(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164344
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】端子台及び端子台用電流値測定システム
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20241120BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G01R15/20 C
G01R19/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079755
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】394025739
【氏名又は名称】朝日電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌秀
(72)【発明者】
【氏名】北郷 達也
(72)【発明者】
【氏名】越川 秀美
(72)【発明者】
【氏名】春原 一貴
【テーマコード(参考)】
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2G025AA04
2G025AA11
2G025AB01
2G035AA08
2G035AC08
2G035AD22
2G035AD28
2G035AD66
(57)【要約】
【課題】 簡易な構成で的確な電流検知を可能とする端子台及び端子台用電流値測定システムを提供すること。
【解決手段】端子台10は、導電箇所である導電部材20(括れ部分TU)の周りの磁界をセンシングする磁界センサ装置30と、磁界センサ装置30でのセンシング結果から導電部材20(括れ部分TU)における電流値を測定する計測器50とを備える。上記端子台10では、導電部材20(括れ部分TU)の周りでの磁界のセンシングを利用して、端子台10に接続された設備の電流計測を的確に行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電箇所の周りの磁界をセンシングする磁界センサ装置と、
前記磁界センサ装置でのセンシング結果から前記導電箇所における電流値を測定する計測器と
を備える端子台。
【請求項2】
前記磁界センサ装置は、磁界をセンシングする第1センサと第2センサとを有し、
前記導電箇所の周りに発生する外乱ノイズの特性に応じた配置で前記第1センサと前記第2センサとを固定するセンサ固定部を備える、請求項1に記載の端子台。
【請求項3】
前記センサ固定部は、前記第1センサと前記第2センサとを、前記導電箇所に対して点対称の位置となるように配置固定する、請求項2に記載の端子台。
【請求項4】
前記センサ固定部は、前記第1センサと前記第2センサとを、同方向となるように配置固定する、請求項2に記載の端子台。
【請求項5】
前記センサ固定部は、前記導電箇所の表側において前記第1センサを固定し、前記導電箇所の裏側において前記第2センサを固定する、請求項2に記載の端子台。
【請求項6】
鉄道設備に設けられ、前記鉄道設備を構成する部品の接続箇所を、前記導電箇所とする、請求項1に記載の端子台。
【請求項7】
端子台に設けられた導電箇所の周りの磁界をセンシングする磁界センサ装置と、
前記磁界センサ装置でのセンシング結果から前記導電箇所における電流値を測定する計測器と
を備える端子台用電流値測定システム。
【請求項8】
前記磁界センサ装置でのセンシング結果を、前記計測器に送信する送信部を備える請求項7に記載の端子台用電流値測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の設備において電気的な接続を行う端子台及び端子台用電流値測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気的機器を備えた種々の設備において、その動作状況の確認や監視を行うべく、設備内の種々の個所において電流値の測定がなされることが想定される。このような電流値の測定に際して、磁界をセンシングに基づいて電流値を測定するものがあり、例えば、2つの磁界センサを利用するようなものが知られている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-39744号公報
【特許文献2】特表2020-501147号公報
