(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164330
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】感光性フィルム積層体、硬化物、およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241120BHJP
G03F 7/09 20060101ALI20241120BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/004 505
G03F7/09 501
H05K3/28 D
H05K3/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161590
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】森 花菜
(72)【発明者】
【氏名】柳田 伸行
(72)【発明者】
【氏名】松野 匠
【テーマコード(参考)】
2H225
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AD06
2H225AE14P
2H225AM09N
2H225AN94P
2H225AN96P
2H225AP03P
2H225AP09P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225BA35P
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
5E314AA27
5E314AA32
5E314AA42
5E314AA45
5E314BB02
5E314CC15
5E314FF02
5E314FF03
5E314FF04
5E314FF05
5E314FF06
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】マーキングインキの視認性に優れる高い黒色度を有しながらも、表面は低光沢な凹凸の形状であり、かつ傷を視認しにくいソルダーレジスト層を形成できる感光性フィルム積層体の提供。
【解決手段】本発明による感光性フィルム積層体は、
感光性フィルムと、前記感光性フィルムの一方の面に設けられた第一のフィルムとを備える感光性フィルム積層体であって、
前記感光性フィルムが、前記第一のフィルムと接する凹凸面を備え、
硬化後の感光性フィルムの凹凸面が、下記のパラメータ:
(A)1.025<表面積/面積<1.400
(B)0.1μm<算術平均表面粗さRa<0.5μm
を満たすことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性フィルムと、前記感光性フィルムの一方の面に設けられた第一のフィルムとを備える感光性フィルム積層体であって、
前記感光性フィルムが、前記第一のフィルムと接する凹凸面を備え、
硬化後の感光性フィルムの凹凸面が、下記のパラメータ:
(A)1.025<表面積/面積<1.400
(B)0.1μm<算術平均表面粗さRa<0.5μm
を満たすことを特徴とする、感光性フィルム積層体。
【請求項2】
前記硬化後の感光性フィルムの凹凸面は、60°光沢度が50以下である、請求項1に記載の感光性フィルム積層体。
【請求項3】
前記硬化後の感光性フィルムの凹凸面は、L*a*b*色空間におけるL*値が25以下である、請求項1または2に記載の感光性フィルム積層体。
【請求項4】
前記感光性フィルムを形成する感光性樹脂組成物が、カルボキシル基含有感光性樹脂、光重合開始剤、および着色剤を含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の感光性フィルム積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の感光性フィルム積層体を用いて形成されたことを特徴とする、硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物を備えることを特徴とする、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性フィルム積層体に関する。さらに、本発明は、当該感光性フィルム積層体を用いて形成された硬化物およびそれを備えるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器などに用いられるプリント配線板において、プリント配線板に電子部品を実装する際には、不必要な部分にはんだが付着するのを防止するために、回路パターンの形成された基板上の接続孔を除く領域にソルダーレジスト層が形成されている。
【0003】
近年の電子機器の軽薄短小化によるプリント配線板の高精度、高密度化に伴い、現在、ソルダーレジスト層は、基板に感光性樹脂組成物を塗布、乾燥し、露光、現像によりパターン形成した後、パターン形成された樹脂を加熱ないし光照射によって本硬化させる、いわゆるフォトソルダーレジストによって形成されるのが主流となっている。
【0004】
また、上記したような液状の感光性樹脂組成物を使用することなく、感光性フィルムを備える、いわゆる感光性フィルム積層体を使用してソルダーレジスト層を形成することも提案されている。このような感光性フィルム積層体は、一般的には、支持フィルム上に感光性樹脂組成物により形成された感光性フィルムを貼り合わせたものであり、必要に応じて感光性フィルム表面には保護フィルムが貼り合わされていることもある。このような感光性フィルム積層体は、使用時に保護フィルムを剥離して配線基板に加熱圧着によりラミネートし、露光前に、または支持フィルム側から露光した後に、支持フィルムを剥離して現像を行うことにより、パターン形成されたソルダーレジスト層を形成することができる。感光性フィルム積層体を用いることにより、ウエットコーティングの場合と比べて、塗布後の乾燥工程を不要にできることに加え、得られたソルダーレジスト層の表面平滑性や表面硬度にも優れる。
【0005】
一方、ソルダーレジストは、基板の最外層に使用されており、且つ、基板作製工程の最終段階で形成されるため、基板作製プロセス中に装置類の使用時や搬送ツール類などにより傷がつく場合がある(例えば、特許文献1)。この傷が外観検査でNG判定となり、生産の歩留まりが悪化する場合がある。特に近年では、品質上問題の無い微小な傷によっても、生産性を落とす原因となることより、重要な要求項目の一つであり、新しい改善手法が求められている。
【0006】
一方、プリント配線板を修理する場合を考慮して、搭載部品の名称や位置をマーキングインキによってソルダーレジスト層上に形成する場合がある。マーキングインキには、主にパターン印刷によって形成される熱硬化型およびUV硬化型、あるいはネガフィルム越しに露光しアルカリ水溶液で未露光部を除去することで形成されるネガタイプのアルカリ現像型が使用されている(例えば、特許文献2)。マーキングインキは、背景色となるソルダーレジスト層の色が緑や黒等暗い色の場合白色や黄色が用いられることが多い。このため、黒色のソルダーレジスト層においては、高い黒色度をもつことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-206992号公報
