(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016418
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】液冷式スクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/16 20060101AFI20240131BHJP
F04C 29/04 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F04C18/16 Q
F04C29/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118523
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】森田 謙次
(72)【発明者】
【氏名】頼金 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】梶江 雄太
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AB02
3H129BB12
3H129BB31
3H129CC03
3H129CC06
3H129CC09
3H129CC23
3H129CC37
(57)【要約】
【課題】加工性及びメンテナンス性に優れ、作動空間内の気体に対する冷却性能の向上が可能な液冷式スクリュー圧縮機を提供する。
【解決手段】気体を吸い込んで圧縮気体を生成する液冷式スクリュー圧縮機100は、スクリューロータ2,3と、スクリューロータ2,3を格納してスクリューロータ2,3とともに作動空間Cを形成するケーシング1と、ケーシング1とは別部材であるカートリッジ6と、を備え、ケーシング1とカートリッジ6の外表面とによって、作動空間Cに液体を供給する給液経路7が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を吸い込んで圧縮気体を生成する液冷式スクリュー圧縮機であって、
スクリューロータと、
前記スクリューロータを格納して前記スクリューロータとともに作動空間を形成するケーシングと、
前記ケーシングとは別部材であるカートリッジと、を備え、
前記ケーシングと前記カートリッジの外表面とによって、前記作動空間に液体を供給する給液経路が形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の液冷式スクリュー圧縮機において、
前記ケーシングは、前記スクリューロータを格納する格納室と、前記ケーシングの外部から液体が導入される導入路と、前記格納室と前記導入路とを連通する連通路と、を有し、
前記カートリッジが前記連通路に配置されることにより、前記カートリッジの先端部と前記連通路の内面とによって少なくとも1対の噴射流路が形成され、
前記少なくとも1対の噴射流路から噴射された液体同士が、前記作動空間内で衝突する
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項2に記載の液冷式スクリュー圧縮機において、
前記カートリッジは、互いに対向する1対の幅広面部を有し、
前記カートリッジの先端部は、1対のテーパ面部を有する先細り形状に形成され、
前記ケーシングの前記連通路は、前記カートリッジの前記1対のテーパ面部に対向する1対の傾斜面部を有し、
前記1対の給液経路は、
前記カートリッジの前記1対の幅広面部と前記連通路の内面とによって形成され、前記導入路から供給される液体を貯留する1対の給液貯留空間と、
前記カートリッジの前記1対のテーパ面部と前記連通路の前記1対の傾斜面部とによって形成され、前記給液貯留空間内の液体を前記作動空間内に噴射する1対以上の前記噴射流路と、を有し、
前記1対の給液貯留空間の流路断面積は、前記1対以上の噴射流路の流路断面積よりも大きい
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項3に記載の液冷式スクリュー圧縮機において、
前記カートリッジが前記連通路に配置されることにより、前記1対のテーパ面部と前記1対の傾斜面部とによって、前記噴射流路が1対のみ形成され、
前記噴射流路は、液膜を噴射する液膜噴射流路であり、
前記1対の液膜噴射流路から噴射された液膜同士が、前記作動空間内で衝突する
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項5】
請求項3に記載の液冷式スクリュー圧縮機において、
前記カートリッジが前記連通路に配置されることにより、前記1対のテーパ面部と前記1対の傾斜面部とによって、複数対の前記噴射流路が形成され、
前記噴射流路は、噴流を噴射する噴流噴射流路であり、
前記複数対の噴流噴射流路から噴射された噴流同士が、前記作動空間内で衝突する
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項6】
請求項5に記載の液冷式スクリュー圧縮機において、
前記1対のテーパ面部のそれぞれに、前記幅広面部から前記先端部の先端に亘って直線状に延在する複数の溝が形成され、