【特許文献3】特開2013-210216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各種設備は、設置環境等がそれぞれ異なり、上記特許文献1~3のようなものを利用して測定を行った場合であっても、外乱の状況等によっては、高精度な測定ができなかったり、フィルターの設置等して装置を大型化する必要が生じたりする可能性がある。一方、端子台は、種々の設備を構成するに際して支持体等に固定させつつ電気的接続を行うための器具として存在しているものの、あくまで接続を行うための設備であり、これまで電流値の測定を行う対象とはなっていなかった。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で的確な電流検知を可能とする端子台及び端子台用電流値測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための端子台は、導電箇所の周りの磁界をセンシングする磁界センサ装置と、磁界センサ装置でのセンシング結果から導電箇所における電流値を測定する計測器とを備える。
【0007】
上記端子台では、導電箇所の周りでの磁界のセンシングを利用して、端子台に接続された設備の電流計測を的確に行うことができる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、磁界センサ装置は、磁界をセンシングする第1センサと第2センサとを有し、導電箇所の周りに発生する外乱ノイズ(外来磁界によるノイズ)の特性に応じた配置で第1センサと第2センサとを固定するセンサ固定部を備える。この場合、端子台において、センサ固定部により、外乱ノイズの特性に対応して第1及び第2センサを的確な位置に配置して、各センサ延いては装置全体を簡易な構成で小型化を可能としつつ、精度の高いセンシングを行える。
【0009】
本発明の別の側面では、センサ固定部は、第1センサと第2センサとを、導電箇所に対して点対称の位置となるように配置固定する。この場合、第1センサと第2センサとを通過する外乱ノイズによる影響を足し合わせることで相殺できる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、センサ固定部は、第1センサと第2センサとを、同方向となるように配置固定する。この場合、外乱ノイズの方向性を考慮することで、第1センサと第2センサとを通過する外乱ノイズによる影響を相殺できる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、センサ固定部は、導電箇所の表側において第1センサを固定し、導電箇所の裏側において第2センサを固定する。この場合、端子台のうち導電箇所の表側と裏側とにおいて一対構成のセンサ配置とすることで、確実な測定が行える。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、端子台は、鉄道設備に設けられ、鉄道設備を構成する部品の接続箇所を、導電箇所とする。この場合、鉄道設備の動作監視を簡易かつ的確に行うことができる。
【0013】
上記目的を達成するための端子台用電流値測定システムは、端子台に設けられた導電箇所の周りの磁界をセンシングする磁界センサ装置と、磁界センサ装置でのセンシング結果から導電箇所における電流値を測定する計測器とを備える。
【0014】
上記端子台用電流値測定システムでは、端子台に設けられた導電箇所の周りでの磁界のセンシングを利用して、端子台に接続された設備の電流計測を的確に行うことができる。
【0015】
本発明の具体的な側面では、磁界センサ装置でのセンシング結果を、計測器に送信する送信部を備える。この場合、例えば磁界センサ装置でのセンシング結果を遠隔地に設けた監視部に向けて送信する、といった態様にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の端子台が組み込まれた設備としての転てつ機と、端子台の様子を示す図である。
【
図2】(A)は、端子台の内部構成について説明するための斜視図であり、(B)及び(C)は、板状の導電部分である導電部材について示す斜視図である。
【
図3】磁界センサ装置を取り付けた状態の端子台について示す斜視図である。
【
図4】(A)は、端子台の一構成例について説明するための概念図であり、(B)は、端子台の一部を概念的に抽出した斜視図である。
【
図5】磁界センサ装置に基づいて計測される信号とノイズについて概念的に示すグラフである。
