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特開2024-16417ヒアルロン酸合成促進用医薬組成物、及びザクロ種子エキスを含有するヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016417
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸合成促進用医薬組成物、及びザクロ種子エキスを含有するヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20240131BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A61K36/185
A61P17/00
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118522
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】397021235
【氏名又は名称】株式会社サニープレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】向井 信人
(72)【発明者】
【氏名】西本 壮吾
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB12
4C088AC04
4C088BA08
4C088BA10
4C088CA07
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、廃棄されるザクロ種子の有効活用及び付加価値化をめざしてヒアルロン酸合成を促進する作用を有する組成物を提供することにある。
【解決手段】
本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物は、ザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記医薬組成物は、ヒアルロン酸合成酵素の発現増加によりヒアルロン酸合成を促進する医薬組成物であり、前記ヒアルロン酸合成酵素は、HAS-1、HAS-2又はHAS3であることを特徴とする。また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の好ましい実施態様において、さらに、前記医薬組成物は、角化膜形成関連遺伝子を増加することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ザクロ種子エキスを含有することを特徴とするヒアルロン酸合成促進用医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物は、ヒアルロン酸合成酵素の発現増加によりヒアルロン酸合成を促進する医薬組成物であり、前記ヒアルロン酸合成酵素は、HAS-1、HAS-2又はHAS3であることを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
さらに、前記医薬組成物は、角化膜形成関連遺伝子を増加することを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記角化膜形成関連遺伝子は、h-LOR遺伝子、又はh-INV遺伝子であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物を有効成分とすることを特徴とする医薬部外品。
【請求項6】
ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を溶媒中に浸漬した後、上清を分取する工程と、前記上清を分取することによりザクロ種子エキスを得る工程と、得られたザクロ種子エキスを有効的な量に調整する工程と、を有することを特徴とするザクロ種子エキスを含有するヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の製造方法。
【請求項7】
溶媒が、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、エタノール、メタノール、ヘキサン、水からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
エタノールで抽出したザクロ種子エタノールエキスを、さらに、酢酸エチルと水で分配して、前記酢酸エチル層を減圧濃縮して、酢酸エチル画分としてザクロ種子エキスを得ることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
さらに、前記酢酸エチル画分を、ヘキサンとメタノールで分配して、酢酸エチル-ヘキサン画分及び酢酸エチル-メタノール画分として、ザクロ種子エキスを得る請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸合成促進用医薬組成物、及びヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の製造方法に関し、特に、ザクロ種子エキスを含有するヒアルロン酸合成促進用医薬組成物、及びヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ザクロは果実全体に対して種子がかなりの割合を占める果実であるが、原則として、搾汁後に残る種子は廃棄されている。ザクロ種子を利用した少ない例として、ザクロ種子エキスを用いたサプリメント提案システムであって、提案サプリメント演算手段が、希望事項情報が美容の場合には、提案サプリメントとして、マルチビタミン、マルチミネラル、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンP、ナイアシン、ビオチン、コラーゲン、エラスチン、ポリフェノール、パントテン酸、ヒアルロン酸、アセチルグルコサミン、イノシトール、コエンザイムQ10、αカロチン、βカロチン、大豆サポニン、ロイヤルゼリー、ツイントース、葉酸、バラ花弁エキス、ザクロ種子エキス、ブラックコホッシュエキス、大豆イソフラボン、葛イソフラボンスクワレン、ビール酵母、コロハエキス、カルシウム、マグネシウム、銅、鉄、亜鉛、マンガン、とから成る群の少なくとも1つを出力するサプリメント提案システムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-232989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現在のところ多くの場合、ザクロ種子は原則として、廃棄物として処理されており、前記特許文献以外は、有効に利用されていないのが現状である。一方で、廃棄物の有効利用が見直されている。
