鎖定常領域を含んでなる。一つの実施態様では、ヒトIgG1は、EUナンバリングに従って297番の置換(例えば、AsnからAlaへの置換)を含んでなる。一つの実施態様では、ヒトIgG1は、EUナンバリングに従って265番の置換、EUナンバリングに従って329番の置換、またはその両方(例えば、EUナンバリングに従って265番のAspからAlaへの置換および/またはEUナンバリングに従って329番のProからAlaへの置換)を含んでなる。一つの実施態様では、ヒトIgG1は、EUナンバリングに従って234番の置換、EUナンバリングに従って235番の置換、またはその両方(例えば、EUナンバリングに従って234番のLeuからAlaへの置換および/またはEUナンバリングに従って235番のLeuからAlaへの置換)を含んでなる。一つの実施態様では、重鎖定常領域は、配列番号64、65、もしくは66に示されるアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれを超える同一性を有する配列を含んでなるか、または該配列からなる。
【0019】
別の実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、κ軽鎖定常領域、例えば、ヒトκ軽鎖定常領域を含んでなる。一つの実施態様では、軽鎖定常領域は、配列番号67に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれを超える同一性を有する配列を含んでなるか、または該配列からなる。
【0020】
一つの実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、IgG1の重鎖定常領域(例えば、ヒトIgG1の重鎖定常領域)およびκ軽鎖定常領域(例えば、ヒトκ軽鎖定常領域)を含んでなる。一つの実施態様では、ヒトIgG1は、EUナンバリングに従って297番の置換(例えば、AsnからAlaへの置換)を含んでなる。いくつかの実施態様では、IgG1重鎖定常領域は、配列番号64もしくは65に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれを超える同一性を有する配列を含んでなるか、または該配列からなる。一つの実施態様では、ヒトκ軽鎖定常領域は、配列番号67に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれを超える同一性を有する配列を含んでなるか、または該配列からなる。
【0021】
別の実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、IgG4の重鎖定常領域(例えば、ヒトIgG4重鎖定常領域)およびκ軽鎖定常領域(例えば、ヒトκ軽鎖定常領域)を含んでなる。一つの実施態様では、定常領域は、変異型IgG4定常領域、例えば、変異型ヒトIgG4定常領域(例えば、EUナンバリングに従って228番の突然変異、例えば、S228P突然変異を有し、かつ/または114~115番(EUナンバリング)のAAに突然変異を有する)である。いくつかの実施態様では、IgG4重鎖定常領域は、配列番号66に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれを超える同一性を有する配列を含んでなるか、または該配列からなる。一つの実施態様では、ヒトκ軽鎖定常領域は、配列番号67に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれを超える同一性を有する配列を含んでなるか、または該配列からなる。
【0022】
一つの実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、単離されているか、または組換え体である。
【0023】
いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体または単一特異性の抗体である。抗PD-L1抗体分子はまた、ヒト化、キメラ、またはヒト抗体分子であってもよい。いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、キメラ抗体である。いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体のフレームワーク配列の少なくとも一部は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列である。一つの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体はまた、その抗体フラグメント、好ましくは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、一本鎖可変フラグメント(例えば、scFv)または(Fab’)、シングルドメイン抗体、ダイアボディ(dAb)、または直鎖抗体からなる群から選択される抗体フラグメントも含んでなる。
【0024】
いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、二重特異性または多重特異性抗体分子の形態である。一つの実施態様では、二重特異性抗体分子は、PD-L1に対して第1の結合特異性を有し、LAG-3に対して第2の結合特異性を有する。一つの実施態様では、二重特異性抗体分子は、PD-L1およびLAG-3に結合する。多重特異性抗体分子は、PD-L1および他の標的に対する結合特異性のいずれの組合せも持ち得る。
【0025】
一つの態様において、本発明は、上記の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントのいずれかをコードする核酸を提供する。一つの実施態様では、核酸を含んでなるベクターが提供される。一つの実施態様では、ベクターは、発現ベクターである。一つの実施態様では、核酸またはベクターを含んでなる宿主細胞が提供される。一つの実施態様では、宿主細胞は、真核生物である。別の実施態様では、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞もしくは293細胞)、または抗体またはその抗原結合フラグメントの調製に好適な他の細胞から選択される。別の実施態様では、宿主細胞は、原核生物、例えば、大腸菌(E. coli)細胞である。
【0026】
一つの実施態様では、本発明は、抗PD-L1抗体またはそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)を調製するための方法を提供し、その方法は、宿主細胞を抗体またはそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)をコードする核酸の発現に好適な条件下でインキュベートすること、および場合により、その抗体またはそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)を単離することを含んでなる。ある特定の実施態様では、この方法は、抗PD-L1抗体またはそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)を宿主細胞から回収することをさらに含んでなる。
【0027】
いくつかの実施態様では、本発明は、本明細書で提供される抗PD-L1抗体のいずれかと細胞傷害性薬剤またはマーカーなどの他の物質とを含んでなる免疫複合体を提供する。いくつかの実施態様では、免疫複合体は、腫瘍(例えば、癌)または感染性疾患を予防または治療するために使用される。いくつかの実施態様では、腫瘍は、免疫回避腫瘍(tumor immune escape)である。好ましくは、腫瘍は、消化管腫瘍(例えば、癌)、例えば、結腸癌である。好ましくは、感染性疾患は、慢性感染症である。
【0028】
いくつかの実施態様では、本発明は、本明細書に記載の抗PD-L1抗体もしくはそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)、またはその免疫複合体を含んでなる組成物を提供し、好ましくは、この組成物は医薬組成物である。一つの実施態様では、この組成物は、医薬補助材料をさらに含んでなる。一つの実施態様では、この組成物、例えば、医薬組成物は、本発明の抗PD-L1抗体もしくはそのフラグメントまたはその免疫複合体と、1種類以上の他の治療薬(例えば、化学療法薬、他の抗体、細胞傷害性薬剤、ワクチン、有効抗感染薬、または免疫調節剤、例えば、共刺激分子の活性化剤もしくは免疫チェックポイント分子の阻害剤)の組合せとを含んでなる
【0029】
いくつかの実施態様では、医薬組成物は、腫瘍(例えば、癌)または感染を予防または治療するために使用される。いくつかの実施態様では、腫瘍は、免疫回避腫瘍(tumor immune escape)である。好ましくは、腫瘍は、消化管腫瘍(例えば、癌)、例えば、結腸癌である。好ましくは、感染性疾患は、慢性感染症である。他の態様では、本発明は、被験体または個体における腫瘍(例えば、癌)または感染性疾患を予防または治療するための方法に関し、その方法は、被験体に有効量の本明細書に記載のいずれかの抗PD-L1抗体もしくはそのフラグメント、医薬組成物、または免疫複合体を投与することを含んでなる。いくつかの実施態様では、腫瘍は、免疫回避腫瘍(tumor immune escape)である。一つの実施態様では、腫瘍は、消化管腫瘍(例えば、癌)、例えば、結腸癌である。一つの実施態様では、感染性疾患は、慢性感染症である。他の態様では、本発明はまた、被験体において腫瘍(例えば、癌)または感染を治療するための薬剤の調製のための、本明細書に記載の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントのいずれかの使用に関する。いくつかの実施態様では、腫瘍は、免疫回避腫瘍(tumor immune escape)である。一つの実施態様では、腫瘍は、消化管腫瘍(例えば、癌)、例えば、結腸癌である。一つの実施態様では、感染性疾患は、慢性感染症である。
【0030】
いくつかのさらなる実施態様では、本明細書に記載の予防または治療の方法は、1以上の療法(例えば、治療法および/または他の治療薬)を被験体または個体に投与することをさらに含んでなる。いくつかの実施態様では、治療法は、外科療法および/または放射線療法を含む。いくつかの実施態様では、他の治療薬は、化学療法薬、細胞傷害性薬剤、ワクチン、有効抗感染薬、他の抗体、および免疫調節剤(例えば、共刺激分子活性化剤または免疫チェックポイント分子阻害剤)からなる群から選択される。
【0031】
いくつかの実施態様では、被験体または個体は、非ヒト動物、例えば、哺乳動物、好ましくは、ヒトである。
【0032】
一つの態様において、本発明は、サンプルにおいてPD-L1を検出するための方法であって、(a)サンプルを本明細書に記載の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントのいずれかと接触させること;および(b)抗PD-L1抗体またはそのフラグメントとPD-L1の複合体の形成を検出することを含んでなる方法に関する。一つの実施態様では、抗PD-L1抗体は、検出可能に標識される。
【0033】
いくつかの実施態様では、本発明は、本明細書に記載の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントを含んでなるキットまたは加工品に関する。いくつかの実施態様では、キットまたは加工品は、本明細書に記載の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントと任意選択の医薬補助材料とを含んでなる。いくつかの実施態様では、キットまたは加工品は、腫瘍または感染を治療するための薬剤の投与に関する説明書をさらに含んでなる。
【0034】
本発明はまた、本明細書に記載の実施態様のいずれかのいずれの組合せも包含する。本明細書に記載の実施態様のいずれもまたはそのいずれの組合せも本明細書に記載の本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメント、方法、および使用のいずれにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、FACSにより決定された本発明の抗PD-L1抗体のCHO-PDL1細胞への結合を示す。
図2図2は、FACSにより決定された本発明の抗PD-L1抗体のCHO-PDL1細胞への結合を示す。
図3図3は、MOAアッセイにより決定されたPD-1/PD-L1相互作用に対する本発明の抗体の遮断活性を示す。
図4A図4Aおよび4Bは、MLRアッセイにより決定された本発明の抗体によるT細胞の活性化(のIL-2相対的発現)を示す。
図4B図4Aおよび4Bは、MLRアッセイにより決定された本発明の抗体によるT細胞の活性化(のIL-2相対的発現)を示す。
図5A図5Aおよび5Bは、MLRアッセイにより決定された本発明の抗体によるT細胞の活性化(IFN-γの相対的発現)を示す。
図5B図5Aおよび5Bは、MLRアッセイにより決定された本発明の抗体によるT細胞の活性化(IFN-γの相対的発現)を示す。
図6図6は、腫瘍に対する本発明の抗体の阻害効果を示す。
図7図7は、抗LAG-3抗体との組合せにおける本発明の抗体の阻害効果を示す。
【発明の具体的説明】
【0036】
略号
特に断りのない限り、本明細書の略号は下記の意味を有する。
下記の略号を使用する。
ADCC 抗体依存性細胞媒介細胞傷害
CDC 補体依存性細胞傷害
CDR 免疫グロブリンの可変領域の相補性決定領域
CHO チャイニーズハムスター卵巣
EC50 50%効力または結合をもたらす濃度
平衡解離定数
ELISA 酵素結合免疫吸着アッセイ
FACS 蛍光活性化細胞選別
MOA 作用機序
MLR 混合リンパ球反応
FR 抗体フレームワーク領域
IC50 50%阻害を生じる濃度
Ig 免疫グロブリン
Kabat Elvin A. Kabat ((1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.)により確立された免疫グロブリンアラインメントおよびナンバリングシステム
mAb/Mab/MAb モノクローナル抗体
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
IFN インターフェロン
VL 軽鎖可変領域
VH 重鎖可変領域
LC 軽鎖
HC 重鎖
HCDR 重鎖相補性決定領域
LCDR 軽鎖相補性決定領域
【0037】
定義
本発明を以下に詳細に記載する前に、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール、および試薬は変更可能であるので、本発明はこれらに限定されないと理解されるべきである。本明細書に使用される用語は、特定の実施態様を記載するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に断りのない限り、本明細書で使用される総ての技術用語および科学用語は、本発明が属す技術分野の熟練者に共通に理解されているものと同じ意味を有する。
【0038】
本明細書を説明する目的で、下記の定義が使用され、該当する場合、単数形で使用される用語は複数形も含み得、この逆もそうである。本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を説明するためのものに過ぎず、限定することを意図するものではないと理解される。
【0039】
数値と組み合わせて使用される用語「約」は、明示された数値の5%小さい下限から明示された数値の5%大きい上限までの範囲の数値を包含することを意図する。
【0040】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合相手(例えば、抗原)の間の総ての非共有結合的相互作用の総和の強度を意味する。特に断りのない限り、本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1の相互作用を表す固有の結合親和性を指す。分子Xのその相手Yに対する親和性は一般に、平衡解離定数(K)により表すことができる。親和性は、従来技術において既知であり、本明細書に記載のものを含む、当技術分野で公知の一般的な方法により測定することができる。
【0041】
用語「プログラム細胞死1リガンド1」、「PD-L1」、「プログラム細胞死リガンド1」、「分化抗原群274」、「CD274」、または「B7ホモログ1」は、本明細書で使用する場合、霊長類(例えば、ヒト)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含むいずれの脊椎動物源に由来するいずれの天然PD-L1も指す。この用語は、「全長」、非プロセシングPD-L1、および細胞内でのプロセシングにより生じるいずれの形態のPD-L1も包含する。PD-L1は、膜貫通タンパク質または可溶型タンパク質として存在し得る。この用語はまた、スプライシング変異体または対立遺伝子変異体などの天然に存在するPD-L1の変異体も包含する。PD-L1の基本構造は、4つのドメイン:細胞外Ig様V型ドメインおよびIg様C2型ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。ゲノムDNA配列を含め、ヒトPD-L1遺伝子に関するさらなる情報は、NCBI Gene ID No.29126として見出すことができる。ゲノムDNA配列を含め、ヒトPD-L1遺伝子に関するさらなる情報は、NCBI Gene ID No.60533として見出すことができる。例示的全長ヒトPD-L1タンパク質のアミノ酸配列は、例えば、NCBI受託番号NP_001254653またはUniProt受託番号Q9NZQ7として見出すことができ、例示的全長マウスPD-L1タンパク質の配列は、例えば、NCBI受託番号NP_068693またはUniprot受託番号Q9EP73として見出すことができる。
【0042】
用語「抗PD-L1抗体」、「抗PD-L1」、「PD-L1抗体」または「PD-L1結合抗体」は、本明細書で使用する場合、PD-L1タンパク質と十分な親和性で結合し得る抗体、またはそのフラグメントを指す。一つの実施態様では、抗PD-L1抗体が非PD-L1タンパク質に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または生物光干渉アッセイまたはMSDアッセイにより測定した場合に、その抗体がPD-L1タンパク質に結合する程度の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、もしくは約90%未満またはそれを超える程度である。
【0043】
本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」または「mAb」または「Mab」は、例えば、真核生物、原核生物、またはファージクローンに由来する単一コピーまたはクローンの抗体を指し、それらが生産される方法を指すのではない。モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージディスプレー技術、CDRグラフティングなどの合成技術、またはこのような技術もしくは当技術分野で公知の他の技術の組合せによって生産することができる。
【0044】
「天然抗体」とは、種々の構造の天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合で結合された2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各重鎖は、N末端からC末端に向かって、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、次に、3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有する。同様に、各軽鎖は、N末端からC末端に向かって、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、次に、定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2タイプのうち1つに割り当てることができる。「天然配列のFc領域」は、天然に見られるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列のヒトFc領域には、天然配列(非AアロタイプおよびAアロタイプ)のヒトIgG1 Fc領域、天然配列のヒトIgG2 Fc領域、天然配列のヒトIgG3 Fc領域、および天然配列のヒトIgG4 Fc領域、および以上のものの天然に存在する変異体が含まれる。
【0045】
「抗体フラグメント」は、無傷抗体の一部を含んでなり、かつ、無傷抗体が結合する抗原に結合する、無傷抗体とは異なる分子を指す。抗体フラグメントの例としては、限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボディ;直鎖抗体;一本鎖抗体(例えば、scFv);シングルドメイン抗体;二価または二重特異性抗体またはそのフラグメント;ラクダ科動物抗体;および前記抗体フラグメントから形成された二重特異性抗体または多重特異性抗体が含まれる。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「エピトープ」は、抗体分子と特異的に相互作用する、抗原(例えば、ヒトPD-L1)の部分を指す。このような部分(本明細書では抗原決定基と呼ばれる)は一般に、アミノ酸側鎖または糖側鎖などの要素を含んでなるか、またはその一部である。抗原決定基は、当技術分野で公知のまたは本明細書で開示される方法を用いて(例えば、結晶学または水素-重水素交換により)定義することができる。抗原決定基と特異的に相互作用する抗体分子の少なくとも1つまたはいくつかの部分は一般に、CDR内に位置する。一般に、エピトープは、特定の三次元構造の特徴を有する。一般に、エピトープは、特定の荷電特徴を有する。いくつかのエピトープは線状エピトープであり、他は立体配座エピトープである。
【0047】
参照抗体と「同じまたは重複するエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいて、参照抗体のその抗原への結合の50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%またはそれを超える割合を遮断する抗体を指し、または逆に、参照抗体は、競合アッセイにおいて、抗体のその抗原への結合の50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%またはそれを超える割合を遮断する。
【0048】
その抗原への結合をめぐって参照抗体と競合する抗体とは、競合アッセイにおいて、参照抗体のその抗原への結合の50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%またはそれを超える割合を遮断する抗体を指す。逆に、参照抗体は、競合アッセイにおいて、抗体のその抗原への結合の50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%またはそれを超える割合を遮断する。直接的または間接的固相ラジオイムノアッセイ(RIA)、直接的または間接的固相酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al., 1983, Methods in Enzymology 9:242-253参照)など、多くのタイプの競合的結合アッセイが、ある抗体が別の抗体と競合するかどうかを決定するために使用可能である。
【0049】
参照抗体のその抗原への結合を阻害する(例えば、競合的に阻害する)抗体は、参照抗体のその抗原への結合の50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%またはそれを超える割合を阻害する抗体を指す。逆に、参照抗体は、抗体のその抗原への結合の50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%またはそれを超える割合を阻害する。抗体のその抗原への結合は、親和性(例えば、平衡解離定数)により測定することができる。親和性を決定するための方法は、当技術分野で公知である。
【0050】
参照抗体と同じまたは類似の結合親和性および/または特異性を示す抗体とは、参照抗体の結合親和性および/または特異性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%またはそれを超える割合を有し得る抗体を指す。これは、結合親和性および/または特異性を決定するための当技術分野で公知のいずれかの方法により決定することができる。
【0051】
「相補性決定領域」または「CDR領域」または「CDR」は、配列の変動が極めて大きく、構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/または抗原接触残基(「抗原接触点」)を含んでなる、抗体可変ドメインの領域である。CDRは、エピトープとの結合を主として担う。重鎖および軽鎖のCDRは一般に、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、N末端から順次符番される。抗体重鎖の可変ドメインに位置するCDRは、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と呼ばれ、抗体軽鎖の可変ドメインに位置するCDRは、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3と呼ばれる。あるアミノ酸配列の軽鎖可変領域または重鎖可変領域において、各CDRの正確なアミノ酸配列境界は、例えば、抗体の三次元構造とCDRループのトポロジーに基づくChothia(Chothia et al. (1989) Nature 342:877-883; Al-Lazikani et al., "Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins", Journal of Molecular Biology, 273:927-948 (1997))、抗体配列変動に基づくKabat(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第4版, US Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987))、AbM(バース大学)、Contact(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)、International ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)(imgt.cines.fr/ on the World Wide Web)、および多数の結晶構造を用いた親和性伝搬クラスタリングに基づくNorth CDR定義を含む、多くの周知の抗体CDR割り当てシステムのいずれか1つまたは組合せを用いて決定することができる。
【0052】
例えば、種々のCDR決定スキームによる、各CDRの残基は次の通りである。
【0053】
【表1】
【0054】
CDRは、また、参照CDR配列(例えば、本発明の例示的CDRのいずれか)と同じKabatナンバリング位置を有することに基づいて決定することもできる。
【0055】
特に断りのない限り、本発明では、用語「CDR」または「CDR配列」は、上記の方法のいずれかによって決定されたCDR配列も包含する。
【0056】
特に断りのない限り、本発明では、抗体可変領域の残基(重鎖可変領域残基および軽鎖可変領域残基を含む)の位置を参照する場合、それはKabatナンバリングシステム(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))に従うナンバリング位置を指す。
【0057】
一つの実施態様では、本発明の抗体のCDRの境界は、例えば、表1で示される配列の抗体など、Chothia規則またはKabat規則によって決定される。
【0058】
異なる割り当てシステムによって得られた抗体の可変領域のCDRの境界は異なる場合があることに留意すべきである。すなわち、異なる割り当てシステムによって定義された抗体の可変領域のCDR配列は異なる。従って、本発明で定義される特定のCDR配列を有する抗体を定義するということになると、その抗体の範囲はまた、可変領域配列がその特定のCDR配列を含んでなるが、異なるプロトコール(例えば、異なる割り当てシステム規則またはそれらの組合せ)が適用される場合に、本発明により定義されるような特定のCDR境界とは異なるCDR境界が特許請求されるような抗体を包含する。
【0059】
異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDR(同じ割り当てシステム下)を有する。しかしながら、CDRは抗体ごとに異なるものの、CDR内の限られた数のアミノ酸位のみが抗原結合に直接関与する。Kabat、Chothia、AbM、Contact、およびNorth法の少なくとも2つを用いて最小の重複領域を決定することができ、抗原結合の「最小結合単位」が得られる。この最小結合単位は、CDRの下位部分であり得る。当業者には自明であるように、残りのCDR配列の残基は、抗体構造およびタンパク質の折り畳みによって決定することができる。従って、本発明では、本明細書に示されるCDRのいずれの変異体も考慮される。例えば、あるCDR変異体では、最小結合単位内のアミノ酸残基は不変のままであり得るが、KabatまたはChothiaにより定義される他のCDR残基は、保存的アミノ酸残基により置換されてもよい。
【0060】
抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMは当技術分野で公知であり、これらのクラスのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに相当する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0061】
「IgG形態の抗体」とは、抗体の重鎖定常領域が属すIgG形態を指す。同じタイプの総ての抗体の重鎖定常領域は同一であり、異なるタイプの抗体の重鎖定常領域は異なる。例えば、IgG1形態の抗体は、その重鎖定常領域のIgドメインがIgG1のIgドメインであることを指す。
【0062】
