(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164345
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】土壌含水量測定装置及び土壌含水量の測定方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/00 20060101AFI20241120BHJP
G01N 22/04 20060101ALI20241120BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
E02D1/00
G01N22/04 C
G01N22/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079756
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓之
(72)【発明者】
【氏名】谷川 豊繁
(72)【発明者】
【氏名】波多野 改都
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA00
2D043BA10
(57)【要約】
【課題】土壌の含水量を簡単に測定可能な土壌含水量測定装置を安価に提供する。
【解決手段】土壌含水量測定装置1は、法面工法において法面に圧着された状態の受圧板8に接続され、被測定土壌9に少なくとも一部領域が埋設されたアンカー材7と、該アンカー材7に接続され、当該アンカー材7を介してラジオ信号又はテレビ信号を検出するコイル部3と、該コイル部3に接続され、当該コイル部3で検出するラジオ信号又はテレビ信号と予め記憶した被測定土壌9の含水量の基準信号とを比較演算して被測定土壌9の含水量を算出する含水量算出部4とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面工法を利用した土壌の含水量を測定する土壌含水量測定装置であって、
法面工法において法面に圧着された状態の受圧板に接続され、被測定土壌に少なくとも一部領域が埋設されたアンカー材と、
該アンカー材に接続され、当該アンカー材を介してラジオ信号又はテレビ信号を検出する信号検出部と、
該信号検出部に接続され、当該信号検出部で検出するラジオ信号又はテレビ信号と予め記憶した前記被測定土壌の含水量の基準信号とを比較演算して前記被測定土壌の含水量を算出する含水量算出部とを備えることを特徴とする土壌含水量測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の土壌含水量測定装置において、
前記受圧板は、繊維強化プラスチック材からなることを特徴とする土壌含水量測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の土壌含水量測定装置において、
前記受圧板は、導電体からなることを特徴とする土壌含水量測定装置。
【請求項4】
法面工法において法面に圧着された状態の受圧板に接続され、被測定土壌に少なくとも一部領域が埋設されたアンカー材を介してラジオ信号又はテレビ信号を検出した後、当該ラジオ信号又はテレビ信号と予め記憶した前記被測定土壌の含水量の基準信号とを比較演算して前記被測定土壌の含水量を算出することを特徴とする土壌含水量の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、土砂災害を予測するために土壌の含水量を測定する土壌含水量測定装置及び土壌含水量の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土砂災害は、その土砂災害の発生した土壌における含水量が深く関係することが一般的に知られており、近年では、土壌の含水量を測定することにより、土砂災害の発生を事前に且つ正確に予測する試みがなされている。この土壌の含水量の測定は、例えば、特許文献1に開示されている測定方法により行うことが考えられる。この特許文献1では、金属製の円筒状電極とその内側に配設された金属製の棒状電極との間に被測定土壌を詰め込んだ後、円筒状電極と棒状電極とに接続された容量計により周波数が20~60MHzの高周波を用いて静電容量を測定し、その測定した静電容量を用いて比誘電率を計算することにより、土壌の含水量を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、被測定土壌の含水量を調べるために高周波を発生させる容量計と2つの電極とが必要であるため、装置が高額になって測定コストが嵩んでしまう。