前記複数の溝と前記傾斜面部とによって前記複数対の噴流噴射流路が形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項7】
請求項2に記載の液冷式スクリュー圧縮機において、
前記連通路と前記格納室とは、前記スクリューロータの軸方向に沿う長孔によって繋がれ、
1対以上の前記噴射流路のそれぞれには、前記カートリッジの先端部と前記長孔とによって、前記作動空間に臨む噴射開口部が形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項8】
請求項2に記載の液冷式スクリュー圧縮機において、
前記噴射流路は、互いに対になる前記噴射流路のそれぞれから噴射される液体の噴射方向同士のなす角度が30度以上となるように形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項9】
請求項6に記載の液冷式スクリュー圧縮機において、
前記複数の溝は、前記スクリューロータの軸方向に直交する方向に沿って形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項10】
請求項6に記載の液冷式スクリュー圧縮機において、
前記複数の溝は、前記スクリューロータの軸方向及び前記軸方向に直交する方向のそれぞれに対して傾斜する方向に沿って形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項11】
請求項6に記載の液冷式スクリュー圧縮機において、
前記カートリッジの前記先端部の先端には、前記スクリューロータの軸方向に延在する溝が形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項12】
請求項3に記載の液冷式スクリュー圧縮機において、
前記1対の給液経路は、前記カートリッジを挟んで対称形状に形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項13】
請求項3に記載の液冷式スクリュー圧縮機において、
前記導入路の流路断面形状は円形状であり、
前記カートリッジには、前記導入路に配置される円形状の貫通孔が形成され、
前記貫通孔の開口面積は、前記導入路の流路断面積以上である
液冷式スクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液冷式スクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリューロータと、スクリューロータを格納してスクリューロータとともに作動空間を形成するケーシングと、を備え、作動空間内に液体を供給することにより、作動空間内の気体を冷却する液冷式スクリュー圧縮機が知られている。なお、作動空間内に供給される液体は、冷却の他、スクリューロータとケーシングとの間に生じる内部隙間の封止、及び摺動部の潤滑にも利用される。
【0003】
特許文献1では、圧縮機の性能向上を目的として、作動空間へ供給する液体同士を衝突させることで、液体を微粒化する技術が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の圧縮機では、ケーシングに給油ノズル挿入孔が設けられ、内部に複数の衝突噴流用の給油経路を有する給油ノズルが給油ノズル挿入孔に挿入されている。給油経路は、主給油経路と、主給油経路から分岐しハの字に配列された小径の副給油経路から構成されている。特許文献1に記載の圧縮機では、給油ノズルの脱着が可能であるため、衝突噴流用の給油経路をケーシングに直接加工する場合に比べて、メンテナンス性がよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、より多くの液体を作動空間内に供給して冷却効率を向上するために、複数の給油経路が形成された給油ノズルが開示されている(特許文献1の
図9参照)。しかしながら、この給油ノズルでは、主給油経路とハの字に配列された副給油経路から構成される給油経路を、給油ノズルの内部に複数形成する必要があるため、加工に手間がかかり、加工費のコストアップの懸念が生じる。
【0007】
本発明は、加工性及びメンテナンス性に優れ、作動空間内の気体に対する冷却性能の向上が可能な液冷式スクリュー圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による液冷式スクリュー圧縮機は、気体を吸い込んで圧縮気体を生成する液冷式スクリュー圧縮機であって、スクリューロータと、前記スクリューロータを格納して前記スクリューロータとともに作動空間を形成するケーシングと、前記ケーシングとは別部材であるカートリッジと、を備え、前記ケーシングと前記カートリッジの外表面とによって、前記作動空間に液体を供給する給液経路が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工性及びメンテナンス性に優れ、作動空間内の気体に対する冷却性能の向上が可能な液冷式スクリュー圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