「抗体依存性細胞媒介細胞傷害」または「ADCC」は、特定の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合する分泌免疫グロブリンが、細胞傷害性エフェクター細胞を抗原保持標的細胞に特異的に結合し、続いてそれらの標的細胞を細胞毒素で死滅させることを可能とする、細胞傷害の形態を指す。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞はFcyRIIIのみを発現し、一方、単球は、FcyRI、FcyRII、およびFcyRIIIを発現する。Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-92 (1991)の第464頁の表3に、造血系細胞におけるFcR発現がまとめられている。対象とする分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号、または同第6,737,056号(Presta)に記載されているものなどのin vitro ADCCアッセイを行うことができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、PBMCおよびNK細胞が含まれる。場合により/あるいは、対象とする分子のADCC活性は、in vivo、例えば、Clynes et al., PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されているものなど動物モデルにおいて評価することができる。
【0063】
本発明で使用される用語「細胞傷害性薬剤」または「細胞傷害性因子」は、細胞機能を阻害もしくは抑制し、かつ/または細胞死または破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害性薬剤の例としては、WO2015/153513、WO2016/028672、WO2015/138920、およびWO2016/007235に開示されているものがある。
【0064】
用語「治療薬」は、本明細書に記載される場合、化学療法薬、細胞傷害性薬剤、ワクチン、他の抗体、有効抗感染薬、免疫調節剤、例えば、抗PD-L1抗体と併用可能なWO2016/007235またはWO2010/077634またはUS60/696426に開示されている物質のいずれをも含め、腫瘍(例えば、癌)および感染症(例えば、慢性感染症)の予防または治療に有効ないずれの物質も包含する。
【0065】
「化学療法薬」は、癌の治療に有用な化学化合物を含む。化学療法薬の例としては、WO2016/007235、WO2010/077634、US60/696426もしくはWO2016/061142、US61/264061、またはWO2016/007235に開示されているものがある。
【0066】
用語「サイトカイン」は、ある細胞集団により放出され、他の細胞に対して細胞間メディエーターとして働くタンパク質に対する一般用語である。このようなサイトカインの例としては、リンホカインおよびモノカイン;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、およびIL-15;腫瘍壊死因子、例えば、TNF-αまたはTNF-β;およびLIFおよびキットリガンド(KL)およびγ-インターフェロンを含む他のポリペプチド因子がある。本明細書で使用する場合、サイトカインという用語には、天然源または組換え細胞培養物に由来するタンパク質、ならびに人工合成により生産された小分子実体、および薬理学的に許容可能なそれらの誘導体および塩を含む、天然配列のサイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
【0067】
用語「共刺激分子」は、T細胞上の共刺激リガンドに特異的に結合し、従って、T細胞媒介共刺激応答(例えば、限定されるものではないが、増殖)を可能とする、関連のある結合相手を指す。共刺激分子は、高効率の免疫応答に必要とされる抗原受容体またはそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子としては、限定されるものではないが:MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、NK細胞活性化受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、4-1BB(CD137)、B7-H3、CDS、ICAM-1、ICOS(CD278)、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8α、CD8β、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、およびCD83に特異的に結合するリガンドが含まれる。
【0068】
用語「活性化剤」または「作動剤」には、ある分子(例えば、共刺激分子)の特定のパラメーター(例えば、活性)を増大させる物質が含まれる。例えば、この用語には、ある分子の活性(例えば、共刺激活性)を少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、またはそれを超えて増大させる物質が含まれる。
【0069】
用語「免疫チェックポイント分子」は、CD4 T細胞およびCD8 T細胞の細胞表面の分子群を指す。これらの分子は、抗腫瘍免疫応答を下方調節または抑制する「ブレーキ」として効果的に働き得る。免疫チェックポイント分子としては、限定されるものではないが、プログラム細胞死受容体1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、B7H1、B7H4、OX-40、CD137、CD40、およびLAG-3が含まれ、これらは免疫細胞を直接阻害する。
【0070】
用語「阻害剤」または「拮抗剤」には、ある分子(例えば、免疫チェックポイント阻害タンパク質)の特定のパラメーター(例えば、活性)を低下させる物質が含まれる。例えば、この用語には、ある分子の活性(例えば、LAG-3活性)を少なくとも5%、10%、20%、30%、40%またはそれを超えて阻害する物質が含まれる。よって、阻害効果は、100%である必要はない。
【0071】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントを意味し、そのフラグメントは、1つのポリペプチド鎖(VH-VL)に、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)が連結されたものを含んでなる。各鎖においてこれら2つのドメインの間で対合するには短いリンカーを用いることによって、これらのドメインは、他鎖の相補的ドメインと対合して2つの抗原結合部位を形成することを余儀なくされる。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)にさらに詳細に記載されている。トリボディおよびテトラボディもまた、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
【0072】
「機能的Fc領域」とは、天然配列のFc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的「エフェクター機能」としては、C1q結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、またはBCR)下方調節などが含まれる。このようなエフェクター機能には一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と会合している必要があり、本明細書に開示されているものなどの様々なアッセイを用いて評価することができる。
【0073】
「エフェクター機能」とは、抗体Fc領域に帰すことができ、抗体のアイソタイプによって異なる生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)下方調節、およびB細胞の活性化が含まれる。
【0074】
「ヒトエフェクター細胞」とは、1以上のFcRを発現し、エフェクター機能を果たす白血球を指す。特定の実施態様では、これらの細胞は、少なくともFcyRIIIを発現し、ADCCのエフェクター機能を果たす。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、および好中球が含まれる。エフェクター細胞は、血液などのそれらの天然源から単離することができる。
【0075】
用語「有効量」は、治療または予防を必要とする患者において、その患者に単回または複数用量で投与した後に期待される効果を生じる本発明の抗体もしくはフラグメントまたは複合体もしくは組成物の量または用量を指す。有効量は、次のような様々な因子を考慮することにより当業者としての主治医によって容易に決定され得る:哺乳動物などの種;そのサイズ、年齢、および健康状態;関与する特定の疾患;その疾患の程度または重症度;個体患者の応答;投与される特定の抗体;投与経路;投与される処方物のバイオアベイラビリティ特性;選択される投与計画;および並行療法の使用。
【0076】
「治療上有効な量」とは、必要な用量で所望の期間、所望の治療結果を達成するために有効な量を指す。抗体もしくは抗体フラグメント、またはその複合体もしくは組成物の治療上有効な量は、個体の病状、年齢、性、および体重、ならびにその個体において所望の応答を惹起する抗体または抗体部分の能力などの様々な因子によって異なり得る。治療上有効な量は、抗体もしくは抗体フラグメント、またはその複合体もしくは組成物の有毒なまたは望まれない影響が、治療上有益な効果よりも少ない量でもある。「治療上有効な量」は、好ましくは、非処置被験体に比べて、測定可能なパラメーター(例えば、腫瘍成長速度)を少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、いっそうより好ましくは少なくとも約50%、60%、または70%、およびなおより好ましくは少なくとも約80%または90%阻害する。測定可能なパラメーター(例えば、癌)を阻害する化合物の能力は、ヒト腫瘍において有効性を予測する動物モデル系で評価することができる。場合により、組成物のこのような特性は、熟練者に知られたアッセイによりin vitroで測定可能な化合物の阻害能を調べることによって評価することもできる。
【0077】
「予防上有効な量」とは、必要な用量で所望の期間、所望の予防結果を達成するために有効な量を指す。一般に、予防用量は疾患の初期段階以前に被験体に投与されるので、予防上有効な量は、治療上有効な量より少ない。
【0078】
本発明に好適な「抗体およびその抗原結合フラグメント」には、限定されるものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、一価、二重特異性、ヘテロコンジュゲート、多重特異性、組換え、異種、ヘテロハイブリッド、キメラ、ヒト化(特に、CDRグラフトされたもの)、脱免疫化、またはヒト抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリーから生成したフラグメントFd、Fv、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、一本鎖抗体(例えば、scFv)、ダイアボディまたはテトラボディ(Holliger P. et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (14), 6444-6448)、ナノボディ(シングルドメイン抗体とも呼ばれる)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、および上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれる。
【0079】
「Fab」フラグメントには、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインが含まれ、また、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1定常ドメイン(CH1)も含まれる。Fab’フラグメントは、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に数残基(抗体ヒンジ領域由来の1以上のシステインを含む)が付加されていることでFabフラグメントとは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’を指す。F(ab’)抗体フラグメントは、元は、Fab’フラグメント間にヒンジシステインを有する対合Fab’フラグメントとして作製されたものである。抗体フラグメントの他の化学カップリングも知られている。
【0080】
用語「Fc領域」は、本明細書において、定常領域の少なくとも一部を含んでなる免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語には、Fc領域および天然配列の変異体Fc領域が含まれる。特定の実施態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226またはPro230から重鎖のカルボニル末端までに及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リシン(Lys447)は存在しても存在しなくてもよい。特に断りのない限り、Fc領域または定常領域のアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載されているようなEUインデックスとも呼ばれるEUナンバリングシステムに基づく。
【0081】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体と抗原との結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、多くの場合、類似の構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの相補性決定領域(CDR)を含有する(例えば、Kindt et al., Kuby Immunology, 第6版, W.H. Freeman and Co. p91 (2007)参照)。単一のVHまたはVLドメインで、抗原結合特異性を提供するために十分である。加えて、特定の抗原に結合する抗体に由来するVHまたはVLドメインは、それぞれ相補的VLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングするために、抗原に結合する抗体を単離するために使用することができる。例えば、Portolano et al., J. Immunol., 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature, 352:624-628 (1991)参照。
【0082】
「フレームワーク」または「FR」とは、相補性決定領域CDR残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。従って、CDRおよびFR配列は一般に、下記の配列の重鎖可変ドメイン(VH)(または軽鎖可変ドメイン(VL))で見られる:
FR1-HCDR1(LCDR1)-FR2-HCDR2(LCDR2)-FR3-HCDR3(LCDR3)-FR4。
【0083】
特に断りのない限り、抗体の様々なドメインの残基のナンバリングは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版 Public Health Service, National Institutes of Science Health, Bethesda, MD, 1991に記載されているようなEUインデックスと呼ばれるEUナンバリングシステムに基づく。
【0084】
用語「全長抗体」、「完全抗体」および「無傷抗体」は、本明細書では、天然抗体構造と実質的に類似の構造を有する抗体または本明細書に定義されるようなFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指して互換的に使用される。
【0085】
「Fv」は、無傷の抗原結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。一つの実施態様では、二本鎖Fv型は、強固に非共有結合された二量体としての1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインからなる。一本鎖Fv(scFv)型では、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインは、その軽鎖と重鎖が二本鎖型の「二量体」構造に類似の構造で会合され得るように、フレキシブルペプチドリンカーを介して共有結合させることができる。この構成では、VH-VL二量体の表面の抗原結合部位を規定するのは、各可変ドメインの3つのCDRである。要するに、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながらやはり、単一可変ドメイン(すなわち、抗原に特異的な3つのCDRのFvを半分しか持たない)であっても、親和性は無傷の結合部位よりも低いものの、抗原を認識して結合する能力を有する。scFvの総説として、例えば、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, 第113巻, Rosenburg and Moore編, (Springer-Verlag, New York, 1994), 269-315頁を参照。
【0086】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養物」は、互換的に使用され、外因性の核酸が導入される細胞を、そのような細胞の世代を含めて指す。宿主細胞には、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、これらには初代形質転換細胞およびそれらに由来する世代が継代数に関係なく含まれる。世代は、親細胞と核酸内容が完全に同一でなくてもよく、突然変異を含んでよい。本明細書には、最初に形質転換された細胞からスクリーニングまたは選択された同じ機能または生物活性を有する突然変異世代が含まれる。
【0087】
「ヒト抗体」とは、ヒトまたはヒト細胞により生成されるか、またはヒト抗体ライブラリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含有するヒト化抗体を明確に除外する。
【0088】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も高頻度に見られるアミノ酸残基を表すフレームワークを指す。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブタイプからの選択である。一般に、配列のサブタイプは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, NIH Public Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), 第1~3巻に開示されているサブタイプである。一つの実施態様では、VLに関して、サブタイプは、Kabatら(上記参照)と同様にサブタイプκIである。一つの実施態様では、VHに関して、サブタイプは、Kabatら(上記参照)と同様にサブタイプIIIである。
【0089】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトCDR由来のアミノ酸残基とヒトFR由来のアミノ酸残基を含んでなるキメラ抗体を指す。いくつかの実施態様では、ヒト化抗体は、総てまたは実質的に総てのCDR(例えば、CDR)が非ヒト抗体のCDRに相当し、かつ、総てまたは実質的に総てのFRがヒト抗体のFRに相当する、少なくとも1つの、一般には2つの可変ドメインの実質的に総てを含んでなる。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部も場合により含んでなり得る。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化形態」とは、ヒト化されている抗体を指す。
【0090】
用語「癌」および「癌性」は、一般に制御を欠いた細胞成長を特徴とする哺乳動物における生理学的疾患を指す、または言う。癌の例としては、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ系悪性腫瘍が含まれる。このような癌のより具体的な例としては、限定されるものではないが、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平上皮癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(消化管癌および消化管間質癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝腫瘍、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在性びまん性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒色腫、結節性黒色腫、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、慢性骨髄性白血病、および移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症を伴う異常な血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連するもの)、およびメイグス症候群、脳腫瘍および脳癌、および頭頸部癌、ならびに関連の転移が含まれる。特定の実施態様では、本発明の抗体による治療に好適な癌としては、非小細胞肺癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓 癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌、白血病、および頭頸部癌が含まれ、それらの癌の転移形態も含む。
【0091】
用語「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」は、特定の程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一つの実施態様では、細胞増殖性疾患は癌を指す。
【0092】
用語「腫瘍」は、悪性または良性に関わらず、総ての新生細胞成長および増殖、ならびに総ての前癌および癌細胞および組織を指す。用語「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、および「腫瘍」は、本明細書に言及される場合、相互に排他しない。
【0093】
用語「感染性疾患」は、例えば、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、または寄生虫感染などの原虫を含む、病原体により引き起こされる疾患を指す。
【0094】
用語「腫瘍免疫回避」は、腫瘍が免疫認識およびクリアランスを逃れることを指す。よって、治療の概念として、腫瘍免疫は「治療」され、回避が弱まると、腫瘍は免疫系によって認識および攻撃される。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍退縮、および腫瘍クリアランスが含まれる。
【0095】
用語「慢性感染症」は、感染因子(例えば、病原体、例えば、ウイルス、細菌、寄生虫などの原虫、真菌など)が感染した宿主で免疫応答を誘導したが、急性感染症のように宿主からクリアランスまたは排除されなかった感染症を指す。慢性感染症は、持続性、潜伏性または遅発性であり得る。急性感染症は一般に数日または数週間のうちに免疫系によって消散されるが(例えば、インフルエンザ)、持続的感染症は数ヶ月、数年、数十年、または生涯、比較的低レベルで続き得る(例えば、B型肝炎)。これに対して、潜伏感染は、時として急速に増大する過剰感染および病原体レベルの上昇により中断される長期の無症候性の活動を特徴とする(例えば、単純ヘルペス)。最後に、遅発性感染症は、長い潜伏期などの疾病症状の緩徐的および継続的進行と、その後の臨床症状の発症後の長期的かつ進行性の臨床過程を特徴とする。潜伏感染症および持続的感染症とは異なり、慢性感染症は、ウイルス増殖の急性期には始まり得ない(例えば、ピコルナウイルス感染症、ビスナウイルス、スクレイピー、クロイツフェルト・ヤコブ病)。慢性感染症を誘発し得る例示的感染因子としては、ウイルス(例えば、サイトメガロウイルス、EBウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、I型およびII型単純ヘルペスウイルス、1型および2型ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、1型および2型ヒトTリンパ球ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスなど)、細菌(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、リステリア(Listeria)種、肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ボレリア(Borrelia)種、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)など)、寄生虫(例えば、リーシュマニア(Leishmania)種、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、住血吸虫(Schistosoma)種、トキソプラズマ(Toxoplasma)種、トリパノソーマ(Trypanosoma)種、テニア・クラシセプス(Taenia carssiceps)など)の原虫、および真菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)種、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)など)が含まれる。さらなる感染因子としては、脳またはニューロン組織でタンパク質のミスフォールディングをさらに増やすことによって脳またはニューロン構造に影響を及ぼし、アミロイド斑(これは細胞死、組織損傷、およびついには死をもたらす)の形成に至るプリオンまたはミスフォールドタンパク質が含まれる。プリオン感染により引き起こされる疾患の例としては、クロイツフェルト・ヤコブ病およびその変種、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群(GSS)、致死性家族性不眠症(sFI)、クールー病、スクレイピー、ウシ海綿脳症(BSE)(別名「狂牛」病)、および様々な動物型の様々な他の脳症[例えば、伝達性ミンク脳症(TME)、オジロジカ、ヘラジカおよびニュールジカの慢性消耗病(CWD)、ネコ海綿脳症、ニアラ、オリックスおよびクーズーの外来有蹄類脳症(exoticungulate encephalopathy)(EUE)、ダチョウの海綿脳症]が含まれる。
【0096】
「免疫複合体」は、限定されるものではないが、細胞傷害性薬剤または標識を含む1以上の他の物質にコンジュゲートされた抗体である。
【0097】
本明細書で使用する用語「標識」は、ポリヌクレオチドプローブまたは抗体などの薬剤に直接的または間接的にコンジュゲートまたは融合され、それがコンジュゲートまたは融合された薬剤の検出を容易にする化合物または組成物を指す。標識はそれ自体検出可能である(例えば、放射性同位元素標識もしくは蛍光標識)か、または酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物または組成物の化学変化を触媒することができる。この用語は、検出可能な物質とプローブまたは抗体をカップリング(すなわち、物理的結合)することによるプローブまたは抗体の直接的標識と、直接的に標識された他の試薬と反応させることによるプローブまたは抗体の間接的標識を包含することを意図する。間接的標識の例としては、蛍光標識二次抗体を用いた一次抗体の検出、および蛍光標識されたストレプトアビジンで検出することができるようなビオチン化DNAプローブの末端標識が含まれる。
【0098】
「個体」または「被験体」としては、哺乳動物が含まれる。哺乳動物としては、限定されるものではないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヤギ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれる。いくつかの実施態様では、個体または被験体はヒトである。
【0099】
「単離された」抗体は、その天然環境の成分から分離されたものである。いくつかの実施態様では、抗体は、例えば、電気泳動[例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動]またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)で決定した場合に95%または99%を超える純度まで精製される。抗体純度を評価するための方法の総説としては、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr., B848:79-87 (2007)を参照。
【0100】
「単離された」核酸とは、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸としては、通常核酸分子を含有する細胞に含有されるが、染色体外にまたはその本来の染色体の場所とは異なる染色体の場所に存在する核酸分子を含む。
【0101】
「抗PD-L1抗体またはそのフラグメントをコードする単離された核酸」とは、抗体重鎖または軽鎖(またはそのフラグメント)をコードする1以上の核酸分子を指し、単一のベクターまたは別のベクター内のこのような核酸分子、および宿主細胞内の1以上の場所に存在するこのような核酸分子を含む。
【0102】
