(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016411
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】営業支援装置、及び営業支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20240131BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118507
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 博基
(72)【発明者】
【氏名】秦 和男
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】進行中の案件の将来の成約の見込みを精度良く推定する営業支援装置及び営業支援方法を提供する。
【解決手段】事業者の事業所又はデータセンタ等に設けられ、1又は複数のユーザ端末と、データ管理システムと、営業支援装置と、を含んで構成されている営業支援システムにおいて、営業支援装置40は、案件の属性と、当該案件についての、取引先に対する業務開始から当該案件の成約又は不成約に至るまでの、進捗のフェーズの変遷の履歴と、を含む情報である案件履歴情報を記憶する記憶装置及び案件履歴情報に基づき、所定のフェーズに至っている所定の属性の案件がその後成約に至る確率である成約率を算出する成約率算出部を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
案件の属性と、当該案件についての、取引先に対する業務開始から当該案件の成約又は不成約に至るまでの進捗のフェーズの変遷の履歴とを含む情報である案件履歴情報を記憶する記憶装置、及び、
前記案件履歴情報に基づき、所定のフェーズに至っている所定の属性の案件がその後成約に至る確率である成約率を算出する処理装置
を備える、営業支援装置。
【請求項2】
前記記憶装置は、前記取引先の種類、及び前記取引先に対する過去の成約金額を前記属性とする前記案件履歴情報を記憶し、
前記処理装置は、前記案件履歴情報に基づき、前記所定のフェーズに至っている、所定の前記取引先の種類と所定の前記取引先に対する過去の成約金額との組み合わせに係る案件がその後成約に至る成約率を算出する、
請求項1に記載の営業支援装置。
【請求項3】
前記処理装置は、
成約又は不成約が確定していない案件の情報を取得し、
前記取得した案件の情報から、当該案件の属性及び現在のフェーズを抽出し、抽出した属性及びフェーズに基づき、当該属性及び当該フェーズに係る前記成約率を算出し、算出した成約率を出力装置に出力する、
請求項1に記載の営業支援装置。
【請求項4】
前記処理装置は、
前記取得した案件の情報に基づき、当該案件が成約した場合の成約金額である第1成約金額を算出し、前記算出した成約率に基づく成約金額である第2成約金額を算出し、
前記算出した第1成約金額及び第2成約金額の情報を前記出力装置に出力する、
請求項3に記載の営業支援装置。
【請求項5】
前記処理装置は、前記成約率に基づき、前記案件に関する売上額を算出する、請求項1に記載の営業支援装置。
【請求項6】
前記処理装置は、前記成約率に基づき、前記案件に関する利益額を算出する、請求項1に記載の営業支援装置。
【請求項7】
情報処理装置が、
案件の属性と、当該案件についての、取引先に対する業務開始から当該案件の成約又は不成約に至るまでの進捗のフェーズの変遷の履歴とを含む情報である案件履歴情報を記憶し、
前記案件履歴情報に基づき、所定のフェーズに至っている所定の属性の案件がその後成約に至る確率である成約率を算出する
営業支援方法。
【請求項8】
前記情報処理装置が、
前記取引先の種類、及び前記取引先に対する過去の成約金額を前記属性とする前記案件履歴情報を記憶し、
前記案件履歴情報に基づき、前記所定のフェーズに至っている、所定の前記取引先の種類と所定の前記取引先に対する過去の成約金額との組み合わせに係る案件が成約に至る成約率を算出する、
請求項7に記載の営業支援方法。
【請求項9】
前記情報処理装置が、
成約又は不成約が確定していない案件の情報を取得し、
前記取得した案件の情報から、当該案件の属性及び現在のフェーズを抽出し、抽出した属性及びフェーズに基づき、当該属性及び当該フェーズに係る前記成約率を算出し、算出した成約率を出力装置に出力する、
請求項7に記載の営業支援方法。
【請求項10】
前記情報処理装置が、
前記取得した案件の情報に基づき、当該案件が成約した場合の成約金額である第1成約金額を算出し、前記算出した成約率に基づく成約金額である第2成約金額を算出し、
前記算出した第1成約金額及び第2成約金額の情報を前記出力装置に出力する、
請求項9に記載の営業支援方法。
【請求項11】