【特許文献2】特開2002-97239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているような支持フィルムを第一のフィルムとして使用した感光性積層体をソルダーレジスト層として使用した場合、傷の視認性の抑制と高い黒色度とを両立させることは困難であった。すなわち、感光性フィルム表面が微細な凹凸を有していると、形成したソルダーレジスト層の表面は光が乱反射するために白茶け、その上に乗せたマーキングインキの視認性が落ちる。一方、感光性フィルム表面の凹凸が少ないと、形成したソルダーレジスト層の表面の黒色度は高くなるものの、ソルダーレジスト層の表面の微小な傷は視認しやすくなる。このため、マーキングインキの視認性に優れる高い黒色度を有しながらも、表面は低光沢な凹凸の形状であり、傷を視認しにくいソルダーレジスト層を形成できる感光性フィルムを提供することは困難であった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、マーキングインキの視認性に優れる高い黒色度を有しながらも、表面は低光沢な凹凸の形状であり、かつ傷を視認しにくいソルダーレジスト層を形成できる感光性フィルム積層体を提供することである。また、本発明の別の目的は、感光性フィルム積層体を用いて形成された硬化物およびそれを備えるプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、感光性フィルムの表面を微細な凹凸を持つ低光沢な表面としたときに、形成したソルダーレジスト層の表面が白茶け、マーキングインキの視認性が低下する理由が、微細な凹凸によってソルダーレジスト表面を白色光が乱反射するためであると考え、ソルダーレジスト層の表面の表面粗さと黒色度について種々実験を繰り返した結果、感光性フィルム表面における単位面積あたりの表面積(以下、[表面積/面積]と表す)と表面粗さを調節することにより、ソルダーレジスト層の表面の低光沢度を維持しつつ高い黒色度を実現させることができることを見出した。本発明はかかる知見によるものである。
【0011】
すなわち、本発明による感光性フィルム積層体は、
感光性フィルムと、前記感光性フィルムの一方の面に設けられた第一のフィルムとを備える感光性フィルム積層体であって、
前記感光性フィルムが、前記第一のフィルムと接する凹凸面を備え、
硬化後の感光性フィルムの凹凸面が、下記のパラメータ:
(A)1.025<表面積/面積<1.400
(B)0.1μm<算術平均表面粗さRa<0.5μm
を満たすことを特徴とする。
【0012】
本発明の態様においては、前記硬化後の感光性フィルムの凹凸面は、60°光沢度が50以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、前記硬化後の感光性フィルムの凹凸面は、L*a*b*色空間におけるL*値が25以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の態様においては、前記感光性フィルムを形成する感光性樹脂組成物が、カルボキシル基含有感光性樹脂、光重合開始剤、および着色剤を含んでなることが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の態様による硬化物は、上記の感光性フィルム積層体を用いて形成されたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の他の態様によるプリント配線板は、上記の硬化物を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マーキングインキの視認性に優れる高い黒色度を有しながらも、表面は低光沢な凹凸の形状であり、かつ傷を視認しにくいソルダーレジスト層を形成できる感光性フィルムを提供することができる。本発明においては、ソルダーレジスト層の表面の傷が視認しにくくなることで、生産の歩留まりを改善することができる。また、本発明によれば、感光性フィルム積層体を用いて形成された硬化物およびそれを備えるプリント配線板を提供することができる。
【0018】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態に係る感光性フィルム積層体、硬化物、およびプリント配線板について説明する。感光性フィルムは、感光性樹脂組成物をフィルム形状としたものであって、第一のフィルムや第二のフィルムといった他の層が積層されていないものをいう。以下、本発明による感光性フィルム積層体について説明する。
【0020】
<感光性フィルム積層体>
本発明による感光性フィルム積層体は、感光性フィルムと、感光性フィルムの一方の面に設けられた第一のフィルムとを備えるものであり、ソルダーレジスト層形成用として好適である。また、本発明の感光性フィルム積層体には、感光性フィルムの他方の面に第二のフィルムが更に設けられていてもよい。
以下、本発明の感光性フィルム積層体の各構成要素について説明する。
【0021】
[感光性フィルム]
本発明による感光性フィルムは、感光性樹脂組成物により形成されてなるものであり、第一のフィルムと接する凹凸面を備える。
硬化後の感光性フィルムの凹凸面が下記のパラメータ:
(A)1.025<表面積/面積<1.400
(B)0.1μm<算術平均表面粗さRa<0.5μm
を満たすことを特徴とする。
【0022】
本発明において、上記した「表面積/面積」および「算術平均表面粗さRa」は、JIS B0601-1994に準拠した測定装置にて測定された値を意味する。以下、具体的な測定方法について説明しておく。「表面積/面積」および「算術平均表面粗さRa」は、形状測定レーザーマイクロスコープ(例えば、株式会社キーエンス製VK-X100)を使用して測定することができる。形状測定レーザーマイクロスコープ(同VK-X100)本体(制御部)および、VK観察アプリケーション(株式会社キーエンス製VK-H1VX)を起動させた後、x-yステージ上に測定する試料を載置する。顕微鏡部(株式会社キーエンス製VK-X110)のレンズレボルバーを回して倍率10倍の対物レンズを選択し、VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の画像観察モードで、大まかにピント、明るさを調節する。x-yステージを操作して、試料表面のほぼ中央部が、画面の中心に来るように調節する。倍率10倍の対物レンズを倍率50倍に替え、VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の画像観察モードのオートフォーカス機能で、試料の表面にピントを合わせる。VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の形状測定タブの簡単モードを選択し、測定開始ボタンを押して、試料の表面形状の測定を行い、表面画像ファイルを得ることができる。VK解析アプリケーション(株式会社キーエンス製VK-H1XA)を起動して、得られた表面画像ファイルを表示させた後、傾き補正を行う。
【0023】
「表面積/面積」の測定では、試料の表面形状の測定における観察測定範囲(面積)は55965μm2とする。例えば、解析アプリケーション(同VK-H1XA)を用いることができる。表示画面にある計測解析メニューから[体積・面積]を選択し、[体積・面積]ウインドウを表示させる。[体積・面積]ウインドウの[全領域]測定における[表面積/面積]の値をいう。
【0024】
