(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164338
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ポリプロピレンフィルム形成用樹脂組成物、ポリプロピレンフィルム、及び積層体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20241120BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241120BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20241120BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20241120BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C08L23/10
B32B27/32 Z
C08K5/13
C08K5/17
C08J5/18 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169662
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高柳 浩介
(72)【発明者】
【氏名】小野 竜典
(72)【発明者】
【氏名】桶屋 雄太
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA20
4F071AA88
4F071AC11
4F071AC12
4F071AE05
4F071AF45
4F071AF57
4F071AH04
4F071AH05
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB07
4F071BC01
4F100AH03A
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA06A
4F100GB15
4J002BB111
4J002BB121
4J002EJ016
4J002EN037
4J002FD076
4J002FD077
4J002GF00
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】製膜時の加工安定性及び製膜後の長期熱安定性に優れた、ポリプロピレンフィルム形成用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ポリプロピレン樹脂と、一次酸化防止機能を有する第一の酸化防止剤、並びに一次酸化防止機能及び二次酸化防止機能を有するヒドロキシルアミン系の第二の酸化防止剤を含む酸化防止剤と、を含む、ポリプロピレンフィルム形成用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂と、
一次酸化防止機能を有する第一の酸化防止剤、並びに一次酸化防止機能及び二次酸化防止機能を有するヒドロキシルアミン系の第二の酸化防止剤を含む酸化防止剤と、
を含む、ポリプロピレンフィルム形成用樹脂組成物。
【請求項2】
前記第一の酸化防止剤がヒンダードフェノール系の酸化防止剤である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記第二の酸化防止剤がビス-オクタデシルヒドロキシルアミンである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリプロピレン樹脂及び前記酸化防止剤の全量を基準として、前記第一の酸化防止剤の含有量が300質量ppm以上であり、前記第二の酸化防止剤の含有量が300質量ppm以上であり、前記第一の酸化防止剤及び前記第二の酸化防止剤の合計含有量が2500質量ppm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物から製膜されるポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
メルトフローレート(JIS K6921-2準拠、温度230℃、荷重2.16kg)が15.0g/10min以下である、請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のフィルムを備える積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンフィルム形成用樹脂組成物、ポリプロピレンフィルム、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂を原料として製膜されたフィルムは、透明性、光沢性、耐熱性等に優れることから、包装用や産業用等の様々な分野に用いられている。また、防湿性や酸素遮断性等を高めることを目的として、ポリプロピレンフィルムに、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等からなるフィルム、アルミニウム箔などを積層させた積層体も、種々知られている。