前記情報処理装置が、前記成約率に基づき、前記案件に関する売上額を算出する、請求項7に記載の営業支援方法。
【請求項12】
前記情報処理装置が、前記成約率に基づき、前記案件に関する利益額を算出する、請求項7に記載の営業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、営業支援装置、及び営業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
企業の営業活動を支援するツールとして、SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)が利用されることがある。SFAは、例えば、営業活動や業務プロセスに関する情報を蓄積して管理し、売り上げや利益を予測するために用いられる。
【0003】
売り上げや利益の予測に資する技術として、特許文献1には、営業支援システムにおけるサーバー装置が、営業案件毎に、受注見込み額と、受注見込み額の予測に関連するパラメーターとを含む情報を記憶し、その情報に基づいて、受注見込み額と、パラメーターに基づく受注見込み予測額とを同時に表示させるための表示用データを生成し、表示用データを表示部に表示させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SFA等を用いて将来の業績を予測し経営判断に役立てるためには、現在進行中の営業活動が正式に受注されることで成約に至り、業績につながるかどうかを考える必要がある。しかしながら、各案件が成約に至るまでには様々なプロセスがあり、またこれは商習慣にも依存するため、成約の予測には不確定要素が多い。特許文献1においても、受注見込み額等は、ユーザーが任意に入力する旨が開示されている。
【0006】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、進行中の案件の将来の成約の見込みを精度良く推定することが可能な営業支援装置、及び営業支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための本発明の一つは、案件の属性と、当該案件についての、取引先に対する業務開始から当該案件の成約又は不成約に至るまでの進捗のフェーズの変遷の履歴とを含む情報である案件履歴情報を記憶する記憶装置、及び、前記案件履歴情報に基づき、所定のフェーズに至っている所定の属性の案件がその後成約に至る確率である成約率を算出する処理装置を備える、営業支援装置、とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、進行中の案件の将来の成約の見込みを精度良く推定することができる。
上記した以外の構成及び効果等は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る営業支援システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】営業支援装置が備える機能部の一例を説明する図である。
【
図3】営業支援装置が備えるハードウェアの一例を説明する図である。
【
図4】営業支援処理の概要を説明するフロー図である。
【
図5】案件履歴更新処理の一例を説明するフロー図である。
【
図6】データ取得処理の一例を説明するフロー図である。
【
図9】成約率算出処理の一例を説明するフロー図である。
【
図10】成約率管理テーブルの一例を示す図である。
【
図11】案件管理テーブル及び案件履歴テーブルの変更履歴の一例を示す図である。
【
図12】案件管理テーブル及び案件履歴テーブルの変更履歴の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係る営業支援システム1の構成の一例を示す図である。営業支援システム1は、1又は複数のユーザ端末10と、データ管理システム20と、営業支援装置40とを含んで構成されている。営業支援システム1は、事業者(以下、本事業者という)の事業所、又はデータセンタ等に設けられる。
【0011】
ユーザ端末10は、各案件についての営業活動(案件の成約に向けた業務)を行う事業者の営業員(ユーザ)が使用する情報処理装置(コンピュータ)である。ユーザは、ユーザ端末10を利用して、自身の進捗の段階(フェーズ)が進むごとに、データ管理システム20にその進捗(例えば、業務活動)の情報を入力する。また、ユーザは、ユーザ端末10を利用して、自身の営業活動の結果(成約又は不成約が確定した案件の情報)を、データ管理システム20に備わる伝票管理システム(不図示)に入力する。なお、ここで不成約とは、事業者及び相手方が契約に合意できなかった場合のみならず、事業者(営業員)が営業活動を終了した結果案件自体が消滅した場合、及び、相手方が他の事業者と合意に至った場合等を含む。
【0012】