また、「算術平均表面粗さRa」の測定では、算術平均表面粗さRaの測定には、形状測定レーザーマイクロスコープ(株式会社キーエンス製VK-X100)を使用した。形状測定レーザーマイクロスコープ(同VK-X100)本体(制御部)および、VK観察アプリケーション(株式会社キーエンス製VK-H1VX)を起動させた後、x-yステージ上に測定する試料(第一のフィルム)を前記第一のフィルムの突出部を有する表面を上部にして乗せた。顕微鏡部(株式会社キーエンス製VK-X110)のレンズレボルバーを回して倍率10倍の対物レンズを選択し、VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の画像観察モードで、大まかにピント、明るさを調節した。x-yステージを操作して、試料表面のほぼ中央部が、画面の中心に来るように調節した。倍率10倍の対物レンズを倍率50倍に替え、VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の画像観察モードのオートフォーカス機能で、試料の表面にピントを合わせた。VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の形状測定タブの簡単モードを選択し、測定開始ボタンを押して、試料の表面形状の測定を行い、表面画像ファイルを得た。VK解析アプリケーション(株式会社キーエンス製VK-H1XA)を起動して、得られた表面画像ファイルを表示させた後傾き補正を行い、表示領域55965μm2範囲のRa値を測定した。
【0025】
硬化後の感光性フィルムの表面形態を、上記した特定の「表面積/面積」および特定の「算術平均表面粗さRa」の範囲とするには、公知慣用の手法を適用することができる。例えば、そのような表面形態に形成することの容易さの観点から、後記するような所定の表面形態を有する第一のフィルムを用いて感光性フィルムを形成することが好ましい。すなわち、本発明の感光性フィルムに第一のフィルムが積層されてなる感光性フィルム積層体である場合、第一のフィルムの所定の表面形態が感光性フィルムの表面に賦型されることにより、硬化後の感光性フィルムの表面に上記した特定の「表面積/面積」および特定の算術平均表面粗さRaの凹凸面を形成することが好ましい。硬化後の感光性フィルムの凹凸面のパラメータは、第一のフィルムの所定の表面形態や感光性樹脂組成物の組成等により調節することができる。また、感光性フィルムはソルダーレジスト層形成用であることが好ましい。
【0026】
本発明においては、硬化後に上記のようにして算出された「表面積/面積」が1.025超1.4未満である感光性フィルムを用いることにより、マーキングインキの視認性に優れる高い黒色度を有しながらも、表面は低光沢な凹凸の形状であり、傷を視認しにくいソルダーレジスト層を形成できる感光性フィルムを提供できる。また、このような特定の表面形態を有する感光性フィルムを使用してソルダーレジスト層等を形成した場合に、ソルダーレジスト層の表面傷等の有無を検査する外観検査において歩留りを改善することができる。
【0027】
本発明においては、硬化後の感光性フィルムの凹凸面の「表面積/面積」は、感光性フィルム凹凸面での光の散乱によって起こる表面白色化と外観検査における歩留り改善のバランスの観点から、1.022以上であることが好ましく、1.025以上であることがより好ましく、また、1.400以下であることが好ましい。
【0028】
本発明においては、硬化後の感光性フィルムの凹凸面の黒色度および外観検査における歩留り改善のバランスの観点から、硬化後の感光性フィルムの凹凸面の算術平均表面粗さRaは、0.1μm超であり、0.15μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、また、0.5μm以下未満であり、0.45μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることがより好ましい。
【0029】
本発明においては、低光沢なソルダーレジスト層を形成するために、硬化後の感光性フィルムの凹凸面は60°光沢度が50以下であることが好ましく、45以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。なお、本発明における60°光沢度は、硬化後膜厚が20~30μmの硬化後の感光性フィルム(の凹凸面)における測定値をいい、測定機器や測定条件は実施例の記載内容に従う。
【0030】
本発明においては、マーキングインキの視認性に優れる高い黒色度を有するソルダーレジスト層を形成するために、硬化後の感光性フィルムの凹凸面はL*a*b*色空間におけるL*値が25以下であることが好ましく、23以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。なお、本発明におけるL*値は、硬化後膜厚が20~30μmの硬化後の感光性フィルム(の凹凸面)における測定値をいい、測定機器や測定条件は実施例の記載内容に従う。
【0031】
上記した「表面積/面積」が1.025超1.400未満であり、かつ算術平均表面粗さRaが1μm超0.5μm未満である凹凸面を備える感光性フィルムは、露光、現像することによってパターニングされ、回路基板上に設けられた硬化被膜となる。硬化被膜としては、ソルダーレジスト層であることが好ましい。このような感光性フィルムは感光性樹脂組成物を用いて形成することができ、感光性樹脂組成物は従来公知のソルダーレジストインキ等を制限なく使用できるが、以下、本発明による感光性フィルムに好ましく使用できる感光性樹脂組成物の一例を説明する。
【0032】
<感光性樹脂組成物>
感光性フィルムを形成する感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有感光性樹脂、光重合開始剤、および着色剤を含むことが好ましい。以下、感光性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0033】
[カルボキシル基含有感光性樹脂]
感光性樹脂組成物において、カルボキシル基含有感光性樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種樹脂を用いることができる。感光性樹脂組成物が、カルボキシル基含有樹脂を含むことにより、感光性樹脂組成物に対しアルカリ現像性を付与することができる。特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、光硬化性や耐現像性の面から好ましい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。また、カルボキシル基含有感光性樹脂と併用して、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂を用いてもよい。