【
図6】(A)は、第1センサと第2センサとの配置について一例を示す斜視図であり、(B)は、外乱ノイズがない場合のセンシングの様子を示す概念的な平面図であり、(C)は、外乱ノイズがある場合のセンシングの様子を示す概念的な平面図である。
【
図7】(A)は、第1センサと第2センサとの配置について一変形例示す斜視図であり、(B)は、外乱ノイズがある場合のセンシングの様子を示す概念的な平面図である。
【
図8】(A)及び(B)は、第1センサと第2センサとの配置について一例を示す概念的な平面図であり、(C)及び(D)は、第1センサと第2センサとの配置について一変形例を示す概念的な平面図であり、(E)及び(F)は、第1センサと第2センサとの配置について別の一変形例を示す概念的な平面図である。
【
図9】第2実施形態の端子台の一構成例について説明するための概念図である。
【
図10】(A)~(D)は、端子台の他の一構成例について説明するための概念的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、
図1等を参照して、第1実施形態の端子台について、一例を説明する。
図1は、本実施形態の端子台10と、端子台10が組み込まれた設備EQとについて一例を説明するための図であり、設備EQの一例として、転てつ機PMが例示されている。
【0018】
図1に示すように、端子台10は、例えば転てつ機PMの内部装置の1つとして組み込まれ、例えばモーター等の転てつ機PMを構成する一の部材と他の部材や外部の部材とを、電気的に接続する。図示の例では、一部拡大した斜視図を破線で囲って示すように、複数の端子台10(10A,10B…)を一方向に連ねて構成された端子台装置100が設けられている。1つの端子台10には、転てつ機PMを構成するものや転てつ機PMと接続する外部部材のうちの1つの部材(部品)の端部と他の1つの部材の端部とが接続されるものとなっている。以下、端子台装置100を構成する1つの端子台10(例えば端子台10A)に着目して、説明する。
【0019】
図1~
図4(例えば
図1)に示すように、端子台10は、第1接続部11と、第2接続部12と、導電部材20と、磁界センサ装置30と、筐体SCとを備える。また、端子台10は、これらのほか、電流値を測定するための計測器50(
図4(A)参照)を備える。以上のような構成の端子台10において、磁界センサ装置30により導電部材20の周りの磁界をセンシングし、磁界センサ装置30でのセンシング結果を利用して計測器50で導電部材20における電流値の測定がなされる。これにより、例えば、第1接続部11及び第2接続部12を介して接続された部材の動作状況についての確認や監視が可能になっている。つまり、転てつ機PM(設備EQ)の動作状況を継続的に行って、経年劣化が生じていないか等を点検し、機械・設備の停止や故障に繋がる予兆を発見することができる。
【0020】
ここで、
図1等に示す一例では、第1接続部11及び第2接続部12は、それぞれネジ式となっており、例えばモーター等から延びるケーブルの端部と電源から延びるケーブルの端部(ともに図示略)とを電気的に接続可能とするための端子として機能する。
【0021】
導電部材20は、板状の金具部材に括れや貫通孔を設けて構成されており、導電性を有し、両端が第1接続部11と第2接続部12とに接続されている。より具体的には、例えば
図2(A)として示す端子台10の内部構成の斜視図、さらには、
図2(B)及び
図2(C)に示す斜視図にあるように、導電部材20は、中央部分に他の部分より細くなった括れ部分TUを有する板状の金属部材である。さらに、導電部材20の両端には、括れ部分TUを挟むように一対の貫通孔HL1,HL2が設けられており、第1接続部11及び第2接続部12を構成するネジ(
図1参照)が挿通可能となっている。
【0022】
なお、
図2(A)等に示すように、以下では、平板部分に平行な平面をXY面とし、貫通孔HL1から貫通孔HL2に向かって延びる方向をY方向とする。また、平板部分に平行な平面に垂直な方向すなわちXY面に垂直な方向をZ方向とする。図示の導電部材20の場合、括れ部分TUは、Y方向について延びているものとなっており、第1接続部1と第2接続部12とにケーブル等を取り付けて通電した場合、Y方向が電流の流れる方向となる。また、図示の例(
図2(C)参照)では、導電部材20において、各貫通孔HL1,HL2は、-Z方向に向かって突出して延びるように設けられている。
【0023】
磁界センサ装置30は、