【0003】
一般的に、ポリプロピレン樹脂を原料としてフィルムを製膜する場合には、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤等の種々の添加剤が用いられる。
【0004】
上記の添加剤のうち酸化防止剤は、フィルムを製膜する場合の押出機の熱、押出機のスクリューによる剪断力、あるいはポリプロピレン樹脂に含まれる触媒残渣等の影響で、ポリプロピレンの分子量が低下したり、酸化劣化が進行したりすることを防ぐ目的で添加されている。
【0005】
一般的に、ポリプロピレン樹脂の酸化劣化は、以下のようなサイクルによって進行することが知られている。
(1)高分子(RH)が、熱や光などの作用によって炭素ラジカル(R・)を発生。
(2)R・が酸素と反応して、パーオキシラジカル(ROO・)を発生。
(3)ROO・が周辺のRHからH・を引き抜きハイドロパーオキサイド(ROOH)となり、同時にR・を再生。
【0006】
上記のような酸化劣化のサイクルの進行を防ぐため、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等のように、パーオキシラジカル(ROO・)を捕捉する一次酸化防止剤と、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等のようにハイドロパーオキサイド(ROOH)を分解する二次酸化防止剤とを併用して、ポリプロピレン樹脂に添加することが一般的である。
【0007】
二次酸化防止剤であるリン系の酸化防止剤は、フィルム製膜前に単体で保管する際、及びフィルム製膜後の保管工程において、加水分解反応が進行して亜リン酸を生成することが知られている。亜リン酸が生成すると、酸化防止性能が低下すると同時に、押出機や引取機等の設備に汚損等の損害を与える原因となる。
【0008】
このため、加水分解を起こしにくい種々のリン酸系酸化防止剤が考案されている。例えば式(1)に示したBASFジャパン株式会社製のIrgafos168(主成分:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト)は、3つのオルト位がt-ブチル基で置換されたフェノールであり、フェノールのオルト位にある置換基のスペース障害を強化することで、リン原子が水分子と接触し難くなり、加水分解反応の進行を防止する。
【0009】
【0010】
例えば特許文献1には、上記のホスファイト系酸化防止剤をフェノール系酸化防止剤やラクトン系酸化防止剤等と組み合わせて用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記のホスファイト系酸化防止剤は、加水分解反応の進行は防止できるが、同時に酸素原子に対する親和性及び酸化防止剤としての性能の低下が生じる場合があり、十分な酸化防止効果を得るにはその添加量を増量する必要がある。
【0013】
しかしながら、酸化防止剤の添加量を増量すると、フィルム製膜時、製膜後のラミネートなどの後工程の際、あるいは製膜後の保管時等において、フィルム表面に酸化防止剤及びその分解物等がブリードアウトし、押出機や引取機等の設備の汚損、後工程の際のトラブル等が生じる虞がある。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、製膜時の加工安定性及び製膜後の長期熱安定性に優れた、ポリプロピレンフィルム形成用樹脂組成物を提供することを目的とする。また本発明は、当該樹脂組成物を用いて得られるポリプロピレンフィルム、及び当該ポリプロピレンフィルムを備える積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一側面に係るポリプロピレンフィルム形成用樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂と、一次酸化防止機能を有する第一の酸化防止剤、並びに一次酸化防止機能及び二次酸化防止機能を有するヒドロキシルアミン系の第二の酸化防止剤を含む酸化防止剤と、を含む。
【0016】
上記樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂の酸化劣化のサイクルにおいて、パーオキシラジカル(ROO・)を捕捉する機能を有する第一の酸化防止剤と、パーオキシラジカル(ROO・)を捕捉する機能及びハイドロパーオキサイド(ROOH)を分解する機能を併せ持つ第二の酸化防止剤とを共に含むものである。これらの酸化防止剤を併用することで、従来と比較して酸化防止剤の添加量を低く抑えることが可能であり、それによりフィルム製膜時の押出機の熱によるポリプロピレン樹脂の酸化劣化抑制性(加工安定性)、及びフィルム製膜後の保管の際におけるポリプロピレン樹脂の酸化劣化抑制性(長期熱安定性)を得ることができる。
【0017】