カルボキシル基含有感光性樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。カルボキシル基含有感光性樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0035】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0036】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物との反応物の部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0037】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0038】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0039】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0040】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0041】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0042】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0043】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0044】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0045】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0046】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0047】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、40~150mgKOH/gであることが好ましい。カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価が40mgKOH/g以上とすることにより、アルカリ現像が良好になる。また、酸価を150mgKOH/gを以下とすることで、良好なレジストパターンの描画をし易くできる。より好ましくは、50~130mgKOH/gである。
【0048】
カルボキシル基含有感光性樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上とすることにより、タックフリー性能や解像度を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下とすることで、現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。より好ましくは、5,000~100,000である。
【0049】
カルボキシル基含有感光性樹脂の配合量は、感光性樹脂組成物中において、固形分換算で、20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。20質量%以上とすることにより硬化塗膜強度を向上させることができる。また60質量%以下とすることで粘性が適当となり、印刷性が向上する。より好ましくは、30質量%以上50質量%以下である。
【0050】
[光重合開始剤]
感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤は、上記したカルボキシル基含有感光性樹脂や後述する光重合性モノマーを露光により反応させるためのものである。光重合開始剤としては、公知のものをいずれも用いることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
光重合開始剤としては、具体的には例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0052】
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 907、369、369E、379等が挙げられる。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 819等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、BASFジャパン株式会社製のIrgacure OXE01、OXE02、株式会社ADEKA製N-1919、アデカアークルズ NCI-831、NCI-831E、常州強力電子新材料社製TR-PBG-304などが挙げられる。
【0053】
光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~18質量部であることがより好ましく、1~15質量部がさらに好ましい。0.01質量部以上の場合、樹脂組成物の光硬化性が良好となり、耐薬品性等の被膜特性も良好となる一方、20質量部以下の場合、レジスト膜(硬化被膜)表面での光吸収が良好となり、深部硬化性が低下しにくい。
【0054】
上記した光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。特に、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物を用いることが好ましい。チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは樹脂組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストパターンのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の精度を向上させることができる。
【0056】
[着色剤]
感光性樹脂組成物は、感光性フィルムの凹凸面の60°光沢度およびL*a*b*色空間におけるL*値を所望の範囲調節するために着色剤を含むことが好ましい。着色剤としては、赤、青、緑、黄、黒等の公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよいが、環境負荷の低減や人体への影響が少ない観点からハロゲンを含有しない着色剤であることが好ましい。
【0057】
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等があり、具体的には以下のようなカラ-インデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyersand Colourists)発行)番号が付されているものが挙げられる。[0095] モノアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269等が挙げられる。また、ジスアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 37,38,41等が挙げられる。また、モノアゾレーキ系赤色着色剤としては、Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68等が挙げられる。また、ベンズイミダゾロン系赤色着色剤としては、Pigment Red 171,175,176、185、208等が挙げられる。また、ぺリレン系赤色着色剤としては、Solvent Red 135,179,Pigment Red 123,149,166,178,179,190,194,224等が挙げられる。また、ジケトピロロピロール系赤色着色剤としては、Pigment Red 254,255,264,270,272等が挙げられる。また、縮合アゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 220,144,166,214,220,221,242等が挙げられる。また、アントラキノン系赤色着色剤としては、Pigment Red 168,177,216、Solvent Red 52,149,150,207等が挙げられる。また、キナクリドン系赤色着色剤としては、Pigment Red 122,202,206,207,209等が挙げられる。
【0058】