図3として示す斜視図のように、通電に際しての導電箇所である導電部材20のうち括れ部分TU(
図2参照)を覆うように設けられたセンサ固定部CCの内部に収納されており、括れ部分TUを流れる電流によってその周囲に発生する磁界を測定する。言い換えると、磁界センサ装置30は、導電部材20のうち、導電箇所の1つである括れ部分TUの周りに発生する磁界を測定する。
【0024】
以下、図示の磁界センサ装置30の構成についてより具体的に説明すると、まず、磁界センサ装置30は、導電箇所である導電部材20の表側(+Z側)に配置される第1センサSS1と、導電部材20の裏側(-Z側)に配置される第2センサSS2とを有している。第1センサSS1と第2センサSS2とは、図示のように、センサ固定部CCのうち、導電部材20の表側に設置される第1ケース部材CC1と裏側に設置される第2ケース部材CC2とにそれぞれ収納されている。第1ケース部材CC1と第2ケース部材CC2とは、括れ部分TU(
図2参照)を挟むように設けられている。これにより、第1ケース部材CC1は、導電箇所に対して所定の配置となるように第1センサSS1を固定し、第2ケース部材CC2は、導電箇所に対して所定の配置となるように第2センサSS2を固定する。以上により、センサ固定部CCを構成する第1ケース部材CC1と、第2ケース部材CC2とは、第1センサSS1と第2センサSS2とを固定するものとして機能する。
【0025】
筐体SCは、導電部材20等の各部を取付け固定するための基台であり、樹脂等の絶縁性の部材で構成されている。図示の一例では、一体樹脂成形された部材のものとなっており、導電部材20を裏面側(-Z側)から指示固定する支持体部SCbと、隣接する他の端子台10との境界(
図1参照)を形成する側面部SCsと、側面部SCsの中央上部に設けられて磁界センサ装置30を表側から覆うカバー部SCcとで構成されている。
【0026】
以下、
図4(A)等を参照して、端子台10の全体構成や測定動作等について説明する。
図4(A)は、端子台10の一構成例について説明するための概念図であり、
図4(B)は、端子台10の一部を概念的に抽出した斜視図である。
【0027】
図4(A)に示す一例では、一の部品(例えば電源部等)の端部である第1端部EGaが第1接続部11に接続され、他の部品(例えばモーター等)の端部である第2端部EGbが第2接続部12に接続されており、第1接続部11から第2接続部12に流れる電流すなわち導電部材20の括れ部分TUに流れる電流についての検知が行われている状況を示している。また、ここでは、図中において、当該電流の流れる方向を矢印CFで示し、当該電流により発生する磁界について磁束の向きを矢印MFで示すものとする。図の例では、矢印CFは、+Y方向である場合を示している。以上に際して、計測器50は、第1センサSS1及び第2センサSS2に接続されており、これらでのセンシング結果すなわち磁界センサ装置30でのセンシング結果から導電箇所である括れ部分TUにおける電流値を測定し、さらに、測定結果を蓄積する。より具体的な構成を説明すると、まず、計測器50は、計算処理部51と、記憶部52とを有する。これらのうち、計算処理部51は、各種回路等で構成され、第1センサSS1及び第2センサSS2でのセンシング結果すなわち検知された磁界に関する情報(各種パラメータ)と第1センサSS1及び第2センサSS2の配置とから導電部材20(括れ部分TU)に流れている電流値を算出(推定)する処理を行う。記憶部52は、各種ストレージデバイス等で構成され、第1センサSS1及び第2センサSS2でのセンシング結果や計算処理部51における算出結果といった各種データを逐一記憶する。以上のようにして、監視対象である設備EQを構成する各部の動作状況についての確認や監視のためのデータ収集が、端子台10において可能となっている。
【0028】
ここで、上記のように導電箇所である導電部材20の周りに発生する磁界を利用して導電箇所に流れる電流を測定する場合には、
図4(B)に例示するように、外乱ノイズ(外来磁界によるノイズ)DNが磁界に影響を与えることが問題となる。具体的には、
図5に示す概念的なグラフにあるように、車線領域で示すような一定の測定レベルを維持した信号(電流値を示す信号)が、本来捉えられるべきものであるが、実際には、これに対して、ノイズ(例えばμTオーダーのノイズ)が入り込むことで、曲線Q1に示されるような乱れが生じてしまう場合がある。つまり、測定レベルに誤差が生じてしまい、適切な測定ができなくなってしまう可能性がある。特に、