樹脂組成物の一態様において、第一の酸化防止剤はヒンダードフェノール系の酸化防止剤であってよい。
【0018】
樹脂組成物の一態様において、第二の酸化防止剤はビス-オクタデシルヒドロキシルアミンであってよい。
【0019】
樹脂組成物の一態様において、ポリプロピレン樹脂及び酸化防止剤の全量を基準として、第一の酸化防止剤の含有量は300質量ppm以上であってよく、第二の酸化防止剤の含有量は300質量ppm以上であってよく、第一の酸化防止剤及び第二の酸化防止剤の合計含有量は2500質量ppm以下であってよい。
【0020】
本発明の一側面に係るポリプロピレンフィルムは、上記樹脂組成物から製膜される。
【0021】
ポリプロピレンフィルムの一態様において、メルトフローレート(JIS K6921-2準拠、温度230℃、荷重2.16kg)は15.0g/10min以下であってよい。
【0022】
本発明の一側面に係る積層体は、上記フィルムを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、製膜時の加工安定性及び製膜後の長期熱安定性に優れた、ポリプロピレンフィルム形成用樹脂組成物を提供することができる。また本発明によれば、当該樹脂組成物を用いて得られるポリプロピレンフィルム、及び当該ポリプロピレンフィルムを備える積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態にのみ限定されるものではない。実施形態に例示された各種態様は適宜組み合わせてよい。
【0025】
<ポリプロピレンフィルム形成用樹脂組成物>
ポリプロピレンフィルム形成用樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂と、一次酸化防止機能を有する第一の酸化防止剤、並びに一次酸化防止機能及び二次酸化防止機能を有するヒドロキシルアミン系の第二の酸化防止剤を含む酸化防止剤と、を含む。酸化防止剤は、第一の酸化防止剤及び第二の酸化防止剤からなるものであってもよい。
【0026】
(ポリプロピレン樹脂)
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンのみの重合体であるホモポリマー(プロピレン単独重合体)、プロピレン及びエチレンの共重合体であるランダムコポリマー(プロピレン・エチレンランダム共重合体)、ホモポリマーの中にエチレン-プロピレン重合体が点在した構造を有しているブロックコポリマー(プロピレン・エチレンブロック共重合体)等が挙げられ、いずれのポリマーにおいても上記酸化防止剤による効果を享受できる。また、ポリプロピレン樹脂の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びアタクチックのいずれであっても良い。ポリプロピレン樹脂の重合の際には、Ziegler-Natta触媒、メタロセン触媒等の既知の任意の触媒を選択することができ、また既知の任意の製造方法を用いて良い。
【0027】
(酸化防止剤)
一次酸化防止機能を有する第一の酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系等の酸化防止剤が挙げられる。第一の酸化防止剤は、一次酸化防止剤としての機能のみを有する酸化防止剤と言うことができる。第一の酸化防止剤は、ポリプロピレン樹脂の酸化劣化のサイクルにおいて、パーオキシラジカル(ROO・)を捕捉する機能を有する。
【0028】
ヒンダードフェノール系の酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4―ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール、等を適宜選択して用いて良い。
【0029】
ヒンダードアミン系の酸化防止剤としては、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、ポリ[(6-モルフォリノ-s-トリアジン-2,4-ジイル)[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]等を適宜選択して用いて良い。
【0030】
第一の酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤を用いることが好ましい。ヒンダードフェノール系の酸化防止剤は、低温域(約0℃)から高温域(約300℃)までの幅広い温度範囲において酸化防止剤としての機能を発現することが知られており、加工安定性及び長期熱安定性の両方を発揮し易い。
【0031】
一次酸化防止機能及び二次酸化防止機能を有する(併せ持つ)第二の酸化防止剤としては、ヒドロキシルアミン系の酸化防止剤を用いる。第二の酸化防止剤は、ポリプロピレン樹脂の酸化劣化のサイクルにおいて、パーオキシラジカル(ROO・)を捕捉する機能及びハイドロパーオキサイド(ROOH)を分解する機能を併せ持つ。このような第二の酸化防止剤を第一の酸化防止剤と共に用いることで、従来と比較して酸化防止剤の添加量を全体として低く抑えることができる。