る液冷式スクリュー圧縮機の平面断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るカートリッジの斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るカートリッジにより形成された噴射流路から噴射される液体の数値解析結果を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の比較例に係る液冷式スクリュー圧縮機の平面断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係るカートリッジの斜視図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るカートリッジにより形成された噴射流路から噴射される液体の数値解析結果を示す図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係るカートリッジの斜視図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係るカートリッジにより形成された噴射流路から噴射される液体の数値解析結果を示す図である。
【
図13】
図13は、第4実施形態に係るカートリッジの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1~
図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る液冷式スクリュー圧縮機(以下、圧縮機とも記す)100について説明する。
図1は、圧縮機100の平面断面図である。
図2は、
図1のII-II線断面図である。
図1及び
図2に示すように、圧縮機100は、互いに噛み合って回転する1対のスクリューロータとしての駆動ロータ2及び従動ロータ3と、駆動ロータ2及び従動ロータ3を回転可能に内部に格納するケーシング1と、を備えている。圧縮機100は、スクリューロータ2,3を回転させることにより、空気(気体)を吸い込んで圧縮空気(圧縮気体)を生成する。
【0013】
駆動ロータ(雄ロータ)2には、螺旋状の雄歯が複数形成されている。従動ロータ(雌ロータ)3には、螺旋状の雌歯が複数形成されている。ケーシング1には、互いに噛み合った状態の駆動ロータ2及び従動ロータ3を格納する格納室としてのボア8と、空気を吸い込む吸込口と、圧縮空気を吐出する吐出口と、が形成されている。1対のスクリューロータ2,3とボア8の内壁面とによって、空気を圧縮するための複数の作動空間(作動室)Cが形成される。
【0014】
駆動ロータ2には電動機等の原動機が接続される。原動機によって駆動ロータ2が回転運動を始めると、駆動ロータ2に噛み合っている従動ロータ3も回転運動を始める。これにより、吸込口から作動空間C内へ空気が吸い込まれる。作動空間Cは、スクリューロータ2,3の回転とともに、吸込口側から吐出口側に移動し、移動とともにその容積が縮小する。作動空間Cの容積の縮小により、空気は圧縮されながら吐出口側に移動し、吐出口から圧縮機100の外部に吐出される。
【0015】
液冷式スクリュー圧縮機100では、圧縮空気の生成により発生する熱による空気の温度上昇を抑えるために、作動空間Cに冷却用の液体(例えば、油あるいは水)が注入される。作動空間Cに注入される冷却用の液体は、作動空間C内の空気の冷却だけでなく、スクリューロータ2,3とボア8の内壁面との隙間及び駆動ロータ2と従動ロータ3の噛み合い部の隙間等の封止、並びにスクリューロータ2,3の摺動部の潤滑にも利用される。
【0016】
図2に示すように、圧縮機100には、作動空間Cに液体を供給する給液経路7が形成されている。なお、給液経路7は、駆動ロータ2側及び従動ロータ3側のそれぞれに設けられるが、その構成は、双方で同じであるため、以下では、一方を代表して説明する。
【0017】
ケーシング1は、ケーシング1の外部から液体が導入される導入路9と、格納室8と導入路9とを連通する連通路10と、連通路10と格納室8とを繋ぐ長孔5と、を有する。
図1及び
図2に示すように、長孔5は、スクリューロータ2,3の回転軸方向(以下、単に軸方向とも記す)に沿って延在する開口部である。別の言い方をすれば、長孔5は、連通路10と格納室8との境界に位置する開口面であり、スクリューロータ2,3の軸方向を長手方向、軸方向に直交する方向(水平方向)を短手方向とする長方形状に形成されている。本実施形態に係る長孔5は、互いに対向する1対の長辺と、1対の長辺同士を両端部で接続する1対の半円弧と、を有する。長孔5は、ボア8のうち駆動ロータ2を格納する雄側ボアと、ボア8のうち従動ロータ3を格納する雌側ボアのそれぞれに形成されている。
【0018】
連通路10は扁平直方体形状の空間を形成し、連通路10に扁平直方体形状のカートリッジ6が配置されることにより、ケーシング1の内壁面とカートリッジ6の外表面とによって、1対の給液経路7が形成されている。カートリッジ6は、ケーシング1に着脱自在である。
【0019】
図3及び
図4を参照して、給液経路7の構成について詳しく説明する。
図3は
