(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016412
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】移動ユニット、及び記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240131BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 301
B41J2/01 305
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118508
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】田中 拓人
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056HA01
2C056HA07
2C056HA11
2C056HA29
2C056JA01
(57)【要約】
【課題】移動ユニットの駆動源に設けられる把持部を介して駆動源の出力軸に回転力を与える際に、把持部に出力軸の軸方向に沿う力が加わることで、出力軸に回転力が適切に伝わらない虞がある。
【解決手段】移動ユニット31は、媒体Mに記録を行う記録装置11において、移動部MPを移動方向MDに変位可能な移動ユニット31であって、移動部MPを変位させる駆動力を与える駆動源35と、駆動源35の出力軸36に取付けられ、出力軸36を手動で回転可能な操作部80と、を備え、操作部80は、出力軸36に取付けられる基部81と、基部81に取付けられ、出力軸36と接触可能な把持部91と、を有し、基部81及び把持部91は、一体となって回転することで、出力軸36を手動で回転可能であり、把持部91が出力軸36と接触することで、把持部91は、出力軸36の軸方向ADへの移動が規制される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に記録を行う記録装置において、移動部を移動方向に変位可能な移動ユニットであって、
前記移動部を変位させる駆動力を与える駆動源と、
前記駆動源の出力軸に取付けられ、前記出力軸を手動で回転可能な操作部と、
を備え、
前記操作部は、
前記出力軸に取付けられる基部と、
前記基部に取付けられ、前記出力軸と接触可能な把持部と、
を有し、
前記基部及び前記把持部は、一体となって回転することで、前記出力軸を手動で回転可能であり、
前記把持部が前記出力軸と接触することで、前記把持部は、前記出力軸の軸方向への移動が規制される、
ことを特徴とする移動ユニット。
【請求項2】
前記基部は、
前記出力軸が圧入される保持部と、
前記把持部と係合する係合部と、
を有し、
前記把持部は、
前記出力軸と接触可能な凸部と、
前記係合部と係合する被係合部と、
を有し、
前記把持部は、前記凸部が前記出力軸と接触することで、前記軸方向への移動が規制される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の移動ユニット。
【請求項3】
前記凸部の先端は、前記保持部に挿入可能である、
ことを特徴とする、請求項2に記載の移動ユニット。
【請求項4】
前記把持部は、前記凸部が突出する面であって、前記出力軸と交差する第1面を有し、
前記凸部が前記出力軸と接触するときの前記保持部への前記凸部の挿入量と比較して、前記第1面からの前記凸部の突出量は大きく設定されている、
ことを特徴とする、請求項3に記載の移動ユニット。
【請求項5】
前記基部を前記出力軸に対して変位させるために必要な力は、前記把持部を前記基部に対して変位させるために必要な力よりも大きい、
ことを特徴とする、請求項2に記載の移動ユニット。
【請求項6】
前記係合部は、第1係合部及び第2係合部を有し、
前記被係合部は、前記第1係合部と係合する第1被係合部と、前記第2係合部と係合する第2被係合部と、を有し、
前記第1係合部及び前記第2係合部は、前記基部の回転中心に対して点対称に配置されている、
ことを特徴とする、請求項2に記載の移動ユニット。
【請求項7】
前記出力軸の回転量を検出可能な被検出部をさらに有し、
前記被検出部は、前記基部に設けられる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の移動ユニット。
【請求項8】
前記駆動源の駆動力を前記移動部に伝達する伝達経路をさらに有し、
前記伝達経路は、ウォームギヤを有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の移動ユニット。
【請求項9】
前記操作部及び前記基部は、樹脂で形成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の移動ユニット。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の移動ユニットと、
前記移動部と、
を備え、
前記移動部は、前記媒体に記録を行う記録部である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項11】
前記記録部が設けられる装置本体をさらに備え、
前記装置本体は、前記記録部を視認可能な視認部を有し、
前記視認部は、前記操作部よりも上方にある、
ことを特徴とする、請求項10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記記録部によって記録されている前記媒体の搬送方向は、鉛直方向及び水平方向と交差し、
前記移動方向は、鉛直方向及び水平方向と交差する、
ことを特徴とする、請求項10に記載の記録装置。
【請求項13】
前記軸方向は、鉛直方向及び水平方向と交差する、
ことを特徴とする、請求項10に記載の記録装置。
【請求項14】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の移動ユニットと、
前記媒体に記録を行う記録部と、
前記移動部と、
を備え、
前記移動部は、前記記録部のメンテナンスを行うメンテナンス部である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項15】
前記記録部によって記録されている前記媒体の搬送方向は、鉛直方向及び水平方向と交差し、
前記移動方向は、鉛直方向及び水平方向と交差する、
ことを特徴とする、請求項14に記載の記録装置。
【請求項16】
前記軸方向は、鉛直方向及び水平方向と交差する、
ことを特徴とする、請求項14に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動ユニット、及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、媒体の一例である用紙に記録する用紙印字部と、記録された媒体を切断する用紙切断部と、を備える記録装置の一例であるプリンター装置が開示されている。また、用紙切断部は、固定刃と、固定刃に向かって昇降可能な移動部の一例である可動刃と、可動刃を昇降させる移動ユニットの一例である駆動機構と、を有することが開示されている。また、駆動機構が有する駆動源の一例である駆動モーターの出力軸には、手動により出力軸に回転力を与える把持部の一例である操作ノブが設けられていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の記録装置では、把持部を介して駆動源の出力軸に回転力を与える際に、把持部に出力軸の軸方向に沿う力が加わることで、出力軸に回転力が適切に伝わらない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
移動ユニットは、媒体に記録を行う記録装置において、移動部を移動方向に変位可能な移動ユニットであって、前記移動部を変位させる駆動力を与える駆動源と、前記駆動源の出力軸に取付けられ、前記出力軸を手動で回転可能な操作部と、を備え、前記操作部は、前記出力軸に取付けられる基部と、前記基部に取付けられ、前記出力軸と接触可能な把持部と、を有し、前記基部及び前記把持部は、一体となって回転することで、前記出力軸を手動で回転可能であり、前記把持部が前記出力軸と接触することで、前記把持部は、前記出力軸の軸方向への移動が規制される。
【0006】
記録装置は、上記の移動ユニットと、前記移動部と、を備え、前記移動部は、前記媒体に記録を行う記録部である。
【0007】
記録装置は、上記の移動ユニットと、前記媒体に記録を行う記録部と、前記移動部と、を備え、前記移動部は、前記記録部のメンテナンスを行うメンテナンス部である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態としての記録装置の模式図。
【
図2】記録位置に位置する記録部と待機位置に位置するメンテナンス部とを示す模式図。
【
図3】退避位置に位置する記録部と接触位置に位置するメンテナンス部とを示す模式図。
【
図4】メンテナンス位置に位置する記録部と接触位置に位置するメンテナンス部とを示す模式図。
【
図5】移動ユニットを記録装置の背面側から見た側面図。
【
図8】移動ユニットの操作部周辺を示す部分断面図。
【
図9】移動ユニットの操作部周辺を示す部分斜視図。
【
図10】
図5のd10-d10線で切断した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施形態に基づいて説明する。記録装置は、例えば、用紙、布帛などの媒体に液体の一例であるインクを吐出することによって、文字、写真などの画像を記録するインクジェット式のプリンターである。