図1に例示した転てつ機PMに設置されるといった場合、外界に永続的に設置固定される環境となり、例えば設置個所付近における列車の通過等に伴う磁界発生といった、各設備や部品において想定した導電以外の外的要因による磁界発生が、磁界センサ装置30での磁界測定延いては電流値測定に際して不可避的に影響する可能性がある。一方で、転てつ機PMのように所定の位置に永続的に固定設置されるような態様であれば、発生する外乱ノイズDNには特定の傾向(外乱ノイズDNの特性)があり、一旦決まった場所に設置固定されれば、以後は、外乱ノイズDNの特性自体が都度変化するといった事態は想定し難い、と考えられる。本実施形態では、かかる状況を踏まえ、各種設備の設置環境等に応じて、的確に導電箇所の電流測定(検知)を行えるようにしている。具体的には、本実施形態の一例では、既述のように、磁界センサ装置30として、一対構成の第1センサSS1及び第2センサSS2を、測定対象となるべき導電箇所(括れ部分TU)を挟むようにあるいは囲うように配置することで、外乱ノイズDNの影響を相殺する、あるいは(例えば許容可能な程度に)低減するような演算処理を可能としている。
【0029】
図6(A)は、第1センサSS1と第2センサSS2との配置について一例を示す斜視図である。
図6(B)は、外乱ノイズ(外来磁界によるノイズ)DNの発生がない場合のセンシングの様子を示す概念的な平面図である一方、
図6(C)は、外乱ノイズDNの発生がある場合のセンシングの様子を示す概念的な平面図である。
【0030】
ここでは、
図6(A)等に示すように、第1センサSS1と第2センサSS2とが、導電箇所である導電部材20(括れ部分TU)に対して、点対称の位置となるように配置固定されているものとする。言い換えると、第1ケース部材CC1と第2ケース部材CC2とで構成されるセンサ固定部CC(
図4等参照)が、第1センサSS1と第2センサSS2とを、導電箇所である導電部材20(括れ部分TU)に対して点対称の位置となるように配置固定しているものとする。
【0031】
ここで、点対称とは、例えば
図6(B)や
図6(C)に示す場合において、導電箇所である導電部材20あるいは括れ部分TUの中心位置(中心軸)AAを基準位置として、第1センサSS1または第2センサSS2のいずれか一方を回転させた場合に、他の一方と重なるような位置関係にあることを意味する。図示の一例では、第1及び第2センサSS1,SS2における基準面(表面)SS1a,SS2aが互いに向い合せになるような配置となっている。この場合、
図6(B)に示す外乱ノイズDNがない状況であれば、第1センサSS1において検知される磁界は、導電部材20(括れ部分TU)に起因して発生する磁界S
1のみとなる。同様に、第1センサSS1において検知される磁界は、磁界S
2のみとなる。なお、図示において、ベクトルで表されるべき磁界S
1,S
2については、矢印で示している。ここで、第1及び第2センサSS1,SS2を、上記のような点対称となる配置とした場合、どちらか一方を他方に重ねるように中心位置(中心軸)AAを基準に回転移動させると、磁界S
1と磁界S
2とは、同じ向きで重なるものとなる。つまり、計測される数値的には、理論上、これらは等しい値となる。
【0032】
一方、
図6(C)に示すようなある一定の特性を有する外乱ノイズDNが発生している状況では、上記した磁界S
1,S
2に加え、外乱ノイズDNに起因するノイズ磁界N
1,N
2が発生し、第1及び第2センサSS1,SS2では、上記した磁界S
1,S
2にノイズ磁界N
1,N
2が加わった状態で検知されることになる。なお、図示において、磁界S
1,S
2と同じくベクトルで表されるべきノイズ磁界N
1,N
2については、矢印で示している。ここで、先と同様にノイズ磁界N
1,N
2についてみると、ノイズ磁界N
1とノイズ磁界N
2とは、基準面SS1a,SS2aに対して、反対の向きになる。つまり、計測される数値的には、理論上、これらは正負が反対の値となる。
【0033】
以上を踏まえて、第1センサSS1での測定値に基づき計測器50(計算処理部51)で計算される測定値(電流値)を値X
1とし、第2センサSS2での磁界S
2に基づく測定値(電流値)を値X
2とし、磁界S
1,S
2に対応する電流値をI
1,I
2とした場合、
図6(B)に示すような状況においては、
X
1=I
1
X
2=I
2
となる。したがって、例えば計測器50(計算処理部51)における演算処理として、各センサSS1,SS2からの結果を足し合わせて全体の電流値Iを計算すれば、