【0005】
また、近年、アトピー性皮膚炎(AD)が、角化関連遺伝子であるフィラグリン(FLG)の機能欠失変異によって生じることが判明し、皮膚バリア機能の重要性が注目されている。かかる状況下、廃棄物たるザクロ種子が種々の疾患に対して効果的であれば、より有益となる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、廃棄されるザクロ種子の有効活用及び付加価値化をめざしてヒアルロン酸合成を促進する作用を有する組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ザクロ種子の有効活用について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0008】
すなわち、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物は、ザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記医薬組成物は、ヒアルロン酸合成酵素の発現増加によりヒアルロン酸合成を促進する医薬組成物であり、前記ヒアルロン酸合成酵素は、HAS-1、HAS-2又はHAS3であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の好ましい実施態様において、さらに、前記医薬組成物は、角化膜形成関連遺伝子を増加することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記角化膜形成関連遺伝子は、h-LOR遺伝子、又はh-INV遺伝子であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の医薬部外品は、本発明の医薬組成物を有効成分とすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の製造方法は、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を溶媒中に浸漬した後、上清を分取する工程と、前記上清を分取することによりザクロ種子エキスを得る工程と、得られたザクロ種子エキスを有効的な量に調整する工程と、を有することを特徴とするザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の製造方法の好ましい実施態様において、溶媒が、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、エタノール、メタノール、ヘキサン、水からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の製造方法の好ましい実施態様において、エタノールで抽出したザクロ種子エタノールエキスを、さらに、酢酸エチルと水で分配して、前記酢酸エチル層を減圧濃縮して、酢酸エチル画分としてザクロ種子エキスを得ることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の製造方法の好ましい実施態様において、さらに、前記酢酸エチル画分を、ヘキサンとメタノールで分配して、酢酸エチル-ヘキサン画分及び酢酸エチル-メタノール画分として、ザクロ種子エキスを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物によれば、従来廃棄物として処理されていたザクロ種子を有効利用することが可能であるという有利な効果を奏する。また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物によれば、ヒアルロン酸合成を促進する作用を有し、保湿機能の改善に有効であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、PSE添加時の遺伝子発現比(HAS遺伝子、48時間培養)を示す。n=3、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図2図2は、PSE添加時の遺伝子発現比(CE遺伝子、48時間培養)を示す。n=3、平均値±標準誤差
図3図3は、PSE添加時の遺伝子発現比(HAS遺伝子、96時間培養)を示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図4図4は、PSE添加時の遺伝子発現比(CE遺伝子、96時間培養)を示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図5図5は、PSE-W添加時の遺伝子発現比(HAS遺伝子、48時間培養)を示す。n=3、平均値±標準誤差
図6図6は、PSE-W添加時の遺伝子発現比(CE遺伝子、48時間培養)を示す。n=3、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図7図7は、PSE-W添加時の遺伝子発現比(HAS遺伝子、96時間培養)を示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図8図8は、PSE-W添加時の遺伝子発現比(CE遺伝子、96時間培養)を示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図9図9は、PSE-EA-H添加時の遺伝子発現比(HAS遺伝子、48時間培養)を示す。n=3、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図10図10は、PSE-EA-H添加時の遺伝子発現比(CE遺伝子、48時間培養)を示す。n=3、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図11図11は、PSE-EA-H添加時の遺伝子発現比(HAS遺伝子、96時間培養)を示す。n=3-4、平均値±標準誤差
図12図12は、PSE-EA-H添加時の遺伝子発現比(CE遺伝子、96時間培養)を示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図13図13は、PSE-EA-Me添加時の遺伝子発現比(HAS遺伝子、48時間培養)を示す。n=3、平均値±標準誤差
図14図14は、PSE-EA-Me添加時の遺伝子発現比(CE遺伝子、48時間培養)を示す。n=3、平均値±標準誤差