【0032】
ヒドロキシルアミン系の酸化防止剤としては、ビス-オクタデシルヒドロキシルアミンを用いることが好ましい。ビス-オクタデシルヒドロキシルアミンを用いることで、ポリプロピレン樹脂の酸化劣化を防ぐ機能に加えて、製膜されたフィルムにガンマ線等の放射線や電子線を照射した際に、フィルムの変色及びポリプロピレン樹脂の分解を防ぐ機能を付与できる。
【0033】
ポリプロピレン樹脂及び酸化防止剤(第一の酸化防止剤及び第二の酸化防止剤)の全量を基準として、第一の酸化防止剤の含有量は300質量ppm以上であると好ましく、第二の酸化防止剤の含有量は300質量ppm以上であると好ましい。これにより、ポリプロピレン樹脂の酸化劣化を防ぐ効果が得られ易い。この観点から、第一の酸化防止剤の含有量は400質量ppm以上、又は500質量ppm以上であるとより好ましく、第二の酸化防止剤の含有量は400質量ppm以上又は500質量ppm以上であるとより好ましい。また、ポリプロピレン樹脂及び酸化防止剤の全量を基準として、第一の酸化防止剤及び第二の酸化防止剤の合計含有量は2500質量ppm以下であると好ましい。これにより、フィルム表面への酸化防止剤及びその分解物等のブリードアウト、押出機や引取機等の設備の汚損、後工程の際のトラブル等を抑制し易い。この観点から、第一の酸化防止剤及び第二の酸化防止剤の合計含有量は2300質量ppm以下、又は2000質量ppm以下であるとより好ましい。
【0034】
第一の酸化防止剤の含有量に対する第二の酸化防止剤の含有量の比(第二の酸化防止剤の含有量/第一の酸化防止剤の含有量)は、0.5~2であることが好ましく、0.75~1.5又は0.9~1.1であることがより好ましい。これにより、ポリプロピレン樹脂の酸化劣化を防ぐ効果が得られ易い。
【0035】
(その他の成分)
樹脂組成物は、その他の成分として、触媒残渣を中和するための中和剤、ポリプロピレンの結晶化の際の核となる核剤、フィルム表面の摩擦係数を低下させるための滑剤、フィルムを巻き取った状態で保管する際のブロッキングを防止するアンチブロッキング剤、フィルム表面への異物の付着やフィルムが帯電して加工機や他のフィルムに付着することを防ぐ帯電防止剤、等の成分(添加剤)を、実際の使用用途に応じて適宜含有することができる。
【0036】
<ポリプロピレンフィルム>
ポリプロピレンフィルムは、上記ポリプロピレンフィルム形成用樹脂組成物から製膜される。ポリプロピレンフィルムの製膜方法としては、例えば熱プレス、押出成形、キャスティング成形、カレンダー成形等の各種方法を適宜選択できる。ポリプロピレンフィルムには、1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸、多段延伸等の各種延伸加工が施されてもよい。
【0037】
ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(JIS K6921-2準拠、温度230℃、荷重2.16kg)は、15.0g/10min以下であると好ましい。このことは、酸化防止剤が充分に機能し、フィルムを製膜する際の押出機の熱によってポリプロピレン樹脂の酸化劣化が進行し難い傾向があることを示す。メルトフローレートは、13.0g/10min以下であるとより好ましい。メルトフローレートが15.0g/10minを超える場合は、ポリプロピレン樹脂の溶融粘度が低く、Tダイからの吐出量が安定せず、製膜されるフィルムの膜厚変動が大きくなる傾向がある。さらに、製膜されたフィルムの耐衝撃性が低下する等の問題も生じ易い。メルトフローレートの下限は特に限定されないが、上述したポリプロピレン樹脂を用いる場合は、3.0g/10min以上とすることができる。
【0038】
ポリプロピレンフィルム中の酸化防止剤の種類及びその量は、例えば溶出試験(フィルムを溶媒に浸して酸化防止剤等の添加剤を抽出する方法)により特定することができる。
【0039】
<積層体>
積層体は上記ポリプロピレンフィルムを備える。ポリプロピレンフィルムは単層フィルムとして製膜されてもよいが、複数の押出機を使用し、同一の又は異なる種類のポリプロピレン樹脂をフィードブロック法又はマルチマニホールド法により共押出することで、2層以上の多層フィルムとして製膜されてもよい。すなわち積層体は、同一の又は異なる種類の複数のポリプロピレンフィルムを備えることができる。
【0040】
積層体は、単層又は多層のポリプロピレンフィルムの片面又は両面に、包装材料として既知の各種の層を備えることができる。そのような層としては、シーラント層、金属箔層、蒸着層(アルミ蒸着、アルミナ蒸着、シリカ蒸着等)、印刷層、接着層、表面保護層等が挙げられる。それらの層は、ドライラミネート、熱接着、フィルム表面への印刷、塗工、蒸着等の既知の方法により積層することができる。なお、ポリプロピレンフィルムに対して蒸着層を設けることで、酸化防止剤の添加量を抑制しつつ、バリア安定性を持つフィルムとして好適に使用できる。
【実施例0041】