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられ、例えば、Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,60。染料系としては、Solvent Blue 35,63,67,68,70,83,87,94,97,122,136等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0059】
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられ、例えば、アントラキノン系黄色着色剤としては、Solvent Yellow 163,Pigment Yellow 24,108,193,147,199,202等が挙げられる。イソインドリノン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 110,109,139,179,185等が挙げられる。縮合アゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow93,94,95,128,155,166,180等が挙げられる。ベンズイミダゾロン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 120,151,154,156,175,181等が挙げられる。また、モノアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,183等が挙げられる。また、ジスアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198等が挙げられる。
【0060】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、Pigment Black 1,6,7,8,9,10,11,12,13,18,20,25,26,28,29,30,31,32等が挙げられる。
【0061】
その他、紫、オレンジ、茶色、白などの着色剤を加えてもよい。具体的には、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet13,36、C.I.Pigment Orange 1,5,13,14,16,17,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73、PigmentBrown 23,25、酸化チタン等が挙げられる。
【0062】
感光性樹脂組成物中の着色剤の配合量は特に限定されるものではないが、感光性樹脂組成物全量の0.1~5質量%であることが好ましい。
【0063】
[光重合性モノマー]
本発明の感光性樹脂組成物には、光重合性モノマーを配合することができる。光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。このような光重合性モノマーとしては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート類;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキサイド誘導体のモノまたはジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのアルキレンオキサイド付加物あるいはε-カプロラクトン付加物等の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート等のフェノール類またはこれらのアルキレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルのアクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオール等のポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくともいずれか1種から適宜選択して用いることができる。このような光重合性モノマーは、反応性希釈剤としても用いることができる。また、光重合性モノマーは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
[熱硬化性成分]
本発明の感光性樹脂組成物は、熱硬化性成分を含んでいてもよい。感光性樹脂組成物に熱硬化性成分が含まれることにより、硬化被膜の耐熱性を向上させることができる。熱硬化性成分としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性成分を使用できる。特に好ましいのは、分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する熱硬化性成分である。熱硬化性成分は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
上記の分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状(チオ)エーテル基を複数有する化合物であり、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0066】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0067】
市販されるエポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER 828、806、807、YX8000、YX8034、834、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYD-128、YDF-170、ZX-1059、ST-3000、DIC株式会社製のEPICLON 830、835、840、850、N-730A、N-695、および日本化薬株式会社製のRE-306等が挙げられる。
【0068】
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0069】
分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0070】
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、メチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等が挙げられる。
【0071】
イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物を配合することができる。ポリイソシアネート化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシ
アネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに先に挙げたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0072】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物を用いることができる。イソシアネートブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤;ラクタム系ブロック剤;活性メチレン系ブロック剤;アルコール系ブロック剤;オキシム系ブロック剤;メルカプタン系ブロック剤;酸アミド系ブロック剤;イミド系ブロック剤;アミン系ブロック剤;イミダゾール系ブロック剤;イミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0073】