特に、土砂災害が発生しそうな多くの場所において含水量の変化を常時監視しようとする場合、測定装置が測定場所毎に必要になるので測定装置の設置コストが著しく嵩んでしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、土壌の含水量を簡単に測定可能な土壌含水量測定装置を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、ラジオ信号又はテレビ信号を利用して土壌の含水量を測定するようにしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、法面工法を利用した土壌の含水量を測定する土壌含水量測定装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明では、法面工法において法面に圧着された状態の受圧板に接続され、被測定土壌に少なくとも一部領域が埋設されたアンカー材と、該アンカー材に接続され、当該アンカー材を介してラジオ信号又はテレビ信号を検出する信号検出部と、該信号検出部に接続され、当該信号検出部で検出するラジオ信号又はテレビ信号と予め記憶した前記被測定土壌の含水量の基準信号とを比較演算して前記被測定土壌の含水量を算出する含水量算出部とを備えることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、前記受圧板は、繊維強化プラスチック材からなることを特徴とする。
【0010】
第3の発明では、第1の発明において、前記受圧板は、導電体からなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、法面工法を利用した土壌含水量の測定方法をも対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0012】
すなわち、第4の発明では、法面工法において法面に圧着された状態の受圧板に接続され、被測定土壌に少なくとも一部領域が埋設されたアンカー材を介してラジオ信号又はテレビ信号を検出した後、当該ラジオ信号又はテレビ信号と予め記憶した前記被測定土壌の含水量の基準信号とを比較演算して前記被測定土壌の含水量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1及び第4の発明では、アンカー材の被測定土壌に埋設された部分がアンテナとして作用して土壌を通過するラジオ信号又はテレビ信号を受信するようになる。すると、土壌の比誘電率に依存してラジオ信号又はテレビ信号の強度が変化するので、その強度変化から土壌の含水量を簡単に知ることができる。また、被測定土壌の含水量を測定するのに特許文献1の如き高周波を発生させる容量計や電極を2つ用意する必要がないので、コストを抑えて測定することができる。また、ラジオ信号又はテレビ信号を受信するためのアンテナとして法面工法において必ず土壌に挿入されるアンカー材を利用するので、既に法面工法を実施している場所において土壌の含水量が測定可能になる。したがって、多くの測定場所においてアンテナを構成するための金属体等の追加部品や信号検出部を取り付けるための追加施工が必要なくなるので、土壌含水量測定装置を簡単且つ安価に構成することができる。
【0014】
第2の発明では、ラジオ信号又はテレビ信号を受信する際、絶縁体である受圧板ではラジオ信号又はテレビ信号を受信しなくなり、アンカー材における被測定土壌に埋設された部分だけでラジオ信号又はテレビ信号を受信するようになる。したがって、被測定土壌の地中部分の含水量を正確に把握することができる。
【0015】
第3の発明では、法面の広範囲を覆う受圧板によりラジオ信号又はテレビ信号を受信可能になるので、法面における被測定土壌の含水量を広範囲に亘って把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態1に係る土壌含水量測定装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る含水量算出部の概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る土壌含水量測定装置の使用状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る土壌含水量測定方法を説明するフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態1に係る土壌含水量測定装置を用いた土壌含水量の測定の実験結果を説明する図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係る土壌含水量測定装置の概略構成を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態3に係る土壌含水量測定システムを示す図である。