以下、本発明に基づく実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂の原料として、サンアロマー株式会社製のPX600Nを用いた。また、第一の酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤であるBASFジャパン株式会社製のIrganox1010(主成分:テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール)を、第二の酸化防止剤として、ビス-オクタデシルヒドロキシルアミンを用いた。
【0043】
PX600Nに、ポリプロピレン樹脂及び酸化防止剤の全量を基準として、Irganox1010を1000質量ppm、ビス-オクタデシルヒドロキシルアミンを500質量ppm添加した。この樹脂を押出機に供給して加熱溶融し、Tダイから吐出させ、ニップ圧力を付加しながら冷却ロールで接触させてフィルムを製膜した。押出機の設定温度は、供給部を230℃、圧縮部、計量部、及びTダイを250℃とした。フィルム膜厚は60μmとした。
【0044】
(実施例2)
各酸化防止剤の添加量を表1のとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にフィルムを製膜した。
【0045】
(比較例1)
酸化防止剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にフィルムを製膜した。
【0046】
(比較例2~4)
各酸化防止剤の添加量を表1のとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にフィルムを製膜した。
【0047】
(比較例5)
ビス-オクタデシルヒドロキシルアミンに代えて、二次酸化防止機能を有する(二次酸化防止剤としての機能のみを有する)、リン系の酸化防止剤であるBASFジャパン株式会社製のIrgafos168を2000質量ppm添加したこと以外は、実施例1と同様にフィルムを製膜した。
【0048】
(評価:メルトフローレート測定)
各例のフィルムについて、株式会社東洋精機製作所製のメルトインデックサ(F-F-01)を使用し、JIS K6921-2準拠のメルトフローレート(Melt Flow Rate;MFR)を測定した。メルトインデックサの設定温度は230℃とした。各例のフィルムをそれぞれ5mm角程度のサイズに切り出してサンプルとした。サンプルの重量は約5g(5±1g程度)であった。このサンプルをメルトインデックサに投入し、2.16kgの荷重を印加した状態で30秒間に吐出される樹脂の質量を測定した。この測定値を20倍してMFRの値を算出した。結果を表1に示す。
【0049】
(評価:フィルム耐久性)
各例のフィルムをA4サイズ(幅方向210mm×流れ方向291mm)に切り出し、エスペック株式会社製の恒温機(HT310)にて、設定温度150℃で60日間保管した。各例のフィルムが酸化劣化して破断するまでの日数を記録することで、フィルムの耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0050】
【0051】
一次酸化防止機能を有するIrganox1010と、一次酸化防止機能及び二次酸化防止機能を併せ持つビス-オクタデシルヒドロキシルアミンとを添加して製膜した実施例のフィルムは、酸化防止剤を添加せずに製膜した比較例1のフィルム、並びにIrganox1010のみを添加して製膜した比較例2及び比較例3のフィルムと比較してメルトフローレートの値が低く抑えられていた。実施例では、押出機の熱によるポリプロピレン樹脂の酸化劣化が比較的進行し難かったことを示している。
【0052】
実施例のフィルムは、60日間のフィルム耐久性評価を実施した際にフィルムの破断は見られなかった。これに対して、ビス-オクタデシルヒドロキシルアミンのみを添加して製膜した比較例4のフィルムでは、メルトフローレートの値が低く抑えられているものの、フィルム耐久性評価を実施した際に恒温機投入後1日でフィルムの破断が見られ、耐久性に乏しいことが確認された。
【0053】
一次酸化防止機能を有するIrganox1010と、二次酸化防止機能を有するIrgafos168とを添加して製膜した比較例5のフィルムでは、メルトフローレートの値が低く抑えられており、60日間のフィルム耐久性評価を実施した際にフィルムの破断は見られなかった。ただし、実施例のフィルムと比較して酸化防止剤の添加量が多かった。酸化防止剤の添加量が多いことで、フィルム表面に酸化防止剤及びその分解物等がブリードアウトし、押出機や引取機等の設備の汚損、後工程の際のトラブル等のような不都合が生じる虞がある。
本開示におけるポリプロピレンフィルム形成用樹脂組成物は、フィルム製膜時及び製膜後の長期間にわたって、ポリプロピレン樹脂の酸化劣化を抑制することができる。当該樹脂組成物から製膜されるポリプロピレンフィルムは、各種軟包材、エレクトロニクス包材、医療・医薬品包材、トイレタリー製品、液体複合紙容器、チルド・冷凍食品包材等の分野における利用が期待できる。