用語「核酸」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」または「ポリヌクレオチド配列」および「ポリヌクレオチド」は互換的に使用される。それらは、ポリマー形態またはその類似形態にある、任意の長さのヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド)を指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、一本鎖の場合、コード鎖であっても非コード(アンチセンス)鎖であってもよい。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分が挿入されていてもよい。ポリヌクレオチドは、標識成分とのコンジュゲーションによるなど、重合後にさらに修飾されてもよい。核酸は、組換えポリヌクレオチド、あるいは天然に存在しない、またはゲノム源、cDNA源、半合成源、もしくは合成源に由来する他のポリヌクレオチドと天然にはないレイアウトで連結されているポリヌクレオチドであり得る。
【0103】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」(一本鎖の場合)は本明細書で互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸ポリマーを指す。このポリマーは直鎖であっても分岐鎖であってもよく、修飾アミノ酸を含んでなってもよく、かつ、非アミノ酸が挿入されていてもよい。この用語にはまた、修飾された(例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分とのコンジュゲーションなどの他のいずれかの操作)アミノ酸ポリマーも含まれる。ポリペプチドは、天然源から単離されてもよく、組換え技術によって真核生物または原核生物宿主から生産することができ、また、合成法の生成物であり得る。
【0104】
配列間の配列同一性の計算は、次のように行われる。
【0105】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、これらの配列を最適な比較のためにアラインする(例えば、最適なアラインメントのために、ギャップを第1および第2のアミノ酸配列に、または一方もしくは両方の核酸配列に導入することができ、あるいは比較のために非相同配列を切り捨てることができる)。好ましい一つの実施態様では、比較のために、アラインされた参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、およびいっそうより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められていれば、それらの分子はこの位置で同一である。
【0106】
2つの配列間の配列比較と同一性パーセントの計算を達成するために数学的アルゴリズムを使用することができる。好ましい一つの実施態様では、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウエアパッケージのGAPプログラムに組み込まれているNeedlema and Wunsch [(1970) J. Mol. Biol., 48:444-453]で、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスおよびギャップウエイト16、14、12、10、8、6、または4およびレングスウエイト1、2、3、4、5、または6を用いて決定される。さらに別の好ましい実施態様では、2つのヌクレオチド配列(nucleotide acid sequences)間の同一性パーセントは、GCGソフトウエアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで利用可能)で、NWSgapdna.CMPマトリックスおよびギャップウエイト40、50、60、70、または80およびレングスウエイト1、2、3、4、5または6を用いて決定される。特に好ましいパラメーターセット(および特に断りのない限り使用されるべきもの)は、ギャップペナルティー12、ギャップエクステンションペナルティー4、およびフレームシフトギャップペナルティー5で、Blossom 62スコアリングマトリックである。
【0107】
2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列間の同一性パーセントはまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. MeyersおよびW. Millerのアルゴリズム((1989) CABIOS, 4:11-17)を用い、PAM120加重剰余表、ギャップレングスペナルティー12およびギャップペナルティー4で決定することもできる。
【0108】
加えてまたは代わりに、本明細書に記載の核酸配列およびタンパク質配列はさらに、公開データベースに対して、例えば、他のファミリーメンバー配列または関連の配列を特定するための検索を実行するために「クエリー配列」として使用することもできる。例えば、このような検索は、Altschul et al., (1990) J. Mol. Biol., 215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラムを用いて実行することができる。本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るために、BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワードレングス=12を用いて実行することができる。本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3を用いて実行することができる。比較のためにギャップ付きアラインメント結果を得るために、ギャップ付きBLASTをAltschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載の通りに使用することができる。BLASTおよびギャップ付きBLASTプログラム、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターが使用可能である。http://www.ncbi.nlm.nih.gov参照。
【0109】
本明細書で使用する場合、用語「低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、高ストリンジェンシー、または極端ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーション」は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を表す。ハイブリダイゼーション反応を実施するための説明は、参照により組み込まれるCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に見出すことができる。これらの参照文献には水性法および非水性法が記載され、いずれかの方法が使用できる。本明細書に述べられる特異的ハイブリダイゼーション条件は次の通りである:1)低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中で約45℃、次いで、0.2×SSC、0.1%SDS中、少なくとも50℃(低ストリンジェンシー条件では、洗浄の温度は55℃に引き上げることができる)で2回の洗浄であり;2)中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、6×SSC中で約45℃、次いで、0.2×SSC、0.1%SDS中、約60℃で1回以上の洗浄であり;3)高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は6×SSC中で約45℃、次いで、0.2×SSC、0.1%SDS中、65℃で1回以上の洗浄であり;および好ましくは、4)極端ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS中で65℃、次いで、0.2×SSC、0.1%SDS中、65℃で1回以上の洗浄である。極端ストリンジェンシー条件(4)が好ましい条件であり、特に断りのない限り使用されるべきものである。
【0110】
用語「医薬組成物」は、含有される有効成分の生物活性を有効とさせ、かつ、組成物が投与される被験体に許容されない毒性を有する付加的成分を含有しない形態で存在するこのような組成物を指す。
【0111】
用語「医薬補助材料」は、有効物質とともに投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントのアジュバント(完全および不完全))、賦形剤、担体または安定剤などを指す。
【0112】
本明細書で使用する場合、「治療("treatment" (or "treat" or "treating"))」は、既存の症状、障害、病態、または疾患の進行または重症度の緩徐化、中断、休止、緩和、停止、軽減、または逆転を指す。
【0113】
本明細書で使用する場合、「予防("prevention" (or "prevent" or "preventing"))」は、疾患もしくは障害または特定の疾患もしくは障害の症状の発症または進行の阻害を含む。いくつかの実施態様では、癌の家族歴を有する被験体は、予防計画の候補である。一般に、癌に関して、用語「予防」は、特に癌のリスクのある被験体において癌の徴候または症状が発症する前の薬物の投与を指す。
【0114】
用語「抗感染薬」には、ウイルス、細菌、真菌、または原虫、例えば、寄生虫などの微生物の成長を特異的に阻害または排除し、かつ、その投与濃度および投与間隔では宿主に致死的でないいずれの分子も含まれる。本明細書で使用する場合、抗感染薬という用語には、抗生剤、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、および抗原虫薬が含まれる。一つの特定の態様では、抗感染薬は、その投与濃度および投与間隔では宿主に非毒性である。
【0115】
抗菌抗感染薬または抗菌薬は、殺菌薬(すなわち、直接的に死滅させる)または静菌薬(すなわち、分裂を妨げる)に大きく分類することができる。抗菌抗感染薬は、狭域抗菌薬(すなわち、グラム陰性などの限定された細菌サブタイプにのみ作用する)または広域抗菌薬(すなわち、広範囲の種に作用する)にさらに分類することができる。例としては、アミカシン、ゲンタマイシン、ゲルダナマイシン、ヘルビマイシン、ムピロシン、フラントイン、ピラジンアミド、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピシン/リファンピン、イソニアジドおよびピラジンアミド錠、またはチニダゾールが挙げられる。
【0116】
用語「抗ウイルス薬」には、ウイルスの成長、病原性、および/または生存を阻害または排除するいずれの物質も含まれる。これには、例えば、アシクロビル、シドフォビル、ジドブジン、ジダノシン(ddI、VIDEX)、ザルシタビン(ddC、HIVID)、スタブジン(d4T、ZERIT)、ラミブジン(3TC、エピビル)、アバカビル(ZIAGEN)、エムトリシタビン(エムトリバ)などが含まれる。
【0117】
用語「抗真菌薬」には、真菌の成長、病原性、および/または生存を阻害または排除するいずれの物質も含まれる。これには、例えば、ナタマイシン、リモシジン、フィリピン、ナイスタチン、アムホテリシンB、カンジシン、パチョリ、ニームシードオイル、ココナッツオイルなどが含まれる。
【0118】
用語「抗原虫薬」には、原虫生物(例えば、寄生虫)の成長、病原性、および/または生存を阻害または排除するいずれの物質も含まれる。抗原虫薬の例としては、キニーネ、キニジンなどの抗マラリア薬が含まれる。
【0119】
例示的抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、および抗原虫薬については、例えばWO2010/077634などを参照。
【0120】
抗感染薬については、例えば、WO2014/008218、WO2016/028672、WO2015/138920またはWO2016/061142も参照。
【0121】
用語「ベクター」は、本明細書で使用する場合、それに連結された他の核酸を増幅させることができる核酸分子を指す。この用語には、自己複製する核酸構造として働くベクターならびに導入された宿主細胞のゲノムに結合するベクターが含まれる。いくつかのベクターは、機能的に連結された核酸の発現を命令することができる。このようなベクターは、本明細書では「発現」ベクターと呼ばれる。
【0122】
「被験体/患者サンプル」は、患者または被験体から得られた細胞または体液の採取物を指す。組織または細胞サンプルの供給源は、固体組織、例えば、新鮮、凍結および/もしくは保存器官もしくは組織サンプルまたは生検サンプルもしくは穿刺サンプル;血液または血液成分;脳脊髄液、羊水、腹腔液、または間質液などの体液;妊娠または発生中の任意の時点で被験体から得られる細胞であり得る。組織サンプルは、保存剤、抗凝固剤、バッファー、固定剤、栄養剤、抗生剤などの本来組織とは混合されていない化合物を含んでなり得る。腫瘍サンプルの例としては、限定されるものではないが、腫瘍生検、穿刺吸引物、気管支洗浄液、胸膜液、唾液、尿、手術検体、循環腫瘍細胞、血清、血漿、循環血漿タンパク質、腹水、腫瘍由来のまたは腫瘍様特性を呈する初代細胞培養物または細胞株、およびホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍サンプルまたは凍結腫瘍サンプルなどの保存腫瘍サンプルが含まれる。
【0123】
用語「添付文書」は、治療薬の市販パッケージに一般に包含される説明書を指すために使用され、これには、適応症、用法、用量、投与、併用療法、禁忌および/またはそのような治療薬の適用に関する警告についての情報が含まれている。
【0124】
本発明の抗体
よって、いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、PD-L1に結合する。いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、哺乳動物PD-L1、例えば、ヒトPD-L1に結合する。例えば、この抗体分子は、PD-L1のエピトープ(例えば、線状または立体配座エピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施態様では、この抗体分子は、PD-L1の1以上の細胞外ドメインに結合する。
【0125】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントは、下記の特性のうち1以上を有する:
(1)本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントは、PD-L1(例えば、ヒトPD-L1)に高い親和性で結合する、例えば、PD-L1に、約50nM未満、好ましくは約20nM以下、より好ましくは約15nM以下、より好ましくは約10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、または2nM以下、最も好ましくは約1.5nM、1.4nM、1.3nM、1.2nM、1.1nM、1nM、0.9nM、または0.8nM以下の平衡解離定数(K)で結合する。いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体は、PD-L1に、0.1~10nM、好ましくは0.5~10nM、より好ましくは0.6~10nM、0.7~8nM、および0.7~5nM、最も好ましくは0.5~1.5nM、0.7~1.5nM、および0.7~1nMのKで結合する。いくつかの実施態様では、PD-L1は、ヒトPD-L1である。いくつかの実施態様では、抗体の結合親和性は、生物学的光干渉法(例えば、Fortebio親和性測定)を用いて決定される。
【0126】
(2)本発明の抗体またはそのフラグメントは、ヒトPD-L1を発現する細胞に、例えば、約4nM、3.5nM、3nM、2.9nM、2.8nM、2.7nM、2.6nM、2.5nM、2.4nM、2.3nM、2.2nM、2.1nM、2nM、1.9nM、1.8nM、1.7nM、または1.6nM以下のEC50で結合する。いくつかの実施態様では、この結合は、フローサイトメトリー(例えば、FACS)を用いて決定される。いくつかの実施態様では、ヒトPD-L1を発現する細胞は、ヒトPD-L1を発現するCHO細胞である。
【0127】
(3)本発明の抗体またはそのフラグメントは、PD-L1の関連活性を、例えば、約10nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、または0.7nM以下、好ましくは0.1~1nM、0.5~1nM、0.6~1nM、0.6nM、0.7nM、0.8nM、0.9nM、または1nMのEC50で遮断する。いくつかの実施態様では、PD-L1の関連活性は、PD-L1のPD-1への結合である。いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、MOAアッセイにおいて、PD-L1のPD-1への結合を、約10nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、または0.7nM以下、好ましくは0.1~1nM、0.5~1nM、0.6~1nM、0.6nM、0.7nM、0.8nM、0.9nM、または1nMのEC50で阻害する。いくつかの実施態様では、細胞はCHO細胞である。
【0128】
(4)T細胞機能を向上させる本発明の抗体またはそのフラグメントの能力が、例えば、テセントリクなどの既知の抗PD-L1抗体よりも良好である。
【0129】
(5)例えばMLRにおける、T細胞を活性化する本発明の抗体またはそのフラグメントの能力が、例えば、テセントリクなどの既知の抗PD-L1抗体よりも良好である。
【0130】
(6)例えばMLRにおける、IFN-γ分泌を増強する本発明の抗体またはそのフラグメントの能力が、例えば、テセントリクなどの既知の抗PD-L1抗体よりも良好である。
【0131】
(7)例えばMLRにおける、IL-2分泌を増強する本発明の抗体またはそのフラグメントの能力が、例えば、テセントリクなどの既知の抗PD-L1抗体よりも良好である。
【0132】
(8)本発明の抗体またはそのフラグメントは、既知の抗PD-L1抗体(例えばテセントリク)よりも粘稠度が低く、従って、より良好なドラッガビリティーを有する。いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、Zenixカラムクロマトグラフィーにおいて、約10分、約9分、または約8分未満、好ましくは約7~9分、好ましくは約7~8.5分、約7.5~8.5分、約7~8分、または約7.5~8分、例えば、約7.5分、7.6分、7.7分、7.8分、7.9分、8分、8.1分、8.2分、8.3分、8.4分、8.5分の保持時間(RT)を有する。
【0133】
(9)本発明の抗体またはそのフラグメントは、PD-L1の1以上の活性を阻害して、例えば、下記:腫瘍浸潤リンパ球の増加、T細胞受容体媒介増殖の増加、または癌細胞の免疫回避の減少のうち1以上を引き起こす。
【0134】
(10)本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントは、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を誘導することができる。
【0135】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、下記の特徴のうち1以上を有する:
(i)PD-L1に対して、本発明の抗体(例えば、表3に挙げられている抗体のいずれか)と同じまたは類似の結合親和性および/または特異性を示す;
(ii)本発明の抗体(例えば、表3に挙げられている抗体のいずれか)のPD-L1への結合を阻害する(例えば、競合的に阻害する);
(iii)本発明の抗体(例えば、表3に挙げられている抗体のいずれか)と同じまたは重複するエピトープに結合する;
(iv)PD-L1との結合をめぐって、本発明の抗体(例えば、表3に挙げられている抗体のいずれか)と競合する;
(v)本発明の抗体(例えば、表3に挙げられている抗体のいずれか)の1以上の生物学的特徴を有する。
【0136】
例示的抗体
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)を含んでなり、ここで、VHは、
(i)表Bに挙げられている抗体のいずれかのVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDRs)、または
(ii)(i)の配列に比べ、3つのCDR領域に合計少なくとも1個、多くとも5、4、3、2または1個のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含んでなる配列
を含んでなる。
【0137】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、ここで、VLは、
(i)表Bに挙げられている抗体のいずれかのVLに含まれる3つの相補性決定領域(CDRs)、または
(ii)(i)の配列に比べ、3つのCDR領域に合計少なくとも1個、多くとも5、4、3、2または1個のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含んでなる配列
を含んでなる。
【0138】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLを含んでなり、ここで、
(a)VHは、
(i)表Bに挙げられている抗体のいずれかのVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDRs)、または
(ii)(i)の配列に比べ、3つのCDR領域に合計少なくとも1個、多くとも5、4、3、2または1個のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含んでなる配列
を含んでなり;かつ/または
(b)VLは、
(i)表Bに挙げられている抗体のいずれかのVLに含まれる3つの相補性決定領域(CDRs)、または
(ii)(i)の配列に比べ、3つのCDR領域に合計少なくとも1個、多くとも5、4、3、2または1個のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含んでなる配列
を含んでなる。
【0139】
好ましい実施態様では、VHは、配列番号26、27、28、29、30、または31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるまたはからなる。
【0140】
好ましい実施態様では、VLは、配列番号32、33、34、35、36、または37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるまたはからなる。
【0141】
好ましい実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号26もしくは30で示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDRsと、配列番号32もしくは36で示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRs、または
(ii)配列番号27で示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDRsと、配列番号33で示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRs、または
(iii)配列番号28で示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDRsと、配列番号34で示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDR、または
(iv)配列番号29もしくは31で示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDRsと、配列番号35もしくは37で示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRs
を含んでなる。
【0142】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、ここで、 (i)VHは、相補性決定領域(CDR)であるHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含んでなり、HCDR1は、配列番号1、2、3、もしくは4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、またはHCDR1は、配列番号1、2、3、もしくは4からなる群から選択されるアミノ酸配列に比べて、1つ、2つ、または3つの変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり;HCDR2は、配列番号5、6、7、8、もしくは9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、またはHCDR2は、配列番号5、6、7、8、もしくは9からなる群から選択されるアミノ酸配列に比べて、1つ、2つ、または3つの変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり;HCDR3は、配列番号10、11、12、もしくは13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、またはHCDR3は、配列番号10、11、12、もしくは13からなる群から選択されるアミノ酸配列に比べて、1つ、2つ、または3つの変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり;かつ/あるいは
(ii)VLは、相補性決定領域(CDR)であるLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含んでなり、LCDR1は、配列番号14、15、もしくは16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、またはLCDR1は、配列番号14、15、もしくは16からなる群から選択されるアミノ酸配列に比べて、1つ、2つ、または3つの変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり;LCDR2は、配列番号17、18、19、もしくは20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、またはLCDR2は、配列番号17、18、19、もしくは20からなる群から選択されるアミノ酸配列に比べて、1つ、2つ、または3つの変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり;LCDR3は、配列番号21、22、23、24、もしくは25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、またはLCDR3は、配列番号21、22、23、24、または25からなる群から選択されるアミノ酸配列に比べて、1つ、2つ、または3つの変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなる。
【0143】
好ましい実施態様では、本発明は、重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、ここで、
(a)VHは、
(i)表Aで示されるHCDR1、HCDR2、およびHCDR3の組合せ;または
(ii)3つのCDR領域に合計少なくとも1個、多くとも5、4、3、2、または1個のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含んでなる、(i)のHCDR組合せの変異体
を含んでなり;かつ/または
(b)VLは、
(i)表Aで示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3の組合せ;または
(ii)3つのCDR領域に合計少なくとも1個、多くとも5、4、3、2または1個のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含んでなる、(i)のLCDR組合せの変異体
を含んでなる、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0144】
好ましい実施態様では、本発明は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、ここで、VHは、相補性決定領域(CDR)であるHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含んでなり、かつ、VLは、CDRであるLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含んでなり、抗体またはその抗原結合フラグメントに含まれるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3の組合せは、下記の表(表A)で示される、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0145】
【表2】
【0146】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域VHおよび/または軽鎖可変領域VLを含んでなり、ここで、
(a)重鎖可変領域VHは、
(i)配列番号26、27、28、29、30、もしくは31から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか; (ii)配列番号26、27、28、29、30、もしくは31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか;または
(iii)配列番号26、27、28、29、30、もしくは31から選択されるアミノ酸配列に比べて、1個以上(好ましくは多くとも10個、より好ましくは多くとも5、4、3、2もしくは1個)のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、保存的アミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり、好ましくは、これらのアミノ酸変異は、CDR内には存在しない;