【
図8】本発明の実施形態4に係る土壌含水量測定装置を用いた土壌含水量の測定の実験結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0018】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る土壌含水量測定装置1を示す。該土壌含水量測定装置1は、被測定土壌9に埋設された金属体2を介してラジオ信号を検出して被測定土壌9の含水量を算出するものであり、丸棒状をなす銅製の金属体2と、該金属体2に巻かれてなるコイル部3(信号検出部)と、含水量を算出する含水量算出部4と、算出した含水量を表示するディスプレイ5(出力部)と、クラウドや外部ストレージ等との間で通信を行う通信インタフェース部6とを備えている。
【0019】
コイル部3と含水量算出部4とは、例えば、同軸ケーブル等で接続され、含水量算出部4、ディスプレイ5及び通信インタフェース部6は、図示しない筐体に収容されるとともに、それぞれコネクタ配線等で接続されている。
【0020】
金属体2は、AM信号又はFM信号であるラジオ信号を受信可能な一方向に延びる棒状の導電体であり、その太さ及び長さは特に限定されず、任意の太さ及び長さとすることができる。
【0021】
例えば、金属体2の太さ(直径)を大きくすると、該金属体2の抵抗(導体損失)が小さくなるため受信するラジオ信号の信号強度を大きくすることができる。一方、金属体2の太さを小さくすると、金属体2の厚みが抑制されるため被測定土壌9に設置する際の当該金属体2の運搬や土壌への挿入が容易となる。また、金属体2の長さを長くすると、該金属体2の共振周波数が変わるため受信するラジオ信号に対して特定波長の信号強度を大きくすることができる。一方、金属体2の長さを短くすると、金属体2の長さが抑制されるため被測定土壌9に設置する際の当該金属体2の運搬や土壌への挿入が容易となる。
【0022】
コイル部3は、金属体2で受信するラジオ信号を検出するようになっていて、例えば、金属体2の周りに絶縁体を介して銅線を巻いて形成されたものである。絶縁体は、該金属体2とコイル部3との間を絶縁できるのであれば、任意の形状、材質でよい。コイル部3を形成する銅線は、導電体であれば、任意の材質でよい。また、銅線の太さ及び巻き数は特に限定されず、任意の太さ及び巻き数とすることができる。
【0023】
例えば、コイル部3の銅線の太さ(直径)を大きくすると、銅線の抵抗(導体損失)が小さくなるため受信するラジオ信号が生成する誘導信号の信号強度を大きくすることができる。一方、コイル部3の銅線の太さを小さくすると、銅線の厚みが抑制されるため被測定土壌9に設置する際のコイル部3が巻かれた金属体2の運搬や被測定土壌9への挿入が容易となる。また、コイル部3の銅線の巻き数を増やすと、コイル部3の誘導信号の信号強度が巻き数に比例するため受信するラジオ信号が生成する誘導信号の信号強度を大きくすることができる。一方、コイル部3の銅線の巻き数を減らすと、コイル部3の厚みが抑制されるため被測定土壌9に設置する際のコイル部3が巻かれた金属体2の運搬や被測定土壌9への挿入が容易となる。
【0024】
含水量算出部4は、コイル部3に接続され、当該コイル部3により検出されるラジオ信号の信号強度をもとに被測定土壌9の含水量を算出するようになっていて、
図2に示すように、基準信号を予め記憶する基準信号記憶部4aと、受信するラジオ信号と基準信号とを比較して被測定土壌9の含水量を演算する比較演算部4bとを備えている。
【0025】
基準信号記憶部4aは、受信するラジオ信号の信号強度と被測定土壌9の含水量との間の関係を表す基準信号を予め記憶している。例えば、基準信号記憶部4aは、過去の所定期間にわたって得た被測定土壌9の含水量データとそのときに受信したラジオ信号の信号強度の平均値データとの関係を表す基準信号を記憶している。
【0026】
比較演算部4bは、コイル部3にて受信するラジオ信号の信号強度と基準信号記憶部4aにて予め記憶された基準信号の信号強度とを比較するとともに、受信するラジオ信号の信号強度に対応する被測定土壌9の含水量を算出するようになっている。