図15図15は、PSE-EA-Me添加時の遺伝子発現比(HAS遺伝子、96時間培養)を示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図16図16は、PSE-EA-Me添加時の遺伝子発現比(CE遺伝子、96時間培養)を示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図17図17は、リアルタイムPCRの結果(PSE、48時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図18図18は、リアルタイムPCRの結果(PSE、96時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図19図19は、リアルタイムPCRの結果(PSE-W、48時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図20図20は、リアルタイムPCRの結果(PSE-W、96時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図21図21は、リアルタイムPCRの結果(PSE-EA-H、48時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図22図22は、リアルタイムPCRの結果(PSE-EA-H、96時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図23図23は、リアルタイムPCRの結果(PSE-EA-Me、48時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図24図24は、リアルタイムPCRの結果(PSE-EA-Me、96時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図25図25は、リアルタイムPCRの結果(F1、48時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図26図26は、リアルタイムPCRの結果(F1、96時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図27図27は、リアルタイムPCRの結果(F2、48時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図28図28は、リアルタイムPCRの結果(F2、96時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図29図29は、リアルタイムPCRの結果(F3、48時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図30図30は、リアルタイムPCRの結果(F3、96時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図31図31は、リアルタイムPCRの結果(F4、48時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図32図32は、リアルタイムPCRの結果(F4、96時間培養)を示す。(a)は、h-LORの場合、(b)は、h-INVの場合、(c)は、HAS-2の場合を、それぞれ示す。n=3-4、平均値±標準誤差、*p<0.05 vs Control
図33図33は、画分調製のフローチャートと収率を示す。F1~F4は、収量の多いPSE-EA-Hを分配して得られたものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物は、ザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。ザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来のエキスである。本発明に適用するザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来である限り、総てのザクロ種子エキスを対象とする。
【0020】
また、対象となる細胞としては、特に限定されないが、特に有効に作用するのは、皮膚の細胞である。したがって、本明細書において主として角化細胞を含め皮膚の細胞について説明するが、本発明は、これに限定される意図ではない。
【0021】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記医薬組成物は、ヒアルロン酸合成酵素の発現増加によりヒアルロン酸合成を促進する医薬組成物であり、前記ヒアルロン酸合成酵素は、皮膚等の細胞の水分保湿機能を向上させるという観点から、HAS-1、HAS-2又はHASー3であることを特徴とする。すなわち、皮膚は生体を外界から保護する働きや水分損失防止機能を担っており、皮膚を正常な状態を保つことは非常に重要であり、皮膚のバリア機能および水分保湿機能に関与する主要な調整剤として、角化膜(CE)やヒアルロン酸(HA)が挙げられるが、今回本発明により、ヒアルロン酸の合成を促進することが可能であることが判明したものである。
【0022】
なお、HAS-1、HAS-2又はHAS-3は、ヒアルロン酸合成酵素の略号(HASは、Hyaluronic Acid Synthaseの略。)を意味し、また、HAS-1遺伝子、HAS-2遺伝子又はHAS-3遺伝子は、当該ヒアルロン酸合成酵素を発現する遺伝子を意味する。
【0023】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の好ましい実施態様において、さらに、前記医薬組成物は、ザクロ種子エキスには角化膜形成を促進する作用も有するという観点から、角化膜形成関連遺伝子を増加することを特徴とする。すなわち、今回本発明により、角化膜形成関連遺伝子を増加することにより、ひいては、角化膜形成を促進することが可能であることが判明したものである。
【0024】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記角化膜形成関連遺伝子は、角化膜を構成するタンパク質であるロリクリンおよびインボルクリンを増加するという観点から、h-LOR遺伝子、又はh-INV遺伝子であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の好ましい実施態様において、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする。例えば、振とう抽出させることができる。振とう抽出において、例えば、約4℃等の低温室にてローテーターにセットして回転させながら抽出することができる。また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記溶媒は、エタノール抽出物に高い活性が認められるという観点から、エタノールであることを特徴とする。