図2のIII部の拡大断面図であり、
図4はカートリッジ6の斜視図である。
図3及び
図4に示すように、カートリッジ6は、矩形平板状であり、互いに対向する1対の幅広面部62と、互いに対向する1対の幅狭面部64と、を有する。幅広面部62及び幅狭面部64は平面であり、互いに直交している。1対の幅広面部62は互いに平行であり、1対の幅狭面部64は互いに平行である。カートリッジ6は、連通路10に配置されたときに、基端部69(
図4参照)が導入路9側に位置し、先端部61がボア8側に位置する。つまり、カートリッジ6は、連通路10内において、導入路9側からボア8側に向かって上下方向に延在している。幅広面部62の面積は、カートリッジ6の基端面(下端面)及び幅狭面部64のそれぞれの面積よりも広い。カートリッジ6の基端面は、幅広面部62及び幅狭面部64のそれぞれに直交する平面である。
【0020】
カートリッジ6には、一方の幅広面部62から他方の幅広面部62に貫通する貫通孔66が形成されている。貫通孔66及び水平方向に延在する導入路9(
図2参照)の断面形状は円形状である。貫通孔66の開口面積は、導入路9の流路断面積以上とすることが好ましい。つまり、貫通孔66の直径は、導入路9の直径と同じか、導入路9の直径よりも大きくすることが好ましい。カートリッジ6は、貫通孔66の中心軸と導入路9の中心軸とが一致するように、連通路10内に配置される。これにより、カートリッジ6の厚み方向から見たときに、導入路9の内周面の全体が貫通孔66の内側に収まるように配置される。
【0021】
カートリッジ6の先端部61は、1対のテーパ面部63を有する先細り形状に形成されている。つまり、先端部61は、その先端(頂部6t)に向かうにしたがって、厚み(1対のテーパ面部63間の距離)が小さくなっている。テーパ面部63には、幅広面部62の上端からカートリッジ6の頂部6tに向かって、溝(凹部)65が形成されている。頂部6tは、カートリッジ6の基端面と平行な平面である。溝65は、テーパ面部63における軸方向両端の軸方向端部63a間に形成される。溝65の底面(以下、テーパ面とも記す)65aは、平面であり、幅広面部62から頂部6tに近づくにしたがって1対のテーパ面65a同士の距離が短くなるように、幅広面部62に対して傾斜している。1対のテーパ面65a同士は、カートリッジ6の頂部6tによって接続されている。
【0022】
図3に示すように、連通路10は、カートリッジ6の1対のテーパ面部63に対向する1対の傾斜面部10aと、1対の幅広面部62に対向する1対の第1流路壁10bと、1対の幅狭面部64に対向する1対の第2流路壁(不図示)と、が形成されている。なお、本実施形態では、テーパ面部63と第1流路壁10bとの間に段差部10cが形成されているが、段差部10cは省略してもよい。つまり、テーパ面部63と第1流路壁10bとは直接繋がっていてもよい。
【0023】
連通路10は、例えば、先端部が先細りのV形形状のエンドミルをボア(格納室)8内に突き出し、さらにスクリューロータ2,3の軸方向にエンドミルを移動させることによって形成される。エンドミルの突き出し量で、長孔5の短手方向の長さの調整が可能である。また、スクリューロータ2,3の軸方向のエンドミルの移動量で、長孔5の長手方向の長さの調整が可能である。つまり、エンドミルの突き出し量及び移動量によって、長孔5の開口面積が定まる。
【0024】
先端部が先細りのV形形状のエンドミル等で加工が行われると、長孔5の上流側に1対の傾斜面部10aを有するV溝が形成される。このV溝に沿ってカートリッジ6の先端部61が配置されることにより、ケーシング1のV溝とカートリッジ6の先端部61との間に1対の噴射流路13が形成される。
【0025】
図3に示すように、カートリッジ6及び連通路10は、図示左右方向で対称形状に形成されている。カートリッジ6が連通路10の図示左右方向の中心に配置されることにより、カートリッジ6によって連通路10内の空間が図示左右方向に均等に分割される。つまり、1対の給液経路7は、カートリッジ6を挟んで対称形状に形成されている。カートリッジ6は、その頂部(先端)6tがボア(格納室)8の内周面と面一となるように配置される。なお、カートリッジ6の先端部61がスクリューロータ2,3に接触することを確実に防止するために、カートリッジ6の先端部61の頂部6tをボア8の下端面よりも下側に位置させてもよい。
【0026】
1対の給液経路7は、導入路9から供給される液体を貯留する1対の給液貯留空間12と、1対の給液貯留空間12内の液体を作動空間C内に噴射する1対の噴射流路13と、を有している。
【0027】
1対の給液貯留空間12は、カートリッジ6が連通路10に配置されることにより、カートリッジ6の1対の幅広面部62と、連通路10の内面を構成する1対の第1流路壁10b及び1対の第2流路壁(不図示)と、によって形成される。
【0028】
1対の噴射流路13は、カートリッジ6が連通路10に配置されることにより、カートリッジ6の1対のテーパ面部63と、連通路10の内面を構成する1対の傾斜面部10aと、によって形成される。より具体的には、カートリッジ6の軸方向端部63aのテーパ面が傾斜面部10aに当接されることにより、テーパ面部63の溝65と傾斜面部10aとによって流路断面が矩形状の噴射流路13が形成される。