かつ/または
(b)軽鎖可変領域VLは、
(i)配列番号32、33、34、35、36、もしくは37から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか;
(ii)配列番号32、33、34、35、36、もしくは37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか;または
(iii)配列番号32、33、34、35、36、もしくは37から選択されるアミノ酸配列に比べて、1個以上(好ましくは、多くとも10個、より好ましくは多くとも5、4、3、2または1個)のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、保存的アミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり、好ましくは、これらのアミノ酸変異は、CDR内には存在しない。
【0147】
好ましい実施態様では、本発明は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含んでなる抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、その抗体またはその抗原結合フラグメントに含まれる重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLの組合せは、下記の表(表B)で示される。
【0148】
【表3】
【0149】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖および/または軽鎖を含んでなり、ここで、
(a)重鎖は、
(i)配列番号38、39、40、41、42、43、44、もしくは45から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか;
(ii)配列番号38、39、40、41、42、43、44、もしくは45からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか;または
(iii)配列番号38、39、40、41、42、43、44もしくは45から選択されるアミノ酸配列に比べ、1個以上(好ましくは多くとも20または10個、より好ましくは多くとも5、4、3、2または1個)のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり、好ましくは、これらのアミノ酸変異は、重鎖のCDR内には存在せず、より好ましくは、これらのアミノ酸変異は、重鎖可変領域内には存在せず;かつ/または
(b)軽鎖は、
(i)配列番号46、47、48、49、50、もしくは51から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか;
(ii)配列番号46、47、48、49、50、もしくは51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか;または
(iii)配列番号46、47、48、49、50もしくは51から選択されるアミノ酸配列に比べ、1個以上(好ましくは多くとも20または10個、より好ましくは多くとも5、4、3、2または1個)のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり、好ましくは、これらのアミノ酸変異は、軽鎖のCDR内には存在せず、より好ましくは、これらのアミノ酸変異は、軽鎖可変領域内には存在しない。
【0150】
好ましい実施態様では、本発明は、重鎖と軽鎖を含んでなる抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、その抗体またはその抗原結合フラグメントに含まれる重鎖と軽鎖の組合せは、下記の表(表C)で示される。
【0151】
【表4】
【0152】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントの重鎖および/または軽鎖は、METDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号68)などのシグナルペプチド配列をさらに含んでなる。
【0153】
本発明の一つの実施態様では、本明細書に記載のアミノ酸変異には、アミノ酸置換、挿入、または欠失が含まれる。好ましくは、本明細書に記載のアミノ酸変異は、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換である。
【0154】
好ましい実施態様では、本明細書に記載のアミノ酸変異は、CDR外の領域(例えば、FR内)に存在する。より好ましくは、本明細書に記載のアミノ酸変異は、重鎖可変領域外および/または軽鎖可変領域外の領域に存在する。
【0155】
場合により、本発明の抗PD-L1抗体は、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、軽鎖、または重鎖に対する翻訳後修飾を含んでなる。例示的翻訳後修飾としては、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分とのコンジュゲーションなどの他のいずれかの操作が含まれる。
【0156】
いくつかの実施態様では、置換は保存的置換である。保存的置換とは、あるアミノ酸の、同じクラスの他のアミノ酸による置き換え、例えば、ある酸性アミノ酸の他の酸性アミノ酸による置き換え、ある塩基性アミノ酸の他の塩基性アミノ酸による置き換え、またはある中性アミノ酸の他の中性アミノ酸による置き換えを指す。例示的置換は、以下の表Dで示される。
【0157】
【表5】
【0158】
特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増大または低減するように変更される。抗体のグリコシル化部位の付加または欠失は、1以上のグリコシル化部位が作出または除去されるようにアミノ酸配列を変更することによって有利に達成することができる。
【0159】
例えば、1以上のアミノ酸置換は、1以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位を除去し、それによりその部位のグリコシル化を除去するために行うことができる。このようなグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増すことができる。例えば、米国特許第5,714,350号および同第6,350,861号参照。フコシル残基の量が低減された低フコシル化抗体または二分GlcNac構造が増加した抗体など、グリコシル化のクラスが変更された抗体が作製可能である。このような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCCを増強する能力を示した。このような糖鎖修飾は、例えばグリコシル化システムが変更された宿主細胞において抗体を発現させることによって達成することができる。グリコシル化システムが変更された細胞は当技術分野で記載があり、本発明の抗体を発現させる宿主細胞として使用することができ、それにより、グリコシル化が変更された抗体が生産される。例えば、細胞株Ms704、Ms705、およびMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8(α(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ)を欠き、従って、細胞株Ms704、Ms705、およびMs709で発現された抗体がそれらの糖鎖にフコースを欠く。細胞株Ms704、Ms705、およびMs709FUT8-/-は、CHO/DG44細胞においてFUT8遺伝子を破壊の標的とする2つの選択的ベクターを用いて作出される(米国特許出願公開第20040110704号およびYamane-Ohnuki et al. (2004) Biotechnol Bioeng 87:614-22参照)。EP1,176,195には、細胞株で発現された抗体が、α-1,6結合関連酵素を低減または排除することによって低いフコシル化を示すように、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊されている細胞株が記載されている。EP1,176,195にはまた、ラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)などの抗体のFc領域に結合するN-アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素活性が低いまたは無い細胞株も記載されている。PCT公開WO03/035835には、Asn(297)結合糖鎖にフコースを付加する能力が低減され、それにより、宿主細胞で発現される抗体の低フコシル化ももたらす変異型CHO細胞株Lec13細胞が記載されている(Shields et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照)。グリコシル化プロファイルが改変された抗体はまた、PCT公開WO06/089231に記載されているように、卵でも生産することができる。あるいは、グリコシル化プロファイルが改変された抗体は、アオウキクサなどの植物細胞でも生産することができる。植物系で抗体を生産するための方法は、Alston and Bird LLP弁理士事件番号040989/314911に相当する2006年8月11日出願の米国特許出願に開示されている。PCT国際WO99/54342には、糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼ[例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)]を発現するように操作された細胞株が記載され、それにより、操作細胞株で発現された抗体は、二分GlcNac構造の増大を示し、その結果、その抗体のADCC活性が上昇する[Umana et al. (1999) Nat. Biotech. 17:176-180も参照]。あるいは、抗体のフコシル残基を切除するためにフコシダーゼを使用することもでき、例えば、α-L-フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する[Tarentino et al. (1975) Biochem. 14:5516-23]。
【0160】
本発明の一つの実施態様では、本発明の抗体またはフラグメントは、操作された酵母N結合グリカンまたはCHO N結合グリカンでグリコシル化される。
【0161】
本発明により包含される、本明細書に記載の抗体またはそのフラグメントに対するもう1つの修飾がペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生体(例えば、血清)半減期を延長するためにペグ化することができる。抗体をペグ化するためには、抗体またはそのフラグメントを一般に、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)と、1以上のPEG基が抗体または抗体フラグメントと結合する条件で反応させる。好ましくは、ペグ化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)を用い、アシル化反応またはアルキル化反応により行われる。本明細書で使用する場合、用語「ポリエチレングリコール」は、モノ(C1-C10)アルコキシ-またはアリールオキシポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するために使用されているいずれの形態のPEGも包含することを意図する。特定の実施態様では、ペグ化される抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質のペグ化のための方法は当技術分野で公知であり、本発明の抗体に適用可能である、例えば、EP0154316およびEP0401384参照。
【0162】
特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体のFc領域に1以上のアミノ酸修飾を導入し、それにより、例えば、癌または細胞増殖性疾患の治療において抗体の有効性が高められるようなFc領域変異体を生産することができる。本明細書に開示される抗PD-L1抗体(例えば、ヒト化またはキメラ抗体)およびその抗原結合フラグメントにはまた、エフェクター機能の変更を提供するために修飾された(または閉じた)Fc領域を有する抗体およびフラグメントも含まれる。例えば、米国特許第5,624,821号、WO2003/086310、WO2005/120571、WO2006/0057702参照。このような修飾は免疫系の様々な応答を増強または抑制するために使用することができ、診断および治療において有益な効果を持ち得る。Fc領域の修飾には、アミノ酸変異(置換、欠失および挿入)、グリコシル化または脱グリコシル化、および複数のFcの付加が含まれる。Fcに対する修飾はまた、治療抗体において抗体の半減期を変化させることができ、それにより、低頻度投与、および従って利便性の増大および材料使用の低減を可能とし得る。Presta (2005) J. Allergy Clin. Immunol. 116:731, 第734-735頁参照。
【0163】
一つの実施態様では、抗体特性を改変するために抗体のシステイン残基の数を変更することができる。例えば、CH1のヒンジ領域を、そのヒンジ領域のシステイン残基の数を変化させる(例えば、増加または減少させる)ように改変する。この方法は、米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。例えば、軽鎖および重鎖の組み立てを助長するため、または抗体の安定性を高めるもしくは低下させるために、CH1のヒンジ領域のシステイン残基の数を変更することができる。
【0164】
特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、当技術分野で公知であり、容易に入手可能な他の非タンパク質部分を含むようにさらに修飾することができる。抗体誘導体化の好適な部分としては、限定されるものではないが、水溶性ポリマーが含まれる。水溶性ポリマーの限定されない例としては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキサン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)、およびデキストランまたはポリ(n-エチレンメチルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物が含まれる。このポリマーは、いずれの分子量であってもよく、分岐型でも非分岐型でもよい。抗体に結合しているポリマーの数は可変であり、2つ以上のポリマーが結合している場合、それらは同じ分子であっても異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、限定されるものではないが、改良される抗体の特定の特徴または機能、その抗体誘導体が定義された条件で療法に使用されるかなどを含む考慮事項に基づいて決定することができる。
【0165】
いくつかの実施態様では、本発明は、抗PD-L1抗体のフラグメントを包含する。抗体フラグメントの例としては、限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、ダイアボディ、直鎖抗体、一本鎖抗体(例えば、scFv)、シングルドメイン抗体、および抗体フラグメントから形成される二重特異性抗体が含まれる。
【0166】
例えば、この抗体分子は、重鎖(HC)可変ドメイン配列と軽鎖(LC)可変ドメイン配列を含んでなり得る。一つの実施態様では、抗体分子(本明細書では不完全抗体と呼ばれる)は、重鎖と軽鎖を含んでなるまたはからなる。別の例では、抗体分子は、2つの重鎖可変ドメイン配列と2つの軽鎖可変ドメイン配列を含み、それにより、2つの抗原結合部位を形成する。このようなFab、Fab’、F(ab’)、Fc、Fd、Fd’、Fv、一本鎖抗体(例えば、scFv)、シングルドメイン抗体、ダイアボディ(Dab)(二価および二重特異性)およびキメラ(例えば、ヒト化)抗体は、無傷抗体を修飾することにより生産することができ、または組換えDNA技術を用いてde novo合成することができる。これらの機能的抗体フラグメントは、それらの対応する抗原または受容体に選択的に結合する能力を保持する。抗体および抗体フラグメントは、限定されるものではないが、IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgEを含むいずれの抗体クラスに、また、いずれの抗体サブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)に由来してもよい。抗体分子の調製法はモノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、またはin vitroで生産された抗体であり得る。この抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から選択される重鎖定常領域を有し得る。抗体はまた、例えば、κまたはλから選択される軽鎖も有し得る。
【0167】
本発明の抗体はまた、シングルドメイン抗体であり得る。シングルドメイン抗体としては、相補性決定領域がシングルドメインポリペプチドの部分である抗体を含み得る。例としては、限定されるものではないが、重鎖抗体、天然に軽鎖を欠く抗体、シングルドメイン抗体または従来の4鎖抗体に由来する操作抗体が含まれる。シングルドメイン抗体は、従来技術のいずれの抗体であってもよく、または今後出てくるいずれのシングルドメイン抗体であってもよい。シングルドメイン抗体は、限定されるものではないが、マウス、ヒト、ラクダ、アルパカ、魚類、サメ、ヤギ、ウサギ、およびウシを含むいずれの種に由来するものであってもよい。本発明の別の態様によれば、シングルドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体と呼ばれる、天然に存在するシングルドメイン抗体である。このようなシングルドメイン抗体は、例えば、WO94/04678に開示されている。シングルドメイン抗体またはナノボディは、ラクダ、アルパカ、ヒトコブラクダ、ラマ、およびグアナコなどのラクダ科動物種から生産される抗体であり得る。ラクダ以外の種は、天然に軽鎖を欠く重鎖抗体を生産することができ、このようなシングルドメイン抗体は本発明の範囲内にある。
【0168】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体はヒト化抗体である。抗体をヒト化するための種々の方法は、その内容が参照によりそのまま本明細書の一部とされるAlmagroおよびFransson[Almagro J.C. and Fransson J (2008) Frontiers in Bioscience 13:1619-1633]に概要が示されるように、当業者に既知である。AlmagroおよびFranssonは、合理的アプローチと経験的アプローチを区別している。合理的アプローチは、少数の操作抗体変異体を作出し、それらの結合または対象とする他のいずれかの特徴を評価することを特徴とする。設計の変異体が期待する結果をもたらさない場合、設計および統合評価の新たなラウンドを始める。合理的アプローチとしては、CDRグラフティング、リサーフェイシング、超ヒト化、およびヒトストリングコンテントオプティマイゼーション(human string content optimization)が含まれる。これに対して、経験的方法は、大きなヒト化変異体ライブラリーの作出に基づき、濃縮技術またはハイスループットスクリーニングを用いて最良のクローンを選択する。よって、経験的アプローチは、多数の抗体変異体を検索することができる信頼性のある選択および/またはスクリーニング系に依存する。ファージディスプレーおよびリボソームディスプレーなどのin vitroディスプレー技術はこれらの要件を満たし、当業者に周知である。経験的アプローチには、FRライブラリーの構築、ガイドセレクション、フレームワークシャッフリング、およびヒューマニアリングが含まれる。
【0169】
いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の様々な技術によって作製することができる。ヒト抗体は一般に、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol 5:368-74(2001)およびLonberg, Curr. Opin. Immunol 20:450-459(2008)に記載されている。ヒトモノクローナル抗体を生産するために使用するためには、マウス系よりも、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保持するトランスジェニックマウスを使用することができる(例えば、Woodら、国際出願WO91/00906; Kucherlapatiら、PCT公開WO91/10741;Lonbergら、国際出願WO92/03918;Kayら、国際出願92/03917;Lonberg, N. et al., 1994 Nature 368:856-859; Green, L.L. et al., 1994 Nature Genet. 7:13-21; Morrison, S.L. et al., 1994 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855; Bruggeman et al., 1993 Yeast Immunol 7:33-40; Tuaillon et al., 1993 PNAS 90:3720-3724;およびBruggeman et al., 1991 Eur J Immunol 21:1323-1326参照)。
【0170】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体は、齧歯類(マウスまたはラット)抗体、ヤギ抗体、霊長類(例えば、サル)抗体およびラクダ科動物抗体などの非ヒト抗体である。好ましくは、非ヒト抗体は、齧歯類(マウスまたはラット)抗体である。齧歯類抗体を生産するための方法は当技術分野で公知である。
【0171】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体はキメラ抗体である。いくつかのキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 81:6851-6855, 1984に記載されている。一つの実施態様では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギまたはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含んでなる。別の実施態様では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスに比べて変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合フラグメントが含まれる。
【0172】
特定の実施態様では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。一般に、非ヒト抗体は、その親非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しつつ、ヒトにおけるその免疫原性を低減するようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、例えば、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する、1以上の可変ドメインを含んでなる。場合により、ヒト化抗体は、ヒト定常領域の少なくとも一部をさらに含んでなる。いくつかの実施態様では、例えば抗体の特異性または親和性を回復または向上させるために、ヒト化抗体のいくつかのFR残基が非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)の対応する残基により置き換えられる。
【0173】
本発明の抗体は、コンビナトリアルライブラリーを所望の活性を有する抗体に関してスクリーニングすることによって単離することができる。例えば、ファージディスプレーライブラリーを作製し、それらのライブラリーを所望の結合特徴を有する抗体に関してスクリーニングするための種々の方法が当技術分野では公知である。これらの方法は、例えば、Hoogenboom et al., Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O' Brien et al.編, Human Press, Totowa, NJ, 2001)に記載され、さらに、例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554; Clackso et al., Nature 352:624-628 (1991); Marks et al., J.Mol.Biol. 222:581-597(1992); Marks and Bradbury, Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo編, Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J.Mol.Biol. 338(2):299-310(2004); Lee et al., J.Mol.Biol340(5):1073-1093(2004); Fellouse, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101 (34):12467-12472(2004);および Lee et al., J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)に記載される。
【0174】
一つの実施態様では、抗体分子は単一特異性抗体分子であり、単一のエピトープに結合する。例えば、単一特異性抗体分子には、それぞれ同じエピトープに結合する複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列が含まれる。
【0175】
一つの実施態様では、抗体分子は多重特異性抗体分子であり、例えば、抗体分子は、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含んでなり、これら複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列の第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第1のエピトープに対して結合特異性を有し、これら複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列の第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第2のエピトープに対して結合特異性を有する。一つの実施態様では、第1および第2のエピトープは、同じ抗原(例えば、同じタンパク質または多量体タンパク質の同じサブユニット)に存在する。一つの実施態様では、第1のエピトープと第2のエピトープは重複する。一つの実施態様では、第1のエピトープと第2のエピトープは重複しない。一つの実施態様では、第1のエピトープと第2のエピトープは、異なる抗原(例えば、異なるタンパク質または多量体タンパク質の異なるサブユニット)上に存在する。一つの実施態様では、多重特異性抗体分子は、第3、第4または第5の免疫グロブリン可変ドメインを含んでなる。一つの実施態様では、多重特異性抗体分子は、二重特異性抗体分子または三重特異的性抗体分子または四重特異性抗体分子である。
【0176】
一つの実施態様では、多重特異性抗体分子は、二重特異性抗体分子である。二重特異性抗体は、多くとも2つの抗原に特異的である。二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対して結合特異性を有する第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列と、第2のエピトープに対して結合特異性を有する第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列を特徴とする。一つの実施態様では、第1のエピトープと第2のエピトープは、同じ抗原(例えば、同じタンパク質または多量体タンパク質の同じサブユニット)上に存在する。一つの実施態様では、第1のエピトープと第2のエピトープは重複する。一つの実施態様では、第1のエピトープと第2のエピトープは重複しない。一つの実施態様では、第1のエピトープと第2のエピトープは、異なる抗原(例えば、異なるタンパク質または多量体タンパク質の異なるサブユニット)上に存在する。一つの実施態様では、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対して結合特異性を有する重鎖および軽鎖可変ドメイン配列と、第2のエピトープに対して結合特異性を有する重鎖および軽鎖可変ドメイン配列とを含んでなる。一つの実施態様では、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対して結合特異性を有する不完全抗体と、第2のエピトープに対して結合特異性を有する不完全抗体とを含んでなる。一つの実施態様では、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対して結合特異性を有する不完全抗体またはそのフラグメントと、第2のエピトープに対して結合特異性を有する不完全抗体またはそのフラグメントとを含んでなる。一つの実施態様では、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対して結合特異性を有するscFvまたはそのフラグメントと、第2のエピトープに対して結合特異性を有するscFvまたはそのフラグメントとを含んでなる。一つの実施態様では、第1のエピトープはPD-L1上にあり、第2のエピトープはLAG-3、OX40、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1および/またはCEACAM-5)、またはPD-L2上にある。