【0027】
ディスプレイ5は、含水量算出部4に接続され、当該含水量算出部4から出力された含水量算出信号を表示するようになっている。
【0028】
さらに、含水量算出部4は、通信インタフェース部6を介してクラウドや外部ストレージ等に対して含水量算出信号を出力するようになっている。
【0029】
次に、本発明の実施形態1に係る土壌含水量測定装置1の動作について、
図3~5を用いて詳述する。
【0030】
図3は、土壌含水量測定装置1の使用状態を示す図である。
図3では、金属体2及びコイル部3を被測定土壌9の地中約25cmの深さに埋設し、含水量算出部4、ディスプレイ5、及び通信インタフェース部6を地上に設置している。
【0031】
AMラジオ送信局から放送波として空中に送出されたラジオ信号は、被測定土壌9の中を通過し、地中に埋設された金属体2に到達する。金属体2は、アンテナとして作用するので、受信するラジオ信号により時間的に変化する電流が金属体2内に生じる。コイル部3は、金属体2の周りに巻き付けられているので、金属体2内に生じた電流が時間的に変化すると、コイル部3を通過する磁束密度が時間的に変化するので、コイル部3に誘導電流が生成される。つまり、コイル部3により、AM信号が検出される。
【0032】
コイル部3で検出されるAM信号の信号強度は、アンテナとして作用する金属体2の周囲媒質の比誘電率に依存する。金属体2の周囲媒質の比誘電率は、さらに、被測定土壌9の含水量に依存する。そこで、含水量算出部4において、比較演算部4bにより、コイル部3で検出されるAM信号の信号強度と、基準信号記憶部4aに予め記憶され被測定土壌9の含水量に関連付けられた基準信号の信号強度とを比較し、受信するAM信号の信号強度に対する被測定土壌9の含水量を算出する。そして、比較演算部4bにより算出した含水量算出信号を、ディスプレイ5に出力する。
【0033】
尚、含水量算出部4は、通信インタフェース部6を介してクラウドや外部ストレージ等に対して含水量算出信号を出力可能である。
【0034】
次に、本発明の実施形態1に係る土壌含水量測定方法を
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0035】
まず、S101では、金属体2を被測定土壌9に埋設する。金属体2の少なくとも一部領域を被測定土壌9に埋設すればよい。
【0036】
次に、S102では、金属体2に接続されるコイル部3又はコンデンサ等により金属体2が受信するラジオ信号を検出する。
【0037】
次に、S103では、検出されるラジオ信号の信号強度と予め記憶しておいた被測定土壌9の基準信号の信号強度とを比較する。
【0038】
最後に、S104では、検出されるラジオ信号の信号強度に対応する被測定土壌9の含水量を基準信号から算出して含水量の測定を終了する。
【0039】
図5は、土壌含水量測定装置1のディスプレイ5に表示された含水量測定信号の一例を示す。
【0040】
このように、本発明の実施形態1によると、金属体2の被測定土壌9に埋設された部分がアンテナとして作用して土壌を通過するラジオ信号を受信するようになる。すると、土壌の比誘電率に依存してラジオ信号の強度が変化するので、その強度変化から土壌の含水量を簡単に知ることができる。また、被測定土壌9の含水量を測定するのに特許文献1の如き高周波を発生させる容量計や電極を2つ用意する必要がないので、コストを抑えて測定することができる。
【0041】
また、金属体2に巻き付けられたコイル部3によってラジオ信号から誘導信号を生成する構造であるので、受信するラジオ信号に比例する誘導信号をシンプルな構造で生成可能になり、土壌含水量測定装置1を簡単且つ安価に構成することができる。
【0042】
また、ラジオ信号において遠くまで届くAM信号を利用して含水量の測定を行うと、あらゆる場所において被測定土壌9の含水量を測定することができる。
【0043】
尚、本発明の実施形態1では、コイル部3がラジオ信号を検出するとともに当該ラジオ信号を利用して被測定土壌9の含水量を測定しているが、コイル部3はテレビ信号を検出するとともに当該テレビ信号を利用して被測定土壌9の含水量を測定するようにしてもよい。
【0044】
《発明の実施形態2》
図6は、本発明の実施形態2に係る土壌含水量測定装置1を示す。尚、以下では、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0045】
本発明の実施形態2に係る土壌含水量測定装置1は、切土法面や斜面の土壌含水量を測定するためのものであり、法面工法において用いる鉄筋からなるアンカー材7(金属体)を利用している。