【0010】
各図において同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、「同じ」、「同一」、「同時」とは、完全に同じであることを指すのみならず、測定誤差を考慮して同じである場合、部材の製造ばらつきを考慮して同じである場合、および、機能を損なわない範囲で同じである場合を含むものとする。よって、例えば、「両者の寸法が同じである」とは、測定誤差、部材の製造ばらつきを考慮し、両者の寸法差が、一方の寸法の±10パーセント以内、さらに好ましくは±5パーセント以内、特に好ましくは±3パーセント以内であることを指す。
【0011】
また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向とする。向きを特定する場合には、正の方向を「+」、負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用し、各図の矢印が向かう向きを+方向、矢印の反対方向を-方向として説明する。
【0012】
また、Z軸方向は、重力方向を示し、+Z方向は鉛直上向き、-Z方向は鉛直下向きを示す。このため、Z軸方向を鉛直方向と称することもある。また、X軸,Y軸を含む平面をX-Y面、X軸,Z軸を含む平面をX-Z面、Y軸,Z軸を含む平面をY-Z面として説明する。また、X-Y面は水平面となる。さらに、正方向及び負方向を限定しない3つのX、Y、Zの空間軸については、X軸、Y軸、Z軸として説明する。
【0013】
尚、各図においてX軸方向は記録装置11の奥行方向であり、搬送経路14の経路幅方向であり、媒体Mの幅方向である。X軸方向のうち+X方向は記録装置11の背面から記録装置11の前面に向かう方向である。また-X方向は記録装置11の前面から記録装置11の背面に向かう方向である。
【0014】
1.実施形態1
図1に示すように、記録装置11は、装置本体12を備える。記録装置11は、装置本体12のベースフレームとして、ベースフレームの+X方向の端部に前フレーム12A(
図6参照)を備え、ベースフレームの-X方向の端部に後フレーム12Bを備える。なお、説明のため、記録装置11の前面側から見た図では、前フレーム12Aの明示を省略している。前フレーム12A及び後フレーム12Bは金属材料で形成される。前フレーム12A及び後フレーム12Bを含むベースフレームに対して外装部材が取り付けられることで、装置本体12が形成される。
【0015】
記録装置11は、装置本体12に、1以上の収容部13を備える。収容部13は、媒体Mを収容するように構成される。収容部13は、例えば、装置本体12に対して引き出し可能なカセットである。
【0016】
記録装置11は、装置本体12に、搬送経路14を備える。搬送経路14は、媒体Mが搬送される経路である。搬送経路14は、装置本体12内を延びる。本実施形態では、搬送経路14は、収容部13から装置本体12外に媒体Mを排出するように延びる。媒体Mは、搬送経路14を搬送される過程で画像を記録される。
【0017】
媒体Mは、
図1に一点鎖線で示す搬送経路14を通って搬送される。Y-Z面に示されるA-B座標系は、直交座標系である。A方向は、鉛直方向及び水平方向と交差する方向である。A方向は、搬送経路14のうち記録部21と対向する領域における媒体Mの搬送方向である。A方向において、搬送方向の上流に向かう方向を-A方向、搬送方向の下流に向かう方向を+A方向と称する。
【0018】
本実施形態において、A方向は、+A方向が-A方向よりも+Z方向に位置するように傾いた方向とされる。具体的には水平方向に対して50°~70°の範囲で傾斜し、より具体的には概ね60°傾斜している。
【0019】
記録装置11は、装置本体12に、搬送部15を備える。搬送部15は、媒体Mを搬送するように構成される。搬送部15は、例えば、1以上のローラーを有する。搬送部15は、収容部13に収容される媒体Mを搬送経路14に沿って搬送する。
【0020】
本実施形態では、搬送部15は、搬送ベルト16と、第1プーリー17と、第2プーリー18とを含む。搬送ベルト16は、第1プーリー17と第2プーリー18とに巻き掛けられる。搬送ベルト16は、例えば、静電吸着によって媒体Mを吸着する。これにより、搬送ベルト16は、媒体Mを支持する。第1プーリー17と第2プーリー18とは、搬送経路14に沿って位置する。第1プーリー17及び第2プーリー18が回転することによって、搬送ベルト16が周回する。その結果、搬送ベルト16に支持される媒体Mが+A方向に搬送される。
【0021】
記録装置11は、装置本体12に、載置部19を備える。載置部19には、画像が記録されて装置本体12外に排出された媒体Mが載置される。載置部19は、トレイ19Aを有する。トレイ19Aは、板状に形成された部材であり、装置本体12外に排出された媒体Mが載置される載置面を構成する。
【0022】
載置部19は、トレイ19Aを着脱可能に支持するトレイ支持部19Bを有する。トレイ支持部19Bは、中央が開口する枠形状をしている。載置部19が備えるトレイ19A、およびトレイ支持部19Bは、外装部材の一部を構成する。また、トレイ19A、およびトレイ支持部19Bは、Z方向において、記録部21の上方である+Z方向となる位置に配置される。
【0023】
トレイ19Aをトレイ支持部19Bから取り外すことにより、トレイ支持部19Bの開口を介して、装置本体12内に配置される記録部21にアクセス可能となる。また、トレイ19Aをトレイ支持部19Bから取り外すことにより、トレイ支持部19Bの開口を介して、記録部21が+Z方向から視認可能となる。トレイ支持部19Bは、記録部21を視認可能な視認部VPの一例である。
【0024】
記録装置11は、装置本体12に、記録部21を備える。記録部21は、媒体Mに液体を吐出することによって媒体Mに画像を記録する。記録部21は、例えば、1以上のノズル22を有するヘッドである。記録部21は、搬送部15によって+A方向に搬送される媒体Mに画像を記録する。記録部21は、例えば、搬送ベルト16と対向する位置に位置する。本実施形態では、記録部21は、A方向に沿う搬送ベルト16に支持される媒体Mに画像を記録する。
【0025】
図2から
図4に示すように、記録部21は、B方向に沿って複数の位置に移動するように構成される。記録部21は、移動部MPの一例である。記録部21は、記録位置P1とメンテナンス位置P2とに移動するように構成される。
図2に示す記録部21の位置が記録位置P1である。
図4に示す記録部21の位置がメンテナンス位置P2である。本実施形態では、記録部21は、記録位置P1と、メンテナンス位置P2とに加えて、退避位置P3に移動するように構成される。
図3に示す記録部21の位置が退避位置P3である。
【0026】
B方向は、記録部21が移動する移動方向MDの一例である。B方向は、記録部21が搬送ベルト16に対し進退するときの方向である。B方向は、鉛直方向及び水平方向と交差する方向である。B方向における記録部21が搬送ベルト16に近づく方向を+B方向、搬送ベルト16から離れる方向を-B方向と称する。-B方向は、記録部21が搬送ベルト16から離れる方向に沿って斜め上に向かう方向である。本実施形態において、B方向は、-B方向が+B方向よりも+Z方向に位置するように傾いた方向である。
【0027】
記録位置P1は、記録部21が媒体Mに記録する位置である。記録位置P1、メンテナンス位置P2、退避位置P3のうち、記録位置P1は、搬送ベルト16に対して記録部21が最も接近する位置である。記録位置P1は、メンテナンス位置P2よりも+B方向となる下方の位置である。
【0028】
メンテナンス位置P2は、記録部21がメンテナンスされる位置である。メンテナンス位置P2は、退避位置P3よりも+B方向となる下方の位置である。退避位置P3は、記録部21が退避する位置である。
【0029】
退避位置P3は、メンテナンス位置P2よりも-B方向となる上方の位置である。退避位置P3は、記録位置P1からメンテナンス位置P2に記録部21が変位する場合、及び、メンテナンス位置P2から記録位置P1に記録部21が変位する場合に、記録部21が経由する位置である。そのため、記録部21は、記録位置P1とメンテナンス位置P2との間で変位する場合に、退避位置P3に一時的に退避する。
【0030】
図2に示すように、記録装置11は、装置本体12に、メンテナンス部23を備える。メンテナンス部23は、記録部21をメンテナンスするように構成される。メンテナンス部23は、記録部21に接触することによって記録部21をメンテナンスする。メンテナンス部23は、例えば、キャップ部24と、支持部25と、押付部26とを有する。
【0031】
キャップ部24は、メンテナンス部23が記録部21をメンテナンスする場合に、記録部21に接触する。詳述すると、キャップ部24は、ノズル22を覆うように記録部21に+B方向となる下方から接触する。キャップ部24が記録部21に接触することによって、ノズル22の目詰まりが抑制される。これにより、メンテナンス部23は、記録部21をメンテナンスする。
【0032】
メンテナンス部23は、例えば、キャップ部24が記録部21に接触する状態で記録部21に負圧を作用させることによって、ノズル22から液体を強制的に排出させてもよい。この場合、固化した液体、気泡などが記録部21から排出される。
【0033】