【0177】
いくつかの実施態様では、本発明はさらに、他の物質、例えば、治療用成分またはマーカー、例えば、細胞傷害性薬剤または免疫調節剤にコンジュゲートされた抗PD-L1モノクローナル抗体(「免疫複合体」)を提供する。細胞傷害性薬剤には、細胞に有害であるいずれの薬剤も含まれる。免疫複合体を形成するために好適な細胞傷害性薬剤(例えば、化学療法薬)の例は当技術分野で公知である、例えば、WO2015/153513またはWO2015/138920などを参照。例えば、細胞傷害性薬剤としては、限定されるものではないが、放射性同位元素、例えば、ヨウ素(131Iまたは125I)、イットリウム(90Y)、ルテチウム(177Lu)、アクチニウム(225Ac)、プラセオジム、アスタチン(211At)、レニウム(186Re)、ビスマス(212Biまたは213Bi)、インジウム(111In)、テクネチウム(99mTc)、リン(32P)、ロジウム(188Rh)、硫黄(35S)、炭素(14C)、トリチウム(H)、クロム(51Cr)、塩素(36Cl)、コバルト(57Coまたは58Co)、鉄(59Fe)、セレン(75Se)、またはガリウム(67Ga)が含まれる。細胞傷害性薬剤の例としては、さらに、化学療法薬または他の治療物質、例えば、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、ジヒドロキシアントラキンジケトン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-ジヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンおよび類似体または上記総ての治療薬の同族体が含まれる。細胞傷害性薬剤としてはさらに、例えば、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、およびダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエファロラムシル(thioephaloramucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス-ジクロロジアンミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラマイシン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシンとして知られた)およびドキソルビシン)、抗生剤(例えば、アクチノマイシンD(以前はアクチノマイシンとして知られた)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、および抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれる。
【0178】
抗PD-L1抗体とコンジュゲート/カップリング可能な物質は、例えば、WO2010/077634またはUS60/696426またはWO2016/007235またはWO2016/061142などに見られる。
【0179】
本発明の核酸およびそれを含んでなる宿主細胞
一つの態様において、本発明は、上記の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントをコードする核酸を提供する。この核酸は、抗体の軽鎖可変領域および/もしくは重鎖可変領域を含んでなるアミノ酸配列、または抗体の軽鎖および/もしくは重鎖を含んでなるアミノ酸配列をコードすることができる。
【0180】
例えば、本発明の例示的核酸は、配列番号26~51のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列をコードする核酸、または配列番号26~51のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0181】
本発明はさらに、下記核酸、または1以上の置換(例えば、保存的置換)、欠失もしくは挿入を有する下記核酸の変種とストリンジェント条件下でハイブリダイズされる核酸を提供する:配列番号26~51のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列をコードする核酸;または配列番号26~51のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸。
【0182】
一つの実施態様では、この核酸を含有する1以上のベクターが提供される。一つの実施態様では、ベクターは、真核生物の発現ベクターなどの発現ベクターである。ベクターとしては、限定されるものではないが、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファージまたは酵母人工染色体(YAC)が含まれる。多くのベクター系が使用可能である。例えば、あるクラスのベクターは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスまたはMMTVまたはMOMLV)およびSV40ウイルスなどの動物ウイルスに由来するDNA要素を使用する。別のクラスのベクターは、セムリキ森林ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルスおよびフラビウイルスなどのRNAウイルスに由来するRNA要素を使用する。好ましい実施態様では、本発明の発現ベクターは、pTT5発現ベクターである。
【0183】
加えて、DNAがその染色体に安定に組み込まれた細胞は、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能とする1以上のマーカーを導入することにより選択され得る。これらのマーカーは、例えば、栄養要求性宿主に対しては、原栄養性、殺生物剤(例えば、抗生剤)耐性、または重金属(例えば、銅)耐性などを提供し得る。選択マーカー遺伝子は、同じ細胞への同時形質転換により発現または導入されるように、DNA配列に直接連結させることができる。mRNAの最適な合成のために付加的要素も必要とされる場合がある。これらの要素としては、スプライシングシグナル、転写プロモーター、エンハンサー、および終結シグナルを含み得る。
【0184】
発現のために発現ベクターまたはDNA配列が作出されれば、その発現ベクターを好適な宿主細胞にトランスフェクトまたは導入することができる。この目的で様々な技術、例えば、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿法、エレクトロポレーション、レトロウイルス形質導入、ウイルストランスフェクション、微粒子銃、脂質に基づくトランスフェクション、または他の従来技術が使用できる。プロトプラスト融合の場合、細胞を培養培地でインキュベートし、適当な活性に関してスクリーニングする。得られたトランスフェクト細胞をインキュベートするため、および得られた抗体分子を回収するための方法および条件は当業者に公知であり、本明細書および当技術分野で公知の方法に基づいて使用される特定の発現ベクターおよび特定の哺乳動物宿主細胞に従って変更または最適化することができる。
【0185】
一つの実施態様では、本明細書に記載の抗体分子をコードする核酸または本明細書に記載のベクターを含有する宿主細胞が提供される。抗体をコードする核酸またはベクターをクローニングまたは発現するために好適な宿主細胞には、本明細書に記載されるような原核細胞または真核細胞が含まれる。抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合には、例えば細菌で生産可能である。細菌における抗体フラグメントおよびポリペプチドの発現は、例えば、米国特許第5648237号、同第5789199号および同第5840523号に記載され、大腸菌での抗体フラグメントの発現を記載するCharlton, Methods in Molecular Biology, 第248巻 (B. K. C. Lo, 編, Humana Press, Totowa, NJ, 2003), 第245-254頁にも記載されている。発現の後、抗体は可溶性画分中の細菌ペーストから単離することができ、さらに精製することができる。一つの実施態様では、宿主細胞は大腸菌である。
【0186】
一つの実施態様では、宿主細胞は、真核生物である。別の実施態様では、宿主細胞は、酵母、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)、昆虫細胞、植物細胞、または抗体またはその抗原結合フラグメントの作製に好適な他の細胞からなる群から選択される。例えば、糸状真菌または酵母などの真核微生物は、グリコシル化経路が「ヒト化」されて部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の生産をもたらす真菌および酵母を含め(Gerngross, Nat. Biotech. 22: 1409-1414(2004)、およびNat. Biotech. 24:210-215 (2006)参照)、抗体をコードするベクターに好適なクローニングまたは発現宿主である。グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)にも由来する。
【0187】
また、脊椎動物細胞が宿主として使用されてもよい。例えば、懸濁増殖に好適となるように操作された哺乳動物細胞株が使用可能である。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例として、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胎児腎臓株(例えば、Graham et al.、J. Gen Virol. 36: 59 (1977)に記載されるような293HEKまたは293細胞)などがある。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR CHO細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 216 (1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。
【0188】
抗体生産に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の総説は、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, 第248巻 (B. K. C. Lo, 編, Humana Press, Totowa, NJ), 第255-268頁 (2003)から見出すことができる。他の有用な宿主細胞としては、限定されるものではないが、Vero細胞、Hela細胞、COS細胞、CHO細胞、HEK293細胞、BHK細胞、MDCKII細胞、PerC6細胞株由来の卵母細胞(例えば、Crucell社のPERC6細胞)、および乳房上皮細胞などのトランスジェニック動物由来細胞が含まれる。好適な昆虫細胞としては、限定されるものではないが、Sf9細胞が含まれる。
【0189】
抗体およびその抗原結合フラグメントを製造するための方法
本明細書に開示される抗PD-L1抗体は、組換え生産することができる。組換え抗体の生産のためには当技術分野で公知のいくつかの方法がある。抗体の組換え生産のための方法の一例は、米国特許第4,816,567号に開示されている。
【0190】
一つの実施態様では、抗PD-L1抗体を製造するための方法が提供され、その方法は、上記に示されるように、抗体をコードする核酸を含有する宿主細胞を、抗体を発現させるために好適な条件下でインキュベートする工程、および場合により、その抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養物)から回収する工程を含んでなる。抗PD-L1抗体の組換え生産については、抗体(例えば、上記の抗体)をコードする核酸を単離し、宿主細胞でのさらなるクローニングおよび/または発現のために1以上のベクターに挿入する。この核酸は容易に単離され、従来の手順を使用することにより(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)配列決定される。
【0191】
一つの実施態様では、宿主細胞は、抗体のVLのアミノ酸配列をコードする核酸と抗体のVHのアミノ酸配列をコードする核酸とを含んだベクターを含む。一つの実施態様では、宿主細胞は、抗体のVLのアミノ酸配列をコードする核酸を含んでなる第1のベクターと抗体のVHのアミノ酸配列をコードする核酸を含んでなる第2のベクターとを含む。
【0192】
アッセイ
本明細書で提供される抗PD-L1抗体は、当技術分野で公知の様々なアッセイによりその物理的/化学的特性および/または生物活性に関して同定、スクリーニング、または特性決定を行うことができる。一つの態様において、本発明の抗体の抗原結合活性は、例えば、ELISA、ウエスタンブロット法、フローサイトメトリー、および抗体分子でコーティングされた磁性ビーズなどの既知の方法によって試験される。PD-L1結合は、当技術分野で公知の方法によって決定することができ、例示的方法が本明細書に開示される。いくつかの実施態様では、生物学的光干渉法(例えば、Fortebio親和性測定)またはMSDアッセイまたはフローサイトメトリーが使用される。
【0193】
他の態様では、競合的結合アッセイは、D-L1との結合をめぐって本明細書に開示される抗PD-L1抗体と競合する抗体を同定するために使用することができる。いくつかの実施態様では、このような競合的抗体は、本明細書に開示される抗PD-L1抗体のいずれかと同じエピトープ(例えば、線状エピトープまたは立体配座エピトープ)に結合する。抗体結合エピトープの位置決定を行うための詳細な例示的方法は、Morris (1996) "Epitope Mapping Protocols", Methods in Molecular Biology 第66巻 (Humana Press, Totowa, NJ)に記載されている。
【0194】
本発明はさらに、上記の特性の1以上を有する抗PD-L1抗体を同定するためのアッセイを提供する。さらに、in vivoおよび/またはin vitroでこのような生物活性を有する抗体が提供される。
【0195】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体が、上記の特性の1以上に関して試験される。
【0196】
前記in-vitroアッセイのいずれかで使用するための細胞には、PD-L1を天然に発現するか、またはPD-L1を発現するように操作された細胞または細胞株が含まれる。
【0197】
前記アッセイはいずれも、抗PD-L1抗体の代わりにまたはそれに加えて本発明の免疫複合体を使用することによって実施され得ることが認識されるであろう。
【0198】
前記アッセイはいずれも、抗PD-L1抗体および他の治療薬を使用することによって実施され得ることが認識されるであろう。
【0199】
医薬組成物および医薬製剤
本発明はさらに、抗PD-L1抗体またはその抗体のフラグメントまたはその免疫複合体を含んでなる組成物(医薬組成物または医薬製剤を含む)、ならびに抗PD-L1抗体またはそのフラグメントをコードする核酸を含んでなる組成物を提供する。特定の実施態様では、組成物は、PD-L1もしくはその抗体のフラグメントもしくはその免疫複合体に結合する1以上の抗体、またはPD-L1またはそのフラグメントと結合する1以上の抗体をコードする1以上の核酸を含んでなる。このような組成物は、バッファーを含め、当技術分野で公知の医薬担体、賦形剤などの好適な医薬補助材料をさらに含有し得る。
【0200】
本発明での使用に好適な医薬担体は、水、および石油、または動物起源、植物起源、もしくは合成起源の油、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む油などの無菌の液体であり得る。水は、医薬組成物が静脈内に投与される場合に好ましい担体である。生理食塩水およびデキストロースおよびグリセロール水溶液も、液体担体として、特に注射溶液に使用するために使用可能である。
【0201】
好適な賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。賦形剤の使用に関しては、"Handbook of Pharmaceutical Excipients", 第5版, R. C. Rowe, P. J. Seskey and S. C. Owen, Pharmaceutical Press, London, Chicago参照。
【0202】
組成物は、所望により、少量の湿潤剤または乳化剤、またはpHバッファーをさらに含有してもよい。
【0203】
これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態を採り得る。経口製剤は、医薬級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウムおよびサッカリンなどの標準的な担体および/または賦形剤を含有し得る。
【0204】
本明細書に記載の抗PD-L1抗体を含んでなる、好ましくは、凍結乾燥製剤または水溶液の形態の医薬製剤は、所望の純度の抗PD-L1抗体を1種類以上の任意選択の医薬補助材料と混合することによって作製することができる[Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版, Osol, A.編 (1980)]。
【0205】
例示的凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6267958号に記載されている。水性抗体製剤としては、米国特許第6171586号およびWO2006/044908に記載されているものが含まれ、後者の製剤は、ヒスチジン-酢酸バッファーを含んでなる。
【0206】
本発明の医薬組成物または製剤はまた、治療される特定の適応症により必要とされる2種類以上の有効成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する有効成分も含有し得る。例えば、化学療法薬および/または細胞傷害性薬剤などの他の抗癌有効成分をさらに提供することが望ましい。有効成分は、意図される目的に有効な量で適宜組み合わせられる。有効成分は、化学療法薬、他の抗体、および他の治療薬を含め、当技術分野で公知であり、抗PD-L1抗体と組み合わせることができるいずれの物質であってもよい。有効成分の例は、例えば、WO2010/077634、WO2016/061142、US61/264061、US60/696426、WO2016/007235などに見出すことができる。
【0207】
いくつかの実施態様では、有効成分は、抗LAG-3抗体、例えば、ヒト抗原に結合する抗LAG-3抗体であり、好ましくは、抗LAG-3抗体はヒト化されている。
【0208】
徐放性製剤を作製することができる。徐放性製剤の好適な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。
【0209】
抗体の使用
一つの態様において、本発明は、被験体において免疫応答を調節するための方法に関する。この方法は、被験体に有効量の本明細書に開示される抗体分子(例えば、抗PD-L1抗体)または医薬組成物または免疫複合体を投与し、それにより、その被験体において免疫応答を調節することを含んでなる。一つの実施態様では、本明細書に開示される抗体分子(例えば、治療上有効な量の抗PD-L1抗体分子)または医薬組成物または免疫複合体は、被験体において免疫応答を回復させる、増強する、刺激するまたは増大させる。
【0210】
他の態様では、本発明は、被験体において腫瘍(例えば、癌)を予防または治療するための方法に関し、その方法は、被験体に有効量の本明細書に開示される抗体分子(例えば、抗PD-L1抗体)または医薬組成物または免疫複合体を投与することを含んでなる。いくつかの実施態様では、腫瘍は、免疫回避腫瘍(tumor immune escape)である。好ましくは、腫瘍は、消化管腫瘍(例えば、癌)、例えば、結腸癌である。
【0211】
他の態様では、本発明は、被験体において感染性疾患を予防または治療するための方法に関し、その方法は、被験体に有効量の本明細書に開示される抗体分子(例えば、抗PD-L1抗体)または医薬組成物または免疫複合体を投与することを含んでなる。一つの実施態様では、感染性疾患は慢性感染症である。
【0212】
他の態様では、本発明は、被験体において抗体依存性細胞媒介細胞傷害を誘導するための方法に関し、その方法は、被験体に有効量の本明細書に開示される抗体分子(例えば、抗PD-L1抗体)または医薬組成物または免疫複合体を投与することを含んでなる。
【0213】
被験体は、哺乳動物、例えば、霊長類、好ましくは、高等霊長類、例えば、ヒト(例えば、本明細書に記載の疾患を有するまたは有するリスクのある患者)であり得る。一つの実施態様では、被験体は、免疫応答の増強を必要とする。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗PD-L1抗体分子は、T細胞増殖を促進する。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗PD-L1抗体分子は、被験体において抗原特異的T細胞応答を、例えば、抗原特異的T細胞応答におけるインターロイキン-2(IL-2)またはインターフェロン-γ(IFN-γ)の生産を回復させる、促進する、または刺激する。いくつかの実施態様では、免疫応答は、抗腫瘍応答である。一つの実施態様では、被験体は、本明細書に記載の疾患(例えば、本明細書に記載の腫瘍または感染性疾患)を有するか、または有するリスクがある。特定の実施態様では、被験体は免疫不全であるか、または免疫不全のリスクがある。例えば、被験体は、化学療法および/または放射線療法を受けているか、または受けていた。あるいは、または組み合わせて、被験体は、感染による免疫不全であるか、または感染による免疫不全であるリスクがある。
【0214】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の腫瘍、例えば、癌としては、限定されるものではないが、固形腫瘍、血液性癌、軟組織腫瘍、および転移病巣が含まれる。
【0215】
固形腫瘍の例としては、種々の器官系の悪性腫瘍、例えば、肉腫および癌腫(腺癌および扁平上皮癌を含む)、例えば、肝臓、肺、乳房、リンパ、消化管(例えば、結腸)、尿生殖路(例えば、腎臓および膀胱上皮細胞)、前立腺、および咽頭を侵す癌腫が含まれる。腺癌としては、ほとんどの結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、肺癌の非小細胞癌、小腸癌、および食道癌などの悪性腫瘍が含まれる。扁平上皮癌としては、肺、食道、皮膚、頭頸部領域、口腔、肛門、および子宮頸の癌腫などの悪性腫瘍が含まれる。一つの実施態様では、癌は、黒色腫、例えば、進行性黒色腫である。一つの実施態様では、癌は、結腸癌などの消化管癌である。上記の癌腫の転移病巣もまた、本発明の方法および組成物を使用することによって治療または予防することができる。
【0216】
治療される好ましい癌の限定されない例としては、リンパ腫(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)、乳癌(例えば、転移性乳癌)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、例えば、ステージIVもしくは再発性非小細胞肺癌、NSCLC腺癌、またはNSCLC扁平上皮癌)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病)、皮膚癌(例えば、黒色腫(例えば、ステージIIIもしくはIV黒色腫)またはメルケル細胞癌腫)、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC))、骨髄異形成症候群、膀胱癌(例えば、移行上皮癌)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌、例えば、明細胞腎細胞癌、例えば、進行性または転移性明細胞腎細胞癌)、および結腸癌が含まれる。加えて、難治性または再発性悪性腫瘍は、本明細書に記載の抗体分子を使用することによって治療することができる。
【0217】
治療可能な他の癌の例としては、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頸部癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門癌、胃食道癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、メルケル細胞癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性または急性白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、および慢性リンパ球性白血病を含む)、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、腎臓または尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、軸椎腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮細胞癌、T細胞リンパ腫、および環境誘発癌(アスベストにより誘発される癌、例えば、中皮腫を含む)、ならびにそれらの組合せが含まれる。
【0218】
転移性癌、例えば、PD-L1を発現する転移性癌の治療(Iwai et al., (2005) Int. Immunol. 17:133-144)は、本明細書に記載の抗体分子を使用することによって実施され得る。
【0219】
免疫回避腫瘍(tumor immune escape)もまた、本明細書に記載の抗体分子を使用することによって治療可能である。
【0220】
一つの実施態様では、腫瘍は、高レベルのPD-L1を発現する癌である。
【0221】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の癌は、結腸癌およびその転移性癌である。
【0222】
いくつかの実施態様では、感染は、急性または慢性である。いくつかの実施態様では、慢性感染は、持続的感染、潜在感染または遅発性感染である。いくつかの実施態様では、慢性感染は、細菌、ウイルス、真菌、および原虫からなる群から選択される病原体により引き起こされる。
【0223】
いくつかの実施態様では、病原体は細菌である。一つの実施態様では、細菌は、マイコバクテリア種(Mycobacterium spp.)、サルモネラ種(Salmonella spp.)、リステリア種(Listeria spp.)、連鎖球菌種(Streptococcus spp.)、ヘモフィルス種(Haemophilus spp.)、ナイセリア種(Neisseria spp.)、クレブシエラ種(Klebsiella spp.)、ボレリア種(Borrelia spp.)、バクテロイデス・フラジリス(Bacterioides fragilis)、トレポネーマ種(Treponema spp.)、およびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)からなる群から選択される。
【0224】
いくつかの実施態様では、病原体はウイルスである。一つの実施態様では、ウイルスは、感染性ウイルス、例えば、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルス(HBVまたはHCV)、単純ヘルペスウイルスIまたはII、ヒト免疫不全ウイルスIまたはII、サイトメガウイルス(cytomegavirus)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒト乳頭腫ウイルス、ヒトTリンパ球向性白血病ウイルスIまたはII、および水痘帯状疱疹ウイルスからなる群から選択される。
【0225】
いくつかの実施態様では、病原体は真菌である。一つの実施態様では、真菌誘発障害は、アスペルギルス症(aspergilosis)、ブラストミセス症、カンジダ症(candidiasis albicans)、コクシジオイデス症(coccidioiodmycosis immitis)、ヒストプラスマ症、パラコクシジオイデス症、および微胞子虫類症からなる群から選択される。
【0226】
いくつかの実施態様では、病原体は、寄生虫などの原虫である。一つの実施態様では、原生生物により引き起こされる障害は、リーシュマニア症、プラスモディウム症(すなわち、マラリア)、クリプトスポリジウム症、トキソプラスマ症、トリパノソーマ症、および蠕虫感染(吸虫(例えば、住血吸虫症)、条虫(例えば、エキノコックス症)および線虫(例えば、旋毛虫症)により引き起こされる疾患、回虫症、フィラリア症ならびに糞線虫症を含む)からなる群から選択される。
【0227】
別の実施態様では、感染は、肝炎感染、例えば、B型肝炎またはC型肝炎感染である。抗PD-L1抗体分子は、治療上有利なようにB型肝炎感染またはC型肝炎感染に対する従来の治療と組み合わせてもよい。特定の実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、B型肝炎抗原(例えば、Engerix B)またはワクチンと組み合わせて、また場合によりアルミニウム含有アジュバントと組み合わせて投与される。
【0228】
別の実施態様では、感染性疾患はインフルエンザである。特定の実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、インフルエンザ抗原またはワクチンと組み合わせて投与される。
【0229】
本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントを用いた予防または治療に好適な疾患は、さらにWO2010/077634、WO2016/061142、US60/696426、WO2016/007235またはUS61/264061に見出すことができる。
【0230】