【0029】
給液貯留空間12の流路断面積は、その給液貯留空間12から液体が供給される噴射流路13の流路断面積よりも大きい。給液貯留空間12には水平方向に設けられた導入路9から液体が導かれ、給液貯留空間12に導かれた液体は噴射流路13に向かって(すなわち図示上方に)流れる。給液貯留空間12の流路断面積は噴射流路13の流路断面積よりも大きいため、給液貯留空間12を流れる液体の速度は噴射流路13を流れる液体の速度よりも小さい。このように、液体が噴射流路13に至るまで、広い空間内を液体が流れる構成とすることで、圧力損失を極力小さくすることができる。これにより、噴射流路13内の液体の圧力を高い状態で保持することができ、噴射流路13から勢いよく液体を噴射させることができる。
【0030】
1対の噴射流路13のそれぞれには、カートリッジ6の先端部61の頂部6tとケーシング1の長孔5とによって、作動空間Cに臨む噴射開口部11が形成されている。噴射開口部11は、噴射流路13から作動空間C内に液体を噴出する矩形状の出口、すなわち噴射流路13の開口端面であり、ボア(格納室)8内に露出している。
【0031】
噴射開口部11におけるスクリューロータ2,3の軸方向の長さ(開口長さ)は、軸方向に直交する方向の長さ(開口幅)よりも長い。噴射開口部11は、噴射開口部11から液体が液膜状で噴射されるように、その開口幅及び開口長さが定められる。つまり、第1実施形態に係る噴射流路13は、液膜を噴射する液膜噴射流路である。1対の噴射流路13の噴射開口部11から噴射された液膜同士は、作動空間C内で衝突する。
【0032】
1対のテーパ面65aは、互いのなす角度が30度以上となるように形成される。また、1対の傾斜面部10aは、互いのなす角度が30度以上となるように形成される。テーパ面65aと傾斜面部10aとは平行に配置される。液体は、テーパ面65a及び傾斜面部10aに沿って作動空間C内に噴射される。つまり、噴射流路13は、互いに対になる噴射流路13のそれぞれから噴射される液体の噴射方向同士のなす角度(衝突角度)θが30度以上となるように形成されている。
【0033】
カートリッジ6の基端部69は、
図2に示すように、水平方向に延在する導入路9よりも下側に位置する。図示しないが、連通路10はケーシング1の下端面まで延在し、ケーシング1の下端面にカートリッジ6を連通路10に挿入するための挿入口が形成されている。なお、挿入口には閉止部材(不図示)が装着され、挿入口は閉止部材によって塞がれる。
【0034】
図5は、カートリッジ6により形成された噴射流路13から噴射される液体(液膜)の数値解析結果を示す図である。図中の黒塗りの矩形平面は、液膜の圧力状態を示す仮想的な平面であり、製品に実際に設けられるものではない。
【0035】
ケーシング1の傾斜面部10aとカートリッジ6の溝65とで形成される1対の噴射流路13の流路形状は、薄い隙間形状となっている。このため、1対の噴射流路13からは、油が液膜状態で噴射される。1対の噴射流路13のうちの一方から噴射される薄い液膜と、1対の噴射流路13のうちの他方から噴射される薄い液膜とは、作動空間C内で衝突する。数値解析結果により、液膜状態で噴射された液体同士が衝突することにより、薄膜化が促され、液体の表面積が拡大することが確認された。衝突した液膜同士は、面状に拡散し、微粒化することにより、作動空間C内の圧縮空気の冷却が促進される。
【0036】
このように、本実施形態では、ケーシング1の長孔5の上流側は、流路形成用のカートリッジ6を収めることが可能な空間(連通路10)とされ、ケーシング1の連通路10に扁平形状のカートリッジ6を配置することにより、1対の給液経路7が形成される。液体は、カートリッジ6の外表面とケーシング1とで形成された給液経路7を経由して、作動空間C内に噴出される。なお、本実施形態では、スクリューロータ2,3の軸方向に沿って延在する噴射開口部11が形成され、噴射開口部11から薄い液膜が噴射される構成である。
【0037】
ここで、
図6及び
図7を参照して、本実施形態の比較例に係る圧縮機900について説明する。
図6及び
図7に示すように、本実施形態の比較例に係る圧縮機900では、ケーシング1にキリ孔加工が施されることにより噴射流路913が形成されている。噴射流路913は、導入路からボア8内に貫通する小径の円形開口である。この噴射流路913からは、液体が円筒状に噴射される。しかしながら、このような噴射流路(キリ孔)913では、液体が拡散しないため、冷却が促進し難い。
【0038】
これに対して、
図1~
図5に示す本実施形態に係る圧縮機100では、カートリッジ6及び長孔5におけるスクリューロータ2,3の軸方向の長さを長くすることにより、液体の供給量を確保しつつ薄い液膜状の油を噴射させ、液膜同士を衝突させることにより効果的に液体を拡散させることができる。これにより、作動空間C内の圧縮空気の冷却が効果的に促進される。
【0039】