【0046】
法面工法の施工構造18は、アンカー材7と、厚みを有する略板状をなす受圧板8と、リング状をなす押え板16とを備えている。
【0047】
被測定土壌9の法面には、掘削により削穴15が形成され、該削穴15には、アンカー材7の一端から中途部を収容した状態でモルタルまたはセメントミルクからなる注入材7aを注入することにより、アンカー材7が固定されている。
【0048】
受圧板8は、繊維強化プラスチック材により形成され、その中央部分には、削穴15に固定されたアンカー材7の他端側を挿通させる挿通部8aが形成されている。挿通部8aに挿通させたアンカー材7の他端側に押え板16を外嵌合させるとともに、アンカー材7の他端側にナット17を螺合させて押え板16で受圧板8を押えることにより、受圧板8が被測定土壌9の法面に強固に圧着された状態になっている。
【0049】
アンカー材7の他端側には、コイル部3が巻き付けられ、該コイル部3には、含水量算出部4、ディスプレイ5及び通信インタフェース部6が接続されている。すなわち、実施形態2の土壌含水量測定装置1は、アンカー材7、コイル部3、含水量算出部4、ディスプレイ5及び通信インタフェース部6で構成されている。
【0050】
尚、アンカー材7は、その引張力を土壌に無理なく伝達するものであれば鉄筋からなるものでなくてもよく、任意の形状、材質でよい。また、受圧板8は、繊維強化プラスチック材で形成しているが、その他の材料で形成したものでもよく、例えば、金属材で形成したようなものであってもよい。
【0051】
次に、本発明の実施形態2に係る土壌含水量測定装置1の動作について、説明する。
【0052】
AMラジオ送信局から放送波として空中に送出されたラジオ信号は、法面工法の被測定土壌9中を通過し、地中に埋設されたアンカー材7の一端から中途部までの領域に到達する。アンカー材7は、アンテナとして作用するので、受信するラジオ信号により時間的に変化する電流がアンカー材7に生じる。アンカー材7の他端側に巻き付けられたコイル部3には、アンカー材7に生じる電流が時間的に変化すると、コイル部3を通過する磁束密度が時間的に変化するので、コイル部3に誘導電流が生成される。つまり、コイル部3により、ラジオ信号が検出される。
【0053】
コイル部3で検出されるラジオ信号の信号強度は、アンテナとして作用するアンカー材7の周囲媒質の比誘電率に依存する。実施形態2に係るアンカー材7の地中に埋設された部分の周囲媒質の比誘電率は、被測定土壌9の含水量並びに注入材7aの材質及び形状に依存する。そこで、含水量算出部4における比較演算部4bにより、コイル部3で検出されるラジオ信号の信号強度と、基準信号記憶部4aに予め記憶され被測定土壌9の含水量並びに注入材7aの材質及び形状に関連付けられた基準信号の信号強度とを比較し、受信するラジオ信号の信号強度に対する被測定土壌9の含水量を算出する。
【0054】
このように、本発明の実施形態2によると、ラジオ信号を受信するためのアンテナとして法面工法において必ず土壌に挿入されるアンカー材7を利用するので、既に法面工法を実施している場所において土壌の含水量が測定可能になる。したがって、多くの測定場所においてアンテナを構成するための金属体2等の追加部品や信号検出部のコイル部3を取り付けるための追加施工が必要なくなるので、土壌含水量測定装置1を簡単且つ安価に構成することができる。
【0055】
《発明の実施形態3》
図7は、本発明の実施形態3に係る土壌含水量測定システム10を示す。尚、以下では、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0056】
土壌含水量測定システム10は、それぞれ複数の地点における被測定土壌9の含水量を常時測定し、ネットワークを介して含水量を閲覧、監視可能とするものであり、土壌含水量測定装置1、中継器11、クラウド12及び外部ストレージ13、並びに土壌含水量監視装置14で構成されている。クラウド12及び外部ストレージ13は、中継器11を介して土壌含水量測定装置1に接続され、土壌含水量監視装置14は、クラウド12及び外部ストレージ13にインターネット等を介して接続されている。
【0057】
実施形態3の土壌含水量測定装置1は、複数の地点の被測定土壌9に設置されている。
【0058】
中継器11は、複数の土壌含水量測定装置1からそれぞれが測定した含水量測定信号を含む含水量データを受信し、クラウド12及び外部ストレージ13に送信するようになっている。
【0059】