支持部25は、キャップ部24を支持する。押付部26は、キャップ部24と支持部25とに取り付けられる。キャップ部24が記録部21に接触する場合に、押付部26は、キャップ部24を記録部21に押し付ける。これにより、キャップ部24が記録部21に密着する。したがって、メンテナンス部23によるメンテナンス効果が向上する。押付部26は、例えば、ばねである。
【0034】
図2から
図4に示すように、メンテナンス部23は、A方向に沿って複数の位置に移動するように構成される。メンテナンス部23は、移動部MPの一例である。A方向は、メンテナンス部23が移動する移動方向MDの一例である。メンテナンス部23は、待機位置Q1と接触位置Q2とに移動するように構成される。
図2に示すメンテナンス部23の位置が待機位置Q1である。
図3及び
図4に示すメンテナンス部23の位置が接触位置Q2である。
【0035】
待機位置Q1は、メンテナンス部23が待機する位置である。メンテナンス部23は、記録部21をメンテナンスしない場合、例えば記録部21が記録している場合に、待機位置Q1に位置する。待機位置Q1は、接触位置Q2よりも-A方向となる下方の位置である。
【0036】
接触位置Q2は、メンテナンス部23が記録部21に接触する位置である。すなわち、接触位置Q2は、メンテナンス部23が記録部21をメンテナンスする位置である。接触位置Q2に位置するメンテナンス部23は、メンテナンス位置P2に位置する記録部21に接触する。接触位置Q2は、待機位置Q1よりも+A方向となる上方の位置である。接触位置Q2は、B方向において、記録部21と搬送ベルト16との間となる位置である。
【0037】
メンテナンス部23が記録部21をメンテナンスする場合、まず、記録部21が記録位置P1から退避位置P3に変位する。記録部21が記録位置P1から退避位置P3に変位する間、メンテナンス部23は、待機位置Q1から接触位置Q2に変位する。メンテナンス部23が接触位置Q2に変位した後、記録部21は、退避位置P3からメンテナンス位置P2に変位する。これにより、記録部21とメンテナンス部23とが接触する。本実施形態では、記録部21が媒体Mに画像を記録しない場合、記録部21とメンテナンス部23とが接触する状態で待機する。
【0038】
記録部21が媒体Mに画像を記録する場合、まず、記録部21がメンテナンス位置P2から退避位置P3に変位する。記録部21がメンテナンス位置P2から退避位置P3に変位する間、メンテナンス部23は、接触位置Q2から待機位置Q1に変位する。メンテナンス部23が待機位置Q1に変位した後、記録部21は、退避位置P3から記録位置P1に変位する。
【0039】
記録装置11は、装置本体12に、第1移動ユニット31Aと、第2移動ユニット31Bと、を備える。第1移動ユニット31Aは、メンテナンス部23をA方向に移動させる駆動機構である。第2移動ユニット31Bは、メンテナンス部23が移動するA方向と交差するB方向に記録部21を移動させる駆動機構である。まず、第1移動ユニット31Aについて説明する。
【0040】
第1移動ユニット31Aは、第1ラック32Aと、第1駆動歯車33Aと、第1回転軸34Aと、第1駆動源35Aと、第1ウォームギヤ37Aと、第1操作部80Aと、第1被検出部76Aと、第1検出部77Aと、を有する。第1ラック32A、第1駆動歯車33A、第1回転軸34A、および第1ウォームギヤ37Aは、第1駆動源35Aの駆動力をメンテナンス部23に伝達する伝達経路TR1である。換言すると、第1移動ユニット31Aは、第1駆動源35Aの駆動力をメンテナンス部23に伝達する伝達経路TR1を有する。
【0041】
第1ラック32Aは、直線的に延びる。第1ラック32Aは、一方向に延びる。具体的には、第1ラック32Aは、A方向に延びる。
【0042】
第1駆動歯車33Aは、第1ラック32Aと噛み合う。第1ラック32Aと第1駆動歯車33Aとは、ラックアンドピニオンを構成する。
【0043】
第1回転軸34Aには、第1駆動歯車33Aが取り付けられる。第1回転軸34Aは、第1駆動歯車33Aを支持する。本実施形態では、第1回転軸34Aは、第1駆動歯車33Aと一体的に回転する。
【0044】
本実施形態では、第1駆動源35Aは、前フレーム12Aに配置される。第1駆動源35Aは、駆動することによって、第1駆動歯車33Aを回転させる。第1駆動源35Aは、例えば、モーターである。第1駆動源35Aは、第1出力軸36Aを有する。第1駆動源35Aが駆動すると、第1出力軸36Aが回転する。第1出力軸36Aは、間接的に第1回転軸34Aと接続される。そのため、第1出力軸36Aが回転すると、第1駆動歯車33Aが回転する。
【0045】
本実施形態では、第1移動ユニット31Aのうち、第1ラック32Aがメンテナンス部23に取り付けられる。具体的には、第1ラック32Aは、支持部25に取り付けられる。第1駆動歯車33Aと第1回転軸34Aと第1駆動源35Aとは、装置本体12に取り付けられる。そのため、本実施形態では、第1駆動歯車33Aが回転することによって、第1ラック32Aとともにメンテナンス部23が移動する。
【0046】
第1移動ユニット31Aは、第1ラック32Aの延びる方向にメンテナンス部23を移動させる。すなわち、第1移動ユニット31Aは、+A方向および-A方向を含むA方向にメンテナンス部23を移動させる。これにより、第1移動ユニット31Aは、メンテナンス部23を待機位置Q1と接触位置Q2とに移動させる。
【0047】
待機位置Q1と接触位置Q2とは、+A方向にこの順で並ぶ。第1移動ユニット31Aは、メンテナンス部23を待機位置Q1から+A方向に移動させることによって、接触位置Q2に変位させる。第1移動ユニット31Aは、メンテナンス部23を接触位置Q2から-A方向に移動させることによって、待機位置Q1に変位させる。
【0048】
第1回転軸34AはX軸方向に延びる。第1出力軸36AはA方向に延びる。A方向は第1出力軸36Aの軸方向ADの一例である。第1回転軸34Aと第1出力軸36Aとは、直交するように延びる。換言すると、第1駆動源35Aは、第1出力軸36Aが第1回転軸34Aに対して直交するように位置する。第1移動ユニット31Aにおいては、第1出力軸36Aと第1回転軸34Aとの間で、軸方向が変換される。
【0049】
通常、第1駆動源35Aの寸法は、第1出力軸36Aが延びる方向に大きい。そのため、第1回転軸34Aと第1出力軸36Aとが平行である場合、第1回転軸34Aが延びる方向に記録装置11が大型化する虞がある。この点、本実施形態では、第1回転軸34Aと第1出力軸36Aとが直交するように延びることによって、第1回転軸34Aの延びる方向に記録装置11が大型化する虞が低減される。
【0050】
第1移動ユニット31Aは、伝達経路TR1に、第1ウォームギヤ37Aを有する。第1ウォームギヤ37Aは、伝達経路TR1において、第1駆動源35Aと第1駆動歯車33Aとの間に設けられる。第1ウォームギヤ37Aは、第1出力軸36Aと第1回転軸34Aとを接続する。第1ウォームギヤ37Aによって、第1出力軸36Aと第1回転軸34Aとの間で軸方向が変換される。すなわち、第1ウォームギヤ37Aによって、第1駆動源35Aが、第1回転軸34Aと第1出力軸36Aとが交差するように、あるいは直交するように位置できる。
【0051】
第1ウォームギヤ37Aは、第1ウォーム38Aと、第1ウォームホイール39Aとを有する。第1ウォーム38Aは、第1出力軸36Aの+A方向側の端部に取り付けられる。第1ウォーム38Aは、第1出力軸36Aと一体的に回転する。第1ウォームホイール39Aは、第1ウォーム38Aと噛み合う。第1ウォームホイール39Aは、例えば、第1回転軸34Aに取り付けられる。第1ウォームホイール39Aは、第1回転軸34Aと一体的に回転する。
【0052】
第1ウォームホイール39Aは、第1回転軸34Aとは異なる軸に取り付けられてもよい。例えば、第1ウォームホイール39Aは、第1回転軸34Aに取り付けられる他の歯車と噛み合うことによって、第1駆動歯車33Aと接続されていてもよい。
【0053】
第1出力軸36Aが回転すると、第1ウォーム38Aが回転する。第1ウォーム38Aが回転すると、第1ウォームホイール39Aが回転する。第1ウォームホイール39Aが回転すると、第1駆動歯車33Aが回転する。
【0054】
第1移動ユニット31Aは、第1ウォームギヤ37Aに代えて、かさ歯車、ねじ歯車などを有してもよい。かさ歯車、ねじ歯車などによって第1出力軸36Aと第1回転軸34Aとを接続する場合においても、第1出力軸36Aと第1回転軸34Aとの間で軸方向が変換される。すなわち、この場合でも、第1駆動源35Aが、第1回転軸34Aと第1出力軸36Aとが交差するように、あるいは直交するように位置できる。
【0055】
第1ウォームギヤ37Aは、セルフロック性を有する。セルフロック性は、第1ウォーム38Aから第1ウォームホイール39Aに動力が伝達される一方で、第1ウォームホイール39Aから第1ウォーム38Aに動力が伝達されにくい特性である。これにより、第1ウォーム38Aが回転することに伴い第1ウォームホイール39Aが回転する一方、第1ウォームホイール39Aが回転しようとしても第1ウォーム38Aは回転しない。換言すると、第1ウォーム38Aは、第1出力軸36Aによって回転する一方、第1ウォームホイール39Aによっては回転しない。
【0056】
第1ウォームギヤ37Aのセルフロック性によって、第1駆動源35Aから第1駆動歯車33Aに動力が伝達される一方で、第1駆動歯車33Aから第1駆動源35Aに動力が伝達されにくい。そのため、メンテナンス部23は、外力によって移動しようとしても、第1ウォームギヤ37Aによってセルフロックされる。これにより、メンテナンス部23の位置が維持される。
【0057】