また、本実施形態では、カートリッジ6の外表面に溝65が形成され、カートリッジ6がケーシング1に形成された連通路10に配置されることにより、ケーシング1と、ケーシング1とは別部材であるカートリッジ6の外表面とによって噴射流路13が形成される。したがって、特許文献1に記載の技術(以下、従来技術とも記す)のように、液体の流量を増加させるためにカートリッジ6の内部に複数の流路を形成する構成に比べて、加工性に優れている。
【0040】
なお、カートリッジ6は、ケーシング1から着脱自在である。このため、噴射流路13の清掃等のメンテナンスは、カートリッジ6をケーシング1から取り外すことで、容易に行うことができる。また、圧縮機100の運転条件が変更となった場合、ケーシング1に取り付けるカートリッジ6を変更することにより、変更後の運転条件に合った給液経路7を形成することができる。
【0041】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0042】
(1)圧縮機100は、空気(気体)を吸い込んで圧縮空気(圧縮気体)を生成する液冷式スクリュー圧縮機である。圧縮機100は、スクリューロータ2,3と、スクリューロータ2,3を格納してスクリューロータ2,3とともに作動空間Cを形成するケーシング1と、ケーシング1とは別部材であるカートリッジ6と、を備える。ケーシング1とカートリッジ6の外表面とによって、作動空間Cに液体を供給する給液経路7が形成されている。
【0043】
この構成では、カートリッジ6の外形状に対する加工により、作動空間C内に供給する液体(冷媒)の量を調整し、液体の不足を防止することができる。したがって、本実施形態によれば、給液経路7の加工性及びメンテナンス性に優れ、作動空間C内の空気(気体)に対する冷却性能の向上を容易に図ることが可能な圧縮機100を提供することができる。なお、上述したように、カートリッジ6の外形状に対する加工によって、給液経路7の形状を決定することができるため、カートリッジ6の内部に給液経路7を形成する場合に比べて、加工コストを抑えることができる。その結果、圧縮機100の製造コストを抑えることができる。
【0044】
(2)ケーシング1は、スクリューロータ2,3を格納するボア(格納室)8と、ケーシング1の外部から液体が導入される導入路9と、ボア8と導入路9とを連通する連通路10と、を有する。カートリッジ6が連通路10に配置されることにより、カートリッジ6の先端部61と連通路10の内面とによって1対の噴射流路13が形成される。1対の噴射流路13から噴射された液体同士は、作動空間C内で衝突する。
【0045】
この構成によれば、1対の噴射流路13から噴射された液体同士を衝突させることにより、作動空間C内に微粒化した液体を広範囲に拡散させることができる。これにより、噴射された液体同士を衝突させない場合(
図6、
図7参照)に比べて、作動空間C内の空気に対する冷却性能を向上することができる。
【0046】
(3)本実施形態に係る噴射流路13は、カートリッジ6が連通路10に配置されることにより、1対のテーパ面部63と1対の傾斜面部10aとによって、1対のみ形成されている。テーパ面部63には、液体(冷媒)を液膜状で噴射可能な溝65が形成されている。つまり、本実施形態に係る噴射流路13は、液膜を噴射する液膜噴射流路である。1対の噴射流路(液膜噴射流路)13から噴射された液膜同士は、作動空間C内で衝突する。
【0047】
この構成によれば、液膜同士が互いに衝突することにより薄膜化が促されるとともに、微粒化した液体を広範囲に拡散させることができる。液体の薄膜化及び微粒化によって、液体の表面積(すなわち熱交換面積)が大きくなるため、作動空間C内の圧縮空気を効果的に冷却することができ、圧縮機性能を向上することができる。
【0048】
(4)1対の給液経路7は、導入路9から供給される液体を貯留する1対の給液貯留空間12と、給液貯留空間12内の液体を作動空間C内に噴射する1対の噴射流路13と、を有している。1対の給液貯留空間12は、カートリッジ6の1対の幅広面部62と連通路10の内面とによって形成され、1対の噴射流路13は、カートリッジ6の1対のテーパ面部63と連通路10の1対の傾斜面部10aとによって形成される。1対の噴射流路13の上流側に形成された1対の給液貯留空間12の流路断面積は、1対の噴射流路13の流路断面積よりも大きい。
【0049】
この構成では、導入路9から噴射流路13に亘って、噴射流路13よりも大きい流路断面積を有する給液貯留空間12が形成されているため、給液経路7を流れる液体の圧力損失を小さくすることができる。これにより、高い圧力状態の液体を噴射開口部11から勢いよく噴射させ、液体をより広範囲に拡散させることができる。
【0050】
(5)1対の給液経路7は、カートリッジ6を挟んで対称形状に形成されている。これにより、1対の給液経路7のうち上流側の給液経路7内の液体の圧力と、1対の給液経路7のうち下流側の給液経路7内の液体の圧力の差を小さくすることができる。これにより、1対の噴射流路13のそれぞれから噴射される液体の速度がほぼ同一の速度となるため、液体同士の衝突部位の制御がし易い。本実施形態では、1対の噴射流路13のそれぞれから均等に液膜が噴射されるため、衝突後の液膜は上方に沿って真っすぐに伸びる。
【0051】