他の態様において、本発明は、上記の関連疾患または病態の予防または治療のための薬物の製造または調製における抗PD-L1抗体またはそのフラグメントまたはその免疫複合体の使用を提供する。
【0231】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体または抗体フラグメントまたは免疫複合体は、病態および/またはそれらの病態に関連する症状の発症を遅延させる。
【0232】
併用療法
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の予防または治療方法は、被験体または個体に、本明細書に開示される抗体分子(例えば、抗PD-L1抗体もしくはそのフラグメント)または医薬組成物もしくは免疫複合体を1以上の他の療法、例えば、治療法および/または他の治療薬と組み合わせて投与することをさらに含んでなる。
【0233】
いくつかの実施態様では、治療法としては、手術(例えば、腫瘍切除)、放射線療法(例えば、照射領域が設計される三次元原体放射線療法を含む体外照射療法)、部分照射(例えば、予め選択された標的または器官に向けられる照射)、集束照射などが含まれる。集束照射は、定位放射線手術、定位分割放射線手術、および強度変調放射線療法からなる群から選択され得る。集束照射は、例えば、WO2012/177624に記載されるように、粒子ビーム(陽子)、コバルト-60(光子)、および線形加速器(X線)からなる群から選択される放射線源を備え得る。
【0234】
放射線療法は、限定されるものではないが、体外照射療法、体内放射線療法、組織内照射、定位放射線手術、全身放射線療法、放射線療法および永久または一過性組織内小線源療法を含む方法の1つまたは組合せによって行うことができる。用語「小線源療法」は、腫瘍または他の増殖性組織疾患の部位またはその付近の身体に挿入された空間的に閉じ込められた放射性物質により送達される放射線療法を指す。この用語は、限定されるものではないが、放射性同位元素(例えば、At-211、I-131、I-125、Y-90、Re-186、Re-188、Sm-153、Bi-212、P-32、およびLuの放射性同位元素)への曝露を含むことを意図する。好適な線源には、固体および液体が含まれる。限定されない例として、線源は、I-125、I-131、Yb-169および固体源としてのIr-192、固体源としてのI-125などの放射性核種、または光子、β粒子、γ線もしくは他の治療用光線を発する他の放射性核種であり得る。放射性物質はまた任意の放射性核種溶液、例えば、I-125もしくはI-131溶液から作製された流体であってもよく、または放射性流体は、固体放射性核種(例えば、Au-198およびY-90)の小粒子を含有する好適な流体のスラリーを使用することにより生産することもできる。加えて、放射性核種は、ゲルまたは放射性ミクロスフェア内に封入されていてもよい。
【0235】
いくつかの実施態様では、治療薬は、化学療法薬、細胞傷害性薬剤、ワクチン、他の抗体、抗感染活性薬、および免疫調節剤(例えば、共刺激分子活性化剤または免疫チェックポイント分子阻害剤)からなる群から選択される。
【0236】
例示的細胞傷害性薬剤としては、抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、インターカレート剤、シグナル伝達経路に干渉し得る活性薬、有効アポトーシス剤、プロテアソーム阻害剤、および照射(例えば、部分的または全身照射(例えば、γ線))が含まれる。
【0237】
他の例示的抗体としては、限定されるものではないが、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗CTLA-4、抗TIM-3、抗CEACAMまたは抗LAG-3)、免疫細胞を刺激する抗体(例えば、作動性GITR抗体またはCD137抗体)、抗癌抗体(例えば、リツキシマブ(リツキサン(登録商標)またはマブセラ(登録商標))、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、トシツモマブ(ベキサール(登録商標))、イブリツモマブ(ゼヴァリン(登録商標))、アレムツズマブ(キャンパス(登録商標))、エピラツズマブ(リンホシド(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、エルロチニブ(タルセバ(登録商標))、セツキシマブ(エルビタックス(登録商標))などが含まれる。
【0238】
例示的化学療法薬としては、限定されるものではないが、アナストロゾール(アリミテックス(登録商標))、ビカルタミド(カソデックス(登録商標))、硫酸ブレオマイシン(ベレノキサン(登録商標))、ブスルファン(ミレラン(登録商標))、ブスルファン注射剤(ブスルフェックス(登録商標))、カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、N4-ペンチルオキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン、カルボプラチン(パラパラチン(Parapalatin)(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(ロイケラン(登録商標))、シスプラチン(プラチノール(登録商標))、クラドリビン(ロイスタチン(登録商標))、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)またはネオサール(登録商標))、シトシンアラビノシド、シトシンアラビノシド(シトサール-U(登録商標))、デポシト(DepoCyt(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、ダクチノマイシン(アクチノマイシンDおよびコスメガン)、塩酸ダウノマイシン(セルビジン(登録商標))、クエン酸ダウノマイシンリポソーム注射剤(ダウノキソム(登録商標))、デキサメタゾン、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、塩酸ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)およびルベックス(登録商標))、エトポシド(ベペシド(登録商標))、リン酸フルダラビン(フルダラ(登録商標))、5-フルオロウラシル(アドルシル(登録商標)およびエフデックス(登録商標))、フルタミド(エウレキシン(登録商標))、テザシチビン、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素(ヒドレア(登録商標))、イダルビシン(イダマイシン(登録商標))、イフォスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(カンプトサール(登録商標))、L-アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ホリナートカルシウム、メルファラン(アルクラン(登録商標))、6-メルカプトプリン(プリントール(登録商標))、メトトレキサート(フォレックス(登録商標))、ミトキサントロン、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(マイロターグ)、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、フェニックス(イットリウム90/MX-DTPA)、ペントスタチン、ポリフェプロサン20とカルムスチンインプラント(グリアデル(登録商標))の組合せ、クエン酸タモキシフェン(ノルバデックス(登録商標))、テニポシド(ブモン(登録商標))、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(チラゾリン(登録商標))、注射用塩酸トポテカン(ハイカムチン(登録商標))、ビンブラスチン(ベルバン(登録商標))、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))、ビノレルビン、イブルチニブ、ザイデリグ(イデラリシブ)およびブレンツキシマブベドチンが含まれる。
【0239】
例示的ワクチンとしては、限定されるものではないが、癌ワクチンである。ワクチンは、DNAに基づくワクチン、RNAに基づくワクチンまたはウイルス形質導入に基づくワクチンであり得る。癌ワクチンは、予防的であっても治療的であってもよい。いくつかの実施態様では、癌ワクチンは、ペプチド癌ワクチンであり、いくつかの実施態様では、これは個別化ペプチドワクチンである。いくつかの実施態様では、ペプチド癌ワクチンは、多価長鎖ペプチド、多重ペプチド、ペプチド混合物、ハイブリッドペプチド、またはペプチドパルス樹状細胞ワクチンである(例えば、Yamada et al., Cancer Sci, 104:14-21, 2013参照)。
【0240】
例示的活性抗感染薬としては、限定されるものではないが、上記のように、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗原虫薬および抗菌薬、例えば、ヌクレオシド類似体(ジドブジン(AST)、ガンシクロビル、ホスカルネット、またはシドビル)が含まれる。
【0241】
免疫調節剤としては、免疫チェックポイント分子阻害剤および共刺激分子活性化剤が含まれる。
【0242】
いくつかの実施態様では、免疫チェックポイント分子阻害剤は、PD-1、PD-L2、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3、および/または-5)、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4および/またはTGFRβの阻害剤である。この分子の阻害は、DNA、RNA、またはタンパク質レベルで起こり得る。いくつかの実施態様では、免疫チェックポイント分子の発現を阻害するために阻害核酸(例えば、dsRNA、siRNA、またはshRNA)を使用することができる。他の実施態様では、免疫チェックポイント分子阻害剤は、可溶性リガンド(例えば、PD-1-IgもしくはCTLA-4Ig)、または抗体もしくはその抗原結合フラグメント、例えば、PD-1、PD-L2、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3、および/もしくは-5)、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、および/もしくはTGFRβまたはそれらの組合せに結合する抗体またはそのフラグメントなどの、免疫チェックポイント分子と結合するポリペプチドである。他の実施態様では、免疫調節剤は、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)(例えば、ヒトCEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5))の阻害剤である。他の実施態様では、免疫調節剤は、LAG-3(例えば、ヒトLAG-3)の阻害剤である。一つの実施態様では、LAG-3の阻害剤は、LAG-3に対する抗体分子、例えば、ヒトに結合する抗LAG-3抗体であり、好ましくは、抗LAG-3抗体はヒト化されている。他の実施態様では、免疫調節剤は、TIM-3(例えば、ヒトTIM-3)の阻害剤である。一つの実施態様では、TIM-3の阻害剤は、TIM-3に対する抗体分子である。
【0243】
いくつかの実施態様では、免疫調節剤は、共刺激分子活性化剤または作動剤である。一つの実施態様では、共刺激分子作動剤は、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、またはCD83リガンドからなる群から選択される分子の作動剤(例えば、作動抗体またはその抗原結合フラグメント、または可溶性融合物)である。他の実施態様では、免疫調節剤は、GITR作動剤である。一つの実施態様では、GITR作動剤は、GITRに対する抗体分子である。他の実施態様では、免疫調節剤は、OX40作動剤である。一つの実施態様では、OX40作動剤は、OX40に対する抗体分子である。
【0244】
いくつかのさらなる実施態様では、抗PD-L1抗体またはそのフラグメントはまた、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤)と組み合わせて使用することができる。例示的チロシンキナーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、上皮細胞増殖因子(EGF)経路阻害剤(例えば、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)阻害剤)、血管内皮増殖因子(VEGF)経路阻害剤(例えば、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤、例えば、VEGFR-1阻害剤、VEGFR-2阻害剤、およびVEGFR-3阻害剤)、血小板由来増殖因子(PDGF)経路阻害剤(例えば、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)阻害剤、例えば、PDGFR-β阻害剤)、RAF-1阻害剤、KIT阻害剤、およびRET阻害剤が含まれる。
【0245】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントはまた、PI3K阻害剤、mTOR阻害剤、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、および/またはJAK2阻害剤などと組み合わせて使用することができる。
【0246】
本発明の方法のいずれかのいくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントの投与が、抗原の投与と組み合わせられる。抗原は、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、または病原体由来の抗原であり得る。いくつかの実施態様では、腫瘍抗原は、タンパク質を含んでなる。いくつかの実施態様では、腫瘍抗原は、核酸を含んでなる。いくつかの実施態様では、腫瘍抗原は、腫瘍細胞である。
【0247】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントは、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞傷害性Tリンパ球またはCTL)の養子免疫細胞移入を含んでなる療法と組み合わせて投与することができる。
【0248】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントは、抗腫瘍薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0249】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントは、腫瘍溶解性ウイルスと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施態様では、腫瘍溶解性ウイルスは、癌細胞で選択的に増幅し、癌細胞死を誘発するか、または癌細胞の成長を遅延させることができる。いくつかの場合では、腫瘍溶解性ウイルスは、非癌細胞には影響がないか、もしくは影響が最小である。腫瘍溶解性ウイルスとしては、限定されるものではないが、腫瘍退縮アデノウイルス、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス、腫瘍溶解性レトロウイルス、腫瘍溶解性パルボウイルス、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、腫瘍溶解性シンドビスウイルス、腫瘍溶解性インフルエンザウイルス、または腫瘍溶解性RNAウイルス(例えば、腫瘍溶解性レオウイルス、腫瘍溶解性ニューカッスル病ウイルス(NDV)、腫瘍溶解性麻疹ウイルス、または腫瘍溶解性水疱性口内炎ウイルス(VSV))が含まれる。いくつかの実施態様では、腫瘍溶解性ウイルスは、US2010/0178684A1に記載のウイルス、例えば、組換え腫瘍溶解性ウイルスである。
【0250】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体またはそのフラグメントは、サイトカインと組み合わせて投与することができる。
【0251】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、限定されるものではないが、(i)癌細胞を死滅させ、腫瘍を減らすための放射線療法(例えば、放射線療法、X線療法および照射)または電磁放射線(ここでは、放射線療法は、外部照射療法(EBRT)または内部小線源療法によって行うことができる);(ii)一般に急速に分裂している細胞に影響を及ぼす化学療法、または細胞傷害性薬剤の適用;(iii)癌細胞のタンパク質の脱調節に特異的に影響を及ぼす標的化療法、または薬剤(例えば、イマチニブおよびゲフィチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤;モノクローナル抗体;光線力学療法);(iv)免疫療法、または宿主の免疫応答の増強(例えば、ワクチン);(v)ホルモン療法、またはホルモンの遮断(例えば、腫瘍がホルモン感受性である場合);(vi)血管新生阻害剤、または血管新生および成長を遮断する療法;および(vii)緩和医療、または疼痛、悪心、嘔吐、下痢、および出血を管理するための健康管理の質の向上に関連する療法(ここでは、より積極的な治療計画を可能とするためにモルヒネおよびオキシコドンなどの鎮痛薬ならびにオンダンセトロンおよびアプレピタントなどの抗催吐薬が投与される)を含む、当技術分野の慣例の癌療法と組み合わせることができる。
【0252】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、宿主の免疫機能を増強する常法と組み合わせることができる。その常法としては、限定されるものではないが、(i)例えば、(a)異種のMHC同種抗原をコードするDNAを腫瘍に注射すること、または(b)生検腫瘍細胞を免疫抗原認識(例えば、免疫刺激性サイトカイン、GM-CSF、共刺激分子B7.1、および共刺激分子B7.2)の可能性を高める遺伝子でトランスフェクトすることによるAPCの増強、(ii)養子細胞免疫療法、または活性化腫瘍特異的T細胞療法が含まれる。養子細胞免疫療法は、腫瘍浸潤宿主Tリンパ球を単離すること、およびin vitroにおいて、例えば、IL-2または腫瘍またはその両方を介してその集団の拡大増殖を刺激することを含み;加えて、単離された機能不全T細胞を本発明の抗体のin-vitro適用によって活性化し、次いで、活性化されたT細胞を宿主に再投与することができる。
【0253】
上記の様々な併用療法を治療のためにさらに組み合わせることができる。
【0254】
抗PD-L1抗体と他の治療法または治療薬の組合せのさらなる例は、WO2016/061142、WO2010/077634、US60/696426、US61/264061、WO2016/007235などに見出せる。
【0255】
このような併用療法は、併用投与(2種類以上の治療薬が同じ処方物または別の処方物に含有される)と個別投与(本発明の抗体の投与は、他の療法、例えば、治療法または治療薬の投与の前、投与と同時、および/または投与の後に行うことができる)の両方を包含する。抗体分子および/または他の療法、例えば、治療薬または治療法は、活動性疾患期または寛解もしくは低活動性疾患期に投与することができる。抗体分子は、他の療法の前に、他の療法と同時に、他の療法の後に、または疾患の寛解期に投与してよい。
【0256】
一つの実施態様では、抗PD-L1抗体の投与と他の療法(治療法または治療薬)の投与は、互いに約1か月以内、または約1週間、2週間、もしくは3週間以内、または約1日、2日、3日、4日、5日または6日以内に行う。
【0257】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体の組合せは、個別に(例えば、別の抗体として)または連結して(例えば、二重特異性または三重特異性抗体分子として)投与することができる。
【0258】
いずれの療法も抗PD-L1抗体の代わりにまたは抗PD-L1抗体に加えて本発明の免疫複合体を使用することによって実施可能なことが認識されるであろう。
【0259】
抗LAG-3抗体との併用療法
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体は、抗LAG-3抗体と組み合わせて治療に使用され得る。
【0260】
いくつかの実施態様では、本発明の抗LAG-3抗体は、抗ヒトLAG-3抗体である。いくつかの実施態様では、本発明の抗LAG-3抗体は、IgG1抗体またはIgG2抗体またはIgG4抗体である。いくつかの実施態様では、抗LAG-3抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、抗LAG-3抗体は、ヒト化されている。いくつかの実施態様では、抗LAG-3抗体は、キメラ抗体である。いくつかの実施態様では、抗LAG-3抗体のフレームワーク配列の少なくとも一部が、ヒトコンセンサスフレームワーク配列である。一つの実施態様では、本発明の抗LAG-3抗体はまた、その抗体フラグメント、好ましくは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、一本鎖可変フラグメント(例えば、scFv)または(Fab’)、シングルドメイン抗体、ダイアボディ(dAb)、または直鎖抗体からなる群から選択される抗体フラグメントも含んでなる。
【0261】
いくつかの特定の実施態様では、本発明の抗LAG-3抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号75で示される重鎖可変領域の3つの重鎖相補性決定領域(HCDRs)、および/または
(ii)配列番号76で示される軽鎖可変領域の3つの軽鎖相補性決定領域(LCDRs)
を含んでなる。
【0262】
いくつかの実施態様では、本発明の抗LAG-3抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、ここで、 (i)VHは、相補性決定領域(CDRs)HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含んでなり、HCDR1は、配列番号69のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;HCDR2は、配列番号70から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはそのアミノ酸配列からなり;HCDR3は、配列番号71のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;かつ/または
(ii)VLは、相補性決定領域(CDRs)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含んでなり、LCDR1は、配列番号72のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;LCDR2は、配列番号73のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;LCDR3は、配列番号74から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはそのアミノ酸配列からなる。
【0263】
いくつかの実施態様では、本発明の抗LAG-3抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域VHおよび/または軽鎖可変領域VLを含んでなり、ここで、
(a)重鎖可変領域VHは、
(i)配列番号75から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなるか、
(ii)配列番号75から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、または
(iii)配列番号75から選択されるアミノ酸配列に比べ、1個以上(好ましくは多くとも10個、より好ましくは多くとも5、4、3、2もしくは1個)のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり、好ましくは、これらのアミノ酸変異は、CDR内には存在せず;かつ/あるいは
(b)軽鎖可変領域VLは、
(i)配列番号76から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、
(ii)配列番号76から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、または
(iii)配列番号76から選択されるアミノ酸配列に比べ、1個以上(好ましくは多くとも10個、より好ましくは多くとも5、4、3、2もしくは1個)のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり、好ましくは、これらのアミノ酸変異は、CDR内には存在しない。
【0264】
いくつかの実施態様では、本発明の抗LAG-3抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖および/または軽鎖を含んでなり、ここで、
(a)重鎖は、
(i)配列番号77から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、
(ii)配列番号77から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、または
(iii)配列番号77から選択されるアミノ酸配列に比べ、1個以上(好ましくは多くとも20もしくは10個、より好ましくは多くとも5、4、3、2または1個)のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり、好ましくは、これらのアミノ酸変異は、重鎖のCDR内には存在せず、より好ましくは、これらのアミノ酸変異は、重鎖可変領域には存在せず;かつ/あるいは
(b)軽鎖は、
(i)配列番号78から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、
(ii)配列番号78から選択されるアミノ酸配列を含んでなるもしくはからなるか、または
(iii)配列番号78から選択されるアミノ酸配列に比べ、1個以上(好ましくは多くとも20または10、より好ましくは多くとも5、4、3、2もしくは1個)のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり、好ましくは、これらのアミノ酸変異は、軽鎖のCDR内には存在せず、より好ましくは、これらのアミノ酸変異は、軽鎖可変領域には存在しない。
【0265】
いくつかの実施態様では、本発明の抗PD-L1抗体の修飾はまた、抗LAG-3抗体にも当てはまる。
【0266】
投与経路および用量
本発明の抗体(またはその抗体もしくは他のいずれかの治療薬を含有する医薬組成物または免疫複合体)は、局所治療に必要とされる場合、非経口投与、肺内投与、鼻腔内投与、および病巣内投与を含むいずれの好適な手段によって投与してもよい。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。薬物は、短期治療または長期治療に応じてある程度まで、注射、例えば、静脈内または皮下注射などのいずれの好適な手段によって投与してもよい。本明細書では様々な投与計画が企図され、限定されるものではないが、単回投与または複数時点での複数回投与、ボーラス注射、およびパルス注入が含まれる。
【0267】
疾患を予防または治療するために、本発明の抗体の適当な用量(単独でまたは1種類以上の他の治療薬と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度および進行、抗体が予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、過去の治療、患者の臨床歴および抗体に対する応答、ならびに主治医の判断によって異なる。抗体は、単回用量または一連の処置で患者に適宜投与される。
【0268】
いくつかの実施態様では、投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラス注射を施してもよいし、数回の個別用量を経時的に投与してもよいし、または用量は、治療病態の重症度により示されるように比例的に増減することができる。用量投与の容易さおよび均一性のために非経口組成物は単位剤形に処方することが特に有利である。単位剤形は、本明細書で使用する場合、治療される被験体に単位用量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と組み合わせて所望の治療効果を生じるように計算された所定量の有効化合物を含有する。本発明の単位剤形の詳細は、(a)有効化合物に特有の特徴および達成される特定の治療効果、ならびに(b)個体における高感度療法(sensitive therapy)のために有効化合物を組み合わせる分野に特有の制限に直接的に依存する。
【0269】
抗PD-L1抗体分子の用量および計画は、当業者により決定可能である。特定の実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、約1~30mg/kg、例えば約5~25mg/kg、約10~20mg/kg、約1~5mg/kg、または約3mg/kgの用量で注射により(例えば、皮下または静脈内に)投与される。投与計画は、例えば、週1回~2、3、または4週間毎に1回の範囲であり得る。一つの実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、約10~20mg/kgの用量で隔週に投与される。一つの実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、隔週、約5mg/kg以下、約4mg/kg以下、約3mg/kg以下、約2mg/kg以下、または約1mg/kg以下の用量で、単独または組み合わせて(例えば、抗LAG-3抗体分子と組み合わせて)投与される。一つの実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、隔週約1~5mg/kgの用量で、隔週約1~4mg/kgの用量で、隔週約1~3mg/kgの用量で、または隔週約1~2mg/kgの用量で投与される。一つの実施態様では、抗PD-L1抗体分子は、単独でまたは組み合わせて(例えば、抗LAG-3抗体分子と組み合わせて)、隔週約1~5mg/kgの用量で、隔週約1~4mg/kgの用量で、隔週約1~3mg/kgの用量で、または隔週1~2mg/kgの用量で投与される。