【0026】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の製造方法の好ましい実施態様において、食品への応用・適用を想定する観点から、エタノールで抽出したザクロ種子エタノールエキスを、さらに、酢酸エチルと水で分配して、前記酢酸エチル層を減圧濃縮して、酢酸エチル画分としてザクロ種子エキスを得ることを特徴とする。
【0027】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の製造方法の好ましい実施態様において、活性成分を同定するという観点から、さらに、前記酢酸エチル画分を、ヘキサンとメタノールで分配して、酢酸エチル-ヘキサン画分及び酢酸エチル-メタノール画分として、ザクロ種子エキスを得ることを特徴とする。
【0028】
なお、酢酸エチル-ヘキサン画分(PSE-EA-H)、及び酢酸エチル-メタノール画分(PSE-EA-Me)とは、以下の通りである。すなわち、エタノールで抽出したザクロ種子エタノール抽出物(PSE)を、分液漏斗を用いて酢酸エチルと水で分配し、酢酸エチル層の溶媒をエバポレーターにより減圧濃縮し、酢酸エチル画分(PSE-EA)として、水層は溶媒を凍結乾燥し、水画分(PSE-W)とした場合、PSE-EA をヘキサンとメタノールで分配後、溶媒をそれぞれエバポレーターで減圧濃縮し、得られた画分を、酢酸エチル-ヘキサン画分(PSE-EA-H)及び酢酸エチル-メタノール画分(PSE-EA-Me)とすることができる。
【0029】
また、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物の製造方法は、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を溶媒中に浸漬した後、上清を分取する工程と、前記上清を分取することによりザクロ種子エキスを得る工程と、得られたザクロ種子エキスを有効的な量に調整する工程と、を有することを特徴とするザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。
【0030】
ここで、まず、ザクロ種子エキスの調製方法について説明する。まず、ザクロ種子を準備する。ザクロ種子は、必要に応じて洗浄し、乾燥する。乾燥は十分に行なうのが好ましい。後の粉砕を均質に行なうためである。
【0031】
次に、ザクロ種子を粉砕する。粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル、ロッドミル、サンプルミル、スタンプミル、ディスインテグレーター、乳鉢、冷却装置付きブレンダーなどの公知の粉砕機を用いることができる。なお、粉砕時における発熱により、ザクロ種子組成物の分解等が発生することも考えられることより、粉砕時間を数秒とし、十数回繰り返すことができる。
【0032】
次いで、ザクロ種子を粉砕し粉砕物を得た後、各種溶媒に前記粉砕物を浸漬する。この場合の溶媒は、特に限定されず、所望とする効果に対応して適宜溶媒を設定することができる。また、本発明のザクロ種子エキスの製造方法の好ましい実施態様において、溶媒が、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、エタノール、メタノール、ヘキサン、水からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。溶媒としては、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、エタノール、メタノール、水、へキサン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトンなどの極性、非極性溶媒を問わず挙げることができる。好ましくは、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、メタノール、エタノール、水等を挙げることができる。
【0033】
浸漬は、緩やかな攪拌下で行なうことができる。各種溶媒に前記粉砕物を浸漬して各種溶液を得る。各種溶液について、溶液の状態に応じて攪拌を行い、場合によりそのまま溶液を放置しても良い。攪拌する場合には、特に限定されないが、10時間~48時間、好ましくは、およそ1日(24時間)攪拌を持続させることができる。
【0034】
その後、上清を分取することによりザクロ種子エキスを得ることができる。必要に応じて、上清を蒸発乾固する。蒸発乾固は、エバポレーターを用いて、20℃~60℃、好ましくは、37℃~40℃の温浴上で行なうことができる。蒸発乾固することにより、ザクロ種子エキスを長期間保存することができる。
【0035】
ザクロ種子中に含まれる成分は、ザクロ種子を極性の異なる溶媒を用いて抽出することにより、その物性により振り分けられる。したがって、使用した溶媒により、ザクロ種子エキスの成分の種類及び含有量は異なる。
【0036】
また、本発明の医薬部外品は、本発明の組成物を有効成分とすることを特徴とする。本発明に適用可能な医薬部外品については、本発明のヒアルロン酸合成促進用医薬組成物を有効成分とする限り、特に限定されない。
【0037】
<有効量>
本発明による組成物は、有効的な量のザクロ種子エキス、及び適当な投与形態の形で調製される。
【0038】
本発明の組成物におけるザクロ種子エキスの投与量は、投与対象患者の病態及びその重篤度、投薬形態、選択した投与経路及び1日当たりの投与回数等により変更することができる。
【0039】
本発明の組成物におけるザクロ種子エキスの投与量は、マウスで実施する時、1000 mg/kg/day投与量に設定することができ、ヒトにおいては感受性の相違等により、更に低い量であることが好ましい。
【0040】
また、投与形態は、経口剤(タブレット、カプセル、被膜タブレット、顆粒、溶液、シロップ)、塗布のための軟膏やクリームなどを挙げることができる。投与対象患者は、皮膚の水分補給及びバリア機能という観点から、女性、男性、大人、子供等を問わず、対象とすることが可能である。
【0041】
投与形態には、従来の他の成分、例えば、安定保存剤、甘味料、着色剤、芳香料などを含むことができる。
【0042】
<急性毒性試験>
ザクロ種子エキスの含有成分については、リノレン酸も含まれる成分であるため毒性は認められないと考えられている。