メンテナンス部23においては、メンテナンス部23を-A方向に移動させるように、重力が作用する。すなわち、重力によって、接触位置Q2から待機位置Q1に向かってメンテナンス部23が変位する虞がある。この点、本実施形態では、第1ウォームギヤ37Aによって、メンテナンス部23は、接触位置Q2から下方となる-A方向に変位しにくい。メンテナンス部23は、記録部21をメンテナンスする場合、接触位置Q2に維持される。これにより、メンテナンス部23が記録部21を良好にメンテナンスできる。また、第1ウォームギヤ37Aによって、重力に限らず、例えば、振動、衝撃などによりメンテナンス部23が変位する虞も低減される。
【0058】
第1移動ユニット31Aは、第1操作部80Aを有する。第1操作部80Aは、第1駆動源35Aが有する第1出力軸36Aの-A方向側の端部に取り付けられる。第1出力軸36Aの軸中心に、第1操作部80Aを回転させることで、第1出力軸36Aが回転する。よって、第1駆動源35Aが有する第1出力軸36Aは、第1操作部80Aを回転させることで、手動で回転可能である。第1操作部80Aは、トレイ19A、およびトレイ支持部19Bを有する載置部19より下方となる-Z方向側に位置する。
【0059】
第1移動ユニット31Aは、第1被検出部76Aを有する。第1被検出部76Aは、第1出力軸36Aの回転量を検出するロータリーエンコーダーを構成する。第1被検出部76Aは、円盤状のエンコーダー用スケールである。第1出力軸36Aが回転すると、第1被検出部76Aも回転する。よって、第1移動ユニット31Aは、第1被検出部76Aによって、第1出力軸36Aの回転量を検出可能である。
【0060】
第1移動ユニット31Aは、第1検出部77Aを有する。第1検出部77Aは、第1出力軸36Aの回転量を検出するロータリーエンコーダーを構成する。第1検出部77Aは、例えば、透過型のフォトインターラプターである。第1検出部77Aは、赤外線LED等の発光部とフォトIC等の受光部とを有する。第1検出部77Aは、軸方向ADにおいて、第1被検出部76Aが発光部と受光部との間に位置するように、前フレーム12Aに設けられる。
【0061】
次に、第2移動ユニット31Bについて説明する。第2移動ユニット31Bは、第2ラック32Bと、第2駆動歯車33Bと、第2回転軸34Bと、第2駆動源35Bと、第2ウォームギヤ37Bと、第2操作部80Bと、第2被検出部76Bと、第2検出部77Bと、を有する。第2ラック32B、第2駆動歯車33B、第2回転軸34B、および第2ウォームギヤ37Bは、第2駆動源35Bの駆動力を記録部21に伝達する伝達経路TR2である。換言すると、第2移動ユニット31Bは、第2駆動源35Bの駆動力を記録部21に伝達する伝達経路TR2を有する。
【0062】
第2ラック32Bは、直線的に延びる。第2ラック32Bは、一方向に延びる。具体的には、第2ラック32Bは、B方向に延びる。
【0063】
第2駆動歯車33Bは、第2ラック32Bと噛み合う。第2ラック32Bと第2駆動歯車33Bとは、ラックアンドピニオンを構成する。第2回転軸34Bには、第2駆動歯車33Bが取り付けられる。第2回転軸34Bは、第2駆動歯車33Bを支持する。本実施形態では、第2回転軸34Bは、第2駆動歯車33Bと一体的に回転する。第2回転軸34Bの延びる方向は、第1回転軸34Aの延びる方向と一致する。
【0064】
本実施形態では、第2駆動源35Bは、前フレーム12Aに配置される。第2駆動源35Bは、駆動することによって、第2駆動歯車33Bを回転させる。第2駆動源35Bは、例えば、モーターである。第2駆動源35Bは、第2出力軸36Bを有する。第2駆動源35Bが駆動すると、第2出力軸36Bが回転する。第2出力軸36Bは、間接的に第2回転軸34Bと接続される。そのため、第2出力軸36Bが回転すると、第2駆動歯車33Bが回転する。
【0065】
本実施形態では、第2移動ユニット31Bのうち、第2ラック32Bが記録部21に取り付けられる。第2駆動歯車33Bと第2回転軸34Bと第2駆動源35Bとは、装置本体12に取り付けられる。そのため、本実施形態では、第2駆動歯車33Bが回転することによって、第2ラック32Bとともに記録部21が移動する。
【0066】
第2移動ユニット31Bのうち、第2駆動歯車33Bと第2回転軸34Bと第2駆動源35Bとが、記録部21に取り付けられてもよい。この場合、第2ラック32Bが、装置本体12に取り付けられる。この場合、第2駆動歯車33Bが回転することによって、記録部21とともに第2駆動歯車33Bと第2回転軸34Bと第2駆動源35Bとが移動する。
【0067】
第2移動ユニット31Bは、第2ラック32Bの延びるB方向に記録部21を移動させる。すなわち、第2移動ユニット31Bは、記録部21を+B方向および-B方向を含むB方向に移動させる。これにより、第2移動ユニット31Bは、記録部21を記録位置P1とメンテナンス位置P2と退避位置P3とに移動させる。
【0068】
記録位置P1とメンテナンス位置P2と退避位置P3とは、-B方向にこの順で並ぶ。第2移動ユニット31Bは、記録部21を記録位置P1から-B方向に移動させることによって退避位置P3に変位させた後に、記録部21を退避位置P3から+B方向に移動させることによってメンテナンス位置P2に変位させる。第2移動ユニット31Bは、記録部21をメンテナンス位置P2から-B方向に移動させることによって退避位置P3に変位させた後に、記録部21を退避位置P3から+B方向に移動させることによって記録位置P1に変位させる。
【0069】
第2回転軸34BはX軸方向に延びる。第2出力軸36BはA方向に延びる。A方向は第2出力軸36Bの軸方向ADの一例である。第2回転軸34Bと第2出力軸36Bとは、直交するように延びる。換言すると、第2駆動源35Bは、第2出力軸36Bが第2回転軸34Bに対して直交するように位置する。すなわち、第2移動ユニット31Bにおいては、第2出力軸36Bと第2回転軸34Bとの間で、軸方向が変換される。
【0070】
第2駆動源35Bの寸法は、第1駆動源35Aと同様に、第2出力軸36Bが延びる方向に大きい。そのため、第2回転軸34Bと第2出力軸36Bとが平行である場合、第2回転軸34Bが延びる方向に記録装置11が大型化する虞がある。この点、第2回転軸34Bと第2出力軸36Bとが直交するように延びることによって、第2回転軸34Bの延びる方向に記録装置11が大型化する虞が低減される。第2回転軸34Bは第1回転軸34Aと平行であるため、第1回転軸34A及び第2回転軸34Bの延びる方向に記録装置11が大型化する虞が低減される。
【0071】
第2移動ユニット31Bは、伝達経路TR2に、第2ウォームギヤ37Bを有する。第2ウォームギヤ37Bは、伝達経路TR2において、第2駆動源35Bと第2駆動歯車33Bとの間に設けられる。第2ウォームギヤ37Bは、第2出力軸36Bと第2回転軸34Bとを接続する。第2ウォームギヤ37Bによって、第2出力軸36Bと第2回転軸34Bとの間で軸方向が変換される。すなわち、第2ウォームギヤ37Bによって、第2駆動源35Bが、第2回転軸34Bと第2出力軸36Bとが交差するように、あるいは直交するように位置できる。
【0072】
第2ウォームギヤ37Bは、第2ウォーム38Bと、第2ウォームホイール39Bとを有する。第2ウォーム38Bは、第2出力軸36Bの+A方向側の端部に取り付けられる。第2ウォーム38Bは、第2出力軸36Bと一体的に回転する。第2ウォームホイール39Bは、第2ウォーム38Bと噛み合う。第2ウォームホイール39Bは、例えば、第2回転軸34Bに取り付けられる。第2ウォームホイール39Bは、第2回転軸34Bと一体的に回転する。
【0073】
第2ウォームホイール39Bは、第2回転軸34Bとは異なる軸に取り付けられていてもよい。例えば、第2ウォームホイール39Bは、第2回転軸34Bに取り付けられる他の歯車と噛み合うことによって、第2駆動歯車33Bと接続されていてもよい。
【0074】
第2出力軸36Bが回転すると、第2ウォーム38Bが回転する。第2ウォーム38Bが回転すると、第2ウォームホイール39Bが回転する。第2ウォームホイール39Bが回転すると、第2駆動歯車33Bが回転する。
【0075】
第2移動ユニット31Bは、第2ウォームギヤ37Bに代えて、かさ歯車、ねじ歯車などを有してもよい。かさ歯車、ねじ歯車などによって第2出力軸36Bと第2回転軸34Bとを接続する場合においても、第2出力軸36Bと第2回転軸34Bとの間で軸方向が変換される。すなわち、この場合でも、第2駆動源35Bが、第2回転軸34Bと第2出力軸36Bとが直交するように位置できる。
【0076】
第2ウォームギヤ37Bは、第1ウォームギヤ37Aと同様に、セルフロック性を有する。すなわち、第2移動ユニット31Bにおいて、第2ウォーム38Bから第2ウォームホイール39Bに動力が伝達される一方で、第2ウォームホイール39Bから第2ウォーム38Bに動力が伝達されにくい。したがって、第2ウォーム38Bが回転することに伴い第2ウォームホイール39Bが回転する一方、第2ウォームホイール39Bが回転しようとしても第2ウォーム38Bは回転しない。換言すると、第2ウォーム38Bは、第2出力軸36Bによって回転する一方、第2ウォームホイール39Bによっては回転しない。
【0077】
第2ウォームギヤ37Bのセルフロック性によって、第2駆動源35Bから第2駆動歯車33Bに動力が伝達される一方で、第2駆動歯車33Bから第2駆動源35Bに動力が伝達されにくい。そのため、記録部21は、外力によって移動しようとしても、第2ウォームギヤ37Bによってセルフロックされる。これにより、記録部21の位置が維持される。