【0270】
診断および検出のための方法および組成物
特定の実施態様では、本明細書で提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントはいずれも、生体サンプルにおいてPD-L1の存在の検出のために使用され得る。用語「検出」には、本明細書で使用する場合、定量的または定性的検出が含まれ、例示的検出は、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、抗体分子と複合体を形成した磁性ビーズ、ELISA、およびPCR技術(例えば、RT-PCR)を含み得る。いくつかの実施態様では、生体サンプルは、血液、血清、または生物起源の他の流体サンプルである。特定の実施態様では、生体サンプルは、細胞または組織を含む。いくつかの実施態様では、生体サンプルは、増殖病巣または癌性病巣に由来する。
【0271】
一つの実施態様では、抗PD-L1抗体は、診断法または検出法で使用するために提供される。他の態様では、生体サンプルにおけるPD-L1の存在を検出するための方法が提供される。特定の実施態様では、この方法は、生体サンプルにおいてPD-L1タンパク質の存在を検出することを含んでなる。特定の実施態様では、PD-L1は、ヒトPD-L1である。特定の実施態様では、この方法は、生体サンプルを本明細書に記載されるような抗PD-L1抗体と、抗PD-L1抗体がPD-L1に結合することを可能とする条件で接触させること、および抗PD-L1抗体とPD-L1により複合体が形成されるかどうかを検出することを含んでなる。複合体の形成は、PD-L1の存在を示す。この方法は、in-vitro法またはin-vivo法であり得る。一つの実施態様では、抗PD-L1抗体は、抗PD-L1抗体による治療に好適な被験体を選択するために使用され、例えば、PD-L1は、被験体を選択するためのバイオマーカーである。
【0272】
一つの実施態様では、本発明の抗体は、被験体において、癌または腫瘍を診断するため、例えば、本明細書に記載の疾患(例えば、増殖性疾患または癌性疾患)の治療もしくは進行、診断および/または病期分類を評価(例えば、監視)するために使用することができる。特定の実施態様では、標識された抗PD-L1抗体が提供される。この標識としては、限定されるものではないが、直接検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色団標識、電子密度標識、化学発光標識、および放射性標識)ならびに例えば酵素反応または分子相互作用により、酵素またはリガンドなどの、間接的に検出される部分が含まれる。例示的標識としては、限定されるものではないが、32P、14C、125I、H、および131Iの放射性同位元素、蛍光団(例えば、レアアースキレートまたはルシフェリンおよびその誘導体)、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ(luceriferaze)[例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4737456号)]、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HR)、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、ライセース(lysase)、糖質オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、過酸化水素を利用して色素前駆体を酸化する酵素(例えば、HR、ラクトペルオキシダーゼ、またはマイクロペルオキシダーゼ)、ビオチン/アビジン、スピン標識、ファージ標識、安定フリーラジカルなどが含まれる。
【0273】
本明細書で提供される本発明のいくつかの実施態様では、サンプルは、抗PD-L1抗体による処置の前に取得される。いくつかの実施態様では、サンプルは、抗癌薬による処置の前に取得される。いくつかの実施態様では、サンプルは、癌が転移した後に取得される。いくつかの実施態様では、サンプルは、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)サンプルである。いくつかの実施態様では、サンプルは、生検(例えば、コア生検)検体、手術検体(例えば、外科的切除からの検体)、または穿刺吸引液である。
【0274】
いくつかの実施態様では、PD-L1は、処置の前、例えば、初回処置の前または特定の処置から一定期間後の処置の前に検出される。
【0275】
いくつかの実施態様では、腫瘍または感染症を治療するための方法が提供され、その方法は、被験体においてPD-L1の存在を検出し(例えば、サンプル、例えば、被験体の癌細胞を含有するサンプルを使用)、それにより、PD-L1値を決定すること;そのPD-L1値を対照値と比較すること;およびPD-L1値が対照値より大きければ、その被験体に、治療上有効な量の抗PD-L1抗体(例えば、本明細書に記載の抗PD-L1抗体)を、場合により、1以上の他の療法と組み合わせて投与し、それにより、腫瘍または感染症を治療することを含んでなる。
【0276】
本発明の抗PD-L1抗体の例示的配列
【0277】
【表6】

【表7】

【表8】




【表9】
【0278】
本発明のこれらおよび他の態様および実施態様を図面(図面の簡単な説明の後に続く)および下記の発明の詳細な説明に記載し、下記の実施例で説明する。上記および本願を通じて論じられた特徴のいずれかまたは総ては、本発明の様々な実施態様において組み合わせることができる。下記の実施例により、本発明をさらに説明する。しかしながら、これらの実施例は限定ではなく例示として記載され、様々な改変が当業者によりなされ得ると理解されるべきである。
【実施例0279】
実施例1 ハイブリドーマ細胞の作製
ハイブリドーマ技術は、2つの細胞を、両方の主な特徴を維持しつつ融合させる方法である。これらの2つの細胞は、抗原で免疫したマウス脾細胞とマウス骨髄腫細胞を指す。特定の抗原で免疫したマウス脾細胞(Bリンパ球)は抗体分泌機能の特徴を持つが、in vitroで継代培養することができない。マウス骨髄腫細胞は、培養条件で無限に分裂および増殖することができ、すなわち、いわゆる不死化されている。選択培地の作用において、骨髄腫細胞とB細胞を融合させることによって形成されたハイブリッド細胞のみが継代培養能を持ち得、抗体分泌機能と不死化の両方を有する細胞クローンが形成される。ある実験では、マウスをhPD-L1タンパク質で免疫し、マウスの脾細胞および骨髄腫細胞を取得し、融合させ、これにより、陽性抗体発現能を有するハイブリドーマ細胞が得られた。
【0280】
ハイブリドーマの融合
【0281】
【表10】
【0282】
エレクトロポレーションの準備: ディッシュを70%エタノールに十分に浸し、使用のためにウルトラクリーンベンチ内で乾燥させた。
【0283】
脾細胞の単離: マウスを頚椎脱臼により犠牲にし、75%アルコールで5分間殺菌し、すぐに、ウルトラクリーンベンチ内マウス解剖プレートに左側臥位で置き、マウスの四肢を7番針で固定し;脾臓は、無菌的に腹腔を開口した後に摘出し、次いで、基本培地(下表に従って作製)で洗浄した。周囲の結合組織を注意深く除去した。次に、脾臓を、基本培地を含有する別のディッシュに移し;脾臓をエルボーニードルで押さえつけ、小ニードルで穿孔した後、鉗子で圧力をかけ、脾細胞を完全に放出させて脾細胞懸濁液を得;100μMセルストレーナーで濾過した後に、細胞懸濁液を30mLの基本培地で1回洗浄し、1200rpmで6分間遠心分離した。
【0284】
【表11】
【0285】
赤血球の溶解: 上清を廃棄し、細胞を10mLのRBC溶解バッファー(GIBCO)に再懸濁させた。次に、20mLのRBC溶解バッファーを加え;懸濁液を5分間静置し、1100rpmで6分間遠心分離した。上清を除去した後、細胞を10mLの基本培地に再懸濁させた。次に、30mLの基本培地を加え、細胞を1100rpmで6分間遠心分離し;上清を除去した後、細胞を20mLの基本培地に再懸濁させ、計数した。
【0286】
エレクトロポレーション: SP2/0細胞(マウス骨髄腫細胞)(ATCC)を20mLの基本培地に再懸濁させ、計数し;SP2/0細胞と脾細胞を1:2~1:1の比で混合し、100rpmで6分間遠心分離し;上清を除去した後、混合した細胞を10mLの融合バッファー(BTXpress)に再懸濁させ;次いで、15mLの融合バッファーを加え、この混合物を1000rpmで5分間遠心分離し、上清を廃棄し;上記の工程を繰り返した後、細胞を適当な量の融合バッファー溶液に再懸濁させ、混合細胞密度を1×10細胞/mLに調整した。エレクトロポレーション装置の設定は下記の通りとした。エレクトロポレーションのために、2mLの細胞懸濁液を各ディッシュに加えた。
【0287】
【表12】
【0288】
融合後の播種: 細胞をディッシュ内で室温にて5分置き;細胞を遠沈管に移し、選択培地(下表に従って作製)で希釈して1~2×10細胞/mLとした。100μLの細胞懸濁液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。融合7日後に選択培地を交換した。細胞をインキュベーション10日目(または細胞の増殖状態によってそれ以降)にスクリーニングした。特異的な抗PD-L1抗体を発現するハイブリドーマ細胞を、FACS[FACS ARIA(BD Biosciences)]により選択した。
【0289】
【表13】
【0290】
陽性ハイブリドーマ細胞のサブクローニング
サブクローニング: 200μLの上記基本培地を96ウェルプレートの第2列~第8列の各ウェルに加え;選択された陽性ウェルからの細胞を用いて懸濁液を作製し、第1列に加え;第1列の100μLの細胞懸濁液を第2列に移し、ウェルを混合した後に100μLの混合物を次の列に移した。上記の工程を最終列に300μLの混合物が得られるまで繰り返した。15分間静置した後、細胞を顕微鏡下で計数した。200μLの各ウェルに混合および播種するために、約100細胞を含有する相当容量を20mLの上記基本培地に加えた。1週間後、細胞を顕微鏡下で観察した。モノクローナルウェルをマークし、陽性ウェルを検出した。
【0291】
細胞の凍結保存: 細胞の状態を監視した。90%を超える生存率を有する増殖ウェルを1000rpmで5分間遠心分離し、上清を廃棄し;細胞を、凍結保存剤(45.5%のFBS、44.5%のRPMI-1640および10%のDMSO)を用い、1×10細胞/mLとなるように再懸濁させ、凍結保存管に分注し、プログラム冷却容器に入れ、-80℃で低温保存した。
【0292】
実施例2 キメラ抗体の作製および精製
分子バイオテクロノジーを用い、本発明は、抗PD-L1陽性ハイブリドーマ細胞内に抗体配列を作出し、その抗体配列を用いてヒト-マウスキメラ抗体を構築する。
【0293】
ハイブリドーマの配列決定
RNA抽出: 新鮮な細胞を300gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。500μLのLYバッファー(Biomiga)(使用前1mL当たり20μLのβメルカプトエタノール)を沈降物に加え、透明になるまで振盪した。この混合物を遠沈管に移し、13000rpmで2分間遠心分離した。フロースルーを回収した。100%エタノールをこのフロースルーに1/2比で加え、この流体を透明な溶液が得られるまで5分間混合した。この透明な溶液をRNAコレクションチューブに加え、13000rpmで1分間遠心分離し、液体部分を廃棄した。500μLの再生バッファー(Takara)を加え、この混合物を13000rpmで30秒間遠心分離し、500μLのRNA洗浄バッファー(Biomiga)(エタノールは使用前に添加)を加えた後にさらに30秒間遠心分離した。上記の工程を繰り返した後に遠心分離し、エタノールを完全に除去するために蒸発させた。コレクションカラムは30μLのDEPC処理水で予め処理し、この混合物を12000gで2分間遠心分離し、溶出液を回収した。RNA濃度を測定した。
【0294】
逆転写によるcDNAの作製:
反応システムIは次のように構成した。
【0295】
【表14】
【0296】
65℃で5分間のインキュベーション後に、その系を氷上で急速冷却し;反応系Iに下記の逆転写系を総量20μLで加えた。
【0297】
【表15】
【0298】
緩慢混合した後、42℃で60分→95℃で5分という条件で逆転写を誘発した。次に、この混合物を氷上で冷却した後にcDNAを回収した。
【0299】
cDNAとTベクターの接続:
重鎖可変領域および軽鎖可変領域をPCRによりそれぞれ増幅した。PCR反応系は下記の成分を含んでなった。
【0300】
【表16】
【0301】
PCR反応条件は次の通りとした。
【表17】
【0302】
0.5μLのpMD20-Tベクター(Clontech)および5μLのLigatiopn Mighty Mix(Takara)をPCR反応からのPCR産物4.5μLに加えた。この混合物を穏やかに混合し、37℃で2時間インキュベートして連結産物を得た。
【0303】
細胞の形質転換:
TOP10コンピテント細胞[Tiangen Biotech (Beijing) Co.,Ltd.]を-80℃から取り出し、氷上で解凍した。得られた連結産物5μLを解凍したTOP10コンピテント細胞に加えた。この混合物を振盪し、氷上で30分間インキュベートした。42℃で90秒の熱ショックの後に、得られた混合物を氷上で2分急速冷却した。900μLのLB培養培地[Sangon Biotech (Shanghai) Co.,Ltd.]をEP管に加え、この混合物を37℃にて、220rpmのシェーカー上で1時間インキュベートした。細菌を3000gで2分間遠心分離した。800μLの上清を除去し、アンピシリンプレートでのインキュベーションのために細菌を残った培地に再懸濁させた。細菌を一晩37℃でインキュベートした。配列決定のためにクローンを分離した。
【0304】
キメラ抗体の構築
実施例1のハイブリドーマから作製されたマウス抗PD-L1抗体の、配列決定済みのVHおよびVL領域をPCRにより増幅した:上流および下流プライマーの配列を表5および6に示す。
【0305】
【表18】
【0306】
成分を比に応じて混合した後、得られたプライマーミックス1を続いてのVH PCR増幅に使用した。
【0307】
【表19】

【0308】
成分を比に応じて混合した後、得られたプライマーミックス2を続いてのVL PCR増幅に使用した。
【0309】
PCR系は次の通りとした。
【0310】
【表20】
【0311】
PCR増幅産物を回収するためにゲルを切り出した。
【0312】
相同組換え:
相同組換え系は次のように構成した。
【0313】
【表21】
【0314】
37℃で30分間のインキュベーションの後、組換え産物を得た。TOP10コンピテント細胞をこの組換え産物により形質転換させ、配列決定のためにモノクローンを分離した。正しい挿入方向でプラスミドを含有するクローンを陽性クローンとして選択し、保有した。
【0315】
キメラ抗体の発現および精製
上記で得られた陽性クローンから抗PD-L1抗体配列を含有するプラスミドを抽出した。
【0316】
293F細胞(Invitrogen)を所望のトランスフェクション容量に応じて継代培養し、トランスフェクション前日に細胞密度1.5×10細胞/mLに調整した。トランスフェクション当日の細胞密度はおよそ3×10細胞/mLであった。適当な量のプラスミドをF17培養培地(Gibco、A13835-01)にトランスフェクションとしての最終容量の1/10で加え、混合した。適当な量のポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences、23966)をこの混合物に加え(293F細胞ではプラスミド:PEI=1:3比)、混合し、室温で10分間インキュベートし、DNA/PEI混合物を得た。DNA/PEI混合物に再懸濁させた後、36.5℃、8%COで細胞を導入した。24時間後、これらの細胞にFEED(Sigma)をトランスフェクション容量の2%で添加し、36.5℃、8%CO、120rpmでインキュベートした。継代培養6日目または生存率が60%を下回るまで継代培養し、細胞を遠心分離し、上清を回収し、精製した。
【0317】
精製用の重力カラムを0.5MのNaOHで一晩処理した後に180℃で4時間乾燥させ、精製カラムとした。ガラス容器は蒸留水で洗浄し、乾燥させた。精製前に、回収した培養物を4500rpmで30分間遠心分離し、これらの細胞を廃棄した。上清を0.22μLのフィルターで濾過した。各チューブに1mLのプロテインAを充填し、10mLの結合バッファー(リン酸ナトリウム20mM、NaCl 150mM、pH7.0)で平衡化した。濾過した上清を精製カラムに載せ、次いで、15mLの結合バッファーで再び平衡化した。5mLの溶出バッファー(クエン酸+クエン酸ナトリウム0.1M、pH3.5)を加えた。溶出液を回収し、溶出液1mL当たり80μLのTris-HClを加えた。回収された抗体のバッファーを限外濾過/ダイアフィルトレーションによりPBS(Gibco、70011-044)に交換し、濃度を測定した。
【0318】
得られた4つの本発明のキメラ抗体のCDR、軽鎖および重鎖可変領域、ならびに軽鎖および重鎖のアミノ酸配列、ならびにそれらの配列番号は、上記表1~3に示す。
【0319】
本発明で使用した参照抗体はRocheのPD-L1抗体アテゾリズマブ(以下、ATEもしくはAteと呼称、または商標:テセントリク)であり、そのCDR、軽鎖および重鎖可変領域、ならびに軽鎖および重鎖のアミノ酸配列も上記表1~3に示す。
【0320】
実施例3 生物学的光干渉法で決定された抗原に対するキメラ抗体の結合動態
本発明の抗体のヒトPD-L1への結合の平衡解離定数(K)を、生物学的光干渉法(ForteBio)で決定した。従来技術のForteBio親和性アッセイを行った(Estep, P., et al, High throughput solution based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning. MAbs, 2013.5(2):270-8)。
【0321】
実験の30分前に、サンプルの数に応じて適当な数のAMQ(Pall、1506091)センサー(サンプル検出用)またはAHQ(Pall、1502051)センサー(陽性対照検出用)をSDバッファー(PBS 1×、BSA 0.1%、Tween-20 0.05%)に浸漬した。
【0322】
SDバッファー、抗体、および抗原(ヒトPD-L1、マウスPD-L1およびカニクイザル(macaca fascicularis)PD-L1を含み、総てAcrobiosystemsから購入)各100μLを96ウェルブラックポリスチレンハーフエリアマイクロプレート(Greiner、675076)に加えた。センサーはサンプルの位置に従って配置した。装置の設定は次の通りとした:操作手順は、ベースライン、ローディング約1nm、ベースライン、会合、および解離とした。各手順の実施時間は、会合および解離の速度に依存した。回転速度は400rpmとし、温度は30℃とした。K値はForteBio分析ソフトウエアにより分析した。
【0323】
上記のアッセイで、抗体3-266.1、4-79.2、4-26.6、および4-48.5の親和性を表7に示す。
【0324】
【表22】
【0325】
上記のアッセイで、キメラ抗体3-266.1、4-79.2、4-26.6、および4-48.5のK値はそれぞれ9.80E-10M、7.56E-09M、3.85E-09M、および1.23E-09Mであった。本試験の抗体は、参照に比べて同等または優れたK値を有していた。
【0326】
実施例4 キメラ抗体とPD-L1を過剰発現する細胞の結合アッセイ
この試験では、勾配希釈を行った本発明のキメラ抗体の、細胞表面にヒトPD-L1を過剰発現した安定なCHO細胞株への結合を、フローサイトメトリーにより測定した。
【0327】
ヒトPD-L1を過剰発現するCHO細胞(CHO-PDL1)は、CHO-S細胞(Invitrogen、ExpiCHO(商標)Expression System Kit、カタログ番号A29133)を、多重クローニング部位(MCS)にクローニングされたヒトPD-L1 cDNA(Sino biological)を保持するpCHO1.0ベクター(Invitrogen)でトランスフェクトすることによって作製した。
【0328】
CHO-PDL1細胞を計数し、1×10細胞/mLに希釈し、U底96ウェルプレートの各ウェルに100μL/ウェルで加えた。この懸濁液を400gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。これらのサンプル(キメラ抗体3-266.1、4-79.2、4-26.6および4-48.5のそれぞれと陽性対照Ate)(これらの抗体は、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS中500nMの濃度から8分の1濃度まで、連続的に3倍希釈した)をU型プレートに加えた。これらの細胞を100μL/ウェルの容量となるように再懸濁させ、次いで、氷上に30分間置いた。この懸濁液を400gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。これらの細胞をPBSで1回洗浄した。この混合物を400gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。抗マウス-Fabに対するFITC標識二次抗体(Jackson Immuno Research)(PBSで1:500希釈)100μLを各ウェルに加え、抗ヒト-Fabに対するFITC標識二次抗体(Jackson Immuno Research)100μLを、陽性対照抗体を加えた細胞に加えた。細胞を暗所、氷上で30分間インキュベートした。これらの細胞を400gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、PBSで1回洗浄した。これらの細胞を100μLの1×PBSに再懸濁させ、FACSにより検出した。
【0329】
上記のアッセイで、抗体3-266.1、4-79.2、4-26.6および4-48.5のCHO-PDL1細胞への結合を図1に示す。
【0330】
上記のアッセイで、抗体3-266.1、4-79.2、4-26.6、および4-48.5は総て、CHO細胞上で過剰発現されたヒトPD-L1に結合し、EC50はそれぞれ2.139nM、2.598nM、1.985nM、および1.995nMであった。参照抗体ATEに比べ、抗体3-266.1、4-79.2、4-26.6、および4-48.5は優れた親和性を有し、結合能が参照抗体の2倍を超える抗体もあった。
【0331】
実施例5 キメラ抗体のヒト化
実施例1で得られたキメラ抗体をヒト化した。抗体のヒト化は、MacromoltekからのSmrtMolHumanizeプロプライエタリーソフトウエアプログラムを使用することにより実施した。これらの配列をソフトウエアに入力したところ、システムはこれらの配列の三次元モデルを作成した。次に、これらの配列は下記の工程によりヒト化された:
1)CDRループの構造を決定する;
2)ヒト生殖細胞系配列データベースで、重鎖および軽鎖の各V/J領域に関して最も近い相同配列を検索する;
3)ヒト生殖細胞系を、重鎖および軽鎖と最も類似性が高く、かつ、復帰突然変異が最小量であるものに関してスクリーニングする;
4)ヒト抗体の骨格にキメラ抗体のCDR領域を構築する;
5)配列および構造的特徴に基づいてその骨格でCDR機能を維持しているアミノ酸の位置を決定する;
6)その配列の重要な位置に復帰突然変異(入力したアミノ酸に戻る)を付加する;
7)ヒト化配列の三次元モデルを作成する;
8)配列および構造を手動で調べ、ミスフォールディングまたは安定性の低下を生じ得るリスク部位を特定する;
9)リスク部位のアミノ酸を最適化する。
【0332】
得られた4つの本発明のキメラ抗体(HZ3266-IgG1N297A、HZ3266-IgG1、HZ3266-IgG4PAK、およびHZ4485-IgG1N297A)のCDR、軽鎖および重鎖可変領域、ならびに軽鎖および重鎖のアミノ酸配列は、上記の表1~3に示す。
【0333】
実施例6 ForteBioで決定された抗原に対するヒト化抗体の結合動態
本発明の種々のFcサブタイプのヒト化抗体の、ヒトPD-L1への結合の平衡解離定数(K)を、ForteBioで決定した。ForteBio親和性アッセイは、実施例2に示した。上記のアッセイで、抗体HZ3266-IgG1N297A、HZ3266-IgG1、HZ3266-IgG4PAK、およびHZ4485-IgG1N297Aの親和性を表8に示す。
【0334】
【表23】
【0335】
上記のアッセイで、本明細書に記載のヒト化抗体HZ3266-IgG1N297A、HZ3266-IgG1、HZ3266-G4PAAKおよびHZ4485-IgG1N297Aはそれぞれ7.24E-10M、9.35E-10M、1.32E-09M、および3.17E-09MのK値を有し、この試験でのヒト化抗体は、参照に比べて、同等または優れたK値を有した。
【0336】
実施例7 ヒト化抗体とPD-L1を過剰発現する細胞の結合アッセイ
この試験では、勾配希釈を行った本発明のヒト化抗体の、細胞表面にヒトPD-L1を過剰発現した安定なCHO細胞株(CHO-PDL1)への結合を、フローサイトメトリーにより測定した。このアッセイは、使用した抗体がヒト化抗体HZ3266-IgG1N297A、HZ3266-IgG1、HZ3266-G4PAAK、およびHZ4485-IgG1N297Aであったこと以外は、実施例3に示した。これらの抗体を、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSで500nMの濃度から8分の1の濃度まで連続的に3倍希釈した。ヒト化抗体HZ3266-IgG1N297A、HZ3266-IgG1、HZ3266-G4PAAK、HZ4485-IgG1N297A、およびCHO-PDL1の結合条件を図2に示す。
【0337】
このアッセイで、ヒト化抗体HZ3266-IgG1、HZ3266-IgG1N297A、HZ3266-G4PAAK、およびHZ4485-IgG1N297Aが、CHO細胞上で過剰発現したヒトPD-L1に結合し、EC50はそれぞれ1.813nM、1.784nM、1.862nM、および1.561nMであった。参照抗体ATEに比べ、これらの抗体は優れた結合能を有した。
【0338】
実施例8 MOAによる抗体の生物活性の検出
抗PD-1/PD-L1抗体は、PD-1とPD-L1の結合を遮断することにより、下流NFATシグナル経路への阻害効果を軽減することができる。この試験では、Promega社から入手可能なMOA検出システム(PD-1/PD-L1 Blockade Bioassay、Cell Propagation Model、カタログJ1252)を使用した。製品マニュアルに示される方法に従い、蛍光リポーター遺伝子の発現を検出し、それにより、PD-1とPD-L1の結合に対する抗体の阻害効果を検出することにより、NFATシグナルの活性化を表した。
【0339】
CHOK1-PDL1細胞(上記のMOA検出システムから)を活性アッセイの1日前に播種した。細胞を播種1~2日前に継代培養した。培養上清を廃棄し、細胞をPBS(Gibco)で1回洗浄した。消化のために適当な量のトリプシン(Gibco)を37℃、5%COで3~5分間加え;トリプシンの4倍の容量の培養培地を加え、これらの細胞を50mLの遠沈管に移し、計数した。所望の容量の細胞を230gで10分間遠心分離した。細胞を1640培養培地(Gibco)に加え、4×10細胞/mLとなるように再懸濁させた。これらの細胞を96ウェル白色培養プレート(Nunclon)に100μL/ウェルで移した。PBSを200μL/ウェルで端のウェルに加えた。細胞をインキュベーターにて、37℃、5%COで一晩インキュベートした。
【0340】
Jurkat-PD1細胞(上記のMOA検出システムから)の処理: 細胞を活性アッセイの2日前に継代培養した。計数後、所望の容量の細胞を170gで5分間遠心分離した。細胞をアッセイバッファー[1640培養培地(Gibco)+1%FBS]に1.25×10細胞/mLとなるように再懸濁させた。
【0341】
サンプルおよびJurkat-PD1細胞のアッセイプレート(上記のMOA検出システムから)への添加: 95μL/ウェルのCHOK1-PDL1細胞上清を廃棄した。40μLのサンプル[本発明で作製したヒト化抗体HZ3266-IgG1、HZ3266-IgG1N297AおよびHZ4485-IgG1N297A、陽性対照(Ate)および陰性対照(IgG1)]を加えた[これらの抗体は、アッセイバッファー中100nMの濃度から8分の1の濃度まで連続的に3倍希釈した]。40μLのJurkat-PD1細胞を加えた。細胞をインキュベーターにて、37℃、5%COで6時間インキュベートした。
【0342】
検出: Bio-GloTMバッファー(上記のMOA検出システムから)を予め解凍し、Bio-GloTM基質(上記のMOA検出システムから)を加え、よく混合した。6時間後、Bio-GloTM試薬(上記のMOA検出システムから)を80μL/ウェルで加えた。得られた混合物を読み取りまで室温で5~10分置いた。
【0343】
このアッセイで、図3に示されるように、抗体HZ3266-IgG1、HZ3266-IgG1N297A、およびHZ4485-IgG1N297Aは、PD1/PD-L1相互作用を効果的に遮断し得る。
【0344】
実施例9 混合リンパ球反応
この試験では、本抗体と異なるドナーに由来する成熟DC細胞およびCD4+T細胞を共インキュベートした。T細胞に対する種々の抗体の活性化効果が反映されるように、この系におけるIL2およびIFN-γの相対発現量を検出した。
【0345】
PBMCの単離: ドナー由来の新鮮な血液50mLに2.5倍のPBSを加えた。この混合物をフィコール(Thermo)に穏やかに加え、4本のチューブに12.5mLずつ分注した。これらのサンプルを400gで30分間遠心分離した後、減速度0で停止させた。中間の白色ストリップをピペットでPBSに取り、PBSで2回洗浄した。
【0346】