【0043】
なお、略号については、以下の通りである。
・BMP:Bone Morphogenetic Proteins
・CE:Cornified Envelope
・CSF:Colony-stimulating factors
・COL:Collagen
・COL1A1:Type I collagen α1 chain
・DEPC:Diethylpyrocarbonate
・DMSO:Dimethyl Sulfoxide
・ECM:Extracellular Matrix
・EGF:Epidermal Growth Factor
・ELN:Elastin
・FBS:Fetal Bovine Serum
・F1:PSE-Ethyl Acetate-Hexane-Fraction 1 画分
・F2:PSE-Ethyl Acetate-Hexane-Fraction 2 画分
・F3:PSE-Ethyl Acetate-Hexane-Fraction 3 画分
・F4:PSE-Ethyl Acetate-Hexane-Fraction 4 画分
・HA:Hyaluronic Acid
・HABP:Hyaluronic Acid Binding Protein
・HAS:Hyaluronic Acid Synthase
・HIF-1α:Hypoxia-inducible factor-1α
・HYAL:Hyaluronidase
・IL:Interleukins
・INV:Involcrin
・KGF:Keratinocyte Growth Factor
・LOR:Loricrin
・MAPK:Mitogen-activated protein kinase
・miRNA:micro RNA
・MMP:Matrix metalloproteinase
・NF-κB:Nuclear factor-kappa B
・NMF:Natural moisturizing factor
・Nrf-2:Nuclear factor erythroid 2-related factor 2
・PBS:Phosphate Buffered Saline
・PC:Positive Control
・PSE:Punica gtanatum Seed Ethanol extract(ザクロ種子エタノール抽出物)
・PSE-Bu-Me:PSE-Butanol-Methanol 画分
・PSE-EA:PSE-Ethyl Acetate 画分
・PSE-EA-H:PSE-Ethyl Acetate-Hexane 画分
・PSE-EA-Me:PSE-Ethyl Acetate-Methanol 画分
・PSE-W:PSE-Water 画分
・ROS:Reactive oxygen species
・RT-PCR:Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction
・SASP:Senescence-associated secretory phenotype
・TGF-β:Transforming Growth Factor-1
・TIMP:TISSUE INHIBITORS OF MMPS
・TGM:Transglutaminase
・TNF-α:Tumor Necrosis Factor-α
・UV:Ultraviolet
・VC:Vitamin C
【実施例0044】
以下では本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0045】
実施例1
まず、溶媒として、エタノールを用いて、ザクロ種子エキスの調製を試みた。ザクロ種子を粉砕し、100%エタノールで振とう抽出した。これらを濃縮乾固して再溶解し、ザクロ種子エタノール抽出物として実験に供した。さらに、エタノールで抽出したザクロ種子エタノール抽出物(以下、PSEともいう。)を、分液漏斗を用いて酢酸エチルと水で分配し、酢酸エチル層の溶媒をエバポレーターにより減圧濃縮し、酢酸エチル画分(PSE-EA)として、水層は溶媒を凍結乾燥し、水画分(PSE-W)とした場合、PSE-EA をヘキサンとメタノールで分配後、溶媒をそれぞれエバポレーターで減圧濃縮し、得られた画分を、酢酸エチル-ヘキサン画分(以下、PSE-EA-Hともいう。)及び酢酸エチル-メタノール画分(以下、PSE-EA-Meともいう。)とした。具体的には、以下の通りである。
【0046】
<PSE(Punica granatum Seed Ethanol extract)の調製方法>
乾燥ザクロ種子をミルサーで粉末化し、10 倍量 100% エタノール(和光純薬工業株式会社製)を加え、4℃、24 時間で低温振盪抽出を行った。24 時間後、室温、3,000 rpm で 20 分間遠心分離を行い、上清を回収した。上清を減圧濃縮して得られた濃縮物をザクロ種子エタノール抽出物(PSE : Punica granatum Seed Ethanol extract)とした。
【0047】
<酢酸エチル-ヘキサン画分(PSE-EA-H)及び酢酸エチル-メタノール画分(PSE-EA-Me)の調整方法>
PSE 2.00gを、分液漏斗を用いて酢酸エチル(100ml×3)とMiliQ 水(100 ml)で分配し、酢酸エチル層の溶媒をエバポレーターにより減圧濃縮し、酢酸エチル画分(PSE-EA)とした。水層は溶媒を凍結乾燥し、水画分(PSE-W)とした。さらにPSE-EAをヘキサン(100ml×3)とメタノール(100ml)で分配後、溶媒をそれぞれエバポレーターで減圧濃縮し、酢酸エチル-ヘキサン画分(PSE-EA-H)と酢酸エチル-メタノール画分(PSE-EA-Me)を得た。収量の多いPSE-EA-Hをヘキサン(100ml)、ヘキサンと酢酸エチルの混合物(ヘキサン:酢酸エチル=9:1の場合(ヘキサン90mL、酢酸エチル10mL)、ヘキサン:酢酸エチル=8:2の場合(ヘキサン80mL、酢酸エチル20mL)、ヘキサン:酢酸エチル=6:4の場合(ヘキサン40mL、酢酸エチル60mL))、酢酸エチル(100ml)、メタノール(100ml)の順でカラム(30φ×300mm)に流し、分配した。下記の式より、画分の収率を算出し、画分調製のフローチャートを図33に示した。
【0048】
収率(%)=(画分の質量(g)/ PSEの質量(g))×100
【0049】
調製した抽出物は実験に使用するまで-20℃で冷凍保存した。
【0050】
次に、ヒアルロン酸(HA)の合成及び角化膜(CE)の形成に関して、作用メカニズムを解明するために反定量的RT-PCR法を用いて評価し、RT-PCRにて発現増加が確認された遺伝子については定量的リアルタイムPCRにて評価を行った。具体的には、CE 形成に関与する遺伝子としてLOR、INV、TGM-1の発現を評価し、PSE およびその画分の添加における皮膚の水分保湿機能の評価を行うため、HAに着目し、 HAを合成するHAS-1、HAS-2、HAS-3の遺伝子発現の評価を行った。