【0078】
記録部21は、メンテナンス部23にメンテナンスされる場合に、メンテナンス部23によって-B方向に押される。特に、メンテナンス部23は押付部26を有するため、記録部21は押付部26によって-B方向に押される。これにより、メンテナンス位置P2から退避位置P3に向かって記録部21が変位する虞がある。また、記録部21においては、記録部21を+B方向に移動させるように、重力が作用する。すなわち、重力によって、退避位置P3からメンテナンス位置P2及び記録位置P1に向かって、あるいはメンテナンス位置P2から記録位置P1に向かって記録部21が変位する虞がある。
【0079】
本実施形態では、第2ウォームギヤ37Bによって、メンテナンス部23は、メンテナンス位置P2から上方となる-B方向、およびメンテナンス位置P2から下方となる+B方向、に変位しにくい。記録部21は、メンテナンス部23にメンテナンスされる場合、メンテナンス位置P2に維持される。これにより、メンテナンス部23が記録部21を良好にメンテナンスできる。また、第2ウォームギヤ37Bによって、メンテナンス部23による押し付けや記録部21に作用する重力に限らず、例えば、振動、衝撃などにより記録部21が変位する虞も低減される。
【0080】
第2移動ユニット31Bは、第2操作部80Bを有する。第2操作部80Bは、第2駆動源35Bが有する第2出力軸36Bの-A方向側の端部に取り付けられる。第2出力軸36Bの軸中心に、第2操作部80Bを回転させることで、第2出力軸36Bが回転する。よって、第2駆動源35Bが有する第2出力軸36Bは、第2操作部80Bを回転させることで、手動で回転可能である。また、第2操作部80Bは、トレイ19A、およびトレイ支持部19Bを有する載置部19より下方となる-Z方向側に位置する。
【0081】
第2移動ユニット31Bは、第2被検出部76Bを有する。第2被検出部76Bは、第2出力軸36Bの回転量を検出可能なロータリーエンコーダーを構成する。第2被検出部76Bは、円盤状のエンコーダー用スケールである。第2出力軸36Bが回転すると、第2被検出部76Bも回転する。よって、第2移動ユニット31Bは、第2被検出部76Bによって、第2出力軸36Bの回転量を検出可能である。
【0082】
第2移動ユニット31Bは、第2検出部77Bを有する。第2検出部77Bは、第2出力軸36Bの回転量を検出可能なロータリーエンコーダーを構成する。第2検出部77Bは、例えば、透過型のフォトインターラプターである。第2検出部77Bは、赤外線LED等の発光部とフォトIC等の受光部とを有する。第2検出部77Bは、軸方向ADにおいて、第2被検出部76Bが発光部と受光部との間に位置するように、前フレーム12Aに設けられる。
【0083】
メンテナンス部23は、記録部21をメンテナンスする場合、記録部21から力を受ける。例えば、メンテナンス部23は、記録部21をメンテナンスする場合、記録部21が押し付けられることによる力を受ける。また、例えば、メンテナンス部23は、記録部21をメンテナンスする場合、重力によって記録部21の荷重を受ける。
【0084】
本実施形態では、第1ラック32Aと第2ラック32Bとは、直交するように延びる。そのため、メンテナンス部23が記録部21から受ける力は、+B方向の成分を含み、第1ラック32Aが延びる方向の成分、すなわち+A方向及び-A方向の成分を含まない。したがって、メンテナンス部23が記録部21から受ける力は、メンテナンス部23の変位に寄与しない。これにより、メンテナンス部23が接触位置Q2に維持される。
【0085】
図1に示すように、記録装置11は、装置本体12に、制御部99を備える。制御部99は、不図示のCPU(Central Processing Unit)と、メモリー(不図示)とを有する。CPUは、メモリーに記憶される各種プログラムを実行することができ、例えば、各種の判断や各種の命令等を行なうことができる。メモリーには、例えば、媒体Mを搬送するプログラム、記録部21により媒体Mに記録を行うためのプログラム等の各種プログラムが記憶されている。
【0086】
制御部99は、記録装置11の全体を制御する。例えば、制御部99は、搬送部15を制御することで、収容部13に収容される媒体Mを搬送経路14に沿って搬送する。また、例えば、制御部99は、記録部21のノズル22からインクを吐出する吐出制御を行うことで、搬送ベルト16に支持される媒体Mに画像を記録する。
【0087】
また、例えば、制御部99は、第1被検出部76A及び第1検出部77Aによって検出される第1出力軸36Aの回転量に基づいて第1駆動源35Aの駆動制御を行うことで、第1移動ユニット31Aによって、メンテナンス部23をA方向に沿う待機位置Q1、及び接触位置Q2に移動させる。また、例えば、制御部99は、第2被検出部76B及び第2検出部77Bによって検出される第2出力軸36Bの回転量に基づいて第2駆動源35Bの駆動制御を行うことで、第2移動ユニット31Bによって、記録部21をB方向に沿う記録位置P1、メンテナンス位置P2、及び退避位置P3に移動させる。
【0088】
次に、
図5から
図10を参照して、第1移動ユニット31Aと第2移動ユニット31Bとの詳細な構成について説明する。ここまでで説明したように、第1移動ユニット31Aと第2移動ユニット31Bとは、移動させる対象である移動部MPが異なるのみで、同様の構成を有する。そのため、
図5から
図10においては、第1移動ユニット31A及び第2移動ユニット31Bを区別せず、移動ユニット31と表記する。
【0089】
これに伴い、
図5から
図10においては、第1駆動源35A及び第2駆動源35Bを駆動源35、第1出力軸36A及び第2出力軸36Bを出力軸36、第1ウォームギヤ37A及び第2ウォームギヤ37Bをウォームギヤ37、第1ウォーム38A及び第2ウォーム38Bをウォーム38、第1ウォームホイール39A及び第2ウォームホイール39Bをウォームホイール39、と表記する。また、第1被検出部76A及び第2被検出部76Bを被検出部76、第1検出部77A及び第2検出部77Bを検出部77、第1操作部80A及び第2操作部80Bを操作部80、と表記する。
【0090】
なお、図示はされないが、第1ラック32A及び第2ラック32Bをラック32、第1駆動歯車33A及び第2駆動歯車33Bを駆動歯車33、第1回転軸34A及び第2回転軸34Bを回転軸34、と表記することもある。ラック32、駆動歯車33、回転軸34、およびウォームギヤ37は、駆動源35の駆動力を移動部MPに伝達する伝達経路TRである。換言すると、移動ユニット31は、駆動源35の駆動力を移動部MPに伝達する伝達経路TRを有する。また、移動ユニット31は、伝達経路TRに、ウォームギヤ37を有する。
【0091】
図5に示すように、移動ユニット31は、固定部41を有する。固定部41は、例えば、板金である。固定部41には、駆動源35が取り付けられる。駆動源35は、例えば、固定部41にねじ留めされる。固定部41には、回転軸34が取り付けられてもよい。本実施形態では、固定部41は、装置本体12の前フレーム12A(
図6参照)に固定される。
【0092】
図6に示すように、固定部41は、固定部分42と、保持部分43と、連結部分44とを有する。固定部分42は、駆動源35が固定される部分である。保持部分43は、ウォーム38を保持するための部分である。そのため、本実施形態では、駆動源35、及びウォーム38は、固定部41を介して、装置本体12の前フレーム12Aに固定される。固定部分42と保持部分43との間に、ウォーム38が位置する。保持部分43には、貫通口45が開口する。連結部分44は、固定部分42と保持部分43とに繋がる部分である。
【0093】
ウォーム38は、基端51と、先端52とを有する。基端51は、固定部分42に接触する-A方向側の端部である。先端52は、基端51とは反対の+A方向側の端部である。ウォーム38には、接続口53が開口する。接続口53は、基端51に開口する。接続口53に、出力軸36の+A方向側の端部が挿入される。ウォーム38には、挿入口54が開口する。挿入口54は、先端52に開口する。
【0094】
ウォーム38は、1以上の接触部分55を有する。接触部分55は、接続口53に位置する。接触部分55は、後述するカップリング部材61と接触する部分である。接触部分55は、例えば、窪みである。接触部分55がカップリング部材61と接触することによって、出力軸36の回転がウォーム38に伝達される。
【0095】
移動ユニット31は、カップリング部材61を有する。カップリング部材61は、出力軸36とウォーム38とを接続する部材である。カップリング部材61は、出力軸36の+A方向側の端部に取り付けられる。具体的には、カップリング部材61は、出力軸36に挿入される。カップリング部材61は、出力軸36と一体的に回転する。カップリング部材61は、出力軸36とともに接続口53に挿入される。カップリング部材61は、接続口53を通じてウォーム38内に位置する。
【0096】
図7に示すように、カップリング部材61は、1以上の噛合部分62を有する。噛合部分62は、ウォーム38に接触する部分である。噛合部分62は、例えば、突起である。本実施形態では、噛合部分62は、カップリング部材61において、出力軸36を中心に径方向に突出する部分である。
【0097】
噛合部分62は、接触部分55に接触する。詳述すると、噛合部分62は、出力軸36の回転方向において接触部分55に接触する。本実施形態では、噛合部分62は、接触部分55に嵌まる。カップリング部材61が回転することによって、ウォーム38が回転する。すなわち、ウォーム38は、噛合部分62が接触部分55に接触することによって、出力軸36の回転方向においてカップリング部材61と噛み合う。