データ管理システム20は、SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)等を含んで構成される。データ管理システム20は、1又は複数の情報処理装置(コンピュータ)により構成される情報処理システムである。データ管理システム20は、ユーザ端末10から入力された情報を管理し、また、営業支援装置40とのデータの連携を行う。
【0013】
データ管理システム20は、未確定案件DB21(DataBase)、及び確定案件DB22の各データベースを備える。未確定案件DB21は、成約又は不成約が確定していない現在進行中の案件の情報を記憶している。未確定案件DB21は、例えば、案件の案件番号、取引先の情報、及びフェーズの情報等を記憶している。確定案件DB22は、成約又は不成約が確定した案件の情報を記憶している。確定案件DB22は、例えば、案件の案件番号、取引先の情報、及び成約金額の情報を記憶している。
【0014】
営業支援装置40は、1又は複数の情報処理装置(コンピュータ)により構成される情報処理システムである。営業支援装置40は、データ管理システム20から過去の案件の情報を取得し、取得した情報に基づき、将来の所定期間における案件の成約率を予測する。本実施形態では、営業支援装置40は、過去の年度の案件の情報から現年度の成約率を予測するものとする。
【0015】
ユーザ端末10、データ管理システム20、及び営業支援装置40の間は、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、又は専用線等の有線又は無線の通信ネットワーク5によって通信可能に接続される。
次に、営業支援装置40の詳細を説明する。
【0016】
図2は、営業支援装置40が備える機能部の一例を説明する図である。営業支援装置40は、データ取得部41、成約率算出部42、成約金額予測部43、及び出力部44の各機能部を備える。
【0017】
データ取得部41は、データ管理システム20から、案件の情報を取得する。取得した情報は、後述する案件管理テーブル100及び案件履歴テーブル200に格納される。
【0018】
成約率算出部42は、案件履歴テーブル200に基づき、各フェーズに至っている各属性の案件がその後成約に至る確率である成約率をそれぞれ算出する。そして、成約率算出部42は、成約又は不成約が確定していない案件(成約率を算出したい案件)の情報から、その案件の属性及び現在のフェーズを抽出し、抽出した属性及びフェーズに基づき、当該属性及び当該フェーズに係る案件の成約率を算出する。
【0019】
なお、本実施形態におけるフェーズとは、事業者の営業活動における段階であってもよいし、営業活動の相手方(取引先)の事情に応じて設定される段階であってもよいし、その他の基準(客観的な状況の基準)によって設定される段階であってもよい。
【0020】
成約金額予測部43は、成約も不成約も確定していない案件が全て成約したと仮定した場合の成約金額(以下、第1成約金額という)と、成約率算出部42で算出した成約率に基づき予測される成約金額(以下、第2成約金額という)とを算出する。
【0021】
出力部44は、算出した各成約率及び成約金額等の情報を画面に表示する。
【0022】
また、営業支援装置40は、案件管理テーブル100、案件履歴テーブル200、成約率管理テーブル400、及び予算管理テーブル500の各データベースを記憶している。
【0023】
案件管理テーブル100は、各案件の現在の情報(例えば、現在のフェーズの情報)を記憶している。
【0024】
案件履歴テーブル200は、案件の属性と、その案件についての、取引先に対する業務開始から当該案件の成約又は不成約の確定に至るまでの進捗のフェーズの変遷の履歴の情報(案件履歴情報)を記憶している。
【0025】
成約率管理テーブル400は、算出された各成約率(フェーズごと及び属性ごとの成約率)を記憶している。
【0026】
予算管理テーブル500は、成約額の目標値に関する情報を記憶している。
【0027】
次に、
図3は、営業支援装置40が備えるハードウェアの一例を説明する図である。営業支援装置40は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の処理装置91(プロセッサ)と、ROM(Read Only Memory)、又はRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置92と、HDD(Hard Disk Drive)、又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置とからなる補助記憶装置93と、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USB(Universal Serial Interface)モジュール、又はシリアル通信モジュール等で構成される通信装置94と、マウスやキーボード等で構成される入力装置95と、液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等で構成される出力装置96とを備える。なお、ユーザ端末10、及びデータ管理システム20も営業支援装置40と同様のハードウェア構成を備える。