【0051】
<細胞の培養方法>
<試薬>
・D-MEM(High Glucose)with L-Glutamine, Phenol Red, and Sodium Pyruvate: 富士フイルム 和光純薬株式会社
・Penicillin-Streptomycin Solution(×100):和光純薬工業株式会社
・Phosphate Buffered Saline(PBS)
・Fetal Bovine Serum(FBS):シグマ・アルドリッチ・ジャパン合同会社
・0.25%(w/v)Trypsin/EDTA with Phenol Red:和光純薬工業株式会社
・0.4 w/v% Trypan Blue Solution:和光純薬工業株式会社
・Dimethyl Sulfoxide(DMSO):和光純薬工業株式会社
・1 mg/ml Insulin:Sigma-Aldrich
・4 mg/ml Transferrin:Sigma-Aldrich
・4 mM Ethanol Amine:和光純薬工業株式会社
・5 μM Sodium Selenite:和光純薬工業株式会社
【0052】
<試薬調製>
・1 mg/ml Insulin
Insulinを100 mg秤量し、50mlのPBSに溶解した。この時、結晶を溶解するために濃塩酸を50μl添加した。0.22μmのフィルターでろ過滅菌し、1mlごとに分注し、冷凍保存したものを溶解し使用した。
【0053】
・4 mg/ml Transferrin
Apo-transferrin humanを100mg秤量し、25mlの PBSで溶解した。0.22μmのフィルターでろ過滅菌し、1mlごとに分注し、冷凍保存したものを溶解し使用した。
【0054】
・4 mg/ml Ethanol Amine
2-Aminoethaolを蒸留水で250倍希釈し、さらに25倍希釈した。0.22μmのフィ ルターでろ過滅菌し、1mlごとに分注し、冷凍保存したものを溶解し使用した。
【0055】
・5μM Sodium Selenite
Sodium Seleniteを43.2mg秤量し、5mlの蒸留水で溶解し、50mM水溶液を調製した。その後、50mM水溶液を10,000倍希釈し、さらに100倍希釈した。その後0.22μmのフィルターでろ過滅菌し、1 mlごとに分注し、冷凍保存したものを溶解し使用した。
【0056】
・2×ITES/D-MEM(2% FBS)
D-MEM培地(1%量のPenicillin-Streptomycin Solution 添加済)18.8mlにFBSを 400μl、1mg/ml Insulin(I)、4mg/ml Transferrin(T)、4mg/ml Ethanol Amine(E)、5μM Sodium Selenite(S)をそれぞれ200μl添加し、転倒混和により軽く攪拌した。
【0057】
<培養条件>
HaCaT細胞は1%量のPenicillin-Streptomycin Solutionを添加したD-MEMに10%量のFBSを添加した培養培地を用いて、37℃、5% CO2濃度条件下で培養を行った。
【0058】
<細胞の継代方法>
10cmの培養ディッシュに80~90%サブコンフルエント状態に増殖した細胞にPBS を添加・除去し、細胞を洗浄した。その後、0.25%(w/v)Trypsin/EDTAを添加し、37℃、5% CO2濃度条件のもと、5分間インキュベートした。FBSでTrypsin 反応を停 止させ、D-MEMを添加した後、ピペッティングにより単細胞浮遊液とし、15 ml遠心 管に回収した。1500rpmで5分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿物にD-MEM を添加し、ピペッティングによる懸濁の後、10% FBS存在下で細胞播種を行った。
【0059】
<培養方法>
10cmの培養ディッシュに80~90%サブコンフルエント状態に増殖した細胞にPBS を添加・除去し、細胞を洗浄した。その後、0.25%(w/v)Trypsin/EDTAを添加し、37℃、5% CO2濃度条件のもと、5分間インキュベートした。FBSでTrypsin反応を停 止させ、D-MEMを添加した後、ピペッティングにより単細胞浮遊液とし、15 ml遠心 管に回収した。1,500rpmで5分間遠心分離を行い、上清を除去した。最終細胞密度が3.0×10cells/mlになるようにD-MEM(10%FBS)を添加し、ピペッティングにより懸濁した。6 well-plateに細胞懸濁液を1 mlずつ播種し、37℃、5% CO濃度条件下で24時間前培養を行った。
【0060】
PSEおよびその画分はDMSOで溶解し、最終濃度の2倍濃度になるようにD-MEMにて希釈を行った。サンプルの濃度範囲は第2章の結果より、細胞毒性が確認されなか った濃度範囲とした。前培養を行った後、PBSにて洗浄を行い、2×ITES/D-MEM(2% FBS)と各サンプルを1ml/well添加し48時間および96時間培養を行った。96時間 培養のプレートは48時間培養後に培地交換を行った。Controlとして終濃度1% DMSO を加えたD-MEMを添加した。
【0061】
<RT-PCR法>
PCR法はDNA配列上の特定の領域(目的のDNA領域)を1対のプライマーと耐熱性 DNAポリメラーゼを用いて増幅させる方法である。PCR法では「1.熱変性→2.アニ ーリング→3.伸長反応」という3段階の温度変化による反応を繰り返すことによって、理論的にはDNA量を指数関数的に増幅させることが出来る。PCR法を用いることで、微量のDNAから特定のDNA領域のみを迅速かつ簡便に増幅させることができる。 RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)した後に、PCR法によりDNAを増幅させる操作である。
【0062】
<試薬>
・ISOGENII:ニッポンジーン
・DEPC water
・2-Propanol:和光純薬工業株式会社
・75% Ethanol:関東化学株式会社
・ReverTra Ace:東洋紡株式会社
・25 mM Oligo dT primer:東洋紡株式会社
・Taq DNA polymerase:東洋紡株式会社
・KOD-plus-Ver.2:東洋紡株式会社
・Dimethyl Sulfoxide(DMSO):和光純薬株式会社
・MilliQ
・Agarose Basic:タカラバイオ株式会社
・エチジウムブロマイド溶液:ナカライテスク株式会社