熱硬化性成分の配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有感光性樹脂に含有されるカルボキシル基1molあたりに対し、反応する熱硬化性成分の官能基数が0.5~2.5molが好ましく、より好ましくは0.8~2.0molである。
【0074】
[熱硬化触媒]
また、感光性樹脂組成物には、上記した熱硬化性成分に加えて熱硬化触媒を配合することができる。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基およびオキセタニル基の少なくともいずれか1種とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0075】
[フィラー]
本発明においては、感光性フィルム積層体を用いて得られる硬化被膜の物理的強度を向上させたり、硬化後の感光性フィルムの凹凸面を調整する観点から、感光性樹脂組成物には必要に応じてフィラーを配合することができる。フィラーとしては、公知の無機または有機フィラーが使用できるが、特に、硫酸バリウム、球状シリカ、ハイドロタルサイトおよびタルクが好ましく用いられる。また、難燃性を得るために金属酸化物や水酸化アルミ等の金属水酸化物を体質顔料フィラーとして使用することができる。
【0076】
フィラーの配合量は特に限定されるものではないが、粘度、塗布性、成形性等の観点から、固形分換算で、感光性樹脂組成物全量に対して25~80質量%であることが好ましい。
【0077】
また、上記したフィラーは、感光性樹脂組成物中での分散性を高めるために表面処理されたものであってもよい。表面処理がされているフィラーを使用することで、凝集を抑制することができる。表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理することが好ましい。
【0078】
カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、あらかじめフィラーの表面に吸着あるいは反応により固定化されていることが好ましい。ここで、球状シリカ100質量部に対するカップリング剤の処理量は、0.5~10質量部であることが好ましい。
【0079】
[有機溶剤]
感光性樹脂組成物には、組成物の調製のし易さや塗布性の観点から有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
[その他の添加成分]
感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じてエラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0081】
[第一のフィルム]
第一のフィルムは、上記した感光性フィルム(即ち、感光性樹脂組成物からなる樹脂層)を支持するとともに、感光性フィルムの露光、現像時に、感光性フィルムの第一のフィルムと接する側の表面に所定の表面形態を賦型する役割を有するものであり、基板等の基材上に感光性フィルム積層体の感光性フィルム側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際には少なくとも感光性フィルムに接着しているものをいう。第一のフィルムはラミネート後の工程において、感光性フィルム積層体から剥離しても良い。特に本発明においては、第一のフィルムは、露光後の工程において、感光性フィルム積層体から剥離することが好ましい。また、本発明においては、1.025<「表面積/面積」<1.400であるような第一のフィルムを用いることが好ましい。また、感光性フィルムと接する面側における0.1μm<「算術平均表面粗さRa」<0.5μmであるような第一のフィルムを用いることがより好ましい。このような表面形態を有する第一のフィルムを使用することにより、表面の1.025<「表面積/面積」<1.400であるような感光性フィルムを形成しやすくなり、さらには0.1μm<「算術平均表面粗さRa」<0.5μmを有する感光性フィルムを形成しやすくなる。すなわち、第一のフィルムの所定の表面形態が感光性フィルムの表面に賦型されることにより、後に形成される硬化被膜の黒色度を向上させることができ、さらには外観検査において歩留りを改善することができる感光性フィルムを形成しやすくなる点で有効である。
【0082】
第一のフィルムとしては、上記のような表面形態を有するものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができるが、これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムを好適に使用することができる。第一のフィルムは単層でもよく、2層以上が積層されていてもよい。
【0083】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムを使用することが好ましい。
【0084】
第一のフィルムとして、熱可塑性樹脂フィルムを使用する場合、フィルムを成膜する際の樹脂中にフィラーを添加(練り込み処理)したり、マットコーティング(コーティング処理)したり、フィルム表面をサンドブラスト処理のようなブラスト処理をしたり、あるいはヘアライン加工、またはケミカルエッチング等により、表面を上記したような所定形態とすることができる。例えば、樹脂中にフィラーを添加する場合に、フィラーの粒径や添加量を調整することにより、「表面積/面積」や「算術平均表面粗さRa」を制御することができる。また、第一のフィルムの表面をコーティング処理する場合は、コーティング剤の種類や量を調整することにより、「表面積/面積」や「算術平均表面粗さRa」を制御することができる。また、ブラスト処理する場合は、ブラスト材やブラスト圧等の処理条件を調整することにより、「表面積/面積」や「算術平均表面粗さRa」を制御することができる。
【0085】
第一のフィルムの感光性フィルムを設ける面には、離型処理が施されていてもよい。例えば、ワックス類、シリコーンワックス、アルキッド系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂等の離型剤を適当な溶剤に溶解または分散して調製した塗工液を、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の手段により、第一のフィルム表面に塗布、乾燥することにより、離型処理を施すことができる。
【0086】
第一のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。
【0087】
[第二のフィルム]
本発明による感光性フィルム積層体は、上記した感光性フィルムの表面に塵等が付着するのを防止するとともに取扱性を向上させる目的で、感光性フィルムの他方の面(第一のフィルムとは反対側の面)に第二のフィルムが設けられていてもよい。本発明における第二のフィルムとは、基板等の基材上に感光性フィルム積層体の感光性フィルム側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際、ラミネート前に感光性フィルム積層体から剥離するものをいう。
【0088】
第二のフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができるが、第二のフィルムと感光性フィルムとの接着力が、第一のフィルムと感光性フィルムとの接着力よりも小さくなるような材料を選定することが好ましい。また、感光性フィルム積層体の使用時に、第二のフィルムを剥離し易くするため、第二のフィルムの感光性フィルムと接する面に上記したような離型処理を施してもよい。