【0028】
以上に説明した営業支援装置40の各機能部の機能は、営業支援装置40の処理装置91が、主記憶装置92又は補助記憶装置93に格納されている各機能部の機能を実現する所定のプログラムを読み出すことにより、実現される。各プログラムは、例えば、記録媒体に記録して配布することができる。なお、営業支援装置40は、その全部または一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術やプロセス空間分離技術等を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。また、営業支援装置40によって提供される機能の全部または一部は、例えば、クラウドシステムがAPI(Application Programming Interface)等を介して提供するサービスによって実現してもよい。
次に、営業支援システム1で行われる処理について説明する。
【0029】
図4は、本事業者の将来の成約率を予測する処理(営業支援処理)の概要を説明するフロー図である。
【0030】
まず、データ管理システム20は、ユーザ端末10から、案件の情報の更新の入力を受け付ける案件履歴更新処理s11を実行する。
【0031】
その後、営業支援装置40は、データ管理システム20から、案件の情報を取得するデータ取得処理s13を実行する。
【0032】
営業支援装置40は、データ取得処理s13で取得した案件の情報に基づき、現年度における案件の成約率を予測する成約率予測処理s15を実行する。
【0033】
営業支援装置40は、成約率予測処理s15で算出した成約率に基づき、現年度の成約の予測結果をユーザに提示する成約予測提示処理s17を実行する。以上で営業支援処理は終了する。
【0034】
なお、以上の各処理の実行順序及び実行回数は必ずしも上記の通りである必要はなく、例えば、成約率予測処理s15は、案件履歴更新処理s11及びデータ取得処理s13が少なくともそれぞれ1回以上実行された後に実行されればよい。
以下、各処理の詳細を説明する。
【0035】
<案件履歴更新処理>
図5は、案件履歴更新処理s11の一例を説明するフロー図である。
【0036】
まず、データ管理システム20は、新規案件(本実施形態では、正式な案件には至っていないが案件として管理される業務を開始した時点で新規案件が成立するとする)の情報の入力を受け付ける(s111)。例えば、データ管理システム20は、ユーザ端末10から、案件の番号、その案件の取引先の名称、及び案件の属性の情報の入力をそれぞれ受け付ける。
【0037】
また、データ管理システム20は、既存案件のフェーズの変更(成約又は不成約が確定した場合を含む)に関する情報の入力を受け付ける(s113)。例えば、データ管理システム20は、ユーザ端末10から、フェーズが変更された案件の番号、その案件の取引先の名称、及び変更後のフェーズの入力をそれぞれ受け付ける。なお、フェーズは、前段階のフェーズに戻る場合、又は、フェーズをスキップしてさらに先のフェーズに進む場合もありうる。
【0038】
一方、データ管理システム20は、成約が確定した案件の情報の入力を受け付ける(s115)。例えば、データ管理システム20は、ユーザ端末10から、成約が確定した案件の番号、その案件の取引先の名称、及びその成約金額の入力をそれぞれ受け付ける。以上で案件履歴更新処理s11は終了する。
【0039】
<データ取得処理>
次に、
図6は、データ取得処理s13の一例を説明するフロー図である。
営業支援装置40は、データ管理システム20から、フェーズが変更された案件の情報を取得する(s131)。例えば、営業支援装置40は、データ管理システム20にアクセスし、成約又は不成約が確定していない案件であってフェーズが変更された案件の情報を受信する。
【0040】
営業支援装置40は、s131で取得した、フェーズが変更された案件について、変更前後のフェーズの情報及び属性の情報を、案件履歴テーブル200に追加する(s133)。なお、営業支援装置40は、取得したデータに基づき案件管理テーブル100を更新する。以上でデータ取得処理s13は終了する。
【0041】
(案件管理テーブル)
ここで、
図7は、案件管理テーブル100の一例を示す図である。案件管理テーブル100は、案件に係る取引先の名称が設定される顧客名101、案件の識別子(番号等)が設定される案件番号102、その案件が属するフェーズが設定されるフェーズ103、その案件を分類する1又は複数の区分の情報が設定される区分104、105、及び、その取引先に対する前年度の成約金額が設定される成約金額106の各データ項目を有する。取引先区分、及び成約金額は、案件の属性情報として管理される。