【0098】
噛合部分62は、出力軸36の軸方向ADにおいて接触部分55に接触しない。すなわち、ウォーム38は、出力軸36の軸方向ADにおいてカップリング部材61と噛み合わない。これにより、カップリング部材61は、ウォームホイール39からウォーム38に作用する軸方向ADに沿う力、所謂スラスト力を受けない。仮に、ウォーム38に作用するスラスト力がカップリング部材61に伝達されると、カップリング部材61を通じて出力軸36にそのスラスト力が作用する。この場合、駆動源35に負荷がかかるため、駆動源35の損耗が激しくなる。
【0099】
本実施形態では、ウォーム38とカップリング部材61とが出力軸36の軸方向ADに噛み合わないことによって、ウォーム38に作用するスラスト力が出力軸36に伝達されない。本実施形態では、ウォーム38に作用するスラスト力を固定部41が受ける。例えば、基端51が固定部分42に接触することによって、ウォーム38に作用するスラスト力を固定部41が受ける。例えば、後述する保持部材71を先端52が保持部分43に押し付けることによって、ウォーム38に作用するスラスト力を固定部41が受ける。このように、本実施形態では、ウォーム38とカップリング部材61とは、ウォーム38に作用するスラスト力が出力軸36に伝達されないように構成される。
【0100】
図6に示すように、移動ユニット31は、保持部材71を有する。保持部材71は、ウォーム38を保持する部材である。保持部材71は、ウォーム38に挿入される。保持部材71は、ウォーム38を回転可能に保持する。ウォーム38は、保持部材71を軸に回転する。
【0101】
保持部材71は、挿入部分72と、取付部分73とを有する。挿入部分72は、ウォーム38に挿入される部分である。挿入部分72は、挿入口54に挿入される。取付部分73は、固定部41に取り付けられる部分である。取付部分73には、取付口74が開口する。取付口74は、ねじ46が挿入される開口である。取付口74は、貫通口45と重なる。ねじ46は、貫通口45と取付口74とに挿入される。
【0102】
保持部材71は、ねじ46と噛み合うように構成される。そのため、ねじ46を保持部材71に対して締めることによって、取付部分73とねじ46とが保持部分43を挟む。これにより、保持部材71は、固定部41に取り付けられる。
【0103】
保持部材71は、環状突起75を有する。環状突起75は、ウォーム38とねじ46との間に位置する。詳述すると、環状突起75は、保持部分43と先端52との間に位置する。本実施形態では、保持部材71が固定部41に取り付けられた場合に、固定部分42と環状突起75との間の距離は、固定部分42と先端52との間の距離よりも長い。
【0104】
そのため、基端51と固定部分42との間、及び、先端52と保持部分43との間、の少なくとも一方に、クリアランスが形成される。このクリアランスは、ウォームギヤ37の製造誤差、取付誤差などに対応するために形成される。したがって、ウォーム38は、固定部分42と環状突起75との間で変位可能である。これにより、ウォーム38とウォームホイール39とが噛み合いやすくなる。このように、ウォーム38の位置は、固定部分42と環状突起75とによって画定される。
【0105】
図5、
図6に示すように、移動ユニット31は、操作部80を有する。操作部80は、出力軸36を手動で回転可能にする。これにより、移動部MPを移動方向MDに手動で移動させることができる。操作部80は、基部81と、把持部91と、を有する。
【0106】
図8、
図9、
図10に示すように、基部81は、出力軸36の-A方向側の端部に取り付けられる。基部81は、樹脂で形成される。基部81は、第1円筒部82と、第2円筒部83と、を備える。第1円筒部82は、第1係合部87a、及び第2係合部87bが配置される円板部88から+A方向に延びる。第2円筒部83は、第1円筒部82から+A方向に延びる。第2円筒部83は、第1円筒部82より小径である。なお、第1係合部87a、及び第2係合部87bを、係合部87と称する場合がある。
【0107】
第1円筒部82は、空洞部84を有する。第2円筒部83は、保持部85を有する。保持部85は、第2円筒部83をA方向に貫通する貫通孔である。また、保持部85は、空洞部84より小径である。このため、保持部85は、空洞部84と保持部85との間に形成される第2面86に開口する。また、保持部85の内径は、出力軸36の外径より小さく設定されている。操作部80を構成する基部81は、保持部85に、出力軸36の-A方向側の端部が圧入されることで、駆動源35の出力軸36に取付けられる。
【0108】
基部81の第2円筒部83には、被検出部76が取り付けられる。被検出部76は、第1円筒部82と隣り合い、第1円筒部82の+A方向側となる位置に配置される。よって、出力軸36が回転すると、被検出部76も基部81と一体となって回転する。換言すると、被検出部76は、出力軸36の回転量を検出可能に、基部81に取り付けられる。
【0109】
第1係合部87a、及び第2係合部87bは、基部81の円板部88に配置される貫通孔である。
図10に示すように、第1係合部87a、及び第2係合部87bは、円弧形状をしている。第1係合部87aと第2係合部87bとは、基部81の回転中心に対して点対称となる位置に配置される。基部81の回転中心は、出力軸36の軸中心と同じである。
【0110】
図8、
図9、
図10に示すように、把持部91は、基部81に取り付けられる。把持部91は、樹脂で形成される。把持部91は、基部81に挿入される挿入部93を備える。挿入部93は、円柱部94と、凸部95と、を含む。円柱部94は、基部81の-A方向側に位置する把持部91の円板部98から+A方向に延びる。凸部95は、円柱部94から+A方向に延びる。凸部95は、円柱部94より小径である。
【0111】
このため、凸部95は、円柱部94の+A方向側の端面である第1面96から突出する。把持部91が基部81に取り付けられているとき、第1面96は、出力軸36の軸心と交差し、基部81の第2面86と対向する面である。凸部95の先端95tは保持部85に挿入可能である。凸部95の先端95tが保持部85に挿入され、凸部95の先端95tが出力軸36の-A方向側端面と接触することで、把持部91は、出力軸36の軸方向ADのうち出力軸36に向かう方向への移動が規制される。
【0112】
把持部91は、保持部85に、凸部95が圧入されることで、基部81に取付けられる。保持部85に凸部95が圧入され、凸部95の先端95tが出力軸36の-A方向側端面と接触するときの保持部85への凸部95の挿入量と比較して、第1面96からの凸部95の突出量は大きく設定されている。これにより、把持部91が基部81に取り付けられているとき、第1面96と第2面86との間には隙間が確保され、第1面96と第2面86とは接触しない。
【0113】
また、凸部95の外径は出力軸36の外径と同じに設定されるが、凸部95の先端95tが出力軸36の-A方向側端面と接触するときの保持部85への凸部95の挿入寸法は、保持部85への出力軸36の挿入寸法より短く設定されている。また、
図10に示すように、凸部95の外周面は、円形の外周面の一部、本実施形態では4か所を削除した形状となっている。これにより、凸部95の全周が保持部85と接触する場合と比較して、凸部95が保持部85と接触する面積が少なく設定されている。
【0114】
これらのうち少なくともいずれかの設定により、基部81を出力軸36に対して軸方向ADであるA方向に変位させるために必要な力は、把持部91を基部81に対してA方向に変位させるために必要な力よりも大きく設定されている。このため、例えば、操作者が把持部91を手動で回転させているときに、基部81を出力軸36に対してA方向に変位させる力より大きく、かつ-A方向に向かう力を把持部91に作用させるとする。この場合、把持部91が基部81から-A方向に変位し、凸部95の保持部85への圧入が解除される。そして、把持部91は基部81から外れる。このため、基部81を-A方向に変位させる力が作用せず、基部81、および基部81に取り付けられる被検出部76が出力軸36に対して変位することを抑制できる。
【0115】
なお、基部81を出力軸36に対して変位させるために必要な力を、把持部91を基部81に対して変位させるために必要な力よりも大きく設定する方法は、上述の凸部95の形状や寸法に関する設定でなくてもよい。例えば、凸部95の外径を保持部85の内径より大きく、かつ出力軸36の外径より小さく設定することで、基部81を出力軸36に対して変位させるために必要な力を、把持部91を基部81に対して変位させるために必要な力よりも大きく設定してもよい。また、例えば、把持部91および出力軸36のいずれかを形成する材料の選択により、出力軸36と保持部85との間の摺動抵抗を凸部95と保持部85との間の摺動抵抗より大きくすることで、基部81を出力軸36に対して変位させるために必要な力を、把持部91を基部81に対して変位させるために必要な力よりも大きく設定してもよい。
【0116】
把持部91は、第1被係合部97a、及び第2被係合部97bを有する。第1被係合部97a、及び第2被係合部97bは、把持部91の円板部98から+A方向に延びる突起である。把持部91が基部81に取り付けられているとき、第1被係合部97aは基部81の第1係合部87aに挿し通されて係合し、第2被係合部97bは、基部81の第2係合部87bに挿し通されて係合する。これにより、基部81及び把持部91は、一体となって回転可能になり、把持部91を手動で回転させることで、出力軸36が回転する。よって、操作部80を構成する把持部91を手動で回転させることで、移動部MPを移動方向MDに手動で移動させることができる。