I=X
1+X
2=I
1+I
2
となる。つまり、第1センサSS1での測定値と第2センサSS2での測定値とを加算した場合、求めるべき電流値の2倍の値が、理論上では算出されることになる。
【0034】
一方、
図6(C)に示すような状況においては、さらに、ノイズ磁界N
1,N
2に相当するものが加わることになる。すなわち、N
1に起因する第1センサSS1でのノイズ電流値をIN
1とし、N
2に起因する第2センサSS2でのノイズ電流値をIN
2とすると、
X
1=I
1+IN
1
X
2=I
2-IN
2
となる。ここで、上記のうち2つ目の式において、-IN
2となるのは、既述のように、ノイズ磁界N
1とノイズ磁界N
2とにおいて、ベクトルの向きが反対の向きになるからである。したがって、全体の電流値Iを計算すれば、
I=X
1+X
2=(I
1+IN
1)+(I
2-IN
2)=(I
1+I
2)+(IN
1-IN
2)
となる。つまり、加算した場合、求めるべき電流値の2倍の値に対して、IN
1-IN
2の分が誤差として生じることになる。そこで、本実施形態では、上記のうち、IN
1-IN
2の部分がトータルでキャンセルされるように、センサ固定部CC(
図4等参照)において、磁界センサ装置30の配置(姿勢)の調整がなされている。つまり、理想的にはIN
1=IN
2となるようなあるいはそれに近い状態になるような調整が行われ、外乱ノイズの方向性といった外乱ノイズの特性に応じた配置にしている。例えば上記のように、第1センサSS1と第2センサSS2とを点対称の位置となるように配置固定することや、第1センサSS1と第2センサSS2とができるだけ近接し、両者の間を狭くする(開口を小さくする)ことで、IN
1とIN
2とに差が出ないようにしてトータルでキャンセルする、といったことが考えられる。
【0035】
一方、
図6(A)等に示す一例とは異なる態様として、例えば
図7(A)及び
図7(B)に示すように、第1センサSS1と第2センサSS2とが、導電箇所である導電部材20(括れ部分TU)に対して、同方向となるように配置固定されているものとすることも考えられる。なお、各図のうち、
図7(A)は、
図6(A)に対応し、
図7(B)は、
図6(C)に対応する。この場合、
図7(B)に示すように、ノイズ磁界N
1とノイズ磁界N
2とは、基準面SS1a,SS2aに対して、同じ向きとなる。各種演算処理は、このことを加味してなされることになる。
【0036】
図8(A)~
図8(D)は、上記2態様について対比可能にまとめた概念的な平面図及び側面図であり、
図8(A)及び
図8(B)は、点対称の位置となるように配置固定した場合を概念的に示しており、
図8(C)及び
図8(D)は、同方向となるように配置固定した場合を概念的に示している。さらに、
図8(E)及び
図8(F)は、別の一変形例として、
図8(C)及び
図8(D)に示す状況から、周囲にシールドSHを設けた一例を示している。図示の一例では、シールドSHは、第1センサSS1の上方側(+Z側)と第2センサSS2の下方側(-Z側)とに設けられている。なお、シールドSHの取り付け位置は、想定される外乱ノイズDNの発生態様に応じて、上記に限らず種々の対応とすることができる。また、シールドSHについては、種々の態様が想定できるが、例えば薄い金属膜やメッシュ状(網状)の部材等とすることが考えられる。金属膜等を、
図2等に示す筐体SCを構成する各部(支持体部SCbや側面部SCs、カバー部SCc)に貼り付けて所望の配置となるシールドSHを形成させることが考えられる。無論、
図8(A)及び
図8(B)に示すような態様において、シールドSHを設けることも考えられる。
【0037】
以上のように、本実施形態にかかる端子台10は、導電箇所である導電部材20(括れ部分TU)の周りの磁界をセンシングする磁界センサ装置30と、磁界センサ装置30でのセンシング結果から導電部材20(括れ部分TU)における電流値を測定する計測器50とを備える。上記端子台10では、導電部材20(括れ部分TU)の周りでの磁界のセンシングを利用して、端子台10に接続された設備の電流計測を的確に行うことができる。
【0038】
〔第2実施形態〕
以下、
図9を参照して、第2実施形態の端子台210について、一例を説明する。なお、
図9は、