(6)また、導入路9の流路断面形状は円形状であり、カートリッジ6には、導入路9に配置される円形状の貫通孔66が形成されている。貫通孔66の開口面積は、導入路9の流路断面積以上である。仮に、貫通孔66の開口面積が導入路9の流路断面積よりも小さい場合、貫通孔66を通過する液体の圧力損失が大きくなる。その結果、上流側の給液経路7内の液体の圧力と、下流側の給液経路7内の液体の圧力の差が大きくなる。この場合、1対の噴射流路13の一方から噴射される液体の速度と、1対の噴射流路13の他方から噴射される液体の速度との間に差が生じるため、液体同士の衝突部位の制御が難しくなる。これに対して、本実施形態では、導入路9に配置される貫通孔66の開口面積が、導入路9の流路断面積以上であるため、貫通孔66を通過する液体の圧力損失を抑えることができる。これにより、1対の噴射開口部11のそれぞれから噴射される液体の圧力差及び速度差を小さくすることができるため、液体同士の衝突部位の制御がし易い。
【0052】
(7)噴射流路13は、互いに対になる噴射流路13のそれぞれから噴射される液体の噴射方向同士のなす角度(衝突角度)θが30度以上となるように形成されている。本実施形態では、1対の噴射流路13の延長線同士のなす角度が、30度以上である。この構成では、液体同士を30度未満の衝突角度θで衝突させる場合に比べて、液体を効果的に微粒化し、液体の表面積を拡大させることができる。
【0053】
(8)連通路10とボア8とは、スクリューロータ2,3の軸方向に沿う長孔5によって繋がれ、1対の噴射流路13のそれぞれには、カートリッジ6の先端部61と長孔5とによって、作動空間Cに臨む噴射開口部11が形成されている。この構成によれば、長孔5の形状及びカートリッジ6の先端部61の形状を調整することにより、噴射開口部11の形状及び開口面積を調整することができる。
【0054】
<第2実施形態>
図8及び
図9を参照して、本発明の第2実施形態に係るカートリッジ6Bについて説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。
図8は、第2実施形態に係るカートリッジ6Bの斜視図である。
図9は、
図5と同様の図であり、第2実施形態に係るカートリッジ6Bにより形成された噴射流路13Bから噴射される液体の数値解析結果を示す図である。
【0055】
第2実施形態に係るケーシング1は、第1実施形態と同様であるが、第2実施形態に係るカートリッジ6Bは、第1実施形態で説明したカートリッジ6と異なる。第1実施形態では、1対のテーパ面部63のそれぞれに、一の溝65が形成されていた(
図3、
図4参照)。これに対して、第2実施形態では、
図8に示すように、1対のテーパ面部63Bのそれぞれに、幅広面部62から先端部61の頂部(先端)6Btに亘って直線状に延在する複数の溝67Bが形成されている。複数の溝67Bは、スクリューロータ2,3の軸方向に沿って配列されている。複数の溝67Bは、それぞれスクリューロータ2,3の軸方向に直交する方向に沿って形成されている。
【0056】
また、第1実施形態では、カートリッジ6が連通路10に配置されることにより、1対のテーパ面部63と1対の傾斜面部10aとによって、1つのカートリッジ6に対して噴射流路13が1対のみ形成される例について説明した(
図3、
図4参照)。これに対して、第2実施形態では、カートリッジ6Bが連通路10に配置されることにより、1対のテーパ面部63Bの複数の溝67Bと1対の傾斜面部10aとによって、1つのカートリッジ6Bに対して複数対(図示する例では6対)の噴射流路13Bが形成される。
【0057】
また、第1実施形態に係る噴射流路13は液膜を噴射する液膜噴射流路であった。これに対して、本第2実施形態に係る噴射流路13Bは噴流を噴射する噴流噴射流路である。複数対の噴射流路13Bのそれぞれには、カートリッジ6Bの先端部61の頂部6Btと長孔5とによって、作動空間Cに臨む噴射開口部11Bが形成されている。
【0058】
複数対の噴流噴射流路13Bから噴射された噴流同士は、作動空間C内で衝突する。
【0059】
また、第1実施形態と同様、1対の給液貯留空間12の流路断面積の総和は、複数対の噴射流路13の流路断面積の総和よりも大きい。
【0060】
本第2実施形態では、ケーシング1とカートリッジ6Bの外表面とよって、複数対の噴射流路(噴流噴射流路)13Bが形成されている。互いに対になる噴射流路13Bのそれぞれから噴射された噴流同士は、作動空間C内で衝突する。本第2実施形態によれば、
図9に示すように、噴流同士が衝突することにより、液体がスクリューロータ2,3の軸方向に扇形に拡がり、液体の表面積が拡大する。したがって、本第2実施形態によれば、第1実施形態と同様、給液経路7の加工性及びメンテナンス性に優れ、作動空間C内の空気(気体)に対する冷却性能の向上を容易に図ることが可能な圧縮機100を提供することができる。
【0061】
<第3実施形態>
図10~
図12を参照して、本発明の第3実施形態に係るカートリッジ6Cについて説明する。なお、第2実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。
図10は、第3実施形態に係るカートリッジ6Cの斜視図である。
図11は、
図10のカートリッジ6CをXI方向から見た平面図である。