図10に示すように、第1被係合部97a、及び第2被係合部97bは、円弧形状をしている。なお、第1被係合部97a、及び第2被係合部97bを、被係合部97と称する場合がある。
【0117】
以上述べたように、実施形態1に係る移動ユニット31、および記録装置11によれば、以下の効果を得ることができる。
【0118】
移動ユニット31は、媒体Mに記録を行う記録装置11において、移動部MPを移動方向MDに変位可能な移動ユニット31であって、移動部MPを変位させる駆動力を与える駆動源35と、駆動源35の出力軸36に取付けられ、出力軸36を手動で回転可能な操作部80と、を備える。そして、操作部80は、出力軸36に取付けられる基部81と、基部81に取付けられ、出力軸36と接触可能な把持部91と、を有する。そして、基部81及び把持部91は、一体となって回転することで、出力軸36を手動で回転可能である。そして、把持部91が出力軸36と接触することで、把持部91は、出力軸36の軸方向ADへの移動が規制される。これによれば、例えば操作者が把持部91を手動で回転させているときに、把持部91に軸方向ADに沿う力が作用した場合でも、把持部91は軸方向ADへの移動が規制される。よって、把持部91を回転させることによる回転力を適切に出力軸36に伝えることができる。
【0119】
基部81は、出力軸36が圧入される保持部85と、把持部91と係合する係合部87と、を有し、把持部91は、出力軸36と接触可能な凸部95と、係合部87と係合する被係合部97と、を有し、把持部91は、凸部95が出力軸36と接触することで、軸方向ADへの移動が規制される。これによれば、基部81の係合部87と把持部91の被係合部97とが係合することで、基部81と把持部91とが一体となって回転可能になる。また、保持部85に出力軸36が圧入されることで、基部81を介して出力軸36を回転させることができる。よって、簡単な構成で、把持部91の回転力を、基部81を介して出力軸36に伝えることができる。また、簡単な構成で、把持部91の軸方向ADへの移動を規制することができる。
【0120】
凸部95の先端95tは、保持部85に挿入可能である。これによれば、より確実に凸部95の先端95tと出力軸36とを接触させることができ、把持部91の軸方向ADへの移動を規制することができる。
【0121】
把持部91は、凸部95が突出する面であって、出力軸36と交差する第1面96を有し、凸部95が出力軸36と接触するときの保持部85への凸部95の挿入量と比較して、第1面96からの凸部95の突出量は大きく設定されている。これによれば、凸部95が出力軸36と接触するときに、第1面96と第2面86とは接触しないので、基部81の軸方向ADへの移動をより確実に抑制できる。
【0122】
基部81を出力軸36に対して変位させるために必要な力は、把持部91を基部81に対して変位させるために必要な力よりも大きい。これによれば、基部81が把持部91よりも出力軸36に対して移動しにくいので、把持部91が移動した場合でも、基部81が移動することを抑制できる。つまり、基部81の軸方向ADへの移動をより確実に抑制できる。
【0123】
係合部87は、第1係合部87a及び第2係合部87bを有し、被係合部97は、第1係合部87aと係合する第1被係合部97aと、第2係合部87bと係合する第2被係合部97bと、を有し、第1係合部87a及び第2係合部87bは、基部81の回転中心に対して点対称に配置されている。これによれば、係合部87が基部81の回転中心に対して点対称に配置されているため、把持部91に加えられた回転力を基部81に対して均等に伝えることができる。
【0124】
移動ユニット31は、出力軸36の回転量を検出可能な被検出部76をさらに有し、被検出部76は、基部81に設けられる。これによれば、出力軸36に対して移動しにくい基部81に被検出部76が設けられるため、被検出部76の軸方向ADへの移動を抑制できる。そして、被検出部76の軸方向ADへの移動によって、出力軸36の回転量の検出精度の低下や誤検出が発生すること、被検出部76と検出部76とが接触して被検出部76および検出部77のいずれかが故障すること、等を抑制できる。そして、出力軸36の回転量の検出精度の低下や誤検出によって、移動部MPが移動部MPの周囲に配置される部材と接触して移動部MPおよび移動部MPの周囲に配置される部材のいずれかが損傷すること等を抑制できる。
【0125】
移動ユニット31は、駆動源35の駆動力を移動部MPに伝達する伝達経路TRをさらに有し、伝達経路TRは、ウォームギヤ37を有する。これによれば、ウォームギヤ37のセルフロック性により、移動部MPの自重によって駆動源35の出力軸36が回転することを抑制できる。
【0126】
把持部91、及び基部81は、樹脂で形成される。これによれば、例えば金属材料を加工して把持部91、及び基部81を形成する場合と比較して製造コストを抑制しやすい。また、金属材料と比較して比重が小さいので慣性力を小さくでき、駆動源35の停止精度を向上させることができる。
【0127】
記録装置11は、移動ユニット31と、移動部MPと、を備え、移動部MPは、媒体Mに記録を行う記録部21である。これによれば、記録部21を変位可能な記録装置11において、手動により記録部21を容易に変位させることができる。
【0128】
記録装置11は、記録部21が設けられる装置本体12をさらに備え、装置本体12は、記録部21を視認可能な視認部VPを有し、視認部VPは、操作部80よりも上方にある。これによれば、視認部VPから記録部21を視認しながら、手動で記録部21を移動させることができる。このような場合、視認部VPが操作部80よりも上方にあると、出力軸36の軸方向ADに沿う力が操作部80に加わりやすいが、把持部91は軸方向ADへの移動が規制されるので、把持部91を回転させることによる回転力を適切に出力軸36に伝えることができる。
【0129】
移動部MPが記録部21である記録装置11において、記録部21によって記録されている媒体Mの搬送方向は、鉛直方向及び水平方向と交差し、移動方向MDは、鉛直方向及び水平方向と交差する。これによれば、媒体Mの搬送方向が斜めに配置され、記録部21の移動方向MDも斜めであることから、記録装置11の水平方向の大きさを小型化しやすい。
【0130】
移動部MPが記録部21である記録装置11において、軸方向ADは、鉛直方向及び水平方向と交差する。これによれば、軸方向ADが斜めに配置されるため、水平方向において駆動源35の占有領域を小さくしやすい。このような場合、軸方向ADに沿う力が操作部80に加わりやすいが、把持部91は軸方向ADへの移動が規制されるので、把持部91を回転させることによる回転力を適切に出力軸36に伝えることができる。
【0131】
記録装置11は、移動ユニット31と、媒体Mに記録を行う記録部21と、移動部MPと、を備え、移動部MPは、記録部21のメンテナンスを行うメンテナンス部23である。これによれば、メンテナンス部23を変位可能な記録装置11において、手動によりメンテナンス部23を容易に変位させることができる。
【0132】
移動部MPがメンテナンス部23である記録装置11において、記録部21によって記録されている媒体Mの搬送方向は、鉛直方向及び水平方向と交差し、移動方向MDは、鉛直方向及び水平方向と交差する。これによれば、媒体Mの搬送方向が斜めに配置され、メンテナンス部23の移動方向MDも斜めであることから、記録装置11の水平方向の大きさを小型化しやすい。
【0133】
移動部MPがメンテナンス部23である記録装置11において、軸方向ADは、鉛直方向及び水平方向と交差する。これによれば、軸方向ADが斜めに配置されるため、水平方向において駆動源35の占有領域を小さくしやすい。このような場合、軸方向ADに沿う力が操作部80に加わりやすいが、把持部91は軸方向ADへの移動が規制されるので、把持部91を回転させることによる回転力を適切に出力軸36に伝えることができる。
【0134】
本開示の上記実施形態に係る移動ユニット31、および記録装置11は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。また、上記実施形態および以下に説明する他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。以下、他の実施形態について説明する。
【0135】
上記実施形態において、操作者は、トレイ支持部19Bの開口を介して、記録部21を視認しなくてもよい。例えば、トレイ19Aを透明あるいは半透明の部材で構成し、操作者は、トレイ支持部19Bに支持されるトレイ19Aを通して、記録部21を視認してもよい。この場合、トレイ19Aは、視認部VPの一例である。また、例えば、記録装置11は、記録装置11の側面、例えば前面に、記録部21とメンテナンス部23を視認可能な視認窓を備えてもよい。この場合、視認窓は視認部VPの一例である。
【0136】
上記実施形態において、把持部91は第1被係合部97a及び第2被係合部97bのうちいずれか一方を備えなくてもよい。例えば、把持部91が第1被係合部97aのみを備える場合、基部81は、第1被係合部97aと係合する第1係合部87aのみを備えてもよいし、第1被係合部97aと係合する第1係合部87a及び第2係合部87bを備えてもよい。
【0137】