【0042】
ここで、フェーズ103には、(1)正式な案件に至る前のフェーズである「案件前」、(2)正式な案件に至った後の各フェーズである「第1フェーズ」(例えば、取引先の関心を得ているフェーズ)、「第2フェーズ」(例えば、成約のための具体的な提案又は見積等を行っているフェーズ)、「第3フェーズ」(例えば、成約の最終準備のフェーズ)、又は「第4フェーズ」(例えば、契約の内示を得ているフェーズ)のいずれかのフェーズ、(3)成約又は不成約が確定しているフェーズ(「不成約(取引先都合)」(取引先の事情により不成約が確定した場合)、「不成約(他決)」(他の事業者が取引先に対する成約を得た結果本事業者が制約に至らなかった場合)、「不成約(辞退)」(本事業者が契約締結を自発的に辞退した場合)、又は「成約」)のいずれかが設定される。
【0043】
(案件履歴テーブル)
次に、
図8は、案件履歴テーブル200の一例を示す図である。案件履歴テーブル200は、案件管理テーブル100の案件番号102に対応する案件番号201、変更される前の当該案件が属するフェーズが設定される変更前フェーズ202、変更された後の当該案件が属するフェーズが設定される変更後フェーズ203、案件管理テーブル100の区分104、105に対応する区分204、205、及び、案件管理テーブル100の成約金額106に対応する成約金額206の各データ項目を有する。
【0044】
<成約率算出処理>
次に、
図9は、成約率算出処理s15の一例を説明するフロー図である。
まず、営業支援装置40は、案件履歴テーブル200を参照し、変更前のフェーズが成約にも不成約にも至っていない案件のデータを抽出する(s151)。具体的には、営業支援装置40は、案件履歴テーブル200のうち、変更前フェーズ202が「案件前」、「第1フェーズ」、「第2フェーズ」、「第3フェーズ」、又は「第4フェーズ」のいずれかであるレコードを抽出する。
【0045】
また、営業支援装置40は、案件管理テーブル100を参照し、成約又は不成約が確定した確定案件のデータを抽出する(s153)。具体的には、営業支援装置40は、案件管理テーブル100のうち、フェーズ103が「成約」であるレコードを成約確定レコードとして抽出し、フェーズ103が「不成約(他決)」、「不成約(取引先都合)」、又は「不成約(辞退)」であるレコードを不成約確定レコードとして抽出する。
【0046】
営業支援装置40は、s151で抽出した案件から、確定案件を全て取得する(s155)。具体的には、営業支援装置40は、s151で抽出した案件履歴テーブル200のレコードのうち、案件番号201に、s153で抽出した案件管理テーブル100の確定案件のいずれかのレコードの案件番号101と同一の情報が設定されているレコードを全て取得する。
【0047】
営業支援装置40は、s155で取得した確定案件のデータを、その確定案件が過去に経たフェーズごと及び属性ごとに分類する(s157)。具体的には、営業支援装置40は、s155で取得した案件履歴テーブル200の各レコードの変更前フェーズ202、区分204、205、及び成約金額206の内容の組み合わせごとに、グループを作成する。
【0048】
営業支援装置40は、分類した各グループ(フェーズ及び属性の組み合わせ)ごとに、成約率を算出し、算出した成約率を、そのグループに対応づけて成約率管理テーブル400に登録する(s159)。
【0049】
具体的には、例えば、営業支援装置40は、s157で作成したあるグループ(フェーズ及び属性)に属するレコードのうち、成約確定レコードに対応づけられている、案件履歴テーブル200のレコードの件数を成約件数として記憶し、不成約確定レコードに対応づけられている、案件履歴テーブル200のレコードの件数を不成約件数として記憶する。営業支援装置40は、成約件数/(成約件数+不成約件数)により、当該グループに係る成約率を算出する。営業支援装置40は、以上の処理を各グループについて繰り返すことで、フェーズごと及び属性ごとの成約率を算出する。
【0050】
図10は、成約率管理テーブル400の一例を示す図である。成約率管理テーブル400は、フェーズの情報が設定されるフェーズ401、属性の組み合わせの情報が設定される属性402、及び、当該フェーズ及び属性に係る案件の成約率が設定される成約率403の各データ項目を有する。
ここで、成約率の算出の具体例を説明する。
【0051】
<成約率の算出例>
図11、12は、案件管理テーブル100及び案件履歴テーブル200の変更履歴の一例を示す図である(紙面の都合上2図に分けている)。
図11の符号1201に示すように、当初、案件番号1~4の各案件が存在し、それぞれのフェーズは「案件前」である。この情報は、案件管理テーブル100に記憶される。なお、本例では、各取引先は、その属性(以下、本属性という)が全て共通しているものとする。