【0089】
第二のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。
【0090】
[硬化物およびプリント配線板の製造方法]
本発明の感光性フィルム、または、感光性フィルム積層体を用いて硬化物が形成される。かかる硬化物の形成方法および回路パターンが形成された基板上に上記硬化物(硬化被膜)を備えたプリント配線板を製造する方法を説明する。一例として、第二のフィルムを備えた感光性フィルム積層体を用いてプリント配線板を製造する方法を説明する。先ず、i)上記した感光性フィルム積層体から第二のフィルムを剥離して、感光性フィルムを露出させ、ii)前記回路パターンが形成された基板上に、前記感光性フィルム積層体の感光性フィルムを貼合し、iii)前記感光性フィルム積層体の第一のフィルム上から露光を行い、iv)前記感光性フィルム積層体から第一のフィルムを剥離して現像を行うことにより、前記基板上にパターニングされた感光性フィルムを形成し、v)前記パターニングされた感光性フィルムを光照射ないし熱により硬化させて、硬化被膜を形成する、ことによりプリント配線板が形成される。なお、第二のフィルムが設けられていない感光性フィルム積層体を使用する場合は、第二のフィルムの剥離工程(i工程)が不要であることは言うまでもない。以下、各工程について説明する。
【0091】
まず、感光性フィルム積層体から第二のフィルムを剥離して感光性フィルムを露出させ、回路パターンが形成された基板上に、感光性フィルム積層体の感光性フィルムを貼合する。回路パターンが形成された基板としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR-4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0092】
感光性フィルム積層体の感光性フィルムを回路基板上に貼合するには、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で貼合することが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路基板表面に凹凸があっても、感光性樹脂組成物層が回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
【0093】
次に、感光性フィルム積層体の第一のフィルム上から露光(活性エネルギー線の照射)を行う。この工程により、露光された感光性フィルムのみが硬化する。露光工程は特に限定されるものではなく、例えば、接触式(または非接触方式)により、所望のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光してもよいが、直接描画装置により所望パターンを活性エネルギー線により露光してもよい。
【0094】
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350~410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~800mJ/cm2、好ましくは20~600mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0095】
露光後、感光性フィルム積層体から第一のフィルムを剥離して現像を行うことにより、基板上にパターニングされた感光性フィルムを形成する。第一のフィルムを剥離した際、露光されて硬化した感光性フィルムの表面に、第一のフィルム表面の形態が賦型される。
【0096】
現像工程は特に限定されるものではなく、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法などを用いることができる。また、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【0097】
次いで、パターニングされた感光性フィルムを、活性エネルギー線(光)照射ないし熱により硬化させて、硬化物(硬化被膜)を形成する。この工程は本硬化または追加硬化と呼ばれるものであり、感光性フィルム中の未反応モノマーの重合を促進させ、さらには、カルボキシル基含有感光性樹脂とエポキシ樹脂とを熱硬化させて、残存するカルボキシル基の量を低減することができる。活性エネルギー線照射は、上記した露光と同様にして行うことができるが、露光時の照射エネルギーよりも強い条件で行うことが好ましい。例えば、500~3000mJ/cm2とすることができる。また、熱硬化は、100~200℃で20~90分間程度の加熱条件で行うことができる。なお、本硬化は、光硬化させた後に熱硬化を行うことが好ましい。光硬化を先に行うことで加熱硬化時においても樹脂の流動が抑制され、賦型された表面が維持されることがある。
【0098】
上記のようにして、硬化物の表面に適度な凹凸状態を付与できる。その結果、高い黒色度を、持ちながらも、硬化物表面の適度な凹凸によって外観検査における歩留りも改善される。
【実施例0099】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0100】
<感光性樹脂組成物の調製>
下記表1に記載の各成分を、同表に示す配合量(固形分量)で混合し、撹拌機にて予備撹拌した後、3本ロールミルを用いて混錬し、下記の感光性樹脂組成物AおよびBを調製した。なお、表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・カルボキシル基含有感光性樹脂:DIC株式会社製 UE9210
・エポキシ樹脂:DIC株式会社製 EPICLON N-770
・着色剤A:青色着色剤(C.I.Pigment Blue 15:3)を35質量%、黄色着色剤(C.I.Pigment Yellow 147)を15質量%、赤色着色剤(BASFジャパン株式会社製、Paliogen Red K3580)を50質量%の割合で混合した黒色外観顔料
・着色剤B:三菱ケミカル株式会社製、MA100(カーボンブラック)
・光重合開始剤:BASFジャパン株式会社製、Irgacure OXE02(エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム))
・無機フィラー:堺化学株式会社製 B-30(硫酸バリウム)
【0101】
【0102】
[実施例1]
<感光性フィルム積層体の作製>
iso-ブチル化メラミン樹脂(アミディアL-125-60、固形分60%、DIC株式会社製)、およびメラミン焼き付け用アクリル樹脂(アクリディックA-405、固形分50%、DIC株式会社製)を、配合割合が質量基準で25:75(固形分換算となるように配合し、撹拌機にて予備撹拌し、アクリルメラミン樹脂を得た。次いで、得られたアクリルメラミン樹脂をメチルエチルケトンで希釈し固形分濃度35質量%の樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液に、さらに塗膜の厚みに応じて適当な固形分濃度となるようにメチルエチルケトンを加えた後、シリコーン系樹脂(サイマックUS-270、東亜合成株式会社製)と最大粒径が2μmとなるように調整したフィラー(SO-C2、球状シリカ、株式会社アドマテックス製)とを、アクリルメラミン樹脂とシリコーン系樹脂とフィラーとの配合割合が、質量基準で59.7:0.3:20となるように添加し、室温で十分に撹拌し、均一な塗工液を得た。得られた塗工液を、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(E5041、東洋紡株式会社製)に塗布し、130℃で、20秒間乾燥させることにより中間層を含む第一のフィルム1(凹凸PET1)を作製した。得られた第一のフィルム1のコーティング処理を行った面(凹凸面)の「面積/表面積」の値は1.041であり、算術平均表面粗さRaは0.246nmであった。