・Gene Ladder 100(0.1-2 kbp):ニッポンジーン
・Boric Acid:和光純薬工業株式会社
・bromophenol blue:ナカライテスク株式会社
・キシレンシアノール:ナカライテスク株式会社
・Tris(hydroxymethyl)aminomethane:和光純薬工業株式会社
・Glycerol:和光純薬工業株式会社
【0063】
<試薬調製>
・5×TBE buffer
Tris 27g、Boric Acid 13.75g、および 0.5M EDTA(pH8.0)10mlに蒸留水加え、全量を500mlとした。実験使用時は蒸留水にて1×TBEに希釈し利用した。
【0064】
・TE buffer
MillQ 49.4 mlに対して0.5M EDTA(pH8.0)100μlおよび1M Tris-HCl 500μlを添加し混合した。
【0065】
・6×Loading Dye
bromophenol blue 15mg、キシレンシアノール 15mg、0.5M EDTA(pH8.0)1.2 ml、およびGlycerol 1.8mlに蒸留水を加え、全量を10mlとし、混合した。混合したものを1mlずつ分注し、-20℃で冷凍保存したものを溶解し利用した。
【0066】
<primer>
・GAPDH:ファスマック株式会社
・Loricrin:ファスマック株式会社
・Involcrin:ファスマック株式会社
・Transglutaminase-1:ファスマック株式会社
・Hyaluronic Acid Synthase-1:ファスマック株式会社
・Hyaluronic Acid Synthase-2:ファスマック株式会社
・Hyaluronic Acid Synthase-3:ファスマック株式会社
【0067】
表1にprimer の塩基配列(RT-PCR)を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
<機器>
・Nano Drop 2000:Thermo
・Thermal Cycler(My Cycler):Bio Rad
・Thermal Cycler(Mini Amp Plus):Thermo
・Mupid-2 plus:タカラバイオ株式会社
・AE-6933FXCF:ATTO 株式会社
【0070】
<方法>
<Total RNA の抽出>
48時間及び96時間培養後、PBSを添加・除去し細胞を洗浄した。ISOGENIIを700μl/well添加した後、ピペッティングにより懸濁し1.5 mlチューブに回収した。DEPC waterを300μl加え、ボルテックスミキサーを用いて15秒間激しく攪拌した。室温15分間静置後、12,000×g、15分間遠心分離を行い、上清から500μlを新たな 1.5mlチューブに回収した。そこに同量(500μl)の2-Propanolと20 mgグリコーゲン溶液1μl加え転倒混和した。室温10分間静置後、12,000×g、15分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿物に75% Ethanol 300μl/tubeを加え、転倒混和により洗浄した後、8,000×g、3分間遠心分離を行い、上清を除去した。この操作を2 回繰り返し、上清をできる限り除去した後、チューブ内の液体を揮発させるためにチューブ状にサランラップ(登録商標)をかけて20-30分間静置した。チューブを氷上へ移し、20 μl/tubeのDEPC waterを加え、ピペッティングにより沈殿物を溶解したものを Total RNA溶液とした。Nano Drop 2000を用いてTotal RNA溶液の濃度および純度を測定した。
【0071】
<cDNAの合成>
0.2ml PCRチューブに各サンプルのTotal RNA 4μgと表2に示した溶液を加え、 液量全体が20μlになるように、DEPC waterを加え、Thermal Cyclerを用いて表3 の反応条件で逆転写反応を行った。表2は、逆転写反応液調製条件を示し、表3は、逆転写反応条件を示す。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
<PCR反応による目的遺伝子の増幅>
TE bufferで5倍希釈した各サンプルのcDNA溶液を使用した。Primerは、TE bufferで20 pmol/mlに調製し使用した。0.2ml PCRチューブに反応溶液全量が25μlになるように、下記の表4に従いそれぞれの反応液を混合した。それらをThermal Cyclerを用いて、表5の反応条件でPCR反応を行った。Internal ControlとしてGAPDHを用いて補正を行った。表4は、各遺伝子のPCR反応液条件を示す。また、表5は、各遺伝子のPCR反応条件を示す。
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
<電気泳動>
Agarose Basic「TaKaRa」2gに1×TBE bufferを加え、電子レンジで加熱し溶解した。アガロース溶液をゲルメーカーに流し込み、室温で15分以上静置し2%アガロースゲルを作成した。各PCR産物:6×Loading Dye=5:1で混合し、ゲルのウェルにサンプルおよび Gene Ladderをアプライした。100V、30-40分間電気泳動を行い、ゲルをエチジウムブロマイドで染色した。染色したゲルはゲル撮影装置にて増幅産物を確認した。得られた増幅バンドの強度は画像解析ソフト(CS Analyzer 4)を用いて数値化した。Controlとサンプル添加群間との統計学的有意差は Dunnett’s Testにより検定し、*p<0.05として表した。
【0078】
<リアルタイム PCR>
<試薬>
・ISOGENII:ニッポンジーン
・DEPC water
・2-Propanol:和光純薬工業株式会社
・75% Ethanol:関東化学株式会社
・ReverTra Ace:東洋紡株式会社
・25 mM Oligo dT primer:東洋紡株式会社
・THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix:東洋紡株式会社
・MilliQ
【0079】
<primer>
・β-actin:ファスマック株式会社
・Loricrin:ファスマック株式会社
・Involcrin:ファスマック株式会社
・Hyaluronic Acid Synthase-2:ファスマック株式会社
【0080】
表6に、primer の塩基配列(リアルタイム PCR)を示す。
【0081】
【表6】
【0082】
<機器>
・Nano Drop 2000:Thermo