図12は、
図5及び
図9と同様の図であり、第3実施形態に係るカートリッジ6Cにより形成された噴射流路13Cから噴射される液体の数値解析結果を示す図である。
【0062】
第2実施形態では、テーパ面部63Bの複数の溝67Bがスクリューロータ2,3の軸方向に直交する方向に沿って形成されていた(
図8参照)。これに対して、第3実施形態では、
図10及び
図11に示すように、テーパ面部63Cの複数の溝67Cは、スクリューロータ2,3の軸方向、及び軸方向に直交する方向のそれぞれに対して傾斜する方向に沿って形成されている。
【0063】
図11に示すように、第3実施形態では、平面視で溝67Cの延在方向D1が、スクリューロータ2,3の軸方向D0及び軸方向D0に直交する方向(軸方向D0に直交する面)のそれぞれに対して交差している。
【0064】
第3実施形態では、第2実施形態と同様、ケーシング1とカートリッジ6Cの外表面とよって、複数対の噴射流路(噴流噴射流路)13Cが形成されているため、第2実施形態と同様の作用効果を奏する。さらに、本第3実施形態では、噴射流路13Cが平面視で軸方向D0及び軸方向D0に直交する方向に対して、斜めに形成されている。したがって、
図11及び
図12に示すように、噴流同士が衝突することにより、液体が溝67Cの延在方向D1に直交する方向に扇形に拡がり、液体の表面積が拡大する。このような第3実施形態によれば、複数の溝67の角度(平面視において、軸方向D0と溝67Cの延在方向D1とのなす角度)φを調整することで、互いに対になる噴射流路13Cから噴射され、衝突した液体をスクリューロータ2,3の歯溝に沿った方向に拡散させたり、歯溝断面に向けて拡散させたりすることができる。
【0065】
<第4実施形態>
図13を参照して、本発明の第4実施形態に係るカートリッジ6Dについて説明する。なお、第3実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。
図13は、第4実施形態に係るカートリッジ6Dの斜視図である。
【0066】
本第4実施形態では、カートリッジ6Dの先端部61の頂部(先端)に、スクリューロータ2,3の軸方向に延在する溝68が形成されている点が、第3実施形態と異なる。溝68は、作動空間C内に対する給液範囲を拡大するために形成される。本実施形態において、溝68は、先端部61の先端側から基端側に向かって窪む、断面V字状に形成される。
【0067】
第3実施形態では、
図10に示すように、噴射開口部11Cが上面に開口される構成であり、1対の噴射流路13Cが隔壁によって分離されていた。これに対して、本第4実施形態では、
図13に示すように、噴射開口部11DがV字状の溝68に形成され、互いに対になる噴射開口部11D同士の間が空間となっている。第3実施形態では、噴流衝突後の拡散条件によっては、噴射直前の溝67C内の隔壁によって拡散が阻害される可能性がある。これに対して、本第4実施形態に係るカートリッジ6Dでは、先端部61の先端にV字状の溝68が形成されることにより、噴射直前の溝67D内の隔壁が無くなり、噴流同士の衝突後の拡散の阻害が抑制される。つまり、本第4実施形態によれば、第3実施形態に比べて、より広範囲に液体を拡散させることができる。
【0068】
以上、第1~第4実施形態に係る圧縮機では、ケーシングとカートリッジの外表面とを組み合わせることで、噴射する液体同士を衝突させることが可能な1対以上の噴射流路が形成される。このため、一つのスクリューロータに対して設けられる一つのカートリッジの加工内容や長手方向(スクリューロータ2,3の軸方向)の長さを変化させるだけで、作動空間C内の冷却性を高め、圧縮空気の冷却に用いる液体の流量を容易に変化させることができる。
【0069】
<その他の実施形態>
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。すなわち、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0070】
なお、上述した実施形態においては、ツインロータ型の液冷式スクリュー圧縮機を例に説明したが、本発明は、シングルロータ型やトリプルロータ型等のツインロータ型以外のスクリュー圧縮機に適用することもできる。また、圧縮機により圧縮する気体は、空気に限定されることもない。
【符号の説明】
【0071】
1…ケーシング、2…駆動ロータ(スクリューロータ)、3…従動ロータ(スクリューロータ)、5…長孔、6,6B,6C,6D…カートリッジ、6t,6Bt,6Dt…頂部(先端)、7…給液経路、8…ボア(格納室)、9…導入路、10…連通路、10a…傾斜面部、10b…第1流路壁、10c…段差部、11,11C,11D…噴射開口部、12…給液貯留空間、13…噴射流路(液膜噴射流路)、13B…噴射流路(噴流噴射流路)、13C…噴射流路(噴流噴射流路)、61…先端部、62…幅広面部、63,63B,63C…テーパ面部、63a…軸方向端部、64…幅狭面部、65…溝(凹部)、65a…底面(テーパ面)、66…貫通孔、67,67B,67C,67D…溝、68…溝、69…基端部、100…圧縮機(液冷式スクリュー圧縮機)、C…作動空間(作動室)、θ…衝突角度