【0052】
その後、案件番号1~4の案件は、「案件前」から「第1フェーズ」に変更される。これにより、案件管理テーブル100には、案件番号1~4の案件の「第1フェーズ」の各レコードが設定される(符号1202)。また、案件履歴テーブル200には、案件番号1~4の「案件前」の情報が履歴として追加される(符号1203)。
【0053】
その後、案件番号1~3の案件は、「第1フェーズ」から「第2フェーズ」に変更される。一方、案件番号4の案件は、「第1フェーズ」から「不成約(顧客都合)」に変更され、成約しないことが確定する。これにより、案件管理テーブル100には、案件番号1~3の「第2フェーズ」が設定され(符号1204)、案件番号4の「不成約(顧客都合)」が設定される(符号1205)。また、案件履歴テーブル200には、案件番号1~4の「第1フェーズ」の情報が履歴として追加される(符号1206)。
【0054】
その後、
図12に示すように、案件番号1~2の案件のフェーズは、「第2フェーズ」から「第4フェーズ」に変更される。また、案件番号3の案件のフェーズは、「第2フェーズ」から「不成約(他決)」に変更され、成約しないことが確定する。これにより、案件管理テーブル100には、案件番号1~2の「第4フェーズ」が設定され(符号1301)、案件番号3の「不成約(他決)」が設定される(符号1302)。また、案件履歴テーブル200には、案件番号1~3の「第2フェーズ」の情報が履歴として追加される(符号1303)。
【0055】
その後、案件番号1の案件は、「第4フェーズ」から「成約」に変更され、成約が確定する。これにより、案件管理テーブル100には、案件番号1の「成約」が設定される(符号1304)。また、案件履歴テーブル200には、案件番号1の「第4フェーズ」の情報が履歴として追加される(符号1305)。
【0056】
以上を前提とすると、各フェーズに係る成約率は以下のようになる。
【0057】
本属性における、「案件前」に係る成約率=1件(符号1311)/(1件(符号1311)+2件(符号1312、1313))=33%
【0058】
本属性における、「第1フェーズ」に係る成約率=1件(符号1314)/(1件(符号1314)+2件(符号1315、1316))=33%
【0059】
本属性における、「第2フェーズ」に係る成約率=1件(符号1317)/(1件(符号1317)+1件(符号1318))=50%
【0060】
本属性における、「第4フェーズ」に係る成約率=1件(符号1305)/1件(符号1305)=100%
【0061】
<成約予測提示処理>
図13は、成約予測提示処理s17において表示される成約予測結果画面の一例を示す図である。成約予測結果画面1400は、例えば、営業支援装置40又はユーザ端末10に表示される。
【0062】
成約予測結果画面1400には、今年度の成約金額の目標値1410(予算)と、データ管理システム20に現在登録されている情報に基づく現状成約金額1420(第1成約金額)と、成約率算出処理s15により算出された成約率に基づく成約金額の予測値1430(第2成約金額)とが棒グラフによりそれぞれ表示される。
【0063】
成約金額の目標値1410は、予算管理テーブル500から取得されたデータに基づき算出及び表示される。
【0064】
現状成約金額1420は、データ管理システム20に登録されている、今年度に成約が確定している案件の情報に基づき算出される第1の金額1421と、データ管理システム20に現在登録されている各案件1423が全て成約したと仮定して算出した第2の金額1422との合計金額である。なお、第2の金額1422における各案件の成約金額は、例えば、案件管理テーブル100の成約金額106の値に基づく。
【0065】
成約金額の予測値1430は、第1の金額1421と同じ金額である第3の金額1431と、第2の金額1422に係る各案件の金額1424に、成約率算出処理s15により算出された当該各案件の成約率1433をそれぞれ乗じて得られる成約金額の予測値の合計値である第4の金額1432との合計金額である。
【0066】
成約金額の予測値1430における第4の金額1432は、例えば、以下のようにして算出する。営業支援装置40は、案件履歴テーブル200を参照することで、現在、成約及び不成約のいずれにも至っていない各案件について、その属性及び現在のフェーズの情報を抽出し特定する。そして、営業支援装置40は、特定した属性及びフェーズの組み合わせに係る、(成約率算出処理s15により算出された)成約率を特定する。営業支援装置40は、当該属性及びフェーズの組み合わせに係る案件について、その案件の成約金額(例えば、案件管理テーブル100の成約金額106の値に基づく)と上記成約率との積を算出する。営業支援装置40は、このようにして算出した各積を合計することで、第4の金額1432を算出する。
【0067】