DC細胞の単離: 上記で単離されたPBMC細胞を、5mLのT細胞培養培地(下表に従って調製)を加えた後に、37℃、6%COで2時間、接着させてインキュベートした。この細胞懸濁液をCD4+細胞の単離のためにピペットで取った。2日間のインキュベーションのために残りの細胞に3mLのDC培養培地(下表に従って調製)を加え、さらに3mLのDC培養培地を加えた。培養5日目に、さらに2日のインキュベーションのためにrTNFa(R&D Systems)(1000U/mL)、IL-1b(R&D Systems)(5ng/mL)、IL-6(R&D Systems)(10ng/mL)および1μM PGE2(Tocris)を加え、リンパ球混合反応(MLR)用のDC細胞を得た。
【0347】
【表24】
【0348】
CD4+T細胞の単離: これは「非接触(Untouched)CD4+T細胞単離」キットの説明書(11346D、Invitrogen)に従って行った。PBMCを2時間放置した後、細胞懸濁液をピペットで15mLの遠沈管に移した。細胞を200gで10分間遠心分離し、沈降物を500μLの分離培地、100μLのAB型血清および100μLの精製抗体に再懸濁させた。この混合物を4℃で20分間インキュベートし、分離培地で1回洗浄した。15分のインキュベーションのために500μLのビーズバッファー(Invitrogen)を加え、次に、これらのビーズを磁場により除去した。この混合物をT細胞培養培地で1回洗浄し、8mLの培養培地に再懸濁させた。次に、得られた混合物を37℃、6%COでインキュベートした。
【0349】
MLR: 上記で得た成熟DC細胞とCD4+細胞を、10000個のDC細胞と100000個のCD4+細胞として200μL/ウェルで混合した。本発明の抗体(濃度:100nM、20nM、4nM、0.8nM、0.16nMおよび0.032nM)を加えた。上記で調製したDC細胞の混合物(下表にDCと表す)、CD4+T細胞(下表にCD4と表す)、DC細胞とCD4+細胞の混合物(下表に細胞と表す)、ならびにここで陰性対照として用いる表3に開示されているIgG1、および陽性対照として用いるDC + CD4+T細胞 + 抗CD3/CD28磁性ビーズ(QIAGEN)(下表でビーズと表す)。これらのサンプルを5日間インキュベートし、IL2およびIFN-γの濃度(相対発現ΔF%)をcisbioキット(ヒトIL2キット1000テスト、ヒトIFNγ1000テスト)により検出した。
【0350】
結果を表9、10、11、および12、ならびに図4および5に示す。表のデータはΔF%である。
【0351】
【表25】
【0352】
【表26】
【0353】
【表27】
【0354】
【表28】
【0355】
よって、本発明の抗体は、in vitroでT細胞を効果的に活性化することができ、活性化効果の部分は陽性対照抗体の場合よりも良好である。
【0356】
実施例10 Zenixカラムによる抗体のドラッガビリティーのアッセイ
このアッセイでは、抗体のドラッガビリティーを、Zenixカラム(Sepax Technologies,Inc)で本発明の例示的ヒト化抗体の保持時間を分析することにより検知した。保持時間が短いほど抗体の粘度は低く、より良好なドラッガビリティーであった。
【0357】
クロマトグラフィー条件: 波長:214nm、カラム温度:25℃、流速:0.35mL/分、注入容量:10μL。
【0358】
サンプルの調製: 100μLのサンプル(抗体HZ3266-IgG1、HZ3266-IgG4PAAK、HZ3266-IgG1N297A、およびHZ4485-IgG1N297A;陽性対照としてのATE 濃度1mg/mL)を13000rpmで5分間遠心分離した。80μLの上清を液相インサートに移し、注入のために液相サンプルトレーに置いた。
【0359】
表13に示されるように、カラムにおける種々のHZ3266アイソタイプおよびHZ4485の保持時間は参照抗体よりも短く、抗体HZ3266およびHZ4485の良好なドラッガビリティーを示す。
【0360】
【表29】
【0361】
実施例11 抗腫瘍有効性アッセイ
このアッセイでは、本発明のPD-L1抗体の抗腫瘍効果を、hPD-L1トランスジェニックマウスでヒトPD-L1を発現するMC38細胞(MC38-hPDL1)(Nanjing Yinhe Biotech)において試験した。
【0362】
hPD-L1トランスジェニックマウス:
Shanghai Model Organisms Center, Inc.から購入したC57Bl/6バックグラウンドを有する雌hPD-L1トランスジェニックマウス(約8週齢)。試験前に、マウスを到着後7日間適応させた。
【0363】
細胞:
ヒトPD-L1を発現するMC38細胞(MC38-hPDL1)をNanjing Yinhe Biotechから購入し、さらなるin-vivoアッセイのために説明書に厳格に従って継代培養した。細胞を遠心分離により回収し、無菌PBSに再懸濁させ、細胞密度を5×10細胞/mLに調整した。0日目に、0.2mLの細胞懸濁液をhPD-L1トランスジェニックマウスの腹部領域の皮下に移植し、MC38-hPDL1担癌マウスモデルを確立した。
【0364】
投与:
マウスの腫瘍体積を移植6日後に測定し、87.4mm~228.4mmの範囲の腫瘍体積を有するマウスを選択し、腫瘍体積により均一に群に分けた(各群8個体のマウス、1個体はIgG1を受容し、他の個体は本発明のHZ3266-IgG1N297Aを受容)。マウスを、移植後6、10、14、17、21、24、28、31および35日目に、週に2回処置した。用量および投与経路を表12に示す。処置期間中、5週間、2回/週、マウスの腫瘍体積および体重の変化を監視した。体重および腫瘍体積は各投与前に測定した。腫瘍体積の測定: 腫瘍の長軸の最大長(L)および短軸の最大長(W)をノギスで測定し、腫瘍体積を、下式:V=L×W/2を用いて計算した。マウスの体重を、電子天秤を用いて週に2回測定した。
【0365】
【表30】
【0366】
本発明の抗体は、投与後1週目に有意な抗腫瘍有効性を示し(図6)、35日目までに、本発明の抗体を受容した1個体のマウスの腫瘍は完全に退縮した。これらの結果は、種々の抗体の投与が担癌マウスの体重に影響を及ぼさなかったことを示した。
【0367】
よって、本発明の抗体は、腫瘍に対して明らかな阻害効果を有する。
【0368】
実施例12 本発明の抗PD-L1抗体と抗ヒト-LAG-3抗体の組合せ
この試験では、抗PD-L1抗体(HZ3266-IgG1N297A)と抗ヒト-LAG-3抗体(ADI-31853)の併用の抗腫瘍活性をヒト化マウスモデルで試験した。
【0369】
この試験では、A375(ATCC)ヒト皮膚癌細胞を保有するNCGマウスにおいて、抗PD-L1抗体の抗腫瘍有効性を試験した。ヒトPBMC(全細胞)(2×10細胞/マウス)を予め静脈内に注射し、次いで、皮下移植によりA375担癌マウスモデルを確立した。腫瘍形成後にマウスを群に分け、異なる抗体による処置を施した。処置期間中、腫瘍サイズおよびマウスの体重の変化を監視した。処置は2週間、週に2回、合計5用量で施した。マウスを4週間、週に2回監視した。用量および投与経路は次の通りである。処置の終了後に腫瘍成長阻害(TGI%)を計算した。
【0370】
抗ヒト-LAG-3抗体ADI-31853
抗LAG-3抗体ADI-31853の軽鎖および重鎖アミノ酸配列(表3)をコードするcDNAを、当技術分野の常法に従い、発現ベクターpTT5にクローニングした。
【0371】
標的抗体遺伝子を含有する発現ベクターおよびトランスフェクション試薬PEI(Polysciences)を、製造者により提供されたスキームに従い、インキュベートしたヒト胎児腎臓細胞293(Invitrogen)に一過性にトランスフェクトした。トランスフェクション後、上清を廃棄し、細胞を新鮮なEXPI293培地(Gibco)で4×10/mLに希釈した。48時間ごとに新鮮培地を供給しつつ、これらの細胞を37℃、5%COで7日間インキュベートした。7日後、これらの細胞を1300rpmで20分間遠心分離した。上清をプロテインAで精製し、95%を超える純度で抗体が生産された。
【0372】
ADI31853のヒトLAG-3(hLAG-3)への結合に関する平衡解離定数(K)を生物学的光干渉法(ForteBio)により測定した。従来技術のForteBio親和性アッセイを実施した(Estep, P., et al, High throughput solution based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning. MAbs, 2013.5(2):270-8)。簡単に述べれば、センサーをアッセイバッファーで30分間、オフラインで平衡化し、次いで、オンライン検出を60秒間行ってベースラインを確立した。ForteBio親和性アッセイのために、上記のように得られた精製抗体をオンラインでAHQセンサー(ForteBio)にロードした。次に、抗体をロードしたセンサーを100nMのヒトLAG-3抗原(ArcoBiosystems)に5分間曝した後、解離速度の測定のために、このセンサーを5分間、解離用アッセイバッファーに移した。1:1結合モデルを用いて動態分析を行った。
【0373】
上記のアッセイで、ADI-31853親和性は次の通りであった。
【0374】
【表31】
【0375】
マウス:
Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.から購入した体重17.6~24.2gの雌、7~8週齢(腫瘍細胞移植時の齢)のNOGマウス。試験前、到着後7日間マウスを適応させた。
【0376】
細胞:
ヒト皮膚癌細胞A375(ATCC#CRL-1619)をATCCから購入し、さらなるin-vivoアッセイのために、ATCCにより提供された要件に厳格に従って継代培養した。細胞を遠心分離により回収し、無菌PBSに再懸濁させ、細胞密度を30×10細胞/mLに調整した。NOGマウスにヒトPBMC(全細胞)を静脈内注射した後、右背部を剃毛し、A375細胞を0.2mL/マウスで皮下注射した。マウスの腫瘍体積を移植7日後に測定し、70~71mmの範囲の腫瘍体積を有するマウスを選択し、腫瘍体積によって無作為に群に分けた。
【0377】
処置:
下記の抗体を種々の群に皮下注射した:
(1)ヒトIgG(equitech-Bio)、20mg/kg;
(2)LAG-3(ADI-31853)、10mg/kg;
(3)PD-L1(HZ3266-IgG1N297A)、10mg/kg;
(4)LAG-3(ADI-31853)、10mg/kg+PD-L1(HZ3266-IgG1N297A)、10mg/kg。
【0378】
移植7日後に、要件を満たす平均腫瘍サイズを有するマウスを無作為に各群8個体のマウスの群に分けた。各群のマウスに7、10、14および17日目にそれぞれ上記の用量の4つの投与計画で投与を行った。
【0379】
分析: 試験中、週に2回、腫瘍体積および体重を測定し、腫瘍がエンドポイントに達した場合またはマウスに20%を超える体重減少があった場合に、マウスを安楽死させた。腫瘍の長軸(L)の最大長および短軸(W)の最大長をノギスで測定し、腫瘍体積を、下式:V=L×W/2を用いて計算した。種々の群のマウスの経時的腫瘍体積をプロットした。統計的有意性を、分散分析(ANOVA)を用いて決定した。総ての分析で、0.05未満のP値を統計的に有意とみなした。
【0380】
図7に示されるように、抗LAG-3モノクローナル抗体ADI-31853(31853)と抗PD-L1モノクローナル抗体(HZ3266-IgG1N297A)(HZ3266)の併用は、ヒトIgG対照(equitech-Bio)(hIgG)の使用およびこれら2つの抗体の個別使用に比べて腫瘍成長を有意に阻害したことが見て取れる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
【配列表】
2024164038000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体が重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(HCDRs)と軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(LCDRs)とを含んでなり、ここで、
(i)HCDR1は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、HCDR2は、配列番号8で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、HCDR3は、配列番号13で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、LCDR1は、配列番号16で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、LCDR2は、配列番号19で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、かつLCDR3は、配列番号24で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;
(ii)HCDR1は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、HCDR2は、配列番号6で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、HCDR3は、配列番号11で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、LCDR1は、配列番号15で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、LCDR2は、配列番号18で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、かつLCDR3は、配列番号22で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;または
(iii)HCDR1は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、HCDR2は、配列番号7で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、HCDR3は、配列番号12で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、LCDR1は、配列番号15で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、LCDR2は、配列番号18で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり、かつLCDR3は、配列番号23で示されるアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなる、
抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体が重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含んでなり、ここで、
該重鎖可変領域が配列番号29もしくは31に記載のアミノ酸配列を含んでなり、かつ該軽鎖可変領域が配列番号35もしくは37に記載のアミノ酸配列を含んでなるか;
該重鎖可変領域が配列番号22に記載のアミノ酸配列を含んでなり、かつ該軽鎖可変領域が配列番号27に記載のアミノ酸配列を含んでなるか;または
該重鎖可変領域が配列番号23に記載のアミノ酸配列を含んでなり、かつ該軽鎖可変領域が配列番号28に記載のアミノ酸配列を含んでなる、
抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体が軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含んでなり、
(i)該軽鎖可変領域が配列番号29で示されるアミノ酸配列を含んでなり、かつ該重鎖可変領域が配列番号35で示されるアミノ酸配列を含んでなるか、
(ii)該軽鎖可変領域が配列番号31で示されるアミノ酸配列を含んでなり、かつ該重鎖可変領域が配列番号37で示されるアミノ酸配列を含んでなるか、
(iii)該軽鎖可変領域が配列番号22で示されるアミノ酸配列を含んでなり、かつ該重鎖可変領域が配列番号27で示されるアミノ酸配列を含んでなるか、または
(iv)該軽鎖可変領域が配列番号23で示されるアミノ酸配列を含んでなり、かつ該重鎖可変領域が配列番号28で示されるアミノ酸配列を含んでなる、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体が重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含んでなり、ここで、
(i)該重鎖可変領域が配列番号29に記載のアミノ酸配列からなり、かつ該軽鎖可変領域が配列番号35に記載のアミノ酸配列を含んでなるか;
(ii)該重鎖可変領域が配列番号31に記載のアミノ酸配列からなり、かつ該軽鎖可変領域が配列番号37に記載のアミノ酸配列を含んでなるか;
(iii)該重鎖可変領域が配列番号22に記載のアミノ酸配列からなり、かつ該軽鎖可変領域が配列番号27に記載のアミノ酸配列を含んでなるか;または
(iv)該重鎖可変領域が配列番号23に記載のアミノ酸配列からなり、かつ該軽鎖可変領域が配列番号28に記載のアミノ酸配列を含んでなる、
抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗体が
(a)以下を含んでなるもしくはからなる重鎖:
(i)配列番号41もしくは45から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(ii)配列番号41もしくは45から選択されるアミノ酸配列;および/または
(b)以下を含んでなるもしくはからなる軽鎖:
(i)配列番号49もしくは51から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(ii)配列番号49もしくは51から選択されるアミノ酸配列;あるいは
(a)以下を含んでなるもしくはからなる重鎖:
(i)配列番号39もしくは40から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(ii)配列番号39もしくは40から選択されるアミノ酸配列;および/または
(b)以下を含んでなるもしくはからなる軽鎖:
(i)配列番号47もしくは48から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(ii)配列番号47もしくは48から選択されるアミノ酸配列
を含んでなる、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記抗体が、重鎖および軽鎖を含んでなり、
ここで、該重鎖および該軽鎖がそれぞれ
(1)配列番号41および配列番号49;
(2)配列番号45および配列番号51;
(3)配列番号39および配列番号47;または
(4)配列番号40および配列番号48
で示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体が、重鎖および軽鎖を含んでなり、
ここで、該重鎖および該軽鎖がそれぞれ
(1)配列番号41および配列番号49;
(2)配列番号45および配列番号51;
(3)配列番号39および配列番号47;または
(4)配列番号40および配列番号48
で示されるアミノ酸配列を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体がIgG1またはIgG4の形態の抗体または抗原結合フラグメントであり、および/または抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントがκ軽鎖定常領域を含んでなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
κ軽鎖定常領域がヒトκ軽鎖定常領域である、請求項8に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1~のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体がヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
ab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv、(Fab’)フラグメント、ダイアボディ(dAb)、または直鎖抗体からなる群から選択される抗体フラグメントである、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項13】
前記抗体が、二重特異性または多重特異性抗体である、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
前記二重特異性抗体がPD-L1およびLAG-3に結合する、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸。
【請求項16】
現ベクターである、請求項15に記載の核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項17】
請求項15に記載の核酸または請求項16に記載のベクターを含んでなる宿主細胞
【請求項18】
抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを製造する方法であって、請求項17に記載の宿主細胞を請求項1~14のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸の発現に好適な条件でインキュベートすること含んでなる、方法。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントと付加的物質とを含んでなる、免疫複合体。
【請求項20】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは請求項19に記載の免疫複合体と、医薬補助材料とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項21】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは請求項19に記載の免疫複合体、付加的治療薬、および医薬補助材料を含んでなる、医薬組成物。
【請求項22】
前記付加的治療薬が抗LAG-3抗体である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記抗LAG-3抗体が、重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、ここで、
(i)前記VHは、相補性決定領域(CDRs)HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含んでなり、前記HCDR1は、配列番号69のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記HCDR2は、配列番号70から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはそのアミノ酸配列からなり;前記HCDR3は、配列番号71のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;および/または
(ii)前記VLは、相補性決定領域(CDRs)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含んでなり、前記LCDR1は、配列番号72のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記LCDR2は、配列番号73のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記LCDR3は、配列番号74から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはそのアミノ酸配列からなる、
請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記抗LAG-3抗体が、
(i)配列番号75で示される重鎖可変領域;および
(ii)配列番号76で示される軽鎖可変領域
を含んでなる、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
被験体または個体において腫瘍または感染性疾患を予防または治療するための薬物の調製における、有効量の請求項1~14のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または請求項19に記載の免疫複合体の使用。
【請求項26】
被験体または個体において腫瘍または感染性疾患を予防または治療するための薬物の調製における、有効量の請求項1~14のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、請求項19に記載の免疫複合体、または請求項20~24のいずれか一項に記載の医薬組成物、および抗LAG-3抗体の使用。
【請求項27】
前記腫瘍が癌であるか;または前記感染性疾患が慢性感染症である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項28】
前記癌が結腸癌である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記薬物が抗LAG-3抗体と組み合わせて投与されてよい、請求項25~28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
前記抗LAG-3抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、ここで、
(i)前記VHは、相補性決定領域(CDRs)HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含んでなり、前記HCDR1は、配列番号69のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記HCDR2は、配列番号70から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはそのアミノ酸配列からなり;前記HCDR3は、配列番号71のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;かつ/または
(ii)前記VLは、相補性決定領域(CDRs)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含んでなり、ここで、前記LCDR1は、配列番号72のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記LCDR2は、配列番号73のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記LCDR3は、配列番号74から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはそのアミノ酸配列からなる、請求項26または29に記載の使用。
【請求項31】
前記抗LAG-3抗体が、
(i)配列番号75で示される重鎖可変領域、および
(ii)配列番号76で示される軽鎖可変領域
を含んでなる、請求項26または29に記載の使用。
【請求項32】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または請求項19に記載の免疫複合体を含んでなる、被験体または個体において腫瘍または感染性疾患を予防または治療するための組成物。
【請求項33】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、請求項19に記載の免疫複合体、または請求項20~24のいずれか一項に記載の医薬組成物、および抗LAG-3抗体を含んでなる、被験体または個体において腫瘍または感染性疾患を予防または治療するための組成物。
【請求項34】
前記腫瘍が癌であるか;または前記感染性疾患が慢性感染症である、請求項32または33に記載の組成物。
【請求項35】
前記癌が結腸癌である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
抗LAG-3抗体と組み合わせて投与されてよい、請求項32~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記抗LAG-3抗体が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、ここで、
(i)前記VHは、相補性決定領域(CDRs)HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含んでなり、前記HCDR1は、配列番号69のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記HCDR2は、配列番号70から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはそのアミノ酸配列からなり;前記HCDR3は、配列番号71のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;かつ/または
(ii)前記VLは、相補性決定領域(CDRs)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含んでなり、ここで、前記LCDR1は、配列番号72のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記LCDR2は、配列番号73のアミノ酸配列を含んでなりもしくはからなり;前記LCDR3は、配列番号74から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはそのアミノ酸配列からなる、請求項33または36に記載の組成物。
【請求項38】
前記抗LAG-3抗体が、
(i)配列番号75で示される重鎖可変領域、および
(ii)配列番号76で示される軽鎖可変領域
を含んでなる、請求項33または36に記載の組成物。
【外国語明細書】