上記実施形態において、基部81は3つ以上の係合部87を備え、把持部91は係合部87と係合する同じ数の被係合部97を備えてもよい。この場合、3つ以上の係合部87、及び3つ以上の被係合部97は、基部81の回転中心から等距離でかつ等角度間隔に配置されてもよい。
【0138】
上記実施形態において、係合部87が配置される基部81の円板部88の外径は、操作者が把持する把持部91の円板部98の外径と同じでなくてもよい。例えば、基部81の円板部88の外径は、把持部91の円板部98の外径より小さく設定されてもよい。あるいは、基部81が係合部87を備えることができれば、基部81は円板部88を備えなくてもよい。
【0139】
上記実施形態において、把持部91、及び基部81は、樹脂で形成されなくてもよい。例えば、把持部91、及び基部81は、金属材料で形成されてもよい。また、例えば、把持部91が樹脂で形成され、基部81が金属材料で形成されてもよい。
【0140】
上記実施形態において、被検出部76は、基部81に取り付けられなくてもよい。例えば、被検出部76は、出力軸36において、基部81の+A方向側となる位置に取り付けられてもよい。
【0141】
上記実施形態において、移動ユニット31の駆動源35、ウォーム38、及び検出部77は、装置本体12の前フレーム12Aに取り付けられなくてもよい。例えば、移動ユニット31の駆動源35、ウォーム38、及び検出部77は、装置本体12の後フレーム12Bに取り付けられてもよい。また、例えば、第1移動ユニット31Aの第1駆動源35A、第1ウォーム38A、及び第1検出部77Aは、装置本体12の前フレーム12Aに取り付けられ、第2移動ユニット31Bの第2駆動源35B、第2ウォーム38B、及び第2検出部77Bは、装置本体12の後フレーム12Bに固定されてもよい。
【0142】
上記実施形態において、移動ユニット31は、出力軸36の軸方向ADがA方向に沿うように配置されなくてもよい。例えば、移動ユニット31は、出力軸36の軸方向ADが水平方向であるY軸方向に沿うように配置されてもよい。また、例えば、移動ユニット31は、出力軸36の軸方向ADが鉛直方向であるZ軸方向に沿うように配置されてもよい。この場合、移動ユニット31は、駆動源35に対して操作部80が-Z方向側に位置するように配置されてもよい。また、例えば、
図11に示すように、第1移動ユニット31Aの第1出力軸36Aの軸方向ADと、第2移動ユニット31Bの第2出力軸36Bの軸方向ADと、が異なるように、移動ユニット31が配置されてもよい。この場合、第1移動ユニット31Aは、第1出力軸36Aの軸方向ADがA方向に沿うように配置され、第2移動ユニット31Bは、第2出力軸36Bの軸方向ADがB方向に沿うように配置される。
【0143】
上記実施形態において、
図12に示すように、メンテナンス部23は、支持部25にワイパー27を有してもよい。ワイパー27は、記録部21のノズル22が開口するノズル面をワイピング可能に、支持部25に配置される。この場合、第1移動ユニット31Aによって、メンテナンス部23の支持部25が移動方向MDであるA方向に移動されることで、ワイパー27が記録部21のノズル面に接触した状態でA方向に移動し、ワイピングが実行される。この場合、メンテナンス部23は、支持部25に、キャップ部24、及び押付部26を備えなくてもよいし、キャップ部24、及び押付部26を備えてもよい。
【0144】
上記実施形態において、
図13に示すように、メンテナンス部23は、支持部25にワイパー27を有してもよい。ワイパー27は、記録部21のノズル22が開口するノズル面をワイピング可能に、支持部25に配置される。例えば、第1移動ユニット31Aにおける第1駆動源35Aの第1出力軸36Aには、第1ウォーム38Aに代えて、X軸方向に間隔を置いて配置される一対のプーリー78のうちの一方が取り付けられる。また、支持部25は、一対のプーリー78に巻き掛けられる無端状のベルト79に取り付けられる。そして、第1駆動源35Aを駆動することで第1出力軸36A、および第1出力軸36Aに取り付けられるプーリー78が回転すると、ベルト79が回転し、支持部25がX軸方向に沿って移動する。これにより、ワイパー27が記録部21のノズル面に接触した状態でX軸方向に移動し、ワイピングが実行される。この場合、X軸方向は、メンテナンス部23の移動方向MDの一例である。また、この場合、メンテナンス部23の移動方向MDは、A方向に沿う第1出力軸36Aの軸方向ADと交差する。
【0145】
上記実施形態において、記録装置11は、3つ以上の移動ユニット31を備えてもよい。例えば、記録装置11は、キャップ部24を移動方向MDに移動可能な第1移動ユニット31A、及び記録部21を移動方向MDに移動可能な第2移動ユニット31Bに加え、記録部21のノズル22が開口するノズル面をワイピング可能な
図12、
図13に示すワイパー27をノズル面に沿う移動方向MDに移動可能な移動ユニット31を別個に備えてもよい。
【0146】
上記実施形態において、記録部21は、A方向に沿う搬送ベルト16に支持される媒体Mに画像を記録しなくてもよい。例えば、記録部21は、Y軸方向に沿う搬送ベルト16に支持される媒体Mに画像を記録してもよい。そして、第2移動ユニット31Bは、記録部21をZ軸方向に沿う移動方向MDに移動させることで、Z軸方向に沿って配置される記録位置P1、メンテナンス位置P2、及び退避位置P3に移動させてもよい。この場合、第2移動ユニット31Bは、第2出力軸36Bの軸方向ADがA方向に沿うように装置本体12に配置されてもよいし、軸方向ADがZ軸方向に沿うように装置本体12に配置されてもよいし、軸方向ADがY軸方向に沿うように装置本体12に配置されてもよい。
【0147】
また、このとき、第1移動ユニット31Aは、メンテナンス部23をY軸方向に沿う移動方向MDに移動させることで、記録部21に接触可能な接触位置Q2と、接触位置Q2からY軸方向に離れた待機位置Q1と、に移動させてもよい。また、この場合、第1移動ユニット31Aは、第1出力軸36Aの軸方向ADがA方向に沿うように装置本体12に配置されてもよいし、軸方向ADがZ軸方向に沿うように装置本体12に配置されてもよいし、軸方向ADがY軸方向に沿うように装置本体12に配置されてもよい。
【0148】
また、例えば、記録部21は、Z軸方向に沿う搬送ベルト16に支持される媒体Mに画像を記録してもよい。そして、第2移動ユニット31Bは、記録部21をY軸方向に沿う移動方向MDに移動させることで、Y軸方向に沿って配置される記録位置P1、メンテナンス位置P2、及び退避位置P3に移動させてもよい。この場合、第2移動ユニット31Bは、第2出力軸36Bの軸方向ADがA方向に沿うように装置本体12に配置されてもよいし、軸方向ADがZ軸方向に沿うように装置本体12に配置されてもよいし、軸方向ADがY軸方向に沿うように装置本体12に配置されてもよい。
【0149】
また、このとき、第1移動ユニット31Aは、メンテナンス部23をZ軸方向に沿う移動方向MDに移動させることで、記録部21に接触可能な接触位置Q2と、接触位置Q2から-Z方向に離れた待機位置Q1と、に移動させてもよい。また、この場合、第1移動ユニット31Aは、第1出力軸36Aの軸方向ADがA方向に沿うように装置本体12に配置されてもよいし、軸方向ADがZ軸方向に沿うように装置本体12に配置されてもよいし、軸方向ADがY軸方向に沿うように装置本体12に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0150】
11…記録装置、12…装置本体、12A…前フレーム、12B…後フレーム、13…収容部、14…搬送経路、15…搬送部、16…搬送ベルト、17…第1プーリー、18…第2プーリー、19…載置部、19A…トレイ、19B…トレイ支持部、21…記録部、22…ノズル、23…メンテナンス部、24…キャップ部、25…支持部、26…押付部、27…ワイパー、31…移動ユニット、31A…第1移動ユニット、31B…第2移動ユニット、32…ラック、32A…第1ラック、32B…第2ラック、33…駆動歯車、33A…第1駆動歯車、33B…第2駆動歯車、34…回転軸、34A…第1回転軸、34B…第2回転軸、35…駆動源、35A…第1駆動源、35B…第2駆動源、36…出力軸、36A…第1出力軸、36B…第2出力軸、37…ウォームギヤ、37A…第1ウォームギヤ、37B…第2ウォームギヤ、38…ウォーム、38A…第1ウォーム、38B…第2ウォーム、39…ウォームホイール、39A…第1ウォームホイール、39B…第2ウォームホイール、41…固定部、42…固定部分、43…保持部分、44…連結部分、45…貫通口、46…ねじ、51…基端、52…先端、53…接続口、54…挿入口、55…接触部分、61…カップリング部材、62…噛合部分、71…保持部材、72…挿入部分、73…取付部分、74…取付口、75…環状突起、76…被検出部、76A…第1被検出部、76B…第2被検出部、77…検出部、77A…第1検出部、77B…第2検出部、78…プーリー、79…ベルト、80…操作部、80A…第1操作部、80B…第2操作部、81…基部、82…第1円筒部、83…第2円筒部、84…空洞部、85…保持部、86…第2面、87…係合部、87a…第1係合部、87b…第2係合部、88…円板部、91…把持部、93…挿入部、94…円柱部、95…凸部、95t…先端、96…第1面、97…被係合部、97a…第1被係合部、97b…第2被係合部、98…円板部、99…制御部、P1…記録位置、P2…メンテナンス位置、P3…退避位置、Q1…待機位置、Q2…接触位置、AD…軸方向、MD…移動方向、MP…移動部、TR,TR1,TR2…伝達経路。