図4(A)に対応する図である。本実施形態の端子台210は、第1実施形態において例示した端子台10と異なり、計測器50を有しておらず、これに代えて磁界センサ装置30でのセンシング結果を送信する送信部TTを備えている。送信部TTは、遠隔地に設置された計測器250と通信する態様となっている。すなわち、本実施形態では、送信部TTが、磁界センサ装置30でのセンシング結果を、計測器250に送信することで、沿線等の現場に設置される端子台210と、端子台210から離隔された箇所に設けられた計測器250との通信が確立され、設備の電流計測を行う態様となっている。見方を変えると、この場合、端子台210と計測器250とによって、端子台用電流値測定システム500が構成されている、ということになる。
【0039】
なお、上記のような態様とすべく、端子台用電流値測定システム500において、計測器250は、計算処理部51と記憶部52とに加え、受信部RRを有し、受信部RRを介して送信部TTからのセンシング結果を受信する態様となっている。なお、送信部TTと受信部RRとの間での通信については、種々の態様が想定され、無線とする場合のほか、有線接続とすることも想定される。
【0040】
本実施形態においても、端子台用電流値測定システム500により、導電部材20(括れ部分TU)の周りでの磁界のセンシングを利用して、端子台10に接続された設備の電流計測を的確に行うことができる。
【0041】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0042】
まず、上記態様のほかにも、例えば
図10(A)~
図10(D)において概念的に示す他の一構成例の端子台310のように、円筒状の導電箇所CPに沿って回転可能な形状の部材に磁界センサ装置30を取り付けるための構造を設けてセンサ固定部CCを構成するものとしてもよい。なお、図示等を省略するが、図示のようなセンサ固定部CCを一対構成で設けることで、磁界センサ装置30を構成する第1センサSS1と第2センサSS2とを配置調整を行いつつ、固定可能とすることができる。
【0043】
また、上記では、磁界センサ装置30を一対構成のセンサで形成する場合について説明した。しかし、適切なノイズキャンセルあるいは低減が可能であれば、これに限らず、例えば3つ以上のセンサで磁界センサ装置30を構成したり、逆に1つのセンサで磁界センサ装置30を構成したりしてもよい。例えば、設置個所の状況からある程度どの位のノイズが発生し得るかが想定できる場合には、これを加味して演算処理を行うものとしてもよい。また、各種補正処理を併せて行うことで、ノイズキャンセルを行うものとしてもよい。
【0044】
また、上記では、監視対象となる設備EQの一例として、転てつ機PMを例示したが、対象となる設備EQは、これに限らず、例えば鉄道関係の設備である遮断機についての監視において、上記各種端子台を適用することも考えられる。すなわち、上述した端子台10等は、鉄道設備を構成する部品の接続箇所を、導電箇所とすることで、種々の鉄道設備に設けられるものとすることができる。さらに、鉄道設備に限らず、例えばコンベアやキュービクル等、種々の設備(例えば種々の大型施設や屋外設備)において、本願発明を適用することも考えられる。
【0045】
また、上記では、
図1において、複数の端子台10A,10B…を一方向に連ねて構成された端子台装置100について示しているが、これに対して、個々の端子台10A,10B…ごとに個別の計測器50を設ける態様とすることも可能であるが、端子台10A,10B…ごとの計測処理を一纏めで一括処理する態様とすることも可能である。
【0046】
また、上記では、発生する外乱ノイズDNが一定の特性を有する場合について説明したが、これに限らず、例えば特性が一定の周期や時期等で変化するような場合であっても、これに応じて磁界センサ装置30の配置調整等を行う態様とすることも考えられる。
【符号の説明】
【0047】
10,10A,10B…端子台、20…導電部材、30…磁界センサ装置、50…計測器、51…計算処理部、52…記憶部、100…端子台装置、210…端子台、250…計測器、310…端子台、500…端子台用電流値測定システム、AA…中心位置(中心軸)、CC…センサ固定部、CF…矢印、CP…導電箇所、DN…外乱ノイズ、EQ…設備、HL1,HL2…貫通孔、MF…矢印、N1,N2…ノイズ磁界、PM…転てつ機、Q1…曲線、RR…受信部、S1,S2…磁界、SC…筐体、SCb…支持体部、SCc…カバー部、SCs…側面部、SH…シールド、SS1,SS2…センサ、SS1a,SS2a…基準面(表面)、TT…送信部、TU…括れ部分