【0103】
算術平均表面粗さRaの測定には、形状測定レーザーマイクロスコープ(株式会社キーエンス製VK-X100)を使用した。形状測定レーザーマイクロスコープ(同VK-X100)本体(制御部)および、VK観察アプリケーション(株式会社キーエンス製VK-H1VX)を起動させた後、x-yステージ上に測定する試料(第一のフィルム)を前記第一のフィルムの突出部を有する表面を上部にして乗せた。顕微鏡部(株式会社キーエンス製VK-X110)のレンズレボルバーを回して倍率10倍の対物レンズを選択し、VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の画像観察モードで、大まかにピント、明るさを調節した。x-yステージを操作して、試料表面のほぼ中央部が、画面の中心に来るように調節した。倍率10倍の対物レンズを倍率50倍に替え、VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の画像観察モードのオートフォーカス機能で、試料の表面にピントを合わせた。VK観察アプリケーション(同VK-H1VX)の形状測定タブの簡単モードを選択し、測定開始ボタンを押して、試料の表面形状の測定を行い、表面画像ファイルを得た。VK解析アプリケーション(株式会社キーエンス製VK-H1XA)を起動して、得られた表面画像ファイルを表示させた後、傾き補正を行い、表示領域55965μm2範囲のRa値を測定した。
【0104】
「表面積/面積」の測定では、試料の表面形状の測定における観察測定範囲(面積)を55965μm2とした。解析アプリケーション(株式会社キーエンス製VK-H1XA)を用いた。表示画面にある計測解析メニューから[体積・面積]を選択し、[体積・面積]ウインドウを表示させ、[体積・面積]ウインドウの[全領域]測定における表示領域55965μm2における[体積・面積]の値を測定した。
【0105】
続いて、上記のようにして得られた感光性樹脂組成物Aを、上記した第一のフィルム1の凹凸面に塗布し、80℃の温度で15分間乾燥し、膜厚30μmの感光性フィルムを形成して、感光性フィルムと第一のフィルムとを備える感光性フィルム積層体を得た。
【0106】
<試験基板の作製>
Cuベタ基板(150mm×95mm×0.89mmt)表面をメック株式会社製のCZ8101によって化学研磨を施した。続いて、Cuベタ基板の化学研磨された表面に、上記の方法で得られた感光性フィルム積層体の感光性フィルムの面を真空ラミネーターCVP-300(ニッコー・マテリアルズ株式会社製)を用いてラミネートすることで、構造体を得た。この構造体にDXP-3580(株式会社オーク製作所製、超高圧水銀灯DI露光機)を用いて、Stouffer41段ステップタブレットで15段の硬化段数になるよう評価項目にあわせてパターン露光を実施した。露光開始から10分後に第一のフィルムを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液でブレイクポイント(最短現像時間)の2~3倍の現像時間で現像を行った。その後UVコンベア(株式会社オーク製作所製、メタルハライドランプ)を用いて1000mJで露光し、熱循環式Box炉で150℃、60分間硬化させることにより、基板上に感光性フィルムの硬化物(ソルダーレジスト層)を備える試験基板1を得た。なお、硬化物(ソルダーレジスト層)の膜厚は、乾燥後の感光性フィルムの膜厚(30μm)から20%減少していた。
【0107】
[実施例2]
実施例1において、感光性樹脂組成物Aに代えて、感光性樹脂組成物Bを使用した以外は、実施例1と同様にして試験基板2を作製した。
【0108】
[実施例3]
実施例1において、アクリルメラミン樹脂とシリコーン系樹脂とフィラーとの配合割合を質量基準で59.7:0.3:15に変更し作製した第一のフィルム2(凹凸PET2)を使用した以外は、実施例1と同様にして試験基板3を作製した。
【0109】
[比較例1]
実施例1において、アクリルメラミン樹脂とシリコーン系樹脂とフィラーとの配合割合を質量基準で59.7:0.3:108に変更し作製した第一のフィルム3(凹凸PET3)を使用した以外は、実施例1と同様にして試験基板4を作製した。
【0110】
[比較例2]
比較例1において、感光性樹脂組成物Aに代えて、感光性樹脂組成物Bを使用した以外は、比較例1と同様にして試験基板5を作製した。
【0111】
[比較例3]
実施例1において、第一のフィルム1を、[表面積/面積]値が1.011であり、算術平均表面粗さRaが0.040μmである第一のフィルム4(PET4、日新化成株式会社製、T100)に変更した以外は、実施例1と同様にして試験基板6を作製した。
【0112】
<評価項目>
次に、各実施例および比較例に対する評価項目とその評価手順は以下の通りである。
【0113】
<表面パラメータの測定>
上記のようにして作製した実施例1~3および比較例1~3の各試験基板のソルダーレジスト層の表面について、上記と同様にして算術平均表面粗さRaおよび「表面積/面積」を測定した。評価結果は下記の表2に示した。
【0114】
<傷の視認性評価>
上記のようにして作製した実施例1~3および比較例1~3の各試験基板の露光領域における硬化被膜の表面に、硬度2Hの鉛筆の芯を、角度45°、荷重4.9Nをかけた状態で押し当て、1秒間に1mmの速度で移動させ、硬化被膜の表面上の傷の視認性を目視にて下記の基準で評価した。評価結果は下記の表3に示した。
[評価基準]
○:露光領域における硬化被膜の表面上に傷が確認されなかった。
×:露光領域における硬化被膜の表面上に傷が確認された。
【0115】
<黒色度の評価>
硬化後の試験基板に対して色差計(コニカミノルタ株式会社製、CM-2600d)を使って、正反射光を含むSCEモードでL値を測定し、黒色度を下記の基準で評価した。評価結果は下記の表3に示した。
[評価基準]
〇:L*a*b*色空間におけるL*値が25以下であった。
×:L*a*b*色空間におけるL*値が25超であった。
【0116】
<光沢度の評価>
光沢度測定には、デジタル変角光沢度計(BYK-micro-TRI-gloss)を使用した。標準板で校正を行ったのち、感光性フィルムの凹凸面におけるGs(60°)の光沢度を測定し、下記の基準で評価した。評価結果は下記の表3に示した。
[評価基準]
〇:60°光沢度が50以下であった。
×:60°光沢度が50超であった。
【0117】
実施例1~3と比較例1~2を比較すると、ソルダーレジスト層の[表面積/面積]が1.400以上の場合、傷の目立ちにくさは〇であるが、黒色度の評価は×であり、マーキングインキの視認性が落ちていることがわかる。
【0118】
実施例1~3と比較例3を比較すると、ソルダーレジスト層の[表面積/面積]が1.025以下の場合、黒色度の評価は〇であるが、傷の目立ちにくさは×であり、傷が目立ちやすいことがわかる。
【0119】
以上、本発明を実施するための形態について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0120】
【0121】