クラウド12及び外部ストレージ13は、複数の土壌含水量測定装置1から得られた含水量データを受信し、インターネット上で管理し蓄積するようになっている。
【0060】
土壌含水量監視装置14は、インターネット等を介してクラウド12及び外部ストレージ13にアクセスし、蓄積された含水量データをWeb等により閲覧できるようになっている。
【0061】
次に、土壌含水量測定システム10の動作について説明する。複数の土壌含水量測定装置1は、上述の通り、それぞれ設置された地点の被測定土壌9の含水量測定信号を含む含水量データを中継器11に送信する。中継器11は、各土壌含水量測定装置1の通信インタフェース部6を介して、各地点の被測定土壌9の含水量データを受信してクラウド12及び外部ストレージ13に送信する。クラウド12及び外部ストレージ13は、受信した各地点の含水量データをインターネット上で管理し蓄積する。作業者は、土壌含水量監視装置14を用いてインターネット等を介してクラウド12及び外部ストレージ13にアクセスし、蓄積された各地点の含水量データをWeb等により閲覧する。
【0062】
このように、本発明の実施形態3によると、中継器11を介して複数の土壌含水量測定装置1の含水量測定信号を含む含水量データをクラウド12及び外部ストレージ13に送信し蓄積できる。したがって、蓄積された含水量データをクラウド12及び外部ストレージ13に接続されている土壌含水量監視装置14から閲覧することができるようになり、複数の地点の土壌含水量を常時監視することができる。
【0063】
《発明の実施形態4》
図8は、本発明の実施形態4に係る土壌含水量測定装置1を用いた土壌含水量の測定の実験結果を示す。実施形態4の土壌含水量測定装置1では、ラジオ信号又はテレビ信号を受圧板8においても受信可能とするために当該受圧板8を金属材で形成している点が実施形態2と異なるだけでその他は実施形態2と同じである為、以下、実施形態4に係る土壌含水量測定装置1の動作についてのみ説明する。
【0064】
AMラジオ送信局から放送波として空中に送出されたラジオ信号は、被測定土壌9の中を通過し、地中に埋設されたアンカー材7及び法面に圧着された受圧板8に到達する。アンカー材7及び受圧板8は、アンテナとして作用するので、受信するラジオ信号により時間的に変化する電流がアンカー材7及び受圧板8内に生じる。コイル部3は、アンカー材7の周りに巻き付けられ、アンカー材7及び受圧板8が接続されているので、受圧板8内に生じた電流が時間的に変化すると、コイル部3を通過する磁束密度が時間的に変化するので、コイル部3に誘導電流が生成される。つまり、コイル部3により、AM信号が検出される。
【0065】
図8は、本発明の実施形態4に係る土壌含水量測定装置1を用いて得た含水量測定信号の一例を示す。この測定結果により、受信信号、土壌含水量及び降雨量に相関が見られるので、金属材で形成された受圧板8を利用して当該受圧板8により抑えられた法面の土壌含水量を測定できることが分かった。
【0066】
以上より、本発明の実施形態4によると、法面の広範囲を覆う受圧板8によりラジオ信号又はテレビ信号を受信可能になるので、法面における被測定土壌9の含水量を広範囲に亘って把握することができる。
【0067】
尚、本発明の実施形態4では、受圧板8を金属材で形成しているが、ラジオ信号やテレビ信号を受信できるのであればこれに限らず、例えば、導電性プラスチック材等で形成されていてもよい。
【0068】
また、実施形態2,4のように、土壌含水量測定装置1を切土法面や斜面において複数の地点に設置するとともに土壌含水量測定システム10で常時監視することにより、各地点の含水量の傾向を随時調査するようにしてもよい。そうすると、法面工法の再施工についての判断材料を得ることができる。
【0069】
また、土壌含水量測定装置1を畑等の農作地において複数の地点に設置するとともに土壌含水量測定システム10で常時監視することにより、農作地の含水量を随時知るようにしてもよい。そうすると、農作地の作物に適切な水の量をかけるシステムを構築するのに利用することができる。
【0070】
さらに、土壌含水量測定装置1を公園やグラウンド等の複数の地点に設置するとともに土壌含水量測定システム10で常時監視するようにしてもよい。そうすると、雨天時の使用可否についての判断材料を得ることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 土壌含水量測定装置
3 コイル部(信号検出部)
4 含水量算出部
4a 基準信号記憶部
4b 比較演算部
7 アンカー材
8 受圧板
9 被測定土壌