ユーザは、成約予測結果画面1400に表示された成約金額の目標値1410、現状成約金額1420、及び成約金額の予測値1430を比較することで、現状のデータベース値に基づく暫定的な成約金額と、成約率に基づいたより正確な予測値である成約金額とを比較し、また、予算(目標値)に対して現年度は成約目標を達成できる見込みがあるかを確認することができる。
【0068】
また、営業支援装置40は、成約率から算出した売上額1435又は利益額1436を成約予測結果画面1400に表示する。
【0069】
売上額については、例えば、営業支援装置40は、前記で算出した成約金額を売上額としてもよいし、成約率及び所定の売上算出式に基づいて算出した額を算出してもよい。
【0070】
利益額については、例えば、営業支援装置40は、成約率算出処理s15で分類したグループ(属性及びフェーズの組み合わせ)ごとに、原価を記録したデータベースを作成し、前記で算出した売上額から当該データベースに記憶された原価を減算することで、利益額を算出する。なお、ここで説明した利益額の算出方法は一例であり、任意の算出方法を定めてもよい。
【0071】
以上のように、本実施形態の営業支援装置40は、各属性を有する案件についての、取引先に対する業務活動(案件前)から当該案件の成約又は不成約に至るまでの各フェーズの移行の履歴の情報を記憶した案件履歴テーブル200に基づき、各フェーズに至っている各属性の案件がその後成約に至る確率である成約率を算出する。
【0072】
すなわち、営業支援装置40は、過去に成約し又は成約に至らなかった案件の履歴情報を用いて、フェーズ及び属性に応じた成約率の予測値を算出する。これを用いることで、ユーザは、成約又は不成約に至っていない現在進行中の案件について、将来どの程度の確率で成約に至るかを的確に予測することができる。このように、本実施形態の営業支援装置40によれば、進行中の案件の将来の成約の見込みを精度良く推定することができる。
【0073】
また、本実施形態の営業支援装置40は、取引先の種類(区分)、及び取引先に対する過去の成約金額を属性とする案件履歴テーブル200に基づき、成約率を算出する。本発明者らは、取引先に対する案件活動において、過去の成約金額の多寡が将来の成約に及ぼす影響が大きいという知見を得た。これにより、現在進行中の案件の将来の成約の見込みをより精度良く推定することができる。
【0074】
また、本実施形態の営業支援装置40は、成約も不成約も現在確定していない案件の情報からその属性及びフェーズを抽出し、抽出した属性及びフェーズに基づき成約率を算出し、算出した成約率を出力装置に出力する。これにより、ユーザは、現在進行中の案件について、成約の見込みがどの程度あるかを容易に知ることができる。
【0075】
また、本実施形態の営業支援装置40は、成約も不成約も現在確定していない案件が全て成約したと仮定した場合の成約金額(第1成約金額)と、予測した成約率に基づく成約金額(第2成約金額)とを画面に表示する。これにより、ユーザは、現在進行中の案件について、理想的な成約金額と現実的な成約金額の差異にについて知ることができる。
【0076】
また、本実施形態の営業支援装置40は、成約率に基づき、案件に関する売上額を算出する。また、本実施形態の営業支援装置40は、成約率に基づき、案件に関する利益額を算出する。
【0077】
これにより、事業者は、将来の営業計画及び事業計画等を立てることができる。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
【0079】
例えば、本実施形態における複数の情報処理装置の機能は、一つの情報処理装置に統合してもよい。例えば、営業支援装置40とデータ管理システム20を一体の装置として構成してもよい。
【0080】
また、本実施形態では、営業支援装置40が、データ管理システム20に登録されたデータをデータ管理システム20から受信するものとしたが、営業支援装置40が、ユーザ端末10から直接、成約率の算出に必要な案件のデータの一部又は全部の入力を受け付けてもよい。例えば、営業支援装置40が、フェーズの情報の入力をユーザ端末10から受け付けるとしてもよい。
【0081】
また、営業支援装置40が備える各機能部の構成は一例である。例えば、ある機能部を他の機能部に設けてもよいし、複数の機能部を一つの機能部に統合してもよい。また、営業支援装置40の機能部の一部を他の通信可能な情報処理装置に設けてもよい。
【0082】
また、本実施形態で説明したフェーズの設定方法は一例であり、業務活動の開始から成約又は不成約に至るまでの様々なフェーズの設定方法がありうる。
【0083】
また、本実施形態において説明した、成約率の算出に用いた属性(区分等)は一例であり属性を限定する趣旨ではない。成約率に影響を与える他の要素を考慮してよい。
【符号の説明】
【0084】
1 営業支援システム
10 ユーザ端末
20 データ管理システム
30 基幹システム
40 営業支援装置