・CFX96TM Real-Time System:Bio Rad
【0083】
<方法>
<Total RNAの抽出>
48時間及び96時間培養後、PBSを添加・除去し細胞を洗浄した。ISOGENIIを700 μl/well添加した後、ピペッティングにより懸濁し 1.5mlチューブに回収した。DEPC water を300μl加え、ボルテックスミキサーを用いて15秒間激しく攪拌し た。室温15分間静置後、12,000×g、15分間遠心分離を行い、上清から500μlを 新たな1.5mlチューブに回収した。そこに同量(500μl)の2-Propanolと20mgグリコーゲン溶液1μl加え転倒混和した。室温10分間静置後、12,000×g、15分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿物に75% Ethanol 300μl/tubeを加え、転倒混和により洗浄した後、8,000×g、3分間遠心分離を行い、上清を除去した。こ の操作を2回繰り返し、上清をできる限り除去した後、チューブ内の液体を揮発さ せるためにチューブ状にサランラップ(登録商標)をかけて20-30分間静置した。チューブを氷 上へ移し、20μl/tubeのDEPC waterを加え、ピペッティングにより沈殿物を溶解 したものをTotal RNA溶液とした。Nano Drop 2000を用いてTotal RNA溶液の濃度および純度を測定した。
【0084】
<cDNAの合成>
0.2ml PCRチューブに各サンプルのTotal RNA 4μgと表1に示した溶液を加え、液量全体が20μlになるようにDEPC waterを加え、Thermal Cyclerを用いて表2 の反応条件で逆転写反応を行った。
【0085】
<PCR反応による目的遺伝子の増幅>
TE bufferで5倍希釈した各サンプルのcDNA溶液を使用した。Primerは、TE bufferで20pmol/mlに調製し使用した。0.2ml PCRチューブに反応溶液全量が20μlになるように、下記の表7に従いそれぞれの反応液を混合した。それらを CFX96TM Real-Time Systemにセットし、表8の反応条件でPCR反応を行った。表7は、リアルタイムPCRの反応液条件を示す。また、表8は、リアルタイムPCRの反応条件を示す。
【0086】
【表7】
【0087】
【表8】
【0088】
Internal Controlとしてβ-actinを用いて補正を行った。リアルタイムPCRで測定した値はΔΔCt法およびPfaffl法にて算出した。Controlとサンプル添加群間との統計学的有意差はDunnett’s Testにより検定し、*p<0.05として表した。
【0089】
・ΔΔCt 法=2^(Ct目的遺伝子-CtHK遺伝子) HK:ハウスキーピング
・Pfaffl 法=E目的遺伝子^(CtControl-CtSample)/EHK遺伝子^(CtControl-CtSample) E:1+(増幅 効率/100)
【0090】
<結果>
PSEおよびその分画であるPSE-W、PSE-EA-H、PSE-EA-MeをHaCaT細胞添加した後、48時間および96時間培養し、RT-PCRを行った結果を図1図16に示した。RT-PCRにてPSEおよびその分画であるPSE-W、PSE-EA-H、PSE-EA-Meの添加培養により増加が確認された HAS-2、h-LOR、h-INV 遺伝子に関してはリアルタイム PCR を行い、RT-PCR 同様 48 時間および 96 時間培養後、測定を行った。PSEおよび その分画であるPSE-W、PSE-EA-H、PSE-EA-MeのリアルタイムPCRの結果を図17図24に示した。PSEの添加培養により48時間でHAS-2遺伝子の顕著な発現増加が確認された。また、96 時間培養にてCE形成に関与するh-LORおよびh-INVの遺伝子発現の増加が見られた(図17図18)。HAS-2は皮膚の水分保湿に関与するヒアルロン酸を合成する酵素であり、PSEはCEの形成を促進し皮膚のバリア機能を改善するだけでなく、ヒアルロン酸合成に寄与し、皮膚の水分保湿効果を改善する 可能性が示唆された(図17図18)。PSE-W、PSE-EA-H、PSE-EA-Meの添加培養により48時間でHAS-2遺伝子の増加が認められた(図19図21図23)ことから、PSEには皮膚の水分保湿に寄与する成分が複数含まれていることが考えられる。また、96時間でh-LORおよび h-INVの遺伝子発現増加が促進された(図20図22図24)。今回、PSE-W、PSE-EA-MeにおいてもCE形成関連遺伝子の増加が確認されたことから、PSE-EA-Hは翻訳の過程およびTGM-1の活性に関与し、CEの形成を促進している可能性が示された。
【0091】
PSE-EA-Hをさらに分画し、F1~F4の4検体に分配した後、PSE同様リアルタイムPCRを行った。なお、PSE-EA-Hをさらに分画し、F1~F4が得られたとは、F1はヘキサンと酢酸エチルの8:2の混合物、F2はヘキサンと酢酸エチルの6:4の混合物、F3は酢酸エチル 100%、F4はメタノール100%でカラムを流した後、得られたものという意味である。その結果を図25図32 に示した。F1~F4画分すべての検体で 48時間及び96時間培養でHAS-2遺伝子の増加が認められた(図25図32)。F1 画分において96時間培養でh-LOR遺伝子の有意な発現増加が見られた(図26)。さらに、F1~F3画分において96時間培養でh-INV遺伝子の有意な増加が認められた(図26図28図30)ことから、PSE-EA-HにおけるCE形成促進能はF1~F3画分に含まれる成分に起因していることが示された。また、ヒアルロン酸合成酵素が3種類存在しており、そのうちのHAS-2がもっとも皮膚のヒアルロン酸合成の活性化に寄与していることが判明した。ヒアルロン酸合成の活性の強さに限っては、HAS-2>HAS-3>HAS-1となることが判明し、HAS-1は主に胚発生(発生初期:胎児期)に関与しており、表皮細胞においての発現は低くてもとりわけ問題ではない。
【0092】
また、本研究の結果から、HAS関連遺伝子は48時間培養で、CE形成関連遺伝子は96時間培養で比較的顕著な増加が確認された。つまり、培養時間により調節される遺伝子が異なり、HAS関連遺伝子はCE形成関連遺伝子より早い段階で調節されている可能性が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によると、医療業界の分野への貢献はもとより、廃棄物の有効利用等、社会的貢献度が高く、広範囲において利用価値が高い。
図1
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